説明

生体の表面に投与するための脂質層形成性組成物

180℃を越える沸点の揮発性シリコーン油、極性脂質、場合によってはC2-C4脂肪族アルコール、場合によっては薬理学的若しくは化粧学的活性剤又は保護剤を含む脂質層形成性組成物。該脂質層形成性組成物は、噴霧、浸漬又はブラッシ掛けにより生物表面に塗布して、該表面に安定な極性脂質層を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合によっては薬理学的若しくは美容的活性剤又は保護剤を含む、生体の表面、特に膜、例えば皮膚若しくは粘膜、に投与するための脂質層形成性組成物に関する。本発明はまた、表面上に脂質層を形成する方法に関する。更に本発明は、生体の表面、又はその組織若しくは器官の表面に置かれた生物学的活性剤を運ぶことができる層、及びかかる脂質層で覆われた表面に関する。
【背景技術】
【0002】
薬学分野及び化粧品分野において、脂質及び薬理学的若しくは美容的に活性な化合物を混入でき、そして生物(biological)表面に特に薄い凝集層の形態で、均一に適用できる、脂質組成物の要求がある。該脂質組成物は、供給、特に噴霧による供給、を容易にするために、低粘度でなければならない。かかる組成物の粘度は揮発性溶剤の添加によりかなり低減できるが、脂質、薬理学的若しくは美容的活性剤、及び溶剤を含む、初期に形成される不安定な凝集層は、できるだけ短期間内に溶剤の蒸発により安定な凝集層に変化しなければならない。
【0003】
溶剤の高含量は粘度を低減することで有利であるが、蒸発のためにより長い時間を要する。言い換えると、上記の種類の脂質組成物中の高い溶剤含量は、塗布した組成物が比較的不安定な期間を長くする。”比較的不安定”とは、かなりの量の溶剤を含む塗布した組成物の安定性であって、全て若しくは実質的に全ての溶剤が蒸発した後の同じ組成物の安定性に対して相対的な安定性と理解される。かかる組成物の例は、薬学的活性化合物の局部的投与用組成物、及びスキンケア用の組成物を含む。脂質が豊富な組成物は液晶を形成し易く、液晶の形成は、高度の局所構造により引き起こされる高粘度を伴う。
【0004】
特許文献1は、1種若しくはそれ以上の薬学的若しくは美容的活性剤、オリゴマー性若しくはポリマー性ジオルガノシロキサンを基材とする1種若しくはそれ以上の有機ケイ素化合物、及び1種若しくはそれ以上のリン脂質を含む薬学的若しくは化粧用組成物を開示する。皮膚に適用した場合、特許文献1の組成物は、短時間に皮膚又はそれで処理した植物の外側層内に直接浸透し、本体の内部に急速に吸収されるので、こすり落とすことができない。ヒト又は動物内に局部的に使用するように意図された態様には、該組成物の有機ケイ素化合物は周囲気圧で15℃と150℃の間で変化する沸点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 01/87344 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、生体の表面に投与するための脂質組成物であって、容易に適用できそして該表面に凝集した安定な油性脂質層を形成できる該組成物を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、生物学的活性剤を運ぶ(担持する)ことができる、かかる脂質組成物を提供することである。
【0008】
本発明の更に別の目的は、皮膚に適用した場合、膨潤を引き起こさないかかる脂質組成物を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、皮膚に適用した場合、刺激を引き起こさない又は灼熱感を与えない、かかる脂質組成物を提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、下記の発明の概要、実施例の形態で記載された発明の好ましい態様、好ましい態様のいくつかを例示する図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、180℃又はそれ以上の沸点、特に200℃又はそれ以上の沸点のシリコーン油が局部的適用のための脂質担体(運搬)(carrier)組成物の蒸発性成分として使用できるとの考察に基づくもので、該組成物は更に極性脂質及び低級アルコールを含む。「蒸発性成分」とは、該組成物を皮膚又はその他の表面に周囲温度又はそれ以上の温度で適用すると、短時間内に、高沸点にもかかわらず、シリコーン油が蒸発能力を示す。それらの蒸発及び低級アルコールの蒸発により、極性脂質の層が皮膚又は他の表面に形成される。
【0012】
本発明によると、上記の種類の脂質担体組成物であって、極性脂質、本発明の蒸発性シリコーン油、及び低級アルコールを含む又はそれらから実質的に成る該組成物が開示される。本発明の脂質担体組成物は生体の表面に安定な凝集した極性脂質層を与えるのに有用である。
【0013】
薬理学的若しくは美容的活性剤又は保護剤の混入により、本発明の脂質担体組成物は、本発明の薬学的若しくは化粧用脂質組成物、又は本発明の保護用脂質組成物に変換される。上記の種類の活性剤を含む本発明の薬学的、化粧用又は保護用脂質組成物は、適用された生体の表面に該薬剤を運搬するのに使用できる。好ましい表面は、皮膚又は粘膜、例えば鼻又は胃の粘膜、である。別の好ましい表面は、植物表面、例えば穀物(grain)又は種子の表面、である。
【0014】
本発明は、場合によっては低級脂肪族アルコールと組み合わされた、特定のクラスの溶剤、揮発性シリコーン油は、極性脂質を含む脂質担体組成物を調合するのに特に有用であるとの発見に基づく。生物表面に適用した後、本発明の脂質担体組成物は不安定な極性脂質層を形成し、該層から揮発性シリコーン油及び、存在する場合は低級脂肪族アルコールが容易に蒸発し、実質的に極性脂質から成る安定な脂質層を残す。これに対応して、薬学的若しくは美容的活性剤を含む安定な極性脂質層が、該活性剤を本発明の脂質担体組成物に混入し、それを生物表面に適用し、そして該溶剤又は溶剤の組み合わせを蒸発させることにより形成される。本発明の担体組成物及び本発明の薬学的若しくは化粧用組成物の低粘度は、極性脂質が離液性の液晶、例えば高粘度の薄板状(lamellar)、六方晶系及び種々の立方相、を形成する能力がないことによるようである。本発明の脂質担体組成物及び本発明の薬学的若しくは化粧用組成物は透明(clear)であり、そして20重量%もの高い極性脂質濃度でも低粘度である。
【0015】
