説明

生体コラーゲン合成促進剤並びに生体コラーゲン合成促進用飲食品、化粧品及び医薬部外品

【課題】効果があり、安全性を向上可能な生体コラーゲン合成促進剤を提供する。また、生体コラーゲン合成促進作用を有するジペプチド又はとりペプチドを含有する飲食品、化粧品、医薬部外品、及び血管、関節痛、または皮膚治療薬を提供する。
【解決手段】Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内におけるコラーゲンの合成促進剤に関する。また、本発明は、生体コラーゲン合成促進用飲食品、生体コラーゲン合成促進用化粧品、生体コラーゲン合成用医薬部外品、又は血管、関節痛、若しくは皮膚治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは生体内のタンパク質の約30%を占め、皮膚、血管そして骨に多く存在するタンパク質である。また、このコラーゲンタンパクは、加齢とともに減少することから血管の脆弱化や皮膚の弾力性・柔軟性の減少などの一因と考えられている。これまで、コラーゲンの摂取は、消化酵素による分解が困難であるという性質を有するために、栄養面において大きな利用価値が見出せないとされてきた。しかしながら、近年、コラーゲンの摂取がコラーゲン合成促進効果や新陳代謝促進(特許文献1)効果を有し、また関節症治療用薬剤等として利用することができる(特許文献2)という報告がされてきている。さらに、コラーゲンタンパクもしくはその加水分解物の経口摂取による皮膚の新陳代謝促進に関する特許(特許文献3)も開示され、主に美容向けの健康食品が多数販売されている。
【0003】
未処理のコラーゲンおよびゼラチンはタンパク質であるため抗原性を有し、アレルギー体質のヒトの摂取には問題がある。そのため、コラゲナーゼによってコラーゲンを低分子化することにより抗原性をなくし、アレルギー患者向けのタンパク質源や輸液製剤成分としても利用されている(特許文献4)。
【0004】
また、特許文献5には、ウシ由来のコラゲナーゼによるコラーゲンの分解産物に関して、生成するトリペプタチドのGly−Pro−Hypがもっとも多くコラーゲン合成促進効果を有するペプチドとして開示されている。
【0005】
ブタ由来コラーゲンタンパクの加水分解物の経口摂取後のヒト血液中には、遊離Hypだけでなくペプチド型Hypが存在し、そのペプチド型Hypの構造は、ほとんどがPro−Hypからなり、その他、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Ile-Hyp、Leu−Hyp、Phe−Hypがわずかに存在する(非特許文献1)。また、サカナ由来コラーゲンタンパクの加水分解物の経口摂取後のヒト血液中にはPro−Hypの他にAla−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Ser−Hyp−Gly、Ile−Hyp、Leu−Hyp、Phe−Hyp、Ala−Hypが存在する(非特許文献2)。しかしながら、これらの文献には、コラーゲン加水分解物摂取後のヒト血液中に存在する上記のペプチドが、コラーゲン合成に関わることは示されていない。
【0006】
【特許文献1】特開平7−278012公報
【特許文献2】特開昭63−39821公報
【特許文献3】特開平7−278012公報
【特許文献4】特開平7−82299公報
【特許文献5】特開2006−56904公報
【非特許文献1】J.Agric.Food Chem.,53,16,2005
【非特許文献2】J.Agric.Food Chem.,55,4,2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生体コラーゲン合成促進効果を有し、安全性を向上可能な生体コラーゲン合成促進剤を提供することである。また、生体コラーゲン合成促進作用を有するジペプチド又はトリペプチドを含有する飲食品、化粧品、医薬部外品、及び治療薬の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する生体コラーゲン合成促進剤を提供する。
【0009】
また、本発明は、コラーゲンまたはゼラチン分解物または人工合成したAla−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する合成促進剤を提供する。
【0010】
また、本発明は、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する飲食品、化粧品、医薬部外品、及び治療薬を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明者らは、豚由来のコラーゲンタンパク加水分解物を経口摂取後にヒト血液中に存在するペプチドの中から、コラーゲン合成促進効果を有するペプチドを選別した。よって、本発明で使用されるAla−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチド又はトリペプチドは、コラーゲンタンパクまたはコラーゲンペプチドの経口投与により血中まで到達しうるペプチドであることから人体に対して安全かつ効果的であり、飲食品、化粧品、医薬部外品、及び治療薬に含有させて使用することができ、かつその有益性は非常に高い。
