環状バンドの移動方向制御装置、流延設備、及び溶液製膜方法
【課題】移動する環状バンドをより確実に環状路内に収める。
【解決手段】環状の流延バンド26は水平ドラム24、25に掛け渡される。水平ドラム24はモータ24Mにより回転する。流延バンド26は、水平ドラム24、25の周りに形成された移動路26R上を循環移動する。バンドガイド機構36は、一端側ガイドローラ36PA〜36PBと他端側ガイドローラ36QA〜36QCとを有する。一端側ガイドローラ36PA〜36PBは、移動路26Rのうち下方部分のY方向一端側に配される。他端側ガイドローラ36QA〜36QCは、移動路26Rのうち下方部分のY方向他端側に配される。
【解決手段】環状の流延バンド26は水平ドラム24、25に掛け渡される。水平ドラム24はモータ24Mにより回転する。流延バンド26は、水平ドラム24、25の周りに形成された移動路26R上を循環移動する。バンドガイド機構36は、一端側ガイドローラ36PA〜36PBと他端側ガイドローラ36QA〜36QCとを有する。一端側ガイドローラ36PA〜36PBは、移動路26Rのうち下方部分のY方向一端側に配される。他端側ガイドローラ36QA〜36QCは、移動路26Rのうち下方部分のY方向他端側に配される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状バンドの移動方向制御装置、流延設備、及び溶液製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性を有するポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、軽量であり、成形が容易であるため、光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、写真感光用フィルムの他、液晶表示装置の光学フィルム(偏光板保護フィルムや位相差フィルム等)として用いられている。
【0003】
フィルムは、溶液製膜方法により製造される。溶液製膜方法は、移動する支持体に向けて、流延室内に配された流延ダイを用いて、ポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を、温度調節がなされた支持体に向けて流し、支持体上に帯状の流延膜を形成する(以下、膜形成工程と称する)。次に、流延膜が搬送可能になるまで流延膜から溶剤を蒸発させる(以下、膜乾燥工程と称する)。その後、搬送可能となった流延膜を支持体から剥がして湿潤フィルムとする(以下、剥取工程と称する)。そして、この湿潤フィルムから溶剤を蒸発させてフィルムとする(以下、フィルム乾燥工程と称する)方法である。
【0004】
この溶液製膜方法に用いられる支持体として、複数のローラに掛け渡され循環移動する環状バンドが知られている。この環状バンドを用いることにより、膜形成工程、膜乾燥工程及び剥取工程を繰り返し行うことができるため、結果として、フィルムの生産効率を向上させることができる。
【0005】
ところが、溶液製膜方法を長時間行なうと、環状バンドが所定の環状路から外れてしまうことがある。環状バンドが環状路から外れた状態で、溶液製膜方法を行なうと、得られるフィルムの均一性、特に幅方向における厚み、表面状態、光学特性の均一性が損なわれてしまう。
【0006】
環状バンドの移動方向を調節する方法として、環状バンドが巻き掛けられた駆動ドラムや従動ドラムを変移させる発明が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−254452号公報
【特許文献2】特開平10−202722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2の環状バンドの移動方向の制御方法では、次の(1)〜(3)の場合には、環状バンドの移動方向の制御の精度が下がってしまう。この結果、環状バンドが環状路へ戻すことが困難になるばかりか、環状バンドが環状路からより大きく外れてしまうこととなる。
(1)溶液製膜方法の生産効率の向上などを目的として、環状バンドの移動速度を向上させた場合
(2)環状バンドの移動速度の変動が生じた場合
(3)膜形成工程、膜乾燥工程及び剥取工程を繰り返し行なう間における環状バンドの温度の変動量が大きい場合
【0009】
このように、移動する環状バンドをより確実に環状路に収めることができる環状バンドの移動方向制御方法が求められている。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するものであり、環状バンドの移動方向制御装置、流延設備、及び溶液製膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、水平かつ互いに平行に配された駆動ドラム及び従動ドラムに巻き掛けられ、幅方向において予め設定された環状路上を前記駆動ドラムの回転により移動可能な環状バンドの移動方向制御装置において、前記環状路のうち下方部分にて幅方向両外側に配され、前記環状バンドの幅方向端面をガイドする環状バンドガイド機構を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記環状バンドガイド機構は、前記環状路に近接する近接位置と近接位置から離れた退避位置との間で移動自在に設けられたことが好ましい。また、前記環状バンドガイド機構は、前記環状路の幅方向の中央側へ付勢されたことが好ましい。
【0013】
前記環状バンドガイド機構は、周面で前記環状バンドの幅方向端面をガイド可能なローラ本体と、前記ローラ本体を軸支するローラ軸とを備えたガイドローラであることが好ましい。また、前記ローラ本体の周面には、前記環状バンドの幅方向端面をガイド可能な支持溝が形成されたことが好ましい。
【0014】
前記環状バンドガイド機構は、前記環状路の幅方向の一端側に配された一端側ガイド具と、前記環状路の幅方向の他端側に配された他端側ガイド具とを備え、前記一端側ガイド具及び前記他端側ガイド具は、前記環状バンドの移動方向において交互に配されたことが好ましい。
【0015】
前記一端側ガイド具及び前記他端側ガイド具は、前記従動ドラムから前記駆動ドラムに向かうに従って、前記環状路の幅方向中央部へ近づくように並べられたことが好ましい。
【0016】
一端が他端よりも前記駆動ドラムに近い第1姿勢及び前記他端が前記一端よりも前記駆動ドラムに近い第2姿勢の間で前記従動ドラムを変移させる従動ドラム変移部と、前記環状バンドが前記環状路から外れた方向を検知する外れ方向検知部と、前記外れ方向検知部が検知した前記外れた方向に基づいて前記従動ドラム変移部を制御する従動ドラム姿勢制御部とを備えたことが好ましい。
【0017】
前記駆動ドラムは、周面で前記環状バンドの裏面を支持可能な駆動ドラム本体と、前記駆動ドラム本体を軸支するドラム駆動軸とを備え、前記駆動ドラム本体は幅方向中央部に設けられた小径ドラム部と幅方向両端部に設けられた大径ドラム部とを有し、前記小径ローラ部の周面上に前記環状路が設定されたことが好ましい。
【0018】
本発明の流延設備は、前記環状バンドのうち前記駆動ドラムに巻き掛けられた部分に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出する流延ダイと、前記流出したドープを支持する支持面を有し、前記ドープからなる膜を前記支持面上に形成する前記環状バンドと、前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥装置と、前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥ぎ取り装置と、上記の環状バンドの移動方向制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の溶液製膜方法は、前記環状バンドのうち前記駆動ドラムに巻き掛けられた部分に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出して、前記環状バンドに前記ドープからなる膜を形成する膜形成工程と、前記支持面上の前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥取工程と、上記の環状バンドの移動方向制御装置を用いて、前記環状バンドの移動方向の制御を行なう移動制御工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、環状バンドの移動速度の大きさ、環状バンドの移動速度の変動、環状バンドの温度の変動量等に関わらず、移動する環状バンドをより確実に環状路に収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】溶液製膜設備の概要を示す説明図である。
【図2】流延装置の概要を示す側面図である。
【図3】流延装置のケーシング内に配された各部品の概要を示す斜視図である。
【図4】バンド移動部、バンド移動方向制御部及び制御部の概要を示すブロック図である。
【図5】一端外れ検知部と他端外れ検知部との概要を示す説明図である。
【図6】回動軸が基準位置にある水平ドラムの概要を示す平面図である。
【図7】回動軸の一端側が回動軸の他端側よりも駆動軸から離れたときの水平ドラムの概要を示す平面図である。
【図8】回動軸の他端側が回動軸の一端側よりも駆動軸から離れたときの水平ドラムの概要を示す平面図である。
【図9】バンドガイド機構の概要を示す斜視図である。
【図10】他端側ガイドローラの概要を示す斜視図である。
【図11】他端側ガイドローラの概要を示す側面図である。
【図12】揺動自在なガイドローラ本体の概要を示す上面図である。
【図13】他端側ガイドローラの概要を示す側面図である。
【図14】段付きドラムの概要を示す斜視図である。
【図15】段付きドラムの概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(溶液製膜設備)
図1に示すように、溶液製膜設備10は、ドープ12から湿潤フィルム13をつくる流延装置15と、湿潤フィルム13の乾燥によりフィルム16を得るクリップテンタ17と、湿潤フィルム13の乾燥を行う乾燥装置18と、フィルム16を巻き芯に巻き取る巻取装置19とを有する。
【0023】
(流延装置)
図2に示すように、流延装置15は、ケーシング23と、ケーシング23内に配された流延装置本体とを有する。流延装置本体は、流延支持ユニットと、仕切りユニットと、流延ユニットと、膜乾燥ユニットと、剥離部材とを有する。
【0024】
(流延支持ユニット)
流延支持ユニットは、ケーシング23内に水平かつ互いに平行に並べられた水平ドラム24、25と、水平ドラム24、25に掛け渡された流延バンド26と、バンド移動ユニットとを備える。
【0025】
水平ドラム24は、図3に示すように、駆動軸24Aと、駆動軸24Aに軸着されたステンレス製のドラム本体24Bと、駆動軸の軸受け(図示しない)とを備える。水平ドラム25は、回動軸25Aと、回動軸25Aに軸着されたステンレス製のドラム本体25Bと、回動軸25Aの両端に設けられた軸受け25ASとを備える。水平ドラム24、25には環状の流延バンド26が巻き掛けられる。流延バンド26は、帯状のシート材の両端を連結することにより得られる。
【0026】
ここで、水平とは、水平面に対する水平ドラム24、25の交差角度がそれぞれ0°以上0.05°以下のものを指す。また、平行とは、水平ドラム24、25の交差角度が0°以上0.05°以下のものを指す。
【0027】
