説明

環境負荷評価支援システム、環境負荷評価支援方法及び環境負荷評価支援プログラム

【課題】自動車の走行における二酸化炭素の排出量の現状把握及び削減に対する評価を支援するための環境負荷評価支援システム、環境負荷評価支援方法及び環境負荷評価支援プログラムを提供する。
【解決手段】環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、収集したサンプルデータをショートトリップに分解し、速度パターンの評価、ショートトリップ分析を行なう。ここでは、走行状態グループ毎に出現頻度が等しい典型的な代表速度パターンを特定し、代表走行パターンを生成する。次に、クライアント端末10は、入力された運行情報に基づいて、対応する代表速度パターンを特定し、走行速度の時系列変化、トルクの時系列変化を推定し、二酸化炭素排出量を推定する。更に、デジタルタコグラフデータを取得したクライアント端末10は、急発進や波状走行を特定し、環境負荷を軽減した代表速度パターンに置換して、環境負荷を対比する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の走行における二酸化炭素の排出量の現状把握及び削減に対する評価を支援するための環境負荷評価支援システム、環境負荷評価支援方法及び環境負荷評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、環境に対する二酸化炭素排出の影響が注目されている。例えば、施設や設備の環境に及ぼす影響をシミュレーションすることにより、環境共存型地域の構築をサポートするための環境影響シミュレーション装置が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。この文献に記載された環境影響シミュレーション装置においては、施設や設備を含むシステムに関連する複数のパラメータ値を入力する。そして、入力されたパラメータ値に基づいて、システムに係わるコストを演算する。更に、入力されたパラメータ値に基づいて、所定期間においてシステムから環境に放出される二酸化炭素の放出量を演算し、算出されたコスト及び放出量を記憶する。
【0003】
また、自動車分野においても、二酸化炭素排出量を評価する試みが行なわれている。例えば、環境省においては、大気環境における自動車対策についてガソリン及びディーゼル重量車両車速変換プログラムを公表している(例えば、非特許文献1を参照。)。このプログラムを利用することにより、速度や加速度からなる走行特性や、積載重量からなる運行特性、更に車両特性から、空気抵抗、加速抵抗、転がり抵抗、勾配抵抗を考慮してトルクや回転数を算出することができる。
【0004】
更に、車速変換プログラムを用いて算出したトルクや回転数を用いて、公知のエンジンマップ解析により、二酸化炭素排出量を算出する技術が検討されている(例えば、非特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−556号公報(第1頁)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】環境省、「ガソリン及びディーゼル重量車用車速変換プログラム」、[online]、[平成20年6月20日検索]、インターネット、<URL:http://www.env.go.jp/air/car/program/index.html >
【非特許文献2】独立行政法人 交通安全環境研究所、「自動車分野のCO2排出量評価プログラムの開発」、[online]、[平成20年6月20日検索]、インターネット、<URL:http://www.ntsel.go.jp/ronbun/happyoukai/forum2007files/3_forum2007_.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動車から排出される二酸化炭素の影響を評価する場合、多くの事業用自動車を保有する自動車運送事業者を考慮する必要がある。しかし、自動車運送事業者は、事業規模、事業形態や管理形態も多様である。このため、各社の運送事業において、運送用自動車から排出される二酸化炭素量を的確に把握することは困難であった。
【0008】
また、二酸化炭素排出量を正確に計算するためには、車両や運行状態について詳細な情報が必要である。しかしながら、詳細情報を手作業により入力すると、作業負荷が大きくなる。このため、できるだけ簡易な入力において、二酸化炭素排出量を算出できることが望ましい。
【0009】
更に、運転者や事業者に対して、自分の運転による走行における環境への影響についての情報を提供することにより、環境に対する負荷を小さくするための運転方法を提案することも可能である。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自動車の走行における二酸化炭素の排出量の現状把握及び削減に対する評価を支援するための環境負荷評価支援システム、環境負荷評価支援方法及び環境負荷評価支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、運行中の走行速度についての走行履歴を記録する運行記録データ記憶手段と、走行状態グループに対応して、代表分析パターン変数値毎に代表速度パターンを記録する速度パターンデータ記憶手段と、走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムであって、前記制御手段が、前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開し、前記ショートトリップ毎に、各ショートトリップの大きさを表わす分析パターン変数値を算出し、前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴について、前記分析パターン変数値の累積頻度分布を算出し、前記累積頻度分布において累積頻度を表わした軸を一定幅で等間隔に分割し、各間隔の統計値からなる代表分析パターン変数値に対応する各ショートトリップを出現頻度が同じ代表速度パターンとして特定し、各ショートトリップの走行状態グループに対応させて前記速度パターンデータ記憶手段に記録し、この代表速度パターンを用いて二酸化炭素排出量を算出することを要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記制御手段が、トリップの大きさが指定された評価対象を取得した場合には、走行状態グループに対応させて、前記評価対象のトリップの大きさに達するまで、代表速度パターンの代表分析パターン変数値を順次、結合し、前記代表速度パターンに対応する二酸化炭素排出量を用いて評価を行なうことを要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記制御手段が、各ショートトリップにおける周波数解析を行ない、振幅の周波数分布を算出し、走行状態グループに対応させて前記振幅の周波数分布の統計値を算出し、前記振幅の周波数分布の統計値を用いて、ショートトリップを再構成し、前記再構成したショートトリップを用いて、代表速度パターンを生成することを要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記制御手段が、運行中の走行速度についての走行履歴が記録された評価対象を取得した場合には、走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出し、前記走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開し、各ショートトリップについて、前記速度パターンデータ記憶手段において、走行状態グループに対応させて、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンを特定し、この代表速度パターンに置き換えた場合の二酸化炭素排出量を比較結果として出力することを要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記制御手段が、各ショートトリップにおける発進時の加速度を算出し、前記加速度が基準値以上のショートトリップを、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンへの置き換えを実行することを要旨とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記制御手段が、各ショートトリップにおける単位距離あたりの加速エネルギ当量を算出し、前記加速エネルギ当量が基準値以上のショートトリップを、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンへの置き換えを実行することを要旨とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記制御手段が、ショートトリップ間の時間間隔を算出し、前記時間間隔が基準時間以上のショートトリップ間を、アイドリングを停止した場合の速度パターンへの置き換えを実行することを要旨とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記分析パターン変数値として、ショートトリップの所要時間を用いることを要旨とする。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記分析パターン変数値として、ショートトリップにおける走行距離を用いることを要旨とする。
【0020】
請求項10に記載の発明は、運行中の走行速度についての走行履歴を記録する運行記録データ記憶手段と、走行状態グループに対応して、代表分析パターン変数値毎に代表速度パターンを記録する速度パターンデータ記憶手段と、走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムを用いて、環境負荷の評価を支援する方法であって、前記制御手段が、前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開し、前記ショートトリップ毎に、各ショートトリップの大きさを表わす分析パターン変数値を算出し、前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴について、前記分析パターン変数値の累積頻度分布を算出し、前記累積頻度分布において累積頻度を表わした軸を一定幅で等間隔に分割し、各間隔の統計値からなる代表分析パターン変数値に対応する各ショートトリップを出現頻度が同じ代表速度パターンとして特定し、各ショートトリップの走行状態グループに対応させて前記速度パターンデータ記憶手段に記録し、この代表速度パターンを用いて二酸化炭素排出量を算出することを要旨とする。
【0021】
請求項11に記載の発明は、運行中の走行速度についての走行履歴を記録する運行記録データ記憶手段と、走行状態グループに対応して、代表分析パターン変数値毎に代表速度パターンを記録する速度パターンデータ記憶手段と、走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムを用いて、環境負荷の評価を支援するプログラムであって、前記制御手段を、前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開し、前記ショートトリップ毎に、各ショートトリップの大きさを表わす分析パターン変数値を算出し、前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴について、前記分析パターン変数値の累積頻度分布を算出し、前記累積頻度分布において累積頻度を表わした軸を一定幅で等間隔に分割し、各間隔の統計値からなる代表分析パターン変数値に対応する各ショートトリップを出現頻度が同じ代表速度パターンとして特定し、各ショートトリップの走行状態グループに対応させて前記速度パターンデータ記憶手段に記録し、この代表速度パターンを用いて二酸化炭素排出量を算出する手段として機能させることを要旨とする。
【0022】
(作用)
