説明

生体センサ装置

【課題】 心電信号だけでなく、被検者の小さな体動も計測することが可能となる生体センサ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 心電信号を計測する心電電極5と身体の動きを計測する3軸加速度センサ6とを身体に貼り付けるためのシール部2に備えさせ、前記シール部2の複数を連結部材3を介して連結することにより身体の複数箇所に貼り付け可能とし、前記各シール部2の心電電極5及び3軸加速度センサ6からの出力信号を記録するための記録媒体13と該記録媒体13に記録するための記録手段12とを該シール部2又は前記連結部3の特定箇所あるいは外部に備え、前記記録手段12と前記心電電極5及び3軸加速度センサ6とを無線又はケーブル7にて接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、身体に装着する心電電極と加速度センサとを備えた生体センサ装置に関するものであり、より詳細には、心電信号及び被検者の姿勢や運動状態の信号を長時間計測するための生体センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1998年の厚生労働省の調査によると、日本人の成人の5人に1人には何らかの睡眠障害があることが報告されている。また、睡眠障害はうつ病患者の多くで見られる症状のひとつであるだけでなく、不眠症患者がうつ病を発症する確率が約40倍高くなること等も報告されている。さらに、うつ病と睡眠障害の合併により自殺のリスクが高まることも指摘されている。このような状況から、近年、睡眠障害の治療という立場だけでなく、うつ病の予防という観点からも、患者の睡眠状態を測定することの重要性が増している。
【0003】
睡眠状態を測定する方法としては、脳波、眼球運動、筋電図等のデータを計測し、それらを解析することで睡眠状態を測定することが可能である。また、脳波、眼球運動、筋電図等のデータ以外にも、体温、心電信号、血圧、呼吸、発汗、体動等の情報から睡眠状態を判定することも知られている。特に、身体的疾患に伴う睡眠障害では、睡眠時における姿勢や体動(寝返り、ふるえ、痙攣等)が関連することも知られており、それらを測定することも重要とされている。
【0004】
睡眠状態を厳密に(正確に)測定するときには、病院等の検査機関に出向き、そこで少なくとも一泊しなければならず、被検者にとっては時間的、金銭的な負担が大きいだけでなく、検査機関の数も決して多くないため遠方から出向くことや、通常とは異なった環境で一泊して睡眠する必要性があり、肉体的、精神的な負担も大きいことなどから検査を受けづらく、重度の睡眠障害を疾患してから検査を行うことが殆どであった。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されている心電図信号誘導用電極装置のように、心電信号を計測するために、身体の胸部に装着するC字形状のベースシートに、5つの心電電極、1つの加速度センサ、1つの圧電センサ、1つの温度センサを備え、各電極及びセンサからの出力信号を、外部に設けておいた解析・処理装置に送信するように構成し、被検者(患者)に装着させることで、被検者の心電信号だけでなく、加速度センサからの出力信号に基づいて運動量や消費カロリーを測定し、圧電センサからの出力信号に基づいて被検者の脈拍及び呼吸を測定し、温度センサからの出力信号に基づいて被検者の体温を測定できるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−269322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の心電図信号誘導用電極装置は、その段落番号[0001]に記載されているように心電図信号(心電信号)を計測することを主な目的としたものであり、前記心電図信号誘導用電極装置を身体に装着させることで、24時間(安静時(睡眠時や安静時)や活動時(歩行時や運動時))の心電信号を計測可能である。しかし、加速度センサを1つしか備えていないため、例えば、静止している状態、走っている状態、ゆっくり歩いている状態等の非常に大まかな状態しか計測することしかできないため、睡眠時(安静時)における寝返り、ふるえ、痙攣等の小さな体動や、睡眠時の姿勢を測定することは非常に困難であった。仮に、睡眠時の体動や姿勢を測定するためにデータの測定間隔を非常に短くして測定精度を向上させたとしても、小さな体動を検知するには十分ではなく、かつ、出力信号のデータ量も非常に多くなっていた。
