説明

環状フロックマスカラ塗布具及びこれを製造する方法

【課題】ブラシ毛が異なる性質を有するマスカラ塗布具、特にブラシ毛の性質が塗布具の長さ方向に沿って一定間隔で変化するようなフロック塗布具を提供すること。
【解決手段】長いシャフトと、少なくとも第1のグループの環状部材と第2のグループの環状部材を有するアレイと、を有し、
各繊維が、所定の硬さ、柔軟性、直径及び長さを有する材料で構成され、各繊維の一方の端が前記第1のグループの各環状部材又は第2のグループの各環状部材の表面に付着され、他方の自由端が前記第1のグループ又は第2のグループの各環状部材の前記表面から離れている複数の繊維と、を含み、第2のグループの各環状部材は、フロックしていないか、又は第1のグループの各環状部材上にフロックしている表面とは異なる表面上にフロックしているものであり、又は前記第1のグループの前記環状部材とは、遠心方向若しくは軸方向で異なる寸法を有するものである塗布具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心部から伸出した繊維を有するブラシタイプの塗布具に関し、特に、各環状部材が表面から伸出した繊維をそれぞれ有する環状部材の束からなる中心部を有するブラシタイプの化粧品塗布具、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラブラシの従来の使用目的は、使用者の睫毛にマスカラを塗布することであり、できる限り少ない工程で一定の方法により塗布できるのが好ましい。この目的に鑑みて、典型的なマスカラブラシの塗布部分は、二以上の機能を果たすように構成されている。例えば、容器からマスカラを取り出し、取り運ぶとともに、これを使用者の睫毛に付着させることができるようなブラシが望ましい。マスカラの取り出し及び取り運びのためには、より柔軟なブラシ毛がより適していると考えられる。また、余分なマスカラの塊をすきとり、睫毛を分離させることができるようになっており、個別の梳かし用具と個別の梳かし工程櫛を用意する必要がないようなブラシが望ましい。
【0003】
これまでは、単一のブラシ頭部中に性質が異なるブラシ毛を組み合わせることにより、あるいは、各ブラシ毛の性質については妥協して、ブラシ頭部全体が単一のブラシ毛タイプ有するブラシを用いることにより、塗布と梳毛の両方がある程度できるブラシを得ていた。塗布及び梳毛性能が向上した、混合ブラシ毛を用いたブラシの例として、Schrepfらの米国特許第4861179号(特許文献1)には、軟性ブラシ毛及び硬性ブラシ毛の組合せからなるブラシが開示されている。塗布及び梳毛性能が向上した、ブラシ頭全体が均一なブラシ毛からなるブラシの例として、Gueretの米国特許第5238011号(特許文献2)には、典型的なものに比べて、大きな直径を有し、かつ柔軟な材料(支枝の硬さが20A-40D)から作られたブラシ毛が開示されている。上記の各例は典型的なねじりワイヤ構造のブラシである。
【0004】
ブラシ毛の束を有する塗布具、すなわち、ブラシの長さ方向に沿ってブラシ毛の性質が一定間隔で異なる塗布具を構成することにより、マスカラ塗布がさらに改善されると考えられている。好ましくは、それぞれが特定目的に適した一群のブラシ毛の集合体を、ブラシの長さ方向に沿って交互に又は段階的に配置することができる。例えば、塗布用と梳毛用の2種類のブラシ毛がブラシの長さ方向に沿って交互に並ぶようなブラシを構成することができる。これにより、それぞれ特定機能を十分に果たすことができる2つの部位を交互に有するブラシが出来上がり、ブラシの全体的性能が向上される。
【0005】
