説明

生体サンプルを処理するための装置および方法

スライド上に配置された少なくとも1つの生体サンプルを処理するための方法および自動装置。少なくとも1つの毛管式染色モジュールが、スライドを保持するように構成されたスライドラックを着脱可能に保持するように構成されたスライドラックホルダと、毛管リッドを保持するように構成された毛管リッドラックを着脱可能に保持するように構成された毛管リッドラックホルダとを有しており、スライドラックの取り外しを毛管リッドラックの取り外しとは無関係に行うことが可能である。第1の流体容器が、第1の流体を有している。この装置が、1つ以上のスライドを自動的に回転させ、毛管リッドをスライドに向かって移動させて、毛管チャンバとして機能する毛管ギャップを各スライドと各毛管リッドとの間に自動的に形成し、スライドへと第1の流体を供給するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2009年12月9日に出願された「AN APPARATUS AND METHOD FOR PROCESSING BIOLOGICAL SAMPLES」と題する米国同時係属仮特許出願第61/267,906号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、例えば組織学的および細胞学的検査のための生体サンプルの処理に関する。特には、本発明は、少量の処理用流体を使用した生体サンプル(例えば、薄い組織切片)の処理に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば免疫組織化学(IHC)の用途ならびに他の化学的および生物学的分析におけるサンプルの処理は、1つまたは複数のさまざまな処理手順または処理プロトコルを、1つ以上のサンプルの分析の一部として必要とすることがある。典型的には、そのような処理プロトコルは、病院で研究する病理学者または組織学者など、分析を要求する団体または個人によって定められ、実行すべき特定の分析の指令によってさらに定められることがある。
【0004】
例えば、蛍光in−situハイブリダイゼーション(FISH)法などのin−situハイブリダイゼーション(ISH)法が、伝統的に、2日間に及ぶ手作業での手順である。処理手順を短縮し、手作業による工程の数を少なくするために、手順の一部を自動化する試みが行なわれている。例えば、第1日目の前処理手順が、VP2000(商標)(Vysis,Abbott Molecular)という器具によって自動化されており、そのような器具においては、ロボットがスライドを1つのジャーから別のジャーへと移動させる。
【0005】
しかしながら、これまでの問題は、第1日目の前処理段階と第2日目の洗浄工程との組み合わせを、両者間の変性およびハイブリダイゼーション工程の厳格な物理的要件および環境の要件によって行うことにある。これらの工程においては、一貫したFISH結果を得るために、少量の処理用流体を使用し、処理対象の組織切片を囲む処理チャンバの湿度の正確な制御を設け、制御された加熱および冷却を設けることが好ましい。
【0006】
自動化されたIHCおよびISHの染色器具が、Ventana Medical Systems Inc.(BenchMark(商標)およびDiscovery(商標))ならびにVisionBiosystem(Bond(商標))によって導入されている。これらの器具における欠点は、これらの器具が固定された処理体積を提供するにとどまり、すなわち処理チャンバの容積が固定である点にある。器具の処理チャンバの容積が、少なくとも100マイクロリットルである。
【0007】
BenchMark(商標)という器具は、処理用流体の気化を少なくするために、処理対象の組織切片および塗布される処理用流体を油で覆うことを必要とする。油で覆われない場合、処理用流体の気化によって処理結果が損なわれる。
【0008】
Bond(商標)という器具は、各組織断片および各キャリアを覆って手作業で固定される小さな処理チャンバを有している。各キャリアを覆って処理チャンバを手作業で固定することによって、個々の染色空洞が生成される。
【0009】
Ventana Medical Systems Inc.のPCT国際公開2009/086048A1号パンフレットに、毛管ギャップの相違による液体の塗布および除去が開示されている。このシステムの1つの欠点は、各ステーションに1つのモータを備える比較的複雑な機械的装置が必要であり、各ステーションが一度に1つのスライドしか処理できない点にある。
【0010】
Dako Denmark A/SのPCT国際公開2009/074154A2号パンフレットに、第1の平坦なキャリアの表面に配置された生体サンプルを処理するための装置が開示されている。装置が、前記第1の平坦な表面に実質的に平行かつ前記第1の平坦な表面から第1の距離に配置された第2の平坦な表面であって、前記第1の平坦な表面および前記第2の平坦な表面が、水平面からゼロ度よりも大きい角度に配置される第2の平坦な表面と、前記生体サンプルへと塗布される液体を供給するための供給手段とを備えている。第1の平坦な表面および前記第2の平坦な表面は、お互いから第2の距離に配置されるように構成されており、前記第2の距離は、前記第1の平坦な表面および前記第2の平坦な表面がお互いから前記第2の距離に動かされたときに、前記供給された量の液体が前記生体サンプルを覆って分配されるような距離である。
【0011】
国際公開2009/074154A2号パンフレットに開示のサンプル処理装置は、スライドのラックの自動的な挿入、処理、および取り出しを容易に可能にするようには構成されていない。
【0012】
MAX−Planck Gesellschaft zur Forderung der Wissenschaften e.V.の米国特許第6,623,701B1号明細書が、少なくとも1つの標本の液体処理のための標本チャンバを開示している。チャンバが、ベースプレートおよびキャリアプレートを備えており、ベースプレートおよびキャリアプレートが、フレーム機構のクランプ装置によって一体に保持されるとともに、収容チャンバを形成すべくスペーサ要素によってお互いから離されることで、プレート間のギャップによって標本のための収容空間が形成される。
【0013】
米国特許第6,623,701B1号明細書の標本チャンバにおける欠点は、標本の処理を開始できるようになる前に、各標本チャンバを手作業で組み立てなければならない点にある。手作業によるチャンバの組み立てには、複数の工程ならびに各工程に関する時間および作業が必要であり、チャンバの部品を正しい位置に配置するために、チャンバの組み立てを行う者に或る程度の熟練を必要とする。この多数の工程を伴う手作業による組み立てプロセスは、人的ミスの可能性を増大させる。
【0014】
Celerus Diagnostics Inc.のPCT国際公開2006/116037号パンフレットが、高速な組織化学的処理などの高速なサンプルの処理を達成するように構成できるサンプル処理システムを開示している。この処理システムは、サンプル(生検または他のそのようなサンプルなど)に隣接するマイクロ環境をリフレッシュするために、おそらくは毛管運動の作用によって流体物質の繰り返しの除去および再塗布を生じさせるために、角度のある微視的なスライド運動を使用することが可能であるウェーブ要素を含むことができる。そのようなマイクロ環境のリフレッシュにより、マイクロ環境の枯渇が回避され、スライドの処理に要する時間を短縮することができる。
【0015】
PCT国際公開2006/116037号パンフレットに開示のサンプル処理システムにおける欠点は、スライド上のサンプルの周囲の閉じられた流体環境が、一端においてサンプルを保持しているスライドの一端にヒンジで取り付けられる対向するスライドを使用して達成される点にある。他のシステムと同様に、単一のラックの複数のスライドを、自動的に処理位置へと出し入れすることが不可能である。さらに、このシステムは、吸収性の材料からなる大型カートリッジの形態の吸い取り(wicking)機構を利用しているため、器具の動作コストが高くなっている。
【0016】
さらに、閉じられた流体環境内における流体の混合が、対向するスライドの角度運動の供給によって達成され、すなわち対向するスライドを、ヒンジを中心にして回転させることによって達成される。先行技術の器具における欠点のいくつかは、それらが比較的大量(約150〜200マイクロリットル)の処理用流体を必要とする点、それらが手作業での処理と同様の良好な結果をもたらさない点、処理チャンバを自動的に用意することができない点、および可変の容積を有する処理チャンバを供給することができず、使用される処理用流体の量を変化させることができない点にある。さらに、先行技術の器具の多くは、比較的複雑であり、多数の可動部品を必要とする。さらに、先行技術の器具は、毛管ギャップを形成するためにカバーまたはリッドの手作業による組み付けまたは取り付けを必要とすることが多く、あるいは培養の際に処理用の試薬のプールに気化防止用の液体を塗布する必要があり、結果として塗布すべき試薬の量が多くなることが典型的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、先行技術のシステムにおけるこれらの問題および欠点ならびに他の問題および欠点を解決することにある。例えば、本発明の一の目的は、一度に1つのスライドしか処理することができない複雑な機構を有するという欠点を克服することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、毛管チャンバを真空にするために真空を必要とする水平キャリアシステムの欠点を克服することにある。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、処理用流体の量が定まっているという問題、および自動化されたプロトコルにおいて、同じ種類の手作業によるプロトコルに必要とされる流体の量と比べて、比較的大量の処理用流体が必要とされるという問題を克服することにある。
