説明

環状ポリオレフィン樹脂含有組成物、その成形体、および成形方法

【課題】熱履歴品を含んだ環状ポリオレフィン樹脂を用いた場合であっても、剛性が高く、物性にも優れる成形体を安定して製造することのできる環状ポリオレフィン樹脂含有組成物、当該組成物からなる成形体、および成形方法を提供する。
【解決手段】本発明の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物は、環状ポリオレフィン樹脂86質量%以上97質量%以下と、熱可塑性エラストマー樹脂3質量%以上14質量%以下からなる樹脂を、樹脂成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ポリオレフィン樹脂含有組成物、その成形体、および成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状ポリオレフィン樹脂(COP:Cyclic Olefin Polymer、COC:Cyclic Olefin Copolymer)は、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂に比べて、剛性が高く優れた光学特性を有することから、光学部品(レンズ、光ディスク、プリズム等)の原料として広く使用されている。
このような環状ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物は、取り扱い性の観点から射出成形により成形体(製品)とされることが一般的である。一方、環状ポリオレフィン樹脂は高価であり、射出成形の成形過程で生じ、通常廃棄物として処理されているバリや耳などと呼ばれる成形時の非利用部分や、いったん製品として使用された後の廃棄物(以下、併せて「熱履歴品」という。)の再利用が求められている。
環状ポリオレフィン樹脂の熱履歴品を再利用した製品として、PP樹脂60〜20%、環状ポリオレフィン樹脂40〜80%とからなる樹脂組成物100質量部に対して、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂5〜30%と、非イオン性界面活性剤型帯電防止剤0.2〜5%とを含んだポリオレフィン系樹脂シートが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−256397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂シートは剛性が十分ではない。また、樹脂シート成形の際に破断したり、あるいは樹脂シートを熱成形する際に割れが生じるおそれもある。
【0005】
本発明の目的は、環状ポリオレフィン樹脂の熱履歴品を用いた場合であっても、剛性が高く、物性にも優れる成形体を安定して成形することのできる環状ポリオレフィン樹脂含有組成物、当該組成物からなる成形体、および成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような環状ポリオレフィン樹脂含有組成物、当該組成物からなる成形体、および成形方法を提供するものである。
(1)環状ポリオレフィン樹脂86質量%以上97質量%以下と、熱可塑性エラストマー樹脂3質量%以上14質量%以下からなる樹脂を、樹脂成分として含有することを特徴とする環状ポリオレフィン樹脂含有組成物。
(2)上述の(1)に記載の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物において、前記環状ポリオレフィン樹脂は熱履歴品を含むことを特徴とする環状ポリオレフィン樹脂含有組成物。
(3)上述の(1)または(2)に記載の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物において、前記熱可塑性エラストマー樹脂がオレフィン系エラストマー樹脂またはスチレン系エラストマー樹脂であることを特徴とする環状ポリオレフィン樹脂含有組成物。
(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物を原料として用いたことを特徴とする成形体。
(5)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物を原料として用いることを特徴とする成形方法。
(6)上述の(5)に記載の成形方法において、前記成形方法が射出成形あるいは押出成形であることを特徴とする成形方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物は、成形性に優れており、仮に熱履歴品を含む環状ポリオレフィン樹脂を原料として樹脂シート等の成形体を成形しても、成形中に破断等の不良現象を生じることがない。また、前記した熱履歴品を含んだ原料を用いても、得られた成形体の物性は環状ポリオレフィン樹脂のバージン品を用いた場合と比べ遜色ない。
すなわち、本発明は、環状ポリオレフィン樹脂のリサイクル技術として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る成形方法で用いられる押出成形機の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、環状ポリオレフィン樹脂86質量%以上97質量%以下と、熱可塑性エラストマー樹脂3質量%以上14質量%以下からなる樹脂を、樹脂成分として含有する。
【0010】
(環状ポリオレフィン樹脂)