これと対称的に、本発明の組成物に対応するがシリコーン油成分を対応する量の水で置き換えた極性脂質組成物は、低い極性脂質濃度で僅かに粘性の分散体であるか、テストした高い極性脂質濃度で、例えば組成物の20重量%で、高粘度のゲルである。後者の組成物の高粘度は噴霧による投与を可能にしない。希釈剤として水の代わりに揮発性シリコーン油を使用することにより、粘性に僅かな影響を及ぼすだけで驚くほど多量の極性脂質を含めることが可能である。
【0016】
本発明で有用なパーソナルケア等級若しくは薬学的等級のシリコーン油は当業界で知られている。有用なシリコーン油の例には、デカメチルシクロペンタシロキサン[ダウ コーニング(登録商標)245 Fluid]及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン[ダウ コーニング(登録商標)246 Fluid]が含まれる。ペンタシロキサン及びヘキサシロキサンが好ましいが、ヘプタ−及びオクタシロキサンもまた潜在的に有用である。該シリコーン油は環式シロキサン、即ち、シクロメチコーン、又は線状シロキサン、即ちジメチコーン、であり得る。本発明のシリコーン油は純粋な形態で、又は混合して使用できる。パーメチル置換が好ましいが、シロキサンの1つ又はそれ以上のメチル基を低級アルキル、特にエチル、プロピル又はイソプロピル、で置換できる。低級トリフルオロアルキル、特にトリフルオロメチル、及びペンタフルオロエチルで部分的又は完全に置換したシロキサンもまた、本発明に有用である。
【0017】
化学的不活性に加えて、本発明のシリコーン油の有用性は、その揮発性によって決定される。180℃を越える沸点、特に200℃を越える沸点、にかかわらず、本発明のシリコーン油はこの種の化合物の低い気化熱により、容易に蒸発する。本発明では、25℃で約100kJ/kg〜約300kJ/kgの気化熱(kJ/kg)、より好ましくは約120kJ/kg〜約200kJ/kgの気化熱を有するシリコーン油が特に有用である。更に好ましいのは、25℃で約140kJ/kg〜約180kJ/kgの気化熱を有するシリコーン油である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシリコーン油は、少なくとも下記の有利な特徴を有する本発明の担体組成物、及び薬学的若しくは化粧用組成物を与える:i)高含量の極性脂質材料を含ませる能力;ii)熱力学的に安定な溶液の形成;iii)形成された溶液の低粘度は、該溶液を例えば噴霧、滴下、塗装又は点滴(instilling)に適したものとする。
【0019】
本発明の低級脂肪族アルコールはC2-C4アルコール又はかかるアルコールの混合物である。アルコールの好ましい例は、エタノール及び2−プロパノールである。他の有用なアルコールは、グリセロール及び1,2−プロパンジオールである。低級アルコール以外の溶剤、例えばジメチルスルホキシド及びN−メチル−2−ピロリドン、もまた使用し得る。生体適合性要求の規制が厳しくない適用には、クロロホルム、ジクロロメタン、ピリジン、ヘキサン、及びメタノールのような溶媒が使用できる。
【0020】
本発明の極性脂質は好ましくは膜脂質、例えばリン脂質、糖脂質、スフィンゴリピド又はそれらの混合物である。特に好ましいリン脂質はホスファチジルコリンである。他の好ましいリン脂質はホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルイノシトールである。特に好ましい糖脂質はガラクトリピドである。好ましいガラクトリピドはジガラクトシル−1,2−ジアシルグリセロールそのもの、又は例えば他のガラクトリピド及び/又はリン脂質及び/又はスフィンゴリピドと混合したジガラクトシル−1,2−ジアシルグリセロールである。
【0021】
本発明で有用な技術的規模の市販の極性脂質は、かなりの量の非極性脂質を含み、約50〜60重量%までの非極性脂質を含む。従って、本発明の更に好ましい観点によると、本発明の担体組成物又は薬学的若しくは化粧用組成物は、非極性脂質を30重量%までの量又はそれ以上までの量、例えば50重量%まで又は60重量%まで、そして75重量%まででさえも含む。極性脂質の成分としての非極性脂質は、好ましくはモノ−及びジ−グリセリド及びそれらの混合物、特にモノグリセリドである。本発明の極性脂質において、高割合のモノ−及びジ−グリセリド、特にモノグリセリド、はトリグリセリドの一つよりも許容できる。
【0022】
低級脂肪族アルコール、例えば無水エタノールを本発明の油性極性脂質の溶解に使用することは、低い鎖融解温度の脂質に特に有用である。鎖融解温度は、膜脂質のアシル鎖が過剰の水中で、固体様状態から融解若しくは液体様状態に相転移される温度である。リポイド(Lipoid)S75、リポイドS45、ホスホリポン(Phospholipon)50、リポイドS100、及びDOPCのような膜脂質材料は全て0℃未満の鎖融解温度を有し、従ってC−Cアルコール、特にエタノール、中に50重量%までの濃度およびそれ以上の濃度でさえも容易に溶解することができる。
【0023】
本発明の担体組成物を生成するために、極性脂質、特に膜脂質混合物、例えばレシチン又は分溜したオート油、はC−Cアルコールに溶解し、そして次ぎに揮発性シリコーン油で希釈されて、低粘度の噴霧可能な均質な液体を生じる。かかる組成物の典型的例は、49重量%のDC345、37重量%の分溜したオート油(LTPリピド テクノロジーズ プロバイダーAB,スエーデン)、および14重量%の無水エタノールから成る組成物である。分溜したオート油は、粗製オート油から得られ、極性脂質に富む。それは典型的には約50重量%の非極性脂質、例えばトリアシルグリセロールおよびジアシルグリセロール、および約50重量%の極性脂質、例えばリン脂質および糖脂質、を含む。典型的には、分溜したオート油中のジガラクトシルジアシルグリセロールの含量は、約20重量%である。適当な分溜したオート油は、例えばWO 99/44585 A1に開示される。
【0024】
ホスファチジルエタノールアミンのような脂質、例えばジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、又はスフィンゴリピド、例えばスフィンゴミエリン、もまた本発明の極性脂質としてそのまま又は他の極性脂質と混合して使用できる。DOPEは水中で−16℃の鎖融解温度を有し、そして高温(>60℃)で50重量%又はそれ以上で無水アルコールに溶解することができる。かかる溶液はDC345のような揮発性シリコーン油で希釈できて、透明な低粘度の液体を生じる。
【0025】