請求項1、10又は11に記載の発明によれば、制御手段が、運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開する。次に、ショートトリップ毎に、各ショートトリップの大きさを表わす分析パターン変数値を算出し、運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴について、分析パターン変数値の累積頻度分布を算出する。次に、累積頻度分布において累積頻度を表わした軸を一定幅で等間隔に分割し、各間隔の統計値からなる代表分析パターン変数値に対応する各ショートトリップを出現頻度が同じ代表速度パターンとして特定し、各ショートトリップの走行状態グループに対応させて速度パターンデータ記憶手段に記録する。そして、この代表速度パターンを用いて二酸化炭素排出量を算出する。ここでは、ショートトリップの大きさは、ショートトリップにおける走行距離や走行時間によって表わすことができる。運行記録データ記憶手段には、運行によって、多様な走行履歴が記録されることになるが、ショートトリップによって細分化するとともに、出現頻度が等しいショートトリップを用いることによって、代表的な走行パターンを生成することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、制御手段が、トリップの大きさが指定された評価対象を取得した場合には、走行状態グループに対応させて、評価対象のトリップの大きさに達するまで、代表速度パターンの代表分析パターン変数値を順次、結合する。そして、代表走行パターンに対応する二酸化炭素排出量を用いて評価を行なう。これにより、運行について詳細な情報がない場合においても、代表速度パターンを用いて、評価対象の走行状態を推定して、環境に対する負荷を評価することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段が、各ショートトリップにおける周波数解析を行ない、振幅の周波数分布を算出し、走行状態グループに対応させて前記振幅の周波数分布の統計値を算出する。そして、振幅の周波数分布の統計値を用いて、ショートトリップを再構成し、再構成したショートトリップを用いて、代表速度パターンを生成する。頻繁に加速や減速を行なう波状走行においては、高い周波数において大きな振幅が生じる。従って、走行状態グループに対応じた走行パターンを周波数解析の解析結果を用いて走行状態のパターンを表わすことができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、制御手段が、運行中の走行速度についての走行履歴が記録された評価対象を取得した場合には、走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出する。そして、走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開する。次に、各ショートトリップについて、前記速度パターンデータ記憶手段において、走行状態グループに対応させて、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンを特定し、この代表速度パターンに置き換えた場合の二酸化炭素排出量を比較結果として出力する。これにより、より環境負荷の小さい走行方法を提案することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、制御手段が、各ショートトリップにおける発進時の加速度を算出し、加速度が基準値以上のショートトリップを、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンへの置き換えを実行する。これにより、実際の運転と、急発進を抑制した運転についての評価結果を対比して出力し、より環境負荷の小さい走行方法を提案することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、制御手段が、各ショートトリップにおける単位距離あたりの加速エネルギ当量を算出し、加速エネルギ当量が基準値以上のショートトリップを、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンへの置き換えを実行する。これにより、実際の運転と、波状走行を抑制した運転についての評価結果を対比して出力し、より環境負荷の小さい走行方法を提案することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、制御手段が、ショートトリップ間の時間間隔を算出し、時間間隔が基準時間以上のショートトリップ間を、アイドリングを停止した場合の速度パターンへの置き換えを実行する。これにより、実際の運転と、アイドルストップを抑制した運転についての評価結果を対比して出力し、より環境負荷の小さい走行方法を提案することができる。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、分析パターン変数値として、ショートトリップの所要時間を用いる。これにより、ショートトリップ時間を用いて、評価対象の走行状態を推定することができる。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、分析パターン変数値として、ショートトリップにおける走行距離を用いる。これにより、ショートトリップ距離を用いて、評価対象の走行状態を推定することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、自動車の走行における二酸化炭素の排出量の現状把握及び削減に対する評価を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態のシステム概略図。
【図2】環境負荷評価支援サーバの機能ブロックの説明図。
【図3】クライアント制御部の機能ブロックの説明図。
【図4】トリップチェーン、トリップ、ショートトリップの関係の説明図。
【図5】サンプルデータベースに記録された収集サンプルデータの説明図。
【図6】収集サンプルデータに含まれる車両レコードの説明図。
【図7】収集サンプルデータに含まれる運行レコードの説明図。
【図8】収集サンプルデータに含まれる走行レコードの説明図。
【図9】速度パターンデータベースに記録されたデータの説明図。
【図10】代表走行パターンの説明図。
【図11】本実施形態の処理手順の説明図。
【図12】本実施形態の処理手順の説明図。
【図13】本実施形態の処理手順の説明図。
【図14】本実施形態の処理手順の説明図。
【図15】本実施形態の処理手順の説明図。
【図16】必須入力項目とオプション入力項目の説明図。
【図17】削減支援手段の機能ブロックの説明図。
【図18】本実施形態の処理手順の説明図。
【図19】本実施形態の処理手順の説明図。
【図20】他の実施形態における代表走行パターンの生成の説明図であって、(a)はショートトリップの分割、(b)は巡航部の周波数解析結果、(c)は代表走行パターンの再構成の説明図。
【図21】他の実施形態の処理手順の説明図。
【図22】他の実施形態の処理手順の説明図。
【図23】トリップの分類に用いるブロックの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図1〜図19を用いて説明する。本実施形態では、自動車の走行における二酸化炭素(CO2)の排出量の削減についての評価を支援する場合を想定する。本実施形態では、図4に示すように出庫(最初のイベント)から入庫(最後のイベント)までの間に、荷積や荷卸等の各種イベントが行なわれるものとする。そして、各イベント間の走行を「トリップ」と呼び、この運行に含まれる一連のトリップをトリップチェーンと呼ぶ。また、各トリップは、走行の一時停止(例えば、赤信号による停止)によって区切られた短期間の走行から構成されている。本実施形態では、各トリップを構成する短期間の走行をショートトリップと呼ぶ。そして、このショートトリップを用いて、自動車の運行による環境負荷への影響を評価する。
【0034】
この評価のために、図1に示すように、ネットワーク(インターネット)を介して相互に接続されている環境負荷評価支援サーバ20及びクライアント端末10を用いる。これらの環境負荷評価支援サーバ20やクライアント端末10は環境負荷評価支援システムとして機能し、環境負荷評価支援シミュレーションを実行する。
【0035】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、図示しないCPU等の制御手段、RAM及びROM等のメモリを有する。具体的には、後述する処理(ショートトリップ展開段階、ショートトリップ解析段階、代表走行パターン算出段階、CO2排出量算出段階、プログラム配信段階の各処理等)を行なう。このための環境負荷評価支援プログラムを実行することにより、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、図2に示すように、ショートトリップ展開手段211、ショートトリップ解析手段212、代表走行パターン算出手段213、CO2排出量算出手段214、プログラム配信手段215として機能する。
【0036】
ショートトリップ展開手段211は、自動車の走行履歴をショートトリップに展開する処理を実行する。
ショートトリップ解析手段212は、展開されたショートトリップの走行を解析する処理を実行する。
【0037】
代表走行パターン算出手段213は、解析されたショートトリップの統計値を用いて、代表的な走行パターンを生成する処理を実行する。
CO2排出量算出手段214は、算出した代表走行パターンを用いて、二酸化炭素排出量を算出する処理を実行する。
プログラム配信手段215は、クライアント端末10に対して、環境負荷を評価するためのプログラムやデータを配布する処理を実行する。
【0038】
また、環境負荷評価支援サーバ20は、図1に示すように、サンプルデータベース22、速度パターンデータベース23、代表走行パターンデータベース24、入力支援データベース25、変換係数データベース26、排出量原単位データベース27、評価プログラムデータ記憶部28を備える。
【0039】
サンプルデータベース22は運行記録データ記憶手段として機能し、各種自動車運送事業者から収集した走行履歴(収集サンプルデータ)を記録する。この収集サンプルデータは、図5に示すように、車両レコード221に対して、運行レコード222や走行レコード223が記録されている。ここで、車両レコード221には、運送事業に用いられる自動車の特性に関するデータが記録されており、具体的には、車検証に記載された事項に基づいて登録される。また、運行レコード222には、顧客から依頼を受けた運送内容に関するデータが記録されており、具体的には、運転日報や配車票等に記載されている事項に基づいて登録される。また、走行レコード223には、各運行における走行に関するデータが記録されており、具体的には、各自動車運送事業者から収集した運送時の走行のデジタルタコグラフに記録されたデータに基づいて登録される。
【0040】
車両レコード221は、図6に示すように、車両番号、車種、最大積載量、車両総重量、燃料種別に関するデータを含んで構成される。
車両番号データ領域には、自動車運送事業者が利用している自動車を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0041】
車種データ領域には、この自動車の車種を特定するための識別子に関するデータが記録される。この車種情報を利用することにより、各種車種毎に諸元データが記録された車種データベース(図示せず)から車両特性を取得することができる。
【0042】
最大積載量データ領域には、この自動車において積載可能な最大量に関するデータが記録される。
車両総重量データ領域には、この自動車の積載物や搭乗者を含めた総重量に関するデータが記録される。
【0043】
燃料種別データ領域には、この自動車の燃料を特定するための識別子に関するデータが記録される。本実施形態では、ガソリン又はディーゼルを特定するための識別子に関するデータが記録される。なお、自動車の燃料の種類はこれらに限定されるものではない。
【0044】
一方、運行レコード222は、図7に示すように、各車両を用いての運行内容を特定するためのデータ(運行内容レコード)と、各運行に含まれるイベントを特定するためのデータ(イベントレコード)が記録される。運行内容レコードは、車両番号、運行番号、運行日、開始距離、終了距離に関するデータを含んで構成される。更に、イベントレコードは、運行に含まれるイベント毎に記録される。このイベントレコードは、イベント発生時刻、イベント内容、イベント所要時間、出発時刻、走行時間、走行距離、貨物積載重量、充填率、空車・実車識別フラグ、輸送品目に関するデータを含んで構成される。
【0045】
車両番号データ領域には、運送時の走行履歴を取得した自動車を特定するための識別子に関するデータが記録される。
運行番号データ領域には、この自動車を用いての運送についての各運行を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0046】
運行日データ領域には、各運行を行なった日付を特定するための年月日に関するデータが記録される。
開始距離、終了距離データ領域には、それぞれ、この運行を開始した時、終了した時の走行距離(例えば、オドメータ)に関するデータが記録される。この終了距離と開始距離との差分から、当日の走行距離を算出することができる。
【0047】
イベント発生時刻データ領域には、イベントが発生した時刻に関するデータが記録される。