典型的なマスカラブラシは、一般的にU字型に折り曲げられた単一の金属ワイヤからなる中心部を有しており、1組の平行するワイヤ部を形成している。このワイヤ部の長さ部分の間に、通常ナイロンのストランドからなるブラシ毛(フィラメント又は繊維とも呼ぶ)が配置される。次に、これらのワイヤ部はねじられ、あるいは互いに対して回転されて、らせん状のコア部(ねじれワイヤコアとして知られている)となり、フィラメントをほぼ中央で挟むようにして保持する。こうして、ブラシ毛部分又はブラシ毛頭部には、ねじれワイヤコアにらせん状に固定された放射方向外側に広がったブラシ毛が形成される。例えば、Gueretの米国特許第4887622号(特許文献3)及びHartelらの米国特許第4733425号(特許文献4)を参照されたい。この構成方法は、ブラシ長さに沿って均一なブラシ毛性質を有する、典型的なブラシ毛タイプの塗布具を構成する(すなわち、ねじれワイヤコア・ブラシ)には適している。しかしながら、ブラシ長さに沿って、一定間隔でブラシ毛の性質が異なるブラシを構成する場合には、これは適していない。
【0006】
Nardolliloらの米国特許第5816728号(特許文献5)には、1個以上のビーズを中心軸に固定したマスカラ塗布具が開示されている。Waveringの米国特許第4411282号(特許文献6)には、ディスク状リングのアレイを有するマスカラ塗布具が開示されている。しかしながら、これらの引用例のいずれも、塗布具表面から広がるブラシ毛又は繊維を開示していない。さらに、Waveringの引用例は、単一のユニットとして形成されたアレイを開示しているのであり、互いに離れて配置された独立の環状部材を開示しているわけではない。
【0007】
また、フロック塗布具も知られている。例えば、Vasasの米国特許第4527575号(特許文献7)及び第4404977号(特許文献8)には、ブラシ毛がリブの付いたフレクサー(ribbed flexer)に固定され、これより延伸する塗布具が開示されている。しかしながら、このフレクサーの各リブは、Waveringが開示したアレイのような環状ディスク型であるとされているので、Vasasの開示したフレクサーは単一ユニットとして形成されたものであり、個別のディスク又は環状部材として形成されたものではない。Kingsfordの米国特許第3998235号(特許文献9)には、フロック繊維を施された複数のコーティング表面が軸方向に間隔をあけて配置された化粧品塗布具が開示されている。この軸方向に間隔をあけて配置された複数のコーティング表面は、単一ユニットとして形成されていると見られる。フロック製品の製造に共通する制限は、多大な手間又は費用をかけずしては、それぞれが性質の異なる繊維からなる、隣接部位を有する、単一のアイテムをフロック(flock)することができないことである。したがって、Wavering、Vasas及びKingsfordの引用例に開示された塗布具を、隣接する部位が異なる性質を有するように応用したり、ブラシ毛の性質が塗布具の長さ方向に沿って一定間隔で変化するように応用したりすることは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4861179号
【特許文献2】米国特許第5238011号
【特許文献3】米国特許第4887622号
【特許文献4】米国特許第4733425号
【特許文献5】米国特許第5816728号
【特許文献6】米国特許第4411282号
【特許文献7】米国特許第4527575号
【特許文献8】米国特許第4404977号
【特許文献9】米国特許第3998235号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ブラシ毛が異なる性質を有するマスカラ塗布具、特にブラシ毛の性質が塗布具の長さ方向に沿って一定間隔で変化するようなフロック塗布具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、塗布性能が塗布具の長さ方向に沿って、一定間隔で変化するように配置されたブラシ毛(ここでは、繊維又はフィラメントとも呼ぶ)を有する、ブラシタイプの化粧品塗布具を提供するものである。複数の環状部材(例えば、ディスク、スリーブ、リング、ビーズなど)を、例えば成形により、個々に作製する。各環状部材は中央に1つの孔を有する。所望の直径、硬さ(例えば、デュロメータで計測する)、柔軟性、長さ及び材質(材料)の繊維(ブラシ毛)を、少なくともいくつかの環状部材(第1グループの環状部材)の、好ましくは外部表面上にフロックする。