説明

環状ジオールまたはその誘導体の製造方法

【課題】7員環以上の大環状ジオールまたはその誘導体を効率的に得る製造方法を提供する。
【解決手段】下図で表される化合物の製造方法であって、


化合物(2)に対して0.01〜10モル比の化合物(4)の存在下、化合物(2)と化合物(3)とを50℃〜180℃の温度範囲で反応させる。


OH(3)、AHSO-(4)(式中、nは1〜9であり、Rは、同一または相異なり水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、アラルキル基を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ジオールまたはその誘導体の製造方法の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状ジオールまたはその水酸基の一方を保護した誘導体は、官能基変換が容易に行うことが可能な化合物であり、配位子の基本骨格、香料または医農薬の中間体としても重要であるため、その合成方法も種々報告されている。
例えば、固体酸存在下、1,2-エポキシシクロヘキサンの開環反応によるシクロへキサンジオール合成が記載されている(特許文献1、特許文献2)。また、硫酸水素ナトリウムまたはテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩存在下でのエポキシドの開環によるジオール合成も記載されている(非特許文献1・非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-236337
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0192976号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tetrahedron, 2009, 985-989.
【非特許文献2】Organic Biomolecule Chemistry, 2003, 1, 1565-1567.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法では、7員環以上の大環状ジオールまたはその誘導体を効率的に得ることは困難であった。本発明の課題は、7員環以上の大環状ジオールまたはその誘導体を効率的に得る製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討することにより本発明により上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、(1−1)および/または(1−2)で表される化合物の製造方法であって、

(式中、nは1〜9であり、複数存在するRは、それぞれ同一または相異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアラルキル基を表す。)
下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを、前記式(2)で表される化合物量に対して0.01〜10モル比の下記式(4)表される化合物存在下、50℃〜180℃の温度範囲で反応させる製造方法。

(式中、nは前記と同様である。)

(式中、Rは前記と同様である。)

(式中、Aはナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子、またはNRを表し、R、R、RおよびRは、同一または相異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、または炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、R、R、RおよびRはそれぞれ結合して環を形成していてもよい。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、(1−1)および/または(1−2)で表されるで表される化合物を、効率的に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
式(1-1)および(1-2)で表される環状ジオールについて説明する。


(1−1)

(1−2)
(式中、nは1〜9であり、複数存在するRは、それぞれ同一または相異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアラルキル基を表す。)
【0009】
は、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキル基であり、より好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数7〜15のアラルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数7〜10のアラルキル基である。
【0010】
の炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜10、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である。
【0011】
の炭素原子数2〜20のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、ホモアリル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基などが挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜5のアルケニル基であり、より好ましくは、アリル基、ホモアリル基である。
【0012】
の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基または、シクロオクチル基などが挙げられ、好ましくは炭素原子数3〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0013】
の炭素原子数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(3,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(イソブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等などが挙げられ、好ましくは炭素原子数7〜10のアラルキル基であり、より好ましくはベンジル基である。
【0014】
の炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基あるいはアントラセニル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基である。好ましくは炭素原子数6〜15、より好ましくは炭素原子数6〜12のアリール基である。
【0015】
式(1-1)および(1-2)で表される化合物の具体例としては下記の化合物が挙げられる。

【0016】
また、これらの化合物のベンジル基をメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基に変更した化合物も挙げられる。
【0017】
式(2)で表される化合物は、下記のとおりである。


(式中、nは前記と同様である。)
【0018】
式(2)で表される化合物の具体例としては下記の化合物である。

【0019】
式(3)で表される化合物は下記のとおりである。

(式中、Rは前記と同様である。)
【0020】
式(3)で表される化合物の具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコールが挙げられる。
【0021】
式(3)で表される化合物の使用量は、式(2)で表される化合物量に対するモル比が1〜10000であり、収率の点から10〜1000が好ましい。
【0022】
式(4)で表される化合物は下記のとおりである。