さらに、特許文献1記載の発明のように、1つの加速度センサで姿勢を計測するときには、以下に示すような課題があった。例えば、体の表面は曲面になっていることに加えて、体型(表皮や肉付き)の個人差も大きく、1点での計測では正確な姿勢を計測することが困難であった。つまり、太った人に装着した加速度センサからの出力信号と、標準体型の人又は痩せた人に装着した加速度センサからの出力信号とは、同じ姿勢をしていても大きく異なった内容の信号となっていた。例えば、太った人が横仰位で就寝していたとしても、表皮のたるみにより加速度センサが下向きに位置し、横仰位ではなく腹臥位として計測されることがあった。また、加速度センサ部分のみを腰ベルトに備えさせたとしても、肉付きによる影響を解消することは困難であった。
つまり、特許文献1記載の心電図信号誘導用電極装置では、心電信号だけでなく、安静状態であるか活動状態であるかの計測は可能であるが、睡眠時における寝返り、ふるえ、痙攣等の体動や、睡眠時における姿勢を計測することが非常に困難であった。
【0007】
本願発明は、係る問題に鑑み、心電信号だけでなく、被検者の小さな体動も計測することが可能となる生体センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題解決のために、本願発明に係る生体センサ装置は、心電信号を計測する心電電極と身体の動きを計測する3軸加速度センサとを身体に貼り付けるためのシール部に備えさせ、前記シール部の複数を連結部材を介して連結することにより身体の複数箇所に貼り付け可能とし、前記各シール部の心電電極及び3軸加速度センサからの出力信号を記録するための記録媒体と該記録媒体に記録するための記録手段とを該シール部又は前記連結部の特定箇所あるいは外部に備え、前記記録手段と前記心電電極及び3軸加速度センサとを無線又はケーブルにて接続したものである。
したがって、心電電極と3軸加速度センサとをシール部に備えさせて、複数のシール部を身体に貼着させて該心電電極と該3軸加速度センサからの出力信号を記録媒体に記録するので、心電信号だけでなく、シール部を貼着させた部位の動作や状態も計測することができ、睡眠時や活動時における姿勢及び体動(小さな体動)のデータを得ることができる。
【0009】
前記複数のシール部を、連結部によって略同一平面上に連結してもよい。
【0010】
前記連結部が、略T字状若しくは略Y字状であり、前記連結部の3つの端部に前記シール部をそれぞれ備えてもよい。
また、前記連結部が、略L字状のシートであり、前記連結部の2つの端部及び1つの角部のそれぞれに前記シール部を備えてもよい。
【0011】
前記連結部を、伸縮性を有するネット部材から構成してもよい。
【0012】
前記シール部に、単又は複数の補強体を備えさせてもよい。
【0013】
温度センサ、オキシセンサ、マイクロフォンの中の少なくとも1つを生体センサ装置に備えさせてもよい。
【0014】
前記シール部の1つを、胸骨の剣状突起の体表面に貼着してもよい。
【0015】
前記複数のシール部を身体に貼り付ける順番、又は貼り付ける方向を視認可能にするための貼り付け補助手段を前記シール部に備えさせてもよい。
【0016】
前記記録手段及び前記記録媒体を備えたホルダー部を、1つのシール部の身体に接触する面の反対面に備えさせてもよい。
また、前記記録手段及び記録媒体とを備えたホルダー部をベルト部材で身体に装着してもよい。
【0017】
