説明

生クリーム状食品およびその製造方法

【課題】常温で長期保存が可能な生クリーム状食品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】生クリームに、米粉を1〜50質量%加え、撹拌した後、125℃までの温度で殺菌処理を行った後に常温まで冷却することを特徴とする生クリーム状食品の製造方法および製造された生クリーム状食品。前記撹拌は、真空釜で行うことができる。また前記殺菌処理は、レトルト釜により行うことができる。米粉を生クリームへの添加物として用いることにより、常温保存が可能となり、これによって、過疎地などへの生クリームの流通も可能になり、新たな消費が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然および加工乳化剤とレトルト加工により完成する常温生クリーム状食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生クリームは、牛乳を遠心分離機で水分と分離して得られた、脂肪分の多い成分である。生クリームは食品や料理に使用するが、従来の保存方法としては冷蔵保存以外に方法はない。冷凍およびレトルト保存では生クリームの乳脂が水分と分離してしまい、生クリームではなくなるために冷蔵保存のみで流通していた。しかも賞味期限が十日前後であり、開封後は保管次第では即日腐敗してしまうために生クリームが広く普及できない要因となっていた。
【0003】
特許文献1には、油脂35〜55重量%、無脂乳固形分1〜10重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤0.1〜2重量%、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下の還元澱粉糖化物1〜10重量%、シクロデキストリン0.2〜2重量%及び水を含有するクリーム状組成物が開示されている。このクリーム状組成物は、ホイップさせた状態でもしくは更にこれをケーキ等にデコレーションした状態で冷凍保存し、解凍しても組織の荒れ、ひび割れ、風味の劣化がない、とされている。
【0004】
特許文献2には、解凍した凍結クリーム及び/又は凍結クリームチーズ、乳成分及び澱粉から構成される、食品添加物無添加で、且つ生クリーム様の粘度及びホイップ性を有する凍結解凍還元クリームが開示されている。この凍結解凍還元クリームは、澱粉水溶液を調整して粘度を低下させる処理をした後、解凍した凍結クリーム及び/又は凍結クリームチーズ、乳成分を混合し、再乳化することで、生クリーム様の粘度及びホイップ性を有する、とされている。
【0005】
特許文献3には、アジピン酸基含量が0.010〜0.135質量%であり、アセチル基含量が0.8〜2.5質量%であるアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を含有するペースト状又はゲル状食品が開示されており、この食品には生クリームが含まれていて、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を前記の量、含有することにより、経時安定性に優れ、ざらつきや糊状感のない口溶けと風味に優れた食品とすることができ、保存方法としては、冷凍、チルド、冷蔵のいずれかが適している、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3230884号公報
【特許文献2】特許第3418586号公報
【特許文献3】特許第4523668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前掲の特許文献1〜3に開示されたクリーム状組成物等は、いずれも、保存する場合は冷凍ないし冷蔵が必要であり、常温で保存することは想定していない。
そこで本発明は、常温で長期保存が可能な生クリーム状食品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の生クリーム状食品は、生クリームに、米粉を1〜50質量%混合したことを特徴とする。
米粉が1重量%未満では生クリームが時間経過とともに分離し、好ましくない。米粉が50質量%を超えると、澱粉質が多くなり、生クリームの脂質感がなくなるため好ましくない。
【0009】
本発明においては、生クリームの分離抵抗性を持たせるために、米粉を用いることとしている。
澱粉は、原料によって性質が異なる。代表的な澱粉材料とそれぞれの性質を表1に示す。澱粉はその構造によってアミロースとアミロペクチンに分けられ、前者は直鎖状の分子で分子量が小さく、熱水に溶ける。後者のアミロペクチンは枝分かれの多い分子で分子量が大きく、熱水に溶けない。
【0010】
【表1】

