説明

環境配慮型熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形体

【課題】難燃性、成形性を付与することができ、同時に優れた剛性、耐熱性、耐衝撃性を具備した環境配慮型熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド11樹脂(A1)および/またはポリアミド1010樹脂(A2)20〜70質量%と、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるポリ乳酸樹脂(B)5〜40質量%と、ガラス繊維(C)5〜50質量%と、難燃剤(D)5〜40質量%とからなることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性、剛性を具備したうえで、難燃性、成形性を改良した環境配慮型熱可塑性樹脂組成物、及びそれを用いてなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、バイオマス由来樹脂として種々の検討がなされており、さまざまな分野に応用展開が図られようとしている。特に、従来、結晶化速度が遅いために応用が難しかった射出成形分野についても、結晶性が高く、耐熱性のある成形性に優れたポリ乳酸が提供されるようになった。その結果、種々の分野へ応用され、たとえば家電機器や自動車部品といった従来は応用が不可能なものにも展開が図られようとしている。
【0003】
これら家電機器や自動車部品への応用を考えた場合、難燃性の付与が重要な課題として残る。ハロゲン系化合物は、他の樹脂と同様に、生分解性樹脂に使用しても難燃性を付与できることが知られている。しかし、この化合物は、環境問題、毒性、電子機器などへの悪影響などから、その使用は好ましくなく、代替方法が検討されている。
例えば、金属水酸化物を大量に添加する方法や、純度の高い水酸化物系化合部、リン系化合物などを添加する方法により、それぞれ難燃性が付与できることが開示されている(例えば特許文献1、2参照)。しかしながら、これらの無機化合物を大量に添加する系は、難燃性は付与できるものの、樹脂組成物としての物性が非常に低くなってしまい、強度面で十分なものが得られていなかった。また、樹脂の結晶化が十分促進されないため、耐熱性に劣るものしか得られなかった。
また、これら難燃剤に加えて結晶核剤を添加することで耐熱性の優れた難燃性ポリ乳酸が得られることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、開示されている結晶核剤では結晶化速度は十分に速くならず、射出成形中に結晶化を十分進ませることは出来ず、成形性に優れた難燃性の耐熱樹脂を作製することはできなかった。
さらに、ポリ乳酸に(メタ)アクリル酸エステル化合物と、金属酸化物や金属水酸化物を添加することにより、難燃性や成形性を改良する研究もなされてきた(例えば、特許文献4)。しかし、得られた組成物は実使用に耐えうるまでの難燃性を付与するには至っておらず、さらなる改良が必要であった。
【0004】
一方、ポリ乳酸以外の植物由来の熱可塑性樹脂としてポリアミド11樹脂やポリアミド1010樹脂が注目されている。ポリアミド11樹脂やポリアミド1010樹脂は、ポリ乳酸と比べて柔軟性や耐久性などに優れ、各種の産業分野でホース、チューブなどの用途に使用されている。上述のように、ポリアミド11樹脂やポリアミド1010樹脂は植物由来原料から製造され、環境への配慮の点で好ましいが、価格が高いため、広い用途には普及しにくく、自動車関係でも、必要に応じた限られた範囲のみに用いられ、自動車関係の一般成形品としてはその低価格性などからポリプロピレン樹脂を初めとする汎用樹脂が広く用いられてきた。また、ポリアミド11樹脂やポリアミド1010樹脂は植物由来ではあるが、製造工程における二酸化炭素の発生量は低くはなく、ポリオレフィン等の汎用樹脂と比較して、同等あるいはそれ以上であることも、広範囲な普及に関して問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−252823号公報
【特許文献2】特開2003−192925号公報
【特許文献3】特開2004−190025号公報
【特許文献4】特願2004−329896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、前記問題を解決し、難燃性、成形性を付与することができ、同時に優れた剛性、耐熱性、耐衝撃性を具備した環境配慮型熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド1010樹脂と、ポリ乳酸樹脂と、ガラス繊維と、難燃剤とを含有する樹脂組成物によって前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリアミド11樹脂(A1)および/またはポリアミド1010樹脂(A2)20〜70質量%と、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるポリ乳酸樹脂(B)5〜40質量%と、ガラス繊維(C)5〜50質量%と、難燃剤(D)5〜40質量%とからなることを特徴とする樹脂組成物。
(2)ポリ乳酸樹脂(B)はアセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3)前記ポリ乳酸樹脂(B)が、過酸化物および/または(メタ)アクリル酸エステル化合物によって架橋されていることを特徴とする(1)又は(2)記載の樹脂組成物。
