説明

環状接着阻害剤

【課題】 インテグリン阻害剤として作用し、特に循環、血管新生障害、微生物感染の予防および治療、および腫瘍治療に有用な新規化合物を提供することにある。
【解決手段】 本発明の新規化合物は、式I:
シクロ−(nArg−nGly−nAsp−nD−nE) I
[式中、DおよびEは、各々相互に独立して、Gly、Ala、β−Ala、Asn、Asp、Asp(OR)、Arg、Cha、Cys、Gln、Glu、His、Ile、Leu、Lys、Lys(Ac)、Lys(AcNH2)、Lys(AcSH)、Met、Nal、Nle、Orn、Phe、4−Hal−Phe、homo−Phe、Phg、Pro、Pya、Ser、Thr、Tia、Tic、Trp、TyrまたはValであり、これらアミノ酸残基が誘導体にされていてもよく、Rは、1〜18個の炭素原子を有するアルキルであり、Halは、F、Cl、BrまたはIであり、Acは、1〜10個の炭素原子を有するアルカノイル、7〜11個の炭素原子を有するアロイルまたは8〜12個の炭素原子を有するアルアルカノイルであり、nは、無置換を表わすか、または相当するアミノ酸残基のアルファーアミノ官能基にアルキル基R、ベンジルまたは7〜18個の炭素原子を有するアルアルキル基である]で示される環状ペプチド、但し少なくとも一つのアミノ酸残基が置換基nを有し且つ光学活性アミノ酸およびアミノ酸誘導体の残基が含まれる場合、D型およびL型がいずれも含まれ、およびそれらの生理学的に許容される塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用な性質を有する新規化合物、特に薬剤の製造に用いられる新規化合物、その製造方法および該化合物を含む薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
類似した化合物、しかしN−アルキル化されていないものが、例えばEP 0 406 428およびFEBS Lett.291,50-54(1991)から公知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、医薬として有用な新規化合物、インテグリン阻害剤として作用し、特に循環、脈管形成障害、微生物感染の予防および治療、および腫瘍治療に有用な新規化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は本発明により達成された。本発明の新規化合物は、式I:
シクロ−(nArg−nGly−nAsp−nD−nE) I
[式中、DおよびEは、各々相互に独立して、Gly、Ala、β−Ala、Asn、Asp、Asp(OR)、Arg、Cha、Cys、Gln、Glu、His、Ile、Leu、Lys、Lys(Ac)、Lys(AcNH2)、Lys(AcSH)、Met、Nal、Nle、Orn、Phe、4−Hal−Phe、homo−Phe、Phg、Pro、Pya、Ser、Thr、Tia、Tic、Trp、TyrまたはValであり、これらアミノ酸残基が誘導体にされていてもよく、
Rは、1〜18個の炭素原子を有するアルキルであり、
Halは、F、Cl、BrまたはIであり、
Acは、1〜10個の炭素原子を有するアルカノイル、7〜11個の炭素原子を有するアロイルまたは8〜12個の炭素原子を有するアルアルカノイルであり、
nは、無置換を表わすか、または相当するアミノ酸残基のアルファーアミノ官能基にアルキル基R、ベンジルまたは7〜18個の炭素原子を有するアルアルキル基である]で示される環状ペプチド、但し少なくとも一つのアミノ酸残基が置換基nを有し且つ光学活性アミノ酸およびアミノ酸誘導体の残基が含まれる場合、D型およびL型がいずれも含まれ、およびそれらの生理学的に許容される塩。
【0005】
驚くべきことに、式Iの化合物およびそれらの塩は非常に有用な性質を有することが発見された。特に、それらはインテグリン阻害剤として作用し、この場合それらは、特にリガンドとβ3−またはβ5−インテグリン受容体との相互作用を阻害する。化合物は、インテグリンαvβ3、αVβ5およびαIIbβ3の場合において特に活性であり、αVβ1−、αVβ6−およびαVβ8−受容体に関してもそうである。これらの作用は、例えばJ.W.Smith等によりJ.Biol.Chem.265,12267-12271(1990)に記載されている方法に従って示される。加えて、抗炎症効果がある。
【0006】
脈管系インテグリンと細胞外マトリックスタンパクとの相互作用に対する脈管形成の発達の依存性が、P.C.Brooks、 R.A.ClarkおよびD.A.ChereshによりScience 264,569-71(1994)に記載されている。
【0007】
環状ペプチドによるこの相互作用を阻害する可能性および脈管形成血管細胞のアポトシス(プログラムされた細胞死)の相ともなう開始が、P.C. Brooks、 A.M.Montgomery、 M.Rosenfeld、 R.A.Reisfeld、T.-Hu、G.KlierおよびD.A.ChereshによりCell 79,1157-64(1994)に記載されている。
【0008】
インテグリン受容体とリガンド、例えばフィブリノゲン受容体(グリコプロテインIIb/IIIa)へのフィブリノゲンの相互作用を阻止する式Iの化合物は、転移による腫瘍細胞の増殖を防ぐGPIIb/IIIa拮抗物質として作用する。こらは以下の観察によって示される。即ち、
【0009】
これら化合物は、インテグリンに対するメタロプロテイナーゼの結合を阻害し、従って細胞がプロテイナーゼの酵素活性を使えないようにする。これは、例えば、環状RGDペプチドによるマトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)からヴィトロネクチン受容体αVβ3への結合の阻害が、P.C.Brooks等によりCell 85,683-693(1996)に記載されている。
【0010】
局所の腫瘍から血管系へ腫瘍細胞の広がりは、腫瘍細胞と血液血小板の相互作用による微小凝集体(微小血栓)の形成を通じて起こる。腫瘍細胞は、微小凝集体中でもたらされる保護にかくまわれて、免疫系の細胞によって認識されない。
【0011】
微小凝集体は、血管壁に止まり、腫瘍細胞の組織への侵入を促進する。微小血栓の形成は、活性化された血液血小板上のフィブリノゲン受容体に対するフィブリノゲンの結合が介在しているので、GPIIa/IIIb拮抗物質が転移の効果的な阻害剤と考えられる。
【0012】
式Iの化合物は、生体材料、埋め込み材、カテーテルまたはペースメーカーが用いられる手術の場合に抗微生物物質としても用いられる。この場合それらは抗菌作用を有する。抗微生物作用の効果は、P.Valentin-Weigund等によりInfection and Immunity,2851-2855(1988)に記載されている。
【0013】
式Iの化合物は、フィブリノゲン結合の阻害剤、従って血液血小板上のフィブリノゲン受容体のリガンドとなっているから、それらが同位体標識検出基またはUV検出基で置換されているならば、それらは血栓の検出と位置のための診断試薬として血管系インヴィヴォで使用される。画像を出す方法において、生体中の腫瘍を検出および位置付ける(腫瘍イメージング、PET)ことができる。
【0014】
フィブリノゲン結合の阻害剤としての式Iの化合物は、異なる活性化段階およびフィブリノゲン受容体の細胞内シグナルメカニズムに関する血液血小板上のメタボリズムを研究することに効果的な補助物としても使用できる。受容体への結合後の取り込みラベル(例えばビオチニル、biotinyl)の検出単位は、該メカニズムが研究されるようにする。
従って化合物は、インテグリン、特にインテグリンαVβ3、αVβ5およびαIIbβ3のみならずαVβ1、αVβ6およびαVβ8に対する天然または合成のリガンドの結合を阻害する性質をもつ。
【0015】
さらに、それらは先行技術に対して一つ以上のペプチド結合のN−アルキル化が代謝安定性および増加した脂溶性をもたらすという利点をもつ。N−アルキルはC=Oに対してHドナーになりえないので、可能な水素結合の減少によって浸透膜の容量が改善され、そのため経口吸収の増大を獲得でき、さらに、増大した血漿タンパク結合が生じる。
【0016】
ペプチド結合のN−アルキル化は、化合物の阻害強度を増加させ、特異的インテグリンについての阻害の選択性を高める。選択性は、特にN−アルキル基の位置と数によって影響される。
【0017】
化合物は、ヒトおよび動物医薬における医薬活性成分として用いられ、特に、循環障害、血栓症、心筋梗塞、動脈硬化、炎症、卒中、狭心症、腫瘍障害、骨融解性障害、特に骨粗鬆症、脈管形成および脈管形成から生じる障害、例えば眼の糖尿病性網膜症、黄斑変性症、近視、眼ヒストプラスマ症、リュウマチ関節炎、骨関節炎、血管新生緑内症、および潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、乾癬および血管形成術後の再狭窄の予防および治療に対してである。化合物は、さらに、微生物感染および急性腎不全における治癒過程を改善および支援のために使用される。
【0018】
これらの作用は、例えばP.C.Brooks等によりCell 79,1157-1164(1994)またはScience 264,569-571(1994)に記載されているように文献から知られる方法によって示される。
【0019】
上記および下記のアミノ酸残基の略号は、以下のアミノ酸の残基を表わす。即ち、
Abu 4−アミノ酪酸
Aha 6−アミノヘキサン酸
Ala アラニン
Asn アスパラギン
Asp アスパラギン酸
Asp(OR) アスパラギン酸(β−エスエル)
Arg アルギニン
Cha 3−シクロヘキシルアラニン
Cit シトルリン
Cys システイン
【0020】
Dab 2,4−ジアミノ酪酸
Dap 2,3−ジアミノプロピオン酸
Gln グルタミン
Glu グルタミン酸
Gly グリシン
His ヒスチジン
Ile イソロイシン
Leu ロイシン
Lys リジン
【0021】
【化1】


