説明

環状アミン化合物またはその塩、並びに有害生物防除剤

【課題】 工業的に有利に合成でき、優れた生物活性を有し、安全性に問題のない新規な骨格の環状アミン化合物またはその塩、並びに新規な有害生物防除剤を提供する。
【解決手段】 式(1)で表される環状アミン化合物またはその塩。


該環状アミン化合物またはその塩を有効成分として含有する有害生物防除剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な環状アミン化合物またはその塩、並びに該環状アミン化合物またはその塩を有効成分として含有する有害生物防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数の殺虫・殺ダニ活性を有する化合物が知られている。
例えば、特許文献1には、ピペリジン環、トロパン環もしくはイソトロパン環の窒素原子にピリジル基が置換した化合物として、式(A)で表される化合物が、殺ダニ活性を有することが報告されている。
特許文献2および特許文献3には、殺虫・殺ダニ活性を有する環状アミン化合物として式(B)で表される化合物が報告されている。
特許文献4には、ハダニ類ばかりでなくサビダニ類に対しても殺ダニ活性を発現し得る薬剤として式(C)で表される化合物が報告されている。
【特許文献1】WO2005/095380号公報
【特許文献2】WO2007/040280号公報
【特許文献3】WO2007/040282号公報
【特許文献4】WO2008/026658号公報
【0003】
【化1】

【0004】
【化2】

【0005】
【化3】

【0006】
ところが、これら従来の化合物は、その効力が不十分であったり、薬剤抵抗性問題によりその使用が制限されたり、また、植物体に薬害や汚染を生じさせたり、あるいは人畜魚類等に対する毒性が強かったりする等の問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、工業的に有利に合成でき、優れた生物活性を有し、安全性に問題のない新規な骨格の環状アミン化合物またはその塩、並びに新規な有害生物防除剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、式(1)で表される構造、具体的にはCy1の先に−A−NR56基が結合した構造を有する新規な環状アミン化合物またはその塩が優れた殺虫・殺ダニ活性等を有することを見出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のものである。
〈1〉 式(1)で表される環状アミン化合物またはその塩。
[式(1)中、Cy1は、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、または無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基を表す。
Cy2は、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、または無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホニル基、または無置換のもしくは置換基を有する窒素原子を表す。
Aは、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキレン基を表す。
1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、およびR4bはそれぞれ独立に、水素原子、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC1~11アシル基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するアミノ基、またはハロゲノ基を表し、R1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成してもよい。
5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC2~6アルケニル基、無置換のもしくは置換基を有するC2~6アルキニル基、無置換のもしくは置換基を有するC3~6シクロアルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC4~8シクロアルケニル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有するC1~11アシル基、無置換のもしくは置換基を有する(1−イミノ)C1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するアミノ基、置換基を有するスルホニル基、シリル基、シアノ基、またはニトロ基を表す。]
【0010】
【化4】

【0011】
〈2〉 式(2)で表される環状アミン化合物またはその塩。
[式(2)中、Cy1、X、A、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5およびR6は、前記と同じ意味を表す。
1およびY2は、それぞれ独立に、窒素原子または炭素原子を表す。
7は、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するメルカプト基、ハロゲノ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。
mは、0〜5のいずれかの整数を表す。]
【0012】
【化5】

【0013】
〈3〉 式(3)で表される環状アミン化合物またはその塩。
[式(3)中、X、A、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5、R6、Y1、Y2、R7、およびmは、前記と同じ意味を表す。
8は、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するメルカプト基、ハロゲノ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。
nは、0〜4のいずれかの整数を表す。]
【0014】
【化6】

【0015】
〈4〉 式(4)で表される環状アミン化合物またはその塩。
[式(4)中、X、A、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5、R6、Y1、Y2、R7、R8、およびmは、前記と同じ意味を表す。
pは、0〜3のいずれかの整数を表す。
Y’は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを表し、同一または異なっていてもよい。ただし、全てが炭素原子になることはなく、または同時に二つ以上が酸素原子および硫黄原子になることはない。]
【0016】
【化7】

