説明

生体信号測定装置

【課題】全体の演算量を減らすことができる。
【解決手段】本発明の生体信号測定装置は、生体信号を測定する生体信号測定部と、測定された生体信号を演算処理する演算処理部と、を備え、前記演算処理部は、記生体信号の算出に必要な演算処理を行う独立して制御可能な第1演算処理部と、特定の演算処理を行う独立して制御可能な第2演算処理部と、を有し、前記第1演算処理部が所定条件を具備した場合に、前記第2演算処理部に特定の演算処理を実行させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ処理機能などの性能を維持しつつ、消費電力を減らすとともに、長時間の連続使用を可能とする生体信号測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体信号測定装置の一例として、動脈血の酸素飽和度を非観血的に測定するパルスオキシメータが広く利用されている(例えば特許文献1参照)。従来のパルスオキシメータによる酸素飽和度の測定では、まず、プローブを被験者の指先や耳朶に装着し、プローブから赤色光と赤外光の異なる2波長の光を被験者の装着部位に時分割に照射する。そして、照射光のうち、指先や耳朶の組織内を透過した透過光または組織内外で反射した反射光を各波長の光毎に検出し、その検出結果から得られる吸光度の脈動成分の比から酸素飽和度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−233908号公報
【特許文献2】特許4196209号
【特許文献3】特許4352315号
【特許文献4】国際公開WO92/015955号公報
【特許文献5】特開平7−88092号公報
【特許文献6】米国特許5853364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のパルスオキシメータでは、上記各波長の光の検出結果から酸素飽和度を算出する際の演算処理は内蔵されるCPU(Central Processing Unit)で全て行っている。そして、例えば生体が動くことで生じる様々な種類のノイズである体動ノイズの除去機能を備えたパルスオキシメータ(例えば特許文献2や特許文献3)では、CPUが酸素飽和度の算出だけでなく体動ノイズのフィルタリングも行うことから、CPUにかかる処理負荷も大きくなる。例えばCPUが体動ノイズを取り除くために要する処理時間は、CPUが全ての演算処理に要する時間のおよそ3/4を占める場合がある。したがって、このような体動ノイズの除去機能を備えたパルスオキシメータでは、サイクルタイムを満たしつつノイズ除去を行うために高性能のCPUを搭載する必要があった。また、ノイズ除去に伴う演算量の増加は消費電力の増大にも直結し、パルスオキシメータの消費電力に占めるCPUの消費電力の割合はおよそ6割にもなる。したがって、電池から供給される電力で駆動する携帯型パルスオキシメータでは電池の寿命が短くなることが課題であった。
【0005】
なお、その他に体動ノイズの除去方法として、広く様々な方法が知られている(例えば特許文献4〜特許文献6など参照)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の生体信号測定装置は、生体信号を測定する生体信号測定部と、測定された生体信号を演算処理する演算処理部とを備え、前記演算処理部は、前記生体信号の算出に必要な演算処理を行う独立して制御可能な第1演算処理部と、特定の演算処理を行う独立して制御可能な第2演算処理部と、を有し、前記第1演算処理部が所定条件を具備した場合に、前記第2演算処理部に特定の演算処理を実行させることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の生体信号測定装置において、前記第2演算処理部は、前記特定の演算処理を前記第1演算処理部と比べてより少ない演算量で行うことが好ましい。
【0008】
また、前記特定の演算処理とは、単純処理、定型処理、および並列処理の少なくともいずれかの演算処理であることがより好ましい。
【0009】
また、前記特定の演算処理とは、測定された前記生体信号に含まれる体動ノイズや外来光ノイズの除去に特化した演算処理であることが好ましい。
【0010】
また、前記所定条件とは、測定された生体信号の品質が低下した場合や体動が検出された場合および外来光が検出された場合の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明の生体信号測定装置において、前記第2演算処理部は、演算処理の種類に応じて当該演算処理のための単位データ長が可変であり、かつ前記第1演算処理部の演算処理のための単位データ長よりも短いことがより好ましい。
【0012】
