説明

生体信号取得システム

【課題】心内心電図と体表面心電図とを正確に同期して表示させる。
【解決手段】体内に埋め込まれ心電信号を検出する内部装置30と、体外に配置され心電信号を検出する外部装置10とを備え、内部装置30および外部装置10のうち一方が、他方へ伝搬可能な搬送波を発生させる搬送波発生部16と、該搬送波発生部16により発生させられた搬送波を一方が検出した心電信号によって変調して出力する変調部17とを備え、他方が、変調部17により変調された搬送波から一方が検出した心電信号を復調する復調部36と、タイミング信号を生成するタイミング信号生成部41と、該タイミング信号生成部41により生成されたタイミング信号に従って、他方が検出した心電信号および復調部36によって復調された心電信号をサンプリングすることでこれらの心電信号をデジタル信号に変換するA/D変換部38とを備える生体信号取得システム1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号取得システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓の特定の位置における心内心電図を取得し、体外に設置された外部装置と通信可能な体内埋め込み型の心臓治療装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。外部装置は、心臓治療装置から受信した心内心電図をモニタに表示するとともに、体表面に配置した電極によって体表面心電図を取得してモニタに表示する。医師は、心内心電図と体表面心電図の両方を参照し比較することにより、患者の心臓の状態を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−511214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の心臓治療装置は、アナログ信号として検出した心臓の電気信号をデジタル信号に変換した後、このデジタル信号をメモリに記憶したり外部装置に伝送したりするなどの処理を行う。一方、外部装置も、アナログ信号として検出した体表面における電気信号をデジタル信号に変換した後に処理する。外部装置は、これらのデジタル信号を時系列でグラフ化することにより心電図として表示する。
【0005】
このときに、心臓治療装置および外部装置は、それぞれが備えるクロックが生成するクロック信号に従ってアナログ信号からデジタル信号への変換を行う。すなわち、心臓治療装置および外部装置のクロック信号に生じる誤差に起因したサンプリング時間間隔のずれが、2つの心電図のデジタル信号間に生じ、心臓治療装置と外部装置によって同時に同じ時間だけ心電図の測定を行っても、得られるデジタル信号のサンプリング数に差が生じる。
【0006】
このようにして生成された2つの心電図のデジタル信号は、実際にはずれているサンプリング時間間隔が共通の時間間隔としてモニタに表示される。つまり、医師は、時間軸が異なる2つの心電図を、同期した心電図として提示されることとなる。医師は、心内心電図と体表面心電図に表われている波形のタイミングを数〜数十ミリ秒単位で比較することにより心臓の状態を診断するので、このような心臓治療装置および外部装置によって得られた心電図からでは心臓の状態を正確に診断することが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、心内心電図と体表面心電図とを正確に同期して表示させることができる生体信号取得システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、体内に埋め込まれ、心電信号を検出する内部装置と、体外に配置され、心電信号を検出する外部装置とを備え、前記内部装置および前記外部装置のうち一方が、他方へ伝搬可能な搬送波を発生させる搬送波発生部と、該搬送波発生部により発生させられた搬送波を前記一方が検出した前記心電信号によって変調して出力する変調部とを備え、前記他方が、前記変調部により変調された搬送波から前記一方が検出した心電信号を復調する復調部と、タイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、該タイミング信号生成部により生成されたタイミング信号に従って、前記他方が検出した前記心電信号、および、前記復調部によって復調された前記心電信号をそれぞれサンプリングすることによりこれらの心電信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備える生体信号取得システムを提供する。
