説明

環状ポリオルガノシロキサンシラザンおよびその製造方法

【課題】十分な反応性を有するシロキサンオリゴマーであって、反応残渣が生じないシリル化剤として有用な新規な環状ポリオルガノシロキサンシラザンおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1):
【化1】


(式中、R1〜R4は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、mは1≦m≦100の整数、nは1≦n≦100の整数、m+nは3≦m+n≦200の整数である。(SiR1R2O)単位と(SiR3R4NH)単位とはランダムに結合していてもよい。)
で示される環状ポリオルガノシロキサンシラザン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ポリオルガノシロキサンシラザンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリルアミン類、およびシリルアミノ基を含むシラザン化合物は、シリル化能を有するシリル化剤である。この特性は、シランカップリング剤、ガラス繊維の処理、合成樹脂塗料、接着剤、無機質の充填材、研磨剤などとして応用されている。また、アルコール、カルボン酸、アミン、メルカプタン等の活性水素を持つ有機化合物と容易に反応し、その化合物の安定性の向上、精製の簡便化、合成反応時における収率の向上をもたらす。
【0003】
シリルアミン類の反応では、副生成物が塩基性のアミンであり、とりわけシラザン化合物は揮発性のアンモニアであることから、クロロシランのようなシリル化剤で問題になる塩酸の発生やこれらを中和して副生する塩酸塩処理を必要とする問題が無い。
【0004】
従来よく用いられている化合物として、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンなど1個のケイ素原子に有機基(非加水分解性の1価炭化水素基、以下同様)が3個結合した1官能性のジシラザンおよび、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルシクロテトラシラザンなどの1個のケイ素原子に有機基が2個結合した2官能性のシクロシラザン、メチルシルセスキアザンなどの1個のケイ素原子に有機基が1個結合した3官能性のシルセスキアザンが知られている(非特許文献1および2)。これらは、いずれもケイ素原子に有機基が結合した1個のシラザン単量体によりシリル化されるものが大半であった。
【0005】
一方オリゴマー等を、長鎖ポリオルガノシロキサンによりシリル化処理を行う場合、ポリオルガノシロキサンの両末端官能基として、ハロゲン原子、シラノール、アルコキシ基が用いられることが知られている(非特許文献1および2)。しかし、これらはシラザンの反応性に比較すると、シリル化剤として十分な反応性を満たすものではなく、さらに、除去工程が煩雑な脱離基由来の反応残渣を生じてしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「シリコーンハンドブック」、伊藤邦雄編、1990年8月31日、日刊工業新聞社発行
【非特許文献2】「PROTECTIVEGROUPS in ORGANICSYNTHESIS THIRD EDHITION」 Theodoraw W. Gree, Petere G. M. Wuts, 1990年, John Wiley & Sons. Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、十分な反応性を有するシロキサンオリゴマーであって、反応残渣が生じないシリル化剤として有用な新規な環状ポリオルガノシロキサンシラザンおよびその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、シロキサン単位とシラザン単位とからなる新規な環状ポリオルガノシロキサンシラザンを開発するに至り、これが上記の課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、第一に、
下記一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1〜R4は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、mは1≦m≦100の整数、nは1≦n≦100の整数、m+nは3≦m+n≦200の整数である。(SiR1R2O)単位と(SiR3R4NH)単位とはランダムに結合していてもよい。)
で示される環状ポリオルガノシロキサンシラザンを提供する。
【0012】
また、本発明は、該環状ポリオルガノシロキサンシラザンの製造方法として、
下記一般式(2):
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R1およびR2は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、pは3≦p≦100の整数である。)
で示される環状ポリオルガノシロキサンと、下記一般式(3):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R3およびR4は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるジアルキルジハロシランとを、強酸触媒の存在下に一般式(2)で表される環状オルガノポリシロキサンの開環を伴う反応をさせて分子鎖両末端ハロゲン原子封鎖の直鎖状ポリオルガノシロキサンを合成し、
得られた反応混合物に溶媒を加え希釈し該直鎖状ポリオルガノシロキサンを溶解させた後、得られた反応液に過剰のアンモニアを通じることにより請求項1における一般式(1)で表される環状ポリオルガノシロキサンシラザンを生成させる、
ことを含む、環状ポリオルガノシロキサンシラザンの製造方法を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、該環状ポリオルガノシロキサンシラザンの別の製造方法として、
下記一般式(2):