(4)ガラス繊維(C)が、その繊維断面の長径/短径が1.5〜10であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)難燃剤(D)がホスフィン酸金属塩であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、植物由来比率が高い熱可塑性樹脂組成物で、成形性、耐熱性、および、耐衝撃性に優れ、かつ、高剛性と難燃性とを有している。ポリ乳酸樹脂としてD体含有量が特定範囲のものを使用することにより、特に耐熱性に優れた樹脂組成物とすることができる。この樹脂組成物を電気製品の部品などに用いることで、低環境負荷材料であるポリアミド11樹脂やポリアミド1010樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値はきわめて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド11樹脂(A1)および/またはポリアミド1010樹脂(A2)(以下、ポリアミド樹脂(A)と略する。)と、ポリ乳酸樹脂(B)と、ガラス繊維(C)と、難燃剤(D)とを含有する樹脂組成物である。
本発明において、ポリアミド11樹脂(A1)としては、天然ひまし油中のリシノール酸を原料とし、11−アミノウンデカン酸を重縮合したものが挙げられる。その製造方法は、特に制限されず、公知の方法に従ってポリアミド11樹脂(A1)を製造することができ、製造の際に各種の触媒、熱安定剤等の添加剤を使用してもよい。ポリアミド11樹脂(A1)の市販品としては、例えば、アルケマ製『リルサン BMN O』が挙げられる。
【0010】
また、ポリアミド1010樹脂(A2)としては、天然ひまし油を原料とし、セバシン酸とデカンジアミンとを重縮合したものが挙げられる。本発明に用いられるポリアミド1010樹脂(A2)は、環境負荷を考慮すると、ASTM(D6866)に準拠して測定したバイオマス炭素含有率が50%以上であることが望ましい。
【0011】
本発明の樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(A)の含有量は、20〜70質量%であることが必要である。含有量が20質量%未満では得られる樹脂組成物は柔軟性や成形性に劣るものとなり、また、植物由来比率も不十分となる。一方、含有量が70質量%を超えると、樹脂組成物に優れた剛性を付与することができず、本発明の目的を達成できないうえに、必ずしも経済的ではないため、コスト面では不利となる。
【0012】
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂成分としてポリ乳酸樹脂(B)を含有することが必要である。ポリ乳酸樹脂(B)を含有することにより、成形時のヒケを低減させて、寸法精度を改善することができる。また、ポリ乳酸樹脂(B)を含有することにより、樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。さらに、ポリ乳酸樹脂(B)は、トウモロコシなど種々の植物を原料とするものを用いることが出来、その場合は寸法精度改善に加え、植物由来度を高く保つことができる。
【0013】
まず、本発明におけるポリ乳酸樹脂(B)は、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または、D体含有量が99.0モル%以上であることが必要であり、中でも、0.1〜0.6モル%であるか、または、99.4〜99.9モル%であることが好ましい。D体含有量がこの範囲内であることにより、結晶性に優れるものとなり、耐熱性が向上する。D体含有量がこの範囲外であるポリ乳酸樹脂であると、結晶性の向上が不十分で、耐熱性を向上させることが困難となる。
【0014】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(B)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(B)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂(B)の場合、このポリ乳酸樹脂(B)は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
【0015】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(B)のD体含有量は、実施例にて後述するように、ポリ乳酸樹脂(B)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出するものである。
【0016】
本発明に用いるポリ乳酸樹脂(B)としては、市販の各種ポリ乳酸樹脂のうち、D体含有量が本発明で規定する範囲のポリ乳酸樹脂を用いることができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量が十分に低いL-ラクチド、または、L体含有量が十分に低いD-ラクチドを原料に用い、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造したものを用いることができる。
【0017】
本発明の樹脂組成物中におけるポリ乳酸樹脂(B)の含有量は、5〜40質量%であることが必要であり、中でも5〜30質量%であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(B)の含有量が5質量%未満では、成形時のヒケを低減させ、寸法精度を改善することができない場合や、難燃性を向上させることができない場合がある。また含有量が40質量%を超えると、耐久性や耐衝撃性に劣る場合がある。
