環状ジエン系化合物分解菌および環状ジエン系化合物分解剤、汚染環境の浄化装置、並びに環状ジエン系化合物の分解方法および汚染物質の浄化方法
【課題】アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートなどの1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物で汚染された土壌や水を浄化すること。
【解決手段】ディルドリンなどの環状ジエン系化合物を90%以上分解することができる新規なM.racemosus DDF株などのムコール属ラセモサス種に属する糸状菌およびこの分解菌を含む環状ジエン系化合物分解剤を得た。これらの分解菌や分解剤を用いて、環状ジエン系化合物で汚染された土壌や水を浄化する技術を提供する。
【解決手段】ディルドリンなどの環状ジエン系化合物を90%以上分解することができる新規なM.racemosus DDF株などのムコール属ラセモサス種に属する糸状菌およびこの分解菌を含む環状ジエン系化合物分解剤を得た。これらの分解菌や分解剤を用いて、環状ジエン系化合物で汚染された土壌や水を浄化する技術を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ジエン系農薬、特にアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシドなどから選ばれる少なくとも1種の化合物を分解する能力を有する糸状菌に分類される分解菌、より詳細にはムコール属ラセモサス種に属する分解菌に関する。そしてまた、この分解菌を用いた環状ジエン系化合物分解剤、汚染環境の浄化装置と、環状ジエン系化合物の分解方法および汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2001年に採択されたPOPs条約により1970年代半ばに製造・使用が禁止された有機塩素系農薬6種類(DDT、アルドリン(図1参照)、ディルドリン(図2参照)、エンドリン、ヘプタクロル(図3参照)、ヘキサクロロベンゼン)を含む12物質がPOPsに指定され、各国は国際的枠組みの中でこれらの農薬に対する適正な管理・処理を進めることになった。
日本では、製造・使用禁止後、農薬メーカーや農協などにより容器ごとこれらの農薬が埋設処理されており、その後、埋設農薬を掘削・回収し、物理化学的な方法(高温焼却法、超臨界水酸化法、真空加熱法)で分解・無毒化されている。しかし長期埋設により容器が破損し、周辺土壌や地下水を低濃度で汚染している可能性が指摘されている。一方、東京都や山形県ではキュウリから残留基準を超えるディルドリンが検出されており、これらは30年程前に施用されたドリン剤が農地土壌にサブppmレベルの低濃度で残留しているためと考えられる。
【0003】
このような低濃度の有機化学物質で広範囲に汚染された土壌や地下水に対する浄化法に関しては、微生物等の生物機能(特に分解能)を利用する原位置バイオレメディエーションに期待が寄せられている。こうしたバイオレメディエーションには、栄養素や酸素等を汚染現場に供給し土着の分解菌を増殖・活性化させて浄化を行うバイオスティミュレーション法や、外来から特定の機能を有する微生物を導入するバイオオーギュメンテーション法が知られている。
【0004】
ところがPOPs指定された環状ジエン系農薬で汚染された土壌に対するバイオレメディエーション技術は停滞している。停滞の原因はこうした化合物に対する高い分解能を持つ微生物の単離が困難なことが考えられる。実際、アルドリンは微生物により比較的容易に酸化(エポキシ化)されディルドリンになるが、ディルドリンの土壌中の半減期は7年以上と安定で、土壌中にはディルドリンを分解できる微生物は殆ど存在しないと考えられる。
【0005】
ディルドリン分解に関する研究もいくつか報告されてはいるものの、その分解の程度は限られたものである。例えば、MatsumuraとBoushは、糸状菌のトリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)が(非特許文献1,2)、また、Andersonは、ムコール アルテルナンス(Mucor alternans)が(非特許文献3)ディルドリンを分解することを報告したが、そこでは20%ほどの分解しか示されていない。また、Wedermeyerは、アエロバクター アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)がディルドリンをアルドリンジオールに変換することを報告しているが、脱塩素までは示されていない(非特許文献4)。さらに、最近ではMatsumotoらによってバークホルデリア(Burkholderia)属菌やカプリアビダス(Cupriavidus)属菌がディルドリンを分解することを報告したが、その分解の程度は50%ほどであり(非特許文献5)、ディルドリンの脱塩素分解の報告もない。Chackoらは、ムコール ラマニアヌス(Mucor ramannianus)を用いてディルドリンの分解を検討したが、分解は認められなかった(非特許文献6)。
【0006】
ディルドリンなどの環状ジエン系化合物は、脱塩素しなければ分解したといえども毒性は残存する場合があるため、無毒化するためには、脱塩素分解することが望まれる。しかしながら、報告されている環状ジエン系化合物分解菌に関しては、分子の左半分(炭化水素環部分)がエポキシ化されて代謝が止まる菌が殆どである。共通骨格の塩素置換基部分のCをラベルした化合物を用いて分解試験を行ったところ、無機化率が殆どの分解菌で5%以下であることから、塩素置換基をアタックし、脱塩素分解できる分解菌は殆ど存在しないと考えられるのである。すなわち、現時点で環状ジエン系化合物で汚染された土壌に対するバイオスティミュレーション法やバイオオーギュメンテーション法を含めたバイオレメディエーション技術に使える分解菌は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Matsumura & Boush (1967), Science Vol. 156, 959-961頁
【非特許文献2】Matsumura & Boush (1968), JEE Vol. 61, 610-612頁
【非特許文献3】Anderson JPE, Lichtenstein EP, Whittingham WF (1970), JEE Vol. 63, 1595-1599頁
【非特許文献4】Wedemeyer G (1967), AEM Vol. 16, 661-662頁
【非特許文献5】Matsumoto E, Kawanaka Y, Yun S-J, Oyaizu H (2008), AMB, 1095-1103頁
【非特許文献6】Chacko CI, Lockwood JL, Zabik M (1966) Science Vol. 154, 893-895頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド(図4参照)などの環状ジエン系農薬に含まれる化合物を分解することができる分解菌と、この分解菌を用いてこれらの化合物を分解する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、上記目的を達成すべく環状ジエン系化合物の分解能を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌を含んでなる環状ジエン系化合物分解剤を提供する。
環状ジエン系化合物には、1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造(図5参照)を有する化合物を含み、より具体的には、アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物が挙げられる。
そして、こうした環状ジエン系化合物は脱塩素分解されることが好ましい。脱塩素分解することで環状ジエン系化合物の毒性を弱めることができる。
また、環状ジエン系化合物はその50%以上を分解することが好ましく、60%以上分解、80%以上分解、90%以上分解と、その数字が大きくなるほどより好ましい。50%以上分解することができればその毒性を弱めることができ、60%以上分解できればより効果的であり、80%以上分解できればその物質の残留をほとんど無くすことができる。
さらに、この環状ジエン系化合物分解剤は、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)やDDE(ジクロロジフェニルジクロロエチレン)の分解能を有するものであることが好ましい。DDTはPOPs指定された農薬であり、また、DDEはDDTが土壌中などで分解されて生じる主な代謝物であり農耕地等に長期間残留する。環状ジエン系化合物分解剤がDDTやDDE分解能をも有すれば、より効率的に汚染土壌や汚染水などの環境浄化を行うことができる。
【0010】
環状ジエン系化合物分解剤は、ムコール属ラセモサス種の糸状菌を含んでなる。さらに具体的には、ITS(Internal transcribed spacer)領域に配列番号1で示す塩基配列を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌を含んでなるものとすることができる。そしてまた、ムコールラセモサス DDF(M.racemosus DDF)株(受託番号 FERM P−21775)、IFO6745株、およびNBRC4581株からなる群から選択される少なくとも一の菌株を含んでなるものとすることができる。
