説明

生体信号測定装置および生体信号測定方法

【課題】血中酸素飽和度の測定と併せて毛細血管再充填時間も測定する。
【解決手段】少なくとも2つの異なる波長の光を被測定者の生体組織500に照射する発光部31,32と、前記発光部31,32から照射されて前記生体組織500を透過又は反射したそれぞれの波長の光を受光し、当該光の受光強度に応じた電気信号に変換する受光部33と、前記受光部33から出力される前記電気信号から前記受光強度の経時的な変動を検出する検出部23と、少なくとも酸素飽和度と脈拍数のいずれかを算出するパルスオキシメータモードと、毛細血管再充填時間を算出する毛細血管再充填時間測定モードとを選択可能な選択部と、前記受光強度の変動に基づき、前記選択部で選択されたモードによる算出を行う算出部23と、を備えることを特徴とする生体信号測定装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスオキシメータおよび毛細血管再充填時間の測定方法に関する。より詳しくは、少なくとも2つの異なる波長の光を生体組織に透過又は反射させて受光したときの受光強度の周期的な変動成分から得られた脈波をもとに動脈の血中酸素飽和度や脈拍数を算出する従来のパルスオキシメータの有する算出機能に加え、生体組織を圧迫した状態から解放したことによる上記受光強度の変動を検出して毛細血管再充填時間を算出する算出部とを備えるパルスオキシメータおよび毛細血管再充填時間の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、毛細血管再充填時間(CRT:Capillary Refilling Time)は、被測定者の指先を圧迫した後に解放し、解放後の皮膚の色を目視で確認し、血色が戻るまでの時間を測っていた。しかしながら、このような目視による測定は定量性に乏しく、測定者による誤差も生じ易かった。そこで、クリップ形状のプローブに指先を差し込んで当該プローブに内蔵されたアクチュエータにより指先を圧迫し、その後解放する際に毛細血管再充填時間を検出する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0282182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、毛細血管再充填時間の測定は、多くの場合、意識のない患者を救急搬送する際などの緊急時に行われることから、測定精度とともに測定の簡便さや他の測定と並行して行えることなどが求められる。しかしながら、上記特許文献1に記載の装置では、アクチュエータなどの特別な機器を要するため、測定の準備や測定に時間がかかるにも関わらず実質的に毛細血管再充填時間が測定できるのみであることから、目視による迅速な測定に慣れた救急現場に普及するには至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、少なくとも2つの異なる波長の光を被測定者の生体組織に照射する発光部と、前記発光部から照射されて前記生体組織を透過又は反射したそれぞれの波長の光を受光し、当該光の受光強度に応じた電気信号に変換する受光部と、前記受光部から出力される前記電気信号から前記受光強度の経時的な変動を検出する検出部と、少なくとも酸素飽和度と脈拍数のいずれかを算出するパルスオキシメータモードと、毛細血管再充填時間を算出する毛細血管再充填時間測定モードとを選択可能な選択部と、前記受光強度の変動に基づき、前記選択部で選択されたモードによる算出を行う算出部と、を備えることを特徴とする生体信号測定装置を提供する。
【0006】
また、上記生体信号測定装置において、前記選択部は、前記パルスオキシメータモードと前記毛細血管再充填時間測定モードとのいずれか一方のみを選択可能とすることがより好ましい。
【0007】
また、上記生体信号測定装置において、前記算出部は、前記受光強度の大きさ又は前記受光強度の経時的な減少に対する時間微分値が予め定められた閾値を下回ったことに応じて、前記生体組織が外部から圧迫された圧迫状態から解放されたことを検出することがより好ましい。
【0008】
また、上記生体信号測定装置において、前記算出部は、前記生体組織が前記圧迫状態から解放されたことを検出してから、前記生体組織を圧迫する前後での前記受光強度の差分に対して所定の割合まで前記受光強度が減少するのに要する時間を前記毛細血管再充填時間として算出することがより好ましい。
【0009】
また、この場合、前記算出部は、前記生体組織を圧迫する前の状態および前記圧迫状態の各状態における所定時間内の前記受光強度の変動を平均化してその差を前記受光強度の差分として算出することが好ましい。
【0010】
上記生体信号測定装置において、前記算出部は、前記生体組織を圧迫する前の状態および前記圧迫状態の各状態における所定時間内の前記受光強度の変動を脈波の周波数成分を中心にノッチフィルタリングしてその差を前記受光強度の差分として算出することが好ましい。
【0011】
また、上記生体信号測定装置において、前記算出部は、前記受光強度の大きさ又は前記受光強度の経時的な増加に対する時間微分値が予め定められた閾値を上回ったことに応じて、前記圧迫状態において前記電気信号が検出可能となるように前記電気信号の検出感度を変更することがより好ましい。
【0012】
また、これに替えて、上記生体信号測定装置は、前記毛細血管再充填時間の測定開始操作を受け付ける操作受付部をさらに備え、前記算出部は、前記操作受付部が前記測定開始操作を受け付けたことに応じて、前記圧迫状態において前記電気信号が検出可能となるように前記電気信号の検出感度を変更してもよい。
【0013】