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R1およびR2は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、pは3≦p≦100の整数である。)
で示される環状ポリオルガノシロキサンと、下記一般式(3):
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、R3およびR4は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるジアルキルジハロシランを、ルイス塩基触媒の存在下に一般式(2)で表される環状オルガノポリシロキサンの開環を伴う反応をさせて分子鎖両末端ハロゲン原子封鎖の直鎖状ポリオルガノシロキサンを合成し、
得られた反応混合物に溶媒を加え希釈し該直鎖状ポリオルガノシロキサンを溶解させた後、得られた反応液に過剰のアンモニアを通じることにより請求項1における一般式(1)で表される環状ポリオルガノシロキサンシラザンを生成させる、
ことを含む、環状ポリオルガノシロキサンシラザンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の環状ポリオルガノシロキサンシラザンは、シロキサンオリゴマーにシラザン結合を導入することにより、応性性の高いシリル化剤として使用することができる。また、反応残渣の問題が生じない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<環状ポリオルガノシロキサンシラザン>
本発明の環状オルガノポリシロキサンシラザンは、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、R1〜R4は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、mは1≦m≦100の整数、nは1≦n≦100の整数、m+nは3≦m+n≦200の整数である。(SiR1R2O)単位と(SiR3R4NH)単位とはランダムに結合していてもよい。)
【0026】
ここでR1、R2、R3およびR4は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3,-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基等の炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ビニル基である。
【0027】
また、mは、1≦m≦100の整数であり、好ましくは1≦m≦50、より好ましくは1≦m≦30、更に好ましくは1≦m≦20、最も好ましくは1≦m≦10の整数であり、nは、1≦n≦100の整数であり、好ましくは01≦n≦50、より好ましくは1≦n≦30、更に好ましくは1≦n≦20、最も好ましくは1≦n≦10の整数であり、また、m+nは3≦m+n≦200の整数であり、好ましくは3≦m+n≦100、より好ましくは3≦m+n≦60、更に好ましくは3≦m+n≦40、最も好ましくは3≦m+n≦20の整数である。
【0028】
<製造方法>
本発明の二つの製造方法は、(A)開環・合成反応の工程と、(B)シラザン化反応の工程を有する。
【0029】
第一の製造方法では、
(A)下記一般式(2):
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、R1およびR2は前記の通りであり、pは3≦p≦100の整数である。)
で示される環状ポリオルガノシロキサンと、下記一般式(3):
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、R3およびR4は前記のとおりであり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるジアルキルジハロシランとを、強酸触媒の存在下に一般式(2)で表される環状オルガノポリシロキサンの開環を伴う反応をさせて分子鎖両末端ハロゲン原子封鎖の直鎖状ポリオルガノシロキサンを合成し、
(B)該分子鎖両末端ハロゲン原子封鎖の直鎖状ポリオルガノシロキサンを含む、得られた反応混合物に溶媒を加え希釈し該直鎖状ポリオルガノシロキサンを溶解させた後、得られた反応液に過剰のアンモニアを通じることによりシラザン化を進める。
【0034】
通常、この後、副生した塩をろ過により取り除いた後、加熱減圧下で溶媒を取り除くなどの操作により精製する。
【0035】
本発明の第二の製造方法は、上記工程(A)において、強酸触媒の代わりにルイス塩基を使用する以外は詳細な点を除いて基本的に第一の製造方法と同じである。
【0036】
−(A)開環・合成反応−
一般式(2)及び(3)において、R1、R2、R3およびR4は前述の通りである。
【0037】
pは、3≦p≦100の整数であり、好ましくは3≦p≦50、より好ましくは3≦p≦30、更に好ましくは3≦p≦20、最も好ましくは3≦p≦10の整数である。
【0038】
Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0039】
上記開環を伴う反応において、上記式(2)で示される環状ポリオルガノシロキサンと上記式(3)で示されるジアルキルジハロシランとのモル比により、上記式(1)で示される環状ポリオルガノシロキサンシラザンの重合度、m、nが規定される。
【0040】
開環反応触媒としては、製造方法1では強酸が用いられ、製造方法2ではルイス塩基が用いられる。
【0041】
・触媒:強酸
強酸としては、通常、公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、例えば濃硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、濃硝酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、塩化アルミニウムおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等が例示され、好ましくは濃硫酸である。酸性度が高すぎる酸により、上記式(2)で示される環状ポリオルガノシロキサンを開環すると、ジアルキルジハロシランと反応する前に分子内環化が起り、分子鎖両末端ハロゲン原子封鎖の直鎖状ポリオルガノシロキサンが生成しない。また酸性度が低すぎると上記式(2)で示される環状ポリオルガノシロキサンの開環反応が遅くなる。