少量の水、例えば1重量%又は2重量%の水、および約5重量%までの水でも、許容できるが、本発明の脂質担体組成物は好ましくは実質的に水を含まず、特に5重量%未満、好ましくは2重量%未満又は1重量%未満、そして更に0.5重量%未満又は0.2重量%未満の水含量を有する。
【0026】
薬理学的若しくは美容的活性剤、又は保護剤は、脂質担体組成物中に、該担体組成物の揮発性成分を蒸発させて残る全非揮発性成分、特に極性脂質、の0〜2重量%又は0〜5重量%の量、そして25重量%まで又はそれ以上までの量ででも混入することができる。
【0027】
本発明の脂質担体組成物に混入するための薬理学的活性剤は、好ましくは下記から成る群から選択される:抗菌剤、抗生物質;抗かび剤;抗菌剤;抗真菌剤;抗ウィルス剤;防腐剤;消炎剤;止痒塗布剤;乾癬治療薬;鎮咳剤;抗脱毛剤;抗にきび剤;抗炎症剤;抗潰瘍剤;局部麻酔剤;免疫反応変更剤。
【0028】
特に、本発明の薬理学的活性剤は下記から選択される:抗菌剤、例えばオキシテトラサイクリン、フシジン酸、ゲンタマイシン、ムピロシン、レタパムリン(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗かび剤、例えばナイスタチン、クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、ビフォナゾール、およびイミダゾールとトリアゾール誘導体、シクロピロックス、テルビナフィン、フルコナゾール、およびアモロリフィン(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体)の組み合わせ;抗ウィルス剤、例えばアシクロウィル、バラシクロウィル、ペンシクロウィル、ファムシクロウィル、フォスカルネット(ナトリウムホスホンホルメート・6水和物)およびドコサノール(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);防腐剤、例えばクロルヘキシジンおよび過酸化水素;抗炎症剤(グルココルチコイド類)、例えばヒドロコルチゾン、クロベタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、モメタゾン、およびクロベタソール(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);消炎剤/鎮痛剤(NSAID類)、例えばアセチルサルチル酸、ジクロフェナック、およびイブプロフェン(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);止痒塗布剤、例えばグルココルチコイド類、例えばヒドロコルチゾン、クロベタゾンおよびベタメタゾン、および局部麻酔剤、例えばリドカインおよびプリロカイン(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);乾癬治療薬、例えばカルシポトリオールおよびシクロスポリンA(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);湿疹およびアトピー性皮膚炎の治療薬:タクロリムスおよびピメクロリムス(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗緑内障毛様体炎剤、例えばチモロール、ベンタキソロール、ラタノプロスト、ビマトプロスト、およびトラボプロスト(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);局部麻酔剤、例えばリドカイン、プリロカイン、ロピバカイン、メピバカイン、ブピバカイン、レボブピバカイン、ベンゾカイン、およびテトラカイン(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);勃起障害用薬剤、例えばアルプロスタジル(プロスタグランジンE1)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗フケ剤、例えばセレン硫化物、ピロクトンオレアミンおよびケトコナゾール;抗脱毛剤、例えばミノキシジル(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗にきび剤、例えばトレチノイン(レチノイン酸)、アダパレン、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン、アゼライン酸(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);傷治癒剤、例えばフシジン酸(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体)。
【0029】
本発明の脂質担体組成物に混入するための化粧用活性剤は、好ましくは制汗剤;抗発汗剤;フケ取り剤;流動促進剤(glidant);湿潤剤から成る群から選ばれる。
【0030】
本発明の脂質担体組成物に混入するための保護剤は、好ましくは防虫剤;UV吸収剤;抗真菌剤;抗菌剤;抗ウィルス剤から成る群から選ばれる。
【0031】
本発明の脂質担体組成物に混入するための他の薬剤の例は:防虫剤、例えばN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)、イカリジン、およびエチルブチルアセチルアミノプロピオネート(およびそれらの塩及び誘導体);物理的及び化学的のUVサンスクリーン、例えば二酸化チタン、ベンゾフェノン−3、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルメトキシンナメート、及び4−アミノ安息香酸(PABA)(およびそれらの塩及び誘導体);日焼け剤、例えばジヒドロキシアセトン、である。
【0032】
本発明の脂質担体組成物に混入するための化粧用薬剤は、好ましくは制汗剤;抗発汗剤;フケ取り剤;流動促進剤;湿潤剤から成る群から選ばれる。好ましいフケ取り剤には、ピロクトンオレアミン及びケトコナゾールが含まれる。
【0033】
薬理学的活性剤に加えて、本発明の化粧用又は保護用組成物の化粧用活性剤又は保護剤は抗刺激剤、特にサルチル酸メチル、カプサイシン、樟脳及びメントールから選ばれるもの、を含むことができる。
【0034】
本発明によると、生きた生物の表面に投与するための薬学的組成物であって、本発明の脂質担体組成物中に薬理学的活性剤を含む組成物が開示される。
【0035】
本発明によると、本発明の脂質担体組成物中に化粧学的活性剤を含む化粧用組成物が更に開示される。
