説明

環状体の把持方法および装置

【課題】環状体Gの径が変化した場合でも、把持体26を交換することなく環状体Gを安定して把持する。
【解決手段】環状体Gを外側から把持する各把持体26に、該把持体26の周方向片側に隣接配置された把持体26の内周27まで延びる弾性変形容易な橋渡しプレート56を取り付けたので、環状体Gの径が変化して各把持体26の内周27の曲率半径と環状体Gの半径との差が大きくなっても、環状体Gに、把持体26の周方向両端部または周方向中央部に加え、隣接する2つの把持体26間を橋渡している橋渡しプレート56が弾性変形することである程度の範囲で接触し、この結果、環状体Gと把持体26、橋渡しプレート56とが広い範囲で接触して環状体Gの把持が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤ等の環状体を外側から把持する環状体の把持方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の環状体の把持装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−351572号公報
【0004】
このものは、環状のリング体と、リング体の半径方向内側に設けられ、周方向に離れて配置されるとともに、半径方向内側に移動したとき、リング体の中心部に配置された環状体を外側から把持する、内周が弧状を呈する複数の剛体からなる把持体と、前記リング体と各把持体との間にそれぞれ設けられ、前記把持体を半径方向に移動させることができる複数の移動手段とを備え、前記各把持体の周方向両端部に矩形の凸部および凹部をリング体の軸方向に交互に形成する一方、いずれかの把持体の周方向一端部に形成されている凸部および凹部に、該把持体の周方向一側に隣接配置された把持体の周方向他端部に形成されている凹部および凸部をそれぞれ嵌合させ、また、前記いずれかの把持体の周方向他端部に形成されている凸部および凹部に、該把持体の周方向他側に隣接配置された把持体の周方向一端部に形成されている凹部および凸部をそれぞれ嵌合させるようにしている。この結果、環状体の径がある程度変化した場合でも、前記凸部、凹部同士の嵌合量が変化するだけで、隣接する把持体間に隙間が生じることなく、この結果、把持体全体は周方向にほぼ連続して延在することになって環状体の把持を安定的に行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の把持装置にあっては、環状体の径の変化により把持体の内周の曲率半径と環状体の半径との差が大きくなると、各把持体は環状体に狭い範囲でしか接触することができず、例えば、把持体の内周が小さな曲率半径である場合に大きな半径の環状体を把持しようとすると、各把持体の周方向両端部でしか接触できず、あるいは、把持体の内周が大きな曲率半径である場合に小さな半径の環状体を把持しようとすると、各把持体の周方向中央部でしか接触できず、この結果、各把持体の内周の大部分は環状体の外周に接触することはない、即ち、両者の間に広い範囲で隙間が発生する。
【0006】
これにより、把持体による環状体の把持が不安定になり、場合によっては環状体が把持体から脱落するおそれがある。このような脱落を防止するには把持体によって環状体を高い接圧下で把持すればよいが、このようにすると、環状体に悪影響を及ぼす余計な変形が生じてしまうという課題があった。このような課題を解決するため、環状体の径が変更する毎に、把持体を内周が環状体に適合するものに交換することも考えられるが、このようにすると、交換作業中は作業が中断するので作業能率が低下し、また、交換作業も面倒であるという課題があった。
【0007】
この発明は、環状体の径が変化した場合でも、把持体を交換することなく環状体を安定して把持することができる環状体の把持方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、第1に、環状のリング体と、リング体の半径方向内側に設けられ、周方向に離れて配置されるとともに、内周が弧状を呈する複数の把持体と、各把持体に取り付けられ、該把持体の周方向片側に隣接配置された把持体の内周まで延びる弾性変形容易な橋渡しプレートと、前記リング体と各把持体との間にそれぞれ設けられ、前記把持体を半径方向に移動させることができる複数の移動手段とを備えた把持装置の中心部に環状体を配置する工程と、前記移動手段により各把持体を半径方向内側に移動させ、該把持体により前記環状体を外側から複数箇所において把持する工程とを備えた環状体の把持方法により、達成することができる。