【0017】
〈5〉 R1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成している、前記〈1〉〜〈4〉のいずれか1項に記載の環状アミン化合物またはその塩。
〈6〉 R1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成することによってピぺリジン環を架橋するとき、該架橋原子数が2または3である、前記〈1〉〜〈5〉のいずれか1項に記載の環状アミン化合物またはその塩。
【0018】
〈7〉 前記〈1〉〜〈6〉のいずれか1項に記載の環状アミン化合物またはその塩を有効成分として含有する有害生物防除剤。
〈8〉 有害生物が虫またはダニである前記〈7〉に記載の有害生物防除剤。
なお、本明細書において「Ca~b○○○基」および「Cc○○○基」は、その基を構成する炭素元素の数がa個〜b個およびc個のものであることを示している。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、新規な構造を有する環状アミン化合物またはその塩を提供することができる。さらに、殺虫・殺ダニ活性等において優れた生物活性を有し、安全性の高い有害生物防除剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、式(1)〜式(4)のいずれかで表される環状アミン化合物またはその塩である。なお、式(2)で表される環状アミン化合物またはその塩は式(1)中のCy2が六員環構造に限定されたものであり、式(3)もしくは式(4)で表される環状アミン化合物またはその塩は式(1)中のCy1が五員環もしくは六員環構造におよびCy2が六員環構造に限定されたものである。
【0021】
式(1)〜式(4)における、「置換基」は、母体となる基の水素原子を化学的に置換が許容される基である限りにおいて特に限定されない。「置換基」の例としては、「C1~6アルキル基」、「C2~6アルケニル基」、「C2~6アルキニル基」、「C3~6シクロアルキル基」、「C4~8シクロアルケニル基」、「C6~10アリール基」、「ヘテロ環基」、「C1~11アシル基」、「(1−イミノ)C1~6アルキル基」、「ハロゲノ基」、「水酸基」、「アミノ基」、「メルカプト基」、「スルホニル基」、「スルフィニル基」、「シリル基」、「シアノ基」、「ニトロ基」などを挙げることができる。
【0022】
「置換基」のより具体的な例としては、水酸基;チオール基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等のハロゲノ基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;NH2基、NH基、メチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルエチルアミノ基等のアミノ基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基(C1~6アルキル基が好ましい);ビニル基、アリル基、2−メトキシエテニル基等のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、2−フェニルエチニル基、プロパルギル基等のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基(C1~6アルコキシ基が好ましい);ビニルオキシ基、アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基等のアルキニルオキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールオキシ基;2−ピリジルオキシ等のヘテロアリールオキシ基;クロロメチル基、フルオロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、1,1,1−トルフルオロエチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル、ペンタフルオロエチル基等のハロアルキル基(C1~6ハロアルキル基が好ましい);フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、ジブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリブロモメトキシ基、1,1,1−トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロイソプロポキシ基等のハロアルコキシ基(C1~6ハロアルコキシ基が好ましい);メチルチオカルボニル基、エチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、イソプロピルチオカルボニル基、n−ブチルチオカルボニル基、イソブチルチオカルボニル基、s−ブチルチカルボニル基、t−ブチルチオカルボニル基等のアルキルチオカルボニル基(C1~6アルキルチオカルボニル基が好ましい);メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n−プロピルスルホニルアミノ基、イソプロピルスルホニルアミノ基、n−ブチルスルホニルアミノ基、t−ブチルスルホニルアミノ基等のアルキルスルホニルアミノ基(C1~6アルキルスルホニルアミノ基が好ましい);フェニルスルホニルアミノ基等のアリールスルホニルアミノ基(C6~12アリールスルホニルアミノ基が好ましい);ピペラジニルスルホニルアミノ基等のヘテロアリールスルホニルアミノ基(C3~12へテロアリールスルホニルアミノ基が好ましい);メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基等のアルキルカルボニルアミノ基(C1~6アルキルカルボニルアミノ基が好ましい);
【0023】
メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、イソプロポキシカルボニルアミノ基等のアルコキシカルボニルアミノ基(C1~6アルコキシカルボニルアミノ基が好ましい);フルオロメチルスルホニルアミノ基、クロロメチルスルホニルアミノ基、ブロモメチルスルホニルアミノ基、ジフルオロメチルスルホニルアミノ基、ジクロロメチルスルホニルアミノ基、ジフルオロエチルスルホニルアミノ基トリフルオロメチルスルホニルアミノ基、1,1,1−トリフルオロエチルスルホニルアミノ基、ペンタフルオロエチルスルホニルアミノ基等のハロアルキルスルホニルアミノ基(C1~6ハロアルキルスルホニルアミノ基が好ましい);ビス(メチルスルホニル)アミノ基、ビス(エチルスルホニル)アミノ基、(エチルスルホニル)(メチルスルホニル)アミノ基、ビス(n−プロピルスルホニル)アミノ基、ビス(イソプロピルスルホニル)アミノ基、ビス(n−ブチルスルホニル)アミノ基、ビス(t−ブチルスルホニル)アミノ基等のビス(アルキルスルホニル)アミノ基(ビス(C1~6アルキルスルホニル)アミノ基が好ましい);ビス(フルオロメチルスルホニル)アミノ基、ビス(クロロメチルスルホニル)アミノ基、ビス(ブロモメチルスルホニル)アミノ基、ビス(ジフルオロメチルスルホニル)アミノ基、ビス(ジクロロメチルスルホニル)アミノ基、ビス(ジフルオロエチルスルホニル)アミノ基、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ基、ビス(1,1,1−トリフルオロエチルスルホニル)アミノ基、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミノ基等のビス(ハロアルキルスルホニル)アミノ基(ビス(C1~6ハロアルキルスルホニル)アミノ基が好ましい);ヒドラジノ基、N’−フェニルヒドラジノ基、N’−メトキシカルボニルヒドラジノ基、N’−アセチルヒドラジノ基、N’−メチルヒドラジノ基、N’−2−プロピリデンヒドラジノ基等のヒドラジノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(C1~6アルコキシカルボニル基が好ましい);フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基(C6~12アリール基が好ましい);ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基(C7~20アラルキル基が好ましい);
【0024】
フラン−2−イル基、フラン−3−イル基、チオフェン−2−イル基、チオフェン−3−イル基、ピロール−1−イル基、ピロール−2−イル基、ピロール−3−イル基、オキサゾール−2−イル基、オキサゾール−4−イル基、オキサゾール−5−イル基、チアゾール−2−イル基、チアゾール−4−イル基、チアゾール−5−イル基、イソオキサゾール−3−イル基、イソオキサゾール−4−イル基、イソオキサゾール−5−イル基、イソチアゾール−3−イル基、イソチアゾール−4−イル基、イソチアゾール−5−イル基、イミダゾール−1−イル基、イミダゾール−2−イル基、イミダゾール−4−イル基、イミダゾール−5−イル基、ピラゾール−1−イル基、ピラゾール−3−イル基、ピラゾール−4−イル基、ピラゾール−5−イル基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−4−イル基、1,2,4−トリアゾール−3−イル基、1,2,4−トリアゾール−5−イル基等の不飽和複素5員環基;5−フェニル−5−トリフルオロメチル−イソオキサゾリン−3−イル基、2−フルフリルメチル基、3−チエニルメチル基、1−メチル−3−ピラゾロメチル基等の不飽和複素5員環アルキル基;ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピリダジン−3−イル基、ピリダジン−4−イル基、ピラジン−2−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基等の不飽和複素6員環基;、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、6−クロル−3−ピリジルメチル基、2−ピリミジルメチル基等の不飽和複素6員環アルキル基;テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドラピラン−4−イル基、ピペリジン−3−イル基、ピロリジン−2−イル基、モルホリノ基、ピペリジノ基、N−メチルピペラジニル基等の飽和複素環基;2−テトラヒドラフラニルメチル基、3−ピペラジルメチル基、N−メチル3−ピロリジルメチル基、モルホリノメチル基等の飽和複素環アルキル基;N−ジメチルアミノイミノメチル基、1−N−フェニルイミノエチル基、N−ヒドロキシイミノメチル基、N−メトキシイミノメチル基等のイミノアルキル基;N’−メチルヒドラジノカルボニル基、N’−フェニルヒドラジノカルボニル基、ヒドラジノカルボニル基等のヒドラジノカルボニル基;アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、N−フェニル−N−メチルアミノカルボニル基等のアミノカルボニル基;
【0025】
メチルチオ基、エチルチオ基、t-ブチルチオ基等のアルキルチオ基;ビニルチオ基、アリルチオ基等のアルケニルチオ基;エチニルチオ基、プロパルギルチオ基等のアルキニルチオ基;フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基等のアリールチオ基;2−ピリジルチオ基等のヘテロアリールチオ基;ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアラルキルチオ基;アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基等のアシルチオ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アリルスルホニル基等のアルケニルスルホニル基;プロパルギルスルホニル基等のアルキニルスルホニル基;フェニルスルホニル基等のアリールスルホニル基;2−ピリジルスルホニル基、3−ピリジルスルホニル基等のヘテロアリールスルホニル基;ベンジルスルホニル基等のアラルキルスルホニル基;メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、n−プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、n−ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、s−ブチルスルフィニル基、t−ブチルスルフィニル基、n−ペンチルスルフィニル基、イソペンチルスルフィニル基、ネオペンチルスルフィニル基、1−エチルプロピルスルフィニル基、n−ヘキシルスルフィニル基、イソヘキシルスルフィニル基等のスルフィニル基;トリフルオロメチルスルフィニル基等のC1~6ハロアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル基、4−メチルフェニルスルフィニル基等のC6~10アリールスルフィニル基等が挙げられる。これらの置換基は、1の置換基上に他の1の置換基を置換して2種以上を合体させてなる新たな置換基であってもよい。
【0026】
式(1)〜(4)中のXは、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホニル基、または無置換のもしくは置換基を有する窒素原子を表す。これらのうち酸素原子が好ましい。なお、無置換の窒素原子はNH基である。
【0027】
式(1)〜(4)中の、Aは、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキレン基を表す。
無置換のC1~6アルキレン基には、直鎖、または分岐鎖の炭素数1〜6のアルキレン基が含まれる。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。これらのうち、C1~3アルキレン基が好ましい。
【0028】
1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、およびR4bは、それぞれ独立に、水素原子、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC1~11アシル基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するアミノ基、またはハロゲノ基を表し、R1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成してもよい。
【0029】
無置換のC1~6アルキル基には、直鎖、または分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基が含まれる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0030】