【0020】
本発明の別の目的は、各単一のスライド上での流体の混合のために別々の複雑な機構が必要であるという問題を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、分子病理学に関し、すなわち疾病を引き起こし、あるいは他のかたちで疾病に関係するDNA、mRNA、およびたんぱく質の分子レベルでの検査に関する。本発明は、例えば組織学的および細胞学的検査のための生体サンプルの処理に関する。とりわけ、本発明は、少量の処理用流体を使用した生体サンプル、例えば、薄い組織切片の処理に関する。
【0022】
特には、本発明は、キャリアに配置された少なくとも1つの生体サンプル、例えば、組織切片の処理(例えば、処置および/または染色)、ならびに処理中の湿度および温度の制御に関する。
【0023】
本発明を、細胞学および組織学、分子生物学、生化学、免疫学、細菌学、および細胞生物学の分野において使用できることを理解すべきである。特には、本発明は、免疫組織化学(IHC)、in−situハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光in−situハイブリダイゼーション(FISH)、発色in−situハイブリダイゼーション(CISH)、特別染色(SS)、銀in−situハイブリダイゼーション(SISH)、マイクロアレイ(組織、たんぱく質、RNA、DNA、PNA、LNAなど)、ならびに他の化学および/または生物学の用途における生体サンプルの処理のための分子細胞遺伝学および免疫組織化学の用途に関する。
【0024】
例えば免疫学の用途においては、特にはin−situハイブリダイゼーション(ISH)法に関して、脱パラフィン処理、標的の回復、および染色などの工程を含む処理手順またはプロトコルが必要とされることがある。
【0025】
染色の作業は、困難である可能性があり、多数の異なる種類の液体(例えば、試薬)を使用する可能性がある。染色手順は、以下の工程を含む可能性があり、すなわち脱パラフィン処理と、洗浄と、抗原の回復と、内因性ビオチンまたは酵素の阻害と、免疫学的試薬、分子プローブ、二次視覚化試薬、および種々のクロモゲン試薬による培養と、洗浄工程と、対比染色とを含む可能性がある。
【0026】
本発明は、スライド上に配置された少なくとも1つの生体サンプルを処理するための自動染色装置に関する。この自動染色装置の実施形態は、
1つ以上のスライドを保持するスライドラックを、着脱可能に保持するスライドラックホルダと、
1つ以上の毛管リッドを保持する毛管リッドラックを、着脱可能に保持する毛管リッドラックホルダであり、毛管リッドラックの取り外しとは無関係にスライドラックの取り外しを行うことが可能である毛管式染色モジュールを含む少なくとも1つの毛管式染色モジュールと、
第1の流体を備える第1の流体容器と
を備え、
1つ以上のスライドを挿入位置から1つ以上の傾斜位置へと回転させるようにスライドラックホルダを自動的に制御し、毛管チャンバとして機能する毛管ギャップを各スライドと各毛管リッドとの間に自動的に形成すべく、1つ以上の毛管リッドを1つ以上のスライドに向かって移動させるように毛管リッドラックホルダを自動的に制御して、傾斜位置にあるスライドへと流体容器から第1の流体を自動的に供給する
自動染色装置である。
【0027】
本発明はまた、スライド上に配置された少なくとも1つの生体サンプルを処理するための自動化の方法に関する。この方法の実施形態は、
1つ以上のスライドを保持するスライドラックを着脱可能に保持するスライドラックホルダと、
1つ以上の毛管リッドを保持する毛管リッドラックを着脱可能に保持する毛管リッドラックホルダと
を備えた少なくとも1つの毛管染色モジュールであって、スライドラックが毛管リッドラックの取り外しとは無関係に取り外せる毛管式染色モジュールを用意するステップと、
第1の流体を含んでいる第1の流体容器を用意するステップと、
挿入位置から1つ以上の傾斜位置へと1つ以上のスライドを回転させるように、スライドラックホルダを自動的に制御するステップと、
毛管チャンバとして機能する毛管ギャップが各スライドと各毛管リッドとの間に自動的に形成されるように、1つ以上の毛管リッドが1つ以上のスライドに向かって移動するように、毛管リッドラックホルダを自動的に制御するステップと、
前記傾斜位置にあるときに流体容器からスライドへと第1の流体の量を自動的に供給するステップと
を含む方法である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態が、従属請求項に定められる。
【0029】
本発明の目的、利点、および効果、ならびに特徴が、本発明の実施形態についての以下の詳細な説明を添付の図面とともに検討することによって、さらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】IHC自動毛管式染色モジュールおよびISH自動毛管式染色モジュールを備える自動染色装置の実施形態の射投影法による概略図である。
【図1B】スライド上に配置された生体サンプルを概略的に示している。
【図1C】自動毛管式染色モジュールを備える自動染色装置の実施形態の上部および中央部の斜視図である。
【図2A】自動毛管式染色モジュールの実施形態の分解斜視図であり、処理容器、毛管リッドラック、処理容器の蓋、およびスライドラックが示されている。
【図2B】自動毛管式染色モジュールの実施形態の分解斜視図であり、処理容器、毛管リッドラック、処理容器の蓋、およびスライドラックが示されている。
【図3A】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、垂直なスライドラックの挿入とその後の回転を示している。
【図3B】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、回転を伴わないスライドラックの斜め挿入を示している。
【図4】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、傾斜位置にあるスライドへの最初の流体の供給を示している。
【図5】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、毛管リッドラックの回転を示している。
【図6】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、流体で満たされた毛管ギャップが毛管リッドとスライドとの間に得られている。
【図7】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、流体で満たされた毛管ギャップへと試薬の量が供給されている。
【図8】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、毛管リッドが往復運動を実行している。
【図9】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、流体の供給の際に毛管リッドとスライドとの間の毛管ギャップが解消されている。
【図10】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、毛管リッドが洗浄用スライドによって清掃されている。
【図11】毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、試薬のディスペンスが行なわれている。
【図12】凝縮防止手段を備える毛管式染色モジュールの実施形態の断面図を概略的に示しており、試薬のディスペンスが行なわれている。
【図13】10個の毛管リッドを備える毛管リッドラックの実施形態を概略的に示している。
【図14A】スライドと滴下端を持たない毛管リッドとの間の毛管ギャップにおける流体の流れを概略的に示している。
【図14B】スライドと滴下端を有する毛管リッドとの間の毛管ギャップにおける流体の流れを概略的に示している。
【図14C】スライドと滴下端および液滴キャッチャを有する毛管リッドとの間の毛管ギャップにおける流体の流れを概略的に示している。
【図15A】スペーサと、中央の凹所と、滴下端と、面取りされた上端とを備える毛管リッドの実施形態を概略的に示している。
【図15B】スペーサと、中央の凹所と、滴下端と、液滴流しを有する面取りされた上端とを備える毛管リッドの実施形態を概略的に示している。
【図16A】インライン式の流体加熱器と接続された気泡トラップの実施形態の分解斜視図を示している。
【図16B】気泡トラップの実施形態ならびに気泡トラップにおける流体および気泡の流れを概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明が、種々の変更ならびに代替の方法、装置、およびシステムを包含する一方で、本発明のいくつかの実施形態が、図面に示され、以下で詳しく説明される。しかしながら、具体的な説明および図面が、本発明を開示される特定の形態に限定しようとするものではないことを理解されたい。むしろ、請求項に記載される本発明の範囲には、添付の特許請求の範囲に記載されるとおりの本発明の思想および範囲に包含されるすべての変更および代替の構成が、添付の特許請求の範囲の均等物の全範囲まで含まれることが意図される。図面において、同じまたは同様の特徴には、同じ参照番号が使用されている。
【0032】
本発明の一実施形態においては、図1Aに概略的に示されるとおり、自動サンプル処理装置1(本明細書において、自動染色装置1とも称される)が、サンプルホルダ10(図1Bを参照)に配置された少なくとも1つの生体サンプル3(生体組織サンプルなど)を処理するための少なくとも1つの毛管式処理モジュール100(本明細書において、毛管式染色モジュール100とも称される)を備えている。
