説明

甘味料およびその製造方法

本発明の対象は、甘味料ならびにその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明の対象は、甘味料ならびにその製造方法である。
【0002】
背景技術
イソマルト(イソマルチト(Isomaltit)、イソマルチトール、Palatinit(登録商標)とも云う)は、サッカロースから得られる砂糖代替物である。その製造は、2段階の方法で行われる:まず、サッカロースが転位によって、イソマルツロース(α−D−グルコピラノシル−1,6−フルクトース、パラチノース(登録商標)とも云う)に変えられる。精製されたイソマルツロースは、引き続き、触媒水素化によってイソマルトに変換される。イソマルツロースの水素化の範囲内で、2つの異性体、α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール(以下で1,1−GPMとして示す)およびα−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール(以下で1,6−GPSとして示す)が発生し、イソマルトは主としてそれからなる。
【0003】
サッカロースのイソマルツロースへの異性化は、通常、イソマルツロースシンターゼ(サッカロースグルコシルムターゼ、EC5.4.99.11)を用いて酵素により実施される。DE1049800号、DE2217628号、EP28900号、EP49472号およびEP91063号は、サッカロースのイソマルツロースへの酵素変換のために、固定化菌体を用いる方法について記載している。EP0625578号は、これに加えて、プロタミノバクター ルブラム(Protaminobacter rubrum) (CBS 574.77)、セラチア プルムチカ(Serratia plymuthica) (ATCC 15928)、セラチア マルセッセンス(Serratia marcescens) (NCIB 8285)、リゥコノストック メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides) (NRRL−B 512 F (ATCC 1083 a))およびエルウィニア ラポンチシ(Erwinia rhapontici) (NCPPB 1578)の群からの菌株を使用する。EP0392556号およびEP1257638号は、クレブシエラ テリゲナ(Klebsiella terrigena) JCM 1687、クレブシエラ sp. No.88 (FERM BP−2838)およびクレブシエラ シンガポレンシス(Klebsiella singaporensis) LX3およびLX21の群からの菌株の使用について記載している。これらの異性化法は、生きている細胞または死んだ細胞を用いても、固定化された細胞または遊離した細胞を用いても実施され、例えばDE3133123号およびEP0915986号には、例えばアルギン酸カルシウムまたはイオン交換体を用いた酵素触媒の固定化法が記載され、同様に、EP0001099号には、イソマルツロースを発酵の範囲内で製造できる、遊離した生きている細胞を用いる方法が記載されている。異性化のための全ての公知の方法は、サッカロースが決して完全に変換されず、従って常に微量に検出できるままであり、且つ、イソマルツロースのイソマルトへのさらなる処理のために、異性化されかなったサッカロースの分離を行わなければならないことが共通している。
【0004】
異性化されなかったサッカロースの分離のために、通常、イソマルツロースの結晶化が実施される。かかる方法は、例えばEP0091063号およびEP1550666号内に記載されている。EP0625578号は、異性化されなかったサッカロースの除去を、相応する単糖類のフルクトースおよびグルコースへの追加的な分裂およびその分離によって達成する方法を記載している。
【0005】
イソマルツロースの水素化は一般に知られており、且つ、例えばGB1429334号、DE2520173号、およびEP0625578号内に、ラネーニッケルを触媒として、高められた圧力および温度で使用する方法が記載されている。
【0006】
さらに、EP152779号およびDE−A4416115号から、周期律表の第8副族の元素からの担体のない成形体、もしくは周期律表の第8副族の鉄亜族の元素からの担体のない成形体を、第6副群の元素と共に触媒として使用する、イソマルツロースの連続的な水素化法が公知である。EP0854148号は、ニッケル、ニッケル酸化物および三酸化タングステンを含有する触媒を用いたイソマルツロースの水素化方法について記載している。EP0838468号は、周期律表の第VIII副族の鉄部分群の元素と、周期律表の第IVおよび/または第V副族の元素との合金を含有する、水素化触媒として作用する担体のない成形体上でのイソマルツロースの水素化方法について記載している。DE19523008号は、1,1−GPMと1,6−GPSとの特定の比を達成するために、ルテニウム、ニッケル、およびそれらの混合物からの触媒を、不活性な担体上で使用する、イソマルツロースの水素化方法について記載している。DE19523008号は、異性体比を制御するために不活性な担体上での、ルテニウムおよび/またはニッケルを含有する触媒を用いたイソマルツロースの水素化方法について記載している。
