説明

生体インプラント用被覆材料、およびインプラント

【課題】生体インプラントの感染防止に有用な、新規の生体インプラント用被覆材料、および当該被覆材料を備えたインプラントを提供する。
【解決手段】本発明の生体インプラント用被覆材料は、生体インプラント埋入部位周囲の生体組織の感染防止に用いられる被覆材料であって、多糖類を含有するものである。多糖類としては、(C6105)および/または(C6126)の化学式によって表される単糖が、β−1,3結合、β−1,6結合、β−2,1結合、β−2,6結合、α−1,4結合、およびα−1,6結合の少なくともいずれかによって結合したものが好ましく用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体インプラント埋入部位周囲の生体組織の感染防止に用いられる生体インプラント用被覆材料、および当該被覆材料を備えたインプラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工歯根、人工関節、骨接合用部材、金属製人工骨などの生体インプラントは、医療分野で広く用いられているが、病原性微生物によるインプラント周囲の感染が問題になっている。微生物による感染は、生体インプラントの施術中または施術後に微生物が患部に侵入し増殖することで起る。生体インプラントなどの人工物が存在すると、人工物が存在しない場合に比べ、約10分の1の菌数で感染が起ると言われている。また近年、インプラント表面に付着して、抗菌薬に抵抗性を示すバイオフィルムと呼ばれる多糖膜を菌体外に分泌するバイオフィルム形成菌による感染が問題となっている。
【0003】
そこで、生体インプラントの微生物による感染を防止するため、例えば特許文献1には、抗菌薬を基体の表面に塗布する方法が開示されている。また、特許文献2には、免疫グロブリンをインプラントの表面に塗布する方法が開示されている。
【0004】
一方、本願出願人も、微生物感染の予防が可能であり、人体に対する毒性の少ない生体インプラントとして、等電点が7未満の金属酸化物層を基体の少なくとも一部に有する生体インプラント(特許文献3)や、当該金属酸化物と、抗菌性無機材料とを含む表面層を有する生体インプラント(特許文献4)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−128697号公報
【特許文献2】特表2000−508620号公報
【特許文献3】特開2008−61897号公報
【特許文献4】特開2009−189683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で用いられる抗菌薬は一般に、特定の微生物に対してのみ選択的に効果を発揮するものが多い。また、特許文献4で用いられる抗菌性無機材料は、広範囲の微生物に対して効力を発揮するものの抗菌性は低い。更に、いずれの場合であっても、長期間の使用により、耐性菌の発生が懸念される。
【0007】
また、前述したように微生物のなかには、生体インプラント等の基材表面に付着後、多糖膜(バイオフィルム)を分泌するバイオフィルム形成菌が知られているが、通常の抗菌薬は、バイオフィルム形成菌に対する抗菌作用が著しく低い。この点、前述した特許文献1および2では、バイオフィルム形成菌に対する抗菌作用を全く検討していない。一方、前述した特許文献3および4に記載の方法は、通常の微生物のみならず、バイオフィルム形成菌に対しても効力を発揮する技術として極めて有用であるが、更なる感染防止技術の提供が望まれている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体インプラントの感染防止に有用な、新規な生体インプラント用被覆材料、および当該被覆材料を備えたインプラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し得た本発明の生体インプラント用被覆材料は、生体インプラント埋入部位周囲の生体組織の感染防止に用いられる被覆材料であって、多糖類を含有するところに要旨を有するものである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、前記多糖類は、(C6105)および/または(C6126)の化学式によって表される単糖が、β−1,3結合、β−1,6結合、β−2,1結合、β−2,6結合、α−1,4結合、およびα−1,6結合の少なくともいずれかによって結合したものである。
【0011】
また、上記課題を解決し得た本発明のインプラントは、生体インプラントを構成する基体の表面の少なくとも一部が、上記の生体インプラント用被覆材料で被覆されたところに要旨を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抗菌薬を用いなくても、生体インプラントの感染を有効に防止することができる。本発明の被覆材料を用いれば、抗菌薬では感染防止が困難であった、バイオフィルム形成菌や耐性菌などによる感染も防止し得るため、広範囲の微生物の増殖防止とインプラント表面への付着防止を実現できる点で、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1において、黄色ブドウ球菌の貪食率の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1において、バイオフィルム形成黄色ブドウ球菌の貪食率の結果を示すグラフである