流延バンド26は、十分な耐腐食性と強度とを有するステンレス(例えば、SUS316)製であることが好ましい。流延バンド26の幅は、例えば、ドープ12の流延幅の1.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。流延バンド26の長さは、例えば、20m以上200m以下であることが好ましい。流延バンド26の厚みは、例えば、0.5mm以上〜2.5mm以下であることが好ましい。なお、流延バンド26の厚みムラは、全体の厚みに対して0.5%以下のものを用いることが好ましい。また、流延膜が形成される表面(以下、流延面と称する)26Aと、ドラム本体24B、25Bと接する裏面26Bは平坦に形成される。特に、流延面26Aは、研磨されていることが好ましく、流延面26Aの表面粗さは0.05μm以下であることが好ましい。
【0028】
図3及び図4に示すように、バンド移動ユニット27は、水平ドラム24、25に巻き掛けられた流延バンド26を移動させるバンド移動部28と、流延バンド26の移動方向を規制するバンド移動方向制御部29と制御部30とを備える。
【0029】
バンド移動部28は、駆動用モータ28Mと、軸シフト部28ASと、ロードセル28LCとを備える。
【0030】
駆動用モータ28Mは、駆動軸24Aに接続する。制御部30は、駆動用モータ28Mを制御して、ドラム本体24Bを所定の速度で回転させる。流延バンド26は、ドラム本体24Bの回転に伴い所定の方向へ循環移動し、ドラム本体25Bは、流延バンド26の移動に従って回転する。以下、流延バンド26の移動方向をX方向と称し、流延バンド26の幅方向をY方向と、垂直方向をZ方向と称する。
【0031】
流延バンド26の流延面26Aの移動速度V26Aは150m/分以下であることが好ましい。移動速度V26Aが150m/分を超えると、ビードを安定して形成することが困難となる。移動速度V26Aの下限値は、目標とするフィルムの生産性を考慮すればよい。移動速度V26Aの下限値は、例えば、10m/分である。
【0032】
駆動軸24Aは、ドラム本体24B、25Bに掛け渡された流延バンド26に所定の移動テンションが印加されるテンション印加位置と、ドラム本体24B、25Bに掛け渡された流延バンド26が弛む弛み位置との間で移動自在となっている。軸シフト部28ASは、制御部30の制御の下、テンション印加位置と弛み位置との間で、駆動軸24Aを変移可能である。軸シフト部28ASは、回動軸25Aと平行な状態を維持しながら駆動軸24Aを変移させることが好ましい。
【0033】
ロードセル28LCは、駆動軸24Aに取り付けられる。ロードセル28LCは、駆動軸24Aが受ける外力を検知する。制御部30は、ロードセル28LCから駆動軸24Aが受ける外力を読み取る。次に、制御部30は、読み取った外力及び内蔵された流延バンド26の断面積の値に基づいて、流延バンド26にかかる移動テンションが所定のものとなるように、軸シフト部27ASを制御する。こうして、Y方向において一様な移動テンションを、流延バンド26に印加することができる。
【0034】
(バンド移動方向制御部)
バンド移動方向制御部29は、流延バンド26が移動路26Rから外れた方向に応じて水平ドラム25を揺動させるドラム揺動機構35と、流延バンド26のY方向両端面をガイドするバンドガイド機構36とを有する。
【0035】
(ドラム揺動機構)
ドラム揺動機構35は、流延バンド26が移動路26Rから外れたことを検知する外れ検知部35Kと、1対の軸受け25ASをそれぞれ独立してX方向に移動可能な軸受けシフト部35Sとを備える。
【0036】
外れ検知部35Kは、乾燥室23Bに設けられる。外れ検知部35Kは、流延バンド26の一端側に設けられた一端外れ検知部35KPと、流延バンド26の他端側に設けられた他端外れ検知部35KQとを備える。
【0037】
図5に示すように、一端外れ検知部35KPは、光源を内蔵し、光源からの検査光を外部へ出射する発光部40PAと、検査光を受光可能な光センサを内蔵し、光センサが発光部40PAからの検査光を検知したか否かを判定する受光部40PBとを備える。受光部40PBが検査光を検知した場合、受光部40PBは検知信号を出力する。発光部40PA及び受光部40PBは、発光部40PAから受光部40PBまでの検査光の光路40PXが、予め設定された流延バンド26の移動路26RのY方向の一端を通るように、設けられる。
【0038】
他端外れ検知部35KQは、一端外れ検知部35KPと同様に、光源を内蔵し、光源からの検査光を外部へ出射する発光部40QAと、検査光を受光可能な光センサを内蔵し、光センサが発光部40QAからの検査光を検知したか否かを判定する受光部40QBとを備える。受光部40QBが検査光を検知した場合、受光部40QBは検知信号を出力する。発光部40QA及び受光部40QBは、発光部40QAから受光部40QBまでの検査光の光路40QXが、予め設定された流延バンド26の移動路26RのY方向の他端を通るように、設けられる。
【0039】
移動路26Rは、Y方向において予め設定され、水平ドラム24、25に巻き掛けられた流延バンド26の基準経路であり、環状に形成される。移動路26Rの幅は、流延バンド26の幅に所定の遊び幅を加えたものである。
【0040】
図3及び図4に戻って、軸受けシフト部35Sは、一端側の軸受け25ASを移動させる一端側軸受けシフト部35SPと、他端側の軸受け25ASを移動させる他端側軸受けシフト部35SQとを備える。制御部30の制御の下、一端側軸受けシフト部35SP及び他端側軸受けシフト部35SQは、それぞれ独立して、軸受け25ASを所定の方向へ移動させる。
【0041】
制御部30は、外れ方向判定処理を行なう。外れ方向判定処理では、まず、制御部30が、受光部40PB・40QB(図5参照)から検知信号が出力されているか否かを判定する。そして、受光部40PB・40QB(図5参照)の両方から検知信号が出力されたと判定された場合には、制御部30は、流延バンド26が移動路26Rにあると判定する。一方、検知信号が受光部40QB(図5参照)から出力されており、かつ検知信号が受光部40PB(図5参照)から出力されていないと判定された場合には、制御部30は、流延バンド26が移動路26Rから一端側へ外れたと判定する。そして、検知信号が受光部40PB(図5参照)から出力されており、検知信号が受光部40QB(図5参照)から出力されていないと判定された場合には、制御部30は、流延バンド26が移動路26Rから他端側へ外れたと判定する。
【0042】
また、制御部30は、外れ方向判定処理の結果に基づき、水平ドラム25の姿勢を調節する従動ドラム変移処理を行なう。従動ドラム変移処理では、制御部30が、外れ方向判定処理の結果に基づいて、軸受けシフト部35Sを制御する。例えば、流延バンド26が移動路26R内にあると判定された場合には、制御部30は、回動軸25Aが駆動軸24Aと平行となるように、一端側軸受けシフト部35SP及び他端側軸受けシフト部35SQを制御する。駆動軸24Aと平行となる位置を基準位置とする(図6参照)。一方、流延バンド26が移動路26Rから一端側へ外れたと判定した場合には、回動軸25Aの一端側が回動軸25Aの他端側よりも駆動軸24Aに遠ざかるように、一端側軸受けシフト部35SP及び他端側軸受けシフト部35SQを制御する(図7参照)。逆に、流延バンド26が移動路26Rから他端側へ外れたと判定した場合には、回動軸25Aの他端側が回動軸25Aの一端側よりも駆動軸24Aに遠ざかるように、一端側軸受けシフト部35SP及び他端側軸受けシフト部35SQを制御する(図8参照)。
【0043】
(バンドガイド機構)
バンドガイド機構36は、図9及び図10に示すように、移動路26RのY方向両外側に配される。バンドガイド機構36は、移動路26Rのうち下方部分のY方向一端側に配された一端側ガイド具である一端側ガイドローラ36PA〜36PBと、移動路26Rのうち下方部分のY方向他端側に配された他端側ガイド具である他端側ガイドローラ36QA〜36QCとを有する。ここで、移動路26Rのうち下方部分とは、ドラム本体25Bに巻き掛けられた流延バンド26がドラム本体25Bから離れる位置P25(図2参照)から、ドラム本体24Bに向かって移動する流延バンド26がドラム本体24Bに接触する位置P24(図2参照)までの間をいう。一端側ガイドローラ36PA、36PBは、X方向上流側から下流側に向かって、順次配される。同様に、他端側ガイドローラ36QA、36QB、36QCは、X方向上流側から下流側に向かって、順次配される。
【0044】
また、各ガイドローラ36PA〜36PB、36QA〜36QCは、X方向において交互に配されることが好ましい。これにより、流延バンド26に加わる力を最小限にしつつ、移動路26Rに収まるように流延バンド26をガイドすることができる。
【0045】
図10及び図11に示すように、他端側ガイドローラ36QAは、流延バンド26のY方向のバンド端面26Eを周面51Sでガイドするガイドローラ本体51と、ガイドローラ本体51を軸支するガイドローラ軸52とを備える。ガイドローラ軸52はZ方向に延設される。ガイドローラ本体51、またはガイドローラ本体51の周面部は、テフロン(登録商標)などの材料から形成されることが好ましい。ガイドローラ本体51の周面51Sには、流延バンド26のY方向のバンド端面26Eをガイドする支持溝51Dが形成されていることが好ましい。支持溝51Dは、周方向へ延設され、環状に形成される。支持溝51Dは、流延バンド26のY方向のバンド端面26Eをガイドする底面51DDと、側面51DSとからなる。
【0046】
また、他端側ガイドローラ36QAは、ガイドローラ軸52に平行に配された揺動軸55と、ガイドローラ軸52及び揺動軸55を連結する連結アーム56とを備えていてもよい。連結アーム56は、一端部がガイドローラ軸52に固設され、他端部が揺動軸55に軸支される。連結アーム56により、ガイドローラ本体51は、移動路26RのY方向の端部26REに近接する近接位置P1と、近接位置P1から退避した退避位置P2〜P3との間で揺動自在となる(図12参照)。退避位置P2は、近接位置P1よりもX方向上流側であり、退避位置P3は、近接位置P1よりもX方向下流側である。揺動軸55及び連結アーム56により、流延バンド26に加わる力を最小限にしつつ、移動路26R内に収まるように流延バンド26をガイドすることができる。なお、近接位置P1となるようにガイドローラ本体51を付勢する付勢部材を設けても良い。
【0047】
更に、他端側ガイドローラ36QAは、Z方向において揺動軸55をシフト移動させる軸シフト部61(図9及び図10参照)や、ガイドローラ本体51をY方向中央側へ付勢させるバネ62(図11参照)を有していてもよい。制御部30は、ガイドローラ本体51が周面51Sで流延バンド26のY方向のバンド端面26Eを支持できるような位置になるように、軸シフト部61を制御する(図4参照)。制御部30は、流延バンド26が側面51DSに接触しないように、軸シフト部61を制御することが好ましい。バネ62は、例えば、一端が揺動軸55に固着され、他端がケーシング23の内壁面23Sに固着される。バネ62により、流延バンド26に加わる力を最小限にしつつ、移動路26R内に収まるように流延バンド26をガイドすることができる。
【0048】
なお、一端側ガイドローラ36PA〜PB及び他端側ガイドローラ36QB〜36QCは、他端側ガイドローラ36QAと同一の構造を有するため、詳細の説明は省略する。
【0049】
近接位置P1におけるガイドローラ本体51の支持溝51Dの底面51DDと移動路26RのY方向端部26REとの間隔CL(図11参照)は、ガイドローラ本体51が一端側に配されたものであるか、他端側に配されたものであるかに関わらず、X方向上流側から下流側に向かうに従い、漸減することが好ましい。なお、間隔CL(図11参照)は、例えば、0mm以上20mm以下である。例えば、図9に示す他端側ガイドローラ36QAについての間隔CLQA、一端側ガイドローラ36PAについての間隔CLPA、他端側ガイドローラ36QBについての間隔CLQB、一端側ガイドローラ36PBについての間隔CLPB、及び他端側ガイドローラ36QCについての間隔CLQCは、関係式(1)を満たすこと好ましい。
