説明

生ごみ処理機、生ごみ処理システム及び生ごみ処理方法

【課題】ネットワークを用いた動作制御を行うことにより、下水処理における環境負荷を軽減することのできる生ごみ処理機、生ごみ処理システム及び生ごみ処理方法を提供すること。
【解決手段】このディスポーザー1は、インターネットWとの接続を可能とすると共に、インターネットWに接続された下水処理場Aの管理装置Bから送信される制御信号ibを受信する通信部1gと、制御信号ibに基づいて処理可能又は処理禁止の動作制御を行う制御部1fと、投入口1aから投入された生ごみの処理を動作制御に応じて行うカッター1bと、動作制御状態を表示する表示部1hと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみ処理機、生ごみ処理システム及び生ごみ処理方法に係り、特に、ネットワークを用いて動作制御を行うことにより、下水処理における環境負荷の軽減等を図ることのできる生ごみ処理機等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭内や飲食店内でディスポーザー(生ごみ処理機)は、単体技術としては既に技術確立されており(例えば、特許文献1〜2を参照。)、例えばキッチン等のシンクの排水経路部分に設置され、投入された生ごみをカッター等で粉砕処理し、水流により下流へと排出するものである。
【0003】
さて、下水道はその方式として大きく2つの方式がある。1つは、家庭排水と雨水とを合流させて下水処理する合流式であり、もう1つは家庭排水と雨水とを合流させないで、家庭排水のみを下水処理する分流式である。なお、ここで下水のうち家庭からの排水に係るものを汚水と呼び、雨水と区別するものとする。
【0004】
このような下水道に対して、ディスポーザーにより粉砕した生ごみを直接下水道に流してしまうと、例えば集中豪雨等により短時間に多量の降雨があった場合には、合流式においては、その粉砕物の一部が、下水管きょの途中に設置されている雨水吐きの堰から川や海に越流したり、ポンプ場から粉砕物を含む未処理下水が河川や海に直接放流されたり、下水処理場から高級処理しきれない余剰分の下水が簡易沈殿処理されただけで放流される。
【0005】
また分流式下水道においても、降雨時には何らかの原因により雨水が汚水に混入し、汚水量が一定量以上となって下水処理設備の能力を超えると、本来高級処理されるべきはずの汚水が簡易沈殿処理だけの処理により河川や海にバイパス放流されてしまうことがある。その粉砕物を含む負荷は川や海の汚濁の原因となる。
【0006】
なお、特に合流式においては、ディスポーザー由来の粉砕生ゴミが下水道施設に流入し、さらに川や海に流出することは、今までの歴史的な経緯から自治体が取り組む合流式下水道の改善計画にも何ら想定されておらず、雨天時における夾雑物やBODの汚濁負荷流出を制限した下水道法施行令の遵守の観点からも問題となる。
【0007】
また、分流式及び合流式の下水処理場内においても、ディスポーザーによるこれらの汚濁物負荷を処理することは、処理設備設計には一切考慮されずに施設ができあがっている。そのため、その粉砕物が下水処理場に流入してしまうと反応槽等の負荷が増大し、処理しきれなくなるという問題がある。
【0008】
また、生ごみは固形物であるので、排水経路内に排出すると、即座には配管詰まりとはならなくても、長年の使用により配管内に蓄積し、下水の流下の妨げになったり、腐敗して臭気が発生し、管きょを腐敗させるといった問題もある。
【0009】
上記のような背景があるため、下水道にディスポーザーを接続する場合には、一般的には、そのディスポーザー設備のすぐ後段に「排水処理設備」を併設し、ディスポーザーで粉砕した固形物を直ちに分解・除去等することが行われている。これにより、下水道施設へ流入する負荷が減じ、下水道施設に悪影響が及ぼさないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−192140号公報
【特許文献2】特開2006−102348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来より、一般家庭における生ゴミの発生は家屋内の臭気発生が嫌気され、ほとんどの自治体は週に数回ものごみ収集作業を行っている。生ゴミを含むゴミをステーションに出す場合には、それらのゴミが鳥獣により荒らされて、不衛生になる、野生害獣の繁殖に繋がる、という問題が発生している。
【0012】
また生ゴミは多量の水分を含むため、収集後に焼却処理を行う場合に多大なエネルギーがかかる要因となっている。ディスポーザー自体はこれらの複数の上記課題を解決する有効な手段であり、ごみ収集頻度の低減、ゴミステーションの衛生化、ゴミ焼却の効率化がもたらされる。
【0013】
しかしながら,上述した理由により,ディスポーザー単体の設備のみでは,設置が認められない場合が殆どであり,一般的にはディスポーザー設備に併せて粉砕固形物を分解・除去等する「排水処理設備」を併設しなくてはならないというシステムの複雑さから、ディスポーザーの普及は殆ど進んでいないというのが実情である。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、上述したディスポーザー設備の下水道施設への接続上の課題を解決し、上記排水処理設備がなくてもディスポーザー単体での設備が設置可能なディスポーザーを提供することにより、ディスポーザーの普及促進を図り、よってごみ収集頻度の低減、ゴミステーションの衛生化、ゴミ焼却の効率化等を社会全体として図るものである。
【0015】
またこれに併せて、本発明によるディスポーザー接続による下水処理場流入の粉砕固形物の増分を下水処理場内での最初沈殿池、より望ましくは特許文献3(特許第3600820号公報)に示すような高速ろ過等の効率的な固液分離回収装置によって効率的に固液分離を行うことにより、水処理工程については反応槽の負荷を低減させて処理の省エネルギー化を図ると共に、汚泥処理過程でのバイオガスの発生量を増大させて活用することにより創エネルギー化を促進させることが可能となるため、下水処理場全体として地球温暖化防止等につなげることを可能とする。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、ネットワークを用いた動作制御を行うことにより、下水処理における環境負荷を軽減することのできる生ごみ処理機、生ごみ処理システム及び生ごみ処理方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の例示的側面としての生ごみ処理機は、ネットワークとの接続を可能とすると共に、ネットワークに接続された下水処理場の管理装置からネットワークを介して送信される制御信号を受信する制御信号受信部と、制御信号に基づいて処理可能又は処理禁止の動作制御を行う制御部と、投入口から投入された生ごみの処理を動作制御に応じて行う処理部と、動作制御状態を表示する表示部と、を有する。
