説明

環境負荷シミュレーション装置、環境負荷シミュレーション方法、及び環境負荷シミュレーションプログラム

【課題】多種類の原料から構成される製品を一元管理して、製品のライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量により製品の環境負荷をシミュレーションする。
【解決手段】対象製品の環境負荷をシミュレーションする環境負荷シミュレーション装置であって、ライフサイクルに含まれる予め設定された工程に対し、設定条件をユーザに入力させるための画面を生成する画面生成手段と、画面生成手段により生成された画面に入力された設定条件に基づいて、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベースを参照し、データベースから取得される設定条件に対応した関連情報から温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出手段と、算出結果を用いて、対象製品の環境負荷をシミュレーションするシミュレーション手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷シミュレーション装置、環境負荷シミュレーション方法、及び環境負荷シミュレーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球温暖化問題に対する環境負荷低減に向けた取り組みの一つとして、製品の資源採掘から廃棄までのライフサイクルの中で発生する温室効果ガス(GHG:Green House Gus)排出量をCO(二酸化炭素)相当量として表示するカーボンフットプリント制度が、経済産業省主管の試行事業として2009年度より開始されている。
【0003】
カーボンフットプリント制度は、商品パッケージ等にCO排出量をラベル表示することで、事業者の温暖化抑止への取り組みを消費者にアピールし、環境に配慮した購買行動を促すことを目的としている。このようなカーボンフットプリント制度の施行にあたり、事業者においてはサプライチェーンを通じた企業のCO排出量を正確に把握することで、環境に配慮した商品開発に取り組むことが求められている。
【0004】
なお、従来から、環境面で優れたグリーン製品を提供するため、製品の設計情報に対してLCA(Life Cycle Assessment)手法におけるインベントリ分析を行うことにより環境負荷評価情報を生成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−263580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載された方法は、製品を構成する素材毎に、例えば生産時に投入するエネルギー、使用時に消費するエネルギー等が記録されたファイルを参照して製品単位あたりのCO発生量等を評価する。しかしながら、このような方法では、例えば1製品あたり数十種類の原料から構成され、各原料が多種類の素原料で構成されている製品を管理するには不向きであり、例えば製品の設計段階で製品を構成する原料の組み合わせや配合率等を変えたり、製品の原材料調達段階で、複数の原材料調達先と複数の生産工場の組み合わせを変えたりして、製品の各ライフサイクルで発生するCO排出量を削減するためのシミュレーションを効率良く行うことができなかった。
【0007】
また従来では、多数の製品を対象として、上述したような製品の各ライフサイクルで発生するCO排出量を算出し、その結果を次世代製品の設計等に生かしたり、エコデザインを推進させていくように情報を一元管理する管理装置は存在していなかった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、多種類の原料から構成される製品を一元管理して、製品のライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量により製品の環境負荷をシミュレーションする環境負荷シミュレーション装置、環境負荷シミュレーション方法、及び環境負荷シミュレーションプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量に基づいて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションする環境負荷シミュレーション装置であって、前記ライフサイクルに含まれる予め設定された工程に対し、設定条件をユーザに入力させるための画面を生成する画面生成手段と、
前記画面生成手段により生成された画面に入力された設定条件に基づいて、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベースを参照し、前記データベースから取得される前記設定条件に対応した関連情報から温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出手段と、前記温室効果ガス排出量算出手段により得られる算出結果を用いて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションするシミュレーション手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量に基づいて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションする環境負荷シミュレーション装置により実行される環境負荷シミュレーション方法であって、前記ライフサイクルに含まれる予め設定された工程に対し、設定条件をユーザに入力させるための画面を生成する画面生成手順と、前記画面生成手順により生成された画面に入力された設定条件に基づいて、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベースを参照し、前記データベースから取得される前記設定条件に対応した関連情報から温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出手順と、前記温室効果ガス排出量算出手順により得られる算出結果を用いて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションするシミュレーション手順とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量に基づいて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションする環境負荷シミュレーションプログラムであって、コンピュータを前記ライフサイクルに含まれる予め設定された工程に対し、設定条件をユーザに入力させるための画面を生成する画面生成手段、前記画面生成手段により生成された画面に入力された設定条件に基づいて、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベースを参照し、前記データベースから取得される前記設定条件に対応した関連情報から温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出手段、前記温室効果ガス排出量算出手段により得られる算出結果を用いて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションするシミュレーション手段として機能させるための環境負荷シミュレーションプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多種類の原料から構成される製品を一元管理して、製品のライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量により製品の環境負荷をシミュレーションすることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態における環境負荷シミュレーション装置の機能構成の一例を示す図である。
【図2】第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置によって算出される対象製品の温室効果ガス排出量の算出範囲を説明するための図である。
【図4】第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置が用いるデータベース群を示す図である。
【図5】原料構成のうち「水」の情報が入力される入力画面の一例を示す図である。
【図6】原料構成のうち「ラウレス硫酸ナトリウム」の情報を入力される入力画面の一例を示す図である。
【図7】CFPデータベースの製品一覧を表示するための画面例を示す図である。
【図8】CFPデータベースの製品情報を表示するための画面例を示す図である。
【図9】CFPデータベースの製品の原材料調達段階のうち原料調達情報を表示するための画面例を示す図である。
【図10】CFPデータベースの製品の原材料調達段階のうち主容器情報を表示するための画面例を示す図である。
【図11】CFPデータベースの製品の生産段階の積算方式により算出されたGHG排出量を表示するための画面例を示す図である。
【図12】CFPデータベースの製品の生産段階の按分方式により算出されたGHG排出量を表示するための画面例を示す図である。
【図13】CFPデータベースの製品の物流段階の物流情報を表示するための画面例を示す図である。
【図14】CFPデータベースの製品の販売段階の販売情報を表示するための画面例を示す図である。
【図15】CFPデータベースの製品の使用段階の使用・美容法情報を表示するための画面例を示す図である。
【図16】CFPデータベースの製品の廃棄段階の中味情報を表示するための画面例を示す図である。
【図17】CFPデータベースの製品の廃棄段階の主容器情報を表示するための画面例を示す図である。
【図18】CFPデータベースの製品の廃棄段階の廃棄処理情報を表示するための画面例を示す図である。
【図19】第2実施形態の環境負荷シミュレーション装置が用いるデータベース群を示す図である。
【図20】原料調達データベースの入力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<環境負荷シミュレーション装置:機能構成例>
