説明

環状カーボネート類の製造方法

有機溶剤、合成繊維加工剤、医薬品原料、リチウム電池用電解液溶媒、アルキレングリコールやジアルキルカーボネート合成の中間体等の種々の用途に用いることができ、触媒寿命や設備面で有利な製法とすることができる環状カーボネート類の製造方法を提供する。エポキシドと二酸化炭素とを反応させる工程を含んでなる環状カーボネート類の製造方法であって、該反応工程は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物との共存下に反応させてなる環状カーボネート類の製造方法、及び、上記環状カーボネート類の製造方法により得られる環状カーボネートであって、該環状カーボネートは、ハロゲン濃度が1ppm以下のものである環状カーボネート類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状カーボネート類の製造方法及びその製造方法に用いる触媒に関する。より詳しくは、有機溶剤、合成繊維加工剤、医薬品原料、リチウム電池用電解液溶媒、アルキレングリコールやジアルキルカーボネート合成の中間体等として有用な環状カーボネートを、エポキシドと二酸化炭素から製造する方法及びその製造方法に用いる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
環状カーボネートは、従来よりエポキシドと二酸化炭素を均一系触媒の存在下、適当な加圧条件のもとで反応させることにより製造されている。このような環状カーボネートは、有機溶剤、合成繊維加工剤、医薬品原料、リチウム電池用電解液溶媒、更にアルキレングリコール及びジアルキルカーボネート合成の中間体等として広い用途に使用される重要な化合物の一つである。
【0003】
従来の均一系触媒を用いる製造方法としては、例えばアルカリ金属等のハロゲン化物(例えば、特許文献1参照。)や第4級アンモニウム塩やホスホニウム塩等のオニウム塩(例えば、特許文献2参照。)を用いることが古くから知られており、工業的に用いられている。また最近では、アルカリ金属ハロゲン化物やフッ化アルキルホスホニウム塩等の存在下、超臨界状態の二酸化炭素を反応原料のみならず反応媒体として利用した環状カーボネートの製造方法が提案されている(例えば、特許文献3及び4参照。)。更に、添加物としてクラウンエーテルを加えて、アルキレンオキシドと二酸化炭素をクラウンエーテルとアルカリ金属ハライドからなる触媒の存在下で反応させる方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0004】
しかしながら、これらの均一触媒を用いる方法では反応混合物と触媒の分離が必要となり、工程が複雑となる。また、アルカリ金属ハライド、4級アンモニウムハライド、ホスホニウムハライド等ハロゲン元素を含む均一触媒を用いる方法では、反応温度が比較的高いので、反応系中の有機物とハロゲン元素が反応し、BrCHCHOH、BrCHCHOCHCHOH、BrCHCHOCHCH、BrCHCHOCHCHBr等の有機ハロゲン化物が生成するおそれがある。このような有機ハロゲン化物は、蒸留により取り除くことが難しいため、ハイドロタルサイト等で吸着除去する有機ハロゲン化物の除去方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、この方法では、ハイドロタルサイト等による除去設備が必要となるため、副生する有機ハロゲン化物を簡便に抑制する工夫の余地があった。
また、クラウンエーテル等の環状エーテル等の添加物を用いる場合、添加物が有機物であるため分解等が起こり、触媒の寿命が充分なものとならない。
このように、均一系触媒を使用する場合には、通常は反応混合物と触媒との蒸留等による分離操作が必要であり、製造工程が複雑となるばかりでなく、分離工程中の触媒の分解や副生成物の生成といったことが生じることから、これらの点を改善することが求められていた。
【0005】
一方、触媒分離プロセスの簡素化を目的とした固体触媒の利用も提案されており、例えば、陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂(例えば、特許文献7、8及び9参照。)、ハイドロタルサイト等の塩基性層状化合物(例えば、特許文献10参照。)、希土類化合物(例えば、特許文献11参照。)、タングステン酸化物又はモリブデン酸化物を主体とするヘテロポリ酸(例えば、特許文献12参照。)等の固体触媒を用いる製造方法が開示されている。また、3−八面体型スメクタイト及び/又はアルカリ金属包含3−八面体型スメクタイトの少なくとも一種を触媒として用いるアルキレンカーボネートの製造方法が開示されている(例えば、特許文献13参照。)。
【0006】
しかしながら、多種の用途に適用できる環状カーボネート類の製造方法において、触媒寿命を充分なものとしたり、また、生成物の分離精製工程等における設備を簡略化したりすることにより設備面で有利な製法とすることができ、また、各種の用途に好適なものとすることができる品質を有する環状カーボネート類の製造方法とするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特公昭63−17072号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特開昭55−145623号公報(第1頁)
【特許文献3】特開平11−335372号公報(第2頁)
【特許文献4】特開2003−251189号公報(第2、6頁)
【特許文献5】特開昭56−128778号公報(第1−2頁)
【特許文献6】米国特許第5405977号明細書(第7−8頁)
【特許文献7】特開平3−120270号公報(第1頁)
【特許文献8】特開平7−206846号公報(第2頁)
【特許文献9】特開平7−206848号公報(第2頁)
【特許文献10】特開平11−226413号公報(第2頁)
【特許文献11】特開2002−363177号公報(第2頁)
【特許文献12】特開平7−206847号公報(第2頁)
【特許文献13】特開2003−96074号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、有機溶剤、合成繊維加工剤、医薬品原料、リチウム電池用電解液溶媒、アルキレングリコールやジアルキルカーボネート合成の中間体等の種々の用途に用いることができ、触媒寿命や設備面で有利な製法とすることができる環状カーボネート類の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、環状カーボネート類の製造方法について種々検討したところ、均一系又は不均一系触媒の存在下でエポキシドと二酸化炭素から環状カーボネートを合成することが製造するうえで効率的であることに着目し、触媒として、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物の共存下に反応させてなることにより、非プロトン性極性溶媒等を添加しなくても、高収率、高選択率で環状カーボネート類を製造できることを見いだした。このような反応工程としては、(1)アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物とを含有する酸化物触媒の存在下に反応させてなる工程、及び/又は、(2)アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素がアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、該アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、反応系中に溶解して存在し、金属酸化物と接触する形態で反応させてなる工程とすることが好ましい。
【0009】
