説明

環状オリゴマーのブチレンテレフタレートの使用、熱可塑性義歯の製造用出発材料及び熱可塑性義歯の製造方法

【課題】熱可塑性材料を用いた加工の欠点である非常に高い加工温度と困難な加工条件、例えば高い材料粘度とそれにより制限される非常に高い加工圧力を回避する。
【解決手段】熱可塑性義歯の製造のために又は熱可塑性義歯用の出発材料の製造のために、特に補綴物(繊維強化されていてよい)、人工歯、クラウン又はブリッジ(繊維強化されていてよい)の製造のために並びにそれら用の出発材料の製造のために環状オリゴマーのブチレンテレフタレートを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性義歯、特に補綴物、人工歯、クラウン又はブリッジの製造のためのブチレンテレフタレートの使用、熱可塑性義歯用の出発材料の製造のためのブチレンテレフタレートの使用、それらの出発材料並びにブチレンテレフタレートを使用した熱可塑性義歯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
総補綴物工作物の製造のための3種の主要材料:ポリメチルメタクリレート(PMMA)を基礎とする二成分系材料と、PMMA不含の熱硬化性材料と、熱可塑性加工できる射出成形材料とは区別される。
【0003】
熱可塑性義歯は、射出成形法においてポリアセタール又はPMMA/ポリアミドからなる混合物から製造できる。その場合の欠点は、非常に高い加工温度と困難な加工条件、例えば高い材料粘度とそれにより制限される非常に高い加工圧力である。例えば歯間は容易には充填できない。
【0004】
ブチレンテレフタレートの環状オリゴマーは長い間知られている[例えば、Mueller, F. J. et al. "Synthesis of Cyclic Oligomers of Butylene Terephthalate" Makromol. Chem. 184, 2487-95 (1983)]。
【0005】
サイクリックス・コーポレーション(Cyclics Corporation)社(米国、ニューヨーク州スケネクタディ在)は、環状オリゴマーのブチレンテレフタレート(CBT(商標))を販売している。その製造は慣用のポリブチレンテレフタレート(PBT)を介して行われる。CBT(商標)樹脂は比較的低温で溶融し、極めて流動性であり、かつ硬化すると良好な機械的特性を有するプラスチック材料が得られ、これを成形して複雑な部材とすることができる。更に、その材料は一般的なエポキシ樹脂に対して容易にリサイクルが可能である。材料とその製造は、例えばUS6,420,048号B1、US6,420,047号B1及びUS6,369,157号B1に記載されている。
【0006】
CBT(商標)と開始剤とを混合すると、逆反応が起こってPBTとなる。CBT(商標)は、それがPBTよりも遙かに低い粘度を有することと、こうして微細な溝部に、より良好に侵入しうるという利点を有する。これは、義歯の製造に際して驚くほど良好な成果をもって利用できる。こうして、例えば歯間をほぼ100%まで熱可塑性の材料によって充填することができる。今まで生じている熱可塑性義歯材料の欠点はこれによって解消される。
【特許文献1】US6,420,048号B1
【特許文献2】US6,420,047号B1
【特許文献3】US6,369,157号B1
【非特許文献1】Mueller, F. J. et al. "Synthesis of Cyclic Oligomers of Butylene Terephthalate" Makromol. Chem. 184, 2487-95 (1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、熱可塑性材料を用いた加工の欠点である非常に高い加工温度と困難な加工条件、例えば高い材料粘度とそれにより制限される非常に高い加工圧力を回避することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、熱可塑性義歯の製造のために又は熱可塑性義歯用の出発材料の製造のために、特に補綴物(繊維強化されていてよい)、人工歯、クラウン又はブリッジ(繊維強化されていてよい)の製造のために並びにそれら用の出発材料の製造のために環状オリゴマーのブチレンテレフタレートを使用することによって解決される。
【0009】
本発明の対象は、熱可塑性義歯材料を“希液性”状態で(主に高温でも)加工するために有用な代替物である。は非常に広範囲に回避される。
【0010】
また本発明は、
CBT(商標) 50〜99.9質量%
ポリカプロラクトン 0〜20質量%
開始剤成分 0.001〜2質量%
無機充填剤 0〜50質量%
有機充填剤 0〜50質量%
を含有する熱可塑性義歯の製造用の出発材料にも関する。
【0011】
付加的に、更なる通常の添加剤、例えば着色剤又は顔料が含まれていてよい。開始剤としては、主として有機スズ化合物又はチタン酸塩化合物が該当する。
【0012】
歯科工学で使用される慣用の熱可塑性材料と比較した材料工学的利点は、剛性と衝撃強さの極めて均衡の取れた調節可能性である。こうして、高い衝撃強さを有する比較的硬い成形体を作製することができる。
【0013】
また本発明は、熱可塑性義歯、特に補綴歯の製造方法において、以下の工程
・ 作製されるべき部材のワックスでのモデリング;
・ ワックスモデルの埋没;
・ 埋没材の硬化;
・ ワックスの除去;
・ 生ずる空洞内への液状のCBT(商標)混合物の導入;
・ CBT(商標)混合物の硬化
を有する方法に関する。
【0014】
相応して、例えば歯を慣用の手順に従ってワックス中に配置し、次いで歯を埋没材で包囲した後にワックスを除去し、そして相応の空洞を液状のCBT(商標)混合物で置き換えて、これを硬化させる。
【実施例】
【0015】
以下の
CBT(商標) 99.7質量%
相応の開始剤成分 0.3%
を含有する組成物を、約170℃で板状にキャストし、そして約200℃で硬化させる。
【0016】
以下の特性
曲げ強さ(ISO1567) 85MPa
曲げ弾性率(ISO1567) 2500MPa
衝撃強さ(ISO1567、訂正1) 1.5MPa
を有するPBTが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性義歯の製造のための又は熱可塑性義歯用の出発材料の製造のための、環状オリゴマーのブチレンテレフタレートの使用。
【請求項2】
補綴物、人工歯、クラウン又はブリッジの製造のための、請求項1記載の使用。
【請求項3】
熱可塑性義歯の製造用の出発材料であって、
環状オリゴマーのブチレンテレフタレート 50〜99.9質量%
ポリカプロラクトン 0〜20質量%
開始剤成分 0.001〜2質量%
無機充填剤 0〜50質量%
有機充填剤 0〜50質量%
を含有する材料。
【請求項4】
熱可塑性義歯の製造方法において、以下の工程
・ 作製されるべき部材のワックスでのモデリング;
・ ワックスモデルの埋没;
・ 埋没材の硬化;
・ ワックスの除去;
・ 得られた空洞内への液状の環状オリゴマーのブチレンテレフタレート混合物の導入;
・ 環状オリゴマーのブチレンテレフタレート混合物の硬化
を有する方法。
【請求項5】
補綴歯の製造のための、請求項4記載の方法。

【公開番号】特開2006−298920(P2006−298920A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114718(P2006−114718)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(399011900)ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (56)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH 
【Fターム(参考)】