説明

環状アミン側鎖を含有する選ばれた四環式テトラヒドロフラン誘導体

【化1】


本発明は、セロトニン受容体、特に5−HT2A及び5−HT2C受容体に対して、ならびにドパミン受容体、特にドパミンD受容体に対して結合親和性を有する環状アミン側鎖を含有する新規な四環式テトラヒドロフラン誘導体、本発明に従う化合物を含んでなる製薬学的組成物、薬剤として、特にある範囲の精神医学的及び神経学的障害、特にある種の精神病性、心臓血管性及び胃運動性障害の予防及び/又は処置用の薬剤としてのそれらの使用ならびにそれらの製造方法に関する。本発明に従う化合物を一般式(I)により示すことができ、それはその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩も含み、ここですべての置換基は請求項1におけると同様に定義される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、セロトニン受容体、特に5−HT2A及び5−HT2C受容体に対して、ならびにドパミン受容体、特にドパミンD受容体に対して結合親和性を有する環状アミン側鎖を含有する新規な置換四環式テトラヒドロフラン誘導体、本発明に従う化合物を含んでなる製薬学的組成物、薬剤として、特にある範囲の精神医学的及び神経学的障害、特にある種の精神病性、心臓血管性及び胃運動性障害の予防及び/又は処置用の薬剤としてのそれらの使用ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景の先行技術
1997年10月23日に公開された特許文献1(Janssen Pharmaceutica N.V.)は、CNS障害、心臓血管障害又は胃腸障害の処置もしくは予防における治療薬として用いることができる置換四環式テトラヒドロフラン誘導体を開示している。特に化合物はセロトニン5−HT受容体、特定的に5−HT2A及び5−HT2C−受容体に親和性を示す。
【0003】
1999年4月22に公開された特許文献2(Janssen Pharmaceutica N.V.)は、ジベンゾアゼピン、ジベンゾオキセピン、ジベンゾチエピン又はジベンゾスベラン環上に特定のハロゲン置換パターンを有する置換四環式テトラヒドロフラン誘導体を開示している。化合物はCNS障害、心臓血管障害又は胃腸障害の処置もしくは予防に有用であり、特許文献1に開示されている化合物より速い作用の開始を示す。
【0004】
2003年6月12日に公開された特許文献3(Janssen Pharmaceutica N.V.)及び2003年6月12日に公開された特許文献4(Janssen Pharmaceutica N.V.)の両方は、1つのエナンチオマー的に純粋な前駆体からのそれぞれトランス−、シス−縮合3,3a,8,12b−テトラヒドロ−2H−ジベンゾ[3,4:6,7]シクロヘプタ[1,2−b]フラン誘導体の4つのジアステレオ異性体のそれぞれの立体化学的に純粋な形態における製造方法を開示している。特許文献3の化合物は5−HT受容体、特に5−HT2A及び5−HT2C受容体に関する親和性を示す。特許文献4の化合物は、セロトニン5−HT2A、5−HT2C及び5−HT受容体、H−受容体(pIC50=7.15〜7.89)、D2及び/又はD3受容体ならびにノルエピネフリン再吸収輸送体(pIC50=6.03〜7.34)に関する親和性を示す。後者の2つの公開文献において開示された化合物は、環状アミン側鎖を含有していない。
【0005】
2003年5月15日に公開された特許文献5(Janssen Pharmaceutica N.V.)は、特許文献1及び特許文献2に従う化合物のマンデル酸塩を開示している。該塩は驚くべきことに、高い温度及び相対湿度において、特許文献1及び特許文献2において開示された化合物より安定であることが見出された。
【0006】
【特許文献1】国際公開第97/38991号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/19317号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/048146号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/148147号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/040112号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の記述
本発明の目的は、国際公開特許、国際公開第97/38991号パンフレット及び国際公開第99/19317号パンフレットの四環式テトラヒドロフラン誘導体の新規な類似体であって、該国際公開特許において開示された化合物と比較して有利な薬理学的側面を有する類似体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
[式中:
は水素、ハロ又はC1−6アルキルオキシであり;
は水素又はシアノであり;そして
a)XはO又はSであり;そして
Aは式(a−1)、(a−2)又は(a−3)の基であり、
【0011】
【化2】

【0012】
ここで:
mはゼロ、1、2又は3に等しい整数であり;
及びRはそれぞれ独立して水素、C1−6アルキル又はアリールであり;そして
は水素;C1−6アルキル;C1−6アルキルカルボニル;C1−6アルキルカルボニルオキシアルキル;C1−6アルキルオキシカルボニル;アリール;又はヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルカルボニルオキシ及びアリールから選ばれる1個もしくはそれより多い置換基で置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはb)XはCHであり;そして
Aは上記の式(a−2)又は(a−3)の基であり、ここで:
mはゼロ、1、2又は3に等しい整数であり;
及びRはそれぞれ独立して水素又はC1−6アルキルであり;そして
は水素;C2−6アルキル;C1−6アルキルカルボニル;C1−6アルキルカルボニルオキシアルキル;C1−6アルキルオキシカルボニル;又はヒドロキシ及びアリールから選ばれる1個もしくはそれより多い置換基で置換されたC1−6アルキルであり、但し、2−ヒドロキシエチルは除外され;そして
アリールはフェニル;又はハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びハロメチルから選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルである]
に従う本新規な化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩により達成される。
【0013】
本発明に従う化合物は、2−位に環状アミン側鎖が存在することにより構造的に特徴付けられる。この側鎖の存在は、上記で挙げた国際特許出願、国際公開第97/38991号パンフレット及び国際公開第99/19317号パンフレットにおける化合物に帰せられなかった活性であるD受容体に関する有力な親和性を有する化合物を与えることが見出され、その活性は本発明に従う化合物を躁病、興奮、攻撃性及び精神分裂病の陽性の(positive)症状のような精神病の処置における使用に特に適したものとする。対照的に、本発明に従う化合物はノルエピネフリン輸送体再吸収(NET)に対する有意な阻害活性を示さず、それはそれらが有用な抗うつ活性を有していないことを示す。そのような抗うつ活性の不在は、ある種の治療側面のために化合物を選択する場合には有利であり得、特にそれは化合物がさらに5−HT2A及び5−HT2C受容体に対する親和性を有するからである。本発明に従う化合物に関する活性のそのような側面は、上記の国際特許出願に記載されても示唆されてもいない。
【0014】
さらに特定的に、本発明は:
がハロであり;
が水素であり;
アリールがフェニル;又はハロもしくはハロメチルで置換されたフェニルである
本発明に従う一般式(I)の化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩に関する。
【0015】
さらに特定的に、本発明は:
XがO又はSであり;
Aが上記の式(a−1)、(a−2)又は(a−3)の基であり、ここで
mは1又は2に等しい整数であり;
及びRはそれぞれ独立して水素又はアリールであり;そして
はC1−6アルキル又はヒドロキシ置換基で置換されたC1−6アルキルである
一般式(I)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩に関する。
【0016】
特に好ましい本発明に従う化合物には、出願中で、特に下記の表1において同定される第5、12、17、27、28、29、34、35、36、39、44及び46番に対応する基本化合物ならびにその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩が含まれる。さらに特定的に、本発明は下記に描かれる以下の構造式(I−1)〜(I−12)の1つに従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩に関する:
【0017】
【化3】