第2グループの各環状部材には、第1グループで用いた繊維と異なる性質(例えば、異なる直径、硬さ、柔軟性、長さ又は材質、並びにこれらの組合せ)を1つ以上有する繊維をフロックする。あるいは、第2グループの各環状部材はフロックしなくてもよく、又は第1グループの各環状部材がフロックされている表面とは異なる表面(例えば、軸方向表面)にフロックするようにしてもよい。他にも、第2グループの各環状部材は、第1グループの各環状部材と同じ又は異なる繊維をフロックされているか、フロックされていないかに関わらず、半径方向又は軸方向において第1グループの各環状部材と異なる寸法を有するようにしてもよい。次に、各グループの環状部材は、該各グループの環状部材の孔を通してシャフト又はピン上に、順次配置(スタック)され、塗布具の塗布部分を形成する。所望の塗布性能を発揮するような順列で環状部材を配置する。例えば、長いブラシ毛を有する第1グループの環状部材と、短いブラシ毛を有する第2グループの環状部材とを交互させることにより、改良されたコーティング及び梳毛性能を有するブラシタイプの塗布具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のブラシタイプ化粧品塗布具の側面の拡大断面図である。
【図2】図1に示す塗布具端部の拡大図である。
【図3】本発明に従って繊維を付した1個の環状部材の断面図である。
【図4】図3に示す塗布具の4-4線に沿った断面図である。
【図5】図1に示す塗布具のシャフトの側面拡大図である。
【図6】図5に示すシャフトの6-6線に沿った断面図である。
【図7】繊維を付する前の1個の環状部材の断面図である。
【図8】図7に示す1個の環状部材の側面拡大図である。
【図9】図9a−9dは、本発明の他の実施例に従って繊維を付した1個の環状部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、毛髪又は睫毛に化粧品を塗布するためのブラシタイプの塗布具2を示す。塗布具2は、本明細書中では持ち手端とも称される近位端12及び該持ち手端12と対置された遠位端14を有する伸長シャフト10(図5及び6も参照)により構成されている。シャフト10は、持ち手端12から遠位端14までを規定する長軸8を有する。シャフト10の近位端又は持ち手端12は、塗布具2を使用する際の持ち手として機能しうる。より一般的には、シャフト10の近位端12を、例えば、Waveringの米国特許第4411282号及びVasasの米国特許第4527575号に開示されているものと同様の、持ち手又はキャップと持ち手の複合体(図示せず)に接続する。これら開示の全ては参照により本明細書に含まれるものである。Wavering及びVasasの引用例は、また、典型的に本発明の塗布具と組み合わせて用いられるようなタイプの化粧品商品をそれぞれ開示している。このように、キャップハンドルに固定されたシャフトの一端に備えられた塗布具と容器の組合せのようなタイプの化粧品商品、及びその製造方法は、当業界ではよく知られている。
【0013】
シャフト10の遠位端14から持ち手端12に向かって伸びる遠位部分を、ここでは塗布具端16と呼ぶ。シャフト10の塗布具端16は、毛髪又は睫毛をコーティング、分離及び梳毛するためのブラシタイプの塗布具装置(means)18に適合した寸法を有し、これを支持するために適用される。本塗布具2のブラシタイプの塗布装置18は、少なくとも2つの環状部材20及び22のアレイ30を含むことを特徴とする。各環状部材20及び22は、それぞれ1つのユニットとして形成されており、個々にシャフト10上に配置されて、望ましい塗布具性能を発揮するようなアレイ30を構成する。各環状部材20及び22は、互いに同じものであってよく、以下に詳述するような性質の1つ又はそれ以上において異なっていてもよい。各環状部材20及び22の性質と、アレイ30内における各環状部材20及び22の配置とを注意深く選択することにより、塗布具の長さ方向に沿った性質を予め決めておくことができる。
【0014】
