説明

生コンクリートの搬送時間管理システム

【課題】 簡便な装置を用いて、容易かつ安価に生コンクリートの搬送時間を管理する。
【解決手段】 生コンクリートの搬送車に積載され、当該搬送車の識別情報を送信するための情報通信媒体1と、少なくとも生コンクリートの積載位置、現場ゲート位置、圧送ポンプ車位置に設置され、情報通信媒体1から識別情報を受信するための識別情報受信手段2と、識別情報受信手段2が受信した搬送車の識別情報と、その受信時刻とに基づいて、当該搬送車における生コンクリートの搬送時間を管理するための搬送時間管理手段4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートの練混ぜから打込み終了までの経過時間を管理するための生コンクリートの搬送時間管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
公共建築工事標準仕様書によれば、コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間は、外気温が25℃以下の場合は120分(6.6.2(a))、25℃を超える場合は90分以内(6.8.3(d))と規定されている。このため、製造工場における生コンクリートの出荷時刻、建築現場への到着時刻、荷下ろし時刻等を正確に把握して管理する必要があり、従来より種々の技術が開発されている。
【0003】
例えば、生コンクリート運搬車によって配送される生コンクリートの品質及び出荷を管理する生コンクリートの管理方法に関する技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術は、生コンクリート運搬車に、外部から情報の書き込み及び読み取りが可能な非接触通信媒体を取り付け、生コンクリートの出荷元にて、非接触通信体に生コンクリート運搬車に積み込まれる生コンクリートの品質及びその出荷に関する品質・出荷情報を書き込む。そして、生コンクリートの納入先にて、非接触通信媒体から品質・出荷情報を読み取ることにより、生コンクリートの品質管理、生コンクリートの配送の管理、生コンクリート運搬車の維持管理を行うことができるとしている。
【0004】
また、複数の車両のうち、どの車両がどの順番で生コン工場に到着するかを把握するための技術が開示されている(特許文献2参照)。この技術は、複数の車両に積載されている車両積載装置から車両の位置情報を運行管理サーバに自動送信する。そして、運行管理サーバにより、取得した各車両の位置情報と、仮想ゲート情報とに基づいて、各車両が仮想ゲートを通過した時刻を取得する。さらに、取得した時刻と、予め設定されている仮想ゲートから出荷位置までの車両の走行時間とに基づいて、空の各車両が出荷位置(例えば生コンプラント)に到着する到着予測時刻を予測する。また、現場用管理装置により、運行管理サーバから到着予測時刻を取得して表示し、複数の車両のうち、どの車両がどの順番で生コンプラントに到着するかを把握することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−137285号公報
【0006】
【特許文献2】特開2008−210087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、生コンクリートの管理に関する従来の技術では、生コンクリートの品質管理を簡便且つ容易に行うことができるとは言い難かった。すなわち、上述した特許文献1に記載された技術は、生コンクリート運搬車に積み込まれる生コンクリートの品質及びその出荷に関する品質・出荷情報を非接触通信媒体に書き込む作業が必要であるため、情報入力を行うための余分な人員が必要となるばかりでなく、情報入力に時間を要するため、実務的ではない。これでは、コンクリートの製造工場の出荷時に納品書を作成し、この納品書に出荷時間等を記載していた従来の技術を大幅に改善したとは言えない。
【0008】