【0042】
強酸を使用する場合の添加量は、特に制限されるものではないが上記式(2)で示される環状ポリオルガノシロキサンと上記式(3)で示されるジアルキルジハロシランの質量の0.001〜100質量%、好ましくは0.05〜70質量%程度で添加することができる。
【0043】
上記強酸を使用する開環反応条件としては、例えば室温(即ち、25℃±10℃)において、2時間〜48時間、好ましくは5時間〜24時間程度の反応時間で行うことができる。
【0044】
反応時に発生する塩化水素が系外に放出されぬよう、反応容器を密閉系あるいは加圧容器とすることが望ましい。
【0045】
・触媒:ルイス塩基
ルイス塩基としては、通常、公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、例えばヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、ピリジンN-オキシド、2,6-ジクロロピリジンN-オキシド、4-ジメチルアミノピリジンN-オキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン等が例示される。反応時間および生成物純度の面からは、HMPAが好ましいが、発がん性物質であるので工業的に使用できないことから、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノンが好ましい。
【0046】
ルイス塩基を使用する場合の添加量は、特に制限されるものではないが上記式(2)で示される環状ポリオルガノシロキサンと上記式(3)で示されるジアルキルジハロシランの質量の0.001〜100質量%、好ましくは0.05〜70質量%程度で添加することができる。
【0047】
上記ルイス塩基を使用する開環反応条件としては、例えば室温(即ち、25℃±10℃)において、5時間〜72時間、好ましくは7時間〜48時間程度の反応時間で行うことができる。
【0048】
−(B)シラザン化反応−
シラザン化反応を行う際の希釈溶剤は、通常、公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン等が例示され、好ましくはヘプタンとトルエンである。沸点が低すぎるとアンモニアガスを通過させている間に揮発してしまい、沸点が高すぎると生成した環状シラザンとの分離が困難になってしまう。
【0049】
上記シラザン化反応を行う際の反応条件は、例えば、氷浴(即ち、0℃±10℃)または室温(即ち、25℃±10℃)において、10分〜24時間、好ましくは30分〜12時間、より好ましくは1〜6時間程度アンモニアガスを反応液に通過して反応させる。
【0050】
通常、このシラザン化反応の後に、加熱下(例えば40〜100℃、好ましくは50℃〜80℃)で攪拌して過剰なアンモニアガスを揮発させ、室温まで冷却した後、ろ過により副生塩を取り除く。
【0051】
さらに、通常、上記ろ過工程を行った後、加熱減圧下で溶剤やアンモニウム塩などの中和副生物を取り除く。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
−環状ポリオルガノシロキサンシラザン(1)の合成−
密閉容器(1.5L)に、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(542.03g,2.44mol,1.0当量)、ジメチルジクロロシラン(404.13g,2.69mol,1.1当量)、および濃硫酸(47.31g,0.37mol,5質量%)を加え、窒素雰囲気下、室温で12時間攪拌をおこなった。ついで、こうして得られた粗生成物を5L三口セパラブルフラスコに移し、ヘプタン(2L)に溶解させ、溶液を氷浴により5℃に冷却した後、該溶液に過剰量のアンモニアガスを通じながら8時間反応を行った。反応終了後60℃、反応液の2時間攪拌を行ってアンモニアガスを揮発させた後、反応液を室温まで冷却し、ろ過により副生塩の除去を行った。ついでろ液から加熱減圧下で溶剤やアンモニウム塩などの中和副生物を取り除き、環状ポリオルガノシロキサンシラザン(1)(628.47g)を得た。これの成分についてはGC-MS分析により帰属を行い、次に結果が得られた。
【0053】
下記式(4)の化合物:1.23%、(5)の化合物:37.78%、(6)の化合物:16.41%、(7)の化合物:19.35%、(8)の化合物:10.65%、(9)の化合物:6.83%、(10)の化合物:2.44%、ヘキサメチルシクロトリシロキサン1.98%、オクタメチルシクロテトラシロキサン3.33%が得られた。
【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
(なお、式(6)、(8)および(10)のそれぞれにおいて、化合物を構成するシロキサン単位とシラザン単位とはランダムに存在する。)
【0062】
[実施例2]
−環状ポリオルガノシロキサンシラザン(2)の合成−
1L三口セパラブルフラスコに、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(222.44g,1.0mol,1.0当量)、ジメチルジクロロシラン(135.62g,1.05mol,1.05当量)、およびヘキサメチルリン酸トリアミド(174μL,0.001mol)を加え、窒素雰囲気下、室温で3時間攪拌を行った。次いでこうして得られた粗生成物をトルエン(716g)に溶解させ、溶液を氷浴により5℃に冷却し過剰量のアンモニアガスを通じながら8時間反応を行った。反応終了後60℃、反応溶液を2時間攪拌してアンモニアガスを揮発させた後、室温まで冷却し、ろ過により副生塩の除去を行った。ついでろ液から加熱減圧下で溶剤やアンモニウム塩などの中和副生物を取り除き、環状ポリオルガノシロキサンシラザン(2)を得た。GC-MS分析の結果、下記式(11)で表される化合物250.22g(通算収率84.7%)を得た。
【0063】
【化16】