環状ジエン系化合物分解菌が、ムコール属ラセモサス種の糸状菌であり、より詳細な一例は、ITS領域に配列番号1で示す塩基配列を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌であり、また、ムコールラセモサス DDF株、IFO6745株、およびNBRC4581株からなる群から選択される少なくとも一の菌株であるので、ディルドリンやヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシドを90%以上を分解することができ、環状ジエン系化合物を少なくとも50%以上分解できる。また、ディルドリンを脱塩素分解することができる。
【0011】
環状ジエン系化合物分解剤は、上記の環状ジエン系化合物分解菌を、その餌となるふすまや米ぬか等の基質に生育させ、その基質ごと含んでなるものとすることができる。環状ジエン系化合物分解菌は、環状ジエン系化合物分解菌を生育させた基質ごと含むため、高密度で、長期間、環状ジエン系化合物分解菌を生育させておくことができる。
また、こうした基質にさらに木質炭化素材等の多孔質材を混合してなる環状ジエン系化合物分解剤とすることができる。さらに多孔質材を混合しているため、より環状ジエン系化合物分解菌の保持に優れ、安定的に環状ジエン系化合物の分解を行うことができる。この環状ジエン系化合物分解剤は、バイオレメディエーション技術に利用でき、環状ジエン系化合物で汚染された土壌や水を浄化することができる。
【0012】
本発明はまた、上記環状ジエン系化合物分解剤または環状ジエン系化合物分解菌を含有してなる汚染環境の浄化装置を提供する。
上記環状ジエン系化合物分解剤または環状ジエン系化合物分解菌を含有してなる汚染環境の浄化装置によれば、環状ジエン系化合物で汚染された土壌や水を浄化することができる。
【0013】
さらに本発明は、環状ジエン系化合物分解剤、環状ジエン系化合物分解菌、そしてそれらを含有してなる汚染環境の浄化装置を用いてアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物に例示される1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物を分解する環状ジエン系化合物の分解方法を提供する。
環状ジエン系化合物分解剤、環状ジエン系化合物分解菌、そしてそれらを含有してなる汚染環境の浄化装置を環状ジエン系化合物と接触させて、その環状ジエン系化合物を分解し、土壌や地下水など環状ジエン系化合物に汚染された環境を浄化することができる。
【0014】
加えて環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物で汚染された土壌に接種する汚染物質の浄化方法を提供する。環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物で汚染された土壌に接種することで汚染土壌を浄化することができる。
また、環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物で汚染されたウリ科植物に接種する汚染物質の浄化方法を提供する。環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物で汚染されたウリ科植物に接種し接触させることで、環状ジエン系化合物を分解しそのウリ科植物を原料とした肥料を製造することも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の環状ジエン系化合物分解菌および環状ジエン系化合物分解剤によれば、環状ジエン系農薬であるアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートなどの1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する化合物を分解することができる。
【0016】
さらに、本発明の環状ジエン系化合物の分解方法や汚染土壌の浄化方法によれば、汚染土壌や汚染水などの環境中に含まれる環状ジエン系化合物を分解してそれらの汚染環境を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アルドリンの化学式である。
【図2】ディルドリンの化学式である。
【図3】ヘプタクロルの化学式である。
【図4】ヘプタクロルエポキシドの化学式である。
【図5】1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を示す化学式である。
【図6】ムコールラセモサス DDF株の塩基配列をもとにした分子系統樹を示す説明図である。
【図7】ムコールラセモサス DDF株によるディルドリン分解を示すグラフである。
【図8】ラセモサス種に属する3菌株によるディルドリン分解を示すグラフである。
【図9】ムコールラセモサス DDF株によるヘプタクロルエポキシド分解を示すグラフである。
【図10】ムコールラセモサス DDF株による種々の環状ジエン系化合物の分解を示すグラフである。
【図11】ムコールラセモサス DDF株によるDDT分解を示すグラフである。
【図12】ムコールラセモサス DDF株によるDDE分解を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤、それらを用いた汚染環境の浄化装置や、環状ジエン系化合物の分解方法、汚染土壌などの環境の浄化方法について以下に詳細に説明する。
【0019】
環状ジエン系化合物分解菌:
本発明者らは、エンドスルファン連用土壌から単離したムコール属の糸状菌が環状ジエン系農薬であるディルドリンの分解能を有することを見出した。ところで、エンドスルファンは、POPsに指定されてはいない。しかしながら、POPsに指定されたエンドリンにその性状や特徴などが類似しているため、エンドスルファン連用土壌には、エンドリンやディルドリン等の図5に示す1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物を分解できる分解菌が生息している可能性があると考えたことに基づく。所望の分解菌が生息する土壌としては、エンドスルファン連用土壌の他、環状ジエン系化合物を連用した土壌が考えられる。
【0020】
エンドスルファン連用土壌から採取した菌体の培養は、これらの菌体が生育できる条件で、環状ジエン系化合物を含有する材料と接触させることにより行うことができる。これらの菌体が生育できる条件としては、例えば、後述するPDA培地やMartin培地、改変ツァペック培地などが例示できるが、これらの培地以外でも例えばグルコースなどのエネルギー源が存在する培地が挙げられる。
環状ジエン系化合物を含有する材料には、環状ジエン系化合物を含有する農薬、環状ジエン系化合物を含有する土壌や地下水などが挙げられる。
環状ジエン系化合物分解菌の単離は、エンドスルファン連用土壌等を希釈した懸濁液をMartin培地等に塗抹し、出現したコロニーの色と形態とを判別し、さらにそれぞれ分解試験に供して分解菌の特定を行う。
【0021】
環状ジエン系化合物分解菌には遺伝子組み換え技術を利用して得た環状ジエン系化合物に対する分解能の増強された分解菌や新たに作出された分解菌を利用することもできるが、環状ジエン系化合物連用土壌から得られた分解菌が好ましい。環状ジエン系化合物連用土壌から得られた分解菌は土壌に生息する分解菌であり、遺伝子組み換え技術を利用して得た分解菌と比較して安全性に対する問題が少ないからである。
【0022】
こうした分解菌は、環状ジエン系化合物に対する分解能を有するムコール属の糸状菌、より詳細にはムコール属ラセモサス種に属する分解菌である。このムコール属ラセモサス種に属する分解菌には、エンドスルファン連用土壌から単離したムコール属ラセモサス種に属する糸状菌が含まれる。ムコール属ラセモサス種に属する菌株には、発明者らがエンドスルファン連用土壌から単離した新規菌株であるムコールラセモサス DDF株や、菌株保存機関から取得したIFO6745株やNBRC4581株が挙げられる。
【0023】
ムコールラセモサス DDF株はそのITS領域の塩基配列が、BLAST検索でムコール属ラセモサス種(アクセションナンバー:FJ228217)と比較して100%の相同性(471/471)を示した。
このムコールラセモサス DDF株のITS領域中の塩基配列(5’−3’)を配列番号1として配列表に示す。ムコールラセモサス DDF株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号「FERM P−21775」として寄託されている。この菌株の塩基配列を用いた分子系統樹を図6に示す。
なお、IFO6745株のITS領域中の塩基配列(5’−3’)を配列番号2として配列表に示す。さらに、NBRC4581株のITS領域中の塩基配列(5’−3’)を配列番号3として配列表に示す。
【0024】
ムコールラセモサス DDF株は、次の菌学的特徴を有している。
(1)形態的性状; 液体培地中および寒天培地上で分岐を有する基生菌糸に加え、気中菌糸が発達し、胞子嚢を多数形成する。胞子嚢胞子は円形で、その中に数十個の胞子の含有が認められる。 また、胞子のう柄先端には瓢箪型の柱軸が確認できる。
(2)培養性状; 各種栄養寒天培地において、3日間で9センチシャーレを菌糸が覆うほど生育は早い。可溶性色素の分泌は見られないが、気中菌糸に胞子嚢が形成されると、淡い黄色味を帯びてくる。また、1か月以上の長期培養にともない、接合胞子が多数形成され暗黒色を帯びてくるのが認められる。
【0025】
また、IFO6745株の菌学的特徴もムコールラセモサス DDF株と同様であり、次のとおりである。
(1)形態的性状; 液体培地中および寒天培地上で分岐を有する基生菌糸に加え、気中菌糸が発達し、胞子嚢を多数形成する。胞子嚢胞子は円形で、その中に数十個の胞子の含有が認められる。また、胞子のう柄先端には瓢箪型の柱軸が確認できる。
(2)培養性状; 各種栄養寒天培地において、3日間で9センチシャーレを菌糸が覆うほど生育は早い。可溶性色素の分泌は見られないが、気中菌糸に胞子嚢が形成されると、淡い黄色味を帯びてくる。
【0026】
さらに、NBRC4581株の菌学的特徴もムコールラセモサス DDF株と同様であり、次のとおりである。
