説明

環式ニトロメチル酢酸誘導体

本発明は、環式および二環式アミノ酸の調製の際に中間体として有用な、式(I)の塩
【化1】


[式中、Xは、I族もしくはII族の金属、および第1級、第2級、もしくは第3級アミンから選択された塩基性の対イオンであり、nは、0、1または2であり、R、R1a、R、R2a、R、R3a、R、およびR4aは、HおよびC〜Cアルキルから独立に選択され、あるいはRとR、またはRとRは、一緒になってC〜Cシクロアルキル環を形成し、このシクロアルキル環は、C〜Cアルキルから選択された1個または2個の置換基で置換されていてもよい。]を提供する。最終生成物の調製方法、および式(I)の化合物をアミノ酸に変換する方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な環式ニトロメチル酢酸誘導体の塩、その製造方法、ならびに環式アミノ酸調製の際の中間体としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願公開第99/21824号は、てんかん、失神発作、神経変性障害、うつ病、不安、パニック、疼痛、神経病理的障害、過敏性腸症候群(IBS)などの胃腸障害、および炎症、特に関節炎の治療に有用な環式アミノ酸を開示している。開示されている化合物には、次式の化合物
【0003】
【化1】

[式中、Rは、水素または低級アルキルであり、R〜Rは、水素、炭素数1〜6個のアルキル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、アミノ、アミノメチル、トリフルオロメチル、−COH、−CO15、−CHCOH、−CHCO15、−OR15からそれぞれ独立に選択され、R15は、炭素数1〜6個のアルキル、フェニル、またはベンジルであり、R〜Rは、同時に水素になることはない。]およびその塩が含まれる。
【0004】
米国特許出願第60/160725号に対応する国際特許出願公開第01/28978号は、次式
【0005】
【化2】

[式中、nは、1〜4の整数であり、立体中心がある場合、各中心は、それぞれ独立に、RでもSでもよく、好ましい化合物は、nが2〜4の整数である上記式I〜IVの化合物である。]の一連の新規な二環式アミノ酸、その薬学的に許容できる塩、およびそのプロドラッグを記載している。この化合物は、てんかん、失神発作、運動低下、頭蓋障害(cranial disorder)、神経変性障害、うつ病、不安、パニック、疼痛、神経病理的障害、および睡眠障害を含む様々な障害の治療に有用であるとして開示されている。
【0006】
欧州特許出願第01400214.1号は、上記式I〜IVの化合物の、内臓痛および胃腸障害の予防および治療のための使用を開示している。
【0007】
より最近では、国際特許出願第PCT/IB02/01146号(本発明の優先権主張日には未公開、WO02/85839として公開)は、次式(I)〜(XXV)の環式アミノ酸
【0008】
【化3】

[式中、RおよびRは、H、炭素数1〜6個の直線状もしくは分枝状のアルキル、炭素数3〜6個のシクロアルキル、フェニル、およびベンジルからそれぞれ独立に選択され、但し、式(XVII)のトリシクロオクタン化合物の場合を除き、RおよびRは同時に水素になることはない。]の、疼痛を含むいくつかの適応症の治療での使用について記載している。この出願は、次の化合物
【0009】
【化4】

の調製を方法Hとして開示している。
【0010】
この出願は、次の化合物
【0011】
【化5】

の調製も方法Fとして開示している。
【0012】
式(70)の化合物は、PCT/IB02/01146に記載の方法Aによって調製することができ、ここでは、公知の化合物である化合物(9)から図示する。L.Y.Chen、L.Ghosez、Tetrahedron Letters、1990年、第31巻、4467頁;C.Houge、A.M.Frisque−Hesbain、A.Mockel、L.Ghosez、J.P.Declercq、G.Germain、M.Van Meerssche、J.Am.Chem.Soc.、1982年、第104巻、2920頁を参照されたい。
【0013】
【化6】

【0014】
式(73)の化合物は、Hoffmann,H.M.R.、Ismail,Zeinhom M.、Weber,Anette.、ハノーバー大学化学部、ドイツ連邦共和国ハノーバー、Tetrahedron Lett.(1981年)、第22巻(21)、1953〜6頁に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明者らは、式71の化合物などの、従来技術に記載された環式アミノ酸のニトロ酸類似体の単離および精製に問題が存在し得ることを見出し、さらに本発明のニトロ酸塩誘導体が、結晶性であり、安定性が良好であるので、単離および精製の改良に特に有用であることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、式(I)の環式および二環式ニトロメチル酢酸誘導体の塩
【0017】
【化7】

[式中、Xは、I族もしくはII族の金属、および第1級、第2級、もしくは第3級アミンから選択された塩基性の対イオンであり、
nは、0、1、または2であり、
、R1a、R、R2a、R、R3a、R、およびR4aは、HおよびC〜Cアルキルから独立に選択され、あるいは
とR、またはRとRは、一緒になってC〜Cシクロアルキル環を形成し、このシクロアルキル環は、C〜Cアルキルから選択された1個または2個の置換基で置換されていてもよい。]を提供する。
【0018】
Xは、ナトリウム、シンコニジン、シクロヘキシルアミン、R−α−メチルベンジルアミン、S−α−メチルベンジルアミン、およびS−1−シクロヘキシルエチルアミンから選択されることが好ましい。
【0019】
適切には、R、R1a、R2a、R3a、R、およびR4aはHであり、RおよびRは、Hおよびメチルから独立に選択され、あるいはR1a、R2a、R3a、およびR4aはHであり、RとR、またはRとRが一緒になってC〜Cシクロアルキル環を形成し、このシクロアルキル環は、1個または2個のメチル基で置換されていてもよい。
【0020】
好ましくは、R、R1a、R2a、R3a、R、およびR4aはHであり、RおよびRは、Hおよびメチルから独立に選択され、あるいはR1a、R2a、R3a、およびR4aはHであり、RとR、またはRとRが一緒になって、C〜Cシクロアルキル環を形成している。
【0021】
nが0であるとき、R、R1a、R2a、R3a、R、およびR4aはHであり、RとRがシクロペンチル環を形成していることが好ましい。
【0022】
nが1であるとき、R、R1a、R2a、R3a、R、およびR4aはHであり、RおよびRは、共にメチルであり、あるいはR、R1a、R2a、R3a、R、およびR4aはHであり、RとRはシクロブチル環を形成していることが好ましい。
【0023】
nが2であるとき、R、R1a、R、R2a、R、R3a、R、およびR4aがHであることが好ましい。
【0024】
最も好ましくは、nは0であり、R、R1a、R2a、R3a、R、およびR4aはHであり、RとRは、シクロペンチル環を形成している。
【0025】
適切な化合物は、次式II〜Vの化合物
【0026】
【化8】