前記心電電極及び3軸加速度センサから出力される信号を無線にて送信する送信手段を備えたホルダー部を、1つのシール部の身体に接触する面の反対面、又は身体に装着したベルト部材に備えさせ、前記送信手段から送信された信号を受信する受信手段と、前記記録手段と前記記録媒体とを外部記録部に備えさせてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上にしてなる本願発明に係る生体センサ装置は、心電電極と3軸加速度センサとを備えたシール部の複数を連結部で連結し一体としているので、活動時の心電信号、体動や姿勢を計測することができるだけでなく、睡眠時における小さな体動、心電信号も計測可能となり、睡眠障害を診断する際に利用されるデータを計測することができる。
また、シール部には心電電極と3軸加速度センサとを備えているので、シール部が身体から剥がれた場合、心電電極からの異常信号に基づいて、シール部が剥がれているか否かが明確に分かるので、剥がれたシール部からの3軸加速度センサからの出力信号をエラーとすることができ、誤計測を防止することができる。
さらに、異なった箇所にシール部を貼り付けるので、各貼着位置の身体の動作や姿勢を計測することができ、運動の有無だけでなく、前後運動、左右運動、回転運動等の様々な体動を計測することが初めて可能となる。また、各シール部の加速度センサから出力信号とその貼付位置に基づいて出力信号を補正することもでき、体型(表皮や肉付き)による影響を少なくし、正確な姿勢を測定することができる。
【0019】
また、複数のシール部が、連結部によって同一平面上に連結されるので、身体(特に胸部や背部)に装着し易く長時間の装着においても違和感を少なくすることができる。
【0020】
また、連結部が略T字状又は略Y字状若しくは略L字状のシートからなり、端部や角部に3つのシール部を備えているので、シール部及び連結部を一体としつつも、身体の接触部分を少なくすることができ、被検者にとって違和感の少ない生体センサ装置とすることができる。
【0021】
また、連結部を伸縮性を有するネット部材から構成しているので、睡眠時や運動時においても身体にフィットし、かつ通気性も高めることもできるので、被検者の違和感をさらに軽減することができる。
さらに、連結部は伸縮性を有しているので、体形が異なる被検者に対しても適切な位置にシール部を貼着させることができる。したがって、1つの生体センサ装置で、多様な体形の被検者に対応することができるので、低コストの生体センサ装置を得ることができる。
【0022】
また、シール部に補強体を備えることでシール部の撓み強度を高めることができるので、シール部の皮膚巻き込みを抑止することができ、正確なデータを計測することができる。
【0023】
また、温度センサを備えているので、深部体温や皮膚温を計測することができる。そして、この温度データを睡眠開始時刻の客観材料を得ることができる。
加えて、オキシセンサを備えているので、被検者の酸素飽和度を計測することで、無呼吸による酸素飽和度の低下を知ることができ、睡眠時無呼吸症候群における無呼吸状態が発生しているか否かの判断材料とすることができる。
さらに、マイクロフォンを備えることで、鼾、喘息、咳、心音等を計測することができる。つまり、鼾を計測することによって、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の初期判断の判断材料を得ることができ、喘息や咳を計測することによって、呼吸に起因する睡眠障害の判断材料を得ることができ、心音を計測することによって、心機能の判断材料とすることができる。
【0024】
また、シール部の1つを剣状突起の体表面に貼着するので、被検者が肥満体型の場合、腹部にシール部を貼着するときに比べて肉(脂肪)による影響を受けにくく、より正確な姿勢や体動を計測することができる。また、剣状突起の体表面に貼着するシール部に、温度センサを備えている場合には、深部体温を計測することができる。
【0025】
また、貼り付け補助手段をシール部に備えているので、一人でも容易に身体に貼着することができる。
【0026】
また、シール部の身体との接触面との反対面に記録手段を備えるので、シール部と記録手段とを一体化することができる。