【0007】
サッカロースの酵素による変換の際、副生成物としてしばしばトレハルロース(α−D−グルコピラノシル−1,1−フルクトース)並びにフルクトースおよびグルコースが形成されるので、これは、実施される精製によっては、異性化段階後に水素化反応され得る。そこで、トレハルロースは、α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトールに、およびα−D−グルコピラノシル−1,1−D−ソルビトール(以下で1,1−GPSとして示す)に変換され、ならびに、フルクトースおよびグルコースは、ソルビトールおよびマンニトールに変換される。従って、イソマルトは、時として、本質的な成分の他に、1,1−GPMおよび1,6−GPS、1,1−GPS、マンニトールおよびソルビトールも含有することがある。かかるイソマルトおよびその製造方法は、例えばJP−A751079号およびEP0625578号内に記載されている。
【0008】
サッカロースに基づくダイエット用甘味料、例えばイソマルトの製造のための全ての公知の方法の主要な欠点の1つは、出発糖の酵素による異性化後に、強く血糖に作用するサッカロース残留物の分離が必須であることである。それゆえ、EP0625578号は、この残っているサッカロース残留物が、まさに「水素化可能ではないもの」として明らかに記載している。上述の方法によってサッカロース残留物を分離する際、イソマルツロースまたは他の有益な生成物の損失が不可避となる。
【0009】
本発明の課題は、製造の際に異性化段階からのサッカロース残留物の分離段階がなく、且つ、さらなる加工処理のための卓越した特性、例えばスイーツへの配合性を有する、サッカロースに基づく甘味料を提供することである。
【0010】
発明の詳細な説明
意外なことに、請求項1に記載される甘味料、ならびに以下に記載されるその製造方法が、冒頭で挙げられた課題の解決のために寄与することが見出された。
【0011】
従って、本発明の対象は、出発材料としてのサッカロースに基づく甘味料である。本発明のさらなる対象は、イソマルツロースおよび場合によってはイソマルト中のトレハルロース、およびソルビトールおよびマンニトール中のサッカロースを同時に水素化することを可能にする、触媒方法である。
【0012】
本発明による甘味料の利点は、従来のイソマルトに比べて、且つ、1,1−GPMに対して、甘味強度および水中での良好な溶解挙動を有する1,6−GPSが濃縮されていることであり、それは同様に、本発明による方法の利点であり、なぜなら、このことによりかかる甘味料が製品として直接的に利用可能になるからである。その上、本発明による方法の利点は、それを相対的に低い温度および圧力で実施することができ、従ってエネルギーおよび資源が守られることである。
【0013】
用語「サッカロース残留物」とは、本発明の文脈では、初めに使用されたサッカロースの、サッカロースムターゼを用いた変換の際に、変換されず、且つ、サッカロースとして、例えばイソマルツロースまたはトレハルロースに異性化されたサッカロースの他に存在する、サッカロース部分のことであると理解される。
【0014】
用語「甘味料」とは、本発明の文脈では、液体または固体、結晶または溶解されて存在することがあり、場合によっては水を含有することがあり、且つ、甘い味がする化合物の混合物のことであると理解される。
【0015】
用語「酸性担体」とは、本発明の文脈において、当業者に「酸性担体」としてよく知られた担体、例えば金属酸化物、例えばAl23、SiO2、TeO2またはそれらの混合酸化物を示し、それはその固有の特性によって酸性を有するが、しかし、適した処理によって初めて表面上で酸官能性を有するような担体であり、その際、例えばそれは酸、例えばリン酸で処理された担体材料、または、例えば酸溶液中の塩化ルテニウムとしての活性成分のルテニウムをもたらすことによって初めて酸官能性が採り入れられる担体であってよく、かかる酸性担体は、例えば酸性溶液中の塩化ルテニウムで含浸された活性炭である。記載される全てのパーセント(%)は、特段記載されない限り、質量パーセントである。
【0016】
上記で挙げられた課題を解決するために、
20質量%ないし75質量%、好ましくは40質量%ないし60質量%、特に好ましくは45質量%ないし57質量%のα−D−グルコピラノシル1,6−D−ソルビトール、
20質量%ないし75質量%、好ましくは40質量%ないし60質量%、特に好ましくは45質量%ないし55質量%のα−D−グルコピラノシル1,1−D−マンニトール、
