説明

生体センサーおよび生体情報検出装置

【課題】微弱な光成分を精度良く検出することが可能な生体センサーおよび生体情報検出装置を提供すること。
【解決手段】光透過性を有する基板22と、基板22の装着面側に設けられ、光を出射する発光素子24と、基板22の非装着面側に設けられ、発光素子24から出射した光のうち、生体からの反射光を受光して、受光に応じた信号を出力する受光素子26と、光透過性を有し、基板22に対して発光素子または受光素子の一方、例えば発光素子24に被せるように設けられ、生体に接触する接触面が、生体側に突出した導光部材29とを具備する。これにより、被験者と接触面が位置ずれしにくくなるとともに、発光素子24の出射効率および受光素子26の入射効率が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波などの生体情報を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子によって生体に光を照射する一方、脈拍数や酸素飽和度などの生体情報を反映した光を受光素子によって受光して、受光した光に応じた電気信号を出力する生体センサーが知られている。当該生体センサーから出力された信号を処理することによって、生体情報を非侵襲で検出することができる。
生体センサーを構成する発光素子と受光素子とは、物理的に異なる素子であるので、互いに物理的に離間した状態で配置せざるを得ない。この状態において発光素子からの漏光が受光素子に直接入射してしまうと、直接入射光は、生体情報を反映した光に対してノイズとなってしまう。
【0003】
そこで、発光素子と受光素子とを光遮蔽性を有するホルダーによって隔てて収納する技術(例えば特許文献1参照)や、平面視したときに発光素子と受光素子との間に光遮蔽体を設ける技術(例えば特許文献2参照)が提案されている。
一方、被験者が体動していると、生体センサーにおける受光ポイントがずれてしまうので、生体情報を反映した光のみを受光することが困難になる。このため、被験者との接触面に板状の導光部材を設けて、受光する反射光量が変わらないようにした技術が提案されている(上記特許文献1のほか、特許文献3参照)。また、このような導光部材にファセットを持たせてマイクロプリズム構造とした技術も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−360530号公報
【特許文献2】特開2009−231577号公報
【特許文献3】特開2000−116611号公報
【特許文献4】特開2004−344668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生体情報を反映した光とは、例えば血管内の血液によって反射した光であるために、照射した光に対して微弱である。このため、発光素子と受光素子との間にホルダーや光遮蔽体などを配置させてしまうと、特に受光素子の受光領域を十分に確保できず、微弱な光成分を精度良く検出することができない。
また、被験者との接触面に板状の導光部材を設けた場合、発光素子から射出された光の一部が導光部材で内部反射して、受光素子に入射してしまい、微弱な光成分においてノイズとなってしまう場合があった。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、微弱な光成分を精度良く検出することが可能な生体センサーおよび生体情報検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る生体センサーにあっては、第1基板に設けられ、生体に向けて光を照射する発光素子と、前記第1基板に設けられ、前記生体からの光を受光する受光素子と、光透過性を有し、前記第1基板に対して前記発光素子または前記受光素子の一方に対応して設けられ、前記生体に接触する接触面が前記発光素子または前記受光素子の他方よりも前記生体側に突出した導光部材と、を具備することを特徴とする。本発明によれば、発光素子または受光素子の一方に対応して設けられた導光部材の接触面が、発光素子または受光素子の他方よりも被験者側に突出して設けられる。このため、導光部材の界面によって発光素子から受光素子に向かう光経路が分断されるとともに、導光部材と生体との密着性が改善されるので、微弱な光成分を精度良く検出することができる。
【0007】
本発明において、前記導光部材は、前記基板に対して鉛直方向となる側面で反射性を有する構成が好ましい。この構成によれば、導光部材の側面での反射によって、発光素子からの出射効率とともに、受光素子への入射効率を高めることもできる。
ここで、前記第1基板は、光透過性を有し、前記発光素子は、前記第1基板の一方の面側に設けられ、前記受光素子は、前記第1基板の他方の面側に設けられ、前記発光素子から出射した光のうち、前記生体からの反射光を受光する態様が好ましい。この態様によれば、第1基板に対し、発光素子と受光素子とが互いに異なる面にそれぞれ設けられるので、発光素子からの漏光が受光素子に受光されてしまうのを抑えることができる。このため、微弱な光成分をより精度良く検出することができる。