【0012】
また、特開2005−289819号公報には、Pro−Hypのジペプチドが、細胞増殖促進作用を有することについて記載されているが、Pro−Hypのジペプチドがコラーゲン合成促進作用を有することについては記載されておらず、何らの示唆もない。このように、本発明で使用されるAla−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチド又はトリペプチドが、コラーゲン合成促進効果を有することについては、これまで知られておらず、本発明者らは、これらのペプチドがコラーゲン合成促進効果を有することを初めて見出した。
【0013】
すなわち、本発明によれば、これらのコラーゲン合成促進能のあるペプチドを含有することにより効果的な生体内におけるコラーゲン合成促進剤、生体コラーゲン合成促進用飲食品、化粧品、医薬部外品、及び治療薬を提供することが可能となる。治療薬としては、血管、関節痛、皮膚治療薬等が挙げられ、血管治療薬としては、動脈硬化治療薬等が挙げられる。また、本発明で使用されるペプチドは、コラーゲンタンパク加水分解物の経口摂取後にヒト血液中に存在するペプチドから選別されたものであるため、安全なコラーゲン合成促進剤、食品、化粧品、医薬部外品、及び治療薬を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で使用されるペプチドは、例えば、牛や豚などの動物の皮膚、骨及び腱などの結合組織から抽出したコラーゲンタンパク、もしくはコラーゲンタンパク質の熱変性物であるゼラチンから加水分解等により得られたものを使用しても良く、また人工的に合成したものを用いても良い。コラーゲンタンパク質より得る場合には、コラーゲンタンパク質溶解液を、コラゲナーゼ酵素固定化カラムにアプライし、カラム法による酵素分解を行う。カラムを通した酵素反応終了溶液を分取し、0.45μmのフィルターでろ過を行い、そのろ液を凍結乾燥にて粉末化しコラーゲントリペプチドを得た後、コラーゲントリペプチド粉末を再溶解しHPLC(ゲルろ過およびODSカラム)において各々のジペプチドおよびトリペプチド含有画分を精製する。更に、単一のコラーゲントリペプチド成分を得るために、イオン交換クロマト法およびカーボンカラムを用いて精製し得ることができる。また、人工合成により得る場合には、ペプチド合成機器を用いて固相法により人工合成する。使用する機器のプログラムに従いC末端よりFmoc法によりペプチド鎖を延長する。固相法ペプチド合成用支持体である担体を用いて、副反応を防止するために、あらかじめFmocおよびBocによりα−アミノ基、δ−アミノ基を保護したオルニチンとFmocによりβ−アミノ基を保護したβ−アラニンのFmocアミノ誘導体を用いる。Fmoc−Orn(Boc)を担体に結合させ、ピペリジンなどによりα−アミノ基を脱保護後、Fmoc−Orn(Boc)のC末端をカップリングさせ、ピペリジンなどで二つ目のオルニチンのα−アミノ基を脱保護し、Fmoc−β−AlaのC末端を同様にカップリングさせる。最後にトリフルオロ酢酸などの酸を用いて全ての脱保護と担体除去を行い、0.1%トリフルオロ酢酸水を用いて抽出したものを凍結乾燥することでジペプチドおよびトリペプチドを製造することができ、HPLC(逆送カラム)などで精製することによって得ることができる。
【0015】
上記のように得られたペプチドを有効成分として、生体コラーゲン合成促進剤を製造するには、上記のようにして得たペプチドを有効成分とし、常法に従って公知の飲食品用、化粧品用、医薬部外品用、又は治療薬用担体等と組み合わせて製剤化すれば良い。
【0016】
本発明で使用されるペプチドを含有する生体コラーゲン合成促進剤、生体コラーゲン合成促進用飲食品、生体コラーゲン合成促進用化粧品、生体コラーゲン合成促進用医薬部外品、及び血管、関節痛、又は皮膚治療薬は、ヒトに対して安全であり、生体コラーゲン合成促進効果を有することから、皮膚の張りや肌の保湿性、関節の痛み、毛髪の柔軟性や張り、血管の弾力性等の症状の改善又は予防に有効である。
【0017】
また、本発明の生体コラーゲン合成促進剤は、種々の剤型での投与が可能であり、例えば経口投与剤としては、茶剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、ドライシロップ剤等が挙げられる。
【0018】
本発明の生体コラーゲン合成促進作用の有効成分となるペプチドの摂取量は、特に制限はないが、通常成人1日当たり85mg/kg(体重)以上、好ましくは170mg/kg(体重)以上を摂取するのが好ましい。投与量の上限は、1日当たり、17000mg/kg(体重)以下が好ましく、2380mg/kg(体重)以下がより好ましい。よって、生体コラーゲン合成促進剤におけるペプチドの含有量は、各形態に応じた範囲で前述した摂取量となるように含有されれば良い。
【0019】
上記のように、本発明の生体コラーゲン合成用飲食品は、飲食品で通常用いられている任意成分と共に配合することができる。このようなヒトまたは動物用の飲食品としては、例えば、パン類、菓子類、麺類、肉製品・水産加工品、穀類の加工品、加工野菜・加工果実、加工卵、乳製品、粉類、即席菓子の素、食用油脂、スープの素、粉末飲料、調味料、食品添加物、飲料類、飼料等が挙げられる。
【0020】