【0018】
そして、本発明において、ポリ乳酸樹脂(B)は、アセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であることが好ましい。このようなポリ乳酸樹脂とすることにより、さらに結晶性が向上し、耐熱性が向上したものとなる。
アセトン処理とは、ポリ乳酸をアセトンで洗浄することであり、アセトンでの洗浄方法としては、以下のような方法が好ましい。ポリ乳酸とアセトンとの質量比を1:1〜1:3とし、攪拌翼などによって30分以上の攪拌を行う。なお、攪拌時の温度は、0℃〜60℃の範囲が好ましく、中でも10℃〜40℃、より好ましくは20℃〜30℃である。温度が60℃を超える場合、アセトンの沸点を超えているため、アセトンの揮発が大きくなる。0℃未満の場合、アセトンの冷却を行わなければならないため、コスト的に不利となる。攪拌翼の攪拌速度は、50〜1000rpmが好ましく、中でも100〜500rpmが好ましく、より好ましくは150〜300rpmである。1000rpmを超える場合、攪拌速度が速すぎ、樹脂同士が激しくぶつかることによってダストの発生が多くなる。10rpm未満の場合、アセトン中に抽出されるラクチド量が少なくなり、処理時間が長時間となる。
【0019】
一般には、ポリ乳酸中の未反応ラクチドを抽出するためには、メタノール等の他の溶媒も使用できるが、本発明においては、アセトンを溶媒として使用することにより、未反応ラクチドを抽出すると同時に、ポリ乳酸の結晶化速度を向上させることも可能となる。
【0020】
アセトンは比較的安価な溶媒でありコスト的に有利であり、また、ラクチドだけでなく、ポリ乳酸中の低分子オリゴマーの抽出も可能である。また、処理後の残渣から、乳酸が検出されないため、抽出物が分解して乳酸になることがなく安定であるため、ラクチドの再利用などを考えた場合にはコスト的に有利となる。これらのことにより、上記したようなポリ乳酸の結晶化速度の向上効果が生じるものと推定される。
【0021】
アセトンに代えて、メタノールなどの他の溶媒を用いた場合、残渣から乳酸が多く検出される。このため、樹脂中に乳酸が残存した場合などは、加工や保存中に分子量低下などの問題が生じることがあり、そして、このようなポリ乳酸では結晶化速度は向上していない。
【0022】
また、ポリ乳酸中の未反応ラクチドを除去する方法として、一軸押出し機、二軸押出し機などでラクチド除去を行う方法も一般的である。しかしながら、これらの方法でラクチド除去を行った場合も低分子オリゴマーがポリ乳酸中に残存しており、得られるポリ乳酸は結晶化速度が向上したものとはならない。
【0023】
本発明におけるポリ乳酸樹脂(B)は、上記のようなアセトン処理が施されることにより、樹脂中の残存ラクチド量が700ppm以下であることが好ましく、中でも500ppm以下であることが好ましい。残存ラクチド量が700ppmを超える場合、結晶性の向上効果及び耐熱性の向上効果が小さく、また、溶融加工時に分子量低下や着色が生じることもある。
【0024】
ポリ乳酸樹脂(B)の残存ラクチド量は以下のようにして測定、算出する。まず、試料0.1gに、塩化メチレン9ml、内部標準液1ml(2,6−ジメチル−γ−ピロンの5000ppm溶液)を加え、ポリマーを溶解させる。ポリマー溶解液にシクロヘキサン40mlを添加し、ポリマーを析出させる。HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過後、Agilent Technologies社製7890A GCSystemでGC測定し、ラクチド含有量を算出する。
なお、ポリ乳酸樹脂(B)とポリアミド11樹脂(A1)および/またはポリアミド1010樹脂(A2)とガラス繊維(C)と難燃剤(D)とを含有する樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(B)の残存ラクチド量を測定する際にも上記と同様に測定、算出できる。このときは、樹脂組成物を試料として用いる。
【0025】
さらに、本発明において、ポリ乳酸樹脂(B)としては、過酸化物および/または(メタ)アクリル酸エステル化合物によって架橋構造を有したポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。これにより、成形時の結晶性をさらに向上させ、得られる成形体の耐熱性を向上させることができる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維(C)を含有することが必要である。前記ガラス繊維(C)は、その断面は円形であってもよいが、繊維断面の長径/短径が1.5〜10である扁平断面を有することが好ましく、長径/短径が2.0〜6.0であることがさらに好ましい。長径/短径が1.5以上であると、成形体に耐衝撃性や耐熱性を付与することができる。なお、長径/短径が10を超えるものはガラス繊維自体の製造が困難である。
ガラス繊維(C)は、繊維断面の長径が10〜50μmであることが好ましく、15〜40μmであることがさらに好ましく、20〜35μmであることがより好ましい。
また、ガラス繊維(C)の平均繊維長と平均繊維径との比(アスペクト比)は、2〜120であることが好ましく、2.5〜70であることがさらに好ましく、3〜50であることがより好ましい。アスペクト比が2未満であると機械的強度の向上効果が小さく、120を超えると異方性が大きくなる他、成形品外観も悪化するようになる。なお、ガラス繊維の平均繊維径とは、扁平断面形状を同一面積の真円形に換算したときの数平均繊維径をいう。