【0008】
このような態様において、前記発光素子は、前記第1基板から向かって順に、反射層、第1電極層、発光層および第2電極層を少なくとも含んだ積層体であって、前記第1基板側とは反対側に光を出射し、前記第1電極層および第2電極層は、それぞれ光透過性を有し、前記受光素子は、前記第1基板を透過した光を受光する構成としても良い。
この構成において、前記受光素子は、第2基板における一方の面に設けられ、前記第2基板における一方の面が前記第1基板の他方の面に対向するように、前記第1基板と前記第2基板とが貼り合わせられた構成としても良い。
また、前記導光部材は、前記第1基板の一方の面側に前記発光素子を覆うように設けられても良いし、前記第1基板の一方の面側に前記発光素子の非配置部分に設けられても良い。
【0009】
本発明において、前記基板を平面視したときに、前記発光素子は、前記受光素子に含まれるように配置されている構成が好ましい。このような構成としては、前記基板を平面視したときに、前記発光素子は、同心円状の発光面を有する態様や、前記基板を平面視したときに、前記発光素子は、所定の間隔をおいてマトリクス状に配列した発光面を有する態様などが考えられる。
また、前記基板を平面視したときに、前記受光素子の受光面の面積は、前記発光素子の発光面の面積以上にすると、微弱な光成分を効率良く受光することができる。
なお、本発明は、このような生体センサーから出力される信号に基づいて生体情報を出力する演算処理回路を持たせた生体情報検出装置としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る生体センサーを用いた生体情報検出装置を示す図である。
【図2】生体情報検出装置の構造を示す要部断面図である。
【図3】第1実施形態に係る生体センサーの模式図である。
【図4】生体センサーの構成を示す拡大断面図である。
【図5】生体センサーにおける発光素子等の配置を示す図である。
【図6】発光素子等の光学特性を示す図である。
【図7】生体センサーにおける光路を示す図である。
【図8】生体センサーにおける光路を示す拡大図である。
【図9】生体情報検出装置の構成を示すブロック図である。
【図10】生体センサーにおける発光素子と受光素子との配置例を示す図である。
【図11】第2実施形態に係る生体センサーの模式図である。
【図12】第3実施形態に係る生体センサーの模式図である。
【図13】第4実施形態に係る生体センサーの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る生体センサーについて図面を参照して説明する。
なお、以下の各図については、各部、特に各層については認識可能な大きさとするために、縮尺を異ならせている場合がある。
【0012】
図1は、実施形態に係る生体センサーを適用した生体情報検出装置の構成を示す図である。実施形態に係る生体センサーは、被験者の生体情報の一例として脈波を検出するものであり、生体情報検出装置1は、生体センサーで検出された脈波から、例えば脈拍数などを求めるものである。
図1に示されるように、生体情報検出装置1の筐体10は、腕時計を模した形状となっている。筐体10の表面には、長方形状の表示面を持った表示部100が設けられている。表示部100は、例えば液晶パネルであり、脈拍数や脈拍間隔などを表示する。筐体10の外周部にはボタンスイッチなどの操作子14が複数個(図では3個)個設けられている。操作子14は、脈波の測定開始や、測定終了、測定結果のリセットなどの各種指示の入力に用いられる。
また、筐体10の外周部のうち、表示部100を挟んで対向する部分には、被験者の左手首に巻回されたリストバンド12の一端と他端とが取り付けられている。これによって、筐体10が被験者の身体に装着されることになる。
なお、図1では省略されているが、後述する演算処理回路が、操作子14への入力に応じて各種の処理を実行して、その処理結果を表示部100に表示させる。
【0013】
図2は、生体情報検出装置1の要部構成を示す断面図である。
図に示されるように、筐体10の内部は中空部15を有する形状となっており、当該中空部15において被験者への装着面側に生体センサー20が設けられている。生体センサー20は、光透過性を有するガラスなどの基板22と、基板22に対して装着面側に設けられる複数の発光素子24と、基板22に対して非装着面側、すなわち装着面側とは反対側に設けられる受光素子26とを含む。なお、ここでいう基板22が第1基板である。
基板22を平面視したときの形状については、任意であるが、本実施形態では円形としている。また、ここでいう光透過性とは、発光素子24からの出射される光の波長帯域に含まれる光成分を透過する性質をいう。