また、上述した特許文献2に記載された技術は、車両の位置情報を取得して管理するためにGPS等の機器が必要となり、設備が大がかりなものとなるばかりでなく、設備費用が嵩んでしまうため、実用的ではない。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、簡便な装置を用いて、容易かつ安価に生コンクリートの搬送時間を管理することが可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の生コンクリートの搬送時間管理システムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の生コンクリートの搬送時間管理システムは、生コンクリートの工場出荷から打設完了までの経過時間を管理可能なシステムであって、情報通信媒体と、識別情報受信と、搬送時間管理手段と、を備えている。また、本発明の生コンクリートの搬送時間管理システムは、これらの構成要素に加えて、品質情報管理手段、積載数量管理手段、情報集計手段、施工現場情報管理手段、警告手段、情報出力手段、告知情報送信手段を含んで構成することが可能である。
【0011】
情報通信媒体は、生コンクリートの搬送車に積載され、当該搬送車の識別情報を送信するための装置である。この情報通信媒体は、基準積載量の生コンクリートを積載した際に使用する第1の情報通信媒体と、基準積載量未満の生コンクリートを積載した際に使用する第2の情報通信媒体とから構成することが可能である。
【0012】
識別情報受信手段は、少なくとも生コンクリートの積載位置、現場ゲート位置、圧送ポンプ車位置に設置され、情報通信媒体から識別情報を受信するための手段である。搬送時間管理手段は、識別情報受信手段が受信した搬送車の識別情報と、その受信時刻とに基づいて、当該搬送車における生コンクリートの搬送時間を管理するための手段である。
【0013】
また、品質情報管理手段は、圧送ポンプ車に供給された生コンクリートの品質情報を画像情報として取得して管理するための手段である。積載数量管理手段は、各搬送車の識別情報に紐付けして、その積載数量を管理するための手段である。情報集計手段は、搬送時間管理手段で管理している各搬送車における搬送時間、及び積載数量管理手段で管理している各搬送車における積載数量に基づいて、搬送された生コンクリートの累計数量、搬送車の待機台数、搬送車の待機時間、搬送時間を集計するための手段である。施工現場情報管理手段は、コンクリートの施工現場の状況を画像情報として取得して管理するための手段である。警告手段は、搬送時間管理手段で管理している生コンクリートの搬送時間が、予め定めた基準時間を超えた場合に、その旨の警告情報を発生するための手段である。情報出力手段は、生コンクリートの搬送時間管理システムで管理している情報を出力するための手段である。告知情報送信手段は、生コンクリートの施工場所の担当者が所持する携帯端末に対して、情報出力手段で出力する情報の中から必要な警告情報及び告知情報を、電子メールとして送信するための手段である。
【0014】
このような構成からなる生コンクリートの搬送時間管理システムでは、一般に普及している非接触型ICカード等の情報通信媒体を用い、この情報通信媒体に生コンクリート搬送車の識別情報を記憶させておく。また、生コンクリートの積載位置、現場ゲート位置、圧送ポンプ車位置に、それぞれ情報通信媒体から情報を読み取るための識別情報受信手段を設置する。そして、生コンクリートを積載した搬送車が、生コンクリートの積載位置、現場ゲート位置、圧送ポンプ車位置をそれぞれ通過する際に、識別情報受信手段により情報通信媒体に記憶された識別情報を読み取る。
【0015】
この際、搬送時間管理手段により、識別情報受信手段が受信した搬送車の識別情報と、その受信時刻とに基づいて、当該搬送車における生コンクリートの搬送時間を管理する。さらに、品質情報管理手段により、圧送ポンプ車に供給された生コンクリートの品質情報を画像情報として取得して管理する。
【0016】
さらに、積載数量管理手段により、各搬送車における積載数量を管理し、情報集計手段により、搬送された生コンクリートの累計数量、搬送車の待機台数、搬送車の待機時間、搬送時間を集計し、施工現場情報管理手段により、施工現場の状況を画像情報として取得して管理する。また、警告手段により、生コンクリートの搬送時間に関する警告情報を発生する。生コンクリートの搬送時間管理システムで管理されている各種の情報は、情報出力手段により出力され、液晶表示装置の表示画面に表示されたり、プリンタにより印刷されたりする。また、告知情報送信手段により、生コンクリートの施工場所の担当者が所持する携帯端末に対して、警告情報及び告知情報が電子メールとして送信される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の生コンクリートの搬送時間管理システムによれば、生コンクリートの搬送車に情報通信媒体を搭載するとともに、生コンクリートの積載位置、現場ゲート位置、圧送ポンプ車位置に設置された識別情報受信手段により搬送車の識別情報を受信する。