Met メチオニン
Nal 3−(2−ナフチル)アラニン
Nle ノルロイシン
Orn オルニチン
Phe フェニルアラニン
4−Hal−Phe 4−ハロフェニルアラニン
Phg フェニルグリシン
Pro プロリン
【0022】
Pya 3−(2−ピリジル)アラニン
Sar サルコシン(N−メチルグリシン)
Ser セリン
Tia 3−(2−チエニル)アラニン
Tic テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸
Thr スレオニン
Trp トリプトファン
Tyr チロシン
Val バリン。
【0023】
加えて、下記略号の意味は以下の通りである。即ち、
BOC 第3−ブトキシカルボニル
Bzl ベンジル
DCCI ジシクロヘキシルカルボジイミド
DMF ジメチルホルムアミド
EDCI N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩
Et エチル
Fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
Me メチル
Mtr 4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニルスルホニル
【0024】
NMe N−メチル化α−アミノ基
OBut 第3−ブチルエステル
OMe メチルエステル
OEt エチルエステル
POA フェノキシアセチル
iPr イソプロピル
nPr n−プロピル
TBTU 2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート
TFA トリフルオロ酢酸。
【0025】
上述したアミノ酸が、いくつかのエナンチオマー型で存在することができる場合、これらの型およびそれらの混合物(例えば、DL−型)の全ては、上記および下記において式Iの化合物の成分として含まれる。例えば式Iの化合物の成分としてのアミノ酸に、それ自体公知の適当な保護基をつけることもできる。
【0026】
加えて、本発明は、アミノ酸残基が完全または部分的に誘導体にされているペプチドも含む。“誘導体にされている”という語句は、所謂“プロドラッグ”、例えば少し挙げると、ArgのN−グアニジノ−アシル誘導体、Aspのβ−エステル、リジンの
【化2】