本発明においてガラス繊維(C)としては、Eガラスのような一般的なガラス繊維組成の繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであればどのような組成でも使用可能で特に限定されるものではない。
ガラス繊維(C)は、公知のガラス繊維の製造方法により製造され、マトリックス樹脂との密着性、均一分散性の向上のためシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤などのカップリング剤を少なくとも1種類、帯電防止剤、及び皮膜形成剤などを含んだ配合する樹脂に適した公知の集束剤により集束され、集束されたガラス繊維ストランドを集めて一定の長さに切断したチョップドストランドの形態で使用される。
本発明の樹脂組成物において、ガラス繊維(C)の含有量は、5〜50質量%であることが必要であり、10〜45質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。ガラス繊維(C)の含有量が5質量%未満の場合にはソリが大きくなるため好ましくない。また含有量が50質量%を超えると、成形体の外観が悪化する上に、樹脂組成物の製造が困難である。
【0027】
さらに、本発明の樹脂組成物は、難燃剤(D)を含有することが必要である。本発明において、難燃剤(D)として使用できる化合物に特に制限はないが、例えば、各種のホウ酸系難燃化合物、リン系難燃化合物、無機系難燃化合物、チッソ系難燃化合物、ハロゲン系難燃化合物、有機系難燃化合物、コロイド系難燃化合物等が挙げられる。これら難燃剤は、二種以上を用いても構わない。
【0028】
ホウ酸系難燃化合物としては、例えば、ホウ酸亜鉛水和物、メタホウ酸バリウム、ほう砂などのホウ酸を含有する化合物等が挙げられる。
リン系難燃化合物としては、例えば、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、赤燐、リン酸エステル、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(モノクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリアリルフォスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス−β−クロロプロピルホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)エチレン・ジフォスフェート、ジメチルフォスフェート、トリス(2−クロロエチル)オルトリン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合有機リン酸エステル、エチレン・ビス・トリス(2−シアノエチル)ホスフォニウム・ブロミド、ポリリン酸アンモニウム、β−クロロエチルアッシドフォスフェート、ブチルピロフォスフェート、ブチルアッシドフォスフェート、ブトキシエチルアッシドフォスフェート、2−エチルヘキシルアッシドフォスフェート、メラミンリン酸塩、含ハロゲンフォスホネート、フェニル・フォスフォン酸、ホスフィン酸金属塩、ホスフィン酸エステル等のリンを含有する化合物が挙げられる。
【0029】
無機系難燃化合物としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸水素カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンチモン、硫酸エステル、硫酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル、硫酸バリウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸金属化合物、硫酸アンモニウムなどのアンモン系難燃化合物、フェロセンなどの酸化鉄系燃焼触媒、硝酸銅などの硝酸金属化合物、酸化チタンなどのチタンを含有する化合物、スルファミン酸グアニジンなどのグアニジン系化合物、その他、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、錫系化合物、炭酸カリウムなどの炭酸塩化合物、水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウム等の水酸化金属およびそれらの変性物が挙げられる。
チッソ系難燃化合物としては、例えば、トリアジン環を有するシアヌレート化合物等が挙げられる。
【0030】
ハロゲン系難燃化合物としては、例えば、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス・ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビス・テトラブロモフタルイミド、ジブロモエチル・ジブロモシクロヘキサン、ジブロモネオペンチルグリコール、2,4,6−トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラブロモ・ビスフェノールA誘導体、テトラブロモ・ビスフェノールS誘導体、テトラデカブロモ・ジフェノキシベンゼン、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)−イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