(1)形態的性状; 液体培地中および寒天培地上で分岐を有する基生菌糸に加え、気中菌糸が発達し、胞子嚢を多数形成する。胞子嚢胞子は円形で、その中に数十個の胞子の含有が認められる。また、胞子のう柄先端には瓢箪型の柱軸が確認できる。
(2)培養性状; 各種栄養寒天培地において、3日間で9センチシャーレを菌糸が覆うほど生育は早い。可溶性色素の分泌は見られないが、気中菌糸に胞子嚢が形成されると、淡い黄色味を帯びてくる。
【0027】
分解する対象となる環状ジエン系化合物は、それらの中でも1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する化合物が挙げられ、より具体的な化合物としては、アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選ばれる少なくとも一の化合物である。
【0028】
環状ジエン系化合物の分解は、それら化合物の90%以上を分解することが好ましく、脱塩素分解することがさらに好ましい。90%以上分解すればほとんどその化合物を消失させることができるからであり、脱塩素分解すればその化合物に基づく毒性を弱めることができるからである。
【0029】
環状ジエン系化合物分解剤:
環状ジエン系化合物分解菌は、一般的な土壌で生育できると考えられるが、環状ジエン系化合物を効果的に土壌中で分解するためには、こうした分解菌を高密度で長期間存在させるため、分解菌の餌となる基質とともに分解菌があることが好ましい。その基質としては、ふすまや米ぬか、ビールかす、コーヒーかす、油かすなどが好ましい。また、ピーナッツ殻やおが屑、かんな屑、木材チップ、バーク、やし殻、もみ殻なども基質としうると考えられる。こうした基質は分解菌を保持する担体としても機能する。
【0030】
すなわち、環状ジエン系化合物分解剤は、環状ジエン系化合物分解菌を基質と分離して、分解菌だけで環状ジエン系化合物分解剤とする場合の他、基質とともに生育させた環状ジエン系化合物分解菌を基質ごと含めたものとすることができる。
基質を含む環状ジエン系化合物分解剤には、木質炭化素材のような多数の細孔、高い吸着係数を有する多孔質材を基質に混ぜ込むことでより効果的な環状ジエン系化合物分解剤を製造することができる。多孔質材は基質を兼ねるものであっても良い。
汚染土壌への適用は、基質と環状ジエン系化合物分解菌を別々に土壌に投入する方法よりも、基質とともに生育させた環状ジエン系化合物分解菌を基質とともに土壌に投入することで汚染土壌を浄化することが好ましい。
【0031】
汚染環境の浄化装置:
環状ジエン系化合物分解剤を通気性のある筐体内に詰め込むなどして環状ジエン系化合物分解剤の集積層を形成すれば簡単にバイオリアクターとして、環状ジエン系化合物の分解除去装置とすることができる。
該装置に環状ジエン系化合物で汚染された土壌を混入し水を還流させることでその土壌を浄化することもできる。また、該装置に環状ジエン系化合物で汚染された水を還流させることで、この汚染水を浄化することができる。
あるいはまた、該装置を、生活排水路、水田地帯の農業排水路、ゴルフ場の排水路などの水路の一部に設けることにより、水中に溶解、分散した環状ジエン系化合物を分解除去し、汚染環境を浄化する汚染環境の浄化装置として利用することができる。
【0032】
環状ジエン系化合物分解材を用いた汚染物質の浄化方法:
環状ジエン系化合物分解剤を用いて、環状ジエン系化合物によって汚染された物質を浄化するには次のような方法がある。
汚染土壌における環状ジエン系化合物の除去に関しては、環状ジエン系化合物分解剤を汚染土壌中に埋設して混和する。土壌中に埋設しておくことで、既に土壌中に含まれている環状ジエン系化合物は分解菌によって分解される。この方法によれば、土壌中の環状ジエン系化合物が地下水に混入することを避けることができ、地下水汚染の防止を図ることが可能となる。
この技術の応用として、環状ジエン系化合物の存在する表層及び下層土壌への混入、ゴルフ場のグリーン面の下層土壌への混入、産業破棄物処理場の下層土壌への混入、工場等における有機廃液置き場の下層土壌への混入などが挙げられ、こうした応用により環状ジエン系化合物を処理することができる。
【0033】
また、環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物に汚染されたウリ科植物に対して接種することで、このウリ科植物中の環状ジエン系化合物を分解、無毒化することができる。無毒化されたウリ科植物は、肥料などとして利用することが可能になる。
ウリ科植物には、キュウリやスイカ、カボチャ、ヘチマ、メロン、などが挙げられる。
【実施例】
【0034】
<実験例1>
[ムコールラセモサス DDF株の単離(1);ディルドリン分解能を有する候補となる菌株の取得]
エンドスルファン連用土壌0.5gを4.5mLの滅菌水で希釈し、102,103オーダーの土壌希釈液(土壌懸濁液)を作成した。こうして得られた土壌希釈液0.1mLをMartin培地に塗抹し、25℃で培養した。出現した糸状菌のコロニーの色と形態とを目視で判別し、その一つ一つを、別に新しく作成したPDA培地に移植して25℃で培養した。こうして、ディルドリン分解能を有する分解菌の候補となる36菌株の糸状菌を単離した。
【0035】
上述のMartin培地の組成を次に示す。
Martin培地(1Lあたり)
ペプトン: 5g
KH2PO4: 1g
MgSO4・7H2O: 0.5g
グルコース: 10g
ローズベンガル: 0.033g
寒天: 20g
クロラムフェニコール: 0.25g
超純水: 残部
【0036】
なお、移植先の培地を、Martin培地に代えてPDA培地とした理由は、Martin培地には菌糸の伸長抑制剤が含まれているのに対し、PDA培地は伸長抑制剤が含まれていないからである。
PDA培地の組成を次に示す。
PDA培地(1Lあたり)
ポテト浸出液末: 4.0g
グルコース: 20.0g
寒天: 15.0g
超純粋: 残部
【0037】
<実験例2>
[ムコールラセモサス DDF株の単離(2);ディルドリン分解菌ムコールラセモサス DDF株の特定]
上記各PDA培地から得られた36菌株の中からディルドリン分解能を有する分解菌を特定した。
上記36菌株をそれぞれ以下の改変ツァペック培地に接種し、暗所25℃で1週間前培養した後、5mg/Lとなるようにディルドリンを添加し、さらに2週間培養した。培養終了後、アセトニトリル15mLを添加し、菌体ごとホモジナイズした。3000rpmで10分間、遠心分離後、上清をヘキサンに転溶し、GC/ECDにてディルドリン濃度を測定し、また、イオンクロマトグラフィーで培養ろ液中の塩素イオン濃度を測定した。その結果、上記36菌株中、1菌株でディルドリンの分解が認められた。
この菌株の塩基配列(ITS領域)は、ムコール属ラセモサス種の塩基配列と100%の相同性を示した。ムコールラセモサス DDF株のITS領域の塩基配列(5’−3’)を配列番号1として配列表に示す。この新規菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに「Mucor racemosus DDF」として受託番号「FERM P−21775」で寄託されている。
【0038】
なお、PDA培地から改変ツァペック培地に代えて接種したのは、PDA培地はジャガイモ浸出液と天然成分を基調とした培地であるため、成分やその濃度を変更できず分解試験には適さないからである。そのため、合成培地である改変ツァペック培地を用いて分解試験を行った。
改変ツァペック培地の組成は次のとおりである。
改変ツァペック培地(1Lあたり)
グルコース: 10g
MgSO4・7H2O: 0.5g
NaNO3: 2g
K2HPO4 : 1g
FeSO4・7H2O: 0.01g
Yeast: 0.5g
超純水: 残部
【0039】
<実験例3:図7>
[ムコールラセモサス DDF株によるディルドリンの分解試験]
上述の改変ツァペック培地10mLを100mL容蓋付き三角フラスコに入れ、121℃で10分間オートクレーブ処理を行った。一方、予めシャーレに培養したムコールラセモサス DDF株を直径6mmのコルクボーラーで打ち抜き、そのディスクを一つこの改変ツァペック培地に入れた。このとき、アセトンに溶かしたディルドリン溶液を5mg/Lとなるように添加した。そして、暗所25℃で10日間培養した。培養液は経日的にサンプリングし、GC/ECDでディルドリン濃度を求め、イオンクロマトで塩素イオン濃度をそれぞれ求めた。また、ディルドリン測定時にホモジナイズし遠心した菌体を吸引ろ過し、70℃の乾燥機で乾燥させ、乾燥菌体重量を求めた。その結果を図7の折れ線グラフに示す。
【0040】
図7のグラフの左側縦軸には培養液中の塩素イオン濃度とディルドリン濃度(μM)を、右側縦軸には乾燥菌体重量(g)を、横軸は培養時間(日)をそれぞれ表す。
図7で示されるように、培養7日目にはディルドリンが59%分解し、10日間の培養でほぼ100%のディルドリンがなくなり、塩素イオンが25μM検出された。これにより、ディルドリン1分子から2塩素が脱離していることが示唆された。
【0041】
<実験例4;図8>
[ラセモサス種に属するムコールラセモサス DDF株以外の菌株のディルドリンの分解試験]
菌株保存機関(独立行政法人 製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(NBRC)より購入したムコール属ラセモサス種に属する次の2株:IFO6745株およびNBRC4581株を用いて、実験例3で示したムコールラセモサス DDF株によるディルドリンの分解試験と同じディルドリンの分解試験を行った。ムコールラセモサス DDF株の分解試験と併せて、その結果を図8の棒グラフで示す。
【0042】