図1は、第1実施形態における環境負荷シミュレーション装置の機能構成の一例を示す図である。図1に示す環境負荷シミュレーション装置10は、対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量に基づいて、対象製品の環境負荷をシミュレーションする。
【0016】
環境負荷シミュレーション装置10は、入力手段11と、出力手段12と、記録手段13と、通信手段14と、制御手段15と、画面生成手段16と、温室効果ガス排出量算出手段17と、シミュレーション手段18とを有するよう構成されている。
【0017】
入力手段11は、例えばキーボードや、マウス等のポインティングデバイス等からなり、ユーザからの対象製品の原料構成、処方条件、外装構成、物流条件、使用条件等の設定条件の入力、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報の入力、シミュレーション指示等の各種指示の開始、終了等の入力を受け付ける。
【0018】
出力手段12は、例えばディスプレイ等からなり、入力手段11により入力された内容や、入力内容に基づいて実行された内容等の表示・出力を行う。また、出力手段12は、プリンタ等の機能を有していてもよく、その場合には、入力した設定条件やシミュレーション結果等を紙等の印刷媒体に印刷して、ユーザ等に提供することもできる。
【0019】
なお、入力手段11と出力手段12とは、例えばタッチパネル等のように一体型の入出力手段であってもよく、この場合にはユーザの指やペン型の入力装置等を用いて所定の位置をタッチして入力を行うことができる。
【0020】
記録手段13は、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベース群を記録する。具体的には、記録手段13は、後述する中味原料データベース31、外装データベース32、製品データベース33、排出係数データベース34、取引先データベース35、使用方法データベース36、CFP(Carbon Footprint of Products)データベース37等を記録する。
【0021】
また、記録手段13は、画面生成手段16により生成された画面から得られる設定条件、関連情報等を各データベースに格納する。なお、記録手段13は、各データベースから必要に応じて記録されている各種データを読み出すことができる。
【0022】
通信手段14は、環境負荷シミュレーション装置10とネットワークで接続された他のパーソナルコンピュータ(PC)や上述したデータベース等と各種データの送受信を行う。
【0023】
制御手段15は、環境負荷シミュレーション装置10の各構成全体の制御を行う。制御手段15は、例えばユーザ等の入力手段11からの指示等に基づいて、温室効果ガス排出量算出手段17により対象製品のライフサイクルの各段階で発生する温室効果ガスを算出し、シミュレーション手段18により対象製品に対する環境負荷シミュレーションを行う等の制御を行う。
【0024】
画面生成手段16は、対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルに含まれる予め設定された工程に対し、設定条件をユーザに入力させるための画面を生成する。画面生成手段16は、例えば対象製品の原料構成を設定する画面、対象製品の処方条件を設定する画面、対象製品の外装構成を設定する画面、対象製品の物流条件を設定する画面、対象製品の使用条件を設定する画面等を生成する。
【0025】
なお、上述した対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルに含まれる予め設定された工程は、例えばカーボンフットプリント制度の商品種別算定基準(PCR:Product Category Rule))に則って設定することができる。
【0026】
また、画面生成手段16は、対象製品の原料構成を設定する画面には、元素配列表を備え、各元素に対して対象製品の原料を構成する原子の数を入力できるように生成する。また、画面生成手段16は、ユーザにより対象製品に対して設定された条件に基づいて、温室効果ガス排出量算出手段17により得られる算出結果を用いて、対象製品毎に温室効果ガス排出量のランキングを表示することもできる。
【0027】
温室効果ガス排出量算出手段17は、画面生成手段16に入力された設定条件に基づいて、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベース群等を参照し、データベース群から取得される各設定条件に対応した関連情報から、対象製品の原料調達、生産、物流、販売、使用、廃棄に至るまでの対象製品のライフサイクル段階毎に温室効果ガス排出量を算出する。
【0028】
また、温室効果ガス排出量算出手段17は、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報として、例えば対象製品の使用条件に対応して設定された排出係数等を用いて温室効果ガス排出量を算出することができる。
【0029】
シミュレーション手段18は、温室効果ガス排出量算出手段17により得られる算出結果を用いて、対象製品の環境負荷をシミュレーションする。
【0030】
<環境負荷シミュレーション装置:ハードウェア構成>
次に、図2を用いて、第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置10のハードウェア構成について説明する。図2は、第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0031】
上述したように、環境負荷シミュレーション装置10は、各機能をコンピュータに実行させることができる環境負荷シミュレーションプログラムを生成し、例えば汎用のパーソナルコンピュータ、サーバ等にプログラムをインストールすることにより、本発明における環境負荷シミュレーションを実現する。
【0032】
ここで、第1実施形態における環境負荷シミュレーション処理が実現可能なコンピュータのハードウェア構成例について図を用いて説明する。
【0033】
図2に示すように、環境負荷シミュレーション装置10を構成するコンピュータ本体には、入力装置21と、出力装置22と、ドライブ装置23と、補助記憶装置24と、メモリ装置25と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)26と、ネットワーク接続装置27とを有するよう構成されており、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
【0034】
入力装置21は、ユーザ等が操作するキーボード及びマウス等のポインティングデバイスを有しており、ユーザ等からのプログラムの実行等、各種操作信号を入力する。また、入力装置21は、ネットワーク接続装置27等に接続された外部装置から通信ネットワークを介して得られる予め温室効果ガス排出量算出のための関連情報等の各種データを入力することもできる。
【0035】
出力装置22は、本発明における処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイを有し、CPU26が有する制御プログラムによりプログラムの実行経過や結果等を表示することができる。また、出力装置22は、上述の処理結果等を紙等の印刷媒体に印刷して、ユーザ等に提示することができる。
【0036】
ここで、本発明においてコンピュータ本体にインストールされる環境負荷シミュレーションプログラムは、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやCD−ROM、DVD等の可搬型の記録媒体28等により提供される。プログラムを記録した記録媒体28は、ドライブ装置23にセット可能であり、記録媒体28に含まれる環境負荷シミュレーションプログラムが、記録媒体28からドライブ装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。
【0037】
補助記憶装置24は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本発明における環境負荷シミュレーションプログラムや、コンピュータに設けられた制御プログラム等を蓄積し必要に応じて入出力を行うことができる。
【0038】
メモリ装置25は、CPU26により補助記憶装置24から読み出された環境負荷シミュレーションプログラム等を格納する。なお、メモリ装置25は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等からなる。
【0039】
CPU26は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及びメモリ装置25に格納されている環境負荷シミュレーションプログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して各処理を実現することができる。なお、プログラムの実行中に必要な各種情報等は、補助記憶装置24から取得することができ、また実行結果等を格納することもできる。
【0040】
ネットワーク接続装置27は、通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されている他の端末等から取得したり、プログラムを実行したりすることで得られた実行結果、又は本発明における実行プログラム自体を他の端末等に提供することができる。
【0041】
また、ネットワーク接続装置27は、通信ネットワークに接続された外部装置により予め温室効果ガス排出量算出のための関連情報等の各種データを取得することもできる。
【0042】
上述したようなハードウェア構成により、本発明のシミュレーションを実行することができる。また、プログラムをインストールすることにより、汎用のパーソナルコンピュータ等で本発明のシミュレーションを容易に実現することができる。
【0043】
<第1実施形態の温室効果ガス排出量の算出範囲>
ここで、図3を用いて、第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置10によって算出される対象製品の温室効果ガス排出量の算出範囲について説明する。図3は、第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置によって算出される対象製品の温室効果ガス排出量の算出範囲を説明するための図である。