また、上記生体信号測定装置において、前記算出部は、前記検出感度を変更してから前記毛細血管再充填時間を算出するまでの間は、前記検出感度を一定に保つことが好ましい。
【0014】
また、上記生体信号測定装置は、前記毛細血管再充填時間を表示する表示部をさらに備え、前記算出部は、前記毛細血管再充填時間を複数算出した場合に、新たに算出した前記毛細血管再充填時間が所定のリジェクト条件を満たすことを条件として、前記他の複数の前記毛細血管再充填時間の平均値を最新の前記毛細血管再充填時間として前記表示部に表示することがより好ましい。
【0015】
また、上記生体信号測定装置において、前記表示部は、前記受光強度の経時的な変化を示す時間波形とともに、前記時間波形における特定部分の時間幅を選択するための時間幅選択情報を表示し、前記算出部は、前記表示部に表示された前記時間幅選択情報に基づいて選択された時間幅を算出することがより好ましい。
【0016】
また、上記生体信号測定装置において、前記算出部は、前記検出感度が変更された場合に、前記検出感度の変更前における前記受光強度の時間変化を前記検出感度の変更後の前記受光強度の時間変化へと補正することがより好ましい。
【0017】
また、上記生体信号測定装置は、視覚又は聴覚的手法によって使用者へ指示可能な指示手段をさらに備え、前記指示手段は、前記生体組織を圧迫するタイミングおよび前記圧迫状態から解放するタイミングの少なくとも一方を指示することが好ましい。
【0018】
また、本発明は、少なくとも2つの異なる波長の光を被測定者の生体組織に照射する発光段階と、前記生体組織を透過又は反射したそれぞれの波長の前記光を受光し、当該光の受光強度に応じた電気信号に変換する受光段階と、前記受光段階で得られた前記電気信号から前記受光強度の経時的な変動を検出する検出段階と、前記生体組織が外部から圧迫されていない非圧迫状態における前記受光強度の変動に基づき、少なくとも酸素飽和度と脈拍数のいずれかを算出するパルスオキシメータモードと、前記生体組織を外部から圧迫した圧迫状態から解放したことによる前記受光強度の変動に基づき、毛細血管再充填時間を算出する毛細血管再充填時間測定モードとを有する算出段階と、を含むことを特徴とする毛細血管再充填時間の測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ほとんどの救急患者に対して行われる従来のパルスオキシメータによる血中酸素飽和度の測定と併せて毛細血管再充填時間も同じ装置で測定することができるので、使用者は装置の操作に迷うことなく、緊急時などに患者の容態をより正確かつ迅速に確認することができる。また、指先などで測定する場合に、指先を圧迫した状態から解放されたことを自動で検出して例えば指先を圧迫する前後での受光強度の差分に対して予め設定した割合まで減少するのに要した時間を測定することにより、測定者の主観を排除した定量的かつ客観的な毛細血管再充填時間が測定できるとともに、測定誤差が生じにくい。
【0020】
また、本発明によれば、パルスオキシメータモードと毛細血管再充填時間測定モードとのいずれか一方のみを選択して測定を行うことにより、毛細血管再充填時間の測定中は、酸素飽和度や脈拍数の測定を行われないため、患者の圧迫に伴う酸素飽和度や脈拍数の異常値に対してアラームなどが発生しない。さらに、本発明の生体信号測定装置では、表示部により受光強度の変動を表示できるため、毛細血管再充填時間の測定が適切に行われているかを目視で容易に確認することができる。
【0021】
また、圧迫前後の各状態における受光強度の変動を平均化した値を上記受光強度の差分の算出に利用することにより、脈波成分などがキャンセルされた毛細血管再充填時間を測定することができる。また、新たに測定した毛細血管再充填時間がこれまでに測定した毛細血管再充填時間と大きく異なる場合に、測定ミスが疑われる新たな測定結果を表示せずに、これまでの測定結果の平均値を表示することにより、診断ミスが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る生体信号測定装置10の外観図である。
【図2】生体信号測定装置10の概略構成図である。
【図3】生体信号測定装置10による測定波形のうち、IRに対応する時間波形の一例を示す。
【図4】図3の波形を時間微分した値の経時変化を示す。
【図5】生体信号測定装置10を用いた動脈血酸素飽和度、脈拍、および毛細血管再充填時間の測定手順の一例を示す。
【図6】生体信号測定装置10が、表示部24への毛細血管再充填時間の表示後に終了ボタン26bが押下されたか否かによってモード切替が可能な場合の、測定手順のフローの一例を示す。
【図7】生体信号測定装置10が、使用者に被測定者の生体組織500を圧迫すべきタイミングや圧迫解除のタイミングを指示可能な場合の、測定手順のフローの一例を示す。
【図8】生体信号測定装置10による毛細血管再充填時間の算出フローの一例を示す。
【図9】測定波形とともに時間幅Txを選択するためのカーソルを表示部24へ表示させた一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る生体信号測定装置10の外観図である。また、図2は、生体信号測定装置10の概略構成図である。図1に示すように、生体信号測定装置10は、例えば被測定者の動脈血酸素飽和度および毛細血管再充填時間などの生体信号を測定可能な装置であり、装置本体20と、プローブ30と、ケーブル40とを備える。また、生体信号測定装置10は、より具体的には、図2に示すように、LEDドライバ21a,21b、LED選択手段22、CPU23、表示部24、記憶部25、操作受付部26、電流−電圧変換器27、脈波復調回路28、A/Dコンバータ29、発光素子31,32、フォトダイオード33で構成される。
