説明

環境負荷変更通知装置

【課題】原単位が変更・削除されても関係者へ変更箇所の詳細情報を連絡・公開することなく、評価者自身が再計算を必要とするシナリオを容易に抽出できるシナリオ再計算通知手段の提供。
【解決手段】原単位の名称、単位、その他属性情報等を格納する原単位名称記憶部1と、原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連と少なくともその関連数値情報を格納する原単位値記憶部2と、前記原単位値がどの年度とどの組織、公表機関、国等の原単位セットの値かを識別する原単位関連記憶部3と、変更された原単位値リストから関連するシナリオを抽出してシナリオステータス管理記憶部5の計算実行フラグが計算済のものに対してのみ再計算フラグに変更するためのシナリオ再計算通知手段8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品のライフサイクルにわたる環境負荷計算に必要となる原単位が変更・削除された場合に、関連するシナリオに通知する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2008−102877号公報(特許文献1)がある。この公報には。製品、部品、材料に関する環境負荷を算出する場合、同じような品目から原単位データを特定するためキーワードと原単位を関連付け情報から検索して特定方法が記載されている。
【0003】
また、原単位間のつながりを表すデータを管理することで、削除の際、警告を発する技術も知られている。
【0004】
このように、製品、部品、材料、リサイクル、廃棄などライフサイクルアセスメント(LCA)を実施するために必要となるパラメータの集まりであるシナリオと原単位を関連付けるための方法について記載はされているが、原単位が変更・削除された場合に製品の環境負荷値が変更されている可能性があることを通知する手段はない。
【0005】
また、原単位は、ある素材・エネルギーなど単位当たり製造するために要した資源、エネルギー量と排出量を表すデータを指すが、原単位を使用して原単位を作成することがある。例えば、鉄の切削工程では、鉄を1分間切削するために電力を10kwh消費する。この時に使用した原単位は電力原単位(環境負荷量/kwh)であり、作成した原単位は鉄切削原単位(環境負荷量/分)である。このような原単位の間につながりがある場合、電力原単位が変更された場合、切削原単位にも影響が及ぶ。更に、電力原単位又は切削原単位と関連づいているシナリオは複数存在するため、原単位が変更された場合の影響範囲は広く、従来の1:nの関連付けのみでは処理性能に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−102877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のLCA計算装置では、原単位の削除、更新が発生した場合には、原単位変更者から削除・変更した旨を全利用者に情報公開し、利用者が自分の評価シナリオを全て見直した上で、再計算が必要かどうかを個人の責任で判断しなければならなかった。また削除されている場合には、過去の計算条件を示す手段として、計算時の原単位データを個人のPCで管理しなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも原単位の名称、単位、その他属性情報等を格納する原単位名称記憶部と、原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連と少なくともその関連数値情報を格納する原単位値記憶部と、前記原単位値がどの年度とどの組織、公表機関、国等の原単位セットの値かを識別する原単位関連記憶部と、シナリオを原単位の関連を少なくともシナリオID、部品、材料、部品の製造工程の順番を示す加工順番とLCA計算を計上する素材製造、製品製造、使用、リサイクル、廃棄などのステージ情報と原単位から構成される部品単位のLCA計算条件を格納する部品シナリオ条件記憶部と、シナリオの計算処理情報を少なくとも計算実行日、計算実行原単位、処理実行フラグから構成されるシナリオステータス管理記憶部と、前記原単位値記憶部の原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連とその数値情報から階層情報に沿って数値を積上げ計算し変更された原単位をリスト化する原単位積上計算処理手段と、前記した積上計算処理結果を格納する原単位値格納手段と、前記した変更された原単位値リストから関連するシナリオを抽出して前記シナリオステータス管理記憶部の計算実行フラグが計算済のものに対してのみ再計算フラグに変更するためのシナリオ再計算通知手段を備える。