CLQA>CLPA>CLQB>CLPB>CLQC ・・・関係式(1)
【0050】
(仕切りユニット)
図2に戻って、仕切りユニットは、第1〜第3シール部材71〜73を備える。第1〜第3シール部材71〜73は、ケーシング23内にて、X方向上流側から下流側に向かって順次配される。第1〜第3シール部材71〜73は、それぞれ、ケーシング23の内壁面から突出し、突端が流延バンド26の流延面26Aに近接するように設けられる。第1〜第3シール部材71〜73により、ケーシング23内、すなわちケーシング23の内壁面と流延面26Aとで囲まれたエリアは、X方向上流側から下流側に向かって、流延室23A、乾燥室23B、及び剥取室23Cに仕切られる。そして、流延室23Aの気密性は、第1〜第2シール部材71〜72により維持される。また、乾燥室23Bの気密性は、第2〜第3シール部材72〜73により維持される。第1〜第3シール部材71〜73と流延面26Aとの間隔は、例えば、1.5mm以上2.0mm以下である。
【0051】
(流延ユニット)
流延室23Aには、ドープ12(図1参照)から流延膜76を形成する流延ユニットが配される。流延ユニットは、流延ダイ77と減圧機78とを備える。流延ダイ77は、ドープ12(図1参照)を流出するドープ流出口77Aを有する。流延ダイ77は、流延バンド26のうちドラム本体24Bに巻き掛けられた部分がドープ流出口77Aと近接するように、水平ドラム24の上方に配される。
【0052】
流延ダイ77は、ドープ流出口77Aから流延バンド26に向けてドープ12(図1参照)を流出する。ドープ流出口77Aから流出し流延面26Aに到達するまでのドープ12(図1参照)は、ビードを形成する。流延面26Aに到達したドープ12は、X方向にて流れ延ばされる結果、帯状の流延膜76を形成する。
【0053】
減圧機78は、ビードのX方向の上流側を減圧するためのものであり、流延ダイ77のドープ流出口77AよりもX方向の上流側に配置される減圧チャンバ78Aと、減圧チャンバ78A内の気体を吸引するための減圧ファン78Bと、減圧ファン78B及び減圧チャンバ78Aとを接続する吸引管78Cとを有する。
【0054】
(膜乾燥ユニット)
乾燥室23Bには、流延膜の乾燥を行う膜乾燥ユニットが配される。膜乾燥ユニットは、流延膜76に所定の乾燥風を供給する第1乾燥機81〜第2乾燥機82と、乾燥制御機(図示しない)とを備える。第1乾燥機81〜第2乾燥機82は、乾燥室23Bにおいて、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる。第1乾燥機81は、水平ドラム24,25に掛け渡された流延バンド26の上方に配される。第2乾燥機82は、水平ドラム24,25に掛け渡された流延バンド26の下方に配される。
【0055】
第1乾燥機81は、第1給気ダクト81Aと第1排気ダクト81Bとを備える。第1給気ダクト81Aと第1排気ダクト81Bとは、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる。第1給気ダクト81Aと第1排気ダクト81Bとは、それぞれ流延バンド26から離隔して配される。第1給気ダクト81Aには、第1乾燥風81DAが送り出される第1給気口が設けられる。X方向下流側に向かって開口する第1給気口は、流延膜76の一の端から他の端まで延設される。第1排気ダクト81Bには、第1乾燥風81DAを排気する第1排気口が設けられる。X方向上流側に向かって開口する第1排気口は、流延膜76の一の端から他の端まで延設される。
【0056】
第2乾燥機82は、第2排気ダクト82Aと第2給気ダクト82Bとを備える。第2排気ダクト82Aと第2給気ダクト82Bとは、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる。第2排気ダクト82A及び第2給気ダクト82Bは、それぞれ流延バンド26から離隔して配される。第2排気ダクト82Aには、第2乾燥風82DAを排気する第2排気口が設けられる。X方向下流側に向かって開口する第2排気口は、流延膜76の一の端から他の端まで延設される。第2給気ダクト82Bには、第2乾燥風82DAが送り出される第2給気口が設けられる。X方向上流側に向かって開口する第2給気口は、流延膜76の一の端から他の端まで延設される。
【0057】
乾燥制御機は、第1乾燥風81DA及び第2乾燥風82DAの温度や風速を独立して調節するものであり、第1乾燥風81DA及び第2乾燥風82DAの温度を調節する第1〜第2温調機(図示しない)と、第1乾燥風81DA及び第2乾燥風82DAの風量を調節する第1〜第2送風ファン(図示しない)と、コントローラ(図示しない)とを備える。第1〜第2温調機及び第1〜第2送風ファンは、第1乾燥機81〜第2乾燥機82の各ダクト内に設けられる。コントローラは、第1〜第2温調機及び第1〜第2送風ファンを制御して、第1乾燥風81DA及び第2乾燥風82DAについての温度や風速を独立して調節する。
【0058】
(剥離部材)
剥取室23Cには、剥離部材である剥離ローラ86が配される。剥離ローラ86は、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜76を流延バンド26から剥ぎ取って湿潤フィルム13とし、剥取室23Cに設けられた出口23COから湿潤フィルム13を送り出す。
【0059】
ケーシング23内の雰囲気に含まれる溶剤を凝縮する凝縮装置、凝縮した溶剤を回収する回収装置を、流延装置15に設けてもよい。これにより、ケーシング23内の雰囲気に含まれる溶剤の濃度を一定の範囲に保つことができる。
【0060】
図1に戻って、流延装置15とクリップテンタ17との間の渡り部には、湿潤フィルム13を支持する支持ローラ87が複数並べられている。支持ローラ87は、図示しないモータにより、軸を中心に回転する。支持ローラ87は、流延装置15から送り出された湿潤フィルム13を支持して、クリップテンタ17へ案内する。なお、図1では、渡り部に2つの支持ローラ87を並べた場合を示しているが、本発明はこれに限られず、渡り部に1つ、または3つ以上の支持ローラ87を並べてもよい。また、支持ローラ87は、フリーローラでもよい。
【0061】
クリップテンタ17は、湿潤フィルム13の幅方向両側縁部を把持する多数のクリップを有し、このクリップが延伸軌道上を移動する。クリップにより把持された湿潤フィルム13に対し乾燥風が送られ、湿潤フィルム13には、幅方向への延伸処理とともに乾燥処理が施される。
【0062】
クリップテンタ17と乾燥装置18との間には耳切装置88が設けられている。耳切装置88に送り出されたフィルム16の幅方向の両端は、クリップによって形成された把持跡が形成されている。耳切装置88は、この把持跡を有する両端部分を切り離す。この切り離された部分は、送風によりカットブロワ(図示しない)及びクラッシャ(図示しない)へ順次に送られて、細かく切断され、ドープ等の原料として再利用される。
【0063】
乾燥装置18は、フィルム16の搬送路を備えるケーシングと、フィルム16の搬送路を形成する複数のローラ18Aと、ケーシング内の雰囲気の温度や湿度を調節する空調機(図示しない)とを備える。ケーシング内に導入されたフィルム16は、複数のローラ18Aに巻き掛けられながら搬送される。この雰囲気の温度や湿度の調節により、ケーシング内を搬送されるフィルム16から残留した溶剤が蒸発する。更に、乾燥装置18に、フィルム16から蒸発した溶剤を吸着により回収する吸着回収装置が接続される。
【0064】
乾燥装置18及び巻取装置19の間には、上流側から順に、冷却室89、除電バー(図示しない)、ナーリング付与ローラ90、及び耳切装置(図示しない)が設けられる。冷却室89は、フィルム16の温度が略室温となるまで、フィルム16を冷却する。除電バーは、冷却室89から送り出され、帯電したフィルム16から電気を除く除電処理を行う。ナーリング付与ローラ90は、フィルム16の幅方向両端に巻き取り用のナーリングを付与する。耳切装置は、切断後のフィルム16の幅方向両端にナーリングが残るように、フィルム16の幅方向両端を切断する。
【0065】
巻取装置19は、プレスローラ19Aと巻き芯19Bを有する。巻取装置19に送られたフィルム16は、プレスローラ19Aによって押し付けられながら巻き芯19Bに巻き取られ、ロール状となる。
【0066】
次に、本発明の作用を説明する。図3及び図4に示すように、軸シフト部28ASとロードセル28LCと制御部30とにより、流延バンド26には所定の移動テンションが印加される。そして、駆動用モータ28Mと制御部30とにより、水平ドラム24を回転させる。これにより、流延バンド26は、移動路26Rを移動、すなわちケーシング23内における移動路26Rにて、各室23A〜23Cを順次、循環移動する。
【0067】
(膜形成工程)
図2に示すように、流延室23Aでは、流延バンド26上にドープ12からなる流延膜76を形成する流延工程が行われる。流延ダイ77は、ドープ流出口40Aからドープ12を連続的に流出する。流出したドープ12は、流延ダイ77から流延バンド26にかけてビードを形成し、流延バンド26上にて流れ延ばされる。こうして、流延バンド26上には、ドープ12からなる流延膜76が形成される。
【0068】
(膜乾燥工程)
乾燥室23Bでは、所定の乾燥風を流延膜76にあてて、流延膜76から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程が行われる。膜乾燥工程は、流延膜76が自立して搬送可能な状態となるまで行われる。膜乾燥工程では、流延膜76に第1乾燥風81DAをあてる第1膜乾燥工程と、流延膜76に第2乾燥風82DAをあてる第2膜乾燥工程とが順次行われる。
【0069】
第1膜乾燥工程は、溶剤の含有率が250質量%以上400質量%以下の流延膜76に対して行うことが好ましく、溶剤の含有率が300質量%以上350質量%以下の流延膜76に対して行うことがより好ましい。第1乾燥風81DAの温度は30℃以上80℃以下であることが好ましい。また、第1乾燥風81DAの風速は5m/秒以上25m/秒以下であることが好ましい。
【0070】
第2膜乾燥工程は、第2乾燥風53DAの温度は30℃以上80℃以下であることが好ましい。また、第2乾燥風53DAの風速は5m/秒以上25m/秒以下であることが好ましい。
【0071】
ここで、溶剤の含有率は、流延膜や各フィルム中に含まれる溶剤の量を乾量基準で示したものであり、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100と表される。
【0072】
(剥取工程)
剥取室23Cでは、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜76を流延バンド26から剥ぎ取る剥取工程が行われる。剥取ローラ86は、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜76を流延バンド26から剥ぎ取って湿潤フィルム13とし、剥取室23Cに設けられた出口23COから湿潤フィルム13を送り出す。剥取工程は、溶剤の含有率が20質量%以上80質量%以下の流延膜76に対して行うことが好ましい。
【0073】
そして、剥取工程の後、流延バンド26には再び膜形成工程が行なわれる。このようにして、流延装置15では、膜形成工程、膜乾燥工程、及び剥取工程が繰り返し行なわれる。流延装置15により、ドープ12から湿潤フィルム13を連続的に生産することができる。
【0074】