【0018】
発明の詳細な記述
本出願の枠内で、アルキルは1〜6個の炭素原子を有するか、又は他に指示されている場合、2〜6個の炭素原子を有する1価の直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシルとして定義され;アルキルはさらに3〜6個の炭素原子を有する1価の環状飽和炭化水素基、例えばシクロプロピル、メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを定義する。アルキルの定義は、他にことわらなければ、場合により1個もしくはそれより多い炭素原子上で1個もしくはそれより多いフェニル、ハロ、シアノ、オキソ、ヒドロキシ、ホルミル及びアミノ基で置換されていることができるアルキル基、例えばヒドロキシアルキル、特にヒドロキシメチル及びヒドロキシエチル及びポリハロアルキル、特にジフルオロメチル及びトリフルオロメチルも含む。
【0019】
本出願の枠内で、ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの総称である。
【0020】
本出願の枠内で、「本発明に従う化合物」を用いて一般式(I)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩を意味する。
【0021】
製薬学的に許容され得る塩は、式(I)に従う化合物が形成することができる治療的に活性な無毒性の酸付加塩の形態を含むと定義される。式(I)に従う化合物の塩基形態を適した酸、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、特に塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸;有機酸、例えば酢酸、ヒドロキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロパン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、マンデル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸及びマンデル酸で処理することにより、該塩を得ることができる。好ましい塩は、トリフルオロ酢酸(.CHF,トリフルオロ酢酸塩)、シュウ酸(.C,シュウ酸塩)及びマンデル酸(.C,マンデル酸塩)から得られる。
【0022】
逆に、適した塩基を用いる処理により、該塩の形態を遊離の形態に転換することができる。
【0023】
本出願の枠内で用いられる付加塩という用語は、式(I)に従う化合物ならびにその塩が形成することができる溶媒和物も含んでなる。そのような溶媒和物は、例えば水和物及びアルコラートである。
【0024】
式(I)に従う化合物のN−オキシド形態は、1個もしくは数個の窒素原子がいわゆるN−オキシドに酸化された式(I)の化合物、特に1個もしくはそれより多い第3級窒素(例えば特にR及びR置換基を有する第3級窒素)がN−オキシド化されたN−オキシドを含むものとする。そのようなN−オキシドは、発明的な技術なしで熟練者が容易に得ることができ、これらの化合物は吸収されると人間の体内における酸化により生成する代謝産物であるので、それらは式(I)に従う化合物のための明らかな代替物である。一般的に既知の通り、酸化は通常、薬剤代謝に含まれる第1段階である(Textbook
of Organic Medicinal and Pharmaceutical
Chemistry,1977,pages 70−75)。やはり一般的に既知の通り、化合物の代謝産物形態を化合物自体の代わりに人間に投与することができ、十分に同じ効果を有する。
【0025】
本発明に従う化合物は、少なくとも1個の酸化可能な窒素(第3級アミン部分)を有する。従って人間の代謝においてN−オキシドは非常に生成し易い。
【0026】
3価の窒素をそのN−オキシド形態に転換するための当該技術分野において既知の方法に従い、式(I)の化合物を対応するN−オキシド形態に転換することができる。該N−オキシド化反応は一般に、式(I)の出発材料を適した有機もしくは無機過酸化物と反応させることにより行なうことができる。適した無機過酸化物は、例えば過酸化水素、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属過酸化物、例えば過酸化ナトリウム、過酸化カリウムを含み;適した有機過酸化物はペルオキシ酸、例えばベンゼンカルボペルオキソ酸又はハロ置換ベンゼンカルボペルオキソ酸、例えば3−クロロベンゼンカルボペルオキソ酸、ペルオキソアルカン酸、例えばペルオキソ酢酸、アルキルヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロ−ペルオキシドを含むことができる。適した溶媒は、例えば水、低級アルカノール類、例えばエタノールなど、炭化水素、例えばトルエン、ケトン類、例えば2−ブタノン、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン及びそのような溶媒の混合物である。
【0027】
式(I)に従う化合物の第4級アンモニウム塩は、式(I)に従う化合物の塩基性窒素と適した第4級化剤、例えば場合により置換されていることができるアルキルハライド、アリールハライド又はアリールアルキルハライド、特にヨウ化メチル及びヨウ化ベンジルの間の反応により生成し得る該化合物を定義する。良い離脱基を有する他の反応物、例えばアルキルトリフルオロメタンスルホネート、アルキルメタンスルホネート及びアルキルp−トルエンスルホネートを用いることもできる。第4級アンモニウム塩は、少なくとも1個の正に帯電した窒素を有する。製薬学的に許容され得る対イオンにはクロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロアセテート及びアセテートイオンが含まれる。
【0028】
本発明は、本発明に従う、特に式(I)に従う薬理学的に活性な化合物の誘導化合物(通常「プロドラッグ」と呼ばれる)も含んでなり、それらは生体内で分解して本発明に従う化合物を与える。プロドラッグは通常(しかし必ずではなく)標的受容体において、それらが分解して与える化合物より低い力価のものである。プロドラッグは、所望の化合物がその投与を困難にするか、又は無効にする化学的もしくは物理的性質を有する場合に特に有用である。例えば所望の化合物はわずかにしか可溶性でないかもしれず、それは粘膜上皮を横切ってあまり輸送されないかもしれず、あるいはそれは望ましくない短い血漿半減期を有するかもしれない。プロドラッグについてのさらなる議論は、Stella,V.J.et al.著,“Prodrugs”,Drug Delivery Systems,1985年,pp.112−176及びDrugs,29,1985年,pp.455−473に見出すことができる。
【0029】
本発明に従う薬理学的に活性な化合物のプロドラッグ形態は一般に、エステル化又はアミド化された酸基を有する式(I)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、そのN−オキシド形態又はその第4級アンモニウム塩であろう。そのようなエステル化された酸基に含まれるのは式−COORの基であり、ここでRはC1−6アルキル、フェニル、ベンジル又は以下の基:
【0030】
【化4】