置換基を有するC1~6アルキル基としては、「C3~6シクロアルキル基」により置換された「C1~6アルキル基」、すなわち、「C3~6シクロアルキルC1~6アルキル基」;「C4~6シクロアルケニル基」により置換された「C1~6アルキル基」、すなわち、「C4~6シクロアルケニルC1~6アルキル基」;「ハロゲノ基」により置換された「C1~6アルキル基」、すなわち、「C1~6ハロアルキル基」;「C6~10アリール基」により置換された「C1~6アルキル基」、すなわち、「C6~10アリールC1~6アルキル基」;「ヘテロ環基」により置換された「C1~6アルキル基」、すなわち、「ヘテロ環C1~6アルキル基」;「水酸基」により置換された「C1~6アルキル基」、すなわち、「ヒドロキシC1~6アルキル基」;「アルコキシ基」により置換された「C1~6アルキル基」、すなわち、「C1~6アルコキシC1~6アルキル基」;「C1~11アシル基」により置換された「ヒドロキシC1~6アルキル基」、すなわち、「C1~11アシルオキシC1~6アルキル基」;などが挙げられる。
【0031】
3~6シクロアルキルC1~6アルキル基としては、シクロプロピルメチル基、2−シクロプロピルエチル基、シクロペンチルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基等が挙げられる。これらのうち、C3~6シクロアルキルC1~2アルキル基が好ましい。
【0032】
4~6シクロアルケニルC1~6アルキル基としては、シクロペンテニルメチル基、3−シクロペンタテニルメチル基、3−シクロヘキセニルメチル基、2−(3−シクロヘキセニル)エチル基等が挙げられる。これらのうち、C4~6シクロアルケニルC1~2アルキル基が好ましい。
【0033】
1~6ハロアルキル基としては、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、2,2,2−トルフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、4−フルオロブチル基、4−クロロブチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル基、パーフルオロヘキシル基、パークロロヘキシル基、2,4,6−トリクロロヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲノ基が1〜3個置換したC1~6ハロアルキル基が好ましい。
【0034】
6~10アリールC1~6アルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基等が挙げられる。これらのうち、フェニルC1~2アルキル基が好ましい。
【0035】
ヘテロ環C1~6アルキル基としては、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、4−ピリジルメチル基、2−(2−ピリジル)エチル基、2−(3−ピリジル)エチル基、2−(4−ピリジル)エチル基、3−(2−ピリジル)プロピル基、3−(3−ピリジル)プロピル基、3−(4−ピリジル)プロピル基、2−ピラジルメチル基、3−ピラジルメチル基、2−(2−ピラジル)エチル基、2−(3−ピラジル)エチル基、3−(2−ピラジル)プロピル基、3−(3−ピラジル)プロピル基、2−ピリミジルメチル基、4−ピリミジルメチル基、2−(2−ピリミジル)エチル基、2−(4−ピリミジル)エチル基、3−(2−ピリミジル)プロピル基、3−(4−ピリミジル)プロピル基、2−フリルメチル基、3−フリルメチル基、2−(2−フリル)エチル基、2−(3−フリル)エチル基、3−(2−フリル)プロピル基、3−(3−フリル)プロピル基等が挙げられる。これらのうち、5〜6員ヘテロ環C1~2アルキル基が好ましい。
【0036】
ヒドロキシC1~6アルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシC1~2アルキル基が好ましい。
【0037】
1~6アルコキシC1~6アルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシn−プロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシエチル基、s−ブトキシメチル基、t−ブトキシエチル基、1,2−ジメトキシエチル基、2,2−ジメトキシエチル基等が挙げられる。また、同一の「C1~6アルキル基」上にエーテル結合を有する場合としては、エポキシ基、2,3−エポキシプロピル基等が挙げられる。これらのうち、C1~6アルコキシC1~2アルキル基が好ましい。
【0038】
1~11アシルオキシC1~6アルキル基としては、ホルミルオキシメチル基、アセトキシメチル基、2−アセトキシエチル基、プロピオニルオキシメチル基、プロピオニルオキシエチル基等が挙げられる。これらのうち、C2~7アシルオキシC1~2アルキル基が好ましい。
【0039】
無置換のC1~11アシル基は、RCO−で表される基である。Rとしては、水素原子;直鎖若しくは分岐鎖のC1~6のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖のC2~6のアルケニル基;直鎖若しくは分岐鎖のC2~6のアルキニル基;単環または多環のC6~10のアリール基;または、環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1乃至4個のヘテロ原子を含む5乃至7員のヘテロ環基が挙げられる。
例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、n−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、ペンタノイル基、バレリル基、i−プロピルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、ピバロイル基、イソバレリル基等のアルキルカルボニル基;アクリロイル基、メタクリロイル基等のアルケニルカルボニル基;プロピオロイル基等のアルキニルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;2−ピリジルカルボニル基、チエニルカルボニル基等のヘテロ環カルボニル基;ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル基、2−ピリジルメチルカルボニル基等が挙げられる。これらのうち、C1~7アシル基が好ましい。
【0040】
置換基を有するアシル基として、例えば、「アミノ基」により置換された「C1アシル基」、すなわち、「カルバモイル基」;「ハロゲノ基」により置換された「C1~11アシル基」、すなわち、「C1~11ハロアシル基」;「水酸基」により置換された「C1アシル基」、すなわち、「カルボキシル基」;「アルコキシ基」により置換された「C1アシル基」、すなわち、「アルコキシカルボニル基」等が挙げられる。
カルバモイル基としては、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基等が挙げられる。これらのうち、モノC1~6アルキルカルバモイル基またはジC1~6アルキルカルバモイル基が好ましい。また、上記以外にも、フェニルカルバモイル基、4−メチルフェニルカルバモイル基等のモノC6~10アリールカルバモイル基;アセチルカルバモイル基、ベンゾイルカルバモイル基等のC1~7アシルカルバモイル基等が挙げられる。
【0041】
ハロアシル基としては、モノフルオロアセチル基、モノクロロアセチル基、モノブロモアセチル基、ジフルオロアセチル基、ジクロロアセチル基、ジブロモアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリブロモアセチル基、3,3,3−トリフルオロプロピオニル基、3,3,3−トリクロロプロピオニル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピオニル基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲノ基が1〜3個置換したC2~7ハロアシル基が好ましい。
【0042】
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基等が挙げられる。さらに「C3~6シクロアルキル基」または「C6~10アリール基」により置換されたアルコキシカルボニル基として、例えば、シクロプロピルメチルオキシカルボニル基、2−シクロペンチルエチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。これらのうち、C1~6アルコキシカルボニル基が好ましい。
【0043】
無置換のもしくは置換基を有する水酸基には、水酸基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シリルオキシ基などを含む。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、1−エチルプロポキシ基、イソヘキシルオキシ基、4−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、2−メチルペントキシ基、1−メチルペントキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、1−エチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基等が挙げられ、さらに「無置換のもしくは置換基を有するC3~6シクロアルキル基」または、「無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基」により置換されたアルコキシ基、例えば、シクロプロピルメチルオキシ基、2−シクロペンチルエチルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、C1~6アルコキシ基が好ましい。
【0044】
ハロアルコキシ基としては、クロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1−フルオロエトキシ基、1,1−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲノ基が1〜3個置換したC1~6ハロアルコキシ基が好ましい。
【0045】
アルケニルオキシ基としては、ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−プロペニルオキシ基、1−ブテニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、1−ペンテニルオキシ基、2−ペンテニルオキシ基、3−ペンテニルオキシ基、4−ペンテニルオキシ基、1−ヘキセニルオキシ基、2−ヘキセニルオキシ基、3−ヘキセニルオキシ基、4−ヘキセニルオキシ基、5−ヘキセニルオキシ基、1−メチル−2−プロペニルオキシ基、2−メチル−2−プロペニルオキシ基、1−メチル−2−ブテニルオキシ基、2−メチル−2−ブテニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、C2~4アルケニルオキシ基が好ましい。
【0046】
アルキニルオキシ基としては、エチニルオキシ基、プロピニルオキシ基、プロパルギルオキシ基、1−ブチニルオキシ基、2−ブチニルオキシ基、3−ブチニルオキシ基、1−ペンチニルオキシ基、2−ペンチニルオキシ基、3−ペンチニルオキシ基、4−ペンチニルオキシ基、1−ヘキシニルオキシ基、1−メチル−2−プロピニルオキシ基、2−メチル−3−ブチニルオキシ基、1−メチル−2−ブチニルオキシ基、2−メチル−3−ペンチニルオキシ基、1,1−ジメチル−2−ブチニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、C2~4アルキニルオキシ基が好ましい。
【0047】
シクロアルコキシ基としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。さらに「無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基」により置換されたシクロアルコキシ基、例えば、2−メチルシクロプロピルオキシ基、2−エチルシクロプロピルオキシ基、2,3,3−トリメチルシクロブチルオキシ基、2−メチルシクロペンチルオキシ基、2−エチルシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、C3~6シクロアルコキシ基が好ましい。
【0048】
アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、フェノキシ基が好ましい。
【0049】
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、i−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、i−ブチルカルボニルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、C1~7アシルオキシ基が好ましい。
【0050】
シリルオキシ基としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基等のトリ置換シリルオキシ基が挙げられる。
【0051】
無置換のもしくは置換基を有するアミノ基としては、NH2基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。これらのうち、モノC1~6アルキルアミノ基、またはジC1~6アルキルアミノ基が好ましい。
また、NH2基上の2つの水素原子が、「C1~6アルキル基」の同一の炭素原子で置換された「基」としては、例えば、メチリデンアミノ基、エチリデンアミノ基等が挙げられる。これらのうち、モノC1~6アルキリデンアミノ基が好ましい。
また、フェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基等のモノC6~10アリールアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジ1−ナフチルアミノ基等のジC6~10アリールアミノ基;ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のC1~7アシルアミノ基等が挙げられる。
【0052】
ハロゲノ基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0053】
1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成してもよい。R1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成することによってピぺリジン環を架橋するとき、該架橋原子数が2または3であることが好ましい。
式(1)〜(4)において、R1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成する場合のピペリジン環の例としては、下記の式(a1)〜(a4)に表すピペリジン環が挙げられる。(式中の*は、結合位置を表す。X’は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、無置換のもしくは置換基を有する窒素原子、カルボニル基またはスルホキシ基を表す。)より好ましくは、X’が全て炭素原子の飽和環である。
【0054】
【化8】