【0018】
下水処理場の管理装置からネットワークを介して送信される制御信号に基づいて、生ごみ処理機による処理可能/処理禁止の動作制御を行うことができる。したがって、管理装置側(すなわち、管理装置を操作する管理者。)から各家庭内等に設置された生ごみ処理機の生ごみ処理許否を制御することができる。
【0019】
例えば、集中豪雨等によって雨水量が下水処理場の処理能力を超えた場合、生ごみ処理機による処理を禁止することができる。管理装置側から生ごみ処理機の動作を制御することができるので、集中豪雨時における生ごみ処理機のユーザによる自分勝手な処理操作を制限することができ、環境への負荷増大を防止することができる。また、その動作制御状態が表示部によって表示されるので、ユーザは、現在処理可能状態であるか処理禁止状態であるかを一目で知ることができる。
【0020】
なお、ここでネットワークには、例えばインターネット網、電話回線網、専用のLAN等が含まれる。また、通信手段としては、もちろんケーブルを用いた有線通信も電波や光を用いた無線通信も含む。また、管理装置から送信される制御信号が、管理者(下水道管理者)の手動操作(例えば、ボタン操作。)に基づいて送信される場合も、後述するように、管理装置の機能に基づき自動的に送信される場合も含む。
【0021】
処理とは、生ごみ処理機による粉砕処理、粉砕後の生ごみを下流に向けて排出する排出処理を含む。したがって、処理禁止とは、投入された生ごみを未粉砕のままとすることや、粉砕までは動作するが、粉砕後の生ごみを下流側へと排出せずに保留させる(貯留する)ことを含む。また、処理可能とは、投入された生ごみの粉砕も粉砕後の生ごみの下流側への排出も可能な状態である。
【0022】
また、生ごみ処理機による処理が禁止される場合としては、例えば、集中豪雨等の降雨量増大により下水量が下水処理設備の能力をオーバーする場合が考えられる。その下水処理設備の能力オーバーの状況としては、例えば合流式下水処理においては、雨水吐きやポンプ場からの越流の発生、下水処理場における簡易沈殿処理の開始、分流式下水処理においては、バイパス簡易処理の開始、が挙げられる。
【0023】
制御信号が、下水処理場における処理状況を検出するための処理状況検出手段又は降雨量を計測する雨量計の少なくともいずれかの検出信号に基づいて、管理装置から自動送信されるものであってもよい。
【0024】
制御信号が、管理装置から自動送信されるので、管理者が常時下水処理の状況を監視しながら状況に応じて制御信号を送信する操作をわざわざ行う必要がない。下水処理場における処理状況に応じて、及び/又は、降雨量に応じて制御信号が管理装置から自動的に送信されるので、生ごみ処理機からの粉砕生ごみの河川放流を防止すべく、適切なタイミングで生ごみ処理機の処理を禁止することができる。
【0025】
なお、処理状況検出手段としては、例えば、雨水吐きに設置され、堰からの越流を監視する水位センサー、ポンプ場に設置されて越流を監視する水位センサー、沈砂池や最初沈殿池,滞水池等の水位を監視する水位センサー、簡易沈殿処理やバイパス簡易処理の開始/停止を検知する簡易処理動作検知手段が考えられる。
【0026】
管理装置に向けて、制御部による制御状態を示す状態信号をネットワークを介して送信する状態信号送信部、を更に有してもよい。
【0027】
この生ごみ処理機は、制御部による制御状態をネットワークを介して例えば管理装置に向けて送信するので、受信した管理装置側で、各家庭内における生ごみ処理機の制御状態を把握することができる。したがって、管理者により複数の生ごみ処理機の制御状態を統括的に管理することが容易となる。また、後述するように、生ごみ処理機がモード切替え部を有する場合において、複数の生ごみ処理機のうちどれがリモートモードでどれがマニュアルモードかを把握することも容易である。
【0028】
管理装置に向けて、処理部の動作状況をネットワークを介して送信する動作状況送信部、を更に有してもよい。
【0029】
この生ごみ処理機は、処理部の動作状況をネットワークを介して例えば管理装置に向けて送信するので、受信した管理装置側で、各家庭内における生ごみ処理機の動作状況を把握することができる。例えば、動作中と非動作とを時々繰り返す場合に、ユーザが正常に使用していると判断したり、非動作が数日継続した場合にユーザが不在と判断したり、動作中が数時間以上継続した場合に異常使用又は故障と判断したりすることができる。
【0030】
管理装置が、各生ごみ処理機の動作状況の履歴を保持することができるようになっていれば、累計的な処理量を算出することもできるので、例えば生ごみ処理機の耐久性(残寿命)を把握することもできる。
【0031】
制御部による動作制御により運転を許可あるいは不許可とするリモートモードと、制御部による動作制御を解除するマニュアルモードと、を切り替えるモード切替え部、を更に有してもよい。
【0032】
モード切替え部によってユーザがマニュアルモードに切り替えれば、制御部による動作制御が解除されるので、管理装置側からの制御信号の情報が「処理禁止」の情報であってもユーザによる緊急の生ごみ処理を可能とすることができる。
【0033】
制御部が、生ごみ処理機に接続された排水管内の排水状況を検出する排水状況検出手段からの検出信号に基づいて、生ごみ処理機の処理可能又は処理禁止の動作制御を行ってもよい。
【0034】
排水状況検出手段が、排水管内が排水状態であること(水が流れていること)を検出した場合に生ごみ処理機の処理を可能とし、排水状態でないことを検出した場合に生ごみ処理機の処理を禁止するように構成することができる。それにより、排水管内に水が流れている場合にのみ粉砕生ごみが下流側に排出されるようにすることができる。粉砕生ごみが排水管内に長時間蓄積されるのを防止することができ、排水管詰まりの防止や悪臭軽減に効果を発揮する。
【0035】
生ごみ処理機は、一般的に台所シンクの排水管部分に設置され、その排水管は、トイレ、浴室、洗面所等の排水管と接続されている。したがって、生ごみ処理機に接続された排水管は、ここでは、トイレ、浴槽、洗面所等の排水管であってもよい。そして、排水状況検出手段が、その排水管内に水が流れているか否かを検出するように構成されている。
【0036】
制御部が、生ごみ処理機の設置家屋内のトイレ、浴室及び洗面所のうち少なくともいずれか1箇所における排水開始を検出する排水開始検出手段からの検出信号に基づいて、生ごみ処理機の処理可能又は処理禁止の動作制御を行ってもよい。
【0037】
排水管内の排水状態を検出するのでなく、トイレ、浴室、及び/又は、洗面所における排水開始を検出した場合に生ごみ処理機の処理を可能とし、排水開始を検出しない場合に生ごみ処理機の処理を禁止するように構成することができる。それにより、排水管内に水が流れている場合にのみ粉砕生ごみが下流側に排出されるようにすることができる。粉砕生ごみが排水管内に長時間蓄積されるのを防止することができ、排水管詰まりの防止や悪臭軽減に効果を発揮する。