【0031】
の1つである。
【0032】
アミド化された基には式−CONRの基が含まれ、ここでRはH、C1−6アルキル、フェニル又はベンジルであり、Rは−OH、H、C1−6アルキル、フェニル又はベンジルである。アミノ基を有する本発明に従う化合物をケトン又はアルデヒド、例えばホルムアルデヒドを用いて誘導体化し、マンニッヒ塩基(Mannich base)を形成することができる。この塩基は水溶液中で一次速度論を以って加水分解されるであろう。
【0033】
前記で用いられた「立体化学的異性体」という用語は、式(I)の化合物が有し得るすべての可能な異性体を定義する。他にことわるか又は指示しなければ、化合物の化学的名称はすべての可能な立体化学的異性体の混合物を示し、該混合物は基となる分子構造のすべてのジアステレオマー及びエナンチオマーを含有する。さらに特定的に、ステレオジェン中心はR−もしくはS−立体配置を有することができ;2価環状(部分的)飽和基上の置換基はシス−もしくはトランス−立体配置のいずれかを有することができる。二重結合を含む化合物は、該二重結合においてE又はZ−立体化学を有し得る。式(I)の化合物
の立体化学的異性体は明らかに本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0034】
CAS命名法協定に従うと、1個の分子中に2個の既知の絶対立体配置のステレオジェン中心が存在する場合、最低の番号が付けられるキラル中心、参照中心にR又はSの記述字(descriptor)が指定される(Cahn−Ingold−Prelog順位則に基づいて)。R及びSはそれぞれ決定されない絶対立体配置を有する光学的に純粋なステレオジェン中心を示す。「α」及び「β」が用いられる場合:最低の環番号を有する環系中の不斉炭素原子上の最高優先置換基の位置は、随意に常に環系により決定される平均平面の「α」位にある。環系中の他の不斉炭素原子上の最高優先置換基(式(I)に従う化合物中の水素原子)の、参照原子上の最高優先置換基の位置に対する位置は、それが環系により決定される平均平面の同じ側上にある場合には「α」、あるいはそれが環系により決定される平均平面の他の側上にある場合には「β」と呼ばれる。
【0035】
本出願の枠内で、本発明に従う化合物は生来、その化学元素のすべての同位体の組み合わせを含むことが意図されている。本出願の枠内で、特に式(I)に従う化合物に関連して言及される場合、化学元素は、自然に存在するか又は合成的に製造される、自然の豊富さを有するか又は同位体的に濃縮された形態におけるこの元素のすべての同位体及び同位体混合物を含む。特に水素が挙げられる場合、H、H、H及びそれらの混合物を指すことが理解され;炭素が挙げられる場合、11C、12C、13C、14C及びそれらの混合物を指すことが理解され;窒素が挙げられる場合、13N、14N、15N及びそれらの混合物を指すことが理解され;酸素が挙げられる場合、14O、15O、16O、17O、18O及びそれらの混合物を指すことが理解され;フッ素が挙げられる場合、18F、19F及びそれらの混合物を指すことが理解される。
【0036】
従って本発明に従う化合物は生来、1個もしくはそれより多い非−放射性原子がその放射性同位体の1つにより置き換えられている放射性標識化合物とも呼ばれる放射性化合物を含んで、1個もしくはそれより多い元素の1種もしくはそれより多い同位体を有する化合物及びその混合物を含む。「放射性標識化合物」という用語により、少なくとも1個の放射性原子を含有する式(I)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、そのN−オキシド形態又はその第4級アンモニウム塩を意味する。例えば化合物をポジトロン又はγ放射放射性同位体で標識することができる。放射性リガンド−結合法(膜受容体アッセイ)のために、H−原子又は125I−原子は置き換えられるべく選ばれる原子である。画像法のために、最も普通に用いられるポジトロン放射(PET)放射性同位体は11C、18F、15O及び13Nであり、それらのすべては加速器により製造され、それぞれ20、100、2及び10分の半減期を有する。これらの放射性同位体の半減期は非常に短いので、それらの製造のために加速器をその場に(on site)有している研究所でそれらを用いることのみが実行可能であり、かくしてそれらの使用を制限する。これらの中で最も広く用いられるのは18F、99mTc、201Tl及び123Iである。これらの放射性同位体の取り扱い、それらの製造、単離及び分子における導入は、熟練者に既知である。
【0037】
特に放射性原子は水素、炭素、窒素、硫黄、酸素及びハロゲンの群から選ばれる。好ましくは、放射性原子は水素、炭素及びハロゲンの群から選ばれる。
【0038】
特に、放射性同位体は、H、11C、18F、122I、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Br及び82Brの群から選ばれる。好ましくは、放射性同位体は、H、11C及び18Fの群から選ばれる。
【0039】
Chemical Abstracts命名法により定義される式(I)の化合物中に存在する四環式環−系の番号付けを下記の式において示す。
【0040】
【化5】