【0014】
図3は、本発明の第1実施形態に係る生体センサー20を示す模式図であり、図4は、当該生体センサー20の構造を示す部分拡大図である。
基板22の装着面側(図において下側)に設けられた発光素子24は、例えば有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)であり、詳細には図4に示されるように、基板22を起点として順に、反射層241、第1電極層242、有機層243、第2電極層244および封止層245を積層した構造となっている。
【0015】
このうち、反射層241は、アルミニウムや銀などのように反射性を有する金属層または合金層の成膜後、平面視したときに次に形成される第1電極層242を含むように、さらに、第1電極層242に重ねられる有機層243の周縁を含むように、第1電極層242よりもひとまわり広くパターニングしたものである。
【0016】
第1電極層242は、発光素子24の陽極であり、透明性を有する導電層、例えばITO(Indium Tin Oxide)などをパターニングしたものである。
有機層243は、第1電極層242と重なるように形成されたものであり、本実施形態では、第1電極層242からみて順に正孔輸送層243aと発光層243bと電子輸送層243cとの積層体で構成されている。
【0017】
このうち、正孔輸送層243aは、陽極から供給される正孔を能率的に輸送する一方で、反対方向から到来する電子のストッパーであり、例えばトリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等によって形成される。発光層243bは、例えばアルミノウムキノリノール錯体(Alq)等をホスト材料とし、ルブレン等をドーパントとして形成される。電子輸送層243cは、陰極から供給される電子を能率的に輸送する一方で、反対方向から到来する正孔のストッパーであり、例えばAlq等によって形成される。第2電極層244は、発光素子24の陰極であり、光透過性および反射性を有する導電層、例えばマグネシウムと銀との合金層を、発光層243bと重なるようにパターニングしたものである。
【0018】
封止層245は、酸素や水分の侵入による素子劣化を防ぐために、第2電極層244から反射層241までの積層構造を覆うように設けられている。封止層245は、透明性を有し、例えばシリコン酸窒化膜(SiON)からなる。
【0019】
発光素子24は、陽極としての第1電極層242と、陰極としての第2電極層244とで、有機層243を挟持した構成となる。
このような構成において、陽極から陰極に向かって順方向電流が流れると、正孔輸送層243aから注入される正孔と電子輸送層243cから注入される電子とが発光層243bで結合して、発光層243bの材料に応じたスペクトルの光が発生する。本実施形態では、スペクトルが図6に示されるように波長550nm付近でピークを有するように発光層243bの材料が選定されている。
【0020】
なお、発光素子24については、反射層241から第2電極層244までの距離を、発光層243bで発生する光のピーク波長に合わせて調整した光共振構造としても良い。
また、有機層243で必要な機能は、陽極側から供給される正孔と陰極側から供給される電子との結合によって光を発生させることにある。このため最低限、有機層243には発光層243bがあれば良い。ただし、正孔輸送層243aおよび電子輸送層243cを設けた方が、キャリア(正孔、電子)の移動度が改善されて、発光効率を高めることができる点において有利である。発光効率を高めるという観点からいえば、第1電極層242(陽極)と正孔輸送層243aとの間に、陽極から正孔を取り入れる正孔注入層を設けても良いし、第2電極層244(陰極)と電子輸送層243cとの間に、陰極から電子を取り入れる電子注入層を設けても良い。
【0021】
導光部材29は、光透過性を有する樹脂などからなる。導光部材29の内部は、発光素子24の外形に合わせた形状となっている。また、基板22に対して鉛直方向に沿った側面には、反射性を有するコーティングが施されて反射層29aが形成されている。導光部材29の底面は平坦であり、この底面が被験者に接触する接触面29bとなる。このため、接触面29bは、基板22の接触面に対して突出した構成となる。
なお、導光部材29は、当該導光部材29に近い屈折率を有する接着剤によって発光素子24を覆うように基板22に接着される。
【0022】
一方、図3および図4に示されるように、基板22の非装着面側(図において上側)には、受光素子26などが設けられている。
詳細には、図4に示されるように、基板22を起点として順にフィルター25、受光素子26が設けられる。そして、フィルター25および受光素子26を覆うように、遮光性を有するキャップ27が基板22に取り付けられている。
【0023】
