説明

生体内の腫瘍細胞のEMTステータスをモニターするためのINSITU法

本発明は、生体内の患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法を提供し、これには以下を含む:(a) EMTステータスのバイオマーカーに結合する抗体、およびレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(b) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーと接触するように、複合体を腫瘍患者に導入すること、(c) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を用いること、および (d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析の手段を用いることを含み、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す。このような方法は、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤などの薬物を使用した治療によって利益を得る可能性のある患者を診断するため、および腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定・試験するために有用である。本発明はまた、抗体の代わりに、EMTステータスバイオマーカーに結合するAFFIBODY(登録商標) 分子が使用される、上記の方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体内の腫瘍細胞のEMTステータスをモニターするためのIN SITU法に関する。
【背景技術】
【0002】
[1] 癌とは、無秩序な成長、分化の欠如および局所組織への侵入や転移の能力を特徴とする広範囲の細胞悪性腫瘍に対する総称であり、後者は腫瘍細胞の上皮から間葉への変化(EMT)を伴う。これらの新生物悪性腫瘍は、さまざまな程度の有病率で、身体の各組織および臓器に影響を及ぼす。本発明は、ヒト患者または薬学研究に使用されるEMTの実験動物モデルにおいて、生体内の腫瘍EMTステータスを正確に評価・モニターするための新規in situ診断法を対象としている。これらの方法は、その有効性がEMTの影響を受ける抗癌剤(例えば、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤)での治療前に、腫瘍のEMTステータスを決定するのに有効である。これらはまた、腫瘍細胞のEMTを阻害する新規抗癌剤の特定、試験およびモニタリングに有用であり、特にEMTを受けた腫瘍細胞の阻害において効果が低いと報告されているEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤などの他の薬剤と併用して、癌患者の治療に使用されうる。
【0003】
[2] 上皮成長因子受容体(EGFR)系統群は、分化や増殖などの細胞応答に関与する密接に関連した4つの受容体(HER1/EGFR、HER2、HER3およびHER4)から成る。EGFRキナーゼ、またはそのリガンドTGF-αの過剰発現は、しばしば乳房、肺、結腸直腸、腎細胞、膀胱、頭部および頸部の癌、膠芽細胞腫、および星状細胞腫を含む多くの癌に関連しており、これらの腫瘍の悪性腫瘍に寄与するものと考えられている。EGFR遺伝子(EGFRvIII)における特異的欠失変異も、細胞腫瘍原性を増加させることがわかっている。EGFR刺激シグナル経路の活性化は、癌促進の可能性がある複数のプロセス(例えば、増殖、血管形成、細胞運動および侵入)、アポトーシスの低下および薬剤耐性の誘導を促進する。HER1/EGFR発現の増大は、進行疾患、転移および予後不良にしばしば関連する。例えば、NSCLCおよび胃癌では、HER1/EGFR発現の増大は、高い転移率、腫瘍分化の不良および腫瘍増殖の増加に関連することが示されてきた。
【0004】
[3] エルロチニブ(例えば、エルロチニブHCl、別名TARCEVA(登録商標)またはOSI-774)は、経口投与が可能なEGFRキナーゼ阻害剤である。生体外で、エルロチニブは、多くのヒト腫瘍細胞株のEGFRキナーゼに対してかなりの阻害活性を示している。第III相治験では、エルロチニブ単剤療法は、進行性治療難治性NSCLCの患者において、著しく生存率の延長、疾患の進行の遅れ、肺癌に関連した症状の悪化の遅れがみられた(Shepherd, F.