【0036】
該薬理学的又は化粧学的活性剤は、該担体組成物中に、又は本発明の薬学的若しくは化粧用組成物を調合するために使用される、シリコーン油、低級アルコール(存在する場合)、及び/又は油性極性脂質中に溶解又は分散することができる。
【0037】
本発明の好ましい側面によると、本発明の担体組成物は、10重量%〜30重量%のリン脂質、10重量%〜30重量%のC−Cアルコール、特にエタノール、残部の揮発性シリコーン油を含みか、又はこれらから成り、但し、揮発性シリコーン油の含量は50重量%又はそれ以上である。
【0038】
本発明の更に好ましい側面によると、本発明の薬学的、化粧用又は保護用組成物は、10重量%〜30重量%のリン脂質、10重量%〜30重量%のC−Cアルコール、特にエタノール、0.01重量%〜30重量%、特に0.01重量%〜1重量%若しくは〜2重量%若しくは〜5重量%の薬学的若しくは化粧学的活性剤又は保護剤、残部の揮発性シリコーン油を含み又はこれらから成り、但し、揮発性シリコーン油の含量は40重量%又はそれ以上である。
【0039】
本発明の別の好ましい側面によると、薬学的担体組成物、即ち、薬学的若しくは化粧学的活性剤又は保護剤を含まないが、かかる薬剤を混入することができる組成物、が開示される。該担体組成物は、約30重量%〜約90重量%のシリコーン油、約5重量%〜45重量%の極性脂質、及び約5重量%〜約45重量%のC−Cアルコール、特にエタノール、場合によっては5重量%以下の水、特に1重量%未満の水を含むことができるか、又はこれらから成ることができる。
【0040】
本発明の更に別の好ましい側面によると、薬学的、化粧用又は保護用担体組成物であって、図3の相平衡状態図(相図)中で領域Fに含まれる重量割合の極性脂質、揮発性シリコーン油及びエタノールから実質的に成り、場合によっては5重量%以下、特に1重量%以下の水を含む該組成物が開示される。
【0041】
本発明の薬学的、化粧用又は保護用薬剤を望ましい量、特に極性脂質の0.01重量%〜2重量%若しくは〜5重量%、そして15重量%まで、又は25重量%までで添加することにより、本発明の担体組成物を、本発明の薬学的、化粧用又は保護用組成物に変換することができる。
【0042】
本発明の薬学的、化粧用又は保護用組成物は、乾燥した又は湿った生物表面に、いかなる適当な方法でも、例えば噴霧、浸漬、ブラッシ掛け、滴下、擦り込み(ラッビング)により適用できる。
【0043】
本発明を、図面に例示された多くの例を参照して一層詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の担体組成物の三元相図である。
【図2】本発明の3種の組成物及び参照用としてのワセリンについての経上皮水損失(TEWL)における変化を示すグラフである。
【図3】担体組成物及び活性剤含有組成物を含む本発明の脂質形成性組成物の別の三元(3成分)相図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
材料
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
配合実験で使用したアルコールは、エタノール99.9 % (“EtOH”, VWR)、2-プロパノール HPLC等級(“IPA”, ラスバーン(Rathburn))、 グリセロール99.5% (“Gro”, VWR)及び 1,2-プロパンジオール, Ph. Eur. (“PD”, フルカ/シグマ−アルドリッヒ(Fluka/Sigma-Aldrich))であった。配合実験で使用した材料は、下記のプロバイダーにより提供された:ダウ コーニング社(Dow Corning Corp.)、ミドランド(Midland)、ミネソタ州(MI)、米国;リポイドゲーエムベーハー(Lipoid GmbH)、ルドウィックスハーフェン(Ludwigshafen)、ドイツ国;アーフス カールスハム スエーデン アーベー(Aarhus Karlshamn Sweden AB), カールスハム(Karlshamn)、スエーデン国;エルティピー リピド テクノロジーズ プロバイダー アーベー(LTP Lipid Technologies Provider AB), カールスハム(Karlshamn)、スエーデン国;スエーディシュ オート ファイバー(Swedish Oat Fiber AB)、ベレバッカ(Varobacka)、スエーデン国;シグマ−アルドリッヒ(Sigma-Aldrich)、セイント ルイス(St. Louis)、ミズーリ州(MO)、米国;クロダ (Croda)、ゴーグル(Goole)、イーストヨークシャー(East Yorkshire)、英国;ラスバーンケミカルズ社(Rathburn Chemicals Ltd)、ウォーカーバーン(Walkerburn), スコットランド(Scotland)、英国;ヴイダブリューアール インターナショナル アーベー(VWR International AB)、スパンガ(Spanga)、スエーデン国;ポリペプチド ラボラトリーズ アー/エス(PolyPeptide Laboratories A/S)、ヒレロッド(Hillerod)、デンマーク国; デルマーゲン アーベー(Dermagen AB)、ルンド(Lund)、スエーデン国。
【実施例】
【0049】
実施例1:局部麻酔剤:リドカイン及びリドカインヒドロクロリドの配合
組成物A
成分 % (w/w)
リドカイン(Sigma L7757) 3.9
リン脂質(Lipoid S75) 19.5
無水エタノール 19.5
揮発性シリコーン油(DC 345) 57.1
組成物B
成分 % (w/w)
リドカイン ヒドロクロリド(Sigma L5647) 2.0
リン脂質(Lipoid S75) 20.0
無水エタノール 20.0
揮発性シリコーン油(DC 345) 58.0
【0050】
リン脂質を無水アルコールに50.0%(w/w)の濃度で溶解させた。リン脂質の完全な溶解を、浴型超音波器中で約40℃で短超音波処理により促進した。
【0051】
予備秤量した量のリドカイン及びリドカインヒドロクロリドにそれぞれ、リン脂質のエタノール溶液を添加した。混合物を穏やかに加熱しそして透明な溶液が形成されるまで超音波処理した。該溶液を揮発性シリコーン油で希釈して、薄褐色ないし黄色の溶液を得、それを気密ガラス容器に室温で貯蔵した。組成物(組成物A及び組成物B)の外観は室温で1カ月以上変化しなかった。相分離又は沈殿と引き続く沈降のサインは観察されなかった。これは優れた物理的安定性を示す。