そして、受信した搬送車の識別情報と、その受信時刻とに基づいて、当該搬送車における生コンクリートの搬送時間を管理するようになっている。したがって、納品書の作成等の面倒な手作業が必要ではなく、また、GPS装置等の大がかりな設備を必要としないので、簡便な装置を用いて、容易かつ安価に生コンクリートの搬送時間を管理することが可能となる。この際、生コンクリートの積載量に対応して、2種類の情報通信媒体を用意することにより、生コンクリートの搬送量を正確に把握することができる。
【0018】
また、圧送ポンプ車に供給された生コンクリートの品質情報を画像情報として取得して管理することにより、生コンクリートの品質情報を容易に把握することができる。また、各搬送車の積載数量を管理することにより、各搬送車における生コンクリートの搬送状況を容易に管理することができる。また、生コンクリートの施工現場の状況を画像情報として取得して管理することにより、施工現場の状況を容易に把握することができ、搬送車の配車計画等を効率的に実施することができる。また、搬送された生コンクリートの累計数量、搬送車の待機台数、搬送車の待機時間、搬送時間を集計することにより、生コンクリートの搬送状況を総合的に管理することができる。また、生コンクリートの搬送時間が予め定めた基準時間を超えた場合に警告を発生することにより、適切な品質管理を行うことができる。
【0019】
さらに、各種の情報を出力することにより、生コンクリートの搬送状況や品質情報をリアルタイムで確認することができ、より一層適切な品質管理を行うことができる。また、生コンクリートの施工場所の担当者が所持する携帯端末に対して、警告情報及び告知情報を電子メールとして送信することにより、実際の施工現場に立ち会っている担当者に対して、必要な情報を容易かつ確実に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る生コンクリートの搬送時間管理システムの構成を示すブロック図。
【図2】生コンクリートの搬送時間管理の手順を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の生コンクリートの搬送時間管理システムの実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る生コンクリートの搬送時間管理システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
<生コンクリートの搬送時間管理システムの概略構成>
本発明の実施形態に係る生コンクリートの搬送時間管理システム100は、生コンクリートの工場出荷から打設完了までの経過時間を管理可能なシステムであって、図1に示すように、基本構成要素として、情報通信媒体1と、識別情報受信手段2と、搬送時間管理手段4と、品質情報管理手段5とを備えている。さらに、本実施形態の生コンクリートの搬送時間管理システム100は、付加構成要素として、積載数量管理手段6、施工現場情報管理手段7、情報集計手段8、警告手段9、情報出力手段10、告知情報送信手段11を備えている。
【0023】
この搬送時間管理システム100は、管理センター等に設置された管理サーバ(サーバコンピュータ)3と、情報通信媒体1として機能する非接触型のICカードと、このICカードとの間で無線通信を行って搬送車識別情報を受信する識別情報受信手段2とを主な構成要素としており、管理サーバ3には通信ネットワークを介して、撮影手段14、携帯端末15、端末コンピュータ16が接続されている。さらに、端末コンピュータ16は、表示装置16a及びプリンタ16bを備えている。本実施形態において、搬送時間管理手段4、品質情報管理手段5、積載数量管理手段6、施工現場情報管理手段7、情報集計手段8、警告手段9、情報出力手段10、告知情報送信手段11は、管理サーバ3を構成するCPU等がアプリケーションプログラムに従って動作することによって構成される機能手段である。なお、管理サーバ3において各手段の機能のすべてを発揮させるのではなく、施工現場に設置する可搬型の端末装置(例えば、PDA、ノートパソコン、携帯電話)にアプリケーションプログラムを組み込むことにより、可搬型の端末装置において各手段の機能の一部又は機能のすべてを発揮させてもよい。可搬型の端末において各手段の機能の一部を発揮させる場合には、可搬型の端末装置と管理サーバ3とが協同して各手段の機能を発揮することになる。
