説明

甘味料組成物

【課題】
本発明は、ボディ感又は濃厚感の不足を軽減し、改善し、砂糖に近い風味を有するネオテームを含有するノンカロリーの甘味料組成物を提供する。
【解決手段】
キサンタンガム、キシログルカン、寒天、ゼラチン、ジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、サイリウムシードガム、カードラン、タラガム、微結晶セルロース、大豆多糖類、アラビアガム、カラヤガム、グァーガム酵素分解物、デキストリン、および澱粉からなる群から選択される1種又は2種の多糖類とネオテームを含有する甘味料組成物。多糖類としては、ペクチンまたはキシログルカンが好ましく、キシログルカンとしては、タマリンドガムが好ましい。本発明の甘味料組成物は、多糖類を、ネオテーム1重量部に対して、1.0重量部〜200重量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオテームの味質を改善し、砂糖の風味に近づけた甘味料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖は、その良質な甘味バランス、ボディ感(コク)、保湿性、物性の付与等の特性から、従来より飲食物に甘味料として広く使用されている。しかしながら、近年の健康志向や、低カロリー(ゼロカロリー)、低糖(糖質ゼロ)ブームにより、肥満や虫歯の原因となる砂糖は敬遠されるようになってきた。よって、飲料やデザートの嗜好品を中心に、幅広い食品で低カロリー化(低糖化)が進み、更にはゼロカロリー(糖質ゼロ)食品が登場するようになってきた。
【0003】
これらの、低カロリー(低糖)、ゼロカロリー(糖質ゼロ)食品には、砂糖の代わりにアスパルテーム、スクラロースなどの高甘味度甘味料が甘味を付与する目的で使用されている。これら高甘味度甘味料は、砂糖よりも強い甘味を有しているため、少ない添加量で甘味を付与することができることから、最終食品中ではカロリー摂取に寄与しない点で有用である。
【0004】
しかしながら、少ない添加量で甘味を付与できることから、食品中の固形分が減少することにより、ボディ感(コク)や濃厚感が不足し、消費者から、砂糖と比較して物足りない、おいしくないという評価を受けるという問題があった。
【0005】
低カロリー(低糖)製品においては、これらの高甘味度甘味料のボディ感の不足を補う方法として、砂糖や果糖ブドウ糖液糖や糖アルコール等と併用することが可能である。しかしながら、ゼロシュガー、ゼロカロリー製品を製造することは困難であった。
【0006】
高甘味度甘味料を使用した、嗜好性飲料のボディ感(コク)を付与する方法として、ポリデキストロースの使用(特許文献1)が提案されているが少量では効果がない。また、アラビノース等の糖類の使用(特許文献2)が提案されているが価格が高いという問題があった。
【0007】
ネオテームは、アスパルテームの還元アルキル化により合成されるジペプチドメチルエステル誘導体である。その甘味度は使用する食品の種類や配合組成によって異なるが、アスパルテームの30〜60倍、砂糖の7000〜13,000倍とされており、苦味や金属味のないクリーンな味質を有している。飲料、卓上甘味料、ヨーグルト、ケーキ、チューインガムといった様々な食品に1〜250ppm使用することで、適度な甘味が付与される。また、甘味の付与だけではなく、フレーバー及び酸味を増強することが知られている。また、アスパルテームと比較して甘味の立ち上がりが遅く、甘味が長く続くことが知られている(非特許文献1)。これまでに、ネオテームと特定の多糖類を含有する甘味料組成物は具体的に知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】:特許第4098012号
【特許文献2】:特開2008-245660号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】:Food Chemistry 69 (2000) 245-257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ボディ感又は濃厚感の不足を改善し、食品、医薬品又は医薬部外品等の経口的に用いられる製品に対して、良好な甘味を付与できる甘味組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を鑑み、本願の発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行った。その結果、ネオテームに特定の多糖類を組み合わせることにより、より砂糖に近い風味を有する組成物を見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の通りである。
【0012】
項1:キサンタンガム、キシログルカン、寒天、ゼラチン、ジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、サイリウムシードガム、カードラン、タラガム、微結晶セルロース、大豆多糖類、アラビアガム、カラヤガム、グァーガム酵素分解物、デキストリン、および澱粉からなる群から選択される1種又は2種の多糖類とネオテームを含有する甘味料組成物。
【0013】
項2:多糖類が、ペクチンである、項1に記載の甘味料組成物。
【0014】
項3:多糖類が、キシログルカンである、項1に記載の甘味料組成物。
【0015】
項4:キシログルカンが、タマリンドガムである、項3に記載の甘味料組成物
【0016】
項5:多糖類を、ネオテーム1重量部に対して、1.0重量部〜200重量部含有する、項1〜項4のいずれか一項に記載の甘味料組成物。
【0017】
項6:項1〜項5のいずれか一項に記載の甘味料組成物を含有する、飲料、デザート、菓子、糖菓、クリーム、パン、調味料、練り製品、食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜、または農畜水産加工品。
【発明の効果】
【0018】