【0052】
実施例2:局部麻酔剤:ベンゾカインの配合
予備秤量した量のベンゾカインに、実施例1に記載したようにして調製した50.0%(w/w)リン脂質エタノール溶液を溶解させた。該溶液を揮発性シリコーン油で希釈した。得られた透明な薄褐色ないし黄色の溶液を気密ガラス容器に室温で貯蔵した。組成物(組成物C)の外観は室温で1カ月以上変化しなかった。相分離又は沈殿と引き続く沈降のサインは観察されなかったが、これは優れた物理的安定性を示す。
組成物C
成分 %(w/w)
ベンゾカイン(Fluka 06952) 4.0
リン脂質(Lipoid S75) 20.0
無水エタノール 20.0
揮発性シリコーン油(DC 345) 55.6
【0053】
実施例3:防虫剤:N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)の配合
組成物D
成分 %(w/w)
DEET(Aldrich D10,095-1) 13.4
リン脂質(Lipoid S75) 16.7
無水エタノール 16.7
揮発性シリコーン油(DC 345) 53.2
【0054】
予備秤量した量のDEETに、実施例1に記載したようにして調製した50.0%(w/w)リン脂質エタノール溶液を添加した。得られた透明な溶液を揮発性シリコーン油で希釈した。得られた透明な薄褐色ないし黄色の溶液を気密ガラス容器に室温で貯蔵した。組成物(組成物D)の外観は室温で1カ月以上変化しなかった。相分離又は沈殿と引き続く沈降のサインは観察されなかったが、これは優れた物理的安定性を示す。
【0055】
実施例4:抗真菌剤:エコナゾール硝酸塩の配合
組成物E 組成物F 組成物G
成分 %(w/w) %(w/w) %(w/w)
エコナゾール硝酸塩(Sigma E4632) 2.3 1.1 1.5
リン脂質(Lipoid S75) 29.1 14.5 21.2
無水エタノール 29.1 14.5 21.2
揮発性シリコーン油(DC 345) 39.5 69.9 56.1
【0056】
3種の組成物(E,F,G)を調製した。予備秤量した量のエコナゾール硝酸塩に、実施例1に記載したようにして調製した50.0%(w/w)リン脂質エタノール溶液を添加した。浴型超音波器中で約37℃で処理した後、得られた透明な金褐色溶液を揮発性シリコーン油で希釈した。得られた透明な薄金褐色の溶液を気密ガラス容器に室温で貯蔵した。組成物Fは、組成物Eの一部を揮発性シリコーン油で希釈して調製した。
【0057】
組成物E及びFの外観は2〜3日で変わった(僅かな沈降が両サンプルで観察された)ので、安定とは考えられない。他方、組成物Gの外観は室温で1カ月以上変化しなかった。相分離又は沈殿と引き続く沈降のサインは観察されなかったが、これは優れた物理的安定性を示す。
【0058】
実施例5:グルココルチコイド:ベタメタゾン17−バレリアン塩の配合
3種の組成物(H,I,J)を調製した。予備秤量した量のベタメタゾン17−バレリアン酸塩に、実施例1に記載したようにして調製した50.0%(w/w)リン脂質エタノール溶液を添加した。浴型超音波器中で約37℃にて処理した後、透明な金褐色溶液が得られた。該溶液を揮発性シリコーン油で希釈し、得られた混合物を気密ガラス容器に室温で貯蔵した。
【0059】
組成物Iは、組成物Hの一部を揮発性シリコーン油で希釈して調製した。組成物Iは、直ちにミルク状分散液を形成したので不安定であり、該分散液は2〜3日中に分離した。組成物H及びJは透明な薄金褐色溶液を形成した。それらは、室温で1カ月貯蔵した後、相分離又は沈殿と引き続く沈降のサインを示さなかった。これは優れた物理的安定性を示す。
組成物H 組成物I 組成物J
成分 %(w/w) %(w/w) %(w/w)
ベタメタゾン17−バレリアン塩(Sigma B0515) 0.5 0.1 0.1
リン脂質(Lipoid S75) 13.3 2.7 21.1
無水エタノール 13.3 2.7 21.1
揮発性シリコーン油(DC 345) 72.9 94.5 57.7
【0060】
実施例6:乾癬治癒薬:シクロスポリンAの配合
組成物K
成分 %(w/w)
シクロスポリンA(Sigma 30024) 0.4
リン脂質(Lipoid S75) 16.0
無水エタノール 16.0
揮発性シリコーン油(DC 345) 67.6
【0061】
予備秤量した量のシクロスポリンAに、実施例1に記載したようにして調製した50.0%(w/w)リン脂質エタノール溶液を添加した。浴型超音波器中で約35℃で処理した後、透明な溶液が得られた。この溶液を揮発性シリコーン油で希釈して、透明な薄褐色ないし黄色の溶液を形成し、それを気密ガラス容器に室温で貯蔵した。該組成物(組成物K)の外観は室温で1カ月以上変化しなかった。相分離又は沈殿と引き続く沈降のサインは観察されなかった.これは優れた物理的安定性を示す。
【0062】
実施例7:抗脱毛剤:ミノキシジルの配合
3種の組成物(M,N,O)を調製した。予備秤量した量のミノキシジルに、33%(w/w)リン脂質エタノール溶液、エタノール及び50%(w/w)リン脂質エタノール溶液を添加した。浴型超音波器中で約35℃にて処理した後、得られた透明な混合物を揮発性シリコーン油で希釈し、そして気密ガラス容器に室温で貯蔵した。
【0063】
組成物M 組成物N 組成物O
成分 %(w/w) %(w/w) %(w/w)
ミノキシジル(Tripharma) 0.67 0.98 0.65
リン脂質(Lipoid S75) 21.98 - 17.75
無水エタノール 21.98 40.27 35.49
揮発性シリコーン油(DC 345) 55.37 58.75 46.11
【0064】
組成物Oの外観は室温で2カ月以上変化しなかった。即ち、相分離又は沈殿と引き続く沈降のサインは観察されなかった。これは優れた物理的安定性を示す。組成物Mはミノキシジルの完全な溶解を示さず、一方、組成物Nは調製のすぐ後に沈殿し始めた。従って、組成物M及びNは、密閉した容器に室温で貯蔵した時1カ月安定という基準を満たさなかった。
【0065】
実施例8:混和性試験
表3に示すのは、リン脂質エタノール溶液と揮発性シリコーン油又は水のいずれかとの混和性データである。シリコーン油中の低含量のPL/エタノールの混合物は調製直後に透明な外観を有したが、室温で1カ月以内に分離した。20%の濃度のPL/エタノールを有する組成物は揮発性シリコーン油と混和性であり、この期間外観に変化がなく、従って物理的に安定と考えることができる。
【0066】
【表3】