また、本発明の生体コラーゲン合成促進用飲食品には、例えば、ビタミン剤などの栄養補助食品、栄養補助飲料、動物用健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品、保健機能食品等が含まれ、通常用いられている各種形態、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、フィルム等として製品化される。製品化に際しては、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドとともに、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、吸着剤、滑沢剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等が配合される。
【0021】
これらの栄養補助食品、栄養補助飲料などは、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。
【0022】
このような飲食品におけるコラーゲン合成促進効果を有するペプチドの添加量は、飲食品の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となるように添加されれば良く、飲食品には、2.5〜70重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、液状の飲食品に対し1.5〜40重量%、固体状の飲食品に対し30〜100重量%、錠剤状の飲食品に対し、30〜100重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、保健用飲料には、1.5〜40重量%、機能性烏龍茶には、1.5〜40重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0023】
また、本発明の生体コラーゲン合成促進用化粧品としては、老化防止用化粧品、クレンジング用化粧品、頭髪用化粧品、入浴用化粧品、医療用化粧品が挙げられ、また、顔料、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、パック、リポソーム、液状、粘土状、ソリッド粉末状化粧料、エアゾール化粧料、ハップ剤等のスキンケア化粧品、下地クリーム、ファンデーション等のメークアップ化粧品をそのまま使用するか、あるいはエアゾール式、ポンプ式、または押出し式、もしくはこれらに類する機構で噴射する化粧品、さらに浴剤等様々な剤型を提供することができる。
【0024】
本発明の生体コラーゲン合成促進用化粧品には、水、アルコール、界面活性剤(カチオン、アニオン、ノニオン、両性界面活性剤等)、保湿剤(グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸塩、核酸類、単糖類、少糖等およびそれらの誘導体ほか)、増粘剤(多糖類、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、アルギン酸、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース等およびそれらの誘導体ほか)、ワックス、ワセリン、炭化水素飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、シリコン油等およびそれらの誘導体、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸グリセリル等のトリグリセライド類、ステアリン酸イソプロピル等のエステル油類、天然油脂類(オリブ油、椿油、アボガド油、アーモンド油、カカオ脂、月見草油、ブドウ種子油、マカデミアンナッツ油、ユーカリ油、ローズヒップ油、スクワラン、オレンジラフィー油、ラノリン、セラミド等)、防腐剤(オキシ安息香酸誘導体、デヒドロ酢酸塩、感光素、ソルビン酸、フェノキシエタノール等およびそれらの誘導体ほか)、殺菌剤(イオウ、トリクロカルバアニリド、サリチル酸、ジンクピリチオン、ヒノキチオール等およびそれらの誘導体ほか)、紫外線吸収剤(パラアミノ安息香酸、メトキシケイ皮酸等およびそれらの誘導体ほか)、抗炎症剤(アラントイン、グリチルリチン酸等およびそれらの誘導体ほか)、抗酸化剤(トコフェロール、BHA、BHT等およびそれらの誘導体ほか)、キレート剤(エデト酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等およびそれらの誘導体ほか)、動植物エキス(アシタバ、アロエ、エイジツ、オウゴン、オウバク、海藻、カリン、カミツレ、甘草、キウイ、キュウリ、クワ、シラカバ、トウキ、ニンニク、ボタン、ホップ、マロニエ、ラベンダー、ローズマリー、ユーカリ、ミルク、各種ペプタイド、プラセンタ、ローヤルゼリー等およびこれらの含有成分精製物または発酵物ほか)、pH調整剤(無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩等およびそれらの誘導体ほか)、ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD 類等およびそれらの誘導体ほか)、酸化チタン、タルク、マイカ、シリカ、酸化亜鉛、酸化鉄、シリコンおよびこれらを加工処理した粉体類等を本発明の目的を達成する範囲内で配合することができる。なお、本発明の美白化粧料を構成する成分は決して上述に限られるものではなく、化粧料に用い得る成分であれば自由に選択が可能である。
