説明

環状バンドの移動方向制御装置、環状バンドの移動方向制御方法、流延設備、及び溶液製膜方法

【課題】環状バンドの移動方向を容易に制御する。
【解決手段】環状の流延バンド26は、テンションがかかった状態で水平ローラ24、25に掛け渡される。水平ローラ24は、モータ24Mにより、回転する。流延バンド26は、水平ローラ24、25の周りに形成された移動路を、循環移動する。水平ローラ24と水平ローラ25との間には、流延バンド26のY方向一端部を冷却する冷却部61Pと、流延バンド26のY方向他端部を冷却する冷却部61Qとが設けられる。また、制御ユニット67は、検知センサ65PB・65QBにより、流延バンド26が移動路から外れた方向を検知する。更に、制御ユニット67は、流延バンド26のうち移動路から外れた方向の端部を、外れた方向と反対側の端部よりも優先的に冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状バンドの移動方向制御装置、環状バンドの移動方向制御方法、流延設備、及び溶液製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性を有する熱可塑性フィルム(以下、フィルムと称する)は、軽量であり、成形が容易であるため、光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、写真感光用フィルムの他、液晶表示装置の光学フィルム(偏光板保護フィルムや位相差フィルム等)として用いられている。
【0003】
フィルムは、溶液製膜方法により製造される。溶液製膜方法は、移動する支持体に向けて、流延室内に配された流延ダイを用いて、ポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を、温度調節がなされた支持体に向けて流し、支持体上に帯状の流延膜を形成する(以下、膜形成工程と称する)。次に、流延膜が搬送可能になるまで流延膜から溶剤を蒸発させる(以下、膜乾燥工程と称する)。その後、搬送可能となった流延膜を支持体から剥がして湿潤フィルムとする(以下、剥取工程と称する)。そして、この湿潤フィルムから溶剤を蒸発させてフィルムとする(以下、フィルム乾燥工程と称する)方法である。
【0004】
この溶液製膜方法に用いられる支持体として、複数のローラに掛け渡され循環移動する環状バンドが知られている。この環状バンドを用いることにより、膜形成工程、膜乾燥工程及び剥取工程を繰り返し行うことができるため、結果として、フィルムの生産効率を向上させることができる。
【0005】
ところが、溶液製膜方法を長時間行なうと、環状バンドが所定の移動路から外れてしまうことがある。環状バンドが移動路から外れた状態で、溶液製膜方法を行なうと、得られるフィルムの均一性、特に幅方向における厚み、表面状態、光学特性の均一性が損なわれてしまう。
【0006】
環状バンドの移動方向を調節する方法として、環状バンドが巻き掛けられた駆動ローラと従動ローラとのうちいずれか一方を前後方向又は上下方向へ変移させる発明が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−195463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、溶液製膜方法に用いられる環状バンドは、物品の搬送機器として用いられるものに比べて長尺である。このような長尺な環状バンドの移動路を制御するために、特許文献1に記載の発明を用いると、ロールの変移の制御には高い精度が求められる。この結果、環状バンドの移動方向の制御が困難となる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するものであり、環状バンドの移動方向制御装置、環状バンドの移動方向制御方法、流延設備、及び溶液製膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、平行に配された駆動ローラ及び従動ローラに巻き掛けられ、幅方向において予め設定された移動路上を前記駆動ローラの回転により移動可能なステンレス製の環状バンドの移動方向制御装置において、前記環状バンドの幅方向一端部のテンションを調節可能な一端バンドテンション調節部と、前記環状バンドの幅方向他端部のテンションを調節可能な他端バンドテンション調節部と、前記環状バンドのうち前記移動路から外れた方向の端部における前記テンションが、前記外れた方向と反対側の端部における前記テンションよりも大きくなるように、前記一端バンドテンション調節部又は前記他端バンドテンション調節部を制御するバンドテンション制御部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
前記一端バンドテンション調節部は前記環状バンドのうち前記幅方向一端側の温度を調節するバンド一端温調部を備え、前記他端バンドテンション調節部は前記環状バンドのうち前記幅方向他端側の温度を調節するバンド他端温調部を備え、前記バンドテンション制御部は、前記環状バンドのうち前記外れた方向の端部を、前記外れた方向と反対側の端部よりも優先的に冷却するように、前記バンド一端温調部及び前記バンド他端温調部を制御するバンド温調制御部を備えたことが好ましい。
【0012】
前記バンド一端温調部は前記バンドの前記幅方向一端側へ温調ガスを供給し、前記バンド他端温調部は前記バンドの前記幅方向他端側へ温調ガスを供給することが好ましい。
【0013】
前記バンド一端温調部は、前記バンドの前記幅方向一端側へ一の液体を塗布する一端バンド塗布機と、前記バンドの前記幅方向一端側に塗布された前記一の液体を蒸発させる一端バンド蒸発機とを有し、前記バンド他端温調部は、前記バンドの前記幅方向他端側へ他の液体を塗布する他端バンド塗布機と、前記バンドの前記幅方向他端側に塗布された前記他の液体を蒸発させる他端バンド蒸発機とを有することが好ましい。
【0014】
前記一端バンドテンション調節部は、前記駆動ローラ及び前記従動ローラのうちいずれかのローラの前記幅方向一端側の温度を調節するローラ一端温調部を備え、前記他端バンドテンション調節部は、前記ローラの前記幅方向他端側の温度を調節するローラ他端温調部を備え、前記バンドテンション制御部は、前記環状バンドのうち前記外れた方向の端部を、前記外れた方向と反対側の端部よりも優先的に冷却するように、前記ローラ一端温調部又は前記ローラ他端温調部を制御するローラ温調制御部を備えたことが好ましい。
【0015】
前記ローラ一端温調部は前記ローラの前記幅方向一端側へ温調ガスを供給し、前記ローラ他端温調部は前記ローラの前記幅方向他端側へ温調ガスを供給することが好ましい。
【0016】
前記ローラは、前記幅方向一端側に内蔵され、一端側温調用媒体が流通可能な一端流路と、前記幅方向他端側に内蔵され、他端側温調用媒体が流通可能な他端流路とを有し、前記ローラ一端温調部は前記一端側温調用媒体を前記一端流路へ供給し、前記ローラ他端温調部は前記他端側温調用媒体を前記他端流路へ供給することが好ましい。
【0017】
前記ローラ一端温調部は、前記ローラの前記幅方向一端側へ一の液体を塗布する一端ローラ塗布機と、前記ローラの前記幅方向一端側に塗布された前記一の液体を蒸発させる一端ローラ蒸発機とを有し、前記ローラ他端温調部は、前記ローラの前記幅方向他端側へ他の液体を塗布する他端ローラ塗布機と、前記ローラの前記幅方向他端側に塗布された前記他の液体を蒸発させる他端ローラ蒸発機とを有することが好ましい。
【0018】
前記幅方向の一端側または他端側のいずれの方向に前記環状バンドが外れたか否かを判定する外れ方向判定部を備えたことが好ましい。
【0019】
本発明の流延設備は、ポリマー及び溶剤を含むドープを前記環状バンドに向けて流出する流延ダイと、前記流出したドープを支持する支持面を有し、前記ドープからなる膜を前記支持面上に形成する前記環状バンドと、前記膜から前記溶剤を蒸発させる溶剤蒸発装置と、前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥ぎ取り装置と、上記の環状バンドの移動方向制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0020】
前記環状バンドの幅方向両端部を冷却する両端部冷却装置を備えたことが好ましい。また、前記両端部冷却装置は、前記バンドのうち前記ローラから離れた部分を冷却することが好ましい。
【0021】
