説明

環状ジスルホン酸エステル化合物の製造方法

【課題】同一槽でのバッチ反応で工業的に有利に環状ジスルホン酸エステルを製造する方法の提供。
【解決手段】五酸化ニリンの存在下で、環状ジスルホン酸エステルを製造する方法であって、ジスルホン酸化合物と、ホルムアルデヒド化合物とを、五酸化ニリンの存在下で脱水反応させる、第1工程、及び、第1工程で得られた反応混合物に、五酸化ニリン1モルに対して0.5〜1.2モルの水を添加し、反応槽から反応混合物を抜き出す、第2工程、を含み、第1工程と第2工程がバッチ方式で行われることを特徴とする、環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ジスルホン酸エステル化合物の工業的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状ジスルホン酸エステルは医薬、農薬の中間体や機能性材料として有用なものであり、たとえば特許文献1には哺乳動物の癌治療に有用であることが、特許文献2には二次電池用電解液の安定化剤として用いることが開示されている。
【0003】
環状ジスルホン酸エステルの製造方法として、特許文献1及び特許文献3には、ジスルホン酸銀をジヨードメタン又はジブロモエタンと反応させる方法が開示されており(スキーム1参照)、
【化1】

【0004】
また、特許文献4には、ジアルカンスルホン酸と、メチレンジアセテート等とを反応させる方法が開示されている(スキーム2参照)。
【化2】

【0005】
さらに、特許文献5にはスルホン酸無水物を用いて非環状ジスルホン酸エステルを合成する方法が、特許文献6にはスルホン酸化合物とホルムアルデヒドとを脱水剤の存在下で反応させて非環状ジスルホン酸エステルを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表昭61−501089号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/057714号公報
【特許文献3】国際公開WO2007/148597号公報
【特許文献4】特開2005−336155号公報
【特許文献5】特開2008−169162号公報
【特許文献6】特開2008−169161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献3の方法では、原料であるジスルホン酸銀を製造するために必要な炭酸銀や、反応に用いるジヨードメタンが高価であるという問題があり、さらに反応速度が遅く目的物は満足のいく収率で得られない場合があった。また、特許文献4の方法では使用するメチレンジアセテートの入手が困難であり、しかも高価であるというという問題があった。いずれの方法も小規模で目的物を得るには適しているが、工業規模の大量スケールでは必ずしも有利とは言えない。
【0008】
これに対して、特許文献6の方法では、五酸化二リン等の安価な試薬を脱水剤として用いるため、上記の方法に比べて安価に製造が可能である。
【0009】
しかしながら、脱水剤を用いた特許文献6の方法をバッチ方式による反応(以下、単に「バッチ反応」とも記載する)で行うにはバッチ間での反応槽の乾燥操作が必須である。式[2]で表される環状ジスルホン酸エステルは、特許文献6の実施例によれば以下のスキーム3で表される反応によって製造される。
【化3】

【0010】
上記スキームでは反応が良好に進行するが、反応終了後に水を添加し、ろ過により目的物を単離すると、初回のバッチでは特許文献と同程度の収率を得ることができたが、そのまま連続してバッチ反応を行うと収率が著しく低下してしまう(比較例3参照)。そこで、上記スキームの反応終了後に水を添加せずに反応後の反応混合物を反応容器から抜き出そうとすると、反応混合物が凝固してしまう(比較例1参照)。また、反応終了後に溶媒によって目的物を抽出しようとしたところ、溶媒に不溶な固体が生成し操作に難が生じ、収率も低いものとなる(比較例2参照)。このように上記スキームをバッチ反応で行う場合、次のバッチを行う前に反応器の乾燥が必須となることから必ずしも工業的に有利ではない。
【0011】
そこで、同一槽でのバッチ反応で工業的に有利に環状ジスルホン酸エステルを製造する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討を行い、五酸化ニリンの存在下でジスルホン酸化合物とホルムアルデヒド化合物を反応させ、環状ジスルホン酸エステル化合物を得る方法において、反応混合物に特定量の水を添加することで、本課題の解決に至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下の発明[発明1]〜[発明5]を含む、環状ジスルホン酸エステル化合物の製造方法を提供する。
【0014】
[発明1]
五酸化ニリンの存在下で、式[2]で表される環状ジスルホン酸エステル
【化4】

【0015】
(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、式[3]
【化5】

【0016】
で示される有機基、又は式[4]
【化6】

【0017】
で示されるアルキレン鎖を示す;式[3]の有機基におけるRは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のハロアルキル基、炭素数3〜8のハロシクロアルキル基、又は、無置換もしくは置換基を有するフェニル基を示す;式[4]のアルキレン鎖におけるR及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のハロアルキル基、炭素数3〜8のハロシクロアルキル基、又は、無置換もしくは置換基を有するフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示す。)
を製造する方法であって、
式[1]で表されるジスルホン酸化合物
【化7】