【0055】
また、R1aとR2aとが、またはR3aとR4aとが一緒になって環を形成した場合、以下の例に示すような2種ずつの異性体が存在する。これらの異性体は全て本発明に含まれる。
【0056】
【化9】

【0057】
5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC2~6アルケニル基、無置換のもしくは置換基を有するC2~6アルキニル基、無置換のもしくは置換基を有するC3~6シクロアルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC4~8シクロアルケニル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有するC1~11アシル基、無置換のもしくは置換基を有する(1−イミノ)C1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するアミノ基、置換基を有するスルホニル基、シリル基、シアノ基、またはニトロ基を表す。
【0058】
無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC1~11アシル基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、または無置換のもしくは置換基を有するアミノ基、は上述したものと同じものが挙げられる。
【0059】
無置換のC2~6アルケニル基は、アルキル基のいずれか1カ所以上に炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜6の直鎖、または分岐鎖のアルケニル基を意味する。例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基等が挙げられる。これらのうち、C2~4アルケニル基が好ましい。
置換基を有するC2~6アルケニル基としては、「ハロゲノ基」により置換された「C2~6アルケニル基」、すなわち、「C2~6ハロアルケニル基」等が挙げられる。例えば、3−クロロ−2−プロペニル基、4−クロロ−2−ブテニル基、4,4−ジクロロ−3−ブテニル基、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル基、3,3−ジクロロ−2−プロペニル基、2,3−ジクロロ−2−プロペニル基、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル基、2,4,6−トリクロロ−2−ヘキセニル基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲノ基が1〜3個置換したC2~6ハロアルケニル基が好ましい。
【0060】
無置換のC2~6アルキニル基は、アルキル基のいずれか1カ所以上に炭素−炭素三重結合を有する炭素数2〜6の直鎖、または分岐鎖のアルキニル基を意味する。例えば、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基等が挙げられる。これらのうち、C2~4アルキニル基が好ましい。
置換基を有するC2~6アルキニル基の例としては、「ハロゲノ基」により置換された「C2~6アルキニル基」、すなわち、「C2~6ハロアルキニル基」等が挙げられる。例えば、3−クロロ−1−プロピニル基、3−クロロ−1−ブチニル基、3−ブロモ−1−ブチニル基、3−ブロモ−2−プロピニル基、3−ヨード−2−プロピニル基、3−ブロモ−1−ヘキシニル基、5、5−ジクロロ−2−メチル−3−ペンチニル基、4−クロロ−1,1−ジメチル−2−ブチニル基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲノ基が1〜3個置換したC2~6ハロアルキニル基が好ましい。
【0061】
無置換のC3~6シクロアルキル基は、環状部分を有する炭素数3〜6のアルキル基を意味する。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有するC3~6シクロアルキル基の例としては、「C1~6アルキル基」により置換された「C3~6シクロアルキル基」、すなわち、「C1~6アルキルC3~6シクロアルキル基」等が挙げられる。例えば、2,3,3−トリメチルシクロブチル基、4,4,6,6−テトラメチルシクロヘキシル基、1,3−ジブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、C1~2アルキルが1〜3個置換したC4~6シクロアルキル基が好ましい。
【0062】
無置換のC4~8シクロアルケニル基は、環状部分を有する炭素数4〜8のアルケニル基を意味する。例えば、1−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロオクテニル基等が挙げられる。
置換基を有するシクロアルケニル基の例としては、「C1~6アルキル基」により置換された「C4~8シクロアルケニル基」、すなわち、「C1~6アルキルC4~8シクロアルケニル基」等が挙げられる。例えば、2−メチル−3−シクロヘキセニル基、3,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらのうち、C1~2アルキル基が1〜3個置換したC4~6シクロアルケニル基が好ましい。
【0063】
無置換のC6~10アリール基は、単環または多環の炭素数6〜10のアリール基を意味する。ここで、多環アリール基は、少なくとも一つの環が芳香環であれば、残りの環が飽和脂環、部分不飽和脂環または芳香環のいずれであってもよい。例えばフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。これらのうち、フェニル基が好ましい。
【0064】
無置換のヘテロ環基は、環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1乃至4個の複素原子を含む5乃至7員の芳香族ヘテロ環、飽和ヘテロ環、不飽和ヘテロ環またはこれらのヘテロ環とベンゼン環が縮合した縮合ヘテロ環を意味する。例えば、ピロ−ル−1−イル基、ピロ−ル−2−イル基、ピロ−ル−3−イル基、フラン−2−イル基、フラン−3−イル基、チオフェン−2−イル基、チオフェン−3−イル基、イミダゾール−1−イル基、イミダゾール−2−イル基、イミダゾール−4−イル基、イミダゾール−5−イル基、ピラゾール−1−イル基、ピラゾール−3−イル基、ピラゾール−4−イル基、ピラゾール−5−イル基、オキサゾール−2−イル基、オキサゾール−4−イル基、オキサゾール−5−イル基、チアゾール−2−イル基、チアゾール−4−イル基、チアゾール−5−イル基、イソオキサゾール−3−イル基、イソオキサゾール−4−イル基、イソオキサゾール−5−イル基、イソチアゾール−3−イル基、イソチアゾール−4−イル基、イソチアゾール−5−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−4−イル基、1,2,3−トリアゾール−5−イル基、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,4−トリアゾール−3−イル基、1,2,4−トリアゾール−5−イル基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、1,2,4−チアジアゾール−3−イル基、テトラゾール−1−イル基、テトラゾール−2−イル基; ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピラジン−2−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基、ピリダジン−3−イル基、ピリダジン−4−イル基、トリアジニル基;
【0065】
テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−3−イル基、ピロリジン−1−イル基、ピロリジン−2−イル基、ピロリジン−3−イル基; インドール−1−イル基、インドール−2−イル基、インドール−3−イル基、インドール−4−イル基、インドール−5−イル基、インドール−6−イル基、インドール−7−イル基、ベンゾフラン−2−イル基、ベンゾフラン−3−イル基、ベンゾフラン−4−イル基、ベンゾフラン−5−イル基、ベンゾフラン−6−イル基、ベンゾフラン−7−イル基、ベンゾチオフェン−2−イル基、ベンゾチオフェン−3−イル基、ベンゾチオフェン−4−イル基、ベンゾチオフェン−5−イル基、ベンゾチオフェン−6−イル基、ベンゾチオフェン−7−イル基、イソインドール−1−イル基、イソインドール−2−イル基、イソインドール−4−イル基、イソインドール−5−イル基、イソインドール−6−イル基、イソインドール−7−イル基、イソベンゾフラン−1−イル基、イソベンゾフラン−4−イル基、イソベンゾフラン−5−イル基、イソベンゾフラン−6−イル基、イソベンゾフラン−7−イル基、ベンゾイミダゾール−1−イル基、ベンゾイミダゾール−2−イル基、ベンゾイミダゾール−4−イル基、ベンゾイミダゾール−5−イル基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、ベンゾオキサゾール−4−イル基、ベンゾオキサゾール−5−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−4−イル基、ベンゾチアゾール−5−イル基;
【0066】
クロメン−2−イル基、クロメン−3−イル基、クロメン−4−イル基、クロメン−5−イル基、クロメン−6−イル基、クロメン−7−イル基、クロメン−8−イル基、キノリン−2−イル基、キノリン−3−イル基、キノリン−4−イル基、キノリン−5−イル基、キノリン−6−イル基、キノリン−7−イル基、キノリン−8−イル基、イソキノリン−1−イル基、イソキノリン−3−イル基、イソキノリン−4−イル基、イソキノリン−5−イル基、イソキノリン−6−イル基、イソキノリン−7−イル基、イソキノリン−8−イル基; ピペリジン−1−イル基、ピペリジン−2−イル基、ピペリジン−3−イル基、ピペリジン−4−イル基、ピペラジン−1−イル基、ピペラジン−2−イル基、ピペラジン−3−イル基、モルホリン−2−イル基、モルホリン−3−イル基、モルホリン−4−イル基; 1,3−ベンゾジオキソール−4−イル基、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル基、1,4−ベンゾジオキサン−5−イル基、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基、3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−イル基、3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−7−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−6−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−イル基; 等が挙げられる。これらのうち、5〜10員のヘテロ環基が好ましい。
【0067】
無置換の(1−イミノ)C1~6アルキル基は、直鎖または分岐鎖のC1~5のアルキル基が、イミノメチル基と結合した基を意味する。例えば、イミノメチル基、(1−イミノ)エチル基、(1−イミノ)プロピル基、(1−イミノ)ブチル基、(1−イミノ)ペンチル基、(1−イミノ)ヘキシル基、(1−イミノ)イソブチル基、(1−イミノ)イソペンチル基、(1−イミノ)ネオペンチル基等が挙げられる。これらのうち、(1−イミノ)C1~4アルキル基が好ましい。
置換基を有する(1−イミノ)C1~6アルキル基の例としては、イミノメチル基の窒素原子上の水素原子が、「水酸基」により置換された「(1−イミノ)C1~6アルキル基」、すなわち、「(1−ヒドロキシイミノ)C1~6アルキル基」;水酸基上の水素原子が、「C1~6アルキル基」により置換された「(1−ヒドロキシイミノ)C1~6アルキル基」、すなわち、「(1−(C1~6アルコキシ)イミノ)C1~6アルキル基」などが挙げられる。