【0009】
第2に、環状のリング体と、リング体の半径方向内側に設けられ、周方向に離れて配置されるとともに、半径方向内側に移動したとき、リング体の中心部に配置された環状体を外側から把持する、内周が弧状を呈する複数の把持体と、前記リング体と各把持体との間にそれぞれ設けられ、前記把持体を半径方向に移動させることができる複数の移動手段とを備えた環状体の把持装置において、各把持体に、該把持体の周方向片側に隣接配置された把持体の内周まで延びる弾性変形容易な橋渡しプレートを取り付けた環状体の把持装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、環状体を外側から把持する各把持体に、該把持体の周方向片側に隣接配置された把持体の内周まで延びる弾性変形容易な橋渡しプレートを取り付けたので、環状体の径が変化して各把持体の内周の曲率半径と環状体の半径との差が大きくなっても、環状体に、把持体の周方向両端部または周方向中央部に加え、隣接する2つの把持体間を橋渡している橋渡しプレートが弾性変形することである程度の範囲において接触するようになり、この結果、把持時における環状体と把持体、橋渡しプレートとが広い範囲で接触するようになり、把持体を交換することなく、環状体を安定して把持することができる。
【0011】
また、請求項3に記載のように構成すれば、橋渡しプレートは幅方向の曲げ剛性が低いため、環状体がタイヤであるとき、該タイヤのクラウンアールに沿って橋渡しプレートが容易に変形してタイヤを広い範囲で把持することができ、環状体の把持をさらに安定とすることができる。さらに、請求項4に記載のように構成すれば、繰り返し曲げに対して高い耐性を有しているため長寿命となり、また、容易に弾性変形することもできる。また、請求項5に記載のように構成すれば、橋渡しプレートの先端側の幅方向位置を確実に規定することができ、環状体の把持を安定とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態1を示す一部破断正面図である。
【図2】把持装置の一部破断側面図である。
【図3】把持体近傍の側面断面図である。
【図4】図3のI−I矢視断面図である。
【図5】橋渡しプレートの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11は、例えば小さな径から大きな径までの大きく径が異なる環状体としてのグリーンタイヤGを成形することができるタイヤ成形機であり、このタイヤ成形機11は床面12上に設置された駆動部13と、該駆動部13に支持され、駆動部13から駆動力が付与されることで回転する水平な主軸14と、該主軸14に設けられ、外側に成形済みの断面略円弧状に膨出した前記グリーンタイヤGが支持されている拡縮可能な成形ドラム16とを備えている。
【0014】
19は前記主軸14の直下の床面12上に敷設された一対のガイドレールであり、これらのガイドレール19には基台20の下面に取り付けられたスライドベアリング21が摺動可能に係合している。そして、この基台20は図示していないシリンダ等の駆動機構から駆動力が付与されると、ガイドレール19にガイドされながら主軸14に沿って移動(往復動)する。22は前記基台20上に取り付けられた把持装置であり、この把持装置22は前記環状体としてのグリーンタイヤGを半径方向外側から複数箇所において把持することができる。そして、前記把持装置22がグリーンタイヤGを外側から把持しているとき、基台20が駆動機構により移動すると、該グリーンタイヤGは把持装置22に把持されながら軸方向に搬送される。
【0015】