et al. (2005) N. Engl. J. Med. 353(2):123-132)。2004年11月に米国食品医薬品局(FDA)は、少なくとも1つの化学療法が失敗した、局所進行性または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)患者の治療に対してTARCEVA(登録商標)を承認した。
【0005】
[4] IGF-1Rのキナーゼ活性を直接阻害する化合物や、IGF-1R活性化またはIGF-1R発現を遮断するアンチセンスオリゴヌクレオチドを遮断することによりIGF-1Rキナーゼ活性を低減する抗体を抗腫瘍剤として使用するための開発も、集中的な研究努力の分野である(例えば、Larsson, O. et al (2005) Brit. J. Cancer 92:2097-2101; Ibrahim, Y.H. and Yee, D. (2005) Clin. Cancer Res. 11:944s-950s; Mitsiades, C.S. et al. (2004) Cancer Cell 5:221-230; Camirand, A. et al. (2005) Breast Cancer Research 7:R570-R579
(DOI 10.1186/bcr1028); Camirand, A. and Pollak, M. (2004) Brit. J. Cancer 90:1825-1829; Garcia-Echeverria, C. et al. (2004) Cancer Cell 5:231-239を参照)。
【0006】
[5] IGF-1Rは、主にIGF-1に結合するが、lGF-IIおよびインスリンにも低い親和性で結
合する膜貫通RTKである。IGF-1の受容体への結合は、受容体チロシンキナーゼの活性化、分子間受容体の自己リン酸化および細胞基質のリン酸化(主な基質はIRS1 およびShc)を引き起こす。リガンド活性化したIGF-1Rには、正常細胞のマイトジェン活性が含まれ、異常な成長において重要な役割を果たす。IGF-lシステムの主な生理学的役割は、正常な成長および再生の促進である。過剰発現したIGF-1R(1型インスリン様成長因子受容体)は有糸分裂誘発を開始し、リガンド依存の悪性形質転換を促進することがある。さらに、IGF-1Rは、腫瘍性表現型の確立と維持に重要な役割を果たす。上皮成長因子(EGF)受容体とは異なり、IGF-1Rの変異発癌型は特定されていない。ただし、いくつかの発癌遺伝子は、IGF-1およびIGF-1R発現に影響を及ぼすことが実証されている。IGF-1R発現の減少と形質転換に対する耐性との相関関係が観察されている。mRNAアンチセンスに対する細胞のIGF-1R RNAへの暴露により、いくつかのヒト腫瘍細胞株の軟寒天成長が防止される。IGF-1Rにより、生体内および生体外の両方においてアポトーシスへの進行が抑止される。IGF-1Rのレベルが野生型レベル以下に低下すると、生体内で腫瘍細胞のアポトーシスが起こることも示されている。アポトーシスを起こすIGF-1R破壊の能力は、正常な非発癌性細胞では低下するようである。
【0007】
[6] ヒト腫瘍進展においてIGF-1経路は重要な役割を持つ。IGF-1Rの過剰発現が各種の腫瘍(乳房、結腸、肺、肉腫)でよく見られ、腫瘍性表現型と関連していることがよくある。高いIGF1循環濃度は、前立腺癌、肺癌および乳癌のリスクと強い相関性がある。さらに、IGF-1Rは、生体外および生体内の形質転換の表現型の確立・維持に必要である(Baserga R. Exp. Cell. Res., 1999, 253, 1-6)。IGF-1Rのキナーゼ活性は、EGFR、PDGFR、SV40 T抗原、活性Ras、Raf、およびv-Srcといったいくつかの発癌遺伝子の形質転換活性に不可欠である。正常な線維芽細胞におけるIGF-1Rの発現には腫瘍性表現型を含み、これによって生体内で腫瘍が形成されうる。IGF-1R発現は、足場非依存性の成長に重要な役割を果たす。IGF-1Rは、化学療法、放射線、およびサイトカイン誘導性アポトーシスから細胞を保護することも示されている。逆に、優性阻害IGF-1R、3重らせん形成またはアンチセンス発現ベクターによる内因性IGF-1Rの阻害は、生体外での形質転換活性および動物モデルにおける腫瘍成長を抑制することが示されている。
【0008】
[7] たいていの癌転移時には、腫瘍細胞の上皮から間葉への変化(EMT)として知られる重要な変化が腫瘍細胞内で起こる(Thiery, J.P. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:442-454; Savagner, P. (2001) Bioessays 23:912-923; Kang Y. and Massague, J. (2004) Cell
118:277-279; Julien-Grille, S., et al. Cancer Research 63:2172-2178; Bates, R.C. et al. (2003) Current Biology 13:1721-1727; Lu Z., et al. (2003) Cancer Cell. 4(6):499-515))。胚形成中を除いて、EMTは健康な細胞では発生しない。相互に固く結合し、極性を示す上皮細胞は、互いによりゆるく結合し、極性の喪失を示し、移動能力を持つ間葉細胞を生じさせる。これらの間葉細胞は、原発腫瘍を取り囲む組織中に広がるだけでなく、腫瘍から分離して血管およびリンパ管に侵入し、新しい部位に移動して分裂し追加的腫瘍を形成することができる。最近の研究では、上皮細胞はEGFRおよびIGF-1Rキナーゼ阻害剤によく応答するが、EMTの後で、結果的に生じる間葉様細胞はこのような阻害剤への感受性がより低いことが実証されている。(例えば、Thompson, S. et al. (2005) Cancer Res. 65(20):9455-9462; 米国特許出願第60/997,514号)。こうして、腫瘍細胞EMTイベントを阻止または逆転できる(例えば、間葉から上皮への変化(MET)を刺激する)、またはEMTの結果生じる間葉様腫瘍細胞の増殖を阻害する抗癌剤に対する差し迫ったニーズもある。このような薬剤は、EGFRおよびIGF-1Rキナーゼ阻害剤などの他の抗癌剤と併用した時、特に有用である。したがってこの点を考慮すると、その活性が腫瘍EMTステータスによって影響を受ける抗癌剤の見込み有効性を予測し、同時に新規EMT阻害剤の効果を試験するための、実験用動物およびヒト患者の両方において使用できる生体内の腫瘍EMTステータスを正確に評価・モニターするための改良法が必要とされている。本明細書に記述される本発明は、生体内の腫瘍EMTステータスを評価する新規のin situ法を提供する