【0023】
Aはナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子、NRを表し、R、R、RおよびRは、同一または相異なり、同一または相異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、または炭素原子数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ結合して環を形成していてもよい。
【0024】
Aは、ナトリウム原子、カリウム原子、NRが好ましく、より好ましくはナトリウム原子、NRであり、特に好ましくはNRである。
【0025】
、R、RおよびRは、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、または炭素原子数7〜20のアラルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数1〜20のアルキル基、または炭素原子数7〜10のアラルキル基である。
【0026】
、R、RおよびRの炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜10、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である。
【0027】
、R、RおよびRの炭素原子数3〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基または、シクロオクチル基などが挙げられ、好ましくは炭素原子数3〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0028】
、R、RおよびRの炭素原子数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(3,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(イソブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等などが挙げられ、好ましくは炭素原子数7〜10のアラルキル基であり、より好ましくはベンジル基である。
【0029】
本発明において、式(4)で表される化合物の使用量は、式(2)で表される化合物に対するモル比が、0.01〜10であり、好ましくは、0.05〜1.0であり、より好ましくは0.5〜0.05であり、特に好ましくは0.2〜0.05である。
【0030】
本反応では溶媒を用いてもよく、例えばトルエン、ベンゼン、o―キシレン、m―キシレン、およびp―キシレンのような芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素;1,4−ジオキサン、およびテトラヒドロフランのような環状エーテル;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルが挙げられ、好ましくはアセトニトリル、1,4−ジオキサン、およびテトラヒドロフランであり、より好ましくは、アセトニトリルおよび1,4−ジオキサンである。
【0031】
溶媒の使用量は、特に制限はないが式(3)で表される化合物に対して、0〜1000重量倍となるような範囲で用いることができ、好ましくは、0〜100重量倍である。
【0032】
本発明において、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とを反応させる温度は、50〜180℃であり、好ましくは55〜150℃あり、より好ましくは、60〜120℃であり、特に好ましくは65〜100℃である。
【0033】
本発明の製造方法は、ヘリウム、アルゴンもしくは窒素気流下、または空気雰囲気下で行うことができる。
【0034】
本発明の製造方法において、圧力の影響は無視できるため、大気圧下で反応を行うのが一般的である。
【0035】
本発明において、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とを反応させる時間は、5分間〜48時間であり、好ましくは1時間〜24時間、より好ましくは3時間〜18時間である。
【0036】
式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とを反応させる方法は特に限定されないが、式(2)で表される化合物を有機溶媒に溶解または希釈し、式(3)で表される化合物とを混合した後に、式(4)で表される化合物を加えることが好ましい。
【0037】
反応終了後、式(1-1)および(1-2)で表される化合物を得るため反応液を後処理することが好ましい。後処理方法としては、例えば、水、希塩酸水溶液、チオ硫酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム-炭酸ナトリウム混合水溶液を反応溶液に加え、次に、ジクロロメタン、ヘキサン、酢酸エチルまたはジエチルエーテルを加え、抽出操作を行うことができる。
得られた式(1-1)および(1-2)で表される化合物は、必要に応じて蒸留、再結晶、シリカゲルまたはアルミナを用いる薄相またはカラムクロマトグラフィー、および分取液体クロマトグラフィーによる精製操作を行って、純度を高めることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を下記の実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
化合物はH NMRおよび13C NMRで同定した。H NMRおよび13C NMRは、核磁気共鳴装置(日本電子社製、JNM−AL400)を用いて下記の条件により測定した。テトラメチルシランの水素の化学シフト値を基準にした。
測定溶媒:CDCl
測定温度:室温
【0040】
目的の生成物のtrans-1,2−シクロオクタンジオールと原料の1,2−エポキシシクロオクタンと副生成物のシクロオクタジエンの比は、H NMRのtrans-1,2−シクロオクタンジオールのδ3.59のピークと1,2−エポキシシクロオクタンのδ2.91のピークとシクロオクタジエンのδ5.68より算出した。
【0041】
1,2−エポキシシクロオクタンおよびテトラブチルアンモニウム硫酸水素酸塩は、東京化成品を用いた。
【0042】
(実施例1)
空気雰囲気下100mLナス型フラスコに、1,2−エポキシシクロオクタン(5.00g、39.62mmol)、アセトニトリル(5.0ml)を入れた。さらに、水(50.0ml)を加えた。この溶液に、テトラブチルアンモニウム硫酸水素酸塩(1.35g、3.96mmol)を加え反応液を80℃まで昇温し6時間撹拌した。その後、室温まで冷却した後、ジクロロメタンを50ml加え、有機層を分離した後、水層をジクロロメタン30mLで3回抽出した。分離した有機層と抽出液を硫酸マグネシウムにより乾燥した。減圧下、揮発成分を留去して、薄い褐色油状物を4.2g得た。得られた薄い褐色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル (v/v) = 1/1)により精製し、目的のtrans-1,2−シクロオクタンジオールを1.82g(39.62mmol、32%)を得た。
