説明

生体付着性医薬組成物

式(I)を有し、式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は式(II)を有する基であり、Rは低級アルキレンであり、であり、、R’は式(III)、(IV)及び(V)を有する基からなる群から選択され、式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、Rは水素又は薬理学的活性薬剤残基であり、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立に水素である化合物が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はDonald L.Barbeauにより2003年1月22日に出願された生体付着性抗炎症性医薬組成物と題した特許出願第10/348,851号に対する一部継続出願である。
【0002】
本発明は、独特な部位特異的且つ部位保持特性を有する新規医薬化合物に関するものである。この医薬化合物は、感染症、疼痛、生理不順、緑内障及び炎症を含むいくつかの医学上の障害の治療に有用である。一の態様では、本発明は胃腸の炎症の治療に有用な新規抗炎症性化合物に関する。本発明は更に、炎症性腸疾患に罹患している患者の胃腸(GI)管全体への抗炎症性化合物、特にメサラミン(5−アミノサリチル酸、5−ASA)、4−アミノサリチル酸(4−ASA)及び3−アミノサリチル酸(3−ASA)の送達を制御する方法に関する。本発明は、主に、メサラミン(5−ASA)などの抗炎症薬による炎症性腸疾患及び腸機能障害の治療に関する。徐放性、細菌媒介加水分解及び/又は胃腸炎症組織への接近が制限されているpH依存性放出製剤に依存する従来の確立した治療と異なり、本発明の組成物は胃腸管の全長を通してある部位を標的にし、臨床的に最も有効となる所へ薬剤を一貫して送達することができる。
【背景技術】
【0003】
炎症を減らすメサラミンの能力は十分に確立されている。しかし、その薬理活性は腸管内の薬剤が放出される部位によって決まるので、ある種の炎症性腸疾患では、その治療のための臨床上の効能はあまり確定的ではない。メサラミンは、腸炎症部位への局所作用を通じてアラキドン酸からのロイコトリエン及びプロスタグランジンの生産を抑制すると思われている。しかし、現行のメサラミン製品による前臨床試験及び臨床試験によると、これらの製剤は腸管全体で放出が変化し、炎症を減らすのに十分な時間炎症部位に保持されないことが示唆されている。更に、これらの製剤からの薬剤放出部位(十二指腸、空腸、回腸又は大腸)が異なると、薬剤の生体吸収及び代謝が劇的に異なる。腸内の異なる場所でのこれら市販製剤からの薬剤の放出及び保持の変動は、放出部位と異なる局所で誘発された炎症を有する患者の治療を特に困難にする。
【0004】
胃腸炎の患者を抗炎症性化合物で治療することは新しいことではなく、食品医薬品局(FDA)は大腸に発生するある種の炎症性腸疾患、即ち、潰瘍性大腸炎の患者をメサラミンで治療することを既に承認している。いくつかの異なる経口用又は直腸用のメサラミン製剤が、潰瘍性大腸炎の炎症の治療のために市販されている。しかし、クローン病の症状の改善においてはそれぞれ限定的な成功しか収めていない。現在利用できるメサラミン製剤での主な問題としては、異なる患者で炎症組織の部位に一貫してメサラミンを放出することができないこと、及び炎症の軽減に有効な時間メサラミンを炎症部位に局所的に届けることができないことがある。後者は一部は近位回腸におけるメサラミンの広範な吸収及び失活が原因である。皮肉にも、大腸の炎症の治療においてメサラミン製剤が臨床上の成功を収めていることは、大腸においてのみ薬剤を放出する更なるメサラミン製剤の開発を促した。
【0005】
遠位大腸炎の治療において、メサラミンの浣腸製剤(Rowasa(登録商標)浣腸)は有効であると考えられている。スルファサラジンの活性部分を同定する初期の研究において、遠位潰瘍性大腸炎患者をスルファサラジン、メサラミン又はスルファピリジンの浣腸剤で治療した。スルファサラジン及びメサラミン群の患者の4分の3は改善を示したが、スルファピリジン群では患者の約3分の1だけが改善した。これらのデータはメサラミンが活性治療成分であるとの仮説を裏づけ、また以降の研究は遠位大腸炎におけるメサラミン浣腸の効能を証明した。(Azad Khan他、ランセット2:892〜895(1977);Physician’s Desk Reference第55版、3160〜3162頁、Medical Economics出版(2001);米国特許第4,496,553号)。
【0006】
浣腸により経直腸で投与されたメサラミンは全身への吸収が限られ、その結果大腸の炎症の治療において優れた局所的な効果を有する。しかし、直腸に投与されたメサラミンはS字結腸大腸に局所的に作用するだけであり、この方法ではより近位の炎症は治療されない。更に、メサラミンの直腸投与に対する患者の服用遵守率は低く、大腸癌の増加と関連付けられている。経口投与によるメサラミンの送達は好ましい投与経路である。しかし、適当な製剤を得ることは困難であった。横行結腸より上に位置する炎症部位、特に近位小腸へのメサラミンの経口送達はより複雑であり、送達成功率及び治療上の有益性は胃排出時間及び腸管内滞留時間などの因子によって決まる。胃排出時間は個人によって異なり、同一個人においても(経口投与された)粒子(又は錠剤)の大きさによって、また患者が絶食若しくは非絶食の状態にあるかどうかによって異なることがある。回腸滞留時間も変化し、特に、短くなった小腸を有する外科的処置を受けたクローン病患者で重要である。腸管内保持は、小腸上部におけるメサラミンの吸収及び代謝に関連する。
【0007】
正確なターゲッティングのための経口用のメサラミンを製剤化する上での他の問題点は胃酸度であり、胃酸度は薬剤が腸に到達する前にそれらを破壊する。腸溶コーティングされた薬剤製剤及び胃加水分解に耐性のプロドラッグの開発及び商品化によりこの問題に対処してきた。
【0008】
腸溶コーティングされたメサラミン製剤としては、Asacol(登録商標)、Claversal(登録商標)及びPentasa(登録商標)がある。Asacol(登録商標)は、薬剤を遠位回腸及び大腸で放出する遅延放出アクリル樹脂(Eudrogit−S)でコーティングされている。Asacol(登録商標)上の樹脂はpH6以上でpH依存的にメサラミンを放出するのでメサラミンは遠位小腸及び大腸で放出され、潰瘍性大腸炎の治療に理想的な薬剤となっている。Claversal(登録商標)も、薬剤を遠位回腸及び大腸で放出する遅延放出アクリル樹脂(Eudrogit−L)でコーティングされている。Pentasa(登録商標)は、小腸遠位部及び全ての大腸を通してメサラミンを徐放的に放出する、エチルセルロースでコーティングされた徐放性メサラミン微粒剤を含む。したがって、Pentasa(登録商標)は潰瘍性大腸炎での使用に加えて、遠位回腸が侵された場合のクローン病の治療に適当と思われる。これらの製剤の各々は、メサラミンを炎症の部位、例えば遠位回腸及び大腸に送達するために異なる機構を使用する。しかし、それらは全て薬剤をより下部の小腸及び大腸に放出することによって、十二指腸及び空腸内のメサラミンの吸収が迅速な領域及びメサラミンが不活化される領域を迂回するように設計されていた。経口投与されるメサラミンの開発における革新的な方法及びその付随する問題は、米国特許第4,980,173号、第4,496,553号、第4,880,794号、及び第5,010,069号;並びに、Drugs 57(3);383〜408(1999)内のPrakash,A及びMarkham,Aによる総説に例示されている。
【0009】
この酸度の問題を解決する試みとしては、胃酸度に抵抗し、大腸内での細菌酵素による切断後に遊離の5−ASAを生成するプロドラッグ類、スルファサラジン(Azulfidine(登録商標))、オルサラジン(olsalazine)(Dipentum(登録商標))及びバラサラジド(balasalazide)(Colazide(登録商標))の使用がある。報告されている有害副作用に加えて、スルファサラジン、オルサラジン及びバラサラジドを患部に正確に狙いを定めることは、これらの化合物の細菌による切断に必要な結腸細菌叢の変動による制限を受ける。
【0010】
スルファピリジンの毒性作用は、スルファサラジンを使用する上での制限因子である。一般的な副作用としては、頭痛、悪心、食欲低下及び消化不良がある。これらの症状はスルファピリジンの血漿濃度に関係し、通常一日投薬量が3gを超えたときに起こる。スルファサラジンの相当な毒性、及び副作用による投薬の制限のために、近位小腸部の吸収を防止するために他の送達系を有するメサラミン製品を開発するための努力が払われた。
【化1】