本組成物に用いられる環状ポリオレフィン樹脂とは、主鎖あるいは側鎖に環状脂肪族炭化水素を有するポリオレフィン系樹脂をいう。環状脂肪族炭化水素としては、例えば下記の構造式で表されるものが挙げられる。
【0011】
【化1】

【0012】
環状ポリオレフィン樹脂としては、ガラス転移温度が100℃から160℃までのものが好ましく用いられる。この範囲の環状ポリオレフィン樹脂は、熱可塑性エラストマー樹脂と溶融混合した場合に良好な混練性(または相溶性)を示す。なお、本発明において上記環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度とは、JIS K7121に規定されている測定方法に準拠して測定した中間点ガラス転移温度をいう。
【0013】
また、環状ポリオレフィン系樹脂には、ノルボルネンとエチレンをメタロセン触媒にて共重合したシクロオレフィンコポリマー(COC)タイプとメタセシス開環重合タイプのCOPタイプがあるが、そのどちらを用いてもよい。
環状ポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)およびゼオノア(登録商標)、JSR社製のアートン(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、ポリプラスチックス社製のトパス(登録商標)などが挙げられる。
【0014】
環状オレフィン樹脂はバージン樹脂を用いても構わないが、全部が熱履歴品であってもよく、熱履歴品を一部含んだ樹脂を用いてもよい。この熱履歴品とは、少なくとも一度加熱成形された履歴を有するものであれば特に制限はなく、例えば、光学レンズ、プリズムなどの光学部品自身や、その光学部品を射出成形等で製造する際に発生するスプール部やランナー部の破砕品およびリペレット品などが好ましく利用できる。
【0015】
本発明では、上述した熱可塑性エラストマー樹脂がオレフィン系エラストマー樹脂またはスチレン系エラストマー樹脂であることが好ましい。熱可塑性エラストマー樹脂が上述した所定のエラストマー樹脂であると、環状オレフィン樹脂が熱履歴品を含む場合であっても、本組成物を成形したときに劣化しにくい。ただし、環状オレフィン樹脂と熱可塑性エラストマー樹脂との割合については制限があるが詳細は後述する。
以下、これらのエラストマー樹脂について説明する。
【0016】
(オレフィン系エラストマー樹脂)
オレフィン系エラストマー樹脂とは、結晶化度が50%以下の低結晶性ないし非晶性のオレフィン系重合体である。該オレフィン系重合体は、通常共重合体であるが、本発明においては、共重合体に限られるものではなく、単独重合体も有効に用いることができる。ここで、当該共重合体において、共重合させるモノマー(オレフィン)としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、2−ブテン、シクロブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、1−オクテン、1−デセン、および1−ドデセンなどが挙げられ、また単独重合体としては、例えば、プロピレンのみをモノマーとしてタクチシティの低いポリマー(エラストマー)としたものが挙げられる。
具体的には、EPラバーとして知られるEPM(エチレン−プロピレン−メチレン)やEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−メチレン)のようなエラストマー樹脂が挙げられる。そのほかに、エチレンと炭素数が4から8までのα−オレフィンとを共重合して得られるエラストマー樹脂も挙げられる。
市販品としては、例えば、タフマー(三井化学)、ミラストマー(三井化学)、エンゲージ(デュポンダウエラストマージャパン)、IDEMITSU TPO(出光興産)、サーモラン(三菱化学)、タフプレン(旭化成)、ボンドファースト(住友化学)、セプトン(クラレ)、ダイナロン1320P(JSR)、ミラストマー(三菱化学)、ノーデル(デュポンダウ)および住友TPE(住友化学)などが挙げられる。
【0017】
本発明では、オレフィン系エラストマー樹脂として、プロピレン系エラストマー樹脂とエチレン系エラストマー樹脂を併用することが好ましい。
ここで、プロピレン系エラストマー樹脂とは、上記共重合させるモノマーとして、プロピレンが主要成分(用いるモノマー中、モル数として最も多い成分)となるエラストマーをいい、エチレン系エラストマーとは、上記共重合させるモノマーとしてエチレンが主要成分(用いるモノマー中、モル数として最も多い成分)となるエラストマーをいう。なお、共重合させるモノマーとしてプロピレンとエチレンを同時に含むエラストマーにおいてもエチレンとプロピレンの配合量からいずれかに振り分けることができる。本発明においては、プロピレン由来のポリマー部位が多いエラストマーとエチレン由来のポリマー部位が多いエラストマーの両方を並存させることで、環状オレフィン樹脂と熱可塑性エラストマー樹脂との相溶性や分散性が改善され、樹脂組成物全体の衝撃強度をより確保できる。用いるエラストマーに含まれるプロピレン由来のポリマー部位やエチレン由来のポリマー部位の割合にもよるが、優れた衝撃強度を確保するには、プロピレン系エラストマー樹脂とエチレン系エラストマー樹脂の配合割合を、1:9〜9:1とすることが好ましく、2:3〜3:2であることがより好ましく、1:1であることがさらに好ましい。
【0018】
(スチレン系エラストマー樹脂)