[式中、Xは上で規定したとおりである。]から選択される。
【0027】
好ましい化合物は、次式(II)、(IIIa)、(IVa)、および(Va)の化合物
【0028】
【化9】

[式中、Xは上で規定したとおりである。]から選択される。
【0029】
本発明による適切なサブグループは、次式(Ia)で表される化合物
【0030】
【化10】

[式中、Xは、I族もしくはII族の金属、および第1級、第2級、もしくは第3級アミンから選択された塩基性の対イオンであり、
nは0であり、RとRがシクロペンチル環を形成しており、あるいは
nは1であり、RおよびRは、メチルを表し、または一緒になってシクロブチル環を形成しており、あるいは
nは2であり、RおよびRはHである。]である。
【0031】
特に好ましい式(I)の化合物は、
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸シクロヘキシルアミン塩、
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸シクロヘキシルアミン塩、
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(R)−α−メチルベンジルアミン塩、
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(R)−α−メチルベンジルアミン塩、
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸ナトリウム塩、
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸ナトリウム塩、
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(S)−α−メチルベンジルアミン塩、
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(S)−α−メチルベンジルアミン塩、
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(S)−1−シクロヘキシルエチルアミン塩、
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(S)−1−シクロヘキシルエチルアミン塩、
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸シンコニジン塩、および
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸シンコニジン塩
である。
【0032】
本発明はさらに、次式(VI)の化合物
【0033】
【化11】