【0025】
なお、本例では、これらの構成のうち、発光素子31,32およびフォトダイオード33がプローブ30に内蔵され、それ以外の構成については装置本体20に内蔵される。そして、ケーブル40は、プローブ30内の構成と装置本体20内の構成との間での信号の伝送を担う。また、発光素子31,32は、本発明における発光部の一例であり、フォトダイオード33は、本発明における受光部の一例である。
【0026】
発光素子31(LED R)は、LEDドライバ21aから供給される電流によって発光する発光ダイオードであり、発光素子32(LED IR)は、LEDドライバ21bから供給される電流によって発光素子31とは異なる波長で発光する発光ダイオードである。なお、本例では、発光素子31は、動脈血酸素飽和度の変化に対する感度が高い赤色光(例えば、波長660(nm))で発光し、発光素子32は、例えば動脈血酸素飽和度による影響が少ない赤外光(例えば、波長940(nm))で発光する。
【0027】
LED選択手段22は、発光素子31,32が所定の間隔で交互に点灯するようにLEDドライバ21a,21bを制御する。フォトダイオード33は、プローブ30に差し込まれた被測定者の指などの生体組織500へ発光素子31,32から照射されて生体組織500を透過した光を受光して電流に変換する。なお、本例に替えて、発光素子31,32から照射されて生体組織500で反射された光を受光可能な位置にフォトダイオード33を設けて、生体組織500からの反射光を受光させてもよい。
【0028】
電流−電圧変換器27は、フォトダイオード33が出力される上記電流を電圧信号(以降において「電気信号」と称する)に変換する。脈波復調回路28は、発光素子31,32の点灯タイミングを示す点灯タイミング信号をLED選択手段22から受け取り、当該点灯タイミング信号に基づいて、電流−電圧変換器27からの電気信号を、発光素子31,32で受光した赤色光(R)および赤外光(IR)の受光強度に応じた電気信号に分離する。A/Dコンバータ29は、脈波復調回路28において分離された赤色光および赤外光の受光強度に応じた電気信号をアナログ/デジタル変換してCPU23へと出力する。
【0029】
CPU23は、生体信号測定装置10の各部を制御するとともに、各種の演算処理を実行する。また、CPU23は、本発明における検出部、選択部および算出部しても機能する。すなわち、CPU23は、RおよびIRの各光の受光強度の経時的な変動をA/Dコンバータ29から入力される電気信号から検出する。また、CPU23は、生体信号の測定時には、使用者による手動入力により、又は(例えばデフォルト設定によって)自動的に、パルスオキシメータモードと毛細血管再充填時間測定モードのいずれか一方のモードが選択される。パルスオキシメータモードでは、CPU23は、生体組織500における動脈の血中酸素飽和度(動脈血酸素飽和度)や脈拍数を算出し、毛細血管再充填時間測定モードでは、生体組織500を外部から圧迫した圧迫状態から解放したことによる上記各光の受光強度の変動を電気信号から検出し、毛細血管再充填時間を算出する。より詳しくは後段にて説明する。
【0030】
表示部24は、例えばLCDなどの表示装置であり、その表示画面は、図1に示すように、被測定者の生体組織500における動脈血酸素飽和度が「SpO」の表示とともに数値で表示される動脈血酸素飽和度表示ウィンドウ24aと、被測定者の脈拍数がハートマークとともに表示される脈拍数表示ウィンドウ24bと、被測定者の毛細血管再充填時間が「CRT」の表示とともに表示される毛細血管再充填時間表示ウィンドウ24cと、生体信号測定装置10の設定情報など各種のメッセージなどが表示されるステータス表示ウィンドウ24dで構成される。
【0031】
記憶部25は、フラッシュメモリーあるいはハードディスクなどの公知のいずれかの記憶装置であってよく、生体信号測定装置10を制御するための制御プログラムやCPU23で算出された各種の測定結果などを記憶する。操作受付部26は、測定ボタン26aと、終了ボタン26bと、メニューボタン26d、ライト点灯/決定ボタン26eとを有する。
【0032】
本例の生体信号測定装置10は、動脈血酸素飽和度(SpO)を測定するパルスオキシメータモードがデフォルトで設定されており、電源(図示しない)を投入することによって、パルスオキシメータモードによる測定を開始する。パルスオキシメータモードでは、生体信号測定装置10は、従来のパルスオキシメータとして動作する。また、本例の生体信号測定装置10は、後述のように、使用者が測定ボタン26aを押下することにより、パルスオキシメータモードから毛細血管再充填時間測定モードへと切り替わり、被測定者の毛細血管再充填時間を測定する。なお、生体信号測定装置10は、毛細血管再充填時間測定モードにおいても、被測定者の生体組織500を圧迫しているとき以外は脈波を測定できるので、SpOとパルスレートを測定し表示してもよい。また、パルスオキシメータモードから毛細血管再充填時間測定モードへと切り替える手段は使用者による測定ボタン26aの押下に限られず、他の切替手段によって切替可能であってもよい。
【0033】
また、本例の生体信号測定装置10は、メニューボタン26dを押下することによって生体信号測定装置10の各種設定を変更するためのメニューなどを参照することが可能であり、ライト点灯/決定ボタン26eを押下することによって、当該メニューから特定の項目を選択して設定変更を行うことができる。また、メニューボタン26dでメニューを呼び出していないときは、ライト点灯/決定ボタン26eを押下すると、表示部24の表示画面のバックライトが点灯する。
【0034】