0.02質量%ないし15質量%、好ましくは0.1質量%ないし10質量%、特に好ましくは0.2質量%ないし5質量%のα−D−グルコピラノシル1,1−D−ソルビトール、
0.02質量%ないし15質量%、好ましくは0.1質量%ないし8質量%、特に好ましくは0.2質量%ないし3.5質量%のソルビトール、および
0.02質量%ないし15質量%、好ましくは0.1質量%ないし10質量%、特に好ましくは0.2質量%ないし2.9質量%のマンニトール
(それぞれ、α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール、α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール、α−D−グルコピラノシル1、1−D−ソルビトール、ソルビトールおよびマンニトールの総量に対する)を含有する、好ましくはそれらからなる甘味料であって、ただし、α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトールの、α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトールに対する質量比が、1:1より大きい、好ましくは53:47より大きい、殊に55:45より大きい甘味料が寄与する。
【0017】
本発明による甘味料が上記の物質からなる場合、上記の質量%の合計は100になる。
【0018】
それぞれの質量割合を測定するために、ISOMALT規格内に記載される方法、69th JECFA (2008)の範囲内でまとめられ、FAO JECFA Monographs 5 (2008)にて刊行、が考慮される。
【0019】
好ましくは、甘味料の乾燥物質の総質量に対するα−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトールおよびα−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトールの質量%の合計は、75より大きい、好ましくは80より大きい、特に好ましくは86より大きい。
【0020】
好ましくは、本発明による甘味料は、甘味料の乾燥物質の総質量に対して、2.5質量%より少ない、殊に0.3質量%より少ない、最も好ましくは検出可能ではない量のサッカロースを含有する。
【0021】
さらに、上記で挙げられた課題を解決するために、イソマルツロース、サッカロース、および場合によりトレハルロース、フルクトースおよびグルコースおよび/またはさらなる多糖類を含有する炭水化物混合物を、水素を用いて変換することによる甘味料の製造方法であって、該変換が、ルテニウム(Ru)および/または少なくとも1つのルテニウム酸化物に基づく少なくとも1つの触媒の存在下で行われることを特徴とする製造方法が寄与する。この方法において、好ましくは、水素によって、イソマルツロースおよび場合によりトレハルロースが1,1−GPMおよび1,6−GPSおよび場合により1,1−GPSへと触媒水素化されるのと同様に、サッカロースもフルクトースおよびグルコースに分裂し、且つ、これがマンニトールおよびソルビトールへと水素化される。両方の上述のものは、同様に砂糖代替物であり、従って、得られる1,1−GPM、1,6−GPSおよび1,1−GPSについての理想的な副産物である。従って、本発明による方法における変換は、サッカロースのフルクトースおよびグルコースへの分裂を伴う、触媒水素化に適合する。それゆえ、サッカロースの分裂と、他に存在する炭水化物の水素化とを、同時に行うことが好ましい。本発明による方法において、好ましくは、ルテニウム(Ru)および/またはルテニウム含有化合物が、担体、殊に酸または炭素含有担体上で固定化されて存在する触媒を使用する。
【0022】
該変換は好ましくは、炭水化物混合物が水を含むことができるように、水溶液中で行われる。従って、好ましくは、該炭水化物混合物は、全炭水化物混合物に対して、20質量%ないし80質量%、好ましくは30質量%ないし70質量%、特に好ましくは40質量%ないし60質量%の水を含有する。水溶液のpHは、好ましくは、8未満のpH値に相応する、中性または酸性の範囲内である。
【0023】