さらに、アミノ酸残基は、部分的にC−アルファ−アルキル化されていてもよく、または例えば診断用には同位体標識されていてもよい。構成単位DおよびEの側鎖がアミノ、カルボキシルまたはメルカプト基で誘導体にされている式Iの化合物も含まれる。何故なら、そのような誘導体は、例えば免疫目的または抗体産生のための高分子結合体の製造に対する重要な原料となるからである。また、あるアミノ酸残基または誘導体にされているアミノ酸残基の側鎖の官能基をアフィニティクロマトグラフィーカラムの製造のためにペプチドをポリマー材料に固定化するために使用したり、または診断用補助試薬、例えば蛍光性置換基、で誘導体化するために官能基を活用することができる。
【0027】
さらに、本発明は、請求項1に記載の式Iで示される化合物の官能性誘導体のひとつを、加溶媒分解または水素化分解剤で処理することにより遊離させるか、または式II:
H−Z−OH II
【化3】


のペプチドまたはそのようなペプチドの反応性誘導体を環化剤で処理するか、またはそれ自体式Iに対応し、一つ以上の遊離アミノ基、酸基および/または活性化されたα炭素原子を有する環状ペプチドをアルキル化、アシル化またはエステル化することにより誘導するか、および/または式Iの塩基性または酸性化合物を酸または塩基で処理することによりその塩のひとつに変換することを特徴とする、請求項1に記載の式Iで示される化合物またはその塩のひとつの製造方法に関する。
【0028】
上記および下記の基D、Eおよびnは、特にことわらない限り式IおよびIIの場合にあたえられた意味を有する。各基に対して使用される文字はアミノ酸に対する一字コードとは無関係である。
【0029】
上記式において、アルキルは、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである。
【0030】
基Dは、好ましくはPhe、同じく好ましくはD−Phe、そしてまた4−Hal−Phe、特に4−I−PheおよびTrp、Tyr、homo−Phe、NalまたはPhgであり、D型も同様に好ましい。
【0031】
Eは、好ましくは疎水性アミノ酸残基であり、特にGly、Ala、Val、Leu、NleまたはIleである。任意記号nは、ペプチド中のN−メチル、N−エチル、N−プロピル、N−ベンジルまたはN−イソプロピルで置換されたα−アミノ基であり、二つ以上のアミノ酸残基が同一または異なるアルキル基でN−置換されていてもよい。
【0032】
従って、本発明は、述べられた基の少なくともひとつが上述した好ましい意味のひとつを有する式Iの化合物に関する。
【0033】
好ましい化合物群は、DがD−Phe、Phe、D−Trp、Trp、D−Tyr、Tyr、D−homo−Phe、homo−Phe、D−Nal、Nal、D−Phg、Phgまたは4−Hal−Phe(DまたはL型)であり、およびEが、Val、Gly、Ala、Leu、IleまたはNleである以外は式Iに対応するサブ式Iaにより表わされる。
【0034】
他の好ましい化合物群は、DがD−Pheであり、およびEが、Gly、Ala、Val、Leu、IleまたはNleであり、アミノ酸残基Arg、GlyおよびAspのひとつがα−アミノ基上にアルキル置換基を有する以外は式Iに対応するサブ式Ibにより表わされる。
【0035】
さらなる好ましい化合物群は、アミノ酸残基DまたはEのひとつがα−アミノ基上でアルキル化されている以外はサブ式IaおよびIb、および式Iに対応するサブ式Icにより表わされる。
【0036】
さらに、特に好ましいのは、サブ式Ia、IbおよびIcに属する化合物の全ての生理学的に許容される塩である。
【0037】
さらに、式Iの化合物またそれらの製造のための出発物質は、文献[例えばHouben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie(Methods of Organic Chemistry)Georg-Thieme-Verlag,Stuttgart のような標準的な本]に記載されている公知の方法によって、特に該反応に対して公知で適当な反応条件下で製造される。これに関連して、ここで詳しくは述べられていない公知の変法を使用することもできる。
【0038】
所望により、出発物質はまた、それらが反応混合物から単離されずに、式Iの化合物を与えるよう直ちに反応にまわされるように、そのままの状態でつくられる。
【0039】
式Iの化合物は、それらの官能性誘導体から、加溶媒分解、特に加水分解により、または水素化分解により遊離させることによって得られる。
【0040】
加溶媒分解または水素化分解に対する好ましい出発物質は、ひとつ以上の遊離アミノおよび/またはヒドロキシル基の代りに適当に保護されたアミノおよび/またはヒドロキシル基を含むもの、好ましくは、窒素原子についている水素原子の代りにアミノ保護基をもつものであり、例えばNH2基の代りにNHR′基(式中、R′はアミノ保護基、例えばBOCまたはCBZである)を含む以外は式Iに対応するものである。
【0041】
他の好ましい出発物質は、ヒドロキシル基の水素原子の代りにヒドロキシル保護基をもつものであり、例えばヒドロキシフェニル基の代りにR″O−フェニル基(式中、R″はヒドロキシル保護基である)を含む以外は式Iに対応するものである。
【0042】
二つ以上の、同じくまたは異なって保護されたアミノ基および/またはヒドロキシル基が、出発物質の分子中に存在することもできる。存在する保護基が互いに異なるならば、多くの場合、それらは選択的に脱離される。
【0043】