一方、記録手段を備えたベース部をベルト部材で身体に装着しているので、シール部の身体への装着性を高めることができ、大きな体動があったときでも身体に装着した状態を保つことができる。
【0027】
また、無線手段によって心電電極及び3軸加速度センサからの出力信号を外部記録部に送信して記録するので、記録媒体の大きさや重量等を考慮する必要性が無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本願発明に係る生体センサ装置の一実施例を説明する。
本願発明に係る生体センサ装置1は、例えば図1に示すように、3つのシール部2(2a,2b,2c)を、略T字形状の連結部3で略同一平面上に連結し、被検者の胸部(身体)に装着したときに下半身側(下方側)に位置するシール部2cにはベース部4を備えている。また、ベース部4と頭部側(上方側)に位置する前記シール部2a,2bとはケーブル7で接続し一体化している。
【0029】
前記シール部2は、図2に示すように、心電信号を計測するための心電電極5と、身体の動きや姿勢を計測するための3軸加速度センサ6とを備え、これらを皮膚S(図3参照)に貼着させるためのパッチ8によって構成されている。また、シール部2は、心電電極5と3軸加速度センサ6からの出力信号を送信する複数の信号線と該3軸加速度センサに電力を供給するための電力用線とを纏めたケーブル7が接続されている。前記シール部2は、正面視においてほぼ矩形をしているが、略円形や略楕円形や略瓢箪形等の形状であってもよい。また、シール部2は図3等に示すように、可撓性を有する板状(又はシート状)に構成され、前記連結部3とほぼ同じ厚さ又は連結部3よりも厚いものである。
【0030】
前記生体センサ装置1は、前記3つのシール部2,…,2を被検者の皮膚に貼着させるものであり、図1に示すように、シール部2aは被検者の右胸部に、シール部2bは左胸部に、シール部2cは正面視の体軸に沿って位置するようにそれぞれ貼着される。前記シール部2aとシール部2bとは、正面視において該シール部2aと該シール部2bとが同じ高さで、且つ該2つのシール部2a,2bの略中間位置に体軸(背骨)が位置するように貼着される。そして、前記シール部2cは、正面視において、胸骨の剣状突起の体表面に位置するように貼着される。なお、前記シール部2a,2b,2cは他の体表面に貼着されてもよい。
【0031】
前記シール部2に備えられる前記心電電極5は、金属、導電性ゴム、導電性繊維等の部材から構成されており、図3に示すように、皮膚Sに接触させて心電信号を計測可能としている。なお、皮膚Sと心電電極5との間に導電性樹脂等を備えさせて心電信号が計測できるようにしてもよい。
また、前記3軸加速度センサ6は、身体の左右方向(x軸)、前後方向(y軸)、上下方向(z軸)の3つの直交方向の加速度と重力方向とを検出するものである。図2及び図3では、心電電極5と3軸加速度センサ6とが皮膚Sとの接触面8sに沿うように隣接して配置しているが、それらを離間して配置したり、厚さ方向に並べて配置してもよい。
【0032】
このように、心電電極5と3軸加速度センサ6とを備えたシール部2を、右胸部(付近)と左胸部(付近)と剣状突起(付近)の体表面にそれぞれ装着させることで、これら3箇所からの心電信号を24時間(つまり、睡眠時や活動時の双方で)計測することができる。
また、3軸加速度センサからの出力信号から、それぞれの装着位置の3軸方向の加速度と重力方向とを計測することができるので、動作の有無(静止しているのか動作しているのか)だけでなく、寝返り等の小さな体動や、体動の種類や姿勢も測定することができる。また、複数の加速度センサからの出力信号とその貼付位置に基づいて出力信号を補正することができるので、体型(表皮や肉付き)による影響をなくし、正確な姿勢を計測することができる。
特に、正面視において剣状突起の体表面にシール部2cを貼付し、左胸部及び右胸部の双方に体軸から略同じ距離となる位置にシール部2a,2bを貼付しているので、前後運動、左右運動、回転運動(体軸を中心とした回転運動)等の体動を明確に計測することが可能となる。さらに、シール部2cを剣状突起の体表面に貼着するので、被検者が肥満体型の場合、腹部にシール部2cを貼着するときに比べて肉(脂肪)による影響を受けにくく、より正確な姿勢や体動を計測することができる。