本発明は、平行に配された駆動ローラ及び従動ローラに巻き掛けられ、幅方向において予め設定された移動路上を前記駆動ローラの回転により移動可能なステンレス製の環状バンドの移動方向制御方法において、前記環状バンドのうち前記移動路から外れた方向の端部における前記テンションが、当該方向と反対側の端部における前記テンションよりも大きくなるように、前記環状バンドの幅方向一端側の前記テンションを調節可能な一端バンドテンション調節部と、前記環状バンドの幅方向他端側の前記テンションを調節可能な他端バンドテンション調節部とを制御するバンドテンションバランス工程を有することを特徴とする。
【0022】
前記幅方向の一端側または他端側のいずれの方向に前記環状バンドが外れたか否かを判定する外れ方向判定工程を有することが好ましい。
【0023】
本発明の溶液製膜方法は、前記環状バンドに向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出して、前記環状バンドのバンド面に前記ドープからなる膜を形成する膜形成工程と、前記バンド面上の前記膜に風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥取工程と、請求項13または14記載の環状バンドの移動方向制御方法が行われる移動制御工程とを有することを特徴とする。
【0024】
前記環状バンドの幅方向両端部を冷却する両端部冷却工程を、前記膜乾燥工程と並行して行なうことが好ましい。また、前記両端部冷却工程と前記膜乾燥工程とを同時に開始することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、環状バンドの移動方向の制御を容易にすることができる。
【0026】
また、溶液製膜方法に用いられる環状バンドはステンレス製である。この場合において、特許文献1に記載の発明のように、環状バンドが巻き掛けられたローラをいずれかの方向へ変移させようとすると、ローラと環状バンドとの間で擦れが生じてしまう。擦れた部分は、めっき層のはがれによる腐食、擦れに起因する応力による相変態などを経て、環状バンドの表面側、すなわち流延膜が形成されるバンド面において欠陥となって現れる。このような欠陥を有するバンド面に流延膜を形成してしまうと、欠陥の跡がフィルムの表面に残ってしまう。本発明によれば、欠陥を誘発するローラと環状バンドとの間で擦れを最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】溶液製膜設備の概要を示す説明図である。
【図2】流延装置の概要を示す側面図である。
【図3】流延装置のケーシング内に配された各部品の概要を示す斜視図である。
【図4】第1の一端バンドテンション調節部と、第1の他端バンドテンション調節部との概要を示す斜視図である。
【図5】一端温調ガスダクトと他端温調ガスダクトとの概要を示す断面図である。
【図6】膜形成エリア冷却機の概要を示す斜視図である。
【図7】一端外れ検知部と他端外れ検知部との概要を示す説明図である。
【図8】第1の一端バンドテンション調節部と、第1の他端バンドテンション調節部と外れ検知部と制御ユニットとの概要を示すブロック図である。
【図9】膜形成工程によって形成された流延膜の概要を示す断面図である。
【図10】乾燥層と湿潤層とを有する流延膜の概要を示す断面図である。
【図11】移動路から外れた状態の流延バンドの概要を示す平面図である。
【図12】一端温調ガスダクトと他端温調ガスダクトとの概要を示す断面図である。
【図13】第2の一端バンドテンション調節部と、第2の他端バンドテンション調節部との概要を示す斜視図である。
【図14】第2の一端バンドテンション調節部と、第2の他端バンドテンション調節部と外れ検知部と制御ユニットとの概要を示すブロック図である。
【図15】第3の一端バンドテンション調節部と、第3の他端バンドテンション調節部との概要を示す斜視図である。
【図16】第3の一端バンドテンション調節部と、第3の他端バンドテンション調節部と外れ検知部と制御ユニットとの概要を示すブロック図である。
【図17】第4の一端バンドテンション調節部と、第4の他端バンドテンション調節部との概要を示す斜視図である。
【図18】第4の一端バンドテンション調節部と、第4の他端バンドテンション調節部と外れ検知部と制御ユニットとの概要を示すブロック図である。
【図19】第5の一端バンドテンション調節部と、第5の他端バンドテンション調節部との概要を示す斜視図である。
【図20】第5の一端バンドテンション調節部と、第5の他端バンドテンション調節部との概要を示す斜視図である。
【図21】第5の一端バンドテンション調節部と、第5の他端バンドテンション調節部と外れ検知部と制御ユニットとの概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(溶液製膜設備)
図1に示すように、溶液製膜設備10は、ドープ12から湿潤フィルム13をつくる流延装置15と、湿潤フィルム13の乾燥によりフィルム16を得るクリップテンタ17と、湿潤フィルム13の乾燥を行う乾燥装置18と、フィルム16を巻き芯に巻き取る巻取装置19とを有する。
【0029】
(流延装置)
図1及び図2に示すように、流延装置15は、ケーシング23と、ケーシング23内に水平かつ互いに平行に並べられた水平ローラ24、25とを有する。水平ローラ24は、駆動軸24Aと、駆動軸24Aに軸着されたステンレス製のロール本体24Bとを備える。水平ローラ25は、軸25Aと、軸25Aに軸着されたステンレス製のロール本体25Bとを備える。水平ローラ24、25には環状の流延バンド26が巻き掛けられる。流延バンド26は、帯状のシート材の両端を連結することにより得られる。
【0030】
ここで、水平とは、水平面に対するローラ24、25の交差角度が0°以上0.01°以下のものである。また、平行とは、水平ローラ24、25の交差角度が0°以上0.01°以下のものである。
【0031】
駆動軸24Aは、ローラ駆動用モータ24M(図3参照)と接続する。モータ制御部(図示しない)は、ローラ駆動用モータ24Mを制御して、水平ローラ24を所定の速度で回転させる。流延バンド26は、水平ローラ24の回転に伴い所定の方向へ循環移動し、水平ローラ25は、流延バンド26の移動に従って回転する。以下、流延バンド26の移動方向をX方向と称し、流延バンド26の幅方向をY方向と、垂直方向をZ方向と称する。
【0032】
また、駆動軸24Aは、ローラ本体24B、25Bに掛け渡された流延バンド26に所定のテンションが印加されるテンション印加位置と、ローラ本体24B、25Bに掛け渡された流延バンド26が弛む弛み位置との間で移動自在となっている。軸シフト部24ASは、図示しない制御部の制御の下、テンション印加位置と弛み位置との間で、駆動軸24Aを変移可能である。軸シフト部24ASは、軸25Aと平行な状態を維持しながら駆動軸24Aを変移させることが好ましい。また、駆動軸24Aには、ロードセル24ALが取り付けられる。ロードセル24ALは、駆動軸24Aが受ける外力を検知する。図示しない制御部は、ロードセル24ALから駆動軸24Aが受ける外力を読み取る。次に、図示しない制御部は、読み取った外力及び内蔵された流延バンド26の断面積の値に基づいて、流延バンド26にかかるテンションが所定のものとなるように、軸シフト部24ASを制御する。こうして、流延バンド26にテンションをY方向において一様に印加することができる。
【0033】
流延バンド26の表面(以下、流延面と称する)26A(図3参照)の移動速度V26Aは以上200m/分以下であることが好ましい。移動速度V26Aが200m/分を超えると、ビードを安定して形成することが困難となる。移動速度V26Aの下限値は、目標とするフィルムの生産性を考慮すればよい。移動速度V26Aの下限値は、例えば、10m/分以上である。
【0034】
流延バンド26は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するSUS316製であることがより好ましい。流延バンド26の幅は、例えば、ドープ12の流延幅の1.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。流延バンド26の長さは、例えば、20m以上200m以下であることが好ましい。流延バンド26の厚みは、例えば、0.5mm以上〜2.5mm以下であることが好ましい。なお、流延バンド26の厚みムラは、全体の厚みに対して0.5%以下のものを用いることが好ましい。流延面26Aは、研磨されていることが好ましく、流延面26Aの表面粗さは0.05μm以下であることが好ましい。
【0035】
