説明

瓦礫の分別システム

【課題】 瓦礫による機器の損傷の事態を回避し、浮揚物体の取り出しを容易にするとともに、沈降物体を大小に分別できるようにしてこの沈降物体の取り出しも容易かつ円滑に行うことができるようにした。
【解決手段】 水Wに浮揚可能な浮揚物体Gf及び水Wに沈降する沈降物体Gsを含む瓦礫Gが投入され、この投入された浮揚物体Gfと沈降物体Gaとを比重分離する水槽本体1を有した分離水槽Taを備え、水槽本体1の底部40側に、沈下した沈降物体Gsを受けるとともに所定の大きさ以下の沈降物体Gsを通過させて濾別するスクリーン10を設け、このスクリーン10を通過した水W及び沈降物体Gsを排出管13を介して貯留槽Tbに排出し、貯留槽Tb内に沈下した沈降物体Gsをスクリューコンベア40で取り出して集約できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、震災等によって発生する瓦礫を、木材などの水に浮揚可能な浮揚物体とコンクリートや金属などの水に沈降する沈降物体とに分離する瓦礫の分別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の瓦礫の分別システムとして、例えば、特許文献1(特開平9−75772号公報)に記載されたものが知られている。これは、水に浮揚可能な浮揚物体及び水に沈降する沈降物体を含む瓦礫を、水槽に投入し、この水槽内で浮揚物体と沈降物体とを比重分離し、水槽の底部に沈下した沈降物体をスクリューコンベヤで水槽の一方の側に押し上げて取り出すとともに、浮揚物体を補給水とともに水槽の上縁を越えて他方の側に溢れさせて取り出すことにより、瓦礫を分別するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−75772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来の瓦礫の分別システムにおいては、水槽内にスクリューコンベアを入れて沈降物体を水槽外に取り出すようにしているので、水槽に投入される瓦礫がスクリューコンベアに当たってスクリューコンベアを損傷し易く、また、水槽に投入されてもスクリューコンベアが邪魔になって浮揚物体の取り出しが円滑に行われにくいという問題があった。また、沈降物体には、例えば、コンクリートの塊において、大小さまざまな大きさのものがあるので、大きいものになるとスクリューコンベアでの搬送ができにくくなるものもあるという問題があった。そのため、ある程度、水槽に投入する前段階で、細かく破砕する等の工程が必要になり、それだけ、作業を煩雑にしているという欠点があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、瓦礫が投入される水槽内に取り出し用の機器を入れないようにして、瓦礫による機器の損傷の事態を回避し、浮揚物体の取り出しを容易にするとともに、沈降物体を大小に分別できるようにしてこの沈降物体の取り出しも容易かつ円滑に行うことができるようにした瓦礫の分別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明の瓦礫の分別システムは、水に浮揚可能な浮揚物体及び水に沈降する沈降物体を含む瓦礫が投入され該投入された浮揚物体と沈降物体とを比重分離する水槽本体を有した分離水槽を備えた瓦礫の分別システムにおいて、
上記水槽本体の底部側に、沈下した沈降物体を受けるとともに所定の大きさ以下の沈降物体を通過させて濾別するスクリーンを設けた構成としている。
尚、水は水槽本体内に連続供給され、あるいは、水が溜まった状態になっている。水槽本体内の水は、排出路を設けて適時に開いて排出する。
【0007】
ここで、瓦礫とは、例えば震災等によって、住宅やビルなどの建物、橋や道路などの各種施設、自然物等が破壊されて発生する残骸を言い、瓦、石、コンクリート、金属、木材、繊維製品、プラスチックなどの化学製品等を含むあらゆる廃材よりなる混合体を言う。瓦礫は、水に浮揚可能な浮揚物体及び水に沈降する沈降物体を含む。瓦礫の処理には、種々の方法があるが、先ずは、木材、軽いプラスチック等の浮揚物体と、石、コンクリートや金属などの沈降物体とに分別することが有効である。
【0008】
本発明が対象にする瓦礫は、水槽本体の大きさにもよるが、バケットを備えたショベルローダなどの建設機械によりある程度まとめて集約して投入できる大きさのものであり、比較的軽い浮揚物体はともかくとして、重量のある沈降物体で、1mを越えるような大きさのものは予め除いておくことが望ましい。
【0009】