上記(1)の工程における酸化物触媒としては、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素は金属酸化物上に担持されたり、複合酸化物であることが好ましい。その中でも、アルカリ金属元素とP、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む酸化物とすることが好適であり、このような触媒は熱安定性に優れ、分離、回収が容易であることから、高効率に環状カーボネートを得ることができることを見出した。
上記(2)の工程においては、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、エポキシドと二酸化炭素とを含む反応液中に溶解して存在し、該反応液を金属酸化物と接触させる形態で反応することが好ましい。アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩としては、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化物であることが好適である。本発明者等はまた、金属酸化物が非共存下の時と比べて、触媒活性および反応速度が向上し、特に従来技術より温和な反応温度で収率が向上することを見いだした。さらには温和な反応温度が可能になることにより、副反応が抑制され、ハロゲンを含む副生成物が充分に抑制されることとなる。
また、これらの触媒を用いる反応においては、非プロトン性極性溶媒等の添加物を必ずしも必要とせず、添加がなくても、高収率、高選択率で環状カーボネートを与えることも見出し、上記課題を見事に解決ができることに想到した。
【0010】
またアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化物ではない無機塩を触媒として用いると、反応装置の腐食を充分に抑制し、実質的にハロゲンを含む副生成物が生じることがなく、生成物中にハロゲン元素が混入することを充分に避けることができることを見出した。
また、反応温度を温和にできる反応方法やハロゲンを含有しない反応方法を使用することは、均一系触媒、不均一系触媒を問わず、製品である環状カーボネートへのハロゲンの混入を避ける上で極めて好ましく、例えば、電解質溶媒用途で問題となりうる環状カーボネートヘのハロゲンの混入を充分に避けることができ、環境面でも非常に有利な製造方法となることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち本発明は、エポキシドと二酸化炭素とを反応させる工程を含んでなる環状カーボネート類の製造方法であって、該反応工程は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物との共存下に反応させてなる環状カーボネート類の製造方法である。上記反応工程は、(1)アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物とを含有する酸化物触媒の存在下に反応させてなる工程、及び/又は、(2)アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素がアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、該アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、反応系中に溶解して存在し、金属酸化物と接触する形態で反応させてなる工程とすることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化物ではない無機塩の存在下に反応させてなる環状カーボネートの製造方法でもある。
本発明はさらに、上記(1)、(2)の反応工程、又は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化物ではない無機塩の触媒の存在下に反応させてなる反応工程のいずれかにより製造されるハロゲン濃度が1ppm以下である環状カーボネート類でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明におけるエポキシドとしては、炭素原子2つと酸素原子1つからなる3員環構造を少なくとも1つ含む、いわゆるエポキシ系化合物であればよく、例えば、下記一般式(1);
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数15以下のアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリールアルキル基を表す。また、R〜Rは、それぞれ結合していてもよい。)で表される化合物であることが好ましい。
上記置換基としては、ハロゲン原子、ジアルキル基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基等が好適である。
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ビニルエチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が好適である。
【0016】
本発明において製造される環状カーボネート類としては、原料であるエポキシドにより適宜設定されることになるが、下記一般式(2);
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R、R、R及びRは、上記一般式(1)と同様である。)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、スチレンカーボネート等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、触媒としてアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物との共存下にて、下記反応式(1)で表されるような反応により、環状カーボネート類を製造することとなる。なお、R、R、R及びRは、上記一般式(1)と同様である。
【0020】
【化3】

【0021】
バッチ反応の場合の仕込み時、又は、流通反応の場合の入り口における上記エポキシドと二酸化炭素とのモル比(エポキシド/二酸化炭素)としては、下限値が1/20であることが好ましい。1/20未満であると、エポキシドの転化率と環状カーボネートの生成選択率は向上するが、未反応の二酸化炭素の回収コストが大きくなるおそれがある。より好ましくは、1/10であり、更に好ましくは、1/5である。上限値としては、1/1であることが好ましい。1/1を超えると、環状カーボネートの選択率が低下したり、エポキシドの転化率が低下し、未反応のエポキシドの煩雑な回収工程が必要になる場合がある。より好ましくは、1/1.05であり、更に好ましくは、1/1.1である。また、好ましい範囲としては、1/20〜1/1であり、より好ましくは、1/10〜1/1.05であり、更に好ましくは、1/5〜1/1.1である。
【0022】
本発明においてはエポキシドと二酸化炭素から環状カーボネートを合成するにあたり、触媒として、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物との共存下に反応させるものである。上記金属酸化物は、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物であることが好ましい。より好ましくは、ケイ素、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物であり、さらに好ましくは、ケイ素原子を含む酸化物であり、最も好ましくは、二酸化ケイ素(シリカ)である。このような金属酸化物を、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と共に用いることで、金属酸化物が共存しないときと比べて、触媒活性及び反応速度が向上し、さらには低温での収率が向上する。
【0023】
本発明の反応工程においては、(1)アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物とを含有する酸化物触媒の存在下に反応させてなる工程、及び/又は、(2)アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は反応系中に溶解して存在し、金属酸化物と接触する形態で反応させてなる工程とすることが好ましい。