[式中、nは、0、1、または2であり、および
、R1a、R、R2a、R、R3a、R、およびR4aは、HおよびC〜Cアルキルから独立に選択され、あるいは
とR、またはRとRが一緒になって、C〜Cシクロアルキル環を形成し、このシクロアルキルは、C〜Cアルキルから選択された1個または2個の置換基で置換されていてもよい。]の調製における製造中間体としての式(I)の化合物の使用を提供するものである。
【0034】
式(I)の化合物から調製される式(VI)の化合物は、ガバペンチン、すなわち(1R,5R,6S)−[6−(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸、アミノメチル−3,4−ジメチル−シクロペンチル)−酢酸、または(1α,3α,5α)(3−アミノ−メチル−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル)−酢酸であることが適切である。
【0035】
式(I)の化合物から調製される式(VI)の化合物は、(1R,5R,6S)−[6−(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸であることが好ましい。
【0036】
別の態様として、本発明は、化合物(1α,3α,5α)(3−ニトロメチル−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル)−酢酸を提供する。
【0037】
さらに別の態様として、本発明は、(1α,3α,5α)(3−アミノ−メチル−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル)−酢酸を調製する際に(1α,3α,5α)(3−ニトロメチル−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル)−酢酸を中間体として使用するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
上記規定では、必要数の炭素原子を含むアルキル基は、指示がある場合を除き、分枝鎖でなくても分枝鎖でもよい。アルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチルが含まれる。シクロアルキル基とは、飽和の炭素単環を指す。
【0039】
本発明の化合物は、1個または複数のキラル中心を有し、それぞれの中心は、R(D)またはS(L)のどちらの立体配置で存在していてもよい。本発明は、鏡像異性およびエピマーの全形態、ならびにこれらの適切な混合物を含む。ジアステレオ異性体またはシスおよびトランス異性体の分離は、従来の技術によって、たとえば、本発明の化合物またはその適切な塩もしくは誘導体の立体異性体混合物を分別結晶化、クロマトグラフィー、またはH.P.L.Cにかけることによって実現できる。本発明の化合物の個々の鏡像異性体は、光学的に純粋な対応する中間体から調製することもでき、あるいは適切なキラル担体を使用して対応するラセミ化合物をH.P.L.Cにかける、または対応するラセミ化合物を光学活性のある適切な酸もしくは塩基と適宜反応させて生成したジアステレオ異性体の塩の分別結晶化等による分離によって調製してもよい。
【0040】
式(VI)の化合物は、神経変性障害の症状を治療または軽減する薬剤として有用である。そのような神経変性障害には、たとえば、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症が含まれる。本発明は、急性脳損傷と呼ばれる神経変性障害の治療も範囲に含める。これらには、卒中、脳外傷、および窒息が含まれるがこれらに限らない。卒中とは、大脳の血管疾患を指し、脳血管発作(CVA)と呼ばれることもあり、卒中には、急性血栓閉塞性発作が含まれる。卒中は、局所的な虚血も全体的な虚血も含む。また、一過性脳虚血発作、および脳の虚血に付随する他の脳血管の問題も含まれる。これらの血管障害は、詳細には頚動脈内膜切除、または一般には脳血管もしくは血管の他の外科手術、または脳血管造影法などを含む血管の診断術を受けている患者で起こることがある。他の付随障害には、頭部外傷、脊髄外傷、または一般の無酸素、低酸素、低血糖、低血圧から生じる損傷、ならびに塞栓、過剰灌流、および低酸素が進行する間に見られる同様の損傷が含まれる。本発明は、ある範囲の付随障害、たとえば、心臓バイパス手術中、頭蓋内出血時、周産期窒息時、心停止時、およびてんかん状態において有用であろう。
【0041】
式(VI)の化合物は、疼痛、特にニューロパシー痛の一般的な治療に有用である。生理的疼痛は、外部環境から有害な可能性のある刺激がもたらされる危険を警告するように設計された重要な防衛機構である。この機構は、特別なセットの一次感覚ニューロンを通して作動し、専ら侵害刺激によって末梢の変換機構を介して活性化される(まとめられた総説については、Millan 1999年 Prog.Neurobio.第57巻:1〜164頁)。これらの感覚線維は、侵害受容器として知られており、伝導速度の遅い直径の小さな軸索であるという特徴がある。侵害受容器は、侵害刺激の強度、存続期間、および質を暗号化し、さらにそれらによる脊椎への局所的に系統立てられた投射により、刺激の位置を暗号化する。侵害受容器は、A−δ線維(有髄)とC線維(無髄)の主な2種がある侵害受容性神経線維上に見出される。侵害受容器による入力によって生じた活性は、後角での複雑な処理の後、直接に、または脳幹中継核を介して、視床腹側基底、次いで皮質に伝達され、そこで疼痛の感覚が生じる。
【0042】
激しい急性痛および慢性痛には、病態生理学的過程によって統御される同じ経路が関与し、中断が防衛機構を提供するための経路として、またその代わりとして、広い範囲の疾患状態に伴う消耗性の症状の一因となる。疼痛は、多くの外傷および疾患状態の特徴である。疾患または外傷によって体組織に実質的な損傷が生じるとき、侵害受容器の活性の特性が変更される。感覚は、末梢、損傷周辺局所、および侵害受容器が終端する中枢にも生じる。これによって、損傷部位および近くの正常組織が過敏性になる。急性痛では、これらの機構は、有用であり、修復過程に入るのを可能にし得るものであり、損傷が治癒してしまえば過敏性は正常になる。しかし、多くの慢性痛状態では、過敏性は、治癒過程を過ぎても残り、通常は神経系の損傷が原因である。この損傷はしばしば、求心性線維の適応不全をもたらす(Woolf & Salter 2000年 Science 第288巻:1765〜1768頁)。臨床上の疼痛は、患者の症状に不快で異常な敏感性の特徴があるときにおこる。患者は、多種多様となりがちであり、様々な疼痛の症状で診察を受けに来る。典型的ないくつかの疼痛サブタイプは、1)鈍痛、灼熱痛、または刺痛となる得る自発痛、2)侵害刺激に対する疼痛応答が激化したもの(痛覚過敏)、3)通常は侵害性でない刺激によって引き起こされる疼痛(異痛症)である(Meyerら、1994年 Textbook of Pain 13〜44頁)。背痛、関節痛、CNS外傷、またはニューロパシー痛の患者は、同様の症状を抱えることもあるが、根底にある機序は異なり、したがって異なる治療戦略が必要となろう。したがって、病態生理が異なっているために、疼痛をいくつかの種々の区分に分けることができ、これらの区分には、侵害受容性の疼痛、炎症性の疼痛、ニューロパシー痛などが含まれる。ある種の傷みは、複合的な病因をはらみ、したがって分類できる区分が1箇所に止まらないことに留意されたい。たとえば、背痛、癌性疼痛は、侵害受容性の要素とニューロパシーの要素の両方を有する。
【0043】
侵害受容性の疼痛は、組織の損傷、または損傷を引き起こす可能性のある強い刺激によって誘発される。求心性痛覚神経は、損傷部位での侵害受容器による刺激の導入によって活性化され、その末端レベルで脊髄を感作する。次いで、これが、脊髄路を上って脳に中継され、そこで疼痛が認識される(Meyerら、1994年 Textbook of Pain 13〜44頁)。侵害受容器が活性化されると、2種類の求心性神経が活性化する。有髄A−δ線維は、迅速に伝達を行い、鋭く刺すような疼痛の感覚を司り、無髄C線維は、より緩慢な速度で伝達を行い、鈍痛またはうずく疼痛を伝達する。中程度から重度の侵害受容性の急性痛は、それだけに限らないが、挫傷/捻挫による疼痛、術後痛(あらゆる種類の外科手術に続いて起こる疼痛)、外傷後の疼痛、火傷、心筋梗塞、急性膵炎、および腎仙痛の際の際立った特徴である。癌に関連する急性疼痛症候群は、一般に、化学療法の毒性、免疫療法、ホルモン療法、および放射線療法など、治療上の相互作用によるものでもある。中程度から重度の侵害受容性の急性痛は、それだけに限らないが、腫瘍関連と思われる癌疼痛(たとえば、骨痛、頭痛、顔面痛、内臓痛)、または癌治療に随伴すると思われる癌疼痛(たとえば、化学療法後症候群、慢性術後痛症候群、照射後症候群)、椎間板のヘルニアもしくは断裂、あるいは腰部椎間関節、仙腸関節、傍脊椎(paraspinal)筋肉、または後部縦靭帯の異常によると思われる背痛の際立った特徴である。
【0044】
ニューロパシー痛は、一次病変または神経系の機能不全によって生じあるいは引き起こされる疼痛であると定義される(IASPの定義)。神経の損傷は、外傷および疾患によって引き起こされ得るものであり、したがって用語「ニューロパシー痛」は、多様な病因を有する多くの障害を含む。これらには、糖尿病性ニューロパシー、疱疹後神経痛、背痛、癌性ニューロパシー、HIV性ニューロパシー、幻肢痛、手根管症候群、慢性アルコール依存症、甲状腺機能低下症、三叉神経痛、尿毒症、またはビタミン欠乏症が含まれるがこれに限らない。ニューロパシー痛は、保護役をもたないので病的な状態である。ニューロパシー痛は、もとの原因が消失した後も十分に残ることが多く、一般に数年間続き、患者の生活の質をかなり低下させる(WoolfおよびMannion 1999年 Lancet 第353巻:1959〜1964頁)。ニューロパシー痛の症状は、同じ疾患を抱える患者間でもしばしば異なっているので、治療が難しい(Woolf & Decosterd 1999年 Pain 増刊第6巻:S141〜S147頁、WoolfおよびMannion 1999年 Lancet 第353巻:1959〜1964頁)。ニューロパシー痛の症状には、連続的になることもある自発痛、または痛覚過敏(侵害刺激に対する敏感性の増大)や異痛症(通常は侵害性でない刺激に対する敏感性)などの発作性で異常な誘発痛が含まれる。