図2に示すように、ケーシング23内には、X方向上流側から下流側に向かって、第1〜第3シール部材31〜33が順次配される。第1〜第3シール部材31〜33は、ケーシング23の内壁面から突出し、突端が流延バンド26の流延面26Aに近接するように設けられる。第1〜第3シール部材31〜33により、ケーシング23内は、X方向上流側から下流側に向かって、流延室23A、乾燥室23B、及び剥取室23Cに仕切られる。そして、流延室23Aの気密性は、第1〜第2シール部材31〜32により維持される。また、乾燥室23Bの気密性は、第2〜第3シール部材32〜33により維持される。第1〜第3シール部材31〜33と流延面26Aとの間隔は、例えば、1.5mm以上2.0mm以下である。
【0036】
(流延室)
流延室23Aには、流延ダイ40と減圧ユニット41とが設けられる。流延ダイ40は、ドープ12を流出するドープ流出口40Aを有し、ドープ流出口40Aが流延バンド26と近接するように、水平ローラ24の上方に配される。
【0037】
流延ダイ40は、ドープ流出口40Aから流延バンド26に向けてドープ12を流出する。ドープ流出口40Aから流出し流延面26Aに到達するまでのドープ12は、ビードを形成する。流延面26Aに到達したドープ12は、X方向にて流れ延ばされる結果、帯状の流延膜43を形成する。
【0038】
減圧ユニット41は、ビードのX方向の上流側を減圧するためのものであり、流延ダイ40のドープ流出口40AよりもX方向の上流側に配置される減圧チャンバ41Aと、減圧チャンバ41A内の気体を吸引するための減圧ファン41Bと、減圧ファン41B及び減圧チャンバ41Aとを接続する吸引管41Cとを有する。
【0039】
(乾燥室)
乾燥室23Bには、流延膜43に所定の乾燥風を供給する第1乾燥ユニット51〜第2乾燥ユニット52が、X方向上流側から下流側に向かって、順次設けられる。第1乾燥ユニット51は、水平ローラ24,25に掛け渡された流延バンド26の上方に配される。第2乾燥ユニット52は、水平ローラ24,25に掛け渡された流延バンド26の下方に配される。
【0040】
図3〜図5に示すように、第1乾燥ユニット51は、第1給気ダクト51Aと第1排気ダクト51Bとを備える。第1給気ダクト51Aと第1排気ダクト51Bとは、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる。第1給気ダクト51Aと第1排気ダクト51Bとは、それぞれ流延バンド26から離隔して配される。第1給気ダクト51Aには、第1乾燥風51DAが送り出される第1給気口が設けられる。X方向下流側に向かって開口する第1給気口は、流延膜43の一の端から他の端まで延設される。第1排気ダクト51Bには、第1乾燥風51DAを排気する第1排気口が設けられる。X方向上流側に向かって開口する第1排気口は、流延膜43の一の端から他の端まで延設される。
【0041】
第2乾燥機152は、第2排気ダクト52Aと第2給気ダクト52Bとを備える。第2排気ダクト52Aと第2給気ダクト52Bとは、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる。第2排気ダクト52A及び第2給気ダクト52Bは、それぞれ流延バンド26から離隔して配される。第2排気ダクト52Aには、第2乾燥風52DAを排気する第2排気口が設けられる。X方向下流側に向かって開口する第2排気口は、流延膜43の一の端から他の端まで延設される。第2給気ダクト52Bには、第2乾燥風52DAが送り出される第2給気口が設けられる。X方向上流側に向かって開口する第2給気口は、流延膜43の一の端から他の端まで延設される。
【0042】
第1乾燥ユニット51〜第2乾燥ユニット52には、それぞれ、第1〜第2送風ファン(図示しない)及び第1〜第2温調機(図示しない)が設けられる。乾燥制御部(図示しない)は、第1〜第2送風ファン及び第1〜第2温調機と接続する。乾燥制御部は、第1乾燥風51DA及び第2乾燥風52DAについての温度や風速を独立して調節する。
【0043】
図6に示すように、乾燥室23Bでは、流延膜43から溶剤を蒸発させるため、流延膜43に膨大な熱エネルギーが与えられるため、乾燥室23Bを通過中の流延バンド26の温度は上昇する傾向にある。このため、加熱された流延バンド26にドープ12を流延すると、ドープ12の発泡が起こってしまう。そこで、膜乾燥工程の完了後、または完了間際にて、裏面26Bに向けて冷却ガスを送り出す膜形成エリア冷却機55を用いて、流延バンド26のうち流延膜43を支持する部分55Xを冷却してもよい。膜形成エリア冷却機55は、乾燥室23BのX方向最下流側、または、剥取室23Cに設けることが好ましい。
【0044】
なお、膜形成エリア冷却機55に代えて、裏面26Bに溶剤を塗布するダイと、ダイよりもX方向下流側に配され裏面26Bに塗布された溶剤を蒸発させる乾燥部とを備えた膜形成エリア冷却部を用いても良い。
【0045】
(ローラ温調機)
図2に示すように、水平ローラ24にはローラ温調機57が取り付けられ、水平ローラ25には、ローラ温調機58が取り付けられる。ローラ温調機57、58は、制御部の制御の下、所望の温度に調節された伝熱媒体を、ロール本体24B、25B内に設けられる流路中で循環させる。この伝熱媒体の循環により、ロール本体24B、25Bの温度を所望の温度に保つことができる。流延バンド26の流延面26A、特に流延膜43が形成される部分の温度は10℃〜40℃の範囲内で略一定に調節されることが好ましい。
【0046】
(環状バンドの移動方向制御装置)
図3に示すように、乾燥室23Bには、環状バンドの移動方向制御装置60が設けられる。環状バンドの移動方向制御装置60は、一端バンドテンション調節部であるバンド一端温調ユニット61Pと、他端バンドテンション調節部であるバンド他端温調ユニット61Qと、外れ検知部65と、制御ユニット67とを備える。なお、図2では、図が煩雑になるため、環状バンドの移動方向制御装置60を省略している。
【0047】
(バンド一端温調ユニット)
図4及び図5に示すように、バンド一端温調ユニット61Pは、流延バンド26のうちY方向の一端部26EPに温調ガスをあてて一端部26EPの温度を調節するものであり、一端部26EPの流延面26A及び裏面26Bに対向するように設けられ温調ガス68が流通する一端温調ガスダクト61PAと、一端温調ガスダクト61PAへ温調ガス68を供給する一端温調ガス供給機61PBと、一端温調ガスダクト61PAを通った温調ガス68を吸引する一端温調ガス吸引機61PCとを備える。一端温調ガスダクト61PAのうち流延面26Aに対向するダクト面には、開口61POが設けられる。この開口61POにより、一端温調ガスダクト61PAに供給された温調ガス68は、一端部26EPに接触する。
【0048】
バンド一端温調ユニット61Pとバンド他端温調ユニット61Qとは、Y方向に並べられることが好ましい。また、一端温調ガスダクト61PA及び他端温調ガスダクト61QAは、第1給気ダクト51AのY方向両側に配されることが好ましい。
【0049】
ここで、流延バンド26のうちY方向の一端部26EPとは、流延バンド26のうち流延膜43を支持する部分55X(図6参照)を除く部分の一方の部分をいう。また、流延バンド26のうちY方向の一端部26EPとは、流延膜43を支持する部分55X(図6参照)を除く部分の他方の部分をいう。
【0050】
(バンド他端温調ユニット)
バンド他端温調ユニット61Qは、バンド一端温調ユニット61Pと同様に、流延バンド26のうちY方向の他端部26EQに温調ガス68をあてて他端部26EQの温度を調節するものであり、他端部26EQの流延面26A及び裏面26Bに対向するように設けられ温調ガス68が流通する他端温調ガスダクト61QAと、他端温調ガスダクト61QAへ温調ガス68を供給する他端温調ガス供給機61QBと、他端温調ガスダクト61QAを通った温調ガス68を吸引する他端温調ガス吸引機61QCとを備える。他端温調ガスダクト61QAのうち流延面26Aに対向するダクト面には、開口61QOが設けられる。この開口61QOにより、他端温調ガスダクト61QAに供給された温調ガス68は、他端部26EQと接触する。
【0051】
開口61POは、流延バンド26の一端部26EPよりもY方向外側まで延設される。また、開口61POは、後述する移動路よりもY方向外側まで延設されることが好ましい。同様に、開口61QOは、流延バンド26の他端部26EQよりもY方向外側まで延設される。また、開口61QOは、後述する移動路よりもY方向外側まで延設されることが好ましい。
【0052】
(外れ検知部)
図4及び図7に示すように、外れ検知部65は、乾燥室23Bに設けられる。外れ検知部65は、流延バンド26の一端側に設けられた一端外れ検知部65Pと、流延バンド26の他端側に設けられた他端外れ検知部65Qとを備える。
【0053】
(一端外れ検知部)