なお、フィルター25の光学特性については、図6に示されるように、発光素子24から出射される光の波長帯域以外を遮断するような帯域通過型でも良いし、特に長波長側を遮断するような低域通過型でも良い。このような特性が好ましい理由は、次の通りである。すなわち、受光素子26に例えば次に説明するようなアモルファスシリコン層を有するフォトダイオードを用いた場合、発光素子24から出射される光の波長以外の光についても検出してしまうので、不要な波長の光を遮断するためである。また、筐体10を装着した手首の反対側から入射した光のうち、短波長側の光は吸収されやすく、筐体10の基板22まで到達しにくいのに対し、長波長側の光は、手首を透過した上で基板22に入射して、脈波成分を示す光に対してノイズ成分になるため、特に長波長側を優先的に遮断する特性が好ましいのである。フィルター25としては、例えば、所定の光学条件を満たすように誘電体等を積層させた干渉フィルターであっても良いし、着色された光学フィルターであっても良い。
【0024】
本実施形態において受光素子26は、例えばフォトダイオードであり、図4に示されるように、電極層261と電極層263とでアモルファスシリコン層262を挟持した構成となっている。
このうち、電極層261は、フォトダイオードの陽極であり、例えばITOが用いられる。また、電極層263は、フォトダイオードの陰極であり、アルミニウムなどが用いられる。アモルファスシリコン層262は、例えば陽極側のP型領域と陰極側のN型領域とを有する薄膜である。本実施形態において、受光素子26の受光領域は、基板22の周縁を除き、ほぼベタ状となっている。このような受光素子26において、基板22の装着面側からフィルター25を透過して光が入射すると、P型領域に正孔が発生し、N型領域に電子が発生する結果、入射光量に応じた光電流が順方向に流れる構成となっている。
なお、電極層263は、陰極のほかに反射層の機能を兼ねても良い。
【0025】
図5は、基板22を被験者側の装着面から平面視したときに、発光素子24の発光面(発光領域)を示す図である。
発光素子24は、図5において白抜きで示したように、同心円で二重リング状の発光面24A、24Bを有する。このため、発光素子24を覆う導光部材29についても、平面視したときにはリング状となる。
一方、受光素子26は、平面視したときにハッチングで付された領域のように、上記同心円の中心を含む円形の受光面26Cと、リング状の受光面26D、26Eとを有し、これらの受光面26C、26D、26Eによって、発光面24A、24Bを囲むような位置関係となる。なお実際には、受光素子26は、基板22の非装着面側にベタ状に設けられるので、発光面24A、24Bで隠されない領域が平面視したときの受光面26C、26D、26Eとして外見に現れる。
なお、受光面のうち、発光面24A、24Bの背面(基板22の非装着面側)の部分については、ある程度の角度で入射した光でないと受光されないので、この部分については、パターニングによって抜いた状態としても良い。
受光領域については、ベタ状とするか、あるいは、発光面24A、24Bの背面側を抜いた状態とするか、いずれにしても、本実施形態においては受光面26C、26D、26Eの面積和は、発光面24A、24Bの面積和以上となるように設定されている。
【0026】
図7および図8は、生体センサー20の光路を示す図である。図7に示されるように、筐体10が被験者に装着された場合、被験者の皮膚52が筐体10の裏面と導光部材29の接触面29bとに接触することになる。
ここで、発光素子24が上述した光共振構造を有するものであれば、出射光は、図8において下側となるような指向性を持つ。一方、発光素子24が光共振構造を有しないものであれば、結合によって発生した光が等方性で出射される。ただし、図8に示されるように、反射層241が発光層243bの周縁を含むように、発光層243bよりも一回り広く形成されているほか、導光部材29の側面には、反射層29aが形成されている。
このため、発光層243bによって発生した光のうち、図8において下側以外に方向に向かって射出された光は、反射層241、29bによって反射する。この結果、発光素子24が光共振構造であるか否かに関係なく、発光層243bからの光は、図において下側の被験者側に出射するので、光の出射効率が高められる。
なお、第1実施形態において発光素子24は、基板22の反対側に向けて光を出射するのでトップエミッション型となる。
【0027】
発光素子24から出射された光は、表皮を透過してその奥の血管50に到達する。血管50に到達した光は当該血管50を流れる血液により吸収、反射され、あるいは血液を透過する。
このうち、血管50に流れる血液によって反射された光は、基板22およびフィルター25を透過して受光素子26に入射する。このため、受光素子26は、入射光量に応じた光電流を出力する。ここで、血管50は、心拍と同じ周期で膨張・収縮を繰り返している。したがって、血管の膨張・収縮の周期と同じ周期で光の反射量が増減するので、受光素子26から出力される光電流の変化は、血管50の容積変化を示すことになる。