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、抗菌薬を使用しなくても、生体内インプラントの微生物による感染を防止することができ、特に、抗菌薬では感染防止が困難であった、バイオフィルム形成菌や、薬剤耐性菌にも効力を発揮し得る、新規な生体インプラント用被覆材料を提供するため、検討を重ねてきた。具体的には、免疫賦活作用を有する物質を基体表面に被覆すれば、抗菌薬を使用することなく、微生物の感染を防止できるのではないかとの観点に基づき、検討を行なった。その結果、多糖類を含有する被覆材料、好ましくは、(C6105)および/または(C6126)の化学式によって表される単糖が、β−1,3結合、β−1,6結合、β−2,1結合、β−2,6結合、α−1,4結合、およびα−1,6結合の少なくともいずれかによって結合した多糖類を含有する被覆材料を用いれば、所期の目的を達成することができ、広範囲の微生物の増殖防止とインプラントへの付着防止の両方を兼ね備えた技術を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
このように本発明の生体インプラント用被覆材料は、多糖類を含有するところに特徴がある。多糖類のなかには、免疫賦活作用を有するものがあることは知られているが、多糖類や免疫賦活剤を生体インプラントの感染防止に用いたものは、これまで知られていない。本発明者らは、生体内に侵入した病原性微生物を捕食・消化(貪食能と呼ばれる)し、免疫機構を賦活化させるマクロファージを活性化すれば、結果的に、微生物による感染を著しく抑制することができることを知見した。このような免疫賦活機構は、微生物の種類に関わらず有効に発揮される点で、微生物に対する選択性が極めて高い抗菌薬を用いた場合に比べ、適用範囲が大幅に拡大するようになる。また本発明では、抗菌薬のように、塗布した部位から抗菌薬が徐々に溶出(徐放作用)して抗菌効果を発揮させるのではなく;塗布した部位に安定的に残留(固定)して免疫賦活効果を発揮させることによって、結果的に、微生物の感染防止を図るものである。
【0016】
なお、前述した特許文献2では、免疫活性作用を有する免疫グロブリンを使用しているが、免疫グロブリンは、使用方法によっては周囲の組織障害をもたらす恐れがあるなど、取扱いに細心の注意を有する物質である。これに対し、本発明に用いられる上記多糖類は、いずれも毒性が極めて低く、安全性の高い物質である。また、免疫グロブリンは、塗布した部位から徐々に溶出(徐放作用)して、侵入してきた細菌に結合することで効果を発揮させるものであり、本発明のように、塗布した部位に安定的に残留(固定)して、その化学構造を生体の免疫系が認識することにより免疫賦活効果を発揮させるものでない(後述する。)。
【0017】
本明細書において「感染防止」とは、微生物の感染を予防(防止)および/または治療することを含む。
【0018】
本明細書において、感染防止の対象となる微生物は、特に限定されず、生体インプラントの施術中・施術後などにおいて問題となる微生物全般が挙げられるが、例えば、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌、大腸菌、レンサ球菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、多剤耐性緑膿菌などの耐性菌などが例示される。また、バイオフィルム形成菌として、バイオフィルム形成黄色ブドウ球菌、バイオフィルム形成メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バイオフィルム形成表皮ブドウ球菌、バイオフィルム形成メチシリン耐性表皮ブドウ球菌、バイオフィルム形成コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、バイオフィルム形成メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、バイオフィルム形成腸球菌、バイオフィルム形成バンコマイシン耐性腸球菌、バイオフィルム形成大腸菌などが挙げられる。
【0019】
本発明に用いられる多糖類として好ましいのは、(C6105)および/または(C6126)の化学式によって表される単糖が、β−1,3結合、β−1,6結合、β−2,1結合、β−2,6結合、α−1,4結合、またはα−1,6結合で結合した多糖類である。これらの多糖類は、高い免疫賦活効果を有するものが多いからである。本発明に用いられる多糖類は、上述した結合の少なくとも一つを含んでいれば良く、二つ以上の結合を含んでいても良い。また、本発明では、上記の多糖類を、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。上記多糖類は、市販品を用いることもできる。
【0020】