一端外れ検知部65Pは、光源を内蔵し、光源からの検査光を外部へ出射する発光部65PAと、検査光を受光可能な光センサを内蔵し、光センサが発光部65PAからの検査光を検知したか否かを判定する受光部65PBとを備える。受光部65PBが検査光を検知した場合、受光部65PBは検知信号を出力する。発光部65PA及び受光部65PBは、発光部65PAから受光部65PBまでの検査光の光路70PXが、予め設定された流延バンド26の移動路26RのY方向の一端を通るように、設けられる。
【0054】
(他端外れ検知部)
他端外れ検知部65Qは、一端外れ検知部65Pと同様に、光源を内蔵し、光源からの検査光を外部へ出射する発光部65QAと、検査光を受光可能な光センサを内蔵し、光センサが発光部65QAからの検査光を検知したか否かを判定する受光部65QBとを備える。受光部65QBが検査光を検知した場合、受光部65QBは検知信号を出力する。発光部65QA及び受光部65QBは、発光部65QAから受光部65QBまでの検査光の光路70QXが、予め設定された流延バンド26の移動路26RのY方向の他端を通るように、設けられる。
【0055】
移動路26Rは、Y方向において予め設定された流延バンド26の基準経路である。移動路26Rの幅は、流延バンド26の幅と等しくても良いし、流延バンド26の幅に所定の遊び幅を加えたものとしても良い。
【0056】
(制御ユニット)
図8に示すように、制御ユニット67は、一端温調ガス供給機61PBと、他端温調ガス供給機61QBと、受光部65PBと、受光部65QBとを制御するものであり、外れ方向判定部67Aと、バンドテンション制御部であるバンド温調制御部67Bとを備える。
【0057】
外れ方向判定部67Aは、受光部67PB・67QBから検知信号が出力されているか否かを判定する。そして、受光部67PB・67QBの両方から検知信号が出力されたと判定された場合には、外れ方向判定部67Aは、流延バンド26が移動路26R内にあると判定する。一方、検知信号が受光部67QBから出力され、かつ、検知信号が受光部67PBから出力されていないと判定された場合には、外れ方向判定部67Aは流延バンド26が移動路26Rから一端側へ外れたと判定し、検知信号が受光部67PBから出力され、かつ、検知信号が受光部67QBから出力されていないと判定された場合には、外れ方向判定部67Aは流延バンド26が移動路26Rから他端側へ外れたと判定する。
【0058】
バンド温調制御部67Bは、外れ方向判定部67Aにおける判定結果に基づき、一端温調ガス供給機61PBと他端温調ガス供給機61QBとを制御する。バンド温調制御部67Bの制御により、一端温調ガス供給機61PBによって供給される温調ガス68の温度と他端温調ガス供給機61QBによって供給される温調ガス68の温度とが個別に調節される。
【0059】
(剥取室)
図2に戻って、剥取室23Cには、剥取ローラ86が設けられる。剥取ローラ86は、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜43を流延バンド26から剥ぎ取って湿潤フィルム13とし、剥取室23Cに設けられた出口23COから湿潤フィルム13を送り出す。
【0060】
ケーシング23内の雰囲気に含まれる溶剤を凝縮する凝縮装置、凝縮した溶剤を回収する回収装置を、流延装置15に設けてもよい。これにより、ケーシング23内の雰囲気に含まれる溶剤の濃度を一定の範囲に保つことができる。
【0061】
図1に戻って、流延装置15とクリップテンタ17との間の渡り部には、湿潤フィルム35を支持する支持ローラ87が複数並べられている。支持ローラ87は、図示しないモータにより、軸を中心に回転する。支持ローラ87は、流延装置15から送り出された湿潤フィルム35を支持して、クリップテンタ17へ案内する。なお、図1では、渡り部に2つの支持ローラ87を並べた場合を示しているが、本発明はこれに限られず、渡り部に1つ、または3つ以上の支持ローラ87を並べてもよい。また、支持ローラ87は、フリーローラでもよい。
【0062】
クリップテンタ17は、湿潤フィルム13の幅方向両側縁部を把持する多数のクリップを有し、このクリップが延伸軌道上を移動する。クリップにより把持された湿潤フィルム13に対し乾燥風が送られ、湿潤フィルム13には、幅方向への延伸処理とともに乾燥処理が施される。
【0063】
クリップテンタ17と乾燥装置18との間には耳切装置88が設けられている。耳切装置88に送り出されたフィルム16の幅方向の両端は、クリップによって形成された把持跡が形成されている。耳切装置88は、この把持跡を有する両端部分を切り離す。この切り離された部分は、送風によりカットブロワ(図示しない)及びクラッシャ(図示しない)へ順次に送られて、細かく切断され、ドープ等の原料として再利用される。
【0064】
乾燥装置18は、フィルム16の搬送路を備えるケーシングと、フィルム16の搬送路を形成する複数のローラ18Aと、ケーシング内の雰囲気の温度や湿度を調節する空調機(図示しない)とを備える。ケーシング内に導入されたフィルム16は、複数のローラ18Aに巻き掛けられながら搬送される。この雰囲気の温度や湿度の調節により、ケーシング内を搬送されるフィルム16から残留した溶剤が蒸発する。更に、乾燥装置18に、フィルム16から蒸発した溶剤を吸着により回収する吸着回収装置が接続される。
【0065】
乾燥装置18及び巻取装置19の間には、上流側から順に、冷却室89、除電バー(図示しない)、ナーリング付与ローラ90、及び耳切装置(図示しない)が設けられる。冷却室89は、フィルム16の温度が略室温となるまで、フィルム16を冷却する。除電バーは、冷却室89から送り出され、帯電したフィルム16から電気を除く除電処理を行う。ナーリング付与ローラ90は、フィルム16の幅方向両端に巻き取り用のナーリングを付与する。耳切装置は、切断後のフィルム16の幅方向両端にナーリングが残るように、フィルム16の幅方向両端を切断する。
【0066】
巻取装置19は、プレスローラ19Aと巻き芯19Bを有する。巻取装置19に送られたフィルム16は、プレスローラ19Aによって押し付けられながら巻き芯19Bに巻き取られ、ロール状となる。
【0067】
次に、本発明の作用を説明する。図2及び図3に示すように、図示しないモータ制御部は、ローラ駆動用モータ24Mを介して、水平ローラ24を回転させる。これにより、流延バンド26は、各室23A〜23Cを順次、循環移動する。
【0068】
(膜形成工程)
流延室23Aでは、流延バンド26上にドープ12からなる流延膜43を形成する流延工程が行われる。流延ダイ40は、ドープ流出口40Aからドープ12を連続的に流出する。流出したドープ12は、流延ダイ40から流延バンド26にかけてビードを形成し、流延バンド26上にて流れ延ばされる。こうして、流延バンド26上には、ドープ12からなる流延膜43が形成される(図9参照)。
【0069】
減圧ユニット41は、ビードのX方向上流側の圧力がビードのX方向下流側の圧力よりも低い状態をつくることができる。ビードのX方向上流側及びX方向下流側の圧力差ΔPは、10Pa以上2000Pa以下であることが好ましい。
【0070】
(乾燥工程)
乾燥室23Bでは、所定の乾燥風を流延膜43にあてて、流延膜43から溶剤を蒸発させる乾燥工程が行われる。乾燥工程は、流延膜43は、自立して搬送可能な状態となるまで行われる。乾燥工程では、第1乾燥工程と第2乾燥工程とが順次行われる。
【0071】
(第1乾燥工程)
第1乾燥工程では、流延膜43の表層に乾燥層43A(図10参照)が形成するまで、流延膜43から溶剤を蒸発させる。図2に示すように、第1乾燥ユニット51は、第1乾燥風51DAを第1給気口51AOから送り出す。
【0072】
第1乾燥工程により、流延膜43は、乾燥層43Aと湿潤層43Bとを有するものとなる(図10参照)。乾燥層43Aは、流延膜43の表面側に生成され、乾燥層43Aよりも流延バンド26側に位置する湿潤層43Bに比べて乾燥が進んだ部分である。したがって、乾燥層43Aの溶剤の含有量は湿潤層43Bに比べて低い。また、乾燥層43Aの表面は平滑に形成される。乾燥層43Aを有するものとなった流延膜43について所定の乾燥工程を行った場合には、乾燥層43Aの表面が、得られた流延膜43の表面となる。したがって、形成直後の流延膜43において乾燥層43Aを形成することにより、表面が平滑な流延膜43を得ることができる。
【0073】
ここで、溶剤の含有量は、流延膜や各フィルム中に含まれる溶剤の量を乾量基準で示したものであり、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100と表される。
【0074】
第1乾燥工程は、溶剤の含有量が250質量%以上400質量%以下の流延膜43に対して行うことが好ましく、溶剤の含有量が300質量%以上350質量%以下の流延膜43に対して行うことがより好ましい。第1乾燥風51DAの温度は30℃以上80℃以下であることが好ましい。また、第1乾燥風51DAの風速は5m/秒以上25m/秒以下であることが好ましい。