以上において、生体信号測定装置10の各部の機能の概要を説明したが、次に、CPU23において動脈血酸素飽和度および毛細血管再充填時間が算出されるまでの動作についてより詳細に説明する。CPU23は、脈波復調回路28からA/Dコンバータ29を経て入力されるRおよびIRの受光強度に応じた電気信号に基づいて、するRおよびIRの各光の受光強度の周期的な変動成分を検出し、被測定者の生体組織500における動脈の血中酸素飽和度(動脈血酸素飽和度)を算出する。
【0035】
なお、CPU23における動脈血酸素飽和度の算出方法については公知の何れの方法に依ってもよい。例えば、CPU23は、RおよびIRの各光の受光強度に応じた信号をそれぞれAC成分とDC成分に分離し、RおよびIRに基づき得られる減光度比(AC/DC)に基づいて動脈血酸素飽和度を算出する。また動脈を反映するAC成分より脈拍数を算出する。
【0036】
また、CPU23は、脈波復調回路28からA/Dコンバータ29を経て入力される上記電気信号に基づいて、毛細血管再充填時間を算出する。より具体的には、例えばプローブ30に差し込まれた被測定者の指の皮膚を外側から押さえ付けて圧迫状態とすると、指の内部の毛細血管に流れる血流量が著しく低下する。そして、押さえるのを止める(圧迫状態から解放する)と時間の経過とともに再び毛細血管に流れる血流量が増加して圧迫前の状態に戻る。
【0037】
このように、被測定者の生体組織500を圧迫状態から解放したときの毛細血管の血流量の変化によって、生体組織500を透過するRおよびIRの各光の受光強度(透過光量)が変化する。そして、このような透過光量の変化は、脈波復調回路28からA/Dコンバータ29を経てCPU23に入力される上記電気信号の値(電圧値)の変化として現れる。CPU23は、この変化を検出して毛細血管再充填時間を算出する。
【0038】
以下において、生体信号測定装置10による測定時の測定波形を例示しながら、生体信号測定装置10を用いて動脈血酸素飽和度、脈拍、および毛細血管再充填時間を測定する際の具体的な測定手順について説明する。
【0039】
図3は、生体信号測定装置10による測定波形のうち、IRに対応する時間波形の一例を示す。また、図4は、図3の波形を時間微分した値の経時変化を示す。図3には脈波が描画されているが、移動平均やノッチフィルタリングを行い脈動成分を除去した後に、毛細血管再充填時間を計算することも可能であり、その場合、脈動の影響を受けない安定な測定結果を得ることができる。そして、図5乃至図7は、生体信号測定装置10を用いた動脈血酸素飽和度、脈拍、および毛細血管再充填時間の測定手順の一例を示す。なお、以下の手順において使用者と被測定者は同一であってもよい。
【0040】
まず、図5にフローで示す測定手順について説明する。生体信号測定装置10を用いて動脈血酸素飽和度、脈拍、および毛細血管再充填時間を測定する際には、まず、使用者が、被測定者の指(生体組織500)にプローブ30を装着して装置本体20の電源(図示しない)を投入すると(ステップS100)、生体信号測定装置10は、デフォルトで設定されているパルスオキシメータモード(SpOモード)にて透過光量の測定を開始し(ステップS110)、被測定者の脈拍数および動脈血酸素飽和度を測定する。そして、被測定者の動脈血酸素飽和度が動脈血酸素飽和度表示ウィンドウ24aに表示され、脈拍数が脈拍数表示ウィンドウ24bに表示される。
【0041】
そして、被測定者の毛細血管再充填時間を測定する際には、使用者が、測定ボタン26aを押下することにより毛細血管再充填時間測定モード(CRTモード)を選択する(ステップS120)。これにより、生体信号測定装置10は、毛細血管再充填時間測定モードにて透過光量の測定を開始する(ステップS130)。そして、毛細血管再充填時間測定モードにて測定が開始されると、まず、生体信号測定装置10は、使用者により被測定者の指(生体組織500)におけるプローブ30が装着されている部分が圧迫されたか否かを検出する(ステップS140)。より具体的には、図3に横軸で示す時間軸において5〜6秒のタイミングで被測定者の生体組織500を圧迫すると、上記のように毛細血管の血流量が低下して生体組織500の透過光量(に対応する電気信号の値)が急激に増加する。そして、生体信号測定装置10(CPU23)は、透過光量の変動の時間微分値が図4に示すように時間「T」で所定の閾値「Th」を上回ったことを検出すると、生体組織500が時間「T」において圧迫されたと判定する。なお、閾値「Th」の大きさは、圧迫状態の検出感度などに応じて所望に設定されてよい。また、生体信号測定装置10(CPU23)は、上記時間微分値に替えて、透過光量(受光強度の大きさ)が予め設定した閾値を上回ったことを、上記生体組織500の圧迫の検出条件としてもよい。
【0042】
生体信号測定装置10は、生体組織500の圧迫を検出すると(ステップS140:YES)、次に、透過光量が圧迫状態で安定したか否かを判定する(ステップS150)。図3に示す波形を例により具体的に説明すると、生体信号測定装置10(CPU23)は、生体組織500の圧迫を検出した時間「T」から時間幅「t」が経過した時間「T」においてIRの透過光量が圧迫状態で安定したと判定する。そして、生体信号測定装置10は、毛細血管再充填時間の測定が可能な状態であることを示すメッセージを表示部24の表示画面におけるステータス表示ウィンドウ24dに表示する(例えば図1に示すように「スタンバイ」などのメッセージを表示する)。なお、上記のように生体組織500が圧迫の安定状態にあると生体信号測定装置10(CPU23)が判断するための条件は特に限定されないが、例えば一定時間内の変動幅などを条件としてもよい。
【0043】