(1−ヒドロキシイミノ)C1~6アルキル基としては、ヒドロキシイミノメチル基、(1−ヒドロキシイミノ)エチル基、(1−ヒドロキシイミノ)プロピル基、(1−ヒドロキシイミノ)ブチル基等が挙げられる。これらのうち、(1−ヒドロキシイミノ)C1~4アルキル基が好ましい。
(1−(C1~6アルコキシ)イミノ)C1~6アルキル基としては、メトキシイミノメチル基、(1−エトキシイミノ)メチル基、(1−エトキシイミノ)エチル基等が挙げられる。これらのうち、(1−(C1~6アルコキシ)イミノ)C1~4アルキル基が好ましい。
【0068】
置換基を有するスルホニル基として、たとえば、「C1~6アルキル基」により置換された「スルホニル基」等が挙げられる。アルキル基置換のスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、s−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、ネオペンチルスルホニル基、1−エチルプロピルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、イソヘキシルスルホニル基等が挙げられる。これらのうち、C1~6アルキルスルホニル基が好ましい。
また、上記以外にも、例えば、トリフルオロメチルスルホニル基等のC1~6ハロアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基等のC6~10アリールスルホニル基;スルフォ基;メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等のC1~6アルコキシスルホニル基;スルファモイル基;N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基等のスルファモイル基(好ましくは、モノC1~6アルキルスルファモイル基またはジC1~6アルキルスルファモイル基);フェニルスルファモイル基、4−メチルフェニルスルファモイル基等のモノC6~10アリールスルファモイル基等が挙げられる。
【0069】
シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリシクロプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のトリ置換シリル基が挙げられる。
【0070】
式(1)および式(2)中のCy1は、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、または無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基を表す。
無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、または無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基は、上述したものと同じものが挙げられる。
【0071】
Cy1は式(3)または(4)中で表される基が好ましい。
式(3)および(4)中のR8は、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するメルカプト基、ハロゲノ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。R8は、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
式(3)中のnは、0〜4のいずれかの整数、好ましくは1〜2のいずれかの整数を表す。
【0072】
式(4)中のpは、0〜3のいずれかの整数、好ましくは1〜2のいずれかの整数、より好ましくは1を表す。
Y’は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを表し、同一または異なっていてもよい。ただし、全てが炭素原子になることはなく、または同時に二つ以上が酸素原子および硫黄原子になることはない。
【0073】
式(1)中のCy2は、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、または無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基を表す。
無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、または無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基は、上述したものと同じものが挙げられる。
【0074】
Cy2は式(2)、(3)または(4)中で表される基が好ましい。式(2)〜(4)中の、Y1およびY2はそれぞれ独立に、窒素原子または炭素原子を表す。
【0075】
7は、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するメルカプト基、ハロゲノ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。R7はトリフルオロメチル基が特に好ましい
【0076】
メルカプト基としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。これらのうち、C1~6アルキルチオ基が好ましい。また、上記以外にも、例えば、フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基等のC6~10アリールチオ基;アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基等のC1~7アシルチオ基等が挙げられる。
mは、0〜5のいずれかの整数、好ましくは1〜2のいずれかの整数を表す。
【0077】
Cy1としては、フェニル基、ピラゾール−1−イル基、ピラゾール−3−イル基、ピラゾール−4−イル基、ピラゾール−5−イル基が好ましく、Cy2としては、ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピラジン−2−イル基、ピラジン−3−イル基が、特に好ましい。
【0078】
本発明化合物の塩としては、農園芸学的に許容される塩であれば、特に制限されない。例えば、塩酸、硫酸等の無機酸の塩;酢酸、乳酸等の有機酸の塩;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩;鉄、銅等の遷移金属の塩;アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ヒドラジン等の有機塩基の塩等が挙げられる。
【0079】
本発明の化合物の製造方法としては、WO2005/095380号公報に記載の方法を参考に挙げることができる。さらには、WO2007/040280号公報、WO2007/040282号公報、およびWO2008/026658号公報記載の方法も参考にすることができる。
すなわち、本発明の化合物は、式(1)で表される環状アミン化合物の各部の構造に対応するピペリジン化合物、ピラゾロン化合物、ピリジン化合物、フェニル化合物等を上記文献記載のようなカップリング反応させることによって得ることができる。
【0080】
アミノアルキレン部分(R56N−A−)の修飾法は当該技術分野で周知の方法である。例えば、「第4版 実験化学講座[20] 有機合成II(丸善、1992)」、6.アミン(p279〜p318)に具体的な方法が記載されている。即ち、還元反応(例えば、アジド、ニトリル、イミン、オキシムからの還元)、置換反応(例えば、ハロゲン、アルコールからの置換)、付加反応(例えば、イミン結合への求核的付加)、縮合反応(例えば、アミノメチル化、還元的アミノ化)、転位反応(例えば、Hofmann転位、Curtius転位)などの周知の方法を参考にすることができる。この周知技術であるアミノアルキレン部分(R56N−A−)の修飾法によって、様々な構造のアミノアルキレン部分を有する本発明の環状アミン化合物を得ることができる。なお、この修飾法は、前述のカップリング反応前の原料化合物に対して行ってもよいし、カップリング反応後の生成化合物に対して行ってもよい。
【0081】
本発明化合物は、殺成虫、殺若虫、殺幼虫、および殺卵などの作用を有することから、農作物の害虫、ダニ、衛生害虫、貯殻害虫、衣類害虫、家屋害虫等の有害生物の防除に使用できる。防除の対象となる生物として、下記の生物を具体的に例示することができる。
鱗翅目害虫:例えば、ハスモンヨトウ、ヨトウガ、タマナヤガ、アオムシ、タマナギンウワバ、コナガ、チャノコカクモンハマキ、チャハマキ、モモシンクイガ、ナシヒメシンクイ、ミカンハモグリガ、チャノホソガ、キンモンホソガ、マイマイガ、チャドクガ、ニカメイガ、コブノメイガ、ヨーロピアンコーンボーラー、アメリカシロヒトリ、スジマダラメイガ、ヘリオティス属、ヘリコベルパ属、アグロティス属、イガ、コドリンガ、ワタアカミムシ等; 半翅目害虫:例えば、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、ムギクビレアブラムシ、ホソヘリカメムシ、アオクサカメムシ、ヤノネカイガラムシ、クワコナカイガラムシ、オンシツコナジラミ、タバココナジラミ、シルバーリーフコナジラミ、ナシキジラミ、ナシグンバイムシ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカ、セジロウンカ、ツマグロヨコバイ等; 甲虫目害虫:例えば、キスジノミハムシ、ウリハムシ、コロラドハムシ、イネミズゾウムシ、コクゾウムシ、アズキゾウムシ、マメコガネ、ヒメコガネ、ジアブロティカ属、タバコシバンムシ、ヒラタキクイムシ、マツノマダラカミキリ、ゴマダラカミキリ、アグリオティス属、ニジュウヤホシテントウ、コクヌスト、ワタミゾウムシ等; 双翅目害虫:例えば、イエバエ、オオクロバエ、センチニクバエ、ウリミバエ、ミカンコミバエ、タネバエ、イネハモグリバエ、キイロショウジョウバエ、サシバエ、コガタアカイエカ、ネッタイシマカ、シナハマダラカ等; アザミウマ目害虫:例えば、ミナミキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ等; 膜翅目害虫:例えば、イエヒメアリ、キイロスズメバチ、カブラハバチ等; 直翅目害虫:例えば、トノサマバッタ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ等; シロアリ目害虫:例えば、イエシロアリ、ヤマトシロアリ等; 隠翅目害虫:例えば、ヒトノミ、ネコノミ等、シラミ目害虫、例えば、ヒトジラミ等; ダニ類:例えば、ナミハダニ、ニセナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ、ミカンサビダニ、リンゴサビダニ、チャノホコリダニ、ブレビパルパス属、エオテトラニカス属、ロビンネダニ、ケナガコナダニ、コナヒョウヒダニ、オウシマダニ、フタトゲチマダニ等; 植物寄生性線虫類:例えば、サツマイモネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、ダイズシストセンチュウ、イネシンガレセンチュウ、マツノザイセンチュウ等。
適用が好ましい有害生物は、鱗翅目害虫、半翅目害虫、ダニ類、アザミウマ目害虫、甲虫目害虫であり、特に好ましくは、ダニ類である。
【0082】
また、近年コナガ、ウンカ、ヨコバイ、アブラムシ等多くの害虫において、有機リン剤、カーバメート剤または殺ダニ剤に対する抵抗性が発達し、それら薬剤の効力不足問題を生じており、抵抗性系統の害虫やダニにも有効な薬剤が望まれている。本発明化合物は、感受性系統のみならず、有機リン剤、カーバメート剤またはピレスロイド剤抵抗性系統の害虫や、殺ダニ剤抵抗性系統のダニにも優れた殺虫殺ダニ効果を有する薬剤とすることができる。
