説明

環状アミン−1−カルボン酸エステル誘導体およびそれを含有する医薬組成物

【課題】神経因性疼痛やリウマチ性関節炎等の種々の病態に起因する疼痛や炎症に対する治療薬として有用な化合物の提供
【解決手段】式(I)の化合物又はその塩[R1は、メチル、H、R2は、H、アルキル、アルキルカルボニルまたはアリールカルボニル、R3は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたはヘテロアリール(該各基は、アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはハロゲンで置換されていてもよい。)を示すか或いは、アルキルまたはアルケニルを示し、Xは、−NH−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−、−NH−C(=S)−、−NH−C(=O)−CH−、−NH−C(=O)−CH−CH−、−NH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−を示し、nおよびmは、1〜3、pは、0〜2を示す。]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疼痛および炎症の治療薬として有用な環状アミン−1−カルボン酸エステル誘導体、詳しくは、環上に3,4−ジ置換ベンジル基を有する置換基を持つ環状アミン−1−カルボン酸エステル誘導体およびそれを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、鎮痛薬としてはモルヒネ等の麻薬性鎮痛薬とNSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)等の非麻薬性鎮痛薬が主として用いられている。しかしながら、麻薬性鎮痛薬は、耐性、依存性あるいはその他の重篤な副作用の発現のため使用が厳しく制限されている。また、NSAIDsも激痛には有効ではないうえに、長期投与で上部消化管障害や肝障害が高率で発生するなど問題を有している。それゆえ、より鎮痛効果が高く副作用の少ない鎮痛薬が切望されている。さらに、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛のような神経因性疼痛(ニューロパシックペイン)に対しては未だ満足度の高い鎮痛薬は見いだされておらず、それらに有効な治療薬の開発も期待されている。
【0003】
カプサイシン;(E)−8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミドはトウガラシ属植物の果汁に含まれており、香辛料として使用されるだけでなく、鎮痛作用や抗炎症作用を有していることが知られている。また、カプサイシンの幾何異性体であるシバミド;(Z)−8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミドも鎮痛作用を有することが知られている。カプサイシンは、一次求心性感覚神経(主にC線維:カプサイシン感受性神経)に存在する特殊な受容体に特異的に作用することによって、鎮痛作用や抗炎症作用を発現するが、強烈な刺激性(痛み)を有することもよく知られている。近年、この受容体がクローニングされ、バニロイド受容体サブタイプ1(VR1)と名づけられた[非特許文献1]。その後、本受容体はTRP(transient receptor potential)スーパーファミリーのTRPVに分類され、TRPV1と呼ばれている[非特許文献2]。
【0004】
TRPV1はそのアミノ酸配列から6回膜貫通領域を有するCa2+透過性の高いカチオンチャンネルであると考えられており、カプサイシン様化合物だけではなく、熱や酸等の刺激によっても活性化され、種々の病態での痛みに関与する可能性が示唆されている。カプサイシンが一次求心性感覚神経上のTRPV1に作用すると、そのカチオンチャンネルが開口し、膜が脱分極されサブスタンスP等の神経ペプチドの遊離等が起こり、痛みが惹起される。このような痛み刺激物質であるカプサイシンが、糖尿病性神経障害やリウマチ性関節炎等の痛みの治療に実際に用いられているのは、カプサイシンによる持続的なTRPV1カチオンチャンネル開口の結果として、感覚神経が痛み刺激に対して不応答になる(脱感作)ためと理解されている[非特許文献3]。
【0005】
そこで、カプサイシン様化合物(TRPV1アゴニスト)が、既存の鎮痛薬とは全く異なる薬効機序(カプサイシン感受性感覚神経の脱感作)に基づいて鎮痛効果を発現できると考えられ、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない神経因性疼痛をはじめリウマチ性関節炎や変形性関節炎等種々の病態に起因する疼痛に対する治療薬としてその有効性が大いに期待されている。
【0006】
米国ではカプサイシンがクリームの形態で鎮痛薬として販売されている。しかし、このクリームは、初期刺激痛が強いという問題がある。従って、特に、神経因性疼痛やリウマチ性関節炎や変形性関節炎等の種々の病態に起因する疼痛に対する治療薬として、カプサイシン様の薬効機序を有し、十分な鎮痛効果とともに刺激性の弱い化合物の開発が望まれている。
【0007】
また、カプサイシン様の薬効機序を有する化合物は、一次求心性感覚神経(C線維)の関与する病態であるそう痒症、アレルギー性及び非アレルギー性の鼻炎、過活動膀胱、脳卒中、過敏性腸症候群、喘息・慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、皮膚炎、粘膜炎、胃・十二指腸潰瘍及び炎症性腸症候群の治療薬としても有用であると考えられている。
【0008】
さらに、カプサイシンはアドレナリンの分泌を促進して抗肥満作用を示すことが報告されていることから[非特許文献4]、カプサイシン様の薬効機序を有する化合物は肥満の治療薬としても有用であると考えられている。また、糖尿病ラットをカプサイシンで処置することによって、インスリン抵抗性を改善することが報告されていることから[非特許文献5]、糖尿病治療薬としても有用であると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nature, 389, 816 (1997)
【非特許文献2】Annu. Rev. Neurosci., 24, 487 (2001)
【非特許文献3】Pharmacol. Rev., 51, 159 (1999)
【非特許文献4】Pharmacol. Rev., 38, 179 (1986)
【非特許文献5】Eur .J .Endocrinol., 153, 963, (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、神経因性疼痛やリウマチ性関節炎や変形性関節炎等の種々の病態に起因する疼痛や炎症に対する治療薬または予防薬として有用な、十分な鎮痛作用を有するとともに刺激性の低い化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を続けた結果、環上に3,4−ジ置換ベンジル基を有する置換基を持つ環状アミン−1−カルボン酸エステル誘導体、即ち、下記式(I)で表される化合物が、強い鎮痛作用を有するが、刺激性は低いことを見いだし、本発明を完成した。即ち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
項1: 下記式(I):
【0012】
【化1】