また、シール部2が皮膚Sから剥がれたときには、該シール部2に備えられた心電電極からの出力信号が異常な値となり、シール部2が皮膚に貼着しているか否かが明確に分かるので、剥がれたシール部2の3軸加速度センサからの出力信号をエラーとすることができ、誤計測を防止することができる。
【0033】
また、シール部2のパッチ8の皮膚Sとの接触面8sは、貼付性が備えられており、睡眠時や運動時でも身体に貼着した状態で心電信号や身体の動きを計測可能にしている。
シール部2(パッチ8)は、厚さが薄くかつ軽量である方が、被検者に違和感(不快感)を与えることがなく好ましい。
しかし、軽量で薄いシール部2(パッチ8)を用いると、シール部2を皮膚で巻き込むことがあった。つまり、皮膚巻き込みによって、3軸加速度センサも皮膚に巻き込まれ、正常な姿勢を計測できないことがあった。
そこで、図3(a)に示すように、パッチ8に補強体を備えず、撓み強度の高い材質から構成し、パッチ8の皮膚巻き込みを防止するようにしてもよい。また、パッチ8の撓み強度が低いときには、図3(b)に示すように、撓み強度の高い補強板9を前記接触面8sの反対側の面に備えさせ、シール部2の撓み強度を高めてもよい。加えて、図3(c)に示すように、撓み強度の高い複数の軸部材10,…,10をパッチ8の内部に備えさせ、シール部2の撓み強度を高めてもよい。
このようにパッチ8に撓み強度の高い材質を用いたり、撓み強度の高い補強板9や軸部材10をパッチ8に備えさせることによってシール部2の撓み強度を高め、皮膚によるシール部2の巻き込みを防止することができ、3軸加速度センサ6の皮膚巻き込みによる誤計測を防ぐことができ、より正確な体動を計測することができる。
なお、パッチ8に複数の通気孔を設け、長時間連続して貼着したときでもかぶれを少なくするようにしてもよい。
【0034】
また、図10に示すように、シール部2,…,2を身体に貼り付ける方向を視認可能にするために、各シール部2の上部(上端)を着色させた貼り付け補助手段14を備えさせ、シール部2の貼着方向がすぐに分かるようにすることで、一人で容易に装着できるようにしてもよい。
貼り付け補助手段14としては、シール部2を着色させるだけでなく、シール部2の上面(接触面8sの反対側の面)に矢印(例えば、上向きの矢印)を表示させて、貼着方向がすぐに分かるようにし、一人で容易に装着できるようにしてもよい。
また、貼着する順序(例えば、シール部2cの上面に「1」、シール部2bの上面に「2」、シール部2aの上面に「3」の数字)を示し、装着する順序を示すだけでなく、数字の向きから装着する方向も同時に分かるようにしてもよい。
【0035】
前記ベース部4は、図11に示すように、前記3軸加速度センサ6等に電力を供給するバッテリー11と、前記心電電極5からの出力信号と前記3軸加速度センサ6からの出力信号とを受信し増幅する増幅手段(図示しない)と、増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換器(図示しない)、記録媒体13に信号を記録する記録手段12とを備えており、図1及び図4に示すように、頭部側のシール部2a,2bからの出力信号を送信するケーブル7,7が接続されている。ベース部4は、下半身側のシール部2cの上面(皮膚との接触面8sとの反対面)に備えられ、該シール部2cに備えられた心電電極5と3軸加速度センサ6からの出力信号を受信できるように配線されている。記録媒体13は、小型かつ軽量な記録媒体が好ましく、SDメモリーカード等のような半導体を用いた記録媒体が好ましいが、その他の記録媒体を用いてもよい。
上述のように、ベース部4を前記シール部2の上面に備えさせて一体化させることによって装着時の被検者の違和感を軽減することができる。したがって、生体センサ装置1を装着していない状態に近い睡眠状態のデータを測定することができる。