また本発明化合物は、薬害が少なく、魚類や温血動物への毒性が低く、安全性の高い薬剤とすることができる。
【0083】
本発明の有害生物防除剤は、式(1)〜式(4)で表される本発明化合物の少なくとも1種を有効成分として含有するものである。該防除剤では、本発明化合物を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明化合物を実際に施用する際には他成分を加えずそのまま使用できるが、通常は、固体担体、液体担体、ガス状担体などの担体と混合し、または多孔セラミック板や不織布等の基材に含浸し、必要により界面活性剤、その他の補助剤を添加して、農薬として使用する目的で一般の農薬のとり得る形態、即ち、水和剤、粒剤、粉剤、乳剤、水溶剤、懸濁剤、顆粒水和剤、フロアブル、エアゾール、煙霧剤、加熱蒸散剤、燻煙剤、毒餌、マイクロカプセル等の形態に製剤化して使用することができる。
【0084】
添加剤および担体としては、固型剤を目的とする場合には、大豆粒、小麦粉等の植物性粉末、珪藻土、燐灰石、石こう、タルク、ベントナイト、パイロフィライト、クレイ等の鉱物性微粉末、安息香酸ソーダ、尿素、芒硝等の有機および無機化合物を使用することができ、液体の剤型を目的とする場合には、ケロシン、キシレンおよびソルベントナフサ等の石油留分、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、植物油、水等を溶剤として使用することができる。噴射剤に用いられるガス状担体としては、ブタンガス、LPG、ジメチルエーテルおよび炭酸ガスを使用することができる。
【0085】
毒餌の基材としては、例えば穀物粉、植物油、糖、結晶セルロース等の餌成分;ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアイアレチン酸等の酸化防止剤;デヒドロ酢酸等の保存料;トウガラシ末等の子供やペットによる誤食防止剤;チーズ香料、タマネギ香料等の害虫誘引性香料を使用することができる。
また、これらの製剤において均一かつ安定な形態をとるために、必要ならば界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、特に限定はないが、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合物等が挙げられる。
【0086】
本発明化合物を農業用の有害生物防除剤として使用する場合、その製剤中の有効成分量は好ましくは0.01〜90重量%であり、特に好ましくは0.05〜85重量%である。本発明化合物を使用した農業用の有害生物防除剤が、水和剤、乳剤、懸濁剤、フロアブル剤、水溶剤、または顆粒水和剤の場合は水で所定の濃度に希釈して溶解液、懸濁液あるいは乳濁液として、粉剤・粒剤の場合はそのまま、植物或いは土壌に散布する方法で使用することができる。
また、本発明化合物を使用した防疫用の有害生物防除剤が、乳剤、水和剤、フロアブル剤等の場合は水で所定の濃度に希釈して施用し、油剤、エアゾール、煙霧剤、毒餌、防ダニシート等の場合はそのまま使用することができる。
【0087】
本発明化合物を使用したウシ、ブタ等の家畜類、イヌ、ネコ等のペット類の動物外部寄生虫防除用の有害生物防除剤は、獣医学的に通常に用いられる方法で製剤し使用できる。例えば、全身的抑制(systemic control)を目的とする場合には、錠剤、カプセル、浸漬液、飼料混入、坐薬、注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内等)等により投与する方法が挙げられ、非全身的抑制(non-systemic control)を目的とする場合は、油性または水性液剤を噴霧、注ぎかけ(pour-on)、滴下(spot-on)等により投与する方法および樹脂製剤を首輪、耳札等の適当な形状に成形した物を装着する方法が挙げられる。この場合、通常宿主動物1kgに対して、本発明化合物として0.01−1000mgの割合で使用することができる。
【0088】
なお、本発明化合物は単独でも十分有効であることは言うまでもないが、他の有害生物防除剤、殺菌剤、殺虫・殺ダニ剤、除草剤、植物調節剤、共力剤、肥料、土壌改良剤、動物用飼料等の1種または2種以上と混用または併用することもできる。
本発明化合物と混用または併用することのできる殺菌剤、殺虫・殺ダニ剤、植物生長調節剤等の有効成分の代表例を以下に示す。
【0089】
〈殺菌剤〉:
キャプタン、フォルペット、チウラム、ジラム、ジネブ、マンネブ、マンコゼブ、プロピネブ、ポリカーバメート、クロロタロニン、キントーゼン、キャプタホル、イプロジオン、プロサイミドン、フルオロイミド、メプロニル、フルトラニル、ペンシクロン、オキシカルボキシン、ホセチルアルミニウム、プロパモカーブ、トリアジメホン、トリアジメノール、プロピコナゾール、ジクロブトラゾール、ビテルタノール、ヘキサコナゾール、マイクロブタニル、フルシラゾール、エタコナゾール、フルオトリマゾール、フルトリアフェン、ペンコナゾール、ジニコナゾール、サイプロコナゾーズ、フェナリモール、トリフルミゾール、プロクロラズ、イマザリル、ペフラゾエート、トリデモルフ、フェンプロピモルフ、トリホリン、ブチオベート、ピリフェノックス、アニラジン、ポリオキシン、メタラキシル、オキサジキシル、フララキシル、イソプロチオラン、プロベナゾール、ピロールニトリン、ブラストサイジンS、カスガマイシン、バリダマイシン、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、ベノミル、カルベンダジム、チオファネートメチル、ヒメキサゾール、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、フェンチンアセテート、水酸化トリフェニル錫、ジエトフェンカルブ、キノメチオナート、ビナパクリル、レシチン、重曹、ジチアノン、ジノカップ、フェナミノスルフ、ジクロメジン、グアザチン、ドジン、IBP、エディフェンホス、メパニピリム、フェルムゾン、トリクラミド、メタスルホカルブ、フルアジナム、エトキノラック、ジメトモルフ、ピロキロン、テクロフタラム、フサライド、フェナジンオキシド、チアベンダゾール、トリシクラゾール、ビンクロゾリン、シモキサニル、シクロブタニル、グアザチン、プロパモカルブ塩酸塩、オキソリニック酸、シフルフェナミド、イミノクタジン、クレソキシムメチル、トリアジン、フェンヘキサミド、シアゾファミド、シプロジニル、プロチオコナゾール、フェンブコナゾール、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、カルプロパミド。
【0090】
〈殺虫・殺ダニ剤〉:
プロフェノホス、ジクロルボス、フェナミホス、フェニトロチオン、EPN、ダイアジノン、クロルピリホスメチル、アセフェート、プロチオホス、ホスチアゼート、ホスホカルブ、カズサホス、ジスルホトン、クロルピリホス、デメトン−S−メチル、ジメトエート、パラチオン、BRP、CVMP、CVP、CYAP、DEP、MPP、PAP、イソキサチオン、エチオン、エトプロホス、キナルホス、クロルピリホス、ジメチルビンホス、バミドチオン、ピラクロホス、ホサロン、マラソン、モノクロトホス、AKD−3088のような有機リン酸エステル系化合物; カルバリル、プロポキスル、アルジカルブ、カルボフラン、チオジカルブ、メソミル、オキサミル、エチオフェンカルブ、ピリミカルブ、フェノブカルブ、カルボスルファン、ベンフラカルブ、MIPC、MPMC、MTMC、アラニカルブ、ピリダフェンチオン、ピリミホスメチル、フェノチオカルブ、フラチオカルブ、ベンダイオカルブ、XMCのようなカーバメート系化合物; カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップのようなネライストキシン誘導体; ジコホル、テトラジホン、エンドスルファンのような有機塩素系化合物; 酸化フェンブタスズのような有機金属系化合物; フェンバレレート、ペルメトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、シハロトリン、テフルトリン、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、ビフェントリン、アクリナトリン)、アレスリン、シクロプロトリン、シフルトリン、ハルフェンプロックス、フルシトリネート、レスメトリンのようなピレスロイド系化合物; ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、テフルベンズロン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ビストリフルロン、ノビフルムロン、トリフルムロンのようなベンゾイルウレア系化合物; メトプレン、ピリプロキシフェン、フェノキシカルブのような幼若ホルモン様化合物; ピリダベンのようなピリダジノン系化合物; フェンピロキシメート、フィプロニル、テブフェンピラド、エチピロール、トルフェンピラド、アセトプロール、ピラフルプロール、ピリプロールのようなピラゾール系化合物; イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフランなどのネオニコチノイド; テブフェノジド、メトキシフェノジド、クロマフェノジド、ハロフェノジドなどのヒドラジン系化合物; ジニトロ系化合物、有機硫黄化合物、尿素系化合物、トリアジン系化合物、ヒドラゾン系化合物また、その他の化合物として、フロニカミド、ブプロフェジン、ヘキシチアゾクス、アミトラズ、クロルジメホルム、シラフルオフェン、トリアザメイト、ピメトロジン、ピリミジフェン、クロルフェナピル、インドキサカルブ、アセキノシル、エトキサゾール、シロマジン、1,3−ジクロロプロペン、ジアフェンチウロン、ベンクロチアズ、フルフェンリム、ピリダリル、スピロジクロフェン、ビフェナゼート、スピロメシフェン、スピロテトラマト、プロパルギット、クロフェンテジン、フルアクリピリム、フルベンジアミド、シフルメトフェン、シエノピラフェン、NNI−0101、フェナザキン、メタフルミゾン、アミドフルメット、CL900167、DCIP、フェニソブロモレート、ベンゾメート、メタアルデヒド、クロラントラニリプロール、スピネトラム、ピリフルキナゾンのような化合物; アバメクチン、エマメクチンベンゾエート、ミルベメクチン、スピノサッド、イベルメクチン、レピメクチンのような抗生物質或いはその半合成物質; アザディラクチン、ロテノンのような天然物; 更に、BT剤、昆虫病原ウイルス剤、昆虫病原糸状菌剤、線虫病原糸状菌剤などのような微生物農薬。
【0091】
〈植物生長調節剤〉:
アブシジン酸、インドール酪酸、ウニコナゾール、エチクロゼート、エテホン、クロキシホナック、クロルメコート、クロレラ抽出液、過酸化カルシウム、シアナミド、ジクロルプロップ、ジベレリン、ダミノジッド、デシルアルコール、トリネキサパックエチル、メピコートクロリド、パクロブトラゾール、パラフィン、ワックス、ピペロニルブトキシド、ピラフルフェンエチル、フルルプリミドール、プロヒドロジャスモン、プロヘキサジオンカルシウム塩、ベンジルアミノプリン、ペンディメタリン、ホルクロルフェニュロン、マレイン酸ヒドラジドカリウム、1−ナフチルアセトアミド、4−CPA、MCPB、コリン、硫酸オキシキノリン、エチクロゼート、ブトルアリン、1−メチルシクロプロペン、アビグリシン塩酸塩。
【実施例】
【0092】
次に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定して解釈されるものでない。
【0093】
製造例1 : 4−[2−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ)メチル−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジンの製法
〔工程1−1 : 4−[2−ブロモメチル−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジンの製法〕
【0094】
【化10】