スチレン系エラストマー樹脂としては、スチレン・ブタジエン共重合体エラストマー、スチレン・イソプレン共重合体エラストマー、スチレン・ブタジエン・イソプレン共重合体エラストマー、あるいはこれら共重合体の完全あるいは部分水添してなるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体エラストマー(SEPS)などを使用できる。これらのスチレン系エラストマー樹脂は、水添系にあっては、水添率90質量%以上が好ましく、特に98質量%以上が好ましい。また、スチレン単位含有量は、5〜60質量%が好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。
【0019】
スチレン系エラストマー樹脂の市販品としては、例えば、ダイナロン6200(JSR)、IDEMITSU TPO(出光興産)、クレイトンG1651(シェル化学)、セプトン2104等のセプトンシリーズ(クラレ)、タフテックHシリーズ(旭化成)などが挙げられる。
【0020】
本組成物においては、環状ポリオレフィン樹脂86質量%以上97質量%以下と、熱可塑性エラストマー樹脂3質量%以上14質量%以下からなる樹脂を、樹脂成分として含有する。
ここで、環状ポリオレフィン樹脂の配合割合が86質量%未満であり、熱可塑性エラストマー樹脂が14質量%を超えると、環状ポリオレフィン樹脂の剛性や優れた帯電特性を十分に生かすことができなくなる。また高価な環状ポリオレフィン樹脂(バージン樹脂)に代えて熱履歴品を使用してもコストメリットが小さくなる。一方、環状ポリオレフィン樹脂の配合割合が97質量%を超え、熱可塑性エラストマー樹脂が3質量%未満であると、成形性(加工性)が低下したり、成形品の耐衝撃性が低下するので好ましくない。それ故、環状ポリオレフィン樹脂の好ましい配合割合は93質量%以上95質量%以下であり、熱可塑性エラストマー樹脂の好ましい配合割合は5質量%以上7質量%以下である。
さらに、本組成物においては、樹脂成分として含有するのは実質的に上記した2種の樹脂のみである。これら以外の樹脂成分を含有すると、成形性や成形品の物性に好ましくない影響を及ぼすおそれがある。ただし、樹脂成分以外であれば、本組成物を構成する成分として含有することは差し支えない。また、後述する帯電防止剤等の添加剤を配合する際に、マスターバッチを用いることがあるが、その際に使用されるマトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂等)の混入程度は許される。
【0021】
(帯電防止剤)
本組成物には、帯電防止性能を付与するため、さらに帯電防止剤を配合することが好ましい。帯電防止剤としては、界面活性剤型帯電防止剤が好ましく用いることができる。
界面活性剤型帯電防止剤としては従来公知の化合物を用いることができる。例えば、四級アンモニウム塩、ピリジン誘導体に代表される陽イオン界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキル芳香族スルフォン酸塩、コハク酸スルフォン酸塩、リン酸エステル塩等に代表される陰イオン界面活性剤、多価アルコールの部分脂肪酸エステル及びそのエチレンオキサイド付加物、脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールあるいはアルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物に代表される非イオン界面活性剤、ベタイン形カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体に代表される両性界面活性剤等が挙げられ、これらを単独または併用して用いることができる。
【0022】
非イオン性界面活性剤型帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレングリコール等のアルコール系帯電防止剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテル系帯電防止剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等のエステル系帯電防止剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミン系帯電防止剤、ポリオキシエチレングリセリド等のグリセリン系帯電防止剤、アルキルアルカノールアミド等のアミド系帯電防止剤が挙げられ、ブリードアウト速度が速いという理由からアルコール系帯電防止剤やアミン系帯電防止剤が好ましく、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルアミンがより好ましく、ポリオキシエチレンアルキルアミンが特に好ましい。なお、非イオン性界面活性剤型帯電防止剤は単独で用いられても併用されてもよい。
【0023】
そして、界面活性剤型帯電防止剤の添加量は、多いと得られる成形体(樹脂シート等)の表面がべたつくおそれがあり、少ないと得られる成形体の帯電防止性能が不足するおそれもあるため、本組成物中に組成物全量基準で2質量%以上10質量%以下配合してなることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましい。また、帯電防止剤を配合する際は、樹脂組成物への混練のしやすさを考慮してマスターバッチを用いることが好ましい。特に、ポリエチレンベースのマスターバッチは混練のしやすさより特に好ましい。