ここで、流延バンド26が移動路26Rから外れたことを制御部30が検知した場合には、制御部30は外れ方向判定処理の結果に基づいて軸受けシフト部35Sを制御する従動ドラム変移処理(図6〜図8参照)を行なう。従動ドラム変移処理により、流延バンド26を移動路26Rへ戻すことができる。ところが、流延バンド26の移動速度が大きい場合(例えば、50m/分以上)、流延バンド26の移動速度に大きな変動(例えば、2m/分2以上)が生じた場合、膜形成工程、膜乾燥工程及び剥取工程を繰り返し行なう間における流延バンド26の温度の変動量が大きい(例えば、30℃以上)場合には、外れ方向判定処理のみでは、流延バンド26を移動路26Rへ戻すことが困難となるばかりか、流延バンド26がより移動路26Rから外れてしまう。
【0075】
流延装置15では、バンドガイド機構36により、移動路26Rの幅に一定の遊び量を加えた範囲の中に流延バンド26を維持することができるため、流延バンド26が移動路26Rから大きく外れてしまうことを回避できる。そして、このような状態で従動ドラム変移処理を行なうことにより、流延バンド26が移動路26Rから外れてしまうことを回避できる。このようにして、流延ダイ77から流出したドープ12(図1参照)が流延面26Aに着地する流延位置CP(図8参照)において、流延バンド26を移動路26Rに収めることができる。
【0076】
ドラム揺動機構35は省略しても良い。ドラム揺動機構35を省略した場合、底面51DDと移動路26RのY方向端部26REとの間隔CLは、0とすればよい(図13参照)。
【0077】
ドラム揺動機構35(図4参照)を用いる場合、水平ドラム25に最も近いガイドローラは、揺動する水平ドラム25と接触しない程度に水平ドラム25から離す必要があるが、ドラム揺動機構35を省略する場合には、水平ドラム25に最も近いガイドローラをより水平ドラム25へ近接させることができる。
【0078】
また、水平ドラム24に代えて、図14及び図15に示す段付きドラム124を用いても良い。段付きドラム124は、ケーシング23内に水平であって、水平ドラム25と平行に配され、駆動軸124Aと、駆動軸124Aに軸着されたステンレス製のドラム本体124Bとを備える。ドラム本体124Bは、Y方向中央部には小径ドラム部124BCを備え、Y方向両端部に大径ドラム部124BEを備える。Y方向における小径ドラム部124BCの長さは、移動路26Rの幅と等しい。移動路26Rは、小径ドラム部124BCの周面上に設定される。大径ドラム部124BE及び小径ドラム部124BCによって形成される流延バンド26の支持溝124Mの深さD124M、すなわち、大径ドラム部124BEの半径から小径ドラム部124BCの半径の差は、小径ドラム部124BCの周面に巻き掛けられた流延バンド26が大径ドラム部124BEへ乗り上げない程度のものであればよく、例えば、流延バンド26の厚みD26の0.5倍以上5倍以下あればよい。段付きドラム124により、流延バンド26が移動路26Rから外れてしまうことを回避できる。
【0079】
段付きドラム124を用いる場合、ドラム揺動機構35やバンドガイド機構36を省略しても良い。
【0080】
本発明により得られるフィルム16は、特に、位相差フィルムや偏光板保護フィルムに用いることができる。
【0081】
フィルム16の幅は、600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、フィルム16の幅が2500mmより大きい場合にも効果がある。またフィルム16の膜厚は、20μm以上80μm以下であることが好ましい。
【0082】
また、フィルム16の面内レターデーションReは、20nm以上300nm以下であることが好ましく、フィルム16の厚み方向レターデーションRthは、−100nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0083】
面内レターデーションReの測定方法は次の通りである。面内レターデーションReは、サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21DH 王子計測(株))にて632.8nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値を用いた。なおReは以下式で表される。
Re=|n1−n2|×d
n1は遅相軸の屈折率,n2は進相軸2の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す
【0084】
厚み方向レターデーションRthの測定方法は次の通りである。サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、エリプソメータ(M150 日本分光(株)製)で632.8nmにより垂直方向から測定した値と、フィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値とから下記式に従い算出した。
Rth={(n1+n2)/2−n3}×d
n3は厚み方向の屈折率を表す。
【0085】
(ポリマー)
上記実施形態では、ポリマーフィルムの原料となるポリマーは、特に限定されず、例えば、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等がある。
【0086】
(セルロースアシレート)
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、トリアセチルセルロース(TAC)の90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 1.0≦ A ≦3.0
(III) 0 ≦ B ≦2.0
【0087】
アシル基の全置換度A+Bは、2.20以上2.90以下であることがより好ましく、2.40以上2.88以下であることが特に好ましい。また、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度Bは、0.30以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
【0088】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0089】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【0090】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶剤に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0091】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。ポリマーの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0092】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
【0093】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶剤及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【符号の説明】
【0094】
10 溶液製膜設備
15 流延装置
26 流延バンド
27 バンド移動ユニット
28 バンド移動部
29 バンド移動方向制御部
30 制御部
35 ドラム揺動機構
35K 外れ検知部
35S 軸受けシフト部
36 バンドガイド機構
36PA〜PB、36QA〜QC ガイドローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状バンドの移動方向制御装置、流延設備、及び溶液製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性を有するポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、軽量であり、成形が容易であるため、光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、写真感光用フィルムの他、液晶表示装置の光学フィルム(偏光板保護フィルムや位相差フィルム等)として用いられている。
【0003】
フィルムは、溶液製膜方法により製造される。溶液製膜方法は、移動する支持体に向けて、流延室内に配された流延ダイを用いて、ポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を、温度調節がなされた支持体に向けて流し、支持体上に帯状の流延膜を形成する(以下、膜形成工程と称する)。次に、流延膜が搬送可能になるまで流延膜から溶剤を蒸発させる(以下、膜乾燥工程と称する)。その後、搬送可能となった流延膜を支持体から剥がして湿潤フィルムとする(以下、剥取工程と称する)。そして、この湿潤フィルムから溶剤を蒸発させてフィルムとする(以下、フィルム乾燥工程と称する)方法である。
【0004】
この溶液製膜方法に用いられる支持体として、複数のローラに掛け渡され循環移動する環状バンドが知られている。この環状バンドを用いることにより、膜形成工程、膜乾燥工程及び剥取工程を繰り返し行うことができるため、結果として、フィルムの生産効率を向上させることができる。
【0005】
ところが、溶液製膜方法を長時間行なうと、環状バンドが所定の環状路から外れてしまうことがある。環状バンドが環状路から外れた状態で、溶液製膜方法を行なうと、得られるフィルムの均一性、特に幅方向における厚み、表面状態、光学特性の均一性が損なわれてしまう。
【0006】
環状バンドの移動方向を調節する方法として、環状バンドが巻き掛けられた駆動ドラムや従動ドラムを変移させる発明が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−254452号公報
【特許文献2】特開平10−202722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2の環状バンドの移動方向の制御方法では、次の(1)〜(3)の場合には、環状バンドの移動方向の制御の精度が下がってしまう。この結果、環状バンドが環状路へ戻すことが困難になるばかりか、環状バンドが環状路からより大きく外れてしまうこととなる。
(1)溶液製膜方法の生産効率の向上などを目的として、環状バンドの移動速度を向上させた場合
(2)環状バンドの移動速度の変動が生じた場合
(3)膜形成工程、膜乾燥工程及び剥取工程を繰り返し行なう間における環状バンドの温度の変動量が大きい場合
【0009】
このように、移動する環状バンドをより確実に環状路に収めることができる環状バンドの移動方向制御方法が求められている。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するものであり、環状バンドの移動方向制御装置、流延設備、及び溶液製膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、水平かつ互いに平行に配された駆動ドラム及び従動ドラムに巻き掛けられ、幅方向において予め設定された環状路上を前記駆動ドラムの回転により移動可能な環状バンドの移動方向制御装置において、前記環状路のうち下方部分にて幅方向両外側に配され、前記環状バンドの幅方向端面をガイドする環状バンドガイド機構を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記環状バンドガイド機構は、前記環状路に近接する近接位置と近接位置から離れた退避位置との間で移動自在に設けられたことが好ましい。また、前記環状バンドガイド機構は、前記環状路の幅方向の中央側へ付勢されたことが好ましい。
【0013】
前記環状バンドガイド機構は、周面で前記環状バンドの幅方向端面をガイド可能なローラ本体と、前記ローラ本体を軸支するローラ軸とを備えたガイドローラであることが好ましい。また、前記ローラ本体の周面には、前記環状バンドの幅方向端面をガイド可能な支持溝が形成されたことが好ましい。