図8では、ディルドリンが当初15μMあったものが10日間の培養で、コントロールを除き、検出されなかったことを示す。また、コントロールでは塩素イオンは当初より検出されなかったが、ムコール属ラセモサス種に属する3菌株ではいずれの菌株についても、10日間の培養で当初検出されなかった塩素イオンが検出されたことを示している。なお、コントロールは生きた菌体を接種する代わりに死菌体を添加したものである。
即ち、IFO6745株やNBRC4581株でもムコールラセモサス DDF株と同様に、培養10日目でディルドリンの90%以上が分解した。しかし、分解菌ごとに生じた塩素イオン濃度に差が生じており、脱塩素分解の程度に差があることが示唆された。
【0043】
<実験例5:図9>
[ムコールラセモサス DDF株によるヘプタクロルエポキシド分解試験]
実験例3において、ディルドリン溶液を15μM添加した操作に代えて、ヘプタクロルエポキシド溶液を13μM添加した操作を行う以外は、実験例3と同じ操作を行って、ムコールラセモサス DDF株についてヘプタクロルエポキシド分解試験を行った。その結果を図9に示す。
図9では、ヘプタクロルエポキシドが当初13μMあったものが10日間の培養で、コントロールを除き、0.8μMに減少したことを示す。また、10日間の培養でも塩素イオンが検出されなかったことを示す。
この結果から、ムコールラセモサス DDF株は、ヘプタクロルエポキシドも90%以上分解することを確認できた。しかしながら、ヘプタクロルエポキシドの脱塩素までは確認できなかった。
【0044】
<実験例6:図10>
[ムコールラセモサス DDF株による種々の環状ジエン系農薬(ディルドリンやヘプタクロルエポキシド以外)の分解試験]
実験例3や実験例5において、ディルドリン溶液15μMやヘプタクロルエポキシド溶液13μMを添加した操作に代えて、ヘプタクロル溶液やα−エンドスルファン溶液、β−エンドスルファン溶液、エンドスルファンスルフェート溶液をそれぞれ所定量添加した操作を行い、10日間〜14日間培養した以外は、実験例3や実験例5と同じ操作を行って、ムコールラセモサス DDF株についてヘプタクロルやα−エンドスルファン、β−エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートのそれぞれの分解試験を行った。その結果を図10に示す。
図10では、当初ヘプタクロルが13.3μM、ヘプタクロルエポキシドが13.0μMあったものが10日間の培養でヘプタクロルは0.75μM、ヘプタクロルエポキシドは0.84μMと、ともに1μM以下にまで減少し、また、当初α−エンドスルファンが16.5μM、β−エンドスルファンが16.3μM、エンドスルファンスルフェートが17.1μMあったものが14日間の培養でそれぞれ2.52μM、6.58μM、8.21μMに減少したことを示す。コントロールは生きた菌体を接種する代わりに死菌体を添加したものである。
即ち、図10で示されるように、ムコールラセモサス DDF株は、ヘプタクロルやヘプタクロルエポキシドを90%以上分解し、α−エンドスルファンを80%以上、β−エンドスルファンを60%以上、エンドスルファンスルフェートを50%以上分解することを確認できた。
【0045】
<実験例7:図11>
[ムコールラセモサス DDF株によるDDTの分解試験]
実験例3において、ディルドリン溶液15μMを添加した操作に代えて、DDTを12.8μM添加して培養した以外は、実験例3と同じ操作を行ってムコールラセモサス DDF株についてDDTの分解試験を行った。その結果を図11に示す。
図11では、DDTが当初12.8μMあったものが10日間の培養後は1.76μMとなったことを示す。コントロールは生きた菌体を接種する代わりに死菌体を添加したものである。本実験例では、コントロールにおいてもDDT濃度が減少しているが、その理由は当初添加したDDTの一部が死菌体に吸着されてしまい回収できなかったことによる。
図11で示されるように、ムコールラセモサス DDF株の添加によりコントロールに比較してDDT濃度が減少しており、ムコールラセモサス DDF株はDDTの45.9%を分解したことを確認した。
また、本実験による10日間培養後のDDT分解により、DDEは検出されず、脱塩素は確認することができた。
【0046】
<実験例8:図12>
[ムコールラセモサス DDF株によるDDEの分解試験]
実験例3において、ディルドリン溶液15μMを添加した操作に代えて、DDEを15.7μM添加して培養した以外は、実験例3と同じ操作を行ってムコールラセモサス DDF株についてDDEの分解試験を行った。その結果を図12に示す。
図12では、DDEが当初15.7μMあったものが10日間の培養後は3.28μMになったことを示す。コントロールは生きた菌体を接種する代わりに死菌体を添加したものである。本実験例でも、コントロールにおいてDDE濃度が減少しているが、その理由は当初添加したDDEの一部が死菌体に吸着されてしまい回収できなかったことによる。
図12で示されるように、ムコールラセモサス DDF株の添加によりコントロールに比較してDDE濃度が減少しており、ムコールラセモサス DDF株はDDEの51.6%を分解したことを確認した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ジエン系農薬、特にアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシドなどから選ばれる少なくとも1種の化合物を分解する能力を有する糸状菌に分類される分解菌、より詳細にはムコール属ラセモサス種に属する分解菌に関する。そしてまた、この分解菌を用いた環状ジエン系化合物分解剤、汚染環境の浄化装置と、環状ジエン系化合物の分解方法および汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2001年に採択されたPOPs条約により1970年代半ばに製造・使用が禁止された有機塩素系農薬6種類(DDT、アルドリン(図1参照)、ディルドリン(図2参照)、エンドリン、ヘプタクロル(図3参照)、ヘキサクロロベンゼン)を含む12物質がPOPsに指定され、各国は国際的枠組みの中でこれらの農薬に対する適正な管理・処理を進めることになった。
日本では、製造・使用禁止後、農薬メーカーや農協などにより容器ごとこれらの農薬が埋設処理されており、その後、埋設農薬を掘削・回収し、物理化学的な方法(高温焼却法、超臨界水酸化法、真空加熱法)で分解・無毒化されている。しかし長期埋設により容器が破損し、周辺土壌や地下水を低濃度で汚染している可能性が指摘されている。一方、東京都や山形県ではキュウリから残留基準を超えるディルドリンが検出されており、これらは30年程前に施用されたドリン剤が農地土壌にサブppmレベルの低濃度で残留しているためと考えられる。
【0003】
このような低濃度の有機化学物質で広範囲に汚染された土壌や地下水に対する浄化法に関しては、微生物等の生物機能(特に分解能)を利用する原位置バイオレメディエーションに期待が寄せられている。こうしたバイオレメディエーションには、栄養素や酸素等を汚染現場に供給し土着の分解菌を増殖・活性化させて浄化を行うバイオスティミュレーション法や、外来から特定の機能を有する微生物を導入するバイオオーギュメンテーション法が知られている。
【0004】
ところがPOPs指定された環状ジエン系農薬で汚染された土壌に対するバイオレメディエーション技術は停滞している。停滞の原因はこうした化合物に対する高い分解能を持つ微生物の単離が困難なことが考えられる。実際、アルドリンは微生物により比較的容易に酸化(エポキシ化)されディルドリンになるが、ディルドリンの土壌中の半減期は7年以上と安定で、土壌中にはディルドリンを分解できる微生物は殆ど存在しないと考えられる。
【0005】
ディルドリン分解に関する研究もいくつか報告されてはいるものの、その分解の程度は限られたものである。例えば、MatsumuraとBoushは、糸状菌のトリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)が(非特許文献1,2)、また、Andersonは、ムコール アルテルナンス(Mucor alternans)が(非特許文献3)ディルドリンを分解することを報告したが、そこでは20%ほどの分解しか示されていない。また、Wedermeyerは、アエロバクター アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)がディルドリンをアルドリンジオールに変換することを報告しているが、脱塩素までは示されていない(非特許文献4)。さらに、最近ではMatsumotoらによってバークホルデリア(Burkholderia)属菌やカプリアビダス(Cupriavidus)属菌がディルドリンを分解することを報告したが、その分解の程度は50%ほどであり(非特許文献5)、ディルドリンの脱塩素分解の報告もない。Chackoらは、ムコール ラマニアヌス(Mucor ramannianus)を用いてディルドリンの分解を検討したが、分解は認められなかった(非特許文献6)。
【0006】
ディルドリンなどの環状ジエン系化合物は、脱塩素しなければ分解したといえども毒性は残存する場合があるため、無毒化するためには、脱塩素分解することが望まれる。しかしながら、報告されている環状ジエン系化合物分解菌に関しては、分子の左半分(炭化水素環部分)がエポキシ化されて代謝が止まる菌が殆どである。共通骨格の塩素置換基部分のCをラベルした化合物を用いて分解試験を行ったところ、無機化率が殆どの分解菌で5%以下であることから、塩素置換基をアタックし、脱塩素分解できる分解菌は殆ど存在しないと考えられるのである。すなわち、現時点で環状ジエン系化合物で汚染された土壌に対するバイオスティミュレーション法やバイオオーギュメンテーション法を含めたバイオレメディエーション技術に使える分解菌は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Matsumura & Boush (1967), Science Vol. 156, 959-961頁