【0038】
なお、一般的には、排水管内の排水状態よりもトイレ等における排水開始の方が時間的に早く検出することができるので、生ごみ処理を可能とするタイミングを早くすることができる。ここで、排水開始検出手段は、例えば、トイレの洗浄ノブの操作、浴室のシャワーやカランの吐水ノブの操作、洗面所のカランの吐水ノブの操作等を検出するものであってもよい。
【0039】
使用者の識別情報を取得する識別情報取得部と、取得した識別情報に応じて投入口からの生ごみの投入を許否する投入許否部と、を更に有してもよい。
【0040】
このように構成することにより、生ごみ処理機を使用する使用者を限定することができるので、不特定多数の者による使用を制限することができる。この構成は、生ごみ処理機が、複数の使用者によって共同利用される公共施設等に設置される場合に特に効果的である。
【0041】
例えば、特定の使用者にのみ識別情報としてのバーコードが印刷された使用者カードを所持させ、その使用者カードが識別情報取得部としてのバーコードリーダーによって読み取られた場合にのみ生ごみの投入口が開口するように構成すれば、使用者カードを所持しない者による生ごみ処理機の使用を制限することができる。また、使用者カードごとに異なる識別情報としていれば、どの使用者がいつ生ごみ処理機を使用したかの履歴を確認することもできる。
【0042】
本発明の他の例示的側面としての生ごみ処理システムは、上記の生ごみ処理機と、下水処理場における処理状況を検出するための処理状況検出手段又は降雨量を計測する雨量計の少なくともいずれかと、管理装置から制御部に向けて制御信号を送信するための制御信号送信部と、を有する。
【0043】
下水処理場の管理装置からネットワークを介して送信される制御信号に基づいて、生ごみ処理機による処理可能/処理禁止の動作制御を行うことができる。したがって、管理装置側(すなわち、管理装置を操作する管理者。)から各家庭内等に設置された生ごみ処理機の生ごみ処理許否を制御することができる。
【0044】
本発明の更に他の例示的側面としての生ごみ処理方法は、ネットワークに接続された下水処理場の管理装置からネットワークを介して送信される制御信号を受信する制御信号受信ステップと、制御信号に基づいて処理可能又は処理禁止の動作制御を行う制御ステップと、投入口から投入された生ごみの処理を動作制御に応じて行う処理ステップと、動作制御状態を表示する表示ステップと、を有する。
【0045】
下水処理場の管理装置からネットワークを介して送信される制御信号に基づいて、生ごみ処理機による処理可能/処理禁止の動作制御を行うことができる。したがって、管理装置側(すなわち、管理装置を操作する管理者。)から各家庭内等に設置された生ごみ処理機の生ごみ処理許否を制御することができる。
【0046】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、ネットワークを用いた動作制御を行うことにより、生ごみ処理機の処理可能/処理禁止の動作を管理装置側から制御することができる。したがって、例えば集中豪雨による多量の降雨時等、下水処理設備の能力オーバーの場合にも、粉砕生ごみが河川放流されてしまうのを防止することができ、下水処理における環境負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1に係る生ごみ処理システムの全体構成の概略を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すディスポーザーの概略構成を示す構成図である。
【図3】図2に示すディスポーザーの制御部による動作制御パターンを説明するフローチャートである。
【図4】図2に示すディスポーザーの制御部による動作制御パターンの他の例を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係るディスポーザーの概略構成を示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る生ごみ処理システムの全体構成の概略を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る生ごみ処理システムの全体構成の概略を示す概略構成図である。
【図8】時間の経過とともに下水の流量が増大した場合の、下水処理の処理プロセスの変遷を説明する説明図であって、合流式下水処理方式の場合を示す図である。
【図9】時間の経過とともに下水の流量が増大した場合の、下水処理の処理プロセスの変遷を説明する説明図であって、合流式下水処理方式の場合の他の例を示す図である。
【図10】時間の経過とともに下水の流量が増大した場合の、下水処理の処理プロセスの変遷を説明する説明図であって、分流式下水処理方式の場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1に係る生ごみ処理システムSについて図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る生ごみ処理システムSの全体構成の概略を示す概略構成図である。図1において、ディスポーザー(生ごみ処理機)1は、各家庭の家屋H内に設置される。より具体的には、一般的に、家屋H内における台所シンク2の排水管2a内に設置される。また、各家庭の家屋H内には、トイレ3、浴室4も設置されており、各々の排水管3a〜4aが台所シンク2の排水管2aと接続されている。
【0050】
なお、本実施の形態1においては、各家屋Hからの汚水L1とマンホールMからの雨水L2とが合流されて処理される合流式下水処理方式が採用されている。まず、下水の配管の構成について説明し、その後生ごみ処理システムSの各構成について説明する。
【0051】
<配管の構成>
各家庭の家屋H内におけるシンク2の排水管2a、トイレ3の排水管3a、浴室の排水管4aは相互に接続されており、各排水管2a〜4a内を流れる汚水が合流して下水管5へと流れるようになっている。その下水管5には、マンホールMの下方に敷設された雨水管6も接続されており、マンホールM内に流れ込んだ雨水L2も合流するようになっている。
【0052】
下水管5内は下水処理場A外の雨水吐き7に接続され、その後にポンプ場8へと接続されている。ポンプ場8の下流には、下水処理設備9(高級処理設備10及び簡易処理設備11が接続されており、下水Lの処理が行われた後に河川放流されるようになっている。なお簡易処理設備11は最初沈殿池等を意味する。
【0053】