【0041】
式(I)の化合物は、それらの化学構造中に少なくとも3個のステレオジェン中心、すなわち炭素原子2、3a及び12bを有する。該不斉中心及び存在し得る他の不斉中心は記述字R及びSにより示される。
【0042】
下記に記載する方法で製造される式(I)の化合物は、エナンチオマーのラセミ混合物の形態で合成され得、それを当該技術分野において既知の分割法に従って互いから分離することができる。式(I)のラセミ化合物を、適したキラル酸との反応により対応するジアステレオマー塩の形態に転換することができる。該ジアステレオマー塩の形態を、続いて例えば選択的又は分別結晶化により分離し、アルカリによりそこからエナンチオマーを遊離させる。式(I)の化合物のエナンチオマーの形態を分離する別の方法は、キラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを含む。該純粋な立体化学的異性体を、適した出発材料の対応する純粋な立体化学的異性体から誘導することもでき、但し、反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が望まれる場合、該化合物は立体特異的製造方法により合成されるであろう。これらの方法は有利にはエナンチオマー的に純粋な出発材料を用いるであろう。
【0043】
薬理学
本発明の化合物は5−HT受容体に関する、特に5−HT2A及び5−HT2C受容体(D.Hoyerにより“Serotonin(5−HT) in neurologic and psychiatric disorders” M.D.Ferrari編集,1994年,Boerhaave Commission of the University of Leiden出版において記載された命名法)に関する親和性及びD受容体に関する親和性を示す。本化合物のセロトニン拮抗性を、Drug Dev.Res.,13,1988年,237−244に記載されている「ラットについての5−ヒドロキシトリプトファン試験」におけるそれらの阻害効果により示すことができる。
【0044】
本発明の化合物は好ましい物理化学的性質も有する。例えばそれらは化学的に安定な化合物である。
【0045】
5−HT受容体を遮断する、そして特に5−HT2A及び5−HT2C受容体ならびにD受容体を遮断するそれらの能力を見ると、本発明に従う化合物は薬剤として、特にこれらの受容体のいずれかに媒介される状態の予防的及び治療的処置における薬剤として有用である。
【0046】
従って本発明は、薬剤としての使用のための一般式(I)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩に関する。
【0047】
本発明は、5−HT及び/又はD受容体により媒介される状態の予防的もしくは治
療的もしくは両方の処置用の薬剤の製造のための一般式(I)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩の使用にも関する。
【0048】
これらの薬理学的及び物理化学的性質を見ると、式(I)の化合物は、不安、双極性障害、睡眠−及び性的障害、精神病、境界精神病、精神分裂病、片頭痛、人格障害又は強迫障害、社会恐怖症又はパニック発作、器質性精神障害、ADHDのような子供における精神障害、攻撃性、老人における記憶障害及び態度障害、嗜癖、肥満、過食症及び類似の障害のような中枢神経系障害の処置又は予防における治療薬として有用である。特に本化合物を抗不安薬、抗精神病薬、抗精神分裂病薬、抗−片頭痛薬として、及び薬物の乱用の嗜癖性を制圧する可能性を有する薬剤として用いることができる。
【0049】
式(I)の化合物を運動障害の処置における治療薬として用いることもできる。そのような障害のための古典的な治療薬と組み合わせて本化合物を用いるのが、有利であり得る。
【0050】
式(I)の化合物は、外傷、発作、神経変性性疾患などにより引き起こされる神経系への損傷;高血圧、血栓症、発作などのような心臓血管障害;ならびに胃腸系の運動性の機能不全などのような胃腸障害の処置又は予防においても役立つことができる。
【0051】
式(I)の化合物の上記の使用を見ると、本発明はそのような疾患に苦しむ温血動物の処置方法も提供することになり、該方法は、上記の障害の処置において、特に不安、精神病、片頭痛及び薬物の乱用の嗜癖性の処置において有効な治療的量の式(I)の化合物を全身的に投与することを含んでなる。
【0052】
かくして本発明は薬剤としての使用のための上記で定義された式(I)の化合物にも関し、特に式(I)の化合物を不安、精神病、片頭痛及び薬物の乱用の嗜癖性の処置用の薬剤の製造のために用いることができる。
【0053】
そのような疾患の処置における熟練者は、下記に示される試験結果から、有効な1日の治療的量を決定できるはずである。有効な1日の治療的量は、体重のkg当たり約0.01mg〜約10mg、より好ましくは体重のkg当たり約0.05mg〜約1mgであろう。
【0054】
本発明は、製薬学的に許容され得る担体及び活性成分として本発明に従う化合物、特に式(I)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物にも関する。
【0055】
投与の容易さのために、本化合物を投与目的のための種々の製薬学的形態に調製することができる。本発明に従う化合物、特に式(I)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩又はそれらのサブグループもしくは組み合わせを投与目的のための種々の製薬学的形態に調製することができる。適した組成物として、薬剤を全身的に投与するために通常用いられるすべての組成物を挙げることができる。本発明の製薬学的組成物の調製のために、場合により付加塩の形態にあることができる特定の化合物の活性成分として有効な量を、製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせ、その担体は、投与のために望ましい調製物の形態に依存して多様な形態をとることができる。望ましくはこれらの製薬学的組成物は、特に経口的、直腸的、経皮的、非経口的注入によるか又は吸入による投与に適した単位投薬形態にある。例えば経口的投薬形態における組成物の
調製において、通常の製薬学的媒体のいずれか、例えば懸濁剤、シロップ、エリキシル剤、乳剤及び溶液のような経口用液体調製物の場合、水、グリコール、油、アルコールなど;あるいは粉剤、丸薬、カプセル及び錠剤の場合、澱粉、糖類、カオリン、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような固体担体を用いることができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口的投薬単位形態物を与え、その場合には固体の製薬学的担体が用いられるのは明らかである。非経口用組成物の場合、担体は通常少なくとも大部分において無菌水を含んでなるが、例えば溶解性を助けるための他の成分が含まれることができる。例えば担体が食塩水、グルコース溶液又は食塩水とグルコース溶液の混合物を含んでなる注入可能な溶液を調製することができる。例えば担体が食塩水、グルコース溶液又は食塩水とグルコース溶液の混合物を含んでなる注入可能な溶液を調製することができる。長期間の作用のために、式(I)の化合物を含有する注入可能な溶液を油中で調製することができる。この目的のために適した油は、例えばピーナツ油、ゴマ油、綿実油、コーン油、大豆油、長鎖脂肪酸の合成グリセロールエステルならびにこれらの及び他の油の混合物である。注入可能な懸濁剤も調製することができ、その場合には適した液体担体、懸濁化剤などを用いることができる。使用の直前に液体形態の調製物に転換されることが意図されている固体形態の調製物も含まれる。経皮投与に適した組成物において、担体は場合により浸透促進剤及び/又は適した湿潤剤を含んでなることができ、それらは場合により皮膚に有意な悪影響を導入しない小さい割合におけるいずれかの性質の適した添加剤と組み合わされていることができる。該添加剤は皮膚への投与を容易にすることができるか、及び/又は所望の組成物の調製の助けとなることができる。これらの組成物を種々の方法で、例えば経皮パッチとして、スポット−オン(spot−on)として、軟膏として投与することができる。式(I)の化合物の酸もしくは塩基付加塩は、対応する塩基もしくは酸の形態より向上したそれらの水溶性のために、明らかに水性組成物の調製により適している。
【0056】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、前記の製薬学的組成物を単位投薬形態物において調製するのが特に有利である。本明細書で用いられる単位投薬形態物は、1回の投薬量として適した物理的に分離された単位を指し、各単位は所望の治療効果を生むために計算されたあらかじめ決められた量の活性成分を、必要な製薬学的担体と一緒に含有する。そのような単位投薬形態物の例は錠剤(刻み付き又はコーティング錠を含む)、カプセル、丸薬、粉剤小包、ウェハース、座薬、注入可能な溶液又は懸濁剤など、ならびに分離されたそれらの複数である。
【0057】
本発明に従う化合物は有力な経口的に投与可能な化合物であるので、経口的に投与するための該化合物を含んでなる製薬学的組成物は特に有利である。
【0058】
製薬学的組成物中における式(I)の化合物の溶解性及び/又は安定性を強化するために、α−、β−もしくはγ−シクロデキストリン又はそれらの誘導体、特にヒドロキシアルキル置換シクロデキストリン、例えば2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを用いるのが有利であり得る。アルコールのような補助−溶媒も製薬学的組成物中における本発明に従う化合物の溶解性及び/又は安定性を向上させることができる。
【0059】
製造
一般に式(III)の中間化合物を用いて式(II)の中間化合物をN−アルキル化することにより式(I)の化合物を製造することができ、ここでWはハロ、例えばブロモ又は有機スルホニル基、例えばp−トルエンスルホニルのような適した離脱基である。
【0060】
【化6】