【0013】
[式中、
1は、メチル基または水素原子を示し、
2は、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、
3は、C3〜8シクロアルキル基、C3〜8シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基(該各基は、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはハロゲンで置換可能な位置にて置換されていてもよい。)を示すか;或いはC6〜12アルキル基またはC6〜12アルケニル基を示し、
Xは、−NH−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−、−NH−C(=S)−、−NH−C(=O)−CH−、−NH−C(=O)−CH−CH−、−NH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−または−C(=O)−を示し、
nおよびmは、同一または相異なって1、2または3の整数を示し、
pは、0、1または2の整数を示す。]
で表される化合物またはその生理的に許容される塩。
【0014】
項2: 式(I)において、R3が、C3〜8シクロアルキル基またはアリール基(該各基は、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル及びC3〜8シクロアルキルからなる群から選ばれる、同一又は相異なった1個〜5個の置換基で置換されていてもよい。)を示す項1記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
項3: 式(I)において、Xが、−NH−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−または−NH−C(=S)−を示す項1または2記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
項4: 式(I)において、Xが、−NH−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−または−NH−C(=S)−を示す項3記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
項5: 式(I)において、nおよびmが、同一または相異なって1または2の整数を示す項1〜4のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
項6: 式(I)において、nおよびmが、共に2である項5に記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
項7: 式(I)において、pが、1の整数を示す項1〜6のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【0015】
項8: 式(I)において、R1がメチル基を示す、項1〜7のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
項9: 式(I)において、R2が水素原子を示す、項1〜8のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
項10: 活性成分として項1〜9のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩を含有する医薬組成物。
項11: 項1〜9のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩を有効成分とする疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤。
項12: 項1〜9のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩を有効成分とする鎮痛薬または抗炎症薬。
項13: 項1〜9のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩と、麻薬性鎮痛薬、神経因性疼痛治療薬、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド性抗炎症薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗攣縮薬、麻酔薬、抗不整脈薬、局所麻酔薬及び抗不安薬からなる群より選択される少なくとも1種の他の薬剤とを備える医薬。
【0016】
項14: 活性成分として項13記載の医薬を含有する医薬組成物。
【0017】
項15: 項13記載の医薬を有効成分として含有する、疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、強力な鎮痛作用を有し、しかも刺激性が弱い化合物を提供できるので、鎮痛薬および抗炎症薬、例えば、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない神経因性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格性疼痛、内臓性疼痛、骨性疼痛、癌性疼痛、およびそれらの組み合わせの疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤を提供することができる。疼痛および/または炎症の病態として、例えば、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛、術後疼痛、中枢性および末梢性ニューロパシー、神経障害性の腰背部痛をはじめとする様々なタイプの神経因性疼痛、リウマチ性関節症、変形性関節症、腰背部痛、線維筋痛症、非典型的胸痛、ヘルペス神経痛、幻肢痛、骨盤痛、筋膜顔面痛、腹痛、頸痛、中枢性疼痛、歯痛、オピオイド耐性痛、内臓性疼痛、手術疼痛、骨損傷痛、狭心症痛、および治療を必要とする様々な疼痛・炎症が挙げられる。
さらには、本発明によれば、偏頭痛または群発性頭痛、そう痒症、アレルギー性または非アレルギー性の鼻炎、過活動膀胱、脳卒中、過敏性腸症候群、喘息・慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、皮膚炎、粘膜炎、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸症候群および糖尿病、肥満症の治療剤または予防剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の式(I)で表される化合物について、さらに説明する。
【0020】
式(I)で表される化合物の生理的に許容される塩とは、構造中に酸付加塩を形成しうる基を有する式(I)の化合物の生理的に許容される酸付加塩、または構造中に塩基との塩を形成しうる基を有する式(I)の化合物の生理的に許容される塩基との塩を意味する。酸付加塩の具体例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機酸塩、およびグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸塩が挙げられる。塩基との塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、ピリジン塩、トリエチルアミン塩のような有機塩基との塩、およびリジン、アルギニン等のアミノ酸との塩が挙げられる。
【0021】
式(I)の化合物およびその塩は、水和物および/または溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物および/または溶媒和物もまた本発明の化合物に包含される。即ち、「本発明の化合物」には、上記式(I)で表される化合物およびそれらの生理的に許容される塩に加えて、これらの水和物および/または溶媒和物が含まれる。
【0022】
また、式(I)の化合物は、1個またはそれ以上の不斉炭素原子を有する場合があり、また幾何異性や軸性キラリティを生じることがあるので、数種の立体異性体として存在しうる。本発明においては、これらの立体異性体、それらの混合物およびラセミ体は本発明の式(I)で表される化合物に包含される。
【0023】
本明細書における用語について以下に説明する。
【0024】
「アルキル基」とは、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味し、例えば、「C1〜4アルキル基」または「C1〜6アルキル」とは炭素原子数が1〜4または1〜6の基を意味する。その具体例としては、「C1〜4アルキル基」としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が、「C1〜6アルキル」としては、前記に加えて、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が挙げられる。そのほか、たとえば、「C6〜12アルキル基」としては、ヘキシル、イソヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。該アルキル基は直鎖状であってもよい。また、分枝鎖状であってもよい。
【0025】
「アルケニル基」とは、二重結合を少なくとも1個有する直鎖状または分枝鎖状の不飽和の炭化水素基を意味し、例えば「C2〜6アルケニル」とは二重結合を少なくとも1個有する、炭素原子数が2〜6の不飽和の炭化水素基を意味する。その具体例としては、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−、2−若しくは3−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−、3−若しくは4−ペンテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、4−メチル−1−ペンテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。そのほか、たとえば、「C6〜12アルケニル基」としては、4−メチル−3−ペンテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、5−ヘキセニル、3−エチル−ペンテニル、3−オクテニル等が挙げられる。該アルケニル基は直鎖状であってもよい。また、分枝鎖状であってもよい。また、該アルケニル基が含有する二重結合の数は、1個であってもよい。また、2個であってもよい。
【0026】
「C3〜8シクロアルキル基」とは、炭素原子数が3〜8の単環式飽和炭化水素基を意味する。その具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
【0027】
「C3〜8シクロアルケニル基」とは、二重結合を1〜2個有する炭素原子数が3〜8の単環式不飽和炭化水素基を意味する。その具体例としては、例えば、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロペンテニル基、2,4−シクロヘキサジエニル基等が挙げられる。該シクロアルケニル基が含有する二重結合の数は、1個が好ましい。
【0028】
「アリール基」とは、フェニルまたはナフチルを意味し、フェニルが好ましい。同様に「アリールカルボニル基」とは、フェニルカルボニルまたはナフチルカルボニルを意味する。
【0029】
「ヘテロアリール基」とは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる1〜4個のヘテロ原子並びに1〜12個の炭素原子からなる1〜3環性の不飽和の複素環式基を意味し、それぞれの環は3〜8員環である。その具体例としては、チエニル、フリル、ピラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリミジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ピリダジニル、ピラゾロピリジニル、シンノリニル、トリアゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル等が挙げられる。「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
また、「C1〜4アルキルカルボニル」における炭素原子数は直後に続く基または部分のみを修飾する。したがって、上記の場合、C1〜4はアルキルのみを修飾するので、「C1アルキルカルボニル」とはアセチルに該当する。よって、「C1〜4アルキルカルボニル基」の具体例としては、アセチル、プロピオニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル等が挙げられる。
【0030】
「アルキルで置換されたシクロアルキル基」としては、上記シクロアルキル基の1または2個以上(例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個)の水素原子が上記記載のアルキルで置換されたものをいう。具体的には、2−メチルシクロヘキシル、3−メチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、2−エチルシクロヘキシル、3−エチルシクロヘキシル、4−エチルシクロヘキシル、4,4−ジメチルシクロヘキシル、3,5−ジメチルシクロヘキシル、3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキシル、4,4−ジエチルシクロヘキシル、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−ブチルシクロヘキシル、4−プロピルシクロヘキシル、4−イソプロピルシクロヘキシル、4−t-ブチルシクロヘキシル等が挙げられる。アルキルで置換された以下の各置換基:シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基も同様である。
【0031】
また、「アルケニルで置換されたシクロアルキル基」とは、上記シクロアルキル基の1または2個以上(例えば、1〜2個、好ましくは1個)の水素原子が上記アルケニルで置換されたものをいう。具体的には、2−エテニルシクロヘキシル、3−エテニルシクロヘキシル、4−エテニルシクロヘキシル、2−(1−プロペニル)シクロヘキシル、3−(1−プロペニル)シクロヘキシル、4−(1−プロペニル)シクロヘキシル、2−イソプロペニルシクロヘキシル、3−イソプロペニルシクロヘキシル、4−イソプロペニルシクロヘキシル、4−(1−ブテニル)シクロヘキシル、4−(2−ブテニル)シクロヘキシル、4−(1−イソブテニル)シクロヘキシル等が挙げられる。アルケニルで置換された以下の各置換基:シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基も同様である。
【0032】
また、「シクロアルキルで置換されたアリール基」とは、上記アリール基の1または2個以上(例えば、1〜3個、好ましくは、1個)の水素原子がシクロアルキルで置換されたものをいう。具体的には、2−シクロプロピルフェニル、4−シクロプロピルフェニル、2−シクロブチルフェニル、4−シクロブチルフェニル、2−シクロペンチルフェニル、4−シクロペンチルフェニル、2−シクロヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル等が挙げられる。シクロアルキルで置換された以下の各置換基:シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロアリール基も同様である。
【0033】
「ハロゲンで置換されたアリール基」とは、上記アリール基の1または2個以上(例えば、1〜5個、好ましくは、1〜2個)の水素原子がハロゲンで置換されたものをいう。具体的には、2−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−ブロモフェニル、4−ブロモフェニル、2−ヨードフェニル、4−ヨードフェニル等が挙げられる。ハロゲンで置換された以下の各置換基:シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロアリール基も同様である。
【0034】
なお、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基の水素原子が複数の置換基で置換される場合、それら置換基は同一であってもよく、また異なっていてもよい。これら具体例は、上記の例示を適宜組み合わせたものが例示できる。
【0035】
本発明の化合物(I)における各基は、以下のものが例示できる。
【0036】
1は、メチル基または水素原子、好ましくはメチル基である。R2は、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、好ましくは、水素原子である。
【0037】
は、C3〜8シクロアルキル基、C3〜8シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基(該各基は、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはハロゲンで、置換可能な位置にて置換されていてもよく、たとえば、同一又は相異なった1個〜5個の上記置換基で置換されていてもよい)を示すか、或いは、C6〜12アルキル基またはC6〜12アルケニル基を示す。
【0038】
該シクロアルキル基は、好ましくは、C4〜8シクロアルキル基、より好ましくは、C5〜7シクロアルキル基である。また、該シクロアルキル基は、好ましくは、無置換または1個〜5個の同一又は異なるC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C3〜8シクロアルキルで置換されているのがよく、より好ましくは、無置換または1〜5個の同一又は異なるC1〜4アルキル、C2〜4アルケニルもしくはC3〜6シクロアルキル基で置換されているのがよい。
【0039】
該シクロアルケニル基は、好ましくは、C4〜8シクロアルケニル基、より好ましくは、C5〜8シクロアルケニル基である。また、該シクロアルケニル基は、好ましくは、無置換または1〜5個、好ましくは1〜2個の同一又は異なるC1〜6アルキル、C2〜6アルケニルもしくはC3〜8シクロアルキルで置換されているのがよく、より好ましくは、無置換又は1〜2個の同一または異なるC1〜4アルキル、C2〜4アルケニルもしくはC3〜6シクロアルキル基で置換されているのがよい。
【0040】
アリール基は、好ましくは、フェニル基である。また、該アリール基は、好ましくは、無置換または1〜5個の同一又は異なるC1〜6アルキル、C2〜6アルケニルもしくはC3〜8シクロアルキルで置換されているのがよく、より好ましくは、無置換または1〜2個の同一又は異なるC1〜5アルキル、C2〜5アルケニルもしくはC3〜6シクロアルキルで置換されているのがよい。
【0041】
ヘテロアリール基としては、好ましくは、チエニル、フリル、ピラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリミジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ピリダジニル、ピラゾロピリジニル、シンノリニル、トリアゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル等が挙げられ、より好ましくは、チエニル、フリル、ピラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリミジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニルが例示できる。また、該へテロアリール基は、好ましくは、無置換または置換可能な位置にて1〜5個の同一又は異なるC1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC3〜8シクロアルキルで置換されているのがよく、より好ましくは、無置換または1〜2個の同一又は異なるC1〜5アルキル、C2〜5アルケニルもしくはC3〜6シクロアルキルで置換されているのがよい。
【0042】
これらRの中で、好ましい群としては、C3〜8シクロアルキル基またはアリール基(該各基は、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル及びC3〜8シクロアルキルからなる群から選ばれる、同一又は相異なった1個〜5個の置換基で置換されていてもよい。)、より好ましい群としては、1個〜4個の同一又は異なるC1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC3〜8シクロアルキル基で置換されていてもよいC5〜7シクロアルキル基、或いは1個〜2個の同一又は異なるC1〜6アルキルまたはC3〜6シクロアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。
【0043】
Xは、−NH−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−、−NH−C(=S)−、−NH−C(=O)−CH−、−NH−C(=O)−CH−CH−、−NH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−または−C(=O)−を示し、好ましくは、−NH−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−または−NH−C(=S)−、より好ましくは−NH−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−または−NH−C(=S)−である。
nおよびmは、同一または相異なって1、2又は3の整数を示し、好ましくは、1または2、より好ましくは、共に1または2の整数を示すか、または一方が1で他方が2を示す。特に好ましくは、共に2である。
Pは、1、2又は3の整数を示し、好ましくは、1又は2の整数を示し、より好ましくは、1の整数を示す。
【0044】
本発明における好ましい化合物は、下記式(I’)
【0045】
【化2】