生体信号測定装置10は、上記ステップS150において、透過光量が圧迫状態で安定したと判定すると(ステップS150:YES)、生体組織500が圧迫状態から解放されたか否かを判定する(ステップS160)。より具体的には、生体組織500を圧迫状態から解放すると、毛細血管の血流量が増加し、それに伴って生体組織500を透過する透過光量が減少する。例えば、図3に示す波形においては、11〜12秒のタイミングで被測定者の生体組織500を圧迫状態から解放しているが、このとき、毛細血管の血流量の増加に伴って生体組織500の透過光量が急激に減少している。生体信号測定装置10は、このような透過光量の減少を検出した場合に、生体組織500が圧迫状態から解放されたと判定する。
【0044】
生体信号測定装置10は、上記ステップS160において、生体組織500が圧迫状態から解放されたと判定すると(ステップS160:YES)、毛細血管再充填時間を計算する(ステップS170)。より具体的には、生体信号測定装置10は、例えば、生体組織500が圧迫状態から解放されたことを検出してから、生体組織500を圧迫する前後での透過光量の差分に対して所定の割合まで透過光量が減少するのに要する時間を毛細血管再充填時間として算出する。なお、生体信号測定装置10による毛細血管再充填時間の算出フローについては後段にてより詳細に説明する。
【0045】
上記ステップS170において算出された毛細血管再充填時間は、表示部24の毛細血管再充填時間表示ウィンドウ24cに表示される(ステップS180)。そして、装置本体20の電源が切られると(ステップS190:YES)測定は終了するが、電源が投入されている状態では、表示部24へ毛細血管再充填時間の値が表示された後は、自動的にパルスオキシメータモードへ切り替わり、パルスオキシメータモードにて透過光量の測定が開始される(ステップS110)。
【0046】
なお、上記ステップS140において、生体組織500の圧迫が検出されない場合(ステップS140:NO)は、生体信号測定装置10は、毛細血管再充填時間測定モードにて生体組織500の圧迫が検出されるまでスタンバイ状態となる。また、上記ステップS150において、透過光量が圧迫状態で安定したと判定されるまでは(ステップS150:NO)は、生体信号測定装置10は、引き続き安定の判定条件と透過光量との比較演算を繰り返す。また、上記ステップS160において、生体組織500が圧迫状態から解放されたことが検出されるまでは(ステップS160:NO)、生体信号測定装置10は、引き続き圧迫状態の解放の検出条件と透過光量との比較演算を繰り返す。
【0047】
なお、上記の測定手順では、使用者がパルスオキシメータモードから毛細血管再充填時間測定モードへ手動で切り替えたが、自動で切り替えてもよい。例えば、生体信号測定装置10(CPU23)は、上記測定手順のステップS140において、透過光量の変動の時間微分値が図4に示す閾値「Th」を上回ったことを検出したタイミングで、自動的にパルスオキシメータモードから毛細血管再充填時間測定モードへと切り替わってもよい。
【0048】
また、上記フローでは、ステップS180で表示部24へ毛細血管再充填時間の値が表示された後は、自動的にパルスオキシメータモードへ切り替わったが、例えば、表示部24への表示後に終了ボタン26bが押下されたか否かによって、パルスオキシメータモードへ切り替えるか否かが選択可能であってもよい。図6は、生体信号測定装置10が、表示部24への毛細血管再充填時間の表示後に終了ボタン26bが押下されたか否かによって、モード切替が可能な場合の測定手順のフローの一例を示す。なお、図6に示すフローにおいて、図5に示すフローと共通なステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
本例では、表示部24への表示後に終了ボタン26bが押下された場合(ステップS200:Yes)は、再びパルスオキシメータモードに切り替わり、装置本体20の電源が切られなければ(ステップS190:NO)、パルスオキシメータモードにて透過光量の測定が開始される(ステップS110)。一方、表示部24への表示後に終了ボタン26bが押下されなければ(ステップS200:NO)、再び毛細血管再充填時間測定モードにて透過光量の測定を開始する(ステップS130)。なお、生体信号測定装置10では、パルスオキシメータモードと毛細血管再充填時間測定モードとの両方が同時に実行されていても良いが、生体組織500が圧迫された状態ではパルスオキシメータモードによる動脈血酸素飽和度や脈拍数の測定値は異常な値を示すことが多い。したがって、パルスオキシメータモードと毛細血管再充填時間測定モードのどちらか一方が排他的に実行されることが望ましい。
【0050】
図7は、生体信号測定装置10が、使用者に被測定者の生体組織500を圧迫すべきタイミングや圧迫解除のタイミングを指示可能な場合の測定手順のフローの一例を示す。なお、図7に示すフローにおいて、図5または図6に示すフローと共通なステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。本例では、生体信号測定装置10は、例えばアラームや警告ランプなど使用者に対して視覚的または聴覚的に情報を伝達する手段を備えている。そして、生体信号測定装置10は、例えば、毛細血管再充填時間測定モードにて透過光量の測定を開始した後(ステップS130)、使用者に被測定者の生体組織500を圧迫すべきタイミングを指示する(ステップS300)。また、生体信号測定装置10は、透過光量が圧迫状態で安定したと判定すると(ステップS150:YES)、そこからの経過時間をカウントし、所定時間経過の後圧迫を解除すべきタイミングを指示する(ステップS310)。一般に、毛細血管再充填時間測定における圧迫時間は5秒とされている。したがって、上記所定時間は通常5秒程度に設定されるが、使用者が設定可能であるのが好ましい。生体信号測定装置10がこのような機能を有することにより、測定者の時間計測の負担が減り、より正確な測定を行うことが可能となる。