“アミノ保護基”なる表現は、一般に公知であり、化学反応からアミノ基を保護(ブロッキング)するのに適するが、所望の化学反応が分子中の他の位置で行われた後、容易に除去される基に関する。このような基の典型的なものは、特に、非置換または置換アシル、アリール、アルアルコキシメチルまたはアルアルキル基である。アミノ保護基は、所望の反応(または連続反応)後に除去されるので、それらの性質および大きさはそれほど厳密ではないが、1〜20個、特に1〜8個の炭素原子を有するものが好ましい。“アシル基”なる表現は、本製造方法に関してより広い意味に解釈されるべきである。それは、脂肪族、芳香族脂式、芳香族または複素環式のカルボン酸またはスルホン酸から誘導されるアシル基、特に、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニルおよび、就中、アルアルコキシカルボニル基を含む。このようなアシル基の例は、アセチル、プロピオニル、ブチリル等のアルカノイル;フェニルアセチル等のアルアルカノイル;ベンゾイルまたはトルオイル等のアロイル;POA等のアリールオキシアルカノイル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、BOC、2−ヨードエトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル;CBZ(“カルボベンゾキシ”)、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、FMOC等のアルアルキルオキシカルボニル;およびMtr等のアリールスルホニルである。好ましいアミノ保護基は、BOCおよびMtrであり、またCBZ、Fmoc、ベンジルおよびアセチルである。
【0044】
“ヒドロキシル保護基”なる表現は、一般に公知でもあり、化学反応からヒドロキシル基を保護するのに適するが、所望の化学反応が分子中の他の位置で行われた後、容易に除去される基に関する。このような基の典型的なものは、特に、前記の非置換または置換アリール基、アルアルキル基またはアシル基、またアルキル基である。所望の化学反応または連続反応の後に除去されるので、ヒドロキシル保護基の性質および大きさはそれほど厳密ではないが、1〜20個、特に1〜10個の炭素原子を有するものが好ましい。ヒドロキシル保護基の例としては、ベンジル、p−ニトロベンジル、p−トルエンスルホニル、tert−ブチルおよびアセチルが含まれ、ベンジルおよびtert−ブチルが特に好ましい。アスパラギン酸およびグルタミン酸のCOOH基は、好ましくはtert−ブチルエステル(例えばAsp(OBut))の形で保護される。
【0045】
出発物質として使用される式Iの化合物の官能性誘導体は、例えば特許出願書および前述の標準的な本に記載されているようなアミノ酸およびペプチド合成の通常の方法によって、例えばメリフィールドによる固相法[B.F.Gysin およびR.B.Merrifield,J.Am.Chem.Soc.94,3102頁以下(1972)]によって製造される。
【0046】
式Iの化合物をそれらの官能性誘導体から遊離させるのは、使用される保護基によって、例えば強酸、好適にはTFAまたは過塩素酸、また塩酸または硫酸のような他の無機強酸、トリクロロ酢酸のような強有機カルボン酸、またはベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸のようなスルホン酸を用いて行われる。追加的な不活性溶媒を存在させることは可能であるが、常には必要でない。適当な不活性溶媒は、好ましくは、有機の、例えば酢酸のようなカルボン酸、テトラヒドロフランまたはジオキサンのようなエーテル、DMFのようなアミド、ジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素、およびメタノール、エタノールまたはイソプロパノールのようなアルコール、および水である。上述した溶媒の混合物も適している。TFAは、好ましくは、さらに溶媒を加えることなく過剰な量で、過塩素酸は9:1の比の酢酸と70%過塩素酸の混合物の形態で使用される。開裂に対する反応温度は、好適には約0°と約50°の間であり、15°と30°(室温)との間で行われる。
【0047】
基BOC、OButおよびMtrは、例えば好ましくはジクロロメタン中TFAを使用して、または15〜30°でジオキサン中の約3〜5N HClをを用いて除去されるが、FMOC基は、15〜30°でDMF中のジメチルアミン、ジエチルアミンまたはピペリジンの約5〜50%溶液を使用して脱離される。
【0048】
水素化分解により除去される保護基(例えばCBZまたはベンジル)は、例えば触媒(例えばパラジウム等の貴金属触媒、好ましくは活性炭のような担体上で)の存在下、水素で処理することにより脱離される。この場合における適当な溶媒は、上述した溶媒、特に、メタノールまたはエタノールのようなアルコール、またはDMFのようなアミドである。水素化分解は、原則として約0°と約100°の間の温度および約1バールと約200バールとの間の圧力、好ましくは20〜30°および1〜10バールで行われる。CBZ基の水素化分解は、例えばメタノール中、5〜10%Pd−C上で、または20〜30°でメタノール/DMF中、Pd−C上ギ酸アンモニウム(H2の代り)を使用して容易に行うことができる。
【0049】
式Iの化合物は、ペプチド合成の条件下において式IIの化合物を環化することによっても得られる。この場合、反応は、好適には例えばHouben-Weyl,l.c.Volume 15/II,1〜806頁(1974)に記載されているようなペプチド合成の通常の方法に従って行われる。
【0050】
反応は、好ましくは、約−10°と約40°の間、好ましくは0°と30°の間で、例えば、ジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフランまたはジオキサンのようなエーテル、DMFまたはジメチルアセトアミドのようなアミド、アセトニトリルのようなニトリル等の不活性溶媒中、またはこれらの溶媒の混合物中で、脱水剤、例えばDCCIまたはEDCI等のカルボジイミド、および加えて、プロパンリン酸無水物(Angew.Chem.92,129(1980)参照)、ジフェニルホスホリルアジドまたは2−エトキシ−N−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンの存在下において行われる。分子間ペプチド結合よりも分子内環化を促進するために、希釈溶液(希釈原理)中で行うのが好適である。
【0051】
IIの代りに、これらの物質の適当な反応性誘導体、例えば反応性基が保護基により中間的にブロックされたものを反応に使用することもできる。アミノ酸誘導体IIは、好適には例えばHOBtまたはN−ヒドロキシサクシンイミドの添加によりそのまま形成される活性エステルの形態で使用される。
【0052】
一般に、式IIの出発物質は新規である。それらは、公知の方法、例えばペプチド合成および保護基の脱離の上述した方法によって製造される。