、トリブロモスチレン、トリブロモフェニルマレイニド、トリブロモネオペンチル・アルコール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモベンジルアクリレート、ペンタブロモフェノール、ペンタブロモトルエン、ペンタブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモフェノールエーテル、オクタジブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルオキシド、ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモジフェニルアミン、臭化スチレン、またはジアリルクロレンデート等のハロゲンを含有する難燃化合物が挙げられる。
【0031】
有機系難燃化合物としては、例えば、無水クロレンド酸、無水フタル酸、ビスフェノールAを含有する化合物;グリシジルエーテルなどのグリシジル化合物;ジエチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール;変性カルバミド;シリコーンオイル、二酸化ケイ素、低融点ガラス、オルガノシロキサン等のシリカ系化合物が挙げられる。
【0032】
コロイド系難燃化合物としては、例えば、従来から使用されている難燃性を持つ水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、アルミン酸カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂、カオリンクレーなどの水和物、硝酸ナトリウムなどの硝酸化合物、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物、ドーソナイト、またはプロゴパイト等の難燃性化合物のコロイド等が挙げられる。
【0033】
本発明における難燃剤(D)は、なかでも、例えば焼却処分の際に有毒ガスが発生するなど、廃棄の際に環境に負荷を与えないものが好ましい。そのような環境配慮の観点からは、本発明における難燃剤(D)としては、例えば、ホスフィン酸金属塩、ホスフィン酸エステルなどのリン系化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムもしくは水酸化カルシウムなどの水酸化物系化合物、二酸化ケイ素、低融点ガラスもしくはオルガノシロキサンなどのシリカ系化合物を使用することが望ましい。これらの中でも、リン系化合物のホスフィン酸金属塩が特に好ましい。
【0034】
ホスフィン酸金属塩とは以下の式(I)および/または(II)に示すようなホスフィン
酸と金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物を用いて水溶液中で製造され、本質的にモノマーとして存在するが、反応条件に依存して、縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩の形として存在する場合もある。ホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸及びジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。また、金属成分としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、および/または、亜鉛イオンを含む金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物が挙げられる。
【0035】
【化1】

【0036】
【化2】

(式中、R、RおよびR、Rはそれぞれ直鎖あるいは分岐鎖のC〜C16アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、フェニルであり、RとRおよびRとRは互いに環を形成してもよい。Rは直鎖あるいは分岐鎖のC〜C10アルキレン、特にメチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン;アリーレン、特にフェニレン、ナフチレン、アルキルアリーレン、特にメチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert−ブチルナフチレン;アリールアルキレン、特にフェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、フェニルブチレンであり、Mはカルシウムまたはアルミニウムイオンであり、mは2または3であり、nは1または3であり、xは1または2である。式(II)ではmx=2nである。)
【0037】
上記ホスフィン酸金属塩としては例えばジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
また、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。特に難燃性、電気特性の観点からジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物において、難燃剤(D)の含有量は、5〜40質量%であることが必要であり、15〜25質量%であることが好ましい。含有量が5質量%未満であると、難燃性を達成できず、40質量%を超えると、機械的強度や熱特性の低下が起こるため好ましくない。
【0039】