【0051】
ここで、上記ステップS170における毛細血管再充填時間の算出フローについて図8を参照しながら説明する。生体信号測定装置10による毛細血管再充填時間の算出に際しては、まず、CPU23が、所定のタイミングから予め設定された時間範囲の透過光量の測定データを記憶部25から読み出す(ステップS171)。
【0052】
ここで、上記所定のタイミングは、例えば上記ステップS120において測定ボタン26aが押下されたタイミングであってもよく、また、後述のように生体組織500が開始をCPU23が検出した時間(T)から一定時間遡ったタイミングであってもよい。また、上記時間範囲は、生体組織500が圧迫される前の十分に長い時間を含むとともに、圧迫開始から圧迫状態で安定するまでの時間を含む。
【0053】
そして、CPU23は、記憶部25から読み出した測定データから、生体組織500の圧迫前の透過光量を特定する(ステップS173)。本例では、CPU23は、上記Tよりも前の測定データを平均化した値を生体組織500の圧迫前の透過光量として算出する。
【0054】
次に、CPU23は、生体組織500が圧迫状態にあるときの透過光量を特定する(ステップS175)。本例では、CPU23は、記憶部25から読み出した測定データのうち、上記時間「T」以降の測定データを平均化した値を生体組織500が圧迫状態にあるときの透過光量として算出する。なお、生体組織の圧迫前の状態と圧迫状態とにおける受光強度の経時的変動(脈波)の周波数成分を中心とするノッチフィルタリングした測定データを圧迫状態にあるときの透過光量としてもよい。
【0055】
次に、CPU23は、生体組織500が圧迫状態にあるときの透過光量と生体組織500の圧迫前の透過光量との差分を生体組織500の圧迫による透過光量の増加分として算出し、生体組織500が圧迫状態から解放されてから透過光量が当該増加分に対して所定の割合まで減衰するのに要した時間を毛細血管再充填時間として算出する(ステップS177)。所定の割合は、たとえば90%が好適であるが、毛細血管再充填時間が非常に長い場合は、70%などより小さい値とすることも可能である。
【0056】
例えば、図3に横軸で示す時間軸において12〜14秒に示すように、圧迫状態の解放による毛細血管の血流量の増加に伴って、透過光量が急激に減少する。そして、透過光量の変動の時間微分値が図4に示すように時間「T」で所定の閾値「Th」を下回ると、CPU23は、生体組織500が時間「T」において圧迫状態から解放されたことを検出する。なお、閾値「Th」の大きさは、圧迫状態が解放されたことを検出する際の検出感度などに応じて所望に設定されてよい。また、CPU23は、上記時間微分値に替えて、透過光量(受光強度の大きさ)が予め設定した閾値を下回ったことを、上記生体組織500の圧迫状態からの解放の検出条件としてもよい。
【0057】
CPU23は、生体組織500が圧迫状態から解放されたことを検出すると、引き続きIRの透過光量の時間変化を検出し、上記ステップS175で算出した透過光量(生体組織500が圧迫状態にあるときの透過光量)に対して90%までIRの透過光量が減衰した時間「T」を特定する。そして、CPU23は、時間「T」から時間「T」までの経過時間「t」を毛細血管再充填時間として算出する。これにより、CPU23による毛細血管再充填時間の算出フローは終了する。
【0058】
なお、本例の生体信号測定装置10において、CPU23は、生体組織500の圧迫によって検出される透過光量が大きくなり、生体組織500の圧迫前(動脈血酸素飽和度の測定時)における透過光量の検出感度の上限値を上回った場合は、透過光量の検出感度を生体組織500が圧迫状態における透過光量が検出可能なレンジへと変更してもよい。ここで、CPU23は、例えば、透過光量の変動の時間微分値が所定の閾値「Th」を上回ったタイミング(図4に示す時間「T」)で透過光量の検出感度を上記のように変更してもよい。また、この場合、CPU23は、検出感度の変更に伴って透過光量の検出データを補正してもよい。
【0059】
また、本例の生体信号測定装置10において、CPU23は、上記ステップS110において装置本体20の測定ボタン26aが押下されたことに応じて透過光量の検出感度を上記のように変更してもよい。また、本例では、CPU23は、透過光量の検出感度を変更してから毛細血管再充填時間の算出が終了するまでの間は、検出感度を一定に保つ。
【0060】
また、本例の生体信号測定装置10において、CPU23は、毛細血管再充填時間を算出した場合は、当該毛細血管再充填時間(新算出値)が所定のリジェクト条件を満たすか否かを判定する。より具体的には、CPU23は、例えばそれまでに算出した複数の毛細血管再充填時間(既算出値)を記憶部25から読み出し、新算出値と比較する。そして、例えば新算出値が既算出値の平均値に対して所定幅以上異なる場合は、CPU23は、既算出値の平均値を表示部24に表示させる。また、この場合、CPU23は、新算出値が測定エラーが疑われる値であることを示す表示(測定エラー表示)を、上記平均値と併せて表示部24に表示させてもよい。
【0061】
なお、毛細血管再充填時間の既算出値が一つしかない場合は、新算出値が測定エラーが疑われる値であるか否かは被測定者が判断してもよく、この場合、被測定者によるリジェクト操作が行われたことに応じて、表示部24に測定エラー表示とともに新算出値を表示させてもよい。また、既算出値が二つ以上ある場合は、例えば各算出値と平均値を表示部24に表示させるとともに、各算出値のうち、リジェクトされた値を測定エラー表示とともに表示させてもよい。また、この場合、各算出値からリジェクトされた値を除いた残りの値の平均値を表示部24に表示させてもよい。