【0009】
本発明によれば、外部装置および内部装置のうち一方は、搬送波発生部によって発生させられた搬送波を変調部において心電信号によって変調することにより、心電信号をアナログ信号として他方へ搬送する。外部装置および内部装置のうち他方は、搬送されてきた搬送波に含まれる心電信号を復調部において復調し、復調した心電信号と自身が検出した心電信号との両方をA/D変換部においてデジタル信号に変換する。得られたデジタル信号は、時系列でグラフ化されることにより、心内および体表面における心電図として表示されることができる。
【0010】
この場合に、A/D変換部は、タイミング信号生成部によって生成される共通のタイミング信号に従って、心臓および体表面における2つの心電信号をサンプリングする。すなわち、A/D変換部によって生成された心内心電図と体表面心電図の2つのデジタルデータにおいてはサンプリング時間間隔が同一となる。これにより、心内心電図と体表面心電図とを正確に同期して表示させることができる。
【0011】
上記発明においては、前記外部装置が、前記搬送波発生部および前記変調部を備え、前記内部装置が、前記復調部、前記タイミング信号生成部および前記A/D変換部を備えていてもよい。
このようにすることで、外部装置の構成の簡略化および軽量化を図り、外部装置を携帯に好適な構成とすることができる。
【0012】
また、本発明は、体内に埋め込まれ、心電信号を検出する内部装置と、体外に配置され、心電信号を検出する外部装置とを備え、前記内部装置および前記外部装置のうち一方が、他方へ伝搬可能な搬送波を発生させる搬送波発生部と、タイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、該タイミング信号生成部によって生成されたタイミング信号に従って前記一方が検出した前記心電信号をサンプリングすることにより該心電信号をデジタル信号に変換する第1のA/D変換部と、前記搬送波発生部によって発生させられた搬送波を前記タイミング信号部により生成されたタイミング信号によって変調して出力する変調部とを備え、前記他方が、前記変調部により変調された搬送波から前記タイミング信号を復調する復調部と、該復調部によって復調されたタイミング信号に従って前記他方が検出した前記心電信号をサンプリングすることにより該心電信号をデジタル信号に変換する第2のA/D変換部とを備える生体信号取得システムを提供する。
【0013】
本発明によれば、内部装置および外部装置のうち一方は、自身が検出した心電信号をタイミング信号生成部により生成されたタイミング信号に従って第1のA/D変換部においてデジタル変換するとともに、タイミング信号を搬送波によって他方へ搬送する。内部装置および外部装置の他方は、一方から搬送されてきた搬送波から復調したタイミング信号に従って、自身が検出した心電信号を第2のA/D変換部においてデジタル変換する。すなわち、心臓および体表面において検出された2つの心電信号は共通のタイミング信号に従ってサンプリングされるので、得られたデジタル信号から生成される心内心電図および体表面心電図を正確に同期して表示させることができる。
【0014】
また、本発明は、体内に埋め込まれ、心電信号を検出する内部装置と、体外に配置され、心電信号を検出する外部装置と、タイミング信号を生成し、生成したタイミング信号によって変調した搬送波を出力するクロック部とを備え、前記内部装置および前記外部装置がそれぞれ、前記クロック部から出力された前記変調された搬送波から前記タイミング信号を復調する復調部と、該復調部によって復調されたタイミング信号に従って、自身が検出した前記心電信号をサンプリングすることにより、該心電信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備える生体信号取得システムを提供する。
【0015】
本発明によれば、内部装置および外部装置はそれぞれ、クロック部から搬送されてきた搬送波から復調部においてタイミング信号を復調し、復調したタイミング信号に従って自身が検出した心電信号をA/D変換部においてデジタル変換する。すなわち、心臓および体表面における2つの心電信号から得られるデジタル信号は共通のタイミング信号によってサンプリングされることにより同一のサンプリング時間間隔を有することとなるので、心内心電図および体表面心電図を正確に同期して表示させることができる。