【0053】
一般に、式R′−Z−OR″、例えばBOC−Z−OMeまたはBOC−Z−OEt、の保護されたペンタペプチドエステルをはじめに合成し、先ず加水分解して式R′−Z−OH、例えばBOC−Z−OHの酸を与え、保護基R′をこれらの酸から脱離して式H−Z−OH(II)の遊離ペプチドを与える。
【0054】
それ自体式Iの化合物に対応するシクロペプチドの誘導体形成は、アミンのアルキル化、カルボン酸のエステル化または脂肪族炭素原子での求核置換反応に対して知られており且つ有機化学の教科書、例えば、J.March,Adv.Org.Chem.,John Wiely & Sons N.Y.(1985)、に記載されているようなそれ自体公知の方法によってなされる。
【0055】
式Iの塩基を、酸を用いて、会合酸付加塩に変換できる。この反応に対して適当な酸は、特に生理学的に許容される塩を生成するものである。従って、例えば硫酸、硝酸、塩酸または臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、オルトリン酸等のリン酸またはスルファミン酸等の無機酸、また有機酸特に、脂肪族、脂環式、芳香族脂式、芳香族または複素環式モノまたは多塩基性カルボン酸、スルホン酸またはスルフリル酸、例えば蟻酸、酢酸、、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマール酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、サリチル酸、2−または3−フェニルプロピオン酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン−またはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノ−および−ジスルホン酸およびラウリルスルホン酸が用いられる。生理学的に許容されない酸塩、例えばピクリン酸塩は式Iの化合物の単離および/または精製のために使用される。
【0056】
他方において、式Iの酸は、塩基との反応によって、その生理学的に許容される金属塩またはアンモニウム塩のひとつに変換される。この場合の特に適当な塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウム各塩、またジメチル−、ジエチル−またはジイソプロピルアンモニウム各塩、モノエタノール−、ジエタノール−またはトリエタノールアンモニウム各塩、シクロヘキシル−またはジシクロヘキシルアンモニウム各塩、ジベンジルエチレンジアンモニウム塩、そしてまた、例えばN−メチル−D−グルカミン、アルギニンまたはリジンとの塩である。
【0057】
式Iの新規化合物およびそれらの生理学的に許容される塩は、少なくとも一つの賦形剤または補助剤、および所望により一つまたはそれ以上の活性成分と一緒に、それらを適当な投与形態することによる医薬製剤の製造に用いられる。このようにして得られる製剤は、ヒトまたは動物の臨床における医薬として使用できる。適当な賦形剤は、経腸(たとえば経口または直腸)、非経腸(例えば静脈注射)または局所(例えば局部、皮膚、眼または鼻)投与、または吸入スプレーの形態での投与に適し、該新規化合物と反応しない有機または無機物質、例えば水または等張食塩水溶液、低級アルコール、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテートおよび他の脂肪酸グリセリド、ゼラチン、大豆レシチン、乳糖またはデンプンのような炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはセルロースおよびワセリンである。経口投与には、特に素錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ジュース剤またはドロップ剤が有用であり、被覆錠剤および腸溶性被覆またはカプセル殻を有するカプセル剤は特に興味がある。直腸投与には坐剤、非経腸投与には、溶液剤好ましくは油性または水性溶液剤、さらに懸濁剤、乳剤または埋め込み剤が用いられる。
【0058】
局所適用の適当な形態の例は、点眼剤の形態で使用される溶液剤、さらに、例えば懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤または湿布剤である。吸入スプレーとしての投与には、噴射ガスまたは噴射ガス混合物(例えば、CO2またはフルオロクロロ炭化水素代替物)中に溶解または懸濁されている活性成分を含むスプレー剤が使用される。活性成分は、好適にはこの場合微粒子化して用いられ、一つまたはそれ以上加えられる生理学的に許容される溶媒、例えばエタノールが存在していてもよい。吸入液は、通常の吸入器の助けをかりて投与できる。本新規化合物は凍結乾燥され、得られた該凍結乾燥体はたとえば注射剤の製造に用いられる。注射剤は、一度にまたは連続注入(例えば静脈内、筋肉内、皮下または脊椎内)の形態で投与される。上述した製剤は、滅菌することができ、および/または保存料、安定剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝剤、着色料および/または香料・矯味剤等の補助剤を含む。所望により、それらは一つまたはそれ以上の活性成分、たとえば一つまたはそれ以上のビタミンを含んでいてもよい。
【0059】
一般に、本発明に記載の物質は、他の公知の市販ペプチドと同様にして、特にUS-A-4 472 305に記載されている化合物と同様にして、好ましくは用量単位当り0.05〜500mg、特に0.5〜100mgの用量で投与される。1日用量は、好ましくは約0.01〜2mg/kg体重である。しかし、個々の特定の患者に対する特定の用量は、様々の因子、例えば使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般健康状態、性、食事、投与の時間および経路、排泄速度、薬剤の組み合わせおよび治療の対象である特定の障害の重症度による。非経腸投与が好ましい。
【0060】
