説明

環状化合物及びその組成物

【課題】極端紫外光リソグラフィーにおいて、ラフネスの低減を実現できる材料を提供する。
【解決手段】下記式(A)で表される環状化合物。(式中、Rはカルボン酸誘導体基置換フェニル等、Rは水酸基、アルコキシ基、又はOR(Rは光反応性基を含む基)等、Rは水素原子等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の電気・電子分野や光学分野等で用いられるフォトレジスト基材、特に超微細加工用フォトレジスト基材に関する。
【背景技術】
【0002】
極端紫外光(Extream Ultra Violet、EUV)又は電子線によるリソグラフィーは、半導体等の製造において、高生産性、高解像度の微細加工方法として有用であり、それに用いる高感度、高解像度でラフネスが低減されたフォトレジストを開発することが求められている。
【0003】
極端紫外光による超微細加工の際に用いられるフォトレジストとしては、例えば、公知のKrFレーザーによる超微細加工の際に用いられていた化学増幅型ポリヒドロキシスチレン系フォトレジストが挙げられる。このレジストでは、50nm程度までの微細加工が可能であることが知られている。しかし、このレジストでは、極端紫外光による超微細加工の最大のメリットである50nm以細のパターンを作成すると、高感度、低レジストアウトガスをある程度まで実現できたとしても、最も重要なラインエッジラフネスを低減させることが不可能であるため、極端紫外光本来の性能を十分に引き出しているとは言えなかった。このような背景から、より高性能のフォトレジストを開発することが求められていた。
【0004】
かかる課題を解決するために、本発明者らは、レジスト化合物を開発した(特許文献1)。しかし、よりラフネスが低減された高性能のレジスト化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/075307号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、低分子系のレジストはポリマー系レジストに比べてラフネス低減に優れると見込まれていたが、ラフネス低減が十分発揮されているとは言えなかった。
上記のように、EUVリソグラフィーによる超微細加工技術において、さらなる低ラフネスの材料が求められている。
本発明の目的は、EUVリソグラフィーにおいて、ラフネスの低減を実現できる材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、低分子系のレジストにおいてラフネスが十分低減されないのは、PAG(光酸発生剤)の均一性が不十分であることに起因することを見出し、本発明に至った。
本発明によれば、以下の環状化合物等が提供される。
1.下記式(A)で表される環状化合物。
【化1】

[式中、Rはそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、これら基のうち2種以上を組み合わせた基、又は下記式(1)〜(3)で表される基のいずれかである。
はそれぞれ水素、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーロキシル基、アルコキシアルキロキシ基、シロキシ基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)とを組み合わせた基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、カルボキシ基、シリル基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)が結合した基、酸解離性溶解抑止基、下記式(1)〜(3)で表される基のいずれか、又はOR(Rは光反応性基を含む基)である。
複数のRのうち少なくとも1つはORである。
はそれぞれRで表される基である。
【化2】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又はアルキレン基及びエーテル結合から選択される1つ以上を置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基と組み合わせた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基又は炭素数1〜10のアルキル基である。
はそれぞれ水素、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、アルコキシアルキル基、カルボキシ基、シリル基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)が結合した基、又は酸解離性溶解抑止基である。
、Rはそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせた基である。
はアルキレン基、エーテル結合及びアルキレン基から選択される2つ以上を組み合わせた基、又はアルキレン基1つ以上とエーテル結合1つ以上を組み合わせた基である。
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。)
複数のR、R、R、R、R、Ar、Aは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。]
2.前記光反応性基が下記構造(X)を有する1に記載の環状化合物。
【化3】

(式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。
10は、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環状構造を形成してもよい。mは0〜4の整数であり、nはそれぞれ0〜5の整数である。Yはアニオンである。)
3.Rが下記式(X−1)で表される1又は2に記載の環状化合物。
【化4】

(式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。
10は、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環状構造を形成してもよい。mは0〜4の整数であり、nはそれぞれ0〜5の整数である。Yはアニオンである。*は酸素原子との結合位置である。)
4.YがBF、AsF、SbF、PF、ハロゲンイオン、又は下記式(i)〜(iii)のいずれかの構造からなる2又は3に記載の環状化合物。
【化5】

(式中、aは1〜10の整数であり、b及びcはそれぞれ0〜(2a+1)の整数である。式(i)においてb+c=2a+1である。)
5.前記光反応性基が下記式(XI)の構造を有する1に記載の環状化合物。
【化6】

(式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有脂肪族炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。
はカチオンである。)
6.Rが下記式(XI−1)で表される1に記載の環状化合物。
【化7】

(式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有脂肪族炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。Xはカチオンである。*は酸素原子との結合位置である。)
7.Xが下記式(x)又は(xi)の構造を有する5又は6に記載の環状化合物。
【化8】

(式中、R10は、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
nはそれぞれ0〜5の整数である。)
8.Rが式(1)〜(3)で表される基のいずれかであり、かつRが水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状アルコキシ基、又はOR(Rは光反応性基を含む基)であって、複数のRの1以上がORである1〜7のいずれかに記載の環状化合物。
9.Rが前記式(1)〜(3)で表される基のいずれかであり、かつ同一の芳香環上に存在する2つのRのうち、一方は水酸基又はOR(Rは光反応性基を含む基)であり、他方がOR''で表される基であり、R''は置換もしくは無置換の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状脂肪族炭化水素基である1〜8のいずれかに記載の環状化合物。
10.Rが、下記式(I)〜(IV)で表されるいずれかである1〜9のいずれかに記載の環状化合物。
【化9】

(上記式(I)〜(IV)において、
αは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
βは、三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基又は置換もしくは無置換の複環状脂肪族基が酸素と結合してなる基、又は三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基及び置換もしくは無置換の複環状脂肪族基から選択される基と炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が、酸素と結合してなる基である。
γは、三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基又は置換もしくは無置換の複環状脂肪族基が、酸素と結合してなる基、又は三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基及び置換もしくは無置換の複環状脂肪族基から選択される基と炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が、酸素と結合してなる基である。
δは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。)
11.Rが、下記式(6)〜(44)から選択される基である1〜9のいずれかに記載の環状化合物。
【化10】