【0011】
当初は1940年代に慢性関節リウマチの治療のために開発されたが、サリチル−アゾ−スルファピリジン、つまりスルファサラジンは大腸炎の治療に有効であることが直ちに認められた。アゾ結合でスルファピリジンの分子と結合した5−アミノサリチル酸(5−ASA)の分子からなり、スルファサラジンは最近まで50年以上の間潰瘍性大腸炎の治療の主流であった。スルファサラジンの活性部分は5−ASAであり、スルファピリジンは小腸での5−ASAの吸収を防止するための担体の働きをしている。遠位回腸及び大腸において、ほとんど全ての結腸細菌に存在する酵素であるアゾレダクターゼを有する細菌はこの分子を分裂して遊離の5−ASA及びスルファピリジンを放出する。スルファピリジンは大腸から容易に吸収され、肝臓でアセチル化され、グルクロン酸で抱合されて尿に排出される。5−ASAの吸収は最小限であり、大半はそのまま大便中に排出される。5−ASAの作用機構は結腸粘膜との直接接触により様々な炎症誘発性経路、例えばアラキドン酸や、スーパーオキシドジスムターゼの抑制から生じる、シクロオキシゲナーゼ及びリポキシゲナーゼ誘導生成物、例えばプロスタグランジン及びロイコトリエンを阻害することによる。
【0012】
スルファサラジンと類似のより新しい2つのアゾ結合プロドラッグはオルサラジン及びバルサラジドであり、これらの化学構造を以下に示す:
【化2】

【0013】
スルファサラジンと同様、これらの化合物のいずれにもアゾ結合が存在することで、小腸での吸収が阻止され、且つ薬剤の送達を主に大腸にすることができ、そこでは細菌性のアゾレダクターゼが5−ASAを遊離する。これらの薬剤は、したがって、スルファサラジンと同じ状況下で有用である。しかし、5−ASA生成物は小腸での水分吸収を減少させるために下痢を引き起こすことがあり、オルサラジンでその頻度が最も高い。これらの薬剤が治療のために使用される病気は下痢性疾患であるので、それらの使用はこの致命的欠点によって制限されることもある。
【0014】
小腸物質の輸送時間は約3〜4時間に限られていることは公知であるが、大腸内の輸送時間は約20〜70時間である。したがって、3〜4時間以上の吸収時間を必要とする特定の薬剤を送達することを目指している徐放系は、通常結腸送達に依存している。更に、メサラミンをベースにした薬剤は通常活性薬剤の標的は大腸であり、薬剤が胃によって破壊及び不活性化されないように、また小腸上部で速やかに吸収又は代謝されないように設計されている。残念なことに、炎症が活性薬剤の近くではない胃腸管部にある場合は、この方法はメサラミンの効用を大きく制限する。したがって、メサラミン及び他の局所活性の薬理学的な作用剤を胃腸管全体の炎症部位に届け、これにより活性剤が炎症と直接に、局所的に接触することができる医薬組成物を提供することが望ましい。
【0015】
クローン病は、主に小腸で、まだらで、不連続な炎症を起こす慢性炎症性腸疾患である。しかし、それは口、食道、胃及び大腸を含む消化管のいずれの部位でも炎症を起こすことができる。この炎症は腸管組織の全ての層に達し、疼痛、下痢、胃腸出血及び食品からの栄養吸収不良をもたらす。炎症の治療が不成功であるならば、病気は進行して腸管内腔の狭小化(狭窄症)及びブロッキング(閉塞症)、腸から体の他の部位まで通じる異常な通路(フィステル)の発達、並びに感染領域(膿瘍)の形成に至る。クローン病の最も初期の粘膜病変に伴う炎症を減らすことは有利である。クローン病で最も初期の粘膜病変は炎症の形の陰窩傷害(陰窩炎)及び陰窩膿瘍であり、これらは通常リンパ節上に位置する小さい限局性アフタ様潰瘍へ進行する。炎症プロセスが進展するに従い、マクロファージ及び他の炎症性細胞が流入且つ増殖して肉芽腫が形成される。病気が更に進行するに従い、炎症が壁を貫通して広がり、腸壁肥厚、深い潰瘍形成、フィステル及び膿瘍の形成に至る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は場所を問わず胃腸管の炎症部位へメサラミンを部位特異的に送達することを可能にすることである。本発明の他の目的は、クローン病及び潰瘍性大腸炎の患者で、胃腸管の炎症部位へメサラミンを部位特異的に送達することを可能にすることである。本発明の他の目的は、炎症を減らすために有効な時間、炎症部位に保持される消炎剤を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、小腸内で通常の3〜4時間の通過時間を超えて炎症薬を維持し、これらの薬剤の必要な管腔濃度をより長く維持できる送達制御系を提供することである。本発明の他の目的は、小腸内で炎症薬を維持し、これらの薬剤に必要な管腔濃度が約4.0時間から12.0時間維持される送達制御系を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、十二指腸、空腸又は近位小腸及び胃腸管の他の部分にメサラミンなどの局所活性のある治療薬を正確且つ安全に送達し、重症のクローン病回腸炎、十二指腸炎、空腸炎並びに劇症の潰瘍性大腸炎の治療を可能にすることである。
【0019】
他の態様では、本発明は障害の治療に有効な時間、患部に保持される治療薬を提供することが望まれる様々な眼の障害、月経及び生理不順、膣障害、腸管障害及び骨盤内炎症性疾患の治療に有用な新規化合物に関する。したがって、本発明の他の目的は、眼、膣、子宮、上部生殖管及び小腸の患部に治療薬を部位特異的に送達することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、下記式の化合物が開示される:
【化3】


[式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は式
【化4】


を有する基であり、Rは低級アルキレンであり、R’は下記式を有する基からなる群から選択され
【化5】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、Rは水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、
、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル及びシクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化6】