【0044】
図3に示すように、対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルを、例えばカーボンフットプリント制度の商品種別算定基準(PCR)等に則って各段階に分け、温室効果ガス排出量の算出範囲を設定する。
【0045】
例えば、対象製品を化粧品等とする場合、対象製品を構成する原材料(例えば対象製品の「中味原料」と対象製品の「容器・外装」に分けられる。)の「資源採掘・栽培」段階、各原材料の「製造」段階、原材料を用いて対象製品を製造する「商品製造」段階、製造した対象製品の「物流・販売」段階、対象製品の「使用」段階、対象製品の「廃棄・リサイクル」段階に分けて、温室効果ガス排出量の算出範囲を設定することができる。
【0046】
<第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置が用いるデータベース>
次に、図4を用いて、第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置が用いるデータベースについて説明する。図4は、第1実施形態の環境負荷シミュレーション装置が用いるデータベース群を示す図である。
【0047】
なお、データベース群は記録手段13に格納しても良く、ネットワークに接続された外部装置に分散して格納しても良い。
【0048】
図4に示すように、第1実施形態において用いられるデータベース群には、例えば中味原料データベース31と、外装データベース32と、製品データベース33と、排出係数データベース34と、取引先データベース35と、使用方法データベース36と、CFPデータベース37等により構成される。
【0049】
中味原料データベース31には、例えば対象製品を構成する原料の処方構成、各工場の原料の調達先及び調達量、素原料の組成(構造、分子式)及びカーボンニュートラルに基づく分子内の植物由来の炭素数、原料調達先での原料製造時の温室効果ガス(GHG:Green House Gus)の排出量、原料調達先から工場までの輸送に伴うGHG排出量、原料焼却時の原料由来のGHG排出量等の情報が格納されている。
【0050】
外装データベース32には、例えば対象製品のディスペンサー等の規格化部品の構成及び各パーツの重量等の情報が格納されている。
【0051】
製品データベース33には、例えば対象製品の原料の処方、対象製品の外装・容器の構成、対象製品の生産工場、対象製品の価格、容量、対象製品の中味比重等の情報が格納されている。
【0052】
排出係数データベース34には、例えば既に公表されているGHG排出係数(原単位)等の情報が格納されている。
【0053】
取引先データベース35には、例えば対象製品を取引する取引先所在地、対象製品を生産する生産工場から取引先までの輸送距離及び輸送手段等の情報が格納されている。
【0054】
使用方法データベース36には、例えば対象製品の一回当たりの使用量、対象製品の使用に伴うエネルギー、消耗品等の情報が格納されている。
【0055】
CFPデータベース37には、例えば対象製品の原材料調達、生産(製造)、物流、販売、使用、廃棄・リサイクル段階等のライフサイクル各段階におけるGHG排出量等の情報が格納されている。
【0056】
例えば、対象製品の調達段階では、対象製品の中味原料の製造時のGHG排出量、対象製品の容器・外装の製造時のGHG排出量、対象製品の原料や容器の生産工場への輸送に伴うGHG排出量等の情報がCFPデータベース37に格納されている。
【0057】
また、例えば、対象製品の生産段階では、対象製品生産時のGHG排出量(積算方式又は按分方式)等の情報が格納され、対象製品の物流段階では、例えば対象製品を工場から各販売店舗へ輸送時のGHG排出量等の情報がCFPデータベース37に格納されている。
【0058】
また、例えば、対象製品の使用段階では、対象製品の使用に伴うGHG排出量等の情報がCFPデータベース37に格納されている。
【0059】
また、例えば、対象製品の廃棄・リサイクル段階では、例えば対象製品の中味原料の生分解に伴うGHG排出量、対象製品の容器・外装の焼却に伴うGHG排出量、対象製品の回収や焼却、下水処理等の処理に伴うGHG排出量等の情報がCFPデータベース37に格納されている。
【0060】
<第1実施形態における画面例>
次に、第1実施形態における温室効果ガス排出量の算出、表示等を行うための画面生成手段16で生成される対象製品の各ライフサイクル段階における画面例について、図を用いて説明する。
【0061】
<中味原料データベースの情報を提示するための画面例>
次に、図5及び図6を用いて、上述した中味原料データベース31に格納された情報を提示するための画面例について説明する。図5は、原料構成のうち「水」の情報が入力される入力画面の一例を示す図である。また、図6は、原料構成のうち「ラウレス硫酸ナトリウム」の情報を入力される入力画面の一例を示す図である。
【0062】
図5及び図6に示す入力画面50、60に表示される内容は、中味原料データベース31から取得される。中味原料データベース31には、対象製品を構成する多種類の中味原料の情報が格納されており、入力画面50、60には、中味原料データベース31の「原料一覧」、「薬剤情報」、「効果データ」、「原料構成」、「注意事項」等の項目に対応する中味原料の情報が格納されている。
【0063】
また、第1実施形態では、入力画面50、60の「原料構成」に対応する「原料の組成」、「該当原料・取引先情報」、「原料を組成する素原料の(平均)分子量(高分子の場合は、繰り返し配列の平均分子量)」等が表記されている。
【0064】
「原料の組成」の欄には、原料を組成する素原料(構成成分)、原料に対する各素原料の構成割合等の情報が格納されている。また、「該当原料・取引先情報」の欄には、「取引先」、「生産工場」、「製造時CO排出量」、「各工場の調達状況」等の情報が格納されている。なお、「取引先」、「各工場の調達状況」等の情報は、別途ページを設けて、そこに格納しても良い。
【0065】
また、図5及び図6に示す「原料を組成する素原料の(平均)分子量(高分子の場合は、繰り返し配列の平均分子量)」の表記領域では、元素配列表51、61において、原料を組成する素原料の構成原子の数が入力できるようになっている。
【0066】
ここで、元素配列表51、61を用いて構成成分の構成原子の数が入力されると、入力された各原子の構成数に、原子量が掛け合わされることにより、(平均)分子量が算出される。
【0067】
また、算出された(平均)分子量に基づき、温室効果ガス排出量算出手段17は、排出係数データベース34に格納された情報を参照して、「素原料1kgを燃焼させた場合に発生するCO排出量=化石資源由来の炭素原子数×44.01(COの分子量)×1000/平均分子量」の式により、各構成成分を1kg燃焼(焼却)した場合のGHG排出量としてCO排出量を算出する。
【0068】
更に、温室効果ガス排出量算出手段17は、原料を組成する各構成成分の1kg焼却した場合のCO排出量に、それぞれの構成割合を掛け合わせ、該当原料を1kg焼却した場合のGHG排出量としてCO排出量を算出し、該当原料を製造、輸送、焼却した場合のGHG排出量とを加算してCO排出量が算出する。なお、該当原料を1kg焼却した場合のCO排出量と、原料を製造、輸送、焼却した場合のCO排出量の算出方法については後述する。
【0069】
例えば図5及び図6では対象製品を構成する原料「POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム」の情報が格納されている。また、図5では、原料「POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム」の構成成分としての「水」の情報が格納されており、図6では、「ラウレス硫酸ナトリウム」の情報が格納されている。
【0070】
図5に示す元素配列表51には、例えば「水」の構成原子の数として水素の元素記号「H」に「2」、酸素の元素記号「O」に「1」が入力されている。このようにユーザが「水」の構成原子を、元素配列表51を用いて入力すると、上述した算出手法により「(平均)分子量」が算出され、例えば図5に示す「18.02」等の平均分子量が表記される。
【0071】
また、構成成分「水」を1kg焼却した場合に排出されるGHG排出量が算出され、「水」の場合には、燃焼してもCOは発生しないため、図5では「0.0gCO/1kg」と表記されている。
【0072】
同様に、図6に示す元素配列表61には「ラウレス硫酸ナトリウム」の構成原子の数として水素元素記号「H」に「33」、分子内の炭素数を示す炭素の元素記号「C」に「16」、酸素の元素記号「O」に「6」、硫黄の元素記号「S」に「1」、ナトリウムの元素記号「Na」に「1」が入力されている。
【0073】
なお、ここで、上記分子内の元素記号「C」の炭素数「16」のうちパーム油等の植物性由来の炭素数は、カーボンニュートラルに基づきCO排出量に含めないものとする。そこで、例えば元素配列表61の矢印Aに示す分子内の植物由来の炭素の配列記号「C」に例えば炭素数「12」と入力する。上述したように、ユーザによって元素配列表61を用いて構成原子の数が入力されると、(平均)分子量が算出される。
【0074】
また、温室効果ガス排出量算出手段17は、上記分子内の炭素記号「C」の炭素数「16」から植物性由来の炭素数「12」を引いた残りの炭素数「4」の値を用いて、算出した(平均)分子量に基づき、排出係数データベース34に格納された情報を参照して、構成成分「ラウレス硫酸ナトリウム」を1kg燃焼した場合のCO排出量を算出する。
【0075】
これにより、図6の表記領域では、「ラウレス硫酸ナトリウム」が燃焼時に発生するCO排出量「467.6gCO/1kg」が表記される。
【0076】
また、図5及び図6では、温室効果ガス排出量算出手段17により原料であるPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムを1kg焼却したときのCO排出量の値「155.7gCO/1kg」と、原料であるPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムを1kg製造、焼却、輸送したときのCO排出量の値「1.5kgCO/1kg」が算出され、入力画面60に表記される。