【化11】

(式中、rはそれぞれ上記式(6)〜(34),(38)〜(44)で表される置換基のうちのいずれかを表す。)
12.1〜11のいずれかに記載の環状化合物を含有するフォトレジスト基材。
13.12に記載のフォトレジスト基材及び溶剤を含有するフォトレジスト組成物。
14.さらに光酸発生剤を含有する13に記載のフォトレジスト組成物。
15.さらに塩基性有機化合物をクエンチャーとして含有する13又は14に記載のフォトレジスト組成物。
16.13〜15のいずれかに記載のフォトレジスト組成物を用いた微細加工方法。
17.16に記載の微細加工方法により作製した半導体装置。
18.17に記載の半導体装置を備えた装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、EUVリソグラフィーにおいて、ラフネスの低減を実現できる材料が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られた環状化合物のH−NMRの測定結果を示す図である。
【図2】実施例2で得られた環状化合物のH−NMRの測定結果を示す図である。
【図3】実施例3で得られた環状化合物のH−NMRの測定結果を示す図である。
【図4】実施例4で得られた環状化合物のH−NMRの測定結果を示す図である。
【図5】実施例5で得られた環状化合物のH−NMRの測定結果を示す図である。
【図6】評価例7で得られた元素分布測定結果を示す図である。
【図7】評価例8で得られた元素分布測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の環状化合物は下記式(A)で表される。そして、複数のRのうち少なくとも1つはOR(Rは光反応性基を含む基)である。
【化12】

本発明の環状化合物は、分子内に光反応性基(光酸発生基)を含むため、フォトレジスト組成物に用いた場合、組成物中の酸濃度を均一にできる。そのため、この環状化合物を用いたフォトレジスト組成物はラフネスの改善に有効である。
【0011】
の光反応性基とは、光を吸収して分解し、酸を発生する基であり、活性光線又は放射線を吸収して分解し、酸を発生する基が好ましい。
光反応性基のカチオン部及びアニオン部は、通常フォトレジスト分野で用いられている光酸発生剤の構造を含有する基をそのまま用いることができる。
【0012】
このような光酸発生剤としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができ、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類等のジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤等多種のものが知られている。
この中でも、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩系酸発生剤の構造を包含する光反応性基が好ましく、有機スルホン酸を発生する基がより好ましい。
【0013】
光反応性基は、好ましくは下記構造(X)を有する。
【化13】

式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。
10は、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環状構造を形成してもよい。例えば、隣り合うベンゼン環のR10どうしが結合して、ジベンゾチオフェン骨格を形成してもよい。mは0〜4の整数であり、nはそれぞれ0〜5の整数である。Yはアニオンである。
【0014】
また、Rは、好ましくは下記式(X−1)で表される。
【化14】

式中、A、R10、m、n及びYは、上記式(X)と同じである。*は酸素原子との結合位置である。
【0015】
10における炭素数1〜10の炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐を有する脂肪族炭化水素基等が挙げられ、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル基等が挙げられる。環構造を有する基としてはフェニル、ナフチル等の芳香族基、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル基等が挙げられる。
【0016】
Aにおける炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有炭化水素基としては、1又は2以上の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族基が、1又は2以上のエーテル結合、エステル結合又は炭酸エステル結合と結合した基が挙げられ、好ましくは1又は2以上の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基と1又は2以上のエーテル結合が結合した基である。
【0017】
Aにおける炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基としては、上記の直鎖状脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、芳香族基又は酸素含有炭化水素基それぞれの一部又は全部の水素原子をフッ素原子が置換した基が挙げられる。
【0018】
は、好ましくはBF、AsF、SbF、PF、ハロゲンイオン、又は下記式(i)〜(iii)のいずれかの構造からなる。
【化15】

式中、aは1〜10の整数であり、b及びcはそれぞれ0〜(2a+1)の整数である。式(i)においてb+c=2a+1である。
【0019】
また、上記光反応性基は、好ましくは下記式(XI)の構造を有する。
【化16】

式中、Aは、上記式(X)と同じである。Xはカチオンである。
【0020】
また、Rは好ましくは下記式(XI−1)で表される。
【化17】

式中、A及びXは上記式(XI)と同じである。*は酸素原子との結合位置である。
は、好ましくは下記式(x)又は(xi)の構造を有する。
【0021】
【化18】

式中、R10、nは上記式(X)と同じである。
【0022】
光反応性基としては、具体的には以下の基が挙げられる。尚、下記式中、点線は他の連結基又はORのOとの結合位置を示す。
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【0023】
式(A)中、Rはそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、これら基のうち2種以上を組み合わせた基、又は下記式(1)〜(3)で表される基のいずれかである。
【化23】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又はアルキレン基及びエーテル結合から選択される1つ以上を置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基と組み合わせた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基又は炭素数1〜10のアルキル基である。
はそれぞれ水素、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、アルコキシアルキル基、カルボキシ基、シリル基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)が結合した基、又は酸解離性溶解抑止基である。
、Rはそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせた基である。
はアルキレン基、エーテル結合及びアルキレン基から選択される2つ以上を組み合わせた基、又はアルキレン基1つ以上とエーテル結合1つ以上を組み合わせた基である。
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。)
【0024】
芳香族基とは、ベンゼン環を含む基である。
「2種以上を組み合わせた基」とは、2種以上が単結合した基、又は2種以上が縮合して環を形成した基を意味する。例えば下記の基は、無置換の炭素数1の直鎖状脂肪族炭化水素基と、無置換の炭素数4の分岐を有する脂肪族炭化水素基と、無置換の炭素数6の環状脂肪族炭化水素基と、無置換の炭素数10の芳香族基とを組み合わせた基である。
【化24】