下水管5内を流れる下水Lは、雨水吐き7へと送られる。ここで、通常時(すなわち、降雨がないか又は少ないとき。)は、下水Lの略すべてが雨水吐き7からポンプ場8へと送り出されるが、降雨量が多いときは、下水Lの一部が雨水吐き7の堰を越えて越流となる。その越流は、下水処理をされることなく放流管7aを介して河川へと放流される。
【0054】
同様に、ポンプ場8においても、通常時は流入する下水Lの略全てが下水処理設備9側へと送られるが、降雨量増大により下水L量がポンプ場8の汚水ポンプ能力をオーバーしたときは、ポンプ場8の手前においても越流が生じ、下水Lの一部が放流管8aから河川へと放流される。
【0055】
下水処理設備9においては、通常時は略すべての下水Lが簡易処理設備11を経て高級処理設備10においてバクテリアにより生物処理された上で河川放流される。しかしながら、降雨量増大等により下水L量が高級処理設備10の処理能力をオーバーした場合には、下水Lの処理能力オーバー分が簡易処理設備11から簡易沈殿水として放流されるようになっている。
【0056】
<生ごみ処理システムの構成>
生ごみ処理システムSは、ディスポーザー1、排水センサー(排水状況検出手段)3b,4b、雨水吐き7における越流センサー(処理状況検出手段)7b、ポンプ場8における越流センサー(処理状況検出手段)8b、下水処理設備9における簡易処理開始センサー(処理状況検出手段)11a、雨量計12、下水処理場Aにおける管理装置Bを有して大略構成されている。そして、図1に示すように、生ごみ処理機1、雨量計12及び管理装置Bは、インターネット(ネットワーク)Wを介して相互に通信可能に構成されている。もちろん、ネットワークとしてはインターネットWに限定されるものでなく、電話回線網や専用線を用いたLAN等、種々のものが適用可能である。
【0057】
排水センサー3b,4bとディスポーザー1とは通信可能に構成され、越流センサー7b,8b、簡易処理開始センサー11aと管理装置Bとは通信可能に構成されている。これらについては、相互に直接通信可能に構成されていても、インターネットWを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。なお、これらの直接的な通信及びインターネットWを介した通信は、光や電波を用いた無線通信であってもケーブルを用いた有線通信であってもよい。
【0058】
排水センサー3bは、トイレ3の排水管3aに設置されている。そして、排水センサー4bは、浴室4の排水管4aに設置されている。これらの排水センサー3b,4bは、通常時(トイレ3や浴室4の不使用時)はオフ信号を送信しているが、トイレ3や浴室4が使用されて水が流されると、その排水状況を検出してオン信号をディスポーザー1に向けて送信するようになっている。
【0059】
雨水吐き7における越流センサー7b及びポンプ場8における越流センサー8bは、下水L量増大等により、雨水吐き7やポンプ場8の汚水ポンプ能力をオーバーして越流が生じたか否かを検出するためのものである。通常時(降雨がないか又は少ないとき。)においては、越流センサー7b,8bは、オフ信号を管理装置Bに向けて送信している。しかしながら、降雨量増大等により下水L量が過大となって越流が生じた場合は、その越流発生を検出してオン信号を管理装置Bへと送信する。なお、越流センサー8bは、ポンプ場8でなく下水処理場Aにおける沈砂池や最初沈殿池(いずれも不図示)等に設置され、これらの場所における所定水位超越(オーバーフロー)を検出するものであってもよい。
【0060】
下水処理設備9における簡易処理開始センサー11aは、下水L量増大等により、簡易処理設備11による簡易処理が開始されたか否かを検出するためのものである。通常時(降雨がないか又は少ないとき。)においては、下水Lの略全てが高級処理設備10により高級処理され、簡易処理開始センサー11aはオフ信号を管理装置Bに向けて送信している。しかしながら、降雨量増大等により下水L量が過大となって簡易処理が開始されると、簡易処理開始センサー11aはその簡易処理開始を検出してオン信号を管理装置Bへと送信する。
【0061】
雨量計12は、降雨量を計測し、その計測データを管理装置Bへと送信するものである。多数の雨量計12が広範囲の地域に亘ってビルの屋上等に設置されているので、地域ごとの降雨状況が管理装置B側において把握することができるようになっている。
【0062】
下水処理場Aにおける管理装置Bは、一般的にはコンピュータを有して構成されている。管理装置Bには、各家庭に設置されたディスポーザー1からの状態信号i1、越流センサー7b,8bからの検出信号i7,i8、簡易処理開始センサー11aからの検出信号i11、雨量計12からの計測データi12等が送信され、情報の集中管理が可能となっている。
【0063】
管理装置Bは、図示しない表示装置を有して構成されており、その表示装置には受信した各種情報i1,i7,i8,i11,i12が表示されるようになっている。そして、管理装置Bを管理する下水道管理者によって、それらの情報が総合的に把握、管理される。
【0064】
管理装置Bは、更に内部に通信部(制御信号送信部)B1を有している。この通信部B1は、一般的にはCPUと通信用インターフェースで概念され、管理装置B側からの制御信号ibをディスポーザー1に向けて送信する機能を有する例えば、管理装置Bに設けられた制御信号送信ボタン(不図示)を下水道管理者が押すことにより、制御信号送信部B1としてのCPUと通信用インターフェースとが用いられて、制御信号ibが家屋H内のディスポーザー1に向けてインターネットWを介して送信されるようになっている。この制御信号ibには、ディスポーザー1による生ごみの処理を可能とする許可信号と生ごみの処理を不可とする禁止信号とがある。
【0065】
ディスポーザー1は、投入口1aから投入された生ごみを粉砕し、下流側に接続された排水管2aへと排出する粉砕装置であって、家屋H内において、台所シンク2の排水管2a近傍に設置される。図2は、このディスポーザー1の概略構成を示す構成図である。ディスポーザー1は、投入口1a、カッター(処理部)1b、カッター用モーター1c、開閉蓋1d、開閉蓋用モーター1e、制御部1f、通信部(制御信号受信部、状態信号送信部、動作状況送信部)1g、表示部1hを有して大略構成される。
【0066】
投入口1aから投入された生ごみが、カッター用モーター1cによって回転駆動されたカッター1bによって粉砕処理される。粉砕処理が完了すると、開閉蓋用モーター1eによって開閉蓋1dが開放され、下流側に接続された排水管2aに向けて粉砕生ごみが排出される。カッター用モーター1cと開閉蓋用モーター1eとは制御部1fに接続されており、この制御部1fによって2つのモーターの動作制御が可能となっている。
【0067】
通信部1gは、このディスポーザー1のインターネットWとの通信インターフェースを構成する部分であり、インターネットWとの接続を可能とすると共に、管理装置Bからの制御信号ibをインターネットWを介して受信する制御信号受信部としての機能を有する。受信した制御信号ibは、受信部1gから制御部1fへと送られ、その制御信号ibに基づいてカッター1b及び開閉蓋1dの動作制御が行われる。