【0043】
trans-1,2−シクロオクタンジオール
H−NMR(CDCl):δ3.59(m,2H),2.47(brs,2H),1.83−1.89(m,2H),1.47−1.75(m,10H).
13C−NMR(CDCl):δ76.13,31.87,26.18,23.80.
【0044】
(実施例2)
空気雰囲気下50mLバイアルに、1,2−エポキシシクロオクタン(1.00g、7.92mmol)、重アセトニトリル(0.75ml)を入れた。さらに、水(10.0ml)を加えた。この溶液に、テトラブチルアンモニウム硫酸水素酸塩(0.54g、1.58mmol)を加え反応液を98℃まで昇温し3時間撹拌した。その後、室温まで冷却した後、重クロロホルムを加え、H−NMRを測定した。その結果、原料の1,2−エポキシシクロオクタンと目的の生成物のtrans-1,2−シクロオクタンジオールと副生成物のシクロオクタジエンの比は、<1:80:20であった。
【0045】
(実施例3)
空気雰囲気下50mLバイアルに、1,2−エポキシシクロオクタン(1.00g、7.92mmol)、重アセトニトリル(0.75ml)を入れた。さらに、水(10.0ml)を加えた。この溶液に、テトラブチルアンモニウム硫酸水素酸塩(0.54g、1.58mmol)を加え反応液を80℃まで昇温し6時間撹拌した。その後、室温まで冷却した後、重クロロホルムを加え、H−NMRを測定した。その結果、原料の1,2−エポキシシクロオクタンと目的の生成物のtrans-1,2−シクロオクタンジオールと副生成物のシクロオクタジエンの比は、<1:76:24であった。
【0046】
(実施例4)
空気雰囲気下50mLバイアルに、1,2−エポキシシクロオクタン(1.00g、7.92mmol)を入れた。さらに、水(10.0ml)を加えた。この溶液に、テトラブチルアンモニウム硫酸水素酸塩(0.54g、1.58mmol)を加え反応液を80℃まで昇温し6時間撹拌した。その後、室温まで冷却した後、重クロロホルムを加え、H−NMRを測定した。その結果、原料の1,2−エポキシシクロオクタンと目的の生成物のtrans-1,2−シクロオクタンジオールと副生成物のシクロオクタジエンの比は、<1:74:26であった。
【0047】
(実施例5)
空気雰囲気下50mLバイアルに、1,2−エポキシシクロオクタン(1.00g、7.92mmol)、重アセトニトリル(0.75ml)を入れた。さらに、水(10.0ml)を加えた。この溶液に、テトラブチルアンモニウム硫酸水素酸塩(0.54g、1.58mmol)を加え反応液を65℃で6時間撹拌した。その後、重クロロホルムを加え、H−NMRを測定した。その結果、原料の1,2−エポキシシクロオクタンと目的の生成物のtrans-1,2−シクロオクタンジオールと副生成物のシクロオクタジエンの比は、26:59:15であった。
【0048】
(比較例1)
空気雰囲気下50mLバイアルに、1,2−エポキシシクロオクタン(1.00g、7.92mmol)、重アセトニトリル(0.75ml)を入れた。さらに、水(10.0ml)を加えた。この溶液に、テトラブチルアンモニウム硫酸水素酸塩(0.54g、1.58mmol)を加え反応液を28℃で50時間撹拌した。その後、重クロロホルムを加え、H−NMRを測定した。その結果、原料の1,2−エポキシシクロオクタンと目的の生成物のtrans-1,2−シクロオクタンジオールと副生成物のシクロオクタジエンの比は、98:2:<1であった。
【0049】
(比較例2)
空気雰囲気下50mLバイアルに、1,2−エポキシシクロオクタン(1.00g、7.92mmol)を入れた。さらに、水(10.0ml)を加えた。この溶液に、テトラブチルアンモニウム硫酸水素酸塩(0.54g、1.58mmol)を加え反応液を28℃で50時間撹拌した。その後、重クロロホルムを加え、H−NMRを測定した。その結果、原料の1,2−エポキシシクロオクタンと目的の生成物のtrans-1,2−シクロオクタンジオールと副生成物のシクロオクタジエンの比は、96:4:<1であった。
【0050】
(比較例3)
空気雰囲気下100mLナス型フラスコに、1,2−エポキシシクロオクタン(5.00g、39.62mmol)を入れた。さらに、水(5.0ml)を加えた。この溶液に、Amberlyst(登録商標) 15 hydrogen form (dry,moisture) <Aldrich社製 Product Number:216380>(1.47g)を加え反応液を50℃まで昇温し9時間撹拌した。その後、室温まで冷却した後、ジクロロメタンを50ml加え、有機層を分離した後、水層をジクロロメタン30mLで3回抽出した。分離した有機層と抽出液を硫酸マグネシウムにより乾燥した。減圧下、揮発成分を留去して、薄い褐色油状物を2.88g得た。得られた薄い褐色油状物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(v/v)= 1/1)により精製し、目的のtrans-1,2−シクロオクタンジオールを0.85g(5.89mmol、15%)を得た。
【0051】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1−1)および/または(1−2)で表される化合物の製造方法であって、

(式中、nは1〜9であり、複数存在するRは、それぞれ同一または相異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアラルキル基を表す。)
下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを、前記式(2)で表される化合物量に対して0.01〜10モル比の下記式(4)表される化合物存在下、50℃〜180℃の温度範囲で反応させる製造方法。

(式中、nは前記と同様である。)

(式中、Rは前記と同様である。)

(式中、Aはナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子、またはNRを表し、R、R、RおよびRは、同一または相異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、または炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、R、R、RおよびRはそれぞれ結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
nが2,3,4,5または6である請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−28557(P2013−28557A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165195(P2011−165195)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】