【0025】
Rは、好ましくはそれぞれ置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又は上記式(1)〜(3)で表わされる基であり、より好ましくは上記式(2)で表わされる基である。
【0026】
上記において、置換されている場合の置換基としては、炭素に結合可能なヘテロ元素含有の1価の基を示す。具体例として、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基等の含ハロゲン炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル含有基、メトキシ基、エトキシ基等のエーテル結合を含む基、トリメチルシリル基、トリメトキシシリル基等の珪素含有基、ジエチルアミノ基等の窒素含有基が挙げられる。
【0027】
はそれぞれ水素、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーロキシル基、アルコキシアルキロキシ基、シロキシ基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)とを組み合わせた基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、カルボキシ基、シリル基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)が結合した基、酸解離性溶解抑止基、下記式(1)〜(3)で表される基のいずれか、又はOR(Rは光反応性基を含む基)である。
複数のRのうち少なくとも1つ、好ましくは1つがORである。
【0028】
酸解離性溶解抑止基とは、反応前はアルカリ現像液への溶解に寄与しない置換基であるが、酸(プロトン)と反応することにより脱離ないし構造が変化し、例えばフォトレジストのアルカリ現像液への溶解に寄与する置換基になるという機能を有する置換基である。酸解離性溶解抑止基は、好ましくは三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する分子量が15以上2000以下の置換基である。
後述の通り、酸解離性溶解抑止基を有する環状化合物をフォトレジスト基材として用いる場合、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光することにより、酸解離性溶解抑止基が脱離ないし構造が変化することにより、アルカリ現像液に溶解するようになる。
【0029】
置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、エステル結合基(−CO−)、炭酸エステル結合基(−CO−)、エーテル結合(−O−)基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である2価の基は、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル結合(−CO−)、炭酸エステル結合(−CO−)もしくはエーテル結合(−O−)が結合してなる基である。
【0030】
置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である2価の基は、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、これらの基が2以上結合してなる基、これらの基1以上とエステル結合、炭酸エステル結合及びエーテル結合から選択される1以上を組み合わせた基である。
【0031】
上記において、置換されている場合の置換基としては、炭素に結合可能なヘテロ元素含有の1価の基を示す。具体例として、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基等の含ハロゲン炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル含有基、メトキシ基、エトキシ基等のエーテル結合を含む基、トリメチルシリル基、トリメトキシシリル基等の珪素含有基、ジエチルアミノ基等の窒素含有基が挙げられる。
【0032】
は、好ましくはそれぞれ水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐アルコキシ基、下記式(1)〜(3)で表される基のいずれか、又はOR(Rは光反応性基を含む基)であって、複数のRのうち少なくとも1つはORである。
好ましくは、式(I)に含まれる8つのRのうち少なくとも2つは水酸基であり、少なくとも1つはORである。
【0033】
【化25】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又はアルキレン基及びエーテル結合から選択される1つ以上を置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基と組み合わせた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基又は炭素数1〜10のアルキル基である。
はそれぞれ水素、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、アルコキシアルキル基、カルボキシ基、シリル基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)が結合した基、又は酸解離性溶解抑止基である。
、Rはそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせた基である。
はアルキレン基、エーテル結合及びアルキレン基から選択される2つ以上を組み合わせた基、又はアルキレン基1つ以上とエーテル結合1つ以上を組み合わせた基である。
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。)
【0034】
式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又はアルキレン基及びエーテル結合から選択される1つ以上を置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基と組み合わせた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基又は炭素数1〜10のアルキル基である。ここで2以上の置換基を「組み合わせた基」とは、2以上の置換基を単結合した基を意味する。
好ましくは、Arは置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
【0035】
はそれぞれRで表される基と同様の基である。
【0036】
はそれぞれ水素、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、アルコキシアルキル基、カルボキシ基、シリル基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)が結合した基、又は酸解離性溶解抑止基である。
【0037】
ここで、環状脂肪族基には、環状脂肪族炭化水素基のほか、環状エーテル、ラクトン環が含まれる。
【0038】
上記において、置換されている場合の置換基としては、炭素に結合可能なヘテロ元素含有の1価の基を示す。具体例として、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基等の含ハロゲン炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル含有基、メトキシ基、エトキシ基等のエーテル結合を含む基、トリメチルシリル基、トリメトキシシリル基等の珪素含有基、ジエチルアミノ基等の窒素含有基が挙げられる。
【0039】
は好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、もしくは置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基と、無置換のアルキレン基とエステル結合及びエーテル結合から選択される1以上を組み合わせた基が結合した基、又は酸解離性溶解抑止基である。
【0040】
、Rはそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせた基である。R,Rは水素又はアルキル基が好ましい。
【0041】
上記において、置換されている場合の置換基としては、炭素に結合可能なヘテロ元素含有の1価の基を示す。具体例として、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基等の含ハロゲン炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル含有基、メトキシ基、エトキシ基等のエーテル結合を含む基、トリメチルシリル基、トリメトキシシリル基等の珪素含有基、ジエチルアミノ基等の窒素含有基が挙げられる。
【0042】
はアルキレン基、エーテル結合及びアルキレン基から選択される2つ以上を組み合わせた基、又はアルキレン基1つ以上とエーテル結合1つ以上を組み合わせた基である。Aは単結合又はオキシメチレン基(−O−CH−)が好ましく、単結合がより好ましい。
【0043】
xは1〜5、好ましくは1である。yは0〜3、好ましくは0又は1である。zは0〜4、好ましくは0又は1である。好ましくはx=1、y=1及びz=0、又はx=1、y=0及びz=0である。
複数のR、R、R、R、R、Ar、Aは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0044】
式(A)の化合物において、好ましくは、Rが上記式(1)〜(3)の基のいずれかであり、かつRが水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐を有するアルコキシ基、又はOR(Rは光反応性基を含む基)であって、複数のRの1以上がORである。
【0045】
また、式(A)の化合物において、より好ましくは、Rが上記式(1)〜(3)で表される基のいずれかであり、かつ同一の芳香環上に存在する2つのRのうち、一方は水酸基又はOR(Rは光反応性基を含む基)であり、他方がOR''で表される基であり、R''は置換もしくは無置換の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐を有する脂肪族炭化水素基である。
【0046】
は、下記式(I)〜(IV)で表されるいずれかであると好ましい。
【化26】