ここで、本組成物を用いて樹脂シートを成形する場合、押出温度よりも融点が低い低融点帯電防止剤を用いると、樹脂シートの押出時に帯電防止剤が揮発するため、その揮発分を考慮して帯電防止剤の添加量(仕込み量)を最終成形体(熱成形容器等)における設計添加量よりも多めに処方する必要がある。ただし、揮発した帯電防止剤が工場内で液化して、樹脂シートの品質に悪影響を及ぼすおそれもある。それ故、帯電防止剤としては、押出温度よりも融点の高い、例えば、融点250℃以上の高融点帯電防止剤を用いることも好ましい。
【0024】
本発明においては、必要に応じて着色剤や光遮断剤を添加しても構わない。このような着色剤や光遮断剤は例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミ等の無機物質、シアニンブルー、シアニングリーン、ミロリブルー、スレンブルー、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、弁柄、群青、フタロシアニンブルー等の顔料が挙げられる。これらは直接添加しても構わないが、作業性の観点からマスターバッチ化したものを用いることが好ましい。また、マスターバッチのベース樹脂は低密度ポリエチレン樹脂(LDPE樹脂)やポリプロピレン樹脂(PP樹脂)などが好ましい。
また、必要に応じて酸化防止剤や劣化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤を添加しても構わない。
【0025】
(樹脂シートの成形)
本組成物を用いた成形方法の一例として樹脂シートの成形について説明する。
押出機内で上記した本組成物と必要により帯電防止剤とを溶融混練し、押出機の先端に取付けた金型から大気中へ押し出すことにより樹脂シートを得ることができる。具体的には、押出機先端にTダイを取り付け、そこから押し出された樹脂シートを冷却ドラム(冷却ロール)で成形する成形方法、あるいは、押出機先端にサーキュラー金型を取り付け、そこから押し出された円筒状シートをマンドレルで成形した後、切開してシート状とする成形方法のどちらも適用することができる。
【0026】
具体的には、以下の方法で樹脂シートを好ましく成形することができる。
図1は、本発明の成形方法で用いられる押出成形機(押出機)の一例を示す概略図である。
本実施形態では、スクリュー式押出成形機1の一端に材料を供給するホッパー4が接続され、他端に押出口となるダイス6が吐出管8を介して接続されている。スクリュー3は、一軸、二軸等種々の形態のものが使用できるが、装置が簡便である点で一軸スクリューが好ましい。
また、スクリュー式押出成形機1とダイス6との間には、ギアポンプ5が設置されている。このギアポンプ5は、スクリュー式押出成形機1側に吸込口が、ダイス6側に吐出口が接続されているとともに、吐出管8には吐出圧力を制御するための圧力調整弁9が設けられている。このギアポンプ5により、スクリュー式押出成形機1から押し出される樹脂組成物の押出量を調整できるようになっている。
【0027】
さらに、スクリュー式押出成形機1は、その軸方向において、フィード部1A、中間部1B、および先端部1Cを備え、段階的に温度が調整できるようになっている。
本発明の樹脂シートの製造方法では、樹脂組成物をホッパー4からスクリュー式押出成形機1の供給口2に供給し、ダイス6から押し出すことで製造する際に、スクリュー式押出成形機1のフィード部1Aと先端部1Cとの間(中間部1B)の温度を、フィード部1Aおよび先端部1Cの温度よりも高くなるように制御することが好ましい。なお、フィード部1Aの温度、先端部1Cの温度および中間部1Bの温度は、樹脂組成物の配合比に併せてそれぞれ適宜設定する必要があるが、例えば、フィード部1Aの温度を180℃から220℃まで、先端部1Cの温度を220℃から240℃まで、中間部1Bの温度を250℃から280℃までとすることが好ましい。ここで、フィード部1Aの温度が180℃未満であると、スクリュー溝に樹脂が供給される際に異音等が発生し好ましくない。また、先端部1Cの温度が280℃を超えると、エラストマー樹脂成分に焼け等が生じやすくなり好ましくない。さらに、中間部1Bの温度が本範囲外となると、押出機のトルク増加や吐出量の低下を引き起こしランニングコストのアップとなり好ましくない。
【0028】
このようにスクリュー式押出成形機1の温度条件をその軸方向で部分的、段階的に制御することにより、スクリュー式押出成形機1にて負荷がかかり易い環状ポリオレフィン樹脂や熱可塑性エラストマー樹脂を含む樹脂組成物であっても、効率よく押出成形することが可能となる。環状ポリオレフィン樹脂が熱履歴品であっても同様である。
また、本発明の樹脂シートの製造方法では、スクリュー式押出成形機1とダイス6との間にギアポンプ5を設置し、ダイス6から押し出す前にギアポンプ5で押し出すことが好ましい。これにより、融点差が異なる材料が混合されてなる樹脂組成物であっても、定量的に効率よく押し出すことができる。また、ギアポンプ5で押出量を制御することで、ダイス6からの樹脂シートの押し出し方向を、垂直方向に限らず、水平方向にすることも可能となる。
【0029】
樹脂シートを成形する場合のシート厚みは、300μm以上1400μm以下の範囲が好ましく、500μm以上1,300μm以下の範囲がより好ましい。樹脂シートの厚みが300μm未満の場合は、成形性が悪くなるおそれがあり、成形品の強度が不足するおそれもある。樹脂シートの厚みが1400μmを超えるものは、成形性が悪くなるおそれがある。