【0046】
[式中、
’は、1個〜4個の同一又は異なるC1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC3〜8シクロアルキルで置換されていてもよいC5〜7シクロアルキル基であり、
Xは、−NH−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−または−NH−C(=S)−であり、
nおよびmは、共に1または2の整数を示すか、または一方が1で他方が2を示す。]
で表される化合物またはその生理的に許容される塩である。
【0047】
なお、本明細書において記載の簡略化のために、次のような略号を用いることもある。
【0048】
Me:メチル基、t−:tert−、p−:para−、THF:テトラヒドロフラン、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド。
【0049】
本発明化合物の製造方法
式(I)で表される化合物またはその生理的に許容される塩は、新規化合物であり、例えば、以下に述べる方法、後述する実施例または公知の方法に準じた方法によって製造することができる。
【0050】
下記の製造法で用いられる化合物は、反応に支障を来たさない範囲において、塩を形成していてもよい。
【0051】
また、下記各反応において、出発物質の構造中に反応に関与する可能性のある官能基、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、カルボニル基等を含む場合には、これらの基に一般的に用いられるような保護基を導入することによって保護しておいてもよく、また、その場合には反応終了後適宜保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
【0052】
アミノ基の保護基としては、例えば、アセチル、プロピオニルなどのアルキルカルボニル;ホルミル;フェニルカルボニル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのアルキルオキシカルボニル;フェニルオキシカルボニル;ベンジルオキシカルボニルなどのアラルキルオキシカルボニル;トリチル;フタロイル;トシルなどが用いられる。
【0053】
カルボキシル基の保護基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチルなどのアルキル;フェニル;ベンジル;トリチル;シリルなどが用いられる。
【0054】
水酸基の保護基としては、例えば、メチル;tert-ブチル;アリル;メトキシメチル、メトキシエトキシメチル等の置換メチル;エトキシエチル;テトラヒドロピラニル;テトラヒドロフラニル;トリチル;ベンジルなどのアラルキル;アセチル、プロピオニルなどのアルキルカルボニル;ホルミル;ベンゾイル;ベンジルオキシカルボニルなどのアラルキルオキシカルボニル;シリル等が用いられる。
【0055】
カルボニル基の保護は、カルボニル基をジメチルケタールやジエチルケタール等のアサイクリックケタールや1,3−ジオキソランや1,3−ジオキサン等のサイクリックケタールに変換させることによって行う。
式(I)の化合物の製法(1)
【0056】
【化3】

【0057】
(式中、R、R、R、X、m、nおよびpは項1に記載の定義と同じであり、Yは脱離基(例えば、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、フェノキシ基、イミダゾリル基等)を示す。)
【0058】
式(I)の化合物は、式(II)の化合物を式(III)で表される反応性誘導体に変換した後、式(IV)の化合物と通常用いられる条件下で反応させることによって製造することができる。
【0059】
式(III)の化合物と式(IV)の化合物との上記反応は、通常溶媒中または無溶媒下に行われる。使用する溶媒は、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF等が挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独で、或いは2種以上の混合溶媒として用いることができる。また、本反応は通常塩基の存在下で行われる。塩基の具体例としては、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムのような無機塩基、或いは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンのような有機塩基が挙げられる。反応温度は用いる原料化合物の種類等により異なるが、通常、約−30℃〜約150℃、好ましくは約−10℃〜約80℃である。反応時間は、1時間〜48時間程度である。
【0060】
化合物(II)から化合物(III)の製造は、例えば、J. Org. Chem., 27, 961 (1962)、J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1205 (1996)、Tetrahedron, 61, 7153 (2005)等に記載の方法、あるいはこれらに準じた方法に従って行うことができる。なお、式(II)の化合物は、塩酸塩等の酸付加塩の形で使用し、反応系中で遊離塩基を生成させてもよい。
【0061】
式(IV)の化合物は、市販されているか、自体公知の方法、或いは、これに準じた方法により製造することができる。
【0062】
式(I)の化合物の製法(2)
【0063】
【化4】

【0064】
(式中、R、R、R、X、m、nおよびpは項1に記載の定義と同じであり、Yは脱離基(例えば、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、フェノキシ基、イミダゾリル基等)を示す。)
【0065】
式(I)の化合物は、式(II)の化合物と式(V)あるいは式(VI)の化合物との通常用いられる条件下で反応させることによって製造することができる。
式(II)の化合物と式(V)あるいは式(VI)の化合物との上記反応は、通常溶媒中または無溶媒下に行われる。使用する溶媒は、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF等が挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独で、或いは2種以上の混合溶媒として用いることができる。なお、式(II)の化合物は、塩酸塩等の酸付加塩の形で使用し、反応系中で遊離塩基を生成させてもよい。また、本反応は通常塩基の存在下で行われる。塩基の具体例としては、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムのような無機塩基、或いは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンのような有機塩基が挙げられる。反応温度は用いる原料化合物の種類等により異なるが、通常、約−30℃〜約150℃、好ましくは約−10℃〜約80℃である。反応時間は、1時間〜48時間程度である。
【0066】
式(V)の化合物は、市販されているか、或いは公知の方法、例えば、Synthesis, 103 (1993)、J. Org. Chem., 53, 2340 (1988)等に記載の方法、あるいはこれらに準じた方法に従って製造することができる。また、式(VI)の化合物は、公知の方法、例えば、J. Org. Chem., 27, 1901 (1962)、Org. Synth., VI, 418 (1988)等に記載の方法、あるいはこれらに準じた方法に従って製造することができる。
【0067】
式(II’)の化合物の製法
【0068】
【化5】