上記式(I)〜(IV)において、αは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
αは、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチレンである。
【0047】
βは、三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基又は置換もしくは無置換の複環状脂肪族基が酸素と結合してなる基、又は三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基及び置換もしくは無置換の複環状脂肪族基から選択される基と炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が、酸素と結合してなる基である。
βが、三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基であるとき、好ましくは、これら基に含まれる三級炭素が酸素原子と結合する。βが、ベンゼン環を含む基であるとき、好ましくは、ベンジル位の炭素が酸素原子と結合する。
【0048】
γは、三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基又は置換もしくは無置換の複環状脂肪族基が、酸素と結合してなる基、又は三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基及び置換もしくは無置換の複環状脂肪族基から選択される基と炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が、酸素と結合してなる基である。
γは、好ましくは三級脂肪族構造、単環状脂肪族構造もしくは複環状脂肪族構造が酸素に結合して成る基である。
【0049】
δは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
【0050】
上記式(I)〜(IV)において、脂肪族炭化水素基(α)は好ましくはアルキレンである。
【0051】
α,δは、直鎖状又は分岐脂肪族炭化水素基が好ましい。α〜δの直鎖状又は分岐脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜4が好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0052】
β、γの三級脂肪族基としてはt−ブチル、t−アミル等が挙げられる。芳香族基はベンゼン環を含む基(ベンゼン環はシクロアルキル又は環状エーテルと縮合していてもよい)であり、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、クロマニル等が挙げられる。単環状脂肪族基としてはシクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。複環状脂肪族基としてはノルボルニル、アダマンチル、ビアダマンチル、ジアマンチル等が挙げられる。また、単環又は複環の環状脂肪族基には、例えば後述する基(28),(29),(43),(44)等のような、環状エーテル、オキシ酸のラクトン等も含む。
【0053】
β、γの置換基は好ましくはアルキル、アルコキシ、カルボキシ、カルボニルである。置換基がカルボニルのときは、例えば後述する基(18),(19),(26),(27)等のように、環の中に含む。
置換基のアルキル、アルキレン、アルコキシの炭素数は好ましくは1〜4である。
【0054】
下記に限定されるものではないが、Rの具体例として、下記式(6)〜(44)に示される基を挙げることができる。
【化27】

【化28】

式中、rはそれぞれ上記式(6)〜(34),(38)〜(44)で表される置換基のうちのいずれかを表す。
また、Rで好ましい構造は上記の(8),(10),(19),(20),(28),(43)である。
【0055】
本発明に用いる環状化合物は、例えば、公知の方法により、酸触媒存在下、対応する構造のアルデヒド化合物と、溶解性調整基と水酸基を併せて有する芳香族化合物との縮合環化反応により、カリックスレゾルシナレン誘導体(前駆体)を合成し、R等の基に対応する化合物を、エステル化反応、エーテル化反応、アセタール化反応等により前駆体に導入し、続いてフォトレジスト分野で用いられている光酸発生剤の構造を含有する基を導入することで合成できる。例えば、水酸基と、光酸発生剤の一部にビニル基、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン含有基を有する化合物を、付加反応若しくは求核置換反応させる方法が挙げられる。また、対応する光酸発生剤前駆対をあらかじめ水酸基に導入した後、対カチオン又は対アニオンを塩交換することにより光酸発生剤を導入してもよい。具体例としては、後述する実施例で説明するものが挙げられる。
【0056】
式(A)の環状化合物において、好ましくは、Rはそれぞれ式(2)で表わされる基であり、Rは水素であり、同一の芳香環上に存在する2つのRのうち一方が水酸基又はOR(Rは光反応性基)であり、他方が同じ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐アルコキシ基である。Rは、より好ましくはそれぞれ式(2)でx=1,y=1,z=0の基である。
【0057】
上記式(A)の環状化合物は、フォトレジスト基材として用いることができる。
本発明のフォトレジスト組成物は、フォトレジスト基材及び溶剤を含む。
【0058】
本発明のフォトレジスト組成物における上記式(A)の環状化合物の含有量は、溶剤を除く全組成物中で好ましくは50〜99.9重量%であり、より好ましくは75〜95重量%である。
【0059】
本発明の組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル(PE)等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0060】
フォトレジスト組成物中の溶剤以外の成分、即ちフォトレジスト固形分の量は所望のフォトレジスト層の膜厚を形成するために適する量とするのが好ましい。具体的には組成物の全重量の0.1〜50重量%が一般的であるが、用いる基材や溶剤の種類、あるいは、所望のフォトレジスト層の膜厚等に合わせて規定できる。溶剤は全組成物中好ましくは50〜99.9重量%配合する。
【0061】
本発明のフォトレジスト組成物は、基材の分子が、EUV及び/又は電子線に対して活性なクロモフォアを含み単独でフォトレジストとしての能力を示すため特に添加剤は必要としないが、フォトレジストとしての性能(感度)を増強する必要がある場合は、必要に応じて、クロモフォアとして光酸発生剤(PAG)等を含んでいてもよい。
光酸発生剤としては、上記の記載のものを用いることができる。
【0062】
PAGの配合量は、例えば、溶剤を除く全組成物中0〜40重量%、0〜30重量%、0〜25重量%、0〜1重量%である。
【0063】
本発明においては、放射線照射により式(A)の環状化合物及び/又は酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(クエンチャー)を組成物に配合してもよい。
この様な酸拡散制御剤を使用することにより、組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が向上するとともに、電子線照射前の引き置き時間、電子線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0064】
このような酸拡散制御剤としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミン;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の環状アミン等の窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の電子線放射分解性塩基性化合物が挙げられる。酸拡散制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0065】
クエンチャーの配合量は、溶剤を除く全組成物中0〜40重量%、好ましくは0.01〜15重量%である。
本発明においては、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解制御剤、増感剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、顔料等を適宜、添加含有させることができる。
【0066】
レジストパターンを形成するには、まず、シリコンウェハー、ガリウムヒ素ウェハー、アルミニウムで被覆されたウェハー等の基板上に本発明のフォトレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。
【0067】
必要に応じて、基板上に表面処理剤を予め塗布してもよい。表面処理剤としては、例えばヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤(重合性基を有する加水分解重合性シランカップリング剤等)、アンカーコート剤又は下地剤(ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等)、これらの下地剤と無機微粒子とを混合したコーティング剤が挙げられる。
【0068】
必要に応じて、大気中に浮遊するアミン等が侵入するのを防ぐために、レジスト膜に保護膜を形成してもよい。保護膜を形成することにより、放射線によりレジスト膜中に発生した酸が、大気中に不純物として浮遊しているアミン等の酸と反応する化合物と反応して失活し、レジスト像が劣化し感度が低下することを防止できる。保護膜用の材料としては水溶性かつ酸性のポリマーが好ましい。例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸等が挙げられる。
【0069】
高精度の微細パターンを得るため、また露光中のアウトガスを低減するため、放射線照射前(露光前)に加熱するのが好ましい。その加熱温度は、組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜150℃である。
【0070】
次いで、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、フォトレジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後(露光後)に加熱するのが好ましい。露光後加熱温度(PEB)は、組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜150℃である。
【0071】
次いで、露光されたレジスト膜をアルカリ現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成できる。前記アルカリ現像液としては、例えば、モノ−、ジ−あるいはトリアルキルアミン類、モノ−、ジ−あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物の1種以上を溶解した、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%のアルカリ性水溶液を使用する。アルカリ現像液には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や前記界面活性剤を適量添加することもできる。これらのうちイソプロピルアルコールを10〜30重量%添加することが特に好ましい。尚、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を用いた場合は、一般に、現像後水で洗浄する。
【0072】
本願の環状化合物をフォトレジスト基材として用いると、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光することにより、環状化合物の置換基が脱離ないし構造が変化することにより、アルカリ現像液に溶解するようになる。一方、パターンの露光されていない部分はアルカリ現像液に溶解しないことが好ましい。即ち、本願の環状化合物は、KrFエキシマレーザー等の放射線により、レジスト膜内で光酸発生剤から発生した酸(プロトン)と反応することにより脱離ないし構造が変化し、アルカリ現像液への溶解に寄与する置換基になるという機能を有する置換基を備える環状化合物である。
【0073】
尚、場合によっては上記アルカリ現像後、ポストベーク処理を行ってもよいし、基板とのレジスト膜の間には有機系又は無機系の反射防止膜を設けてもよい。
【0074】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングは、プラズマガスを使用するドライエッチング、アルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等を用いるウェットエッチング等公知の方法で行うことができる。レジストパターンを形成した後、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっき等のめっき処理を行うこともできる。
【0075】
エッチング後の残留レジストパターンは、有機溶剤やアルカリ現像液より強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。上記有機溶剤としては、PGMEA、PGME、EL、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、強アルカリ水溶液としては、例えば、1〜20重量%の水酸化ナトリウム水溶液、及び1〜20重量%の水酸化カリウム水溶液が挙げられる。剥離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。またレジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0076】
本発明の組成物を用いてレジストパターンを形成した後、金属を真空蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶離する方法、即ちリフトオフ法により配線基板を形成することもできる。
【0077】
本発明の組成物を用いた微細加工方法により、半導体装置を作製できる。この半導体装置は、テレビ受像機、携帯電話、コンピュータ等の電気製品(電子機器)、ディスプレイ、コンピュータ制御する自動車等の様々な装置に備えることができる。
【実施例】
【0078】
製造例1
下記の工程により、M−1を合成した。
【化29】