【0075】
(第2乾燥工程)
第2乾燥工程は、第2乾燥風52DAを用いて、自立して搬送可能な状態となるまで流延膜43から溶剤を蒸発させる。第2乾燥ユニット52は、流延膜43の膜面に沿って、X方向下流側から上流側に向かって第2乾燥風52DAを流す。このように、第2乾燥風52DAをX方向と逆向きに流すことにより、X方向に流す場合に比べて溶剤の蒸発が促進される。第2膜乾燥工程は、溶剤の含有量が20質量%以上150質量%以下の流延膜43に対して行うことが好ましい。第2乾燥風52DAの温度は40℃以上80℃以下であることが好ましい。また、第2乾燥風52DAの風速は5m/秒以上20m/秒以下であることが好ましい。
【0076】
(剥取工程)
剥取室23Cでは、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜43を流延バンド26から剥ぎ取る剥ぎ取り工程が行われる。剥取ローラ86は、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜43を流延バンド26から剥ぎ取って湿潤フィルム13とし、剥取室23Cに設けられた出口23COから湿潤フィルム13を送り出す。剥取工程は、溶剤の含有量が20質量%以上80質量%以下の流延膜43に対して行うことが好ましい。
【0077】
次に、移動方向制御装置60の作用について説明する。移動方向制御装置60は、移動制御工程を行なう。この移動制御工程では、外れ検知処理と、外れ方向判定処理と、バンドテンション調節処理とが行われる。
【0078】
外れ検知処理において、受光部65PBは、発光部65PAからの検査光を光センサが検知したか否かを判定し、受光部65PBが検査光を検知した場合には受光部65PBは検知信号を出力し、受光部65PBが検査光を検知していない場合には受光部65PBは検知信号を出力しない。更に、外れ検知処理において、受光部65QBは、発光部65QAからの検査光を光センサが検知したか否かを判定し、受光部65QBが検査光を検知した場合には受光部65QBは検知信号を出力し、受光部65QBが検査光を検知していない場合には受光部65QBは検知信号を出力しない。
【0079】
外れ方向判定処理では、外れ方向判定部67Aは、受光部65PB・65QBから検出信号が出力されているか否かを判定する。
【0080】
例えば、水平ローラ24、25に巻き掛けられた状態で循環移動する流延バンド26が移動路26R内にある場合には、受光部65PB及び受光部65QBから検出信号が出力されるため、外れ方向判定部67Aは、受光部65PB及び受光部65QBから検出信号が出力されていると判定する。そして、外れ方向判定部67Aは、受光部65PB及び受光部65QBから検出信号が出力されていると判定された場合、流延バンド26が移動路26R内にあると判定する。その後、外れ方向判定部67Aは、引き続いて、受光部65PB・65QBから検出信号が出力されているか否かを判定する。
【0081】
一方、図11に示すように、水平ローラ24、25に巻き掛けられた状態で、移動路26Rを循環移動する流延バンド26が移動路26Rから他端側へ外れると、受光部65QBは、検知信号の出力を停止する。外れ方向判定部67Aは、受光部65QBから検出信号が出力されていないと判定する。そして、外れ方向判定部67Aは、受光部65QBから検知信号が出力されていないと判定された場合、流延バンド26が移動路26Rから他端側へ外れたと判定する。その後、外れ方向判定部67Aは、引き続いて、受光部65PB・65QBから検出信号が出力されているか否かを判定する。
【0082】
バンドテンション調節工程では、バンド温調制御部67Bが、流延バンド26が移動路26Rから他端側へ外れた旨の判定結果に基づいて、流延バンド26のうち移動路26Rから外れた方向の端部、すなわち、他端部26EQを、外れた方向と反対側の端部、すなわち一端部26EPよりも優先的に冷却する。
【0083】
なお、他端部26EQを一端部26EPよりも優先的に冷却する態様としては、他端温調ガス供給機61QBによって供給される温調ガス68の温度のみを下げても良いし、両方の供給機61PB,61QBによって供給される温調ガス68の温度を下げながら、他端温調ガス供給機61QB側の温調ガス68の温度の下げ幅を大きくしても良い。
【0084】
流延バンド26のうち移動路26Rから外れた方向の端部を、外れた方向と反対側の端部よりも優先的に冷却する場合、検知信号の出力を停止していた受光部から検知信号の出力を再開するまで、流延バンド26のうち移動路26Rから外れた方向の端部の冷却の程度を徐々に増大させることが好ましい。
【0085】
Y方向に一様のテンションが印加された状態の流延バンド26において、他端部26EQが一端部26EPよりも優先的に冷却されると、他端部26EQにおける応力は、一端部26EPにおける応力よりも大きくなる。この結果、他端部26EQにかかるテンションは、一端部26EPにかかるテンションよりも大きくなる。この結果、流延バンド26は、一端部26EP及び他端部26EQにかかるテンションのバランスがとれる方向へ、すなわち、他端部26EQから一端部26EPに向かってスライドする結果、流延バンド26は移動路26Rに復帰する。
【0086】
外れ方向判定部67Aが、流延バンド26が移動路26Rから一端側へ外れたと判定された場合も同様である。すなわち、バンド温調制御部67Bは、流延バンド26が移動路26Rから一端側へ外れた旨の判定結果に基づいて、一端部26EPを他端部26EQよりも優先的に冷却する。一端部26EPが他端部26EQよりも優先的に冷却されると、流延バンド26のうち一端部26EPにかかるテンションが増大する結果、一端部26EPにかかるテンションは、他端部26EQにかかるテンションよりも大きくなる。この結果、流延バンド26は、一端部26EP及び他端部26EQにかかるテンションのバランスがとれる方向へ、すなわち、一端部26EPから他端部26EQに向かってスライドする結果、流延バンド26は移動路26Rに復帰する。
【0087】
このように、本発明によれば、移動路26Rから外れた流延バンド26に対し、一端部26EP及び他端部26EQにかかるテンションを制御することにより、流延バンド26を移動路26Rへ復帰させることができる。
【0088】
上記実施形態では、流延バンド26の流延面26A側及び裏面26B側に、一端温調ガスダクト61PAをそれぞれ設けたが、流延面26A側の一端温調ガスダクト61PAと、裏面26B側の一端温調ガスダクト61PAとを一体に形成しても良い(図12参照)。ただし、図5に示す形態のほうが、逃げ部を備えるため、移動路から外れた流延バンド26と接触しない点で好ましい。
【0089】
一端温調ガスダクト61PAは、Y方向に移動自在であることが好ましい。特に、流延バンド26の位置に追従するように、一端温調ガスダクト61PAをY方向へシフトさせてもよい。
【0090】
上記実施形態では、バンド一端温調ユニット61P及びバンド他端温調ユニット61Qが設けられる位置は、X方向において、いずれの位置でもよい。以下の本発明の他の実施形態について述べるが、上記実施形態と同一の部品等については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0091】
上記実施形態では、一端バンドテンション調節部としてバンド一端温調ユニット61Pを用い、他端バンドテンション調節部としてバンド他端温調ユニット61Qを用いたが、本発明はこれに限られない。
【0092】
(第2実施形態)
図13に示すように、一端バンドテンション調節部として、一端部26EPに一端用の溶剤を塗布する一端塗布ダイ100Pと、塗布された一端用の溶剤を蒸発させる一端溶剤蒸発機101Pと、一端塗布ダイ100Pへ一端用の溶剤を供給する一端溶剤ポンプ102Pとを備えるバンド一端温調ユニットを用いても良い。同様に、他端バンドテンション調節部として、他端部26EQに他端用の溶剤を塗布する他端塗布ダイ100Qと、塗布された他端用の溶剤を蒸発させる他端溶剤蒸発機101Qと、他端塗布ダイ100Qへ他端用の溶剤を供給する他端溶剤ポンプ102Qとを備えるバンド他端温調ユニットを用いても良い。
【0093】
