説明

環状ノズルの検査方法及び検査装置

【課題】環状ノズルの検査を容易にし、検査にかかる工数及びコストを低減することのできる環状ノズルの検査方法及び検査装置を提供する。
【解決手段】環状ノズルの検査装置1は、円周上に配された吐出口50を有すると共に、吐出口50に通じる流路51を内部に備えた環状ノズル5の検査を行うものである。環状ノズルの検査装置1は、検査用冶具2と、空気供給装置3と、検査用球体4とを備えている。検査用冶具2は、流路51の流入口52と連通する供給路24を有している。空気供給装置3によって、供給路24及びへ空気を供給することにより、吐出口50から吐出空気を吐出させて検査用球体4に衝突可能に構成されており、吐出空気の吐出状態に応じた浮遊状態で検査用球体4を浮遊させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円周上に形成された吐出口を備える環状ノズルの検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のボディ等の被塗装物の塗装に用いられる塗装装置としては、回転霧化式塗装装置が知られている(特許文献1)。この回転霧化式塗装装置は、流通する空気のエネルギーを駆動源とするエアモータと、エアモータに連結された回転霧化頭と、円周上に形成された第1吐出口と第1吐出口の外側に配された円周上に形成された第2吐出口とを有する環状ノズル(シェーピングノズル)とを備えている。
【0003】
回転霧化式塗装装置は、エアモータによって回転する回転霧化頭に塗料を供給し、遠心力によって塗料を霧化すると共に被塗装物へと噴出するよう構成されている。環状ノズルは、その第1吐出口及び第2吐出口から吐出させる空気によって、回転霧化頭から噴出された塗料の外側を覆うシェーピングエアを形成し、霧化した塗料の飛散を抑制し被塗装物への塗着効率を向上するものである。
【0004】
特許文献1に示された回転霧化式塗装装置における環状ノズルは、複数の部品により構成されており、その内部には、第1吐出口に通じる第1流路と、第2吐出口に通じる第2流路とが形成されている。また、複数の部品同士が当接する部分には、第1流路及び第2流路からの空気漏れを防止するOリングが配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−41893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転霧化式塗装装置は、その塗装品質の低下を防止するために、メンテナンスを行う必要があり、環状ノズルに関しても分解整備が行われる。この分解整備後、環状ノズルを組立てた際に、環状ノズルの内部において、Oリングの組付不良や、流路の詰まり等の異常が生じていたとしても環状ノズルの外観から発見することは困難である。したがって、環状ノズルの内部に異常がないかを確認するために、回転霧化式塗装装置に環状ノズルを組付けて塗装を行い塗装面及び塗料の飛散状況を確認する塗装検査を行う必要がある。この塗装検査は、実際に使用する回転霧化式塗装装置を用いて行うため、回転霧化式塗装装置を配した塗装工程を停止する必要があり、塗装工程における生産効率が低下するおそれがある。また、塗装による確認においては、塗料を消費するため検査コストが増大するおそれがある。
【0007】
また、塗装検査を行った結果、塗装面や塗料の噴出状態の不良が確認された場合、環状ノズルを分解整備した後、再度塗装検査を行う必要があるため、検査にかかる工数と検査コストがさら増大するおそれがある。
【0008】
尚、上記の問題は、第1吐出口と第2吐出口の2組の吐出口を備えた回転霧化式塗装装置における環状ノズルに限ったものではなく、1組あるいは複数組の吐出口から、気体、液体などの種々の流体を吐出するように構成された環状ノズルを検査する場合に起こりうるものである。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、環状ノズルの検査を容易にし、検査にかかる工数及びコストを低減することのできる環状ノズルの検査方法及び検査装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、円周上に配された1組又は複数組の吐出口を有すると共に、上記吐出口に通じる流路を内部に備えた環状ノズルの検査方法であって、
上記吐出口を上方に向けて上記環状ノズルを配置し、
上記流路の流入口から空気を供給して、上記吐出口から吐出空気を吐出させ、
該吐出空気を検査用球体に衝突させ、該検査用球体を浮遊させることを特徴とする環状ノズルの検査方法にある(請求項1)。
【0011】