【0028】
図9は、生体情報検出装置1の電気的な構成を示すブロック図である。なお、この構成については、概略的に説明にとどめることにする。
この図において、駆動回路30は、演算処理回路50による制御したがって電流を常時または間欠的に供給して、発光素子24を駆動するものである。ここで、電流を間欠的に駆動する方が低消費電力化を図る上で好ましい。一方、変換回路40は、受光素子26から供給された光電流を電圧に変換するとともに、当該電圧を予め定められたサンプリング間隔でデジタルデータに変換するものである。
【0029】
演算処理回路50は、発光素子24を駆動したときに、変換回路40によって変換されたデジタルデータを操作子14の指示状態に応じて処理する。例えば、演算処理回路50は、当該デジタルデータで示される脈波波形を表示部100に表示させたり、当該デジタルデータから脈拍数を算出して表示部100に表示させたり、脈波波形の振幅に応じた大きさで「ハートマーク」を表示させたり、内部タイマーで計測された時刻に関連付けて脈拍数を逐一記録したり、脈拍数の経時変化を表示部100に表示させたりする。
【0030】
第1実施形態に係る生体センサー20では、導光部材29が発光素子24に被さるように取り付けられて、当該導光部材29の接触面29bが基板22よりも被験者側に突出している。このため、被験者の皮膚52との密着性は、導光部材29を設けない構造と比較して向上する。したがって、被験者が体動しても、接触面29bと皮膚52との位置がずれにくくなるので、必然的に皮膚52と受光素子26、発光素子24との相対的な位置もずれにくい状態にさせることができる。この状態において、発光素子24から出射される光は、図8に示されるように、被験者側に出射するので、発光素子24の出射効率を高めることができる。一方、被験者から斜め方向に入射しても反射層29aの反射によって受光素子26に入射させることができるので、受光素子26の受光効率も高めることができる。
したがって、第1実施形態によれば、体動があっても、微弱な光成分を精度良く検出することができる。
なお、反射層29aを設けなくても、空気と導光部材29との屈折率の相違によって、導光部材29の界面において反射が生じるので、同様な効果を得ることができる。
【0031】
また、受光素子26(受光面)は、基板22に対して発光素子24が設けられた装着面側とは反対側の非装着面側に設けられるので、発光面から基板22の厚さ以上の距離で奥まったところに位置することになる。発光素子24は、反射層241によって装着面側(図7等において下側)に出射されるので、光遮蔽体などを発光素子と受光素子との間に設けなくても、発光素子24からの出射光が、被験者の血液の反射を経ることなく受光素子26に直接入射してしまうことを避けることができる。
本実施形態では、光遮蔽体等を設けなくて良いので、その分、受光面積を広く確保して、詳細には、受光面26C、26D、26Eの面積和を発光面24A、24Bの面積和以上となるように確保している。
したがって、第1実施形態に係る生体センサー20によれば、被験者の血管反射を経ていない光の受光を回避しつつ、受光面積を広く確保しているので、この意味においても、微弱な光成分を効率良く受光することができる。
【0032】
なお、発光素子24の発光面については、図5に示したような同心円のリング状に限られない。例えば図10の(A)や(B)に示されるように、平面視したときに、タイル状に形成した発光素子24を、縦および横方向に1個おきにモザイク状に配列させても良い。ここで、受光素子26は、基板22の非装着面側においてベタ状に設けられているので、発光素子24が設けられていない領域や基板22の周縁領域が、平面視したときに受光面として外見として現れる。
なお、発光素子24をタイル状に形成する場合、当該タイル状の発光素子24を覆うように導光部材29が設けられる。
このようなモザイク状の配列によっても、発光面が受光面を囲むとともに、受光面の面積が発光面の面積以上となるので、微弱な光成分を効率良く受光することができる。
また、受光面の外枠や、発光面の形状については、図10の(A)、(B)に示されるような正方形に限られないことはいうまでもない。
【0033】
図11は、第2実施形態に係る生体センサーを示す模式図である。
この第2実施形態では(A)に示されるように、受光素子26が第2基板としての基板23に形成されている。そして、基板23は、受光素子26がフィルター25を挟むように、基板22の非装着面に接着剤28によって貼り合わせられている。このため、(B)に示されるように、結果的に、受光素子26が基板22に対して非装着面側に設けられるので、受光素子26は、発光素子24に対して図3に示した第1実施形態とほぼ同様な位置関係になる。
なお、接着剤28としては、紫外線硬化型やエポキシ系などが用いられる。
【0034】