【0024】
上記(1)の工程としては、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物とによって構成される酸化物触媒が存在する形態であればよく、酸化物触媒のほかに酸化物触媒を構成することにはならないアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素と金属酸化物が反応系中に存在していてもよい。
上記(2)の工程としては、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩と金属酸化物とが反応系中で接触する形態であればよく、例えば、アルカリ金属塩は反応系中に溶解して存在し、金属酸化物は反応系中に分散された形態で存在する形態等が挙げられる。また、上記(2)の工程としては、例えば、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、エポキシドと二酸化炭素とを含む反応液中に溶解して存在し、該反応液を固定床流通反応器に充填された金属酸化物と接触させてなる形態等が好ましい。また、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、エポキシドと二酸化炭素とを含む反応液中に溶解して存在し、バッチ反応器の該反応液中に分散された形態で存在する金属酸化物と接触する形態も好ましい形態の一つである。
なお、上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒であることが好ましい。
【0025】
上記(1)の工程における酸化物触媒としては、これらの元素を含有する固体酸化物であることが好ましく、例えば、複合酸化物や、金属酸化物にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が担持された酸化物等であることが好適である。
このような酸化物触媒は、ケイ素を含有することが好ましい。この場合において、ケイ素は、上記金属酸化物の主成分として含まれることが好適である。酸化物触媒としては、二酸化ケイ素(シリカ)にアルカリ金属塩を担持して焼成することによって得られる固体酸化物等であることが好適であり、酸化物触媒を固体触媒として用いることが好ましい。より好ましくは、アルカリ金属元素とシリカを必須成分として含有するシリカ系複合酸化物等である。
このように、エポキシドと二酸化炭素とを反応させる工程を含んでなる環状カーボネート類の製造方法であって、上記反応工程は、アルカリ金属元素とケイ素とを含有する酸化物触媒の存在下に反応させてなるものである環状カーボネート類の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0026】
上記酸化物触媒としては、例えば、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、金属酸化物との金属元素の組成比が原子比で、1/100〜1/1であることが好ましく、より好ましくは1/50〜1/1.5であり、さらに好ましくは1/30〜1/2である。このような酸化物触媒としては、シリカ系複合酸化物が好適であり、また、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素としては、アルカリ金属元素が好適である。この場合、アルカリ金属元素とケイ素元素の原子比(アルカリ金属原子/ケイ素原子)が上記組成比となるようにすることが好ましい。
上記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素としては、アルカリ金属元素が好ましく、より好ましくはLi、Na、K、Rb、Csであり、これらの元素を複数含有していてもよい。
【0027】
上記酸化物触媒としては、更に、P、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むものであることが好ましい。より好ましくは、Pを含むものである。すなわちアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物とを含有する酸化物触媒であって、更に、P、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むものであることが好ましい。
上記酸化物触媒は、また、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を金属酸化物に担持してなる酸化物触媒であることが好ましい。
【0028】
本発明により好ましく用いられる酸化物触媒は、金属酸化物に、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とP、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素とを担持してなるものである。
このような酸化物触媒としては、金属酸化物にアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の水溶液と、P、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素の水溶液とを担持してなるものであることが好ましく、金属酸化物にアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる1種以上の金属塩ならびに、P、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上のオキソ酸及び/又はオキソ酸塩等の水溶液を含浸し、乾燥後、空気中で焼成することにより得られるものであることが好ましい。この場合において、酸化物触媒としては、アルカリ金属元素とケイ素の酸化物とを含むものであることが好ましい。このように、上記酸化物触媒が、ケイ素の酸化物に、アルカリ金属元素と、P、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素とを担持してなるものである形態は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0029】
上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩としては、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩等を用いることができる。
アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物とを含有する酸化物触媒に添加されるP、As、Sb及びBiの上記オキソ酸及び/又はオキソ酸塩としては、Pのオキソ酸及び/又はオキソ酸塩が好ましく、具体的には、オルトリン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸セシウム、リン酸水素セシウム、リン酸二水素セシウム等を用いることが好ましい。なお、上記酸化物触媒としては、アルカリ金属とケイ素とを含有するものが好適である。
【0030】
本発明の酸化物触媒はまた、更に任意の担体に担持したものであってもよい。担体としては、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、シリカ−アルミナ、ジルコニア等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上記酸化物触媒としては、比表面積が100m/g以下であることが好ましい。100m/gを超えると、触媒の活性成分がカーボネート液相中に溶出するため触媒寿命が短くなる場合や、充分な収率及び選択率で環状カーボネートを得られないおそれがある。より好ましくは、50m/g以下であり、更に好ましくは、20m/g以下であり、更に好ましくは、15m/g以下であり、特に好ましくは、10m/g以下である。
