説明

生体リズムに調和した目覚まし時計

【課題】熟睡期でないレム睡眠時間帯に、使用者が好む音声と光によって心地良く且つ確実に目覚めることができる生体リズムに調和した目覚まし時計を提供する。
【解決手段】現在時刻データを出力する計時手段7と、起床時刻を設定する起床時刻設定手段2と、前記計時手段7による現在時刻データと前記起床時刻設定手段2による起床時刻とから、使用者のレム睡眠期における前記起床時刻の直前の時刻を補正起床時刻として算出する補正起床時刻算出手段3と、特定の波長を有する光を出力する照明手段5と、特定の音声を出力する発声手段6と、前記照明手段を制御する照明制御手段41及び前記発声手段を制御する音声制御手段42を備えた制御手段4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーカディアンリズムなどの生体リズムに調和したアラーム動作を行なう目覚まし時計に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠状態の態様にレム(Rapid eye movement)睡眠とノンレム睡眠の二種類あることが知られており、このうち身体の骨格筋が弛緩状態にあるのに脳が覚醒状態にあるレム睡眠中に目覚めるのが最も生体リズムに調和していて好ましいものとされている。
ところが、従来の目覚まし時計は単に使用者が予め設定した時間にアラーム動作を行なうだけのものであり、生体リズムがほとんど考慮されていなかった。
そのため、睡眠を効果的に行えるようにするため、サーカディアンリズム(概日リズム)など生体のリズムに合わせてアラーム動作を行なうようにした目覚まし時計が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に、自動的に使用者のレム睡眠中にアラームを発生させて目覚めさせるようにしたアラーム時計が開示されている。
【0004】
図4を使用して特許文献1に開示された従来技術の概略を説明する。
図4は特許文献1に示されたアラーム時計の構成を示すブロック図であり、図中100は現在時刻を計時する時計部、200は使用者が設定した任意の時刻を第1のアラーム時刻として記憶する第1のアラーム時刻記憶手段、300は使用者の寝返りを検出する赤外線センサ等からなる寝返り検出手段、400は寝返り検出手段300で寝返りを検出する毎にリセットスタートし、所定時間計時したときに計時終了信号を出力する計時手段である。
【0005】
500は使用者が任意に設定したノンレム睡眠期とレム睡眠期とからなる睡眠周期の期間を記憶する睡眠周期記憶手段、600は計時手段から計時終了信号を受けたときに、寝返り検出手段で最後に寝返りを検出した時刻の所定時間前の時刻を入眠時刻とし、この入眠時刻と、第1のアラーム時刻記憶手段に記憶している第1のアラーム時刻と、睡眠周期記憶手段に記憶している睡眠周期に基づいて、第1のアラーム時刻に最も近いレム睡眠期の終了時刻を第2のアラーム時刻として算出する算出手段、700は第1のアラーム時刻または第2のアラーム時刻と、時計部で計時している現在時刻とが一致したときにアラーム音を出力する報知手段、800は各種スイッチ群からなる操作部、900は前記各手段の諸動作を制御する制御手段である。
【0006】
そして、寝返り検出手段300による寝返り検出から計時手段400の計時終了までに寝返りを検出しなかった際に、算出手段600で入眠時刻を算出し、この入眠時刻、第1のアラーム時刻記憶手段200に記憶している第1のアラーム時刻および睡眠周期記憶手段500に記憶している睡眠周期に基づいて、第1のアラーム時刻以前のレム睡眠期における時刻を第2のアラーム時刻として算出し、この第2のアラーム時刻に、報知手段700からアラーム音を発生させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−160172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1の開示技術においては、赤外線センサによる寝返り検出手段を用いているので構造が複雑で高価であることや、就寝時や起床時に周囲の明るさが制御されないこと、またアラーム動作が音のみで使用者を目覚めさせるものであるため動作が効果的でないという問題点がある。
【0009】