【0067】
表1のリン脂質は、リポイド ゲーエムベーハー(Lipoid GmbH)、ルドウィックハーフェン(Ludwigshafen)、ドイツ国、により製造されたLipoid S75である。大豆からのこのリン脂質材料は約68−73%のホスファチジルコリン(PC)を含む。他の適したリン脂質材料は、例えばLipoid S45,Phospholipon 50、及びLipoid S100であり、これら全ては大豆から作られそしてリポイド ゲーエムベーハーにより製造され、PC含量が約50%から100%までの範囲を覆う。更なる適したリン脂質は、合成ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリスチルホスファチジルコリン(DMPC)、及びジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。
【0068】
実施例9:相図
図1は、本発明の極性脂質担体組成物の三元系(極性脂質(Lipoid S75)/C−Cアルコール(エタノール)/シリコーン油(DC 345))の例示的な相図を示す。少量の本発明の薬理学的若しくは化粧学的活性剤又は少量の本発明の保護剤の混入は、安定性の領域に僅かに影響するだけであろう。40重量%の極性脂質Lipoid S75、30重量%のエタノール及び30重量%のシリコーン油DC 345から成る担体組成物CCは、安定な担体組成物の一例である。
【0069】
実施例10:リン脂質ベース担体組成物
リン脂質をDC 345揮発性シリコーン油とアルコールとの混合物に溶解させた。該脂質は正確に秤量しそしてシリコーン油及びアルコールと混合した。該混合物を、均質で透明且つ無色又は僅かに黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表4aはホスファチジルコリンをベースとする組成物の例を、そして表4bはホスファチジルエタノールアミンをベースとする組成物の例を示す。
【0070】
【表4a】