本発明による方法において使用される炭水化物混合物は、好ましくは、サッカロースを含有する水溶液、例えば甜菜またはサトウキビからの糖の水溶液の、イソマルツロースシンターゼを用いた酵素変換によって得られる。適したイソマルツロースシンターゼは、例えばエンテロバクター sp. 菌株 FMB1、エルウィニア ラポンチシ(Erwinia rhapontici)、クレブシエラ プランティコラ(Klebsiella planticola)菌株 UQ14S、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae) NK33−98−8、クレブシエラ sp. LX3、パントエア ディスペルサ(Pantoea dispersa) UQ68J、プロタミノバクター ルーバ(Protaminobacter ruber) Z12、プロタミノバクター ルブルム(Protaminobacter rubrum)、プセウドモナス メソアシドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila) MX−45、セラチア プリムシカ(Serratia plymuthica)からのものである。殊に、サッカロースを含有する水溶液の、殊に菌株 プロタミノバクター ルブルム CBS 574.77のプロタミノバクター ルブルムからのイソマルツロースシンターゼを用いた酵素変換によって得られる炭水化物混合物を、本発明による方法において有利に使用することができる。従って、該炭水化物混合物中に含有されるサッカロースは、好ましくはサッカロース残留物である。好ましくは、本発明による方法において使用される炭水化物混合物は、全炭水化物混合物の乾燥質量に対して、0.01質量%ないし15質量%、好ましくは0.1質量%ないし5質量%および特に好ましくは0.2質量%ないし2質量%のサッカロースを含有する。
【0024】
好ましくは、本発明による方法において使用される炭水化物混合物は、全炭水化物混合物の乾燥質量に対して、少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも80質量%、および特に好ましくは少なくとも90質量%のイソマルツロースを含有する。好ましくは、本発明による方法において使用される炭水化物混合物は、全炭水化物混合物の乾燥質量に対して、0.02質量%ないし30質量%、好ましくは0.1質量%ないし20質量%、特に好ましくは0.2質量%ないし10質量%のトレハルロースを含有する。
【0025】
ルテニウム(Ru)および/またはルテニウム酸化物に基づく上記の触媒は、使用された出発物質の完全な変換、および、上記の生成物に関する非常に高い選択性に関して、意外にも、他の公知の水素化触媒よりも明らかに優れていることが判明した。
【0026】
触媒担体として、全ての当業者に適していると思われる固体が考慮に入れられる。例えばそれは、例えば活性炭の形態での炭素、殊に、同様に、酸性担体、例えば金属酸化物、例えばAl23、SiO2、TeO2、それらの混合酸化物、または同様に、MgO−SiO2、ZrO2−SiO2、並びにヘテロポリ酸である。さらに、以下が挙げられる: 鉱酸、例えばH3PO4またはH2SO4であって、固体の、好ましくは多孔質の、同様に好ましくは不活性の担体上に適用されているもの、カチオン交換体、酸素含有鉱酸の、好ましくは重金属の塩(リン酸塩、硫酸塩、タングステン酸塩)、三価の金属のハロゲン化物(例えばAlCl3)であって、多孔質の担体、ゼオライト(H型)またはいわゆるH2SO4で処理された超酸 ZrO2またはTiO2上のもの。
【0027】
さらに、その官能性からむしろ中性の分類に入れられる担体、例えば活性炭またはTiO2であって、好ましくは適した含浸法によっておよび/または触媒金属を適用することによってそれ自体が酸官能性を得ているものが適している。
【0028】
これに関連して、この担体が、水素化触媒をよく結合し且つ収容するために適している、適切な孔容積を有していることが好ましい。その上、DIN66133による全孔容積は、0.01〜3ml/gの範囲が好ましく、および0.2〜1ml/gの範囲が特に好ましい。加えて、好ましくは、担体として適した固体が、DIN66131に準拠するBET試験による表面積0.001ないし1500m2/gの範囲、有利には10ないし450m2/gの範囲、さらに好ましくは10ないし270m2/gの範囲を有する。水素化触媒のための担体として、一方では、平均粒径0.1ないし40mmの範囲、有利には0.8ないし7mmの範囲、およびさらに好ましくは1.5ないし7mmの範囲を有するばら材を使用することができる。さらに、水素化反応器の壁が、不活性担体としてはたらくことができる。水素化触媒の適用技術として、殊に、浸漬もしくは含浸、または担体マトリックス中への組み込みを挙げることができる。
【0029】
少なくとも部分的に酸化物化合物からなる酸性担体が、本発明による実施態様に適合する。そのような酸化物化合物は、元素の少なくとも1つが、Si、Ti、Te、Zr、Al、Pを含む群から選択されるか、またはこれらの元素の少なくとも2つの組み合わせを有するべきである。
【0030】
好ましい酸性担体は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、テルル酸化物およびリン酸化物を含む群、好ましくはそれらからなる群から選択され、その際、Al23、SiO2、TeO2およびそれらの混合酸化物が好ましく、且つ、Al23がとりわけ特に好ましい。