【0024】
なお、図示しないが、管理サーバ3、端末コンピュータ16、携帯端末15は、CPU、ROM、RAM等のコンピュータとして基本的な構成要素を含んでいる他、その機能に応じて、一般的なコンピュータに付帯する周辺機器を備えている。
【0025】
<情報通信媒体>
情報通信媒体1は、生コンクリート搬送車に積載され、当該搬送車の識別情報を送信するための装置である。例えば、非接触型のICカードを情報通信媒体1として使用することができる。本実施形態では、識別情報受信手段2として機能するカードリーダからICカードに対してキャリアを送信して、電磁誘導によりICカードに電力を供給する。そして、キャリアの変調により、ICカードとカードリーダとの間で情報の送受信を行うようになっている。このような構成からなるICカードは、一般に普及している市販品を用いることができるので、容易かつ安価に情報通信を行うためのシステムを構築することができる。このICカードには、少なくとも搬送車を識別するための識別情報が記憶されている。
【0026】
本実施形態のICカードは、基準積載量の生コンクリートを積載した際に使用する基準ICカードと、基準積載量未満の生コンクリートを積載した際に使用する端数ICカードの2種類が用意されている。すなわち、生コンクリートの搬送開始時から所定回数までは基準積載量の生コンクリートが積載されるため、搬送車の運転手に基準ICカードを携行させて、基準積載量の生コンクリートが積載されている旨の判別を行う。一方、生コンクリートの搬送終了時には基準積載量未満の生コンクリートが積載される場合が多いため、搬送車の運転手に端数ICカードを携行させて、基準積載量未満の生コンクリートが積載されている旨の判別を行う。なお、基準積載量については、使用する搬送車の最大積載量等に応じて適宜変更して設定することができるが、例えば、4m3を基準積載量として基準ICカードを使用し、これ以下の積載量の場合に端数ICカードを使用する。また、端数ICカードに対して、基準積載量未満の2m3等を対応付けてもよいし、積載量の端数に対しては、その都度設定を行ってもよい。
【0027】
<識別情報受信手段>
識別情報受信手段2は、上述したように、非接触型のICカードとの間で情報の送受信を行うことができるカードリーダにより構成する。また、カードリーダは、最低限、生コンクリートの積載位置(生コンプラント)、現場ゲート位置、圧送ポンプ車位置の3箇所に設置して、生コンクリートの出荷時刻、建設現場の到着時刻、打設終了時刻を把握することができるようになっている。なお、カードリーダは、これら以外にも適宜必要な位置に設置して、搬送車の通過時刻を把握してもよい。なお、識別情報受信手段2として、カードリーダの機能が組み込まれた携帯電話を用いることができる。これにより、一般に普及している市販品を用いることができるので、容易かつ安価に情報通信を行うためのシステムを構築することができる。
【0028】
<搬送時間管理手段>
搬送時間管理手段4は、識別情報受信手段2が受信した搬送車の識別情報と、その受信時刻とに基づいて、当該搬送車における生コンクリートの搬送時間を管理するためのプログラムからなる。なお、正確な受信時刻を把握するために、搬送時間管理手段4を構成する管理サーバ3が備える時計システム12を用いて受信時刻を計時することが好ましい。さらに正確な受信時刻を把握するためには、管理サーバ3が定期的にNTPサーバと通信を行い、時計システム12の時刻情報を更新することが好ましい。
【0029】
<品質情報管理手段>
品質情報管理手段5は、圧送ポンプ車に供給された生コンクリートの品質情報を画像情報として取得して管理するためのプログラムからなる。生コンクリートの品質情報とは、一般的な施工現場で管理されている含水量、スランプ値、温度、エア混入量、添加剤の種類等の情報のことであり、これらの情報をボードに文字情報として記載して、この文字情報を携帯端末(例えば携帯電話)15で撮影することにより、品質情報を取得することができる。具体的には、ボードに記載された文字情報を、携帯電話の撮影機能により撮影し、携帯電話の無線通信機能を用いて、撮像データを管理サーバ3に送信することにより、生コンクリートの品質情報が管理される。なお、携帯端末15は携帯電話に限られず、撮影機能及びデータ送信機能を有するPDAやノートパソコンを用いてもよい。