アレイ30を構成するこれら複数の環状部材20及び22は、少なくとも1個の第1環状部材20及び1個の第2環状部材22を含む。図1に示す塗布具は、8個の第1環状部材20と8個の第2環状部材22とを有する。しかしながら、これらの個数は単に例示的なものであり、複数の環状部材20及び22の個数は、例えば、各環状部材の寸法や、塗布具端16の軸8に沿った長さに依存して変化し得るものである。また、ここでは例示のために、例えば、短いブラシ毛を有する第1環状部材20と長いブラシ毛を有する第2環状部材22などの、少なくとも2つの異なる種類の環状部材からなるアレイ30を有する塗布具を示したが、アレイ30は1種類のみの環状部材を有していてもよく(すなわち、環状部材20及び22は同じものである)、あるいは3種類以上の環状部材を有していてもよい。
【0015】
各環状部材20及び22は、ディスク状、リング状、スリーブ状、ビーズ状、その他の形態(図3、4、7及び8の20、及び図9a〜9dの他の環状部材の例120,220,320,420を参照)をとることができる。各環状部材は外部表面26を備えたボディ24を有する。図7に示すように、外部表面26には、放射方向外側に向いた部分29(すなわち、環状部材の円周部分)と側面部分27(すなわち、環状部材の対向する側壁)とがあり、内部に向いた部分28(孔32の内部に向いた表面)があってもよい。図3及び7に示す好ましい実施形態、及び図9a〜9dの他の実施形態の断面図を見れば、各環状部材20、120、220、320、420及びその外部表面26、126、226、326、426は、様々な形態を取り得ることが明らかである。例えば、図9aの外部表面126は面取りされており、側面部分127が放射方向外側に向いた部分129と所定の角度で交差している。側面部分127には繊維17が施されている。図9bでは、外部表面226は湾曲されていて、ビーズのような環状部材220を形成している。図9cでは、外部表面326は面取りされているが、側面部分327には繊維が施されていないので、2つの環状部材320をシャフト10上で互いに隣接して配置すると繊維のない隙間が形成される。図9dに示すように、外部表面426に環状の隙間又は溝425を設けることにより、スリーブ状の環状部材420は、2つのディスク状部分421及び422から形成されているように見える。隙間425により、塗布具に化粧品を付着しやすくなる。
【0016】
上記のように、ボディ24によって、孔32はシャフト10に密接して受容されるような寸法に画成されている。環状部材20及び22がシャフト10上を自由に回転できるように、孔32及びシャフト10を配設してもよい。あるいは、図3、4、7及び8に示す孔32、ならびに図4、5及び10に示すシャフト10は、環状部材20及び22がシャフト上を回転しないように、協調的に調整されていてもよい。図示したように、孔32の断面を六角形とし、シャフト10の対応する断面もこれに応じた形状と寸法の六角形にすることもできる(図6参照)。これら孔32及びシャフト10の断面により、環状部材20及び22はシャフト10に対して回転しなくなる。環状部材をシャフトに対して位置決めするために用いる断面の形状は六角形のみに限られない。例えば、正方形(図示せず)、星型(図示せず)、かぎ型及びチャネル(図示せず)などの形状を用いることができる。各環状部材20及び22のボディ24は放射形対称(例えば、円形や楕円形)であり、ボディ24の中心に孔32があるのが好ましい。こうすれば、環状部材20及び22をシャフト10に配置したとき、アレイ30が長軸8を中心に放射形対称となる。あるいは、環状部材20及び22のいくつかの又は全てのボディ24を偏心形状(例えば、卵型)にしてもよく、また、ボディの中心位置からずれた位置に孔32を設けてもよい。こうすれば、アレイ30の全部又は一部が長軸8について放射形非対称となる。
【0017】
シャフト10及び各環状部材20及び22は、例えばPOM(アセタール)などの適当な既知の材料から、例えば成形などの既知の方法により作製することができる。シャフト10及び環状部材20及び22に適した他の材料としては、例えばアルミニウム、炭素鋼及びステンレス鋼などの金属や、例えばスチレン、(HDPE及びLDPEを含む)ポリエチレン、(PPを含む)ポリプロピレン、ナイロン、塩化ポリビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリルなどのプラスチック及び/又は樹脂などがある。