窒素気流下、容量200ミリリットルの丸底フラスコに、3−メトキシフェノール50.0g(402.8ミリモル、東京化成)、4−ホルミル安息香酸60.5g(402.8ミリモル、東京化成)、及び脱水ジクロロメタン(関東化学)500ミリリットルを加えて氷水浴に浸漬させ、5℃以下に冷却した。この混合物に対して、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル付加体60.8ミリリットル(483.6ミリモル、広島和光)を内温が15℃を越えないように滴下した後、室温まで昇温して8時間撹拌した。反応溶液を氷水浴で冷却し、ゆっくり水を滴下してクエンチし、析出した固体をろ別した。ろ別した析出物を中性になるまで水洗した後、N−メチル−2−ピロリドン(広島和光)に溶解させ、酢酸エチルで再沈し、析出した固体をろ別することにより、環状化合物(P−1)(94.4g、91%)を得た。尚、環状化合物(P−1)の構造はH−NMR測定により確認した。
【0079】
次に、200ミリリットルの2口フラスコに、上記環状化合物(P−1)(10.00g、10.0ミリモル)を加えて窒素雰囲気下とした後、無水N−メチル−2−ピロリドン(400ミリリットル、広島和光)をさらに加え室温で撹拌し、トリエチルアミン(7.0ミリリットル、50.0ミリモル、アルドリッチ)、無水N−メチル−2−ピロリドン(10ミリリットル)で希釈したブロモ酢酸エチルアダマンチル(15.0g、50.0ミリモル)、及び1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(2.2ミリリットル,15.0ミリモル、広島和光)を滴下した。
室温で10時間撹拌した後、イオン交換水300ミリリットル及び酢酸エチル300ミリリットルを加えて有機層を抽出した。得られた有機層を濃縮して得た溶液に、イオン交換水と少量の塩を加えた後、沈殿物をろ別して環状化合物(M−1)を得た(収率93%)。
尚、環状化合物(M−1)の構造は液体クロマトグラフィー測定及びH−NMR測定により確認した。
【0080】
製造例2
下記の工程により、PA−1を合成した。
【化30】

窒素気流下、ジフェニルスルホキシド10g(49.31mmol)、5酸化2リン3.62g(25.44mmol)をトリフルオロ酢酸50mlに溶解し、フェノール7.0g(74.45mmol)を加えて室温で20時間そのまま撹拌を行なった。反応混合物を150ml氷冷水に投入し、水層をt−ブチルメチルエーテルで洗浄した。有機層を分離した後、メチルブチルケトン50ml、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム18.38g(54.35mmol)を加え、8時間撹拌を行なった。有機層を分離し、1%アンモニア水溶液、水洗浄を行なった。減圧下、溶媒を留去し目的物スルホン酸塩(A−1)23.3gを得た。収率は82%であった。
【0081】
次に、窒素気流下、50mlジメチルスルホキシドに、上記A−1の20g(34.56mmol)、炭酸カリウム5.32g(49.92mmol)、テトラメチルエチレンジアミン0.4g(3.44mmol)、クロロエチルビニルエーテル5.32g(49.92mmol)を加え80℃で20時間加熱撹拌をいった。放冷後、ろ過し、ろ液に水50mlを入れる。水層をヘキサン洗浄し、水50ml、ジクロロメタン50mlを加え目的物をジクロロメタンに抽出した。ジクロロメタン層を、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下溶媒を留去し、目的物PA−1を得た。収量は18g、収率は80%であった。
【0082】
実施例1
下記の工程により、M−1−PA−1を合成した。
【化31】