【0061】
中間化合物(II)及び(III)において、R、R、X及び環状部分Aは、式(I)の化合物において定義された通りである。該N−アルキル化は、反応に不活性な溶媒、例えばメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド又はアセトニトリル中で、且つ酸化カルシウムのような適した塩基の存在下で簡便に行なうことができる。攪拌及び高められた温度、例えば還流温度は、反応の速度を増すことができる。
【0062】
あるいはまた、Monkovic et al.(J.Med.Chem.,16(4),1973年,p.403−407)により記載された方法を用いて該N−アルキル化を行なうこともでき、その方法は加圧反応容器の使用を含む。
【0063】
式(I)の化合物を当該技術分野において既知の変換反応に従って互いに転換することもでき、例えば:
(a)Rがヒドロキシで置換されたC1−6アルキルである式(I)の化合物を、例えばトリエチルアミンのような塩基の存在下に、一般的にジクロロメタンのような溶媒中で有機スルホニルハライド、例えばメタンスルホニルクロリドを用いて処理し、Rが有機スルホニルオキシで置換されたC1−6アルキルである対応する中間化合物を生成させ、それを次いで一般にエタノールのような適した溶媒中においてC1−6アルカン酸メチルで処理することにより、RがC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルである対応する式(I)の化合物に転換することができるか;
(b)Rがヒドロキシで置換されたC1−6アルキルである式(I)の化合物を、例えばトリエチルアミンのような塩基の存在下に、一般にジクロロメタンのような溶媒中で適したアシル化剤、例えば塩化アシルのようなアシルハライドを用いるアシル化により、RがC1−6アルキル−カルボニルオキシで置換されたC1−6アルキルである対応する式(I)の化合物に転換することができるか;
(c)Rが水素である式(I)の化合物を、例えばトリエチルアミンのような塩基の存在下に、一般にジクロロメタンのような溶媒中で適したアシル化剤、例えば塩化アシルのようなアシルハライドを用いるアシル化により、RがC1−6アルキルカルボニルである対応する式(I)の化合物に転換することができるか;
(d)Rが水素である式(I)の化合物を、適した溶媒、例えばプロパノール中で適したアリール−エポキシドを用いる処理により、Rが2−位においてヒドロキシとアリールの両方で置換されたCアルキルである対応する式(I)の化合物に転換することができるか;
(e)Rがヒドロキシで置換されたC1−6アルキルである式(I)の化合物を、例えばトリエチルアミンのような塩基の存在下に、一般的にジクロロメタンのような溶媒中で有機スルホニルハライド、例えばメタンスルホニルクロリドを用いて処理し、Rが有機スルホニルオキシで置換されたC1−6アルキルである対応する中間化合物を生成させ、それを次いで一般にメタノールのような適した溶媒中でアルキルオキシ金属化合物、例えばナトリウム化合物で処理することにより、RがC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルである対応する式(I)の化合物に転換することができるか;
(f)Rが水素である式(I)の化合物を、THF/酢酸及びCHCl及びTFA中で、ポリマー担持ナトリウムシアノボロハイドライド(PS−CNBHNa)及びポリマー担持スルホン酸(PS−SOH)の存在下に、C1−6アルキル(場合によりアリールで置換されていることができる)アルデヒドを用いて処理することにより、Rが場合によりアリールで置換されていることができるC1−6アルキルである対応する式(I)の化合物に転換することができるか;
(g)Rが水素である式(I)の化合物を、アリールカルボニルアルキルハライド、例えば2−アリールカルボニルエチルハライド、例えばクロリドを用いて処理し、Rがアリールカルボニルで置換されたC1−6アルキルである対応する中間化合物を生成させ、それを次いで一般にエタノールのような溶媒中で例えば水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元して所望の式(I)の化合物を生成させることにより、Rがアリール及びヒドロキシルで置換されたC1−6アルキルである対応する式(I)の化合物に転換することができるか;あるいは
(h)Rがハロ(例えばヨード)である式(I)の化合物を、Pd(PPhのようなパラジウム化合物の存在下に、適した溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド中でシアニド化合物、例えばシアン化亜鉛を用いて処理することにより、Rがシアノである対応する式(I)の化合物に転換することができる。
【0064】
上記で挙げた中間化合物は商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野において既知の方法に従って製造することができる。例えばMonkovic et al.(J.Med.Chem.,16(4),1973年,p.403−407)により記載された方法に従って式(III)の中間化合物を製造することができる。
【0065】
あるいはまた、式(IV)のエポキシド誘導体をXが適切にはハロである式(V)のグリニヤル試薬と反応させ、かくして式(VI)の中間化合物を生成させ、それを続いてMonkovic et al.において記載されている方法のような当該技術分野において既知の方法に従って環化することにより、式(III−a)により示される式(III)の中間化合物を製造することもできる。
【0066】
【化7】

【0067】
式(IV)のエポキシドは、m−クロロ過安息香酸のような適した過酸化物を用いる式(VII)の中間化合物のエポキシド化のような当該技術分野において既知の方法を用いて製造することができる。
【0068】
【化8】

【0069】
当該技術分野において既知の方法の適用により、式(I)の化合物の純粋な立体化学的異性体を得ることができる。選択的結晶化及びクロマトグラフィー法、例えば向流分配、液体クロマトグラフィーなどのような物理的方法により、ジアステレオマーを分離することができる。
【実施例】
【0070】
実験部分
下記で、「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドとして定義され、「DCM」はジクロロメタンとして定義され、「EtN」はトリエチルアミンとして定義され、「EtOAc」は酢酸エチルとして定義され、「EtOH」はエタノールとして定義され、「MeOH」はメタノールとして定義され、そして「THF」はテトラヒドロフランとして定義される。
【0071】
A.中間化合物の製造
実施例A1
a)中間化合物1の製造
【0072】
【化9】

【0073】
11−フルオロ−3,3a,8,12b−テトラヒドロ−N−メチル−2H−ジベンゾ[3,4:6,7]シクロヘプタ[1,2−b]フラン−2−メタナミン[2R−(2α,3aα,12bβ)](国際公開第03/048146号パンフレットに記載されている)(0.0114モル)及び1−ピペラジン−エタノール(0.0342モル)をマイクロ波条件下で照射した(出力:500ワット;150℃;15分)。次いで得られる混合物をEtOAcで希釈した。有機溶液を水で洗浄し、乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物をシリカゲル上の短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:DCM/MeOH 97/3)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、2.5gの中間化合物1をオレンジ色の油として与え、それをさらなる精製なしで次の反応段階において用いた。
b)中間化合物2の製造
【0074】
【化10】

【0075】
0℃で攪拌されるEtN(0.42ml)及び乾燥DCM(10ml)中の中間化合物1(0.0015モル)の溶液に、メタンスルホニルクロリド(0.00225モル)を加えた。反応混合物を室温で16時間攪拌した。水を加え、混合物を攪拌した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上の短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:DCM/MeOH 98/8)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、0.390gの中間化合物2を与えた。
【0076】
実施例A2
中間化合物3の製造
【0077】
【化11】

【0078】
THF(100ml)中のトリフェニルホスフィン(0.02032モル)の溶液を0℃においてN下で攪拌し、次いでジアゼンジカルボン酸ビス(1−メチルエチル)(0.01992モル)を加え、得られる懸濁液を30分間攪拌した。THF中のシス−8−フルオロ−10,11−ジヒドロ−11−(2−プロペニル)−ジベンゾ[b,f]チエピン−10−オール(J.Med.Chem.,48,2005年,1709に記載されている)(0.01016モル)及び4−ニトロ−安息香酸(0.02032モル)の溶液を滴下し、次いで反応混合物を徐々に室温に温め、16時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:EtOAc/ヘプタン 1/9)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、3.96g(89%)の中間化合物3を与えた。
中間化合物4の製造
【0079】
【化12】

【0080】
THF及び水中の中間化合物3(0.0121モル)及び水酸化リチウム(0.012
7モル)の混合物を室温で16時間攪拌し、次いで溶媒を蒸発させた。得られる残留物をDCM中に溶解し、水及びブラインで洗浄し、次いで有機層を乾燥し、溶媒を蒸発させ、3.96g(無色の油)の中間化合物4を与え、さらなる精製なしで次の反応段階において用いた。
中間化合物5の製造
【0081】
【化13】

【0082】
中間化合物4(0.00387モル)をクロロホルム(120ml)中に室温で溶解し、混合物を0℃で3分間攪拌し、次いでピリジニウムトリブロミド(0.0039モル)を分けて加えた。0℃で10分の後、冷浴を除去し、反応混合物を1時間攪拌した。水を加え、層を分離した。有機層を乾燥し(NaSO)、溶媒を蒸発させた(真空)(H−NMR:位置C2におけるジアステレオ異性体の混合物 73/27)。残留物を放射状クロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:ヘプタン/DCM混合物)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、1.00g(無色の油,トランス縮合異性体)の中間化合物5を与えた。
【0083】
実施例A3
中間化合物6の製造
【0084】
【化14】

【0085】
THF中の国際公開第03/048146号パンフレットに記載されている11−フルオロ−3,3a,8,12b−テトラヒドロ−2H−ジベンゾ[3,4:6,7]シクロヘプタ[1,2−b]フラン−2−メタノール 4−メチルベンゼンスルホネート[2R−(2α,3aα,12bβ)](0.023モル)、ピペラジン(0.23モル)及び酸化カルシウム(2.3モル)の混合物を、Parr反応容器中で140℃(油浴温度)において16時間攪拌且つ加熱し、次いで反応混合物を室温に冷ました。固体を濾過し、濾液を蒸発させた。残留物をEtOAc中に取り上げ、それを水で2回洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO)、濾過し、溶媒を蒸発させ(真空)、中間化合物6を褐色の油として与えた。
【0086】
実施例A4
中間化合物7の製造
【0087】
【化15】