【0031】
本発明による方法において、担体として、超酸性担体を使用することができる。これらは、当業者には、例えば、好ましくはSi−Al比>50を有するH−Y型のゼオライト、並びに相応する温度耐性を有する酸性のイオン交換体のような担体として公知であり、例えば商品名Amberlystの下で入手可能である。
【0032】
本発明による方法の選択的な実施態様においては、担体として、中性の担体を使用してもよい。それらは、殊に、元素の炭素、殊に活性炭およびTiO2からなるリストから選択され、その際、活性炭が特に好ましい。
【0033】
本発明による方法は、有利には高められた温度で実施される。好ましい温度領域は80℃ないし150℃であり、その際、場合により既に本発明による甘味料を含有する炭水化物混合物中で測定される温度を、その工程温度としてみなす。
【0034】
本発明による方法の選択的な実施態様は、該方法を、イソマルツロースの水素化に関して50%〜95%の変換率まで、80〜120℃の温度領域において実施し、且つ、さらに、イソマルツロースの水素化に関して本質的に100%の変換を、100℃〜150℃、好ましくは121℃〜150℃の温度領域において実施することを特徴とする。
【0035】
これに関連して、本発明によれば、2つの異なる温度領域が空間的に互いに分けられており、且つ、2つの温度領域において、酸化物が殊にAl23およびTiO2から選択される酸化物含有担体上にルテニウム(Ru)および/またはルテニウム含有化合物が固定されて存在する触媒を使用することが好ましい。選択的な実施態様において、これに関連して、本発明によれば、2つの異なる温度領域が空間的に互いに分けられており、80℃ないし120℃の温度領域において、酸化物が殊にAl23およびTiO2から選択される酸化物含有担体上にルテニウム(Ru)および/またはルテニウム含有化合物が固定されて存在する触媒を使用し、且つ、100℃ないし150℃、好ましくは121〜150℃である温度領域において、炭素含有担体上にルテニウム(Ru)および/またはルテニウム含有化合物が固定されて存在する触媒を使用することが好ましい。
【0036】
本発明の方法の特別な実施態様は、担体として、超酸性担体が使用され、且つ、工程温度は120℃未満、殊に80℃〜110℃であることを特徴とする。
【0037】
水素化反応の間に設定される圧力に関しては、殊に、少なくとも15bar、好ましくは少なくとも30bar、特に好ましくは少なくとも40barの圧力が有利であるとして証明されている。特に好ましくは、40bar〜50bar、殊に40bar〜90bar、例えば約50〜60barの範囲が有用である。
【0038】
好ましくは、該方法は、得られる甘味料中でサッカロースがもはや検出できなくなるまでの時間、実施される。
【0039】
有利には炭水化物混合物として液体の形態で存在する、本発明による方法によって得られる甘味料を、乾燥された形態に変えるために、溶剤として存在する水を、蒸発器または乾燥器、例えば流下膜式蒸発器またはトロンメル式乾燥器または噴霧乾燥器を使用して除去することができる。
【0040】
得られる甘味料をさらなる精製段階、または濃縮段階および/または除去段階にて、さらに処理することが有利であることがある。さらなる結晶化段階によって、マンニトール含有率が、甘味料の乾燥質量に対して、例えば0.02質量%ないし15質量%に、好ましくは0.1質量%ないし10質量%に、特に好ましくは0.2質量%ないし2.9質量%に減少されることが有利であることがあり、それは、マンニトールのわずかな水溶性のために大いに可能である。
【0041】
以下に挙げられる実施例において、本発明を例示的に記載するが、明細書全体および特許請求の範囲から明らかである本発明の適用範囲は、実施例に挙げられた実施態様に限定されるべきではない。
【0042】
実施例:
例1: 90℃での、サッカロースを含有するイソマルツロース溶液のRu触媒水素化
40質量%のイソマルツロースおよび3質量%のサッカロースを含有する水溶液を、本発明により、アルミニウム酸化物上1.5質量%のRu触媒を用い、60barの水素および90℃で、連続稼働の固定床反応器を介して、0.47時間-1のLHSV (Liquid Hourly Space Velocity; 液空間速度)で水素化する。該装置は、反応管の内径11mmを有する、空気加熱器もしくは空気冷却器を備えた管型反応器からなっていた。該管は、19mlの触媒Noblyst(登録商標) 3001、Evonik Degussa GmbHを装填されていた。水素の体積流量は、100Nml/分であった。その生成物は、使用されたイソマルツロースに対して80%およびサッカロースに対して24%の変換の際、1,6−GPS対1,1−GPMの異性体比56:44を示した。その際、変換されたイソマルツロースは、ほぼ100%の選択性で、イソマルトへと水素化された。サッカロースは、その反応条件下で、マンニトールおよびソルビトールへと水素化される。