イベント内容データ領域には、このイベントの内容を特定するためのデータが記録される。本実施形態では、イベント内容として、「出庫」、「入庫」、「荷積」、「荷卸」、「点検」、「休憩」、「給油」等がある。
【0048】
イベント所要時間データ領域には、このイベントに要した時間に関するデータが記録される。
出発時刻データ領域には、このイベントを終了し、走行を開始した時刻に関するデータが記録される。
【0049】
走行時間、走行距離データ領域には、それぞれ、このイベント終了から次のイベント発生までに走行していた時間や距離に関するデータが記録される。
貨物積載重量データ領域には、このイベント発生時における貨物の積卸重量に関するデータが記録される。
【0050】
充填率データ領域には、この自動車の荷台における積載荷物の充填率(体積割合)に関するデータが記録される。
空車・実車識別フラグデータ領域には、このイベント終了から次のイベント発生までの荷物の積載状態を識別するためのフラグ(空車フラグ又は実車フラグ)が記録される。
輸送品目データ領域には、このイベントが荷積或いは荷卸の場合には、積載された荷物の種類を特定するための品目に関するデータが記録される。
【0051】
また、走行レコード223は、図8に示すように、各車両を用いての運行内容を特定するためのデータ(運行内容レコード)と、各運行に含まれる走行状況を記録したデータ(走行記録レコード)が記録される。運行内容レコードは、運行レコード222と同様に、車両番号、運行番号、運行日、開始距離、終了距離に関するデータを含んで構成される。更に、走行記録レコードは、走行状態のサンプリング毎に記録される。この走行記録レコードは、サンプリング時刻、速度、エンジン回転数、走行距離、位置情報、加速度、加速時間、アイドリング時間に関するデータを含んで構成される。
【0052】
サンプリング時刻データ領域には、サンプリングを行なった時刻に関するデータが記録される。
速度、エンジン回転数、走行距離データ領域には、それぞれ、このサンプリング時刻における速度、エンジン回転数、走行距離に関するデータが記録される。
【0053】
位置情報データ領域には、このサンプリング時刻における自動車の所在位置に関するデータが記録される。本実施形態では、位置情報として、例えばGPS(Global Positioning System )等を用いて取得した緯度・経度に関するデータを記録する。
【0054】
加速度データ領域には、このサンプリング時刻における自動車の加速度に関するデータが記録される。
加速時間データ領域には、この加速が継続された時間に関するデータが記録される。この加速時間は、加速開始から経過時間の測定を開始し、加速の終了を検知した場合に記録される。
【0055】
アイドリング時間データ領域には、アイドリングが継続された時間に関するデータが記録される。このアイドリング時間は、アイドリング開始から経過時間の測定を開始し、アイドリングの中止を検知した場合に記録される。
【0056】
速度パターンデータベース23は速度パターンデータ記憶手段として機能し、図9に示すように、収集サンプルデータから抽出したショートトリップの中で、各種走行状態グループにおける速度パターンレコード230を記録する。この速度パターンレコード230は、各走行状態グループの代表速度パターンを特定した場合に記録される。この速度パターンレコード230は、空車・実車識別フラグ、急発進識別フラグ、波状走行識別フラグに関連付けて、ショートトリップ時間毎に代表速度パターンに関するデータを含んで構成される。
【0057】
空車・実車識別フラグ領域には、空車又は実車を識別するための識別子に関するデータが記録される。
急発進識別フラグ領域には、急発進の有無を識別するための識別子に関するデータが記録される。
【0058】
波状走行識別フラグ領域には、波状走行の有無を識別するための識別子に関するデータが記録される。
代表速度パターン領域には、代表分析パターン変数値としてのショートトリップ時間毎に、各ショートトリップにおける速度パターンに関するデータが記録される。速度パターンは、時間軸に対して速度の変化を示したデータにより構成される。
【0059】
代表走行パターンデータベース24には、各走行状態における代表走行パターンを表した代表走行パターンレコードが記録される。この代表走行パターンレコードは、後述するように、各種走行状態における典型的なショートトリップを用いて、代表走行パターンを生成した場合に記録される。この代表走行パターンは、図10に示すように、典型的なショートトリップ(速度パターン)を結合して構成される。そして、この代表走行パターンを用いることにより、エンジン回転数、トルク、最終的には二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0060】
入力支援データベース25には、簡易入力画面によって入力された必須入力項目の情報に対して、速度変換に必要な情報を補うための入力支援データが記録される。この入力支援データベース25には、オプション入力画面に含まれる各オプション入力項目に対して、デフォルト値に関するデータが記録されている。入力支援データベース25には、例えば、輸送品目に対して、収集サンプルデータから統計的に算出した平均積載率が記録されている。この平均積載率を用いることにより、最大積載重量から積載重量を算出することができる。
【0061】
本実施形態では、簡易入力画面やオプション入力画面において車両特性、運行特性を入力する。この簡易入力の車両特性の必須入力項目としては、「車両番号」、「型式番号」、「燃料の種類」、「原動機の型式」、「車両の大きさ(車長、車幅、車高)」、「重量(最大積載量、車両重量、車両総重量)」等を用いる。運行特性の必須入力項目としては、「車両番号」、「積載情報(荷積卸回数、輸送品目、入庫時の積載状態、出庫時の積載状態)」、「走行情報(走行距離、運行時間、休憩の有無)」等を用いる。
【0062】
また、オプション入力の車両特性のオプション入力項目としては、「変速比(ギア比)」、「エンジン特性(最大トルク回転数、全負荷特性、無負荷特性)」等を用いる。運行特性のオプション入力項目としては、「トリップ所要時間」、「積載重量」、「乗員数」、「走行時間」、「走行距離」、「走行時間帯」、「走行地域」、「作業時間等(荷積卸時間、待機時間、休憩時間)」、「アイドル時間(荷積卸時間、待機時間、休憩時間、信号/渋滞停止時間)」等を用いる。
【0063】
入力支援データベース25には、このように必須入力項目に対して、オプション入力項目の設定がない場合のデフォルト値(収集サンプルデータの統計値)や、車速変換を行なうための変換式に関するデータが記録されている。本実施形態では、輸送品目に対応して算出された統計値(平均積載率、平均作業時間、平均アイドル時間)が記録される。
【0064】
変換係数データベース26には、非特許文献1に記載された公知の車速変換プログラムにおいて、走行特性、運行特性、車両特性からトルクやエンジン回転数を算出するための変換係数が記録されている。
【0065】
排出量原単位データベース27には、入力されたトルクやエンジン回転数において排出される二酸化炭素量を算出するためのエンジンマップに関するデータが記録される。このエンジンマップにおいては、トルクやエンジン回転数に対応して、単位時間あたりに排出される二酸化炭素の原単位に関するデータが記録されている。
【0066】
評価プログラムデータ記憶部28には、各クライアント端末10において、二酸化炭素排出量を評価するための環境負荷評価支援プログラムを格納している。この環境負荷評価支援プログラムは、インターネットを介して、各自動車運送事業者のクライアント端末10に配布される。
【0067】
一方、クライアント端末10は、環境負荷評価支援サーバ20を利用して、自らの環境負荷を評価する利用者のコンピュータ端末である。本実施形態では、利用者として自動車運送事業者を想定する。このクライアント端末10は、インターネットを介してデータを送信する機能や、受信したデータを表示する機能等を有する。このため、このクライアント端末10は、図示しないCPU、RAM、ROMの他、キーボード、マウス等の入力手段、ディスプレイ等の出力手段、通信手段等を有する。
【0068】
そして、クライアント端末10のクライアント制御部11は、図示しないCPU等の制御手段、RAM及びROM等のメモリを有する。具体的には、後述する処理(入力制御段階、計算制御段階、出力制御段階、削減支援段階の各処理等)を行なう。このための環境負荷評価支援プログラムを実行することにより、クライアント端末10のクライアント制御部11は、図3に示すように、入力制御手段11a、計算制御手段11b、出力制御手段117、削減支援手段119として機能する。
【0069】
この入力制御手段11aは、簡易入力手段111、オプション入力手段112、デジタルデータ入力手段118を含んで構成される。
また、計算制御手段11bは、デフォルト値設定手段113、速度パターン推定手段114、車速変換手段115、CO2計算手段116を含んで構成される。
【0070】
簡易入力手段111は、二酸化炭素の排出量を算出するための必須入力項目の入力を支援するための画面の出力処理を実行する。
オプション入力手段112は、簡易入力の必須入力項目に対して、速度変換を行なうために不足しているオプション入力項目についての入力を支援するための画面の出力処理を実行する。
【0071】
デフォルト値設定手段113は、オプション入力項目において設定されていない項目の内容を補う支援処理を実行する。
速度パターン推定手段114は、入力された情報に基づいて、この運行における速度パターンの推定処理を実行する。
【0072】
車速変換手段115は、車速変換プログラムにより実現され、走行特性、運行特性、車両特性を用いて、トルクやエンジン回転数の算出処理を実行する。
CO2計算手段116は、車速変換手段115によって算出されたトルクやエンジン回転数を用いて、二酸化炭素排出量の算出処理を実行する。
【0073】
出力制御手段117は、算出した評価結果の出力の制御処理を実行する。
デジタルデータ入力手段118は、自動車運送事業者がデジタルタコグラフデータを記録している場合には、このデジタルタコグラフデータの受入処理を実行する。
【0074】
削減支援手段119は、二酸化炭素の排出量を削減するための走行についての評価処理を実行する。この削減支援手段119は、図17に示すように、ショートトリップ展開手段119a、急発進検知手段119b、波状走行検知手段119c、アイドルストップ検知手段119d、速度パターン置換手段119e、評価出力手段119fから構成される。
【0075】
ショートトリップ展開手段119aは、デジタルデータ入力手段118が取得したデジタルタコグラフデータに含まれる走行データを、ショートトリップ展開手段211と同様に、ショートトリップに展開する処理を実行する。
【0076】
急発進検知手段119bは、取得したデジタルタコグラフデータに基づいて、急発進の有無を判定する処理を実行する。
波状走行検知手段119cは、デジタルタコグラフデータに基づいて、波状走行の有無を判定する処理を実行する。
【0077】
アイドルストップ検知手段119dは、デジタルタコグラフデータに基づいて、アイドルストップの要否を判定する処理を実行する。このため、アイドルストップ検知手段119dは、要否を判定するための基準時間を保持している。
【0078】
速度パターン置換手段119eは、環境負荷が大きい運転を行なっていると判断した場合には、このような運転に対して環境負荷を小さくするような速度パターンに置換する処理を実行する。
評価出力手段119fは、環境負荷を小さくした速度パターンを含めて、この運行における走行についての評価結果を出力する処理を実行する。
【0079】
また、クライアント端末10は、図3に示すように、入力支援データベース12、速度パターンデータベース13、変換係数データベース14、排出量原単位データベース15を備える。各データベースは、環境負荷評価支援サーバ20から各データを取得した場合に記録される。
【0080】
入力支援データベース12には、入力支援データベース25と同様に、簡易入力画面によって入力された必須入力項目の情報に対して、速度変換に必要な情報を補うための入力支援データが記録される。
【0081】
速度パターンデータベース13には、速度パターンデータベース23と同様に、二酸化炭素排出量を算出するために、各種走行状態における速度パターンレコードが記録される。
【0082】
変換係数データベース14には、変換係数データベース26と同様に、公知の車速変換プログラムにおいて、走行特性、運行特性、車両特性からトルクやエンジン回転数を算出するための変換係数が記録されている。
【0083】
排出量原単位データベース15には、排出量原単位データベース27と同様に、入力されたトルクやエンジン回転数において排出される二酸化炭素量を算出するためのエンジンマップに関するデータが記録される。
【0084】