以上、本組成物を原料とする押出成形について説明したが、本組成物は、射出成形によっても同様に成形することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例、比較例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、本実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品95質量%と、ポリエチレン系エラストマー樹脂(ダウ製 エンゲージ8200)5質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。また、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果(JIS K7113に準拠、以下の実施例・比較例も同じ)、2,800MPaとPETシート並みの高剛性を示した。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品(容器状成形体)を得た。
得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下と良好であった。
【0031】
〔実施例2〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品95質量%と、ポリプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学製 タフマーA−4085)5質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。また、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、2,800MPaとPETシート並みの高剛性を示した。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得た。
得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下と良好であった。
【0032】
〔実施例3〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品97%と、ポリプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学製 タフマーA−4085)1.5質量%と、ポリエチレン系エラストマー樹脂(ダウ製 エンゲージ8200)1.5質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。また、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、2,900MPaとPETシート並みの高剛性を示した。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得た。
得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下と良好であった。
【0033】
〔実施例4〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品97%と、ポリプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学製 タフマーA−4085)3質量%からなる樹脂組成物を調製した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。また、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、2,800MPaとPETシート並みの高剛性を示した。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得た。
【0034】
〔実施例5〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品95質量%と、スチレン系エラストマー樹脂(SEBS、旭化成製 タフテックH−5061)5質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。また、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、2,800MPaとPETシート並みの高剛性を示した。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得た。
得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下と良好であった。
【0035】
〔実施例6〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品95質量%と、スチレン系エラストマー樹脂(SEPS、クラレ製 セプトン)5質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。また、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、2,800MPaとPETシート並みの高剛性を示した。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得た。
得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下と良好であった。
