説明

環状ヘミアセタール誘導体およびその用途

【課題】カルパイン阻害活性を有する化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)


[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物。特に、(2S)−4−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド。この化合物は、カルパインが関与する疾患の予防または治療剤として有用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルパイン阻害活性を有する新規環状ヘミアセタール誘導体に関する。また、本発明は新規環状ヘミアセタール誘導体を含有する医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
カルパインは生体内に広く分布する細胞質内のタンパク分解酵素の一つであり、カルシウムイオンで活性化される。現在では、このカルパインの異常な活性化が脳卒中、クモ膜下出血、アルツハイマー病、虚血性疾患、筋ジストロフィー、白内障、血小板凝集、関節炎などの種々の疾患に関与していることが明らかとなっている[Trends in Pharmacological Sciences,15巻,412頁(1994年)]。一方、カルパイン阻害剤は水晶体培養による実験的白内障モデルにおいて、水晶体の透明維持に効果があり[Curr. Eye Res.,10巻,657〜666頁(1994年)]、白内障治療剤(WO93/23032)などとして有用であることが分ってきている。これまで報告されているカルパイン阻害剤としては、ペプチドハロメタン誘導体(特公平6−29229)、ペプチドジアゾメタン誘導体[Biochem.J.,253巻,751〜758頁(1988年)、J.Med.Chem.,35巻,216〜220頁(1992年)]、ペプチジルアルデヒド誘導体(EP771565、USP6057290など)などが挙げられるが、これらの阻害剤は、未だ実用化されていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カルパイン阻害活性を有する化合物を提供することである。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、強いカルパイン阻害活性を有する化合物を創製し、さらに研究を進めて本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、
(1)一般式(I)
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物、
(2)Rが炭素数3または4の低級アルキル基である上記(1)記載の化合物、
(3)Rがイソプロピル、イソブチルおよびsec−ブチルから選択される基である上記(1)または(2)記載の化合物、
(4)Rがイソブチルであり、Rが水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基および低級アルコキシ基から選択される基である上記(1)記載の化合物、
(5)(2S)−4−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、
(6)一般式(I)
【0007】
【化2】

【0008】
[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物を含有する医薬、
(7)カルパイン阻害剤である上記(6)記載の医薬、
(8)カルパインが関与する疾患の予防または治療剤である上記(6)記載の医薬、
(9)一般式(I)
【0009】
【化3】

【0010】
[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物および製薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物、
(10)カルパイン阻害剤である上記(9)記載の医薬組成物、
(11)カルパインが関与する疾患を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳動物に有効量の一般式(I)
【0011】
【化4】

【0012】
[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物を投与することからなる方法、および
(12)カルパイン阻害剤としての一般式(I)
【0013】
【化5】

【0014】
[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ラット水晶体培養における化合物1の水晶体白濁防止効果を示すグラフである。各値は平均値±標準誤差を示す(n=5)。*はステューデントのT検定(両側)によるコントロール群に対する有意差p<0.01を表す。
【図2】図2は、ウサギにおける点眼投与後の化合物1の房水濃度を示すグラフである。各値は平均値±標準偏差を示す(n=4)。
【図3】図3は、ラット網膜虚血障害モデルにおける化合物1のガングリオン細胞障害に対する抑制効果を示すグラフである。各値は平均値±標準誤差を示す(n=6)。*はステューデントのT検定によるコントロール群に対する有意差p<0.05を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記式(I)中、Rで表される低級アルキル基は炭素数1〜4の直鎖状または分枝状アルキル基をいい、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルなどが挙げられる。好ましくは炭素数3または4の低級アルキル基であり、より好ましくはイソプロピル、イソブチルおよびsec−ブチルであり、特に好ましくはイソブチルである。上記式(I)中、Rで表されるハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、とりわけフッ素が好ましい。上記式(I)中、Rで表される低級アルキル基としては前述のRで表される低級アルキル基と同様のものが挙げられ、特に好ましくはメチルである。上記式(I)中、Rで表される低級アルコキシ基は炭素数1〜4の直鎖状または分枝状アルコキシ基をいい、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシなどが挙げられ、特に好ましくはメトキシである。
【0017】
さらに、本発明は、一般式(I)で表される化合物(以下、本発明化合物と記載することもある。)および本発明化合物の各種の溶媒和や結晶多形の物質ならびにプロドラッグをも包含する。
本発明の化合物は例えば、下記反応式
【0018】
【化6】

【0019】
[式中、各記号は前記と同意義を有する。]により製造することができる。一般式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)と記載することもある。)はアミノ基をRで表される保護基で保護されたα−アミノ酸である。Rとして表される保護基としては、例えばtert−ブトキシカルボニル基(以下、Boc基と記載することもある。)、ベンジルオキシカルボニル基などの通常ペプチド合成の分野で用いられるものが挙げられる。
【0020】
一般式(III)で表される化合物(以下、化合物(III)と記載することもある。)は、化合物(II)とN−ヒドロキシコハク酸イミドを通常使用される有機溶媒に溶解し、縮合剤の存在下で攪拌することにより得ることができる。通常使用される有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどのような反応に悪影響をおよぼさない慣用の溶媒またはそれらの混合溶媒が挙げられるが、好ましくはジクロロメタンである。縮合剤としては、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどが好適に使用される。反応温度は、通常冷却下、室温または加温下であり、好ましくは氷冷下から室温の範囲である。
【0021】
一般式(IV)で表される化合物(以下、化合物(IV)と記載することもある。)は、化合物(III)を通常使用される有機溶媒に溶解し、α−アミノ−γ−ブチロラクトンまたはその塩(塩酸塩または臭化水素酸塩)を加え、塩基の存在下または非存在下で攪拌することにより得ることができる。通常使用される有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、酢酸エチルなどのような反応に悪影響をおよぼさない慣用の溶媒またはそれらの混合溶媒が挙げられるが、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。塩基としては例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセンなどが挙げられるが、好ましくはトリエチルアミンである。反応温度は特に限定されないが、通常冷却下、室温または加温下であり、好ましくは氷冷下から室温の範囲である。
【0022】