【0031】
上記金属酸化物としては、例えば、下記一般式(3);
(3)
(式中、Xは、Si、Al、Zn及びZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。Mは、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。Yは、P、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。a、b及びcは各元素の原子比を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記a、b及びcとしては、a=0.01〜1、b=0〜1であることが好ましい。より好ましくは、a=0.02〜0.66、b=0.01〜0.66であり、更に好ましくは、a=0.03〜0.5、b=0.03〜0.5である。またcは、a及びbの値と各構成元素の結合状態によって定まる数値である。上記金属酸化物として最も好ましい形態はXがSiのもの及び/又はYがPのものである。なお、上記金属酸化物は、上記(1)及び/又は(2)の工程において好適に用いられるものであり、金属酸化物触媒として機能することが好ましい。
【0032】
本発明の反応工程においては、(2)アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素がアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、該アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、反応系中に溶解して存在し、金属酸化物と接触する形態で反応させてなる工程とすることが好ましい。上記(2)の工程におけるアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩としては、(A)ハロゲン元素を含まない塩、及び/又は、(B)ハロゲン元素を含む塩であることが好ましい。
(A)ハロゲン元素を含まない塩としては、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、バナジン酸塩、マンガン酸塩などの無機塩、ギ酸塩、酢酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、チオシアン酸塩、シアン酸塩等の有機酸塩が好ましく、より好ましくは、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、バナジン酸塩、マンガン酸塩などの無機塩であり、更に好ましくは、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩であり、最も好ましくは、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩である。
【0033】
(B)ハロゲン元素を含む塩としては、フッ化物、塩化物、臭化物、及び、ヨウ化物などのハロゲン化物との塩が好ましい。
このように、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が、(A)リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩及び炭酸水素塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩を含む形態、及び/又は、(B)フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化物である形態は、本発明の好ましい形態の一つである。
また、上記(2)の工程におけるアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属塩が好ましい。このようなアルカリ金属塩のカチオン成分としては、カリウム及び/又はセシウム成分が特に好ましい。
【0034】
本発明において用いられるアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、塩の形態であることから、カチオンとアニオンとから構成されることになる。上述したような形態である場合、(A)では、アニオン部位が、PO3−、HPO、CO2−、HCOが好ましく、(B)では、アニオン部位が、F、Cl、Br、Iであることが好適であり、また、カチオン部位としては、K、Csであることが好ましい。このようなカチオンとアニオンの組み合わせとしては、上述したカチオン及びアニオンから適宜選択すればよいが、中でもアルカリ金属塩としては、KCO、CsCO、KPO、CsPO、KIが好ましい。より好ましくは、CsCO、KIである。
またこれらのアルカリ金属塩は、反応系中に溶解して反応が進行するものであるが、必ずしも全てが溶解している必要性はない。
また上記(2)の工程においてアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩と金属酸化物と共に、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩以外のカーボネート化活性を有する触媒が共存することも好ましい形態である。他のカーボネート触媒としては、例えば、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0035】
上記(2)の工程におけるアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩と金属酸化物と接触する形態としては、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は反応系中(反応溶液中)に溶解して存在し、金属酸化物は反応系中に分散された形態で存存する形態、又は、溶解したアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属の少なくとも一部が金属酸化物の表面に吸着されて、金属酸化物が反応系中に分散されて存在する形態が好ましい。この際、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩のうち、金属酸化物に吸着していないものは、反応系中において金属酸化物と別々に存在しており、金属酸化物上に担持される形態や複合酸化物である形態とは異なるものである。例えば、バッチ式反応器や流動床式反応器においては、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は反応系中に溶解して存在し、金属酸化物は反応系中に分散された形態で存在する。また、固定床反応器においては、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は反応液に溶解した状態で、反応器に固定された金属酸化物と接触するような形態となる。アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が金属酸化物と接触する形態としては、これらの形態に限定されるものではない。このように、上記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、反応系中に溶解して存在し、金属酸化物と接触する形態で反応させるものである環状カーボネート類の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0036】
(2)の工程において使用される金属酸化物としては、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物であることが好ましい。より好ましくは、ケイ素、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物であり、更に好ましくはケイ素原子を含む酸化物であり、最も好ましくは、二酸化ケイ素(シリカ)である。