【0043】
例2: 120℃での、サッカロースを含有するイソマルツロース溶液のRu触媒水素化
実施例1と同一の使用溶液を、120℃という点で異なり、その他は同じ条件下で変換すると、使用されたイソマルツロースは95%、サッカロースは93%が水素化される。ここでもまた、変換されたイソマルツロースは、ほぼ100%の選択性で、イソマルトへと水素化された。その上、1,6−GPS対1,1−GPMの異性対比は、56:44に達する。サッカロースは、その反応条件下で、マンニトールおよびソルビトールへと水素化される。
【0044】
例3: 90℃での、サッカロースを含有するイソマルツロース溶液のRu触媒(Ru/C)水素化
40質量%のイソマルツロースおよび3質量%のサッカロースを含有する水溶液を、本発明により、活性炭上2質量%のRu触媒を用い、60barの水素および90℃で、連続稼働の固定床反応器を介して、0.47時間-1のLHSVで水素化する。該装置は、反応管の内径11mmを有する、空気冷却器を備えた管型反応器からなっていた。該管は、19mlの触媒Noblyst(登録商標) 3000、Evonik Degussa GmbHを装填されていた。水素の体積流量は、100Nml/分であった。その生成物は、使用されたイソマルツロースに対して96%およびサッカロースに対して60%の変換の際、1,6−GPS対1,1−GPMの異性体比56:44を示した。その際、変換されたイソマルツロースは、ほぼ100%の選択性で、イソマルトへと水素化された。サッカロースは、その反応条件下で、マンニトールおよびソルビトールへと水素化される。
【0045】
例4: 120℃での、サッカロースを含有するイソマルツロース溶液のRu触媒(Ru/C)水素化
実施例3と同一の使用溶液を、120℃という点で異なり、その他は同じ条件下で変換すると、使用されたイソマルツロースは>99%、サッカロースは98%が水素化される。ここでもまた、変換されたイソマルツロースは、ほぼ100%の選択性で、イソマルトへと水素化された。その上、1,6−GPS対1,1−GPMの異性対比は、56:44に達する。サッカロースは、その反応条件下で、マンニトールおよびソルビトールへと水素化される。
【0046】
例5: 90℃での、サッカロースを含有するイソマルツロース溶液の、本発明によらない、Ni触媒水素化
40質量%のイソマルツロースおよび3質量%のサッカロースを含有する水溶液を、10.5gのラネーニッケル触媒、B113W、Evonik Degussa GmbH、を用いて、60barの水素および90℃で、攪拌反応器内で水素化する。該装置は、ガス攪拌機(Begasungsruehrer)、公称容積1.8Lおよび反応容積1.2Lを有するParr RK2攪拌反応器からなっていた; 水素化を、等温的に、バスケットを用いないでスラリー中で行った。4時間後、イソマルツロースの1,6−GPSおよび1,1−GPMへの完全な変換が、異性体比53:47の際に得られ、サッカロースの変換は、この時間にわたって、検知されない。その際、変換されたイソマルツロースは、ほぼ100%の選択性で、イソマルトへと水素化された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれα−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール、α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール、α−D−グルコピラノシル−1,1−D−ソルビトール、ソルビトールおよびマンニトールの総量に対して、
20質量%ないし75質量%のα−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール、
20質量%ないし75質量%のα−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール、
0.02質量%ないし15質量%のα−D−グルコピラノシル−1,1−D−ソルビトール、
0.02質量%ないし15質量%のソルビトールおよび
0.02質量%ないし15質量%のマンニトール
を含有し、ただし、α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトールの、α−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトールに対する質量比が1:1より大きい甘味料。
【請求項2】
イソマルトースおよびサッカロースを含有する炭水化物混合物を変換することによる、甘味料の製造方法であって、該変換を、ルテニウム(Ru)および/または少なくとも1つのルテニウム酸化物に基づく、少なくとも1つの触媒の存在下で実施することを特徴とする方法。