【0014】
前記環状バンドガイド機構は、前記環状路の幅方向の一端側に配された一端側ガイド具と、前記環状路の幅方向の他端側に配された他端側ガイド具とを備え、前記一端側ガイド具及び前記他端側ガイド具は、前記環状バンドの移動方向において交互に配されたことが好ましい。
【0015】
前記一端側ガイド具及び前記他端側ガイド具は、前記従動ドラムから前記駆動ドラムに向かうに従って、前記環状路の幅方向中央部へ近づくように並べられたことが好ましい。
【0016】
一端が他端よりも前記駆動ドラムに近い第1姿勢及び前記他端が前記一端よりも前記駆動ドラムに近い第2姿勢の間で前記従動ドラムを変移させる従動ドラム変移部と、前記環状バンドが前記環状路から外れた方向を検知する外れ方向検知部と、前記外れ方向検知部が検知した前記外れた方向に基づいて前記従動ドラム変移部を制御する従動ドラム姿勢制御部とを備えたことが好ましい。
【0017】
前記駆動ドラムは、周面で前記環状バンドの裏面を支持可能な駆動ドラム本体と、前記駆動ドラム本体を軸支するドラム駆動軸とを備え、前記駆動ドラム本体は幅方向中央部に設けられた小径ドラム部と幅方向両端部に設けられた大径ドラム部とを有し、前記小径ローラ部の周面上に前記環状路が設定されたことが好ましい。
【0018】
本発明の流延設備は、前記環状バンドのうち前記駆動ドラムに巻き掛けられた部分に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出する流延ダイと、前記流出したドープを支持する支持面を有し、前記ドープからなる膜を前記支持面上に形成する前記環状バンドと、前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥装置と、前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥ぎ取り装置と、上記の環状バンドの移動方向制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の溶液製膜方法は、前記環状バンドのうち前記駆動ドラムに巻き掛けられた部分に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出して、前記環状バンドに前記ドープからなる膜を形成する膜形成工程と、前記支持面上の前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥取工程と、上記の環状バンドの移動方向制御装置を用いて、前記環状バンドの移動方向の制御を行なう移動制御工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、環状バンドの移動速度の大きさ、環状バンドの移動速度の変動、環状バンドの温度の変動量等に関わらず、移動する環状バンドをより確実に環状路に収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】溶液製膜設備の概要を示す説明図である。
【図2】流延装置の概要を示す側面図である。
【図3】流延装置のケーシング内に配された各部品の概要を示す斜視図である。
【図4】バンド移動部、バンド移動方向制御部及び制御部の概要を示すブロック図である。
【図5】一端外れ検知部と他端外れ検知部との概要を示す説明図である。
【図6】回動軸が基準位置にある水平ドラムの概要を示す平面図である。
【図7】回動軸の一端側が回動軸の他端側よりも駆動軸から離れたときの水平ドラムの概要を示す平面図である。
【図8】回動軸の他端側が回動軸の一端側よりも駆動軸から離れたときの水平ドラムの概要を示す平面図である。
【図9】バンドガイド機構の概要を示す斜視図である。
【図10】他端側ガイドローラの概要を示す斜視図である。
【図11】他端側ガイドローラの概要を示す側面図である。
【図12】揺動自在なガイドローラ本体の概要を示す上面図である。
【図13】他端側ガイドローラの概要を示す側面図である。
【図14】段付きドラムの概要を示す斜視図である。
【図15】段付きドラムの概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(溶液製膜設備)
図1に示すように、溶液製膜設備10は、ドープ12から湿潤フィルム13をつくる流延装置15と、湿潤フィルム13の乾燥によりフィルム16を得るクリップテンタ17と、湿潤フィルム13の乾燥を行う乾燥装置18と、フィルム16を巻き芯に巻き取る巻取装置19とを有する。
【0023】
(流延装置)
図2に示すように、流延装置15は、ケーシング23と、ケーシング23内に配された流延装置本体とを有する。流延装置本体は、流延支持ユニットと、仕切りユニットと、流延ユニットと、膜乾燥ユニットと、剥離部材とを有する。
【0024】
(流延支持ユニット)
流延支持ユニットは、ケーシング23内に水平かつ互いに平行に並べられた水平ドラム24、25と、水平ドラム24、25に掛け渡された流延バンド26と、バンド移動ユニットとを備える。
【0025】
水平ドラム24は、図3に示すように、駆動軸24Aと、駆動軸24Aに軸着されたステンレス製のドラム本体24Bと、駆動軸の軸受け(図示しない)とを備える。水平ドラム25は、回動軸25Aと、回動軸25Aに軸着されたステンレス製のドラム本体25Bと、回動軸25Aの両端に設けられた軸受け25ASとを備える。水平ドラム24、25には環状の流延バンド26が巻き掛けられる。流延バンド26は、帯状のシート材の両端を連結することにより得られる。
【0026】
ここで、水平とは、水平面に対する水平ドラム24、25の交差角度がそれぞれ0°以上0.05°以下のものを指す。また、平行とは、水平ドラム24、25の交差角度が0°以上0.05°以下のものを指す。
【0027】
流延バンド26は、十分な耐腐食性と強度とを有するステンレス(例えば、SUS316)製であることが好ましい。流延バンド26の幅は、例えば、ドープ12の流延幅の1.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。流延バンド26の長さは、例えば、20m以上200m以下であることが好ましい。流延バンド26の厚みは、例えば、0.5mm以上〜2.5mm以下であることが好ましい。なお、流延バンド26の厚みムラは、全体の厚みに対して0.5%以下のものを用いることが好ましい。また、流延膜が形成される表面(以下、流延面と称する)26Aと、ドラム本体24B、25Bと接する裏面26Bは平坦に形成される。特に、流延面26Aは、研磨されていることが好ましく、流延面26Aの表面粗さは0.05μm以下であることが好ましい。
【0028】
図3及び図4に示すように、バンド移動ユニット27は、水平ドラム24、25に巻き掛けられた流延バンド26を移動させるバンド移動部28と、流延バンド26の移動方向を規制するバンド移動方向制御部29と制御部30とを備える。
【0029】
バンド移動部28は、駆動用モータ28Mと、軸シフト部28ASと、ロードセル28LCとを備える。
【0030】
駆動用モータ28Mは、駆動軸24Aに接続する。制御部30は、駆動用モータ28Mを制御して、ドラム本体24Bを所定の速度で回転させる。流延バンド26は、ドラム本体24Bの回転に伴い所定の方向へ循環移動し、ドラム本体25Bは、流延バンド26の移動に従って回転する。以下、流延バンド26の移動方向をX方向と称し、流延バンド26の幅方向をY方向と、垂直方向をZ方向と称する。
【0031】
流延バンド26の流延面26Aの移動速度V26Aは150m/分以下であることが好ましい。移動速度V26Aが150m/分を超えると、ビードを安定して形成することが困難となる。移動速度V26Aの下限値は、目標とするフィルムの生産性を考慮すればよい。移動速度V26Aの下限値は、例えば、10m/分である。
【0032】
駆動軸24Aは、ドラム本体24B、25Bに掛け渡された流延バンド26に所定の移動テンションが印加されるテンション印加位置と、ドラム本体24B、25Bに掛け渡された流延バンド26が弛む弛み位置との間で移動自在となっている。軸シフト部28ASは、制御部30の制御の下、テンション印加位置と弛み位置との間で、駆動軸24Aを変移可能である。軸シフト部28ASは、回動軸25Aと平行な状態を維持しながら駆動軸24Aを変移させることが好ましい。
【0033】
ロードセル28LCは、駆動軸24Aに取り付けられる。ロードセル28LCは、駆動軸24Aが受ける外力を検知する。制御部30は、ロードセル28LCから駆動軸24Aが受ける外力を読み取る。次に、制御部30は、読み取った外力及び内蔵された流延バンド26の断面積の値に基づいて、流延バンド26にかかる移動テンションが所定のものとなるように、軸シフト部27ASを制御する。こうして、Y方向において一様な移動テンションを、流延バンド26に印加することができる。
【0034】
(バンド移動方向制御部)
バンド移動方向制御部29は、流延バンド26が移動路26Rから外れた方向に応じて水平ドラム25を揺動させるドラム揺動機構35と、流延バンド26のY方向両端面をガイドするバンドガイド機構36とを有する。
【0035】
(ドラム揺動機構)
ドラム揺動機構35は、流延バンド26が移動路26Rから外れたことを検知する外れ検知部35Kと、1対の軸受け25ASをそれぞれ独立してX方向に移動可能な軸受けシフト部35Sとを備える。
【0036】
外れ検知部35Kは、乾燥室23Bに設けられる。外れ検知部35Kは、流延バンド26の一端側に設けられた一端外れ検知部35KPと、流延バンド26の他端側に設けられた他端外れ検知部35KQとを備える。
【0037】
図5に示すように、一端外れ検知部35KPは、光源を内蔵し、光源からの検査光を外部へ出射する発光部40PAと、検査光を受光可能な光センサを内蔵し、光センサが発光部40PAからの検査光を検知したか否かを判定する受光部40PBとを備える。受光部40PBが検査光を検知した場合、受光部40PBは検知信号を出力する。発光部40PA及び受光部40PBは、発光部40PAから受光部40PBまでの検査光の光路40PXが、予め設定された流延バンド26の移動路26RのY方向の一端を通るように、設けられる。
【0038】
他端外れ検知部35KQは、一端外れ検知部35KPと同様に、光源を内蔵し、光源からの検査光を外部へ出射する発光部40QAと、検査光を受光可能な光センサを内蔵し、光センサが発光部40QAからの検査光を検知したか否かを判定する受光部40QBとを備える。受光部40QBが検査光を検知した場合、受光部40QBは検知信号を出力する。発光部40QA及び受光部40QBは、発光部40QAから受光部40QBまでの検査光の光路40QXが、予め設定された流延バンド26の移動路26RのY方向の他端を通るように、設けられる。
【0039】
移動路26Rは、Y方向において予め設定され、水平ドラム24、25に巻き掛けられた流延バンド26の基準経路であり、環状に形成される。移動路26Rの幅は、流延バンド26の幅に所定の遊び幅を加えたものである。
【0040】
図3及び図4に戻って、軸受けシフト部35Sは、一端側の軸受け25ASを移動させる一端側軸受けシフト部35SPと、他端側の軸受け25ASを移動させる他端側軸受けシフト部35SQとを備える。制御部30の制御の下、一端側軸受けシフト部35SP及び他端側軸受けシフト部35SQは、それぞれ独立して、軸受け25ASを所定の方向へ移動させる。
【0041】
制御部30は、外れ方向判定処理を行なう。外れ方向判定処理では、まず、制御部30が、受光部40PB・40QB(図5参照)から検知信号が出力されているか否かを判定する。そして、受光部40PB・40QB(図5参照)の両方から検知信号が出力されたと判定された場合には、制御部30は、流延バンド26が移動路26Rにあると判定する。一方、検知信号が受光部40QB(図5参照)から出力されており、かつ検知信号が受光部40PB(図5参照)から出力されていないと判定された場合には、制御部30は、流延バンド26が移動路26Rから一端側へ外れたと判定する。そして、検知信号が受光部40PB(図5参照)から出力されており、検知信号が受光部40QB(図5参照)から出力されていないと判定された場合には、制御部30は、流延バンド26が移動路26Rから他端側へ外れたと判定する。