【0016】
上記発明においては、前記内部装置および前記外部装置に備えられた各前記A/D変換部に対して、前記心電信号のサンプリングの開始を指令する指令部を備えていてもよい。
このようにすることで、内部装置および外部装置の各A/D変換部に、同時刻に各心電信号のサンプリングを開始させて、生成されるデジタル信号の開始時刻を容易に揃えることができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記外部装置が、血圧、体温または体重を検出することとしてもよい。
このようにすることで、他の生体信号の時間変化も心内心電図および体表面心電図と同期して表示させることができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記内部装置が、前記心臓に電気的刺激を与えることにより不整脈を治療する心臓治療装置であり、前記外部装置が、前記心臓治療装置との間で通信可能であり該心臓治療装置の動作を制御するプログラマであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、心内心電図と体表面心電図とを正確に同期して表示させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る生体信号取得システムの全体構成図であり、患者の(a)体表および(b)体内をそれぞれ示している。
【図2】図1の外部装置および内部装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2の外部装置における搬送波の変調処理を説明する図であり、(a)体表面心電信号、(b)搬送波および(c)体表面心電信号によって変調された搬送波の波形をそれぞれ示している。
【図4】図2の内部装置における体表面心電信号および心内心電信号のA/D変換処理を説明する図であり、(a)変調搬送波から復調された体表面心電信号、(b)心内心電信号、(c)タイミング信号、(d)(a)の体表面心電信号から生成されたデジタル信号および(e)(b)の心内心電信号から生成されたデジタル信号をそれぞれ示している。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る生体信号取得システムの外部装置および内部装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5の内部装置における搬送波の変調処理を説明する図であり、(a)タイミング信号、(b)搬送波および(c)タイミング信号によって変調された搬送波の波形をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の第1の実施形態に係る生体信号取得システム1について図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態に係る生体信号取得システム1は、図1に示されるように、体外に配置される外部装置10と、体内に埋め込まれる内部装置30とを備えている。図1(a)および図1(b)は、同じ患者Aの体表と体内とをそれぞれ表した図である。本実施形態においては、内部装置30としては、埋め込み型除細動装置(ICD:implantable cardioverter defibrillator)やペースメーカ等の心臓治療装置を想定している。外部装置10としては、心臓治療装置との間でデータを送受信することにより心臓治療装置の仕様を設定したり動作を制御したりするプログラマを想定している。
【0022】
外部装置10は、外部装置本体11と、患者Aの体表に配置される複数の体表面電極12と、外部装置本体11と体表面電極12とを接続するリード13とを備え、体表面電極12によって体表面において心電信号を検出する。体表面電極12の数および配置は、心電図の測定方法に応じて適宜選択可能であるが、本実施形態においては、正電極、負電極、接地電極として3つの体表面電極12を用いる場合を例示している。
【0023】
内部装置30は、内部装置本体31と、該内部装置本体31から心臓B内に延びるリード32とを備えている。該リード32の先端には互いに絶縁された一対の心内電極33が設けられており、内部装置30は、心内電極33によって該心内電極33が配置された心臓Bの特定の位置(図示する例では右心室内)における心電信号を検出する。また、内部装置本体31を外装する筐体も、金属などから構成されることにより電極(以下、CAN電極という。)31aとして機能するようになっている。内部装置30は、心内電極33によって検出された心電信号の波形変化に基づいて、適宜選択した電極33,34から電気パルスを放出させることにより、心臓Bに電気刺激を与えて不整脈を治療するように構成されている。