本発明の他の態様は、円周上に配された1組又は複数組の吐出口を有すると共に、上記吐出口に通じる流路を内部に備えた環状ノズルの検査装置であって、
上記環状ノズルと合体可能に構成された検査用冶具と、
該検査用冶具に空気を供給する空気供給装置と、
上記環状ノズルの先端側に配置される検査用球体とを備えており、
上記検査用冶具は、上記環状ノズルと合体した際に、上記流路の流入口と連通する供給路を有しており、
上記空気供給装置によって、上記供給路へ空気を供給することにより、上記吐出口から吐出空気を吐出させて上記検査用球体に衝突可能に構成されていることを特徴とする環状ノズルの検査装置にある(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
上記環状ノズルの検査方法においては、上記環状ノズルの上記吐出口から上記吐出空気を吐出させると共に、検査用球体に衝突させ、該検査用球体を浮遊させることにより、上記環状ノズルの内部の状態を検査することができる。すなわち、上記環状ノズルの内部における異物による詰まりや、上記環状ノズルを構成する部品の組付不良等の種々の不具合がある場合には、上記環状ノズルの内部の流路を通過して上記吐出口から吐出される上記吐出空気の吐出状態が、不具合がない場合と比べて変化する。そして、上記検査用球体の浮遊状態は、上記吐出空気の吐出状態に応じて変化する。したがって、環状ノズルにおける不具合の状態を、上記吐出空気を衝突させた上記検査用球体の浮遊状態によって可視化することができる。それゆえ、上記環状ノズルの検査を容易とし、検査にかかる工数及びコストを低減することができる。
【0013】
上記環状ノズルの検査装置は、少なくとも上記のごとく構成された上記検査用冶具と、上記空気供給装置と、上記検査用球体とを備えている。そのため、上述の優れた環状ノズルの検査方法を確実に実施することができる。
【0014】
上記のごとく、本発明によれば、環状ノズルの検査を容易にし、検査にかかる工数及びコストを低減することのできる環状ノズルの検査方法及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、環状ノズルの検査装置を示す説明図。
【図2】実施例1における、環状ノズル検査用冶具を示す説明図。
【図3】実施例1における、環状ノズルを示す平面図。
【図4】図3における、A−A矢視線断面図。
【図5】実施例1における、回転霧化式塗装装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記環状ノズルの検査方法及び検査装置において、上記環状ノズルは、少なくとも第1吐出口と第2吐出口の2組の上記吐出口を有すると共に、第1流路と第2流路の2組の上記流路を内部に備えたものとすることができる(請求項2、請求項7)。この場合には、上記流路が複数形成されるため、上記環状ノズルの内部の構造が複雑化する。そのため、上記環状ノズルの内部における不具合が発生しやすい。したがって、上記環状ノズルの検査方法及び検査装置を用いることが非常に有効であり、検査効率を大幅に向上し、検査にかかる工数及び検査コストの低減効果を向上することができる。
【0017】
また、上記検査用球体の直径は、上記吐出口を配した円周の直径よりも大きいことが好ましい(請求項3、請求項9)。この場合の吐出口を配した円周は、複数の円周がある場合には、最も内側の最小径のものが該当する。そして、上記検査用球体の直径を上記のごとく設定することにより、上記吐出空気によって、上記検査用球体を浮遊させやすくなり、上記環状ノズルの検査を確実に行うことができる。
【0018】
また、上記環状ノズルは、複数の部品を組み合わせて構成したものとすることができる(請求項4、請求項10)。複数の部品を組み合わせて構成された上記環状ノズルは、1部品により構成されたものに比べ、組み付け不良等が発生しやすい。したがって、上記環状ノズルの検査方法及び検査装置を用いることが非常に有効であり、検査効率を大幅に向上し、検査にかかる工数及び検査コストの低減効果を向上することができる。
【0019】
また、上記環状ノズルは、回転霧化式塗装装置の先端部に配されるシェーピングノズルとすることができる(請求項5、請求項11)。上記回転霧化式塗装装置は、回転により生じる遠心力によって塗料を霧化させる回転霧化頭と、この回転霧化頭を回転させるエアモータと、上記シェーピングノズルとを備えている。上記シェーピングノズルは、複数の部品で構成されることが多いうえ、内部に異常が生じた場合、上記吐出空気によって形成されるシェーピングエアに乱れが生じ、塗装品質及び塗着効率の低下につながる。したがって、上記の優れた環状ノズルの検査方法及び検査装置を用いることが非常に有効であり、検査効率を大幅に向上し、検査にかかる工数及び検査コストの低減効果を向上することができる。また、塗装品質を向上することができる。
