説明

生体信号表示装置

【課題】誘発反応を分かりやすく適切に表示する。
【解決手段】生体を刺激する少なくとも一つ以上の刺激部40と、前記刺激により誘発される、少なくとも一つ以上の誘発反応を測定する測定部30と、前記誘発反応の特徴量を算出する演算部13と、画像を表示する表示部21と、前記演算部13により算出された特徴量に基づき棒状イメージを、前記刺激が行われるたびに各誘発反応に対応付けて前記表示部21に表示する表示制御部12とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体を刺激することにより誘発される誘発反応を分かりやすく適切に表示する生体信号表示装置に関するものである。誘発反応の値が異常であったり、波形に再現性が無い場合には、生体に変化や異常があったことを示し、生体の状態を迅速かつ容易に把握することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、測定により得られる波形をそのまま表示するか、波形の特徴量である振幅や潜時などを数値で表示するものが一般的であった。
【0003】
従来の表示では、術中における術者は装置から離れている上、操作することはできないため、表示装置の近くに寄って波形を凝視したり、医療従事者に潜時や振幅などの値を読み上げてもらうなどしていた。よって、術中において誘発反応の有用性を発揮するためには、多大な労力を要した。特に誘発反応においては、刺激の度にその変化を認識する必要があり、術中における患者監視に好適とは言えないものであった。
【0004】
生体信号の直観的な状態把握という観点からは、心電計において心電図信号の極大値を棒グラフにより表示するもの(特許文献1参照)や血圧をバー表示するもの(特許文献2参照)などが知られている。しかしながら、特許文献1の装置は、電極の接続状態を調べることを目的とするものであり、また、特許文献2のものは、血圧測定におけるカフ圧の水銀柱による表示を模したものであり、これらをそのまま刺激により得られる誘発反応の表示に応用しても有用ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−057331号公報
【特許文献2】特開2007−135716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような生体信号表示装置における現状に鑑みてなされたもので、その目的は、誘発反応を分かりやすく適切に表示することが可能な生体信号表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生体信号表示装置は、生体を刺激する少なくとも一つ以上の刺激部と、前記刺激により誘発される、少なくとも一つ以上の誘発反応を測定する測定部と、前記誘発反応の特徴量を算出する演算部と、画像を表示する表示部と、前記演算部により算出された特徴量に基づき棒状イメージを、各誘発反応に対応付けて前記表示部に表示する表示制御手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る生体信号表示装置では、表示制御手段は、表示部の画面において、横軸と縦軸のいずれか一方に各特徴量を配置し、横軸と縦軸のいずれか他方に各誘発反応を配置し、棒状イメージとして表示することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る生体信号表示装置では、表示制御手段は、前記特徴量の最大値と最小値と前回刺激時の値のうち少なくともいずれか一つを、ホールドして表示することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る生体信号表示装置では、表示制御手段は、前記刺激部による刺激が行われるたびに、過去の刺激により表示された棒状イメージを削除することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る生体信号表示装置では、前記誘発反応とは、それぞれ異なる種類の誘発反応であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る生体信号表示装置では、前記誘発反応とは、体性感覚誘発電位、聴性感覚誘発電位、視覚誘発電位、誘発筋電図等の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る生体信号表示装置では、前記刺激部は、電気刺激、音刺激、光刺激のうち少なくとも一つを行うことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る生体信号表示装置では、前記刺激部において行われた刺激に対応した数値を表示することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る生体信号表示装置では、前記特徴量は、誘発反応信号の振幅、面積、潜時のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る生体信号表示装置では、更に、前記画像を外部機器に表示可能な態様で出力する外部出力部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る生体信号表示装置では、刺激により誘発される、少なくとも一つ以上の誘発反応を測定し、前記誘発反応の特徴量を算出し、算出された特徴量に基づき棒状イメージを、各特徴量に対応付けて表示部に表示するので、誘発反応を分かりやすく適切に表示することが可能となる。
【0018】