そのため、上記スクリーンの孔の開口の最大寸法Dは、25mm≦D≦200mmに設定される。好ましくは、30mm≦D≦100mm、より好ましくは、40mm≦D≦60mmである。また、孔の開口率Aは、5%≦A≦80%である。好ましくは、8%≦A≦30%、より好ましくは、10%≦A≦15%である。
瓦礫中には種々のものがあるが、この範囲で、スクリーン上に金属等の重い瓦礫を集約することができる。また、開口率を30%以下にすると、スクリーンの強度が高くなり、金属等の重い瓦礫による、撓みや衝撃に強くなり、それだけ、耐久性が向上させられる。
この場合、例えば、上記スクリーンを、孔を行列状に開設した金属製の板で形成し、該孔の直径DをD=60mm±5mmに設定し、開口率AをA=10%±2%にしたことが有効である。板状なので、強度が高く、耐久性に優れる。
【0010】
本発明に係る瓦礫分別システムを用いて、このような瓦礫を分別するときは、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により、分離水槽の水槽本体に、瓦礫を投入する。瓦礫が投入されると、水槽本体には水があるので、浮揚物体は浮揚し、沈降物体は沈降する。この際、水槽本体にはコンベアなどの機器類が設けられていないので、これらの機器に瓦礫が当たって損傷させるという事態はない。また、浮揚物体は、水槽本体から溢れ出させ、あるいは、浮揚した状態で、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により再び取り出す。この場合、水槽本体にはコンベアなどの機器類が設けられていないので、邪魔になるものがなく、そのため、浮揚物体を容易に取り出すことができる。
【0011】
更に、水槽本体内では、沈降物体は底部に沈降していくが、底部側には、スクリーンが設けられているので、沈下した沈降物体が受けられ、スクリーンの孔を所定の大きさ以下の沈降物体が水とともに通過して排出される。
これにより、所定の大きさを越える大きさの沈降物体は、スクリーン上に濾別されて残る。この残った、比較的大きな沈降物体は、適時に、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により外部に取り出す。そのため、沈降物体の大小の分別も行うことができるので、極めて分別効率が良いものとなる。また、沈降物体が水槽本体内で機器に引っ掛かる等の事態もないことから、沈降物体の取り出しが容易に行われる。スクリーンの孔を通過した沈降物体は、適宜に回収しあるいは排出する。
【0012】
そして、必要に応じ、上記水槽本体を構成し上記スクリーンより上側の壁面の全部若しくは一部を上記沈降物体がスライド可能な傾斜面にした構成としている。これにより、沈降物体が傾斜面をスライドしてスクリーンに集束し易くなり、そのため、スクリーンでの濾別が確実に行われる。
【0013】
また、必要に応じ、上記水槽本体を、上端に矩形状の開口を形成する4つの側壁を備えて構成するとともに、互いに対向する2つの側壁を互いに傾斜させてその下端を連接して該連接部が底部となるように形成し、該水槽本体の底部側に上記スクリーンを設け、該スクリーンと底部との間に該スクリーンを通過した水及び沈降物体を収容する収容空間を設けた構成としている。
これにより、互いに対向する2つの側壁を互いに傾斜させてその下端を連接してこれを底部となるように形成したので、簡易な構造で製造を極めて容易にすることができる。また、スクリーンと底部との間に収容空間を設けたことから、沈降物体を収容空間に一時的に収用できるので、間欠的な排出に対応できる。また、連続的な排出においても水量を確保できるので、確実に排出を行うことができる。更に、対向する2つの側壁を傾斜させたので、この側壁の開口縁からショベルローダやグラップルなどの建設機械により浮揚物体を外部に取り出す際に、傾斜に沿ってショベル等を移動させて浮揚物体を掻き出すようにすることも行うが、傾斜していることから浮揚物体を外部に掻き出しやすくなり、それだけ、浮揚物体の取り出しが容易になる。
【0014】
この場合、上記傾斜面を形成する側壁の上端を上記水槽本体の開口よりも上部に延設して形成した延設部を有したことが有効である。延設部は、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により浮揚物体を側壁の傾斜に沿ってショベル等を移動させて浮揚物体を掻き出すようにする際に、水槽本体の開口外で浮揚物体を支持することができるので、より一層、浮揚物体を外部に掻き出しやすくすることができ、浮揚物体の取り出しを容易にすることができる。
【0015】