【0045】
炎症の過程は、組織損傷、または外来物質の存在に応じて活性化される生化学事象および細胞事象が複雑に連なったものであり、腫れおよび疼痛をもたらす(LevineおよびTaiwo 1994年:Textbook of Pain 45〜56頁)。関節痛は、炎症性の疼痛人口の過半を占めている。リウマチ疾患は、先進国では最も一般的な慢性炎症性疾患の1つであり、リウマチ様関節炎は、身体損傷の代表的な原因である。RAの正確な病因は不明であるが、最近の仮説は、遺伝的要因および微生物による要因が有力であることを示唆している(Grennan & Jayson 1994年 Textbook of Pain 397〜407頁)。1600万人近いアメリカ人が症候性骨関節炎(OA)または変形性関節疾患に罹患していると推定されており、そのほとんどが60歳以上であり、したがって、高齢者の人口が増加するにつれて、これが4000万人に増加することが予想され、公衆衛生上の非常に重大な問題になっている(Houge & Mersfelder 2002年 Ann Pharmacother.第36巻:679〜686頁、McCarthyら、1994年 Textbook of Pain 387〜395頁)。大抵のOA患者は、疼痛のために医学的な対応処置を求めている。関節炎は、心理社会的機能および身体的機能への影響がかなりのものであり、晩年の身体損傷の主な原因であることが知られている。他の種類の炎症性の疼痛には、炎症性腸疾患(IBD)が含まれるがこれに限らない。
【0046】
他の種類の疼痛には、それだけに限らないが以下のものが含まれる。
− 筋肉痛、筋線維痛、脊椎炎、血清陰性(非リウマチ様)関節症、関節性でないリウマチ、ジストロフィン異常症、糖原分解、多発性筋炎、化膿性筋炎を含むがこれに限らない筋骨格疾患。
− 卒中後中枢痛、多発性硬化症、脊髄損傷、パーキンソン病、およびてんかんを含むがこれに限らない病変または神経系の機能不全、によって引き起こされる疼痛として規定される中枢痛または「視床痛」。
− 狭心症、心筋梗塞、僧帽弁狭窄症、心膜炎、レイノー現象、水腫性硬化症、骨格筋虚血を含むがこれに限らない、心血管痛。
− 内臓痛および胃腸障害。内臓は、腹腔の臓器を含む。これらの臓器には、性器、脾臓、および消化器系の一部が含まれる。内臓に関連する疼痛は、消化内臓痛および非消化内臓痛に分けることができる。よく見受けられる胃腸(GI)障害には、機能性腸疾患(FBD)および炎症性腸疾患(IBD)が含まれる。これらのGI障害には、FBDでは胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、および機能性腹痛症候群(FAPS)、ならびにIBDではクローン病、回腸炎、および潰瘍性大腸炎を含む、現在ではそれほど制御されていない広範な疾患状態が含まれ、これらはすべて、決まって内臓痛を起こす。他の種類の内臓痛には、月経困難症、骨盤痛、膀胱炎、および膵炎に随伴する疼痛が含まれる。
− 偏頭痛、前駆症状のある偏頭痛、前駆症状のない偏頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛を含むがこれに限らない頭痛。
− 歯痛、側頭下顎骨の顔面筋疼痛を含むがこれに限らない口腔顔面痛。
【0047】
式(VI)の化合物は、うつ病の治療にも有用ではないかと予想される。うつ病は、個人的な喪失(personal loss)に付随するストレスに二次的に、または特発性に起こる器質性疾患の結果の場合もある。ある種のうつ病は、家族性に発生する傾向が強く、それが少なくともある種のうつ病の機構的原因であることを示唆している。うつ病の診断は、第1に患者の情緒の変動を定量化してなされる。これらの気分の評価は、一般に、医師によって行われ、あるいはハミルトンうつ病評価尺度または簡易精神症状評価尺度などの公認の評価尺度を用いて神経心理学者によって評価される。他の尺度も数多く開発されて、不眠症、集中困難、活力不足、無気力、自責などの、うつ病患者の情緒の変動の度合いが定量化され、測定されている。うつ病診断、ならびにすべての精神医学的診断の基準は、DSM−IV−Rマニュアルと呼ばれる「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」(第4版)、American Psychiatric Association発行、1994年にまとめられている。
【0048】
式(VI)の化合物は、不安およびパニックの治療にも有用ではないかと予想されるが、標準の薬理学的手順によって実証されよう。
【0049】
式(VI)の化合物は、たとえば、錠剤、カプセル剤、多重粒子およびナノ粒子、ゲル、フィルム(粘膜付着剤を含む)、粉末、腔坐剤、エリキシル、トローチ剤(液体充填型を含む)、咀嚼錠、溶液、懸濁液、ならびにスプレーの形で、経口、口腔、または舌下投与することができるがこれに限らない。式(VI)の化合物は、浸透性の剤形または高エネルギー分散の形態、あるいはAshley Publications、2001年にLiangおよびChenにより記載されているように、コーティング粒子または急速溶解崩壊型剤形として投与してもよい。
【0050】
式(VI)の化合物は、注射によって、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、十二指腸内もしくは腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、尿管内、胸骨内、頭蓋内、脊髄内、または皮下に投与することもでき、あるいは、注入、針なし注射器、またはインプラント注入法によって投与してもよい。
【0051】
また、式(VI)の化合物は、鼻腔内に、または吸入によって投与することもできる。
【0052】
あるいは、式(VI)の化合物は、たとえば、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、粉剤、包帯剤、泡、フィルム、皮膚パッチ、オブラート、植込錠、スポンジ、繊維、帯具、マイクロエマルジョン、およびこれらの組合せの形で、皮膚、粘膜、真皮内、または経皮的に局所投与してもよい。
【0053】
あるいは、式(VI)の化合物は、たとえば坐剤またはペッサリーの形で直腸投与することもできる。また、経膣経路によって投与してもよい。
【0054】
式(VI)の化合物は、眼の経路によって投与してもよい。また、たとえば、それだけに限らないが液剤を使用して、耳に投与してもよい。
【0055】
式(VI)の化合物は、シクロデキストリンと組み合わせて使用してもよい。α−、β−、およびγ−シクロデキストリンが最もよく使用され、適切な例でもあり、WO−A−91/11172、WO−A−94/02518、およびWO−A−98/55148に記載されている。
【0056】
用語「投与」は、ウイルス利用技術または非ウイルス利用技術による送達を含む。ウイルス利用送達機構には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびバキュロウイルスベクターが含まれるがこれに限らない。非ウイルス利用送達機構には、脂質を媒介とする形質移入、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、表面カチオン性両親媒性物質(CFAs)、およびこれらの組合せが含まれる。このような送達機構のための経路には、粘膜、経鼻、経口、非経口、胃腸、局所、または舌下の経路が含まれるがこれに限らない。
【0057】
式(VI)の化合物の医薬製剤は、単回投与形態(unit dose)にすることが好ましい。そのような形態では、製剤は、適切な量の活性成分を含有する単回投与量に細分されている。単回投与形態は、小包装にした錠剤、カプセル剤、およびバイアルもしくはアンプルに入った粉末などの、分包された調製物でよい。また、単回投与形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、またはトローチ剤それ自体でもよく、あるいはこれらのいずれかを適切な数だけ包装した形にしたものでもよい。単回投与量の製剤中の活性成分量は、特定の適用例、および活性成分の効力に従って、0.1mg〜1gの間で様々にしてよいし、または調整してもよい。医療用途では、薬物を、たとえば100mgまたは300mgのカプセルとして、1日3回投与することができる。治療用途では、治療化合物を、初回投与量を1日約0.01mg〜約100mg/kgとして投与する。1日用量の範囲が約0.01mg〜約100mg/kgであることが好ましい。しかし、投与量は、患者の要求、治療する状態の重症度、および使用する化合物に応じて様々となり得る。特定の状況に相応な投与量の決定は、当業界の技量の範囲内である。一般に、化合物の最適用量を下回る少なめの投与量で治療を開始する。その後、その状況での最大効果が得られるまで投与量を少しずつ増加させる。便宜上、所望であれば、合計1日投与量を分け、1日の間に少しずつ投与してもよい。
【0058】
式(VI)の化合物の医薬組成物は、所望であれば、さらに1種または複数の、適合性のある他の治療剤を含有することができる。特に、この組成物は、疼痛の治療に有用な1種または複数の任意の化合物と組み合わせることができる。
【0059】
一般的方法
第1の方法(A)によれば、式(I)の化合物は、次式(VII)の化合物
【0060】
【化12】