【0068】
また、通信部1gは、状態信号送信部としても機能する。すなわち、このディスポーザー1の制御状態(すなわち、処理可能状態、処理禁止状態等)を示す状態信号i1を制御部1fから受け取り、インターネットWを介して管理装置Bの通信部B1へ向けて送信する。したがって、管理装置B側では、家屋H内のディスポーザー1の制御状態を把握することができる。下水道管理者は、管理装置B側から送信した制御信号に基づき、ディスポーザー1が正常に動作制御されているかどうかを確認することができる。
【0069】
制御状態としては、リモートモードとマニュアルモードも含む。このリモートモードとは、管理装置B側からの制御信号に基づいて制御部1fによる動作制御が可能な動作モードである。一方、マニュアルモードとは、制御信号に基づく動作制御が禁止される動作モードであり、管理装置B側からの遠隔操作ができないモードである。例えば、緊急に生ごみ処理を行う必要がある場合には、ディスポーザー1の動作モードをマニュアルモードとすることにより、管理装置B側からの制御信号が許可信号か禁止信号かに拘らず生ごみ処理を行うことができる。
【0070】
更に、通信部1gは、動作状況送信部としても機能する。動作状況とは、カッター用モーター1cや開閉蓋用モーター1eの動作状況を意味する。これらの動作状況が制御部1fから通信部1gを介して管理装置B側へと送信されることにより、下水道管理者が。ディスポーザー1の設置家屋H内で使用者がディスポーザー1を正常使用していることを確認することができる。例えば、長期に亘ってカッター用モーター1cが使用されなかったり、逆に長時間に亘って使用状態のままである場合に、異常(使用者の長期不在、事故、ディスポーザー1の故障等)と判断することができる。
【0071】
表示部1hは、このディスポーザー1の動作制御状態を示すものである。例えば、表示部1hは、緑色のLEDと赤色のLEDとを有して構成され、管理装置Bからの制御信号が許可信号である場合に緑色のLEDを点灯させ、制御信号が禁止信号である場合に赤色のLEDを点灯させてもよい。
【0072】
図3は、このディスポーザー1の制御部1fによる動作制御パターンを説明するフローチャートである。下水道管理者により管理装置Bの制御信号送信ボタンが押され、禁止信号としての制御信号ibが通信部B1から送信されると(S.1)、その禁止信号を受信したディスポーザー1の制御部1fは、処理禁止の動作制御を行う(S.2)。それと共に、表示部1hが赤色LEDの点灯表示を行う(S.3)。
【0073】
ここで、下水道管理者により禁止信号が送信される場合としては、例えば、降雨量増大により雨水吐き7の越流センサー7bが越流発生を検出した場合(オン信号検出)、ポンプ場8の越流センサー8bが越流発生を検出した場合(オン信号検出)、下水処理設備9における簡易処理開始センサー11aが簡易処理の開始を検出した場合(オン信号検出)等が考えられる。
【0074】
また、下水処理場Aにおいて、下水L量の増大による能力オーバーが未だ発生していなくても、雨量計12による計測データによって、近い将来に下水L量が増大することが予想できる場合がある。そのような場合は、雨量計12による計測データに基づいて、下水道管理者が禁止信号を送出してもよい。
【0075】
ディスポーザー1による処理禁止は、制御部1fによりカッター用モーター1cの動作が禁止されて、粉砕処理が不可能となることをいう。しかしながら、制御部1fにより開閉蓋用モーター1eの動作が禁止されて開閉蓋1dが閉鎖状態のまま開放不可とされ、カッター1bによる粉砕処理は可能であるが、粉砕後の生ごみの下流側排水管2aへの排出が不可能となることを含んでもよい。いずれにしても、粉砕生ごみの排水管2aへの排出が防止されることにより、越流や簡易処理による粉砕生ごみの河川放流が防止されれば自然環境への負荷増大を予防することができる。
【0076】
なお、降雨がないか又は少ない場合、降雨が減少して越流センサー7b,8bや簡易処理開始センサー11aの検出信号がオフ信号となった場合は、下水道管理者により管理装置Bの制御信号送信ボタンが押され、今度は許可信号としての制御信号ibが通信部B1から送信される(S.1)。その許可信号を受信したディスポーザー1の制御部1fは、処理可能の動作制御を行う(S.4)。それと共に、表示部1hが赤色LEDの消灯及び緑色LEDの点灯表示を行う(S.5)。
【0077】
ディスポーザー1による処理可能は、制御部1fによりカッター用モーター1cの動作が可能とされて、投入口1aから投入された生ごみの粉砕処理が可能となることをいう。もちろんこの場合において、制御部1fにより開閉蓋用モーター1eの開閉動作も可能とされて開閉蓋1dが開放状態となる。
【0078】
なお、排出された粉砕生ごみが排水管2aやそれ以降の管内に蓄積すると、詰まりや悪臭の原因となって好ましくない。したがって、家屋H内で排水が行われている場合にのみ粉砕生ごみの排出を可能とし、排水が行われていない場合に粉砕生ごみの排出を不可能とすれば、管内の詰まりや悪臭を予防できて都合がよい。
【0079】
その場合、図4のフローチャートに示すような、動作制御パターンの他の例に基づき制御部1fの動作制御を行う。すなわち、通信部B1から許可信号としての制御信号ibが送信された場合において(S.1)、排水センサー3b,4bの少なくともいずれか一方の検出信号がオン信号である場合に(トイレ3及び浴室4の少なくともいずれかにおいて排水が行われている場合に)、制御部1fは処理可能の動作制御を行う(S.6)。しかしながら、排水センサー3b,4bの検出信号のいずれもがオフ信号である場合に(トイレ3及び浴室4のいずれも排水が行われていない場合に)、制御部1fは処理禁止の動作制御を行う(S.7)。
【0080】
これにより、制御信号ibが許可信号であり、かつ排水センサー3b,4bの少なくともいずれか一方がオン信号である場合にのみ生ごみ処理を可能とすることができる。家屋H内の排水管で排水が行われている場合にのみ粉砕生ごみの排出が行われるので、粉砕生ごみの排水管内の蓄積を防止し、結果的に排水管の詰まりや悪臭を防止することができる。
【0081】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係るディスポーザー1の概略構成を示す構成図である。このディスポーザー1は、例えば公共の場所に設置され、複数の使用者によって共同利用される。したがって、使用権限を有する使用者(以下、許可者という。)にのみ限定的に使用可能とし、使用権限を持たない者(以下、違反者という。)の使用を制限する必要がある。
【0082】