また、本発明においては難燃助剤(D′)を使用してもよい。難燃助剤(D′)としては、メラミンとリン酸との反応生成物および/またはシアヌル酸メラミンが挙げられる。
メラミンとリン酸との反応生成物とは、メラミンとリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸との実質的に等モルの反応生成物から得られるものであり、製法には特に制約はない。通常、リン酸メラミンを窒素雰囲気下、加熱縮合して得られるポリリン酸メラミンを挙げることができる。ここで、リン酸メラミンを構成するリン酸としては、具体的にはオルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられるが、特に、オルトリン酸、ピロリン酸を用いたメラミンとの付加物を縮合したポリリン酸メラミンが難燃性の点から好ましい。メラミンとリン酸との反応生成物の粒径は、本発明組成物を成形して得られる成形品の機械的強度、成形品外観の点で、100μm以下、好ましくは50μm以下に粉砕した粉末を用いるのがよい。0.5〜20μmの粉末を用いると、高い難燃性が発現するばかりでなく成形品強度も著しく高くなるので特に好ましい。
また、シアヌル酸メラミンは、シアヌル酸とメラミンとの等モル反応物であり、たとえばシアヌル酸の水溶液とメラミンの水溶液とを混合し、70〜100℃程度の温度で撹拌しながら反応され、得られる沈澱物を濾過させることによって得ることができる。シアヌル酸メラミンの粒径は成形品の機械物性、外観の点から、100μm以下が好ましく、さらに好ましくは50μm以下であり、このような粒径に粉砕して粉末を用いるのがよい。0.5〜20μmの粉末を用いると高い難燃性が発現するばかりでなく成形品の強度も著しく高くなるので特に好ましい。
また、難燃剤(D)と難燃助剤(D′)の質量比(D/D′)は、4〜25であること
が好ましく、5〜20であることがさらに好ましい。この質量比が4未満であると、機械的強度や靭性が低下し、質量比が25を超えると難燃性が達成できないため好ましくない。
【0040】
ポリアミド樹脂(A)と、ポリ乳酸樹脂(B)と、ガラス繊維(C)と、難燃剤(D)とを混合する手段は、特に限定されないが、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態をよくする意味で二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は(ポリアミド樹脂の融点+5℃)〜(ポリアミド樹脂の融点+100℃)の範囲が、また、混練時間は20秒〜30分が好ましい。この範囲より低温や短時間であると混練や反応が不充分となり、逆に、高温や長時間であると樹脂の分解や着色が起きる場合があり、ともに好ましくない。また、難燃性と形状安定性を両立させるためには、ガラス繊維(B)以外の原料を十分に溶融混合した後に、ガラス繊維(B)を所定量サイドフィードし、減圧脱気することが好ましい。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、結晶核剤等を添加することができる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。
無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
無機結晶核剤としては、タルク、カオリン等が挙げられ、有機結晶核剤としては、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物の他に、アミド化合物としてエチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスアクリル酸アミド、エチレンビスアクリル酸アミド、ヘキサメチレンビス-9,10−ジヒドロキシ
ステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9,10ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N′−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N′−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等が挙げられる。なお、本発明の樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。とりわけ、射出成形法を採ることが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度を樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、好ましくは190〜270℃とし、また、金型温度は樹脂組成物の(融点−20℃)以下とするのが適当である。成形温度が低すぎると成形体にショートが発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、逆に、成形温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすく、ともに好ましくない場合がある。
【0043】