【非特許文献2】Matsumura & Boush (1968), JEE Vol. 61, 610-612頁
【非特許文献3】Anderson JPE, Lichtenstein EP, Whittingham WF (1970), JEE Vol. 63, 1595-1599頁
【非特許文献4】Wedemeyer G (1967), AEM Vol. 16, 661-662頁
【非特許文献5】Matsumoto E, Kawanaka Y, Yun S-J, Oyaizu H (2008), AMB, 1095-1103頁
【非特許文献6】Chacko CI, Lockwood JL, Zabik M (1966) Science Vol. 154, 893-895頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド(図4参照)などの環状ジエン系農薬に含まれる化合物を分解することができる分解菌と、この分解菌を用いてこれらの化合物を分解する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、上記目的を達成すべく環状ジエン系化合物の分解能を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌を含んでなる環状ジエン系化合物分解剤を提供する。
環状ジエン系化合物には、1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造(図5参照)を有する化合物を含み、より具体的には、アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物が挙げられる。
そして、こうした環状ジエン系化合物は脱塩素分解されることが好ましい。脱塩素分解することで環状ジエン系化合物の毒性を弱めることができる。
また、環状ジエン系化合物はその50%以上を分解することが好ましく、60%以上分解、80%以上分解、90%以上分解と、その数字が大きくなるほどより好ましい。50%以上分解することができればその毒性を弱めることができ、60%以上分解できればより効果的であり、80%以上分解できればその物質の残留をほとんど無くすことができる。
さらに、この環状ジエン系化合物分解剤は、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)やDDE(ジクロロジフェニルジクロロエチレン)の分解能を有するものであることが好ましい。DDTはPOPs指定された農薬であり、また、DDEはDDTが土壌中などで分解されて生じる主な代謝物であり農耕地等に長期間残留する。環状ジエン系化合物分解剤がDDTやDDE分解能をも有すれば、より効率的に汚染土壌や汚染水などの環境浄化を行うことができる。
【0010】
環状ジエン系化合物分解剤は、ムコール属ラセモサス種の糸状菌を含んでなる。さらに具体的には、ITS(Internal transcribed spacer)領域に配列番号1で示す塩基配列を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌を含んでなるものとすることができる。そしてまた、ムコールラセモサス DDF(M.racemosus DDF)株(受託番号 FERM P−21775)、IFO6745株、およびNBRC4581株からなる群から選択される少なくとも一の菌株を含んでなるものとすることができる。
環状ジエン系化合物分解菌が、ムコール属ラセモサス種の糸状菌であり、より詳細な一例は、ITS領域に配列番号1で示す塩基配列を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌であり、また、ムコールラセモサス DDF株、IFO6745株、およびNBRC4581株からなる群から選択される少なくとも一の菌株であるので、ディルドリンやヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシドを90%以上を分解することができ、環状ジエン系化合物を少なくとも50%以上分解できる。また、ディルドリンを脱塩素分解することができる。
【0011】
環状ジエン系化合物分解剤は、上記の環状ジエン系化合物分解菌を、その餌となるふすまや米ぬか等の基質に生育させ、その基質ごと含んでなるものとすることができる。環状ジエン系化合物分解菌は、環状ジエン系化合物分解菌を生育させた基質ごと含むため、高密度で、長期間、環状ジエン系化合物分解菌を生育させておくことができる。
また、こうした基質にさらに木質炭化素材等の多孔質材を混合してなる環状ジエン系化合物分解剤とすることができる。さらに多孔質材を混合しているため、より環状ジエン系化合物分解菌の保持に優れ、安定的に環状ジエン系化合物の分解を行うことができる。この環状ジエン系化合物分解剤は、バイオレメディエーション技術に利用でき、環状ジエン系化合物で汚染された土壌や水を浄化することができる。
【0012】
本発明はまた、上記環状ジエン系化合物分解剤または環状ジエン系化合物分解菌を含有してなる汚染環境の浄化装置を提供する。
上記環状ジエン系化合物分解剤または環状ジエン系化合物分解菌を含有してなる汚染環境の浄化装置によれば、環状ジエン系化合物で汚染された土壌や水を浄化することができる。
【0013】
さらに本発明は、環状ジエン系化合物分解剤、環状ジエン系化合物分解菌、そしてそれらを含有してなる汚染環境の浄化装置を用いてアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物に例示される1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物を分解する環状ジエン系化合物の分解方法を提供する。
環状ジエン系化合物分解剤、環状ジエン系化合物分解菌、そしてそれらを含有してなる汚染環境の浄化装置を環状ジエン系化合物と接触させて、その環状ジエン系化合物を分解し、土壌や地下水など環状ジエン系化合物に汚染された環境を浄化することができる。
【0014】
加えて環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物で汚染された土壌に接種する汚染物質の浄化方法を提供する。環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物で汚染された土壌に接種することで汚染土壌を浄化することができる。
また、環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物で汚染されたウリ科植物に接種する汚染物質の浄化方法を提供する。環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物で汚染されたウリ科植物に接種し接触させることで、環状ジエン系化合物を分解しそのウリ科植物を原料とした肥料を製造することも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の環状ジエン系化合物分解菌および環状ジエン系化合物分解剤によれば、環状ジエン系農薬であるアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートなどの1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する化合物を分解することができる。
【0016】
さらに、本発明の環状ジエン系化合物の分解方法や汚染土壌の浄化方法によれば、汚染土壌や汚染水などの環境中に含まれる環状ジエン系化合物を分解してそれらの汚染環境を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アルドリンの化学式である。
【図2】ディルドリンの化学式である。
【図3】ヘプタクロルの化学式である。
【図4】ヘプタクロルエポキシドの化学式である。
【図5】1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を示す化学式である。
【図6】ムコールラセモサス DDF株の塩基配列をもとにした分子系統樹を示す説明図である。
【図7】ムコールラセモサス DDF株によるディルドリン分解を示すグラフである。
【図8】ラセモサス種に属する3菌株によるディルドリン分解を示すグラフである。
【図9】ムコールラセモサス DDF株によるヘプタクロルエポキシド分解を示すグラフである。
【図10】ムコールラセモサス DDF株による種々の環状ジエン系化合物の分解を示すグラフである。
【図11】ムコールラセモサス DDF株によるDDT分解を示すグラフである。
【図12】ムコールラセモサス DDF株によるDDE分解を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の環状ジエン系化合物分解菌や環状ジエン系化合物分解剤、それらを用いた汚染環境の浄化装置や、環状ジエン系化合物の分解方法、汚染土壌などの環境の浄化方法について以下に詳細に説明する。
【0019】
環状ジエン系化合物分解菌:
本発明者らは、エンドスルファン連用土壌から単離したムコール属の糸状菌が環状ジエン系農薬であるディルドリンの分解能を有することを見出した。ところで、エンドスルファンは、POPsに指定されてはいない。しかしながら、POPsに指定されたエンドリンにその性状や特徴などが類似しているため、エンドスルファン連用土壌には、エンドリンやディルドリン等の図5に示す1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物を分解できる分解菌が生息している可能性があると考えたことに基づく。所望の分解菌が生息する土壌としては、エンドスルファン連用土壌の他、環状ジエン系化合物を連用した土壌が考えられる。
【0020】