【0088】
アセトニトリル(十分量)中の中間化合物6(0.00284モル)、3−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)−1−プロパノン(0.00568モル)及び炭酸カリウム(0.0057モル)の混合物をマイクロ波条件下に、250℃において20分間照射した。減圧下で溶液を濃縮し、残留物をDCM中に溶解し、水及びブラインで洗浄し、次いで乾燥した。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲル上の短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:DCM/MeOH 98/2)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。この残留物(1.2g,84%)の一部を、ジエチルエーテル中でシュウ酸を用いる処理によりエタン二酸塩(1:1)に転換した。得られる沈殿を濾過し、冷ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥し、0.032gの中間化合物7を与えた。
【0089】
実施例A5
a)中間化合物8の製造
【0090】
【化16】

【0091】
DCM(200ml)中の中間化合物4(0.033モル)及びヨウ素ビス(ピリジン)−テトラフルオロボレート(0.033モル)の混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物を飽和Na水溶液、2N HCl、水及びブラインで洗浄し、次いで有機層を乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、4.375g(32%)の中間体8を与え、さらなる精製なしで次の反応段階において用いた。
b)中間化合物9の製造
【0092】
【化17】

【0093】
DCM(50ml)中の中間化合物8(0.0106モル)、ヨウ素ビス(ピリジン)
−テトラフルオロボレート(0.0117モル)及びトリフルオロメタンスルホン酸(0.0212モル)の混合物をN雰囲気下に、室温で1時間攪拌した。反応混合物をNa(2x50ml)及びブライン(2x50ml)で洗浄した。有機層を分離し、乾燥し(NaSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物(油)をシリカゲル上の短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:ヘプタン/EtOAc 9/1)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、3.9g(68%)の中間化合物9を与えた。
c)中間化合物10の製造
【0094】
【化18】

【0095】
THF(20ml)中の中間化合物9(0.0024モル)、1−ピペラジン−エタノール(0.0024モル)及び酸化カルシウム(2g)の混合物を、Parr圧力容器中で120℃において16時間攪拌した。室温に冷ました後、得られる懸濁液を、セライトを介して濾過した。濾液を減圧下で蒸発させた。残留物をDCM中に再溶解した。有機溶液をNaHCO水溶液、水、ブラインで洗浄し、次いで分離し、乾燥し(NaSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物(油)をシリカゲル上の短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、0.876gの中間化合物10を与え、さらなる精製なしで次の反応段階において用いた。
【0096】
B.最終的化合物の製造
実施例B1
最終的化合物12の製造
【0097】
【化19】

【0098】
アセトニトリル(十分量)中の国際公開第03/048146号パンフレットに記載されている(2R,3aR,12bS)−11−フルオロ−3,3a,8,12b−テトラヒドロ−2H−ジベンゾ[3,4:6,7]シクロヘプタ[1,2−b]フラン−2−メタノール−4−メチルベンゼンスルホネート(0.00045モル)、4−メチル−ピペリジン(0.0028モル)及び酸化カルシウム(0.00228モル)の混合物を密封管中で100℃において3日間加熱し、次いで懸濁液を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させた。残留物を短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:DCM/MeOH 98.5/1.5)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物をエタン二酸塩に転換し、次いで得られる塩を集め、0.164g(98%)の最終的化合物12を与え
た。
【0099】
実施例B2
最終的化合物34の製造
【0100】
【化20】

【0101】
EtOH(10ml)中の中間化合物2(0.00019モル)及びナトリウムエトキシド(0.0019モル)の混合物をマイクロ波オーブン中で100℃において20分間攪拌した。水を加えた。混合物を濃縮した。DCMを加え、混合物を振った。分離された有機層を乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上の短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:DCM/MeOH 98/2)。所望の画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物をシュウ酸塩に転換し、0.128gの最終的化合物34を与えた。
【0102】
実施例B3
最終的化合物39の製造
【0103】
【化21】

【0104】
THF(20ml)中の中間化合物5(0.003モル)、1−ピペラジン−エタノール(0.03モル)及び酸化カルシウム(0.03モル)の混合物を、加圧容器中で140℃において10時間加熱し、次いでデカライト上で濾過した。濾液の溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物をEtOAc中に溶解し、水及びブラインで洗浄し、乾燥した。この画分をシリカゲル上の高性能液体クロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:DCM/(MeOH/NH) 99/1)。所望の画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物(0.045g)をシュウ酸塩に転換し、0.047gの最終的化合物39を与えた。
【0105】
実施例B4
最終的化合物5の製造
【0106】
【化22】

【0107】
DCM(10ml)中の1−ピペラジンエタノール、国際公開第99/19317号パンフレットに記載されている4−[[(2R,3aR,12bS)−11−フルオロ−3,3a,8,12b−テトラヒドロ−2H−ジベンゾ[3,4:6,7]シクロヘプタ[1,2−b]フラン−2−イル]メチル](0.000504モル)、塩化アセチル(0.000605モル)及びEtN(0.00101モル)の混合物を室温で16時間攪拌し、次いで反応混合物を水で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上の短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:DCM/MeOH 98/2)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物をエタン二酸塩(1:1)に転換した。沈殿を濾過し、次いで乾燥し、0.187gの最終的化合物5を与えた。
【0108】
実施例B5
最終的化合物22の製造
【0109】
【化23】

【0110】
2−メチル−プロパノイルクロリド(1.1当量)及びEtN(2当量)を、室温で攪拌されるDCM(3ml)中の中間化合物6(0.000567モル,1当量)の溶液に加えた。反応混合物を室温で6時間攪拌した。1時間攪拌しながら、ポリスチレン−トリスアミン(1当量)を加えて過剰の2−メチル−プロパノイルクロリドを掃去した。次いで樹脂を濾過し、濾液を真空中で蒸発させた。残留物をシリカゲル上の短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。遊離の塩基残留物をジエチルエーテル中に溶解し、エタン二酸塩(1:1)に転換した。沈殿を濾過し、乾燥し、0.04742gの最終的化合物22を与えた。
【0111】
実施例B6
最終的化合物27の製造
【0112】
【化24】

【0113】
2−プロパノール(20ml)中の中間化合物6(0.000567モル)及びフェニル−オキシラン(2当量)の混合物を130℃(油−浴温度)において終夜攪拌した。反応混合物を室温に冷ました。溶媒を蒸発させた。残留物をHPLCにより精製した。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、0.05628gの遊離塩基化合物を与えた。遊離塩基残留物をジエチルエーテル中に溶解し、エタン二酸塩(1:1)に転換した。沈殿を濾過し、乾燥し、最終的化合物27を与えた。
【0114】
実施例B7
最終的化合物35の製造
【0115】
【化25】

【0116】
中間化合物2(0.00021モル)、NaOMe/MeOH(3ml)及びMeOH(10ml)の混合物を混合し、マイクロ波照射(500W)下で90℃において15分間加熱し、水を用いて反応混合物をクエンチングし、次いでDCMで2回抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥し、溶媒を蒸発させた(真空)。残留物を短開放カラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物をジエチルエーテル中でシュウ酸を用いて処理し、エタン二酸塩(1:2)に転換した。得られる沈殿を集め、乾燥し、最終的化合物35を与えた。
【0117】
実施例B8
最終的化合物40の製造
【0118】
【化26】