【0033】
生体サンプルは、おそらくはさまざまな何らかの保存の形態でサンプルホルダ上に存在することができる。一例として、皮膚、腫瘍、または他の組織の層もしくはスライスなどのサンプルを、ホルムアルデヒドに保存し、1つ以上のパラフィンまたは他の化学層をサンプル上に載せた状態で、サンプルホルダ上に存在させることができる。パラフィンで保護されたサンプルは、サンプル上に位置し、さらには/またはサンプルに浸透したパラフィン層を除去するための脱パラフィン処理を必要とする可能性がある。さらに、標的またはサンプルが、染色作業に適した状態への回復−標的の回復として知られる処理を必要とする可能性がある。
【0034】
本明細書において使用されるとき、自動化は、実質的に機械的な手段、コンピュータ手段、および/または電子的な手段によって実行される複数の工程と定義される。記載される特徴または工程のうちの1つを手作業で置き換えるなど、何らかの人的介入の工程を排除するものではない。
【0035】
本明細書においてはスライドと称されるが、スライドがサンプルホルダを指しており、スライドがサンプルを支持する任意の媒体であることを理解すべきである。したがって、サンプルホルダとして、キャリア、試験管、チップ、アレイ、ディスク、またはスライドなど、少なくとも1つのサンプルを支持することができる任意の支持体が挙げられる。
【0036】
本明細書において、スライドラックも言及される。しかしながら、スライドラックを、一群のスライドを支持するラックなど、一群の支持体のための任意の適切なホルダを含むと理解すべきである。さらに、スライドラックが、各々が複数のスライドを収容する複数のスライドラックなどの少なくとも1つのより小さな支持体を保持するスライドラックなど、より大規模な支持体を指すこともある。ホルダは、着脱可能な保持、堅固な保持、ならびに/あるいは垂直方向、水平方向、または1つ以上の軸を中心とする枢動などの運動を可能にするような方法での保持を行うことができる。
【0037】
図1Aに概略的に示されるとおり、自動染色装置1は、第1の毛管式染色モジュール100と、第2の毛管式染色モジュール100’と、第3の毛管式染色モジュール100’’とを備えているが、毛管式染色モジュールの数がさまざまであってよいことを理解すべきである。
【0038】
いくつかの実施形態においては、第1、第2、および第3の毛管式染色モジュール100、100’、および100’’のそれぞれを、例えば免疫組織化学(IHC)およびin−situハイブリダイゼーション(ISH)の用途に合わせて構成することができる。
【0039】
図1Aに概略的に示されているように、染色装置1は、3つのレベルを備えることができ、すなわち、例えばバルクの流体容器、廃棄物、弁、およびポンプを含んでいる下方の第1のレベルIと、例えばいくつかの処理ユニット、スライド保管ステーション、ロボット、および試薬瓶を含んでいる真ん中の第2のレベルIIと、例えばカバースリッパおよび制御ユニットならびに通信インターフェイスを含んでいる上方の第3のレベルIIIとを備えることができる。制御ユニット15などの特定の構成要素は、表示装置を眼の高さで眺めることをおおむね可能にするためにレベルIIIに配置することが可能であり、あるいはレベルIIのモジュールに手作業でアクセスするときに邪魔にならないようにレベルIに配置することが可能である。
【0040】
図示のとおり、自動染色装置1は、1つ以上の前処理モジュール2などの1つ以上の処理ユニット(浸漬タンクと称されることもある)と、スライド保管ユニット6と、1つ以上の毛管式染色モジュール100、100’、100’’など、1つ以上の処理ユニットとを備えることができる。
【0041】
いくつかの実施形態においては、前処理モジュール2を、脱パラフィン(すなわち、パラフィンに埋め込まれた生体サンプルからのパラフィンの除去)に合わせて構成することができる。前処理モジュール2を、標的の回復(例えば、抗原の回復またはin−situハイブリダイゼーション)に合わせて構成し、すなわちサンプルの標的/抗原の染色作業に適した状態への回復に合わせて構成してもよい。
【0042】
自動染色装置1は、サンプルを有するスライドラックを処理のために装置へと挿入するためのサンプル装填ステーション17を備えることができる。自動染色装置1は、in−situハイブリダイゼーションプロトコルのためのリッドなど、付属品を挿入するための付属品装填ステーション21をさらに含むことができる。
【0043】
1つ以上のスライド保管ユニット6が、複数のスライド10を横並びで搭載して保持するように構成されている1つ以上のスライドラック20に配置された1つ以上のスライド10を保管するように構成されている。スライド保管ユニット6は、スライドを水平、垂直、または別の適切な姿勢で保管するように構成されている。
【0044】
自動染色装置1は、当業者にとって既知の洗浄液、緩衝液、脱パラフィン溶液、標的回復溶液または精製水などの水溶液、抗体の溶液、ヘマトキシリン、エオシンなどのバルクの染色液、DAB除去液などの清浄液など、バルクの流体8aのいくつかの容器8をさらに備えることができる。
【0045】
自動染色装置1は、バルクの流体容器8を1つ以上の処理ユニット2、100、100’、100’’へと接続する配管9と、バルクの流体容器8から1つ以上の処理ユニット2、100、100’、100’’へのバルクの流体8aの流れを制御するための弁7と、バルクの流体容器8から1つ以上の処理ユニット2、100、100’、100’’へとバルクの流体の流れをもたらすように構成された1つ以上のポンプ5とをさらに備えることができる。
【0046】
さらに、自動染色装置1は、1つ以上の処理ユニット2、100、100’、100’’から配管(図示せず)によって除去された廃液を保管するように構成された廃棄物容器11を備えることができる。
【0047】
図1Aに概略的に示されているとおり、自動染色装置1は、1つ以上のスライド10または1つ以上のスライドラック20を矢印XおよびYによって示されるようにXおよびY(ならびにZ)方向に運ぶように構成されたスライドロボット12をさらに備える。スライドロボット12により、スライド/スライドラックを、スライド上に配置された生体サンプルを所望のとおりに処理することが可能であるよう、染色装置100の種々の処理ユニット2、100、100’、100’’と保管ステーション6との間で搬送することができる。
【0048】
図1Aに、どのようにしてスライドロボット12がスライド保管ステーション6からスライド10またはスライドラック20をY方向に沿って持ち上げるのかが、概略的に示されている。さらに、矢印によって示されているとおり、スライドロボット12は、例えば第1の毛管式染色モジュール100、100’、100’’へとX方向に沿って左方に移動することが可能である。
【0049】
スライドロボット12は、スライド10上のサンプル3を処理するために、サンプルドロア17からスライドラック20を取り込み、スライドラック20およびスライド10を低温プレート15、高温プレート4、培養ステーション22、前処理モジュール2、染色モジュール100、100’、100’’、または湿式/乾式荷下ろしモジュール6などといったステーションのいずれかへと運ぶことができる。
【0050】
スライドロボット12が毛管式染色モジュールのスライドラック位置の上方の位置に配置されたとき、スライドロボット12を、図1AのY方向に沿った下向きの矢印によって示されるとおり、スライドまたはスライドラックを毛管式染色モジュールの内部の正しい位置へと挿入するために、スライドまたはスライドラックを毛管式染色モジュールへとY方向に沿って下降させるように構成することが可能である。
【0051】
さらに、スライドロボット12を、スライドラック20を水平、垂直、または水平と垂直との間の角度に位置させるように構成することができる。例えば、スライドロボット12は、スライドラック20を低温プレート15または高温プレート4あるいは装填ステーション17において水平な向きにて把持または解放することができる。さらなる実施例として、スライドロボット12は、スライドラック20を前処理モジュール2または荷下ろしステーション6において垂直な向きにて把持または解放することができる。さらに別の実施例では、スライドロボット12が、スライドラック20を染色モジュール100、100’、および100’’などにおいて水平と垂直との間の斜めの向きにて把持または解放することができる。
【0052】
さらに、自動染色装置1は、プローブ16を矢印XおよびYによって示されるようにXおよびY(ならびにZ)方向に移動させるための流体ロボット14を備えている。流体ロボット14は、プローブ16を、1つ以上の流体容器18、混合ステーション17、毛管式染色モジュール100、100’、100’’、低温プレート15、および高温プレート4の上方に配置することができる。
【0053】
さらに、流体ロボット14は、スライド上のサンプルについて所定の染色または処理をもたらすために、試薬容器18のいずれかに含まれる試薬18aの一部を吸引し、吸引した試薬18aの一部を運んで、毛管式染色モジュール100、100’、100’’のうちの1つ以上に配置された1つ以上のスライド10へと塗布するように、プローブ16を動作させることができる。図1Aに概略的に示されているとおり、1つ以上の流体容器18を、流体容器ラック19に配置することが可能である。
【0054】
このように、流体ロボット14は、プローブ16を自動染色装置1内の種々の位置の間で移動させるように構成される。流体ロボット14を、例えばプローブ16を、例えば試薬容器18における吸引位置へと移動させ、プローブ16に試薬容器18から試薬18aの量を吸引させるように構成することができる。さらに、X方向に沿った左向きの矢印およびY方向に沿った下向きの矢印によって概略的に示されるとおり、流体ロボット14によってプローブ16を例えば毛管式染色モジュール100、100’、100’’に配置されたスライド10におけるディスペンス位置へと移動させ、このディスペンス位置において、スライド上のサンプルについて所定の染色または処理をもたらすために、吸引した試薬18aの容積をスライド10へとディスペンスすることが可能である。