【0020】
上記環状ノズルの検査装置において上記空気供給装置は、上記流路に供給される空気の圧力を制御する圧力制御部を備えていることが好ましい(請求項8)。この場合には、上記流路に供給される空気の圧力を調整することにより、上記吐出口から吐出される上記吐出空気の圧力を上記環状ノズルの検査方法に適した圧力とすることができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本発明に示す環状ノズルの検査方法及び検査装置にかかる実施例について、図1〜図5を参照して説明する。
環状ノズルの検査装置1は、円周上に配された吐出口50(第1吐出口501、第2吐出口502)を有すると共に、吐出口50に通じる流路51(第1流路511、第2流路512)を内部に備えた環状ノズル5(図3〜図4)の検査を行うものである。
【0022】
環状ノズルの検査装置1は、図1に示すごとく、環状ノズル5と合体可能に構成された検査用冶具2と、該検査用冶具2に空気を供給する空気供給装置3と、環状ノズル5の先端側に配置される検査用球体4とを備えている。検査用冶具2は、環状ノズル5と合体した際に、流路51の流入口52と連通する供給路24を有している。空気供給装置3によって、供給路24及びへ空気を供給することにより、吐出口50から吐出空気A1、A2を吐出させて検査用球体4に衝突可能に構成されている。
【0023】
以下、本例の環状ノズルの検査方法及び検査装置について、さらに詳細に説明する。
本例において回転霧化式塗装装置6におけるエアモータ62の回転軸線の方向を軸方向とする。軸方向において、回転霧化頭61を配した側を先端側とし、反対側を基端側とする。
【0024】
本例において、検査に供する環状ノズル5は、回転霧化式塗装装置6の先端部に配されるシェーピングノズルである。
回転霧化式塗装装置6は、図5に示すごとく、回転することにより塗料を霧化させる回転霧化頭61と、該回転霧化頭61を回転させるエアモータ62と、エアモータ62の径方向外側に配された外筒部63と、外筒部63の先端に配された環状ノズル5とを備えている。
回転霧化頭61は、同図に示すごとく、開口端611に向かって徐々に拡径された有底円筒形状をなしている。回転霧化頭61をエアモータ62によって回転させ、内周面に塗料を供給することにより、遠心力によって霧化した塗料を開口端611から噴霧する。
【0025】
図5に示すごとく、回転霧化頭61を回転させる、エアモータ62は、略円筒状のハウジング623と、ハウジング623の内側に挿通配置され回転霧化頭61と連結されたロータ621とからなる。ハウジング623の内部には、環状ノズル5の第1流路511と連通する塗装機側第1流路624が形成されている。
同図に示すごとく、エアモータ62の径方向外側には、略円筒状の外筒部63を配してある。外筒部63とエアモータ62のハウジング623との間には、環状ノズル5の第2流路512と連通する塗装機側第2流路625が形成されている。
【0026】
環状ノズル5は、第1吐出口501及び第2吐出口502から吐出される吐出空気A1、A2によって、回転霧化頭61によって霧化された塗料の飛散を防止するシェーピングエアA3を形成するためのシェーピングノズルである。
図5に示すごとく、外筒部63の先端には、環状ノズル5を配してある。環状ノズル5は、図3〜図4に示すごとく外筒部63と螺合するボディ部54と、第1吐出口501及び第2吐出口502を有するノズル部53と、ノズル部53とボディ部54との間に配されたスペーサ部55とからなる。
【0027】
ボディ部54は、図4に示すごとく、略円筒状の本体部541と、本体部541の先端から内周側に向かって延びるボディ側鍔部547とを有している。
本体部541は、その内部に第2流路512の一部をなすよう軸方向に設けられた基端側分割第2流路542を同一円周上に複数形成してある。本体部541の外周面には、ネジ山と第1凹溝部543とが形成されており、第1凹溝部543には第1Oリング251を配してある。
【0028】
また、本体部541の内周面には、第2Oリング252を配した第2凹溝部544が形成してある。
また、本体部541の先端側には、その外周縁に沿うと共にノズル部53の外周面に向かって延びる延設部545が形成してあり、ノズル部53の外周面との当接面には、第3Oリング253を配した第3凹溝部546が形成されている。
【0029】
ボディ側鍔部547には、その内周から基端側に向かって突出する内周突出部548を形成してある。また、内周突出部548の径方向外側の位置には、第1流路511の一部をなすよう軸方向に設けられた基端側分割第1流路549が同一円周上に複数形成されている。