【請求項3】
炭水化物混合物が、全炭水化物混合物の乾燥質量に対して0.01質量%ないし15質量%のサッカロースを含有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
炭水化物混合物が、全炭水化物混合物の乾燥質量に対して0.02質量%ないし30質量%のトレハルロースを含有することを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
炭水化物混合物が、全炭水化物混合物に対して20質量%ないし70質量%の水を含有することを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
触媒に関して、ルテニウム(Ru)および/またはルテニウム含有化合物が担体上に固定されて存在することを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
DIN66133による担体の全孔容積が、0.01ないし3ml/gの範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
担体が、DIN66131に準拠するBET試験による、0.001ないし1500m2/gの範囲の表面積を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
担体が、中性の担体、殊にTiO2または活性炭であることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
担体が、酸性の酸化物および混合酸化物、天然および合成のケイ酸塩物質を含む群から選択されることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
担体が、少なくとも部分的に、Si、Ti、Te、Zr、Al、Pを含む群から選択される元素の少なくとも1つまたはそれらの元素の少なくとも2つの組み合わせの酸化物化合物からなり、殊にAl23からなることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
担体が、H−Y型のゼオライトから、または酸性のイオン交換体から選択される、超酸性担体であることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法を、80℃ないし150℃である温度領域において実施することを特徴とする、請求項2から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法を、120℃未満の温度で実施することを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記方法を、イソマルツロースの水素化に関して50%〜95%の変換率まで、80〜120℃の温度領域において実施し、さらに、イソマルツロースの水素化に関して本質的に100%の変換を、100℃〜150℃の温度領域において実施することを特徴とする、請求項2から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
2つの異なる温度領域が空間的に互いに分けられており、且つ、2つの温度領域において、酸化物が殊にAl23およびTiO2から選択される酸化物含有担体上にルテニウム(Ru)および/またはルテニウム含有化合物が固定されて存在する触媒を使用することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
2つの異なる温度領域が空間的に互いに分けられており、80℃ないし150℃である温度領域において、酸化物が殊にAl23およびTiO2から選択される酸化物含有担体上にルテニウム(Ru)および/またはルテニウム含有化合物が固定されて存在する触媒を使用し、且つ、100℃ないし150℃である温度領域において、炭素含有担体上にルテニウム(Ru)および/またはルテニウム含有化合物が固定されて存在する触媒を使用することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記方法の間に設定された圧力が、少なくとも15barであることを特徴とする、請求項2から17までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−515467(P2013−515467A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545229(P2012−545229)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069726
【国際公開番号】WO2011/076625
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】