【0055】
図7、図11、および図12に概略的に示されているとおり、ディスペンス位置を、処理容器の蓋160にそれぞれ配置された第1のプローブ導入口161および/または第2のプローブ導入口163によって定めることができる。
【0056】
しかしながら、第1および第2のプローブ導入口161、163の数がさまざまであってよく、いくつかの実施形態においては、第1および第2のプローブ導入口161、163の数が毛管式染色モジュールにおいて処理することが可能であるスライドの数に等しいことを理解すべきである。したがって、いくつかの実施形態においては、処理容器の蓋160において、第1および第2のプローブ導入口161、163が、流体を各スライドへと個別に供給するために、毛管式染色モジュールにおいて処理することが可能である各スライドに合わせて配置される。
【0057】
さらに、本明細書に記載のとおりに自動的に生成される毛管チャンバを、ロボットピペット、プローブ、管、直接ディスペンス瓶、マニホルドなどを備える流体ディスペンス機構との組み合わせにおいて使用することができる。
【0058】
別の第2の流体を吸引する可能性がある場合、プローブ16による新たな流体の吸引に先立ち、プローブ16を清掃するために、プローブ16を洗浄用流体容器18’へと移動させ、洗浄用の流体を吸引させることができる。
【0059】
図1Aに概略的に示されているとおり、1つ以上の試薬容器18、18’を、試薬容器ラック19に配置することが可能である。複数の試薬容器ラックを、連続的な作業の流れに対応し、すなわちスライドの処理の進行中に試薬の追加または除去を行うことができるように、個別に挿入および/または取り出し可能であるように構成することができる。
【0060】
さらに、自動染色装置1は、スライド10上に配置された処理済みの生体サンプルにカバーガラス(図示せず)を配置するように構成されたカバースリッパ13をさらに備えることができる。
【0061】
図1Aに概略的に示されるとおり、自動染色装置1はまた、処理制御と入力/出力インターフェイスとを備える制御ユニット15を備えることができる。適切な入力は、キーボードであってよく、適切な出力は、モニタであってよく、または制御ユニット15が、タッチスクリーンディスプレイを備えてもよい。
【0062】
図1Cが、自動染色装置1の正投影図を示している。図1Aと同様に、図1Cの実施形態においては、スライドラック20内のスライド10上のサンプルの移動が、大まかには、装填ステーション17から種々の処理ステーションを通り、最終的に荷下ろしステーションとして機能する保管ユニット6までである。
【0063】
IHCスライドについては、サンプルの処理の作業の流れが、焼成が望まれる場合にスライドラック20内のスライド10がロボットアーム12によって高温プレート4へと移動されることである。スライドロボット12が、脱蝋および随意による標的の回復のために、スライドラック20を移動させ、前処理モジュール2へと垂直に挿入する。
【0064】
処理後に、スライドラック20が染色モジュール100、100’、100’’のうちの1つへと移動させられ、そこで流体ロボット14によって所望のIHCプロトコルに従って試薬18aが塗布される。
【0065】
染色後に、スライドロボット12がスライドラック20をスライド保管ユニット6へと移動させる。スライド保管ユニット6は、乾式であっても、スライドを湿潤状態に保つために流体を含んでもよい。ユーザが、スライドラック20を取り出すためにスライド保管ユニット6にアクセスすることができる。
【0066】
図2A、図2B、図3A、および図3Bに概略的に示されるとおり、1つ以上のスライド10を保持するように構成されたスライドラック20を、毛管式染色モジュール100、100’、100’’に出し入れすることが可能である。図2に示した実施形態においては、スライドラック20が複数のスライド10、例えば10枚のスライド10を保持するように構成されるが、スライドラック20を、他の適切な数のスライドを保持するように構成できることを理解すべきである。
【0067】
さらに、いくつかの毛管リッド30を保持するように構成された毛管リッドラック40を、毛管式染色モジュール100、100’、100’’に出し入れすることが可能である。図2に示した実施形態においては、毛管リッドラック40が複数の毛管リッド30(例えば、10枚の毛管リッド30)を保持するように構成されるが、毛管リッドラック40を、別の適切な数の毛管リッドを保持するように構成できることを理解すべきである。
【0068】
毛管式染色モジュール100、100’、100’’は、処理容器150および処理容器の蓋160を備える。図3Aおよび図3Bに示されるとおり、容器の蓋160は、処理容器150に備えられた容器蓋ヒンジ162に枢支されることで、処理容器150を開閉すべく容器蓋ヒンジ162を中心にして回転可能である。処理容器150が開かれているとき、毛管リッド30を有する毛管リッドラック40を、処理容器150へと出し入れすることが可能である。
【0069】
さらに、図3Aは、毛管式染色モジュール100、100’、100’’の実施形態の断面図を概略的に示しており、スライドラックの挿入および回転を示している。
【0070】
図示のとおり、1つ以上のスライド10を含む1つ以上のスライドラック20が、毛管式染色モジュールの上方の位置から毛管式染色モジュールにおける位置へと、下向きの矢印によって示されるように垂直方向に沿って毛管式染色モジュール100、100’、100’’へと挿入される。
【0071】
図3Aの点線により、スライドラック20およびスライド10が、毛管式染色モジュールの上方の位置、および毛管式染色モジュールの内部の第1の位置に示されている。この第1の位置において、スライドは、挿入方向、例えば、垂直方向に沿って配置されている。
【0072】
さらに図示されているとおり、毛管式染色モジュール100は、毛管式染色モジュール100、100’、100’’へと挿入されたときにスライドラック20を保持するように構成されたスライドラックホルダ102を備えている。さらに、スライドラックホルダ102は、スライドラックホルダヒンジ104に配置され、このヒンジ104を中心にして回転するように構成されている。
【0073】
いくつかの実施形態においては、スライドラックホルダ102が、挿入位置、例えば、垂直位置にあるスライドラック20を毛管式染色モジュール100、100’へと出し入れすることができる開放位置と、図3Aに概略的に示されているようにスライドラック20を毛管式染色モジュール100、100’、100’’への出し入れが不可能である傾斜位置に位置させる閉鎖位置との間を、回転するように構成される。
【0074】
毛管式染色モジュール100、100’、100’’はまた、生体サンプルの処理の際に毛管式染色モジュール100、100’、100’’の内部に既定または所定の湿度をもたらすために、処理容器150の下部に配置され、流体を保持する湿度溝152を備えることができる。
【0075】
すでに述べたように、スライドロボット12(図1Aを参照)が、自動染色装置1内においてスライドラック20を移動させ、スライドラック20を毛管式染色モジュール100、100’、100’’へと挿入するように構成される。さらに、スライドラック20が毛管式染色モジュール100、100’、100’’に配置されたとき、自動染色装置1の電子機器が、自動的にスライドラック20および1つ以上のスライド10を、スライドラックホルダヒンジ104を中心にして回転させる。
【0076】
いくつかの実施形態においては、スライドラック20が、挿入位置、例えば、垂直位置から1つ以上の傾斜位置へと回転するように構成され、例えば挿入位置Aから第1の傾斜位置Bへと回転し、第1の傾斜位置Bから第2の傾斜位置Cへと回転する。
【0077】
さらに、図3Aは、毛管リッドラック40を保持する毛管リッドラックホルダ106を概略的に示している。毛管リッドラックホルダ106は、毛管リッドラック40を取り外し可能に保持するように構成されている。毛管リッドラックホルダ106は、毛管リッドラックホルダヒンジ108に配置され、このヒンジ108を中心にして回転可能である。さらに、毛管リッドラックホルダ106は、リッドラック40に取り外し可能に係合するリッドラックバー109を備えることができる。
【0078】
いくつかの実施形態においては、毛管リッドラック40が、毛管リッド30を保持するように構成された上側リッドバー42および中央リッドバー44を備える。さらに、毛管リッドラック40は、毛管リッドラックホルダ106のスロット110に着脱可能に係合する下側バー46を備えることができる。
【0079】
図3Aに概略的に示されているとおり、毛管リッド30は、上側リッドバー42および中央リッドバー44に面する表面と、毛管リッド30を毛管リッドラック40に着脱可能に配置することができる固定具32、34とを備えている。好ましくは、固定具32、34が、上側リッドバー42と上側リッドバー42に面する毛管リッドの表面との間の距離d1および中央リッドバー44と中央リッドバー44に面する毛管リッドの表面との間の距離d2を変化させることができるよう、毛管リッド30の毛管リッドラック40への柔軟な取り付けをもたらす。
【0080】
いくつかの実施形態においては、リッド30の上側の固定具32および下側の固定具34が、それぞれ毛管リッドラック40の上側リッドバー42および中央リッドバー44に着脱可能に係合するフックとして実現される。
【0081】