【0011】
上記の表1から判るように、米粉は粒径が最も小さく、他の澱粉よりも生クリームにムラなく混ざりやすいという特徴を有している。
【0012】
本発明の生クリーム状食品の製造方法は、生クリームに、米粉を1〜50質量%加え、撹拌した後、125℃までの温度で殺菌処理を行った後に常温まで冷却することを特徴とする。
【0013】
前記撹拌は、生クリーム状食品から空気を抜くために常圧では50〜80℃に熱を加えるとよいが、真空釜で行うと、加熱しなくても脱気を効果的に行うことができる。
また、125℃までの温度による記殺菌処理は、レトルト釜で行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、米粉を生クリームへの添加物として用いることにより、常温保存が可能となった。これによって、過疎地などへの生クリームの流通も可能になり、新たな消費が発生する。保存期間が1年または数年に延びることで新たな食品使用が見込まれる。
また、過剰生産により、保存できずに廃棄していた牛乳の受け皿としての役目も担う訳であり、酪農家にとってロスの削減および計画生産が可能になることで乳製品全体の安定供給につながり、価格の安定にも寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の生クリーム状食品は、生クリームと米粉が主原料である。
その割合は、用途によって濃度が濃かったり薄かったり、複数の特徴が必要であるため、通常、米粉は生クリームに対して約1〜50質量%の使用量となる。
加工濃度は様々なパターンがあるが、用途に応じて120℃までの間の温度帯を駆使して加工する。
【実施例】
【0016】
加工の単純な実施例を次に説明する。
1.常温の生クリーム100gに米粉25gを加える。これに、必要に応じて、他の脂質や澱粉を添加することもある。脂質としては、例えばバターや食用油、澱粉としては、例えばヤマイモ、片栗粉等である。また、米粉を水で溶いて液状にしてから生クリームに加えることもできる。
2.真空撹拌機で生クリームと米粉をかき混ぜて融合させる。
3.レトルト加工釜に入れて90℃前後まで温度を徐々に上げる。加工時間は容量次第であるが、通常、1リットル〜500ミリリットルであり、20分間前後の殺菌時間を必要とする。
4.その後、常温まで温度を下げて、クリーム状食品を得る。製品としては、量に応じて、ミニカップあるいは紙パック、瓶詰等の真空包装で提供することができる。
【0017】
生クリームに対して米粉が1質量%未満ではクリーム状食品の分離抵抗性が米粉無添加の場合と余り変わりがなかった。
米粉が50質量%を超えると、澱粉質が多くなり、生クリームの脂質感が得られなかった。
【0018】
現在流通している1リットルまたは500ミリリットル等の紙パックなどで流通している純粋な生クリーム以外は、例えばコーヒーに添えるポーションタイプのクリームは、心臓病の一因と言われているトランス脂肪酸が加工の過程で発生することが専門家の間では広く知られている。しかしそれに代わるクリームが無く、仕方なく流通させていたのが現状である。これに対し、本発明の生クリーム状食品は、トランス脂肪酸化の原因である酸化や微生物による発酵がないため、人体への悪影響の心配がない。
本発明の生クリーム状食品は、生クリームの代用としてだけでなく、米粉の割合を変えることにより、新たな乳製品として提供することができる。また、長期保存が可能であるため、被災地への輸送食糧、保存食等への用途も拡大することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、常温で長期保存が可能な生クリーム状食品およびその製造方法として、乳製品の製造分野において好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生クリームに、米粉を1〜50質量%混合したことを特徴とする生クリーム状食品。
【請求項2】
生クリームに、米粉を1〜50質量%加え、撹拌した後、125℃までの温度で殺菌処理を行った後に常温まで冷却することを特徴とする生クリーム状食品の製造方法。
【請求項3】
前記撹拌は、真空釜で行うことを特徴とする請求項2記載の生クリーム状食品の製造方法。
【請求項4】
前記殺菌処理は、レトルト釜により行うことを特徴とする請求項2または3に記載の生クリーム状食品の製造方法。

【公開番号】特開2013−48588(P2013−48588A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188702(P2011−188702)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【特許番号】特許第5042382号(P5042382)
【特許公報発行日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(506388152)
【Fターム(参考)】