【0037】
本発明においては、上述した中でもアルカリ金属塩としてKPO及びCsCOを用い、該アルカリ金属塩が反応系中に溶解した状態で、金属酸化物としてのシリカと接触させる形態で反応させることにより、エポキシドと二酸化炭素から環状カーボネートを好適に合成することができる。また、アルカリ金属塩としてKIを用い、金属酸化物としてシリカを用いることも好ましい。このように、ノンハロゲン系アルカリ金属塩均一系触媒及び/又はハロゲン系アルカリ金属塩均一系触媒が反応系中に溶解して存在し、シリカと接触させる形態で反応させることにより、シリカが非共存下の時と比べて、反応速度、触媒の活性及び低い反応温度条件での収率を向上させることができる。
【0038】
本発明における反応様式としては、攪拌式、固定床式等の一般に用いられる手法を使用することができ、バッチ式、セミバッチ式、連続流通式等の何れの方法でも実施可能である。特に上記(2)の形態における反応様式としては、連続流通反応装置の反応管に金属酸化物を充填し、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が溶解した原料液を流通させる形態をとることが好適である。中でも、上記(2)の形態における反応様式としては、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、エポキシドと二酸化炭素とを含む反応液に溶解して存在し、該反応液を固定床流通反応器に充填された金属酸化物に接触させる形態が好ましい。
上記バッチ式で製造する場合においては、例えば、次のようにして行われる。攪拌装置を具備したオートクレーブにエポキシド、触媒及び金属酸化物を仕込んだ後、二酸化炭素を充填し密封する。その後、オートクレーブ内を撹拌しながら所定温度まで加熱し、二酸化炭素を更に充填することにより内圧を所定圧に調整し、所定時間反応させた後、生成する環状カーボネートを所望の手段で分離する。
【0039】
上記反応温度としては、特に限定されないが、室温(20℃)〜300℃であることが好ましい。より好ましくは、20〜250℃であり、更に好ましくは、80〜230℃であり、特に好ましくは、100〜200℃である。80〜160℃の低温領域では、金属酸化物が共存することにより収率が向上する効果が顕著であり、反応温度を低くすることができるので、KI等のハロゲン含有触媒を用いた場合にでも、有機ハロゲン化物の生成を充分に抑制することができる。より好ましくは、100〜150℃である。
また反応圧力としては特に制限がなく、反応に使用する耐圧装置の設備コスト等によって定められるが、好ましくは、0.1〜50MPaであり、より好ましくは1〜30MPaである。
【0040】
上記反応条件において上述の反応工程が行われることにより、本発明における作用効果を発揮し、高収率、高選択率で環状カーボネート類を得ることができる。反応条件としては、上記範囲であればよいが、二酸化炭素の亜臨界又は超臨界条件下で行われることがより好ましい。超臨界条件とは、物質固有の臨界温度及び臨界圧力を超えた領域をいい、二酸化炭素においては、温度が31℃以上であり、圧力が7.3MPa以上の条件を指す。また、亜臨界条件とは、臨界点近傍の臨界圧力より低い条件領域(亜臨界条件)をいい、具体的には、温度が30℃以上で圧力が5MPa以上の領域を指す。これら亜臨界又は超臨界条件の二酸化炭素は気体と液体の中間的な性質をもち、通常では認められない様々な特徴を有する。
【0041】
上記触媒の使用量としては、用いる反応器の形態、原料であるエポキシドの種類、反応温度、反応圧力及び所望の生産性等諸条件により適宜設定することができ、例えば、バッチ式反応器を用いて、上記(1)の反応工程を実施する場合には、触媒量は原料として用いるエポキシドに対する質量比(原料エポキシド/触媒)で、1〜100であることが好ましい。1未満であると、収率は向上するが、充分効率的に触媒を作用させることができないおそれがあり、100を超えると、反応に要する時間が長くなって生産性が低下するおそれがある。より好ましくは、2〜50、更に好ましくは、3〜30である。バッチ反応器を用いて上記(2)の反応工程を実施する場合には、触媒として用いるアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の使用量は原料として用いるエポキシドに対する質量比(原料エポキシド/触媒)で、1〜1000であることが好ましい。1未満であると、収率は向上するが、充分効率的に触媒を作用させることができないおそれがあり、1000を超えると、反応に要する時間が長くなって生産性が低下するおそれがある。より好ましくは、2〜800であり、更に好ましくは、3〜500である。また、金属酸化物の使用量は、原料エポキシドの量に対する質量比(原料エポキシド/金属酸化物)で、1〜200であることが好ましい。より好ましくは、1.2〜150であり、更に好ましくは、1.5〜100である。また、上記(2)の反応工程を金属酸化物を充填した固定床流通反応器で実施する場合には、触媒として用いるアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の使用量は原料として用いるエポキシドに対する質量比(原料エポキシド/触媒)で、1〜1000であることが好ましい。より好ましくは、2〜800であり、更に好ましくは、3〜500である。また、金属酸化物の使用量は、原料エポキシドに対する質量比で表す空間速度(WHSV、反応器入り口におけるエポキシドの流量(kg/hr)/金属酸化物(kg))では0.1h−1〜10h−1であることが好ましい。より好ましくは、0.15h−1〜8h−1であり、更に好ましくは、0.2h−1〜5h−1である。アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、原料エポキシドと共に固定床反応器に供せられ、金属酸化物と接触して反応が進行することとなる。本発明においては、生成した環状カーボネートの一部を反応器入り口にリサイクルすることが好ましい実施形態の一つである。この場合、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、リサイクルされるカーボネートと共に回収されて、反応器入り口にリサイクルされることになる。
【0042】
上記反応時間としては、バッチ式反応器を用いて実施する場合には、0.1〜30時間であることが好ましい。より好ましくは、1〜20時間である。また、固定床式等の反応器を用いて連続流通により製造する場合に、該反応器内における反応液の平均滞留時間としては、3分〜2時間であることが好ましい。より好ましくは、5分〜1時間である。
【0043】
上記金属酸化物の形態としては、特に制限はないが、通常、微粉状、平均粒径0.1〜10mm程度の球形、円柱状又はリング状の粒子であることが好適である。触媒の前処理は特に必要としないが、好ましくは、反応前に室温〜600℃、より好ましくは、200〜500℃で、真空排気又はヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガス気流中、酸素気流中又は空気中で焼成することが好適であり、このような触媒の前処理により、環状カーボネートの収率を向上させることができる。
【0044】
上記反応においては、特に溶媒等の補助添加物を必要とせず、溶媒がない場合でも高収率、高選択率で環状カーボネート類を得ることができる。また、溶媒等の添加物を加えることにより環状カーボネートの収率、選択率を向上させることもできる。このような添加物としては、反応に影響を与えない溶媒が好ましく、例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等のいわゆる非プロトン性極性溶媒等が好ましい。より好ましくは環状カーボネートであり、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、スチレンカーボネート等が好ましい。反応系に予め生成物である環状カーボネートを添加することによって、環状カーボネートの収率、選択率を向上させることができる。この際、生成したカーボネートの一部を溶媒として使用する形態も好ましい。なお、実施例においては安全性及び分析容易性のためにエチレンカーボネートを溶媒として用いているが、実施においては溶媒を必ずしも用いる必要はない。なお、上記反応条件等に用いられる触媒としては、上述の触媒であればよい。