上記のように構成されたシステムを用いて、環境負荷の評価を支援するための処理手順を、図11〜図19に従って説明する。ここでは、まず、概要(図11)を説明し、環境負荷評価支援サーバ20において実行する処理(図12〜図14)、クライアント端末10において実行する処理(図15、図18、図19)を詳述する。
【0085】
(概要)
まず、図11を用いて、環境負荷評価支援についての概要を説明する。
ここでは、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、代表走行パターンの生成処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ展開手段211、ショートトリップ解析手段212、代表走行パターン算出手段213は、収集サンプルデータを用いて、空車・実車状態、急発進や波状走行の有無によって分けられた走行状態グループ毎に代表速度パターンを算出する。そして、サーバ制御部21は、代表速度パターンを結合して、代表走行パターンを生成する。
【0086】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、代表走行パターンの評価処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、サーバ制御部21のCO2排出量算出手段214は、生成した代表走行パターンにおける環境に対する負荷(二酸化炭素排出量)を算出する。
【0087】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、環境負荷評価支援プログラムの配布処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、サーバ制御部21のプログラム配信手段215は、自動車運送事業者の各クライアント端末10に対して、環境負荷評価支援プログラムや、各種データベースを配布する。そして、各クライアント端末10は、受信した環境負荷評価プログラムや各種データベースを、クライアント端末10内のデータ記憶部に格納する。
【0088】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、環境負荷評価プログラムを起動させることにより、簡易入力による評価処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、クライアント制御部11は、自動車運送事業者によって入力された各種情報に基づいて、二酸化炭素排出量を算出する。
【0089】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、デジタルタコグラフデータによる評価処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、クライアント制御部11は、自動車運送事業者によって入力されたデジタルタコグラフデータに基づいて、二酸化炭素排出量を算出する。
【0090】
(代表走行パターン評価処理)
次に、図12を用いて、環境負荷評価支援サーバ20における代表走行パターン評価処理について説明する。
【0091】
ここでは、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、評価対象の運行データの抽出処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ展開手段211は、サンプルデータベース22から、評価対象の運行レコード222を抽出し、この運行レコード222に記録された車両番号、運行番号、出発時刻、イベント所要時間、実車・空車識別フラグを特定する。
【0092】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、評価対象の走行データの抽出処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ展開手段211は、特定した車両番号、運行番号が記録された走行レコード223を特定し、出発時刻から所要時間についての走行記録レコードのサンプリングデータを抽出する。この場合、ショートトリップ展開手段211は、運行レコード222に記録された実車・空車識別フラグに基づいてグループ化して走行レコード223をメモリに仮記憶する。本実施形態では、この積載状態(実車・空車の区分)が走行状態グループを決定する要素の一つとなる。
【0093】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、走行データにおけるショートトリップへの分解処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、抽出した走行レコード223において速度が「0」になる一時停止の時間帯を特定する。そして、ショートトリップ解析手段212は、走行レコード223に記録されたトリップを、この一時停止時間帯によって挟まれた区間によって分割することにより、各ショートトリップを特定する。
【0094】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、走行データにおける信号待ち時間の算出処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、一時停止時間帯を信号待ち時間として特定する。そして、ショートトリップ解析手段212は、信号待ち時間の統計値(ここでは、平均値)を算出して、メモリに仮記憶する。
【0095】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、速度パターン評価処理を実行する(ステップS2−5)。本実施形態では、後述するように、この速度パターン評価処理によって、急発進の抑制や波状走行の抑制の有無を判断する。本実施形態では、この急発進の抑制や波状走行の抑制の有無も走行状態グループを決定する要素の一つとなる。
【0096】
更に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップ分析処理を実行する(ステップS2−6)。本実施形態では、後述するように、走行状態グループ毎にショートトリップ時間(ショートトリップの大きさ)の累積頻度を算出し、各ショートトリップの出現頻度が等しい典型的なショートトリップ(代表速度パターン)を特定する。
【0097】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップ毎にショートトリップ距離の算出処理を実行する(ステップS2−7)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、特定したショートトリップを構成する速度を時間積分することにより、各ショートトリップにおける走行距離を算出する。
【0098】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、代表走行パターンの生成処理を実行する(ステップS2−8)。具体的には、サーバ制御部21の代表走行パターン算出手段213は、急発進の抑制の有無や、波状走行の抑制の有無、積載状態によって識別される走行状態グループ毎に、出現頻度が等しい典型的なショートトリップ(代表速度パターン)を組み合わせることによって代表走行パターンを生成する。そして、代表走行パターン算出手段213は、生成した各代表走行パターンレコードを、走行状態グループ毎に代表走行パターンデータベース24に記録する。
【0099】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、代表走行パターンの二酸化炭素排出量の算出処理を実行する(ステップS2−9)。具体的には、サーバ制御部21のCO2排出量算出手段214は、走行状態グループ毎に各代表走行パターンの走行特性、運行特性、車両特性を、公知の車速変換プログラムに導入する。ここで、走行特性としては、代表走行パターンによって特定される速度や加速度を用いる。また、運行特性としては、空車・実車識別フラグに応じて算出した平均積載重量を用いる。また、車両特性としては、車両レコード221によって特定される車種に対応する特定された前面投影面積、変速ギア比、タイヤ径、エンジン特性を用いる。そして、車速変換プログラムによって算出されたトルク及びエンジン回転数を用いて、公知のエンジンマップ解析を行なうことにより、二酸化炭素排出量を算出する。
【0100】
そして、CO2排出量算出手段214は、代表走行パターン毎に算出した二酸化炭素排出量を、各代表走行パターンにおける総走行距離によって除算することにより、単位距離あたりの二酸化炭素排出量を算出する。そして、CO2排出量算出手段214は、走行状態グループ毎に算出した二酸化炭素排出量を代表走行パターンデータベース24に記録する。
【0101】
(速度パターン評価処理)
次に、図13を用いて、速度パターン評価処理について説明する。
ここでは、評価対象のショートトリップを順次、特定し、ショートトリップ毎に以下の処理を繰り返す。
【0102】
まず、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、発進時の加速度の算出処理を実行する(ステップS3−1)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、評価対象のショートトリップに含まれる走行記録レコードのサンプリングデータを特定し、このサンプリングデータにおいて、発進時の加速度を取得する。なお、この加速度は、サンプリングデータに含まれる発進加速時の速度を微分することにより算出することも可能である。
【0103】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、単位距離あたりの加速エネルギ当量の算出処理を実行する(ステップS3−2)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、評価対象のショートトリップに含まれる走行記録レコードにおける連続したサンプリングデータにおいて、先のサンプル時の速度(Vi)よりも次のサンプル時の速度(Vi+1)が増加しているデータ区間(データ間隔:Δt)を特定する。そして、以下の式により、加速エネルギ当量を算出する。
〔加速エネルギ当量〕=Σ((〔Vi+1〕^2−〔Vi〕^2)/Δt)
【0104】
そして、ショートトリップ解析手段212は、この総和値を、このショートトリップの走行距離で除算することにより、単位距離あたりの加速エネルギ当量を算出する。以上の処理を、評価対象のショートトリップ毎に繰り返す。
【0105】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、発進時の加速度によるソート処理を実行する(ステップS3−3)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、実車・空車識別フラグに基づいて分類されたグループ毎に、メモリに仮記憶された各ショートトリップを発進時の加速度が小さい順番に並べる。
【0106】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、「急発進の抑制あり」のパターンの抽出処理を実行する(ステップS3−4)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、メモリに仮記憶された各グループにおいて、発進時の加速度の順番が小さい方から25%以下となるショートトリップを、急発進を抑制したパターンとして特定してグループの細分化を行なう。
【0107】
また、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、「急発進の抑制なし」のパターンの抽出処理を実行する(ステップS3−5)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、メモリに仮記憶された各グループにおいて、発進時の加速度の順番が小さい方から75%以上となるショートトリップを、急発進を抑制しないパターンとして特定してグループの細分化を行なう。
【0108】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、単位距離あたりの加速エネルギ当量によるソート処理を実行する(ステップS3−6)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、細分化された各グループにおいて、各ショートトリップを単位距離あたりの加速エネルギ当量が小さい順番に並べる。
【0109】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、「波状走行の抑制あり」のパターンの抽出処理を実行する(ステップS3−7)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、細分化された各グループにおいて、単位距離あたりの加速エネルギ当量の順番が小さい方から25%以下となるショートトリップを、波状走行を抑制したパターンとして特定して抽出する。