に適切な塩基を加えて調製することができる。この反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、または酢酸エチルなどの適切な有機溶媒中にて室温で実施すことができる。
【0061】
式(VII)の化合物は、スキーム1に従って調製することができる。
【0062】
【化13】

【0063】
(i)ケトン(VIII)を、塩基の存在下でホスホノ酢酸トリエチルなどのトリアルキルホスホノ酢酸エステルと反応させて、不飽和エステル(IX)に変換する。適切な塩基には、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムもしくはナトリウムもしくはカリウムヘキサメチルジシラジド、ブチルリチウム、またはカリウムt−ブトキシドが含まれる。この反応は、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、またはジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性有機溶媒中にて、−78℃〜100℃の範囲の温度で実施することができる。
【0064】
(ii)塩基の存在下、極性の非プロトン性有機溶媒中にて、−20℃〜100℃の温度で、不飽和エステル(IX)にMichael付加反応によってニトロメタンを付加して、ニトロエステル(X)を得る。適切な塩基には、フッ化テトラブチルアンモニウム、テトラメチルグアニジン、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、カリウムt−ブトキシドなどのナトリウムアルコキシド、またはカリウムアルコキシド、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、またはフッ化カリウムが含まれる。適切な有機溶媒には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、またはテトラクロロメタンが含まれる。
【0065】
(iii)ニトロエステル(X)を適切な塩基で加水分解して、ニトロ酸(VII)を得る。適切な塩基には、水酸化ナトリウムが含まれる。適切な有機溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはアセトニトリルが含まれる。
【0066】
第2の方法(B)によれば、式(VI)の化合物は、式(I)の塩からスキーム2に従って調製することができる。
【0067】
【化14】