【0077】
なお、温室効果ガス排出量算出手段17は、原料が1kg焼却したときのCO排出量を、入力画面50等に入力された原料を組成する構成成分の構成率と、元素配列表51等に入力された情報から算出した各構成成分が燃焼時に発生する1kg当たりのCO排出量の値とを用いる。
【0078】
例えば入力画面50、60に入力された原料「POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム」の原料組成は、水(70%)、ラウレス硫酸ナトリウム(20%)、ミリス硫酸ナトリウム(9%)、フェノキシエタノール(0.8%)、EDTA−2Na(0.2%)である。
【0079】
また、温室効果ガス排出量算出手段17によって算出された各構成成分が燃焼時に発生する1kg当たりのCO排出量の値は、水(0.0g)、ラウレス硫酸ナトリウム(467.6g)、ミリス硫酸ナトリウム(435.2g)、フェノキシエタノール(2.5kg)、EDTA−2Na(1.3kg)とする。
【0080】
このとき、温室効果ガス排出量算出手段17は、原料「POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム」が1kg焼却したときのCO排出量を「(水)0.0g×(構成率)0.700+(ラウレス硫酸ナトリウム)467.6g×(構成率)0.200+(ミリス硫酸ナトリウム)435.2g×(構成率)0.090+(フェノキシエタノール)2.5kg×(構成率)0.008+(EDTA−2Na)1.3kg×(構成率)0.002=155.7gCO/1kg」として算出する。
【0081】
また、温室効果ガス排出量算出手段17は、原料1kgを製造、焼却、輸送したときのCO排出量を、算出した原料1kgを焼却したときのCO排出量に、「製造時CO排出量」及び「輸送時CO排出量」を加算することで算出する。
【0082】
例えば、入力画面50、60に表記されているように、温室効果ガス排出量算出手段17によって算出された原料「POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム」1kgを焼却したときのCO排出量は、「155.7gCO/1kg」である。
【0083】
また、入力画面50、60の「該当原料・取引先情報」の「製造時CO排出量」に表記されているように、原料「POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム」1kgを製造したときのCO排出量は、○○工業(株)では「1200gCO/kg」、××化学(株)では「1300gCO/kg」である。ここで、D工場が○○工業(株)、××化学(株)から調達して原料を製造していると設定した場合、「(1200gCO/kg×4550000kg+1300×3000000)/7550000=1240gCO/kg」と算出する。
【0084】
また、原料「POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム」1kgを輸送したときのCO排出量は、「86.9g」である。なお、「1kgの原料を輸送したときのCO排出量」の算出方法については後述する。
【0085】
このとき、温室効果ガス排出量算出手段17は、原料「POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム」1kgを製造、焼却したときのCO排出量に、例えばA〜D工場までのそれぞれの輸送によるCO排出量を各工場の取引量で加重平均して、加えて「1240g(製造)+155.7g(焼却)+86.9g(輸送)=1.5kgCO/1kg」として算出する。
【0086】
なお、上述した「該当原料・取引先情報」は、取引先データベース35に格納された情報を表示しており、「製造時CO排出量」及び「輸送時CO排出量」は、対象製品の原材料調達先としての取引先を変更することにより、取引先での温室効果ガス排出量、取引先から生産工場までの輸送距離等を変更することが可能である。
【0087】
また、上述した図5及び図6における元素配列表は、その元素の内容が明確になるように色分け若しくは模様分けされて入力画面50、60に表示される。なお、従来のLCA手法で用いられる原料焼却(廃棄)段階のGHG排出量算出方法は、例えば化粧品原料等の場合には、分子(高分子の場合は繰り返し配列)を構成する原子の種類と個数を数えて分子量を求め、手計算により算出したCO排出量を手入力していたため、非常に煩雑で計算間違いが生じる危険性もあった。
【0088】
また、通常の分子式は、構成する原子の種類によって並び順が変わり、ある原子が必ずしも含まれていない場合があり、構造を表す場合は更に複雑となるため、入力した分子式から自動的にコンピュータに認識させ、分子量やCO排出量を算出することは非常に困難であった。
【0089】
一方、第1実施形態によれば、上述した元素配列表に構成原子の数を入力することで、分子量とGHG排出量としてのCO2排出量を簡単に算出することが可能となる。
【0090】
上述したように、第1実施形態では、画面生成手段16により図5及び図6における元素配列表等を表示し、ユーザに設定条件を入力させる。また、温室効果ガス排出量算出手段17は、入力された設定条件に基づいて温室効果ガス排出量としてのCO排出量を算出するための所定の基準値、関数、排出係数、パラメータ等の関連情報が格納された1又は複数のデータベースを参照する。
【0091】
また、温室効果ガス排出量算出手段17は、データベースから設定条件に対応した関連情報を取得し、取得した関連情報を用いて温室効果ガス排出量を算出する。更に、画面生成手段16を用いてユーザにその算出結果を分かりやすく提示することが可能となる。
【0092】
また、第1実施形態では、画面生成手段16により、対象製品の各ライフサイクルに含まれる予め設定された各種工程に対し、上述の図5及び図6等と同様の関連する画面を表示し、ユーザに設定条件を入力させることで、温室効果ガス排出量算出手段17により設定条件に基づいた温室効果ガス排出量を算出させ、シミュレーション手段18により算出結果を用いて対象製品の環境負荷をシミュレーションすることを可能とする。
【0093】
次に、図7〜図18を用いて、上述した画像生成手段16により、CFPデータベース37の内容を表示するために生成される各画面例について説明する。
【0094】
<CFPデータベース:製品一覧を表示するための画面例>
図7は、CFPデータベースの製品一覧を表示するための画面例を示す図である。図7に示すように、CFPデータベース37に格納された製品の製品一覧が表示された画面70には、製品毎に構成されたCPF情報が表示されるCPF情報領域71を有している。CPF情報領域71には、例えば、「製品コード」、「担当工場」、「発売年月」、「価格/容量」、「処方系」、「容器形態」、「材質」、「外観」等の情報が格納されている。
【0095】
また、各CPF情報領域71−1、71−2には、その製品毎に算出されたライフサイクルを通じて排出されるCO総排出量が表示され、その表示された下部分に使用段階のCO排出量を除いたCO総排出量が参考情報として表示されている。
【0096】
すなわち、上述した温室効果ガス排出量算出手段17により算出されたCO総排出量が、各CPF情報領域71−1、71−2に設けられた各CO総排出量表示領域72−1、72−2に表示される。これにより、製品毎のCO排出量を容易に把握することができる。なお、排出量表示領域72−1、72−2は、予め設定されたマークとともに表示することで、ユーザがどこに排出量が表示されているのかを容易に把握することができる。
【0097】
また、参考情報として、使用段階のCO排出量を除いたCO総排出量を表示するのは、例えばシャンプーやコンディショナー等のように、ライフサイクル全体に占める使用段階のCO排出量の割合が著しく大きく、そのため、その他の調達、生産、物流といった各段階における寄与を正確に把握することが困難であり、使用段階のCO排出量を除いて比較・検討を進めることが適当と判断される場合があるためである。
【0098】
なお、上述した情報が格納されたCPF情報領域71には、図7の矢印Bに示すように、対象製品毎に予め設定された各ライフサイクル段階へと移動可能なボタンが表示されている。また、CPF情報領域71には、図7の矢印Cに示すように、各製品を表すための画像等を表示しても良い。
【0099】
<CFPデータベース:製品情報を表示するための画面例>
次に、図8を用いて、CFPデータベースに格納された製品情報を表示するための画面例について説明する。図8は、CFPデータベースの製品情報を表示するための画面例を示す図である。
【0100】
図8に示すように、製品情報が表示された画面80には、予め設定された各製品におけるライフサイクル各段階でのCO排出量が表示されている。具体的には、製品情報のCPF情報領域71に、上述した使用を除くライフサイクル全体のCO排出量が画面80のCO総排出量表示領域72に表示されるとともに、温室効果ガス排出量算出手段17によって算出された調達段階、生産段階、物流段階、販売段階、使用段階、廃棄段階のそれぞれにおいて発生するCO排出量がCO個別排出量表示領域81−1〜81−6にそれぞれ表示されている。
【0101】
例えば、図8に示す「○○シャンプーAA ジャンボサイズ」の例では、ライフサイクル全体のCO排出量が「13.9kg」と表示され、CO個別排出量表示領域82−1〜82−6には、調達段階「550.0g」、生産段階「57.7g」、物流段階「55.5g」、販売段階「148.5g」、使用段階「12.3kg」、廃棄段階「795.7g」と表示されている。
【0102】
なお、各段階には上述したGHG排出量としてCO排出量を算出するための算出項目が表示されているため、ユーザは、どのような項目に基づいてCO排出量が算出されているかが分かる。
【0103】
<CFPデータベース:原材料調達段階の画面の一例>
次に、図9及び図10を用いて、CFPデータベースに格納された製品の原材料調達段階の情報が表示された画面について説明する。なお、製品の原材料調達段階の画面には、原料調達画面、主容器調達画面、ディスペンサー調達画面、用具調達画面、その他、副資材等調達画面を有する。