一端溶剤ポンプ102Pは、配管(図示しない)を介して、一端塗布ダイ100Pに接続する。一端塗布ダイ100Pは、一端用の溶剤を流出する一端流出口を有し、一端流出口が一端部26EPの流延面26Aと対向するように配される。一端溶剤蒸発機101Pは、一端塗布ダイ100PよりもX方向下流側に配される。一端溶剤蒸発機101Pは、一端用の溶剤を乾燥させるための乾燥ガスを送り出す一端給気口を有し、一端給気口が一端部26EPの流延面26Aと対向するように配される。他端溶剤ポンプ102Qは、配管(図示しない)を介して、他端塗布ダイ100Qに接続する。他端塗布ダイ100Qは、他端用の溶剤を流出する他端流出口を有し、他端流出口が他端部26EQの流延面26Aと対向するように配される。他端溶剤蒸発機101Qは、他端塗布ダイ100QよりもX方向下流側に配される。他端溶剤蒸発機101Qは、他端用の溶剤を乾燥させるための乾燥ガスを送り出す他端給気口を有し、他端給気口が他端部26EQの流延面26Aと対向するように配される。
【0094】
図14に示すように、制御ユニット67は、一端溶剤ポンプ102P、他端溶剤ポンプ102Q、受光部65PBと、受光部65QBとを制御するものであり、外れ方向判定部67Aと、バンドテンション制御部であるバンド温調制御部67Bとを備える。
【0095】
バンド温調制御部67Bは、外れ方向判定部67Aにおける判定結果に基づき、一端溶剤ポンプ102Pと、他端溶剤ポンプ102Qとを制御する。バンド温調制御部67Bの制御により、一端塗布ダイ100Pへ供給される一端用の溶剤の量や、他端塗布ダイ100Qへ供給される他端用の溶剤の量を調節することができる。
【0096】
一端溶剤蒸発機101Pは、流延面26Aに塗布された一端用の溶剤が全て蒸発するように、一端部26EPの流延面26Aに向けて乾燥ガスを送り出すため、一端部26EPは気化熱の分だけ冷却される。すなわち、一端用の溶剤の塗布量に応じた分だけ一端部26EPを冷却することができる。同様に、他端溶剤蒸発機101Qは、流延面26Aに塗布された他端用の溶剤が全て蒸発するように、他端部26EQの流延面26Aに向けて乾燥ガスを送り出すため、他端部26EQは気化熱の分だけ冷却される。すなわち、他端用の溶剤の塗布量に応じた分だけ他端部26EQを冷却することができる。一端部26EPや他端部26EQにおける各溶剤の塗布量は、一端溶剤ポンプ102Pや他端溶剤ポンプ102Qの制御によって調節可能である。したがって、各部品100P〜102P、100Q〜102P及び制御ユニット67により、一端部26EPの冷却及び他端部26EQの冷却を独立して調節することができる。
【0097】
なお、一端バンドテンション調節部や他端バンドテンション調節部を設ける位置は、流延面26A側のみならず、裏面26B側のみ、または、流延面26A及び裏面26Bの両方でもよい。
【0098】
一端用の溶剤と他端用の溶剤とは、同一のものでも良いし、異なるものでも良い。なお、ドープに含まれる溶剤を、一端用の溶剤や他端用の溶剤として用いることが好ましい。
【0099】
(第3実施形態)
例えば、図15に示すように、一端バンドテンション調節部としてローラ一端温調ユニットを用い、他端バンドテンション調節部としてローラ他端温調ユニットを用いてもよい。ローラ一端温調ユニットは、ローラ本体24Bの一端部(以下、一端ローラ部と称する)24BPに温調ガスを送り出す一端温調ノズル110Pと、一端温調ノズル110Pに温調ガスを供給する一端温調ガス供給機111Pとを備える。ローラ他端温調ユニットは、ローラ本体24Bの他端部(以下、他端ローラ部と称する)24BQに温調ガスを送り出す他端温調ノズル110Qと、他端温調ノズル110Qに温調ガスを供給する他端温調ガス供給機111Qとを備える。
【0100】
図16に示すように、制御ユニット67は、一端温調ガス供給機111Pと、他端温調ガス供給機111Qと、受光部65PBと、受光部65QBとを制御するものであり、外れ方向判定部67Aと、バンドテンション制御部であるバンド温調制御部67Bとを備える。
【0101】
一端温調ガス供給機111Pは、バンド温調制御部67Bの制御の下、所定の温度の温調ガスをつくり、この温調ガスを一端ローラ部24BPへ供給する。同様に、他端温調ガス供給機111Qは、バンド温調制御部67Bの制御の下、所定の温度の温調ガスをつくり、この温調ガスを他端ローラ部24BQへ供給する。温調ガスとの接触により温度が調節された一端ローラ部24BP及び他端ローラ部24BQを備えるロール本体24Bは、Y方向の全域において流延バンド26を支持するため、ロール本体24Bにより支持された流延バンド26の一端部26EPの温度は、一端ローラ部24BPの温度により調節可能である。同様に、ロール本体24Bにより支持された流延バンド26の他端部26EQの温度は、他端ローラ部24BQの温度により調節可能である。したがって、各部品110P〜111P、110Q〜111Q及び制御ユニット67により、一端部26EPの温度及び他端部26EQの温度を独立して調節することができる。
【0102】
(第4実施形態)
また、図17に示すように、一端ローラ部24BPに一端用の溶剤を塗布する一端塗布ダイ120Pと、塗布された一端用の溶剤を蒸発させる一端溶剤蒸発機121Pと、一端塗布ダイ120Pへ一端用の溶剤を供給する一端溶剤ポンプ122Pとを備えるローラ一端温調ユニットを用いても良い。同様に、他端ローラ部24BQに他端用の溶剤を塗布する他端塗布ダイ120Qと、塗布された他端用の溶剤を蒸発させる他端溶剤蒸発機121Qと、他端塗布ダイ120Pへ他端用の溶剤を供給する他端溶剤ポンプ122Qとを備えるローラ他端温調ユニットを用いても良い。
【0103】
一端溶剤ポンプ122Pは、配管(図示しない)を介して、一端塗布ダイ120Pに接続する。一端塗布ダイ120Pは、一端用の溶剤を流出する一端流出口を有し、一端流出口が一端ローラ部24BPの流延面26Aと対向するように配される。一端溶剤蒸発機121Pは、一端塗布ダイ120PよりもX方向下流側に配される。一端溶剤蒸発機121Pは、一端用の溶剤を乾燥させるための乾燥ガスを送り出す一端給気口を有し、一端給気口が一端ローラ部24BPと対向するように配される。他端溶剤ポンプ122Qは、配管(図示しない)を介して、他端塗布ダイ120Qに接続する。他端塗布ダイ120Qは、他端用の溶剤を流出する他端流出口を有し、他端流出口が他端ローラ部24BQと対向するように配される。他端溶剤蒸発機121Qは、他端塗布ダイ120QよりもX方向下流側に配される。他端溶剤蒸発機121Qは、他端用の溶剤を乾燥させるための乾燥ガスを送り出す他端給気口を有し、他端給気口が他端ローラ部24BQと対向するように配される。
【0104】
図18に示すように、制御ユニット67は、一端溶剤ポンプ122P、他端溶剤ポンプ122Q、受光部65PBと、受光部65QBとを制御するものであり、外れ方向判定部67Aと、バンドテンション制御部であるバンド温調制御部67Bとを備える。
【0105】
バンド温調制御部67Bは、外れ方向判定部67Aにおける判定結果に基づき、一端溶剤ポンプ122Pと、他端溶剤ポンプ122Qとを制御する。バンド温調制御部67Bの制御により、一端塗布ダイ120Pへ供給される一端用の溶剤の量や、他端塗布ダイ120Qへ供給される他端用の溶剤の量を調節することができる。
【0106】
一端溶剤蒸発機121Pは、一端ローラ部24BPに塗布された一端用の溶剤が全て蒸発するように、一端ローラ部24BPに向けて乾燥ガスを送り出すため、一端ローラ部24BPは気化熱の分だけ冷却される。すなわち、一端用の溶剤の塗布量に応じた分だけ一端ローラ部24BPを冷却することができる。同様に、他端溶剤蒸発機121Qは、他端ローラ部24BQに塗布された他端用の溶剤が全て蒸発するように、他端ローラ部24BQに向けて乾燥ガスを送り出すため、他端ローラ部24BQは気化熱の分だけ冷却される。すなわち、他端用の溶剤の塗布量に応じた分だけ他端ローラ部24BQを冷却することができる。一端ローラ部24BPや他端ローラ部24BQにおける各溶剤の塗布量は、一端溶剤ポンプ122Pや他端溶剤ポンプ122Qの制御によって調節可能である。したがって、各部品120P〜122P、120Q〜122P及び制御ユニット67により、一端ローラ部24BPの冷却及び他端ローラ部24BQの冷却を独立して調節することができる。
【0107】
(第5実施形態)
ローラ本体24B内に設けられた伝熱媒体の流路を、次のように設けても良い。図19及び図20に示すように、ローラ本体24BのうちY方向の一側ローラ部24BRに、一側内蔵流路130Rを設け、ローラ本体24BのうちY方向の他側ローラ部24BLに、他側内蔵流路130Lを設けてもよい。一側内蔵流路130Rや他側内蔵流路130Lは、ローラ本体24Bの周面近傍において螺旋状に形成されたことが好ましい。
【0108】
この場合には、一側ローラ温調機57Rと他側ローラ温調機57Lとを備えたローラ温調機57を用いる。一側ローラ温調機57Rは、一側内蔵流路130R用の伝熱媒体の温度を調節する一側温調部57RAと、一側温調部57RAにより温度が調節された伝熱媒体を一側内蔵流路130Rへ供給する一側ローラ温調部57RBと、一側内蔵流路130Rを通った伝熱媒体を回収して、一側温調部57RAへ送る一側回収部57RCとを有する。また、他側ローラ温調機57Lは、他側内蔵流路130L用の伝熱媒体の温度を調節する他側温調部57LAと、他側温調部57LAにより温度が調節された伝熱媒体を他側内蔵流路130Lへ供給する他側ローラ温調部57LBと、他側内蔵流路130Lを通った伝熱媒体を回収して、他側温調部57LAへ送る他側回収部57LCとを有する。