【0024】
次に、外部装置10および内部装置30の詳細な構成について説明する。
外部装置10は、図2に示されるように、体表面電極12によって検出された電気信号から心電信号を抽出する体表面心電信号フィルタ部14と、該体表面心電信号フィルタ部14により抽出された体表面心電信号を増幅する体表面心電信号増幅部15と、搬送波を発生させる搬送波発生部16と、該搬送波発生部16から発生させられた搬送波を体表面心電信号によって変調する変調部17と、該変調部17によって変調された搬送波を増幅する搬送波増幅部18とを備えている。
【0025】
体表面電極12により検出された体表面心電信号を含む電気信号は、体表面心電信号フィルタ部14に入力される。体表面心電信号フィルタ部14は、例えば、例えば0.1〜250Hz程度の周波数帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタであり、入力された電気信号のうち不要なノイズ信号を遮断して体表面心電信号を選択的に通過させる。
【0026】
体表面心電信号フィルタ部14により抽出された体表面心電信号は、体表面心電信号増幅部15に入力され、変調部17における変調に適した強度まで増幅された後、変調部17に入力される。
搬送波発生部16は、患者Aの体内組織を介して体内の内部装置30まで伝搬可能な周波数を有する搬送波を発生させて変調部17へ出力する。搬送波の周波数は、例えば、数〜数100kHz程度である。
【0027】
変調部17は、図3に示されるように、搬送波発生部16から入力された搬送波(同図(b)参照。)を、体表面心電信号増幅部15から入力された体表面心電信号(同図(a)参照。)によって変調することにより、変調搬送波を生成し(同図(c)参照。)出力する。変調方式としては、図示する例では振幅変調方式が用いられているが、周波数変調等のその他の変調方式が用いられてもよい。
【0028】
搬送波増幅部18は、変調部17から出力された変調搬送波を、患者Aの体内の内部装置30まで伝搬可能な強度まで増幅した後、体表面電極12に出力する。これにより、体表面心電信号の情報が含まれた変調搬送波が、体表面電極12から患者Aの体内組織を介して内部装置30へ送信されることとなる。
【0029】
内部装置30は、外部装置10からの変調搬送波を受信する体内電極34と、変調搬送波を抽出する搬送波フィルタ部35と、変調搬送波から体表面心電信号を復調する復調部36と、該復調部36により復調された体表面心電信号を増幅する体表面心電信号増幅部37と、A/D変換部38と、心電信号を検出する心内電極33と、該心内電極33により検出された電気信号のうち心内心電信号を抽出する心内心電信号フィルタ部39と、心内心電信号を増幅する心内心電信号増幅部40と、制御部(タイミング信号生成部)41と、クロック42と、記憶部43と、通信部44とを備えている。
【0030】
心内電極33は、正極33aと負極33bの一対の電極から構成されている。体内電極34は、心内電極33の正極33aとCAN電極31aとの組み合わせにより構成されている。なお、体内電極は、心内電極33の一対の電極33a,33bおよびCAN電極31aのうちの他の電極の組み合わせによって構成されてもよい。体内電極34は、外部装置10から患者Aの体内を介して伝搬してきた変調搬送波を検出し、検出した変調搬送波を搬送波フィルタ部35へ出力する。
【0031】
搬送波フィルタ部35は、例えば、搬送波と同程度の帯域の周波数を有する信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタであり、体内電極34により検出された電気信号のうち変調搬送波を選択的に通過させる。搬送波フィルタ部35は、抽出した変調搬送波を復調部36に入力する。
【0032】
復調部36は、変調搬送波に含まれる体表面心電信号を復調し、復調した体表面心電信号を体表面心電信号増幅部37に出力する。
体表面心電信号増幅部37は、入力された体表面心電信号を、後述するA/D変換に必要な信号強度まで増幅した後、A/D変換部38に出力する。
【0033】
心内心電信号フィルタ部39は、例えば、10〜100Hzの周波数帯域を選択的に通過させるバンドパスフィルタであり、心内電極33から入力された電気信号のうちノイズを除去して心内心電信号を抽出し、抽出した心内心電信号を心内心電信号増幅部40に出力する。