【0110】
また、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、「波状走行の抑制なし」のパターンの抽出処理を実行する(ステップS3−8)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、細分化された各グループにおいて、単位距離あたりの加速エネルギ当量の順番が小さい方から75%以上となるショートトリップを、波状走行を抑制しないパターンとして特定して抽出する。
以上により、実車・空車識別フラグの有無で分類された各グループから、急発進の抑制の有無、波状走行の抑制の有無によって細分化された走行状態グループを生成する。
【0111】
(ショートトリップ分析処理)
次に、図14を用いて、ショートトリップ分析処理について説明する。この処理は、走行状態グループ分けされたグループ毎に実行される。
【0112】
まず、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップ時間の累積頻度の算出処理を実行する(ステップS4−1)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、横軸をショートトリップ時間、縦軸を累積頻度とした相対累積頻度分布を算出する。この場合、相対累積頻度分布において、ショートトリップ時間が最も長いショートトリップに対応する累積頻度が100%となる。
【0113】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、相対累積頻度が一定になるようにショートトリップ時間の区間分割処理を実行する(ステップS4−2)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、相対累積頻度分布の累積頻度軸を一定間隔毎の区間に区切る。本実施形態では、累積頻度軸の最大値(100%)を一定間隔(ここでは、10%ずつ)に区切ることにより、累積頻度軸を10個の区間に分割する場合を想定する。
【0114】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップ時間の区間毎に典型的なショートトリップの特定処理を実行する(ステップS4−3)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、一定間隔に区切られた区間についての統計値を算出する。本実施形態では、統計値として、区切られた区間の中央値を用いるものとする。これにより、各走行状態グループにおいて、出現する頻度が等しいショートトリップ時間(代表分析パターン変数値)を特定することができる。そして、前述したように、出現頻度が同じショートトリップ時間の速度パターンを結合することによって、走行状態グループ毎に代表走行パターンを算出する。この代表走行パターンを用いて、二酸化炭素排出量を算定する。
【0115】
(簡易評価処理)
次に、図15を用いて、簡易評価処理について説明する。この処理は、自動車運送事業者のクライアント端末10において実行される。このため、クライアント端末10において、環境負荷評価支援サーバ20から、環境負荷評価に用いるデータとプログラムとをダウンロードする。そして、クライアント端末10において、ダウンロードした環境負荷評価支援プログラムを実行する。
【0116】
この場合、クライアント端末10のクライアント制御部11は、各種情報の特定処理を実行する(ステップS5−1)。具体的には、クライアント制御部11の簡易入力手段111は、クライアント端末10のディスプレイに必須入力項目を設定するための簡易入力画面を出力する。この必須入力項目には、図16に示すように、車両特性、走行特性の各種項目が含まれる。そして、簡易入力画面には、これらの項目を入力するための設定欄が設けられている。
【0117】
簡易入力手段111が各設定欄への入力完了を検知した場合、オプション入力手段112に処理を引き継ぐ。この場合、オプション入力手段112は、オプション入力項目を設定するためのオプション入力画面をディスプレイに出力する。
【0118】
このオプション入力項目の設定は任意である。従って、利用者は、自ら各種入力を行なうこともできるが、入力を省略することも可能である。そして、オプション入力手段112は、オプション入力画面において入力された各種情報を取得する。ここで、オプション入力画面において空欄のままの設定欄については、デフォルト値設定手段113が、設定されていない項目(不足している項目)についての情報を入力支援データベース12から取得して補充する。
【0119】
具体的には、簡易入力の輸送品目から平均積載率を特定し、簡易入力の最大積載重量に乗算することにより、積載重量を算出する。また、簡易入力の走行距離、運行時間、荷積卸回数、積載状態から、入力支援データベース12に記録された統計値を用いて、各トリップの走行距離、トリップ所要時間、アイドル時間を推定する。
【0120】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、代表速度パターンの特定処理を実行する(ステップS5−2)。具体的には、クライアント制御部11の速度パターン推定手段114は、簡易入力手段111、オプション入力手段112、デフォルト値設定手段113によって設定された情報に基づいて、評価対象の運行に含まれるトリップの走行距離及び各トリップにおける積載状態を特定する。そして、速度パターン推定手段114は、速度パターンデータベース13において、各トリップの積載状態に対応する代表速度パターンを特定する。
【0121】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、走行速度の時系列変化の推定処理を実行する(ステップS5−3)。具体的には、クライアント制御部11の速度パターン推定手段114は、速度パターンデータベース13に記録された代表速度パターンを用いて、この運行の実質走行時間(トリップの大きさ)に達するまで、ショートトリップ時間の短い方から順番に代表速度パターンを結合していく。ショートトリップ時間の総和が実質走行時間を超えた場合には、速度パターン推定手段114は、最後の代表速度パターンの結合前に戻し、総和が実質走行時間に最も近くなる代表速度パターンを特定して再度、結合し直す。これにより、速度パターン推定手段114は、結合した代表速度パターンによって、走行速度の時系列変化を推定する。
【0122】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、トルクの時系列変化の推定処理を実行する(ステップS5−4)。具体的には、クライアント制御部11の速度パターン推定手段114は、推定した走行速度の時系列変化から加速度を算出し、速度及び加速度に関する情報を車速変換手段115に供給する。この場合、車速変換手段115は、この速度及び加速度から、変換係数データベース14を用いて、トルク及びエンジン回転数の時系列変化を算出する。
【0123】
そして、クライアント端末10のクライアント制御部11は、二酸化炭素排出量の推定処理を実行する(ステップS5−5)。具体的には、クライアント制御部11のCO2計算手段116は、排出量原単位データベース15に記録されたエンジンマップを用いて、トルクとエンジン回転数の時系列変化から二酸化炭素排出量を算出する。そして、クライアント制御部11の出力制御手段117は、算出した二酸化炭素排出量を評価結果として出力する。
【0124】
(デジタルタコグラフ評価処理)
次に、デジタルタコグラフデータを用いての評価処理を、図18、図19を用いて説明する。
【0125】
ここでは、図18に示すように、クライアント端末10のクライアント制御部11は、実際の走行データ取得処理を実行する(ステップS6−1)。具体的には、クライアント制御部11のデジタルデータ入力手段118は、評価対象の運行についてデジタルタコグラフデータを取得する。
【0126】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、ショートトリップへの分解処理を実行する(ステップS6−2)。具体的には、クライアント制御部11のショートトリップ展開手段119aは、ショートトリップ展開手段211と同様に、デジタルタコグラフに記録された走行データにおいて、一時停止間によって区切られた区間を特定してショートトリップに分解する。
【0127】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、トルクの時系列変化の推定処理を実行する(ステップS6−3)。具体的には、クライアント制御部11の車速変換手段115は、各ショートトリップに含まれる速度及び加速度から、変換係数データベース14を用いてトルク及びエンジン回転数の時系列変化を算出する。
【0128】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、二酸化炭素排出量の推定処理を実行する(ステップS6−4)。具体的には、クライアント制御部11のCO2計算手段116は、排出量原単位データベース15に記録されたエンジンマップを用いて、トルクとエンジン回転数の時系列変化から二酸化炭素排出量を算出する。
【0129】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、環境負荷軽減シミュレーションを実行する(ステップS6−5)。具体的には、クライアント制御部11の削減支援手段119が後述する処理を実行する。
【0130】
(環境負荷軽減シミュレーション)
ここで、図19を用いて、環境負荷軽減シミュレーションを説明する。この処理では、まず、ショートトリップ毎に、以下の処理を繰り返す。
【0131】
クライアント端末10のクライアント制御部11は、発進時の加速度の算出処理を実行する(ステップS7−1)。具体的には、クライアント制御部11の急発進検知手段119bは、デジタルタコグラフデータに記録されたショートトリップの発進時の加速度を算出する。
【0132】
更に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、単位距離あたりの加速エネルギ当量の算出処理を実行する(ステップS7−2)。具体的には、クライアント制御部11の波状走行検知手段119cは、デジタルタコグラフデータに記録されたショートトリップにおいて、ステップS3−2と同様に、単位距離あたりの加速エネルギ当量を算出する。
【0133】
次に、クライアント端末10のクライアント制御部11は、急発進かどうかについての判定処理を実行する(ステップS7−3)。具体的には、クライアント制御部11の急発進検知手段119bは、発進時の加速度が基準値以下の場合には、急発進の抑制と判定する。本実施形態では、基準値として、速度パターンデータベース13に記録された「急発進を抑制したパターン」の加速度の最大値を用いる。
【0134】
ここで、急発進を抑制していると判定した場合(ステップS7−3において「YES」の場合)、クライアント端末10のクライアント制御部11は、波状走行かどうかについての判定処理を実行する(ステップS7−4)。具体的には、クライアント制御部11の波状走行検知手段119cは、単位距離あたりの加速エネルギ当量が基準値以下の場合には、波状走行の抑制と判定する。本実施形態では、基準値として、速度パターンデータベース13に記録された「波状走行を抑制したパターン」の単位距離あたりの加速エネルギ当量の最大値を用いる。
【0135】
ここで、波状走行を抑制していると判定した場合(ステップS7−4において「YES」の場合)、クライアント端末10のクライアント制御部11は、このショートトリップについての処理を終了する。
【0136】
一方、急発進を抑制していないと判定した場合(ステップS7−3において「NO」の場合)や、波状走行を抑制していないと判定した場合(ステップS7−4において「NO」の場合)、クライアント端末10のクライアント制御部11は、速度パターンの置換処理を実行する(ステップS7−5)。具体的には、クライアント制御部11の速度パターン置換手段119eは、このショートトリップに対して、速度パターンデータベース13から、「急発進を抑制した速度パターン」及び「波状走行を抑制した速度パターン」であって、ショートトリップ距離が最も近い代表速度パターンを抽出する。この急発進及び波状走行を抑制した速度パターンが、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンに相当する。
【0137】
ここまでの処理を、デジタルタコグラフデータに記録された運行に含まれるすべてのショートトリップについて繰り返す。