成形体の具体例としては、パソコン周辺の各種部品及び筐体、携帯電話部品及び筐体、その他OA機器部品等の電化製品用樹脂部品、コンテナや栽培容器等の農業資材や農業機械用樹脂部品、浮きや水産加工品容器等の水産業務用樹脂部品、皿、コップ、スプーン等の食器や食品容器、注射器や点滴容器等の医療用樹脂部品、ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤等の住宅・土木・建築材用樹脂部品、クーラーボックス、団扇、玩具等のレジャー、雑貨用樹脂部品、バンパー、インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車用樹脂部品等が挙げられる。また、フィルム、シート、パイプ等の押出成形品、中空成形品等とすることもできる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、実施例ならびに比較例での使用した材料および評価方法は次の通りである。
【0045】
〔材料〕
ポリアミド樹脂(A)
・ポリアミド11樹脂(A1):アルケマ製 リルサンBMN O
・ポリアミド1010樹脂(A2):セバシン酸(豊国製油製)100質量部を熱メタノールに撹拌しながら溶かした。次にデカメチレンジアミン(小倉合成工業製)85質量部をメタノールに溶かし、先のセバシン酸メタノール溶液にゆっくり加えた。すべて加えた後、15分程度撹拌し、析出物をろ過、メタノール洗浄することにより、デカメチレンジアンモニウムセバケートを得た。
次にデカメチレンジアンモニウムセバケート100質量部と水33質量部をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、設定温度240℃、25rpmで撹拌しながら加熱を開始した。2MPaの圧力で2時間保持した後、水蒸気を排気して圧力を常圧まで下げた。常圧〜0.02MPaで2〜3時間撹拌した後、1時間静置し、払出した。その後、減圧乾燥しポリアミド1010樹脂を得た。
【0046】
ポリ乳酸樹脂(B)
・ポリ乳酸樹脂(B1);トヨタ社製、商品名「S−12」、D体含有量0.1モル%、MFR=8g/10分、融点178 ℃
・ポリ乳酸樹脂(B2);ユニチカ社製、商品名「TE−4000」、D体含有量1.4モル% MFR=10g/10分、融点:168℃
・ポリ乳酸樹脂(B3);二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸樹脂(B1)100質量部を押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数280rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。さらに、エチレングリコールジメタクリレート0.10質量部、および、過酸化物パーブチルD(日本油脂製)0.2質量部をシリンダ内に供給した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを70℃×24時間真空乾燥して、架橋ポリ乳酸樹脂を得た。
・ポリ乳酸樹脂(B4);二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸樹脂(B2)100質量部を押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数280rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。さらに、エチレングリコールジメタクリレート0.10質量部、および、過酸化物パーブチルD(日本油脂製)0.2質量部をシリンダ内に供給した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを70℃×24時間真空乾燥して、架橋ポリ乳酸樹脂を得た。
・ポリ乳酸樹脂(B5);ポリ乳酸樹脂(B1)に以下のようにアセトン処理を施して得た。ポリ乳酸樹脂(B1)とアセトンの質量比が1:2になるよう計測し、ポリ乳酸樹脂(B1)にアセトンを加え、室温条件下で1時間、150rpmで攪拌した。その後、ろ過して70℃×24時間真空乾燥(Yamato Vacuum dry DP61を使用)することでアセトンの除去を行い、ポリ乳酸樹脂(B5)を得た。得られたポリ乳酸樹脂(B5)の残存ラクチド量は400ppmであった。
・ポリ乳酸樹脂(B6);ポリ乳酸樹脂(B2)に代えて、ポリ乳酸樹脂(B5)を用いた以外は、ポリ乳酸樹脂(B4)と同様にして架橋ポリ乳酸樹脂を得た。
【0047】
ガラス繊維(C)
・ガラス繊維(C1);日東紡績製CSG3PA820S(長径28μm、短径7μm、長短径の比が4.0の偏平断面を有する偏平ガラス繊維)
・ガラス繊維(C2);日東紡績製CS3J−451 (直径10μm、長さ3mmの円形断面を有するガラス繊維)
【0048】
難燃剤(D)
・難燃剤(D1);ホスフィン酸塩 クラリアント製 エクソリットOP1312
・難燃剤(D2);ホスフィン酸エステル 大八化学製 PX−200
【0049】
〔評価方法〕
(1)ポリ乳酸樹脂(B)のD体含有量
得られた樹脂組成物より取り出したポリ乳酸樹脂を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂(B)のD体含有量(モル%)とした。
(2)曲げ弾性率
得られた樹脂組成物のペレットを90℃×24時間真空乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて、金型表面温度を85℃に調整しながら、一般物性測定用試験片(ASTM型)を作製した。
得られた試験片を用い、ASTM D790に準拠して測定した。曲げ弾性率は2.0GPa以上であることが好ましい。
(3)荷重たわみ温度
(2)で得られた試験片を用い、ASTM D648に準拠し、荷重0.45MPaで熱変形温度を測定した。熱変形温度は110℃以上であることが好ましい。
(4)アイゾット衝撃値