本発明の甘味料組成物は、ボディ感又は濃厚感の不足を軽減し、改善し、砂糖に近い風味を有するネオテームを含有するノンカロリー甘味料である。本甘味料組成物を使用することにより、砂糖や果糖ブドウ糖液糖を使用した製品の風味に近い、嗜好性の高いノンカロリー製品を提供することができる。また、砂糖や果糖ブドウ糖液糖と併用することで、さらに自然な甘味質を有し、カロリーを抑えた製品を提供することができる。よって、本発明の甘味料組成物は、高甘味度甘味料の欠点ゆえに適用対象が制限されていた食品等にも広く用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明について更に詳細に説明する。
「ネオテーム」とは、N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン− 1−メチルエステルを意味する。ネオテームは、無水物であっても、水和物であってもいずれでもよい。例えば、特許第3643921号公報に記載されているように1水和物(A型結晶)または水分含量3%未満のC型結晶のいずれでもよい。尚、ネオテームのC型結晶とは、CuKα線を用いる粉末X線回折法で測定した場合における回折角度において、7.1°、19.8°、17.3°及び17.7°の回折角度(2θ)に回折X線の特有ピークを示す結晶を意味する。
【0020】
本発明における「多糖類」とは、キサンタンガム、キシログルカン、寒天、ゼラチン、ジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、サイリウムシードガム、カードラン、タラガム、微結晶セルロース、大豆多糖類、アラビアガム、カラヤガム、グァーガム酵素分解物、デキストリン、および澱粉からなる群から選択される1種又は2種の多糖類を意味する。好ましくは、ペクチンまたはキシログルカンである。キシログルカンとしては、タマリンド種子由来のタマリンドガムが好ましい。
【0021】
本発明の甘味料組成物におけて、ネオテームに対する多糖類の配合割合は、ネオテーム1重量部に対して、1.0重量部〜100重量部であり、好ましくは、5.0重量部〜70重量部である。
【0022】
本発明の「ネオテーム」の含有量は、甘味料組成物を含有する各種食品の全量に対して、0.000001重量部〜0.0004重量部である。
【0023】
本発明の甘味料組成物は、各種高甘味度甘味料を含有してもよい。例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンNaステビア、アリテーム、アドバンテーム等があげられる。
【0024】
本発明の甘味料組成物は、本発明の効果を損なわない限度において、食品添加物として使用可能な各種酸味料(天然成分から抽出した果汁、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸)、無機酸塩もしくは無機塩類(リン酸、リン酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなど)、有機酸もしくは有機酸塩類(クエン酸、コハク酸など)などを含有してもよい。
【0025】
その他にも、通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤や食品素材を含んでもよい。例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、還元パラチノース、結晶セルロースなど)、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウムなど)、結合剤(例えば、アラビアゴムなど)、香料(例えば、オレンジエッセンスなど)などが挙げられる。
【0026】
本発明の甘味料組成物は、ネオテームと高甘味度甘味料を同時に、または別々に混合して製造することができる。該組成物の混合時において、ネオテームおよび高甘味度甘味料は粉末状態、またはそれを蒸留水などの水溶液に溶解した状態で混合してもよい。
【0027】
本発明の組成物は、そのまま卓上甘味料として使用できるだけでなく、甘味料組成物として各種食品に使用することができる。各種食品としては、特に制限はされないが、好適には、柑橘果汁や野菜果汁等を含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャエール又はサイダー等の炭酸飲料、スポーツドリンク等の清涼飲料水、コーヒー、紅茶や抹茶等の茶系飲料、ココアや乳酸菌飲料等の乳飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムース等のデザート類;ケーキ、クラッカー、ビスケット、パイや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類;米菓、スナック類;アイスクリームやシャーベット等の冷菓並びに氷菓;チューインガム、ハードキャンディ、ヌガーキャンデー、ゼリービーンズ、等を含む糖菓一般;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類;イチゴジャムやマーマレード等のジャム;菓子パン等を含むパン;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ等の調味料一般;蒲鉾等の練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品を広く例示することができる。
【0028】
各種食品のみならず、医薬品、医薬部外品といった、経口的に用いられる製品に用いることができる。医薬部外品としては、例えば、口内清涼剤、うがい剤、歯磨き等のオーラルケア製品などが挙げられる。
【実施例】
【0029】
本発明の甘味料組成物を以下の参考例及び実施例によって説明する。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
表1に示す処方のオレンジジュースと表2に示す処方のアミノ酸飲料について、多糖類の添加効果を調べた。
【0031】
参考例1:オレンジジュースの調製
表1の処方に従って原材料を混合し、溶解させオレンジジュースを調製した。2℃の冷蔵
庫で一晩以上放置した後、評価を行った。
【0032】
【表1】