はヒドロキシル又はヒドロキシアルキルである]。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、感染症、疼痛、生理不順、緑内障及び炎症を含むいくつかの治療を要する障害の治療にとって有用な医薬用化合物の、部位付着性で部位保持性の徐放的放出のための新規生体付着性製剤に関する。これらの生体付着性製剤の特別な長所は、全身投与薬剤であれ局所投与薬剤であれ、これまで到達が困難であるか又は治療上有効な時間薬剤を保持するのが困難であった体腔粘膜表面との親和性である。
【0022】
一の態様によれば、本発明は胃腸障害の治療にとって有用な消炎化合物の部位付着性で部位保持性の徐放的放出のための新規生体付着性製剤に関する。特に、本発明は胃腸管の炎症性疾患に罹患している患者の胃腸(GI)管全体への抗炎症性化合物、特にメサラミン(5−アミノサリチル酸、5−ASA)、4−アミノサリチル酸(4−ASA)及び3−アミノサリチル酸(3−ASA)の送達のためのドラッグ送達制御系に関する。本発明は、主に、それには限定されないがメサラミンなどの抗炎症薬による炎症性腸疾患及び腸機能障害の治療に関する。徐放性製剤、アゾプロドラッグの細菌酵素による加水分解又は胃腸炎症組織への接近が制限されているpH依存性放出製剤に依存する従来の確立した治療と異なり、本発明の組成物は胃腸管の全長のいずれかの部位を標的にし、炎症の減少に有効な時間抗炎症薬を一貫して送達することができる。
【0023】
本発明によれば、生体付着性メサラミン製剤は胃腸管内の部位と結合する能力を有し、無毒であり、人体と適合性がある。本発明の好ましい一実施形態によれば、生体付着性メサラミン製剤は罹患した胃腸管膜の潰瘍と関連する生体成分と結合する能力を有する。本発明の最も好ましい一実施形態によれば、生体付着性メサラミン製剤は、遠位回腸に隣接している罹患した腸管壁の潰瘍と関連する生体成分と結合する能力を有する。
【0024】
他の態様によれば、本発明は感染性、炎症性及び他の病理学的な眼の障害、例えばそれには限定されないが緑内障、眼瞼炎、結膜炎、涙嚢炎、ウイルス性角膜炎、細菌性角膜炎、糸状菌性角膜炎、ブドウ膜炎、角膜潰瘍、眼内炎及び蜂巣炎の治療にとって有用な治療化合物の部位付着性、部位保持性の徐放的放出のための新規生体付着性製剤を含む。
【0025】
他の態様によれば、本発明は骨盤障害の治療にとって有用な治療化合物の部位付着性、部位保持性の徐放的放出のための新規生体付着性製剤に関する。本発明の一態様によれば、この新規生体付着性製剤は子宮、卵巣及びファロピー管に影響する骨盤内炎症性疾患、上部生殖管感染症の治療で有用である。本発明の他の態様によれば、この新規生体付着性製剤は骨盤感染症の治療に有用である。
【0026】
他の態様によれば、本発明は全身性障害の治療のために眼に投与される治療化合物の部位付着性、部位保持性の徐放的放出のための新規生体付着性製剤に関する。
【0027】
他の態様によれば、本発明は大腸癌などの胃腸腫瘍障害の治療に有用な治療化合物の部位付着性、部位保持性の徐放的放出のための新規生体付着性製剤に関する。
【0028】
他の態様によれば、本発明は月経困難症などの生理不順の治療に有用な治療化合物の部位付着性、部位保持性の徐放的放出のための新規生体付着性製剤に関する。
【0029】
サッカライド組成物
本発明によれば、生体適合性の無毒性薬剤結合体が、薬理学的に有効な化合物の人への部位特異的送達に関して記述されている。先行技術の従来の多くのポリマー薬剤担体と違い、本発明の薬剤結合体の特徴は分子量が比較的低く、合成ポリマー又はバイオポリマーと通常と関連する三次構造及び四次構造が相当存在することがなく、また合成ポリマー又はバイオポリマーのそれらとは明確に異なる水力学的特性を有することである。本発明の薬剤結合体は、先行技術のポリマー薬剤担体よりも水溶性が高く、粘性が低く、また汚染物質が少ない。
【0030】
本発明に従う薬剤結合体は、更に2つの態様で先行技術の薬剤担体と異なる。第1に、本発明の薬剤結合体は生体付着性である。即ち、本発明の薬剤担体は、胃腸管の炎症部位及び胃腸内腔を覆う潰瘍形成膜と関連する粘膜層及び生体成分と相互に作用して結合する。この生体付着性特性は2、3のポリマー材で実証されたけれども、全ての材によって一般的に共有されているわけではない。第2に、本発明の生体付着性薬剤結合体は部位特異的である。しかし、それらの体の生体成分への付着は本来静電的であり、体内の特定の結合相手、特定のリガンド及び特異的な受容体との特異的な相互作用には依存しない。
【0031】
生体付着性薬物担体と胃腸組織との間の接着の発達に2つの主要な態様がある:(i)生体付着性薬物担体が接触する生体物質又は組織の性質及び(ii)生体付着性材料の物理化学的特性。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態によれば、経口投与された生体付着性メサラミン結合体は、腸の上皮細胞表面、小腸罹患部のムチン層の離層によって露出した細胞間マトリックス、又は粘質層自体に接着することができる。膜内受容体のような特異的な結合部位の存在に依存する他の部位特異的生体付着物質と違って、本発明の生体付着性メサラミン製剤は非特異的結合成分(例えば細胞関連のムコ多糖、プロテオグリカン及び膜多糖、腸管の標的領域内の細胞間マトリックス(ECM)、及び腸管の標的領域に隣接しているムチンライニング)との静電的相互作用に依存する。
【0033】
本発明のこの実施形態によれば、生体付着性メサラミン製剤は部位付着性、部位保持性、徐放性デポー剤としての働きをする。小腸においては、内腔及び腸壁炎症部の動態力学により、薬物送達系はその標的部位から未熟なうちに引き離される。送達系が付着する患部における細胞の増殖、移動及び終焉も、傷ついた腸壁への生体付着性製剤の保持に影響を及ぼす。生体付着性製剤が付着する領域上の流体の急速な流れによる流体力学は変化し、これらの製剤の保持に影響を及ぼすことも予想される。したがって、メサラミン結合体の静電結合が強いことが重要である。高親和性結合を確実にする方法の1つは、イオン化可能なアミン又は四級化アミンの形で1つ又は複数のカチオン電荷を結合体に提供することである。標的部位の負荷電成分との確実な静電的相互作用のためには、四級化アミンの使用が好まれる。高親和性結合を確実にする他の方法は、複数(多価)の結合部位を提供することである。1つの結合部位の結合と解離との間の平衡は隣接部位の第2の結合事象によって大いに影響されるので、多価リガンド相互作用の使用はメサラミン結合体の全体的な親和性を増やすことができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、生体付着性メサラミン結合体は経口投与を目的とする。経口的に投与されるメサラミン製剤は、通常胃腸管上部をバイパスして腸又は大腸でのメサラミンの吸収を増加させるようになっているが、本発明の薬剤結合体の標的は結腸又は遠位回腸に限定されず、腸のより近位部位でのメサラミンの吸収及び代謝を減らすことを目的とする。
【0035】
生体リガンド及びバイオポリマー、例えば上皮細胞成長因子(EGF)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、キチン及び高分子量キトサンは、腸の膜内受容体、ムチン及び細胞間マトリックスと結合する能力を有することが公知である。これらは生物起源であるけれども;腸粘膜表面に結合することができ;生体適合性であり且つ生体分解性であり;本発明の薬剤結合体とは相当異なる。より詳細には、これらのバイオポリマーは大きさが非常により大きく、水溶性が低く、本発明の薬剤結合体とは異なる水力学的特性を示す。例えば、ヒアルロン酸は広範な分子間水素結合を示し、溶液中で三次元構造を有する高分子粘弾性材である。このことは、ポリマー鎖の配座の柔軟性を制限し、特徴的な二次(ヘリカル)及び三次(コイル)の相互作用を誘発すると思われている。水溶液中のヒアルロン酸は、親水性及び疎水性の鎖を有するランダムコイル−コイル構造を示す。高分子ヒアルロン酸(1,000,000ダルトン)は、3,000mL/gの固有粘度を有する。ヒアルロン酸は化学的に修飾されて水不溶性ゲル、フィルム及びスポンジが調製され、薬剤と化学的に結合された(Luo,Y及びPrestwich,GD、Bioconjugate Chemistry 10:755〜763(1999);Pouyani,T及びPrestwich,GD、Bioconjugate Chemistry 5:339〜347(1994);Kuo,J、Swann,DA及びPrestwich,GD、Bioconjugate Chemistry 2:232241(1991);Luo,Y、Kirker,KP及びPrestwich,GD Journal of Controlled Release 69:169〜184(2000);米国特許第5,356,883号;米国特許第5,616,568号;米国特許第5,652,347号;米国特許第6,013,679号;米国特許第6,096,727号;米国特許第5,874,417号。
【0036】
粘膜付着能を有する高分子ポリマー及びバイオポリマー製剤の具体例としては、Partain他(米国特許第4,946,870号)、Illum(米国特許第5,554,388号、第5,744,166号、第6,391,318号、及び第6,207,197号)、Marlin他(米国特許第5,645,827号)及びMathiowitz(米国特許第6,235,313号)によって記載されているものがある。Partain他は、組織部位で医薬活性物質を保持するための、フィルム形成性アミノポリサッカライド、例えば高分子キトシウム(chitosium)ポリマー及びカチオンキトサン誘導体を開示している。Partain他によって記載されているアミノサッカライドキトサンポリマーは、分子量が5,000から1,000,000ダルトン以上、溶液粘度(1%、20℃)は5から5,000cPであり、医薬活性化合物に対する容量はキトサンポリマーの重量で最高5%位である。
【0037】
Illumは腸での薬剤の吸収を強化するためのポリカチオンポリマー、例えば高分子ジエチルアミノエチルデキストラン(DEAE−デキストラン)、高分子キトサン及び他のポリカチオンポリマー、例えばポリリジン、ポリ四級化合物、プロタミン、ポリイミン類、キトサン以外のポリカチオン炭水化物、ポリメタクリレート、ポリアクリラート類、ポリオキセタン(polyoxethane)類及びポリアミドアミン類を開示している。Illumによって記載されているポリカチオンポリマーは、分子量が10,000から約500,000、固有粘度は約400から1,000ml/gである。
【0038】
Marlin他は、粘膜表面で治療活性物質を保持するためのカチオン(四級アンモニウム)バイオポリマー、例えばデンプン、セルロース、ペクチン、キチン、グアー及びキトサンを開示している。Marlin他によって記載されているポリカチオンポリマーは、分子量が10,000から約1,000,000、粘度(2%、25℃)が約5から10,000cPである。
【0039】
本発明によれば、薬剤結合体は分子量が約2,000ダルトン未満のサッカライド、例えば単糖類、二糖類及びオリゴ糖と共有結合で結合した薬理学的活性剤を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、薬剤結合体は水溶性単糖類及び二糖類と共有結合で結合した薬理学的活性剤(薬剤残基)を含む。本発明の他の態様によれば、薬理学的活性剤は2から約10のグリコシド残基を有するオリゴ糖と共有結合で結合している。本発明の好ましい実施形態では、オリゴ糖としては3から約8のグリコシド残基を有するものがある。
【0040】
本発明で有用なオリゴ糖は、通常、アミノグリコシドを含むポリマー、例えばそれには限定されないがキチン、ヒアルロン酸及びキトサンから加水分解によって誘導される。キチンは、β−(1→4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコースの非分岐鎖を含む。ヒアルロン酸(CAS 9004−61−9)はN−アセチル−D−グルコサミン及びD−グルクロン酸の二糖ユニットの繰り返しを含み、そこではグルクロン酸からN−アセチルグルコサミンへのリンケージは(1→3)でありN−アセチルグルコサミンからグルクロン酸へのリンケージは(1→4)であり、[→4)−O−(β−D−グルコピラノシル)−(1→3)−O−(2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−(1→]と命名された。キトサンは、β−(1→4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコースの脱アシル化非分岐鎖を含む。本発明で有用なキチン及びムコ多糖に由来するオリゴアミノサッカライドの実例としては、それには限定されないがキトサンオリゴマー、グルコサミン(3416−24−8)、コンドロシン[2−アミノ−2−デオキシ−3−O−β−D−グルコピラノシル−D−ガラクトース]、ガラクトサミン(499−14−9)、及びヒアロビウロン酸[2−アミノ−2−デオキシ−3−O−β−D−グルコピラノシル−D−グルコース](13551−21−8)がある。水溶性オリゴマーグリコシドはグリコシダーゼ、リソチーム又はキチナーゼを用いた酵素加水分解により、及び酸での脱アセチル化によりキチンから得られることは当技術分野で一般に公知である。
【0041】
薬剤結合体
本発明に従う薬剤結合サッカライド組成物としては、抗炎症薬がグリコシドの炭素6の位置のヒドロキシル基又はカルボキシル基に共有結合したものがある。ヒドロキシル基又はカルボキシル基への共有結合は、直接的であるか又は生体適合性リンカー分子を介する。ヒアルロン酸などの多糖の−CHOH基又は−COOH基との結合は一般に公知であり、このような種類の薬剤結合サッカライドの調製のための合成方法は特許及び科学文献で広く記載されている。それにもかかわらず、好ましい合成スキームの概要を以下のセクションで例示する。
【0042】
本発明の1つの態様によれば、四級化アミノグルコシド、例えばそれには限定されないがトリアルキルグルコサミンは、ハロゲン化アルキルによるアルキル化で調製される。例えば、トリメチルグルコサミンサッカライドは、適量のヨウ化メチルによるメチル化で調製される。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態に従って、単糖のヒドロキシル基を介した抗炎症薬メサラミンの直接結合を下で例示する:
【化7】