ArgまたはDArgがOrnまたはDOrnで置き変わっている本発明の化合物は、Ornをグアニジンとの反応でArgに変換できるので、本発明に属するペプチドの合成のための前駆体として使用される。特にこの方法は、放射活性ラベル化Argペプチドを得るために11Cまたは14C同位体をペプチドに導入する上で適している。
【0061】
さらに、式Iの新規化合物は、純粋な形態のインテグリンの製造に使用されるアフィニティクロマトグラフィー用のカラムの製造のためのインテグリンリガンドとして使用される。
【0062】
この場合、リガンド、すなわち式Iのペプチド誘導体、は固定機能基を通して重合性支持体に共有結合している。
【0063】
適当な重合性支持体物質は、ペプチド化学で公知の、好ましくは親水性をもつ重合性固体面、例えばセルロース、セファロースまたはセファデックス(商品名)、アクリルアミド、ポリエチレングリコールにもとづく重合体またはテンタケル重合体(商品名)等の架橋多糖類である。
【0064】
重合性支持体に結合している適当な固定官能基は、好ましくは2〜12個の炭素原子を有する線状のアルキレン鎖であって、これは一方の末端で重合体に直接結合し、そして他方の端に官能基、例えばヒドロキシル、アミノ、メルカプト、マレイミドまたは−COOH、を有し且つそれぞれのペプチドのC−末端部分またはN−末端部分に結合するのに適している。
【0065】
この場合、ペプチドが重合体の固定基に直接、または第二の固定官能基を通して結合することはできる。官能基化された側鎖を有するアミノ酸残基を含むペプチドが、これらの側鎖を通して重合体の固定官能基に結合することもできる。
【0066】
さらに、式Iのペプチドの構成成分であるアミノ酸残基は、例えばSH、OH、NH2またはCOOH基を通して重合体の固定基とのつなぎに利用されるように、それらの側鎖において修飾される。
【0067】
これに関連して、異常アミノ酸が可能であって、例としてはフェニル環の4位にメルカプト、ヒドロキシル、アミノまたは官能基が鎖の末端に位置するカルボキシアルキル鎖をもつフェニルアラニン誘導体が挙げられる。
【0068】
側鎖が固定官能基として直接使用できるアミノ酸残基の例は、例えば、Lys、Orn、Arg、Dab、Dap、Asp、Asn、Glu、Gln、Ser、Thr、Cys、CitまたはTyrである。
【0069】
N末端固定基の例は、例えば、−CO−Cn2n−NH2、−CO−Cn2n−OH、−CO−Cn2n−SHまたは−CO−Cn2n−COOH等の基であり、ここでnは2〜12であり、アルキレン鎖の長さは厳密ではなく、所望により、この鎖が、例えば適当なアリールまたはアルキルアリール基により置き変わっていてもよい。
【0070】
C末端固定基は、例えば、−O−Cn2n−SH、−O−Cn2n−OH、−O−Cn2n−NH2、−O−Cn2n−COOH、−NH−Cn2n−SH、−NH−Cn2n−OH、−NH−Cn2n−NH2または−NH−Cn2n−COOの基であり、ここでnおよびアルキレン鎖は共に、すでに前述されたものに適応する。
【0071】
NおよびC末端固定基は、アミノ酸残基のすでに官能基化された側鎖に対する固定基成分としても使用される。この場合の適当なアミノ酸残基は、Lys(CO−C510−NH2)、Asp(NH−C36−COOH)またはCys(C36−NH2)のようなものであり、固定基は、側鎖の官能基に常に結合している。
【0072】
インテグリンを精製するためのアフィニティクロマトグラフィー用の物質は、アミノ酸の縮合では通常であり、それ自体公知の条件で製造され、式Iの化合物の製造のところで既述されている。
【0073】
アフィニティクロマトグラフィーカラムの製造のため重合体物質に固定化するためのシクロペプチドの使用に加えて、官能基化された側鎖をもつ化合物を診断補助試薬、例えば蛍光性置換基によってさらに誘導体にするために利用することができる。
【0074】
さらに、アミノ基、メルカプト基またはカルボキシル基等の官能基を、基DおよびEの側鎖に導入することもでき、それからその官能基を使って、例えば免疫目的および/または抗体産生のためにタンパクとか他の高分子物質との結合体を製造するができる。
【0075】
前記および後記の全ての温度は摂氏(゜C)を意味する。以下の実施例で”通常の処理”は、必要であれば水を加え、混合物を中和し、エーテルまたはジクロロメタンで抽出し、層を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過そして留去して濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーおよび/または結晶化により精製する。RTは保持時間(分)である。分析はリクロソルブ(商品名)RPセレクトB(7μm)−250×4mmカラム、溶出液A:0.3%TFA水溶液;溶出液B:2−プロパノール/水(8:2)中の0.3%TFA、Bは1〜99%のグラジエントにして1ml/分の流速で50分そして215nmにおける検出でHPLCにより行われた。M+は、“高速原子衝撃”(FAB)法により得られるマススペクトルにおける分子ピークである。
【実施例】
【0076】
実施例1
DMF15ml中のH−NMe−Arg(Mtr)−Gly−Asp(OBut)−D−Phe−Val−ONa[例えば、Fmoc−NMe−Arg(Mtr)−Gly−Asp(OBut)−D−Phe−Val−O−Wang(式中、O−Wangは変形メリフィールド法で用いられる4−ヒドロキシメチル−フェノキシメチル−ポリスチレン樹脂の基)からピペリジン/DMFによりFmoc基を除去し、TFA/CH2Cl2(1:1)により樹脂を脱離して得られる]0.6gの溶液を、ジクロロメタン85mlでうすめ、NaHCO3 50mgを加える。ドライアイス/アセトン混合物中で冷却した後、ジフェニルホスホリルアジド40μlを加える。16時間室温に放置後、溶液を濃縮する。濃縮物をゲルろ過(イソプロパノール/水8:2のセファデックスG10カラム)し、HPLCにより通常の様にして精製する。TFA/H2O(98:2)で処理し、シクロ−(NMe−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Val)、RT=18.1;FAB−MS(M+H):589、を与える。
【0077】
以下のものが、同様にして対応する線状ペプチドの環化および保護基の脱離により得られる。
【化4】