更に、必要に応じ、上記水槽本体の開口であって上記傾斜させた側壁以外の側壁上端に、投入される瓦礫を受けて該水槽本体内に案内するシュータを設けた構成としている。取り出し用のショベルローダやグラップルなどの建設機械とは別の方向からシュータを介して瓦礫を投入できるので、瓦礫の投入を容易に行うことができる。
【0016】
更にまた、必要に応じ、上記スクリーンを通過した水及び沈降物体を外部に排出する排出路を設けた構成としている。この場合、処理に当たっては、排出路が閉じられている場合には、スクリーンの下側に一時的に収用される。そして、排出路を開ければ、水槽本体内の水圧により水及び沈降物体が外部に排出される。また、水圧も沈降物体に係りやすく排出が容易に行われる。尚、水が水槽本体内に連続供給される場合には、排出路から、水及び沈降物体は連続的に外部に排出される。
排出路から排出された水及び沈降物体は、例えば、そのまま、地面に掘った掘削溝に埋め、あるいは、別途設けた貯留槽に溜め、この貯留槽で、二次的に、水と沈降物体とを分離し、沈降物体を別途取り出して集積するようにする。この場合、集積される沈降物体は、所定以下の大きさなので、分粒されていることから、例えば、コンクリートの骨材などとして用いることができる。また、磁石などを用いて、ここから鉄などの金属を取り除くこともできる。
【0017】
更にまた、必要に応じ、上記排出路から排出された水及び沈降物体を貯留する貯留槽を設け、該貯留槽内に貯留された水を汲み上げて上記水槽本体内に送給して水を循環させる循環ポンプを設けた構成としている。水を循環利用できるので、省力化が図られる。不足した水は、別途補給するようにすればよい。
【0018】
また、必要に応じ、上記貯留槽内に沈下した沈降物体を外部に排出するコンベアを備えた構成としている。コンベアで沈降物体を取り出すことができるので、二次的に、水と沈降物体とを分離し、沈降物体を集積することができる。そのため、集積される沈降物体は、所定以下の大きさなので、分粒されていることから、例えば、コンクリートの骨材などとして用いることができる。また、磁石などを用いて、ここから鉄などの金属を取り除くこともできる。
【0019】
そしてまた、必要に応じ、水に消毒剤を混合した構成としている。浮揚物体及び沈降物体共に消毒剤で消毒されるので、衛生上極めて好ましい状態になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水槽本体に瓦礫が投入される際、水槽本体にはコンベアなどの機器類が設けられていないので、これらの機器に瓦礫が当たって損傷させるという事態を防止することができる。また、浮揚物体は、水槽本体から溢れ出させ、あるいは、浮揚した状態で、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により再び取り出すことができるが、水槽本体にはコンベアなどの機器類が設けられていないので、邪魔になるものがなく、そのため、浮揚物体を容易に取り出すことができる。
【0021】
更に、水槽本体内では、沈下した沈降物体がスクリーンにより濾別されるので、スクリーン上の所定の大きさを越える大きさの沈降物体は、適時に、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により外部に取り出すことができ、そのため、沈降物体の大小の分別も行うことができることから、極めて分別効率が良いものとなる。また、沈降物体が水槽本体内で機器に引っ掛かる等の事態もないことから、沈降物体の取り出しも容易に行うことができる。一方、スクリーンを通過した沈降物体は、間欠的に取出して排出し、あるいは、連続的に取出して排出する。そして、例えば、そのまま、地面に掘った掘削溝に埋め、あるいは、回収してコンクリートの骨材などとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る瓦礫の分別システムを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る瓦礫の分別システムの分離水槽の構成を示し、(a)は正面断面図、(b)は平面図、(c)は側面半断面図である。