【0030】
図4に示すごとく、ボディ部54の先端側には、スペーサ部55が配されている。スペーサ部55は、略L字断面からなる円環形状をなしており、軸方向に立設しノズル部53の内側に配される略円筒形状を有する挿入部551と、内周側に延びるスペーサ側鍔部552とを有している。
挿入部551は、その内周面がノズル部53の内側において内周側に配される面と当接する。挿入部551において、外周側に配される外周側面及び傾斜面と、ノズル部53の内側面との間には空隙が形成されており、この空隙によって第2流路512の一部をなす中間分割第2流路554が形成されている。中間分割第2流路554はボディ部54の基端側分割第2流路542と連通することにより第2流路522を形成している。
【0031】
スペーサ側鍔部552には、第1流路511の一部をなすよう軸方向に傾斜して設けられた中間分割第1流路553を形成してある。この中間分割第1流路553は、ボディ部54の基端側分割第1流路549と連通することにより第1流路521を形成している。
また、スペーサ部55は、ボディ部54との当接面に第4Oリング254を配した第4凹溝部555を形成してある。
【0032】
ボディ部54及びスペーサ部55の先端側には円環形状をなすノズル部53を配してある。ノズル部53の先端には、同一円周上に配された複数の第2吐出口502が形成されている。
また、図3〜図4に示すごとく、ノズル部53の内周側に位置する端部には、同一円周上において貫通形成された複数の第1吐出口501が形成してある。
ノズル部53の内側において、スペーサ部55の挿入部551と当接する当接面には、第5凹溝部532が形成されており、その内側には第5Oリング255が配してある。これにより、ノズル部53とスペーサ部55との当接面をシールしている。
【0033】
上記のごとく構成された環状ノズル5の検査を行う環状ノズルの検査装置1は、図1に示すごとく、環状ノズル5と合体可能に構成された検査用冶具2と、この検査用冶具2に空気を供給する空気供給装置3と、環状ノズル5から吐出される吐出空気A1,A2によって浮遊する検査用球体4とを備えている。
【0034】
図1及び図2に示すごとく、検査用冶具2は、樹脂により形成されており、略円板上の冶具底部21と、この冶具底部21の外周から上方に向かって立設した冶具外筒部22と、冶具外筒部22の内側でかつ冶具底部21の上面に配された冶具内筒部23とを有している。
【0035】
同図に示すごとく、冶具外筒部22は、その内径が環状ノズル5のボディ部54の本体部541における外径と対応する寸法で形成されると共に、その内周面には本体部541の外周面に形成されたネジ山と対応したネジ山が形成してある。したがって、環状ノズル5のボディ部54における本体部541を用いて、冶具外筒部22に環状ノズル5を螺合することができる。また、冶具外筒部22には、外周面と内周面とを貫通する外筒開口部221を形成してある。この外筒開口部221は、検査用冶具2と環状ノズル5とを合体した際に、環状ノズル5の本体部541における下端よりも下方に位置する。
【0036】
冶具内筒部23は、図1に示すごとく、その中心軸が冶具外筒部22の中心軸と同一の位置となるように配されている。冶具内筒部23の外径は、環状ノズル5のボディ部54の本体部541における内径と対応する寸法となるように形成されており、検査用冶具2と環状ノズル5とを合体した際に、本体部541の内周面と嵌合可能に構成されている。
【0037】
上記のごとく構成された検査用冶具2の内部には、図1及び図2に示すごとく、第1供給路241と第2供給路242とが形成されている。
第1供給路241は、同図に示すごとく、冶具底部21の外周側面に形成された底部開口部211と、冶具内筒部23の上面に形成された内筒開口部231との間を連通するように、冶具底部21と冶具内筒部23の内部とに形成されている。内筒開口部231は、環状ノズル5の内周突出部548と本体部541との間に形成されたボディ側鍔部547における下面と対向する位置に配してある。
また、第2供給路242は、同図に示すごとく、冶具外筒部22と冶具内筒部23との間に形成された空隙と、外筒開口部221とによって形成されている。
【0038】
図1に示すごとく、検査用冶具2には、第1供給路241と第2供給路242とに空気を供給する空気供給装置3が接続されている。本例において、空気供給装置3は、コンプレッサー30と接続配管31と圧力制御部32(第1圧力制御部321、第2圧力制御部322)とからなる。
【0039】