【0044】
本発明の好ましい他の実施形態に従って、二糖のカルボキシル基を介した抗炎症薬メサラミンの直接結合を以下に例証する:
【化8】

【0045】
本発明の好ましい他の実施形態に従って、単糖のヒドロキシル基へのリンカーを介した抗炎症薬メサラミンの結合を以下に例証する:
【化9】

【0046】
以下の一般式を有する化合物は、本発明の一態様における糖類ベースの薬剤結合体を表す:
【化10】


式中、Rは水素又は薬理学的活性薬物残基であり、Rは水素又は下記式を有するグリコシドであり、
【化11】


式中、nは0から約8であり、Rは水素又は下記式を有するグリコシドであり
【化12】


式中、nは0から約8であり、xは0又は1であり、R、R及びRは独立してH、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に窒素含有化合物を形成する。
【0047】
本発明の他の態様によれば、粘膜表面への治療組成物の接着を改善するために、非特異的アンカー基がグリコシドペンダント基に加えられる。このアンカー基は、疎水形質を有する飽和若しくは不飽和のアルキル基又は親水性若しくはイオン形質を有するカチオン基でもよい。本発明の一態様によれば、アンカー基は1から約18の炭素原子を有するアルキル又はアシル結合を介してグリコシドと結合したポリアミンでもよい。
【0048】
アンカー基の付着のための特に有用なグリコシドペンダント基は、グルクロン酸の炭素6の位置にある。本発明のこの実施形態に従う二糖化合物の例を以下に示す:
【化13】


式中、Rはアルキル、アルキレン、モノカチオン性アルキルアミン又はポリカチオン性アルキルアミン基である。
【0049】
本発明の他の態様では、本発明のこの実施形態に従うオリゴ糖化合物は以下で示される:
【化14】


式中、nは好ましくは1から約5である。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態によれば、Rはアルキル、アルキレン又はポリカチオンアミン基である。アルキル基及びアルキレン基は、好ましくは約1から約18の炭素原子を有する。本発明の一態様において、アルキル基又はアルキレン基は長鎖基でよく、12から約18の炭素原子を有することができる。本発明の他の態様では、アルキル基又はアルキレン基は短鎖基でよく、1から約6の炭素原子を有することができる。本発明のより好ましい実施形態において、Rは不飽和のオクタデカン酸残基である。アルキル鎖の長さは疎水性を増加させ、不飽和は鎖の柔軟性を提供する。
【0051】
本発明の他の態様によれば、Rはポリカチオン性アルキルアミン基である。本発明の好ましい実施形態では、Rは1から約18の炭素原子を有するポリアミンであり、例としてはそれには限定されないがポリシン(polysine)、ポリオルニチン及び、−(CHCH−NH)−で表される反復基を特徴とする脂肪族アミンがある。好ましい一実施形態によれば、ポリアミンのアミン基は四級アミンでありpHから独立した正電荷を有する。
【0052】
本発明の他の態様によれば、Rは正に荷電したモノアミンであり、例えばコリン又はベタイン残基がある。
【0053】
本発明によれば、R’は以下からなる群から選択され
【化15】