【図3】本発明の別の実施の形態に係る瓦礫の分別システムを、その、処理手順とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る瓦礫の分別システムについて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係る瓦礫の分別システムは、瓦礫Gを分別するものである。ここで、瓦礫Gとは、例えば震災等によって、住宅やビルなどの建物、橋や道路などの各種施設等が破壊されて発生する残骸を言い、瓦、石、コンクリート、金属、木材、繊維製品、プラスチックなどの化学製品等を含むあらゆる廃材よりなる混合体を言う。瓦礫Gは、水Wに浮揚可能な浮揚物体Gf及び水Wに沈降する沈降物体Gsを含む。実施の形態に係る瓦礫Gの分別システムは、この浮揚物体Gfと沈降物体Gsとを分離するものである。
【0024】
本発明の実施の形態に係る瓦礫Gの分別システムの基本的構成は、瓦礫Gが投入されこの投入された浮揚物体Gfと沈降物体Gsとを比重分離する水槽本体1を有した分離水槽Taと、この分離水槽Taから排出された水W及び沈降物体Gsを貯留する貯留槽Tbとを備えてなる。
【0025】
分離水槽Taは、例えば鉄等の金属製の板材を溶接して形成され、水槽本体1とこれを支持する機枠2とを備えて構成されている。機枠2は、4枚の矩形の板材2a,2b,2c,2dで直方体の筒状に形成されている。機枠2の下端は地面に接地される。水槽本体1は、機枠2を形成する4枚の板材2a,2b,2c,2dのうち、互いに対向する長手方向の2枚の板材2a,2bと、他に用意され機枠2内に溶接固定される2枚の板材3a,3bとで形成されている。詳しくは、水槽本体1は、上端に矩形状の開口3を形成する4つの側壁を備えて構成され、そのうち互いに対向する2つの側壁は、上記他に用意した2枚の板材3a,3bからなり、互いに傾斜させてその下端を連接してこの連接部が底部4となるように形成されている。他の2つの側壁は、上記機枠2を形成する長手方向の2枚の板材2a,2bで構成されている。これにより、水槽本体1を構成し後述のスクリーン10より上側の壁面の全部若しくは一部(実施の形態では一部)であり2つの側壁を構成する板材3a,3bが、沈降物体Gsがスライド可能な傾斜面に形成されることになる。傾斜面を形成する側壁(板材3a,3b)の上端には、水槽本体1の開口3よりも上部に延設して形成された延設部5が備えられている。この分離水槽Taの水槽本体1においては、互いに対向する2つの側壁(板材3a,3b)を互いに傾斜させてその下端を連接してこれを底部4となるように形成したので、簡易な構造で製造を極めて容易にすることができる。
【0026】
水槽本体1の底部4側には、沈下した沈降物体Gsを受けるとともに所定の大きさ以下の沈降物体Gsを通過させて濾別する孔11を有したスクリーン10が設けられている。スクリーン10は、厚さ6〜12mm(実施の形態では9mm)の鉄板を用い、裏面に断面L字のアングル部材からなる補強材10aを、所定間隔で列設しこれらの両端を溶接により固定して、補強している。例えば、スクリーン10の孔11の開口の最大寸法Dは、25mm≦D≦200mmに設定される。好ましくは、30mm≦D≦100mm、より好ましくは、40mm≦D≦60mmである。また、孔の開口率Aは、5%≦A≦80%である。好ましくは、8%≦A≦30%、より好ましくは、10%≦A≦15%である。
瓦礫中には種々のものがあるが、この範囲で、スクリーン10上に金属等の重い瓦礫を集約することができる。また、開口率を30%以下にすると、スクリーン10の強度が高くなり、金属との重い瓦礫による、撓みや衝撃に強くなり、それだけ、耐久性が向上させられる。
実施の形態では、スクリーン10を、孔11を行列状に開設した金属製の板で形成し、孔11の直径DをD=60mm±5mmに設定し、例えば、D=60mmにし、開口率AをA=10%±2%にし、例えば、A=11.5%に設定している。板状なので、強度が高く、耐久性に優れる。
【0027】
この水槽本体1において、スクリーン10と底部4との間には、スクリーン10を通過した水W及び沈降物体Gsを収容する収容空間12が設けられる。また、収容空間12を構成する側壁(実施の形態では機枠2を形成する長手方向の2枚の板材(2a,2b)の一方の側壁(板材2b)には、スクリーン10を通過した収容空間12からの水W及び沈降物体Gsを外部に排出する排出路としての排出管13が突設されている。
【0028】
また、水槽本体1の開口であって傾斜させた側壁以外の側壁(実施の形態では機枠2を形成する長手方向の2枚の板材2a,2b)であって、排出管13が設けられた側壁(板材2b)とは別の他方の側壁(板材2a)の上端には、投入される瓦礫Gを受けて水槽本体1内に案内するシュータ15が外側に突出して設けられている。シュータ15はスライド板15aと、スライド板15aの左右に立ちあがり形成された一対の側板15bとから構成されている。
【0029】