【0042】
また、制御部30は、外れ方向判定処理の結果に基づき、水平ドラム25の姿勢を調節する従動ドラム変移処理を行なう。従動ドラム変移処理では、制御部30が、外れ方向判定処理の結果に基づいて、軸受けシフト部35Sを制御する。例えば、流延バンド26が移動路26R内にあると判定された場合には、制御部30は、回動軸25Aが駆動軸24Aと平行となるように、一端側軸受けシフト部35SP及び他端側軸受けシフト部35SQを制御する。駆動軸24Aと平行となる位置を基準位置とする(図6参照)。一方、流延バンド26が移動路26Rから一端側へ外れたと判定した場合には、回動軸25Aの一端側が回動軸25Aの他端側よりも駆動軸24Aに遠ざかるように、一端側軸受けシフト部35SP及び他端側軸受けシフト部35SQを制御する(図7参照)。逆に、流延バンド26が移動路26Rから他端側へ外れたと判定した場合には、回動軸25Aの他端側が回動軸25Aの一端側よりも駆動軸24Aに遠ざかるように、一端側軸受けシフト部35SP及び他端側軸受けシフト部35SQを制御する(図8参照)。
【0043】
(バンドガイド機構)
バンドガイド機構36は、図9及び図10に示すように、移動路26RのY方向両外側に配される。バンドガイド機構36は、移動路26Rのうち下方部分のY方向一端側に配された一端側ガイド具である一端側ガイドローラ36PA〜36PBと、移動路26Rのうち下方部分のY方向他端側に配された他端側ガイド具である他端側ガイドローラ36QA〜36QCとを有する。ここで、移動路26Rのうち下方部分とは、ドラム本体25Bに巻き掛けられた流延バンド26がドラム本体25Bから離れる位置P25(図2参照)から、ドラム本体24Bに向かって移動する流延バンド26がドラム本体24Bに接触する位置P24(図2参照)までの間をいう。一端側ガイドローラ36PA、36PBは、X方向上流側から下流側に向かって、順次配される。同様に、他端側ガイドローラ36QA、36QB、36QCは、X方向上流側から下流側に向かって、順次配される。
【0044】
また、各ガイドローラ36PA〜36PB、36QA〜36QCは、X方向において交互に配されることが好ましい。これにより、流延バンド26に加わる力を最小限にしつつ、移動路26Rに収まるように流延バンド26をガイドすることができる。
【0045】
図10及び図11に示すように、他端側ガイドローラ36QAは、流延バンド26のY方向のバンド端面26Eを周面51Sでガイドするガイドローラ本体51と、ガイドローラ本体51を軸支するガイドローラ軸52とを備える。ガイドローラ軸52はZ方向に延設される。ガイドローラ本体51、またはガイドローラ本体51の周面部は、テフロン(登録商標)などの材料から形成されることが好ましい。ガイドローラ本体51の周面51Sには、流延バンド26のY方向のバンド端面26Eをガイドする支持溝51Dが形成されていることが好ましい。支持溝51Dは、周方向へ延設され、環状に形成される。支持溝51Dは、流延バンド26のY方向のバンド端面26Eをガイドする底面51DDと、側面51DSとからなる。
【0046】
また、他端側ガイドローラ36QAは、ガイドローラ軸52に平行に配された揺動軸55と、ガイドローラ軸52及び揺動軸55を連結する連結アーム56とを備えていてもよい。連結アーム56は、一端部がガイドローラ軸52に固設され、他端部が揺動軸55に軸支される。連結アーム56により、ガイドローラ本体51は、移動路26RのY方向の端部26REに近接する近接位置P1と、近接位置P1から退避した退避位置P2〜P3との間で揺動自在となる(図12参照)。退避位置P2は、近接位置P1よりもX方向上流側であり、退避位置P3は、近接位置P1よりもX方向下流側である。揺動軸55及び連結アーム56により、流延バンド26に加わる力を最小限にしつつ、移動路26R内に収まるように流延バンド26をガイドすることができる。なお、近接位置P1となるようにガイドローラ本体51を付勢する付勢部材を設けても良い。
【0047】
更に、他端側ガイドローラ36QAは、Z方向において揺動軸55をシフト移動させる軸シフト部61(図9及び図10参照)や、ガイドローラ本体51をY方向中央側へ付勢させるバネ62(図11参照)を有していてもよい。制御部30は、ガイドローラ本体51が周面51Sで流延バンド26のY方向のバンド端面26Eを支持できるような位置になるように、軸シフト部61を制御する(図4参照)。制御部30は、流延バンド26が側面51DSに接触しないように、軸シフト部61を制御することが好ましい。バネ62は、例えば、一端が揺動軸55に固着され、他端がケーシング23の内壁面23Sに固着される。バネ62により、流延バンド26に加わる力を最小限にしつつ、移動路26R内に収まるように流延バンド26をガイドすることができる。
【0048】
なお、一端側ガイドローラ36PA〜PB及び他端側ガイドローラ36QB〜36QCは、他端側ガイドローラ36QAと同一の構造を有するため、詳細の説明は省略する。
【0049】
近接位置P1におけるガイドローラ本体51の支持溝51Dの底面51DDと移動路26RのY方向端部26REとの間隔CL(図11参照)は、ガイドローラ本体51が一端側に配されたものであるか、他端側に配されたものであるかに関わらず、X方向上流側から下流側に向かうに従い、漸減することが好ましい。なお、間隔CL(図11参照)は、例えば、0mm以上20mm以下である。例えば、図9に示す他端側ガイドローラ36QAについての間隔CLQA、一端側ガイドローラ36PAについての間隔CLPA、他端側ガイドローラ36QBについての間隔CLQB、一端側ガイドローラ36PBについての間隔CLPB、及び他端側ガイドローラ36QCについての間隔CLQCは、関係式(1)を満たすこと好ましい。
CLQA>CLPA>CLQB>CLPB>CLQC ・・・関係式(1)
【0050】
(仕切りユニット)
図2に戻って、仕切りユニットは、第1〜第3シール部材71〜73を備える。第1〜第3シール部材71〜73は、ケーシング23内にて、X方向上流側から下流側に向かって順次配される。第1〜第3シール部材71〜73は、それぞれ、ケーシング23の内壁面から突出し、突端が流延バンド26の流延面26Aに近接するように設けられる。第1〜第3シール部材71〜73により、ケーシング23内、すなわちケーシング23の内壁面と流延面26Aとで囲まれたエリアは、X方向上流側から下流側に向かって、流延室23A、乾燥室23B、及び剥取室23Cに仕切られる。そして、流延室23Aの気密性は、第1〜第2シール部材71〜72により維持される。また、乾燥室23Bの気密性は、第2〜第3シール部材72〜73により維持される。第1〜第3シール部材71〜73と流延面26Aとの間隔は、例えば、1.5mm以上2.0mm以下である。
【0051】
(流延ユニット)
流延室23Aには、ドープ12(図1参照)から流延膜76を形成する流延ユニットが配される。流延ユニットは、流延ダイ77と減圧機78とを備える。流延ダイ77は、ドープ12(図1参照)を流出するドープ流出口77Aを有する。流延ダイ77は、流延バンド26のうちドラム本体24Bに巻き掛けられた部分がドープ流出口77Aと近接するように、水平ドラム24の上方に配される。
【0052】
流延ダイ77は、ドープ流出口77Aから流延バンド26に向けてドープ12(図1参照)を流出する。ドープ流出口77Aから流出し流延面26Aに到達するまでのドープ12(図1参照)は、ビードを形成する。流延面26Aに到達したドープ12は、X方向にて流れ延ばされる結果、帯状の流延膜76を形成する。
【0053】
減圧機78は、ビードのX方向の上流側を減圧するためのものであり、流延ダイ77のドープ流出口77AよりもX方向の上流側に配置される減圧チャンバ78Aと、減圧チャンバ78A内の気体を吸引するための減圧ファン78Bと、減圧ファン78B及び減圧チャンバ78Aとを接続する吸引管78Cとを有する。
【0054】
(膜乾燥ユニット)
乾燥室23Bには、流延膜の乾燥を行う膜乾燥ユニットが配される。膜乾燥ユニットは、流延膜76に所定の乾燥風を供給する第1乾燥機81〜第2乾燥機82と、乾燥制御機(図示しない)とを備える。第1乾燥機81〜第2乾燥機82は、乾燥室23Bにおいて、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる。第1乾燥機81は、水平ドラム24,25に掛け渡された流延バンド26の上方に配される。第2乾燥機82は、水平ドラム24,25に掛け渡された流延バンド26の下方に配される。
【0055】
第1乾燥機81は、第1給気ダクト81Aと第1排気ダクト81Bとを備える。第1給気ダクト81Aと第1排気ダクト81Bとは、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる。第1給気ダクト81Aと第1排気ダクト81Bとは、それぞれ流延バンド26から離隔して配される。第1給気ダクト81Aには、第1乾燥風81DAが送り出される第1給気口が設けられる。X方向下流側に向かって開口する第1給気口は、流延膜76の一の端から他の端まで延設される。第1排気ダクト81Bには、第1乾燥風81DAを排気する第1排気口が設けられる。X方向上流側に向かって開口する第1排気口は、流延膜76の一の端から他の端まで延設される。
【0056】
第2乾燥機82は、第2排気ダクト82Aと第2給気ダクト82Bとを備える。第2排気ダクト82Aと第2給気ダクト82Bとは、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる。第2排気ダクト82A及び第2給気ダクト82Bは、それぞれ流延バンド26から離隔して配される。第2排気ダクト82Aには、第2乾燥風82DAを排気する第2排気口が設けられる。X方向下流側に向かって開口する第2排気口は、流延膜76の一の端から他の端まで延設される。第2給気ダクト82Bには、第2乾燥風82DAが送り出される第2給気口が設けられる。X方向上流側に向かって開口する第2給気口は、流延膜76の一の端から他の端まで延設される。
【0057】
乾燥制御機は、第1乾燥風81DA及び第2乾燥風82DAの温度や風速を独立して調節するものであり、第1乾燥風81DA及び第2乾燥風82DAの温度を調節する第1〜第2温調機(図示しない)と、第1乾燥風81DA及び第2乾燥風82DAの風量を調節する第1〜第2送風ファン(図示しない)と、コントローラ(図示しない)とを備える。第1〜第2温調機及び第1〜第2送風ファンは、第1乾燥機81〜第2乾燥機82の各ダクト内に設けられる。コントローラは、第1〜第2温調機及び第1〜第2送風ファンを制御して、第1乾燥風81DA及び第2乾燥風82DAについての温度や風速を独立して調節する。
【0058】
(剥離部材)
剥取室23Cには、剥離部材である剥離ローラ86が配される。剥離ローラ86は、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜76を流延バンド26から剥ぎ取って湿潤フィルム13とし、剥取室23Cに設けられた出口23COから湿潤フィルム13を送り出す。
【0059】
ケーシング23内の雰囲気に含まれる溶剤を凝縮する凝縮装置、凝縮した溶剤を回収する回収装置を、流延装置15に設けてもよい。これにより、ケーシング23内の雰囲気に含まれる溶剤の濃度を一定の範囲に保つことができる。
【0060】