なお、ベース部4を前記シール部2cの上面に備えさせて一体化させるときには、シール部2に3軸加速度センサ6を備えさせる変わりに、ベース部4に備えさせてもよい。
【0036】
前記連結部3は、シート状のネット部材から構成し、通気性を高め被検者のかぶれが発生しにくくすることが好ましい。なお、連結部3を伸縮性を有するネット素材から構成させて、睡眠時や運動時においても身体にフィットするようにして被検者の違和感を軽減してもよい。
また、連結部3には前記ケーブル7を収容するための中空の筒部(図示しない)が備えられ、該筒部内にケーブル7を撓ませて(蛇行させて)収容することで、連結部3が伸長したときにも、ケーブル7がシール部2とベース部4とを接続するようにしている。
上述のように、連結部3は伸縮性を有しているので、体形が異なる被検者に対しても適切な位置にシール部2,…,2を貼着させることができる。したがって、1つの生体センサ装置1で、多様な体形の被検者に対応することができるので、低コストの生体センサ装置を得ることができる。
なお、布等の伸縮性の無い(伸縮が殆ど無い)素材から構成し、各シール部2,…,2間の距離を変更でき難くしてもよい。
【0037】
なお、生体センサ装置1には、心電電極5及び3軸加速度センサ6以外の体温(皮膚温や深部体温)を計測するための温度センサ(図示しない)、被検者の酸素飽和度を計測するためのオキシセンサ(例えば、反射型オキシセンサ)(図示しない)、鼾、喘息、咳等の呼吸音や心音を計測するためのマイクロフォン(図示しない)等の各種センサを備えさせてもよい。前記温度センサ、前記オキシセンサ、前記マイクロフォン等のセンサは、生体センサ装置1にそれぞれ1つ備えていればよいが、2つ以上を備えさせてもよい。
【0038】
前記温度センサは、特に剣状突起の体表面に貼着されるシール部2cに備えさせることにより、深部体温を計測することが可能となる。なお、他のシール部2a,2bにも温度センサを備えさせて、皮膚温を計測してもよい。温度センサを備えさせることにより、睡眠開始時(寝入りばな)に自律神経(交感神経、副交感神経支配下のバランス変動)の影響から、末梢血管拡張が起き体表温度が上昇すること(例えば、寝汗をかくこと)が知られており、睡眠開始時刻の客観判断の材料とすることができる。
【0039】
また、前記オキシセンサは、被検者の酸素飽和度を計測することで、無呼吸による酸素飽和度の低下を知ることができ、睡眠時無呼吸症候群における無呼吸状態が発生しているか否かの判断の材料とすることができる。
【0040】
さらに、鼾の発症頻度は睡眠障害の特に閉塞性睡眠時無呼吸症候群の初期判断に重要とされており、現状では家族等に観察を要請するなどして鑑別診断時の重要な判断材料としている。加えて、喘息や咳などの呼吸音を計測することで、呼吸に起因する睡眠障害の判断材料としている。そこで、生体センサ装置にマイクロフォンを備えさせて、睡眠時の鼾、喘息や咳等の呼吸音を計測することで、これらを定量的に計測することが可能となる。また、マイクロフォンで心音を計測することにより、心機能の判断材料とすることもできる。
前記マイクロフォンは、前記シール部2やベース部4に備えさせるが、特に身体側に指向性が高くなるように、マイクロフォンの指向方向が身体側に配置されるように、シール部2やベース部4に備えることが好ましく、このように配置することで心音等の小さな音も計測することが可能となる。
【0041】
なお、図1では、連結部3は、略T字状の形状をし、この3つの端部のそれぞれにシール部2,…,2を備えさせているが、図5に示すように、略Y字状の連結部3から構成してもよい。なお、前記シール部2a,2b,2cの貼着位置は、図1で示した略T字状の形状をしたものと同じである。そして、前記略Y字状の連結部3で3つのシール部2a,2b,2cを連結するときは、生体センサ装置1の左右方向の中央位置が分かりやすく、体軸と前記シール部2aの距離と、体軸と前記シール部2bとの距離を同じになるように貼着しやすくなる。