コンプレッサー30と、検査用冶具2の第1供給路241及び第2供給路242とは、接続配管31を介して接続されている。接続配管31は、一端を空気供給装置3に接続された主配管311と、主配管311の他端から分岐し第1供給路241と接続された第1分岐配管312と、主配管311の他端から分岐し第2供給路242と接続された第2分岐配管313とからなる。
【0040】
第1分岐配管312には、第1圧力制御部321を配してあり、この第1圧力制御部321によって第1分岐配管312を流通する空気の空気圧を変更することができる。同様に、第2分岐配管313には、第2圧力制御部322を配してあり、この第2圧力制御部322によって第2分岐配管313を流通する空気の空気圧を変更することができる。本例においては、第1分岐配管312を流通する空気の空気圧を0.05MPaとし、第2分岐配管313を流通する空気の空気圧を0.2〜0.25MPaとした。尚、本例において、第1圧力制御部321及び第2圧力制御部322には、コンプレッサー30により供給される高圧空気を減圧するレギュレータを用いた。
【0041】
検査用球体4は、樹脂製でかつ、中空の球体を用いた。この検査用球体4の直径は、第1吐出口501を配した円周の直径よりも大きく、第2吐出口502を配した円周の直径よりも小さい。
【0042】
次に、本例における環状ノズル5の検査方法について説明する。
まず、検査用冶具2を環状ノズル5と合体させる。環状ノズル5の外周面に形成されたネジ山と、検査用冶具2における冶具外筒部22の内周面に形成されたネジ山とを螺合する。環状ノズル5におけるボディ部54の内周突出部548は、冶具内筒部23の上面に押し当てられ密着する。これにより、図1に示すごとく、ボディ側鍔部547の下面と冶具内筒部23の上面との間には、円環状の空隙部56が形成される。
【0043】
検査用冶具2と環状ノズル5とを合体させることにより、第1流路511の第1流入口521と第1供給路241とが連通され、第2流路512の第2流入口522と第2供給路242とが連通される。次いで、空気供給装置3によって空気が供給される。空気供給装置3によって供給される空気は、コンプレッサー30に接続された主配管311を流通し、第1分岐配管312と第2分岐配管313とにそれぞれ分配される。第1分岐配管312へと分配された空気は、第1圧力制御部321において予め設定された空気圧に調整された後、検査用冶具2内に形成された第1供給路241へと流入する。同様に、第2分岐配管313へと分配された空気は、第2圧力制御部322において予め設定された空気圧に調整された後、検査用冶具2内に形成された第2供給路242へと流入する。
【0044】
本例において、第1圧力制御部321及び第2圧力制御部322において調整される空気圧の値は、正常な状態の環状ノズル5を用いて、第1吐出口501と第2吐出口502とから吐出空気A1、A2を吐出し、検査用球体4に衝突させたときに、検査用球体4が安定して浮遊する値に設定した。
【0045】
第1供給路241を流通した空気は、環状ノズル5のボディ側鍔部547の下面に衝突し、円環状の空隙部56内に拡散され、複数の第1流路511へと流通し、第1吐出口501から吐出される。また、第2流路512へと流入した空気は、検査用冶具2内に形成された空隙において拡散され、複数の第2流路512へと送られ、第2吐出口502から吐出される。
【0046】
図4に示すごとく、第1吐出口501から吐出された吐出空気A1の吐出方向と、第2吐出口502から吐出された吐出空気A2の吐出方向とは、互いに交差するため、環状ノズル5の先端側において合流し、シェーピングエアA3が形成される。このシェーピングエアA3を検査用球体4に衝突させ、シェーピングエアA3の吐出状態に応じた浮遊状態で検査用球体4を浮遊させる。
【0047】
本例では、表1に示すごとく、環状ノズル5において、第1吐出口501又は第1流路511の詰まり、第2吐出口502又は第2流路512の詰まり及び第1Oリング251〜第5Oリング255のいずれかに組付不良が生じた場合における検査用球体4の浮遊状態を事前確認した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すa〜hの記号は、それぞれ環状ノズル5の状態を示すものである。aは、正常な環状ノズル5を示している。また、b〜fは、それぞれ第1Oリング251〜第5Oリング255に組付不良が生じた環状ノズル5を示している。また、gは、第1吐出口501又は第1流路511に詰まりが生じた環状ノズル5を示し、hは、第2吐出口502又は第2流路512に詰まりが生じた環状ノズル5を示している。
【0050】