基板23に形成される受光素子26の詳細については図示を省略するが、基板23を起点として順に、陰極としての電極層、アモルファスシリコン層および陽極としての電極層を積層した構造になる。なお、陽極としての電極層は、基板22を透過した光を、アモルファスシリコン層に導く必要があるので、透明性を有するITOなどが用いられる。また、陰極としての電極層は反射層を兼ねても良い。受光素子26は、基板22の透過光を受光するので、基板23に光透過性は不要である。
第2実施形態においては、基板23を除けば各部の位置関係が第1実施形態と同様なので、体動があっても、被験者の血管反射を経ていない光の受光を回避しつつ、微弱な光成分を効率良く受光することができる。
特に第2実施形態では、発光素子24が形成された基板22と受光素子26が形成された基板23との良品同士を貼り合わせれば良いので、基板22の一方の面に発光素子24を設けるとともに他方の面に受光素子26を設ける構成と比較して、歩留まりを向上させることができる。
【0035】
図12は、第3実施形態に係る生体センサーを示す模式図である。
導光部材29については、第1(第2)実施形態では、発光素子24に被せるように設けたが、第3実施形態では、基板22の装着面側において、発光素子24が設けられていない部分に、受光素子26に対向した部分に設けられている。
接触面29bは、第1(第2)実施形態と同様に、基板22の接触面に対して被験者側に突出するので、被験者が体動しても、受光素子26の受光領域に対応した接触面29bと皮膚52との位置がずれにくくなる。このため、必然的に皮膚52と、受光素子26(発光素子24)との相対的な位置もずれにくくなる。
一方、第3実施形態においても、導光部材29の側面には反射層29aが設けられるので、発光素子24の出射効率とともに、受光素子26の受光効率が高められる。したがって、第3実施形態によれば、第1(第2)実施形態と同様に体動があっても微弱な光成分を精度良く検出することができる。
【0036】
なお、図5に示されるように発光素子24の発光面24A、24Bを二重リング状とする場合、平面視したときにハッチングで示される受光面26C、26D、26Eに対応して円形またはリング状に形成した導光部材29を基板22に嵌め込む構成となる。また、図10に示されるように発光素子24の発光面をタイル状とする場合、平面視したときにハッチングで示される領域に対応した個々の形状とした導光部材29を嵌め込む構成となる。
【0037】
図13は、第4実施形態に係る生体センサーを示す模式図である。
この図に示されるように、第4実施形態では、受光素子26が、発光素子24とともに基板22の装着面側に設けられている。ここで、受光素子26は、非装着面側からの侵入光を遮光するために、基板22とは受光面の周縁を含むような遮光層266を介して設けられている。
導光部材29は、この受光素子26に被さるとともに、接触面29bが発光素子24の発光面よりも生体側に突出している。このため、他の実施形態と同様に、被験者が体動しても、受光領域に対応した接触面29bと皮膚52との位置がずれにくくなる。一方、導光部材29の側面には設けられた反射層29aによって、発光素子24の出射効率とともに、受光素子26の受光効率が高められる。したがって、第4実施形態によれば、他の実施形態と同様に体動があっても微弱な光成分を精度良く検出することができる。
【0038】
なお、図13の例では、導光部材29を受光素子26に被せるように設けたが、発光素子24に被せるように、接触面29bが発光素子24の発光面よりも生体側に突出するように設けても良い。
また、導光部材29を発光素子24および受光素子26の双方に被せるように設けた構成としても良い。この構成においては、被験者と位置ずれしにくいように、発光素子24または受光素子26のどちらか一方に被せた導光部材29の接触面29bを、発光素子24または受光素子26のどちらか他方に被せた導光部材29の接触面29bよりも生体側に突出させれば良い。
【0039】
本発明は、上述した実施形態のほかに、種々の応用・変形が可能である。
例えば、図3、図11、図12に示した例では、発光素子24を基板22の装着面側に、受光素子26を基板22の非装着面側に、それぞれ設けたが、反対に、発光素子24を基板22の非装着面側に、受光素子26を基板22の装着面側に設けた構成としても良い。この構成では、発光素子24は、基板22の側に光を出射するので、ボトムエミッション型となる。この構成において導光部材29については、基板22の装着面側において、受光素子26に被せるように設けても良いし、受光素子26が設けられている部分を避けるように、発光素子24に対向した部分に設けても良い。
【0040】
各実施形態では、被験者の測定部位を左手首としたが、例えばカフ体に生体センサーを組み込むことによって、指先を測定部位にしても良い。換言すれば、指尖脈波を検出するようにしても良い。
【0041】