【0030】
<積載数量管理手段>
積載数量管理手段6は、各搬送車の識別情報に紐付けして、その積載数量を管理するためのプログラムからなる。各搬送車の積載数量は、カードリーダで受信した搬送車の識別情報と、ICカードの種類により演算することができる。例えば、4m3に対応付けられた基準ICカードを使用して5回の搬送を行った場合には、4×5=20m3の生コンクリートを輸送したことになる。積載数量管理手段6では、搬送車毎の積載量と、すべての搬送車の総積載量とを管理することができる。
【0031】
<施工現場情報管理手段>
施工現場情報管理手段7は、コンクリートの施工現場の状況を画像情報として取得して管理するためのプログラムからなる。施工現場情報とは、コンクリートの打設に関する映像のことである。具体的には、ウェブカメラ等からなる撮影手段14により打設位置の状況を撮影して撮像データを作成し、この撮像データを管理サーバ3に送信することにより、施工現場情報が管理される。この場合には、通信ネットワークを介して、撮影手段14と端末コンピュータ16とを接続する。さらに、通信ネットワークを介して端末コンピュータ16と管理サーバ3とを接続する。そして撮影手段14で撮影した撮像データを管理サーバ3へ送信し、管理サーバ3で受信した撮像データを施工現場情報管理手段7の機能により取得して管理すればよい。
【0032】
なお、通信ネットワークは、例えば、無線LAN、有線LAN、インターネット回線、一般電話回線、専用電話回線、無線電話回線等により構成される。具体的には、現場管理施設に設置された端末コンピュータ16とウェブカメラとを無線LAN等を用いて接続するとともに、端末コンピュータ16と管理サーバ3とをインターネット回線により接続することにより、施工現場の撮像データを管理サーバ3へ送信することができる。
【0033】
<情報集計手段>
情報集計手段8は、搬送時間管理手段4で管理している各搬送車における搬送時間、及び積載数量管理手段6で管理している各搬送車における積載数量に基づいて、搬送された生コンクリートの累計数量、搬送車の待機台数、搬送車の待機時間、搬送時間を集計するためのプログラムからなる。情報集計手段8で集計される各種の情報は、情報集計データベース13に格納される。
【0034】
<警告手段>
警告手段9は、搬送時間管理手段4で管理している生コンクリートの搬送時間が、予め定めた基準時間を超えた場合に、その旨の警告情報を発生するためのプログラムからなる。上述したように、コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間は、外気温が25℃以下の場合は120分、25℃を超える場合は90分以内と規定されている。警告手段9では、これらの基準時間に応じて、警告を発生するようになっている。例えば、外気温が25℃以下の場合には、基準時間の20分前である100分経過時に基準時間が迫った旨の警告を行う。
【0035】
<情報出力手段>
情報出力手段10は、生コンクリートの搬送時間管理システム100で管理している情報を出力するためのプログラムからなる。この情報出力手段10で出力する情報は、例えば、施工現場の工区毎の情報であり、打設予定数量、平均打込時間、平均運搬時間、搬送車の場内待機台数、受け入れ検査結果、打ち重ね状況、搬送車毎の累計搬送数量、出荷時刻、到着時刻、荷卸完了時刻、運搬時間、待機時間、打込時間、打設状況等に関する情報である。
【0036】
情報出力手段10から出力される情報は、液晶表示装置やCRT等からなる表示装置16aに表示される。また、各種の情報をプリンタ16bにより印刷してもよい。なお、表示装置16aやプリンタ16bは、コンクリートの製造工場、管理センター、現場事務所、監督員事務所等に設置されており、生コンクリートの搬送時間をリアルタイムに管理することができるようになっている。なお、管理センターに設置された管理サーバ3と、現場事務所等に設置された端末コンピュータ16とは、インターネット回線等の通信ネットワークを介して接続されている。
【0037】
本実施形態の搬送時間管理システム100では、現場事務所等に設置された表示装置16aの表示画面に、例えば、施工現場の工区毎に、打設予定数量、平均打込時間、平均運搬時間、搬送車の場内待機台数、受け入れ検査結果、打ち重ね状況、搬送車毎の累計搬送数量、出荷時刻、到着時刻、荷卸完了時刻、運搬時間、待機時間、打込時間、打設状況が表示される。