貯留槽Tbは、分離水槽Taの水槽本体1から排出された水W及び沈降物体Gsを貯留するもので、水槽本体1から突設された排出管13が貯留槽Tbの開口21の上側に位置するように、分離水槽Taの機枠2下端よりも下位に設けられている。実施の形態では、分離水槽Taの機枠2が接地される地面に隣接した地面を掘削して掘削溝20を形成し、貯留槽Tbは、この掘削構20内に設けられている。貯留槽Tbは例えば鉄等の金属製の板材で矩形箱状に形成されている。
【0030】
また、貯留槽Tb内に貯留された水Wを汲み上げて水槽本体1内に送給して水Wを循環させる循環ポンプ30が設けられている。循環ポンプに至りポンプ30に接続された吸入管31の吸入口にはフィルタ32が設けられている。33はポンプ30からの水Wを水槽本体1内に送給する送給管である。更に、水槽本体1内の水Wが不足したならば、水Wを補給する水供給管(図示せず)が別途設けられている。
更にまた、貯留槽Tb内に沈下した沈降物体Gsを外部に排出するスクリューコンベア40が備えられている。スクリューコンベア40は、貯留槽Tbの底部4に対して斜めに設置され、回転により貯留槽Tbの底部4に沈下した沈降物体Gsを貯留槽Tbの外部に排出して集積する。
また、本システムにおいては、水Wに消毒剤Sを混合している。消毒剤Sとしては、例えば、消石灰が用いられる。消毒剤Sはこれに限定されない。浮揚物体Gf及び沈降物体Gs共に消毒剤Sで消毒されるので、衛生上極めて好ましい状態になる。
【0031】
従って、この実施の形態に係る瓦礫の分別システムにより瓦礫Gを分別するときは、以下のようにする。この際には、水槽本体1に水Wを満たし、循環ポンプ30を駆動して水Wを循環させておく。
ショベルローダやグラップルなどの建設機械により、分離水槽Taのシュータ15を介して瓦礫Gを水槽本体1に投入する。シュータ15を介して瓦礫Gを投入できるので、瓦礫Gの投入を容易に行うことができる。瓦礫Gが投入されると、水槽本体1には水Wがあるので、浮揚物体Gfは浮揚し、沈降物体Gsは沈降する。この際、水槽本体1にはスクリューコンベアなどの機器類が設けられていないので、これらの機器に瓦礫Gが当たって損傷させるという事態はない。また、スクリーン10より上側の壁面の一部(板材3a,3b)が傾斜面になっているので、沈降物体Gsが傾斜面をスライドしてスクリーン10に集束し易くなる。
【0032】
浮揚物体Gfは、水槽本体1から溢れ出させ、あるいは、浮揚した状態で、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により再び取り出す。この場合、水槽本体1にはコンベア40などの機器類が設けられていないので、邪魔になるものがなく、そのため、浮揚物体Gfを容易に取り出すことができる。更に、対向する2つの側壁板材(3a,3b)を傾斜させたので、この側壁の開口3縁からショベルローダやグラップルなどの建設機械により浮揚物体Gfを外部に取り出す際に、傾斜に沿ってショベル等を移動させて浮揚物体Gfを掻き出すようにすることも行うが、傾斜していることから浮揚物体Gfを外部に掻き出しやすくなり、それだけ、浮揚物体Gfの取り出しが容易になる。更に、傾斜面を延設した延設部5があり、この延設部5は、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により浮揚物体Gfを側壁の傾斜に沿ってショベル等を移動させて浮揚物体Gfを掻き出すようにする際に、水槽本体1の開口3外で浮揚物体Gfを支持することができるので、より一層、浮揚物体Gfを外部に掻き出しやすくすることができ、浮揚物体Gfの取り出しを容易にすることができる。
【0033】
一方、水槽本体1内では、沈降物体Gsは底部4に沈降していくが、底部4側には、スクリーン10が設けられているので、沈下した沈降物体Gsが受けられ、スクリーン10の孔11を所定の大きさ以下の沈降物体Gsが水Wとともに通過して排出される。この場合、スクリーン10より上側の壁面の一部(板材3a,3b)が傾斜面になっているので、沈降物体Gsが傾斜面をスライドしてスクリーン10に集束し易くなり、そのため、スクリーン10での濾別が確実に行われる。また、水圧も沈降物体Gsに係りやすく排出が容易に行われる。そして、スクリーン10を通過した水W及び沈降物体Gsは排出管13を通して貯留槽Tbに連続的に移送されていく。この場合、スクリーン10と底部4との間に収容空間12を設けたことから、水量を確保できるので、確実に排出を行うことができる。
【0034】