また、本発明は、原単位を削除した場合にも、前記した原単位名称記憶部と原単位値記憶部と原単位関連記憶部と部品シナリオ条件記憶部とシナリオステータス管理記憶部と原単位積上計算処理手段と原単位値格納手段とシナリオ再計算通知手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原単位が変更・削除された場合に関係者へ変更箇所の詳細情報を連絡・公開することなく、評価者自身が再計算を必要とするシナリオを容易に抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による環境負荷変更通知装置の代表図。
【図2】原単位名称記憶部の格納項目の例。
【図3】原単位値記憶部の格納項目の例。
【図4】原単位関連記憶部の格納項目の例。
【図5】原単位積上計算処理手段と原単位値格納手段の処理の流れを説明する図。
【図6】原単位積上計算処理手段と原単位値格納手段の処理の流れを説明する図(図5の続き)。
【図7A】原単位コード部品加工について、親子関係をツリー表示したイメージ図。
【図7B】原単位値積上計算処理用の配列テーブル例。
【図7C】原単位コードと値の対応表。
【図8】部品シナリオ条件記憶部の格納項目の例。
【図9】シナリオステータス管理記憶部の格納項目の例。
【図10】シナリオ再計算通知手段の処理の流れを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、環境負荷通知装置の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例では、原単位の変更を行う場合に、関連するシナリオのステータスを変更し、再計算を通知する装置について説明する。
図1は、本実施例の環境負荷通知装置の構成図の例である。以下に示す種々の記憶部は、ハードディスクなどの記憶装置によって構成される。また、以下に示す種々の手段は、CPUなどの演算装置によって実現される。
【0013】
図1の環境負荷通知装置は、少なくとも原単位の名称、単位、その他属性情報等を格納する原単位名称記憶部1と、原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連と少なくともその関連数値情報を格納する原単位値記憶部2と、前記原単位値がどの年度とどの組織、公表機関、国等の原単位セットの値かを識別する原単位関連記憶部3と、シナリオを原単位の関連を少なくともシナリオID、部品、材料、部品の製造工程の順番を示す加工順番とLCA計算を計上する素材製造、製品製造、使用、リサイクル、廃棄などのステージ情報と原単位から構成される部品単位のLCA計算条件を格納する部品シナリオ条件記憶部4と、シナリオの計算処理情報を少なくとも計算実行日、計算実行原単位、処理実行フラグから構成されるシナリオステータス管理記憶部5と、前記原単位値記憶部の原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連とその数値情報から階層情報に沿って数値を積上げ計算し変更された原単位をリスト化する原単位積上計算処理手段6と、前記した積上計算処理結果を格納する原単位値格納手段と7、前記した変更された原単位値リストから関連するシナリオを抽出して前記シナリオステータス管理記憶部の計算実行フラグが計算済のものに対してのみ再計算フラグに変更するためのシナリオ再計算通知手段8を備える。
第一の実施例の構成要素について順に説明する。尚、説明のため、製品の構成や、原単位、プロセス、環境負荷の値などを例示するが、これらは全て架空のものとする。
【0014】
原単位名称記憶部1が格納する原単位の種類は、電力を1kwh製造したときの原単位や、鉄を1kg製造したときの原単位、鉄プレス加工をA工場にて1分間行った場合の原単位、ある特定部品工程において塗装を1回行う場合の原単位、アルミを1kgリサイクル処理する場合の原単位など、ライフサイクルを通じて、素材、エネルギー、製造プロセス、ライフサイクル工程様々である。原単位名称記憶部1では、このような多岐にわたる原単位のうち、名称と分母の単位と原単位作成時の投入量を格納する。具体的なテーブルを図2に示す。図2は原単位をユニークに管理するための原単位コード11と原単位名称12、原単位の種別を表す属性情報の原単位区分13、原単位を作成したときの単位あたりの投入量を現す原単位作成ユニット量14と原単位作成単位15を備える。そのほか、図2のテーブルには、原単位に関する情報を記録するコメントや作成日、更新日などを加えても良い。電力を1kwh製造した場合の記録方法は、行17のように原単位名称12に電力、原単位区分13にエネルギー、原単位作成ユニット量14に1、原単位作成単位15にkWhと記録する。作成単位が1部品あたりの場合で、環境負荷量がkgに比例する場合などは、行16のように原単位作成ユニット量14に部品重量を記載しても良い。システム内において、原単位名称はユニークにしておくことで、年度や組織、公表機関、国等の原単位セット別に再計算を簡易に行える。