図1に戻って、流延装置15とクリップテンタ17との間の渡り部には、湿潤フィルム13を支持する支持ローラ87が複数並べられている。支持ローラ87は、図示しないモータにより、軸を中心に回転する。支持ローラ87は、流延装置15から送り出された湿潤フィルム13を支持して、クリップテンタ17へ案内する。なお、図1では、渡り部に2つの支持ローラ87を並べた場合を示しているが、本発明はこれに限られず、渡り部に1つ、または3つ以上の支持ローラ87を並べてもよい。また、支持ローラ87は、フリーローラでもよい。
【0061】
クリップテンタ17は、湿潤フィルム13の幅方向両側縁部を把持する多数のクリップを有し、このクリップが延伸軌道上を移動する。クリップにより把持された湿潤フィルム13に対し乾燥風が送られ、湿潤フィルム13には、幅方向への延伸処理とともに乾燥処理が施される。
【0062】
クリップテンタ17と乾燥装置18との間には耳切装置88が設けられている。耳切装置88に送り出されたフィルム16の幅方向の両端は、クリップによって形成された把持跡が形成されている。耳切装置88は、この把持跡を有する両端部分を切り離す。この切り離された部分は、送風によりカットブロワ(図示しない)及びクラッシャ(図示しない)へ順次に送られて、細かく切断され、ドープ等の原料として再利用される。
【0063】
乾燥装置18は、フィルム16の搬送路を備えるケーシングと、フィルム16の搬送路を形成する複数のローラ18Aと、ケーシング内の雰囲気の温度や湿度を調節する空調機(図示しない)とを備える。ケーシング内に導入されたフィルム16は、複数のローラ18Aに巻き掛けられながら搬送される。この雰囲気の温度や湿度の調節により、ケーシング内を搬送されるフィルム16から残留した溶剤が蒸発する。更に、乾燥装置18に、フィルム16から蒸発した溶剤を吸着により回収する吸着回収装置が接続される。
【0064】
乾燥装置18及び巻取装置19の間には、上流側から順に、冷却室89、除電バー(図示しない)、ナーリング付与ローラ90、及び耳切装置(図示しない)が設けられる。冷却室89は、フィルム16の温度が略室温となるまで、フィルム16を冷却する。除電バーは、冷却室89から送り出され、帯電したフィルム16から電気を除く除電処理を行う。ナーリング付与ローラ90は、フィルム16の幅方向両端に巻き取り用のナーリングを付与する。耳切装置は、切断後のフィルム16の幅方向両端にナーリングが残るように、フィルム16の幅方向両端を切断する。
【0065】
巻取装置19は、プレスローラ19Aと巻き芯19Bを有する。巻取装置19に送られたフィルム16は、プレスローラ19Aによって押し付けられながら巻き芯19Bに巻き取られ、ロール状となる。
【0066】
次に、本発明の作用を説明する。図3及び図4に示すように、軸シフト部28ASとロードセル28LCと制御部30とにより、流延バンド26には所定の移動テンションが印加される。そして、駆動用モータ28Mと制御部30とにより、水平ドラム24を回転させる。これにより、流延バンド26は、移動路26Rを移動、すなわちケーシング23内における移動路26Rにて、各室23A〜23Cを順次、循環移動する。
【0067】
(膜形成工程)
図2に示すように、流延室23Aでは、流延バンド26上にドープ12からなる流延膜76を形成する流延工程が行われる。流延ダイ77は、ドープ流出口40Aからドープ12を連続的に流出する。流出したドープ12は、流延ダイ77から流延バンド26にかけてビードを形成し、流延バンド26上にて流れ延ばされる。こうして、流延バンド26上には、ドープ12からなる流延膜76が形成される。
【0068】
(膜乾燥工程)
乾燥室23Bでは、所定の乾燥風を流延膜76にあてて、流延膜76から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程が行われる。膜乾燥工程は、流延膜76が自立して搬送可能な状態となるまで行われる。膜乾燥工程では、流延膜76に第1乾燥風81DAをあてる第1膜乾燥工程と、流延膜76に第2乾燥風82DAをあてる第2膜乾燥工程とが順次行われる。
【0069】
第1膜乾燥工程は、溶剤の含有率が250質量%以上400質量%以下の流延膜76に対して行うことが好ましく、溶剤の含有率が300質量%以上350質量%以下の流延膜76に対して行うことがより好ましい。第1乾燥風81DAの温度は30℃以上80℃以下であることが好ましい。また、第1乾燥風81DAの風速は5m/秒以上25m/秒以下であることが好ましい。
【0070】
第2膜乾燥工程は、第2乾燥風53DAの温度は30℃以上80℃以下であることが好ましい。また、第2乾燥風53DAの風速は5m/秒以上25m/秒以下であることが好ましい。
【0071】
ここで、溶剤の含有率は、流延膜や各フィルム中に含まれる溶剤の量を乾量基準で示したものであり、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100と表される。
【0072】
(剥取工程)
剥取室23Cでは、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜76を流延バンド26から剥ぎ取る剥取工程が行われる。剥取ローラ86は、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜76を流延バンド26から剥ぎ取って湿潤フィルム13とし、剥取室23Cに設けられた出口23COから湿潤フィルム13を送り出す。剥取工程は、溶剤の含有率が20質量%以上80質量%以下の流延膜76に対して行うことが好ましい。
【0073】
そして、剥取工程の後、流延バンド26には再び膜形成工程が行なわれる。このようにして、流延装置15では、膜形成工程、膜乾燥工程、及び剥取工程が繰り返し行なわれる。流延装置15により、ドープ12から湿潤フィルム13を連続的に生産することができる。
【0074】
ここで、流延バンド26が移動路26Rから外れたことを制御部30が検知した場合には、制御部30は外れ方向判定処理の結果に基づいて軸受けシフト部35Sを制御する従動ドラム変移処理(図6〜図8参照)を行なう。従動ドラム変移処理により、流延バンド26を移動路26Rへ戻すことができる。ところが、流延バンド26の移動速度が大きい場合(例えば、50m/分以上)、流延バンド26の移動速度に大きな変動(例えば、2m/分2以上)が生じた場合、膜形成工程、膜乾燥工程及び剥取工程を繰り返し行なう間における流延バンド26の温度の変動量が大きい(例えば、30℃以上)場合には、外れ方向判定処理のみでは、流延バンド26を移動路26Rへ戻すことが困難となるばかりか、流延バンド26がより移動路26Rから外れてしまう。
【0075】
流延装置15では、バンドガイド機構36により、移動路26Rの幅に一定の遊び量を加えた範囲の中に流延バンド26を維持することができるため、流延バンド26が移動路26Rから大きく外れてしまうことを回避できる。そして、このような状態で従動ドラム変移処理を行なうことにより、流延バンド26が移動路26Rから外れてしまうことを回避できる。このようにして、流延ダイ77から流出したドープ12(図1参照)が流延面26Aに着地する流延位置CP(図8参照)において、流延バンド26を移動路26Rに収めることができる。
【0076】
ドラム揺動機構35は省略しても良い。ドラム揺動機構35を省略した場合、底面51DDと移動路26RのY方向端部26REとの間隔CLは、0とすればよい(図13参照)。
【0077】
ドラム揺動機構35(図4参照)を用いる場合、水平ドラム25に最も近いガイドローラは、揺動する水平ドラム25と接触しない程度に水平ドラム25から離す必要があるが、ドラム揺動機構35を省略する場合には、水平ドラム25に最も近いガイドローラをより水平ドラム25へ近接させることができる。
【0078】
また、水平ドラム24に代えて、図14及び図15に示す段付きドラム124を用いても良い。段付きドラム124は、ケーシング23内に水平であって、水平ドラム25と平行に配され、駆動軸124Aと、駆動軸124Aに軸着されたステンレス製のドラム本体124Bとを備える。ドラム本体124Bは、Y方向中央部には小径ドラム部124BCを備え、Y方向両端部に大径ドラム部124BEを備える。Y方向における小径ドラム部124BCの長さは、移動路26Rの幅と等しい。移動路26Rは、小径ドラム部124BCの周面上に設定される。大径ドラム部124BE及び小径ドラム部124BCによって形成される流延バンド26の支持溝124Mの深さD124M、すなわち、大径ドラム部124BEの半径から小径ドラム部124BCの半径の差は、小径ドラム部124BCの周面に巻き掛けられた流延バンド26が大径ドラム部124BEへ乗り上げない程度のものであればよく、例えば、流延バンド26の厚みD26の0.5倍以上5倍以下あればよい。段付きドラム124により、流延バンド26が移動路26Rから外れてしまうことを回避できる。
【0079】
段付きドラム124を用いる場合、ドラム揺動機構35やバンドガイド機構36を省略しても良い。
【0080】
本発明により得られるフィルム16は、特に、位相差フィルムや偏光板保護フィルムに用いることができる。
【0081】
フィルム16の幅は、600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、フィルム16の幅が2500mmより大きい場合にも効果がある。またフィルム16の膜厚は、20μm以上80μm以下であることが好ましい。
【0082】
また、フィルム16の面内レターデーションReは、20nm以上300nm以下であることが好ましく、フィルム16の厚み方向レターデーションRthは、−100nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0083】
面内レターデーションReの測定方法は次の通りである。面内レターデーションReは、サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21DH 王子計測(株))にて632.8nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値を用いた。なおReは以下式で表される。
Re=|n1−n2|×d
n1は遅相軸の屈折率,n2は進相軸2の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す
【0084】
厚み方向レターデーションRthの測定方法は次の通りである。サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、エリプソメータ(M150 日本分光(株)製)で632.8nmにより垂直方向から測定した値と、フィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値とから下記式に従い算出した。
Rth={(n1+n2)/2−n3}×d
n3は厚み方向の屈折率を表す。
【0085】
(ポリマー)
上記実施形態では、ポリマーフィルムの原料となるポリマーは、特に限定されず、例えば、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等がある。
【0086】
(セルロースアシレート)
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、トリアセチルセルロース(TAC)の90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 1.0≦ A ≦3.0
(III) 0 ≦ B ≦2.0
【0087】
アシル基の全置換度A+Bは、2.20以上2.90以下であることがより好ましく、2.40以上2.88以下であることが特に好ましい。また、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度Bは、0.30以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