次に、ショートトリップ間に存在する一時停止について、間隔毎に以下の処理を繰り返す。
【0138】
ここでは、クライアント端末10のクライアント制御部11は、一時停止時間が基準時間以上かどうかについての判定処理を実行する(ステップS7−6)。具体的には、クライアント制御部11のアイドルストップ検知手段119dは、ショートトリップ間の一時停止の時間の長さを算出する。そして、アイドルストップ検知手段119dは、保持している基準時間と比較する。
【0139】
ここで、一時停止時間が基準時間以上の場合(ステップS7−6において「YES」の場合)、クライアント制御部11のアイドルストップ検知手段119dは、アイドルストップの置換処理を実行する(ステップS7−7)。具体的には、クライアント制御部11の速度パターン置換手段119eは、この一時停止期間においてアイドリングをストップさせた速度パターンに置換する。
【0140】
一方、一時停止時間が基準時間に達していない場合(ステップS7−6において「NO」の場合)には、アイドルストップ検知手段119dは、元のパターンを維持する。
ここまでの処理を、デジタルタコグラフデータに記録されたすべてのショートトリップ間の間隔について繰り返す。以上により、急発進、波状走行、アイドルストップを意識した走行についてシミュレーションした速度パターンデータ(シミュレーションパターン)を完成する。
【0141】
そして、クライアント端末10のクライアント制御部11は、結果出力処理を実行する(ステップS7−8)。具体的には、クライアント制御部11の評価出力手段119fは、シミュレーションパターンを車速変換手段115に供給してトルク及びエンジン回転数を算出する。更に、トルク及びエンジン回転数をCO2計算手段116に供給して二酸化炭素排出量を算出する。
【0142】
そして、評価出力手段119fは、デジタルタコグラフデータを用いて算出した二酸化炭素排出量と、シミュレーションパターンの二酸化炭素排出量とを取得する。更に、評価出力手段119fは、実際の走行による二酸化炭素排出量と、シミュレーションパターンの走行による二酸化炭素排出量とを対比した画面データを生成し、クライアント端末10のディスプレイに出力する。
【0143】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態においては、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、自動車運送事業者から収集したサンプルデータを用いて、代表走行パターンの生成処理を実行する(ステップS1−1)。そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、代表走行パターンの評価処理を実行する(ステップS1−2)。これにより、自動車運送事業者における自動車の運行によって排出される二酸化炭素量の全体的傾向を把握することができる。特に、急発進や波状走行の抑制の有無による二酸化炭素排出量の増減を算出し、環境に対する影響を評価することができる。
【0144】
・ 本実施形態においては、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップへの分解処理(ステップS2−3)、ショートトリップ分析処理(ステップS2−6)を実行する。ここでは、走行状態グループ毎にショートトリップ時間を分析し、各ショートトリップの出現頻度が等しい典型的なショートトリップを特定する。そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、代表走行パターンの生成処理(ステップS2−8)、代表走行パターンの二酸化炭素排出量の算出処理(ステップS2−9)を実行する。これにより、多様なショートトリップから構成された収集サンプルデータから、典型的なショートトリップを特定し、出現頻度を考慮した代表走行パターンを生成して、このパターンの二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0145】
・ 本実施形態においては、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、速度パターン評価処理を実行する(ステップS2−5)。ここでは、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、発進時の加速度の算出処理(ステップS3−1)、単位距離あたりの加速エネルギ当量の算出処理(ステップS3−2)を実行する。そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、発進時の加速度によるソート処理(ステップS3−3)、単位距離あたりの加速エネルギ当量によるソート処理(ステップS3−6)を実行する。これにより、収集サンプルデータに基づいて急発進や波状走行等の運転状況を統計的に把握することができる。
【0146】
・ 本実施形態においては、クライアント端末10のクライアント制御部11は、環境負荷評価プログラムを起動させることにより、簡易入力による評価処理を実行する(ステップS1−4)。この場合、クライアント端末10のクライアント制御部11は、各種情報の特定処理を実行する(ステップS5−1)。ここで、オプション入力画面において空欄のままの設定欄については、デフォルト値設定手段113が、設定されていない項目についての情報を入力支援データベース12から取得して補充する。これにより、自動車運送事業者は、必須入力項目についての情報のみを設定することにより、環境負荷を効率的に評価することができる。また、詳細情報を把握している自動車運送事業者は、自らオプション入力項目を設定することにより、より的確な評価を行なうことができる。
【0147】
・ 本実施形態においては、クライアント端末10のクライアント制御部11は、実際の走行データ取得処理(ステップS6−1)、ショートトリップへの分解処理(ステップS6−2)を実行する。そして、クライアント端末10のクライアント制御部11は、トルクの時系列変化の推定処理(ステップS6−3)、二酸化炭素排出量の推定処理(ステップS6−4)を実行する。これにより、実際の運行に基づいて二酸化炭素排出量を算出し、環境負荷を評価することができる。
【0148】
・ 本実施形態においては、クライアント端末10のクライアント制御部11は、削減シミュレーション処理を実行する(ステップS6−5)。ここでは、クライアント端末10のクライアント制御部11は、発進時の加速度の算出処理(ステップS7−1)、単位距離あたりの加速エネルギ当量の算出処理(ステップS7−2)を実行する。急発進を抑制していないと判定した場合(ステップS7−3において「NO」の場合)や、波状走行を抑制していないと判定した場合(ステップS7−4において「NO」の場合)、クライアント端末10のクライアント制御部11は、速度パターンの置換処理を実行する(ステップS7−5)。従って、デジタルタコグラフデータを取得することにより、各ショートトリップにおける走行について急発進や波状走行の抑制の有無を特定し、環境負荷が小さい運転を行なった場合の二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0149】
また、ショートトリップ間に存在する一時停止について、クライアント端末10のクライアント制御部11は、基準時間以上かどうかについての判定処理を実行する(ステップS7−6)。そして、一時停止時間が基準時間以上の場合(ステップS7−6において「YES」の場合)、クライアント制御部11のアイドルストップ検知手段119dは、アイドルストップの置換処理を実行する(ステップS7−7)。従って、デジタルタコグラフデータを取得することによりアイドルストップの有無を特定し、環境負荷が小さい運転を行なった場合の二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0150】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態では、トリップやショートトリップの大きさを評価するために、走行時間を用いたが、この「大きさ」を表わす指標は、これに限定されるものではなく、トリップやショートトリップにおける走行距離を用いることも可能である。
【0151】
○ 上記実施形態では、単位距離あたりの加速エネルギ当量によって、波状走行の有無を判定するが、波状走行の有無の判定方法は、これに限定されるものではない。例えば、ショートトリップにおける加速時の加速度の積分値を用いて判定するように構成することも可能である。更に、単位時間あたりの加速エネルギ当量によって判定することも可能である。
【0152】
○ 上記実施形態では、走行状態グループとして空車・実車識別フラグ、急発進識別フラグ、波状走行識別フラグによって分類する。この走行状態グループの分類は、これらに限定されるものではなく、「高速道路の利用」の有無や「走行地域」、「時間帯」によって分けることも可能である。
【0153】
○ 上記実施形態では、発進時の加速度の順番が小さい方から25%以下となるショートトリップを「急発進を抑制したパターン」として特定し、75%以上となるショートトリップを「急発進を抑制しないパターン」として特定する。また、単位距離あたりの加速エネルギ当量の順番が小さい方から25%以下となるショートトリップを「波状走行を抑制したパターン」として特定し、75%以上となるショートトリップを「波状走行を抑制しないパターン」として特定する。ここで、走行状態グループを生成するための基準値は、「25%」や「75%」に限定されるものではない。分類のために決定した基準値をショートトリップ解析手段212に保持させておくことにより、この基準値を用いて、急発進や波状走行の抑制の有無により各ショートトリップを分類することができる。
【0154】
○ 上記実施形態では、簡易入力の輸送品目から平均積載率を特定し、最大積載重量に乗算することにより、積載重量を算出する。積載重量の算出方法は、これに限定されるものではない。例えば、入力支援データベース25に、輸送品目に対して、収集サンプルデータから統計的に算出した輸送品目の密度を記憶させておく。そして、最大積載重量に、輸送品目毎の平均積載率、輸送品目の密度を乗算することにより算出するように構成することも可能である。
【0155】
○ 上記実施形態では、排出量原単位データベース15や、排出量原単位データベース27に記録されたエンジンマップを用いて、トルクやエンジン回転数から二酸化炭素排出量を算出する。この場合、エンジンの種類(原動機の型式)に応じた原単位修正係数を記録した係数テーブルを用いて、エンジンマップに記録された原単位を修正するようにしてもよい。この場合には、CO2計算手段116やCO2排出量算出手段214は、必須入力項目の原動機の型式に基づいて修正係数を取得し、原単位を修正して二酸化炭素排出量を算出する。これにより、すべてのエンジンに対応したエンジンマップを準備する必要はなく、代表的なエンジンマップに基づいて二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0156】
○ 上記実施形態では、クライアント端末10のクライアント制御部11は、急発進かどうかについての判定処理を実行する(ステップS7−3)。この場合、基準値として、速度パターンデータベース13に記録された「急発進を抑制したパターン」の加速度の最大値を用いる。また、クライアント端末10のクライアント制御部11は、波状走行かどうかについての判定処理を実行する(ステップS7−4)。この場合、基準値として、速度パターンデータベース13に記録された「波状走行を抑制したパターン」の単位距離あたりの加速エネルギ当量の最大値を用いる。基準値は、これらの値に限定されるものではなく、急発進や波状走行を「抑制したパターン」や「抑制しないパターン」の値の統計値(例えば、中間値)を用いることも可能である。
【0157】
○ 上記実施形態では、急発進を抑制していないと判定した場合(ステップS7−3において「NO」の場合)や、波状走行を抑制していないと判定した場合(ステップS7−4において「NO」の場合)、クライアント端末10のクライアント制御部11は、速度パターンの置換処理を実行する(ステップS7−5)。ここでは、いずれか一方のみを実行するように構成してもよい。また、他の走行状態を考慮して、環境負荷を配慮した典型的な速度パターンをクライアント端末10に記憶させておき、このパターンに置換するようにしてもよい。
【0158】
また、上記実施形態では、クライアント制御部11の速度パターン置換手段119eは、このショートトリップに対して、速度パターンデータベース13から、急発進及び波状走行を抑制した速度パターンであって、ショートトリップ距離が最も近いパターンを抽出する。これにより、二酸化炭素排出量を低減したパターンを利用することができる。
【0159】