【0033】
参考例2:アミノ酸飲料の調製
表2の処方に従って原材料を混合し、溶解させ、アミノ酸飲料を調製した。2℃の冷蔵庫
で一夜以上放置した後、評価を行った。
【0034】
【表2】

【0035】
実施例1:難消化性デキストリンの添加効果
表3の処方に従い、オレンジジュースにネオテーム及び多糖類(難消化デキストリン(パインファイバーC:松谷化学工業株式会社製))を添加し、官能評価によりコクを評価した。
【0036】
【表3】

【0037】
難消化デキストリンを0.5〜10%添加することでコクが付与され、ネオテームの甘味の後味が低減された。濃度が高いほどコクが付与されたが、風味がマスキングされる傾向がみられた。2%添加が最もコントロールに近い味質であった。
【0038】
実施例2:ペクチンの添加効果
表3及び表4の処方に従って、多様類としてペクチン(クラシックCM-201:大日本住友製薬株式会社製)を添加したオレンジジュースおよびアミノ酸飲料を調製し、官能評価によりコクを評価した。
【0039】
【表4】

【0040】
ペクチンを組成物に対して0.0005〜0.0100%添加することでコクが付与され、ネオテームの甘味の後味が低減された。濃度が高いほどコクが付与されたが、風味がマスキングされる傾向がみられた。また、0.002〜0.005%で適度なコクが付与されたが、0.002〜0.003%が最もコントロールに近い味質であった。
【0041】
実施例3:タマリンドガム(低粘度タイプ)の添加効果
表3及び表4の処方に従って、多糖類として低粘度タイプのタマリンドガム(グリエイト:大日本住友製薬株式会社製)を添加したオレンジジュースおよびアミノ酸飲料を調製し、官能評価によりコクを評価した。
【0042】
タマリンドガム(グリエイト)を組成物に対して0.001〜0.02%添加することでコクが付与され、ネオテームの甘味の後味が低減された。濃度が高いほどコクが付与されたが、風味がマスキングされる傾向がみられた。また、0.003〜0.008%で適度なコクが付与されたが、0.005%が最もコントロールに近い味質であった。
【0043】
実施例4:タマリンドガムの添加効果
表3及び表4の処方に従って、多様類としてタマリンドガム(グリロイド6C:大日本住友製薬株式会社製)を添加したオレンジジュースおよびアミノ酸飲料を調製し、官能評価によりコクを評価した。
【0044】
タマリンドガム(グリロイド6C)を組成物に対して0.001〜0.01%添加することでコクが付与され、ネオテームの甘味の後味が低減された。濃度が高いほどコクが付与されたが、風味がマスキングされる傾向がみられた。また、0.003〜0.006%で適度なコクが付与されたが、0.005%が最もコントロールに近い味質であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の甘味料組成物は、ボディ感又は濃厚感の不足を軽減し、改善し、砂糖に近い風味を有するネオテームを含有するノンカロリー甘味料である。本甘味料組成物を使用することにより、砂糖や果糖ブドウ糖液糖を使用した製品の風味に近い、嗜好性の高いノンカロリー製品を提供することができる。また、砂糖や果糖ブドウ糖液糖と併用することで、さらに自然な甘味質を有し、カロリーを抑えた製品を提供することができる。よって、本発明の甘味料組成物は、高甘味度甘味料の欠点ゆえに適用対象が制限されていた食品等にも広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガム、キシログルカン、寒天、ゼラチン、ジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、サイリウムシードガム、カードラン、タラガム、微結晶セルロース、大豆多糖類、アラビアガム、カラヤガム、グァーガム酵素分解物、デキストリン、および澱粉からなる群から選択される1種又は2種の多糖類とネオテームを含有する甘味料組成物。
【請求項2】
多糖類が、ペクチンである、請求項1に記載の甘味料組成物。
【請求項3】
多糖類が、キシログルカンである、請求項1に記載の甘味料組成物。
【請求項4】
キシログルカンが、タマリンドガムである、請求項3に記載の甘味料組成物
【請求項5】
多糖類を、ネオテーム1重量部に対して、1.0重量部〜200重量部含有する、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の甘味料組成物。