【0062】
また、測定波形とともに測定波形の時間軸内で使用者が特定の時間幅を選択するための時間幅選択情報を表示部24に表示させても良い。より具体的には、図9に示すように、表示部24に表示された測定波形内に使用者の操作により時間軸方向に移動可能なカーソルAとカーソルBとを表示させても良い。本例では、使用者が操作部26を操作することにより表示部24に表示された測定波形における例えば時間幅を知りたい部分の両端にカーソルAとカーソルBを移動させると、CPU23は、図9に示すカーソルAとカーソルBとの間の時間幅tを算出する。
【0063】
ここで、CPU23は、算出した時間幅tをリアルタイムで表示部24に出力して表示させてもよく、また、これに替えて、使用者が操作部26を通じて所定の表示操作を行った場合のみ算出した時間幅tを表示部24に表示させてもよい。このように、生体信号測定装置10に使用者の操作によって測定波形内の特定部分の時間幅を求めることができる機能を設けることにより、例えば、測定波形に明らかなノイズが混入した場合などの適切な毛細血管再充填時間が得られなかった場合に、使用者が測定波形から血管再充填時間として適切と思われる時間幅を選択して当該時間幅を算出することができる。なお、本例では、図9に示すように、上記時間幅選択情報の一例としてのカーソルを移動させて時間幅を選択する例を示した。しかしながら、時間幅を選択する方法はこれに限られず、表示部24の表示画面内に表示されたポイント(図示しない)などを移動させて時間幅を選択してもよい。
【0064】
また、本例の生体信号測定装置10において、CPU23は、上記のように透過光強度の検出感度を変更した場合には、当該検出感度の変更に伴って補正した透過光量の時間波形を表示部24に表示させる。また、図示を省略するが、表示部24は、透過光量の時間波形に加え、生体組織500の圧迫が検出された時間(T)や、圧迫状態が安定したと判断された時間(T)や、生体組織500が圧迫状態から解放されたと判断された時間(T)や、毛細血管が再充填されたと判断された時間(T)などを表示しても良い。表示部24がこれら各時間の表示機能を有することにより、測定者は、これらの表示によって安定な圧迫を与えていることを確認しながら測定することができるとともに、測定終了後に測定結果の良否を確認することが可能となる。また、生体信号測定装置10は、図示は省略するが、表示部24に表示したり、音又は音声メッセージを出力したり、光を発光させたりするなどの視覚的又は聴覚的手法により、使用者に、組織の圧迫や圧迫解放のタイミングを指示する手段を例えば生体信号測定装置10(CPU23)の一機能として備えてもよい。
【0065】
以上のように、本例の生体信号測定装置10によれば、動脈血酸素飽和度の測定と併せて毛細血管再充填時間も測定することができるので、緊急時などに患者の容態をより正確かつ迅速に確認することができる。また、指先などで測定する場合に、指先を圧迫した状態から解放されたことを検出して毛細血管再充填時間が自動的に測定されるので、ユーザーの主観が入ることがない定量的かつ客観的な毛細血管再充填時間の測定を可能とし、毛細血管再充填時間の算出結果に測定者の手技や判断に起因した誤差が生じにくい。
【0066】
また、本例の生体信号測定装置10は、生体組織500の圧迫前および圧迫後のそれぞれの状態における透過光量の変動を平均化した値の差分を毛細血管再充填時間の測定に利用しているので、脈波成分などがキャンセルされた毛細血管再充填時間を測定することができる。また、本例の生体信号測定装置10は、新たに測定した毛細血管再充填時間がこれまでに測定した毛細血管再充填時間と大きく異なる場合には、測定ミスが疑われる新たな測定結果を表示せずに、これまでの測定結果の平均値を表示することにより、診断ミスが生じにくい。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0068】
10…生体信号測定装置
20…装置本体
21a,21b…LEDドライバ
22…LED選択手段
23…CPU(検出部、選択部、算出部、指示手段)
24…表示部
25…記憶部
26…操作受付部
27…電流−電圧変換器
28…脈波復調回路
29…A/Dコンバータ
30…プローブ
31,32…発光素子(発光部)
33…フォトダイオード(受光部)
40…ケーブル
500…生体組織

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なる波長の光を被測定者の生体組織に照射する発光部と、
前記発光部から照射されて前記生体組織を透過又は反射したそれぞれの波長の光を受光し、当該光の受光強度に応じた電気信号に変換する受光部と、
前記受光部から出力される前記電気信号から前記受光強度の経時的な変動を検出する検出部と、
少なくとも酸素飽和度と脈拍数のいずれかを算出するパルスオキシメータモードと、毛細血管再充填時間を算出する毛細血管再充填時間測定モードとを選択可能な選択部と、
前記受光強度の変動に基づき、前記選択部で選択されたモードによる算出を行う算出部と、