図3Aに概略的に示されるとおり、いくつかの実施形態においては、リッド30の上側の固定具32が1対のフックを備え、リッド30の下側の固定具34が単一のフックを備える。しかしながら、他の実施形態においては、上側の固定具32が単一のフックを備え、下側の固定具34が1対のフックを備えてもよく、あるいは上側および下側の固定具32、34が、同じ数のフックを備えてもよい。摺動ブラケット、柱、およびハンガなどの任意の種類の固定具を使用することができる。上側リッドバー42および中央リッドバー44に堅固かつ固定に取り付けられることがない固定具は、柔らかにかつ一様にスライドに重なる点で有益である。
【0082】
図3Bに概略的に示されるとおり、図示の実施形態は、図3Aの実施形態と実質的に同じ方法で機能するが、図3Bの実施形態においてはスライドラック20が回転するのではなく、むしろスライドロボット12によって水平面HPに対する或る角度θで挿入される点が除外される。
【0083】
角度θは、水平面HPに対して約15〜90度の範囲にあってよい。スライドラックを角度θに向けることによって、毛管チャンバの流体について、流体に作用する重力と毛管力との間の関係を調節することによって、所望のフロー・スルー・タイミングを実現することができる。
【0084】
例えば図3A〜図6に概略的に示されているとおり、毛管リッド30は、毛管リッドラック40に面する毛管リッド30の表面と上側および中央毛管リッドバー42、44との間の距離d1、d2が、最大距離(図3Aを参照)と最小距離(図6を参照)との間を変化することが可能であるように、毛管リッドラック40に配置される。
【0085】
しかしながら、距離d1、d2が必ずしも同じである必要はなく、同時に変化する必要もなく、同じ速度で変化する必要もないことを理解すべきである。したがって、距離d1が距離d2と相違してもよく、例えば距離d1が最大値を有する一方で、距離d2が最長値を有してもよく、その逆も然りである。
【0086】
いくつかの実施形態においては、スライドが傾斜位置にあるとき、例えば、スライド10が図4、図5、図6、図7、図9、および図11の傾斜位置にあるとき、流体8a、18aが、スライド10へと供給される。
【0087】
図4が、毛管式染色モジュール100、100’、100’’の実施形態の断面図を概略的に示しており、流体8aがノズル9cによって傾斜位置にあるスライドへと供給されている。
【0088】
いくつかの実施形態においては、ノズル9cが、流体8aをスライド10へと落下させるのではなく、スライド10へと流すよう、滴下のないノズルをもたらす面取りされた遠位端9c’(例えば、図3Aを参照)を備える。
【0089】
配管9、9a、および9bによって概略的に示されるとおり、流体8aは、流体容器8(図4には示されていないが、図1Aを参照)から予熱器120へと供給され、予熱器120が、予熱器120を通過する流体を、配管9bの遠位部に配置されたノズル9cによってスライドへと供給される前に所定の温度へと加熱する。
【0090】
毛管式染色モジュールのいくつかの実施形態が、毛管式染色モジュールに配置されたスライドの各々へと個々に流体を供給するために、毛管式染色モジュールにおいて処理されることができる各スライドについて複数の配管9bおよびノズル9cを備え、好ましくは1つの配管9bおよび1つのノズル9cを備えることを理解すべきである。
【0091】
また、いくつかの実施形態が、存在しうる予熱器および存在しうる気泡トラップを通過させずに流体を流体容器からスライドへと直接供給できるよう、存在しうる予熱器および存在しうる気泡トラップをバイパスする1つ以上の配管を備えてもよいことを理解すべきである。
【0092】
したがって、いくつかの実施形態においては、自動染色装置1が、毛管式染色モジュールに配置されたスライドへの流体の供給を個別に制御する。例えば、流体を、所定の時間期間にわたる連続的な流体の流れとしてスライドへと供給することができる。
【0093】
予熱器120を、インラインの抵抗、誘導、またはマイクロ波加熱器を含む任意の種類の加熱器として実現することが可能である。そのような予熱器により、流体を所望の温度へと加熱するためにサンプルキャリアの下方に配置される加熱器が不要である。
【0094】
あるいは、予熱器120を、気泡トラップ130へと一体化させることができ、図16Aおよび図16Bに関して図示および後述されるように複数の気泡トラップ130へと一体化させることさえ可能である。
【0095】
例えば、免疫組織化学における染色などのいくつかの用途においては、流体の所定の温度を、スライドが比較的低温のすすぎの緩衝液によって冷やされることがないよう、摂氏約30度に設定することができる。すすぎの際にもスライドの温度を比較的一定に保つことによって、免疫培養の反応速度を比較的一貫的にし、したがって、より一貫した染色結果をもたらすことが可能である。しかしながら、摂氏37度または摂氏50度において生じうるin−situハイブリダイゼーションなどの他の用途においては、所定の温度が別の温度であってよく、用途に使用される種々の流体ごとに異なってもよいことを理解すべきである。
【0096】
毛管式染色モジュール100、100’、100’’のいくつかの実施形態はまた、気泡トラップ130を備えることができる(図3A〜12を参照)。気泡トラップ130を、配管9aによって予熱器120に接続することが可能であり、あるいは予熱器120に含まれてもよい。気泡トラップ130を、予熱された流体が配管9bおよびノズル9cによって1つ以上のスライド10へと供給される前に、予熱された流体から気泡を取り除くように構成することができる。
【0097】
図3〜図12に概略的に示されるとおり、気泡トラップ130は、いくつかの実施形態においては、加熱済みの流体が供給される上側区画132と、存在しうる気泡が除去された加熱済みの流体が気泡トラップ130から出て行く下側区画134とを備えることができる。存在しうるバブル(気泡など)は、上側区画132へと移動し、上側区画132から気体出口(図示せず)によって気泡を取り除くことができる。気泡トラップ130の実施形態のより詳しい図および説明は、図16Aおよび16Bに関する箇所で後述される。
【0098】
例えば、図4および図5に概略的に示されるとおり、第1の流体8aの量がスライド10へと供給されたとき、自動染色装置1は、毛管リッド30の第1の端部36(下端と称されることもある)を対応するスライド10に向かって、毛管リッド30の第1の端部36の突出部33(図15Aおよび図15Bを参照)がスライド10に当接する位置(図5を参照)へと移動させるように、毛管リッドラックホルダ106を制御して毛管リッドラック40を移動させるように構成される。
【0099】
さらに、毛管リッド30の第1の端部36の突出部33がスライド10に当接するとき、自動染色装置1は、毛管リッド30の第2の端部38(上端と称されることがある)を対応するスライド10に向かって毛管リッド30の第2の端部38の突出部33(図15Aおよび図15Bを参照)がスライドに当接する位置(図6を参照)へと移動させるように、毛管リッドラックホルダ106を制御して毛管リッドラック40を移動させる。
【0100】
毛管リッド30の第1および第2の端部36、38の移動により、毛管リッド30の中央の凹所35とスライド10の中央部との間に毛管ギャップ31が形成される(図6、図14B、および図15を参照)。この毛管ギャップが、毛管チャンバまたはハイブリダイゼーションチャンバとして機能することができる。毛管ギャップ31は、10〜300マイクロメートルの範囲であってよい。いくつかの実施形態においては、ギャップが、好ましくは約140マイクロメートルである。種々の実施形態を、所望のフロー・スルー・レート(すなわち、スライド10の上端付近にディスペンスされた流体8aがスライド10の下端からの同量の流体8aの流出を生じさせる速度)をもたらす。ギャップの寸法を、流体の粘度の高低ならびに水平面に対するスライド10の傾斜または角度に対応して調節することができる。
【0101】
いくつかの実施形態においては、毛管ギャップを形成するリッドが、スライド上にディスペンスされた流体上に浮いていることで、スライドの整列の問題を回避することができる。
【0102】
例えばISH毛管式染色モジュールの実施形態においては、自動染色装置1が、スライドラック20および1つ以上のスライド10を挿入位置A(例えば、垂直位置)から第1の傾斜位置B(この位置において、例えば試薬などの流体が第1のプローブ導入口161に配置されたプローブ16によってスライドまたは生体サンプルへとディスペンスされる)へと自動的に回転させるべく、スライドラックホルダ102を制御する。さらに、自動染色装置1は、スライドラック20および1つ以上のスライド10を第1の傾斜位置Bから第2の傾斜位置Cへと自動的に回転させるべく、スライドラックホルダ102を制御する。さらに、スライド10が第2の傾斜位置Cにあるとき、自動染色装置1は、毛管リッド30の第1の端部36が、該当のスライド10に向かってスライド10に当接する位置へと移動するように毛管リッドラック40および毛管リッド30を自動的に移動させるとともに、毛管リッド30の第2の端部38を該当のスライド10に向かってスライド10に当接する位置へと自動的に移動させることで、毛管リッド30がスライド10に平行に配置され、毛管リッド30の中央の凹所35とスライド10の中央部との間に毛管ギャップ31が形成されるように、毛管リッドラックホルダ106を制御するように構成される。毛管ギャップ31は、生体サンプルへと供給された試薬を含み、毛管ギャップ31のおかげで、生体サンプルを少量の試薬(例えば、10〜100マイクロリットルの範囲の量)で処理することが可能である。例えば、所望に応じて、いくつかの実施形態においては10マイクロリットル〜20マイクロリットル、他の実施形態においては20マイクロリットル〜50マイクロリットル、さらに他の実施形態においては50マイクロリットル〜100マイクロリットルを使用してスライドを処理するために、毛管ギャップを利用することが望ましいことがある。図11が、スライド10が位置B、例えば、水平面から約45度よりも大きい角度に配置されているときのプローブ16からスライド10への試薬のディスペンスを概略的に示している。しかしながら、スライドを他の所望の角度に配置してもよい。スライドを水平面に対して所望の角度に配置することによって、プローブ16を第1のプローブ導入口161によってスライドの所望の位置の上方に配置させることが可能であり、所望の量の試薬をスライド10の所望の位置においてディスペンスすることが可能であり、例えばサンプルがプローブ16の直下に配置されている場合には、スライド10上に配置された生体サンプルへと直接ディスペンスすることが可能である。さらに、スライドを複数の異なる角度に配置することによって、プローブ16がスライドまたはサンプル上の複数の位置へと試薬をディスペンスすることが可能である。