一般式(V)で表される化合物(以下、化合物(V)と記載することもある。)は、化合物(IV)の保護基であるRを、アミノ保護基の脱離反応に用いられる慣用的方法を適宜選択することによって得ることができる。例えば保護基にtert−ブトキシカルボニル基を用いた場合は、化合物(IV)を通常使用される有機溶媒に溶解し、酸の存在下、攪拌することによりRを脱離することができる。通常使用される有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチルなどのような反応に悪影響をおよぼさない慣用の溶媒またはそれらの混合溶媒が挙げられるが、好ましくは酢酸エチルである。酸としては塩酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。また、市販されている塩酸の酢酸エチル溶液またはジオキサン溶液などを用いて脱離することもできる。反応温度は特に限定されないが、通常は冷却下、室温または加温下であり、好ましくは氷冷下から室温の範囲である。ベンジルオキシカルボニル基を用いた場合は慣用の金属触媒(例えばパラジウム炭素、ラネーニッケル、酸化白金など)の存在下での接触還元により行われる。水素圧は通常約1気圧〜約50気圧であるが、好ましくは約1気圧〜約5気圧である。溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、エーテル類(テトラヒドロフランなど)、有機酸類(酢酸など)およびこれらの混合溶媒を使用できる。反応温度は、好ましくない副反応が起こらない範囲であれば特に限定されず、通常、冷却下、室温または加温下で反応は行われる。また、化合物(V)は次の反応に影響がなければ単離精製を行わず次の反応に用いてもよい。
【0023】
一般式(VI)で表される化合物(以下、化合物(VI)と記載することもある。)は、化合物(V)に種々のイソチオシアナート試薬を加え、通常使用される有機溶媒中、塩基の存在下または非存在下で攪拌することにより得ることができる。通常使用される有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどのような反応に悪影響をおよぼさない慣用の溶媒またはそれらの混合溶媒が挙げられるが、好ましくは酢酸エチルである。塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセンなどが挙げられるが、好ましくはトリエチルアミンである。反応温度は特に限定されないが、通常は冷却下、室温または加温下であり、好ましくは氷冷下から室温の範囲である。
【0024】
一般式(I)で表される化合物は、化合物(VI)を還元反応に付し、得ることができる。本還元反応はそれ自体公知の方法で行うことができる。例えば金属水素化物による還元、金属水素錯化合物による還元、ジボランおよび置換ボランによる還元、接触水素添加等が用いられる。すなわち、この反応は化合物(VI)を還元剤で処理することにより行われる。還元剤としては、水素化ホウ素アルカリ金属(例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等)、水素化アルミニウムリチウムなどの金属水素錯化合物、水素化ナトリウムなどの金属水素化物、有機スズ化合物(水素化トリフェニルスズ等)、ニッケル化合物、亜鉛化合物などの金属および金属塩、パラジウム、白金、ロジウムなどの遷移金属触媒と水素とを用いる接触還元剤およびジボランなどが挙げられるが、とりわけ水素化ジイソブチルアルミニウムを用いることにより有利に行われる。この反応は、反応に影響を及ぼさない有機溶媒中で行われる。例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、酢酸エチルなどのような反応に悪影響をおよぼさない慣用の溶媒またはそれらの混合溶媒が挙げられるが、好ましくはジクロロメタンである。反応温度は約−100℃〜約150℃,特に約−80℃〜約−10℃が好適であり、反応時間は、約1〜約24時間程度である。このようにして得られる環状ヘミアセタール誘導体は公知の分離精製手段、例えば濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、晶出、再結晶、転溶、クロマトグラフィーなどにより単離精製することができる。
【0025】
上記の方法によって製造される一般式(I)で表される化合物としては、例えば(2S)−4−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−3−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−3−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ブタナミド、(2S)−2−(((ベンジルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−2−((((4−フルオロフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−2−((((4−メトキシフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−2−((((3−シアノフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−2−((((4−シアノフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−4−メチル−2−((((2−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−4−メチル−2−((((3−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド、(2S)−4−メチル−2−((((4−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミドなどが挙げられる。
【0026】
本発明化合物は文献未載の新規化合物であり、後記試験例に示すように優れたカルパイン阻害活性を有するため、それらを有効成分として、必要により後記の担体等を組み合わせることにより、カルパイン阻害剤としての医薬として有用である。後述の実施例に開示する化合物の構造式を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明化合物を含有する医薬は、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)の虚血性疾患、免疫疾患、アルツハイマー病、骨粗鬆症、脳虚血疾患、白内障、緑内障、網膜(脈絡膜)疾患、光凝固による眼球後眼部合併症(例えば黄斑部浮腫、網膜剥離、視神経炎、視野異常、光覚異常、色覚異常など)などの予防および治療用の医薬用製剤として、または血管新生、網膜剥離などの予防および治療薬として有用である。また、本発明化合物は従来の同種化合物より水溶性に優れているものが多く、従来困難であった水性液剤としての使用が可能となる。さらに、本発明化合物は組織移行性および吸収性に優れ、かつ毒性も非常に低く安全性にも優れている。
【0029】
本発明化合物を含有する医薬は全身的または局所的に投与される。全身的には経口投与の他、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射など非経口的にも投与される。局所的には、皮膚、粘膜、鼻内、眼内などに投与される。
【0030】
本発明化合物を含有する医薬の製剤形態としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、坐剤などの固形剤、およびシロップ剤、注射剤、点眼剤、点鼻剤などの液剤などが挙げられる。顆粒および錠剤として製造する場合には、例えば賦形剤(乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、結晶セルロースなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウムなど)、崩壊剤(デンプン、カルメロースナトリウム、炭酸カルシウムなど)、結合剤(デンプン糊液、ヒドロキシプロピルセルロース液、カルメロース液、アラビアゴム液、ゼラチン液、アルギン酸ナトリウム液など)などを用いることにより任意の剤形を製造することができる。また、顆粒剤および錠剤には、適当なコーティング剤(ゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウなど)、腸溶性コーティング剤(例えば酢酸フタル酸セルロース、メタアクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロースなど)などで剤皮を施してもよい。
【0031】