【0025】
ハップ剤においては上記成分に加えて、基剤(カオリン、ベントナイト等)、ゲル化剤(ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール等)を本発明の目的を達成する範囲内で配合することができる。
【0026】
浴剤においては、硫酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸塩、色素、保湿剤を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合し、パウダータイプ、液剤タイプに調製が可能である。
【0027】
これらの生体コラーゲン合成促進用化粧品は、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。
【0028】
このような化粧品におけるコラーゲン合成促進効果を有するペプチドの添加量は、化粧品の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となるように添加されれば良く、化粧品には、0.01〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、液状の化粧品に対し0.01〜5重量%、クリーム状の化粧品に対し0.01〜10重量%、粉末状の化粧品に対し、0.01〜5重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、化粧水には、0.01〜5重量%、化粧用クリームには、0.01〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0029】
また、本発明の生体コラーゲン合成促進用医薬部外品としては飴類、ガム類、歯磨き粉類、液体歯磨き剤類、ジェル状歯磨き剤類、飲料類等が含まれる。また、骨吸収用医薬部外品は、医薬部外品で通常用いられている任意成分と共に配合することができる。
【0030】
これらの生体コラーゲン合成促進用医薬部外品は、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。
【0031】
このような生体コラーゲン合成促進用医薬部外品における当該化合物の添加量は、医薬部外品の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となるように添加されれば良く、医薬部外品には、0.01〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、固体状の医薬部外品に対し、0.01〜10重量%、液体状の医薬部外品に対し、0.01〜5重量%、ジェル又はペースト状の医薬部外品に対し、0.01〜5重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、ペットガムには、0.01〜5重量%、歯磨き粉に対し、0.01〜5重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0032】
本発明の生体コラーゲン合成促進用治療薬の製造は、通常、本発明で使用されるペプチドを薬学的に許容できる液状または固体状の担体と配合することにより行われ、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等とすることができる。
【0033】
医薬用担体は、骨吸収抑制剤の投与形態および剤型に応じて選択することができる。固体組成物からなる経口剤とする場合は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等とすることができ、たとえば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などが利用される。また経口剤の調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合することもできる。たとえば、錠剤または丸剤とする場合は、所望によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの糖衣または胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。液体組成物からなる経口剤とする場合は、薬理学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などとすることができ、例えば、精製水、エタノールなどが担体として利用される。また、さらに所望により湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、防腐剤などを添加してもよい。
【0034】
一方、非経口剤とする場合は、常法に従い本発明の前記有効成分を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどに溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤などを加えることにより調製することができる。また、固体組成物を製造し、使用前に無菌水または無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0035】