更に本発明では、特に、生体インプラントを構成する基体に塗布することを考慮し、毒性の非常に少ないものを選択することが好ましい。このような観点も含めて、好ましい多糖類としては、例えば、デキストラン[α−1,6−(C6105n]、β−1,3−グルカン[β−1,3−(C6105n]、イヌリン[(β−2,1−(C6105n(β−2,1−(β−2,1−(C6126n]などが挙げられ、より好ましいのはβ−1,3グルカンである。これらの多糖類は、後記する実施例に示すように、通常の菌のみならずバイオフィルム形成菌に対しても極めて有効に作用することができる。これらは、市販品を用いることができる。
【0021】
本発明の被覆材料は、上記の多糖類のみから構成されていても良いし、本発明の作用を損なわない範囲において、他の成分を添加しても良い。例えば、長期保管の目的で保存料や安定化剤などを添加しても良い。また、本発明では、基本的に抗菌薬の使用を排除しているが、微生物による感染防止効果を、更に強化させるなどの目的で、公知の抗菌薬を併用しても良い。
【0022】
次に、上記被覆材料を有するインプラントについて説明する。
【0023】
本発明のインプラントは、生体インプラントを構成する基体の表面の少なくとも一部が、上述した生体インプラント用被覆材料で被覆されているものである。上記被覆材料は、基体全体に被覆することができるため、より強い感染予防効果が発揮される。
【0024】
上記基体の材料は特に限定されず、インプラントに用いられる任意の材料(例えば金属、セラミックス、プラスチックなど)を用いることができる。上記金属材料の種類は、インプラントに用いられるものであれば特に限定されず、純TiまたはTi合金、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン合金、ジルコニウム合金、タンタル又はその合金などが例示される。上記Ti合金の種類も特に限定されず、例えば、Al、V、Zr、Mo、Nb、Taなどの元素を少なくとも一種含むTi合金が例示され、具体的には、Ti−6質量%Al−4質量%V合金、Ti−15質量%Mo−5質量%Zr−3質量%Al合金、Ti−6質量%Al−2質量%Nb−1質量%Ta−0.8質量%Mo合金などが例示される。
【0025】
上記インプラントの表面状態は特に限定されず、平滑面でも粗面でも良く、要求特性などに応じて、表面性状を適宜調整すれば良い。例えば、基体表面に被覆される多糖類の量を基体の見掛け面積当たりに対して出来るだけ多くすることが望まれる場合、インプラントの表面は、真の表面積が大きくなる粗面状態とすることが推奨される。粗面化の方法は特に限定されず、例えば金属を基体材料として用いる場合には、サンドブラスト処理や、溶射法など、通常用いられる粗面化処理法を用いることができる。
【0026】
次に、上記被覆材料を用いてインプラントを製造する方法を説明する。
【0027】
まず、上述した多糖類を用意する。基体表面に被覆するに当たっては、多糖類の濃度を、所望の作用効果が発揮させるように、適宜調整することが好ましい。
【0028】
具体的には、多糖類の種類に応じて、エタノール、DMSO、水など適切な分散媒を選択して多糖類を分散させ、塗布時における多糖類の塗布量が、おおむね、0.00001mg/cm2〜200mg/cm2の範囲内となるように調整することが好ましい。特に0.01mg/cm2〜5mg/cm2の範囲内に調整することが、より好ましい。
【0029】
次いで、上記のように調整された上記多糖類の分散液を、Tiなどの生体材料からなる基体の少なくとも一部に被覆する。被覆手段は特に限定されず、塗布、スプレー法、浸漬法などが挙げられる。また、これらの被覆手段に、表面グラフト重合法等の化学的手法を組合せてもよい。例えば塗布に当たっては、上記の多糖類を分散させた分散液を、適宜、Vortexなどで加振した後、塗布すると、多糖類を均一に塗布することができる。
【0030】
本発明には、このようにして基体表面の少なくとも一部が上記多糖類で被覆されたインプラントも、本発明の範囲内に包含される。このようなインプラントとしては、例えば整形外科領域での人工股関節、人工膝関節、人工肩関節等の人工関節;骨スクリュー、骨プレート、脊椎固定部材等の骨接合用部材;その他の金属製人工骨;歯科領域での人工歯根などが代表的に例示される。また、本発明の被覆材料は、血管ステントや人工心臓弁、人工血管などにも応用可能である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0032】
実施例1
本実施例では、下記4種類の供試材料をチタン材料に被覆したときの、各微生物の貪食率を比較検討した。
【0033】
(供試材料)
(ア)デキストラン(DT)[α−1,6−(C6105n]2mg:Wako製のDextran 60,000を使用
(イ)β−1,3−グルカン(GL)[β−1,3−(C6105n]:Wako製のβ−1,3 Glucan(生化学用)を使用
(ウ)イヌリン(IN)[(β−2,1−(C6105n(β−2,1−(β−2,1−(C6126n]1mg:Wako製のInulinを使用
(エ)水酸化アルミニウムゲル(AO)0.64mg:SERVA製のAlu−Gel−S suspensioを使用
【0034】
上記材料のうち水酸化アルミニウムゲル(AO)は、一般にワクチン接種時のアジュバンドとして使用されているものであり、本実施例では、比較のため用いた。
【0035】
チタン材料に被覆するに当たっては、上記(ア)〜(ウ)の各供試材料をそれぞれ、100μLのエタノールに分散させし、Vortexで撹拌した分散液を用いた。また、上記(エ)の供試材料については、分散媒に分散することなく、そのまま用いた。