【0103】
しかしながら、図12に概略的に示されているように、例えばISH毛管式染色モジュールの他の実施形態において、スライドが図12に示されるように水平面に対してより小さい角度に配置される場合にも、処理蓋160において生体サンプルの直上の位置にプローブ16のための第2のプローブ導入口163が設けられるのであれば、試薬を図11に示した位置と同じスライド10の位置へと(例えば、直接に生体サンプルへと)ディスペンスすることが可能であることを理解すべきである。
【0104】
ISH毛管式染色モジュールのさらに他の実施形態においては、スライド10へのプローブのディスペンスなどの特定の工程を、染色モジュールの外部で行うことができ、例えばISH試薬を、ISH毛管式染色モジュールへのスライドの挿入の前または後に、開いた水平なステーションにおいてスライド上へとディスペンスすることができる。
【0105】
例えば、IHC毛管式染色モジュールの実施形態においては、自動染色装置1が、スライドラック20および1つ以上のスライド10を垂直位置Aから第2の傾斜位置C(この位置において、例えば緩衝液などの流体8aがノズル9cによってスライドまたは生体サンプル上へとディスペンスされる位置(図4を参照))へと自動的に回転させるべく、スライドラックホルダ102を制御する。さらに、自動染色装置1は、毛管リッド30の第1の端部36が対応するスライド10に向かってスライド10に当接する位置へと移動するように毛管リッドラック40および毛管リッド30を自動的に移動させ(図5を参照)、また毛管リッド30の第2の端部38を対応するスライド10に向かってスライド10に当接する位置へと自動的に移動させる(図6を参照)ことで、毛管リッド30がスライド10に平行に配置され、毛管リッド30の中央の凹所35とスライド10の中央部との間に供給された流体8aで満たされる毛管ギャップ31が形成されるように、毛管リッドラックホルダ106を制御する。毛管ギャップ31が、毛管チャンバとして機能する。
【0106】
図7に概略的に示されるとおり、例えば試薬18aなどの第2の流体が、流体で満たされた毛管ギャップ31の上方の位置においてスライド10へと供給されることで、第2の流体の量が重力によって毛管ギャップ31へと流入し、毛管ギャップ31の流体が毛管ギャップ31の下部から除去され、第2の流体が毛管ギャップ31へと引き込まれ、毛管ギャップ31内で下方へと流れて、スライド10上に配置された生体サンプル3を覆って、試薬による生体サンプルの処理を生じさせる。
【0107】
いくつかの実施形態においては、第1の傾斜位置Bにあるとき、1つ以上のスライド10が水平面HPに対して約20〜90度の範囲の角度θに配置され、これが、スライド10の開いた表面のほぼ中央に配置された小さな標本(図示せず)へと試薬を直接ディスペンスすることを可能にする。このようにして、プローブを流体で満たされた毛管に分散させるのではなく、むしろ直接ディスペンスすることが望まれる場合に、試薬を、毛管流動を利用することなく直接、例えばISHプローブによってディスペンスすることが可能である。さらに、第2の傾斜位置Cにあるとき、1つ以上のスライド10が、水平面HPに対して約10〜40度の範囲、好ましくは水平面HPに対して約15〜30度の範囲、より好ましくは水平面HPに対して約20度の角度θに配置される(図3を参照)。ISHなどの直接ディスペンスの用途に適した実施形態のさらなる説明が、図11および図12に示され、図11および図12の詳細な説明において後述される。特定の用途、例えば、ISHの用途においては、形成される毛管ギャップが、ハイブリダイゼーションチャンバとして機能する。
【0108】
図8に概略的に示されるとおり、自動染色装置1を、毛管リッドラック40および1つ以上の毛管リッド30を図8の矢印によって示されているように1つ以上のスライド10に平行な方向に自動的に往復移動させることで、毛管ギャップ31における流体または試薬の局所的な枯渇を回避することが可能であり、さらには毛管ギャップ31の流体または試薬を混合することが可能であるように、毛管リッドラックホルダ106を制御するように構成することができる。毛管ギャップ31において流体/試薬の枯渇を回避し、さらには/あるいは流体/試薬を混合することで、毛管ギャップ31において流体/試薬に曝される生体サンプルの処理(例えば、染色)を改善することが可能である。
【0109】
さらに、自動染色装置1を、毛管リッドラック40および1つ以上の毛管リッド30をスライド10の長手軸に沿って移動させるべく毛管リッドラックホルダ106を制御するように構成でき、いくつかの実施形態においては、この移動が約1〜5mmであってよく、約0〜25mm/sの速度を有することができる。移動を、毛管リッド30がそれぞれの端部位置にあるときに休止させることができる。他の実施形態は、軸方向の縦移動の代わりに横移動を含むことができる。円運動も使用可能である。
【0110】
培養工程に続いて、洗浄緩衝液によるすすぎを、実質的に図6に示されるように達成することができることに留意されたい。すなわち、すすぎによって培養工程および対応する反応を停止させることができ、スライドが、例えば第2の抗体、視覚化試薬などの追加の試薬をすぐに受け入れることができる。あるいは、スライドを、洗浄緩衝液によるすすぎの後、毛管力によってすすぎの緩衝液を保持した状態で所望のかぎり「休止」させ、すなわち緩衝液のもとに置いておくことができる。
【0111】
いくつかの実施形態においては、図9に概略的に示されるとおり、染色装置1が、サンプルの処理後に毛管リッド30をスライドから取り除くときに、例えば洗浄用流体などの流体をスライド10へと供給するように構成され、それによって、毛管リッド30の除去時に吸引効果に起因して生体サンプルがリッド30によってスライド10から引き剥がされることがないことを確実にする。
【0112】
図10に概略的に示されるとおり、スライドラック20に配置された1つ以上の洗浄スライド10aを、毛管式染色モジュール100、100’、100’’へと挿入することができる。洗浄スライド10aは、使用時に毛管リッド30が、毛管リッドラックホルダ106によって図10の矢印によって示されているように洗浄スライド10aに平行な方向に往復移動させられるときに、毛管リッド30を清掃する、いくつかのリブまたは毛あるいは洗浄面10bを備えている。
【0113】
いくつかの実施形態においては、DAB除去剤または任意の所望のリッド洗浄液などの洗浄液を、リッドの洗浄を向上させるために洗浄スライド10aと組み合わせることができる。
【0114】
いくつかの実施形態においては、毛管式染色モジュール100、100’、100’’を、処理の最中のモジュールにおける凝縮を防止するようにさらに構成することができる。いくつかの実施形態においては、処理容器の蓋160を、毛管式染色モジュール100、100’、100’’における凝縮を防止することで、毛管式染色モジュール100、100’、100’’内における水滴の形成(サンプルの処理において生体サンプルへとディスペンスされる流体、例えば、試薬を希釈させうる)を防止するように構成することができる。
【0115】
図12に概略的に示されるとおり、処理容器の蓋160において、毛管式染色モジュール100、100’、100’’における凝縮を防止する凝縮防止層164を、スライド10および毛管リッド30に面する蓋160の内面に配置することができる。例えば、凝縮防止層164は、アルミニウムまたは他の熱伝導材料あるいは流体吸収材料を備えることができる。
【0116】
いくつかの実施形態においては、処理容器の蓋160が、例えば処理容器の蓋160の外側上に加熱素子168を備えることができる。加熱素子168を、毛管式染色モジュール内における凝縮を防止するために、処理容器の蓋160に熱を供給できる。
【0117】
図13は、10個の毛管リッド30を備える毛管リッドラック40の実施形態の斜視図を概略的に示している。しかしながら、毛管リッドラックを任意の数の毛管リッドに合わせて構成できることを理解すべきである。
【0118】
いくつかの実施形態においては、図15Aおよび図15Bに概略的に示されるとおり、毛管リッド30が、生体サンプルに面する表面に、中央の表面35と2つの突出している遠位面33(突出部33と称されることもある)とを備える。
【0119】
突出している遠位面33は、中央の表面35に対して末端かつ中央の表面35の両横に配置されている。さらに、突出している遠位面33は、スライド10と接触したときにスペーサを形成し、毛管リッド30の中央の表面35とスライド10との間にすでに述べた毛管ギャップ31(図14Bを参照)を形成する。
【0120】
図14Cの実施形態においては、入口リザーバ39’が、例えばスライドラベルの表面に蓄積しうる液滴の表面を貫くことができるフォーク状に構成され、そのような液滴から流体が増大して急激に放出されることを防止する。入口リザーバにおいて液滴を捕まえる形態の一実施形態が、図15Bに示されている。
【0121】