【0083】
窒素気流下、製造例1で合成したM−1の4.0g(2.1mmol)、製造例2で合成したPA−1の1.63g(2.5mmol)を1、3−ジオキソラン60mlに溶解した。トリフルオロ酢酸15.6μl(0.21mmol)を加え、60℃で6時間加熱撹拌を行った。放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行なった。減圧下溶媒を留去した。残渣を少量の酢酸エチルで再溶解し、シリカゲルにより精製を行なった(展開溶媒:酢酸エチル)。減圧下溶媒を留去し酢酸エチル/ヘキサンで再沈殿を行なうことにより、白色粉体を得た。収量は4.2gであった。H−NMRの測定より、PA−1のフェノール性水酸基への導入率は20%であった(M−1−PA−1)。H−NMRの測定結果を図1に示す。
【0084】
実施例2
下記の工程により、M−1−PA−3−2を合成した。
【化32】

【0085】
窒素気流下、1リットル丸底フラスコに臭化ナトリウム21.06g(204.7mol)、水558mlを加え60℃に昇温した。1,3−プロパンスルトン25g(204.7mmol)を滴下し、このまま8時間加熱撹拌を行った。常圧蒸留により溶媒を留去し、残渣をさらに減圧乾燥した。残渣にエタノール100mlを加え抽出を行った。得られた濾液を減圧下濃縮し、残渣にエタノール/水の3/1(体積比)混合溶媒を加え再結晶することにより、3−ブロモプロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩を白色固体として得た。収量31.5g、収率68%であった。
【0086】
次に、窒素気流下、水素化ナトリウム31.6mg(1.316mmol)を脱水NMPに懸濁させ氷冷した。製造例1で合成したM−1 1.0g(0.5426mmol)を脱水NMP8mlに溶解した液を加え1時間撹拌を行なった。上記3−ブロモプロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩0.236g(1.049mmol)を反応溶液に投入し、そのまま1時間撹拌を行なった。室温まで昇温した後さらに2時間撹拌を行なった。反応液を氷冷し、酢酸を0.1ml加えた後、酢酸エチル30ml、ヘキサン30mlを加えた後撹拌し、上澄みをデカンテーションで除いた。残渣にヘキサンを加え撹拌を行い、上澄みをデカンテーションにより除いた後、残渣を減圧下乾燥さることにより、M−1のフェノール性水酸基の50%が3−ブロモプロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩により置換された目的物前駆体を得た。収量は0.65g、収率は56.4%であった。
【0087】
得られた目的物前駆体0.65g(0.296mmol)をテトラヒドロフラン/水=2ml/4mlの混合溶媒に溶解させた。この混合溶液にトリフェニルスルホニウムクロリド0.265g(0.888mmol)のテトラヒドロフラン/水=1/2(体積比)混合溶媒1mlに溶解した溶液を加えた。反応溶液にさらにテトラヒドロフランを加えた後、そのまま8時間撹拌を行なった。減圧下溶媒を留去した。残渣に水を加え水洗した後、ろ別し白色粉末を得た。収量は0.765gであった。H−NMRによりフェノール性水酸基への光反応性基の導入率を測定した結果、51%であった(M−1−PA−3−2)。H−NMRの測定結果を図2に示す。
【0088】
実施例3
下記の工程により、M−1−PA−3−1を合成した。
【化33】

【0089】
実施例2において、水素化ナトリウムの量を15.8mg(0.658mmol)、3−ブロモプロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩の量を0.118g(0.524mmol)とした以外は実施例2と同様にして、M−1のフェノール性水酸基へ光反応性基を導入した。H−NMRよりフェノール性水酸基への光反応性基の導入率を測定した結果、25%であった(M−1−PA−3−1)。H−NMRの測定結果を図3に示す。
【0090】
実施例4
下記の工程により、M−1−PA−4を合成した。
【化34】

【0091】
窒素気流下、100mlフラスコにブロモ酢酸無水物26.01g(100.1mmol)、イセチオン酸ナトリウム4.94g(33.36mmol)、脱水N−メチルピロリドン(NMP)5mlを加えた。100℃にて3時間加熱撹拌した。放冷後、反応混合物にジエチルエーテル80mlを加え、上澄みをデカンテーションにより除いた。生成した沈殿をジエチルエーテルで洗浄し、減圧乾燥することにより2−(2−ブロモアセチル)オキシエチルスルホン酸ナトリウムを得た。収量は8.1g、収率は90.2%であった。
【0092】
窒素気流下、100mL三口フラスコにNaH26.0mg(1.083mmol)を加え、氷冷し、脱水N−メチルピロリドン(以下NMP)2mLを加え分散した。ここに、製造例1で合成した1g(0.5246mmol)のM−1を脱水NMP8mLに溶解したものを滴下し、そのまま1時間撹拌した。2−(2−ブロモアセチル)オキシエチルスルホン酸ナトリウム0.141g(0.5246mmol)を脱水NMP1mLに溶解して投入し、そのまま氷冷下1時間撹拌した。室温まで昇温させ、8時間撹拌した。氷冷下、撹拌しながら酢酸エチル20mLを加え、さらに撹拌しながらヘキサン200mLを加え、上澄みをデカンテーションにより除いた。同じ操作をさらに2度繰り返し、減圧乾燥を行った。残渣に純水50mlを加え、撹拌しろ過した。ろ過物を減圧乾燥することによりM−1−PA−4前駆体を得た。収量は0.9252gであった。
【0093】
M−1−PA−4前駆体0.9252gをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、さらに水5mlを加えた。トリフェニルスルホニウムクロリド0.2176(0.7280mmol)を加え、遮光下、そのまま8時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し残渣を水洗した。乾燥後、ジクロロメタン、ヘキサンで再沈殿処理することによりM−1−PA−4を得た。収量は1.02g、M−1からの収率は82%であった。H−NMRの測定結果を図4に示す。H−NMR(フェノール性水酸基の積分値換算)から、M−1の24%に光酸発生剤が導入されたことが分かった。
【0094】
実施例5
下記の工程により、M−1−PA−5を合成した。
【化35】