図2、3において、前記把持装置22は下端が前記基台20に固定され前記主軸14と同軸である環状のリング体25を有し、このリング体25の半径方向内側には周方向に延びるとともに略矩形板状を呈する複数、ここでは10個の剛体からなる把持体26が設けられ、これらの把持体26は同一円上において周方向に等距離離れて配置されている。ここで、前述のようにグリーンタイヤGは小径から大径まで種々のものがあるが、前記把持体26の内周27は、前記範囲内のいずれかのグリーンタイヤGの半径と同一径、ここでは比較的小径のグリーンタイヤGの半径と同一曲率半径の円弧面から構成されている。なお、把持体26により把持されるグリーンタイヤGの径が大きく変更した場合には、把持体26を内周27が該グリーンタイヤGの外周に適合するものに交換することもできる。
【0016】
そして、これら把持体26は半径方向内側に移動したとき、該把持体26の内周27が前記リング体25の中心部に配置されたグリーンタイヤGの外周に接触することで、グリーンタイヤGを外側から把持することができる。30は前記リング体25と各把持体26との間にそれぞれ設けられた複数(把持体26と同数)の移動手段であり、これら移動手段30は、リング体25に対する半径方向線Lの周方向両側で前記リング体25に支持された一対(全体では10対)の回動シャフト31を有し、これら対をなす回動シャフト31は周方向に等距離離れて配置されるとともに、前記リング体25に回動可能に支持されている。
【0017】
前記回動シャフト31には複数(回動シャフト31と同数対)の外側リンクの半径方向外端部がそれぞれ固定されており、この結果、これら外側リンク34はリング体25に該回動シャフト31を揺動中心として揺動可能に支持されることになる。そして、これら外側リンク34は半径方向外側から半径方向内側に向かうに従い互いに離隔するよう、即ち半径方向内側に向かって拡開するよう延在している。35は各外側リンク34の半径方向内側に設けられた複数(外側リンク34と同数対)の内側リンクであり、各内側リンク35の半径方向外端部と前記外側リンク34の半径方向内端部とは回動可能に連結されており、この結果、内側リンク35は半径方向外端部を揺動中心として揺動することができる。
【0018】
ここで、これら内側リンク35の半径方向内端部にはピン38を介して前記把持体26が回動可能に連結されており、この結果、これら内側リンク35は半径方向外側から半径方向内側に向かうに従い互いに接近するよう、即ち半径方向内側に向かって閉じるよう延在している。ここで、各移動手段30の対をなす外側リンク34は互いに等長であり、さらに、各移動手段30の対をなす内側リンク35は互いに等長であって、前記外側リンク34の長さと等しい。この結果、各移動手段30の外側リンク34および内側リンク35は全体として菱形を呈し、パンタグラフ機構を構成することになる。
【0019】
前述した対をなす外側、内側リンク34、35は全体として、前記リング体25と各把持体26との間にそれぞれ設けられ、前記把持体26を半径方向に移動させることができる複数の前記移動手段30を構成する。なお、この発明においては、移動手段を、リング体に取り付けられた複数のガイドと、各ガイドに半径方向に移動可能に支持され、半径方向内端部に把持体が連結されたスライダから構成してもよく、あるいは、半径方向外端部がリング体に、半径方向内端部に把持体がそれぞれ連結された揺動可能な複数の揺動リンクから構成してもよく、さらに、複数個のX字形を呈するリンク機構を組み合わせたレージトング機構等から構成してもよい。
【0020】
前記回動シャフト31の軸方向中央部にはそれぞれ互いに噛み合う同一ピッチ円の外歯車40が固定され、この結果、前記対をなす外側リンク34は外歯車40により逆方向に同一角度だけ揺動することができる。前記リング体25の頂上部には流体シリンダ43が支持されており、この流体シリンダ43のピストンロッド44の先端には伝達アーム46の半径方向外端部が連結され、該伝達アーム46の半径方向内端部は伝達アーム46に近接する一方の回動シャフト31に固定されている。また、全ての一方の回動シャフト31には外周に外歯が形成された駆動プーリ47が固定され、また、これら駆動プーリ47の近傍のリング体25にはガイドプーリ48およびガイドプーリ49がそれぞれ回転可能に支持されている。50は無端のタイミングベルトであり、このタイミングベルト50は各移動手段30に対応するガイドプーリ48、駆動プーリ47、ガイドプーリ49に前記順序で次々と掛け回され、駆動プーリ47に広角度で噛み合っている。