そこで本発明は、前記した従来の目覚まし時計の問題点を克服すると共に、レム睡眠状態から起きるようにすると心地良く且つ確実に目覚めることができるという生体リズムに調和した目覚まし時計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の構成を詳述すれば、請求項1に係る発明は、設定した時刻に使用者を目覚めさせる動作を行なう目覚まし時計において、現在時刻データを出力する計時手段と、起床時刻を設定する起床時刻設定手段と、前記計時手段による現在時刻データと前記起床時刻設定手段による起床時刻とから、使用者のレム睡眠期における前記起床時刻の直前の時刻を補正起床時刻として算出する補正起床時刻算出手段と、特定の波長を有する光を出力する照明手段と、特定の音声を出力する発声手段と、前記照明手段を制御する照明制御手段及び前記発声手段を制御する音声制御手段を備えた制御手段とを具備することを特徴とする生体リズムに調和した目覚し時計である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る生体リズムに調和した目覚まし時計によれば、使用者は熟睡期でないレム睡眠時間帯に、使用者が好む音声と光による刺激が加わるので確実且つきわめて心地良く目覚めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る生体リズムに調和した目覚まし時計の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る生体リズムに調和した目覚まし時計の一実施形態を示す外観図である。
【図3】本発明に係る生体リズムに調和した目覚まし時計の回路図である。
【図4】従来例の目覚まし時計の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目覚まし時計は、使用者が起床したい時間を設定すると自動的に照明が徐々に暗くなり、起床時間が近づくと使用者が設定した時刻より前のレム睡眠期にほんのりと照明が点灯し徐々に照度が上がり、使用者にとって心地よい音声と光によって使用者を気持ち良く目覚めさせ、起床を規則正しくかつ楽しくさせるものである。
【実施例】
【0014】
以下、図1から図3に基づき本発明に係る目覚まし時計の具体的実施例を説明する。
【0015】
図1において、目覚まし時計1は起床時刻設定手段2と、補正起床時刻算出手段3と、制御手段4と、この制御手段4からの出力信号によって作動する照明手段5及び発声手段6と、計時手段7、表示手段8から構成され、さらに制御手段4は照明制御手段41と音声制御手段42を備えている。
【0016】
起床時刻設定手段2は使用者が遅くもこの時間までに起床したいとする起床時間をスイッチ操作により設定する。当該起床時刻設定手段2は、使用者が起床時間を設定すると起床時刻データTsを出力し、補正起床時刻算出手段3に入力する。
【0017】
補正起床時刻算出手段3は、起床時刻データTsを入力し、次の〔式1〕に基づき、使用者のレム時間帯における起床時刻データTs直前の補正起床時刻データTaを出力し、制御手段4に入力する。
〔式1〕
Ta=Tb+(TRUNC(Ts−Tb−0.5)/1.5)×1.5+0.5

ここでTaは補正起床時刻データ、Tbは現在時刻データ、Tsは使用者が起床時刻設定手段2で設定した起床時刻データで、各々時刻の時間部分を24時間表示で表し、時刻の分部分を10進法で表したものである。また“TRUNC”は、後続するカッコ内の小数点以下を切り捨てる演算子である。
【0018】
さらに数値例を用いて詳述する。
現在時刻が22時30分で使用者が設定した起床時刻は午前6時である場合は、Tb=22.5時、Ts=30時(午前6時)となり、〔式1〕は以下の様になる。
〔式1〕
Ta=22.5+(TRUNC(30−22.5−0.5)/1.5)×1.5+0.5
=22.5+(TRUNC(4.66・・・)×1.5+0.5
=22.5+(4)×1.5+0.5
=22.5+6+0.5
=29(午前5時)
すなわち補正起床時刻データTaは、Ta=午前5時、と算出される。
【0019】
制御手段4は照明制御手段41と音声制御手段42とを備えており、補正起床時刻データTaと計時手段7が出力する現在時刻データTbとを入力して、照明制御信号Dcと音声制御信号Vcと時刻情報データJdを出力し、各々照明手段5、発声手段6及び表示手段8に入力する。
【0020】
さらに詳述する。
制御手段4の照明制御手段41は補正起床時刻データTaを入力すると照明消灯信号Dc1を出力し照明手段5に入力する。照明手段5は照明消灯信号Dc1を入力すると照明を徐々に暗くしたのち消灯する。
【0021】