【0018】
塗布具にブラシのような性能を持たせるために、複数の繊維(ここではブラシ毛又はフィラメントとも呼ぶ)17を、環状部材20及び22の少なくともいくつかに付着させる。繊維17により、アレイ30の製品の添着、拭い及び塗布性能、並びに分離及び梳毛性能が大いに向上される。繊維17はナイロンで作るのが好ましいが、これ以外の天然物質又は合成物質の適当な材料により作ることもできる。プラスチック又はゴム材料から作製した繊維を用いることもできる。例えば、アクリル、ポリエステル及びレーヨンから繊維を作成することもできるが、これらに限られるわけではない。繊維の長さは、これを支持する環状部材のサイズ及び所望の塗布又は梳毛性能によって、およそ0.25mm〜6.25mmで変化する。各繊維17は、1つの第1端15において、環状部材20及び22の外部表面26に付着されている。各繊維17の他方の自由端19は外部表面26から離れており、各繊維が外部表面26から外側に向かって伸長するようになっている。好ましくは、環状部材20及び22をシャフト10に取り付けたときに、繊維17が、シャフト10の長軸8から見てほぼ放射方向外側に向かって伸長するように、繊維17を外部表面26に付着させる。しかしながら、塗布の目的によっては、環状部材20及び22をシャフト10に取り付けたときに、繊維17が、シャフト10の実質的に長軸8に沿った方向に伸長するように(図9a及び9b参照)、繊維17を外部表面26に付着させる方が好ましいことも考えられる。環状部材をシャフト上に、順次、密着して配設すると、図1の矢印11で示す領域では、隣接する環状部材の繊維同士が混合しうる。
【0019】
接着又はその他適切な方法により、繊維17を環状部材20及び22に付着させることができる。例えば、機械的、静電的又は湿式分散フロッキングなどの適切なフロッキング工程によりこれを行うことができる。例えば、Vasasの米国特許第4527575号(特許文献7)には、適切なフロッキング工程が開示されており、これは参照により本明細書中に含まれるものである。環状部材20及び22の外部表面26の選択部分に接着剤をコーティングして、接着層21を形成する。接着層21を形成する接着剤は、繊維17の材料、環状部材20及び22の材料、並びに本塗布具に添着し塗布しようとする材料(例えば、化粧品)との相性に基づいて、選択する必要がある。接着剤は、硬化したら、選択した繊維17を環状部材20及び22の材料に恒久的に固着できるようなものでなければならない。接着層21が硬化する前に、適切な性質(例えば、長さ、硬さ、柔軟性、厚さ、製品との相性など)の繊維を、それぞれの各第1端15が接着層21に付着するようにして配置する。例えば、各繊維17を静電的に帯電させた後、各繊維17を接着層に適用し、電場により各繊維の第1端15を整列させて、接着層21に接触させることにより、これを行うことができる。接着剤が硬化すると、各繊維17の第1端17は、環状部材20及び22の接着層21にしっかりと根付けされる。あるいは、接着剤の使用を避けるならば、静電的に荷電した繊維を1つの環状部材の選択した表面に、前記繊維が該環状部材の選択した表面上に固着する前に配設することにより、フロッキング工程を環状部材20及び22の製造工程に統合すればよい。この後、部品表面が硬化することにより、繊維は表面に対して垂直方向に根付けされる。いずれの場合においても、アレイ30をシャフト10上に組み立てる前に、環状部材20及び22の選択表面部分をフロックする。
【0020】
図1に示す好ましい実施形態では、環状部材20に短いブラシ毛53を、環状部材22に長いブラシ毛55を付着させている。しかしながら、各環状部材20及び22のブラシ毛の長さは同じにしてもよい。次に説明するように、ブラシ毛又は環状部材は他の方法では異なる場合もあるからである。
【0021】