を備えることを特徴とする生体信号測定装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記パルスオキシメータモードと前記毛細血管再充填時間測定モードとのいずれか一方のみを選択可能とすることを特徴とする請求項1に記載の生体信号測定装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記受光強度の大きさ又は前記受光強度の経時的な減少に対する時間微分値が予め定められた閾値を下回ったことに応じて、前記生体組織が外部から圧迫された圧迫状態から解放されたことを検出することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の生体信号測定装置。
【請求項4】
前記毛細血管再充填時間測定モードが選択された場合において、前記算出部は、前記生体組織が前記圧迫状態から解放されたことを検出してから、前記生体組織を圧迫する前後での前記受光強度の差分に対して所定の割合まで前記受光強度が減少するのに要する時間を前記毛細血管再充填時間として算出することを特徴とする請求項3に記載の生体信号測定装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記生体組織を圧迫する前の状態および前記圧迫状態の各状態における所定時間内の前記受光強度の変動を平均化してその差を前記受光強度の差分として算出することを特徴とする請求項4に記載の生体信号測定装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記生体組織を圧迫する前の状態および前記圧迫状態の各状態における所定時間内の前記受光強度の変動を脈波の周波数成分を中心にノッチフィルタリングしてその差を前記受光強度の差分として算出することを特徴とする請求項4に記載の生体信号測定装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記受光強度の大きさ又は前記受光強度の経時的な増加に対する時間微分値が予め定められた閾値を上回ったことに応じて、前記圧迫状態において前記電気信号が検出可能となるように前記電気信号の検出感度を変更することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の生体信号測定装置。
【請求項8】
前記毛細血管再充填時間の測定開始操作を受け付ける操作受付部をさらに備え、
前記算出部は、前記操作受付部が前記測定開始操作を受け付けたことに応じて、前記圧迫状態において前記電気信号が検出可能となるように前記電気信号の検出感度を変更することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の生体信号測定装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記検出感度を変更してから前記毛細血管再充填時間を算出するまでの間は、前記検出感度を一定に保つことを特徴とする請求項7または8のいずれかに記載の生体信号測定装置。
【請求項10】
前記毛細血管再充填時間を表示する表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記受光強度の変動を表示することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の生体信号測定装置。
【請求項11】
前記算出部は、前記毛細血管再充填時間を複数算出した場合に、新たに算出した前記毛細血管再充填時間が所定のリジェクト条件を満たすことを条件として、前記他の複数の前記毛細血管再充填時間の平均値を最新の前記毛細血管再充填時間として前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の生体信号測定装置。
【請求項12】
前記表示部は、前記受光強度の経時的な変化を示す時間波形とともに、前記時間波形における特定部分の時間幅を選択するための時間幅選択情報を表示し、
前記算出部は、前記表示部に表示された前記時間幅選択情報に基づいて選択された時間幅を算出することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の生体信号測定装置。
【請求項13】
前記算出部は、前記検出感度が変更された場合に、前記検出感度の変更前における前記受光強度の時間変化を前記検出感度の変更後の前記受光強度の時間変化へと補正することを特徴とする請求項6から12のいずれか1項に記載の生体信号測定装置。
【請求項14】
視覚又は聴覚的手法によって使用者へ指示可能な指示手段をさらに備え、
前記指示手段は、前記生体組織を圧迫するタイミングおよび前記圧迫状態から解放するタイミングの少なくとも一方を指示することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の生体信号測定装置。
【請求項15】
少なくとも2つの異なる波長の光を被測定者の生体組織に照射する発光段階と、
前記生体組織を透過又は反射したそれぞれの波長の前記光を受光し、当該光の受光強度に応じた電気信号に変換する受光段階と、
前記受光段階で得られた前記電気信号から前記受光強度の経時的な変動を検出する検出段階と、
少なくとも酸素飽和度と脈拍数のいずれかを算出するパルスオキシメータモードと、毛細血管再充填時間を算出する毛細血管再充填時間測定モードとを選択する選択段階と、
前記受光強度の変動に基づき、前記選択段階で選択されたモードによる算出を行う算出段階と、
を含むことを特徴とする生体信号測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115640(P2012−115640A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220125(P2011−220125)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】