【0038】
<告知情報送信手段>
告知情報送信手段11は、生コンクリートの施工場所(施工階)の担当者が所持する携帯端末15(例えば携帯電話)に対して、情報出力手段10で出力する情報の中から必要な警告情報及び告知情報を、電子メールとして送信するためのプログラムからなる。この告知情報送信手段11で送信する電子メールには、例えば、出荷からの時間が基準時間に迫った旨、生コンクリート量が50m3毎となった旨、生コンクリートの受入検査結果、テストピース採取対象となる生コンクリートを積載した搭載車が生コンプラントを出庫した旨等の情報が含まれている。
【0039】
なお、電子メールの送信先となる携帯電話のメールアドレスは、予め、告知情報送信手段11の機能により設定されているものとする。また、電子メールを受信するための携帯端末15は携帯電話に限られず、例えばPDA等を用いてもよい。
【0040】
<搬送時間の管理>
次に、本発明の実施形態に係る生コンクリートの搬送時間管理システム100における搬送時間の管理について説明する。図2は、生コンクリートの搬送時間管理の手順を示す模式図である。
【0041】
本発明の実施形態に係る生コンクリートの搬送時間管理システムでは、図2に示すように、生コンクリートの搬送車の運転者に、各搬送車の識別情報と積載量情報とが記憶されたICカードを所持させる。運転者が、生コンクリートの製造工場からの出荷時、現場到着時、打設完了時に、ICカードをカードリーダにかざすと、各搬送車の識別情報と積載量情報とが管理サーバに送信される。管理サーバでは、搬送時間管理手段の機能により、搬送車の識別情報と、その受信時刻とに基づいて、当該搬送車における生コンクリートの出荷時刻、運搬・待機時間、打込時間、練り混ぜから打込終了までの時間を自動計算して管理する。
【0042】
また、現場で行われる「受入検査の結果」と施工階で行う「打重ね時間管理」等の施工管理記録を携帯電話の撮影機能を用いて撮影して、通信機能により管理サーバに送信する。さらに、ウェブカメラにより打設位置の状況を撮影し、この撮像データを管理サーバに送信する。
【0043】
管理サーバでは、品質情報管理手段の機能により生コンクリートの品質情報を管理し、積載量管理手段の機能により各搬送車の積載数量を管理し、施工現場情報管理手段の機能により、コンクリートの施工現場の状況を画像情報として取得して管理し、情報集計手段の機能により、各搬送車における搬送時間及び積載数量に基づいて、搬送された生コンクリートの累計数量、搬送車の待機台数、搬送車の待機時間、搬送時間を集計する。
【0044】
さらに、管理サーバでは、警告手段の機能により、生コンクリートの搬送時間が予め定めた基準時間を超えた場合に、その旨の警告情報を発生し、管理センター、現場事務所、監督員事務所等に設置された端末コンピュータに接続された表示装置に警告画面を表示したり、スピーカから警告音を発生させたりする。
【0045】
また、管理サーバでは、情報出力手段の機能により、出荷済みの生コンクリートに関する各種情報を出力し、管理センター、現場事務所、監督員事務所等に設置された端末コンピュータに接続された表示装置に表示させる。さらに、管理サーバでは、告知情報送信手段の機能により、生コンクリートの施工場所の担当者が所持する携帯端末に対して、警告情報及び告知情報を電子メールとして送信する。
【0046】
このように、本発明の生コンクリートの搬送時間管理システムでは、管理サーバを中心とした情報ネットワークを構築し、出荷済みの生コンクリートに関する各種情報を共有することができる。また、コンクリートの製造工場、管理センター、現場事務所、監督員事務所に設置された端末コンピュータの表示装置や、施工場所の担当者が所持する携帯端末において、現在打設中の生コンクリートに関する各種情報をリアルタイムで表示することにより、打設作業全般を正確に把握して管理することができる。
【0047】
以上説明したように、本発明の生コンクリートの搬送時間管理システムによれば、打設中の数量とともに、生コンクリートの製造時刻、運搬、待機状況を正確にリアルタイムで把握することができる。これにより、渋滞や施工状況を勘案した出荷タイミングの調整や、練り混ぜ終了から打設完了までの制限時間が近づいた際の警告表示等が可能となり、生コンクリートを可使用時間内に、安定した品質で打設することができる。また、受入検査結果や打重ね時間などの施工品質情報もリアルタイムで共有し、保存することができるので、打設作業全般のエビデンスとなり、トレーサビリティを確保して現場の記録業務が省力化され、打設作業への円滑な指示及び指揮が可能となる。