そのため、この実施の形態2に係るディスポーザー1は、バーコードリーダー(識別情報取得部)1j、投入口開閉手段1kを有している。バーコードリーダー1j及び投入口開閉手段1kは、共に制御部1fに接続されている。投入口開閉手段1kは、例えば、投入口開閉蓋とその開閉駆動用の投入口用モーターとを有して構成される。
【0083】
投入口開閉手段1kは、通常状態(不使用状態)においてディスポーザー1の投入口1aを閉鎖している。そのため生ごみを投入口1aから投入することができない。許可者は、所定のバーコード(識別情報)が付された登録カードCを有している。この登録カードCをバーコードリーダー1jに通し、バーコードリーダー1jにバーコードを読み取らせる。バーコードリーダー1jは、読み取ったバーコード情報を制御部1fへと送信する。
【0084】
制御部1fは、予め内部に許可者の識別情報データベースを有しており、受信したバーコード情報と識別情報データベースとを照合する。そして、識別情報データベース内の情報とバーコード情報とが符合すれば、投入口開閉手段1kに向けて開放を指示する制御信号を送信する。
【0085】
開放指示の制御信号を受信すると、投入口開閉手段1kは、投入口用モーターを駆動し、投入口開閉蓋を開放させる。それにより、許可者に対しては投入口1aが開放されて、生ごみの投入が可能となる。
【0086】
なお、登録カードCのバーコード情報は、許可者ごとに異なるバーコード情報であってもよいし、全員が共通のバーコード情報であってもよい。許可者ごとに異なるバーコード情報とすれば、誰がいつディスポーザー1を使用したかを把握することができ、許可者ごとの使用履歴を管理することもできる。
【0087】
また、識別情報としては、バーコードに限定されず、例えば、キーボード入力される暗証番号が識別情報であってもよい。識別情報が磁気情報であってもよいし、電波送受信される情報であって、RFIDやBluetoothを利用したものであってもよい。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。例えば、上記実施の形態1においては、合流式の下水処理方式を例として説明したが、もちろん本発明に係る生ごみ処理システムを分流式下水処理方式に適用することも可能である。
【0089】
また、上記実施の形態1においては、排水センサー3b,4bをトイレ3の排水管3a及び浴室4の排水管4aに設置している。しかしながら、トイレ3や浴室4における排水開始は、排水管内での水流検出よりも使用者による排水操作を検出する方が、より早いタイミングで検出することができる。したがって、排水センサー3bの代わりにトイレ3における洗浄ノブの操作を検出するノブセンサー(排水開始検出手段)を設置し、排水センサー4bの代わりに浴室4におけるカランあるいは湯舟排水栓の吐水操作を検出するカランセンサー(排水開始検出手段)を設置することが一層好ましい。
【0090】
更に、以下の実施形態においては、本発明に係る生ごみ処理システムSのより具体的な構成について説明する。
【0091】
[実施の形態3]
図6は、本発明の実施の形態3に係る生ごみ処理システムS3の全体構成の概略を示す概略構成図である。この実施の形態3においては、合流式下水処理方式が採用されている。家屋Hからの汚水L1及び家屋HやマンホールMからの雨水L2は合流されて下水Lとして雨水吐き37へと至るようになっている。また、雨水吐き37の下流側で下水管5と合流する家屋H’もある。
【0092】
雨水吐き37の下流側には、沈砂池31、着水井32、最初沈殿池33、反応槽34、最終沈殿池35、塩素混和池36が順次接続されており、これらが下水処理場A3を構成している。また、下水処理場A3は、滞水池38も有している。なお、以下において、下水処理場A3の雨天時計画汚水量(雨天時における時間当たり最大処理汚水量)を計画時間最大汚水量(晴天時における時間当たり最大処理汚水量)Qの3倍=3Qとして説明する。もちろん、雨天時計画汚水量は、下水処理場A3の処理能力や管理する自治体の方針によって2Qや2.5Q等の様々な値に設定される場合がある。
【0093】
例えば晴天時等、家屋HやマンホールMからの下水L量が少なく1Qである場合、その下水Lは、雨水吐き37から沈砂池31へと送られる。雨水吐き37の下流側に流量計37aが設置されている場合には、その流量計37aによって1Qの流量が計測される。その後に家屋H’からの汚水L1が更に合流すると、例えば下水Lの量が1Qより多くなる場合がある。なお、雨水吐き37には、流入下水Lの量が3Qを超えた場合に、その余剰(オーバーフロー)分を越流させるための越流経路37bが設けられ、その越流経路37b内に流量計37cが設置されていてもよい。または、越流が発生したことを検知する越流センサー37dが雨水吐き37に設けられていてもよい。越流した下水Lは、河川へと直接放流される。
【0094】
沈砂池31には、着水井32へと下水Lを送る汚水ポンプ31aと、通常は非稼動であるが流入下水Lが3Qを超えたときにその余剰(オーバーフロー)分を河川放流するための雨水ポンプ31bとが設置されている。雨水ポンプ31bの稼動/非稼動を検知する稼動センサー31cや沈砂池31からの放流経路31d上に配置された流量計31eが設けられていてもよい。
【0095】
下水Lは、沈砂池31から汚水ポンプ31aによって着水井32へと送られる。その途中経路に滞水池38への分岐経路38aが接続され、降雨初期の比較的汚れの激しい下水Lの1Q超過分が滞水池38へと送られて滞水池処理されるようになっている。ここで滞水池処理とは、滞水池38へと送られた下水Lは再び着水井32へと戻されるようになっているが、降雨後の晴天日に汚水量が1Q以下のときに着水井へ適宜戻され,高級処理される処理のことをいう。なお、この滞水池38に水位計38bが設けられ、滞水池38内の貯留水位が一定水位(例えば上限水位)以上であるか否かを検知するようになっていてもよい。
【0096】
着水井32からの下水Lは、最初沈殿池33へと送られて、沈殿処理される。その後、反応槽34へと送られる。この反応槽34へと送られた下水Lは高級処理されることとなる。反応槽34の処理能力は、一般に流量1Qである。したがって、下水Lの流入量が1Qである場合、その全てが反応槽34で高級処理されることとなる。そして、最終沈殿池35を経由して塩素混和池36で塩素混和処理され、河川へと放流される。
【0097】
一方、最初沈殿池33と反応槽34との間の経路の途中には、簡易沈殿水放流経路33aが分岐して設けられている。この放流経路33aは、下水Lの流量が反応槽34の処理能力を超えたときの余剰分を高級処理することなく河川放流するための経路であって、反応槽34を介さず、簡易沈殿処理のみを経て塩素混和池36へと下水Lを送るようになっている。その放流経路33aには放流堰33bが設けられており、下水L流量が反応槽34の処理能力を超えた場合に放流堰33bが開放されて余剰分が河川放流されるようになっている。また、放流経路33aの放流堰33b下流側には流量計33cが設置され、最初沈殿池33と反応槽34との間の経路中における放流経路33aとの分岐点より上流側には、流量計33dも設置されている。