【0069】
(式中、R、R、m、nおよびpは項1に記載の定義と同じであり、Yは脱離基(例えば、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、フェノキシ基、イミダゾリル基等)を示し、Pはアミノ基の保護基を示す。)
【0070】
式(II’)の化合物は、式(X)の保護基(P)を脱保護することによって製造できる。式(X)の化合物は、式(VII)の化合物を式(VIII)で表される反応性誘導体に変換した後、式(IX)の化合物と通常用いられる条件下で反応させることによって製造することができる。
【0071】
化合物(VII)から化合物(X)の製造は、例えば、Tetrahedron, 61, 7153 (2005)、Synthesis, 423 (1989)等に記載の方法、あるいはこれらに準じた方法に従って行うことができる。なお、式(VII)の化合物は、市販されているか、自体公知の方法、或いは、これに準じた方法により製造することができ、塩酸塩等の酸付加塩の形で使用し、反応系中で遊離塩基を生成させてもよい。
【0072】
式(II’’)の化合物の製法
【0073】
【化6】

【0074】
(式中、R、R、m、nおよびpは項1に記載の定義と同じであり、Pはアミノ基の保護基を示す。)
式(II’’)の化合物は、式(XIII)の保護基(P)を脱保護することによって製造できる。式(XIII)の化合物は、式(XI)の化合物と式(XII)の化合物との通常用いられる反応条件下でのアミド化反応によって製造することができる。式(XI)の化合物は、カルボキシル基における反応性誘導体に変換させた後に、式(XII)の化合物と反応させてもよい。
【0075】
式(XI)の化合物は、市販されているか、自体公知の方法、或いは、これに準じた方法により製造することができる。
式(I’’’)の化合物の製法
【0076】
【化7】