(2)で得られた試験片を用い、ASTM D256−56に準拠して測定した。アイゾット衝撃値は100J/m以上であることが好ましい。
(5)ヒケ量
(2)に記載した試験片の作製方法と同様の条件で、4×6インチ×10mm厚の試験片を作製した。試験片50個につき、中央部のヒケの深さを測定した。ヒケが生じている箇所の深さを測定し、その平均値を求めた。
(6)成形サイクル
得られた樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(東芝IS−80G)でISOダンベル型試験片を作製した。成形温度210℃で溶融し、射出時間10秒、金型温度85℃の条件で、溶融樹脂を金型に充填した。成形サイクルは、樹脂組成物が金型内に射出(充填、保圧)、冷却された後、成形体が金型に固着、または、抵抗なく取り出すことができ、突き出しピンによる変形がなく、良好に離型できるまでの時間(秒)とした。成形サイクル60秒以下であるのが経済性の点から好ましい。
(7)難燃性
UL94(米国Under Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の方法に従って測定した。なお試験片の厚みは1/16インチ(約1.6mm)とした。難燃性はV−1あるいはV-0であることが好ましい。また、V−2に満たないものは×で評価した。
【0050】
実施例1〜15、比較例1〜11
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリアミド樹脂(A)、ポリ乳酸樹脂(B)、ガラス繊維(C)、難燃剤(D)として、表1、2に示す種類のものを用い、表1、2に示す含有量となるようにドライブレンドして押出機に供給した。このとき、ガラス繊維(C)以外のものを押出機の根元供給口から供給し、さらにガラス繊維(C)を押出機のサイド供給口から供給して、バレル温度210℃、スクリュー回転数220rpm、吐出20kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
表1から明らかなように、実施例1〜15で得られた樹脂組成物は、剛性、耐熱性、耐衝撃性や成形性に優れ、難燃性の評価も高いものであった。中でも、ポリ乳酸樹脂(B)として、アセトン洗浄を施し、残存ラクチド量を400ppmとしたポリ乳酸樹脂(B5)やポリ乳酸樹脂(B6)を用いた実施例14、15の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂の結晶性が向上したことにより、耐熱性、成形性に特に優れていた。
これに対して、表2に示したように、比較例1の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(B)が配合されていないため、また、比較例2の樹脂組成物はポリ乳酸樹脂の含有量が少なすぎたため、ともに難燃性に劣るだけでなく、ヒケ低減の効果は得られなかった。比較例3および7の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(B)の含有量が多すぎたため、ともに耐衝撃性、成形サイクルに劣る結果となった。また、比較例4の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)の含有量が少なすぎたため、耐熱性、成形サイクルに劣る結果となった。比較例5の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)の含有量が多すぎたため、剛性および耐熱性に劣る結果となった。比較例6の樹脂組成物は、難燃剤(D)を配合していないため、難燃性に劣る結果となった。比較例8、9、10、11の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂としてD体含有量が1.4%のものを使用したものであったため、耐熱性に劣り、成形サイクルが長く、成形性にも劣る結果となった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド11樹脂(A1)および/またはポリアミド1010樹脂(A2)20〜70質量%と、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるポリ乳酸樹脂(B)5〜40質量%と、ガラス繊維(C)5〜50質量%と、難燃剤(D)5〜40質量%とからなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ポリ乳酸樹脂(B)はアセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリ乳酸樹脂(B)が、過酸化物および/または(メタ)アクリル酸エステル化合物によって架橋されていることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ガラス繊維(C)が、その繊維断面の長径/短径が1.5〜10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
難燃剤(D)がホスフィン酸金属塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2012−177099(P2012−177099A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7100(P2012−7100)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】