心内心電信号増幅部40は、心内心電信号フィルタ部39から入力された心内心電信号を、後述するA/D変換に必要な強度まで増幅した後、A/D変換部38に出力する。
【0034】
A/D変換部38は、図4に示されるように、体表面心電信号増幅部37および心内心電信号増幅部40からそれぞれ入力されたアナログ信号である体表面心電信号(同図(a)参照。)および心内心電信号(同図(b)参照。)の電位の値を、制御部41によって生成されたタイミング信号(後述、同図(c)参照。)に従ってサンプリングする。これにより、A/D変換部38は、これらの2つの心電信号からデジタル信号(同図(d),(e)参照。)を生成する。すなわち、生成された2つのデジタル信号は、同一の時刻にサンプリングされたデータ点からなる。
【0035】
制御部41は、例えば、心臓治療装置に備えられたCPU(中央処理装置)である。制御部41は、クロック42により生成されるクロック信号に従って動作するとともに、該クロック信号を分周することによってタイミング信号を生成する。クロック信号は、例えば、2MHzの方形波信号である。また、制御部41は、A/D変換部38によって生成された心内心電信号および体表面心電信号のデジタル信号を記憶部43に記憶させる。また、制御部41は、通信部44を介して、外部装置10とデジタル信号を用いたデータの送受信を行うための制御を行う。さらに制御部41は、心内電極33により検出された心電信号の時間変換に基づいて内部装置30に備えられた図示しない電気パルス発生部により電気パルスを発生させる等の制御を行う。
【0036】
次に、このように構成された本実施形態に係る生体信号取得システム1の作用について説明する。
本実施形態に係る生体信号取得システム1を用いて心内心電図および体表面心電図を取得するには、例えば、医師が、患者Aの体表に体表面電極12を配置し、外部装置10を操作することにより体表面電極12による心電信号の測定を開始させる。外部装置10によって測定された体表面心電信号は順次搬送波によって内部装置30へ伝達される。
【0037】
内部装置30は、外部装置10から送られてきた搬送波に含まれる体表面心電信号を復調するとともに、自身の心内電極33によって心内心電信号を測定する。内部装置30は、これらの体表面心電信号および心内心電信号を同一のA/D変換部38によってデジタル化した後、記憶部43に記憶する。
【0038】
医師は、一定期間にわたって心電信号を測定した後、外部装置10によって内部装置30の記憶部38から心内心電信号および体表面心電信号のデジタル信号のデータを取得する。取得された2つのデジタル信号のデータは、外部装置10によって時系列でグラフ化されることにより心電図としてモニタに表示されて医師に提示される。
【0039】
このように、本実施形態によれば、外部装置10および内部装置30が患者Aの体の内外にそれぞれ配置されていても、一方で検出した心電信号が搬送波によって他方に送信されることにより、体表面および心内における2つの心電信号が同一のA/D変換部38で同一のタイミング信号を用いてデジタル変換される。これにより、2つの心電信号から生成されたデジタル信号間においてサンプリング時間間隔が同一となるので、2つのデジタル信号を心電図として表示させたときに時間軸が正確に一致した状態となり、医師は正確に同期した心内心電図および体表面心電図から心臓Bの状態を正確に診断することができるという利点がある。
【0040】
なお、本実施形態においては、外部装置10としてプログラマを想定したが、外部装置10はプログラマとは別体であってもよい。本実施形態によれば、外部装置10の構成が簡略で済むので、外部装置10を小型にかつ軽量に構成することができる。したがって、患者Aは、例えば、外部装置10を患者Aの体表に貼り付けたりポケット内に収納したりすることにより外部装置10を容易に携帯することが可能となり、比較的長時間の心電図を取得する場合でも患者Aの負担を軽減することができる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態に係る生体信号取得システム1について、図5および図6を参照して説明する。
なお、本実施形態においては、上述した第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施形態と異なる点について主に説明する。
【0042】