【0015】
原単位値記憶部2は原単位と原単位関連又は原単位と環境負荷項目の関連を記録する。図3に鉄プレス原単位の例を示す。図3の親原単位コード21、子原単位コード/インベントリーコード22、原単位関連コード23など○○コードとあるものは、システムが認識しやすい英数字で表現してもよく、その場合のコードの意味や関連する属性は別のテーブルを用意すると良いが、ここでは、説明を明瞭にするために省略する。図3は親原単位コード21と子原単位コード/インベントリーコード22と原単位関連コード23と積上げ区分24で一意に決まるテーブルである。鉄プレス原単位は図2の行19と関連する。A工場で10分鉄プレスの加工処理を行う時に要するエネルギーは図3の行29で現される。動力エネルギーとして電力を20.08(KWh)とLPGを5.303(kg)を使用し、燃料燃焼に伴って15.9(kg−CO2)を排出する。値(単位あたり)26は前記値(ユニット)27を1/10分した値である。ここで使用されるエネルギーはさらにそれと同じ原単位コードが親原単位コードに存在する。例えば行29の子原単位コード/インベントリーコード22“電力“は、行31に親原単位コード21に22と同じ”電力“が存在する。行22の”電力“は電力を製造した時に排出されるCO2量を意味し、1kWhあたり0.324kg−CO2排出する。同様に行29のLPGは行32に同じ親原単位コード21を持ち、LPGを1kg製造した時のCO2排出量が格納されている。また行30に鉄プレスのCO2排出量が前記したCO2排出量15.9kgと異なる値で格納されているが、これは、鉄プレスに要したエネルギーの燃焼とエネルギー製造に伴うCO2排出量を合計した値である。
【0016】
前記のように、原単位は階層情報を持ち、階層は複数階層に及ぶ。原単位値記憶部2ではこれを積上前と積上後で識別して格納する事で、LCA計算時の処理不可を減らす事ができる。
【0017】
また、原単位値記憶部2では、図3の行33のように、原単位関連コード23違いによる原単位値を格納できる。
【0018】
原単位関連記憶部3は前記原単位関連コード23について説明する記録場所である。図4に例を示す。○○コードとあるものは、システムが認識しやすい英数字で表現してもよく、その場合のコードの意味や関連する属性は別のテーブルを用意すると良いが、ここでは、説明を明瞭にするために省略する。図4の原単位関連コード31は図3の原単位関連コードと23と等しくてはならない。行36の例では、2010年用に用意した共通原単位を意味し、これを編集できるユーザーはシステム管理者権限のユーザーのみだが、使用ユーザーは、システム内に登録された全てのユーザーである。
【0019】
一方、行37は2010年用に用意した研究太郎のみが使用できる研究開発用の原単位を意味し、全てのユーザーが利用できる原単位がどうかは、共通フラグ34で識別される。行37に関連付く原単位値が前記原単位関連記憶部3に存在しないときは、同じ年度の共通フラグ34が“共通”の原単位関連コード行36に関連付く原単位値を使用してもよい。同じ年度内に“共通“は一つである必要がある。
【0020】
なお、図示はしないが原単位を管理するための画面レイアウトを説明する。原単位は絞込み検索しやすいよう、図2原単位名称12と原単位区分13と図4原単位年度32と原単位セット33で指定できると良い。検索結果は、絞込み条件に従って複数行表示でき、選択した原単位を前記原単位名称記憶部1と原単位値記憶部2と原単位関連記憶部3から抽出して、対象レコードに対して一括して表計算ソフトにダウンロードする事ができると良い。
【0021】
原単位積上計算処理手段6は前記原単位名称記憶部1と原単位値記憶部2と原単位関連記憶部3を使用して、積上前から積上後の計算処理を行う手段である。例えば図3の行30は鉄プレス原単位の積上後のCO2排出量であるが、これは行29の積上前と行31と行32を使用して計算され、行30の算出式は2.008(Kwh/分)*0.324(kg−CO2/Kwh)+0.5303*1.9(kg−CO2/kg)+1.59(kg−CO2/分)=3.24(kg/分)である。