【0036】
〔実施例7〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)のバージン品95質量%と、ポリエチレン系エラストマー樹脂(ダウ製 エンゲージ8200)5質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。また、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、2,700MPaとPETシート並みの高剛性を示した。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得た。
得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下と良好であった。
【0037】
〔比較例1〕
樹脂成分として、環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品を95質量%と、LDPE樹脂(宇部興産 R−300)5質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。すなわち、樹脂成分として熱可塑性エラストマー樹脂は配合せず、そのかわりにLDPE樹脂を配合した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
ただし、引き取り、スリット、巻き取りの各工程においてシートの破断が頻発した。得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、PETシート並の2,600MPaであった。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得ようとしたが割れが発生した。得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下であった。
【0038】
〔比較例2〕
樹脂成分として、環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品を95質量%と、ランダムPP樹脂(プライムポリマー製 F−724N)5質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。すなわち、樹脂成分として熱可塑性エラストマー樹脂は配合せず、そのかわりにランダムPP樹脂を配合した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
ただし、引き取り、スリット、巻き取りの各工程においてシートの破断が頻発した。得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、PETシート並の2,600MPaであった。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得ようとしたが割れが発生した。得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下であった。
【0039】
〔比較例3〕
樹脂成分として、環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品を35質量%と、エチレン系熱可塑性エラストマー樹脂(カーネル製 KS−240T)15質量%と、ランダムPP樹脂(日本ポリプロ製 BC6C)50質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。すなわち、樹脂成分として環状ポリオレフィン樹脂と熱可塑性エラストマー樹脂の他に、ランダムPP樹脂が配合されている。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、1,200MPaと低かった。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得ようとしたが割れが発生した。得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下であった。
【0040】
〔比較例4〕
樹脂成分として、環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品を50質量%と、エチレン系熱可塑性エラストマー樹脂(カーネル製 KS−240T)15質量%と、ランダムPP樹脂(日本ポリプロ製 BC6C)35質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。すなわち、樹脂成分として環状ポリオレフィン樹脂と熱可塑性エラストマー樹脂の他に、ランダムPP樹脂が配合されている。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取りの各工程において特に支障はなかった。得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、1,600MPaと低かった。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品を得ようとしたが割れが発生した。得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下であった。
【0041】