【0071】
【表4b】

【0072】
実施例11:アシルグリセロールをベースとする担体組成物
市販のモノグリセリド製品は、モノアシル−,ジアシル−及び少量のトリアシル−グリセロールの混合物である。該アシルグリセロール製品をDC 345揮発性シリコーン油とアルコールとの混合物中に溶解させた。該脂質を正確に秤量しそしてシリコーン油及びアルコールと混合した。該混合物を、均質で透明且つ無色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表5はアシルグリセロールをベースとする組成物の例を示す。
【0073】
【表5】

【0074】
実施例12:コレステロールをベースとする担体組成物
コレステロールを含む組成物を、DC 345揮発性シリコーン油及びアルコールと混合することにより調製した。該脂質を正確に秤量しそしてシリコーン油とアルコールに混合した。該混合物を、均質で透明且つ無色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表6はコレステロールをベースとする組成物の例を示す。
【0075】
【表6】

【0076】
実施例13:ガラクトリピドに富む材料をベースとする担体組成物
ガラクトリピドに富む材料の二つの例を、DC 345揮発性シリコーン油及びアルコールとの混合物を調製するために使用した。該脂質を正確に秤量しそしてシリコーン油及びアルコールと混合した。該混合物を、均質で透明且つ僅かに黄色ないし褐色を帯びた黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表7はガラクトリピドに富む脂質をベースとする組成物の例を示す。
【0077】
【表7】

【0078】
実施例14:脂質組合せをベースとする担体組成物
揮発性シリコーン油/アルコール混合物中の種々の性質を有する脂質を組み合わせる能力を試験した。該脂質材料を正確に秤量しそしてシリコーン油及びアルコールと混合した。該混合物を、均質で透明且つ無色若しくは僅かに黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表8は種々の脂質の組み合わせをベースとする組成物の例を示す。
【0079】
【表8】

【0080】
実施例15:市販のレシチンをベースとする担体組成物
【0081】
【表9】

【0082】
市販のレシチン製品は、極性脂質(主としてリン脂質)及び非極性脂質(主としてトリグリセリド)と混合している。下記の例で使用された材料は全て、大豆から得られ、そして主な極性脂質としてホスファチジルコリンを含む。該脂質を正確に秤量しそしてシリコーン油及びアルコールと混合した。該混合物を、均質で透明且つ黄色若しくは褐色を帯びた黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表9はレシチンをベースとする組成物の例を示す。
【0083】
実施例16:種々のシリコーン油を有する担体組成物
種々の揮発性シリコーン油の使用の可能性を、DC 345を2種の他のシリコーン油、DC 245及びDC 246、で置き換えて試験した。該脂質を正確に秤量しそしてシリコーン油及びアルコールと混合した。該混合物を、均質で透明且つ無色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表10はDC 245及びDC 246を含む組成物の例を示す。
【0084】
【表10】

【0085】
実施例17:脂質及び少量の水をベースとする担体組成物
【0086】
【表11】

【0087】
本発明のベヒクルに少量の水を添加する可能性を試験した。該脂質を正確に秤量しそしてシリコーン油及びアルコールと混合した。少量の水及び場合によってはイソプロパノールを加えた。該混合物を、均質で透明且つ無色若しくは褐色を帯びた黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表11は少量の水を有する組成物の例を示す。
【0088】
実施例18:シリコーン油/脂質ベヒクル中のDPK−060ペプチド組成物
正確に秤量した量のペプチドDPK−060を脂質、グリセロール、1,2−プロパンジオール及びエタノールの混合物中に、撹拌しながら40℃で溶解させた。シリコーン油(DC 345)及びイソプロパノールを加え、そして混合物を、均質で透明且つ無色ないし褐色を帯びた黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表12はDPK−060組成物の代表的例を示す。
【0089】
【表12】

【0090】
実施例19:シリコーン油/脂質ベヒクル中のLL−37ペプチド組成物
正確に秤量した量のペプチドLL−37を脂質、グリセロール及びエタノールの混合物中に、撹拌しながら40℃で溶解させた。シリコーン油(DC 345)及びイソプロパノールを加え、そして混合物を、均質で透明且つ僅かに黄色若ないし褐色を帯びた黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表13はLL−37組成物の代表的例を示す。
【0091】
【表13】

【0092】
実施例20:シリコーン油/脂質ベヒクル中のオキシトシン組成物
正確に秤量した量のオキシトシンを脂質、グリセロール及びエタノールの混合物中に、撹拌しながら40℃で溶解させた。シリコーン油(DC 345)及び場合によってはイソプロパノールを加え、そして混合物を、均質で透明且つ無色ないし褐色を帯びた黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表14はオキシトシン組成物の代表的例を示す。
【0093】
【表14】

【0094】
実施例21:シリコーン油/脂質ベヒクル中のヒドロコルチゾン組成物
正確に秤量した量のヒドロコルチゾンを脂質及びエタノールの混合物中に、撹拌しながら40℃で溶解させた。シリコーン油(DC 345)及びイソプロパノールを加え、そして混合物を、均質で透明且つ黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表15はヒドロコルチゾン組成物の代表的例を示す。
【0095】
【表15】

【0096】
実施例22:シリコーン油/脂質ベヒクル中のジヒドロキシアセトン組成物
正確に秤量した量のジヒドロキシアセトンを脂質及びエタノールの混合物中に、撹拌しながら40℃で溶解させた。シリコーン油(DC 345)及びイソプロパノールを加え、そして混合物を、均質で透明且つ黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表16はジヒドロキシアセトン組成物の代表的例を示す。
【0097】
【表16】

【0098】
実施例23:シリコーン油/脂質ベヒクル中のリドカイン組成物
正確に秤量した量のリドカインを脂質及びエタノールの混合物中に、撹拌しながら40℃で溶解させた。シリコーン油(DC 345)及び場合によってはイソプロパノールを加え、そして混合物を、均質で透明且つ無色ないし黄色の液体が得られるまで40℃で静かに撹拌した。表17はリドカイン組成物の代表的例を示す。
【0099】
【表17】