【0119】
THF/酢酸(4mL/0.2mL)の混合物中の中間化合物6(0.085g,0.2414ミリモル)及び2−メチル−プロパナール(1.5当量,0.3621ミリモル)の混合物。この溶液にポリマー担持水素化ホウ素ナトリウム(2.5当量)を加えた。反応混合物を室温で20時間振盪させた。固体を濾過し、揮発性物質を真空中で蒸発させた。かくして得られる残留物をMeOH(4mL)中に取り上げ、ポリマー担持SOH(1.5当量)を加えた。混合物を室温で20時間振盪させた。樹脂を濾過し、MeOHで2回及びDCMで2回洗浄した。NHで飽和したMeOHを樹脂に加え、5時間振盪させた。樹脂を濾過し、溶液を蒸発させて対応する生成物を純粋な遊離の塩基として与えた。遊離の塩基をDCM中のトリフルオロ酢酸の溶液で処理し、最終的化合物40を与えた。
【0120】
実施例B9
最終的化合物46の製造
【0121】
【化27】

【0122】
EtOH(5ml)中の中間化合物7(0.00030モル)及びナトリウムテトラヒドロボライド(0.003モル)の混合物を室温で10時間攪拌し、次いで反応混合物を水/DCMに分配した。水層をDCMで数回抽出し;有機層を合わせ、ブラインで抽出し、乾燥し(NaSO)、濾過した。減圧下で溶媒を蒸発させ、残留物をエタン二酸塩(1:1)に転換した。得られる沈殿を濾過し、洗浄し、乾燥し、0.110gの最終的化合物46を与えた。
【0123】
実施例B10
最終的化合物49の製造
【0124】
【化28】

【0125】
DMF(10ml,あらかじめ脱酸素される)中の中間化合物10(0.0016モル)、シアン化亜鉛(0.0010モル)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0.00017モル)の混合物を室温で攪拌し、次いでマイクロ波条件下に、120℃(5分内に0℃から120℃)で15分間加熱した。混合物を濾過し、有機溶媒(DMF)を蒸発させた。残留物を放射状クロマトグラフィーにより精製し、次いで生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、最終的化合物49を与えた。
【0126】
下記で製造される最終的化合物はすべて、他にことわらなければ異性体の混合物である。
【0127】
表1は、上記の実施例の1つに従って製造された式(I)の最終的化合物を挙げている。表2は、選ばれた組の最終的化合物に関するLCMSデータを示す。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】

【0136】
【表9】

【0137】
【表10】

【0138】
【表11】

【0139】
【表12】

【0140】
分析データ
表2に示されるLCMSデータは、以下の方法により得られた:
HPLC勾配は、40℃に設定されたカラムヒーターを有するAgilentからのHP 1100により与えられた。カラムからの流れはホトダイオードアレー(PDA)検出器を通過し、次いで光散乱検出器(ELSD)及び同時に正及び負のイオン化モードにおいて運転されるエレクトロスプレーイオン化源を有するWaters−Micromass Time of Flight(ToF)質量分析計に分けられた。
【0141】
逆相HPLCは、1ml/分の流量を用いてAgilentからのXDB−C18カートリッジ(3.5μm,4.6x30mm)上で行なわれた。3種の移動相(移動相A:0.5g/lの酢酸アンモニウム溶液,移動相B:アセトニトリル;移動相C:メタノール)を用い、6.0分内に80%A,10%B,10%Cから50%B及び50%Cにし、6.5分において100%Bにし、7.0分まで保持し、そして7.6分に80%A,10%B及び10%Cを用いて再平衡化、それを9.0分まで保持する勾配条件を実施した。5μLの注入体積を用いた。
【0142】
高分解能質量スペクトルは、1秒の滞留時間を用いて1秒内に100から750まで走査することにより取得した。毛管針(capillary needle)電圧は3kVであり、源温度は140℃に保持された。ネブライザーガスとして窒素を用いた。正及び負の両方のイオン化モードの場合に、コーン電圧は30Vであった。ロイシン−エンケファリンは、ロックスプレー(lock spray)のために用いられる参照であった。データ取得は、Waters−Micromass MassLynx−Openlynxデータシステムを用いて行なわれた。
【0143】
本発明に従う最終的化合物の分光アッセイからのデータを表2において下記に示す;関連する欄中の記号「−」は、値が決定されなかったことを示す。親ピーク質量は、遊離の塩基+Hの質量に相当する。
【0144】
【表13】

【0145】
【表14】

【0146】
C.薬理学的データ
実施例C.1:5−HT2A及び5−HT2C受容体に関する試験管内結合親和性
5−HT2A及び5−HT2C受容体との式(I)の化合物の相互作用を試験管内放射性リガンド結合実験において評価した。一般に、受容体に関して高い結合親和性を有する低濃度の放射性リガンドを、特定の受容体に関して豊富な組織調製物(1〜5mgの組織)の試料と一緒に緩衝された培地(0.2〜5ml)中でインキュベーションする。インキュベーションの間に、放射性リガンドは受容体に結合する。結合の平衡に達したら、受容体結合放射性を非−結合放射性から分離し、受容体結合活性をカウントする。受容体との試験化合物の相互作用を競合結合実験において評価する。組織調製物及び放射性リガンドを含有するインキュベーション混合物に、種々の濃度の試験化合物を加える。放射性リガンドの結合は、試験化合物の結合親和性及びその濃度に比例して試験化合物により阻害されるであろう。(a)放射性リガンドとして[125I]R91150を用い、L929細胞において発現されたクローニングされたヒト5−HT2A受容体を用いて、及び(b)放射性リガンドとして[H]メスレルギン(mesulergine)を用い、CHO細胞において発現されたクローニングされたヒト5−HT2C受容体を用いて行なわれる放射性リガンド結合研究により、5−HT受容体に関する化合物の親和性を測定した。
【0147】
実施例C.2:ヒトD2受容体に関する試験管内結合親和性
ヒトドパミンD2受容体がトランスフェクションされたCHO細胞の凍結された膜を解凍し、Ultra−Turrax T25ホモジナイザーを用いて短時間均質化し、NaCl、CaCl、MgCl、KClを含有するTris−HClアッセイ緩衝液(それぞれ50、120、2、1及び5mM,HClを用いてpH7.7に調整)中で、特異的及び非−特異的結合のために最適化された適したタンパク質濃度まで希釈した。放射性リガンド[H]スピペロン(Spiperone)(NEN,比活性〜70Ci/ミリモル)を、アッセイ緩衝液中で2ナノモル/Lの濃度で希釈した。次いで調製された放射性リガンド(50μl)を10%DMSO標準、ブタクラモル(Butaclamol)(10−6モル/lの最終的濃度)又は問題の化合物のいずれかの50μlと共に、400μlの調製された膜溶液と一緒にインキュベーションした(30分,37℃)。Packard Filtermate収穫器を介して膜−結合活性をGF/B Unifilterプレート上に濾過し、氷−冷Tris−HCl緩衝液(50mM;pH7.7;
6x0.5ml)で洗浄した。フィルターを乾燥してからシンチレーション液を加え、Topcountシンチレーションカウンターにおいてカウントした。S−Plusソフトウェア(Insightful)を用いてパーセンテージ特異的結合及び競合結合曲線を計算した。
【0148】
結果を、それぞれの化合物に関するpIC50値により下記の表3に示す。
【0149】
【表15】