カプセル剤として製造する場合には、適当な賦形剤、例えば流動性と滑沢性を向上させるためのステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸など、また加圧流動性のための結晶セルロースや乳糖などの他、上記崩壊剤などを適宜添加したものを均等に混和または、粒状、若しくは粒状としたものに適当なコーティング剤で剤皮を施したものを充填するか、適当なカプセル基剤(ゼラチンなど)にグリセリンまたはソルビトールなど加えて塑性を増したカプセル基剤で被包成形することもできる。これらカプセル剤には必要に応じて、着色剤、保存剤[二酸化イオウ、パラベン類(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル)]などを加えることができる。カプセル剤は通常のカプセルの他、腸溶性コーティングカプセル、胃内抵抗性カプセル、放出制御カプセルとすることもできる。腸溶性カプセルとする場合、腸溶性コーティング剤でコーティングした化合物または化合物に上記の適当な賦形剤を添加したものを通常のカプセルに充填または、カプセル自身を腸溶性コーティング剤でコーティング、もしくは腸溶性高分子を基剤として成形することができる。
【0032】
坐剤として製造する場合には坐剤基剤(例えばカカオ脂、マクロゴールなど)を適宜選択して使用することができる。
【0033】
シロップ剤として製造する場合、例えば安定剤(エデト酸ナトリウムなど)、懸濁化剤(アラビアゴム、カルメロースなど)、矯味剤(単シロップ、ブドウ糖など)、芳香剤などを適宜選択して使用することができる。
【0034】
注射剤、点眼剤または点鼻剤として製造する場合、医薬上許容される添加物、例えば等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコールなど)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸、イプシロンアミノカプロン酸など)、保存剤(パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂など)、増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなど)、安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエンなど)、pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸など)などを適宜添加した溶液に溶解または分散することによって製造することができる。
【0035】
なお、本発明化合物中、医薬品として望まれる適度な水溶性を有する化合物は、水溶性液剤として、特に上記したシロップ剤、注射剤、点眼剤および点鼻剤などの製剤に有利に使用できる。
【0036】
上記シロップ剤、注射剤、点眼剤および点鼻剤における添加剤の添加量は、添加する添加剤の種類、用途などによって異なるが、添加剤の目的を達成し得る濃度を添加すればよく、等張化剤は、通常、浸透圧が約229〜約343mOsmとなるよう、約0.5〜約5.0w/v%程度添加する。また、緩衝剤は約0.01〜約2.0w/v%程度、増粘剤は約0.01〜約1.0w/v%程度、安定化剤は約0.001〜約1.0w/v%程度添加する。pH調整剤は、適宜添加し、通常pH約3〜約9、好ましくは約4〜約8に調整される。
【0037】
本発明化合物の投与量は対象となる疾患、症状、投与対象、投与方法などにより異なるが、例えば内服剤として成人に投与する場合は、1日数回、1回量約1〜約100mg程度であり、注射剤として成人に投与する場合は、1日1回、約0.1〜約30mg程度である。また、局所的に目に投与する場合は、本発明化合物を約0.001〜約1.0w/v%、好ましくは約0.01〜約0.5w/v%含有する点眼剤を1回約20〜約50μL、1日数回点眼するのがよい。
【実施例】
【0038】
本発明を以下の参考例、実施例、試験例および製剤例に従いさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0039】
なお、実施例で述べる化合物の分析値において、融点はYanaco社製MP−500V型(補正なし)を用いて測定した。核磁気共鳴スペクトル(NMR)はVarian社製Gemini2000型を用いて測定した。化合物1から11のNMRスペクトルはアノメリック炭素の存在により複雑であり、同一プロトンのメジャーピークとマイナーピークが区別できる場合は別々に記載した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)はPerseptive社製Voyager DE PRO型を用いて測定した。比旋光度([α])はHoriba社製SEPA−2000型を用いて測定した。
【0040】
参考例1 N−(tert−ブトキシ)カルボニル−L−ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(参考化合物1)
Boc−L−ロイシン(27g,110mmol)とN−ヒドロキシスクシンイミド(16g,140mmol)をテトラヒドロフラン(180mL)に溶解し、これに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(27g,140mmol)のジクロロメタン(180mL)懸濁液を氷冷条件下で加えた。この反応液を室温で18時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、この溶液を1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた固体をヘキサンで結晶化し、無色結晶の参考化合物(33g,93%)を得た。
mp 74.1-75.5 ℃. 1H-NMR(300 MHz, DMSO-d6)δ:0.88 (d, 3H, J = 6.3 Hz), 0.91 (d, 3H, J = 6.3 Hz), 1.39 (s, 9H), 1.54-1.75 (m, 3H), 2.80 (s, 4H), 4.32 (m, 1H), 7.62 (d, 1H, J = 8.4 Hz).
【0041】
参考例2 N−(tert−ブトキシ)カルボニル−L−イソロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(参考化合物2)
Boc−L−ロイシンの代わりにBoc−L−イソロイシンを用いて参考例1と同様の操作を行い、白色固体の参考化合物2を得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3)δ:0.97 (t, 3H, J = 7.5 Hz), 1.04 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 1.26 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.60 (m, 1H), 1.98 (m, 1H), 2.83 (s, 4H), 4.62 (dd, 1H, J = 8.7, 5.1 Hz), 5.01 (d, 1H, J = 8.7 Hz).
【0042】
参考例3 N−(tert−ブトキシ)カルボニル−L−バリンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(参考化合物3)
Boc−L−ロイシンの代わりにBoc−L−バリンを用いて参考例1と同様の操作を行い、無色結晶の参考化合物3を得た。
mp 125.7-127.4 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.99 (d, 6H, J = 6.9 Hz), 1.4 (s, 9H), 2.15 (m, 1H), 2.81 (s, 4H), 4.22 (dd, 1H, J = 8.1, 6.6 Hz), 7.58 (d, 1H, J= 8.4 Hz).
【0043】
参考例4 (2S)−2−((tert−ブトキシ)カルボニルアミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物4)
参考化合物1(20g,61mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(120mL)に溶解し、氷冷条件下で(S)−(−)−α−アミノブチロラクトン臭化水素酸塩(17g,91mmol)とトリエチルアミン(18g,180mmol)を加えた。この溶液を室温で18時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、この溶液を1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサンで結晶化し、無色結晶の参考化合物4(19g,99%)を得た。
mp 92.5-93.3 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.85 (d, 3H, J = 6.3 Hz), 0.88 (d, 3H, J = 6.6 Hz), 1.28-1.50 (m, 2H), 1.38 (s, 9H), 1.61 (m, 1H), 2.14 (m, 1H), 2.39 (m, 1H), 3.96 (m, 1H), 4.20 (m, 1H), 4.34 (m, 1H), 4.60 (m, 1H), 6.88 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 8.30 (d, 1H, J = 8.4 Hz).