尚、表1において、「浮遊」の評価欄に記載した○、×及び△の記号は、検査用球体4の浮遊状態を示しており、○が良好(安定して浮遊する)、△が困難(浮遊するが安定しない)、×が不良(浮遊しない)を示すものである。また、「回転」の評価欄に記載した○、×及び△の記号は、検査用球体4の回転状態を示しており、○が良好(安定して回転する)、△が困難(回転するが安定しない)、×が不良(回転しない)を示すものである。評価欄において、浮遊及び回転が共に安定している場合を正常(○)とし、それ以外の場合は、不良(×)とした。
【0051】
上記事前確認の結果、正常な環状ノズル5(A)以外では、「浮遊」及び「回転」の評価が共に良好となるものはなかった。上記事前確認の結果を指標とし、上述した環状ノズルの検査方法及び検査装置を用いることにより、外観から確認することができない環状ノズル5の内部の状況においても、検査用球体4の浮遊状態によって把握することができる。
【0052】
次に、本例の作用効果について説明する。
環状ノズル5の検査方法においては、環状ノズル5の第1吐出口501及び第2吐出口502から吐出空気A1、A2を吐出させ形成されるシェーピングエアA3を検査用球体4に衝突させ、検査用球体4を浮遊させることにより、環状ノズル5の内部の状態を検査することができる。すなわち、環状ノズル5の内部における異物による詰まりや、環状ノズル5を構成する部品の組付不良等の種々の不具合がある場合には、環状ノズル5の内部の第1流路512及び第2流路522を通過して第1吐出口511及び第2吐出口512から吐出される吐出空気A1、A2の吐出状態が、不具合がない場合と比べて変化する。そして、検査用球体4の浮遊状態は、吐出空気A1、A2の吐出状態に応じて変化する。したがって、環状ノズルにおける不具合の状態を、シェーピングエアA3を衝突させた検査用球体4の浮遊状態によって可視化することができる。環状ノズル5の検査を容易とし、検査にかかる工数及びコストを低減することができる。
【0053】
環状ノズルの検査装置1は、少なくとも上記のごとく構成された検査用冶具2と、空気供給装置3と、検査用球体4とを備えている。そのため、上述の優れた環状ノズル5の検査方法を確実に実施することができる。
【0054】
環状ノズル5の検査方法及び検査装置において、環状ノズル5は、少なくとも第1吐出口501と第2吐出口502の2組の吐出口50を有すると共に、第1流路511と第2流路512の2組の流路51を内部に備えている。そのため、流路51が複数形成され、環状ノズル5の内部の構造が複雑化する。したがって、環状ノズル5の内部における不具合が発生しやすい。それゆえ、環状ノズル5の検査方法及び検査装置を用いることが非常に有効であり、検査効率を大幅に向上し、検査にかかる工数及び検査コストの低減効果を向上することができる。
【0055】
また、検査用球体4の直径は、第1吐出口501を配した円周の直径よりも大きい。そのため、シェーピングエアA3によって、検査用球体4を浮遊させやすくなり、本例に示す環状ノズルの検査方法を確実に実施することができる。
【0056】
また、環状ノズル5は、複数の部品を組み合わせて構成している。複数の部品を組み合わせて構成された環状ノズル5は、1部品により構成されたものに比べ、組み付け不良等が発生しやすい。したがって、環状ノズル5の検査方法及び検査装置を用いることが非常に有効であり、検査効率を大幅に向上し、検査にかかる工数及び検査コストの低減効果を向上することができる。
【0057】
また、環状ノズル5は、回転霧化式塗装装置6の先端部に配されるシェーピングノズルである。回転霧化式塗装装置6は、回転により生じる遠心力によって塗料を霧化させる回転霧化頭61と、この回転霧化頭61を回転させるエアモータ62と、シェーピングノズルとを備えている。シェーピングノズルは、複数の部品で構成されることが多いうえ、内部に異常が生じた場合、吐出空気A1,A2によって形成されるシェーピングエアA3に乱れが生じ、塗装品質及び塗着効率の低下につながる。したがって、上記の優れた環状ノズル5の検査方法及び検査装置を用いることが非常に有効であり、検査効率を大幅に向上し、検査にかかる工数及び検査コストの低減効果を向上することができる。また、塗装品質を向上することができる。
【0058】
環状ノズルの検査装置1において空気供給装置3は、第1流路511に供給される空気の圧力を制御する第1圧力制御部321と、第2流路512に供給される空気の圧力を制御する第1圧力制御部322とを備えている。そのため、第1流路511及び第2流路512に供給される空気の圧力をそれぞれ調整することにより、第1吐出口501及び第2吐出口502から吐出される吐出空気A1、A2の圧力を環状ノズル5の検査方法に適した圧力とすることができる。
【0059】
上記のごとく、本例によれば、環状ノズル5の検査を容易にし、検査にかかる工数及びコストを低減することのできる環状ノズル5の検査方法及び検査装置を提供することができる。