【0045】
本発明はまた、アルカリ金属元素とケイ素とを含有し、上述の環状カーボネートの製造方法に用いる酸化物触媒でもある。好ましくは、アルカリ金属とケイ素と、P、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素とを含有する酸化物である。より好ましくは、Pを含有する酸化物である。このような酸化物触媒は、プロトン性溶媒や非プロトン性極性溶媒等の添加を必要としないで高収率、高選択率で環状カーボネートを与えることができ、熱安定性に優れ、成分にハロゲンを含まず、かつ反応後の触媒分離が容易なものである。また、調製方法も簡便であり、例えば上述のように、触媒に含有させることになる元素を含んだ水溶液をシリカゲル等に含浸して蒸発乾固し、これを焼成するにより得ることが可能である。従来の環状カーボネートの製造に用いられる触媒としては、水熱合成法等を用いて調製する場合があり、この場合、調製操作が煩雑となるが、本発明の触媒はこの点においても有利なものである。また、このような触媒を本発明の製造方法に用いることにより、工業的に有利で、かつ環境的にも有利な製造方法とすることができることになる。このように、上記酸化物触媒を、上述したエポキシドと二酸化炭素とを反応させる工程を含んでなる環状カーボネート類の製造に使用する方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0046】
本発明は更に、エポキシドと二酸化炭素とを反応させる工程を含んでなる環状カーボネート類の製造方法であって、上記反応工程は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化物ではないアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の存在下に反応させてなる環状カーボネート類の製造方法でもある。すなわち、上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩とは、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化物ではないものである。
【0047】
上記反応工程は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化合物ではない無機塩の存在下に反応させてなる製造方法であることが好ましい。
上記無機塩は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化合物ではないものである。このため、生成物中に実質的にハロゲンが混入せず、反応装置の腐食が起こらないという利点が得られることとなる。
【0048】
上記無機塩としては、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を含有する無機塩であることが好ましい。すなわち、ハロゲン化物(ハライド)ではないアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の無機塩を触媒として用いることが好適である。このような無機塩とは、無機塩のカチオンがアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属であって、無機塩のアニオンがハロゲン元素でないものであり、対アニオンとしてハロゲン元素以外のアニオンを持つアルカリ金属塩(MA:M=アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、A=ハロゲン元素を含まない無機酸のアニオン部)で表されるものである。また、無機塩とは、無機酸の塩形態のものであり、硫酸、硝酸等のように炭素原子を含まない酸(ただし炭酸は無機酸に含む。)の塩形態のものであって、炭素原子を主体として構成される有機酸の塩に対する用語である。ハロゲン化物(ハライド)ではない無機塩とは、無機塩の中でも、化学構造の中に実質上ハロゲン元素を含まないものを意味するが、ハロゲン元素を不純物として含む無機塩をも排除するものではない。したがって無機塩としては、本発明の作用効果を奏することになる限り、微量のハロゲン元素が不純物として含まれるものであってもよく、例えば、ハロゲン元素を500ppm以下含むものであってもよい。
【0049】
上記アニオンとしては、ハロゲン元素でないものであれば、特に限定されるものではないが、上記無機塩が、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩及び水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩を含むものであることが好ましい。すなわち、上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩及び水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩を含むものである形態は、本発明の好ましい形態の一つである。
上記無機塩としては、より好ましくは、リン酸塩、リン酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩であり、更に好ましくは、リン酸塩、炭酸塩であり、特に好ましくは、炭酸塩である。
上記無機塩としては、更に、タングステン酸塩、バナジン酸塩、マンガン酸塩、硫酸塩等も好適に用いることができる。
上記無機塩のアニオンとして具体的には、CO3−、HCO−、PO3−、HPO3−、HPO、NO、WO2−、VO、SO2−、OH及びMoO2−であることが好ましい。このように、無機塩のアニオンとして、ハロゲン以外の元素を用いることで、実質的にハライドフリーのカーボネートを合成できるという利点がある。
【0050】
上記無機塩のカチオン成分としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs及びFr)及びアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRa)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素が好ましい。これらの中でも、より好ましくは、Li、Na、K、Rb、Csであり、更に好ましくは、K及びCsであり、特に好ましくは、Csである。このように、金属種としてはCsが最も優れており、次いで、Kが優れたものであり、続いて、Na、Liの順に活性が高いものとなる。上記無機塩が、カリウム及び/又はセシウム塩である形態は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0051】
上記無機塩は、上述したカチオン成分とアニオン成分とを組み合わせたものである。無機塩には複数のカチオン成分及びアニオン成分が含まれていてもよく、また、1種のカチオン成分及びアニオン成分が含まれるものであってもよい。またこれらの無機塩は、結晶水を含んでいてもかまわない。
上記無機塩としてはLiCO、NaCO、KCO、RbCO、CsCO、MgCO、CaCO等のアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸塩、LiHCO、NaHCO、KHCO、RbHCO、CsHCO、Mg(HCO、Ca(HCO等のアルカリ又はアルカリ土類炭酸水素塩、LiPO、NaPO、KPO、RbPO、CsPO、Mg(PO、Ca(PO等のアルカリ又はアルカリ土類金属リン酸塩、LiHPO、NaHPO、KHPO、RbHPO、CsHPO、MgHPO、CaHPO等のアルカリ又はアルカリ土類リン酸水素塩、LiHPO、NaHPO、KHPO、RbHPO、CsHPO、Mg(HPO、Ca(HPO等のアルカリ又はアルカリ土類リン酸二水素塩等が好ましい。より好ましくはNaCO、KCO、CsCO、NaPO、KPO、CsPOであり、さらに好ましくはCsCO、CsPOである。