本発明に係る生体信号表示装置では、横軸と縦軸のいずれか一方に各特徴量を配置し、横軸と縦軸のいずれか他方に棒状イメージを配置して表示するため、表示領域に応じて、棒状イメージを縦置きにしたり、横置きに表示できる。
【0019】
本発明に係る生体信号表示装置では、特徴量の最大値と最小値と前回刺激時の値との少なくともいずれか一つをホールドして表示するため、目安となる値(例えば正常値やコントロール値、別の部位刺激による値)などと容易に比較できる。
【0020】
本発明に係る生体信号表示装置では、新たな刺激が行われるたびに、過去の刺激によって表示された棒状イメージは削除されるため、常に最新の刺激に対する誘発反応を把握できる。
【0021】
本発明に係る生体信号表示装置では、外部出力部を備えるため、術中における術者が使用する眼鏡やゴーグル、顕微鏡等にPicture in Pictureで表示でき、表示装置の近くに寄って波形を凝視したり、医療従事者に潜時や振幅などの値を読み上げてもらう必要が無く、作業効率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る生体信号表示装置の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係る生体信号表示装置の実施形態により測定される波形の例と特徴量を説明するための波形図。
【図3】本発明に係る生体信号表示装置の実施形態により表示される画面の一例を示す図。
【図4】本発明に係る生体信号表示装置の実施形態の画像作成動作を示すフローチャート。
【図5】本発明に係る生体信号表示装置の実施形態の画像切替動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明に係る生体信号表示装置の実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1 に、実施形態に係る生体信号表示装置の構成図を示す。この生体信号表示装置は、コンピュータにより構成される本体部10に、LCDやLEDによって構成される表示部21、マウスやタッチパネル或いはキーボードなどによって構成される入力部22、測定部30及び刺激部40を主な構成要素としている。
【0024】
刺激部40は、電気刺激、音刺激、光刺激のうち少なくとも一つを行うものであればよく、ここでは、電気刺激部41、音刺激部42、光刺激部43を備える。電気刺激部41には図示しない電極が接続されており、電極へ所要電圧を印加することにより刺激を行う。刺激部40は、本体部10の主制御部11の制御により刺激を発生する。
【0025】
刺激部40に接続されている測定部30は、刺激により誘発される、少なくとも一つ以上の誘発反応を測定するものである。誘発反応の例としては、体性感覚誘発電位、聴性感覚誘発電位、視覚誘発電位、誘発筋電図等の少なくとも一つを含み、これ以外の誘発反応を測定しても良い。
【0026】
測定部30により測定された誘発反応の信号は接続されている本体部10へ送られる。本体部10には、コンピュータとしての全体処理を行う主制御部11、表示部21に表示する画像の作成などの表示制御を行う表示制御部12、演算部13が備えられている。
【0027】
演算部13は、上記測定部30から送られた誘発反応の信号を受け取り、誘発反応の特徴量を算出する。ここに、誘発反応の信号は、例えば図2に示されているようであり、特徴量とは、振幅、面積、潜時などであり、これらのうち少なくとも一つを含むことができる。図2の波形においては、振幅(Amplitude)と潜時(latency)、面積(Area)が特徴量として示されている。
【0028】
表示制御部12は、演算部13により算出された特徴量に基づき棒状イメージを、各誘発反応に対応付けて表示部21に表示する表示制御手段である。棒状イメージによる表示例を図3に示す。この例では、誘発反応に対応付けた棒状イメージによって棒グラフの表示が行われている。左から、横軸に誘発反応の種類として、O Oculi(眼輪筋)、O Oris(口輪筋)、Masseter(咬筋)、SCM(胸鎖乳突筋)、ABR(聴性脳幹反応)、SEP(体性感覚誘発電位)が並べられている。各誘発反応の種類に対応して、特徴量の大きさに応じた長さの棒状イメージが表示されている。なお、図3は各誘発反応を横軸にとり、各特徴量を縦軸にとった場合の画面の一例であるが、縦軸と横軸は各誘発反応と各特徴量とが入れ替わっても良い。
【0029】
棒状イメージは、横長の長方形状のセグメントを複数積み重ねて構成され、各誘発反応の種類毎に1セグメントの電位が表示されている。セグメントの色は、最下位置において緑色であり、上に移るに従って黄色が混在し、中央位置において黄色となり、更に上に移るに従って赤色が混在し、最上位置において赤色となる。更に、棒状イメージの表示部中央付近には、稲妻形状の刺激マークMと共に刺激時の数値(本実施例においては、電気量)が表示される。特徴量の正常な範囲と異常な範囲とを異なる色で表示しても良い。
【0030】
O Oculi(眼輪筋)とO Oris(口輪筋)の棒グラフは、現在測定中の誘発反応を示すものであるため、一連の棒グラフにより特徴量の表示が行われているのに対し、その他の誘発反応の種類においては、最大値が1セグメントによりホールドされて表示され、その下側に定常値が棒グラフにより表示されている。
【0031】
上記図3の如き表示画面は、主制御部11、表示制御部12、演算部13が図4に示すフローチャートに基づき測定部30及び刺激部40と共に動作を行うことにより作成表示されるので、このフローチャートを参照しながら動作を説明する。装置による誘発反応測定の前に、オペレータは入力部22を用いて使用する刺激の種類、特徴量などの設定を行い、また、電極などの必要な装置装備の適切配置を行っておく。