また、本発明の生体信号測定装置において、前記第1演算処理部は、予め定められた条件に基づいて前記第2演算処理部に演算処理を行わせるべきか否かを判定し、前記第2演算処理部に演算処理を行わせるべきと判定した場合にのみデータを前記第2演算処理部に入力することがより好ましい。
【0013】
また、本発明の生体信号測定装置において、前記第1演算処理部は、ノイズ成分による前記演算処理の負荷が予め定められたレベルを超えた場合に、前記データを前記第2演算処理部に入力することがより好ましい。
【0014】
また、本発明の生体信号測定装置において、前記演算処理部は、更に、前記生体信号の測定結果にノイズを発生させる外乱要因を検出可能な外乱検出部を備え、前記外乱検出部が前記外乱要因を検出した場合、前記第1演算処理部は、前記第2演算処理部に前記特定の演算処理を実行させることがより好ましい。
【0015】
ここで、前記外乱検出部は、体動を検出するための加速度センサ、および、外来光を検出するための光センサ、の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の生体信号測定装置において、前記演算処理部は、更に、前記第1演算処理部により得られる第1の演算結果と前記第2演算処理部により得られる第2の演算結果とのいずれかが最適かを判定する判定部を備え、前記判定部により最適とされた演算結果を出力することが好ましい。
【0017】
また、本発明の生体信号測定装置において、前記生体信号測定部は、赤色光および赤外光の異なる2波長の光をそれぞれ異なるタイミングで動脈血流を含む生体組織に照射する発光部と、前記発光部から照射されて前記生体組織を透過又は反射した前記光を受光し、それぞれの波長毎の前記光の受光強度に応じた電気信号に変換する受光部と、を備え、前記第1演算処理部は、前記電気信号に基づいて生成されたデータから前記2波長の光について動脈血流による吸光度における脈動成分の比を算出するとともに、当該脈動成分の比に基づいて動脈血の酸素飽和度を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の生体信号測定装置によれば、第1演算処理部が所定条件を具備した場合に、第1演算処理部が演算処理を第2演算処理部に実行させることで、第1演算処理部だけで処理する場合と比べて、第1演算処理部の演算量を減らすことができるので、例えばより低いクロック周波数のCPUを第1演算処理部に用いることにより消費電力も削減できる。ゆえに、電池駆動のパルスオキシメータにおいて電池の寿命を延ばすことができる。さらに、第1演算処理部として高性能な部品(例えばCPU)を採用せず、汎用部品に置き換えても、生体信号測定装置の性能を維持できる為、部品の選択に自由度のある開発を実現する。
【0019】
本発明の生体信号測定装置によれば、第1演算処理部と第2演算処理部は独立して制御可能であり、負荷のかかる演算処理(体動ノイズの除去処理や外来光ノイズの除去処理)を分散できるため、必要に応じて電源のオンオフ制御を可能とし、消費電力を削減できる。
【0020】
本発明の生体信号測定装置によれば、第1演算処理部が予め定められた条件に基づき判定を行い、又はノイズ成分による演算処理の負荷が予め定められたレベルを超えた場合に第2演算処理部に入力をするため、第2演算処理部は必要な時のみ起動するため、消費電力を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るパルスオキシメータ1の機能構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の他の例に係るパルスオキシメータ2の機能構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態のさらに他の例に係るパルスオキシメータ3の機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の特徴を限定するものではない。また、以下の実施形態の中で説明されている構成の全てが本発明を実施する上で必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るパルスオキシメータ1の機能構成を示す図である。図1に示すように、パルスオキシメータ1は、被測定者の動脈血中の酸素飽和度を測定する装置であり、発光部10と、受光部20と、抽出部30と、演算処理部50と、表示部60とを備える。なお、このパルスオキシメータ1は、本発明の生体信号測定装置の一例であり、発光部10と受光部20とにより生体信号測定部が構成される。
【0024】
発光部10は、発光素子11、発光素子12、および駆動回路13を有する。発光素子11および発光素子12は、2つの異なる長の光を交互に発光するように駆動回路13によって駆動される。本例において、発光素子11は、波長がおよそ940nmの赤外光(IR)を発光する発光ダイオードであり、また、発光素子12は、波長がおよそ660nmの赤色光(R)を発光する発光ダイオードである。