上記のように、繊維は環状部材の外部表面26であれば、いかなる選択部分に付着させてもよく、例えば、環状部材の外周部(放射方向外側に向いた部分29)、側壁表面(側面部分27)、あるいは孔32の内部方向表面28であってもよい。図3、4及び9では、環状部材20,120,220,320及び420上の様々な位置でフロックされた繊維17の例を示している。
【0022】
上記のように、各環状部材20及び22は個別にかつ塗布具シャフトから独立して形成されるものであり、繊維17を選択的に付着させた後、個々にかつ順次、孔32を通してシャフト10のまわりに塗布具端16で配置される。アレイ30の各環状部材20及び22は、例えば、締まり嵌め、接着、音波融着、その他の既知の方法又は手段により、個々にシャフトに固着される。あるいは、環状部材のアレイ30をシャフト10の塗布具端16上に保持するための、第1止め具及び第2止め具を備えていてもよい。第1止め具40はアレイ30の近位端に、第2止め具41はシャフト10の遠位端に配置する。第1止め具及び第2止め具はシャフト10上の領域を規定し、環状部材のアレイ30の軸方向の動きはこの領域内に制限される。第1止め具及び第2止め具は、シャフト10での環状部材20及び22の軸方向の動きに対して障害となる限りにおいては、いかなる物理的構造をしていてもよい。例えば、図1に示すように、シャフト10に直径が大きくなった部分、又は止め具40及び41を設けることができる。遠位止め具41はシャフト10の一部として成形される。近位止め具40はシャフト10の一部が機械的に又は熱により変形されたものであり、ステイキング・クリンプと呼ばれるものである。あるいは、アレイ30の最初及び最後の環状部材のうち一方又は両方を、例えば、接着、スナップ嵌め、締まり嵌め、共働ねじなどでシャフト10に固定することにより、これらを止め具とすることができる。シャフト形成中に、止め具40及び41の少なくとも一方をシャフト10上に形成することができるが、他方の止め具は、環状部材20及び22のアレイ30がシャフト上に配置された後に、シャフトに固着しなければならない。例えば、他方の止め具を、アレイ30をシャフトに配置後にロッドに対して締め付け可能な個別のピースとして作成することにより、又はアレイ30をシャフトに配置後、シャフトの一部を機械的に変形させることにより、これを行うことができる。
【0023】
上記のように、2個以上の環状部材20及び22を、順次、密着してシャフト上の塗布具端16に配置して、アレイ30を形成する。特定の性質を有する塗布具を作製するには、所定の硬さ(例えば、デュロメータで計測する)、柔軟性、直径及び長さの第1材料により構成される繊維53を有する環状部材20と、これとは材料(材質)、硬さ(例えば、デュロメータで計測する)、柔軟性、直径及び長さのいずれか1点において異なる繊維55を有する環状部材22とを選択しうる。あるいは、環状部材20及び22の繊維53及び55は同じ物でもよいし、各環状部材20のボディ24が、形状、放射方向寸法又は軸方向寸法のいずれか1点において、環状部材22と異なるようにしてもよい。次に、異なる繊維及び/又は寸法を有する環状部材20及び22をシャフト10上に組み立てて、予め決めておいた塗布、梳毛、添着その他の性能を有するアレイ30を形成する。図1に示すように、異なる繊維及び/又は寸法を有する環状部材20及び22を、交互に配列してアレイ30としてもよいし、又は所望の塗布性能を発揮するこれ以外の順列で配列してもよい。
【0024】
また、あるグループの環状部材は他のグループの環状部材と異なり、繊維を有しないようにしてもよい。これは特に、隣接するフロックの環状部材の繊維同士が混合することにより、過度に密集した領域(11)が生じる場合に有用である。スペーサーリング又は繊維を有さない環状部材の挿入によって、フロックされた環状部材同士を離れて配置させることができる。実際、ある塗布目的においては、アレイ内の全てが繊維を有する環状部材であるよりも、繊維の無い環状部材をアレイ中に配置する方が好ましいことがある。
【0025】