【0022】
以下に図5のフローに沿って原単位積上計算処理手段6及び原単位値格納手段7を説明する。
【0023】
処理601は、原単位を新規登録又は更新登録するための受付画面を表示する。次に処理602にて登録データを1行づつ入力チェックを行い、入力チェックエラーが0件のデータに対して登録情報の受付処理を行う。
【0024】
処理603は、登録原単位が新規登録か更新登録かを識別するための処理で、登録一覧に予め処理区分を用意し、新規と更新を判断できるようにする。新規登録の場合には原単位名称はシステム内で一意である必要があるため、処理604の原単位名称の重複チェックを行い、重複がなければ処理605に進んで原単位名称記憶部1にレコードを追加し、原単位名称情報を登録する。重複があった場合には、エラーを返し登録処理を中断する。更新登録の場合には、処理606に進み原単位名称記憶部1から更新対象と一致する原単位コードのレコードを抽出し、処理607で原単位情報の更新日付を現在のシステム日付に更新する。
【0025】
新規作成及び更新対象の原単位が関連するシナリオを抽出するために、対象の原単位コードを登録リスト(i)に記録する。
【0026】
次に処理ループの初期化処理として、処理609、610に進む。対象となる原単位コードのカウンタiを0にクリアする。また、CO2やNOx、SOxなど前記環境負荷項目をインベントリー呼ぶが、このインベントリーコードのカウンタjを0にクリアする。
【0027】
処理611と処理612は、各々原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連定義する原単位値記憶部2より、親原単位コードは変数aに格納し、子原単位/インベントリーコードは変数bに格納する。
【0028】
処理613は、積上計算処理のための前処理である。原単位値記憶部2には原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連を親子の関係で定義しているため、レベル擬似列を用いて親子関係から階層レベルを付与し、レベル順に親子データを生成する。
【0029】
図7Aは、原単位コード部品加工について、インベントリーコードCO2のみを対象に親子関係をツリー表示したイメージ図である。ある部品重量1kgあたりを加工するための、プロセスとして、材料Aをプレスした中間部品Aと複数部品を5回溶接して生成された中間部品Bを組立し、組立後の部品に、塗装1回あたりに10gのペンキを使用するプロセスを3回処理して製造する。この時に部品重量1kgあたりのプレス処理の結果CO2を10g発生したものとする。そのほか、溶接、ペンキ処理においても同様である。処理613では、インベントリーフラグ1かつ子原単位/インベントリーコード=インベントリーコードすなわちCO2を開始行として、前記a=bを結合条件に、順に親子関係を展開し、階層レベルを付加することで、図7Bのデータ一覧を得る。レベル73は階層レベルを指し、値(単位あたり)75は原単位値記憶部2から取得した値である。積上後の値(単位あたり)の説明は後述の処理について説明する。
【0030】
処理614は、更新対象の原単位が関連するシナリオを抽出するために、対象の原単位コードを抽出、記録する処理である。処理608で生成した登録リスト(i)の原単位コードを処理613で生成したデータ一覧の親原単位コードが一致する行に対して、データ一覧のうち、レベルがMAXの場合には、既に登録リスト(i)に原単位コードが記録されているため、追加登録は不要だが、レベルがMAXでない場合には、階層レベル以上の全ての原単位コードについて値が更新されるため、変更された原単位リストとして登録リスト(ii)へ記録する。
【0031】
処理617は積上計算を行う演算部分である。まず処理615は処理613で生成したデータ一覧をレベル1から数値の大きいレベルに向かって処理する。現在の行次行のレベルが現在行のレベル+1の場合、現在行の値*次行の値を次行の値に設定する。図7Bの76が計算結果の値の例である。2行目は1行目の値(単位あたり)10に2行目の値(単位あたり)1を積算した結果10が格納されている。同様、3行目は2行目の値(単位あたり)10に3行目の値(単位あたり)1を積算した結果10が格納されている。4行目はレベルが1のため、新たに積算処理を開始する。処理616は、前記処理615の計算結果を原単位コードと共に配列77に格納する。このとき、図7Cの78は配列に既に同じ原単位コードが存在している場合、現在の行の値+配列の該当する原単位コードの値を設定する。処理617は処理613で生成したデータ一覧からデータがなくなる迄繰り返し実行する。