【0025】
受光部20は、受光素子21および増幅器22を有する。受光素子21は、発光部10から被測定者の生体組織500に向けて上記の異なる2波長の光が交互に照射されると、当該生体組織500を透過又は反射したそれぞれの波長の光を受光し、それぞれの光の受光強度に応じた電気信号に変換する。増幅器22は、受光素子21からの電気信号を所定に増幅する。本例において、受光素子21は、フォトダイオードである。また、生体組織500は、例えば被測定者の指先や耳朶である。
【0026】
抽出部30は、マルチプレクサ31、フィルタ32、フィルタ33、およびA/D変換器34を有する。マルチプレクサ31は、増幅器22において増幅された上記電気信号をそれぞれの光波長(R又はIR)に対応した電気信号に分離する。フィルタ32およびフィルタ33のそれぞれには、マルチプレクサ31において分離されたRおよびIRのそれぞれに対応した電気信号のいずれか一方が入力される。フィルタ32およびフィルタ33は、入力される電気信号から被測定者の呼吸による変動成分などをフィルタリングし、当該変動成分以外の成分を通過させる。A/D変換器34は、フィルタ32およびフィルタ33のそれぞれにおいてフィルタリングされた電気信号をデジタル化する。
【0027】
なお、被測定者の呼吸周期が未知の場合は、フィルタ32およびフィルタ33の各フィルタの前段に、入力される電気信号を高速フーリエ変換することができる周波数解析部を設けることにより、RおよびIRのそれぞれに対応した電気信号の周波数解析を行い、被測定者の呼吸周期に対応する周波数成分を特定してもよい。また、この場合、フィルタ32およびフィルタ33は、それぞれの前段の周波数解析部により測定された呼吸周期の変動に追従して抽出する周波数成分を変更可能な可変バンドパスフィルタであることが好ましい。また、これに替えて、フィルタ32およびフィルタ33を配置せずに上記のフィルタリングを演算処理部50で行ってもよい。
【0028】
演算処理部50は、第1演算処理部51および第2演算処理部52を有する。本例では、上記のA/D変換器34と第1演算処理部51、および、第1演算処理部51と第2演算処理部52とは、それぞれ例えば8ビットのデータバスで接続されている。なお、第1演算処理部51と第2演算処理部52とはそれぞれ独立して制御可能である物理的に異なる素子であるのが好ましい。
【0029】
第1演算処理部51は、本例ではCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)であり、デジタル化された上記2波長のそれぞれの光に対応する電気信号から動脈血の酸素飽和度を算出する。より具体的には、第1演算処理部51は、赤色光(R)の波長の吸光度の脈動成分をΔA、赤外光(IR)の波長の吸光度の脈動成分をΔAIRとすると、ランバート・ベールの法則に基づき、Ф1=ΔA/ΔAIRで与えられるこれら2波長の吸光度の比Ф1を算出する。そして、第1演算処理部51は、算出した上記2波長の吸光度の比Ф1に基づいて、被測定者の動脈血の酸素飽和度や脈拍数などを算出し、その算出結果をタイミングデータに対応付けて表示部60へと出力する。表示部60は、第1演算処理部51から入力される動脈血の酸素飽和度の現在の値およびその経時的な変化等を表示する。
【0030】
ここで、第1演算処理部51は、所定条件を具備した場合、後述する第2演算処理部52に特定の演算処理を実行させ、その演算結果を用いて出力する。所定条件とは、具体的にはデジタル化された上記2波長のそれぞれの光に対応する電気信号の信号品質が低下した場合(例えばS/N比の低下)や、体動や蛍光灯などによる外来光に起因するノイズ成分が混入している場合などが挙げられるが、これらに限られない。
【0031】
ところで、第1演算処理部51は、酸素飽和度の算出に際して上記2波長の吸光度の比Ф1に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行っても良い。そして、定常時に検出される周波数成分(脈波成分)と大きく異なる周波数成分が検出された場合は、第1演算処理部51は、上記2波長の吸光度の比Ф1に体動ノイズなどの非定常的な周波数成分が含まれているものと判定し、スイッチ53をオフからオンに切り換える。また、第1演算処理部51は、第2演算処理部52に対して、上記脈波成分に関する情報を出力する。
【0032】