毛管リッド30を、ガラスで構成することができ、突出している遠位面/スペーサ33を、毛管リッド30の中央の表面35とスライド10との間に正確な間隔をもたらすために、所定の厚さを有する塗料または他の適切な材料の1つ以上の層で構成することができる。
【0122】
しかしながら、毛管リッド30をポリカーボネートなどのプラスチック材料または他の適切な材料で成型してもよいことを理解すべきである。
【0123】
図15Aおよび15Bに概略的に示されるとおり、毛管リッド30の中央上部に面取りされた表面39が設けられる。面取りされた表面39は、使用時に毛管リッド30がスライド10に配置されたとき、毛管ギャップ31への入口リザーバ39として機能するように構成される。入口リザーバ39は、最大で約300マイクロリットルなど、既定の量の流体/試薬を保持する。
【0124】
いくつかの実施形態においては、図15Aおよび15Bに概略的に示されるとおり、毛管リッド30が、毛管リッド30の中央下部に滴下端37を備える。滴下端37は、毛管ギャップ31の下部からの流体の制御された除去をもたらす。滴下端37により、毛管ギャップの上部へと供給される流体/試薬について、スライド10と滴下端を持たないリッド30との間に生成される毛管ギャップにおける不均一な流体前部(図14Aに示されている)と比べ、均一な流体前部を達成することができる(図14Bを参照)。
【0125】
図16Aは、流体加熱器/2つの気泡トラップの組み合わせ130’の実施形態の分解図である。加熱器120が、加熱素子121と温度を制御するための温度センサ122とを含んでいる。加熱器120を、アルミニウムまたは所望の熱伝導特性を有する他の材料で製作することができる。加熱器120によって加熱される流体が加熱器120に直接触れることがないように、非反応性のプレート123、125を加熱器120の両側に配置することができる。非反応性のプレートに適した材料として、ステンレス鋼または、加熱器120によって加熱され得る流体に対して非反応性である熱伝導ポリマーなどの他の熱伝導性材料を挙げることができる。
【0126】
一実施形態においては、第1の気泡トラップ139および第2の気泡トラップ139’を、流体加熱器/気泡トラップ130’の組み合わせに含むことができる。これは、気泡トラップ139を第1の流体、例えば、蒸留水の加熱および気泡の除去に使用し、第2の気泡トラップ139’を第2の流体、例えば、洗浄緩衝液の加熱および気泡の除去に使用することを可能にする。
【0127】
図16Bに概略的に示されているとおり、図16Aに示した気泡トラップ139および139’は、以下のように機能する。流体140が、入口134を通って気泡トラップ139に進入し、バッフル133を通って流れ、出口135および137を通って出る。流体内に形成される可能性がある気泡131は、気泡トラップの上半分136へと上昇し、気泡出口132まで移動する。出口132を、閉じ込められた空気の圧力によって出口132からの流体の流出を防止するために、弁によって閉じることができる。次いで、所望の時点において、溜まった気泡131を逃がすことができるように出口132を開くことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド上に配置された少なくとも1つの生体サンプルを処理するための自動染色装置であって、
1つ以上のスライドを保持するスライドラックを、着脱可能に保持するスライドラックホルダと、
1つ以上の毛管リッドを保持する毛管リッドラックを、着脱可能に保持する毛管リッドラックホルダであり、毛管リッドラックの取り外しとは無関係にスライドラックの取り外しを行うことが可能である毛管式染色モジュールを含む少なくとも1つの毛管染色モジュールと、
第1の流体を備える第1の流体容器と
を備え、
1つ以上のスライドを挿入位置から1つ以上の傾斜位置へと回転させるようにスライドラックホルダを自動的に制御し、毛管チャンバとして機能する毛管ギャップを各スライドと各毛管リッドとの間に自動的に形成すべく、1つ以上の毛管リッドを1つ以上のスライドに向かって移動させるように毛管リッドラックホルダを自動的に制御して、傾斜位置にあるスライドへと流体容器から第1の流体を自動的に供給する
自動染色装置。
【請求項2】
さらに、対応するスライドに向かって毛管リッドの第1の端部を移動させると毛管リッドの第1の端部がスライドに当接し、対応するスライドに向かって毛管リッドの第2の端部を移動させると毛管リッドの第2の端部がスライドに当接するように、毛管リッドラックホルダが自動的に制御され、それにより、供給される第1の流体を含む毛管ギャップが、毛管リッドの中央の凹所とスライドの中央部との間に形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
さらに、試薬プローブにより、第1の流体としての試薬の量を、毛管式染色モジュールのプローブ導入口を介してスライド上の生体サンプルへ直接供給することで、形成される毛管ギャップが、ハイブリダイゼーションチャンバとして機能することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
さらに、流体で満たされた毛管ギャップよりも上方の位置から、第2の流体容器からの第2の流体を、プローブ導入口またはノズルを介してスライドへ供給することで、第2の流体の量が重力によって毛管ギャップへと流入し、毛管ギャップの第1の流体の量が毛管ギャップの下部から除去され、第2の流体が毛管ギャップへと引き込まれ、毛管ギャップにおいて下方へと流れてスライド上の生体サンプルを覆う、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
第1の流体が洗浄用の流体であり、第2の流体が試薬である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
1つ以上のサンプルスライドが、傾斜位置にあるとき水平面に対して約10〜40度の角度に配置される、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
1つ以上の流体容器へと接続された1つ以上の配管をさらに備え、配管が、1つ以上のスライドへ流体をディスペンスするための1つ以上のノズルを遠位部に備え、ノズルが、滴下のないノズルとなるような面取りされた開口遠位端を有することにより、流体がスライドへ落下せずにスライドへ流れる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
配管へ接続された1つ以上のポンプおよび1つ以上の弁をさらに備え、これらのポンプおよび弁により、1つ以上の流体容器から1つ以上のスライドへの流体の供給を制御する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
試薬容器に収容された試薬の一部を吸引し、
スライドまたは生体サンプルの上方の位置へ試薬の吸引した部分を運び、
スライドまたは生体サンプルへ試薬の吸引した部分の量をディスペンスする
ようにプローブを動作させる流体ロボットをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
1つ以上のサンプルスライドに平行な方向に、1つ以上の毛管リッドを自動的に往復移動させるように毛管リッドラックホルダを制御し、それによって、毛管ギャップにおける流体の局所的な枯渇が回避される、および/または毛管ギャップの流体が混合される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
スライドの長手軸に沿って1つ以上の毛管リッドを移動させるように、毛管リッドラックホルダを制御する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
サンプルの処理後に毛管リッドを取り除くときにスライドへ流体の量を供給することにより、吸引効果に起因して、生体サンプルが毛管リッドによってスライドから引き剥がされないことを確実にする、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
流体がスライドへディスペンスされるのに先立って、流体を所定の温度まで加熱する予熱器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
予熱器に接続されているか、または予熱器に含まれている気泡トラップであって、予熱済み流体がスライドへ供給される前に、予熱済みの流体から気泡を取り除く気泡トラップをさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
毛管リッドが、生体サンプルに面する表面に、中央の表面と2つの突出している遠位面とを備え、突出している遠位面が、中央の表面に対して末端および中央の表面の両横に配置されて、サンプルスライドと接触したときにスペーサを形成しており、かつ、スライドに当接したときに、毛管リッドの中央の表面とスライドとの間に正確な間隔をもたらすための所定の厚さを有していることによって、毛管リッドの中央の表面とスライドとの間に良好に定められた毛管ギャップが形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
毛管リッドがガラスで構成され、突出している遠位面が、所定の厚さを有する塗料または他の適切な材料の1つ以上の層を備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
毛管リッドが、ポリカーボネートなどのプラスチック材料で成型されている、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
使用時に毛管リッドの突出している遠位面がスライドに当接すると、毛管ギャップへの入口リザーバとして機能する面取りされた表面が、毛管リッドの中央上部に設けられている、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