【0095】
4−[2−ヒドロキシメチル−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジン(4.36g)のアセトニトリル(21mL)溶液に、室温で四臭化炭素(4.50g)を加えた。これを0℃に冷却し、トリフェニルホスフィン(3.56g)を加え、次いで室温まで昇温し1.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、表記化合物(4.26g)を得た。viscous oilであった。
【0096】
〔工程1−2 : 4−[2−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ)メチル−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジンの製法〕
【0097】
【化11】

【0098】
工程1−1で得られた生成物(503mg)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(124mg)およびN−エチルジイソプロピルアミン(408mg)のN,N−ジメチルホルムアミド〔DMF〕(2.6mL)溶液を80℃、4.5時間加熱撹拌した。これを室温まで冷却した後、水に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、表記化合物(335mg)を得た。融点(mp)は76−78℃であった。
【0099】
製造例2 : 4−[2−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ)メチル−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジンの製法
〔工程2−1 : 2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)安息香酸N−メトキシ−N−メチルアミドの製法〕
【0100】
【化12】

【0101】
2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)安息香酸(1.54g)のジクロロメタン(30mL)溶液に、室温で二塩化オキサリル(0.97mL)を加えた。これを0℃に冷却し、DMF(7滴)を滴下した。その後、室温まで昇温し2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジクロロメタン(12mL)を加え、酸塩化物溶液とした。
得られた溶液(3mL)を、0℃に冷却したN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(387mg)およびトリエチルアミン(762mg)のジクロロメタン(4.9mL)溶液に滴下し、これを室温まで昇温し3時間撹拌した。飽和炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、有機層を水で洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、表記化合物(653mg)を得た。
【0102】
〔工程2:4−[2−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ)メチル−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジンの製法〕
【0103】
【化13】

【0104】
工程2−1で得られた生成物(374mg)および4−ヒドロキシ−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジン(372mg)のDMF(6mL)溶液を80℃に加温し、ここに60%水素化ナトリウムを少量ずつ加えた。これを80℃で3時間加熱撹拌した。そののち室温まで冷却し、酢酸エチルと水を加え分液した。水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機層をあわせて水で洗浄した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、アミド中間体(377mg)を得た。
得られた中間体(227mg)のテトラヒドロフラン〔THF〕(1mL)溶液を、0℃に冷却したボラン−THF錯体THF溶液(1.18M、2.6mL)に滴下し、1時間加熱還流した。これを0℃に冷却し、2N塩酸を加え酸性にし、室温まで昇温し、1時間撹拌した。これに2N水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性にした。その後、t−ブチルメチルエーテルで2回抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、表記化合物(16mg)を得た。
【0105】
製造例3 : 4−[2−N,N−ジメチルアミノメチル−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジンの製法
【0106】
【化14】