これにより、所定の大きさを越える大きさの沈降物体Gsは、スクリーン10上に濾別されて残る。この残った比較的大きな沈降物体Gsは、適時に、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により外部に取り出す。そのため、沈降物体Gsの大小の分別も行うことができるので、極めて分別効率が良いものとなる。また、沈降物体Gsが水槽本体1内で機器に引っ掛かる等の事態もないことから、沈降物体Gsの取り出しが容易に行われる。
【0035】
また、貯留槽Tbにおいては、排出管13から排出された水W及び沈降物体Gsが沈降して底部4に溜まるが、スクリューコンベア40を駆動することにより、貯留槽Tb内に沈下した沈降物体Gsを外部に排出することができる。スクリューコンベア40で沈降物体Gsを取り出すことができるので、二次的に、水Wと沈降物体Gsとを分離し、沈降物体Gsを集積することができる。そのため、集積される沈降物体Gsは、所定以下の大きさなので、分粒されていることから、例えば、コンクリートの骨材などとして用いることができる。また、磁石などを用いて、ここから鉄などの金属を取り除くこともできる。貯留槽Tb内に貯留された水Wは、循環ポンプ30により汲み上げられて再び水槽本体1内に送給されるので、水Wを循環利用でき、そのため、省力化が図られる。不足した水Wは、別途補給するようにすればよい。
【0036】
図3には、別の実施の形態に係る瓦礫の分別システムを示している。これは、上記と異なって、瓦礫Gが投入されこの投入された浮揚物体Gfと沈降物体Gsとを比重分離する水槽本体1を有した分離水槽Taのみで構成されており、分離水槽Taには、スクリーン10を通過した収容空間12からの水W及び沈降物体Gsを外部に排出する排出路としての排出管13は設けられていない。また、分離水槽Taは、地面を掘削したところに直接設けられており、例えばコンクリートあるいは鉄等の金属製の板材を溶接して形成されている。他は上記と同様である。
【0037】
従って、この別の実施の形態に係る瓦礫の分別システムにより瓦礫Gを分別するときは、以下のようにする。先ず、水槽本体1に消毒薬Sを混入した水Wを満たし、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により、瓦礫Gを水槽本体1に投入する(図3(a))。瓦礫Gが投入されると、水槽本体1には水Wがあるので、浮揚物体Gfは浮揚し、沈降物体Gsは沈降する(図3(b))。この際の作用,効果は上記と同様である。浮揚物体Gfは、浮揚した状態で、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により再び取り出す(図3(c))。この取出した浮揚物体Gfは、ふるい機に掛ける等して更に分別することができる。
【0038】
一方、水槽本体1内では、沈降物体Gsは底部4に沈降していくが、底部4側には、スクリーン10が設けられているので、沈下した沈降物体Gsが受けられ、スクリーン10の孔11を所定の大きさ以下の沈降物体Gsが通過し、所定の大きさを越える大きさの沈降物体Gsは、スクリーン10上に濾別されて残る(図3(d))。この残った比較的大きな沈降物体Gsは、適時に、ショベルローダやグラップルなどの建設機械により外部に取り出す(図3(e))。
【0039】
また、スクリーン10の孔11を通過した所定の大きさ以下の沈降物体Gsは、水槽本体1の底に溜まる。この底に溜まった沈降物体Gsは、適時に、スクリーン10を外して、バキューム装置等により外部に取り出す(図3(f))。この沈降物体Gsは、所定以下の大きさなので、分粒されていることから、例えば、コンクリートの骨材などとして用いることができる。このシステムによっても、瓦礫Gの分別が円滑に行われる。
【0040】
尚、上記先に示した実施の形態では、水Wを循環ポンプ30により連続的に供給するようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、排出管13に開閉バルブを設けて、これを閉じて水Wが溜まった状態にして瓦礫Gを投入し、ある程度の投入がなされたら、開閉バルブを開けて、排出管13を開にし、スクリーン10を通過した水W及び沈降物体Gsを貯留槽Tbに移送するようにし、間欠的に排出しても良い。この場合、スクリーン10と底部4との間に収容空間12を設けたことから、沈降物体Gsを収容空間12に一時的に収用できるので、間欠的な排出に対応できる。
【0041】
また、上記実施の形態では、掘削構20内に貯留槽Tbを設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、掘削溝20を貯留槽Tbとして構成しても良く、適宜変更して差し支えない。また、貯留槽Tbを設けることなく、例えば、そのまま、沈降物体Gsを掘削溝20に埋めるようにしても良い。この場合、掘削溝20から水Wは排出するようにすればよい。スクリューコンベア40は不要になる。