【0021】
この結果、前記流体シリンダ43が作動して伝達アーム46に連結されている一方の回動シャフト31が回動すると、この回動シャフト31の回動はタイミングベルト50を通じて残りの一方の回動シャフト31に伝達され、全ての一方の回動シャフト31を同一方向に同一角度だけ回動させる。このとき、前述した一方の回動シャフト31の回動は外歯車40を介して他方の回動シャフト31に伝達され、一方の回動シャフト31および該一方の回動シャフト31に固定された外側リンク34と、他方の回動シャフト31および該他方の回動シャフト31に固定された外側リンク34とを逆方向に同一角度だけ同期して回動(揺動)させる。このとき、対をなす外側、内側リンク34、35はリング体25の半径方向線Lに対して線対称の関係を保持しながら揺動し、これにより、各移動手段30の外側、内側リンク34、35が形作る菱形が半径方向に伸縮し、把持体26は半径方向線Lに沿って長い距離であっても平行移動することできる。
【0022】
前述した回動シャフト31、外歯車40、流体シリンダ43、伝達アーム46、駆動プーリ47、タイミングベルト50は全体として、各移動手段30の外側リンク34に駆動力を付与し、対をなす外側リンク34および内側リンク35をリング体25の半径方向線Lに対して線対称の関係を保持しながら揺動させることで、前記把持体26を半径方向に移動させる駆動手段52を構成する。なお、この発明においては、前記駆動手段を、複数対の回動シャフトと、対をなす回動シャフトにそれぞれ固定され互いに噛み合う外歯車と、リング体に回動可能に支持され、全ての一方の回動シャフトに取り付けられた伝達歯車に噛み合う1個の大径歯車と、該大径歯車を回動させる駆動モータとから構成してもよく、あるいは、前述した移動手段のスライダ、揺動リンクを移動、揺動させるシリンダおよびリンク等から構成してもよい。
【0023】
図3、4において、前述した各把持体26の内周27でその幅方向中央部には周方向に連続して延びる収納溝55が形成され、各収納溝55内には長さが把持体26の周方向長よりも長く、その幅が収納溝55の幅と同一である薄板状の橋渡しプレート56の基端側がそれぞれ収納されている。そして、該収納溝55に収納されることで把持体26と重なり合うことになった橋渡しプレート56の部位(前記基端側)の幅方向両端は把持体26(収納溝55の側壁)に溶接、ろう付け等により固定されている。ここで、前記橋渡しプレート56の把持体26に固定されている基端側の内表面(半径方向内側面)は前記把持体26の内周27と同一面上に位置しており、この結果、前記収納溝55の内端開口は橋渡しプレート56の基端側により閉止されている。
【0024】
また、前記橋渡しプレート56の肉厚は収納溝55の深さの 1/2以下であり、この結果、前記収納溝55の底面(半径方向外側面)と橋渡しプレート56の基端側との間には、高さが橋渡しプレート56の肉厚以上で把持体26の周方向に延びる円弧状の空隙58が形成される。また、前記橋渡しプレート56は前述のように収納溝55の周方向長より長いので、その先端側(自由端側)は把持体26aの周方向片側端、ここでは周方向一側端から周方向片側(周方向一側)に向かって突出しているが、このように把持体26aから突出した橋渡しプレート56の先端側は、該把持体26aより周方向片側(周方向一側)に隣接配置されている把持体26bの内周27まで延びて、少なくとも一部が常に把持体26bの収納溝55(空隙58)内に収納されている。このとき、該空隙58に収納されている部位(先端側の一部)の橋渡しプレート56は隣接配置されている把持体26bに重なり合うことになる。
【0025】
このようなことから把持体26が半径方向外側限まで移動しても、いずれの隣接する把持体26間も橋渡しプレート56により常に橋渡しされており、この結果、隣接する把持体26間に間隙が生じることはなく、把持体26によるグリーンタイヤGの把持が確実となる。そして、前述のように各把持体26の内周27に形成された収納溝55の開口部に、厚さが前記収納溝55の深さの 1/2以下である橋渡しプレート56の基端側を固定して該橋渡しプレート56の基端側と収納溝55の底面との間に空隙58を形成するとともに、いずれかの把持体26aから突出した橋渡しプレート56の先端側の一部を、該把持体26aより周方向片側に隣接配置されている把持体26bの空隙58に収納するようにすれば、各把持体26の内周27(橋渡しプレート56の内表面を含む)を凹凸の殆ど無い高精度の円弧面とすることができる。