毛管リッドの中央下部に滴下端が設けられており、滴下端が、毛管ギャップの下部からの制御された流体を除去することで、毛管ギャップの上部へ一様な流体前部が供給される、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
毛管式染色モジュールが、毛管式染色モジュールの処理容器の下部に湿度溝を備え、湿度溝が、液体体積を保持することによって、毛管式染色モジュールにおける流体の気化を防止する、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
毛管式染色モジュールが、毛管式染色モジュールにおける凝縮を防止する処理容器の蓋をさらに備えることで、サンプルの処理の際に、生体サンプルへディスペンスされる流体を希釈させうる毛管式染色モジュール内における水滴の形成を防止する、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
処理容器の蓋の内表面上に凝縮防止層が設けられており、凝縮防止層が、毛管式染色モジュールにおける凝縮を防止する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
凝縮防止層が、アルミニウム、別の熱伝導材料、あるいは流体吸収材料を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
処理容器の蓋の外側に加熱素子が設けられており、毛管式染色モジュールにおける凝縮を防止するために、加熱素子が処理容器の蓋へと熱を供給する、請求項21に記載の装置。
【請求項25】
1つ以上の洗浄スライドを含むスライドラックが、スライドラックホルダに着脱可能であり、1つ以上の毛管リッドが使用時に洗浄スライドに平行な方向に往復移動するときに1つ以上の毛管リッドを清掃する洗浄面を洗浄スライドが備える、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
スライド上に配置された少なくとも1つの生体サンプルを処理するための自動化された方法であって、
1つ以上のスライドを保持するスライドラックを着脱可能に保持するスライドラックホルダと、
1つ以上の毛管リッドを保持する毛管リッドラックを着脱可能に保持する毛管リッドラックホルダと
を備えた少なくとも1つの毛管染色モジュールであって、スライドラックが毛管リッドラックの取り外しとは無関係に取り外せる毛管染色モジュールを用意するステップと、
第1の流体を含む第1の流体容器を用意するステップと、
挿入位置から1つ以上の傾斜位置へと1つ以上のスライドを回転させるように、スライドラックホルダを自動的に制御するステップと、
毛管チャンバとして機能する前記毛管ギャップが各スライドと各毛管リッドとの間に自動的に形成されるように、1つ以上の毛管リッドが1つ以上のスライドに向かって移動するように、毛管リッドラックホルダを自動的に制御するステップと、
前記傾斜位置にあるときに流体容器からスライドへ第1の流体の量を自動的に供給するステップと
を含む方法。
【請求項27】
対応するスライドに向かって毛管リッドの第1の端部を移動させると毛管リッドの第1の端部がスライドに当接し、対応するスライドに向かって毛管リッドの第2の端部を移動させると毛管リッドの第2の端部がスライドに当接するように、毛管リッドラックホルダを制御するステップであって、それにより、供給される第1の流体を含む毛管ギャップが毛管リッドの中央のリセスとスライドの中央部との間に形成されるステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
試薬プローブにより、毛管式染色モジュールのプローブ導入口を介してスライド上にある生体サンプルへ、第1の流体としての試薬の量を直接供給するステップであって、それにより、形成される毛管ギャップがハイブリダイゼーションチャンバとして機能することを可能にするステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
試薬プローブにより、毛管式染色モジュールのプローブ導入口を介してスライド上にある生体サンプルへ、第1の流体としての試薬の量を直接供給するステップであって、それにより、形成される毛管ギャップがハイブリダイゼーションチャンバとして機能することを可能にするステップ
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
流体で満たされた毛管ギャップよりも上方の位置から、第2の流体容器からの第2の流体の量を、プローブ導入口またはノズルを介してスライドへ供給するステップであって、それにより、重力により第2の流体の量が毛管ギャップへ流入することで、第1の流体の量が毛管ギャップの下部から除去され、第2の流体の量が毛管ギャップへと引き込まれて、毛管ギャップの下方へと流れ、スライド上にある生体サンプルを覆うステップ
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
傾斜位置にあるとき、1つ以上のサンプルスライドが水平面に対して約10〜40度の範囲の角度に配置される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1つ以上の流体容器へ接続された1つ以上の配管を用意するステップであって、配管が、1つ以上のスライドへ流体をディスペンスするための1つ以上のノズルを遠位部に備え、ノズルが、滴下のないノズルとなるような面取りされた開口遠位端を有することにより、流体をスライドへ落下せずにスライドへ流すステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
配管へ接続された1つ以上のポンプおよび1つ以上の弁によって、1つ以上のスライドへの1つ以上の流体容器からの流体の供給を制御するステップ
をさらに含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
プローブを動作させる流体ロボットにより、
試薬容器に収容された試薬の一部を吸引するステップと、
スライドまたは生体サンプルの上方の位置へ試薬の吸引した部分を運ぶステップと、
スライドまたは生体サンプルへ試薬の吸引した部分の量をディスペンスするステップと
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
1つ以上のサンプルスライドに平行な方向に、1つ以上の毛管リッドを自動的に往復移動させるように毛管リッドラックホルダを制御することによって、毛管ギャップにおける流体の局所的な枯渇を回避する、および/または毛管ギャップの流体を混合するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
1つ以上の毛管リッドをスライドの長手軸に沿って移動させるように、毛管リッドラックホルダを制御するステップ
をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
サンプルの処理後に毛管リッドを取り除くときにスライドへ流体の量を供給することにより、毛管リッドが取り除かれるときに、吸引効果に起因して、生体サンプルが毛管リッドによってスライドから引き剥がされないことを確実にするステップと
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
予熱器によって、流体のスライドへのディスペンスに先立って流体を所定の温度まで加熱するステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
予熱器に接続されるか、予熱器に含まれる気泡トラップによって、スライドへ供給される前に予熱済みの流体から気泡を取り除くステップ
をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
毛管リッドの中央下部にある滴下端によって毛管ギャップの下部からの流体の除去を制御することにより、毛管ギャップの上部へ供給される流体に一様な流体前部を達成するステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
毛管式染色モジュールの処理容器の下部に配置されて液体体積を保持する湿度溝によって、毛管式染色モジュールにおける流体の気化を防止すること
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項42】
毛管式染色モジュールに含まれる処理容器の蓋によって、毛管式染色モジュールにおける凝縮を防止することにより、サンプルの処理の際に生体サンプルへディスペンスされる流体の希釈を生じさせうる毛管式染色モジュールにおける水滴の形成を防止するステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
使用時に1つ以上の毛管リッドが洗浄スライドに平行な方向に往復移動するときに、洗浄面を備える1つ以上の洗浄スライドによって、1つ以上の毛管リッドを清掃するステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate


【公表番号】特表2013−513782(P2013−513782A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542362(P2012−542362)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/DK2010/000169
【国際公開番号】WO2011/069507
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(399126008)
【住所又は居所原語表記】Produktionsvej 42 DK−2600 Glostrup Denmark
【Fターム(参考)】