【0060】
尚、本例においては、第1吐出口と第2吐出口とを備えたシェービングノズルの例を示したが、他の構造からなる環状ノズルにおいても、本発明に示す優れた環状ノズルの検査方法及び検査装置を用いることにより、本例と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 環状ノズルの検査装置
2 検査用冶具
24 供給路
3 空気供給装置
4 検査用球体
5 環状ノズル
50 吐出口
51 流路
52 流入口
A1、A2 吐出空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周上に配された1組又は複数組の吐出口を有すると共に、上記吐出口に通じる流路を内部に備えた環状ノズルの検査方法であって、
上記吐出口を上方に向けて上記環状ノズルを配置し、
上記流路の流入口から空気を供給して、上記吐出口から吐出空気を吐出させ、
該吐出空気を検査用球体に衝突させ、該検査用球体を浮遊させることを特徴とする環状ノズルの検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の環状ノズルの検査方法において、上記環状ノズルは、少なくとも第1吐出口と第2吐出口の2組の上記吐出口を有すると共に、第1流路と第2流路の2組の上記流路を内部に備えていることを特徴とする環状ノズルの検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の環状ノズルの検査方法において、上記検査用球体の直径は、上記吐出口を配した円周の直径よりも大きいことを特徴とする環状ノズルの検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の環状ノズルの検査方法において、上記環状ノズルは、複数の部品を組み合わせて構成されていることを特徴とする環状ノズルの検査方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の環状ノズルの検査方法において、上記環状ノズルは、回転霧化式塗装装置の先端部に配されるシェーピングノズルであることを特徴とする環状ノズルの検査方法。
【請求項6】
円周上に配された1組又は複数組の吐出口を有すると共に、上記吐出口に通じる流路を内部に備えた環状ノズルの検査装置であって、
上記環状ノズルと合体可能に構成された検査用冶具と、
該検査用冶具に空気を供給する空気供給装置と、
上記環状ノズルの先端側に配置される検査用球体とを備えており、
上記検査用冶具は、上記環状ノズルと合体した際に、上記流路の流入口と連通する供給路を有しており、
上記空気供給装置によって、上記供給路へ空気を供給することにより、上記吐出口から吐出空気を吐出させて上記検査用球体に衝突可能に構成されていることを特徴とする環状ノズルの検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の環状ノズルの検査装置において、上記環状ノズルは、少なくとも第1吐出口と第2吐出口の2組の上記吐出口を有すると共に、第1流路と第2流路の2組の上記流路を内部に備えていることを特徴とする環状ノズルの検査装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の環状ノズルの検査装置において、上記空気供給装置は、上記流路に供給される空気の圧力を制御する圧力制御部を備えていることを特徴とする環状ノズルの検査装置。
【請求項9】
請求項6〜7のいずれか一項に記載の環状ノズルの検査装置において、上記検査用球体の直径は、上記吐出口を配した円周の最小直径よりも大きいことを特徴とする環状ノズルの検査装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の環状ノズルの検査装置において、上記環状ノズルは、複数の部品を組み合わせて構成されていることを特徴とする環状ノズルの検査装置。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の環状ノズルの検査装置において、上記環状ノズルは、回転霧化式塗装装置の先端部に配されるシェーピングノズルであることを特徴とする環状ノズルの検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−643(P2013−643A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133200(P2011−133200)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】