エンドスルファン連用土壌から採取した菌体の培養は、これらの菌体が生育できる条件で、環状ジエン系化合物を含有する材料と接触させることにより行うことができる。これらの菌体が生育できる条件としては、例えば、後述するPDA培地やMartin培地、改変ツァペック培地などが例示できるが、これらの培地以外でも例えばグルコースなどのエネルギー源が存在する培地が挙げられる。
環状ジエン系化合物を含有する材料には、環状ジエン系化合物を含有する農薬、環状ジエン系化合物を含有する土壌や地下水などが挙げられる。
環状ジエン系化合物分解菌の単離は、エンドスルファン連用土壌等を希釈した懸濁液をMartin培地等に塗抹し、出現したコロニーの色と形態とを判別し、さらにそれぞれ分解試験に供して分解菌の特定を行う。
【0021】
環状ジエン系化合物分解菌には遺伝子組み換え技術を利用して得た環状ジエン系化合物に対する分解能の増強された分解菌や新たに作出された分解菌を利用することもできるが、環状ジエン系化合物連用土壌から得られた分解菌が好ましい。環状ジエン系化合物連用土壌から得られた分解菌は土壌に生息する分解菌であり、遺伝子組み換え技術を利用して得た分解菌と比較して安全性に対する問題が少ないからである。
【0022】
こうした分解菌は、環状ジエン系化合物に対する分解能を有するムコール属の糸状菌、より詳細にはムコール属ラセモサス種に属する分解菌である。このムコール属ラセモサス種に属する分解菌には、エンドスルファン連用土壌から単離したムコール属ラセモサス種に属する糸状菌が含まれる。ムコール属ラセモサス種に属する菌株には、発明者らがエンドスルファン連用土壌から単離した新規菌株であるムコールラセモサス DDF株や、菌株保存機関から取得したIFO6745株やNBRC4581株が挙げられる。
【0023】
ムコールラセモサス DDF株はそのITS領域の塩基配列が、BLAST検索でムコール属ラセモサス種(アクセションナンバー:FJ228217)と比較して100%の相同性(471/471)を示した。
このムコールラセモサス DDF株のITS領域中の塩基配列(5’−3’)を配列番号1として配列表に示す。ムコールラセモサス DDF株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号「FERM P−21775」として寄託されている。この菌株の塩基配列を用いた分子系統樹を図6に示す。
なお、IFO6745株のITS領域中の塩基配列(5’−3’)を配列番号2として配列表に示す。さらに、NBRC4581株のITS領域中の塩基配列(5’−3’)を配列番号3として配列表に示す。
【0024】
ムコールラセモサス DDF株は、次の菌学的特徴を有している。
(1)形態的性状; 液体培地中および寒天培地上で分岐を有する基生菌糸に加え、気中菌糸が発達し、胞子嚢を多数形成する。胞子嚢胞子は円形で、その中に数十個の胞子の含有が認められる。 また、胞子のう柄先端には瓢箪型の柱軸が確認できる。
(2)培養性状; 各種栄養寒天培地において、3日間で9センチシャーレを菌糸が覆うほど生育は早い。可溶性色素の分泌は見られないが、気中菌糸に胞子嚢が形成されると、淡い黄色味を帯びてくる。また、1か月以上の長期培養にともない、接合胞子が多数形成され暗黒色を帯びてくるのが認められる。
【0025】
また、IFO6745株の菌学的特徴もムコールラセモサス DDF株と同様であり、次のとおりである。
(1)形態的性状; 液体培地中および寒天培地上で分岐を有する基生菌糸に加え、気中菌糸が発達し、胞子嚢を多数形成する。胞子嚢胞子は円形で、その中に数十個の胞子の含有が認められる。また、胞子のう柄先端には瓢箪型の柱軸が確認できる。
(2)培養性状; 各種栄養寒天培地において、3日間で9センチシャーレを菌糸が覆うほど生育は早い。可溶性色素の分泌は見られないが、気中菌糸に胞子嚢が形成されると、淡い黄色味を帯びてくる。
【0026】
さらに、NBRC4581株の菌学的特徴もムコールラセモサス DDF株と同様であり、次のとおりである。
(1)形態的性状; 液体培地中および寒天培地上で分岐を有する基生菌糸に加え、気中菌糸が発達し、胞子嚢を多数形成する。胞子嚢胞子は円形で、その中に数十個の胞子の含有が認められる。また、胞子のう柄先端には瓢箪型の柱軸が確認できる。
(2)培養性状; 各種栄養寒天培地において、3日間で9センチシャーレを菌糸が覆うほど生育は早い。可溶性色素の分泌は見られないが、気中菌糸に胞子嚢が形成されると、淡い黄色味を帯びてくる。
【0027】
分解する対象となる環状ジエン系化合物は、それらの中でも1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する化合物が挙げられ、より具体的な化合物としては、アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選ばれる少なくとも一の化合物である。
【0028】
環状ジエン系化合物の分解は、それら化合物の90%以上を分解することが好ましく、脱塩素分解することがさらに好ましい。90%以上分解すればほとんどその化合物を消失させることができるからであり、脱塩素分解すればその化合物に基づく毒性を弱めることができるからである。
【0029】
環状ジエン系化合物分解剤:
環状ジエン系化合物分解菌は、一般的な土壌で生育できると考えられるが、環状ジエン系化合物を効果的に土壌中で分解するためには、こうした分解菌を高密度で長期間存在させるため、分解菌の餌となる基質とともに分解菌があることが好ましい。その基質としては、ふすまや米ぬか、ビールかす、コーヒーかす、油かすなどが好ましい。また、ピーナッツ殻やおが屑、かんな屑、木材チップ、バーク、やし殻、もみ殻なども基質としうると考えられる。こうした基質は分解菌を保持する担体としても機能する。
【0030】
すなわち、環状ジエン系化合物分解剤は、環状ジエン系化合物分解菌を基質と分離して、分解菌だけで環状ジエン系化合物分解剤とする場合の他、基質とともに生育させた環状ジエン系化合物分解菌を基質ごと含めたものとすることができる。
基質を含む環状ジエン系化合物分解剤には、木質炭化素材のような多数の細孔、高い吸着係数を有する多孔質材を基質に混ぜ込むことでより効果的な環状ジエン系化合物分解剤を製造することができる。多孔質材は基質を兼ねるものであっても良い。
汚染土壌への適用は、基質と環状ジエン系化合物分解菌を別々に土壌に投入する方法よりも、基質とともに生育させた環状ジエン系化合物分解菌を基質とともに土壌に投入することで汚染土壌を浄化することが好ましい。
【0031】
汚染環境の浄化装置:
環状ジエン系化合物分解剤を通気性のある筐体内に詰め込むなどして環状ジエン系化合物分解剤の集積層を形成すれば簡単にバイオリアクターとして、環状ジエン系化合物の分解除去装置とすることができる。
該装置に環状ジエン系化合物で汚染された土壌を混入し水を還流させることでその土壌を浄化することもできる。また、該装置に環状ジエン系化合物で汚染された水を還流させることで、この汚染水を浄化することができる。
あるいはまた、該装置を、生活排水路、水田地帯の農業排水路、ゴルフ場の排水路などの水路の一部に設けることにより、水中に溶解、分散した環状ジエン系化合物を分解除去し、汚染環境を浄化する汚染環境の浄化装置として利用することができる。
【0032】
環状ジエン系化合物分解材を用いた汚染物質の浄化方法:
環状ジエン系化合物分解剤を用いて、環状ジエン系化合物によって汚染された物質を浄化するには次のような方法がある。
汚染土壌における環状ジエン系化合物の除去に関しては、環状ジエン系化合物分解剤を汚染土壌中に埋設して混和する。土壌中に埋設しておくことで、既に土壌中に含まれている環状ジエン系化合物は分解菌によって分解される。この方法によれば、土壌中の環状ジエン系化合物が地下水に混入することを避けることができ、地下水汚染の防止を図ることが可能となる。
この技術の応用として、環状ジエン系化合物の存在する表層及び下層土壌への混入、ゴルフ場のグリーン面の下層土壌への混入、産業破棄物処理場の下層土壌への混入、工場等における有機廃液置き場の下層土壌への混入などが挙げられ、こうした応用により環状ジエン系化合物を処理することができる。
【0033】
また、環状ジエン系化合物分解剤を環状ジエン系化合物に汚染されたウリ科植物に対して接種することで、このウリ科植物中の環状ジエン系化合物を分解、無毒化することができる。無毒化されたウリ科植物は、肥料などとして利用することが可能になる。
ウリ科植物には、キュウリやスイカ、カボチャ、ヘチマ、メロン、などが挙げられる。
【実施例】
【0034】
<実験例1>
[ムコールラセモサス DDF株の単離(1);ディルドリン分解能を有する候補となる菌株の取得]
エンドスルファン連用土壌0.5gを4.5mLの滅菌水で希釈し、102,103オーダーの土壌希釈液(土壌懸濁液)を作成した。こうして得られた土壌希釈液0.1mLをMartin培地に塗抹し、25℃で培養した。出現した糸状菌のコロニーの色と形態とを目視で判別し、その一つ一つを、別に新しく作成したPDA培地に移植して25℃で培養した。こうして、ディルドリン分解能を有する分解菌の候補となる36菌株の糸状菌を単離した。
【0035】
上述のMartin培地の組成を次に示す。
Martin培地(1Lあたり)
ペプトン: 5g
KH2PO4: 1g
MgSO4・7H2O: 0.5g
グルコース: 10g
ローズベンガル: 0.033g
寒天: 20g
クロラムフェニコール: 0.25g
超純水: 残部
【0036】
なお、移植先の培地を、Martin培地に代えてPDA培地とした理由は、Martin培地には菌糸の伸長抑制剤が含まれているのに対し、PDA培地は伸長抑制剤が含まれていないからである。
PDA培地の組成を次に示す。
PDA培地(1Lあたり)
ポテト浸出液末: 4.0g
グルコース: 20.0g
寒天: 15.0g
超純粋: 残部
【0037】
<実験例2>
[ムコールラセモサス DDF株の単離(2);ディルドリン分解菌ムコールラセモサス DDF株の特定]