また、図8に示すように、連結部3を略L字状のシートから構成し、L字状のシートの2つの端部及び1つの角部のそれぞれに3つのシール部2,2,2を備えさせてもよい。L字状の連結部3の上部に位置するシール部2eは、胸骨体(胸骨体の胸骨柄側)の体表面に貼着され、もう一方の端部に位置するシール部2gは、該シール部2eより下半身側の左胸部に貼着され、角部に位置するシール部2fは、剣状突起の体表面に貼着される。また、角部に位置するシール部2fには、図1で示したシール部2cと同様にベース部4が備えられている。
【0042】
また、図9に示すように、腰に装着したベルト15に前記ベース部4を備えさせ、略T字状の連結部3の3つの端部にそれぞれ備えている3つのシール部2a,2b,2cから出力された信号をケーブル7を介してベース部4に備えた記録媒体に記録させてもよい。このようにベース部4とシール部2とを別体に構成することにより、シール部2,…,2の貼着時の違和感を軽減することができる。さらに、シール部2や連結部3以外のベルト15にベース部4を備えさせているので、シール部2の身体への装着性を高めることができ、大きな体動があったときでも身体に装着した状態を保つことができる。
【0043】
また、図6に示すように、ベース部4を下半身側のシール部2cに設けず、T字状の連結部3に設けてもよい。この場合は、ベース部4が連結部3に備えられているので、該連結部3及び前記ケーブル7と各シール部2とがコネクタ等により取り外し可能な構成にすることで、シール部2のみを交換可能とすることができる。したがって、心電電極5や3軸加速度センサ6が故障したときや、前記パッチ8の貼着力が弱くなったときに容易にシール部2のみを交換することができる。
【0044】
さらに、図1、5、6では、生体センサ装置1は3つのシール部2を備えていたが、3つに限定するものではなく、図7に示すように、下半身側のシール部2cの上方(頭部側)にシール部2dを備えさせてもよい。図7のようにシール部2dを設けることにより。より詳細なデータを得ることができ、正確な睡眠状態を計測することができるようになる。
なお、3軸加速度センサ6を四肢に備えさせ、それらからの出力信号を記録媒体に記録するようにしてもよい。四肢に3軸加速度センサ6を備えさせることにより、手や足の動きも計測することができ、姿勢をより詳細に測定することができる。
【0045】
なお、図12に示すように、記録媒体13及び記録手段12をベース部4の外部の外部記録部16に備えさせるとともに、ベース部4に無線送信手段17を備えさせて、前述の各種センサ(心電電極、3軸加速度センサ、温度センサ、オキシセンサ、マイクロフォン)からの出力信号を外部の記録媒体に記録させることもできる。このように、記録媒体13を身体に装着しないので、記録媒体の大きさや重量等を考慮する必要性が無いだけでなく、送信されたデータをネットワーク(例えば、インターネット)を介して解析装置に送信することもできる。
また、被検者の睡眠場所と同じ部屋に前記外部記録部16を設置するときには、外部記録部16に、受信手段18、光センサ19を備えさせてもよい。前記光センサ19によって、消灯時間、睡眠時の照度、起床時間、起床時の照度等を計測することができる。また、外部記録部16に前記マイクロフォン20を備えさせてもよく、鼾、喘息、咳等を計測することもできる。
【0046】
また、前記シール部2,…,2のそれぞれにバッテリー11と送信手段とを備えさせ、外部には受信手段と記録媒体と記録手段とを備えさせることにより、生体センサ装置1からケーブル7を無くし、外部の記録媒体に出力信号を記録させるようにしてもよい。このように外部に備えさせた記録媒体に出力信号を記録することにより、睡眠状態をリアルタイムに解析することもできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】生体センサ装置を身体に装着したときの説明図である。
【図2】シール部の正面図である。
【図3】シール部の断面図である。
【図4】ベース部を備えたシール部の断面図である。
【図5】連結部が略Y字状の生体センサ装置の正面図である。
【図6】連結部にベース部を備えた生体センサ装置の正面図である。