【0018】
(式中、Xは式[2]と同じである。)
と、ホルムアルデヒド化合物とを、五酸化ニリンの存在下で脱水反応させる、第1工程、及び、
第1工程で得られた反応混合物に、五酸化ニリン1モルに対して0.5〜1.2モルの水を添加し、反応槽から反応混合物を抜き出す、第2工程、を含み、
第1工程と第2工程がバッチ方式で行われることを特徴とする、環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【0019】
[発明2]
第2工程において反応混合物に水を添加する際に、該反応混合物の温度が80℃以上であることを特徴とする、発明1に記載の環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【0020】
[発明3]
第2工程において反応槽から反応混合物を抜き出す際に、該反応混合物の温度が60℃以上であることを特徴とする、発明1又は2に記載の環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【0021】
[発明4]
第2工程において反応槽から反応混合物を抜き出した後に、連続して第1工程及び第2工程を行うことを特徴とする、発明1から3のいずれかに記載の環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【0022】
[発明5]
ジスルホン酸化合物がイミドジスルホン酸、メタンジスルホン酸、エタンジスルホン酸のいずれか一つである発明1から4のいずれかに記載の環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の方法を用いると、同一槽を使用するバッチ製造において、目的とする環状ジスルホン酸エステル化合物を再現性良く、効率的に製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
まずは第一工程の反応について説明する。反応の原料として用いられるジスルホン酸化合物は、式[1]で表される化合物であり、
【化8】

【0026】
式中、Xは酸素原子、硫黄原子、式[3]
【化9】

【0027】
で示される有機基、又は、式[4]
【化10】

【0028】
で示されるアルキレン鎖を示す。
【0029】
式[3]の有機基におけるRは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のハロアルキル基、炭素数3〜8のハロシクロアルキル基、又は、無置換もしくは置換基を有するフェニル基を示し、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。フェニル基に置換する置換基には、フッ素原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖のハロアルキル基、又は、炭素数3〜8のハロシクロアルキル基が挙げられ、なかでもメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0030】
式[4]のアルキレン鎖におけるR及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のハロアルキル基、炭素数3〜8のハロシクロアルキル基、又は、無置換もしくは置換基を有するフェニル基を示し、なかでも水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基が好ましく、その中でも水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基がより好ましい。フェニル基に置換する置換基には、フッ素原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖のハロアルキル基、又は、炭素数3〜8のハロシクロアルキル基が挙げられ、なかでもメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。mは1〜4の整数を示し、中でもmが1、又は、2の場合が好ましく、mが1の場合が特に好ましい。
【0031】
該ジスルホン酸化合物は具体的にはイミドジスルホン酸、N-メチルイミドジスルホン酸、メタンジスルホン酸、1, 2−エタンジスルホン酸、1, 3−プロパンジスルホン酸、1, 4−ブタンジスルホン酸1, 1−ジフルオロメタン−ジスルホン酸、1, 1, 2, 2−テトラフルオロジスルホン酸、1, 1, 2, 2, 3, 3−ヘキサフルオロジスルホン酸、1, 1−ジメチルメタンジスルホン酸、2, 2−プロパンジスルホン酸等が挙げられるが、なかでもイミドジスルホン酸、メタンジスルホン酸、エタンジスルホン酸が好ましく、メタンジスルホン酸が特に好ましい。
【0032】
前記ジスルホン酸化合物は市販のものを使用しても良いし、また、式[5]
【化11】

【0033】
(式中、Xは前記式[1]と同じ。X’はハロゲン原子を示す。)で表されるジスルホニルハライドと水とを反応させる方法(例えば、特開2005−336155号)によって得られたものを使用しても良い。
【0034】
本発明に使用されるホルムアルデヒド化合物としては、例えば、パラホルムアルデヒド、無水ホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。これらのパラホルムアルデヒド化合物は単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
第1工程で使用する五酸化ニリンの使用量は、ジスルホン酸化合物1モルに対して、通常は0.6〜10モルの範囲であればよく、特に0.8〜3.0モルの範囲が好ましい。
【0036】
本反応の反応温度は用いる化合物により異なるが、通常、0〜200℃であり、好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は反応温度や用いる化合物により異なるが、通常、0.1〜10時間である。これらは条件に応じて適宜検討を行うと良い。
【0037】
本反応には必要に応じて溶媒を使用してもよく、使用できる溶媒は反応に不活性なものであればよい。具体的にはトルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド系溶媒、酢酸エチル等の酢酸エステル系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド・スルホン系溶媒等が挙げられる。あるいは、反応で生成するピロリン酸を溶媒として用いても良い。しかしながら、第1工程の反応は無溶媒で良好に進行するため、溶媒を用いない場合、工業的に有利であるといえる。
【0038】
次に第2工程について詳細に説明する。第1工程の反応により、反応混合物中にはメタリン酸が生成すると考えられる(スキーム4参照)。
【化12】