【0068】
(i)適切な酸の存在下で塩(I)を遊離の酸(VII)に変換する。適切な酸には、塩酸が含まれる。適切な有機溶媒には、室温の、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、または酢酸エチルが含まれる。
【0069】
(ii)適切な触媒の存在下での水素化によってニトロ酸(VII)を還元して、アミノ酸(VI)を得る。適切な触媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、またはジエチルエーテルなどの、20℃〜100℃の溶媒中のラネーニッケル、パラジウム炭素、または他のロジウム、ニッケル、プラチナ、もしくはパラジウム含有触媒が含まれる。
【0070】
当業者ならば、上記の一般的方法を参照して、保護基が存在する場合では、一般に、それらを性質が類似した他の保護基と交換できる、たとえば、酸の基がエチル基で保護されていると述べてある場合には、そのエチル基を、任意の適切なアルキル基、適切には任意のC1−6アルキル基と容易に交換できることは難なく理解されよう。
【0071】
当業者ならば、本明細書の上記に示した一般的方法の特定のステップを、本発明の化合物を得るために示していない他の任意の方法に適切に組み入れてもよいことが難なく理解されよう。
【0072】
以下の非限定的な実施例および中間体によって本発明を例示する。
【実施例1】
【0073】
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸シクロヘキシルアミン塩
【0074】
【化15】

調製例3のニトロ酸(928g、4.35モル)の酢酸エチル(9.6L)溶液を、大気圧下での共沸蒸留によって一定体積で乾燥させた。溶液を40℃に冷却した後、シクロヘキシルアミン(423g、4.26モル)を15分間かけて加えた。得られるスラリーを4時間かけて20℃に冷却し、20℃で13時間攪拌したままにした。固体を濾過によって収集し、湿った濾過ケーキを酢酸エチル(1.3L)で洗浄した。次いで、単離された固体を30℃の真空中で18時間かけて乾燥させて、標題化合物を白色の固体(1.205Kg)として収率91%で得た。
融点:140.4〜141.6℃(分解)
H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=4.95(2H,dd)、2.72(2H,m)、2.20〜2.00(3H,m)、1.90〜1.70(7H,m)、1.55(1H,m)、1.45〜1.00(10H,m)。
【実施例2】
【0075】
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(R)−α−メチルベンジルアミン塩
【0076】
【化16】

調製例3のニトロ酸(5.0g、23.4ミリモル)を酢酸エチル(60ml)に溶解させ、(R)−α−メチルベンジルアミン(2.84g、23.4ミリモル)を酢酸エチル(10ml)に溶解させたものを室温で加えた。得られるスラリーを1時間攪拌した。生成物を濾過によって収集し、湿った濾過ケーキを酢酸エチル(15ml)で洗浄した。次いで、単離された固体を40℃の真空中で2時間かけて乾燥させて、標題化合物を白色の固体(6.31g)として得た。
融点:124.3〜124.9℃(分解)
H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=7.40〜7.20(5H,m)、5.00〜4.80(2H,dd)、4.10(1H,q)、2.75(1H,m)、2.25(2H,dd)、2.05(1H,m)、1.80〜1.65(3H,m)、1.50〜1.25(8H,m)。
【実施例3】
【0077】
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸
【0078】
【化17】

酢酸エチル(50ml)と2Mの塩酸(15ml)の混合物に、実施例2のニトロ酸(R)−α−メチルベンジルアミン塩(5.0g、23.4ミリモル)を加えた。混合物を3〜4分間激しく攪拌し、相を分離した。有機層をさらに2Mの塩酸(15ml)および脱塩水(15ml)で洗浄した。有機層を分離し、真空中で溶媒を除去して、標題化合物を黄色の油として得、放置するとこれが速やかに結晶化した(3.49g)。
融点:64〜66℃
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=4.80(2H,dd)、2.85(1H,m)、2.60(3H,m)、2.15(1H,m)、1.90(1H,m)、1.80〜1.70(2H,m)、1.60〜1.40(4H,m)。
【実施例4】
【0079】
[(1R,5R,6S)−6−(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸
【0080】
【化18】

酢酸エチル(680ml)と2Mの塩酸水溶液(340ml)の混合物に、実施例1のニトロ酸シクロヘキシルアミン塩(100g、320ミリモル)を加えた。混合物を10分間激しく攪拌し、相を分離した。有機層をさらに脱塩水(340ml)で洗浄した。有機層を分離し、脱塩水(1360ml)を加えた。この二相混合物に、5%のプラチナ担持炭素を50%含水触媒(13.65g)として加えた。次いで、反応混合物を50℃かつ150psiの水素圧力で24時間かけて水素化した。水素を窒素でパージし、反応混合物を70℃に加熱した。反応混合物を70℃でセライトによって濾過し、この濾紙パッドを脱塩熱水(50ml)で洗浄した。濾液を安定させ、相を70℃で分離し、下方の水相を移し、大気圧での蒸留によって濃縮して、もとの体積の6倍にした。白色のスラリーを50℃に冷却し、次いで、1.7時間かけてイソプロパノール(705ml)を加えた。次いで、白色のスラリーを90分間かけて+5℃〜+10℃に冷却し、2.5時間攪拌した。固体を濾過によって収集し、湿った濾過ケーキをイソプロパノール(60ml)で洗浄した。次いで、単離された固体を45℃の真空中で18時間かけて乾燥させて、純度の高い標題化合物を白色の結晶性固体(36.3g)として収率62%で得た。
H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=7.94(3H,br s)、3.15(1H,d)、3.07(1H,d)、2.72(1H,q)、2.46(1H,m)、2.42(1H,d)、2.33(1H,d)、1.98(1H,m)、1.80〜1.64(2H,m)、1.59(1H,m)、1.48〜1.28(3H,m)、1.23(1H,dd)。
[α](メタノール中c=0.127)=−12.4°
融点(Perkin Elmer DSC7):198℃
【実施例5】
【0081】
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸ナトリウム塩
【0082】
【化19】