上記のようなブラシタイプの塗布具を作成するには、それぞれ孔32及び支持表面26を有する第1環状部材20及び第2環状部材22を少なくとも形成する。第1の複数繊維53を少なくとも第1環状部材20の支持表面26に付着させる。個々の繊維はそれぞれ、一端15によって支持表面に付着され、かつ支持表面26から離れて配置される1つの自由端19を有する。孔32により環状部材20及び22を受容できるような寸法のシャフト10を作成する。第1及び第2の環状部材20及び22をシャフト上に配置し固定する。
【0026】
好ましい実施形態の例として、以下のような寸法を有するブラシ様の塗布具2を考える。POM(アセタール)を用いてシャフト10を射出成形する。シャフト10は近位端又は持ち手端12から遠位端14まで(シャフトの塗布具端16を含む)の長さが39.9mmである。シャフト10は八角形の断面を有し、最大断面寸法(断面の八角形における角から角までの距離をはかる)は1.2mm以下とする。シャフト10の塗布具端16、すなわち、フロックした環状部材20及び22を支持する部分の長さはおよそ26.5mmである。この26.5mmという寸法は、近位止め具40及び遠位止め具41間に並ぶ幅1.5mmの環状部材16個を支持するには十分な長さである。遠位止め具41はシャフト10の一部を構成するものとして作製される。遠位止め具41は遠位方向に向けて尖った端までテーパーされている。環状部材20及び22の完成したアレイをシャフト上に配置した後に、シャフト10の一部を機械的に又は熱により変形させることにより、シャフト10上に近位止め具40を形成する。
【0027】
16個の環状部材20及び22は、POM(アセタール)を用いて個々に射出成形される。ここで示した実施形態では、各環状部材のボディ24の寸法は同じである。ボディ24の中心には、シャフト10の塗布具端16を受容できるような寸法を有し、断面が八角形の孔32を形成する。この孔の寸法は、断面の八角形における角から角までの距離が1.2mmかこれよりわずかに大きい。各環状部材20及び22のボディ24はディスク状であり、直径は3mm、幅は1.5mmである。こうして、ディスク上のボディにより、幅1.5mmの(コインの縁のような)円筒状表面29が規定される。
【0028】
ナイロンの繊維をPOMプラスチック(例えば、エポキシ)に恒久的に固着するのに適した接着剤を、第1グループの8個の環状部材(環状部材20)のそれぞれの円筒表面29に、層21として形成する。接着剤が硬化する前に、繊維53を既知のフロッキング方法で取り付けて、各繊維の一端15が接着層21に埋め込まれて表面29に固着されるとともに、他端19が表面29から離れて伸張するようにする。繊維53は、比較的短く(およそ1.25m)軟らかい繊維を用いて、このグループの環状部材の全体の外周が5.5mmとなるようにする。同様に、第2グループの環状部材22の円筒表面29にも接着剤の層21を形成し、繊維55を、それぞれの一端が接着剤に埋め込まれるようにしてフロッキングする。繊維55には、比較的長く(およそ2.25mm)硬い繊維を用いて、このグループの環状部材の全体的外周が7.5mmとなるようにする。
【0029】
第1グループ及び第2グループ両方の環状部材において伸長する繊維53及び55の自由端19は、互いに対して、また接着端15の接着された1.5mmの円筒表面に対してある程度扇開きにする。したがって、扇状に広がった自由端19の全体の幅はおよそ2.76mmとなり、各環状部材20及び22のボディ24の幅1.5mmよりも広くなる。
【0030】
16個の環状部材20及び22を形成し、8個ずつの2グループ(8個の長く硬い繊維と、8個の短く軟らかい繊維)でフロックした後、これらを順次、持ち手端12から塗布具端16上までスライドさせて、シャフト10上に取り付ける。シャフト10の長さ方向に沿って、長く硬いブラシ毛を有する環状部材22と短く軟らかい繊維を有する環状部材20とが交互して配置される。各環状部材20及び22は隣接する環状部材20及び22と密接して配置されるので、環状部材間に隙間はほとんど生じない。隣接する環状部材20及び22間に隙間がほとんどないので、隣接する環状部材の扇状に広がった繊維53及び55の自由端19は、矢印11に示される領域では互いに混合する。16個の環状部材20及び22をシャフト10上に全て正しく配置した後、シャフトの一部を機械的に又は熱により変形させて、シャフト10に近位止め具40を配置する。