【0026】
なお、この発明においては、橋渡しプレート56を把持体26の周方向他側(周方向片側)に向かって突出させ、該橋渡しプレート56の先端側を周方向他側に隣接配置されている把持体26の収納溝55に収納するようにしてもよい。そして、各移動手段30の作動により把持体26が半径方向に移動すると、隣接する把持体26を橋渡している部位の橋渡しプレート56は変形するとともに、その先端側は空隙58内への侵入量が増減しながら変形する。このように把持体26の半径方向への往復動により橋渡しプレート56には繰り返し変形が付与されるが、この際の変形が塑性変形であると、橋渡しプレート56は短期間で破損してしまう。このため、前述の変形は橋渡しプレート56の弾性限度内での変形でなければならず、しかも、このような変形に要する力は小さな値、即ち容易に変形できるものでなければならない。
【0027】
この結果、前記橋渡しプレート56としては弾性変形容易なものを用いる必要があり、具体的には、繰り返し曲げに対して高耐性でありながら比較的高剛性であるステンレススチール、ばね鋼等から構成することが好ましく、このようにすれば、長寿命でありながら容易に弾性変形させることができる。この結果、把持体26に把持されるグリーンタイヤGの径が、例えば図3に実線で示す小径のものから仮想線で示す大径のものへと大きく変化して、把持体26の内周27の曲率半径と把持されるグリーンタイヤGの半径との差が大きくなった場合でも、グリーンタイヤGの外周には各把持体26の周方向両端部に加え、隣接する2つの把持体26間を橋渡している橋渡しプレート56も弾性変形することで、把持体26の周方向一側端近傍のある程度の範囲が接触するようになり、この結果、把持時におけるグリーンタイヤGと把持体26、橋渡しプレート56とが広い範囲で接触するようになり、把持体26の交換を行うことなく、グリーンタイヤGを安定して把持することができる。
【0028】
なお、把持体26の内周27が比較的大径のグリーンタイヤGの半径と同一曲率半径の円弧面から構成されている場合で、把持されるグリーンタイヤGの径が大径のものから小径のものへと大きく変化した場合には、グリーンタイヤGの外周に各把持体26の周方向中央部に加え、隣接する2つの把持体26間を橋渡している橋渡しプレート56も弾性変形することで、把持体26の周方向一側端近傍のある程度の範囲が接触するようになり、同様にグリーンタイヤGの把持が安定する。また、前記橋渡しプレート56は把持体26の周方向片側(一側)から突出した先端側を、把持体26に固定されている基端側より若干幅狭としてもよい。このようにすれば、橋渡しプレート56の長手方向(周方向)曲げ剛性が小さくなってグリーンタイヤGの外周に接触したとき、該グリーンタイヤGに容易に追従変形することができる。
【0029】
また、前記実施形態においては、橋渡しプレート56を平坦な薄肉、例えば肉厚が 0.1〜 0.6mm程度の帯板から構成しているが、把持体26から突出している先端側は直線状としたり、あるいは、把持するグリーンタイヤGの最小半径と同等以上の曲率半径である円弧状に屈曲させてもよい。また、前記橋渡しプレート56の少なくとも把持体26から突出している先端側を、図5に示すように、断面がリング体25の軸方向に波状、例えば正弦波状を呈するよう屈曲させてもよい。このようにすれば、波状を呈している部位の橋渡しプレート56は、幅方向の曲げ剛性が低いため、グリーンタイヤGの把持時に、該グリーンタイヤGのクラウンアールに沿って容易に変形してグリーンタイヤGを広い範囲で把持することができ、この結果、グリーンタイヤGが幅広のものであっても該グリーンタイヤGを安定して把持することができる。なお、グリーンタイヤGがさらに幅広のものであるときには、前記基台20に把持装置22を軸方向に離して複数台設置することで対処してもよい。
【0030】