【0039】
生成したメタリン酸は任意の重合体であり(スキームでは単に(HPO)と記載)、この重合体が操作性の低下を引き起こすと考えられる。本発明では第1工程で得られた反応混合物に特定量の水を添加することで、生成したメタリン酸がピロリン酸に変換され、操作性が向上したと想定される。過剰量の水を添加するとメタリン酸はリン酸にまで変換されるため更に操作性は向上すると考えられるが、反応混合物の酸性度が高くなり、高温下では反応槽を腐蝕する可能性がある。よって、温度制御の難しい工業スケールでは耐酸性の反応槽を使用する必要があるなどの問題が生じ、工業的に有利とはいいがたい(スキーム5参照)。
【化13】

【0040】
該反応混合物に添加する水の量は、第1工程で使用した五酸化ニリン1モルに対して、0.5〜1.5モルであることが好ましい。さらに、0.8〜1.2モルがより好ましい。水の量が0.5モルより少ないとピロリン酸が十分に調製出来ないため、反応混合物は80℃下に於いても抜出すことが出来ず、1.2モルより多いと、反応混合物の酸性度が高くなり、或は、同一槽で次のバッチ反応を行った際の収率が低下するため好ましくない。
【0041】
水を添加する際の反応混合物の温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。温度が80℃より低いと、メタリン酸の凝固が始まるため、操作性が低下し好ましくない。
【0042】
水を添加した反応混合物は充分に攪拌されることが望ましいが、攪拌に要する時間などは水の添加量や該反応混合物の温度によって適宜検討するとよい。
【0043】
反応槽から該反応混合物を抜き出す際、該反応混合物の温度は60℃以上であることが好ましく70℃以上がより好ましい。抜出し時の温度が60℃より低いとピロリン酸の凝固が始まるため、操作性が低下し好ましくない。
【0044】
抜き出し後の槽は次のバッチの第1工程を行う前に洗浄・乾燥をしても良いが、洗浄・乾燥操作を省略することで、洗浄溶媒を使う必要がなく操作も簡便になるので、乾燥をせずに連続してバッチ反応を行うと工業的に有利となる。
【0045】
抜き出した反応混合物に含まれる目的物は、公知の方法を適用して精製されるが、例えば反応槽から抜き出された反応混合物を室温まで冷却した後に水を加えて攪拌し、析出物を濾別することで目的物である環状ジスルホン酸エステルの結晶を簡便に得ることができる。
【実施例】
【0046】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
(1バッチ目 第1工程及び第2工程)
100ml四つ口フラスコにメタンジスルホン酸5.0g(28.4mmol)及び五酸化ニリン4.0g(28.4mmol)を加え、攪拌下パラホルムアルデヒド0.85g(28.4mmol)を添加した。添加終了後、120℃で1時間攪拌した後、80℃まで冷却した。この反応混合物に水0.5gをゆっくり加え、10分間攪拌した後、65℃で100mlナスフラスコに取り出し、反応混合物が移液可能であることを確認した。移液後の反応器については次バッチにそのまま用いた。ナスフラスコに取り出した反応混合物を室温まで冷却し、さらに水35gを加えた。30分間攪拌後、不溶物を濾別し白色結晶を得た。得られた結晶を40℃、10mmHgで6時間乾燥することにより目的物メチレンメタンジスルホネートを2.4g(収率45%)得た。
【0048】
(2バッチ目 第1工程及び第2工程)
1バッチ目で使用した100ml四つ口フラスコ(1バッチ目の反応混合物抜き出し後、洗浄・乾燥操作をしていないもの)に、メタンジスルホン酸5.0g(28.4mmol)及び五酸化ニリン4.0g(28.4mmol)を加え、攪拌下パラホルムアルデヒド0.85g(28.4mmol)を添加した。添加終了後、120℃で1時間攪拌した後、80℃まで冷却した。この反応混合物に水0.5gをゆっくり加え、10分間攪拌した後、65℃で100mlナスフラスコに取り出した。ナスフラスコに取り出した反応混合物を室温まで冷却し、さらに水35gを加えた。30分間攪拌後、不溶物を濾別し白色結晶を得た。得られた結晶を40℃、10mmHgで6時間乾燥することにより目的物メチレンメタンジスルホネートを2.5g(収率47%)得た。
【0049】
実施例の結果から、第2工程において反応槽から脱水剤に対し特定量の水を添加することで、バッチ間での反応槽の洗浄・乾燥を実施することなく、再現性良く良好な収率で環状ジスルホン酸エステル化合物が得られることがわかった。
【0050】
[比較例1]
100ml四つ口フラスコにメタンジスルホン酸2.9g(16.46mmol)及び五酸化ニリン2.3g(16.46mmol)を加え、攪拌下パラホルムアルデヒド0.49g(16.46mmol)を添加した。添加終了後、120℃で1時間攪拌した後、70℃下で反応混合物を抜出そうとしたところ、反応混合物の凝固により、全く抜出すことが出来なかった。
【0051】
[比較例2]
100ml四つ口フラスコにメタンジスルホン酸2.9g(16.46mmol)及び五酸化ニリン2.3g(16.46mmol)を加え、攪拌下パラホルムアルデヒド0.49g(16.46mmol)を添加した。添加終了後、120℃で1時間攪拌した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、塩化メチレン50gを添加後、1時間攪拌を行った。不溶物を濾別した濾液を濃縮し、得られた結晶を40℃、10mmHgで6時間乾燥することにより目的物メチレンメタンジスルホネートを0.59g(収率19%)得た。このように、塩化メチレンを用いて溶媒抽出を行った場合、塩化メチレンに不溶の固体が多量に析出するため、十分に抽出が行えず低収率であった。
【0052】
[比較例3]
(1バッチ目)
100ml四つ口フラスコにメタンジスルホン酸5.0g(28.4mmol)及び五酸化ニリン4.0g(28.4mmol)を加え、攪拌下パラホルムアルデヒド0.85g(28.4mmol)を添加した。添加終了後、120℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却した。この反応混合物に水35gをゆっくり加え、30分間攪拌後、不溶物を濾別し白色結晶を得た。得られた結晶を40℃、10mmHgで6時間乾燥することにより目的物メチレンメタンジスルホネートを2.4g(収率45%)得た。
【0053】
(2バッチ目)
1バッチ目で用いた100ml四つ口フラスコをそのまま使用し、再びメタンジスルホン酸5.0g(28.4mmol)及び五酸化ニリン4.0g(28.4mmol)を加え、攪拌下パラホルムアルデヒド0.85g(28.4mmol)を添加し120℃、1時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、水35gをゆっくり加えた。30分間攪拌後、不溶物を濾別し白色結晶を得た。得られた結晶を40℃、10mmHgで6時間乾燥することにより目的物メチレンメタンジスルホネートを1.7g(収率31%)得た。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の製造法によって得られた環状ジスルホン酸エステル化合物は、農薬の中間体や機能性材料として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
五酸化ニリンの存在下で、式[2]で表される環状ジスルホン酸エステル
【化1】