また、照明制御手段41は、補正起床時刻データTaより30分前の時刻と現在時刻データTbとが一致すると、照明起床信号Dc2を出力し照明手段5に入力する。照明手段5は照明起床信号Dc2を入力すると、所定波長の光を発光する。この時、発光開始当初の照度は低く、徐々に時間が経つにつれて照度が高くなるよう設定する。なお、本実施例では所定の波長とは420nmである。
【0022】
照明手段5においては図示していないが、タッチセンサを備えており、照明手段5に指が触れると点灯から消灯あるいは、その逆に消灯から点灯にすることが可能である。但し、照明手段5が徐々に照度を上げている状態で照明手段5に触れると所定の照度になるが、この動作については〔動作説明〕にて詳述する。
【0023】
制御手段4の音声制御手段42は補正起床時刻データTaと計時手段7からの現在時刻データTbとを入力して、補正起床時刻データTaと現在時刻データTbが一致したら、起床音声信号Vc1を出力し発声手段6に入力する。
【0024】
発声手段6は、起床音声信号Vc1を入力すると、使用者が予め設定した例えば母親とか恋人など使用者にとって大事な人物の声を出力し、使用者の起床を促す。なお音声音源データは図示してないが制御手段4に備えられている。
【0025】
計時手段7は、水晶発振子による計時回路であり年、日、時、分を計時し、現在時刻データTbとして出力する。
表示手段8は、制御手段4から現在時刻データTbと起床時刻データTsで構成される時刻情報データJdを入力し、例えば液晶表示する。また、目覚まし動作をセットしたことを示す目覚ましマークを表示する。
【0026】
〔外観説明〕
図2を用いて本発明に係る目覚まし時計1の外観を説明すれば、目覚まし時計1の上面には、照明手段5としてのライト5aが設けられ、使用者の主として頭部周辺を照明する。
【0027】
また、発声手段6としてのダイナミックスピーカ6aは、使用者を目覚めさせる音声を出力する。
さらに、表示手段8としての液晶表示部8aは、起床時刻表示部81と現在時刻表示部82と目覚ましマーク83とを備えている。
また、起床時刻設定手段2は、設定動作を開始する設定ボタン2aと、設定数字を増加する上ボタン2bと、設定数字を減少する下ボタン2cとを備えている。
【0028】
〔動作説明〕
次に、図1及び図2を用いて本発明に係る目覚まし時計1の動作につき説明する。
【0029】
図1において使用者は起床時刻設定手段2を用いて、起床時刻すなわち自分が遅くもこの時間には起床したいと思う時刻を設定する。
図2を用いてさらに詳細に説明する。
【0030】
図2において起床時刻設定手段2の設定ボタン2aは所定の時間以上押すと、起床時刻表示部81の“時”の表示部が点滅するので上ボタン2bと下ボタン2cによって所望の時間にあわせ、再度設定ボタン2aを押して起床時刻表示部81の“分”の10の桁の表示部を点滅させ、上ボタン2bと下ボタン2cによって所望の数字にあわせ、再度設定ボタン2aを押して起床時刻表示部81の“分”の1の桁の表示部を点滅させ、上ボタン2bと下ボタン2cによって所望の数字にあわせる。
【0031】
使用者が起床時刻Tsの設定を終了すると、目覚ましマーク83が点灯するとともに、図1に示す起床時刻設定手段2は、起床時刻データTsを出力し、補正起床時刻算出手段3に入力する。
補正起床時刻算出手段3は起床時刻データTsを入力すると内部の演算機能を用いて、使用者のレム時間帯における起床時刻データTs直前の補正起床時刻データTaを出力し、制御手段4に入力する。
【0032】
制御手段4の照明制御手段41は補正起床時刻データTaを入力すると照明消灯信号Dc1を出力し照明手段5に入力する。照明手段5は照明消灯信号Dc1を入力すると、ライト5aの照度を徐々に下げ一定時間後消灯する。
【0033】
制御手段4は計時手段7からの現在時刻データTbを監視し、補正起床時刻データTaの30分前になると、照明制御手段41は照明起床信号Dc2を出力し照明手段5に入力する。
照明手段5のライト5aは所定の波長である420nmの光を発光する。発光開始当初は例えば50ルクス程度の低い照度であるが、次第に照度が上がり30分のちには2500ルクスの所定の照度になる。
【0034】
同時に制御手段4の音声制御手段42は、制御手段4が備えた図示していない音声記憶データから、予め定められた種類の音声の音源たとえば母親の声の音源を用いて、“朝ですよ、起きなさい”と、使用者を目覚めさせる音声を発声手段6によって繰り返し出力し、光と音声とで使用者を目覚めさせる。
【0035】
使用者が目覚め、ライト5aか、または起床時刻設定手段2の何れかのボタンに触れると、目覚まし動作は停止する。すなわち、発声手段6からの音声による目覚まし動作が中止し、ライト5aの照明は、もし照度を徐々に高くなる状態であれば、所定の2500ルクスの照度になり、既に所定の2500ルクスの照度になっていれば、その照度を維持する。