【0044】
参考例5 (2S)−2−((tert−ブトキシ)カルボニルアミノ)−3−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物5)
参考化合物1の代わりに参考化合物2を用いて参考例4と同様の操作を行い、白色粉末の参考化合物5を得た。
mp 156.4-159.2 ℃. 1H-NMR (300 MHz, CDCl3)δ:0.90 (t, 3H, J = 7.5 Hz), 0.95 (d, 3H, J = 6.6 Hz), 1.15 (m, 1H), 1.43 (S, 9H), 1.50 (m, 1H), 1.88 (m, 1H), 2.21 (m, 1H), 2.73 (m, 1H),4.01 (m, 1H), 4.26 (m, 1H), 4.46 (td, 1H, J = 9.0, 1.2 Hz),
4.54 (m, 1H), 5.11 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 6.87 (m, 1H).
【0045】
参考例6 (2S)−2−((tert−ブトキシ)カルボニルアミノ)−3−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ブタナミド(参考化合物6)
参考化合物1の代わりに参考化合物3を用いて参考例4と同様の操作を行い、無色結晶の参考化合物6を得た。
mp 113.9-114.9 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.84 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 0.87 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 1.38 (s, 9H), 1.93 (m, 1H), 2.17 (m, 1H), 2.39 (m, 1H), 3.78 (dd, 1H, J = 8.9, 7.2 Hz), 4.21 (m, 1H), 4.40 (m, 1H), 4.60 (m, 1H), 6.68 (d, 1H, J = 8.9 Hz), 8.37 (d, 1H, J = 7.8 Hz).
【0046】
参考例7 (2S)−4−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物7)
参考化合物4を(3.4g,11mmol)を酢酸エチル(100mL)に溶解し、氷冷条件下で4N塩酸/酢酸エチル溶液(8.0mL)を加えた。この溶液を室温で18時間攪拌した後(オイルダウンが確認された。)、溶媒を減圧で除去した。これに酢酸エチルを加え、再度、溶媒を減圧で除去した(2回繰り返した。)。残渣を酢酸エチルで懸濁させ、これにフェニルイソチオシアナート(1.5g,11mmol)とトリエチルアミン(3.3g,32mmol)を加えた。この液を室温で3時間攪拌した。反応液を1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサンで結晶化し、さらにヘキサンで洗浄を行い、無色結晶の参考化合物7(1.8g,48%)を得た。
mp 77.7-78.8 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.92 (d, 3H, J = 6.3 Hz), 0.93 (d, 3H, J = 6.6 Hz), 1.55-1.70 (m, 3H), 2.20 (m, 1H), 2.40 (m, 1H), 4.22 (m, 1H), 4.36 (m, 1H), 4.62 (m, 1H), 4.96 (m, 1H), 7.10 (m, 1H), 7.29-7.34 (m, 2H), 7.51-7.54 (m, 2H), 7.78 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 8.64 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 9.70 (s, 1H).
【0047】
参考例8 (2S)−3−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物8)
参考化合物4の代わりに参考化合物5を用いて参考例7と同様の操作を行い、白色固体の参考化合物8を得た。
mp 71.9-72.7 ℃. 1H-NMR (300 MHz, CDCl3)δ:0.91 (t, 3H, J = 7.4 Hz), 0.96 (d, 3H, J = 6.7 Hz), 1.10-1.22 (m, 1H), 1.48-1.59 (m, 1H), 1.94-2.02 (m, 1H), 2.18-2.33 (m, 1H), 2.63-2.76 (m, 1H), 4.20-4.29 (m, 1H), 4.44 (t, 1H, J = 9.0 Hz), 4.59 (ddd, 1H, J = 7.2, 8.9, 11.3 Hz), 4.92 (t, 1H, J = 7.5 Hz), 6.77 (brs, 1H), 6.98 (brs, 1H), 7.26-7.44 (m, 5H), 8.17 (brs, 1H).
【0048】
参考例9 (2S)−3−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ブタナミド(参考化合物9)
参考化合物4の代わりに参考化合物6を用いて参考例7と同様の操作を行い、無色結晶の参考化合物9を得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3)δ:0.97 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 1.00 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 1.75 (brs, 1H), 2.15-2.33 (m, 2H), 2.63-2.72 (m, 1H), 4.45 (t, 1H, J = 9.0 Hz), 4.61 (ddd, 1H, J = 11.4, 8.8, 7.3 Hz), 4.89 (t, 1H, J = 7.4 Hz), 6.75 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.01 (d, 1H, J = 6.7 Hz), 7.21-7.50 (m, 5H), 8.17 (brs, 1H).
【0049】
参考例10 (2S)−2−(((ベンジルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物10)
フェニルイソチオシアナートの代わりにベンジルイソチオシアナートを用いて参考例7と同様の操作を行い、無色オイル状の参考化合物10を得た。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.92 (d, 3H, J = 6.0 Hz), 0.93 (d, 3H, J = 6.0 Hz), 1.56-1.72 (m, 3H), 2.18 (m, 1H), 2.41 (m, 1H), 4.22 (m, 1H), 4.36 (m, 1H), 4.63 (m, 1H), 5.00 (m, 1H), 7.49-7.98 (m, 8H), 8.60 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 9.75 (s, 1H).
【0050】
参考例11 (2S)−2−((((4−フルオロフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物11)
フェニルイソチオシアナートの代わりに4−フルオロフェニルイソチオシアナートを用いて参考例7と同様の操作を行い、微黄色結晶の参考化合物11を得た。
mp 47.5-48.4 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.92 (d, 3H, J = 6.3 Hz), 0.93 (d, 3H, J = 6.3 Hz), 1.55-1.72 (m, 3H), 2.18 (m, 1H), 2.39 (m, 1H), 4.21 (m, 1H), 4.35 (m, 1H), 4.60 (m, 1H), 4.95 (m, 1H), 7.12-7.18 (m, 2H), 7.49-7.55 (m, 2H), 7.78 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 8.62 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 9.65 (s, 1H).
【0051】
参考例12 (2S)−2−((((4−メトキシフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物12)
フェニルイソチオシアナートの代わりに4−メトキシフェニルイソチオシアナートを用いて参考例7と同様の操作を行い、微黄色結晶の参考化合物12を得た。
mp 44.5-46.1 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.92 (d, 6H, J = 6.6 Hz), 1.54-1.67 (m, 3H), 2.18 (m, 1H), 2.39 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 4.20 (m, 1H), 4.33 (m, 1H), 4.58 (m, 1H), 4.96 (m, 1H), 6.84-6.91 (m, 2H), 7.32-7.35 (m, 2H), 7.54 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 8.59 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 9.50 (s, 1H).