上記各PDA培地から得られた36菌株の中からディルドリン分解能を有する分解菌を特定した。
上記36菌株をそれぞれ以下の改変ツァペック培地に接種し、暗所25℃で1週間前培養した後、5mg/Lとなるようにディルドリンを添加し、さらに2週間培養した。培養終了後、アセトニトリル15mLを添加し、菌体ごとホモジナイズした。3000rpmで10分間、遠心分離後、上清をヘキサンに転溶し、GC/ECDにてディルドリン濃度を測定し、また、イオンクロマトグラフィーで培養ろ液中の塩素イオン濃度を測定した。その結果、上記36菌株中、1菌株でディルドリンの分解が認められた。
この菌株の塩基配列(ITS領域)は、ムコール属ラセモサス種の塩基配列と100%の相同性を示した。ムコールラセモサス DDF株のITS領域の塩基配列(5’−3’)を配列番号1として配列表に示す。この新規菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに「Mucor racemosus DDF」として受託番号「FERM P−21775」で寄託されている。
【0038】
なお、PDA培地から改変ツァペック培地に代えて接種したのは、PDA培地はジャガイモ浸出液と天然成分を基調とした培地であるため、成分やその濃度を変更できず分解試験には適さないからである。そのため、合成培地である改変ツァペック培地を用いて分解試験を行った。
改変ツァペック培地の組成は次のとおりである。
改変ツァペック培地(1Lあたり)
グルコース: 10g
MgSO4・7H2O: 0.5g
NaNO3: 2g
K2HPO4 : 1g
FeSO4・7H2O: 0.01g
Yeast: 0.5g
超純水: 残部
【0039】
<実験例3:図7>
[ムコールラセモサス DDF株によるディルドリンの分解試験]
上述の改変ツァペック培地10mLを100mL容蓋付き三角フラスコに入れ、121℃で10分間オートクレーブ処理を行った。一方、予めシャーレに培養したムコールラセモサス DDF株を直径6mmのコルクボーラーで打ち抜き、そのディスクを一つこの改変ツァペック培地に入れた。このとき、アセトンに溶かしたディルドリン溶液を5mg/Lとなるように添加した。そして、暗所25℃で10日間培養した。培養液は経日的にサンプリングし、GC/ECDでディルドリン濃度を求め、イオンクロマトで塩素イオン濃度をそれぞれ求めた。また、ディルドリン測定時にホモジナイズし遠心した菌体を吸引ろ過し、70℃の乾燥機で乾燥させ、乾燥菌体重量を求めた。その結果を図7の折れ線グラフに示す。
【0040】
図7のグラフの左側縦軸には培養液中の塩素イオン濃度とディルドリン濃度(μM)を、右側縦軸には乾燥菌体重量(g)を、横軸は培養時間(日)をそれぞれ表す。
図7で示されるように、培養7日目にはディルドリンが59%分解し、10日間の培養でほぼ100%のディルドリンがなくなり、塩素イオンが25μM検出された。これにより、ディルドリン1分子から2塩素が脱離していることが示唆された。
【0041】
<実験例4;図8>
[ラセモサス種に属するムコールラセモサス DDF株以外の菌株のディルドリンの分解試験]
菌株保存機関(独立行政法人 製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(NBRC)より購入したムコール属ラセモサス種に属する次の2株:IFO6745株およびNBRC4581株を用いて、実験例3で示したムコールラセモサス DDF株によるディルドリンの分解試験と同じディルドリンの分解試験を行った。ムコールラセモサス DDF株の分解試験と併せて、その結果を図8の棒グラフで示す。
【0042】
図8では、ディルドリンが当初15μMあったものが10日間の培養で、コントロールを除き、検出されなかったことを示す。また、コントロールでは塩素イオンは当初より検出されなかったが、ムコール属ラセモサス種に属する3菌株ではいずれの菌株についても、10日間の培養で当初検出されなかった塩素イオンが検出されたことを示している。なお、コントロールは生きた菌体を接種する代わりに死菌体を添加したものである。
即ち、IFO6745株やNBRC4581株でもムコールラセモサス DDF株と同様に、培養10日目でディルドリンの90%以上が分解した。しかし、分解菌ごとに生じた塩素イオン濃度に差が生じており、脱塩素分解の程度に差があることが示唆された。
【0043】
<実験例5:図9>
[ムコールラセモサス DDF株によるヘプタクロルエポキシド分解試験]
実験例3において、ディルドリン溶液を15μM添加した操作に代えて、ヘプタクロルエポキシド溶液を13μM添加した操作を行う以外は、実験例3と同じ操作を行って、ムコールラセモサス DDF株についてヘプタクロルエポキシド分解試験を行った。その結果を図9に示す。
図9では、ヘプタクロルエポキシドが当初13μMあったものが10日間の培養で、コントロールを除き、0.8μMに減少したことを示す。また、10日間の培養でも塩素イオンが検出されなかったことを示す。
この結果から、ムコールラセモサス DDF株は、ヘプタクロルエポキシドも90%以上分解することを確認できた。しかしながら、ヘプタクロルエポキシドの脱塩素までは確認できなかった。
【0044】
<実験例6:図10>
[ムコールラセモサス DDF株による種々の環状ジエン系農薬(ディルドリンやヘプタクロルエポキシド以外)の分解試験]
実験例3や実験例5において、ディルドリン溶液15μMやヘプタクロルエポキシド溶液13μMを添加した操作に代えて、ヘプタクロル溶液やα−エンドスルファン溶液、β−エンドスルファン溶液、エンドスルファンスルフェート溶液をそれぞれ所定量添加した操作を行い、10日間〜14日間培養した以外は、実験例3や実験例5と同じ操作を行って、ムコールラセモサス DDF株についてヘプタクロルやα−エンドスルファン、β−エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートのそれぞれの分解試験を行った。その結果を図10に示す。
図10では、当初ヘプタクロルが13.3μM、ヘプタクロルエポキシドが13.0μMあったものが10日間の培養でヘプタクロルは0.75μM、ヘプタクロルエポキシドは0.84μMと、ともに1μM以下にまで減少し、また、当初α−エンドスルファンが16.5μM、β−エンドスルファンが16.3μM、エンドスルファンスルフェートが17.1μMあったものが14日間の培養でそれぞれ2.52μM、6.58μM、8.21μMに減少したことを示す。コントロールは生きた菌体を接種する代わりに死菌体を添加したものである。
即ち、図10で示されるように、ムコールラセモサス DDF株は、ヘプタクロルやヘプタクロルエポキシドを90%以上分解し、α−エンドスルファンを80%以上、β−エンドスルファンを60%以上、エンドスルファンスルフェートを50%以上分解することを確認できた。
【0045】
<実験例7:図11>
[ムコールラセモサス DDF株によるDDTの分解試験]
実験例3において、ディルドリン溶液15μMを添加した操作に代えて、DDTを12.8μM添加して培養した以外は、実験例3と同じ操作を行ってムコールラセモサス DDF株についてDDTの分解試験を行った。その結果を図11に示す。
図11では、DDTが当初12.8μMあったものが10日間の培養後は1.76μMとなったことを示す。コントロールは生きた菌体を接種する代わりに死菌体を添加したものである。本実験例では、コントロールにおいてもDDT濃度が減少しているが、その理由は当初添加したDDTの一部が死菌体に吸着されてしまい回収できなかったことによる。
図11で示されるように、ムコールラセモサス DDF株の添加によりコントロールに比較してDDT濃度が減少しており、ムコールラセモサス DDF株はDDTの45.9%を分解したことを確認した。
また、本実験による10日間培養後のDDT分解により、DDEは検出されず、脱塩素は確認することができた。
【0046】
<実験例8:図12>
[ムコールラセモサス DDF株によるDDEの分解試験]
実験例3において、ディルドリン溶液15μMを添加した操作に代えて、DDEを15.7μM添加して培養した以外は、実験例3と同じ操作を行ってムコールラセモサス DDF株についてDDEの分解試験を行った。その結果を図12に示す。
図12では、DDEが当初15.7μMあったものが10日間の培養後は3.28μMになったことを示す。コントロールは生きた菌体を接種する代わりに死菌体を添加したものである。本実験例でも、コントロールにおいてDDE濃度が減少しているが、その理由は当初添加したDDEの一部が死菌体に吸着されてしまい回収できなかったことによる。
図12で示されるように、ムコールラセモサス DDF株の添加によりコントロールに比較してDDE濃度が減少しており、ムコールラセモサス DDF株はDDEの51.6%を分解したことを確認した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ジエン系化合物の分解能を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌を含んでなる環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項2】
環状ジエン系化合物が、1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する化合物である請求項1記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項3】
環状ジエン系化合物が、アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物である請求項1または請求項2に記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項4】
環状ジエン系化合物に対して脱塩素分解を行う請求項1〜請求項3何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項5】