【0095】
窒素気流下、500mL三口フラスコに酢酸カリウム24.70g(250.8mmol)を入れ、ジメチルホルムアミド200mLを加えて撹拌した。4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロ−1−ブテン39.50g(209.0mmol)を15分かけて滴下し、50℃にて3時間撹拌した。放冷後、反応混合物をジエチルエーテル300mL中へ投入し、水200mLで1回洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を常圧蒸留にて留去し、3,4,4−トリフルオロ−3−ブテニルアセテートを得た。収量は20.05g、収率は57%であった。得られた反応物は、これ以上精製することなく次の反応に用いた。
【0096】
窒素気流下、得られた3,4,4−トリフルオロ−3−ブテニルアセテート20.05gにメタノール40mlを加えて溶解させ氷冷した。炭酸カリウム19.78g(83.66mmol)の水溶液(水:40mL)を15分かけて滴下し、そのまま室温にて2.5時間撹拌した。全量分液ロートへ移し、ジエチルエーテルで3回抽出した。溶媒を常圧蒸留で濃縮し、3、4、4−トリフルオロ−3−ブテン−1−オールを得た。収量は8.53g、収率は56.7%であった。
【0097】
窒素気流下、100mL三口フラスコに3、4、4−トリフルオロ−3−ブテン−1−オール3.500g(27.76mmol)を入れた。亜硫酸ナトリウム1.749g(13.88mmol)、亜硫酸水素ナトリウム7.779g(純度65%、48.58mmol)を加えた。オイルバス100℃にて40時間加熱撹拌した。溶媒を留去し、白色固体が析出した(19.25g)。アセトン200mLを加えて50℃にて強撹拌し、目的物を抽出した。減圧乾燥により(1、1、2−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−ブチル)スルホン酸ナトリウム塩を得た。収量は3.0g、収率は47.0%であった。
【0098】
窒素気流下、50mLシュレンクに、(1、1、2−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−ブチル)スルホン酸ナトリウム塩3.0g(13.04mmol)を加えた。ブロモ酢酸無水物10.16g(39.11mmol)を加え、オイルバス100℃にて3時間加熱撹拌した。放冷後、ジエチルエーテル30mLを加え、抽出を繰り返した。減圧乾燥し、[4−(2−ブロモアセチル)オキシ−1、1、2−トリフルオロ−ブチル]スルホン酸ナトリウム塩を得た。収量は3.850g、収率は84.1%であった。
【0099】
窒素気流下、300ml三口フラスコに水素化ナトリウム63.0mg(2.623mmol)を加え、氷冷し、脱水N−メチルピロリドン(以下NMP)2.5mlを加え分散した。製造例1で合成した2.500g(1.311mmol)のM−1を脱水NMP20mLに溶解したものを滴下し、そのまま1時間撹拌した。実施例4で得た[4−(2−ブロモアセチル)オキシ−1、1、2−トリフルオロ−ブチル]スルホン酸ナトリウム塩0.4603g(1.311mmol)を脱水NMP1mLに溶解して投入し、そのまま氷冷下1時間撹拌した。室温まで昇温させ、8時間撹拌した。氷冷下、撹拌しながら酢酸エチル25mLを加え、さらに撹拌しながらヘキサン250mLを加え、上澄みをデカンテーションにより除いた。同じ操作をさらに2度繰り返し減圧乾燥を行った。残渣に純水50mlを加え撹拌しろ過した。ろ過物を減圧乾燥することによりM−1−PA−5前駆体を得た。収量は2.55g。得られた生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
【0100】
100mLナスフラスコにM−1−PA−5前駆体2.55gを入れ、テトラヒドロフラン20mLを加え溶解させ、さらに水13mlを加えた。トリフェニルスルホニウムクロリド0.5880g(1.967mmol)を(テトラヒドロフラン/水=1/1)混合溶媒1mlに溶解させ、上記M−1−PA−5溶液に加えた。反応溶液にテトラヒドロフラン6.5mlを追加し、遮光下、室温で8時間撹拌した。減圧下、溶媒を濃縮し、析出固体に純水50mlを加えて激しく撹拌し、粉状になったところでろ別した。ろ過物に水で洗浄した後、減圧乾燥した。乾燥した固体をジクロロメタンに溶解させ、ヘキサンを加えて再沈殿を行うことにより、目的物M−1−PA−5を得た。収量は2.283g、M−1からの収率は71.3%であった。H−NMRの結果を表5に示す。H−NMR(フェノール性水酸基の積分値換算)から、M−1の24%に光酸発生剤が導入されたことが分かった。
【0101】
評価例1〜6[電子線露光評価]
実施例1〜5及び製造例1で得られた基材、PAG(光酸発生剤)、クエンチャー、溶剤からなるフォトレジスト溶液を作製し、電子線を使用してシリコンウェハにパターンを形成した。
基材として、具体的に、実施例1〜5の環状化合物M−1−PA−1、M−1−PA−3−2、M−1−PA−3−1、M−1−PA−4、M−1−PA−5、及び製造例1で得たM−1を用いた。
また、PAGとして、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、クエンチャーとして、トリオクチルアミンをそれぞれ表1の重量比で使用した。これらの固体成分の濃度が2重量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ、フォトレジスト溶液とした。
【表1】

【0102】
これらのフォトレジスト溶液を、それぞれ、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施したシリコンウェハ上にスピンコートし、表2の温度でプリベーク(露光前ベーク)(PB)することにより薄膜を形成した。
次いで、この薄膜を有する基板に対して電子線描画装置(加速電圧50kV)を用いて描画し、表2の温度で露光後ベーク(PEB)した後、濃度が2.38重量%のテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間現像処理し、純水にて60秒洗浄、その後、窒素気流により乾燥した。
【0103】
30nm 1:1ラインアンドスペースパターンにあたる部分を走査型電子顕微鏡により観察した。パターン形状と感度(必要な電子線ドーズ量)、及び35nm 1:1ラインアンドスペースパターンにあたるラフネス(LWR)の結果を表2に記す。
【0104】
【表2】