【0052】
参考例13 (2S)−2−((((3−シアノフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物13)
フェニルイソチオシアナートの代わりに3−シアノフェニルイソチオシアナートを用いて参考例7と同様の操作を行い、白色固体の参考化合物13を得た。
mp 72.0-73.2 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.92 (d, 3H, J = 6.1 Hz), 0.92 (d, 3H, J = 6.1 Hz), 1.56-1.72 (m, 3H), 2.11-2.25 (m, 1H), 2.36-2.44 (m, 1H), 4.17-4.26 (m, 1H), 4.35 (dt, 1H, J = 8.8, 1.7 Hz), 4.57-4.66 (m, 1H), 4.93 (dd, 1H, J = 14.2, 7.2 Hz), 7.49-7.53 (m, 2H), 7.71-7.77 (m, 1H), 8.10 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 8.17 (brs, 1H), 8.64 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 9.91 (brs, 1H).
【0053】
参考例14 (2S)−2−((((4−シアノフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物14)
フェニルイソチオシアナートの代わりに4−シアノフェニルイソチオシアナートを用いて参考例7と同様の操作を行い、白色固体の参考化合物14を得た。
mp 71.9-73.4 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.90 (d, 3H, J = 6.1 Hz), 0.91 (d, 3H, J = 6.1 Hz), 1.56-1.69 (m, 3H), 2.14-2.25 (m, 1H), 2.36-2.44 (m, 1H), 4.17-4.25 (m, 1H), 4.35 (dt, 1H, J = 8.0, 1.7Hz), 4.56-4.65 (m, 1H), 4.92 (dd, 1H, J = 14.5, 7.5 Hz), 7.73 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 7.86 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 8.18 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 8.66 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 10.08 (brs, 1H).
【0054】
参考例15 (2S)−4−メチル−2−((((2−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物15)
フェニルイソチオシアナートの代わりに2−メチルフェニルイソチオシアナートを用いて参考例7と同様の操作を行い、微黄色結晶の参考化合物15を得た。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.92 (d, 6H, J = 6.3 Hz), 1.54-1.71 (m, 3H), 2.18 (s, 3H), 2.20 (m, 1H), 2.42 (m, 1H), 4.22 (m, 2H), 4.36 (m, 2H), 7.14-7.40 (m, 4H), 7.55 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 8.58 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 9.21 (s, 1H).
【0055】
参考例16 (2S)−4−メチル−2−((((3−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物16)
フェニルイソチオシアナートの代わりに3−メチルフェニルイソチオシアナートを用いて参考例7と同様の操作を行い、白色固体の参考化合物16を得た。
mp 59.1-62.2 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.86 (d, 3H, J = 6.3 Hz), 0.91 (d, 3H, J = 6.3 Hz), 1.51-1.72 (m, 2H), 2.10-2.25 (m, 1H), 2.27 (s, 3H), 2.33-2.44 (m, 1H), 4.15-4.25 (m, 1H), 4.30-4.38 (m, 1H), 4.54-4.65 (m, 2H), 4.92-4.99 (m, 1H), 6.91 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.18 (t, 1H, J = 7.8 Hz), 7.30 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 7.31 (s, 1H), 7.72 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 8.61 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 9.62 (s, 1H).
【0056】
参考例17 (2S)−4−メチル−2−((((4−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)ペンタナミド(参考化合物17)
フェニルイソチオシアナートの代わりに4−メチルフェニルイソチオシアナートを用いて参考例7と同様の操作を行い、無色結晶の参考化合物17を得た。
mp 107.9-111.2 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.89 (d, 3H, J = 6.5 Hz), 0.90 (d, 3H, J = 6.5 Hz), 1.40-1.51 (m, 2H), 1.52-1.70 (m, 1H), 2.09-2.27 (m, 1H), 2.20 (s, 3H), 2.32-2.43 (m, 1H), 4.16-4.29 (m, 2H), 4.34 (dd, 1H, J = 8.8, 7.5 Hz), 4.55-4.64 (m, 1H), 6.27 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 7.01 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.24 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 8.44 (s, 1H), 8.57 (d, 1H, J = 8.2 Hz).
【0057】
実施例1 (2S)−4−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物1)
参考化合物7(1.7g,4.9mmol)をジクロロメタン(200mL)で溶解し、−78℃で1M水素化ジイソブチルアルミニウム/トルエン溶液(17mL,17mmol)を加えた。この液を−70℃以下で3時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(4.0mL)を加え、室温で30分間攪拌した。これに無水硫酸マグネシウムと酢酸エチルを加え、無機物をセライトでろ別した。このろ液を減圧下で濃縮後、残渣をHPLC(カラム;YMC−Pack ODS−A 250×20mmI.D.,溶離液;アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸=30:70:0.1)を用いて精製した。主画分を集め、酢酸エチルで抽出した。この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサンで結晶化し、無色結晶の化合物1(0.46g,27%)を得た。
mp 62.0-63.8 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.91 (d, 6H, J = 6.0 Hz), 1.49-1.91 (m, 4H), 2.14 (m, 1H), 3.64-4.00 (m, 3H), 4.91 (m, 1H), 5.00/5.11 (d/t, 1H, J = 4.5/4.7 Hz), 6.16/6.34 (d/d, 1H, J = 4.8/4.8 Hz), 7.10 (m, 1H), 7.29-7.34 (m, 2H), 7.49-7.53 (m, 2H), 7.72/7.78 (d/d, 1H, J = 8.4/8.7 Hz), 8.26/7.87 (d/d, 1H, J = 6.3/7.5 Hz), 9.69 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.85. MALDI-TOF MS [M+Na]Calcd 358.174, Found 358.169. [α]D25 +23.6° (c = 0.211).
【0058】
実施例2 (2S)−3−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物2)
参考化合物7の代わりに参考化合物8を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物2を得た。
mp 51.3-52.9 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.81-0.87 (m, 6H), 1.03 (m, 1H), 1.48 (m, 1H), 1.68-1.86 (m, 2H), 2.11 (m, 1H), 3.48/3.86 (m/m, 1H), 3.91-3.96 (m, 2H), 4.88 (m, 1H), 4.99/5.10 (d/t, 1H, J = 4.5/4.5 Hz), 6.13/6.27 (d/d, 1H, J = 4.5/4.2 Hz), 7.07 (m, 1H), 7.27-7.32 (m, 2H), 7.49-7.52 (m, 2H), 7.70/7.71 (d/d, 1H, J = 8.4/8.1 Hz), 7.85/8.21 (d/d, 1H, J = 7.8/6.6 Hz), 9.76 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.77. MALDI-TOF MS [M+Na]Calcd 374.151, Found 374.185. [α]D25
+33.6° (c = 0.208).