式中、xは0又は1である。本発明によれば、リンカー基としては、それには限定されないが、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル及びカルバメートがある。これらの基の各々の加水分解速度は異なり、結合薬剤が異なる時間にin vivoで放出されることは理解されよう。本発明の好ましい一実施形態によれば、R’は下記式を有する。
【化16】

【0054】
本発明の治療組成物は、到達が困難であるか局所投与された薬剤の保持が困難な体内の標的部位での障害の治療に特に有用である。本発明の組成物が有益な局所体内部位の例としては、眼腔、直腸腔、膣腔及び子宮内腔がある。
【0055】
本発明によれば、Rは水素又は消炎作用を有する薬理学的活性化合物の残基である。本発明で有用な代表的抗炎症性化合物としては、アセチルサリチル酸、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、メフェナム酸、トルメチン、ケトロロラック(Ketorolorac)、ジクロフェナク、プロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン及びケトプロフェンがある。
【0056】
本発明の他の態様によれば、Rは水素又は抗感染作用を有する薬理学的活性化合物の残基である。本発明で有用な代表的抗ウイルス性、抗菌性及び抗真菌性化合物としては、アシクロビル、イドクスウリジン、ガンシクロビル、ナタマイシン、メトロニダゾール、キノロン類、例えばシプロフロキサシン、オフロキサシン、アミノグリコシド、例えばトブラマイシン(Tobrex(登録商標))、及びセファロスポリン類がある。
【0057】
本発明の他の態様によれば、Rは水素又は抗緑内障作用を有する薬理学的活性化合物の残基である。本発明で有用な代表的抗緑内障化合物としては、ベータブロッカー剤、例えばチモロール、レボブノロール、カルテオロール及びベタキソロールがある。
【0058】
本発明の他の態様によれば、Rは水素又はレボノルゲストレルのような月経困難症の治療に有効な薬理学的活性化合物の残基である。
【0059】
本発明の他の態様によれば、Rは水素又は抗炎症作用を有する薬理学的活性化合物の残基であり、胃腸管の炎症減少に有効である。本発明の好ましい実施形態によれば、Rは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の抗炎症薬残基であり、例としてはインドメタシン、メサラミン(5−アミノサリチル酸、5−ASA)、4−アミノサリチル酸(4−ASA)及び3−アミノサリチル酸(3−ASA)がある。上で示したように、メサラミン(5−ASA)は胃腸管で消炎作用を示す認知された抗消炎剤である。メサラミンの抗抑制作用は、炎症の間のプロスタグランジン及びロイコトリエンの合成を抑制する能力と、正の相関があると指摘されている。(Prakash,A及びMarkham,A Drugs 57(3):383〜408(1999))。大部分の非ステロイド系抗炎症薬(NDAID)と違い、メサラミンはアラキドン酸及びその代謝産物からのロイコトリエン及びヒドロキシエイコサテトラエン酸(HETE)の形成を触媒する酵素であるリポキシゲナーゼを阻害することによってもロイコトリエン合成を抑制する(American Society of Health System Pharmacists Drug Information 2669〜2673頁(2000年))。
【0060】
メサラミン以外のアミノサリチル酸は、抗菌活性に加えて消炎作用を示した(Delgado,JI及びCerda,JJ.Hospital Formulary 26(6月):466〜473(1991)。アミノ基の位置は胃腸作用の重要な決定因子ではないかもしれなく、4−アミノサリチル酸(4−ASA)は胃腸の炎症と関連する炎症の減少に有用であることが示唆されている。パラアミノサリチル酸ナトリウム(4−ASA;Teebacin)はメサラミンとアミノ基の位置だけが異なる(パラ対メタ)が、長年結核治療のための経口用製剤として使用されてきた。更に、4−ASA浣腸は遠位潰瘍性大腸炎の治療のためのヒドロコルチゾン浣腸及びメサラミン浣腸と同程度に有効であることが証明された。また、4−ASAは溶液中でより安定で、メサラミンよりも消炎活性が高いかもしれないことが示唆されている(Tremaine,WJ Hospital Formulary 24(8月):436〜440(1989)American Society of Health System Pharmacists Drug Information 2669〜2673頁(2000年))。
【0061】
パラアミノサリチル酸(4−ASA、Paser(登録商標))は結核菌に対して静菌的であり、ストレプトマイシン及びイソニアジドに対する細菌耐性の開始を阻止する。マイコバクテリウムパラツベルクローシス(Mycobacterium paratuberculosis)を含むマイコバクテリウムは、クローン病の発症に関与していると思われている(Tremaine,WJ Hospital Formulary 24(8月):436〜440頁(1989年))。パラアミノサリチル酸の作用機構は、葉酸合成の阻害及び/又は細胞壁成分マイコバクチンの阻害により、結核症の取り込みを抑制することと推測されている(Physician’s Drug Reference 1569〜1570頁 第55版、Medical Economics出版(2001年))。
【0062】
本発明のより好ましい実施形態によれば、Rはメサラミン(5−アミノサリチル酸、5−ASA)又は4−アミノサリチル酸(4−ASA)の残基である。本発明の最も好ましい実施形態によれば、Rはメサラミン(5−アミノサリチル酸、5−ASA)の残基である。用語薬剤残基、メサラミン残基、薬理学的活性化合物残基又は同類の用語は、サッカライド結合体から放出されるとその化合物の公知の薬理活性を示す化合物を形成する、結合化合物の部分を指す。
【0063】
本発明によれば、R、R及びRは、独立して水素(H)、1から約6の炭素原子を有するアルキル、例えばそれには限定されないがメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル及びヘキシル、アリール、例えばそれには限定されないがフェニル及びピリジニル、ベンジルなどのアラルキル、並びに約3から約6の炭素原子を有するシクロアルキル、例えばそれには限定されないがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルであり、又は一緒に窒素を含む環、例えばそれには限定されないがピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、ピロリジン及びピロールからなる群から選択される窒素含有環を形成する。
【0064】
本発明の好ましい一実施形態によれば、R、R及びRは1から約6の炭素原子を有するアルキルである。本発明のより好ましい一実施形態では、R、R及びRは1から約3の炭素原子を有するアルキルである。本発明の最も好ましい実施形態によれば、R、R及びRはそれぞれメチル又はエチルである。
【0065】
本発明によれば、Rは1から約6の炭素原子を有するアルキレンである。本発明によれば、Rは炭素原子だけを含むアルキレン又は炭素原子、窒素原子及び酸素原子を含むヘテロアルキレンでよい。ヘテロアルキレンの例は、−NHC(O)CH−及び−NHC(O)CHCH−である。本発明の好ましい実施形態では、Rは1から約3の炭素原子を有する低級アルキレンである。本発明のより好ましい一実施形態によれば、Rは−CH又は−CHCH−である。本発明によれば、Yは0又は1である。本発明の好ましい一実施形態によれば、Yは0である。
【0066】
本発明によれば、Rはヒドロキシル、又はヒドロキシアルキル、例えばそれには限定されないがトリヒドロキシプロピル、テトラヒドロキシブチル、ペンタヒドロキシペンチル及びヘキサヒドロキシヘキシルである。本発明の好ましい一実施形態によれば、Rはヒドロキシルである。
【0067】
本発明によれば、Rは消炎作用を有する薬理学的活性化合物の残基であり、胃腸管の炎症の減少に有効である。本発明の好ましい一実施形態によれば、Rは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の抗炎症薬残基であり、例としてはインドメタシン、メサラミン(5−アミノサリチル酸、5−ASA)、4−アミノサリチル酸(4−ASA)及び3−アミノサリチル酸(3−ASA)がある。本発明のより好ましい実施形態によれば、Rはメサラミン(5−アミノサリチル酸、5−ASA)、4−アミノサリチル酸(4−ASA)又は3−アミノサリチル酸(3−ASA)の残基である。本発明の最も好ましい実施形態によれば、Rはメサラミン(5−アミノサリチル酸、5−ASA)の残基である。用語薬剤残基、メサラミン残基、薬理学的活性化合物残基又は同類の用語は、サッカライド結合体から放出されるとその化合物の公知の薬理活性を示す化合物を形成する、結合化合物の部分を指す。