【0109】
図21に示すように、制御ユニット67は、一側温調部57RAと、他側温調部57LAと、受光部65PBと、受光部65QBとを制御するものであり、外れ方向判定部67Aと、バンドテンション制御部であるバンド温調制御部67Bとを備える。
【0110】
バンド温調制御部67Bは、外れ方向判定部67Aにおける判定結果に基づき、一側温調部57RAと、他側温調部57LAとを制御する。バンド温調制御部67Bの制御により、一側内蔵流路130Rに供給される伝熱媒体の温度と他側内蔵流路130Lに供給される伝熱媒体の温度とを独立して調節することができる。したがって、一側内蔵流路130R及び他側内蔵流路130Lを備えたローラ本体24Bと、一側ローラ温調機57R及び他側ローラ温調機57Lとを備えたローラ温調機57とを用いることにより、一端ローラ部24BPの温度調節及び他端ローラ部24BQの温度調節を独立して調節することができる。
【0111】
なお、ローラ本体24Bのうち、Y方向の一端ローラ部24BP、他端ローラ部24BQ、中央部24BCに、それぞれ伝熱媒体が流通する流路を設け、温度が調節された伝熱媒体を一端ローラ部24BPと他端ローラ部24BQと中央部24BCとのそれぞれに供給しても良い。
【0112】
上記実施形態では、一側ローラ温調機57Rと他側ローラ温調機57Lとを備えたローラ温調機57について説明したが、本発明はこれに限られず、一側ローラ温調機58Rと他側ローラ温調機58Lとを備えたローラ温調機58(図19参照)を用いてもよい。
【0113】
なお、バンド一端温調ユニット、バンド他端温調ユニット、ローラ一端温調ユニット及びローラ他端温調ユニットとして、冷却対象へドライアイスを噴射するドライアイス噴射機を用いて、流延バンド26の各端部やローラ本体24Bを冷却してもよい。
【0114】
なお、バンド温調制御部67Bによって一端部26EPを他端部26EQよりも優先的に冷却する方法に代えて、バンド温調制御部67Bによって他端部26EQを一端部26EPよりも優先的に加熱してもよい。この場合には、流延バンド26のうち移動路26Rから外れた方向と反対側の端部を、外れた方向の端部よりも優先的に加熱すればよい。
【0115】
ところで、図2に戻って、ケーシング23内において、膜形成工程と、膜乾燥工程と、剥取工程とを順次繰り返し行なうと、膜乾燥工程において、流延バンド26のY方向両端部にてカールが起こってしまう。
【0116】
膜乾燥工程において、流延バンド26のY方向両端部がカールする理由は次のように考えられる。膜形成工程では、Y方向全体の流延バンド26は、所定の温度に調節されたローラ本体24Bによって支持されるため、当該Y方向全体の流延バンド26の温度は略一定である。膜乾燥工程では、流延膜43を支持する流延バンド26のY方向中央部では、流延膜43から溶剤が蒸発するため、流延バンド26のY方向中央部の温度が下がる。一方、流延バンド26のY方向両端部では、溶剤の蒸発が起こらないため、流延バンド26のY方向両端部の温度はそれほど変わらない。こうして、膜乾燥工程の流延バンド26には、Y方向中央部からY方向両端部に向かうに従い高温となる温度分布が生じる。このようなY方向の温度分布によって、流延バンド26のY方向両端部がカールしてしまう。
【0117】
そこで、流延バンド26のY方向両端部のカールを防ぐために、膜乾燥工程における流延バンド26の温度がY方向にて均一となるように、流延バンド26のY方向両端部を冷却する冷却工程を、膜乾燥工程と並行して行なうことが好ましい。このような流延バンド26のY方向両端部の冷却手段としては、上述したバンド一端温調ユニット、バンド他端温調ユニット、ローラ一端温調ユニット及びローラ他端温調ユニットのいずれを用いることができる。流延バンド26のY方向両端部の冷却手段は、水平ローラ24、25の間に設けることが好ましい。流延バンド26のY方向両端部の冷却手段による冷却範囲は、水平ローラ24、25の間の部分、すなわち、水平ローラ24、25のいずれにも接触していない部分とすることが好ましい。冷却工程は、第1乾燥工程と同時に開始することが好ましい。
【0118】
流延ダイ40の設置位置を水平ローラ24の上方としたが、本発明はこれに限られない。シール部材31〜32を水平ローラ25に巻き掛けられた流延バンド26の部分と近接するように設けたときには、流延ダイ40の設置位置を水平ローラ24の上方としてもよい。また、流延バンド26を支持するサポートロールを水平ローラ24、25の間に設け、シール部材31〜32をサポートロールに支持された流延バンド26の部分と近接するように設けたときには、流延ダイ40の設置位置をサポートロールの上方としても良い。
【0119】
本発明により得られるフィルム16は、特に、位相差フィルムや偏光板保護フィルムに用いることができる。
【0120】
フィルム16の幅は、600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、フィルム16の幅が2500mmより大きい場合にも効果がある。またフィルム16の膜厚は、20μm以上80μm以下であることが好ましい。
【0121】
また、フィルム16の面内レターデーションReは、20nm以上300nm以下であることが好ましく、フィルム16の厚み方向レターデーションRthは、−100nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0122】
面内レターデーションReの測定方法は次の通りである。面内レターデーションReは、サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21DH 王子計測(株))にて632.8nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値を用いた。なおReは以下式で表される。
Re=|n1−n2|×d
n1は遅相軸の屈折率,n2は進相軸2の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す
【0123】
厚み方向レターデーションRthの測定方法は次の通りである。サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、エリプソメータ(M150 日本分光(株)製)で632.8nmにより垂直方向から測定した値と、フィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値とから下記式に従い算出した。
Rth={(n1+n2)/2−n3}×d
n3は厚み方向の屈折率を表す。
【0124】
(ポリマー)
上記実施形態では、ポリマーフィルムの原料となるポリマーは、特に限定されず、例えば、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等がある。
【0125】
(セルロースアシレート)
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、トリアセチルセルロース(TAC)の90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 1.0≦ A ≦3.0
(III) 0 ≦ B ≦2.0
【0126】
アシル基の全置換度A+Bは、2.20以上2.90以下であることがより好ましく、2.40以上2.88以下であることが特に好ましい。また、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度Bは、0.30以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
【0127】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0128】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【0129】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶剤に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0130】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。ポリマーの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0131】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