さらに、前述の実施形態においては、把持体26の収納溝55の底面と橋渡しプレート56の基端側との間に、隣接する橋渡しプレート56の先端側が収納される空隙58を設けるようにしたが、この発明においては、橋渡しプレート56の基端側を収納溝55の底面に接触させた状態で把持体26に取付け、該橋渡しプレート56の基端側より半径方向内側に、隣接する橋渡しプレート56の先端側が収納される空隙を形成するようにしてもよい。このように各把持体26aの内周27に周方向に連続して延びる収納溝55を形成して、橋渡しプレート56の把持体26aに重なり合う部位(基端側)を前記収納溝55に収納固定する一方、周方向片側に隣接配置された把持体26bに重なり合う部位(先端側の一部)の橋渡しプレート56を該隣接配置された把持体26bの収納溝55に収納するようにすれば、橋渡しプレート56の先端側の幅方向位置を確実に規定することができ、グリーンタイヤGの把持を安定とすることができる。なお、この発明においては、前記収納溝55の深さを橋渡しプレート56の肉厚と同一として該収納溝55を橋渡しプレート56の基端側により塞ぐとともに、橋渡しプレート56の基端側内表面(半径方向内側面)に、隣接する橋渡しプレート56の先端側を接触させるようにしてもよい。
【0031】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
今、成形ドラム16の外側に成形済みであるいずれかの径のグリーンタイヤGが支持され、一方、把持装置22は成形ドラム16から離隔した待機位置で待機しているとする。このとき、駆動手段52を構成する流体シリンダ43のピストンロッド44は突出しているため、いずれの外側、内側リンク34、35も互いに噛み合う外歯車40により、図2に仮想線で示すように揺動している。この結果、外側、内側リンク34、35により形作られた菱形は半径方向に潰れるよう変形し、各移動手段30の半径方向内端部に連結されている把持体26は半径方向外側限まで移動して停止している。次に、駆動機構により前記把持装置22を把持体26がグリーンタイヤGを半径方向外側から囲む位置するまで移動させ、該グリーンタイヤGをリング体25の中心部に配置する。次に、流体シリンダ43のピストンロッド44を引っ込めると、伝達アーム46に連結されている一方の回動シャフト31が回動するが、この回動シャフト31の回動はタイミングベルト50を通じて残り全ての一方の回動シャフト31に伝達される。
【0032】
このような全ての一方の回動シャフト31の回動は、互いに噛み合っている外歯車40を介して他方の回動シャフト31に伝達され、これにより、対をなす回動シャフト31は逆方向に同一角度だけ回動する。このようにして各移動手段30の外側リンク34に駆動手段52から駆動力(揺動力)が付与されると、該外側リンク34は回動シャフト31を中心として閉じるよう同一角度だけ揺動し、また、内側リンク35も前記外側リンク34からの揺動力によりピン38を中心として閉じるよう同一角度だけ揺動する。この結果、各移動手段30の外側、内側リンク34、35が形作る菱形が半径方向に伸長し、各把持体26はグリーンタイヤGの外周にほぼ平行な状態を保持しながら半径方向線Lに沿って半径方向内側に、長い距離であっても問題なく同期して平行移動する。
【0033】
このとき、各把持体26aに基端側が取り付けられている橋渡しプレート56の先端側は、該把持体26aの周方向片側(一側)に配置されている把持体26bまで延びてその一部が該把持体26bの収納溝55(空隙58)内に収納されている(侵入している)が、前述のような把持体26の半径方向内側への移動により隣接する把持体26同士が互いに接近するため、前述した橋渡しプレート56の収納溝55(空隙58)への侵入量が徐々に増加する。そして、全ての把持体26の内周27がグリーンタイヤGの外周に当接すると、該グリーンタイヤGは把持装置22(全ての把持体26)により複数箇所において外側から把持される。このとき、グリーンタイヤGの外周には各把持体26の周方向両端部が接触するが、このような周方向両端部に加え、隣接する2つの把持体26間を橋渡している橋渡しプレート56も弾性変形することで、把持体26の周方向一側端近傍のある程度の範囲も接触するようになる。
【0034】