以上の様に、使用者はレム時間帯に、目覚まし時計1による光と音声による目覚めさせる動作によって目覚めることができる。
【0036】
〔回路説明〕
図3を用い、図1を併用して本発明の目覚まし時計1の回路構成を説明する。
図3に示す様に目覚まし時計1は、起床時刻設定手段2としてのボタン2a〜2cと、マイクロプロセッサ9と、ライト5aと、ダイナミックスピーカ6aと、液晶表示器8aと、メモリ10及び電源11とから構成される。
【0037】
3つのボタン2a〜2cは機械的な押しボタンであって、起床時刻データTsをマイクロプロセッサ10に入力する。マイクロプロセッサ10は、目覚まし時計1の全体の動作を制御し、時刻情報データJd、照明制御信号Dc、音声制御信号Vcを、各々液晶表示器8a、ライト5a、ダイナミックスピーカ6aに出力する。
なお、発声手段6としてのダイナミックスピーカ6aは、他の例えばピエゾ振動子を用いたものでもよい。
【0038】
また、照明手段5としてのライト5aは、実施例では白熱電球を用いたが、他のLED(Light Emitting Diode)方式でも可能である。なお、ライト5aには図示していないが振動センサが貼付されており、ライト5aに衝撃や振動が加わるとライト5aの点灯や消灯を制御できる様に構成されている。
【0039】
マイクロプロセッサ9は、図1において、補正起床時刻算出手段3と制御手段4とをソフトウエアモジュールの形態で有している。
メモリ10は、EEPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性記憶素子により構成され、時刻情報データJdや、ダイナミックスピーカ6aから目覚まし動作において出力する音声音源のデータを記憶する。
【0040】
液晶表示部8aは液晶表示素子を用いたディスプレイであるが、他の例えば無機EL(Electro Luminescence)であっても良い。
また、電源11は1次電池や充電式2次電池、あるいは商用電源など何れによっても実現可能である。
【0041】
以上述べた様に本発明によれば、目覚まし時計1によって、使用者は熟睡期でないレム時間帯に、使用者が好む音声と光による刺激によって快適に目覚めることができる。
【符号の説明】
【0042】
1:目覚まし時計
2:起床時刻設定手段
2a:設定ボタン
2b:上ボタン
2c:下ボタン
3:補正起床時刻算出手段
4:制御手段
41:照明制御手段
42:音声制御手段
5:照明手段
5a:ライト
6:発声手段
6a:ダイナミックスピーカ
7:計時手段
8:表示手段
8a:液晶表示部
81:起床時刻表示部
82:現在時刻表示部
83:目覚ましマーク
9:マイクロプロセッサ
10:メモリ
11:電源
100:時計部
200:第1のアラーム時刻記憶手段
300:寝返り検出手段
400:計時手段
500:睡眠周期記憶手段
600:算出手段
700:報知手段
800:操作部
900:制御手段

Ts:起床時刻データ
Ta:補正起床時刻データ
Dc:照明制御信号
Dc1:照明消灯信号
Dc2:照明起床信号
Vc:音声制御信号
Vc1:起床音声信号
Tb:現在時刻データ
Jd:時刻情報データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定した時刻に使用者を目覚めさせる動作を行なう目覚まし時計において、現在時刻データを出力する計時手段と、起床時刻を設定する起床時刻設定手段と、前記計時手段による現在時刻データと前記起床時刻設定手段による起床時刻とから、使用者のレム睡眠期における前記起床時刻の直前の時刻を補正起床時刻として算出する補正起床時刻算出手段と、特定の波長を有する光を出力する照明手段と、特定の音声を出力する発声手段と、前記照明手段を制御する照明制御手段及び前記発声手段を制御する音声制御手段を備えた制御手段とを具備することを特徴とする生体リズムに調和した目覚し時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104831(P2013−104831A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250337(P2011−250337)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(596033303)株式会社アコーズ (7)
【Fターム(参考)】