第1の実施形態に係る生体取得システム1は、外部装置10において検出した体表面心電信号をアナログ信号のまま内部装置30へ伝達し、内部装置30において体表面心電信号および心内心電信号をA/D変換して記憶した。これに対して、本実施形態に係る生体信号取得システム1は、内部装置30において生成されたA/D変換のためのタイミング信号を外部装置10に供給し、内部装置30および外部装置10は自身が検出した心電信号をそれぞれA/D変換して記憶するものである。
【0043】
本実施形態に係る内部装置30は、図5に示されるように、搬送波発生部45と、変調部46と、搬送波増幅部47とを備えている。
搬送波発生部45、変調部46および搬送波増幅部47はそれぞれ、第1の実施形態において外部装置10に備えられた搬送波発生部16、変調部17および搬送波増幅部18と同様に構成されている。
【0044】
心内電極33により検出された心電信号は、第1の実施形態と同様に、心内心電信号フィルタ部39および心内心電信号増幅部40を介してA/D変換部(第2のA/D変換部)38に入力される。A/D変換部38は、制御部41によって生成されたタイミング信号に従って、図4(b),(c),(e)に示される処理と同様にして、入力された心内心電信号をサンプリングすることによりデジタル化する。このようにして心内心電信号から生成されたデジタル信号は記憶部43に逐次記憶される。
【0045】
一方でA/D変換部38は、制御部41から入力されたタイミング信号を変調部46に出力する。変調部46は、図6に示されるように、搬送波発生部45によって発生させられた搬送波(同図(b)参照。)を、A/D変換部38から入力されたタイミング信号(同図(a)参照。)によって変調することにより変調搬送波(同図(c)参照。)を生成する。生成された変調搬送波は、搬送波増幅部47によって適切な強度まで増幅された後に体内電極34へ出力され、該体内電極34から患者Aの体内組織を介して体表面電極12へ送信される。
【0046】
本実施形態に係る外部装置10は、搬送波フィルタ部20と、搬送波増幅部21と、復調部22と、A/D変換部(第1のA/D変換部)23と、制御部24と、クロック25と、記憶部26と、通信部27とを備えている。
搬送波フィルタ部20、搬送波増幅部21、復調部22、A/D変換部23、制御部24、クロック25、記憶部26および通信部27はそれぞれ、第1の実施形態における搬送波フィルタ部35、搬送波増幅部18、復調部36、A/D変換部38、制御部41、クロック42、記憶部43および通信部44と同様に構成されている。
【0047】
体表面電極12は、体表面において検出した心電信号を体表面心電信号フィルタ部14に出力するとともに、内部装置30から送信されてきた変調搬送波を含む電気信号を受信して該変調搬送波を搬送波フィルタ部20に出力する。
【0048】
体表面心電信号は、体表面心電信号フィルタ部14から体表面心電信号増幅部15を介してA/D変換部23に出力される。
一方、変調搬送波を含む電気信号は、搬送波フィルタ部20においてノイズが除去されて変調搬送波が抽出される。抽出された該変調搬送波は、搬送波増幅部21によって増幅された後、復調部22においてタイミング信号が復調される。復調されたタイミング信号は、A/D変換部23に出力される。
【0049】
A/D変換部23は、復調部22から入力されるタイミング信号に従って、図4(a),(c),(d)に示される処理と同様に、体表面心電信号増幅部15から入力される体表面心電信号をサンプリングすることによりデジタル信号を生成する。
【0050】
制御部24は、A/D変換部23において生成された心電信号を記憶部26に記憶する。一方、制御部24は、通信部27,44を介して内部装置30の記憶部43に蓄積された心内心電信号から生成されたデジタル信号を取得して記憶部26に記憶する。
【0051】
また、内部装置30の制御部(指令部)41は、各A/D変換部23,38による心電信号のサンプリングの開始を指令する指令信号を、A/D変換部38と通信部44に出力する。外部装置10の制御部24は、通信部27によって指令信号が受信されたときに、A/D変換部23による体表面心電信号のサンプリングを開始する。これにより、内部装置30および外部装置10の両方において同時に心電信号のデジタル変換が開始され、各記憶部(後述)26,43に記憶されるデジタル信号の開始時刻が一致させられることとなる。
【0052】