【0032】
次に、処理618で原単位の積上げ結果を対象のインベントリーコードついて原単位値記憶部2へ格納する処理へ進む。処理616の配列一覧には、インベントリーコードに対する積上計算処理後の原単位コードと原単位値が格納されているので、これを原単位値記憶部へ親原単位コードに配列の原単位コードを、子原単位/インベントリーコードにカウンタjのインベントリーコードを、値(単位あたり)に配列の値(単位あたり)を格納する。その際、積上区分は1にセットする。
【0033】
以上の説明では、原単位コードaに関連する原単位値の積上をカウンタjのインベントリーコードについて処理したので、次にのインベントリーコードを得るためjのカウンタを+1して612より処理を繰り返す。jのカウンタが予め計算されていたMAX値である場合には、当該原単位コードaにおけるインベントリーコードが存在しないため、次の原単位コードを取得するため、処理621へ進む。親原単位コードのカウンタiが予め計算されていたMAX値でない場合には、次の原単位コードについて積上計算処理を実行するため、カウンタを+1して611より処理を繰り返す。MAX値である場合には、登録リスト(i)の原単位コードについて全て積上げ計算処理が実行されたため、処理を終了する。
【0034】
なお、前記原単位積上計算処理6及び前記原単位値格納手段7に関する説明は、インベントリーコードが途中のプロセス上に存在しても良い。その場合も、前記同様の処理にて積上計算が可能である。
【0035】
次に、前記登録リスト(i)、登録リスト(ii)から、関連するシナリオを抽出して再計算を促す通知手段について説明する。
【0036】
部品シナリオ条件記憶部4は、LCA計算のための計算条件が格納された場所である。図8に例を示す。部品シナリオ条件記憶部4は少なくとも、評価対象の情報を管理するシナリオID41とLCA評価に使用する部品の構成情報を示す親品番42と子品番43と材料から部品を製造するまでの切削、プレスなどの材料加工プロセスの順番を示す加工順番44とLCA計算上どのステージに計算値をカウントするかを示す評価ステージコード45と計算に使用する原単位コード46とLCA計算方法を示す計算ロジックコード47を有する。そのほか、歩留率48や計算に使用するパラメータ49,50を必要に応じて格納する。なお、○○コードとあるものは、システムが認識しやすい英数字で表現してもよく、その場合のコードの意味や関連する属性は別のテーブルを用意すると良いが、ここでは、説明を明瞭にするために省略する。
【0037】
例えば行51は、システムが認識するTOPノード、すなわち製品に関するLCA計算条件を格納する行である。新型PC評価で新型PCは電力を年間200kwh消費し、5年間連続使用するものとする。このとき、LCA計算値をカウントする評価ステージは使用ステージで、電力原単位*パラメータ1(200kwh)*パラメータ2(5年)で計算する。行56の例の場合、キーボードユニックの構成部品である基板について、10tトラックで輸送距離100kmの距離を積載率90%で運搬したときに、LCA計算値をカウントするステージは、部品輸送ステージで、10tトラック原単位*パラメータ1(100km)/パラメータ2(90%)で計算することを示すデータである。
【0038】
LCA計算は、前記部品シナリオ条件記憶部4で指定された値によって計算される。
【0039】
シナリオステータス管理記憶部5は、シナリオの基本情報や計算状態が格納された場所である。図9に例を示す。シナリオステータス管理記憶部は少なくとも、シナリオをユニークに管理するためのシナリオID51とシナリオ名称52とLCA計算が未計算か計算済か再計算かの状態を格納する計算実行フラグ54と計算済のLCA結果を作成者以外に参照しているかを管理する公開フラグ55と計算に使用した又は計算に使用する原単位の年とと原単位セットを管理する原単位関連コード56を有する。そのほか、必要に応じて計算実行日や分解時間や環境適合設計評価ランクなどの予備属性を格納しても良い。なお、○○コードとあるものは、システムが認識しやすい英数字で表現してもよく、その場合のコードの意味や関連する属性は別のテーブルを用意すると良いが、ここでは、説明を明瞭にするために省略する。
【0040】