調製例3のニトロ酸(750mg、3.52ミリモル)を酢酸エチル(5ml)に溶解させ、水酸化ナトリウム(141mg、3.52ミリモル)を脱塩水(3ml)に溶解させたものを室温で加えた。得られる混合物を激しく攪拌した。真空中で溶媒を除去し、トルエンを加えて残渣を乾燥させ、真空中でトルエンを除去し、この過程を、残渣からすべての水が除去されるまで数回繰り返した。これによって、標題化合物がベージュ色の固体(666mg)として得られた。
融点:広幅、110.0〜117.9℃(分解)
H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=5.05(2H,br d)、2.65(1H,m)、2.05(3H,m)、1.80〜1.60(3H,m)、1.45〜1.20(5H,m)。
【実施例6】
【0083】
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(R)−α−メチルベンジルアミン塩
【0084】
【化20】

調製例3と同様の方法を使用して調製したラセミ体のニトロ酸(1.50g、7.04ミリモル)を酢酸エチル(12ml)に溶解させ、(R)−α−メチルベンジルアミン(0.85g、7.01ミリモル)を酢酸エチル(5ml)に溶解させたものを室温で加えた。得られるスラリーを終夜攪拌した。生成物を濾過によって収集し、湿った濾過ケーキを酢酸エチル(5ml)で洗浄した。次いで、単離された固体を40℃の真空中で4時間かけて乾燥させて、標題化合物を固体(1.73g)として得た。
H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=7.40〜7.20(5H,m)、5.00〜4.80(2H,dd)、4.10(1H,q)、2.75(1H,m)、2.25(2H,dd)、2.05(1H,m)、1.80〜1.65(3H,m)、1.50〜1.25(8H,m)。
【実施例7】
【0085】
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(S)−α−メチルベンジルアミン塩
【0086】
【化21】

調製例3と同様の方法を使用して調製したラセミ体のニトロ酸(1.50g、7.04ミリモル)を酢酸エチル(12ml)に溶解させ、(S)−α−メチルベンジルアミン(0.85g、7.01ミリモル)を酢酸エチル(5ml)に溶解させたものを室温で加えた。得られるスラリーを終夜攪拌した。生成物を濾過によって収集し、湿った濾過ケーキを酢酸エチル(5ml)で洗浄した。次いで、単離された固体を40℃の真空中で4時間かけて乾燥させて、標題化合物を固体(1.73g)として得た。
H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=7.40〜7.20(5H,m)、5.00〜4.80(2H,dd)、4.10(1H,q)、2.75(1H,m)、2.25(2H,dd)、2.05(1H,m)、1.80〜1.65(3H,m)、1.50〜1.25(8H,m)。
【実施例8】
【0087】
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸(S)−1−シクロヘキシルエチルアミン塩
【0088】
【化22】

調製例3と同様の方法を使用して調製したラセミ体のニトロ酸(1.50g、7.04ミリモル)を酢酸エチル(12ml)に溶解させ、(S)−1−シクロヘキシルエチルアミン(0.90g、7.07ミリモル)を酢酸エチル(5ml)に溶解させたものを室温で加えた。得られるスラリーを終夜攪拌した。生成物を濾過によって収集し、湿った濾過ケーキを酢酸エチル(5ml)で洗浄した。次いで、単離された固体を40℃の真空中で4時間かけて乾燥させて、標題化合物を固体(1.58g)として得た。
H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=4.94(2H,dd)、2.81〜2.67(2H,m)、2.16(2H,dd)、2.08〜2.02(1H,m)、1.75〜1.60(8H,m)、1.43〜1.26(5H,m)、1.18〜0.89(8H,m)。
【実施例9】
【0089】
(1RS,5RS,6SR)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸シンコニジン塩
【0090】
【化23】

調製例3と同様の方法を使用して調製したラセミ体のニトロ酸(1.50g、7.04ミリモル)を酢酸エチル(12ml)に溶解させ、シンコニジン(2.07g、7.03ミリモル)を酢酸エチル(5ml)に溶解させたものを室温で加えた。得られるスラリーを終夜攪拌した。生成物を濾過によって収集し、湿った濾過ケーキを酢酸エチル(5ml)で洗浄した。次いで単離された固体を40℃の真空中で4時間かけて乾燥させて、標題化合物を固体(2.78g)として得た。
H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=8.81(1H,d)、8.28(1H,d)、8.00(1H,m)、7.71(1H,m)、7.58(1H,m)、7.54(1H,d)、5.85(1H,m)、5.33(1H,d)、5.01〜4.80(4H,m)、3.22(1H,m)、3.12(1H,m)、2.88(1H,m)、2.77(1H,m)、2.53(1H,m)、2.45(2H,m)、2.23(1H,m)、2.07(1H,m)、1.77〜1.62(6H,m)、1.48〜1.33(4H,m)。
【0091】
調製例1
(2E)−(1R,5R)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イリデン酢酸エチル/(2Z)−(1R,5R)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イリデン酢酸エチル
【0092】
【化24】