【0105】
評価例7,8[レジスト膜深さ方向の元素分布測定]
光酸発生剤の構造を含有する基(光反応性基)をM−1に結合することによる効果を検証するため、製膜後の膜の深さ(厚さ)方向のフッ素原子の分布測定(元素分析)を行った。
評価例5(基材:M−1−PA−5)と同じ組成のレジスト液を用い、評価例1〜6と同様にシリコンウェハ上に100nmの膜を形成し、測定サンプルとした(評価例7)。また、評価例6(基材:M−1)と同じ組成のレジスト液を用い、評価例1〜6と同様にシリコンウェハ上に100nmの膜を形成し、比較サンプルとした(評価例8)。
【0106】
元素分析は、下記の装置・条件により実施した。
装置:アルバック・ファイ社製 光電子分光分析装置「VersaProbe2」
測定条件:
X線源:Al モノクロ 24.8W 100μ 45°
PassEnergy:46.95eV
StepSize:0.200eV
スパッタリング源:Ar(GCIB)
スパッタリング加速電圧:15kV
【0107】
測定結果を図6,7に示す。
図6,7に示すように、光反応性基をM−1に結合させることにより、膜内の光酸発生剤の分布は均一となり、反応性の均質が向上するため、ラフネス(LWR)の改善に効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の環状化合物は、半導体装置等の電気・電子分野や光学分野等において使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される環状化合物。
【化36】

[式中、Rはそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、これら基のうち2種以上を組み合わせた基、又は下記式(1)〜(3)で表される基のいずれかである。
はそれぞれ水素、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーロキシル基、アルコキシアルキロキシ基、シロキシ基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)とを組み合わせた基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、カルボキシ基、シリル基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)が結合した基、酸解離性溶解抑止基、下記式(1)〜(3)で表される基のいずれか、又はOR(Rは光反応性基を含む基)である。
複数のRのうち少なくとも1つはORである。
はそれぞれRで表される基である。
【化37】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又はアルキレン基及びエーテル結合から選択される1つ以上を置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基と組み合わせた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基又は炭素数1〜10のアルキル基である。
はそれぞれ水素、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、アルコキシアルキル基、カルボキシ基、シリル基、これらの基と2価の基(ここで、2価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合基、炭酸エステル結合基、エーテル結合基、又はこれらの基が2以上結合してなる基である)が結合した基、又は酸解離性溶解抑止基である。
、Rはそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせた基である。
はアルキレン基、エーテル結合及びアルキレン基から選択される2つ以上を組み合わせた基、又はアルキレン基1つ以上とエーテル結合1つ以上を組み合わせた基である。
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。)
複数のR、R、R、R、R、Ar、Aは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記光反応性基が下記構造(X)を有する請求項1に記載の環状化合物。
【化38】

(式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。
10は、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環状構造を形成してもよい。mは0〜4の整数であり、nはそれぞれ0〜5の整数である。Yはアニオンである。)
【請求項3】
が下記式(X−1)で表される請求項1又は2に記載の環状化合物。
【化39】

(式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。
10は、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環状構造を形成してもよい。mは0〜4の整数であり、nはそれぞれ0〜5の整数である。Yはアニオンである。*は酸素原子との結合位置である。)
【請求項4】
がBF、AsF、SbF、PF、ハロゲンイオン、又は下記式(i)〜(iii)のいずれかの構造からなる請求項2又は3に記載の環状化合物。
【化40】

(式中、aは1〜10の整数であり、b及びcはそれぞれ0〜(2a+1)の整数である。式(i)においてb+c=2a+1である。)
【請求項5】
前記光反応性基が下記式(XI)の構造を有する請求項1に記載の環状化合物。
【化41】

(式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有脂肪族炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。
はカチオンである。)
【請求項6】
が下記式(XI−1)で表される請求項1に記載の環状化合物。
【化42】

(式中、Aは、2価の基であり、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族基、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐を有する酸素含有脂肪族炭化水素基、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐を有するフッ素原子含有基である。Xはカチオンである。*は酸素原子との結合位置である。)
【請求項7】
が下記式(x)又は(xi)の構造を有する請求項5又は6に記載の環状化合物。
【化43】

(式中、R10は、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
nはそれぞれ0〜5の整数である。)
【請求項8】
Rが式(1)〜(3)で表される基のいずれかであり、かつRが水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状アルコキシ基、又はOR(Rは光反応性基を含む基)であって、複数のRの1以上がORである請求項1〜7のいずれかに記載の環状化合物。
【請求項9】
Rが前記式(1)〜(3)で表される基のいずれかであり、かつ同一の芳香環上に存在する2つのRのうち、一方は水酸基又はOR(Rは光反応性基を含む基)であり、他方がOR''で表される基であり、R''は置換もしくは無置換の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状脂肪族炭化水素基である請求項1〜8のいずれかに記載の環状化合物。
【請求項10】
が、下記式(I)〜(IV)で表されるいずれかである請求項1〜9のいずれかに記載の環状化合物。
【化44】

(上記式(I)〜(IV)において、
αは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
βは、三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基又は置換もしくは無置換の複環状脂肪族基が酸素と結合してなる基、又は三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基及び置換もしくは無置換の複環状脂肪族基から選択される基と炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が、酸素と結合してなる基である。
γは、三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基又は置換もしくは無置換の複環状脂肪族基が、酸素と結合してなる基、又は三級脂肪族基、置換もしくは無置換の芳香族基、置換もしくは無置換の単環状脂肪族基及び置換もしくは無置換の複環状脂肪族基から選択される基と炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が、酸素と結合してなる基である。
δは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数4〜20のラクトン環、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。)
【請求項11】
が、下記式(6)〜(44)から選択される基である請求項1〜9のいずれかに記載の環状化合物。
【化45】

【化46】

(式中、rはそれぞれ上記式(6)〜(34),(38)〜(44)で表される置換基のうちのいずれかを表す。)
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の環状化合物を含有するフォトレジスト基材。
【請求項13】
請求項12に記載のフォトレジスト基材及び溶剤を含有するフォトレジスト組成物。
【請求項14】
さらに光酸発生剤を含有する請求項13に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項15】
さらに塩基性有機化合物をクエンチャーとして含有する請求項13又は14に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれかに記載のフォトレジスト組成物を用いた微細加工方法。
【請求項17】
請求項16に記載の微細加工方法により作製した半導体装置。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置を備えた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−100261(P2013−100261A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211477(P2012−211477)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】