【0068】
用語「薬剤として許容される塩」としては、通常、化合物を当技術分野で公知の適当な有機又は無機の対イオンと反応させることによって調製される、本発明の化合物の非毒性付加塩がある。米国特許第4,496,553号で記載されているように、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療に有用な経口医薬組成物は、薬剤として許容される担体と混合されたメサラミン又はその薬剤として許容される塩若しくはエステルを含む。これらのメサラミンの塩は、塩酸塩のような付加塩であった。しかし、薬剤として許容されるいかなる非毒性の有機又は無機の酸も使用することができることが認められた。同様に、本発明の化合物は当技術分野で公知の適当な「医薬用担体」、例えばそれには限定されないがラクトース、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム及びタルクとの混合により、錠剤又はカプセルなどの通常の経口薬として製剤化することができる。
【0069】
結合サッカライドの使用
本発明によれば、本発明者は小腸での吸収時間が延長された薬剤の送達に特に適している経口用送達制御系を開発した。詳細には、本発明は、近位小腸の十二指腸、空腸及び下部胃腸管の他の部分へのメサラミンのような局所活性のある治療薬の正確且つ安全な送達を可能にし、重症のクローン回腸炎、十二指腸炎、空腸炎並びに劇症の潰瘍性大腸炎を治療する。このことは、その分子特性、例えばそれには限定されないが親水性及び分子の大きさのために胃腸内腔で保持されるメサラミンなどの抗炎症性化合物のプロドラッグによって達成される。
【0070】
本発明によれば、炎症性腸疾患を治療する方法又は炎症を減少させる方法が記載され、その方法は患者に本明細書で開示されている化合物の炎症減少有効量を投与することを含む。本発明によれば、用語「炎症性腸疾患の治療」は、治療が必要な患者を本発明の化合物で治療し、その結果認定医師の大局的評価で測定される臨床的寛解又は臨床的改善がもたらされることを指す。例えば、クローン病の治療のための第一の転帰測定手段はクローン病活性度指数(CDAI)であり、これは静止期の疾患では約150から始まり、軽度から中等度の疾患では約250から約450の範囲であり、重症の疾患では約600まで変動する。CDAI値の高い患者において、治療後CDAI指数値が約150に低下することは、通常、臨床的寛解又は臨床的改善(応答)の成功を示す。
【0071】
本発明によれば、用語「炎症の減少」又は「炎症減少有効量」は、治療が必要な患者を本発明の化合物で治療することによって炎症の減少又は減弱をもたらすことを指す。炎症の減少又は減弱を評価する方法は当技術分野で公知であり、その例としては内視鏡検査、組織学的評価、臨床生化学検査、例えば赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク質(C−RP)の測定、好中球消失、及び炎症組織で粘膜病変の存在及び血流を検出する磁気共鳴画像(MRI)がある。
【0072】
本発明の化合物の特徴は、低いオクタノール:水係数(log P)及び約300g/モルより高い分子量である。本発明のプロドラッグの更なる特徴は、機能上の特性、例えばそれには限定されないが活性抗炎症化合物の生体付着性及び制御された加水分解である。全体として、これらの独特な分子特性及び機能上の特性により、本発明の化合物は胃腸管内の炎症部位に付着して胃腸内腔で消炎剤を保持するため消炎剤は吸収及び不活化されず、活性化合物は制御された期間にわたって徐々に加水分解される。
【0073】
腸は以下の層に分けられる:1)上皮(円柱上皮細胞)、基底膜、粘膜固有層及び粘膜筋板を含む粘膜、2)リンパ球、マクロファージ及び肥満細胞を含む粘膜下組織、3)環状筋層を含む固有筋層、並びに4)腸外部カバーを形成し、縦走筋線維を含む漿膜。
【0074】
腸粘膜は、吸収性及びムチン分泌性細胞の連続したシート状の上皮細胞で形成されている。粘膜上にあるのは不連続な保護皮膜であり、粘液は95%以上が水、並びに電解液、タンパク質、脂質及び糖タンパク質からなる。糖タンパク質は、粘液のゲル様性質の原因である。これらの糖タンパク質は、負荷電のシアル酸又はフコース基で終わる炭水化物鎖が共有結合したタンパク質コアからなる。腸管の粘液糖タンパク質の炭水化物構造は、上皮細胞膜の一部である糖タンパク質のそれと類似している。負に荷電した粘液糖タンパク質は、微生物及び寄生生物を腸壁に定着させるために自然に発達した炭水化物結合リガンドの受容体の働きをする。粘液の1つの機能は、これらのリガンド及び関連する無効な剤を妨害することによって粘膜を保護することである。
【0075】
小腸の上皮全体の表面には絨毛が並び、その長さは約0.5mmから1.5mmの間であり内腔に達している。微小絨毛は、長さが平均約1μmである。小腸表面の上皮細胞は、定期的に更新される。十二指腸細胞が完全に更新されるには、約2日を要する。
【0076】
粘膜固有層は、主にフィブロネクチン、プロテオグリカン、エラスチン及びコラーゲンI型、III型及びV型からなる疎性結合組織である。粘膜固有層は毛細管及びリンパ管のネットワーク、並びに多数の間葉性細胞及び炎症細胞を有し、これらは抗原及び細菌のような他の混在物をチャレンジし、破壊する働きをする。粘膜固有層は、腸壁の細胞間マトリックスの維持における平滑筋細胞の活動を特徴とし、粘膜筋板と名付けられた平滑筋細胞の薄層によって、粘膜下組織から分離されている。
【0077】
粘膜下組織は、多くの血管、リンパ球、マクロファージ及び肥満細胞を有する疎性結合組織である。コラーゲン量はIII型(20%)及びV型(12%)コラーゲンにおいて皮膚のそれとは大きく異なり、68%はI型コラーゲンである。
【0078】
腸壁は、互いに平行ないくつかの単細胞膜を含む。薬剤分子が血液に到達するためには、粘液層、刷子縁、頂端細胞表面、これらの細胞の細胞内液、基底膜、境界膜、粘膜固有層組織、外部毛細管膜、毛細管膜の細胞質及び内部毛細管膜を通過しなければならない。一旦薬剤が溶液になったならばこの吸収過程を支配する3つの主要因子がある;i)薬剤分子の物理化学的特性,ii)胃腸液成分の特性、及びiii)吸収膜の性質。
【0079】
本発明によれば、腸壁内への、また腸壁を横断する受動吸収に影響する薬剤分子の主な生理化学的性質は、オクタノール:水分配係数(log P又はKo/w)及び分子量である。分子量が約300〜400ダルトン未満の小さな薬剤分子は、膜内の不連続の小孔(半径<3〜8.5オングストローム)を通して腸管膜から別々に吸収される。
【0080】
オクタノール:水分配係数は、化学薬品の親油性又は疎水性の特性を記述するために広く使用される物理的性質である。この係数は、均衡状態にある二相ステムにおけるオクタノール相における化学物質の濃度の水相におけるその濃度に対する比率である。測定値は少なくとも12桁変動するので、この比率は一般的に対数(log P)で表される。本発明に従う化合物のlog Pの推定では、Meylan(Meylan,WM及びHoward,PH Journal of Pharmaceutical Sciences 84:83〜92)によって記載された方法を使用した。薬剤分子はその油/水分配係数の上昇と同じ相対オーダーで、胃腸管の脂質様細胞膜を透過する。即ち、log P(又はKo/w)が大きくなるに従い、薬剤の吸収速度は増加する。
【0081】
図1のグラフは、本発明で使用される非結合サッカライド担体の分子量とオクタノール:水分配係数(log P)との間の関係を示す。このグラフは、本発明の大多数のサッカライド担体は分子量が通常約200から1,300ダルトンの範囲で水溶性が極めて高いことを主に示し、抗炎症薬が放出されるとそれらは胃腸管の脂質様の膜を容易には通過せず、また不連続の小孔を通して移動することもないと予想されることが示唆されている。
【0082】
図2のグラフは、本発明の結合メサラミン−サッカライド結合体の分子量とオクタノール:水分配係数(log P)との間の関係を示す。このグラフは、本発明の大多数のメサラミン−サッカライド結合体は分子量が350ダルトン以上であり水溶性が極めて高いことを主に示し、抗炎症薬−サッカライド結合体は胃腸管の脂質様の膜を容易には通過せず、また不連続の小孔を通して移動することもないと予想されることが示唆されている。このグラフでは示されていないけれども、本発明のいくつかの薬剤−サッカライド結合体は約3,000ダルトンまでの分子量を有する。
【0083】
メサラミン結合体の加水分解
本発明の一実施形態によれば、薬剤結合体は腸管内腔でメサラミン及びサッカライド結合体パートナーに加水分解される。以下に図示する加水分解反応は、腸内で起こることが予想されるものの代表である:
【化17】