【0104】
図9は、CFPデータベースの製品の原材料調達段階のうち原料調達情報を表示するための画面例を示す図である。また、図10は、CFPデータベースの製品の原材料調達段階のうち主容器情報を表示するための画面例を示す図である。
【0105】
図9には、製品の原材料調達段階の画面90のうち、例えば原料調達画面90−1が表示されている。原料調達画面90−1では、表示項目として、例えば「原料コード」、「原料名称」、「配合量(率)」、「原料調達CO排出量」、「原料輸送CO排出量」等が表示されている。
ここで、温室効果ガス排出量算出手段17は、「原料調達CO排出量」を、「原料1kg当たりを製造するときに排出されるCO排出量×配合率×容量」により算出する。なお、各原料メーカーから調査・収集した「原料1kg当たりを製造するときに排出されるCO排出量」は、中味原料データベース31に格納され、同データベースの「各工場の調達状況」に格納されている取引量のデータによる加重平均を以て算出される。
【0106】
また、温室効果ガス排出量算出手段17は、「原料輸送CO排出量」を、「原料1kg当たりを輸送するときに排出されるCO排出量×配合率×容量」により算出する。なお、「原料1kg当たりを輸送するときに排出されるCO排出量」は、中味原料データベース31又は取引先データベース35に格納される。
【0107】
取引先データベース35には、原料メーカーから例えば自社の生産工場までの輸送距離と、基準となる輸送手段(積載率等)のデータが格納されている。また、中味原料データベース31には、該当する原料の取引状況に応じた輸送手段のデータが格納されている。通常、中味原料データベース31に格納された輸送手段が優先して採用され、取引先データベース35に格納された輸送距離データを用いて、「原料1kg当たりを輸送するときに排出されるCO排出量」を算出する。例えば特異な輸送手段が採用されていない場合や詳細な輸送手段が不明な場合等は、取引先データベース35に格納されている基準輸送手段と輸送距離データより、「原料1kg当たりを輸送するときに排出されるCO排出量」を算出する。
【0108】
例えば図9では、「原料コード:A−00005」、「原料名称:ジプロピレングリコール」、「配合量:3%」は、「原料調達CO排出量:3.5gCO」、「原料輸送CO排出量:1.20gCO」と表示されている。
【0109】
なお、ここで、上述した対象製品に配合される原料の割合(配合量(率))は処方情報データとして製品データベース33に格納された情報である。また、「原料輸送CO排出量」に用いられる輸送距離を算出するための取引先情報は取引先データベース35に格納された情報である。
【0110】
上述したように、図9に示すCO排出量は、原料調達、原料輸送のそれぞれにおけるGHG排出量としてのCO排出量を表示することができるため、ユーザは、原料調達のどの時点でどの程度のCOが排出されているか具体的に理解することができる。
【0111】
また、図10には、製品の原材料調達画面90のうちにおいて、例えば主容器画面90−2が表示されている。主容器画面90−2では、表示項目として、例えば「構成材料(仕入先)」、「部品・部位」、「材質・グレード・原料メーカー等」、「加工方法(加工メーカー)」、「CO排出量(一次、二次、輸送)」が表示されている。
【0112】
具体的には、「構成材料:ボトル」、「部品・部位:本体(重量:50.00g)」、「材質:PET」、「加工方法:延伸ブロー成形」、「CO排出量(一次:189.4g、輸送:4.3g)」等が表示されている。
【0113】
なお、CO排出量(一次)とは、例えばペレット製造までのCO排出量を示し、CO排出量(二次)とは、成形加工、組み立て加工等に伴うCO排出量を示している。また、主容器の重量等の情報は例えば外装データベース32に格納された情報である。
【0114】
上述したように、図10に示すCO排出量は、一次、二次、輸送のそれぞれにおけるGHG排出量としてのCO排出量を表示することができるため、ユーザは、どの時点でどの程度のCOが排出されているか具体的に理解することができる。
【0115】
<CFPデータベース:生産段階の画面の一例>
次に、図11及び図12を用いて、CFPデータベースに格納された製品の生産段階の情報が表示された画面について説明する。図11は、CFPデータベースの製品の生産段階の積算方式により算出されたGHG排出量を表示するための画面例を示す図である。図12は、CFPデータベースの製品の生産段階の按分方式により算出されたGHG排出量を表示するための画面例を示す図である。
【0116】
図11に示すように、製品の生産段階の画面100には、例えば積算方式により所定期間内におけるGHG排出量としてCO排出量を算出した画面100−1が表示されている。ここで、積算方式とは、実際に生産段階で使用された水道水、工業用水、電力、都市ガス等の使用量を調査してGHG排出量に換算したものである。
【0117】
具体的には、図11に示す生産段階の画面100−1では、例えば所定のデータ収集期間内(例えば2007/4〜2008/3)における「出荷数量(個)」、出荷数量(製品合計)に対する「CO排出量合計(kgCOe)」が表示されている。また、画面100−1には、表示項目として、例えば「中味製造」、「充填仕上」、「設備洗浄」、「製品倉庫」、「空調」、「照明」、「蒸気」、「圧縮空気」、「排水処理」、「その他」に対する「水道水」、「工業用水」、「電力」、「都市ガス」等の使用量が表示され、「合計」、「CO排出量」が表示されている。
【0118】
例えば、図11に示す「○○シャンプーAA ジャンボサイズ」の例では、「出荷数量:15006900(個)」、出荷数量に対する「CO排出量合計:*****(kgCOe)」である。また、「中味製造」に対して使用した「電力:*****kWh」、生産段階において使用した電力の「合計:*****kWh」、「CO排出量:*****kg」等と表示されている。
【0119】
なお、生産段階で使用された水道水、工業用水、電力、都市ガス等の使用量等の関連情報は、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報として、CFPデータベース37に格納される。
【0120】
温室効果ガス排出量算出手段17は、CFPデータベース37に格納された水道水、工業用水、電力、都市ガス等の使用量を関連情報として参照し、排出係数データベース34に格納された情報を用いて、それぞれに対応するCO排出量を算出する。また、温室効果ガス排出量算出手段17は、算出したCO排出量を加算して、例えば図11に示すように生産段階のCO排出量「57.7g」と表示する。
【0121】
また、図12に示すように、製品の生産段階の画面100において、例えば按分方式によりGHG排出量としてCO排出量を算出した画面100−2が表示されている。ここで、按分方式とは、工場全体の電力・ガス・水使用量からGHG排出量を算出し、製品の重量や価格等で割りふるものである。
【0122】
具体的には、図12に示す生産段階の画面100−2では、例えば所定のデータ収集期間内(例えば2008/4〜2009/3)における「工場CO排出総量(t/year)」、「工場出荷総額(万円)」、「製品CO排出総量(kg)」、「製品出荷単価(円)」、「製品出荷数量(個)」、「製品出荷総額(万円)」等が表示されている。
【0123】
上述した、図12に示す「工場CO排出総量(t/year)」、「工場出荷総額(万円)」、「製品出荷数量(個)」、「製品出荷総額(万円)」等は、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報として、CFPデータベース37に格納される。
【0124】
ここで、温室効果ガス排出量算出手段17は、CFPデータベース37に格納された「工場CO排出総量(t/year)」を商品(製品)の売上高(出荷価格ベース)で按分して、商品(製品)全体のCO排出量を求め、これを「製品出荷数量(個)」で除して商品(製品)1個当たりのCO排出量を算出し、例えば図12に示すように生産段階のCO排出量「72.7g」と表示する。
【0125】
なお、上述した生産段階の画面100−2では、通常、積算方式を採用し、積算データが揃わない場合に、按分データを採用する。
【0126】
<CFPデータベース:物流段階の画面の一例>
次に、図13を用いて、CFPデータベースに格納された製品の物流段階の情報が表示された画面について説明する。図13は、CFPデータベースの製品の物流段階の物流情報を表示するための画面例を示す図である。
【0127】
図13に示すように、製品の物流段階の画面110では所定期間(例えばデータ収集期間2007/9〜2008/8)内の物流情報が表示されている。具体的には「北海道」から「九州・沖縄」までの各販売エリアにおける「売上数量」、「輸送手段」、「距離」、「製品合計のGHG排出量」等が表示されている。ここで、「距離」とは、各生産工場から各販売エリアまでの輸送距離を示している。
【0128】
なお、GHG排出量としてのCO排出量は、生産工場から各販売エリアまでの輸送距離を販売数量で加重平均し、これに輸送条件による排出係数を乗じて算出したものである。
【0129】
上述したように、図13に示す製品の物流の画面110では、地域毎の売上数量、輸送手段、距離等により対応する排出量を算出することができる。また、輸送手段における上記の内容変更することで、ユーザは、排出量を調整することができる。
【0130】
<CFPデータベース:販売段階の画面の一例>
次に、図14を用いて、CFPデータベースに格納された製品の販売段階の情報が表示された画面について説明する。図14は、CFPデータベースの製品の販売段階の販売情報を表示するための画面例を示す図である。
【0131】
図14に示すように、製品の販売段階の画面120では販売・店舗情報が表示される。なお、製品の販売段階のCO排出量は、製品の販売価格に基づいて算出されるが、上述した商品種別算定基準にしたがって、商品(製品)重量や売り場面積の占有率等、他の要因により算出しても良い。
【0132】
<CFPデータベース:使用段階の画面の一例>
次に、図15を用いて、CFPデータベースに格納された製品の使用段階の情報が表示された画面について説明する。製品の使用段階の画面は、使用・美容法情報画面及びシミュレーション画面を有する。図15は、CFPデータベースの製品の使用段階の使用・美容法情報を表示するための画面例を示す図である。