【0107】
4−[2−ホルミル−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−[5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジル]ピペリジン(240mg)のジクロロメタン(4.3mL)溶液に、ジメチルアミンTHF溶液(2.0M、0.43mL)と酢酸(0.07mL)を加え室温で7時間撹拌した。ここにトリアセトキシヒドロほう酸ナトリウム(232mg)を加え、室温で14時間撹拌した。これに2N水酸化ナトリウム水溶液(1.1mL)を加えて反応停止させた。その後、クロロホルムで2回抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、表記化合物(195mg)を得た。mpは83−84℃であった。
【0108】
上記実施例を含め、上記実施例と同様にして製造される本発明化合物を以下の表に示す。なお、下記の表において、R1a〜R4bは2以上の置換基である場合もまとめて簡略化して示しており、visは粘稠なオイルであることを示し、amorはアモルファスであることを示す。また、nD21.8−1.5008とは、21.8℃における屈折率が1.5008であることを示す(他も同様である。)。cPrはシクロプロピル基であり、cHexはシクロヘキシル基であり、Acはアセチル基であり、nPrはノルマルプロピル基であり、iPrはイソプロピル基であり、nBuはノルマルブチル基であり、iBuはイソブチル基であり、tBuはターシャリーブチル基であり、cPenはシクロペンチル基であり、Meはメチル基であり、Etはエチル基であり、Phはフェニル基であることを示す(他も同様である。)。
表1−1〜1−5には式(I)の、表2には式(II)の、表3−1〜3−2には式(III)の、表4−1〜4−2には式(IV)の、表5には式(V)の化合物をそれぞれ示した。
【0109】
【化15】

【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
【表5】

【0115】
【化16】

【0116】
【表6】

【0117】
【化17】

【0118】
【表7】

【0119】
【表8】

【0120】
【化18】

【0121】
【表9】

【0122】
【表10】

【0123】
【化19】

【0124】
【表11】

【0125】
上記実施例で得られた化合物うち、いくつかの化合物について融点やNMRを測定した。その結果を表6−1〜6−2に示す。
【0126】
【表12】

【0127】
【表13】

【0128】
〔製剤〕
次に、本発明化合物を用いた製剤の実施例を若干示すが、添加物および添加割合は、これら実施例に限定されるべきものではなく、広範囲に変化させることが可能である。製剤実施例中の部は重量部を示す。
【0129】
製剤実施例1 水和剤
本発明化合物 40部
珪藻土 53部
高級アルコール硫酸エステル 4部
アルキルナフタレンスルホン酸塩 3部
以上を均一に混合して微細に粉砕して、有効成分40%の水和剤を得た。
【0130】
製剤実施例2 乳剤
本発明化合物 30部
キシレン 33部
ジメチルホルムアミド 30部
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル
7部
以上を混合溶解して、有効成分30%の乳剤を得た。
【0131】
製剤実施例3 粉剤
本発明化合物 10部
タルク 89部
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル
1部
以上を均一に混合して微細に粉砕して、有効成分10%の粉剤を得た。
【0132】
製剤実施例4 粒剤
本発明化合物 5部
クレー 73部
ベントナイト 20部
ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩
1部
リン酸ナトリウム 1部
以上をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥して有効成分5%の粒剤を得た。
【0133】
製剤実施例5 懸濁剤
本発明化合物 10部
リグニンスルホン酸ナトリウム 4部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1部
キサンタンガム 0.2部
水 84.8部
以上を混合し、粒度が1ミクロン以下になるまで湿式粉砕し、有効成分10%の懸濁液を得た。
【0134】
試験例1 ナミハダニに対する効力
3寸鉢に播種したインゲンの発芽後7〜10日を経過した第1本葉上に、有機リン剤抵抗性のナミハダニ雌成虫を17頭接種したのち、前記製剤実施例1に示された水和剤の処方に従い、化合物濃度が125ppmになるように水で希釈した薬液を散布した。温度25℃、湿度65%の恒温室内に置き、3日後に殺成虫率を調査した。試験は2反復で行った。80%以上の殺成虫率を示した化合物を活性があると判定した。その結果を表7に示す。
【0135】
試験例2 ミカンハダニに対する効力
シャーレに入れたミカン(大磯)葉上に、ミカンハダニの雌成虫を10頭接種したのち、前記製剤実施例2に示された乳剤の処方に従い、化合物濃度が125ppmになるように水で希釈した薬液を回転散布塔にて散布した。温度25℃、湿度65%の恒温室内に置き、散布3日後に成虫を除去し、この3日間に産付された卵に関し、成虫まで発育し得たか否かを11日目に調査し、次式に従い防徐効率を求めた。試験は2反復で行った。80%以上の防徐効率を示した化合物を活性があると判定した。その結果を表7に示す。
防徐効率(%)=100×[ 1 −(処理区の11日目成虫数/無処理区の11日目成虫数) ]
【0136】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明によれば、工業的に有利に合成でき、優れた生物活性を有し、安全性に問題のない新規な骨格の環状アミン化合物またはその塩、並びに新規な有害生物防除剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される環状アミン化合物またはその塩。

[式(1)中、Cy1は、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、または無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基を表す。
Cy2は、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、または無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホニル基、または無置換のもしくは置換基を有する窒素原子を表す。
Aは、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキレン基を表す。
1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、およびR4bは、それぞれ独立に、水素原子、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC1~11アシル基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するアミノ基、またはハロゲノ基を表し、R1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成してもよい。
5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC2~6アルケニル基、無置換のもしくは置換基を有するC2~6アルキニル基、無置換のもしくは置換基を有するC3~6シクロアルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC4~8シクロアルケニル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有するC1~11アシル基、無置換のもしくは置換基を有する(1−イミノ)C1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するアミノ基、置換基を有するスルホニル基、シリル基、シアノ基、またはニトロ基を表す。]
【請求項2】
式(2)で表される環状アミン化合物またはその塩。

[式(2)中、Cy1、X、A、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5およびR6は、前記と同じ意味を表す。
1およびY2は、それぞれ独立に、窒素原子または炭素原子を表す。
7は、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するメルカプト基、ハロゲノ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。
mは、0〜5のいずれかの整数を表す。]
【請求項3】
式(3)で表される環状アミン化合物またはその塩。

[式(3)中、X、A、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5、R6、Y1、Y2、R7、およびmは、前記と同じ意味を表す。
8は、無置換のもしくは置換基を有するC1~6アルキル基、無置換のもしくは置換基を有するC6~10アリール基、無置換のもしくは置換基を有するヘテロ環基、無置換のもしくは置換基を有する水酸基、無置換のもしくは置換基を有するメルカプト基、ハロゲノ基、シアノ基、またはニトロ基を表す。
nは、0〜4のいずれかの整数を表す。]
【請求項4】
式(4)で表される環状アミン化合物またはその塩。

[式(4)中、X、A、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5、R6、Y1、Y2、R7、R8、およびmは、前記と同じ意味を表す。
pは、0〜3のいずれかの整数を表す。
Y’は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを表し、同一または異なっていてもよい。ただし、全てが炭素原子になることはなく、または同時に二つ以上が酸素原子および硫黄原子になることはない。]
【請求項5】
1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の環状アミン化合物またはその塩。
【請求項6】
1aとR2a、またはR3aとR4aが一緒になって環を形成することによってピぺリジン環を架橋するとき、該架橋原子数が2または3である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の環状アミン化合物またはその塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の環状アミン化合物またはその塩を有効成分として含有する有害生物防除剤。
【請求項8】
有害生物が虫またはダニである請求項7に記載の有害生物防除剤。

【公開番号】特開2010−138082(P2010−138082A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313752(P2008−313752)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】