【0077】
(式中、R、R、R、m、nおよびpは項1に記載の定義と同じである。)
式(I’’)の化合物から式(I’’’)の化合物の製造は、例えば、ローソン試薬を使用してTetrahedron, 41, 2567 (1985)、Synthesis, 152 (1988)等に記載の方法、あるいはこれらに準じた方法に従って行うことができる。
【0078】
式(I’’) の化合物は、上述にある式(I)の化合物の製法(1)および (2)に記載の方法等に従って製造することができる。
【0079】
Xが、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−等の式(I)の化合物も前記製法や実施例に記載の方法に準じて同様に製造できる。
【0080】
上記製法により得られる式(I)の化合物は、クロマトグラフィー、再結晶、再沈殿等の常法に従って単離および精製することができる。また、光学異性体については、不斉中心を持つ出発原料を用いる等の不斉合成から誘導するか、キラルカラムの使用あるいは分別再結晶等の光学分割をしても誘導できる。シス体、トランス体等の幾何異性体は、合成上誘導することも可能であり、カラムを用いて分離することができる。式(I)の化合物は、構造式中に存在する官能基の種類、原料化合物の選定、反応処理条件により、塩の形で得られる場合もあるが、常法に従って式(I)の化合物に変換することができる。一方、例えば、構造式中に酸付加塩を形成しうる基を有する式(I)の化合物は、常法に従って各種の酸と処理することにより酸付加塩に導くことができる。
【0081】
本発明の化合物並びにその生理的に許容される塩類およびその水和物若しくは溶媒和物は、強力な鎮痛作用を有し、しかも刺激性が弱いので、経口投与だけでなく非経口、例えば経皮投与、局所投与、経鼻投与、膀胱内注射投与でも有効である。従って、本発明の化合物は、鎮痛薬および抗炎症薬として、例えば、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない神経因性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格性疼痛、内臓性疼痛、骨性疼痛、癌性疼痛、およびそれらの組み合わせの疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤として有用である。疼痛および/または炎症の病態として、例えば、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛、術後疼痛、中枢性および末梢性ニューロパシー、神経障害性の腰背部痛をはじめとする様々なタイプの神経因性疼痛、リウマチ性関節症、変形性関節症、腰背部痛、線維筋痛症、非典型的胸痛、ヘルペス神経痛、幻肢痛、骨盤痛、筋膜顔面痛、腹痛、頸痛、中枢性疼痛、歯痛、オピオイド耐性痛、内臓性疼痛、手術疼痛、骨損傷痛、狭心症痛、および治療を必要とする様々な疼痛・炎症の治療剤または予防剤として有用である。さらには、偏頭痛または群発性頭痛、そう痒症、アレルギー性または非アレルギー性の鼻炎、過活動膀胱、脳卒中、過敏性腸症候群、喘息・慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、皮膚炎、粘膜炎、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸症候群および糖尿病、肥満症の予防および/または治療薬としても有用である。
【0082】
「神経因性疼痛」は、末梢または中枢神経系に対する損傷またはこれにおける病理学的変化によって引き起こされる慢性疼痛であり、神経因性疼痛に関連し得るかまたは神経因性疼痛についての基礎を形成し得る。神経性疼痛としては、例えば、以下が挙げられる:糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、切断の外傷後疼痛(末梢性および/または中枢性感作(例えば、幻肢痛)を生じさせる損傷による神経損傷原因)、神経障害性の腰背部痛、癌、化学傷害、毒素、他の大手術、外傷性傷害圧迫に起因する末梢神経損傷、腰背部または頚部の神経根障害痛、線維筋痛症、舌咽神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギア、視床症候群、神経根裂離、反射性交感神経性ジストロフィーもしくは開胸後疼痛、栄養失調、またはウイルスもしくは細菌感染(例えば、帯状ヘルペスもしくはヒト免疫不全ウイルス(HIV)−多発性神経障害痛)、あるいはそれらの組み合わせ、転移性浸潤、有痛脂肪症、上記以外の様々な中枢性および末梢性ニューロパシー、または視床状態に関連する中枢性疼痛状態、およびそれらの組み合わせに続発する状態もまた、神経因性疼痛の定義に含まれる。
【0083】
本発明の化合物の投与経路としては、経口投与或いは非経口投与が可能であり、非経口投与の一つである経皮投与が好ましい。本発明の化合物の投与量は、化合物の種類、投与形態、投与方法、患者の症状・年齢等により異なるが、通常0.005〜150mg/kg/日、好ましくは0.05〜20mg/kg/日であり、1回または数回に分けて投与することができる。
【0084】
本発明の化合物は、他の薬剤と組み合わせて医薬を構成することもできる。これにより相加的・相乗的な薬理効果を得ることができる。例えば、本発明の化合物は、例えば、麻薬性鎮痛薬、神経因性疼痛治療薬、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド性抗炎症薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗攣縮薬、麻酔薬、抗不整脈薬、局所麻酔薬および抗不安薬からなる群より選択される少なくとも1種の他の薬剤と組み合わせた医薬として用いられ得る。これらの中でも、麻薬性鎮痛薬、神経因性疼痛治療薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗てんかん薬、抗不整脈薬および局所麻酔薬からなる群より選択される少なくとも1種の他の薬剤が好ましい。
【0085】
麻薬性鎮痛薬の具体例としては、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ペチジン、フェンタニール、ペンタゾシン、トラマドール、ブトルファノールおよびブプレノルフィン等がある。神経因性疼痛治療薬の具体例としては、様々なタイプのものが例示でき、たとえば、プレガバリン、ガバペンチン、カルバマゼピン、リドカイン、デュロキセチンおよびメキシレチン等が挙げられる。非ステロイド性抗炎症薬の具体例としては、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、アセトアミノフェン、エトドラク、メロキシカム、セレコキシブおよびロフェコキシブ等がある。ステロイド性抗炎症薬の具体例としては、メチルプレゾニドロン、プレゾニドロンおよびデキサメサゾン等がある。抗うつ薬の具体例としては、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、アモキサピン、パロキセチン、フルボキサミン、ミルナシプランおよびデュロキセチン等がある。抗てんかん薬の具体例としては、カルバマゼピン、ラモトリジン、ガバペンチンおよびプレガバリン等がある。抗攣縮薬の具体例としては、バクロフェン等がある。麻酔薬の具体例としては、メピバカイン、ブピバカイン、テトラカイン、ジブカインおよび塩酸ケタミン等がある。抗不整脈薬および局所麻酔薬の具体例としては、リドカイン、プロカイン、メキシレチンおよびフレカイニド等がある。抗不安薬の具体例としては、ジアゼパムおよびエチゾラム等がある。
【0086】
本発明の化合物と組み合わせる他の薬剤は、これらの中でも、モルヒネ、コデイン、フェンタニール、ペンタゾシン、カルバマゼピン、ラモトリジン、プレギャバリン、ガバペンチン、リドカイン、ロキソプロフェンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、アセトアミノフェン、エトドラク、メロキシカム、セレコキシブおよびロフェコキシブからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0087】
本発明の化合物と上述の他の薬剤との組み合わせから構成される医薬は、特に、鎮痛薬および抗炎症薬として、例えば、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない神経因性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格性疼痛、内臓性疼痛、骨性疼痛、癌性疼痛、およびそれらの組み合わせの疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤として、提供することができる。疼痛および/または炎症の病態として、例えば、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛、術後疼痛、中枢性および末梢性ニューロパシー、神経障害性の腰背部痛をはじめとする様々なタイプの神経因性疼痛、リウマチ性関節症、変形性関節症、腰背部痛、線維筋痛症、非典型的胸痛、ヘルペス神経痛、幻肢痛、骨盤痛、筋膜顔面痛、腹痛、頸痛、中枢性疼痛、歯痛、オピオイド耐性痛、内臓性疼痛、手術疼痛、骨損傷痛、狭心症痛、および治療を必要とする様々な疼痛および炎症が挙げられる。本発明の医薬の化合物と他の薬剤との組み合わせから構成される医薬は、これら病態の疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤として提供することができる。
【0088】
本発明の化合物又はこれと上記他の薬剤との組み合わせからなる医薬は、通常、医薬用担体と混合して調製した医薬組成物の形で投与される。具体例としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、細粒剤、液剤、舌下剤、および懸濁剤などの経口剤、軟膏剤、坐剤(直腸内投与剤)、膀胱内注入剤、貼付剤(テープ剤、経皮パッチ製剤、湿布剤等)、ローション剤、乳液剤、クリーム剤、ゼリー剤、ゲル剤、外用散剤、吸入剤、および点鼻剤等などの外用剤、皮内注射剤、皮下注射剤または腹腔内、関節腔内等の体腔内注射剤等などの注射剤、点滴剤が挙げられる。これらの医薬組成物は常法に従って調製される。すなわち、式(I)で表される化合物又はその生理的に許容される塩を含有する医薬組成物は、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、崩壊剤、基剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張化剤、溶解補助剤、pH調節剤、界面活性剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、沈殿防止剤、増粘剤、粘度調節剤、ゲル化剤、無痛化剤、保存剤、可塑剤、吸収促進剤、老化防止剤、保湿剤、防腐剤、香料等の医薬用担体を含有することができ、2種以上の医薬用担体添加物を適宜選択して用いることもできる。
【0089】
医薬用担体としては、医薬分野において常用され、かつ本発明の化合物と反応しない物質が用いられる。医薬用担体の具体例としては、乳糖、トウモロコシデンプン、白糖、マンニトール、硫酸カルシウム、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、変性デンプン、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、硬化油、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、酸化チタン、リン酸カルシウム、オリーブ油、精製ラノリン、スクワラン、シリコーンオイル、ヒマシ油、大豆油、綿実油、流動パラフィン、白色ワセリン、黄色ワセリン、パラフィン、ラウリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ミツロウ、サラシミツロウ等、コレステロールエステル、エチレングリコールモノエステル、プロピレングリコールモノエステル、モノステアリン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、ソルビトース液、水、親水軟膏、バニシングクリーム、吸水軟膏、コールドクリーム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリイソブチレン、酢酸ビニル共重合体、アクリル系共重合体、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリド、ジエチレングリコール、ドデシルピロリドン、尿素、ラウリル酸エチル、エイゾン、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、アガロース、カラギーナン、アルギン酸またはその塩、トラガント、アカシアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、デキストリン、ポリビニルアルコール、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム等、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ヒマシ油硫酸化物(ロート油)、Span(ステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等)、Tween(ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(いわゆるHCO)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポロキサマー(いわゆるプルロニック)、レシチン(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなどレシチンから単離された精製リン脂質をも含む)またはその水素添加物をはじめとする誘導体、フロン系ガス(フロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−123、フロン−142c、フロン−134a、フロン−227、フロン−C318、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなど)、代替フロンガス(HFA−227、HFA−134aなど)、プロパン、イソブタン、ブタン、ジエチルエーテル、窒素ガス、炭酸ガス、塩化ベンザルコニウム、パラベン、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、濃グリセリン、塩化ベンザルコニウム、パラベン、ステアリン酸の塩、デンプン、セルロース等が挙げられる。
【0090】
医薬組成物中における本発明の化合物の含有量はその剤形に応じて異なるが、通常、全組成物中0.0025〜20重量%である。これらの医薬組成物はまた、治療上有効な他の物質を含有していてもよい。
【0091】
本発明の化合物と上述の他の薬剤との組み合わせを採用した医薬は、本発明の化合物と共に上記他の薬剤を含有する単体の医薬組成物を構成できる。あるいは、本発明の化合物を含有する第一の医薬組成物と、上記他の薬剤を含有する第二の医薬組成物とが別々に提供され、これらが一定時間かけて別々に、または同時に投与されてもよい。より具体的には、これらの有効成分を一緒に含有する単一の製剤(配合剤)であってもよいし、これらの有効成分の各々を別々に製剤化した複数の製剤であってもよい。別々に製剤化した場合、それらの製剤を別々にまたは同時に投与することができる。また、別々に製剤化した場合、それらの製剤を使用時に希釈剤などを用いて混合し、同時に投与することができる。
【0092】
これら医薬において、薬剤の配合比は、患者の年齢、性別、および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせなどにより、適宜選択することができる。医薬の投与経路としては、経口投与及び非経口投与が可能である。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。化合物の同定は、NMRスペクトル(300MHz又は400MHz)等によって行った。構造式中のRおよびSはいずれも不斉炭素原子上の立体の絶対配置を意味し、RおよびSはいずれも不斉炭素原子上の立体の相対配置を意味する。
【0094】
実施例1
シス−4−エチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0095】
【化8】

【0096】
(1)4−アミノ−1−t−ブトキシカルボニルピペリジン(331mg)とトリエチルアミン (182mg)をテトラヒドロフラン(8ml)に溶解し、氷冷下にクロロぎ酸p−ニトロフェニル(347mg)を加え、0℃で1時間撹拌した。この反応液に対し、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩 (504mg)、トリエチルアミン(415mg)およびジメチルスルホキシド(8ml)を加え、室温に昇温して17時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、10%炭酸カリウム水溶液(4回)、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下に留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製し、t−ブチル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートを656mg得た。
(2)上記(1)の生成物(633mg)をクロロホルム(12ml)に溶解し、4mol/l 塩化水素/酢酸エチル(4ml)を加えた。室温で18時間撹拌した後、反応液にヘキサン(30ml)を加え、析出した結晶を濾取し、1−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−3−(ピペリジン−4−イル)ウレア塩酸塩を506mg得た。
(3)シス−4−エチルシクロヘキサノール(1.02g)及びジクロロメタン(10ml)の混合物にN,N’−カルボニルジイミダゾール(1.67g)を加えた。反応液を室温で14時間撹拌した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下に留去し、シス−4−エチルシクロヘキシル 1H-イミダゾール−1−カルボキシレートを1.71g得た。
(4)上記(1)の生成物(136mg)およびジメチルスルホキシド(3ml)の混合物に上記(2)の生成物(206mg)、トリエチルアミン(153mg)および4−ピロリジノピリジン(13mg)を加え、70℃で13時間加熱撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液、水(2回)、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下に溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製してシス−4−エチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートを207mg得た。
【0097】
(5)上記(4)の生成物(199mg)をエタノール/テトラヒドロフラン(1/1)の混合溶媒(8ml)に溶解し、10%パラジウム炭素(104mg)を加え、水素雰囲気下、室温で接触水素添加を行った。3時間後、触媒を濾去し、溶媒を減圧下に留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を87mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 0.88 (3H, t), 1.21-1.28 (7H, m), 1.46-1.57 (4H, m), 1.60-1.94 (4H, m), 2.89 (2H, t), 3.73-3.80 (1H, m), 3.87 (3H, s), 4.04 (2H, t), 4.25-4.27 (3H, m), 4.60 (1H, t), 4.88 (1H, brs), 5.63 (1H, s), 6.77 (1H, dd), 6.82 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0098】
実施例2
2,6−ジメチル−4−ヘプチル 4−[3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0099】
【化9】