【0084】
腸管内腔における本発明の薬剤−サッカライド結合体からの抗炎症薬の放出は、主に塩基加水分解に起因すると予想される。加水分解速度はいくつかの因子、例えば内腔のpH及びサッカライド担体への薬剤の共有結合の性質によって決まると予想される。胃腸管のいくつかの部位におけるpHは、次の通りである;十二指腸約6.3、空腸7.1、回腸7.6、及び上行結腸約8.0。本発明に従うサッカライド担体への薬剤の共有結合は、ヒドロキシル(−CHOH)若しくはカルボキシル基(−COOH)との共有結合、直接結合又は生体適合性リンカー分子を介して、及び加水分解速度に影響を及ぼすいくつかの直鎖若しくは分枝鎖を通したカルボキシル基(−COOH)との結合を通して可能である。例えば、カルボキシルエステルからの薬剤の加水分解速度は、分岐度を増やすことにより且つ/又はリンカー鎖の炭素原子数を増やすことによって劇的に遅くなる。この点については、本発明でのメサラミンの加水分解速度は制御可能であり、十二指腸及び空腸でのメサラミンの急速な吸収及び不活化を最小にする速度で活性薬剤を放出するように操作することができる。
【0085】
潰瘍性大腸炎とクローン病との間の主な相違は、粘膜層で影響を受ける解剖学的な部位及び罹患深度に現れる。クローン病は、最高約30%の患者では回腸末端を侵し、患者の約15%から約25%では大腸に影響を及ぼす。全体として、クローン病患者の約80%は小腸が侵され、約2/3は小腸だけが侵される。クローン病の慢性炎症は胃腸管のいかなるレベルにも影響を及ぼし、粘膜、粘膜下組織、深部縦走筋層漿膜及び所属リンパ節における進行性損傷に至る。粘膜のクローン病併発としては、融合した線状潰瘍斑及び境界の明瞭な肉芽腫がある。病気の進行に従い、腸は肥厚して皮革状になり、内腔は益々狭くなっていく。リンパ集合体は平滑筋細胞数が増加し、断片化した無秩序なコラーゲン線維の存在が罹患した粘膜筋板及び粘膜下組織の特徴である。深在性炎症からは、粘膜を通過して線維症及びフィステルが形成される粘膜下組織及び筋組織に侵入する、深部潰瘍が形成される。好中性の膿瘍は、腸の全ての層に影響を及ぼす。クローン病の経過の特徴は、周期性の寛解及び増悪である。潰瘍性大腸炎は手術で治癒するが、腸切除術はクローン病にはそれほど有効ではなく、高い再発率と関係している。手術後の再発の割合は、3年以内では約85%である。
【0086】
メサラミンの作用機構は全身性というよりは局所性(局在性)と思われている。シクロオキシゲナーゼ(プロスタノイド)並びにリポキシゲナーゼ(ロイコトリエン及びヒドロキシエイコサテトラエン酸)を介した粘膜によるアラキドン酸代謝物の生産は、慢性炎症性腸疾患患者で増加する。メサラミンは、シクロオキシゲナーゼを妨害してプロスタグランジン合成を抑制することによって炎症を減らすと考えられている。
【0087】
大腸及び直腸に限定される潰瘍性大腸炎は、粘膜及び粘膜下組織の潰瘍を引き起こす。潰瘍性大腸炎における炎症はクローン病におけるよりも表面的であり、潰瘍は粘膜下組織を越えて広がることはあまりなく、また細胞間マトリックスの代謝回転及び減損は増加する。クローン病と異なり、深部縦走筋層漿膜及び所属リンパ節は潰瘍性大腸炎では侵されない。潰瘍性大腸炎は、血の混入した粘液性下痢の発作を伴う回帰障害として現れ、その後様々な長さの無症候期間が続く。本症で最も恐れられる合併症は、劇症の大腸炎及び癌である。潰瘍性大腸炎は大腸及び直腸の粘膜層に影響を及ぼすが、常に直腸で始まり徐々に大腸に沿って逆行的に広がる。組織学的には、その特徴は単核細胞、好中球、好酸球及び肥満細胞の浸潤を伴う連続的炎症である。小さな粘膜出血は化膿性の中心、陰窩膿瘍を発達させることがあり、これらは小さな潰瘍を発生させるか下層組織への破裂を引き起こすことができる。
【0088】
小腸物質の輸送時間は約3〜4時間に限られていることは公知であるが、大腸内の輸送時間は約20〜70時間である。したがって、3〜4時間以上の吸収時間を必要とする特定の薬剤を送達することを目指している徐放系は、通常結腸送達に依存している。本発明の他の目的は、小腸内で通常の3〜4時間の通過時間を超えて薬剤を維持し、これらの薬剤に必要な管腔濃度がより長く(例えば、4.0〜12.0時間)維持される送達制御系を提供することである。
【0089】
【表1−1】


【表1−2】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3−1】


【表3−2】


【表3−3】


【表3−4】

【0092】
【表4】

【0093】
本発明の代表的化合物としては、それには限定されないが、以下がある:
【化18】















【0094】
本発明をその好ましい実施形態を詳細に参照しながら具体的に詳述した。しかし、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明に修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の生体付着性サッカライドの分子量とlog P推定値との間の関係を示すグラフである。
【図2】本発明の生体付着性サッカライド−メサラミン抱合体の分子量とlog P推定値との間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式を有する化合物:
【化1】


[式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は下記式を有する基であり、
【化2】


Rは、低級アルキレンであり、R’は下記式を有する基からなる群から選択され
【化3】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、Rは水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化4】


はヒドロキシル又はヒドロキシアルキルである。但し、前記化合物は、少なくとも1つの薬理学的活性薬剤残基、或いはその薬剤として許容される塩を含む。]。
【請求項2】
はヒドロキシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式を有する請求項2に記載の化合物:
【化5】


[式中、R及びRは独立して水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、R’は下記からなる群から選択され、
【化6】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0であり、Rは水素又は薬理学的活性薬剤残基である)R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル又はシクロアルキルである。]。
【請求項4】
下記式:
【化7】