【0150】
比較データ
下記の表4は、D受容体に関する親和性が、上記で挙げた国際公開特許、国際公開第99/19317号パンフレットに開示された最も近い類似体と比較して、本発明に従う2つの化合物の場合に有意により高いことを示す。表中の値はpIC50値であり、D
親和性の決定のために上記に示した方法に従って決定された。
【0151】
【表16】

【0152】
D.組成物実施例
これらの実施例を通じて用いられる「活性成分」(A.I.)は、式(I)の化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩に関する。
【0153】
実施例D.1:経口用溶液
4−ヒドロキシ安息香酸メチル(9g)及び4−ヒドロキシ安息香酸プロピル(1g)を煮沸精製水(4リットル)中に溶解した。この溶液の3リットル中に、最初に2,3−ジヒドロキシブタン二酸(10g)及びその後A.I.(20g)を溶解した。後者の溶液を前者の溶液の残りの部分と合わせ、1,2,3−プロパントリオール(12リットル)及びソルビトール70%溶液(3リットル)をそこに加えた。サッカリンナトリウム(40g)を水(500ml)中に溶解し、ラズベリー(2ml)及びグースベリーエッセンス(2ml)を加えた。後者の溶液を前者と合わせ、20リットルの体積とするのに十分な量の水を加え、小さじ1杯(5ml)当たり5mgの活性成分を含んでなる経口用溶液を与えた。得られる溶液を適した容器に充填した。
【0154】
実施例D.2:フィルム−コーティング錠
錠剤芯の調製
A.I.(100g)、ラクトース(570g)及び澱粉(200g)の混合物を十分に混合し、その後水(200ml)中のドデシル硫酸ナトリウム(5g)及びポリビニルピロリドン(10g)の溶液で加湿した。湿潤粉末混合物を篩別し、乾燥し、再び篩別した。次いで微結晶性セルロース(100g)及び水素化植物油(15g)をそこに加えた。全体を十分に混合し、錠剤に圧縮し、それぞれ10mgの活性成分を含有する10,0
00個の錠剤を与えた。
【0155】
コーティング
変性エタノール(75ml)中のメチルセルロース(10g)の溶液に、ジクロロメタン(150ml)中のエチルセルロース(5g)の溶液を加えた。次いでジクロロメタン(75ml)及び1,2,3−プロパントリオール(2.5ml)を加えた。ポリエチレングリコール(10g)を融解させ、ジクロロメタン(75ml)中に溶解した。後者の溶液を前者に加え、次いでオクタデカン酸マグネシウム(2.5g)、ポリビニルピロリドン(5g)及び濃厚染料懸濁液(30ml)を加え、全体を均一にした。かくして得られる混合物を用い、コーティング装置において錠剤芯をコーティングした。
【0156】
実施例D.3:注入可能な溶液
4−ヒドロキシ安息香酸メチル(1.8g)及び4−ヒドロキシ安息香酸プロピル(0.2g)を注入用の煮沸水(500ml)中に溶解した。約50℃に冷ました後、攪拌しながら乳酸(4g)、プロピレングリコール(0.05g)及びA.I.(4g)をそこに加えた。溶液を室温に冷まし、1000mlとするのに十分な量の注入用の水で補足し、4mg/mlのA.I.を含んでなる溶液を与えた。濾過により溶液を滅菌し、無菌容器中に充填した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
は水素、ハロ又はC1−6アルキルオキシであり;
は水素又はシアノであり;そして
a)XはO又はSであり;そして
Aは式(a−1)、(a−2)又は(a−3)の基であり、
【化2】


ここで:
mはゼロ、1、2又は3に等しい整数であり;
及びRはそれぞれ独立して水素、C1−6アルキル又はアリールであり;そして
は水素;C1−6アルキル;C1−6アルキルカルボニル;C1−6アルキルカルボニルオキシアルキル;C1−6アルキルオキシカルボニル;アリール;又はヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルカルボニルオキシ及びアリールから選ばれる1個もしくはそれより多い置換基で置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはb)XはCHであり;そして
Aは上記の式(a−2)又は(a−3)の基であり、ここで:
mはゼロ、1、2又は3に等しい整数であり;
及びRはそれぞれ独立して水素又はC1−6アルキルであり;そして
は水素;C2−6アルキル;C1−6アルキルカルボニル;C1−6アルキルカルボニルオキシアルキル;C1−6アルキルオキシカルボニル;又はヒドロキシ及びアリールから選ばれる1個もしくはそれより多い置換基で置換されたC1−6アルキルであり、但し、2−ヒドロキシエチルは除外され;そして
アリールはフェニル;又はハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びハロメチルから選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルである]
に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態及びその第4級アンモニウム塩。
【請求項2】
がハロであり;
が水素であり;
アリールがフェニル;又はハロもしくはハロメチルで置換されたフェニルである
請求項1に従う化合物。
【請求項3】
XがO又はSであり;
Aが上記の式(a−1)、(a−2)又は(a−3)の基であり、ここで
mは1又は2に等しい整数であり;
及びRはそれぞれ独立して水素又はアリールであり;そして
はC1−6アルキル又はヒドロキシ置換基で置換されたC1−6アルキルである
請求項1又は2のいずれか1つに従う化合物。
【請求項4】
化合物が下記に描かれる以下の構造式(I−1)〜(I−12)の1つを有する請求項1に従う化合物。
【化3】

【請求項5】
塩がトリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩又はマンデル酸塩である請求項1〜4のいずれか1つに従う化合物。
【請求項6】
薬剤として用いるための請求項1〜5のいずれか1つに従う化合物。
【請求項7】
5−HT及び/又はD受容体により媒介される状態の予防的もしくは治療的又は両方の処置用の薬剤の製造のための請求項1〜5のいずれか1つに従う化合物の使用。
【請求項8】
不安、双極性障害、睡眠−及び性的障害、精神病、境界精神病(borderline
psychosis)、精神分裂病、片頭痛、人格障害又は強迫障害(obsessive −compulsive disorders)、社会恐怖症又はパニック発作、器質性精神障害、子供における精神障害、攻撃性、老人における記憶障害及び態度障害(attitude disorder)、嗜癖、肥満、過食症及び類似の障害のような中枢神経系障害の処置及び/又は予防用の薬剤の製造のための請求項7に従う化合物の使用。
【請求項9】
不安、精神病、精神分裂病、片頭痛及び薬物の乱用の嗜癖性の処置及び/又は予防用の薬剤の製造のための請求項8に従う化合物の使用。
【請求項10】
製薬学的に許容され得る担体及び活性成分として請求項1〜5のいずれか1つに従う化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項11】
製薬学的に許容され得る担体を請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物の治療的に有効な量と緊密に混合することを特徴とする請求項10に記載の組成物の調製方法。
【請求項12】
式(III)の中間化合物を用いて式(II)の中間化合物をN−アルキル化する
【化4】

[式中、R、R、X及び環状部分Aは請求項1において定義された通りであり、Wはハロ又は有機スルホニル基のような適した離脱基である]
ことを含んでなる式(I)の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2008−540606(P2008−540606A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511697(P2008−511697)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062362
【国際公開番号】WO2006/122944
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】