指令信号は、例えば、各記憶部26,43に記憶されたデータを同時に消去することを指令するものであってもよい。これにより、各A/D変換部23,38によって生成されたデジタル信号の記憶部26,43への記憶が同時刻に開始されるので、各記憶部26,43に蓄積されたデジタル信号の開始時刻を一致させることができる。
【0053】
次に、このように構成された生体信号取得システム1の作用について説明する。
本実施形態に係る生体信号取得システム1を用いて体表面心電図および心内心電図を取得するには、例えば、操作者による操作によって、心電信号取得の開始を指令する開始指令信号を外部装置30から内部装置10へ出力させる。内部装置10はこの開始指令信号を受信することにより、各A/D変換部23,38に対してサンプリングを開始する指令信号を出力する。これにより、外部装置10および内部装置30の両方において、測定された各心電信号のデジタル信号が記憶される。
【0054】
操作者は、一定期間心電信号の測定を行った後、内部装置30の記憶部26に蓄積された心内心電信号のデジタル信号のデータを、通信部44,27を介して外部装置10によって取得し、体表面心電信号と心内心電信号の両方のデジタル信号を該外部装置10によってグラフ化させることにより体表面心電図および心内心電図としてモニタ等に表示させる。
【0055】
このように、本実施形態によれば、外部装置10および内部装置30が患者Aの体の内外にそれぞれ配置され、体表面および心内における2つの心電信号が別々のA/D変換部23,38によってデジタル変換される構成であっても、一方で生成されたタイミング信号が搬送波によって他方に送信されることにより、2つの心電信号が同一のタイミング信号に従ってデジタル変換される。これにより、2つの心電信号から生成されたデジタル信号間においてサンプリング時間間隔が同一となるので、2つのデジタル信号を心電図として表示させたときに時間軸が正確に一致した状態となり、医師は正確に同期した心内心電図および体表面心電図から心臓Bの状態を正確に診断することができるという利点がある。
【0056】
なお、本実施形態においては、内部装置30がタイミング信号を生成して外部装置10に送信することとしたが、これに代えて、外部装置10がタイミング信号を生成して内部装置30に送信することとしてもよい。この場合、内部装置30に備えられた搬送波発生部45、変調部46、搬送波増幅部47を外部装置10に設け、外部装置10に備えられた搬送波フィルタ部20、搬送波増幅部21、復調部22を内部装置30に設ければよい。
【0057】
このようにしても、患者Aの体の内外に配置された内部装置30および外部装置10においても共通のタイミング信号で各心電信号をサンプリングし、心内心電図および体表面心電図を正確に同期して表示させることができる。
【0058】
また、本実施形態においては、外部装置10および内部装置30の外部にこれら10,30とは別体のクロック部が備えられ、該クロック部において生成されたタイミング信号を搬送波によって外部装置10および内部装置30のそれぞれに送信することとしてもよい。
このようにしても、外部装置10と内部装置30において、同一のタイミング信号に従って各心電信号をサンプリングし、正確に同期した体表面心電図と心内心電図とを表示させることができる。
【0059】
また、上述した第1および第2の実施形態においては、外部装置10が、心電信号の他に、患者Aの血圧、体温、体重などの生体信号を検出し、検出したこれらの生体信号についてもA/D変化部23,38によってデジタル化して記憶部26,43に記憶することとしてもよい。
【0060】
この場合、第1の実施形態の構成においては、例えば、外部装置10は、搬送波発生部16が周波数の異なる複数の搬送波を発生させ、変調部17が各搬送波を異なる生体信号で変調する。そして、内部装置30は、復調部36が各搬送波から各生体信号を復調し、これらの生体信号を心電信号とともにA/D変換部38がデジタル変換した後に記憶部43に記憶するように構成すればよい。
このようにすることで、外部装置10は、2つの心電図とともに、該心電図と正確に同期させて他の生体信号の時間変化もモニタ等に表示させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 生体信号取得システム
10 外部装置
11 外部装置本体
12 体表面電極
13,32 リード
14 体表面心電信号フィルタ部
15,37 体表面心電信号増幅部
16,45 搬送波発生部
17,46 変調部
18,21,47 搬送波増幅部
20,35 搬送波フィルタ部
22,36 復調部