第2演算処理部52は、本例ではFPGA(Field Programmable Gate Array)であり、体動ノイズや外来光ノイズの除去に関する処理(より具体的には、体動ノイズや外来光ノイズの除去に用いる単純処理、定型処理、および並列処理などの特定の処理)に特化した論理回路を有する。この第2演算処理部52は、本例では、第1演算処理部51が所定条件を具備した場合、デジタル化された上記2波長のそれぞれの光に対応する電気信号が第1演算処理部51経由で入力され、特定の演算処理が実行される。
【0033】
そして、第2演算処理部52は、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)、信号/ノイズ波形分離(積和演算)、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)、およびフィルタ処理(積和演算)の各処理(本実施形態においては特に体動ノイズの除去に関する処理)を含む動脈血の酸素飽和度の算出処理を所定のサイクルタイムで順次に行うことにより、入力される上記2波長の電気信号から体動ノイズなどの非定常的な周波数成分を除去した吸光度Ф2を算出し、その算出結果をタイミングデータに対応付けて第1演算処理部51へ出力する。
【0034】
ここで、第2演算処理部52は、演算処理の単位データ長が可変であり、上記の各論理回路ではそれぞれ単位データ長が異なっても良い。特に、本例では、第2演算処理部52で処理するデータ長は、第1演算処理部51で処理するデータ長よりも短い。より具体的には、第1演算処理部51では、全ての種類の演算処理はいずれも同一の単位データ長で行われることから、例えば32ビットの単位データ長を確保しておく必要がある。したがって、第1演算処理部51では、処理の種類によっては、単位データ長のかなりの部分が処理結果に影響を及ぼさない冗長データであるにも関わらず演算処理が行われる。
【0035】
これに対し、第2演算処理部52では、上記3種類の論理回路毎に、対応する演算処理を行うために必要な最低限のデータ長(8〜26ビット)が単位データ長として適宜設定可能とする。また、第2演算処理部52の一部を任意のサイズのメモリとして設定可能とするのがなお良い。したがって、第2演算処理部52は、第1演算処理部51と比べてより少ない演算量で上記の各演算処理を行うことができる。また、第2演算処理部52が体動ノイズの除去に関する上記の各演算処理を行うことで、第1演算処理部51が当該処理を行う場合と比べて、全体の演算量が少なくなるので、処理結果を得るまでの時間が短くなる。したがって、第1演算処理部51だけで体動ノイズの除去に関する処理まで行う場合と比べて、より低いクロック周波数やより低容量のRAMを備えたCPUを第1演算処理部51に用いることができるので、第1演算処理部51に適用可能な部品について選択の幅が広がる。また、全体の演算量を減らしたことにより消費電力も削減できることから、とりわけパルスオキシメータ1が電池駆動である場合には、パルスオキシメータ1の駆動時間を延ばすことができる。また、第2演算処理部52に設けるべき回路の種類が特定されている場合は、第2演算処理部52に用いられるFPGAの回路利用率を高めることで実装面積をより小さくすることができる。
【0036】
なお、出願人による実験では、CPUのみを備えたパルスオキシメータ(パルスオキシメータA)とCPUおよびFPGAの両方を備えたパルスオキシメータ(パルスオキシメータB)のそれぞれを用いて同一のサイクルタイムで体動ノイズや外来光ノイズの処理を含めた酸素飽和度の測定を行ったところ、パルスオキシメータBはパルスオキシメータAのCPUと比べて動作速度が1/4のCPUを用いてもパルスオキシメータAと処理速度に差がなく、また、演算処理部の消費電力はパルスオキシメータBがパルスオキシメータAのおよそ半分であった。
【0037】
また、本例では、第1演算処理部51は、第2演算処理部52による演算処理の結果を受け取り、自身による演算処理の結果とのいずれかが出力波形として最適かを予め定めされた条件に基づいて判定する判定部としての機能も備える構成でも良い。より具体的には、本例では、第1演算処理部51は、上記2波長の吸光度の比Ф1に対して高速フーリエ変換を行った結果などに基づいて、当該Ф1に体動ノイズなどの非定常的な周波数成分が含まれていないと判定した場合には、自身による演算処理の結果を表示部60へと出力し、上記Ф1に体動ノイズが含まれていると判定した場合には、第2演算処理部52による演算処理の結果を表示部60へと出力する。
【0038】
このように、第1演算処理部51は、Ф1に体動ノイズなどのノイズ成分が含まれているか否かに応じて、当該ノイズ成分の除去が行われている第2演算処理部52による処理結果、あるいはノイズ成分の除去などが行われずにより入力信号に近い処理結果である第1演算処理部51による処理結果を表示部60へと出力する。したがって、表示部60には体動や外来光の有無に関わらず体動の影響が除去された波形が表示される。
【0039】