さらに上記各製剤には、所望により、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などの薬学的に許容される添加物や他の治療薬を含有させることができる。
【0036】
製剤化に際しては、安定化剤を配合することが好ましい。安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコールなどが挙げられる。
【0037】
一般には、製剤中に含有される有効成分の投与量は、種々の条件、例えば抽出溶媒の種類、使用した溶媒の使用量等によっても変動するので、上記好ましい摂取量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。投与は、所望の摂取量範囲内において、1日内において単回で、または数回に分けて行ってもよく、所定期間に渡って行ってもよい。
【実施例】
【0038】
以下に試験例及び処方例を挙げ、本発明について更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0039】
(試験方法及び評価方法)
人工合成したAla−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−HypをNIH−3T3−L1(マウス線維芽細胞)を培養している培養液中に加え、培養液および細胞外マトリックスとして沈着したコラーゲンをELISA法およびウエスタンブロッティング法によって評価した。Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hyp は、GL Biochem社においてFmoc合成法およびBoc合成法の組み合わせにより合成されたものを用いた。
【0040】
NIH−3T3−L1細胞を0.2%FBS入りのDMEM培地に浮遊させ、24ウェルプレートに10万細胞/ウェルとなるよう播種した。各ウェルに250μg/mlとなるように合成したそれぞれのペプチドを添加し、そのまま36時間37度5%CO---でインキュベートした。次に、培養上清を回収しELISA法に用いた。また培養上清を除いたウェルの細胞単層をリン酸緩衝液で2回やさしく洗浄した。その後、細胞は細胞溶解用の緩衝液(10mM HEPES、pH7.8、150mM NaCl、2mM EDTA、1.5mM MgCl、0.5mM dithiothreitol、そしてプロテアーゼ阻害剤)により溶解しウエスタンブロッティング法に用いた。細胞を培養する際、培養液中の血清量を抑えることで、コラーゲン合成への影響を可能な限り排除した。これにより、コラーゲンペプチド投与による効果だけを細胞レベルで厳密に評価することができた。また、細胞が産生したコラーゲン量を従来よりも正確に測定するため、細胞近辺に定着したコラーゲンを可溶化(アテロ化)し、培養液、細胞近辺、細胞内のコラーゲン量を合算し評価した。
【0041】
(ELISA法)
各ウェルから回収した培養上清200μlに100μlのペプシン溶液(150mM 酢酸溶液、0.6mg/ml ペプシン)を加え、転倒混和により十分攪拌し4度で一晩インキュベートした。その後100μlの中和液(200mM Tris、150mM NaCl)を加え転倒混和により十分攪拌し測定資料とした。測定資料をNUNC MaxiSorp 96ウェルプレートに200μl/ウェル加え培養液中のタンパクを4度で一晩コーティングした。その後培養液を除き、ツィーン/リン酸緩衝液で洗浄しブロッキング溶液(5% ノンファット・ドライミルクを0.1% Tween−20を含むリン酸緩衝液も溶かしたもの)中で1時間インキュベートした。ブロッキング溶液を除きツィーン/リン酸緩衝液で洗浄後、1次抗体としてコラーゲンI抗体を1時間反応させた。1次抗体を除きツィーン/リン酸緩衝液で洗浄後、ホースラディッシュ結合2次抗体に1時間曝露した。2次抗体を除きツィーン/リン酸緩衝液で洗浄後発色剤(o-フェニレンジアミン、クエン酸/リン酸緩衝液、30%過酸化水素水)を加え発色反応を行い、反応停止液(2NHSO)を加えることで反応を停止させ、1420ARVOシリーズ・マルチレーベルカウンターで492nmにおける吸光度を測定した。表1においてコントロールに対する相対的なコラーゲン増加量を示した。表1で示すように、本発明で使用されるペプチドを添加した区では、添加していない区に比べて、約144〜187%で培養液中のコラーゲン量が増加している結果となった。
【0042】
【表1】

【0043】
(ウエスタンブロッティング法)