【0100】
実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキサノールの代わりに2,6−ジメチル−4−ヘプタノールを用い、実施例1と同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.91 (12H, d), 1.12-1.35 (4H, m), 1.41-1.70 (4H, m), 1.89-2.00 (2H, m), 2.81-2.97 (2H, m), 3.70-3.82 (1H, m), 3.88 (3H, s), 3.98-4.14 (3H, m), 4.27 (2H, d), 4.42-4.50 (1H, m), 4.87-5.97 (1H, m), 5.58 (1H, brs), 6.76 (1H, dd), 6.83 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0101】
実施例3
4,4−ジメチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)ウレイド)ピペリジン-1-カルボキシレートの製造:
【0102】
【化10】

【0103】
実施例1における4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミンの代わりにJ. Chem. Soc., 1863 (1961) に記載の方法で合成できる4−ベンジルオキシ−3−メトキシアニリンを、シスー4−エチルシクロヘキサノールの代わりに4,4−ジメチルシクロヘキサノールを用い、実施例1と同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 0.91 (6H, d), 1.19-1.28 (4H, m), 1.36-1.44 (2H, m), 1.49-1.60 (2H, m), 1.70-1.78 (2H, m), 1.92-1.96 (2H, m), 2.89 (2H, t), 3.79-3.87 (4H, m), 4.05 (2H, d), 4.58-4.64 (2H, m), 5.57 (1H, s), 6.26 (1H, s), 6.59 (1H, dd), 6.85 (1H, d), 7.01 (1H, d).
【0104】
実施例4
シクロヘキシル 4−[3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)チオウレイド]ピペリジン-1-カルボキシレートの製造:
【0105】
【化11】

【0106】
(1)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキサノールの代わりにシクロヘキサノールを、1−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−3−(ピペリジン−4−イル)ウレア塩酸塩の代わりに4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)ピペリジンを用い、実施例1(3)および(4)と同様に反応および処理してシクロヘキシル 4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)ピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
(2)実施例1におけるt−ブチル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートの代わりに上記 (1)の生成物を用い、実施例1(2)と同様に反応および処理してシクロヘキシル 4−アミノピペリジン−1−カルボキシレート塩酸塩を得た。
【0107】
(3)米国特許第6,984,647号明細書に記載の方法で合成できる4−イソチオシアナトメチル−2−メトキシ−1−(メトキシメトキシ)ベンゼン(195mg)およびテトラヒドロフラン(4ml)の混合物に、上記(2)の生成物(235mg)およびトリエチルアミン(0.09ml)を加え、室温で17時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製してシクロヘキシル 4−{3−[3−メトキシ−4−(メトキシメトキシ)ベンジル] チオウレイド}ピペリジン−1−カルボキシレートを363mg得た。
(4)上記(3)の生成物をテトラヒドロフラン(4ml)に溶解し、2mol/l塩酸(4ml)を加え、50℃で2時間加熱した。反応液に2−プロパノール(2ml)を加え、50℃で5時間加熱撹拌した。反応液に35% 塩酸(1ml)を加え、80 ℃で1時間加熱撹拌した。反応液を濃縮し、酢酸エチルを加え、水、飽和食塩水の順で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3回精製、溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/2で2回およびクロロホルム/メタノール=100/0から100/2のグラジエントで1回)で精製して目的物 を53mg得た。
11H-NMR (CDCl3, δ) : 1.26-1.59 (8H, m), 1.65-1.69 (2H, m), 1.75-1.83 (2H, m), 1.99-2.04 (2H, m), 2.90 (2H, t), 3.88 (3H, s), 4.02 (2H, d), 4.27 (1H, brs), 4.46 (2H, brs), 4.62 (1H, brs), 5.59 (1H, brs), 5.67 (1H, s), 6.12 (1H, brs), 6.79 (1H, dd), 6.84 (1H, d), 6.88 (1H, d).
【0108】
実施例5
シクロヘキシル 4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルチオカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0109】
【化12】

【0110】
(1)1−(t−ブトキシカルボニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(11.5g)、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(11.5g)、トリエチルアミン(14.0ml)および塩化メチレン(300ml)の混合物に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(12.5g)を加えた。反応液を室温で20時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製してt−ブチル 4−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルカルバモイル)−ピペリジン−1−カルボキシレートを16.3g得た。
(2)上記(1)の生成物(16.3g)を酢酸エチル(270ml)に溶解し、4mol/l塩化水素/酢酸エチル(90ml)を加えた。混合物を6時間攪拌した後、反応液にヘキサン(200ml)を加え、析出結晶を濾取し、N−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−4−ピペリジンカルボキサミド塩酸塩を11.4g得た。
(3)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキサノールの代わりにシクロヘキサノールを、1−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−3−(ピペリジン−4−イル)ウレア塩酸塩の代わりに上記(2)の生成物を用い、実施例1(3)および(4)と同様に反応および処理してシクロヘキシル 4−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
【0111】
(4)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートの代わりに上記(3)の生成物を用い、実施例1(5)と同様に反応および処理してシクロヘキシル 4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
【0112】
(5)上記(4)の生成物(325mg)、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)―1,3,2,4−ジチアジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(ローソン試薬 )(185mg)およびトルエン(8ml)の混合物を80 ℃で2時間加熱した。溶媒を減圧下に留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2回精製、溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエントおよびクロロホルム/メタノール=100/0から100/2のグラジエント)で精製して目的物を84mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 1.26-1.50 (6H, m), 1.65-1.72 (2H, m), 1.79-1.87 (6H, m), 2.59-2.74 (3H, m), 3.89 (3H, s), 4.27 (2H, brd), 4.63-4.69 (1H, m), 4.73 (2H, d), 5.63 (1H, s), 6.81 (1H, dd), 6.84 (1H, d), 6.90 (1H, d), 7.21 (1H, brs).
【0113】
実施例6
(1R*,2S*)−2−メチルシクロヘキシル 4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルチオカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0114】
【化13】

【0115】
実施例5におけるシクロヘキサノールの代わりに(1R*,2S*)−2−メチルシクロヘキサノールを用い、実施例5と同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 0.88 (3H, d), 1.26-1.36 (2H, m), 1.45-1.50 (4H, m), 1.62-1.70 (2H, m), 1.80-1.89 (5H, m), 2.59-2.69 (1H, m), 2.77 (2H, brs), 3.89 (3H, s), 4.29 (2H, d), 4.74 (2H, d), 4.82 (1H, brs), 5.64 (1H, s), 6.81 (1H, dd), 6.85 (1H, d), 6.90 (1H, d), 7.23 (1H, brs).
【0116】
実施例7
2,6−ジメチル−4−ヘプチル 4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルチオカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0117】
【化14】

【0118】
実施例5におけるシクロヘキサノールの代わりに2,6−ジメチル−4−ヘプタノールを用い、実施例5と同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 0.90 (12H, dd), 1.24-1.33 (2H, m), 1.45-1.54 (2H, m), 1.60-1.67 (2H, m), 1.74-1.88 (4H, m), 2.57-2.67 (1H, m), 2.71-2.78 (2H, m), 3.89 (3H, s), 4.26 (2H, d), 4.73 (2H, d), 4.87-4.96 (1H, m), 5.65 (1H, s), 6.81 (1H, dd), 6.84 (1H, d), 6.90 (1H, d), 7.24 (1H, brs).
【0119】
実施例8
シクロヘキシル 4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルカルバモイルオキシ)ピペリジン-1-カルボキシレートの製造:
【0120】
【化15】