また、実施形態については、生体センサーとして、脈波を検出する構成を例示したが、動脈血の酸素飽和度を検出するセンサーにも適用可能である。血液中のヘモグロビンは、酸素との結合の有無により赤色光と赤外光の吸光度が異なる。そこで、赤色光を発光・受光する素子、赤外光を発光・受光する素子、などのように発光波長および受光波長を異ならせた素子組を複数組用意する一方、これらの反射光を測定・解析することによって酸素飽和度を検出することができる。
また、血管としては、動脈・静脈のいずれでも良い。
生体情報としては、生体の血管のパターンでも良く、この血管パターンから当該生体を認証する認証装置にも適用可能である。
測定対象は、ヒトに限らず、動物でも良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0042】
1…生体情報検出装置、20…生体センサー、22、23…基板、24…発光素子、26…受光素子、28…接着剤、29…導光部材、29a…反射層、29b…接触面、50…演算処理回路、100…表示部、241…反射層、242…第1電極層、244…第2電極層、243…有機層、243b…発光層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板に設けられ、生体に向けて光を照射する発光素子と、
前記第1基板に設けられ、前記生体からの光を受光する受光素子と、
光透過性を有し、前記第1基板に対して前記発光素子または前記受光素子の一方に対応して設けられ、前記生体に接触する接触面が前記発光素子または前記受光素子の他方よりも前記生体側に突出した導光部材と、
を具備することを特徴とする生体センサー。
【請求項2】
前記導光部材は、
前記基板に対して鉛直方向となる側面で反射性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の生体センサー。
【請求項3】
前記第1基板は、光透過性を有し、
前記発光素子は、前記第1基板の一方の面側に設けられ、
前記受光素子は、前記第1基板の他方の面側に設けられ、前記発光素子から出射した光のうち、前記生体からの反射光を受光する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の生体センサー。
【請求項4】
前記発光素子は、
前記第1基板から向かって順に、反射層、第1電極層、発光層および第2電極層を少なくとも含んだ積層体であって、前記第1基板側とは反対側に光を出射し、
前記第1電極層および第2電極層は、それぞれ光透過性を有し、
前記受光素子は、前記第1基板を透過した光を受光する
ことを特徴とする請求項3に記載の生体センサー。
【請求項5】
前記受光素子は、第2基板における一方の面に設けられ、
前記第2基板における一方の面が前記第1基板の他方の面に対向するように、前記第1基板と前記第2基板とが貼り合わせられた
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の生体センサー。
【請求項6】
前記導光部材は、前記第1基板の一方の面側に前記発光素子を覆うように設けられた
ことを特徴とする請求項4または5に記載の生体センサー。
【請求項7】
前記導光部材は、前記第1基板の一方の面側に前記発光素子の非配置部分に設けられた
ことを特徴とする請求項4または5に記載の生体センサー。
【請求項8】
前記基板を平面視したときに、
前記発光素子は、前記受光素子に含まれるように配置されている
ことを特徴とする請求項4または5に記載の生体センサー。
【請求項9】
前記基板を平面視したときに、
前記発光素子は、同心円状の発光面を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の生体センサー。
【請求項10】
前記基板を平面視したときに、
前記発光素子は、所定の間隔をおいてマトリクス状に配列した発光面を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の生体センサー。
【請求項11】
前記基板を平面視したときに、
前記受光素子の受光面の面積は、
前記発光素子の発光面の面積以上である
ことを特徴とする請求項9または10に記載の生体センサー。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の生体センサーと、
前記受光素子から出力される信号に基づいて生体情報を出力する演算処理回路と、
を備える生体情報検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−157(P2013−157A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130984(P2011−130984)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】