【発明の概要】
【0009】
[8] 本発明は、患者の腫瘍細胞のEMTステータスを in situで決定する方法を提供し、これには、(a) EMTステータスのバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(b) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーと接触するように、前述の複合体を腫瘍患者に導入すること、(c) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を用いること、および (d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析の手段を用いることを含み、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す。本発明はまた、実験動物またはヒト患者のどちらかにおいて、どの化合物が生体内でこのような活性を持つかを決定するために上記の方法を使用することにより、患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法も提供する。
【0010】
[9] 本発明はまた、癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法も提供し、これには (a)
本発明の方法で腫瘍細胞のEMTステータスをin situで評価すること、および (b) EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を前述の患者に投与することを含む。本発明はまた、癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法も提供し、これには (a) 本発明の方法で腫瘍細胞のEMTステータスをin situで評価すること、および (b) IGF-1Rキナーゼ阻害剤の治療有効量を前述の患者に投与することを含む。
【0011】
[10] 本発明は、患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法で使用するために、EMTステータスバイオマーカーの細胞外領域に結合する抗体および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を含む組成物も提供する。1つの実施形態では、EMTステータスバイオマーカーはE-カドヘリンである。別の実施形態では、レポーター分子はAlexa Fluor 680 (AF680) 蛍光染料を含む。
【0012】
[11] 本発明はまた、上記の方法または組成物も提供し、ここでEMTステータスバイオマーカーに結合するAFFIBODY(登録商標) 分子が、EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体の代わりに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】[12] 図1:上のパネルはAF680 E-カドヘリンNIRプローブを注射したH358腫瘍を持つマウス (3) を示し、下のパネルはAF680非特異的IgGを注射した同じ腫瘍を持つマウス (3) を示す。
【図2】[13] 図2:非特異的プローブと比較してE-カドヘリンNIRプローブに対する取り込みが2.5倍増加したことを示す総合効率のヒストグラム。
【図3】[14] 図3:プローブの40μg、20 μ g および10 μ gをそれぞれ注射したH358腫瘍を持つマウスにおけるAF680 E-カドヘリン NIRプローブの用量漸増。
【図4】[15] 図4:用量の関数としてE-カドヘリンNIRプローブの取り込みを示したヒストグラム。
【図5】[16] 図5:A-F: 20ugのAF680 E-カドヘリンNIRプローブを注射したH358腫瘍を持つマウス (n =3) において、プローブの注射から75分後 (A)、6時間後 (B)、27時間後 (C)、48時間後 (D)、120時間後 (E) および192 時間後 (F) の時点で撮像したPK試験。
【図6】[17] 図6:時間の関数としてAF680 E-カドヘリンNIRプローブの取り込みおよびクリアランスを示したPK試験のグラフ(注射後の時間数)。
【図7】[18] 図7:H358異種移植片(左脇腹)およびMDA-MB-231異種移植片(右脇腹)を左右対称に移植したマウスの写真画像(A)。H358異種移植片中のAF680 E-カドヘリンNIRプローブの特異的取り込みが蛍光画像 (B) に示されている。
【図8】[19] 図8:AF680 非特異的 IgG(上のパネル)およびAf680 E-カドヘリンNIRプローブ(下のパネル)を注射し、注射後48時間に撮像されたBxPC-3腫瘍を持つマウス。
【図9】[20] 図9:BxPC-3マウス試験からの切除組織の生体外画像。左の部分は、非特異的IgGプローブを注射したマウスの組織(n = 4)を示し、右の部分はE-カドヘリンNIRプローブを注射したマウスの組織(n = 4)を示す。