環状ジエン系化合物の50%以上を分解可能な請求項1〜請求項4何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項6】
DDT及びDDEの分解能を有する請求項1〜請求項5何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項7】
ムコール属ラセモサス種の糸状菌が、ムコールラセモサス DDF株(受託番号FERM P−21775)、IFO6745株、およびNBRC4581株からなる群から選択される少なくとも一の菌株である請求項1〜請求項6何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項8】
前記ムコール属ラセモサス種の糸状菌の餌となるふすまや米ぬか等の基質に生育させたこの糸状菌をこの基質ごと含んでなる請求項1〜請求項7何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項9】
前記基質にさらに木質炭化素材等の多孔質材を混合してなる請求項8記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項10】
アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物に例示される1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物の分解能を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌である環状ジエン系化合物分解菌。
【請求項11】
DDT及びDDEの分解能を有する請求項10記載の環状ジエン系化合物分解菌。
【請求項12】
ムコール属ラセモサス種の糸状菌が、そのITS領域において、配列番号1で示す塩基配列を有する請求項10または請求項11記載の環状ジエン系化合物分解菌。
【請求項13】
ムコール属ラセモサス種の糸状菌が、ムコールラセモサス DDF株(受託番号 FERM P−21775)である請求項10〜請求項12何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解菌。
【請求項14】
請求項1〜請求項9何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤または請求項10〜請求項13何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解菌を含有してなる汚染環境の浄化装置。
【請求項15】
請求項1〜請求項9何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤、請求項10〜請求項13何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解菌、または請求項14記載の汚染環境の浄化装置を用いてアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物に例示される1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物を分解する環状ジエン系化合物の分解方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項9何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤または請求項10〜請求項13何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解菌をアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物に例示される1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物またはDDT若しくはDDEで汚染された土壌やウリ科植物に接種する汚染物質の浄化方法。
【請求項1】
環状ジエン系化合物の分解能を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌を含んでなる環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項2】
環状ジエン系化合物が、1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する化合物である請求項1記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項3】
環状ジエン系化合物が、アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物である請求項1または請求項2に記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項4】
環状ジエン系化合物に対して脱塩素分解を行う請求項1〜請求項3何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項5】
環状ジエン系化合物の50%以上を分解可能な請求項1〜請求項4何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項6】
DDT及びDDEの分解能を有する請求項1〜請求項5何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項7】
ムコール属ラセモサス種の糸状菌が、ムコールラセモサス DDF株(受託番号FERM P−21775)、IFO6745株、およびNBRC4581株からなる群から選択される少なくとも一の菌株である請求項1〜請求項6何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項8】
前記ムコール属ラセモサス種の糸状菌の餌となるふすまや米ぬか等の基質に生育させたこの糸状菌をこの基質ごと含んでなる請求項1〜請求項7何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項9】
前記基質にさらに木質炭化素材等の多孔質材を混合してなる請求項8記載の環状ジエン系化合物分解剤。
【請求項10】
アルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物に例示される1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物の分解能を有するムコール属ラセモサス種の糸状菌である環状ジエン系化合物分解菌。
【請求項11】
DDT及びDDEの分解能を有する請求項10記載の環状ジエン系化合物分解菌。
【請求項12】
ムコール属ラセモサス種の糸状菌が、そのITS領域において、配列番号1で示す塩基配列を有する請求項10または請求項11記載の環状ジエン系化合物分解菌。
【請求項13】
ムコール属ラセモサス種の糸状菌が、ムコールラセモサス DDF株(受託番号 FERM P−21775)である請求項10〜請求項12何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解菌。
【請求項14】
請求項1〜請求項9何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤または請求項10〜請求項13何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解菌を含有してなる汚染環境の浄化装置。
【請求項15】
請求項1〜請求項9何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤、請求項10〜請求項13何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解菌、または請求項14記載の汚染環境の浄化装置を用いてアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物に例示される1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物を分解する環状ジエン系化合物の分解方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項9何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解剤または請求項10〜請求項13何れか1項記載の環状ジエン系化合物分解菌をアルドリン、ディルドリン、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、エンドリン、エンドスルファン、エンドスルファンスルフェートからなる群から選択される少なくとも一の化合物に例示される1,2,3,4,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン構造を有する環状ジエン系化合物またはDDT若しくはDDEで汚染された土壌やウリ科植物に接種する汚染物質の浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【公開番号】特開2010−252673(P2010−252673A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105381(P2009−105381)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【Fターム(参考)】
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