【0078】
【化5】

【0079】
【化6】

【0080】
【化7】

【0081】
【化8】

【0082】
【化9】

【0083】
【化10】

【0084】
【化11】

【0085】
【化12】

【0086】
【化13】

【0087】
【化14】

【0088】
【化15】

【0089】
【化16】

【0090】
【化17】

【0091】
【化18】

【0092】
【化19】

【0093】
【化20】

【0094】
【化21】

【0095】
【化22】

【0096】
【化23】

【0097】
【化24】

【0098】
【化25】

【0099】
【化26】

【0100】
実施例2
TFA8.4ml、ジクロロメタン1.7mlおよびチオフェノール0.9ml中のシクロ−(Arg(Mtr)−Gly−Asp−NMePhe−DVal)[実施例1に記載の環化により得られる]0.28gの溶液を、室温で4時間放置し、次いで濃縮し、残渣を水でうすめ、次いで凍結乾燥する。セファデックスG10上でのゲルろ過(酢酸/水1:1)および上記の条件下での分取用HPLC、つづいての精製によって、シクロ−(Arg−Gly−Asp−NMePhe−DVal)を得る;FAB−MS(M+H):589。
【0101】
以下のものが、同様にして得られる。
【化27】

【0102】
【化28】

【0103】
実施例3
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)80mgを、5〜6回0.01M HClに溶解し、それぞれの溶解操作後に凍結乾燥する。HPLC、つづいての精製によって、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×HClを得る;FAB−MS(M+H):589。
【0104】
以下のものが、同様にして得られる。
【化29】