【0132】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶剤及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【符号の説明】
【0133】
10 溶液製膜設備
15 流延装置
26 流延バンド
43 流延膜
60 環状バンドの移動方向制御装置
61P バンド一端温調ユニット
61Q バンド他端温調ユニット
65 外れ検知部
67 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配された駆動ローラ及び従動ローラに巻き掛けられ、幅方向において予め設定された移動路上を前記駆動ローラの回転により移動可能なステンレス製の環状バンドの移動方向制御装置において、
前記環状バンドの幅方向一端部のテンションを調節可能な一端バンドテンション調節部と、
前記環状バンドの幅方向他端部のテンションを調節可能な他端バンドテンション調節部と、
前記環状バンドのうち前記移動路から外れた方向の端部における前記テンションが、前記外れた方向と反対側の端部における前記テンションよりも大きくなるように、前記一端バンドテンション調節部又は前記他端バンドテンション調節部を制御するバンドテンション制御部とを備えたことを特徴とする環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項2】
前記一端バンドテンション調節部は前記環状バンドのうち前記幅方向一端側の温度を調節するバンド一端温調部を備え、
前記他端バンドテンション調節部は前記環状バンドのうち前記幅方向他端側の温度を調節するバンド他端温調部を備え、
前記バンドテンション制御部は、前記環状バンドのうち前記外れた方向の端部を、前記外れた方向と反対側の端部よりも優先的に冷却するように、前記バンド一端温調部及び前記バンド他端温調部を制御するバンド温調制御部を備えたことを特徴とする請求項1記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項3】
前記バンド一端温調部は前記バンドの前記幅方向一端側へ温調ガスを供給し、
前記バンド他端温調部は前記バンドの前記幅方向他端側へ温調ガスを供給すること
を特徴とする請求項2項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項4】
前記バンド一端温調部は、
前記バンドの前記幅方向一端側へ一の液体を塗布する一端バンド塗布機と、
前記バンドの前記幅方向一端側に塗布された前記一の液体を蒸発させる一端バンド蒸発機とを有し、
前記バンド他端温調部は、
前記バンドの前記幅方向他端側へ他の液体を塗布する他端バンド塗布機と、
前記バンドの前記幅方向他端側に塗布された前記他の液体を蒸発させる他端バンド蒸発機とを有することを特徴とする請求項2または3記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項5】
前記一端バンドテンション調節部は、前記駆動ローラ及び前記従動ローラのうちいずれかのローラの前記幅方向一端側の温度を調節するローラ一端温調部を備え、
前記他端バンドテンション調節部は、前記ローラの前記幅方向他端側の温度を調節するローラ他端温調部を備え、
前記バンドテンション制御部は、前記環状バンドのうち前記外れた方向の端部を、前記外れた方向と反対側の端部よりも優先的に冷却するように、前記ローラ一端温調部又は前記ローラ他端温調部を制御するローラ温調制御部を備えたことを特徴とする請求項1記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項6】
前記ローラ一端温調部は前記ローラの前記幅方向一端側へ温調ガスを供給し、
前記ローラ他端温調部は前記ローラの前記幅方向他端側へ温調ガスを供給することを特徴とする請求項5記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項7】
前記ローラは、
前記幅方向一端側に内蔵され、一端側温調用媒体が流通可能な一端流路と、
前記幅方向他端側に内蔵され、他端側温調用媒体が流通可能な他端流路とを有し、
前記ローラ一端温調部は前記一端側温調用媒体を前記一端流路へ供給し、
前記ローラ他端温調部は前記他端側温調用媒体を前記他端流路へ供給することを特徴とする請求項5または6記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項8】
前記ローラ一端温調部は、
前記ローラの前記幅方向一端側へ一の液体を塗布する一端ローラ塗布機と、
前記ローラの前記幅方向一端側に塗布された前記一の液体を蒸発させる一端ローラ蒸発機とを有し、
前記ローラ他端温調部は、
前記ローラの前記幅方向他端側へ他の液体を塗布する他端ローラ塗布機と、
前記ローラの前記幅方向他端側に塗布された前記他の液体を蒸発させる他端ローラ蒸発機とを有することを特徴とする請求項5ないし7のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項9】
前記幅方向の一端側または他端側のいずれの方向に前記環状バンドが外れたか否かを判定する外れ方向判定部を備えたことを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置。
【請求項10】
ポリマー及び溶剤を含むドープを前記環状バンドに向けて流出する流延ダイと、
前記流出したドープを支持する支持面を有し、前記ドープからなる膜を前記支持面上に形成する前記環状バンドと、
前記膜から前記溶剤を蒸発させる溶剤蒸発装置と、
前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥ぎ取り装置と、
請求項1ないし9のうちいずれか1項記載の環状バンドの移動方向制御装置とを備えたことを特徴とする流延設備。
【請求項11】
前記環状バンドの幅方向両端部を冷却する両端部冷却装置を備えたことを特徴とする請求項10記載の流延設備。
【請求項12】
前記両端部冷却装置は、前記バンドのうち前記ローラから離れた部分を冷却することを特徴とする請求項11記載の流延設備。
【請求項13】
平行に配された駆動ローラ及び従動ローラに巻き掛けられ、幅方向において予め設定された移動路上を前記駆動ローラの回転により移動可能なステンレス製の環状バンドの移動方向制御方法において、
前記環状バンドのうち前記移動路から外れた方向の端部における前記テンションが、当該方向と反対側の端部における前記テンションよりも大きくなるように、前記環状バンドの幅方向一端側の前記テンションを調節可能な一端バンドテンション調節部と、前記環状バンドの幅方向他端側の前記テンションを調節可能な他端バンドテンション調節部とを制御するバンドテンションバランス工程を有することを特徴とする環状バンドの移動方向制御方法。
【請求項14】
前記幅方向の一端側または他端側のいずれの方向に前記環状バンドが外れたか否かを判定する外れ方向判定工程を有することを特徴とする請求項13記載の環状バンドの移動方向制御方法。
【請求項15】
前記環状バンドに向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出して、前記環状バンドのバンド面に前記ドープからなる膜を形成する膜形成工程と、
前記バンド面上の前記膜に風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記環状バンドから剥ぎ取る剥取工程と、
請求項13または14記載の環状バンドの移動方向制御方法が行われる移動制御工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。
【請求項16】
前記環状バンドの幅方向両端部を冷却する両端部冷却工程を、前記膜乾燥工程と並行して行なうことを特徴とする請求項15記載の溶液製膜方法。
【請求項17】
前記両端部冷却工程と前記膜乾燥工程とを同時に開始することを特徴とする請求項16記載の溶液製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−52600(P2013−52600A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192710(P2011−192710)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】