【0133】
図15に示すように、製品の使用段階の画面130では、使用法・美容情報画面130−1が表示される。ここでは、予め製品の使用方法について「シナリオ」が設定され、設定されたシナリオに基づいてGHG排出量としてのCO排出量が算出される。
【0134】
シナリオとは、例えば、製品名「○○シャンプーAA ジャンボサイズ」の場合には、その使用法として「使用後、40℃のお湯で洗い流す」というシナリオを想定し、その使用により生じる水道水やガス等の使用量とそれに伴うCO排出量が算出され、製品の使用段階の使用法・美容情報画面130−1に表示される。
【0135】
なお、上述した対象製品の「シナリオ」や対象製品の一回当たりの使用量、対象製品の使用に伴うエネルギー、消耗品等の情報は、使用方法データベース36に格納された情報である。
【0136】
また、使用法・美容情報画面130−1には、上述した「シナリオ」の他、「使用量(ml/1回使用)」、「都市」、「手段」、「平均気温」、「使用水温」等が表示されている。
【0137】
また、上述した「シナリオ」にしたがって製品を使用するときの「水道水」、「電力」、「都市ガス」、「LPG」、「LNG」等の「使用量」、「CO排出量」、「合計」が表示されている。また、コットン等の「消耗品」を使用した場合の情報が入力できるようになっている。
【0138】
なお、温室効果ガス排出量算出手段17は、使用方法データベース36に格納された情報を参照して、例えば平均気温「15.0℃」から使用水温「40.0℃」に「25℃温度上昇」させ、お湯「15l」を使用した場合に、「25℃の温度上昇×15l(水使用量)」から必要なエネルギーを算出し、算出したエネルギーに、給湯の途中で損失するロスを加えて必要な都市ガス使用量を算出し、算出した都市ガス使用量をCO排出量に換算し、換算したCO排出量に製品の使用回数を乗じることによって算出する。
【0139】
ここで、例えば、使用段階の画面130のシミュレーション画面により、「手段」に都市ガス以外の電気、LPG、LNG等を入力して、お湯を沸かす手段を変更し、「使用水温」に使用する水温を入力して、例えば40℃から43℃に変更し、「都市」に使用都市を入力して、例えば東京等とすることで平均気温の設定を変更することができる。
【0140】
上述したように、例えば湯を沸かす手段、湯温、使用量、平均気温等の設定を変更し、対象製品の使用段階におけるGHG排出量としてのCO排出量を変更する。これにより、ユーザの使用状況に合わせたシナリオ設定によるCO排出量をシミュレーションすることが可能となる。なお、何も入力しない場合は、一般的な使用方法によりCO排出量を算出する。
【0141】
<CFPデータベース:廃棄段階の画面の一例>
次に、図16〜図18を用いて、CFPデータベースに格納された製品の廃棄段階の情報が表示された画面について説明する。製品の廃棄段階の画面は、例えば中味画面、主容器画面、ディスペンサー画面、用具画面、副資材等の画面、廃棄処理画面を有する。
【0142】
図16は、CFPデータベースの製品の廃棄段階の中味情報を表示するための画面例を示す図である。図17は、CFPデータベースの製品の廃棄段階の主容器情報を表示するための画面例を示す図である。図18は、CFPデータベースの製品の廃棄段階の廃棄処理情報を表示するための画面例を示す図である。
【0143】
図16に示すように、製品の廃棄段階の中味情報が表示されている画面140−1では、表示項目として、たとえば中味情報を示す「原料コード」、「原料名称」、「配合量」、「CO排出量」等が表示されている。ここで、「CO排出量」は、上述した温室効果ガス排出量算出手段17によって例えば「原料1kg当たりを焼却したときのCO排出量×配合率×容量」から算出される。
【0144】
例えば図16では、「原料コード:A−00005」、「原料名称:ジプロピレングリコール」、「配合量:3%」は、「CO排出量:35.47g」と表示されている。なお、「Dry Weight」として乾燥重量「25.02%、137.61g−DW」を算出することもできる。
【0145】
また、図17に示すように、製品の廃棄段階の主容器情報が表示されている画面140−2では、表示項目として、たとえば「構成材料(仕入先)」、「部品・部位」、「材質・グレード・原料メーカー等」、「加工方法(加工メーカー)」、「備考/CO排出量(焼却:g)」が表示されている。具体的には、「構成材料:ボトル」、「部品・部位:本体」、「材質:PET」、「加工方法:延伸ブロー成形」、「CO排出量(焼却:114.5g)」等と表示されている。
【0146】
また、図18に示すように、製品の廃棄段階の廃棄処理情報が表示されている画面140−3では、「ガラス」、「プラスチック」、「金属」、「紙」、「段ボール」、「その他」、「下水処理」等の項目に対して「重量」、「輸送」、「焼却」、「粉砕」、「埋立」、「リサイクル」、「CO排出量」等の項目が表示されている。ここで、「下水処理」とは、使用時の水使用量を示す。
【0147】
例えば図18は、製品「○○シャンプーAA ジャンボサイズ」を廃棄処理する場合の例を示している。なお、廃棄処理シナリオは、「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成18年度実績)について」(環境省)に記載の廃棄処理の実情に即して設定される。しかしながら、例えば代表性を担保しうる一次データを取得し、これに則ったシナリオ設定を行うこともできる。
【0148】
上述した「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成18年度実績)について」(環境省)に即したシナリオとは、例えば「92%が焼却処理され、33%が直接埋め立て処理され、焼却灰埋め立ても含めれば14%が埋め立て処分され、5%がリサイクル処理される」等である。
【0149】
温室効果ガス排出量算出手段17は、製品「○○シャンプーAA ジャンボサイズ」のCO排出量を、上述した「ガラス」から「その他」の項目に入力された条件に基づいて、排出係数データベース34に格納された情報を参照して算出し、例えば「CO排出量」を「3.20g−CO2e」として表示する。
【0150】
また、同様に温室効果ガス排出量算出手段17は、使用段階のシナリオ設定に則り、商品(製品)の使用で発生した下水総量を算出し(使用段階で1回15Lの水を使うため、商品を使い切るまでに約138000L=1.38m水を使用する)、「下水処理」の項目に自動入力された条件「1.38m」に基づいて、排出係数データベース34に格納された「産業連関連表3EID(1995)の原単位データ」を参照してCO排出量を算出し、例えば「CO排出量」を「539.00g−CO2e」と表示する。なお、上述した廃棄段階の「CO排出量」として「542.2g」と表示されている。
【0151】
このように、第1実施形態の製品の廃棄段階では、外装、容器素材のガラス、プラスチック、金属等の分別による廃棄シナリオの設定が可能となる。
【0152】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態として、上述した環境負荷シミュレーション装置において、温室効果ガス排出量算出手段17により二次データ(代替データ)を用いて算定されるGHG排出量算定方法について説明する。
【0153】
従来、ISO14040等に定義されているLCAの手順では、(1)目的及び調査範囲の設定、(2)イベントリ分析、(3)環境影響評価、(4)解釈をそれぞれ相互に繰り返して評価を行う。したがって、評価に重要とされる工程(プロセス)が含まれていれば、影響度の大きくない特定のプロセスが含まれていない場合であっても、当該プロセスをシステム境界に含めない旨を明記すれば、評価として成立し得る。
【0154】
また、従来、LCAの評価を行うソフトウェア等では、ある商品やサービスについてのライフサイクルを通じた環境評価を詳細に検討又は研究することを目的としていたため、まず初めに、評価対象の商品又はサービスのライフサイクルフローを設定し、算定可能な範囲で評価に含めるプロセスを選定していた。
【0155】
これに対して、上述したカーボンフットプリント制度の算定においては、算定に含めるべきライフサイクルフローは、商品種別算定基準により規定されている。また、地球温暖化の抑制という観点からみると、企業等においては、特定の商品のみではなく、できるだけ広い範囲の商品について調査を行い、その情報を次世代商品の設計に生かし、エコデザインを推進していくための礎石とすることが求められている。
【0156】
したがって、カーボンフットプリント制度において算定・評価を実施するプログラムとしては、調査・研究を目的とする以外にも、より簡便に多数の商品を対象とする「管理型データベース」としての機能を有していることが望ましい。また、ライフサイクルフローは、既に定義されているため、定義(規定)されたプロセスのうちデータの収集が困難、あるいは不可能な場合には、例えば論文値や業界平均値等の公式に認められた二次データを個別に使用していく必要がある。しかしながら、どこから二次データを取得し、使用していくかについては、算定者の経験に寄るところが大きいという問題があった。
【0157】
そこで、第2実施形態では、上述した環境負荷シミュレーション装置に管理型データベース(環境負荷管理装置)としての機能を含める。また、第2実施形態では、基本情報としての一次データが揃わない部分については、初期情報としての二次データを代替して計算できるように、全てのライフサイクルフローにおいて予め設定された関連情報の各項目に二次データをデフォルト値として入力しておく。また、一次データを収集した場合には、二次データと差し替えて計算を行うようにする。
【0158】
すなわち、従来、予め規定されたプロセスのうち、算定者が収集した一次データを入力し、一次データが足りない部分については二次データを入力していたのに対して、第2実施形態では、全てのプロセスに二次データを入力しておき、算定者が収集できた一次データについては、二次データから一次データに差し替え、温室効果ガス排出量算出手段17により一次データに基づいてGHG排出量を算出させる。
【0159】