〔比較例5〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品80質量%と、ポリエチレン系エラストマー樹脂(ダウ製 エンゲージ8200)20質量%からなる樹脂100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物に調整した。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
引き取り、スリット、巻き取り工程は特に問題はなかったがポリエチレン系エラストマー樹脂の配合割合が多いために押出加工条件の設定が煩雑であった。また、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、1,900MPaと低かった。
上記で得られた樹脂シートをミノス製の単発熱成形機にて口径80mmφ、深さ30mmの金型を用いて真空圧空成形により成形品(容器状成形体)を得た。
得られた成形品の切片を採取しオネストメーターにて帯電防止性能を確認したが1秒以下であった。
【0042】
〔比較例6〕
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製COP樹脂 ゼオネックス480R)の熱履歴品100質量部に対し、界面活性剤型帯電防止剤としてエレコンPP720A(大日精化製)2質量部(組成物全量基準で2質量%)を配合して樹脂組成物を調製した。すなわち、樹脂成分として環状ポリオレフィン樹脂だけを用い、熱可塑性エラストマー樹脂や他の樹脂(PE樹脂やランダムPP樹脂等)を全く配合しない樹脂組成物とした。
次いでこの樹脂組成物を65mmφ、L/D=32の単軸押出機を用い、コートハンガータイプのTダイ(幅900mm)、押出温度230℃、冷却ロール温度80℃、引き取り速度2.0m/分、耳スリットを50mmとして、0.8mm厚みで幅700mmの樹脂シートを得た。
ただし、引き取り、スリット、巻き取りの各工程においてシートの破断が頻発した。なお、得られた樹脂シートの引張弾性率を測定した結果、3,000MPaであった。
【0043】
〔評価結果のまとめ〕
環状ポリオレフィン樹脂と、エチレン系樹脂と、ポリオレフィン系エラストマーとを配合してなる実施例1〜7のような樹脂組成物は、それぞれ樹脂シートさらには成形品(容器状成形体)を問題なく成形することができ、帯電防止剤を含有する場合、成形品の帯電半減期はそれぞれ1秒以下であった。このことから、また、樹脂組成物として熱履歴品を含んでいても成形性や帯電半減期には何ら問題はないことがわかる。
したがって、本発明によれば、従来再利用が困難であった環状ポリオレフィン樹脂を好適に再利用することができる。
これに対し、比較例1、2のように熱可塑性エラストマー樹脂を含まない樹脂組成物では、その成形性が極めて劣り、樹脂シートを成形することすら困難であった。また、環状ポリオレフィン樹脂と熱可塑性エラストマー樹脂を配合していても、比較例3、4のように、さらに他の樹脂(ランダムPP樹脂)を含んでいると、樹脂シートの成形までは問題なくとも、その後の真空圧空成形が困難となり、やはり実用性に劣ることがわかる。
さらにまた、樹脂成分として、環状ポリオレフィン樹脂と熱可塑性エラストマー樹脂のみを含む組成物であっても、比較例5のように熱可塑性エラストマー樹脂の割合が多すぎると、弾性率(剛性)が極端に低下したり押出加工条件が不安定となって不都合である。比較例6は、逆に熱可塑性エラストマー樹脂を全く配合しなかった例であるが、やはり成形性が非常に悪化することがわかる。
【符号の説明】
【0044】
1 スクリュー式押出成形機
1A フィード部
1B 中間部
1C 先端部
2 供給口
3 スクリュー
4 ホッパー
5 ギアポンプ
6 ダイス
8 吐出管
9 圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ポリオレフィン樹脂86質量%以上97質量%以下と、熱可塑性エラストマー樹脂3質量%以上14質量%以下からなる樹脂を、樹脂成分として含有する
ことを特徴とする環状ポリオレフィン樹脂含有組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物において、
前記環状ポリオレフィン樹脂は熱履歴品を含む
ことを特徴とする環状ポリオレフィン樹脂含有組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物において、
前記熱可塑性エラストマー樹脂がオレフィン系エラストマー樹脂またはスチレン系エラストマー樹脂である
ことを特徴とする環状ポリオレフィン樹脂含有組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物を原料として用いた
ことを特徴とする成形体。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環状ポリオレフィン樹脂含有組成物を原料として用いる
ことを特徴とする成形方法。
【請求項6】
請求項5に記載の成形方法において、
前記成形方法が射出成形あるいは押出成形である
ことを特徴とする成形方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−64044(P2013−64044A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202437(P2011−202437)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】