○ 上記実施形態では、ショートトリップ分析において、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップ時間の累積頻度の算出処理を実行する(ステップS4−1)。これに代えて、ショートトリップ距離の累積頻度を用いることも可能である。この場合には、相対累積頻度が一定になるようにショートトリップ距離の区分分割処理を実行する(ステップS4−2)。そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップ毎に代表速度パターンの算出処理を実行する(ステップS4−3)。これにより、分析パターン変数値として、ショートトリップにおける走行距離を用いることができる。
【0160】
○ 上記実施形態では、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、信号待ち時間の算出処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、一時停止時間帯を信号待ち時間として特定する。そして、ショートトリップ解析手段212は、走行状態グループ毎に信号待ち時間の統計値(ここでは、平均値)を算出して、メモリに仮記憶する。これに代えて、速度パターンと同様に出現頻度を考慮して、信号待ち時間を算出することも可能である。この場合には、サーバ制御部21が、一時停止の時間の累積頻度分布を算出する。そして、累積頻度分布において累積頻度を表わした軸を一定幅で等間隔に分割し、各間隔の代表的な停止時間を特定することにより、出現頻度が同じ停止時間(代表停止時間)を特定する。そして、分析を行なう場合には、代表速度パターンからなるショートトリップ間に、代表停止時間を順次設定する。これにより、出現頻度を考慮した一時停止をトリップにおいて設定し、この時間帯での環境負荷を算出することができる。
【0161】
○ 上記実施形態では、急発進を抑制していないと判定した場合(ステップS7−3において「NO」の場合)や、波状走行を抑制していないと判定した場合(ステップS7−4において「NO」の場合)、クライアント端末10のクライアント制御部11は、速度パターンの置換処理を実行する(ステップS7−5)。具体的には、クライアント制御部11の速度パターン置換手段119eは、このショートトリップに対して、速度パターンデータベース13から、「急発進を抑制した速度パターン」及び「波状走行を抑制した速度パターン」であって、ショートトリップ距離が最も近い代表速度パターンを抽出する。ここで、「急発進を抑制した速度パターン」や「波状走行を抑制した速度パターン」は、代表速度パターンに限定されるものではなく、理想的な走行を表わした速度パターンを用いることも可能である。この場合には、急発進を抑制した基準加速度及び平均的な走行速度として基準走行速度に関するデータを速度パターン置換手段119eに記憶させておく。そして、速度パターン置換手段119eは、この基準加速度で加減速し、一定速度(基準走行速度)で走行し、ショートトリップ距離が同じになる速度パターンを生成する。
【0162】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、実測したショートトリップを用いて走行パターンを生成する。具体的には、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、単位距離あたりの加速エネルギ当量を算出し(ステップS3−2)、単位距離あたりの加速エネルギ当量によるソート処理を実行する(ステップS3−6)。更に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、「波状走行の抑制あり」のパターンの抽出処理(ステップS3−7)、「波状走行の抑制なし」のパターンの抽出処理(ステップS3−8)を実行する。以上により、実車・空車識別フラグの有無で分類された各グループから、急発進の抑制の有無、波状走行の抑制の有無によって細分化された走行状態グループを生成する。
【0163】
これに代えて、第2の実施形態においてはショートトリップのパターンを一般化し、一般化されたショートトリップを用いて、走行パターンを生成する。このようなショートトリップを一般化するために、周波数解析結果を用いて走行状態グループを生成する。ここで、実測データに対して、所定のフィルタ(例えば、バンドバスフィルタ)を用いて、所定の周波数域のみを抽出し、この範囲のみについて周波数解析を行なうようにしてもよい。
【0164】
ここでは、ショートトリップの速度パターンが、図20(a)に示すように、発進部、巡航部、減速部の各部から構成されていると想定する。ここで、発進部は停止状態から加速している時間帯、巡航部は一定の速度で走行していると想定される時間帯、減速部は一定の速度から停止状態になるまで減速している時間帯を意味する。そして、この巡航部の速度パターンについて周波数解析により、図20(b)に示すように、巡航部の振幅、周波数、遅れ角を算出する。そして、巡航部の時間及び速度により分類した区分において、統計的な振幅、周波数、遅れ角を算出する。次に、発進部、減速部からなる台形状の速度パターンに対して、周波数解析結果により算出した一般化した周波数特性を重ね合わせることにより、図20(c)に示すショートトリップの走行パターンを再構成する。
【0165】
このような周波数解析を利用して走行パターンを生成する方法を以下に詳述する。ここでは、振幅抽出処理(図21)、トリップ分類処理(図22、23)とを実行する。この処理を行なうために、サーバ制御部21に周波数解析手段及びトリップ分類手段を更に設ける。この周波数解析手段は、ショートリップの巡航部の周波数解析を行なう。トリップ分類手段は、トリップを時間及び距離により分類する。なお、トリップ分類手段は、トリップを「時間及び速度」、「速度及び距離」で分類することも可能である。
【0166】
(振幅抽出処理)
まず、振幅抽出処理を、図21を用いて説明する。
ここでは、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、巡航部の特定処理を実行する(ステップS8−1)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212が、すべてのショートトリップについて、予め定められた時間毎に算出した移動平均を用いて発進部及び減速部を特定する。発進部は、ショートトリップの最初から順次、算出した移動平均値が単調増加している範囲とする。減速部は、ショートトリップの最後から順次、算出した移動平均が単調減少している範囲とする。そして、発進部及び減速部に挟まれた区間を巡航部として特定する。
【0167】
環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップの分類処理を実行する(ステップS8−2)。具体的には、サーバ制御部21の周波数解析手段が、特定した巡航部について、時間(巡航時間)及び速度(巡航速度)の2軸から構成された巡航部分類マップを用いて分類する。なお、この場合も、ショートトリップを「時間及び距離」、「速度及び距離」で分類することも可能である。本実施形態においては、この巡航部分類マップでは、巡航時間軸は4秒間隔、巡航速度軸は時速5km/h間隔により分割されたブロックに区画されている。
【0168】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、巡航時間及び巡航速度により区画されたブロック毎に、以下の処理を実行する。
まず、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、この区画ブロックに含まれる巡航部について周波数解析処理を実行する(ステップS8−3)。具体的には、サーバ制御部21の周波数解析手段が、各ブロックに含まれるショートトリップの巡航部の周波数解析を行なう。ここでは、予め定められた各分析周波数に対して振幅を算出する。
【0169】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、代表値の算出処理を実行する(ステップS8−4)。具体的には、サーバ制御部21の周波数解析手段が、分析周波数毎に、予め設定された基準値に対応する振幅を取得する。ここでは、まず、分析周波数毎に振幅分布の25%が含まれる第1振幅及び75%が含まれる第2振幅を特定する。本実施形態においては、第1振幅は「波状走行の抑制あり」、第2振幅は「波状走行の抑制なし」に対応させる。また、周波数解析手段は、遅れ角についても周波数分布を算出する。本実施形態においては、遅れ角については、「波状走行の抑制あり」、「波状走行の抑制なし」のいずれの場合も、各分析周波数の遅れ角分布の統計値(ここでは中央値)を用いる。また、走行状態グループによって、異なる遅れ角の値を用いるようにしてもよい。
【0170】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、分析結果の登録処理を実行する(ステップS8−5)。具体的には、サーバ制御部21の周波数解析手段は、ステップS8−4において算出した代表値を周波数分析結果データ記憶部に格納する。この周波数分析結果データ記憶部には、巡航時間及び巡航速度により区画されたブロック毎に、第1振幅、第2振幅、遅れ角の周波数分布が記録される。
【0171】
(トリップ分類処理)
次に、トリップ分類処理を、図22、図23を用いて説明する。
ここでは、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、トリップのブロック分類処理を実行する(ステップS9−1)。具体的には、サーバ制御部21のトリップ分類手段は、トリップ時間及びトリップ距離によって区画されたブロックに分類する。本実施形態では、図23に示すように、横軸にトリップ時間、縦軸にトリップ距離を用いたトリップ分類マップにおいて、所定の間隔で区画されたブロックにより分割されている。ここでは、平均速度を示すライン(平均速度ライン)を中心にして、この平均速度ラインに近接したブロックが細かくなるように分割される。このトリップ分類マップでは、各トリップにおいて渋滞等による走行状態が反映されていることになる。すなわち、トリップ時間に対してトリップ距離が長い場合には、円滑な走行状態を示している。一方、トリップ時間に対してトリップ距離が短い場合には、渋滞等の影響により円滑な走行ができなかったことを示している。
【0172】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、トリップ時間、トリップ距離により区画されたブロック毎に、以下の処理を実行する。
まず、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップ距離の出現頻度の分析処理を実行する(ステップS9−2)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、ステップS2−6と同様に、ショートトリップ距離の累積頻度を算出し、各ショートトリップの出現頻度が等しい典型的なショートトリップを特定する。そして、ショートトリップ解析手段212は、出現頻度を予め定められた所定数の区間に分割し、分割された各区間の中央値のショートトリップ距離を特定する。
【0173】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップ時間の出現頻度の分析処理を実行する(ステップS9−3)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、ショートトリップ時間の累積頻度を算出し、各ショートトリップの出現頻度が等しい典型的なショートトリップを特定する。そして、ショートトリップ解析手段212は、出現頻度を予め定められた所定数の区間に分割し、分割された各区間の中央値のショートトリップ時間を特定する。
【0174】
次に、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、停止時間の出現頻度の分析処理を実行する(ステップS9−4)。具体的には、サーバ制御部21のショートトリップ解析手段212は、停止時間の累積頻度を算出し、各停止時間の出現頻度が等しい典型的な停止時間を特定する。そして、ショートトリップ解析手段212は、出現頻度を予め定められた所定数の区間に分割し、分割された各区間の中央値の停止時間を特定する。
【0175】
そして、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、ショートトリップの再構成処理を実行する(ステップS9−5)。具体的には、サーバ制御部21のトリップ分類手段は、各種走行状態グループの代表的な加速度を用いて、発進部及び減速部を生成する。この段階で、トリップ生成手段は、ステップS9−2において特定したショートトリップ距離、ステップS9−3において特定したショートトリップ時間、発進部及び減速部の加速度や減速度を取得する。この加速度及び減速部は、走行状態グループに応じて、サンプルデータベース22に記録されたショートトリップの統計値を算出する。そして、巡航時間、巡航速度、発進部の時間(加速時間)及び減速部の時間(減速時間)を変数として、以下の連立方程式を生成する。