【0032】
測定のスタート操作がなされると、主制御部11は、刺激部40へ指示を与えて設定された所定刺激を実行する(S11)。また、主制御部11は、測定部30を制御して刺激部40により実行された所定刺激に対応する誘発反応の測定を行わせる(S12)。これにより測定された誘発反応の信号は測定部30から本体部10の演算部13へ送られる。
【0033】
演算部13は、設定された各特徴量を算出し(S13)、算出結果を表示制御部12へ送出する。この特徴量を受けた表示制御部12は、現在測定中の誘発反応に対応する特徴量に基づき棒状イメージを各誘発反応に対応付けて図3の棒グラフ部分の画像を作成する(S14)。また、既に測定終了の誘発反応については、ピーク値(最大値)と定常値などの棒状イメージを各誘発反応に対応付けて図3の棒グラフ部分の画像を作成する(S15)。そして、上記ステップS14とステップS15により作成された画像を表示部21へ表示し(S16)、ステップS11へ戻って処理を続ける。この際、新たに所定刺激が実行された場合(S11)、既に過去の刺激により表示されている棒状イメージは消去され、新たな刺激に基づく特徴量に基づく棒状イメージが表示されるのが望ましい。
【0034】
一方、主制御部11はオペレータにより入力される表示要求を得て、図5に示す制御により画面の切替を行っている。即ち、オペレータにより入力される表示要求を得て、これを分析し(S21)、波形等の表示要求か、画面全面への表示か、画面の一部への表示かを検出する(S22)。
【0035】
波形等の表示要求であることが検出されると、誘発反応を表示する(S23)。ステップS22において画面全面への表示であることが検出されると、例えば図3に示したように作成した棒グラフの画像を画面全体に表示する(S24)。更に、本実施形態に係る生体信号表示装置は、表示部に表示する画像を外部機器に表示可能な態様で出力する外部出力部を備えても良く、この場合に、手術室などに設置されたディスプレイや術者が術中に使用する眼鏡やゴーグル、顕微鏡などの外部機器より表示要求があった場合や外部機器に表示可能となった場合に、表示要求に応じた情報を外部出力部を介して出力しても良い。また、刺激部40において行われた刺激に対応して演算部13にて算出された特徴量のうち、少なくとも一つの数値量を表示部21に表示及び/または上記外部出力部を介して出力するようにしても良い。
【0036】
このようにして、表示された誘発反応の棒グラフによる画面は一目瞭然であり、術中の医師などが手を休めることなく、他の医療従事者の手を煩わすことなく、直観的に患者の状態を把握することができ、手術を適切に進める場合に多いに役に立つことが期待される。
【符号の説明】
【0037】
10 本体部
11 主制御部
12 表示制御部
13 演算部
21 表示部
22 入力部
30 測定部
30 測定部
40 刺激部
41 電気刺激部
42 音刺激部
43 光刺激部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を刺激する少なくとも一つ以上の刺激部と、
前記刺激により誘発される、少なくとも一つ以上の誘発反応を測定する測定部と、
前記誘発反応の特徴量を算出する演算部と、
画像を表示する表示部と、
前記演算部により算出された特徴量に基づき棒状イメージを、前記刺激が行われるたびに各誘発反応に対応付けて前記表示部に表示する表示制御手段と
を具備することを特徴とする生体信号表示装置。
【請求項2】
表示制御手段は、
表示部の画面において、横軸と縦軸のいずれか一方に各特徴量を配置し、横軸と縦軸のいずれか他方に各誘発反応を配置し、棒状イメージとして表示することを特徴とする請求項1に記載の生体信号表示装置。
【請求項3】
表示制御手段は、
前記特徴量の最大値と最小値と前回刺激時の値のうち少なくともいずれか一つを、ホールドして表示することを特徴とする請求項1または2に記載の生体信号表示装置。
【請求項4】
表示制御手段は、
前記刺激部による刺激が行われるたびに、過去の刺激により表示された棒状イメージを削除することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。
【請求項5】
前記誘発反応とは、
それぞれ異なる種類の誘発反応であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。
【請求項6】
前記誘発反応とは、
体性感覚誘発電位、聴性感覚誘発電位、視覚誘発電位、誘発筋電図の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。
【請求項7】
前記刺激部は、
電気刺激、音刺激、光刺激のうち少なくとも一つを行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。
【請求項8】
前記刺激部において行われた刺激に対応した数値を表示することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。
【請求項9】
前記特徴量は、
誘発反応信号の振幅、面積、潜時のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。
【請求項10】
前記生体信号表示装置は、更に
前記表示部に表示する画像を外部機器に表示可能な態様で出力する外部出力部を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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