を有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
下記式:
【化8】


を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
下記式:
【化9】


を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
は下記式:
【化10】


(式中、nは0から約8である)を有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
下記式:
【化11】


(式中、nは0から約8である)を有する、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
下記式:
【化12】


を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
下記式:
【化13】


を有する、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
下記式:
【化14】


を有する、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
下記式:
【化15】


を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
下記式:
【化16】


を有する、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
下記式:
【化17】


を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
下記式:
【化18】


を有する、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
下記式:
【化19】


を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項17】
下記式:
【化20】


を有する、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
は下記式:
【化21】


を有する、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
下記式:
【化22】


を有する、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
下記式:
【化23】


を有する、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
下記式:
【化24】


を有する、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
下記式:
【化25】


を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
下記式:
【化26】


を有する、請求項16に記載の化合物。
【請求項24】
下記式:
【化27】


を有する、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
下記式:
【化28】


を有する、請求項23に記載の化合物。
【請求項26】
下記式:
【化29】


を有する、請求項23に記載の化合物。
【請求項27】
下記式:
【化30】


を有する、請求項23に記載の化合物。
【請求項28】
下記式:
【化31】


を有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項29】
下記式:
【化32】


を有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項30】
下記式:
【化33】


を有する、請求項16に記載の化合物。
【請求項31】
下記式を有する化合物、又はその薬剤として許容される塩の炎症減少有効量を含む、炎症性腸疾患の治療又は炎症の減少に有用な医薬組成物:
【化34】


[式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は下記式を有する基であり、
【化35】


Rは低級アルキレンであり、R’は下記式を有する基からなる群から選択され、
【化36】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、
は水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化37】


はヒドロキシル又はヒドロキシアルキルである。但し前記化合物は少なくとも1つの薬理学的活性薬剤残基を含む]。
【請求項32】
はヒドロキシルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
下記式:
【化38】


を有する化合物、及びその薬剤として許容される塩を含み、式中、R及びRは独立して水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、R’は下記からなる群から選択され
【化39】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0であり、
は水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル又はシクロアルキルである、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
下記式:
【化40】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
下記式:
【化41】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
下記式:
【化42】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
は下記式:
【化43】


(式中、nは0から約8である)を有する、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
下記式:
【化44】


(式中、nは0から約8である化合物を含む)を有する、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
下記式:
【化45】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
下記式:
【化46】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
下記式:
【化47】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
下記式:
【化48】


及を有する化合物びその薬剤として許容される塩を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
下記式:
【化49】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
下記式:
【化50】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
下記式:
【化51】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
下記式:
【化52】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項47】
下記式:
【化53】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
は下記式:
【化54】


及びその薬剤として許容される塩を有する、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
下記式:
【化55】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
下記式:
【化56】


及びその薬剤として許容される塩を有する、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
下記式:
【化57】


及びその薬剤として許容される塩を有する、請求項47に記載の組成物。
【請求項52】
下記式:
【化58】


を有する化合物を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
下記式:
【化59】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項54】
下記式:
【化60】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
下記式:
【化61】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
下記式:
【化62】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項57】
下記式:
【化63】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項58】
下記式:
【化64】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項59】
下記式:
【化65】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項60】
下記式:
【化66】


を有する化合物及びその薬剤として許容される塩を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項61】
炎症性腸疾患を治療するか炎症を減少させる方法であって、患者に下記式を有する化合物、及びその薬剤として許容される塩の炎症減少有効量を投与することを含む、方法:
【化67】


[式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は下記式を有する基であり、
【化68】


Rは低級アルキレンであり、R’は下記式を有する基からなる群から選択され、
【化69】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、
は水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化70】


はヒドロキシル又はヒドロキシアルキルである。但し前記化合物は少なくとも1つの薬理学的活性薬剤残基を含む]。
【請求項62】
前記患者は治療が必要であり、前記炎症性腸疾患はクローン病又は潰瘍性大腸炎である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記炎症性腸疾患がクローン病である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記化合物は経口投与される63に記載の方法。
【請求項65】
下記式を有する化合物、又はその薬剤として許容される塩の炎症減少有効量を含む、炎症性疾患の治療又は炎症の減少に有用な医薬組成物:
【化71】


[式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は下記式を有する基であり、
【化72】


Rは低級アルキレンであり、R’は下記式を有する基からなる群から選択され、
【化73】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、
は水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化74】


はヒドロキシル又はヒドロキシアルキルである。但し前記化合物は少なくとも1つの薬理学的活性薬剤残基を含む。]。
【請求項66】
下記式を有する化合物、又はその薬剤として許容される塩の感染減少有効量を含む、感染症の治療又は感染の減少に有用な医薬組成物:
【化75】


[式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は下記式を有する基であり、
【化76】


Rは低級アルキレンであり、R’は下記式を有する基からなる群から選択され、
【化77】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、
は水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化78】


はヒドロキシル又はヒドロキシアルキルである。但し前記化合物は少なくとも1つの薬理学的活性薬剤残基を含む。]。
【請求項67】
下記式を有する化合物、又はその薬剤として許容される塩の治療的有効量を含む、緑内障の治療又は眼圧の低下に有用な医薬組成物:
【化79】


[式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は下記式を有する基であり、
【化80】


Rは低級アルキレンであり、R’は下記式を有する基からなる群から選択され、
【化81】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、
は水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化82】


はヒドロキシル又はヒドロキシアルキルである。但し前記化合物は少なくとも1つの薬理学的活性薬剤残基を含む。]。
【請求項68】
下記式を有する化合物、又はその薬剤として許容される塩の治療的有効量を含む、全身性障害の治療のために眼から治療組成物を投与するのに有用な医薬組成物:
【化83】


[式中、Rは水素、モノマーグリコシド又はオリゴマーグリコシドであり、Rは水素、モノマーグリコシド、オリゴマーグリコシド又は下記式を有する基であり、
【化84】


Rは低級アルキレンであり、R’は下記式を有する基からなる群から選択され、
【化85】


(式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、
は水素又は薬理学的活性薬剤残基である)、Rは薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化86】


はヒドロキシル又はヒドロキシアルキルである。但し前記化合物は少なくとも1つの薬理学的活性薬剤残基を含む。]。
【請求項69】
下記式を有する化合物又はその薬剤として許容される塩:
【化87】


[式中、R及びRは独立して水素、又は下記式を有するグリコシドであり、
【化88】


式中、nは0から8であり、Rはアルキル、アルキレン、モノカチオン性アルキルアミン又はポリカチオン性アルキルアミンであり、
Rは低級アルキレンであり、R’は下記式を有し、
【化89】


式中、Xは0又は1であり、Yは0又は1であり、Rは水素又は薬理学的活性薬剤残基であり、R、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルであるか、又は一緒に下記からなる群から選択される窒素含有環を形成し、
【化90】


但し、前記化合物は、少なくとも1つの薬理学的活性薬剤残基を含む。]。
【請求項70】
は水素であり、Rは下記式:
【化91】


を有するグリコシドである、請求項69に記載の化合物。
【請求項71】
は下記式、
【化92】


を有するグリコシドであり、
式中nは0である、
請求項70に記載の化合物。
【請求項72】
はモノカチオン性アルキルアミン又はポリカチオン性アルキルアミンである、請求項70に記載の化合物。
【請求項73】
前記アルキルアミンは四級アミンである、請求項72に記載の化合物。
【請求項74】
下記式、
【化93】


を有する請求項71に記載の化合物。
【請求項75】
下記式、
【化94】


を有する請求項70に記載の化合物。
【請求項76】
はモノカチオン性アルキルアミン又はポリカチオン性アルキルアミンである、請求項75に記載の化合物。
【請求項77】
前記アルキルアミンは四級アミンである、請求項76に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524572(P2007−524572A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501069(P2006−501069)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/001536
【国際公開番号】WO2004/064754
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(504335655)
【Fターム(参考)】