これにより、算定のたびに、一次データが収集できていないプロセスについて二次データを探す必要がなくなるため、算定者の経験が不要になると同時に業務負担が著しく減少する。また、算定プロセスの抜けがなくなる。また、一次データが揃わない場合でも、二次データを用いて一定の精度を持ってCO排出量を算定することが可能となる。
【0160】
<第2実施形態で用いられるデータベースの一例>
次に、図19を用いて、第2実施形態で用いられるデータベースの一例について説明する。図19は、第2実施形態の環境負荷シミュレーション装置が用いるデータベース群を示す図である。
【0161】
なお、第2実施形態における環境負荷シミュレーション装置の機能構成(図1)及びハードウェア構成(図2)については、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、データベース群は記録手段13に格納しても良く、ネットワークに接続された外部装置に分散して格納しても良い。
【0162】
図19に示すように、第2実施形態において用いられるデータベース群には、上述した第1実施形態において用いられる図4のデータベース群と比較すると、新たに原料調達データベース38を有している。
【0163】
原料調達データベース38には、各原料の工場毎の取引状況のデータを蓄積している。また、取引先データベース35には、各取引先の各工場の所在地と基本的な輸送方法をデータとして蓄積している。
【0164】
このようなデータベース群において、原料調達データベース38と排出係数データベース34との間では、例えば原料調達において使用される輸送資材の調達やその廃棄処理におけるGHG排出量に関するデータの送受が行われる。また、取引先データベース35と製品データベース33との間では、例えば容器や包装材調達の調達先に関わるデータの送受が行われる。
【0165】
なお、原料調達の実情に合うように、例えば同じ種類の原料(同一コードで管理している同じ原料)を数社から競争購買しているような場合、その取引状況や取引先ごとに発生するGHG排出量を、一旦、原料調達データベース38に格納しておき、そのデータを取引量で加重平均しまとめたものを中味原料データベース31に引き渡すよう処理を実行する。一方、容器・包装材等の材料のように、構成材料ごとに取引先が一社に決まっているような場合、製品データベース33で取引先を管理させる。
【0166】
したがって、原料の場合には、原料調達データベース38と中味原料データベース31との間でデータの送受が行われ、容器・包装材の場合には、製品データベース33と取引先データベースとの間でデータの送受が行われるよう処理を実行させる。
【0167】
<二次データを用いて算出されるGHG排出量の例>
次に、図20を用いて、原材料調達段階の原料輸送プロセスにおいて、上述した温室効果ガス排出量算出手段17により二次データを用いて算出されるGHG排出量の一例について説明する。図20は、原料調達データベースの入力画面の一例を示す図である。図20に示された入力画面は、CFPデータベース37の内容を表示するために、上述した画像生成手段16により生成される画面である。
【0168】
また、以下の説明では、第2実施形態において追加された原料調達データベース38の入力画面とその入力された内容に基づき、温室効果ガス排出量算出手段17により算出されるGHG排出量の処理内容について、図を用いて説明する。なお、上述した第1実施形態においても、データベース群の各項目において予め二次データを入力しておき、一次データが収集できた場合に、温室効果ガス排出量算出手段17により二次データから一次データに置き換えることでGHG排出量を算出させることができる。
【0169】
図20に示す画面150に設けられた入力領域151−1〜151−3は、原料の生産(資源採掘/栽培〜調達先向上での生産)で排出するGHG排出量を示すために入力される領域であり、取引先から一次データ(生データ)が収集できれば、その数値を入力する領域である。なお、2社以上の取引先から競争購買している場合には、一次データを収集できた取引先が購入量の50%以上を占めている場合、そのデータを残りの取引先に適用させても良い(その場合には、例えば画面150に青字等で表示させて注意を促す)。
【0170】
また、取引先からのデータ収集が不可能な場合は、対象原料の分類により、自動的に二次データが適用され、また、入力領域151−1の分類が空欄の場合には、自動的に「CO排出量」として「5.000kgCOe/原料kg」が二次データとして適用される(その場合には、画面に赤字等で表示させて注意を促す)。
【0171】
また、図20に示す画面150に設けられた入力領域152−1、152−2は、取引先から自社工場までの、原料の輸送段階で使用される輸送に関わるGHG排出量を示すために入力される領域である。ここで、詳細が不明な場合、例えば輸送資材については、原料1kgあたり71.3kgの18リットル缶と33.5gの段ボールが使用されたと想定して輸送資材に係るGHG排出量が算出される。また、保管容器である18リットル缶の廃棄処理によって排出されるGHG排出量については、生産段階で計上し、輸送に関わるGHG排出量については、例えば、原料1kg+輸送資材重量(デフォルトでは104.8g)を輸送した場合の値が算出される。
【0172】
なお、図20に示す画面150における入力領域153は、チェックの有無を示すものであり、例えば入力領域153の輸送資材1には、自動的に「容器」にチェックが入り、保管容器として資材の廃棄に関わるGHG排出量は生産段階に計上される。
【0173】
また、調達段階で自社工場のタンクに充填され、保管容器が発生しない場合には、チェックを外し、輸送資材1に入力された資材の廃棄に関わるGHG排出量を、調達段階に計上する。また、何回も繰り返し使用される資材(タンクローリーやプラスチック製コンテナ等)は、リユース欄にチェックを入れると、資材調達、資材廃棄に関わるGHG排出量は計上されず、コンテナ等の輸送に関わるGHG排出量は計上される。
【0174】
なお、上述した図20に示す原材料調達段階の原料輸送プロセスは、トンキロ法を用いた場合の例であり、輸送量(重量)、輸送距離、輸送手段によって計算したものである。
【0175】
具体的には、「調達先から生産場所までの輸送距離」を「500km」、「輸送手段」を「10tトラック、積載率50%」と仮定して、輸送に関わるGHG排出量の原単位には「0.178kgCOe/t・km」を用いている。
【0176】
また、原料を輸送する輸送資材に、原料1kgあたり約71.3gの18リットル缶(一斗缶)と約33.5gのダンボールを使用したとの仮定は、例えば原料を18リットル缶に約16kg充填し、保護のために18リットル缶の周囲をダンボールに入れて輸送した場合に相当するものである。
【0177】
上述した二次データを用いることにより、温室効果ガス排出量算出手段17は、原料1kgを調達先から生産場所まで輸送する場合のGHG排出量として、以下のプロセスのGHG排出量を算出する。
【0178】
すなわち、輸送に関わるGHG排出量としては、原料1kg+輸送資材重量(デフォルト値で約0.1048kg)=1.1048kgを10tトラック、積載率50%で輸送した場合に排出される値が算出される。
【0179】
また、輸送資材に関わるGHG排出量としては、原料1kgあたり約71.3gの18リットル缶と約33.5gのダンボールが使用されたと想定した値が算出される。
【0180】
また、輸送資材の回収や廃棄処理等に関わるGHG排出量としては、上述した約33.5gの段ボールの回収や廃棄処理に関わる値が算出される。
【0181】
なお、上述したように、約71.3gの18リットル缶の回収や廃棄処理等に関わるGHG排出量は、生産段階で排出されるGHG排出量の値として計上している。
【0182】
上述のシナリオは、例えば化粧品(シャンプー)の原料調達を想定しているが、商品種別算定基準では算定対象となる商品のカテゴリー毎に定められるため、該当する商品種別算定基準で定められる輸送シナリオに沿った資材の使用シナリオ、輸送シナリオを充当して二次データを調整(チューニング)したり、事業者(取引先)がより実態に即した平均データ(一次データ)を保有している場合には、適宜置き換えたりすることも可能である。
【0183】
上述したように、第2実施形態では、例えば調達先からの輸送距離、輸送に使用する輸送手段(例えばトラック)の種類、使用している輸送資材(段ボールや18リットル缶)等の各項目について二次データを適用しており、詳細が分かった各項目について二次データから一次データへの差し替えを実施する。
【0184】
これにより、温室効果ガス排出量算出手段17は、より実態に近いGHG排出量を算出することが可能となる。このように、例えば輸送資材の使用実態が不明な場合であっても、GHG排出量が実態よりも小さくなるという点がなく、極めて有用なデータとして用いることが可能となる。
【0185】
また、従来におけるLCAの評価を行うソフトウェアでは、輸送資材については、資材調達プロセスと、段ボール等の梱包資材の廃棄プロセスとを原材料調達段階に計上し、例えば保管容器等の廃棄プロセスを生産段階に振り分ける作業を手入力で行わなければならず、計算ミスが発生する可能性が非常に大きいという欠点があった。これに対して、本実施形態では、輸送資材の調達及び廃棄段階の計算フローが自動化されることにより、人為的なミスが起こる可能性をなくすことが可能となる。
【0186】
次に、複数の生産サイト(A工場、B工場等)を保有している場合に、二次データを用いて輸送で排出されるGHG排出量を算出する方法について説明する。
【0187】
<生産段階のサイト間輸送プロセス>
例えば中身の生産はA工場、生産した中身はB工場に輸送して充填する等の複数の生産サイトを保有している場合、生産サイト間の輸送で排出されるGHG排出量は生産段階で計上する必要がある。
【0188】
そこで、このようなサイト間輸送がある場合、A工場とB工場間の距離を輸送距離として算出し、生産サイトが3つ以上ある場合には、輸送元と輸送先の工場を指定することで輸送距離を算出する。
【0189】
また、輸送手段は、商品種別算定基準で定める通り、「10tトラック、積載率50%」として、輸送に関わるGHG排出量に原単位0.178kgCOe/t・kmを用いる。
【0190】