【0088】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0089】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【0090】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶剤に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0091】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。ポリマーの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0092】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
【0093】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶剤及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【符号の説明】
【0094】
10 溶液製膜設備
15 流延装置
26 流延バンド
27 バンド移動ユニット
28 バンド移動部
29 バンド移動方向制御部
30 制御部
35 ドラム揺動機構
35K 外れ検知部
35S 軸受けシフト部
36 バンドガイド機構
36PA〜PB、36QA〜QC ガイドローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平かつ互いに平行に配された駆動ドラム及び従動ドラムに巻き掛けられ、幅方向において予め設定された環状路上を前記駆動ドラムの回転により移動可能な環状バンドの移動方向制御装置において、
前記環状路のうち下方部分にて幅方向両外側に配され、前記環状バンドの幅方向端面をガイドする環状バンドガイド機構を備えたことを特徴とする環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項2】
前記環状バンドガイド機構は、前記環状路に近接する近接位置と前記近接位置から離れた退避位置との間で移動自在に設けられたことを特徴とする請求項1記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項3】
前記環状バンドガイド機構は、前記環状路の幅方向の中央側へ付勢されたことを特徴とする請求項1または2記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項4】
前記環状バンドガイド機構は、周面で前記環状バンドの幅方向端面をガイド可能なローラ本体と、前記ローラ本体を軸支するローラ軸とを備えたガイドローラであることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項5】
前記ローラ本体の周面には、前記環状バンドの幅方向端面をガイド可能な支持溝が形成されたことを特徴とする請求項4記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項6】
前記環状バンドガイド機構は、
前記環状路の幅方向の一端側に配された一端側ガイド具と、
前記環状路の幅方向の他端側に配された他端側ガイド具とを備え、
前記一端側ガイド具及び前記他端側ガイド具は、前記環状バンドの移動方向において交互に配されたことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項7】
前記一端側ガイド具及び前記他端側ガイド具は、前記従動ドラムから前記駆動ドラムに向かうに従って、前記環状路の幅方向中央部へ近づくように並べられたことを特徴とする請求項6記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項8】
一端が他端よりも前記駆動ドラムに近い第1姿勢及び前記他端が前記一端よりも前記駆動ドラムに近い第2姿勢の間で前記従動ドラムを変移させる従動ドラム変移部と、
前記環状バンドが前記環状路から外れた方向を検知する外れ方向検知部と、
前記外れ方向検知部が検知した前記外れた方向に基づいて前記従動ドラム変移部を制御する従動ドラム姿勢制御部とを備えたことを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項9】
前記駆動ドラムは、周面で前記環状バンドの裏面を支持可能な駆動ドラム本体と、前記駆動ドラム本体を軸支するドラム駆動軸とを備え、
前記駆動ドラム本体は幅方向中央部に設けられた小径ドラム部と幅方向両端部に設けられた大径ドラム部とを有し、
前記小径ローラ部の周面上に前記環状路が設定されたことを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項10】
前記環状バンドのうち前記駆動ドラムに巻き掛けられた部分に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出する流延ダイと、
前記流出したドープを支持する支持面を有し、前記ドープからなる膜を前記支持面上に形成する前記環状バンドと、
前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥装置と、
前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥ぎ取り装置と、
請求項1ないし9のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置とを備えたことを特徴とする流延設備。
【請求項11】
前記環状バンドのうち前記駆動ドラムに巻き掛けられた部分に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出して、前記環状バンドに前記ドープからなる膜を形成する膜形成工程と、
前記支持面上の前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥取工程と、
請求項1ないし9のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置を用いて、前記環状バンドの移動方向の制御を行なう移動制御工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。
【請求項1】
水平かつ互いに平行に配された駆動ドラム及び従動ドラムに巻き掛けられ、幅方向において予め設定された環状路上を前記駆動ドラムの回転により移動可能な環状バンドの移動方向制御装置において、
前記環状路のうち下方部分にて幅方向両外側に配され、前記環状バンドの幅方向端面をガイドする環状バンドガイド機構を備えたことを特徴とする環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項2】
前記環状バンドガイド機構は、前記環状路に近接する近接位置と前記近接位置から離れた退避位置との間で移動自在に設けられたことを特徴とする請求項1記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項3】
前記環状バンドガイド機構は、前記環状路の幅方向の中央側へ付勢されたことを特徴とする請求項1または2記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項4】
前記環状バンドガイド機構は、周面で前記環状バンドの幅方向端面をガイド可能なローラ本体と、前記ローラ本体を軸支するローラ軸とを備えたガイドローラであることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項5】
前記ローラ本体の周面には、前記環状バンドの幅方向端面をガイド可能な支持溝が形成されたことを特徴とする請求項4記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項6】
前記環状バンドガイド機構は、
前記環状路の幅方向の一端側に配された一端側ガイド具と、
前記環状路の幅方向の他端側に配された他端側ガイド具とを備え、
前記一端側ガイド具及び前記他端側ガイド具は、前記環状バンドの移動方向において交互に配されたことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項7】
前記一端側ガイド具及び前記他端側ガイド具は、前記従動ドラムから前記駆動ドラムに向かうに従って、前記環状路の幅方向中央部へ近づくように並べられたことを特徴とする請求項6記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項8】
一端が他端よりも前記駆動ドラムに近い第1姿勢及び前記他端が前記一端よりも前記駆動ドラムに近い第2姿勢の間で前記従動ドラムを変移させる従動ドラム変移部と、
前記環状バンドが前記環状路から外れた方向を検知する外れ方向検知部と、
前記外れ方向検知部が検知した前記外れた方向に基づいて前記従動ドラム変移部を制御する従動ドラム姿勢制御部とを備えたことを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項9】
前記駆動ドラムは、周面で前記環状バンドの裏面を支持可能な駆動ドラム本体と、前記駆動ドラム本体を軸支するドラム駆動軸とを備え、
前記駆動ドラム本体は幅方向中央部に設けられた小径ドラム部と幅方向両端部に設けられた大径ドラム部とを有し、
前記小径ローラ部の周面上に前記環状路が設定されたことを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項10】
前記環状バンドのうち前記駆動ドラムに巻き掛けられた部分に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出する流延ダイと、
前記流出したドープを支持する支持面を有し、前記ドープからなる膜を前記支持面上に形成する前記環状バンドと、
前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥装置と、
前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥ぎ取り装置と、
請求項1ないし9のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置とを備えたことを特徴とする流延設備。
【請求項11】
前記環状バンドのうち前記駆動ドラムに巻き掛けられた部分に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出して、前記環状バンドに前記ドープからなる膜を形成する膜形成工程と、
前記支持面上の前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥取工程と、
請求項1ないし9のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置を用いて、前記環状バンドの移動方向の制御を行なう移動制御工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−75432(P2013−75432A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216686(P2011−216686)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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