【0059】
実施例3 (2S)−3−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ブタナミド(化合物3)
参考化合物7の代わりに参考化合物9を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物3を得た。
mp 50.9-51.9 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.86-0.92 (m, 6H), 1.80 (m, 1H), 2.03-2.26 (m, 2H), 3.69/3.89 (m/m, 1H), 3.93-3.97 (m, 2H), 4.92 (m, 1H), 5.02/5.13 (d/t, 1H, J = 4.5/4.7 Hz), 6.16/6.31 (d/d, 1H, J = 4.5/4.8 Hz), 7.10 (m, 1H), 7.29-7.34 (m, 2H), 7.52-7.55 (m, 2H), 7.71 (m, 1H), 8.24/7.92 (d/d, 1H, J = 6.6/7.5 Hz), 9.82 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.83. MALDI-TOF MS [M+Na]Calcd 360.136, Found 360.137. [α]D25 +39.8° (c = 0.201).
【0060】
実施例4 (2S)−2−(((ベンジルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物4)
参考化合物7の代わりに参考化合物10を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物4を得た。
mp 62.2-64.4 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.84-0.89 (m, 6H), 1.44-1.82 (m, 4H), 2.14 (m, 1H), 3.68/4.03 (m/m, 2H), 3.85-3.97 (m, 2H), 4.66 (bs, 1H), 4.85 (m, 1H), 4.99/5.11 (d/t, 1H, J = 4.5/4.4 Hz), 6.12/6.34 (d/bs, 1H, J = 4.8 Hz), 7.22-7.36 (m, 5H), 7.58 (m, 1H), 7.68/8.13 (bs, 1H), 7.96 (bs, 1H), major:minor= 1.0:0.80. MALDI-TOF MS [M+Na] Calcd 388.167, Found 388.162. [α]D25+18.9° (c = 0.211).
【0061】
実施例5 (2S)−2−((((4−フルオロフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物5)
参考化合物7の代わりに参考化合物11を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物5を得た。
mp 77.2-78.3 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.90 (d, 6H, J = 6.3 Hz), 1.48-1.91 (m, 4H), 2.14 (m, 1H), 3.69/3.95 (m/m, 1H), 3.86-3.91 (m, 2H), 4.93 (m, 1H), 5.00/5.12 (d/t, 1H, J = 5.1/4.5 Hz), 6.15/6.34 (d/d, 1H, J = 4.8/3.9 Hz), 7.12-7.18 (m, 2H), 7.46-7.52 (m, 2H), 7.73/7.77 (d/d, 1H, J = 8.1/7.8 Hz), 7.84/8.25 (d/d, 1H, J = 7.8/7.2 Hz), 9.64 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.85. MALDI-TOF MS [M+Na]Calcd 392.142, Found 392.141. [α]D25 +20.1° (c = 0.199).
【0062】
実施例6 (2S)−2−((((4−メトキシフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物6)
参考化合物7の代わりに参考化合物12を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物6を得た。
mp 67.9-68.8 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.88-0.91 (m, 6H), 1.47-1.87 (m, 4H), 2.14 (m, 1H), 3.69/3.94 (m/m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.86-3.90 (m, 2H), 4.89 (m, 1H), 4.99/5.11 (d/t, 1H, J = 4.8/4.4 Hz), 6.15/6.35 (d/d, 1H, J = 4.8/4.2 Hz), 6.88-6.91 (m, 2H), 7.28-7.33 (m, 2H), 7.47/7.53 (d/d, 1H, J = 8.1/6.9 Hz), 8.22/7.81 (d/d, 1H, J = 6.6/7.8 Hz), 9.49 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.78. MALDI-TOF MS [M+Na]Calcd 404.162, Found 404.166. [α]D25 +19.9° (c = 0.200).
【0063】
実施例7 (2S)−2−((((3−シアノフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物7)
参考化合物7の代わりに参考化合物13を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物7を得た。
mp 54.1-55.1 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.90-0.92 (m, 6H), 1.45-1.90 (m, 4H), 2.15 (m, 1H), 3.69/3.96 (m/m, 1H), 3.86-3.91 (m, 2H), 4.93 (m, 1H), 5.01/5.12 (d/t, 1H, J = 4.8/4.5 Hz), 6.16/6.34 (d/d, 1H, J = 4.8/4.5 Hz), 7.48-7.54 (m, 2H), 7.75 (m, 1H), 8.06-8.18 (m, 2H), 8.30/7.92 (d/d, 1H, J = 6.9/7.5 Hz), 9.93 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.75. MALDI-TOF MS [M+Na]Calcd 399.147, Found 399.167. [α]D25 +23.8° (c = 0.210).
【0064】
実施例8 (2S)−2−((((4−シアノフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−4−メチル−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物8)
参考化合物7の代わりに参考化合物14を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物8を得た。
mp 80.0-82.9 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.89-0.92 (m, 6H), 1.50-1.90 (m, 4H), 2.14 (m, 1H), 3.69/3.96 (m/m, 1H), 3.86-3.91 (m, 2H), 4.93 (m, 1H), 5.01/5.12 (d/t, 1H, J = 5.1/4.5 Hz), 6.16/6.33 (d/d, 1H, J = 4.5/4.2 Hz), 7.73-7.76 (m, 2H), 7.84-7.88 (m, 2H), 8.18 (m, 1H), 8.31/7.95 (d/d, 1H, J = 6.6/7.8 Hz), 10.10 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.75. MALDI-TOF MS [M+Na]Calcd 399.147, Found 399.150. [α]D25 +51.2° (c = 0.195).
【0065】
実施例9 (2S)−4−メチル−2−((((2−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物9)
参考化合物7の代わりに参考化合物15を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物9を得た。
mp 57.9-58.9 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.88-0.91 (m, 6H), 1.48-1.86 (m, 4H), 2.16 (m, 1H), 2.17 (s, 3H), 3.69/3.94 (m/m, 1H), 3.86-3.90 (m, 2H), 4.91 (m, 1H), 4.98/5.11 (d/t, 1H, J = 4.5/4.5 Hz), 6.15/6.36 (d/d, 1H, J = 4.8/3.9 Hz), 7.12-7.31 (m, 4H), 7.46/7.52 (d/d, 1H, J = 8.4/9.9 Hz), 7.78/8.19 (d/d, 1H, J = 7.2/6.6 Hz), 9.20 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.89. MALDI-TOF MS [M+Na] Calcd 388.167, Found 388.176. [α]D25 +9.8° (c = 0.203).