また、輸送資材には、中間製品1kgあたり約0.15kgの厚板(鉄鋼)を使用したものとして算出する。これは、中間製品を200リットルのドラム缶(JIS Z1600−1993準拠)に180kg充填して輸送した場合に相当する。なお、ドラム缶は、1回使用後に廃棄する場合の二次データを用いてGHG排出量を算出する。
【0191】
すなわち、二次データを用いて原料1kgをサイト間輸送する場合のGHG排出量として、温室効果ガス排出量算出手段17は、以下のプロセスのGHG排出量を算出する。
【0192】
輸送に関わるGHG排出量としては、原料1kg+輸送資材1.5kg=1.15kgを10tトラック・積載率50%で輸送した場合に排出されるGHG排出量が算出される。
【0193】
また、輸送資材に関わるGHG排出量としては、上述した約0.15の厚板(鉄鋼)の調達に関わるGHG排出量が算出される。
【0194】
また、輸送資材の回収や廃棄処理等に関わるGHG排出量としては、上述した約0.15kgの厚板(鉄鋼)の回収や廃棄処理等に関わるGHG排出量が算出される。
【0195】
上述したように、原材料調達段階の原材料メーカー等から自社工場への輸送、生産段階のサイト間輸送、流通段階の輸送等について二次データを用いることで、温室効果ガス排出量算出手段17は、資材の調達(生産)から廃棄リサイクル段階までのGHG排出量を全体のGHG排出量に加えることが可能となる。
【0196】
なお、上述した原材料調達段階と同様に、上述したシナリオは、例えば化粧品(シャンプー)の原料調達を想定しており、商品種別算定基準は算定対象となる商品のカテゴリー毎に定められるため、該当する商品種別算定基準で定められる輸送シナリオに沿った資材の使用シナリオ、輸送シナリオを充当して二次データを調整(チューニング)したり、事業者がより実態に即した平均データ(一次データ)を保有している場合には、適宜置き換えたりすることも可能である。
【0197】
上述したように、本実施形態によれば、多種類の原料から構成される製品を一元管理して、製品のライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量に基づいて、製品の環境負荷をシミュレーションすることを可能とする。
【0198】
また、GHG排出量を算出するための各項目について、使用実態が不明なため、一次データが収集できない場合でも、予め二次データを用いて算出をすることで、実態に近いGHG排出量を算出することが可能となる。また、詳細が分かった項目について二次データから一次データへデータの差し替えを行うことにより、GHG排出量が実態よりも大幅に小さくなることがなくなり、有用なデータとして用いることが可能となる。
【0199】
また、多品種の製品管理が可能となり、従来のLCA評価による対象製品の特定のフロー図を描くことなく、商品種別算定基準に沿った温室効果ガス排出量を効率良く算出するため、温室効果ガス排出量を削減したエコ商品の設計・評価をより簡単に行うことが可能となる。なお、原材料調達段階において一次データ収集率を算定できるようにしても良い。
【0200】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本
発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0201】
10 環境負荷シミュレーション装置
11 入力手段
12 出力手段
13 記録手段
14 通信手段
15 制御手段
16 画面生成手段
17 温室効果ガス排出量算出手段
18 シミュレーション手段
21 入力装置
22 出力装置
23 ドライブ装置
24 補助記憶装置
25 メモリ装置
26 CPU
27 ネットワーク接続装置
28 記録媒体
31 中味原料データベース
32 外装データベース
33 製品データベース
34 排出係数データベース
35 取引先データベース
36 使用方法データベース
37 CFPデータベース
38 原料調達データベース
50,60 入力画面
51,61 元素配列表
70,90〜150 画面
71 CFP情報領域
72 CO総排出量表示領域
81 CO個別排出量表示領域
151〜153 入力領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量に基づいて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションする環境負荷シミュレーション装置であって、
前記ライフサイクルに含まれる予め設定された工程に対し、設定条件をユーザに入力させるための画面を生成する画面生成手段と、
前記画面生成手段により生成された画面に入力された設定条件に基づいて、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベースを参照し、前記データベースから取得される前記設定条件に対応した関連情報から温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出手段と、
前記温室効果ガス排出量算出手段により得られる算出結果を用いて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションするシミュレーション手段とを有することを特徴とする環境負荷シミュレーション装置。
【請求項2】
前記画面生成手段は、
前記対象製品の原料構成を設定する画面、前記対象製品の処方条件を設定する画面、前記対象製品の外装構成を設定する画面、前記対象製品の物流条件を設定する画面、前記対象製品の使用条件を設定する画面を含むことを特徴とする請求項1に記載の環境負荷シミュレーション装置。
【請求項3】
前記対象製品の原料構成を設定する画面には、元素配列表を有し、各元素に対して前記対象製品の原料を構成する原子の数を入力することを特徴とする請求項2に記載の環境負荷シミュレーション装置。
【請求項4】
前記画面生成手段は、
前記設定条件に基づいて前記温室効果ガス排出量算出手段により得られる算出結果を用いて、前記対象製品毎に温室効果ガス排出量のランキング表示をすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の環境負荷シミュレーション装置。
【請求項5】
前記温室効果ガス排出量算出手段は、
前記関連情報として、前記対象製品の使用条件に対応して予め設定されている排出係数を用いて温室効果ガス排出量を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の環境負荷シミュレーション装置。
【請求項6】
前記データベースに格納された関連情報には、前記温室効果ガス排出量算出手段の算出に用いられる基本情報としての一次データを含み、
前記一次データが前記データベースに格納される前に、初期情報として予め設定された前記関連情報の各項目に対応する二次データが格納されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の環境負荷シミュレーション装置。
【請求項7】
前記温室効果ガス排出量算出手段は、前記一次データが前記データベースに格納されていない場合、前記二次データを用いて温室効果ガス排出量を算出し、前記一次データが前記データベースに格納された場合には、前記二次データから前記一次データに置き換え、前記一次データを用いて温室効果ガス排出量を算出することを特徴とする請求項6に記載の環境負荷シミュレーション装置。
【請求項8】
対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量に基づいて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションする環境負荷シミュレーション装置により実行される環境負荷シミュレーション方法であって、
前記ライフサイクルに含まれる予め設定された工程に対し、設定条件をユーザに入力させるための画面を生成する画面生成手順と、
前記画面生成手順により生成された画面に入力された設定条件に基づいて、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベースを参照し、前記データベースから取得される前記設定条件に対応した関連情報から温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出手順と、
前記温室効果ガス排出量算出手順により得られる算出結果を用いて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションするシミュレーション手順とを有することを特徴とする環境負荷シミュレーション方法。
【請求項9】
対象製品の製造から廃棄までのライフサイクルで発生する温室効果ガス排出量に基づいて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションする環境負荷シミュレーションプログラムであって、
コンピュータを
前記ライフサイクルに含まれる予め設定された工程に対し、設定条件をユーザに入力させるための画面を生成する画面生成手段、
前記画面生成手段により生成された画面に入力された設定条件に基づいて、予め温室効果ガス排出量を算出するための関連情報が格納されたデータベースを参照し、前記データベースから取得される前記設定条件に対応した関連情報から温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出手段、
前記温室効果ガス排出量算出手段により得られる算出結果を用いて、前記対象製品の環境負荷をシミュレーションするシミュレーション手段として機能させるための環境負荷シミュレーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−204217(P2011−204217A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267817(P2010−267817)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年2月15日 インターネットアドレス「http://www.jstage.jst.go.jp/article/i1caj/2009/0/187/_pdf/−char/ja/」に発表
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)