【0121】
(1)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキサノールの代わりにシクロヘキサノールを、1−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−3−(ピペリジン−4−イル)ウレア塩酸塩の代わりに4−ヒドロキシピペリジンを用い、実施例1(3)および(4)と同様に反応・処理してシクロヘキシル 4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
【0122】
(2)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキサノールの代わりに上記(1)の生成物を用い、実施例1(3)と同様に反応および処理してシクロヘキシル 4−(1H-イミダゾール−1−カルボニルオキシ)ピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
【0123】
(3)実施例1における1−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−3−(ピペリジン−4−イル)ウレア塩酸塩の代わりに4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩を、シス−4−エチルシクロヘキシル 1H-イミダゾール−1−カルボキシレートの代わりに上記(2)の生成物を用い、実施例1(4)と同様に反応・処理してシクロヘキシル 4−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
【0124】
(4)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートの代わりに上記(3)の生成物を用い、実施例1(5)と同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 1.27-1.49 (8H, m), 1.65-1.70 (2H, m), 1.82-1.91 (4H, m), 3.25 (2H, brt), 3.73-3.77 (2H, m), 3.88 (3H, s), 4.27 (2H, d), 4.63-4.70 (1H, m), 4.86-4.94 (2H, m), 5.61 (1H, s), 6.76-6.80 (2H, m), 6.87 (1H, d).
【0125】
実施例9
シクロヘキシル 4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アセトキシ]ピペリジン-1-カルボキシレートの製造:
【0126】
【化16】

【0127】
(1)4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル酢酸(1.04g)、1−(t-ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシピペリジン(0.698g)およびN,N−ジメチルホルムアミド溶液(10ml)の混合物にトリエチルアミン(0.445g)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.047g)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.861g)を加えた。反応液を室温で21時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水(2回)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水ので順で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製してt−ブチル 4−[2−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)アセトキシ]ピペリジン−1−カルボキシレートを0.827g得た。
【0128】
(2)実施例1におけるt−ブチル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートの代わりに上記(1)の生成物を用い、実施例1(2)と同様に反応および処理して4−ピペリジニル 2−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)アセテート塩酸塩を得た。
【0129】
(3)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキサノールの代わりにシクロヘキサノールを、1−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−3−(ピペリジン−4−イル)ウレア塩酸塩に上記(2)の生成物を用い、実施例1(3)および(4)同様に反応および処理してシクロヘキシル 4−[2−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)アセトキシ]ピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
(4)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートの代わりに上記(3)の生成物を用い、実施例1(5)と反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 1.24-1.70 (10H, m), 1.80-1.86 (4H, m), 3.24-3.32 (2H, m), 3.53 (2H, s), 3.64-3.68 (2H, m), 3.88 (3H, s), 4.63-4.69 (1H, m), 4.91-4.98 (1H, m), 5.55 (1H, s), 6.76 (1H, dd), 6.80 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0130】
実施例10
シス−4−メチルシクロヘキシル 4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アセトキシ]ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0131】
【化17】

【0132】
実施例9におけるシクロヘキサノールの代わりにシス−4−メチルシクロヘキサノールを用い、実施例9と同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.91 (3H, d), 1.14-1.27 (2H, m), 1.39-1.66 (6H, m), 1.81-1.87 (4H, m), 3.25-3.34 (2H, m), 3.54 (3H, s), 3.64-3.72 (2H, m), 3.88 (3H, s), 4.90-4.99 (2H, m), 5.56 (1H, s), 6.76 (1H, dd), 6.80 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0133】
実施例11
1−シクロヘキシル 4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)ピペリジン−1,4−ジカルボキシレートの製造:
【0134】
【化18】

【0135】
(1)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキサノールの代わりにシクロヘキサノールを、1−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−3−(ピペリジン−4−イル)ウレア塩酸塩の代わりにイソニペコチン酸エチルを用い、実施例1(3)および(4)と同様に反応および処理して1−シクロヘキシル 4−エチル ピペリジン−1,4−ジカルボキシレートを得た。
【0136】
(2)上記(1)の生成物(484mg)をメタノール(3ml)に溶解し、2mol/l 水酸化ナトリウム水溶液(3ml)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した後、反応液に2mol/l 塩酸を加えてpH1に調整し、生じた結晶を濾取して1−(シクロヘキシルオキシカルボニル)ピペリジン−4−カルボン酸を406mg得た。
【0137】
(3)上記(2)の生成物(200mg)、バニリルアルコール(120mg)、トリフェニルホスフィン(205mg)およびテトラヒドロフラン(4ml)の混合物に氷冷下、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(158mg)を加えた。反応液を室温で4日間撹拌した後、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール=100/0から100/1のグラジエント)で精製して目的物を28mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 1.25-1.54 (6H, m), 1.61-1.77 (4H, m), 1.81-1.91 (4H, m), 2.49 (1H, tt), 2.86 (2H, t), 3.09 (3H, s), 4.06 (2H, brd), 4.62-4.69 (1H, m), 5.04 (2H, s), 5.65 (1H, s), 6.84-6.91 (3H, m).
【0138】
実施例12
シス−4−メチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパノイル] ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0139】
【化19】

【0140】
(1)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキサノールの代わりにシス−4−メチルシクロヘキサノールを、1−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−3−(ピペリジン−4−イル)ウレア塩酸塩の代わりにイソニペコチン酸を用い、実施例1(3)および(4)と同様に反応・処理して1−[(シス−4−メチルシクロヘキシルオキシ)カルボニル]ピペリジン−4−カルボン酸を得た。
(2)上記(1)の生成物(408mg)、塩化チオニル(0.5ml)およびトルエン(4ml)の混合物を80℃で3時間加熱撹拌した後、反応液を減圧濃縮し、シス−4−メチルシクロヘキシル 4−(クロロカルボニル)ピペリジン−1−カルボキシレートを423mg得た。
【0141】
(3)Tetrahedron, 14, 46 (1961)に記載の方法で合成できる1−ベンジルオキシ−4−(2−ヨードエチル)−2−メトキシベンゼン(736mg)、亜鉛(784mg)およびテトラヒドロフラン(4ml)の混合物を1.5時間加熱還流した。反応液の上澄み(1.8ml)を、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(56mg)、上記(2)の生成物(423mg)およびトルエン(4ml)の混合物に45℃で滴下した後、同条件下で3時間加熱撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈した後、セライトで濾過し、1mol/l 塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製してシス−4−メチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)プロパノイル] ピペリジン−1−カルバメートを263mg得た。
(4)実施例1におけるシス−4−エチルシクロヘキシル 4−[3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)ウレイド]ピペリジン−1−カルボキシレートの代わりに上記(3)の生成物を用い、実施例1(5)と反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 0.91 (3H, d), 1.14-1.28 (3H, m), 1.39-1.58 (6H, m), 1.81 (4H, t), 2.44 (1H, tt), 2.72-2.86 (6H, m), 3.87 (3H, s), 4.11-4.16 (2H, m), 4.89 (1H, brs), 5.48 (1H, s), 6.64-6.68 (2H, m), 6.82 (1H, d).
【0142】
実施例13
(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アセトアミド]−ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0143】
【化20】

【0144】
(1)4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸(4.56g)、N−ベンジル−4−アミノピペリジン(4.76g)、トリエチルアミン(3.52ml)および塩化メチレン(100ml)の混合物に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(6.23g)およびN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(4.21g)を加えた。反応液を室温で2日間攪拌後、クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去した。残渣をエタノールおよびクロロホルムの混合物で結晶化し、6.93g得た。
(2)上記(2)の生成物(6.93g)をエタノール(150ml)に溶解し、10%パラジウム炭素(500mg)を加え、40℃で接触水素添加を行った。24時間後、触媒を濾去し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルで結晶化し、5.08g得た。
(3)上記(2)の生成物(200mg)をN,N−ジメチルホルムアミド(3ml)及びピリジン(1ml)に溶解し、氷冷下(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルクロロホルメート(171mg)を加えた。反応液を2時間攪拌後、溶媒を減圧で留去し、酢酸エチルを加えた。、クエン酸水溶液、水、炭酸カリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を170mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.76 (3H, d), 0.88(4H, d), 0.89-1.39 (6H, m), 1.41-1.74 (4H, m), 1.77-1.92 (2H, m), 2.76-2.98 (2H, m), 3.48 (2H, s), 3.86-4.10 (3H, m), 3.88 (3H, s), 4.46-4.58 (1H, m), 5.30 (1H, d), 5.69 (1H, s), 6.71 (1H, dd), 6.75 (1H, d), 6.88 (1H, d).
【0145】
実施例14〜22
実施例13における(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルクロロホルメートの代わりに各種クロロホルメートを用い、実施例13と同様に反応および処理して表1及び表2に示す化合物を得た。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
実施例23
(1R*,2S*)−2−メチルシクロヘキシル 4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)エタンチオアミド] ピペリジン−1−カルバメートの製造:
【0149】
【化21】