このようにグリーンタイヤGを外側から把持する各把持体26に、該把持体26の周方向片側に隣接配置された把持体26の内周27まで延びる弾性変形容易な橋渡しプレート56を取り付けたので、グリーンタイヤGの径が変化して各把持体26の内周27の曲率半径とグリーンタイヤGの半径との差が大きくなっても、グリーンタイヤGに把持体26の周方向両端部または周方向中央部に加え、隣接する2つの把持体26間を橋渡している橋渡しプレート56も弾性変形することである程度の範囲において接触するようになり、この結果、把持時におけるグリーンタイヤGと把持体26、橋渡しプレート56とが広い範囲で接触するようになり、把持体26の交換を行うことなく、グリーンタイヤGを安定して把持することができる。その後、前記基台20およびグリーンタイヤGを把持している把持装置22を駆動機構によりガイドレール19に沿って移動させ、前記グリーンタイヤGを成形ドラム16から取り出す。
【0035】
なお、前述の実施形態においては、グリーンタイヤGが環状体であったが、この発明においては、カーカス層からなる円筒状のカーカスバンド、軸方向両端部がビード回りに折り返されたカーカス層等からなる円筒状のグリーンケース、ベルト層、トレッドが巻き付けられた円筒状のベルト・トレッドバンド、加硫済みタイヤあるいは円環状のビード等を環状体としてもよい。また、環状体としてのタイヤは乗用車用タイヤ、トラック・バス等に用いられる重荷重用タイヤ、大型建設車両に用いられるオフロードタイヤであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、タイヤ等の環状体を外側から把持する産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
22…把持装置 25…リング体
26…把持体 27…内周
30…移動手段 55…収納溝
56…橋渡しプレート G…環状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のリング体と、リング体の半径方向内側に設けられ、周方向に離れて配置されるとともに、内周が弧状を呈する複数の把持体と、各把持体に取り付けられ、該把持体の周方向片側に隣接配置された把持体の内周まで延びる弾性変形容易な橋渡しプレートと、前記リング体と各把持体との間にそれぞれ設けられ、前記把持体を半径方向に移動させることができる複数の移動手段とを備えた把持装置の中心部に環状体を配置する工程と、前記移動手段により各把持体を半径方向内側に移動させ、該把持体により前記環状体を外側から複数箇所において把持する工程とを備えたことを特徴とする環状体の把持方法。
【請求項2】
環状のリング体と、リング体の半径方向内側に設けられ、周方向に離れて配置されるとともに、半径方向内側に移動したとき、リング体の中心部に配置された環状体を外側から把持する、内周が弧状を呈する複数の把持体と、前記リング体と各把持体との間にそれぞれ設けられ、前記把持体を半径方向に移動させることができる複数の移動手段とを備えた環状体の把持装置において、各把持体に、該把持体の周方向片側に隣接配置された把持体の内周まで延びる弾性変形容易な橋渡しプレートを取り付けたことを特徴とする環状体の把持装置。
【請求項3】
前記橋渡しプレートをリング体の軸方向に波状に屈曲させた請求項2記載の環状体の把持装置。
【請求項4】
前記橋渡しプレートをステンレススチールから構成した請求項2または3記載の環状体の把持装置。
【請求項5】
各把持体の内周に周方向に連続して延びる収納溝を形成して、橋渡しプレートの把持体に重なり合う部位を前記収納溝に収納固定する一方、周方向片側に隣接配置された把持体に重なり合う部位の橋渡しプレートを該隣接配置された把持体の収納溝に収納するようにした請求項2〜4のいずれかに記載の環状体の把持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−22714(P2013−22714A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162143(P2011−162143)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】