(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、式[3]
【化2】

で示される有機基、又は式[4]
【化3】

で示されるアルキレン鎖を示す;式[3]の有機基におけるRは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のハロアルキル基、炭素数3〜8のハロシクロアルキル基、又は、無置換もしくは置換基を有するフェニル基を示す;式[4]のアルキレン鎖におけるR及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のハロアルキル基、炭素数3〜8のハロシクロアルキル基、又は、無置換もしくは置換基を有するフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示す。)
を製造する方法であって、
式[1]で表されるジスルホン酸化合物
【化4】

(式中、Xは式[2]と同じである。)
と、ホルムアルデヒド化合物とを、五酸化ニリンの存在下で脱水反応させる、第1工程、及び、
第1工程で得られた反応混合物に、五酸化ニリン1モルに対して0.5〜1.2モルの水を添加し、反応槽から反応混合物を抜き出す、第2工程、を含み、
第1工程と第2工程がバッチ方式で行われることを特徴とする、環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【請求項2】
第2工程において反応混合物に水を添加する際に、該反応混合物の温度が80℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【請求項3】
第2工程において反応槽から反応混合物を抜き出す際に、該反応混合物の温度が60℃以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【請求項4】
第2工程において反応槽から反応混合物を抜き出した後に、連続して第1工程及び第2工程を行うことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。
【請求項5】
ジスルホン酸化合物がイミドジスルホン酸、メタンジスルホン酸、エタンジスルホン酸のいずれか一つである請求項1から4のいずれかに記載の環状ジスルホン酸エステルを製造する方法。

【公開番号】特開2012−131724(P2012−131724A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284123(P2010−284123)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)