【0064】
[実施例3]
−環状ポリオルガノシロキサンシラザン(3)の合成−
5L三口セパラブルフラスコに、トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン(777.76g,1.66mol,1.0当量)、ジメチルジクロロシラン(236.59g,1.83mol,1.1当量)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(2.15g,0.017mol,0.01当量)を加え、窒素雰囲気下、室温で12時間攪拌を行った。次いでこうして得られた粗生成物をトルエン(2kg)に溶解させ、溶液を氷浴により5℃に冷却し過剰量のアンモニアガスを通じながら6時間反応を行った。反応終了後60℃、反応溶液を2時間攪拌してアンモニアガスを揮発させた後、室温まで冷却し、ろ過により副生塩の除去を行った。ついでろ液から加熱減圧下で溶剤やアンモニウム塩などの中和副生物を取り除き、環状ポリオルガノシロキサンシラザン(3)を得た。GC-MS分析の結果、下記式(12)で表される化合物799.36g(通算収率89.1%)を得た。
【0065】
【化17】

【0066】
[比較例1]
−環状ポリオルガノシロキサンシラザン(4)の合成−
2L三口セパラブルフラスコに、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(542.03g,2.44mol,1.0当量)、ジメチルジクロロシラン(404.13g,2.69mol,1.1当量)、および濃硫酸(53.06g,0.41mol,5質量%)を加え、得られた混合物に窒素通気下で、室温で12時間攪拌をおこなった。ガスクロマトグラフィーにより反応を追跡したところ、ジメチルジクロロシランが消失しておらず反応の進行が認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
環状ポリオルガノシロキサンシラザンはシリル化剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】


(式中、R1〜R4は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、mは1≦m≦100の整数、nは1≦n≦100の整数、m+nは3≦m+n≦200の整数である。(SiR1R2O)単位と(SiR3R4NH)単位とはランダムに結合していてもよい。)
で示される環状ポリオルガノシロキサンシラザン。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化2】

(式中、R1およびR2は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、pは3≦p≦100の整数である。)
で示される環状ポリオルガノシロキサンと、下記一般式(3):
【化3】

(式中、R3およびR4は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるジアルキルジハロシランとを、強酸触媒の存在下に一般式(2)で表される環状オルガノポリシロキサンの開環を伴う反応をさせて分子鎖両末端ハロゲン原子封鎖の直鎖状ポリオルガノシロキサンを合成し、
得られた反応混合物に溶媒を加え希釈し該直鎖状ポリオルガノシロキサンを溶解させた後、得られた反応液に過剰のアンモニアを通じることにより請求項1における一般式(1)で表される環状ポリオルガノシロキサンシラザンを生成させる、
ことを含む、環状ポリオルガノシロキサンシラザンの製造方法。
【請求項3】
前記の強酸触媒が、濃硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、濃硝酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、塩化アルミニウムおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に係る環状ポリオルガノシロキサンシラザンの製造方法。
【請求項4】
下記一般式(2):
【化4】


(式中、R1およびR2は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、pは3≦p≦100の整数である。)
で示される環状ポリオルガノシロキサンと、下記一般式(3):
【化5】


(式中、R3およびR4は炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるジアルキルジハロシランを、ルイス塩基触媒の存在下に一般式(2)で表される環状オルガノポリシロキサンの開環を伴う反応をさせて分子鎖両末端ハロゲン原子封鎖の直鎖状ポリオルガノシロキサンを合成し、
得られた反応混合物に溶媒を加え希釈し該直鎖状ポリオルガノシロキサンを溶解させた後、得られた反応液に過剰のアンモニアを通じることにより請求項1における一般式(1)で表される環状ポリオルガノシロキサンシラザンを生成させる、
ことを含む、環状ポリオルガノシロキサンシラザンの製造方法。
【請求項5】
ルイス塩基触媒が、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、ピリジンN-オキシド、2,6-ジクロロピリジンN-オキシド、4-ジメチルアミノピリジンN-オキシド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に係る環状ポリオルガノシロキサンシラザンの製造方法。
【請求項6】
環状ポリオルガノシロキサンシラザンを生成させた後、得られた反応混合物から副生した塩をろ過により取り除き、その後加熱減圧下で溶媒を取り除く、請求項2〜5のいずれか1項に係る環状ポリオルガノシロキサンシラザンの製造方法。

【公開番号】特開2011−231047(P2011−231047A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102700(P2010−102700)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】