【0150】
実施例5におけるシクロヘキシル 4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートの代わりに実施例19の生成物を用い、実施例5(5)と同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 0.86 (3H, d), 1.23-1.32 (4H, m), 1.42-1.49 (4H, m), 1.64-1.68 (2H, m), 1.83-1.86 (1H, m), 2.00-2.04 (2H, m), 2.94 (2H, t), 3.88 (3H, s), 4.02-4.06 (4H, m), 4.54-4.59 (1H, m), 4.79-4.81 (1H, m), 5.65 (1H, s), 6.68-6.73 (2H, m), 6.85-6.92 (2H, m).
【0151】
実施例24
シクロヘキシル 4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミノ)−2−オキソエチル] ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0152】
【化22】

【0153】
実施例5における1−(t−ブトキシカルボニル)−ピペリジン−4−カルボン酸の代わりに2−[1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]酢酸を用い、実施例5(1)から(4)までと同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 1.08-1.19 (2H, m), 1.27-1.57 (6H, m), 1.60-1.81 (6H, m), 2.04-2.11 (3H, m), 2.75 (2H, t), 3.87 (3H, s), 4.13 (2H, d), 4.35 (2H, d), 4.64-4.67 (1H, m), 5.62 (1H, s), 5.67 (1H, brs), 6.75 (1H, dd), 6.79 (1H, d), 6.87 (1H, d).
【0154】
実施例25
シクロヘキシル 4−[3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミノ)−3−オキソプロピル] ピペリジン−1−カルボキシレートの製造:
【0155】
【化23】

【0156】
実施例5における1−(t−ブトキシカルボニル)−ピペリジン−4−カルボン酸の代わりに3−[1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル] プロピオンを用い、実施例5(1)から(4)までと同様に反応および処理して目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) : 1.03-1.17 (2H, m), 1.23-1.54 (8H, m), 1.57-1.70 (5H, m), 1.81-1.86 (2H, m), 2.22 (2H, t), 2.69 (2H, t), 3.88 (3H, s), 4.08-4.15 (2H, m), 4.35 (2H, d), 4.62-4.68 (1H, m), 5.63 (1H, s), 5.66 (1H, brs), 6.76 (1H, dd), 6.80 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0157】
以下に、本発明の代表的化合物の薬理試験結果を示し、本発明の化合物についての薬理作用を説明する。ただし、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
【0158】
試験例1:細胞内カルシウム濃度を生物活性指標とするTRPV1アゴニスト活性測定:fluorescence image plate reader(FLIPR)法
本試験は、TRPV1の発現が豊富なラット後根神経節培養細胞を用いて、細胞内カルシウム濃度上昇を指標に、試験化合物のTRPV1のアゴニスト活性を測定するものであり、Jerman等の方法(Jerman,J.C.,et al., Comparison of effects of anandamide at recombinant and endogenous rat vanilloid receptors. Br J Anaesth, 2002. 89(6): p.882-7)に準じて試験を実施した。即ち、生後7日目のWistar系ラットから後根神経節を摘出し、コラゲナーゼ―トリプシン処置により細胞を単離した。その後、5%CO2、37℃に設定したCO2インキュベーターで2日間の初代培養を行った。培養液として、NeurobasalTM mediumにL-glutamine、nerve growth factor、N-2 Supplement、Penicillin−Streptomycin、5−Fluoro−2’−deoxyuridine(培養1日目のみ)を添加したものを用いた。
【0159】
細胞内カルシウム濃度測定には、FLIPRTETRAシステム(Molecular Device社)を使用した。カルシウム蛍光試薬を取り込ませたラット後根神経節初代細胞に試験化合物を適用させた際に上昇する蛍光強度を測定することによって、TRPV1アゴニスト活性の指標とした。結果を以下の表3に示す。
【0160】
【表3】



【0161】
表3に示すように、本発明の化合物はTRPV1アゴニストであるカプサイシンと同様の細胞内カルシウム濃度の上昇を引き起こした。
【0162】
試験例2:刺激性の検討(アイワイピング(eye-wiping)試験)
本試験は本発明の化合物が、どの程度の刺激性を有するかを検討するものであり、Jancso等の方法[Acta. Physiol. Acad. Sci. Hung.,19, 113-131(1961)]およびSzallasi等の方法[Brit. J. Pharmacol.,119, 283-290(1996)]に準じて実施した。具体的には、5%Tween 80および5%エタノールを含有する生理食塩液に、各濃度(10または30μg/ml)になるように試験化合物を溶解させ、得られた溶液をStd:ddy系雄性マウス(一群5匹,体重20〜30g)の眼へ一滴滴下し,前肢での防御的拭い取り動作(protective wiping behavior)の回数を一分毎に投与後5分まで数えた。試験終了後、各分毎の回数の平均値を求め,最大回数を代表値とした。また、溶媒対照として5%Tween 80および5%エタノールを含有する生理食塩液を用い、同様の試験を行った。結果を表4に示す。
【0163】
【表4】

【0164】
表4に示すように、10μg/mlの濃度のカプサイシンを滴下することによって、激しい拭い取り動作が観察された。一方、表3に挙げた実施例化合物は、いずれも30μg/mlの濃度であっても拭い取り動作の回数は、少なく、刺激性が弱いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の化合物及びその生理的に許容される塩類は、強力な鎮痛作用を有し、しかもカプサイシンよりも刺激性が弱く、鎮痛薬及び抗炎症薬として、また、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛等をはじめとする様々なタイプの神経因性疼痛やリウマチ性関節炎や変形性関節炎に起因する疼痛の治療薬として有用である。さらに、これらは偏頭痛や群発性頭痛、そう痒症、アレルギー性及び非アレルギー性の鼻炎、過活動膀胱、脳卒中、過敏性腸症候群、喘息・慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、皮膚炎、粘膜炎、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸症候群及び糖尿病、肥満症の予防及び/又は治療薬としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】


[式中、
1は、メチル基または水素原子を示し、
2は、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、
3は、C3〜8シクロアルキル基、C3〜8シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基(該各基は、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはハロゲンで置換可能な位置にて置換されていてもよい。)を示すか;或いはC6〜12アルキル基またはC6〜12アルケニル基を示し、
Xは、−NH−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−、−NH−C(=S)−、−NH−C(=O)−CH−、−NH−C(=O)−CH−CH−、−NH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−または−C(=O)−を示し、
nおよびmは、同一または相異なって1、2または3の整数を示し、
pは、0、1または2の整数を示す。]
で表される化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項2】
式(I)において、R3が、C3〜8シクロアルキル基またはアリール基(該各基は、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル及びC3〜8シクロアルキルからなる群から選ばれる、同一又は相異なった1個〜5個の置換基で置換されていてもよい。)を示す請求項1記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)において、Xが、−NH−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−、−C(=S)−NH−または−NH−C(=S)−を示す請求項1または2記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項4】
式(I)において、Xが、−NH−C(=O)−NH−、−NH−C(=S)−NH−または−NH−C(=S)−を示す請求項3記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項5】
式(I)において、nおよびmが、同一または相異なって1または2の整数を示す請求項1〜4のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項6】
式(I)において、nおよびmが、共に2である請求項5に記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項7】
式(I)において、pが、1の整数を示す請求項1〜6のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項8】
式(I)において、R1がメチル基を示す、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項9】
式(I)において、R2が水素原子を示す、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩。
【請求項10】
活性成分として請求項1〜9のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩を有効成分とする疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤。


【公開番号】特開2013−28536(P2013−28536A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257823(P2009−257823)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】