【0031】
以上の構造、配置及び組み立て方法によれば、塗布具の製造者は一定数の種類の環状部材を製造しストックしているだけでよく、これらの環状部材を様々な組合せ及び/又は順列でアレイを構成することにより、多種多様な性質を有する塗布具を組み立てることができる。
【0032】
以上、好ましい形態を例示することにより本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義される本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、各構成部品の構造及び配置に関して様々な変更を加えることができるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪又は睫毛に化粧品を塗布するための塗布具であって、
持ち手端及び塗布具端を有し、前記持ち手端から前記塗布具端までを規定する長軸を有する長いシャフトと、
少なくとも第1のグループの環状部材と第2のグループの環状部材を有するアレイであって、前記環状部材のそれぞれは、1つの中央孔を有して別個に形成され、前記中央孔を通じる前記シャフトの長さ方向に沿って前記塗布具端に連続的に配置され、半径方向及び軸方向に所定の寸法を有する材料から構成されたものである、アレイと、
各繊維が、所定の硬さ、柔軟性、直径及び長さを有する材料で構成され、各繊維の一方の端が前記第1のグループの各環状部材又は第2のグループの各環状部材の表面に付着され、他方の自由端が前記第1のグループ又は第2のグループの各環状部材の前記表面から離れている複数の繊維と、を含み、
前記第2のグループの各環状部材は、フロックしていないか、又は第1のグループの各環状部材上にフロックしている表面とは異なる表面上にフロックしているものであり、又は前記第1のグループの前記環状部材とは、遠心方向若しくは軸方向で異なる寸法を有するものである塗布具。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布具が更に第2の複数繊維を含み、前記第2の複数繊維の各繊維は、所定の硬さ、柔軟性、直径及び長さを有する材料からなり、一方の端が前記第2のグループの各環状部材の表面に付着され、他方の自由端が前記第2のグループの各環状部材の表面から離れている塗布具。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布具であって、前記第2の複数繊維の各繊維は、前記第1のグループの各環状部材の第1の複数繊維の各繊維と、材料、硬さ、柔軟性、直径及び長さのそれぞれで同じである塗布具。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布具であって、前記第1のグループの各環状部材は、前記第2のグループの各環状部材と、材料、半径方向の寸法及び軸方向の寸法のそれぞれで同じである塗布具。
【請求項5】
請求項3に記載の塗布具であって、前記第1のグループの各環状部材は、前記第2のグループの各環状部材と、材料、半径方向の寸法及び軸方向の寸法のうちの少なくとも1つにおいて異なる塗布具。
【請求項6】
請求項3に記載の塗布具であって、前記第1の複数繊維を構成する各繊維は、前記第2の複数繊維を構成する各繊維と、材料、硬さ、柔軟性、直径及び長さで略同じである塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−157708(P2012−157708A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92698(P2012−92698)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2002−513315(P2002−513315)の分割
【原出願日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【出願人】(598173764)カラー アクセス,インコーポレイティド (14)
【Fターム(参考)】