上記無機塩は市販のものを使用することができる。
また上記無機塩は反応の際は反応液に溶解して、反応が進行することとなる。
上記無機触媒を本発明の製造方法に用いる場合、反応圧力、反応溶媒等については、アルカリ金属元素と金属酸化物とからなる触媒を用いる場合と同様である。この場合において、上述した触媒の使用量としては、無機塩の質量によって設定することとなる。
【0052】
上記無機塩の存在下に反応させてなる反応工程における反応温度としては、特に限定されないが、室温(20℃)〜300℃であることが好ましい。より好ましくは、20〜250℃であり、更に好ましくは、80〜230℃であり、特に好ましくは100〜200℃である。
無機塩の使用量としては、例えば、バッチ反応器を用いて実施する場合には、触媒量は原料として用いるエポキシドの質量比(原料エポキシド/触媒)で、1〜1000であることが好ましい。1未満であると収率は向上するが、充分効率的に触媒を作用させることができないおそれがあり、1000を超えると、反応に要する時間が長くなって生産性が低下するおそれがある。より好ましくは、2〜800、更に好ましくは3〜500である。上記触媒量としては、無機塩の質量によって設定することとなる。
【0053】
本発明は更に、上記環状カーボネート類の製造方法により得られる環状カーボネートであって、上記環状カーボネートは、ハロゲン濃度が1ppm以下のものである環状カーボネート類でもある。環状カーボネートが、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化合物ではない無機塩の存在下に反応させてなる反応工程を含む製造方法により得られる場合、反応成分にハロゲンを実質的に含まないことから、得られる環状カーボネート類も、ハロゲン濃度を1ppm以下とすることができ、いわゆるハロゲンフリーなものとすることができる。また、環状カーボネートが、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物との共存下に反応させてなる反応工程を含む製造方法により得られる場合も、シリカ等の金属酸化物の添加により、反応温度を低くすることができ、その結果ハロゲンを含む副反応物の生成が抑制されるため、ハロゲン濃度が低い環状カーボネートが得られることとなる。
【0054】
上記環状カーボネート類において、ハロゲン濃度が1ppmを超えると、例えば、リチウム電池用の電解質用途等に用いる場合にリチウム電池の性能低下等の問題が生じるおそれがあり、また、ハロゲンが装置の腐蝕の原因となる。ハロゲン濃度としてより好ましくは、0.5ppm以下であり、更に好ましくは、0.1ppm以下である。
上記ハロゲンの測定方法は、イオンクロマトグラフにより測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明の環状カーボネート類の製造方法は、上述の構成よりなり、有機溶剤、合成繊維化工剤、医薬品原料、リチウム電池用電解液溶媒、さらにはアルキレングリコール及びジアルキルカーボネート合成の中間体として有用な環状カーボネートを、エポキシドと二酸化炭素から極めて高効率、高選択率で得ることができる。また、本発明の製造方法は非プロトン性極性溶媒等の添加を必要とせず、高収率、高選択率で環状カーボネートを与えるものである。さらにはハロゲン成分を実質的に含まない触媒を使用することにより、均一系触媒、不均一系触媒を問わず、製品である環状カーボネートヘのハロゲンの混入を実質的に避けることができ、装置の腐食を充分に抑えることもできる。また、ハロゲンを含む均一触媒を用いる場合も、金属酸化物の存在下に用いることにより、従来法よりも温和な条件で反応を進行させることが可能となり、結果的にハロゲンを含む副生成物の副反応を抑制し、高収率、高選択率でかつ実質的にハロゲンを含まない環状カーボネートを与えるものである。以上のように、本発明は環境に優しく、かつ工業的に非常に有利な方法で経済的にハロゲンが含まれない環状カーボネートを製造する方法であるということができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「モル%」を意味するものとする。
【0057】
実施例1
プロピレンカーボネート(PC)合成は、以下の方法で実施した。
攪拌装置を具備した200ml容積のオートクレーブに、プロピレオンオキシド17g、触媒としてのリン酸セシウム3g、溶媒としてのエチレンカーボネート70gを仕込んだ後、二酸化炭素を充填し、密閉した。その後、オートクレーブ内を攪拌しつつ190℃まで加熱し、二酸化炭素を更に充填することにより、内圧を14MPaに調整し、6時間反応させた。冷却後、残存する二酸化炭素を放出し、反応混合物をガスクロマトグラフにより分析を行い、プロピレンカーボネートの収率を求めた。結果を表1に示す。
【0058】
実施例2〜8及び比較例1
リン酸セシウムの代わりに表1に示す無機塩を触媒として用いる以外は、実施例1と同様に合成及び分析を行った。結果を表1に示す。
【0059】
実施例9
触媒として、リン酸カリウムを3g、富士シリシア化学社製CARiACT Q−50(SiO)を5gを用いる以外は、実施例1と同様に合成及び分析を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例10
Cs−P−Si複合酸化物は、以下の方法により調製した。
CsNO(13.00g)とNHPO(6.13g)を純水(65mL)に溶解させ、この水溶液を120℃で一晩乾燥させたシリカビーズ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q−30、10−20mesh)(20g)に含浸し、かき混ぜながら90℃湯浴上で蒸発乾固した。これを120℃で一晩乾燥させた後、マッフル炉を使用して空気中で500℃、2時間焼成することにより、Cs−P−Si複合酸化物を得た。Si、Cs、Pの原子比は、Si/Cs/P=5/1/0.8であった。
【0062】
プロピレンカーボネート合成反応は以下の方法で実施した。
撹拌装置を具備した20mL容積のオートクレーブに、プロピレンオキシド(57.2mmol)及び300℃で2時間真空排気処理したCs−P−Si複合酸化物(触媒)(1g)をAr雰囲気下で仕込んだ後、二酸化炭素を充填し、密封した。その後、オートクレーブ内を撹拌しつつ200℃まで加熱し、二酸化炭素を更に充填することにより、内圧を14MPaに調整し、8時間反応させた。冷却後、残存する二酸化炭素を放出し、反応混合物をガスクロマトグラフにより分析した。反応圧力、プロピレンオキシドの転化率、プロピレンカーボネートの選択率及び収率を表2に示す。
【0063】
実施例11
内圧を8MPaに調整した他は、実施例10と同様にしてプロピレンカーボネートを合成した。結果を表2に示す。
【0064】
実施例12
Cs−Si複合酸化物は、CsNO(6.50g)を純水(33mL)に溶解させた水溶液を、120℃で一晩乾燥させたシリカビーズ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q−30、10−20mesh)(10g)に含浸した他は、実施例10と同様にして調製した。Si、Csの原子比は、Si/Cs=5/1であった。このCs−Si複合酸化物を触媒に用いた以外は、実施例11と同様にしてプロピレンカーボネートを合成した。結果を表2に示す。
【0065】
比較例2
SmOClは、SmCl・6HOを600℃で6時間空気中で焼成することにより調製した。このSmOClを触媒に用いた他は、実施例10と同様にしてプロピレンカーボネートを合成した。尚、SmOCl触媒は、圧縮、粉砕して36〜60メッシュ(250〜425μm)にした後、300℃で3時間真空排気してからAr雰囲気下でオートクレーブに仕込んだ。結果を表2に示す。
【0066】
比較例3
Mg−Al複合酸化物(Mg/Al=5)は、以下の方法で調製した。