【0098】
一方、雨天時等、下水Lの量が増大した場合、例えば、家屋HやマンホールMからの合流下水Lの流量が3Q以上となる。雨水吐き37が沈砂池31へと送ることのできる下水Lの流量は上限3Qまでであるので、その余剰分が越流して越流経路37bから河川放流される。
【0099】
ここで、流量計37aが流量3Qを検知したこと、越流センサー37dが越流発生を検知したこと、流量計37cが越流経路37b内の余剰下水の流れを検知したことが、各々管理装置Bへと送信されるようになっている。したがって、これらの情報に基づいて、管理装置Bから家屋H内のディスポーザー1に向けて生ごみ処理を禁止する制御信号ibを送信することができる。
【0100】
雨水吐き37からの流量が3Qであっても、家屋H’からの汚水L1が合流すると、沈砂池31に流入する下水Lの流量が再度3Qを超える場合がある。沈砂池31への流入流量が3Qを超えると、雨水ポンプ31bが稼動を開始し、余剰下水Lの放流経路31dからの河川放流を開始する。
【0101】
ここで、稼動センサー31cが雨水ポンプ31bの稼動開始を検知したこと、流量計31eが放流経路31d内の余剰下水Lの流れを検知したことが、各々管理装置Bへと送信されるようになっている。したがって、これらの情報に基づいて、管理装置Bから家屋H内のディスポーザー1に向けて生ごみ処理を禁止する制御信号ibを送信することができる。
【0102】
なお、滞水池38における水位計38bが所定水位を検知したことも管理装置Bへと送信されるようになっている。したがって、滞水池38が所定水位以上となった場合にも、管理装置Bから家屋H内のディスポーザー1に向けて生ごみ処理を禁止する制御信号ibを送信することができる。
【0103】
着水井32、最初沈殿池33を経た下水Lが流量3Qである場合、反応槽34に流量1Qの下水Lが送られ、残りの流量2Qの下水Lは放流経路33aから塩素混和池36へと送られる。すなわち、流量計33dが、下水Lの流量が1Q以上となったことを検知すると、放流堰33bが開放され、下水Lの流量1Q分が反応槽34へと流れ、余剰分(流量2Q分)の下水Lが放流経路33aへと流れるようになっている。
【0104】
ここで、流量計33dが流量1Q以上を検知したこと、放流堰33bが開放したこと、流量計33cが放流経路33a内の余剰下水Lの流れを検知したことが、各々管理装置Bへと送信されるようになっている。したがって、これらの情報に基づいて、管理装置Bから家屋H内のディスポーザー1に向けて生ごみ処理を禁止する制御信号ibを送信することができる。
【0105】
なお、上記の各流量計、稼動センサー、越流センサー、放流堰等は処理状況検出手段として機能しており、下水処理に関する様々な情報を管理装置Bへと送っている。本実施の形態3に係る生ごみ処理システムSがこれらの処理状況検出手段のすべてを有していてもよいし、その内の一部のみを有していてもよい。また、これらの処理状況検出手段からの検知信号の一部のみに基づいてディスポーザー1に向けて禁止信号を送信してもよいし、これらの検知信号のすべてを考慮したうえで禁止信号を送信してもよい。
【0106】
[実施の形態4]
図7は、本発明の実施の形態4に係る生ごみ処理システムS4の全体構成の概略を示す概略構成図である。この実施の形態4においては、分流式下水処理方式が採用されている。したがって、本来的には家屋Hからの汚水L1の経路に雨水L2が混入することはなく、降雨時であっても汚水L1の流量増加はないはずである。
【0107】
しかしながら、現実には、何らかの原因で下水管5の途中から汚水L1内に雨水L2が混入し、降雨時等に汚水L1の流量増加が発生する場合がある。また、下水管5の誤接合により、雨水管6が分流式下水処理方式の下水管5に接合され、雨水L2が汚水L1に混入してしまう場合もある。
【0108】
このように、分流式下水処理方式においては、本来降雨によって増加するはずのない汚水L1が降雨時に増加してしまう「雨天時増水」が大きな問題となっている。なお、本実施の形態4においては、上記実施の形態3と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。また、以下において、下水処理場A4の計画時間最大汚水量(晴天時における時間当たり最大処理汚水量)を1Qとして説明する。
【0109】
家屋Hからの汚水L1は、下水管5によって沈砂池31に送られるようになっている。沈砂池31の下流側には、着水井32、最初沈殿池33、反応槽34、最終沈殿池35、塩素混和池36が順次接続されており、これらが下水処理場A4を構成している。この沈砂池31には、汚水ポンプ31a、水位計31f、流量計31gが設置されている。水位計31fは、沈砂池31の貯留水位が一定水位(例えば、上限水位)以上であるか否かを検知するものである。流量計31gは、汚水ポンプ31aによる着水井32への送出流量を検知するものである。
【0110】
沈砂池31を経由した汚水L1は、着水井32へと送られ、更に最初沈殿池33へと送られる。最初沈殿池33と反応槽34との間の経路中には、放流経路33aが分岐して設けられ、その放流経路33aには放流堰33b及び流量計33cが実施の形態3と同様に設けられている。
【0111】
降雨時に増水して汚水L1の流量が1Qを超えると、沈砂池31の水位が上昇する。その水位が一定水位以上となったことを水位計31fが検知すると、その情報が管理装置Bへと送信されるようになっている。また、流量計31gにより1Q以上の流量が検知されると、その情報も管理装置Bへと送信されるようになっている。これらの情報に基づいて、管理装置Bから家屋H内のディスポーザー1に向けて生ごみ処理を禁止する制御信号ibを送信することができる。
【0112】
着水井32へと送出される汚水L1の流量は1Qであるので、最初沈殿池33及び反応槽34への流入流量も本来1Qのはずであるが、経路の途中で何らかの雨水の混入が生じた場合、最初沈殿池33への流入流量が1Qを超えてしまう場合がある。このような場合、放流堰33bが開放されて1Qを超える余剰汚水L1が放流経路33aから河川へとバイパス放流されるようになっている。
【0113】
したがって、放流堰33bが開放されたことや流量計33cにより放流経路33a内の汚水L1の流れが検知されたことが管理装置Bへと送信されると、これらの情報に基づいて、管理装置Bから家屋H内のディスポーザー1に向けて生ごみ処理を禁止する制御信号ibを送信することができる。
【0114】
なお、図8〜図10は、時間の経過と共に下水の流量が増大した場合の、下水処理の処理プロセスの変遷を説明する説明図である。
【0115】