ナトリウムエトキシド(0.524Kg、7.70モル)のn−ヘプタン(3.1L)懸濁液に、温度を−10℃〜0℃に保ちながら、ホスフィノ酢酸トリエチル(1.88Kg、8.40モル)を0.5時間かけて加えた。次いで、反応混合物を−10℃で0.3時間攪拌した。(1R,5R)−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−6−オン(0.771Kg、7.00モル)のn−ヘプタン(9.2L)溶液を、温度を−12℃〜−8℃に保ちながら3時間かけて加えた。反応混合物を−10℃で1.5時間攪拌し、次いで、2Mの塩酸水溶液(6L)を速やかに加えると、反応温度が+5℃に上昇した。反応混合物を+25℃に温め、相を分離した。有機層を2Mの炭酸ナトリウム水溶液(6L)で洗浄した後、塩化ナトリウム(0.2Kg)を溶解させた脱塩水(6L)で洗浄した。標題化合物(0.921Kg)を含有する有機層(体積約12.5L)をそのまま次のステップで使用した。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=5.55(1H,d)、4.15(2H,q)、3.40(1H,m)、3.20(1H,m)、2.90(1H,m)、2.55(1H,m)、1.8〜1.5(5H,m)、1.30(3H,t)。
【0093】
調製例2
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸エチル
【0094】
【化25】

調製例1の化合物(0.921Kg、5.11モル)のn−ヘプタン溶液を、大気圧での蒸留によってもとの体積の36%に濃縮した。次いで、一定体積での大気圧下の共沸蒸留によってn−ヘプタンをテトラヒドロフランに置換した。反応混合物を20〜25℃に冷却し、次いで、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物(2.10Kg、6.64モル)およびニトロメタン(0.499Kg、8.18モル)を加えた。得られる褐色の溶液を20〜25℃で17時間攪拌した。反応混合物に2Mの塩酸水溶液(4.5L)を加えると、反応温度が8℃上昇した。n−ヘプタン(4.5L)を加え、相を分離した。次いで、有機層を脱塩水(4.5L)で洗浄して、標題生成物(1.08Kg)を有機溶液として収率88%で得、これをそのまま次のステップで使用する。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=4.80(2H,m)、4.15(2H,m)、2.85(1H,m)、2.65(1H,m)、2.55(2H,m)、2.20(1H,m)、1.9〜1.4(7H,m)、1.25(3H,t)。
【0095】
調製例3
(1R,5R,6S)−[6−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸
【0096】
【化26】

調製例2のニトロエステル有機溶液のn−ヘプタン(1.08Kg、4.49モル)を、一定体積での大気圧下の共沸蒸留によってテトラヒドロフランに置換した。溶液を+25℃に冷却し、水素化ナトリウム(0.359Kg、8.98モル)の脱塩水(4.5L)溶液を加え、反応液を16時間攪拌した。n−ヘプタン(4.5L)を加え、相を分離した。濃塩酸(0.8L)を加えて水相のpHを2〜4に調製して、懸濁液が得られた。水相を酢酸エチル(9.6L)で抽出して、標題生成物(0.928Kg)を有機溶液として収率97%で得、これを次のステップでそのまま使用する。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=4.80(2H,m)、2.85(1H,m)、2.60(3H,m)、2.20(1H,m)、1.85(1H,m)、1.70(2H,m)、1.6〜1.4(4H,m)。
【0097】
調製例4
(1α,3α,5α)−[3−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル]酢酸
【0098】
【化27】

50gの(1α,3α,5α)−[3−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル]酢酸エチルを、250mLの2M NaOHと50mLのMeOHの混合物に懸濁させた。反応混合物を60℃で1.5時間攪拌した。その後、減圧下でメタノールを留去した。水溶液を6MのHClで酸性にすると、白色の沈殿が生成した。水相を毎回560mLのMTBEで4回抽出した。有機相を合わせてNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。結晶性の残渣を、40℃の空気循環乾燥機中で乾燥させて、恒量とした。粗生成物をn−ヘプタンから再結晶化して、標題化合物21.4gを得た。
(HPLC:93.7 rel%;Mp.:84.9℃)
【0099】
調製例5
(1α,3α,5α)−[3−(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル]酢酸
【0100】
【化28】

1.82gの(1α,3α,5α)−[3−(ニトロメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル]酢酸(HPLC−純度:93.73rel%)を117mLのMeOHに溶解させ、2.4gのRa−Ni上で、90℃かつ8バールで水素化した。濾過した後、減圧下で溶媒を留去すると、1.52g(97.4%)が得られた。1.52gの粗生成物を35mLの水から再結晶化した。室温に冷却した後、沈殿した生成物を濾別した。水性の母液を濃縮乾燥して、標題化合物1.19gを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)の化合物
【化1】

[式中、Xは、I族もしくはII族の金属、および第1級、第2級、もしくは第3級アミンから選択される塩基性の対イオンである]。
【請求項2】
式(IIIa)
【化2】

で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、ナトリウム、シンコニジン、シクロヘキシルアンモニウム、R−α−メチルベンジルアンモニウム、S−α−メチルベンジルアンモニウム、およびS−2−シクロヘキシルエチルアンモニウムから選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
適切な溶媒中で次式(VIIa)の化合物
【化3】

に塩基を加えることによる、式(IIIa)の化合物の調製方法。
【請求項5】
(1R,5R,6S)−[6−(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸の調製方法であって、a)請求項2に記載の化合物を対応する遊離ニトロ酸に変換するステップと、その後b)ニトロ基を還元するステップとを含む方法。

【公表番号】特表2006−501297(P2006−501297A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541074(P2004−541074)
【出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004249
【国際公開番号】WO2004/031124
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】