Mg(NO・6HO(12.8g)とAl(NO・9HO(3.75g)(Mg/Al=5)を純水150mlに溶解させた(溶液A)。また、NaCO(1.0 g)を2MのNaOH水溶液(20ml)に溶解させた(溶液B)。室温で溶液Aを撹拌しながら、溶液Bをゆっくり加えた。更に、2MのNaOH水溶液を加えてpHを10に調整した。65℃で1時間熟成し、ろ過、水洗、110℃で一晩乾燥後、真空中400℃で4時間焼成することにより調製した。
このMg−Al複合酸化物を触媒に用いた他は、比較例2と同様にしてプロピレンカーボネートを合成した。尚、Mg−Al複合酸化物は、圧縮、粉砕して36〜60メッシュ(250〜425μm)にした後、300℃で3時間真空排気してからAr雰囲気下でオートクレーブに仕込んだ。結果を表2に示す。
【0067】
比較例4
MgO(宇部マテリアルズ社製、1000A、純度99.98%以上)を触媒に用いた他は、比較例2と同様にしてプロピレンカーボネートを合成した。尚、MgOは、圧縮、粉砕して36〜60メッシュ(250〜425μm)にした後、500℃で3時間真空排気してからAr雰囲気下でオートクレーブに仕込んだ。結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例13
攪拌装置を具備した20ml容積のオートクレーブに、プロピレンオキシド28.6mmol、触媒としてのヨウ化カリウム0.057mmol、溶媒としてのエチレンカーボネート30mmol、シリカ500mgをAr雰囲気下で仕込んだ後、二酸化炭素を充填し、密閉した。その後、オートクレーブ内を攪拌しつつ140℃まで加熱し、二酸化炭素を更に充填することにより、内圧を10MPaに調整し、1時間反応させた。冷却後、残存する二酸化炭素を放出し、反応混合物をガスクロマトグラフにより分析した。
反応温度を60〜140℃まで変化させ、実験を行った。
比較例5
シリカを共存させない以外は、実施例13と同様にして合成と分析を行った。
実施例13及び比較例5において得られたプロピレンカーボネートの収率を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
この実験データから算出したカーボネートの生成速度は、シリカを共存させることにより50倍となった。
【0072】
実施例14及び比較例6
反応温度を180℃とし、触媒として表4に示すものを用いる以外は、実施例13及び比較例5と同様の条件で行った。シリカ共存系(実施例14)及びシリカ非共存系(比較例6)において得られた環状カーボネートの収率を表4に示した。
【0073】
【表4】

【0074】
実施例15及び比較例7
反応温度を180℃とし、触媒として表5に示すものを用いる以外は、実施例13及び比較例5と同様の条件で合成及び分析を行った。シリカ共存系(実施例15)及びシリカ非共存系(比較例7)において得られたプロピレンカーボネートの収率を表5に示した。表5において、CsOAcは酢酸セシウムを示す。
【0075】
【表5】

【0076】
実施例16、17、比較例8及び9
触媒及び反応温度を変える以外は、上記表5における実施例15及び比較例7と同様の条件で合成と分析を行った。触媒としてKBrを用いた場合のシリカ共存系(実施例16)及びシリカ非共存系(比較例8)の結果を表6に、触媒としてRbIを用いた場合のシリカ共存系(実施例17)及びシリカ非共存系(比較例9)の結果を表7に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
【表7】

【0079】
実施例18及び比較例10
触媒として炭酸セシウムを用い、反応温度を170℃にした以外は、実施例1及び10と同様に合成と分析を行った。
シリカ共存系(実施例18)及びシリカ非共存系(比較例10)の結果を表8に示す。
【0080】
【表8】

【0081】
実施例19及び比較例11
反応温度を100℃、反応時間を8時間とし、触媒として表9に示すものを使う以外は実施例13と比較例5と同様の条件で合成及び実験を行った。シリカ共存系(実施例19)及びシリカ非共存系(比較例11)において得られたプロピレンカーボネートの収率を表9に示した。
【0082】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシドと二酸化炭素とを反応させる工程を含んでなる環状カーボネート類の製造方法であって、
該反応工程は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物との共存下に反応させてなることを特徴とする環状カーボネート類の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物は、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物であることを特徴とする請求項1記載の環状カーボネート類の製造方法.
【請求項3】
前記反応工程は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と金属酸化物とを含有する酸化物触媒の存在下に反応させてなることを特徴とする請求項1記載の環状カーボネート類の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、
該アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、反応系中に溶解して存在し、金属酸化物と接触する形態で反応させるものであることを特徴とする請求項1記載の環状カーボネート類の製造方法。
【請求項5】
前記酸化物触媒は、P、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項3記載の環状カーボネート類の製造方法。
【請求項6】
前記酸化物触媒は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を金属酸化物に担持してなる酸化物触媒であることを特徴とする請求項3記載の環状カーボネート類の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩及び炭酸水素塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩を含むことを特徴とする請求項4記載の環状カーボネート類の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化物であることを特徴とする請求項4記載の環状カーボネート類の製造方法。
【請求項9】
エポキシドと二酸化炭素とを反応させる工程を含んでなる環状カーボネート類の製造方法であって、
該反応工程は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、ハロゲン化物ではないアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の存在下に反応させてなることを特徴とする環状カーボネート類の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は9記載の環状カーボネート類の製造方法により得られる環状カーボネートであって、
該環状カーボネートは、ハロゲン濃度が1ppm以下のものであることを特徴とする環状カーボネート類。

【国際公開番号】WO2005/085224
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510675(P2006−510675)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003404
【国際出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、経済産業省委託研究「ミニマムエナジーケミストリー 超臨界流体利用環境負荷低減技術」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)