【0176】
〔ショートトリップ時間〕=〔加速時間〕+〔巡航時間〕+〔減速時間〕
〔巡航速度〕=〔加速度〕*〔加速時間〕=〔減速度〕*〔減速時間〕
〔ショートトリップ距離〕=〔巡航速度〕*〔巡航時間〕+(〔加速度〕*〔加速時間〕^2)/2+(〔減速度〕*〔減速時間〕^2)/2
これらの連立方程式を解くことにより、発進部、巡航部、減速部からなる台形状の速度パターンを生成する。
【0177】
そして、トリップ生成手段は、周波数分析結果データ記憶部から、算出した巡航時間及び巡航速度に対応する第1振幅、第2振幅、遅れ角の周波数分布を取得する。そして、第1振幅を用いた「波状走行の抑制あり」及び第2振幅を用いた「波状走行の抑制なし」の代表走行パターンを生成する。
【0178】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 上記実施形態においては、振幅抽出処理において、ショートトリップについての周波数解析結果を算出する。そして、トリップ分類処理において、周波数解析結果を用いてショートトリップを再構成し、このショートトリップを用いて代表走行パターンを生成する。波状走行を行なっている場合には、速度の揺らぎが大きく、周波数解析において振幅が大きくなる。このように、走行状態を周波数と振幅により表わすことができるので、周波数解析結果を用いて、典型的な代表走行パターンを生成することができる。
【0179】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態では、巡航部において周波数解析を行なう。周波数解析を行なう区間は巡航部に限定されるものではなく、発進部や減速部においても周波数解析を行なってもよい。この周波数解析により算出した周波数や振幅を用いて、走行状態グループ毎に発進部、巡航部、減速部を再構成し、走行パターンを生成することも可能である。
【0180】
○ 上記実施形態では、代表走行パターンを生成するために周波数解析を用いる。これに代えて、実測した走行データを評価するために周波数解析を用いることも可能である。この場合には、環境負荷評価支援サーバ20のサーバ制御部21は、実測されたトリップデータを取得し、このトリップをショートトリップに展開する。そして、サーバ制御部21は、展開されたショートトリップの巡航部を特定し、この巡航部について周波数解析を行なう。そして、サーバ制御部21は、周波数解析によって算出された振幅の周波数分布により、走行状態を評価する。すなわち、振幅が大きい場合には、振幅を小さくすることにより環境負荷を軽減した運転を提案することができる。なお、この評価についても、巡航部の評価に限定されるものではなく、発進部、減速部に対して周波数解析を行ない、算出された振幅の周波数分布により、走行状態を評価するようにしてもよい。
【0181】
○ 上記実施形態では、所定の基準値(25%、75%)を用いて特定した振幅を用いて、巡航部の走行状態を再構成する。これに代えて、走行状態や道路状況に応じて、予め定められた周波数域毎に振幅を決定し、走行パターンを再構成してもよい。この場合、走行状態や道路状況を特定する情報(走行状態グループ)に対応させて、周波数解析を行なう周波数域を決めるための評価対象周波数データ記憶部を環境負荷評価支援サーバ20に設けておく。そして、指定された走行状態グループに応じて、評価対象周波数データ記憶部を用いて周波数域を決定し、周波数解析を行なう。例えば、十分な車間距離を確保している場合や、交通信号の切り替わりに応じてゆっくりと速度を変更している場合には、この変化に応じた周波数域の振幅が小さくなり、環境負荷を考慮した運転として評価することができる。
【符号の説明】
【0182】
10…クライアント端末、11…クライアント制御部、11a…入力制御手段、11b…計算制御手段、111…簡易入力手段、112…オプション入力手段、113…デフォルト値設定手段、114…速度パターン推定手段、115…車速変換手段、116…CO2計算手段、117…出力制御手段、118…デジタルデータ入力手段、119…削減支援手段、12…入力支援データベース、13…速度パターンデータベース、14…変換係数データベース、15…排出量原単位データベース、20…環境負荷評価支援サーバ、21…サーバ制御部、211…ショートトリップ展開手段、212…ショートトリップ解析手段、213…代表走行パターン算出手段、214…CO2排出量算出手段、215…プログラム配信手段、22…サンプルデータベース、23…速度パターンデータベース、24…代表走行パターンデータベース、25…入力支援データベース、26…変換係数データベース、27…排出量原単位データベース、28…評価プログラムデータ記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運行中の走行速度についての走行履歴を記録する運行記録データ記憶手段と、
走行状態グループに対応して、代表分析パターン変数値毎に代表速度パターンを記録する速度パターンデータ記憶手段と、
走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムであって、
前記制御手段が、
前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開し、
前記ショートトリップ毎に、各ショートトリップの大きさを表わす分析パターン変数値を算出し、
前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴について、前記分析パターン変数値の累積頻度分布を算出し、
前記累積頻度分布において累積頻度を表わした軸を一定幅で等間隔に分割し、各間隔の統計値からなる代表分析パターン変数値に対応する各ショートトリップを出現頻度が同じ代表速度パターンとして特定し、各ショートトリップの走行状態グループに対応させて前記速度パターンデータ記憶手段に記録し、この代表速度パターンを用いて二酸化炭素排出量を算出することを特徴とする環境負荷評価支援システム。
【請求項2】
前記制御手段が、トリップの大きさが指定された評価対象を取得した場合には、走行状態グループに対応させて、前記評価対象のトリップの大きさに達するまで、代表速度パターンの代表分析パターン変数値を順次、結合し、前記代表速度パターンに対応する二酸化炭素排出量を用いて評価を行なうことを特徴とする請求項1に記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項3】
前記制御手段が、各ショートトリップにおける周波数解析を行ない、振幅の周波数分布を算出し、
走行状態グループに対応させて前記振幅の周波数分布の統計値を算出し、
前記振幅の周波数分布の統計値を用いて、ショートトリップを再構成し、
前記再構成したショートトリップを用いて、代表速度パターンを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項4】
前記制御手段が、運行中の走行速度についての走行履歴が記録された評価対象を取得した場合には、走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出し、
前記走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開し、
各ショートトリップについて、前記速度パターンデータ記憶手段において、走行状態グループに対応させて、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンを特定し、
この代表速度パターンに置き換えた場合の二酸化炭素排出量を比較結果として出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項5】
前記制御手段が、各ショートトリップにおける発進時の加速度を算出し、
前記加速度が基準値以上のショートトリップを、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンへの置き換えを実行することを特徴とする請求項4に記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項6】
前記制御手段が、各ショートトリップにおける単位距離あたりの加速エネルギ当量を算出し、
前記加速エネルギ当量が基準値以上のショートトリップを、二酸化炭素排出量が少ない代表速度パターンへの置き換えを実行することを特徴とする請求項4又は5に記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項7】
前記制御手段が、ショートトリップ間の時間間隔を算出し、
前記時間間隔が基準時間以上のショートトリップ間を、アイドリングを停止した場合の速度パターンへの置き換えを実行することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項8】
前記分析パターン変数値として、ショートトリップの所要時間を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項9】
前記分析パターン変数値として、ショートトリップにおける走行距離を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項10】
運行中の走行速度についての走行履歴を記録する運行記録データ記憶手段と、
走行状態グループに対応して、代表分析パターン変数値毎に代表速度パターンを記録する速度パターンデータ記憶手段と、
走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムを用いて、環境負荷の評価を支援する方法であって、
前記制御手段が、
前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開し、
前記ショートトリップ毎に、各ショートトリップの大きさを表わす分析パターン変数値を算出し、
前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴について、前記分析パターン変数値の累積頻度分布を算出し、
前記累積頻度分布において累積頻度を表わした軸を一定幅で等間隔に分割し、各間隔の統計値からなる代表分析パターン変数値に対応する各ショートトリップを出現頻度が同じ代表速度パターンとして特定し、各ショートトリップの走行状態グループに対応させて前記速度パターンデータ記憶手段に記録し、この代表速度パターンを用いて二酸化炭素排出量を算出することを特徴とする環境負荷評価支援方法。
【請求項11】
運行中の走行速度についての走行履歴を記録する運行記録データ記憶手段と、
走行状態グループに対応して、代表分析パターン変数値毎に代表速度パターンを記録する速度パターンデータ記憶手段と、
走行速度に基づいて排出される二酸化炭素量を算出する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムを用いて、環境負荷の評価を支援するプログラムであって、
前記制御手段を、
前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴を構成するトリップを、走行速度が「0」になる一時停止状態で区切られたショートトリップに展開し、
前記ショートトリップ毎に、各ショートトリップの大きさを表わす分析パターン変数値を算出し、
前記運行記録データ記憶手段に記録された走行履歴について、前記分析パターン変数値の累積頻度分布を算出し、
前記累積頻度分布において累積頻度を表わした軸を一定幅で等間隔に分割し、各間隔の統計値からなる代表分析パターン変数値に対応する各ショートトリップを出現頻度が同じ代表速度パターンとして特定し、各ショートトリップの走行状態グループに対応させて前記速度パターンデータ記憶手段に記録し、この代表速度パターンを用いて二酸化炭素排出量を算出する手段として機能させることを特徴とする環境負荷評価支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−76712(P2013−76712A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6644(P2013−6644)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2009−169390(P2009−169390)の分割
【原出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(592131906)みずほ情報総研株式会社 (187)
【出願人】(301028761)独立行政法人交通安全環境研究所 (55)
【Fターム(参考)】