図2は、本発明の実施形態の他の例に係るパルスオキシメータ2の機能構成を示す図である。本例のパルスオキシメータ2の構成のうち、図1を参照して説明した上記のパルスオキシメータ1と同様の構成については、その説明を省略する。
【0040】
図2に示すように、本例のパルスオキシメータ2が備える演算処理部50は、第1演算処理部51、第2演算処理部52、およびスイッチ53を有する。そして、本例では、A/D変換器34が第1演算処理部51とデータバスで接続されているとともに、A/D変換器34は第2演算処理部52ともスイッチ53を介してデータバスで接続されている。また、スイッチ53は、本例では、第1演算処理部51から後述の駆動信号が与えられていない状態ではオフ(A/D変換器34と第2演算処理部52との間のバスラインを遮断した状態)となっている。
【0041】
そして、本例のパルスオキシメータ2では、第1演算処理部51は、上記Ф1に対して高速フーリエ変換を行った結果などに基づいて、当該Ф1に体動ノイズなどの非定常的な周波数成分が含まれていると判定した場合にのみ、スイッチ53をオンに切り替える。したがって、第2演算処理部52は、第1演算処理部51が入力信号に体動ノイズなどのノイズ成分が含まれていると判定した場合のみA/D変換器34からデータを受け取って演算処理を行う。また、この場合、第2演算処理部52は、上記のパルスオキシメータ1と同様に、演算処理の結果を第1演算処理部51へと出力しても良いが、表示部60へ直接に処理結果を出力しても良い。
【0042】
このように、本例のパルスオキシメータ2は、第2演算処理部52が必要な時のみ起動するため、全体の消費電力を削減することができる。なお、第2演算処理部52に処理を行わせるためのトリガーはこれに限らず、体動の発生を判定できる態様であれば良い。例えば、第1演算処理部51は、上記2波長の吸光度の比Фから動脈血の酸素飽和度や脈拍数などの算出処理を行っているときに、ノイズ成分による演算処理の負荷が一定のレベルを超えた場合に、スイッチ53をオンに切り替えて第2演算処理部52に吸光度の比Ф2の算出処理を担わせてもよい。いずれにせよ、第1演算処理部51はΦ1とΦ2のいずれか最適な吸光度の比に基づき酸素飽和度や脈拍数などを算出するのが望ましい。
【0043】
図3は、本発明の実施形態のさらに他の例に係るパルスオキシメータ3の機能構成を示す図である。本例のパルスオキシメータ3の構成のうち、図1を参照して説明した上記のパルスオキシメータ1と同様の構成については、その説明を省略する。
【0044】
図3に示すように、本例のパルスオキシメータ3が備える演算処理部50は、第1演算処理部51、第2演算処理部52、および外乱検出部54を有する。そして、外乱検出部54は、第1演算処理部51と接続されている。この外乱検出部54は、例えば、体動を検出するための加速度センサや、外来光の混入を検出するための光センサなど、パルスオキシメータ3を用いて動脈血の酸素飽和度や脈拍数などの生体信号の測定結果にノイズを発生させる外乱要因を検出するための各種構成を含んでよい。外乱検出部54が体動や外来光などの外乱要因を検出した場合、第1演算処理部51に所定の外乱ノイズが検出されたことを通知し、これを受けた第1演算処理部51は所定条件を具備したものとし、第2演算処理部52へ特定の演算処理を実行させる。
【0045】
ところで、上記各例のパルスオキシメータ1,2,3が備える第2演算処理部52に設ける論理回路の種類は上記の3種類に限られないが、特に第1演算処理部51が不得手とする種類の処理に特化した論理回路を有することが好ましい。また、上記各例のパルスオキシメータ1,2,3では、第2演算処理部52にFPGAを用いているが、これに替えて、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のようなセミカスタムLSIを第2演算処理部52に用いてもよい。また、上記各例のパルスオキシメータ1,2,3のいずれかに特有の構成は、他の例のパルスオキシメータが備えてもよい。
【0046】
以上、本発明の生体信号測定装置の好適な実施形態の一例として、パルスオキシメータについて説明した。しかし、生体信号測定装置は、パルスオキシメータに限られず、例えば心電図を測定可能な心電計や脳波を測定可能な脳波計などに用いられても良い。この場合、第2演算処理部は、CPUに多大な負荷をかけ、消費電力を有する処理(例えば心電図の不整脈解析の処理や脳波解析の処理など)を行う態様であっても良い。
【0047】
また、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施形態に、多様な変更または改良を加え得ることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3 パルスオキシメータ
10 発光部
11、12 発光素子