【0036】
(供試菌)
黄色ブドウ球菌:NBRC 12732(S.aureus)
ここで、NBRSとは、独立行政法人製品技術評価機構の生物遺伝資源部門の略である。
バイオフィルム形成黄色ブドウ球菌:NBRC 14462(BF−MSSA)
【0037】
金属材料として、市販のアルミナ粉末によってブラスト処理した純チタン試験片(サイズ:φ14mm×1mm)を用意し、上記試験片の表面全面に前述した供試材料の分散液を、試験片1枚当たり100μL塗布した。次に、室温で乾燥させて貧食試験用の各試験片を作製した。対照群として、上記の供試材を塗布しないもの(ブラスト処理のみの純チタン)を用意した(対照群)。
【0038】
(実験方法)
細菌貪食能細胞として、RAW 264株化細胞(European Collection of Cell Cultureの標準株細胞リストのカタログ番号EC85062803)を用いた。
【0039】
まず、上記の各試験片(サイズφ14mm×1mm)を市販の24ウェルプレート中の培地[SIGMA−Aldrich製のRPMI1640にGIBCO製の牛胎児血清(FCS)を10%加えたもの]中に浸漬し、RAW 264株化細胞を5×105cells接種した後、37℃のCO2インキュベーター内で24時間培養した。次いで、上記培地中に、2×106CFU(コロニー形成ユニット)のBHI培地(栄研化学株式会社製)で前培養した上記供試菌を接種した後、4℃にて1800×gで10分間の遠心を行い、浮遊細菌を各試験片に付着させた。次に、37℃のCO2インキュベーター内で20分間培養し、RAW 264株化細胞に上記供試菌を貪食させた。次いで、1mLのPBS(−)で各試験片を3回洗浄し、RAW 264株化細胞に貪食されなかった(取込まれなかった)供試菌を除去した。次いで、RAW 264株化細胞に貪食された上記供試菌を回収するため、0.2%サポニン(Merck製のサポニンをmilli−Q水で0.2%になるように溶かし、フィルター濾過して滅菌したもの)を500μL加えてRAW 264株化細胞を破壊し、当該RAW 264株化細胞に取り込まれていた上記供試菌を回収した。このようにして回収された上記供試菌の溶液を試験管に移すと共に、同ウェルに滅菌水0.5mLを加えて洗浄し、これを上記試験管に移し、上記供試菌の溶液と混合した。これらの混合液1mLを超音波で5分間洗浄した後、Vortexで撹拌し、段階希釈して110培地プレート(栄研化学株式会社製)上に撒き、37℃で24時間培養した。培地プレート上に生育したコロニー数を、RAW 264株化細胞に貪食された生菌数として測定した。
【0040】
同様の操作を3回繰返し、各供試菌について、貧食率の平均値±標準誤差を算出した。これらの結果を図1(黄色ブドウ球菌に対する貧食率)および図2(バイオフィルム形成黄色ブドウ球菌)に示す。これらの図において、貧食率(すなわち、RAW 264株化細胞に貪食された生菌数)の数が多い程、免疫賦活作用が高く、抗菌作用に優れていることを意味する。
【0041】
図1および図2より、本発明に用いられる多糖類(DT、GL,IN)を被覆材料として用いると、いずれの菌に対しても、対照群に比べて貧食率が向上することが分かる。特に多糖類としてGLを用いたときは、他の多糖類を用いた場合に比べ、黄色ブドウ球菌に対する貧食率が著しく高く、バイオフィルム形成黄色ブドウ球菌に対する貪食率も非常に高いものであった。これに対し、水酸化アルミニウムゲル(AO)を用いたときは、対照群を下回る効果しか得られなかった。
【0042】
以上の実験結果より、本発明の被覆材料を用いれば、抗菌薬を使用しなくても、生体インプラント周囲に侵入する微生物の増殖を有効に防ぐことが実証された。また、本発明による細菌増殖抑制効果は、バイオフィルム形成菌に対しても有効に発揮されることが実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体インプラント埋入部位周囲の生体組織の感染防止に用いられる生体インプラント用被覆材料であって、多糖類を含有することを特徴とする生体インプラント用被覆材料。
【請求項2】
前記多糖類は、(C6105)および/または(C6126)の化学式によって表される単糖が、β−1,3結合、β−1,6結合、β−2,1結合、β−2,6結合、α−1,4結合、およびα−1,6結合の少なくともいずれかによって結合したものである請求項1に記載の生体インプラント用被覆材料。
【請求項3】
生体インプラントを構成する基体の表面の少なくとも一部が、請求項1または2に記載の生体インプラント用被覆材料で被覆されたインプラント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−205656(P2012−205656A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72098(P2011−72098)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(504418084)京セラメディカル株式会社 (106)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【Fターム(参考)】