【0066】
実施例10 (2S)−4−メチル−2−((((3−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物10)
参考化合物7の代わりに参考化合物16を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物10を得た。
mp 61.4-61.9 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.91 (d, 6H, J = 6.3 Hz), 1.47-1.88 (m, 4H), 2.12 (m, 1H), 2.28 (s, 3H), 3.69/3.95 (m/m, 1H), 3.86-3.91 (m, 2H), 4.92 (m, 1H), 5.00/5.11 (d/t, 1H, J = 4.8/4.5 Hz), 6.15/6.34 (d/d, 1H, J = 4.8/4.5 Hz), 6.92 (m, 1H), 7.17-7.30 (m, 3H), 7.68/7.74 (d/d, 1H, J = 8.4/7.8 Hz), 8.24/7.84 (d/d, 1H, J = 6.6/7.5 Hz), 9.63 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.87. MALDI-TOF MS [M+Na] Calcd 388.167, Found 388.175. [α]D25 +4.8° (c = 0.208).
【0067】
実施例11 (2S)−4−メチル−2−((((4−メチルフェニル)アミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド(化合物11)
参考化合物7の代わりに参考化合物17を用いて実施例1と同様の操作を行い、無色結晶の化合物11を得た。
mp 87.3-88.7 ℃. 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ:0.89 (d, 6H, J = 6.6 Hz), 1.36-1.85 (m, 4H), 2.14 (m, 1H), 2.21 (s, 3H), 3.68/3.94 (m/m, 1H), 3.85-3.90 (m, 2H), 4.28 (m, 1H), 4.98/5.10 (d/t, 1H, J = 4.8/4.7 Hz), 6.14/6.33 (d/d, 1H, J = 4.5/3.6 Hz), 6.24 (m, 1H), 7.01-7.03 (m, 2H), 7.23-7.26 (m, 2H), 8.19/7.84 (d/d, 1H, J = 7.2/7.8 Hz), 8.46 (s, 1H), major:minor = 1.0:0.46. MALDI-TOF MS [M+Na]Calcd 388.167, Found 388.165. [α]D25 +23.9° (c = 0.209).
【0068】
試験例1 μ−カルパインおよびm−カルパイン阻害活性の測定
μ−カルパインおよびm−カルパインの阻害活性は文献[Anal.Biochem.
vol.208,387−392(1993)]に記載された方法に準じて測定した。すなわち、0.5mg/mLカゼイン、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)、20mMジチオスレイトール、0.03酵素単位μ−カルパイン(ヒト赤血球由来、Cosmo Bio社製)またはm−カルパイン(ブタ腎臓由来、Cosmo Bio社製)を含む反応液200μL、種々の濃度の被験薬を含むジメチルスルホキシド溶液2.5μLおよび20mM塩化カルシウム水溶液50μLを96穴プレートに添加した。30℃、60分間反応させた後、反応液100μLを別の96穴プレートに移し、精製水50μLと50%クマシーブリリアントブルー溶液100μLを加えて室温で15分間放置した後、595nmで吸光度を測定した。被験薬を含まず同様に処理した後測定したものをコントロール値、20mM塩化カルシウム水溶液の代わりに1mM EDTAを添加したものをブランク値とし、以下の式により阻害率を計算し、50%阻害に必要な量(IC50)を求めた。
阻害率(%)={1−(測定値−ブランク値)/(コントロール値−ブランク値)}×100
【0069】
試験結果1
その結果を表2に示した。
【0070】
【表2】

【0071】
その結果、本発明化合物には、優れたカルパイン阻害活性が認められた。
【0072】
試験例2 ラット水晶体培養における水晶体白濁防止作用
SD系ラット(5週齢)から得た水晶体を3群に分け、以下のように培養した。
(1)ノーマル群は実験期間中を通じ基本培養液[10%ウシ胎仔血清(FBS、GIBCO社製)を含む無血清イーグル最小必須培地(MEM、GIBCO社製)]で培養した。
(2)コントロール群は基本培養液で培養した。
(3)薬物群は基本培養液にエタノールで溶解した化合物1を添加した培養液(培養液中の化合物1の濃度100μM、エタノールの濃度0.5%;薬物添加培養液)で培養した。
コントロール群と薬物群には培養2時間後にカルシウムイオノフォア(A23187、Calbiochem-Novabiochem社製)のエタノール溶液(A23187 1mgをエタノール955μLに溶解)をA23187の濃度が10μMになるように培養液に加えた。24時間後、薬物群は薬物添加培養液、コントロール群は基本培養液に交換した。4日間培養後、実体顕微鏡下で観察を行い、水晶体の混濁度(ピクセル)をコンピュータを用いた画像解析装置(NIH image 1.62)により測定した。
【0073】
試験結果2
その結果を図1に示した。ノーマル群の水晶体は透明であった。コントロール群の水晶体は中央部が白く混濁した。化合物1を添加した群(薬物群)はその混濁を有意に抑制した。
以上の結果は、本発明の化合物1が水晶体白濁防止に効果があることを示すものである。
【0074】
試験例3 房水移行性試験
日本白色ウサギ(体重約2kg、福崎養兎組合より購入)の両眼に後述の製剤例4の懸濁液剤を50μLずつ点眼した。点眼0.25、0.5、1および3時間後にペントバルビタールで屠殺し、房水を採取した。カラムスイッチングシステムHPLCを用いて房水中の化合物1の濃度を測定した。
【0075】
試験結果3
その結果を図2に示した。房水中の化合物1の濃度は、点眼0.5時間後で最大(Cmax)となり、その濃度は2903.6nMであった。点眼後0〜3時間における化合物1の房水移行量の薬物濃度−時間曲線下面積(AUC)は、4786.2nM・hであった。
【0076】
試験例4 ラット網膜虚血障害に対する効果
雄性SD系ラット(体重:150〜200g,日本チャールズリバーより購入)を使用した。麻酔は、虚血の15分前に50mg/mLケタミン注射液と20mg/mLキシラジン注射液の等量混合液をラットの大腿部筋肉内に1.0mL/kg体重投与した。虚血はスギタ式クリップミニタイプ(No.98)を用いて網膜中心動脈を含む視神経を結紮し、55分間血流遮断を行なった。ノーマル群には、網膜中心動脈の露出のみを行ない、虚血しなかった。虚血再潅流7日後に組織標本を作成した。組織標本を作成するために、過剰量のペントバルビタール溶液を腹腔内投与して屠殺し、左眼球を摘出した。摘出眼球は2%パラホルムアルデヒドおよび2.5%グルタルアルデヒド(0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4)の固定液にて24時間固定した。固定後、パラフィン包埋ブロックを作製し、視神経乳頭中央を通る部位で3μmの厚さで薄切して、ヘマトキシリン−エオジン(HE)染色を施した。光学顕微鏡下で、視神経乳頭中央より1〜2mmにおける網膜断面0.25mm幅あたりの、網膜の神経節細胞(ガングリオン細胞)数を計測した。