また、水槽本体1は、鉄等の金属製の板材を溶接して形成されるものに限定されるものではなく、例えば、コンクリートで形成する等適宜変更して差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
平成23年(2011年)3月11日の「東日本大震災」では、三陸沖を震源に国内観測史上最大のM9.0の地震が発生し、これに伴って巨大津波が来襲し、震源地にほど近い東北地方の沿岸に沿った広範囲の地域において、都市や漁村等の市街地の多くが破壊され、多数の人が犠牲となった。また、これに伴って、住宅やビルなどの建物、橋や道路などの各種施設や自然物等が広範囲にわたって破壊され、瓦、石、コンクリート、金属、木材、繊維製品、プラスチックなどの化学製品等を含む極めて大量の瓦礫Gが生じた。そのため、復興においては、この瓦礫Gの処理が不可欠であるが、本発明の瓦礫Gの分別システムは、簡易な構造で設置も容易であり、操作性も良いことから、この瓦礫Gの処理に極めて有用に機能すると考えられる。
【符号の説明】
【0043】
Ta 分離水槽
Tb 貯留槽
G 瓦礫
Gf 浮揚物体
Gs 沈降物体
W 水
S 消毒剤
1 水槽本体
2 機枠
2a,2b 板材(側壁)
2c,2d 板材
3 開口
3a,3b 板材(側壁)
4 底部
5 延設部
10 スクリーン
10a 補強材
11 孔
12 収容空間
13 排出管
15 シュータ
20 掘削溝
30 循環ポンプ
31 吸入管
32 フィルタ
33 送給管
40 スクリューコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に浮揚可能な浮揚物体及び水に沈降する沈降物体を含む瓦礫が投入され該投入された浮揚物体と沈降物体とを比重分離する水槽本体を有した分離水槽を備えた瓦礫の分別システムにおいて、
上記水槽本体の底部側に、沈下した沈降物体を受けるとともに所定の大きさ以下の沈降物体を通過させて濾別するスクリーンを設けたことを特徴とする瓦礫の分別システム。
【請求項2】
上記水槽本体を構成し上記スクリーンより上側の壁面の全部若しくは一部を上記沈降物体がスライド可能な傾斜面にしたことを特徴とする請求項1記載の瓦礫の分別システム。
【請求項3】
上記水槽本体を、上端に矩形状の開口を形成する4つの側壁を備えて構成するとともに、互いに対向する2つの側壁を互いに傾斜させてその下端を連接して該連接部が底部となるように形成し、該水槽本体の底部側に上記スクリーンを設け、該スクリーンと底部との間に該スクリーンを通過した水及び沈降物体を収容する収容空間を設けたことを特徴とする請求項2記載の瓦礫の分別システム。
【請求項4】
上記傾斜面を形成する側壁の上端を上記水槽本体の開口よりも上部に延設して形成した延設部を備えたことを特徴とする請求項3記載の瓦礫の分別システム。
【請求項5】
上記水槽本体の開口であって上記傾斜させた側壁以外の側壁上端に、投入される瓦礫を受けて該水槽本体内に案内するシュータを設けたことを特徴とする請求項3または4記載の瓦礫の分別システム。
【請求項6】
上記スクリーンを通過した水及び沈降物体を外部に排出する排出路を設けたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の瓦礫の分別システム。
【請求項7】
上記排出路から排出された水及び沈降物体を貯留する貯留槽を設け、該貯留槽内に貯留された水を汲み上げて上記水槽本体内に送給して水を循環させる循環ポンプを設けたことを特徴とする請求項6記載の瓦礫の分別システム。
【請求項8】
上記貯留槽内に沈下した沈降物体を外部に排出するコンベアを備えたことを特徴とする請求項7記載の瓦礫の分別システム。
【請求項9】
水に消毒剤を混合したことを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載の瓦礫の分別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−17983(P2013−17983A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155819(P2011−155819)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(597045309)蒲野建設株式会社 (3)
【Fターム(参考)】