【0100】
実施例24:経皮水損失(蒸発散)の制御
A,B,Cと名付けられる本発明の3種の脂質層形成性組成物(表18)を、皮膚表面からの経皮水損失(TEWL)に対する効果について試験した。それらの効果を、TEWL用の慣用の薬剤である白色ワセリン(ACO hud,スエーデン)の効果と比較した。該組成物を、10人の健康な人(5人の婦人及び5人の男性、平均年齢34歳、SD18年、皮膚の疾患の兆候を示さない)の皮膚に適用した。適用前に、前腕の手のひら側を、純粋アルコールに浸した紙ティシューである急速に清浄した。2x2cmの5つの矩形領域を前腕の手のひら上に鉛筆で印を付け、基本TEWLを測定した。該組成物及びワセリンを不規則に該領域に適用した。該領域の1つは未処理の対照として残した。2つの投与量、3μl/cm及び6μl/cm、を研究した。ワセリンを該量の半分、即ち1.5μl/cm及び3μl/cm、で使用した。高投与量は前腕の右に、そして低投与量は前腕の左に適用した。該製品を表面に、移動微量ピペット(Gilson)により分配した。該組成物を小滴で該領域に塗布した。蒸発は表面で僅かに吹きつけにより容易にした。ワセリンを指先で拡げた。
【0101】
【表18】

【0102】
TEWLを塗布前及び塗布から30分後に、DermaLab装置(開口室、コルテックス テクノロジー(Cortex Technology)、ハドサンド、デンマーク)を用いて測定した。経皮水損失の記録された低減を図2に示す。本発明の組成物1はワセリンに効果が匹敵し、一方本発明の組成物2及び3はTEWLに対して著しい効果を発揮しなかった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性シリコーン油、極性脂質、場合によってはC2-C4脂肪族アルコール、場合によっては5重量%又はそれ未満の量の水、場合によっては薬理学的若しくは化粧学的活性剤又は保護剤を含む脂質層形成性組成物であって、該シリコーン油は180℃を越え、特に200℃を越える沸点を有する、上記組成物。
【請求項2】
上記シリコーン油が、25℃で約100kJ/kg〜約300kJ/kgの気化熱(kJ/kg)、特に120kJ/kg〜200kJ/kgの気化熱、最も特に140kJ/kg〜180kJ/kgの気化熱を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
揮発性シリコーン油、極性脂質、C2-C4脂肪族アルコール、場合によっては5重量%又はそれ未満の量の水から実質的に成る、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
上記揮発性シリコーン油が、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの1つを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
上記揮発性シリコーン油が、ヘプタシロキサン及びオクタシロキサンの1つを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
上記脂質が、リン脂質、糖脂質、スフィンゴリピド及びそれらの混合物から選ばれる膜脂質を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
上記C2-C4脂肪族アルコールが、エタノール、2−プロパノール、1,2−プロパンジオール、グリセロール及びそれらの混合物である、請求項1〜6に記載の組成物。
【請求項8】
場合によっては1重量%未満の水を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
約30重量%〜約90重量%のシリコーン油、約5重量%〜約45重量%の極性リン脂質、約5重量%〜約45重量%のエタノールを含み、上記組成物が薬理学的若しくは化粧学的活性剤又は保護剤を含まない担体組成物である、請求項3〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
上記薬剤が、抗微生物剤、抗生物質;抗かび剤;抗菌剤;抗真菌剤;抗ウィルス剤;防腐剤;消炎剤;止痒塗布剤;乾癬治療薬;鎮咳剤;抗脱毛剤;抗にきび剤;抗炎症剤;抗潰瘍剤;局部麻酔剤から成る群から選ばれる薬理学的活性剤である、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
上記薬剤が、制汗剤;抗発汗剤;フケ取り剤;流動促進剤;湿潤剤から成る群から選ばれる化粧学的活性剤である、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
上記薬剤が、UV吸収剤、防虫剤;抗菌剤、抗真菌剤;抗ウィルス剤、抗線虫剤から成る群から選ばれる保護剤である、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
図3の相平衡状態図中で領域Fに含まれる重量%の割合の極性脂質、揮発性シリコーン油及びアルコールから実質的に成り、場合によっては薬理学的若しくは化粧学的活性剤又は保護剤及び/又は5重量%又はそれ未満の水を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
生物表面上に安定な極性脂質層を形成する方法において:
請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物を提供し;
該組成物の所望量を該表面に塗布して、シリコーン油及び場合によってはC2-C4脂肪族アルコールを含む極性脂質層を形成し;
該シリコーン油及び存在する場合はC2-C4脂肪族アルコールを該表面の温度で蒸発させて、安定な極性脂質層を形成することを含む、上記の方法。
【請求項15】
上記塗布が、噴霧、浸漬、又はブラッシ掛けによる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
上記温度が約20℃〜約45℃である、請求項15又は16記載の方法。
【請求項17】
上記の塗布された組成物の量が厚さ1μm〜500μmの安定な極性脂質層を得るように選ばれる、請求項14〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
植物由来の生物物品の表面を安定な極性脂質層で覆うための、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項19】
上記物品が種子、種子植物、花壇用植物、果実の1つである、請求項18記載の使用。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物から形成された安定な極性脂質層で覆われた表面を含む、植物由来の生物物品。
【請求項21】
種子、種子植物、花壇用植物又は果実の形態にある、請求項20記載の物品。
【請求項22】
経皮水損失を制御するための、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−510084(P2013−510084A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536745(P2012−536745)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/SE2010/000268
【国際公開番号】WO2011/056115
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512112035)リピドール エービー (2)
【Fターム(参考)】