コントロール群には、カルボキシセルロースナトリウムを蒸留水に溶かして0.5%の濃度になるように調製した溶液(CMC溶液)を、薬物群には化合物1をCMC溶液に1.0%になるように懸濁させた溶液を化合物1が100mg/kg体重となるよう、それぞれ虚血開始15分前および虚血解除直後に経口投与した。
【0077】
試験結果4
その結果を図3に示した。虚血により、ガングリオン細胞数は正常群の約1/4に減少した(コントロール群)。これに対し、化合物1の投与(薬物群)は、虚血によるガングリオン細胞数の減少を有意に抑制した。
以上の結果は、本発明の化合物1が網膜虚血障害を改善する効果があることを示すものである。
【0078】
試験例5 細胞毒性試験
マウス神経芽細胞腫由来株化細胞(N1E−115細胞)を96穴マイクロプレートに1ウェルあたり10個ずつ播種し、10%FBSを含有するダルベッコ改変イーグル最小必須培地(DMEM、GIBCO社製)100μL中で、37℃、5%COの条件下で一晩培養した。培養液を全量除き、種々濃度の被験薬溶液(化合物1を99.5%エタノールに溶解してDMEMでエタノールの最終濃度が1%になるように調製した。)100μLと交換し、24時間培養した。培養上清および細胞を別々に回収し、細胞は超音波破砕して可溶性画分を調整し、それぞれに含まれる乳酸脱水素酵素(LDH)活性をLDH cytotoxicity detection kit(Takara社製、MK401)にて測定し、下記の式によりLDH漏出率を求め、障害を受けた細胞の割合とした。
LDH漏出率(%)={培養上清中LDH活性/(培養上清中LDH活性+細胞内LDH活性)}×100
各被験薬濃度のLDH漏出率からSAS前臨床パッケージ(Ver.6.12)のLD50/ED50probit法によりLD50を求めた。
【0079】
試験結果5
その結果を表3に示した。
【0080】
【表3】

【0081】
表3のLDH漏出率から求めた化合物1のLD50は、2.191±0.079mMであった。
【0082】
製剤例1 錠剤
化合物10 5g
デンプン 12g
乳糖 27.2g
ステアリン酸マグネシウム 0.4g
化合物10、乳糖およびデンプンを加えてよく混和し、湿性錠剤調製法に準じて打錠用顆粒とする。ステアリン酸マグネシウムを加えて打錠し、錠剤400錠とする。錠剤は、必要に応じて、腸溶性コーティング剤(メタアクリル酸コポリマー)でコーティングする。
【0083】
製剤例2 注射剤
化合物5 100mg
塩化ナトリウム 900mg
1N水酸化ナトリウム 適量
注射用蒸留水 全量 100mL
以上の成分を常法により無菌的に混和して注射剤とする。
【0084】
製剤例3 点眼剤
化合物1 100mg
ホウ酸 700mg
ホウ砂 適量
塩化ナトリウム 500mg
エデト酸ナトリウム 0.05mg
塩化ベンザルコニウム 0.0005mg
滅菌精製水 全量 100mL
以上の成分を常法により無菌的に混和して点眼剤とする。
【0085】
製剤例4 点眼剤
化合物1 500mg
ポリソルベート80 100mg
リン酸二水素ナトリウム二水和物 100mg
塩化ベンザルコニウム 5mg
塩化ナトリウム 900mg
水酸化ナトリウム 適量
pH 7.0
滅菌精製水 全量 100mL
以上の成分を常法により無菌的に混和して懸濁点眼剤とした。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、優れたカルパイン阻害活性を有しているため、カルパインが関与する種々の疾患、例えば虚血性疾患、免疫疾患、アルツハイマー病、骨粗鬆症、脳組織障害による疾患、白内障、緑内障、網脈絡膜疾患、光凝固による眼球後眼部合併症、血管新生を伴う疾患などの予防および治療薬として有用である。
【0087】
以上、本発明の具体的な態様のいくつかを詳細に説明したが、当業者であれば示された特定の態様には、本発明の新規な教示と利点から実質的に逸脱しない範囲で色々な修正と変更をなし得ることは可能であるので、そのような修正および変更も、全て後記の特許請求の範囲で定義される本発明の精神と範囲内に含まれるものである。
【0088】
本出願は、日本で出願された特願2002−072762号を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物。
【請求項2】
が炭素数3または4の低級アルキル基である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
がイソプロピル、イソブチルおよびsec−ブチルから選択される基である請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
がイソブチルであり、Rが水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基および低級アルコキシ基から選択される基である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
(2S)−4−メチル−2−(((フェニルアミノ)チオキソメチル)アミノ)−N−((3S)−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−3−フラニル)ペンタナミド。
【請求項6】
一般式(I)
【化2】

[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物を含有する医薬。
【請求項7】
カルパイン阻害剤である請求項6記載の医薬。
【請求項8】
カルパインが関与する疾患の予防または治療剤である請求項6記載の医薬。
【請求項9】
一般式(I)
【化3】

[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物および製薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項10】
カルパイン阻害剤である請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
カルパインが関与する疾患を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳動物に有効量の一般式(I)
【化4】

[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物を投与することからなる方法。
【請求項12】
カルパイン阻害剤としての一般式(I)
【化5】

[式中、Rは低級アルキル基を、Rは水素、ハロゲン、シアノ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を、nは0または1を示す。]で表される化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−189424(P2010−189424A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99186(P2010−99186)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2003−576421(P2003−576421)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】