【0105】
同様にして、以下のものが、酢酸(AcOH)で処理することにより得られる。
【化30】

【0106】
同様にして、以下のものが、メタンスルホン酸(MeSO3H)で処理することにより得られる。
【化31】

【0107】
実施例4
アフィニティー相を製造するために、N−マレイミド−(CH25−CO−NH−(CH23重合体[N−マレイミド−(CH25−COOHとH2N−(CH23重合体との縮合によって得られる]0.9gを、0.1M燐酸ナトリウム緩衝液10ml中にpH7で懸濁し、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeLys(CO(CH22SH))1当量を4゜で加える。反応混合物を4時間撹拌し、同時に室温に加温し、固体残渣をろ過し、各々10mlの緩衝液(pH7)で2回、次いで各々10mlの水で3回洗浄する。シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeLys(CO(CH22S−3−(N−マレイミド−(CH25CONH−(CH23重合体))が得られる。
【0108】
実施例5
実施例4と同様にして、重合体−O−(CH23−NH2[商業的に入手できる]およびシクロ−(Arg−Gly−Asp−NMe−DPhe−Lys(CO(CH24COOH))[アジピン酸をシクロ−(Arg−Gly−Asp−NMe−DPhe−Lys)と上述した条件下に縮合することによって得られる]の縮合によって、次の重合体相:シクロ−(Arg−Gly−Asp−NMe−DPhe−Lys−(CO(CH24−CO−NH−(CH23−O−重合体))、を与える。
【0109】
以下のものが、同様にして縮合によって得られる。
HOOC−CH2−O−重合体とシクロ−(NMe−Arg−Gly−Asp−DPhe−Lys−(CO(CH25−NH2))とから、
シクロ−(NMe−Arg−Gly−Asp−DPhe−Lys−(CO(CH25−NH−CO−CH2−O−重合体))。
【0110】
次の実施例は医薬製剤に関するものである。
【0111】
実施例A:注射バイアル剤
式Iのシクロペプチド100gおよび重リン酸ソーダ5gを2N塩酸によりpH6.5に調節された3リットルの二回蒸留水溶液とし、ろ過滅菌し、注射用バイアルに充填し、無菌条件下に凍結乾燥し、バイアルを無菌的に封をする。各注射用バイアルは5mgの活性成分を含有する。
【0112】
実施例B:座剤
式Iの活性成分20g、大豆レシチン100gおよびココアバター1400gを混合したものを溶かし、型にながし、ついで冷やす。各座剤は20mgの活性成分を含有する。
【0113】
実施例C:溶液剤
式Iの活性成分1g、NaH2PO4×2H2O 9.38g、Na2HPO4×12H2O 28.48gおよび塩化ベンザルコニウム0.1gを二回蒸留水 940mlに溶かす。該溶液はpH6.8に調整され且つ1リットルとされ、照射により滅菌される。該溶液は点眼剤のかたちにて使用される。
【0114】
実施例D:軟膏剤
式Iの活性成分500mgを無菌条件下にワセリン99.5gと混合する。
【0115】
実施例E:錠剤
式Iのシクロペプチド100g、ラクトース1kg、微小結晶性セルロース600g、トウモロコシ澱粉600g、ポリビニルピロリドン100g、タルク80gおよびステアリン酸マグネシウム10gの混合物を、通常の方法で圧縮し、各錠剤が10mgの活性成分を含有するように錠剤とする。
【0116】
実施例F:被覆錠剤
実施例Eで述べた様にして、錠剤は、圧縮され、ついでショ糖、トウモロコシ澱粉、タルク、トラガカントおよび着色料からなるコーティング剤で通常の方法により被覆される。
【0117】
実施例G:カプセル剤
各カプセルが活性成分5mgを含有するように、通常の方法で式Iの活性成分を硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0118】
実施例H:吸入スプレー剤
式Iの活性成分14gを等張NaCl溶液10リットルに溶解し、そして溶液を、商業的に入手できるポンプ機能を有するスプレー容器に充填する。溶液は、口または鼻にスプレーすることができる。1回のスプレー噴射(約0.1ml)は、約0.14mgの用量に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
シクロ−(nArg−nGly−nAsp−nD−nE) I
[式中、DおよびEは、各々相互に独立して、Gly、Ala、β−Ala、Asn、Asp、Asp(OR)、Arg、Cha、Cys、Gln、Glu、His、Ile、Leu、Lys、Lys(Ac)、Lys(AcNH2)、Lys(AcSH)、Met、Nal、Nle、Orn、Phe、4−Hal−Phe、homo−Phe、Phg、Pro、Pya、Ser、Thr、Tia、Tic、Trp、TyrまたはValであり、これらアミノ酸残基が誘導体にされていてもよく、
Rは、1〜18個の炭素原子を有するアルキルであり、
Halは、F、Cl、BrまたはIであり、
Acは、1〜10個の炭素原子を有するアルカノイル、7〜11個の炭素原子を有するアロイルまたは8〜12個の炭素原子を有するアルアルカノイルであり、
nは、無置換を表わすか、または相当するアミノ酸残基のアルファ−アミノ官能基にアルキル基R、ベンジルまたは7〜18個の炭素原子を有するアルアルキル基である]で示される環状ペプチド、但し少なくとも一つのアミノ酸残基が置換基nを有し且つ光学活性アミノ酸およびアミノ酸誘導体の残基が含まれる場合、D型およびL型がいずれも含まれ、およびそれらの生理学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の式Iで示される化合物のエナンチオマーまたはジアステレオマー。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物が、
【化1】

でありおよびそれらの生理学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1に記載の式Iで示される化合物の官能性誘導体のひとつを、加溶媒分解または水素化分解剤で処理することにより遊離させるか、または式II:
H−Z−OH II
【化2】

のペプチドまたはそのようなペプチドの反応性誘導体を環化剤で処理するか、またはそれ自体式Iに対応し、一つ以上の遊離アミノ基、酸基および/または活性化されたα炭素原子を有する環状ペプチドをアルキル化、アシル化またはエステル化することにより誘導するか、および/または式Iの塩基性または酸性化合物を酸または塩基で処理することによりその塩のひとつに変換することを特徴とする、請求項1に記載の式Iで示される化合物またはその塩のひとつの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の式Iで示される化合物および/またはその生理学的に許容される塩のひとつが、少なくとも一つの固体、液体または半液体の賦形剤または補助剤と一緒になって適切な投与形態にされることを特徴とする、医薬製剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の一般式Iで示される少なくともひとつの化合物および/またはその生理学的に許容される塩のひとつを含有することを特徴とする医薬製剤。
【請求項7】
疾病抑制に対する医薬の製造のための請求項1に記載の式Iで示される化合物またはそれらの生理学的に許容される塩の使用。
【請求項8】
疾病抑制における、請求項1に記載の式Iで示される化合物またはそれらの生理学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
アフィニティカラムクロマトグラフィーに対する固定化リガンドの製造のための請求項1に記載の式Iで示される化合物の使用。
【請求項10】
アフィニティクロマトグラフィーによるインテグリンの精製のための請求項1に記載の式Iで示される化合物の使用。

【公開番号】特開2007−186525(P2007−186525A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77893(P2007−77893)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【分割の表示】特願平8−263725の分割
【原出願日】平成8年9月13日(1996.9.13)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】