図8は、合流式下水処理方式の場合を説明している。下水流量が少ない場合は、高級処理のみが行われる(X1)が、降雨等により下水流量が徐々に増大してくると、高級処理に加え一部の下水に対して滞水池処理が開始されることとなる(X2)。そして下水流量が3Qを超えると、更に直接放流も開始される(X3)。更に時間が経過し、滞水池が満杯となると、滞水池処理に代わって簡易処理が開始される(X4)。そして、この直接放流や簡易処理の場合にはディスポーザー1の処理を禁止する必要がある。なお、図9は、図8に示すプロセス変遷の変形例であって、滞水池が満杯になるまでは直接放流が行われず、滞水池が満杯となると滞水池処理に代わって直接放流と簡易処理とが開始される場合の例である。
【0116】
一方、図10は、分流式下水処理の場合を説明している。分流式の場合も下水流量が少ない場合は、高級処理のみが行われる(Y1)が、降雨等により下水流量が徐々に増大して1Qを超えると、高級処理に加え1Q超過分の下水に対してバイパス放流が開始される(Y2)。そして、このバイパス放流処理の場合にはディスポーザー1の処理を禁止する必要がある。
【符号の説明】
【0117】
A,A3,A4:下水処理場
B:管理装置
B1:通信部(制御信号送信部、状態信号受信部)
C:登録カード(使用者カード)
H,H’:家屋
L:下水
L1:汚水
L2:雨水
M:マンホール
S,S3,S4:生ごみ処理システム
W:インターネット(ネットワーク)
i1:状態信号
i7,i8:越流センサーからの検出信号
i11:簡易処理開始センサーからの検出信号
i12:雨量計からの計測データ
ib:制御信号
1:生ごみ処理機(ディスポーザー)
1a:投入口
1b:カッター(処理部)
1c:カッター用モーター
1d:開閉蓋(処理部)
1e:開閉蓋用モーター
1f:制御部
1g:通信部(制御信号受信部、状態信号送信部、動作状況送信部)
1h:表示部
1j:バーコードリーダー(識別情報取得部)
1k:投入口開閉手段
2:シンク
2a〜4a:排水管
3:トイレ
3b,4b:排水センサー(排水状況検出手段)
4:浴室
5:下水管
6:雨水管
7,37:雨水吐き
7a:放流管
7b:越流センサー(処理状況検出手段)
8:ポンプ場
8a:放流管
8b:越流センサー(処理状況検出手段)
9:下水処理設備
10:高級処理設備
11:簡易処理設備
11a:簡易処理開始センサー(処理状況検出手段)
31:沈砂池
31a:汚水ポンプ
31b:雨水ポンプ
31c:稼動センサー(処理状況検出手段)
31d:放流経路
31e:流量計(処理状況検出手段)
31f:水位計(処理状況検出手段)
31g:流量計(処理状況検出手段)
32:着水井
33:最初沈殿池
33a:放流経路
33b:放流堰(処理状況検出手段)
33c:流量計(処理状況検出手段)
33d:流量計(処理状況検出手段)
34:反応槽
35:最終沈殿池
36:塩素混和池
37a:流量計(処理状況検出手段)
37b:越流経路
37c:流量計(処理状況検出手段)
37d:越流センサー(処理状況検出手段)
38:滞水池
38a:分岐経路
38b:水位計(水位検出手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークとの接続を可能とすると共に、該ネットワークに接続された下水処理場の管理装置から該ネットワークを介して送信される制御信号を受信する制御信号受信部と、
該制御信号に基づいて処理可能又は処理禁止の動作制御を行う制御部と、
投入口から投入された生ごみの処理を該動作制御に応じて行う処理部と、
該動作制御状態を表示する表示部と、を有する生ごみ処理機。
【請求項2】
前記制御信号が、
前記下水処理場における処理状況を検出するための処理状況検出手段又は降雨量を計測する雨量計の少なくともいずれかの検出信号に基づいて、前記管理装置から自動送信されるものである請求項1に記載の生ごみ処理機。
【請求項3】
前記管理装置に向けて、前記制御部による制御状態を示す状態信号を前記ネットワークを介して送信する状態信号送信部、を更に有する請求項1又は請求項2に記載の生ごみ処理機。
【請求項4】
前記管理装置に向けて、前記処理部の動作状況を前記ネットワークを介して送信する動作状況送信部、を更に有する請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の生ごみ処理機。
【請求項5】
前記制御部による動作制御を許容するリモートモードと、
該制御部による動作制御を禁止するマニュアルモードと、を切り替えるモード切替え部、を更に有する請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の生ごみ処理機。
【請求項6】
前記制御部が、
前記生ごみ処理機に接続された排水管内の排水状況を検出する排水状況検出手段からの検出信号に基づいて、該生ごみ処理機の処理可能又は処理禁止の動作制御を行う請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の生ごみ処理機。
【請求項7】
前記制御部が、
前記生ごみ処理機の設置家屋内のトイレ、浴室及び洗面所のうち少なくともいずれか1箇所における排水開始を検出する排水開始検出手段からの検出信号に基づいて、該生ごみ処理機の処理可能又は処理禁止の動作制御を行う請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の生ごみ処理機。
【請求項8】
使用者の識別情報を取得する識別情報取得部と、
該取得した識別情報に応じて前記投入口からの前記生ごみの投入を許否する投入許否部と、を更に有する請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の生ごみ処理機。
【請求項9】
請求項2から請求項9のうちいずれか1項に記載の生ごみ処理機と、
前記下水処理場における処理状況を検出するための前記処理状況検出手段又は降雨量を計測する雨量計の少なくともいずかと、
前記管理装置から前記制御部に向けて前記制御信号を送信するための制御信号送信部と、
を有する生ごみ処理システム。
【請求項10】
ネットワークに接続された下水処理場の管理装置から該ネットワークを介して送信される制御信号を受信する制御信号受信ステップと、
該制御信号に基づいて処理可能又は処理禁止の動作制御を行う制御ステップと、
投入口から投入された生ごみの処理を該動作制御に応じて行う処理ステップと、
該動作制御状態を表示する表示ステップと、を有する生ごみ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−98320(P2011−98320A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256119(P2009−256119)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】