シナリオ再計算通知手段8は、前記積上計算処理手段6及び前記原単位格納手段7で既に評価済のシナリオのうち原単位が変更されていて、再計算を実施する必要の可能性を通知する手段である。図10のフロー及び図11の画面例に沿って説明する。なお、
処理1001は、図11の画面例のようにログインユーザーが現在LCA評価を実施している又は管理しているシナリオ一覧を表示するための表示画面である。処理1002は画面表示の初期読込みに図6のフローで作成した登録リスト(i)及び登録リスト(ii)を取得する処理で変更されている原単位の一覧を得る事ができる。処理1003は画面例の評価フォルダ内に表示するシナリオ一のシナリオID一覧を取得するための処理である。
【0041】
処理1004は、処理1003の取得IDのうち処理1002の原単位コードが部品シナリオ条件記憶部4で使用されているシナリオIDを抽出する。これにより、原単位が変更されたために、LCA計算結果が最新の原単位を使用していないシナリオがわかる。次に、そのシナリオに対し、再計算を通知するために、計算フラグが計算済のシナリオをの計算状態を再計算へ更新する。処理1006はシナリオの計算条件が変更された事を評価者が判断できるように、画面例の評価フォルダの該当するシナリオを赤表示する事、再計算の通知を行う。処理1007は、例えば赤表示されたシナリオを選択した場合に、シナリオ基本状況を読み込んだ後、処理1002で得た原単位リストから、処理1004で該当した原単位コードを抽出して、変更又は存在しない原単位リストを生成する処理である。
【0042】
以上のように、第一の実施例の構成をとる事で、原単位値が変更された場合に関連する原単位が取得でき、シナリオ評価者が評価済のLCA結果についてデータを確認する事なく、再計算が必要かを判断できる。
【符号の説明】
【0043】
1: 原単位名称記憶部
2: 原単位値記憶部
3: 原単位関連記憶部
4: 部品シナリオ条件記憶部
5: シナリオステータス管理記憶部
6: 原単位積上計算処理手段
7: 原単位値格納手段
8: シナリオ再計算通知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境負荷の変更を通知する環境負荷変更通知装置であって、
原単位の名称、単位、その他属性情報等を格納する原単位名称記憶部と、
原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連と少なくともその関連数値情報を格納する原単位値記憶部と、
前記原単位値がどの年度とどの組織、公表機関、国等の原単位セットの値かを識別する原単位関連記憶部と、
シナリオを原単位の関連を少なくともシナリオID、部品、材料、部品の製造工程の順番を示す加工順番とLCA計算を計上する素材製造、製品製造、使用、リサイクル、廃棄などのステージ情報と原単位から構成される部品単位のLCA計算条件を格納する部品シナリオ条件記憶部と、
シナリオの計算処理情報を少なくとも計算実行日、計算実行原単位、処理実行フラグから構成されるシナリオステータス管理記憶部と、
前記原単位値記憶部の原単位と原単位の関連又は原単位と環境負荷項目の関連とその数値情報から階層情報に沿って数値を積上げ計算し変更された原単位をリスト化する原単位積上計算処理手段と、
前記した積上計算処理結果を格納する原単位値格納手段と、前記した変更された原単位値リストから関連するシナリオを抽出して前記シナリオステータス管理記憶部の計算実行フラグが計算済のものに対してのみ再計算フラグに変更するためのシナリオ再計算通知手段と、
を備えることを特徴とする環境負荷変更通知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環境負荷変更通知装置において、
前記原単位積上計算処理手段から変更された原単位一覧を生成する手段を更に備えることを特徴とする環境負荷変更通知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の環境負荷変更通知装置において、
生成された原単位一覧を元に計算済のシナリオを特定し、再計算を通知する手段を更に備えることを特徴とする環境負荷変更通知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−73977(P2012−73977A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220229(P2010−220229)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)