細胞溶解用の緩衝液に溶解した細胞の溶出液をポリアクリルアミドーSDSゲルで分画を行い、BIO CRAFT社のセミドライブロッターを用いてニトロセルロース膜にそのタンパク質を転写した。膜は、ブロッキング溶液(5% ノンファット・ドライミルクを0.1% Tween−20を含むリン酸緩衝液も溶かしたもの)と4度で一晩インキュベートさせた。膜を洗浄しコラーゲンIの1次抗体と1時間インキュベートさせ、その後ホースラディッシュ結合2次抗体に1時間曝露し、最後にGE Healthcare Bio−sciences社のELC Plus Western Blotting Detection Systemで検出を行った。同様の方法を用いて恒常的に発現することで知られるGlyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(以下、GAPDHと称する)を標準タンパクとして測定した。結果を図1に示す。図1に示すように、本発明で使用されるペプチドを添加した区では、細胞外マトリックスにおけるコラーゲンの発現が増加する結果となった。また、ジペプチドを添加した区では、トリペプチドを添加した区よりもコラーゲン産生量が多い結果となった。
【0044】
このように、本発明で使用されるペプチドは、コラーゲン合成促進作用を有していることが新たに確認されたものであり、これらのペプチドを含む生体コラーゲン合成促進剤、生体コラーゲン合成促進用飲食品、生体コラーゲン合成促進用化粧品、生体コラーゲン合成促進用医薬部外品、及び血管、関節痛、若しくは皮膚治療薬は、コラーゲン合成促進作用を有するものとして有用である。
【0045】
また、実施例で示すように、本発明で使用されるジペプチドを添加した区では、トリペプチドを添加した区に比べて、コラーゲン産生量が多かったことから、ジペプチドの方が、コラーゲン合成促進作用が高く、よって、投与効率を向上できる。また、トリペプチドであるGly−Pro−HypやPro−Hyp−Glyは、Gly−ProやHyp−Gly間で分解されることから、ジペプチドであるPro−HypやAla−Hyp間の結合は、Gly-ProやHyp−Gly間の結合よりも強く安定である。よって、ジペプチドの方が、トリペプチドよりも分解され難く、安定性が高いため、製品化する上で取り扱いが容易となり生産効率を向上できる。
【0046】
(処方例)
本発明のAla−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する生体コラーゲン合成促進剤,生体コラーゲン合成促進用飲食品、生体コラーゲン合成促進用化粧品、生体コラーゲン合成促進用医薬部外品、及び血管、関節痛、若しくは皮膚治療薬の製造について、上記評価結果に従い、以下にその処方例を示すが、各処方例は各製品の製造における常法により製造したもので良く、配合量のみを示した。また、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0047】
上記のようにして得たペプチドを、通常の飲食品又は医薬部外品に添加することも可能である。このようにして得られた生体コラーゲン合成促進用飲食品又は生体コラーゲン合成促進用医薬部外品は、生体コラーゲン合成促進効果が期待でき、かつ人体に対し安全であることから、飲食品又は医薬部外品として非常に有用である。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0048】
また、上記のようにして得たペプチドを、化粧品に添加することも可能である。このようにして得られた生体コラーゲン合成促進用化粧品は、生体コラーゲン合成促進効果が期待でき、かつ人体に対し安全であることから、化粧品として非常に有用である。
【表6】

【表7】

【0049】
また、上記のようにして得たペプチドを、治療薬に添加することも可能である。このようにして得られた生体コラーゲン合成促進用治療薬は、生体コラーゲン合成促進効果が期待でき、かつ人体に対し安全であることから、治療薬として非常に有用である。
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのコラーゲン合成促進効果について、ウエスタンブロッティング法による測定結果を示した写真データである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する生体コラーゲン合成促進剤。
【請求項2】
Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する生体コラーゲン合成促進用飲食品。
【請求項3】
Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する生体コラーゲン合成促進用化粧品。
【請求項4】
Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する生体コラーゲン合成促進用医薬部外品。
【請求項5】
Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Pro−Hyp、Leu−Hyp、Ala−Hypのジペプチドペプチドまたはトリペプチドのいずれかを含有する血管、関節痛、または皮膚治療薬。

【図1】
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【公開番号】特開2010−24200(P2010−24200A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189667(P2008−189667)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(599098518)株式会社ディーエイチシー (31)
【Fターム(参考)】