【符号の説明】
【0048】
100 搬送時間管理システム
1 情報通信媒体
2 識別情報受信手段
3 管理サーバ
4 搬送時間管理手段
5 品質情報管理手段
6 積載数量管理手段
7 施工現場情報管理手段
8 情報集計手段
9 警告手段
10 情報出力手段
11 告知情報送信手段
12 時計システム
13 情報集計データベース
14 撮影手段
15 携帯端末
16 端末コンピュータ
16a 表示装置
16b プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリートの工場出荷から打設完了までの経過時間を管理可能なシステムであって、
生コンクリートの搬送車に積載され、当該搬送車の識別情報を送信するための情報通信媒体と、
少なくとも生コンクリートの積載位置、現場ゲート位置、圧送ポンプ車位置に設置され、前記情報通信媒体から識別情報を受信するための識別情報受信手段と、
前記識別情報受信手段が受信した搬送車の識別情報と、その受信時刻とに基づいて、当該搬送車における生コンクリートの搬送時間を管理するための搬送時間管理手段と、
を備えたことを特徴とする生コンクリートの搬送時間管理システム。
【請求項2】
前記情報通信媒体は、基準積載量の生コンクリートを積載した際に使用する第1の情報通信媒体と、基準積載量未満の生コンクリートを積載した際に使用する第2の情報通信媒体とからなることを特徴とする請求項1に記載の生コンクリートの搬送時間管理システム。
【請求項3】
圧送ポンプ車に供給された生コンクリートの品質情報を画像情報として取得して管理するための品質情報管理手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の生コンクリートの搬送時間管理システム。
【請求項4】
各搬送車の識別情報に紐付けして、その積載数量を管理するための積載数量管理手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生コンクリートの搬送時間管理システム。
【請求項5】
前記搬送時間管理手段で管理している各搬送車における搬送時間、及び前記積載数量管理手段で管理している各搬送車における積載数量に基づいて、搬送された生コンクリートの累計数量、搬送車の待機台数、搬送車の待機時間、搬送時間を集計するための情報集計手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の生コンクリートの搬送時間管理システム。
【請求項6】
生コンクリートの施工現場の状況を画像情報として取得して管理するための施工現場情報管理手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の生コンクリートの搬送時間管理システム。
【請求項7】
前記搬送時間管理手段で管理している生コンクリートの搬送時間が、予め定めた基準時間を超えた場合に、その旨の警告情報を発生するための警告手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の生コンクリートの搬送時間管理システム。
【請求項8】
当該生コンクリートの搬送時間管理システムで管理している情報を出力するための情報出力手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の生コンクリートの搬送時間管理システム。
【請求項9】
生コンクリートの施工場所の担当者が所持する携帯端末に対して、前記情報出力手段で出力する情報の中から必要な警告情報及び告知情報を、電子メールとして送信するための告知情報送信手段を備えたことを特徴とする請求項8に記載の生コンクリートの搬送時間管理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−46086(P2011−46086A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196191(P2009−196191)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】