13 駆動回路
20 受光部
21 受光素子
22 増幅器
30 抽出部
31 マルチプレクサ
32、33 フィルタ
34 A/D変換器
50 演算処理部
51 第1演算処理部
52 第2演算処理部
53 スイッチ
54 外乱検出部
60 表示部
500 生体組織

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体信号を測定する生体信号測定部と、
測定された生体信号を演算処理する演算処理部と、を備え、
前記演算処理部は、前記生体信号の算出に必要な演算処理を行う独立して制御可能な第1演算処理部と、
特定の演算処理を行う独立して制御可能な第2演算処理部と、を有し、
前記第1演算処理部が所定条件を具備した場合に、前記第2演算処理部に特定の演算処理を実行させる
ことを特徴とする生体信号測定装置。
【請求項2】
前記第2演算処理部は、前記特定の演算処理を前記第1演算処理部と比べてより少ない演算量で行う
ことを特徴とする請求項1に記載の生体信号測定装置。
【請求項3】
前記特定の演算処理とは、単純処理、定型処理、および並列処理の少なくともいずれかの演算処理である
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の生体信号測定装置。
【請求項4】
前記特定の演算処理とは、測定された前記生体信号に含まれる体動ノイズや外来光ノイズの除去に特化した演算処理である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の生体信号測定装置。
【請求項5】
前記所定条件とは、測定された生体信号の品質が低下した場合や体動が検出された場合および外来光が検出された場合の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の生体信号測定装置。
【請求項6】
前記第2演算処理部は、演算処理の種類に応じて当該演算処理のための単位データ長が可変であり、かつ前記第1演算処理部の演算処理のための単位データ長よりも短い
ことを特徴とする請求項1から5いずれか一項に記載の生体信号測定装置。
【請求項7】
前記第1演算処理部は、予め定められた条件に基づいて前記第2演算処理部に演算処理を行わせるべきか否かを判定し、前記第2演算処理部に演算処理を行わせるべきと判定した場合にのみデータを前記第2演算処理部に入力する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の生体信号測定装置。
【請求項8】
前記第1演算処理部は、ノイズ成分による前記演算処理の負荷が予め定められたレベルを超えた場合に、前記データを前記第2演算処理部に入力する
ことを特徴とする請求項7に記載の生体信号測定装置。
【請求項9】
前記演算処理部は、更に、
前記生体信号の測定結果にノイズを発生させる外乱要因を検出可能な外乱検出部を備え、
前記外乱検出部が前記外乱要因を検出した場合、前記第1演算処理部は、前記第2演算処理部に前記特定の演算処理を実行させる
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の生体信号測定装置。
【請求項10】
前記外乱検出部は、体動を検出するための加速度センサ、および、外来光を検出するための光センサ、の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項9に記載の生体信号測定装置。
【請求項11】
前記演算処理部は、更に、
前記第1演算処理部により得られる第1の演算結果と前記第2演算処理部により得られる第2の演算結果とのいずれかが最適かを判定する判定部を備え、
前記判定部により最適とされた演算結果を出力する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の生体信号測定装置。
【請求項12】
前記生体信号測定部は、
赤色光および赤外光の異なる2波長の光をそれぞれ異なるタイミングで動脈血流を含む生体組織に照射する発光部と、
前記発光部から照射されて前記生体組織を透過又は反射した前記光を受光し、それぞれの波長毎の前記光の受光強度に応じた電気信号に変換する受光部と、を備え、
前記第1演算処理部は、前記電気信号に基づいて生成されたデータから前記2波長の光について動脈血流による吸光度における脈動成分の比を算出するとともに、当該脈動成分の比に基づいて動脈血の酸素飽和度を算出する
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の生体信号測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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