23 A/D変換部(第1のA/D変換部)
24 制御部
25,42 クロック
26,43 記憶部
27,44 通信部
30 内部装置
31 内部装置本体
31a 筐体、CAN電極
33,33a,33b 心内電極
34 体内電極
38 A/D変換部(第2のA/D変換部)
39 心内心電信号フィルタ部
40 心内心電信号増幅部
41 制御部(タイミング信号生成部、指令部)
A 患者
B 心臓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に埋め込まれ、心電信号を検出する内部装置と、
体外に配置され、心電信号を検出する外部装置とを備え、
前記内部装置および前記外部装置のうち一方が、他方へ伝搬可能な搬送波を発生させる搬送波発生部と、該搬送波発生部により発生させられた搬送波を前記一方が検出した前記心電信号によって変調して出力する変調部とを備え、
前記他方が、前記変調部により変調された搬送波から前記一方が検出した心電信号を復調する復調部と、タイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、該タイミング信号生成部により生成されたタイミング信号に従って、前記他方が検出した前記心電信号、および、前記復調部によって復調された前記心電信号をそれぞれサンプリングすることによりこれらの心電信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備える生体信号取得システム。
【請求項2】
前記外部装置が、前記搬送波発生部および前記変調部を備え、
前記内部装置が、前記復調部、前記タイミング信号生成部および前記A/D変換部を備える請求項1に記載の生体信号取得システム。
【請求項3】
体内に埋め込まれ、心電信号を検出する内部装置と、
体外に配置され、心電信号を検出する外部装置とを備え、
前記内部装置および前記外部装置のうち一方が、他方へ伝搬可能な搬送波を発生させる搬送波発生部と、タイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、該タイミング信号生成部によって生成されたタイミング信号に従って前記一方が検出した前記心電信号をサンプリングすることにより該心電信号をデジタル信号に変換する第1のA/D変換部と、前記搬送波発生部によって発生させられた搬送波を前記タイミング信号部により生成されたタイミング信号によって変調して出力する変調部とを備え、
前記他方が、前記変調部により変調された搬送波から前記タイミング信号を復調する復調部と、該復調部によって復調されたタイミング信号に従って前記他方が検出した前記心電信号をサンプリングすることにより該心電信号をデジタル信号に変換する第2のA/D変換部とを備える生体信号取得システム。
【請求項4】
体内に埋め込まれ、心電信号を検出する内部装置と、
体外に配置され、心電信号を検出する外部装置と、
タイミング信号を生成し、生成したタイミング信号によって変調した搬送波を出力するクロック部とを備え、
前記内部装置および前記外部装置がそれぞれ、
前記クロック部から出力された前記変調された搬送波から前記タイミング信号を復調する復調部と、
該復調部によって復調されたタイミング信号に従って、自身が検出した前記心電信号をサンプリングすることにより、該心電信号をデジタル信号に変換するA/D変換部とを備える生体信号取得システム。
【請求項5】
前記内部装置および前記外部装置に備えられた各前記A/D変換部に対して、前記心電信号のサンプリングの開始を指令する指令部を備える請求項3または請求項4に記載の生体信号取得システム。
【請求項6】
前記外部装置が、血圧、体温または体重を検出する請求項1、請求項3または請求項4に記載の生体信号取得システム。
【請求項7】
前記内部装置が、前記心臓に電気的刺激を与えることにより不整脈を治療する心臓治療装置であり、
前記外部装置が、前記心臓治療装置との間で通信可能であり該心臓治療装置の動作を制御するプログラマである請求項1、請求項3または請求項4に記載の生体信号取得システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191964(P2012−191964A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55886(P2011−55886)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】