【図7】4つのシール部を備えた生体センサ装置の正面図である。
【図8】連結部が略L字状の生体センサ装置の正面図である。
【図9】ベルトにベース部を備えさせた生体センサ装置の説明図である。
【図10】貼り付け補助手段を備えた生体センサ装置の正面図である。
【図11】ベース部に記録媒体を備えた生体センサ装置のブロック図である。
【図12】外部記録部に記録媒体を備えた生体センサ装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
1 生体センサ装置
2 シール部
3 連結部
4 ベース部
5 心電電極
6 3軸加速度センサ
7 ケーブル
8 パッチ
8s 接触面
9 補強板
10 軸部材
11 バッテリー
12 記録手段
13 記録媒体
14 貼り付け補助手段
15 ベルト
16 外部記録部
17 無線送信手段
18 受信手段
19 光センサ
20 マイクロフォン
S 皮膚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電信号を計測する心電電極と身体の動きを計測する3軸加速度センサとを身体に貼り付けるためのシール部に備えさせ、前記シール部の複数を連結部材を介して連結することにより身体の複数箇所に貼り付け可能とし、前記各シール部の心電電極及び3軸加速度センサからの出力信号を記録するための記録媒体と該記録媒体に記録するための記録手段とを該シール部又は前記連結部の特定箇所あるいは外部に備え、前記記録手段と前記心電電極及び3軸加速度センサとを無線又はケーブルにて接続したことを特徴とする生体センサ装置。
【請求項2】
前記複数のシール部は、連結部によって略同一平面上に連結されてなる請求項1記載の生体センサ装置。
【請求項3】
前記連結部は略T字状若しくは略Y字状であり、前記連結部の3つの端部に前記シール部をそれぞれ備える、
又は、前記連結部は、略L字状のシートであり、前記連結部の2つの端部及び1つの角部のそれぞれに前記シール部を備えてなる請求項1又は2記載の生体センサ装置。
【請求項4】
前記連結部は、伸縮性を有するネット部材から構成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の生体センサ装置。
【請求項5】
前記シール部は、単又は複数の補強体を備えてなる請求項1〜4のいずれかに記載の生体センサ装置。
【請求項6】
温度センサ、オキシセンサ、マイクロフォンの中の少なくとも1つを備えてなる請求項1〜5のいずれかに記載の生体センサ装置。
【請求項7】
前記シール部の1つは、胸骨の剣状突起の体表面に貼着されてなる請求項1〜6のいずれかに記載の生体センサ装置。
【請求項8】
前記複数のシール部を身体に貼り付ける順番、又は貼り付ける方向を視認可能にするための貼り付け補助手段を前記シール部に備えさせてなる請求項1〜7のいずれかに記載の生体センサ装置。
【請求項9】
前記記録手段及び前記記録媒体を備えたホルダー部は、1つのシール部の身体に接触する面の反対面に備える、
又は、前記記録手段及び記録媒体とを備えたホルダー部をベルト部材で身体に装着してなる請求項1〜8のいずれかに記載の生体センサ装置。
【請求項10】
前記心電電極及び3軸加速度センサから出力される信号を無線にて送信する送信手段を備えたホルダー部を、1つのシール部の身体に接触する面の反対面、又は身体に装着したベルト部材に備えさせ、
前記送信手段から送信された信号を受信する受信手段と、前記記録手段と前記記録媒体とを外部記録部に備えさせてなる請求項1〜8のいずれかに記載の生体センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−296266(P2007−296266A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129000(P2006−129000)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(505210746)フィジオトレース株式会社 (1)
【Fターム(参考)】