【図10】[21] 図10:E-カドヘリンNIRプローブの取り込みにおいて3倍以上の増加を示す、BxPC-3腫瘍を持つマウスからの切除組織のAF680 NIRプローブおよび非特異的IgGプローブ(NS)のヒストグラム。
【図11】[22] 図11:飲料水中、0.5mg/mLのドキシサイクリンを7日間投与されたマウス(下のパネル)と比較した、ドキシサイクリン治療を受けていないマウス(上のパネル)におけるH358 Tet-ON Zeb LV 195異種移植片の蛍光画像。画像は、これらの腫瘍のE-カドヘリン発現を抑制するドキシサイクリン治療を介したZeb誘導の結果生じる腫瘍のE-カドヘリン発現の生体内変化を示す。
【図12】[23] 図12:ドキシサイクリン治療を受けていないマウスと比較して、ドキシサイクリン治療を受けているマウスからの腫瘍のE-カドヘリンNIRプローブのシグナル強度が~45%減少したことを示す、H359 Tet-ON Zebマウス試験のヒストグラム。
【図13】[24] 図13:150 Wハロゲン光源、610-650 nm帯域フィルター、冷却CCD、700 nm長波長域フィルター、および画像ソフトウェア付きコンピュータを含む、NIR画像装置の略図。
【図14】[25] 図14:737 nm/1.5Wレーザー、レーザー光拡大器、画像ソフトウェア付きコンピュータによるカメラ制御を介して制御されるCCDカメラ、水銀ランプ、水銀ランプ光拡大器、および適切なフィルターに加えて対象物を収納する遮光箱を含む、NIR画像装置の略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
[26] 本発明を詳細に説明する前に、当然のことながら、本発明は記述された特定の実施形態に限定されず、そのためもちろん変化することがある。また当然ながら、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を記述することのみを目的とし、限定を意図するものではなく、従って本発明の範囲は付属の請求項によってのみ限定されるものとする。
【0015】
[27] 別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。ただし、明確化および参照の容易さのため、または本明細書に記述される本発明の目的のために、特定の要素を以下に定義する。
【0016】
[28] 動物の「癌」という用語は、無秩序な増殖、不死性、転移能力、急速な成長および増殖速度、および特定の特徴的な形態学機能など、発癌性細胞に特有の性質を持つ細胞の存在を指す。癌細胞は腫瘍の形態を取ることが多いが、このような細胞は動物内のみに存在したり、白血病細胞などの独立細胞として血流中を循環していることがある。
【0017】
[29] 本明細書で使用される場合、例えば「腫瘍細胞増殖」という文脈での「細胞増殖」という用語は、別途指定されない限り、腫瘍学で一般的に使用されるように使用され、この用語は細胞数の増加と主に関連しており、その増殖の小構成要素は、特定の状況では細胞サイズまたは個々の細胞の細胞質体積の増加にもよるが、後者の速度が(例えばアポトーシスまたは壊死による)細胞死の速度より大きい時に細胞繁殖(すなわち増殖)によって起こり、細胞集団サイズを増加させる。したがって、細胞増殖を阻害する薬剤は、増
殖を阻害するかまたは細胞死を促進するかのどちらか、または両方によって阻害を行い、これらの2つの相反プロセスの間の平衡が変化するようにする。
【0018】
[30] 本明細書で使用される場合、「腫瘍増殖」または「腫瘍転移増殖」は、別途指定されない限り、腫瘍学で一般的に使用されるように使用され、この用語は、主に腫瘍細胞増殖の結果としての腫瘍または腫瘍転移の質量または容量の増加に主に関連する。
【0019】
[31] 本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、別途指定されない限り、癌患者の腫瘍の増殖、腫瘍転移、または他の発癌性または腫瘍細胞を部分的または完全に改善する、緩和する、その進行を阻害する、または防止することを意味する。本明細書で使用される場合「治療」という用語は、別途指定されない限り、治療行為を指す。
【0020】
[32] 「治療方法」またはそれと同等の句は、例えば癌に適用された場合、動物の癌細胞数を減少または除去するように、または癌の症状を緩和するようにデザインされた処置または一連の行為を指す。癌または別の増殖性疾患の「治療方法」は、癌細胞または他の疾患が実際に除去されること、細胞数または疾患が実際に減少すること、または癌または他の疾患の症状が実際に緩和されることを必ずしも意味しない。癌の治療方法は多くの場合、成功の見込みが低い場合でも行われるが、動物の病歴および予測される生存期間を考慮した場合、それでも全体として一連の有益な行為であると判断される。
【0021】
[33] 本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、抗癌剤による治療が必要な人物、より具体的には、癌または腫瘍を治療するためにこのような治療を必要とする、1つ以上の腫瘍を持つ人物を指す。しかし、「患者」という用語はヒト以外の動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジおよびヒト以外の霊長類などで、とりわけ1つ以上の腫瘍を持ち、抗癌剤での治療が必要な哺乳類を指すこともある。「患者」という用語は、1つ以上の腫瘍を持ち、例えば抗癌剤の有効性を評価するために薬学研究に使用される実験動物モデルを指すこともあり、ここで腫瘍は自然発生または移植のどちらかでありうる(例えば、ヒトまたはヒト以外の他の動物腫瘍細胞を持つマウス異種移植モデル)。 癌または腫瘍タイプは以下にリストされた任意のものでありうる。
【0022】
[34] 「治療効果のある薬剤」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が追求する組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的な反応を引き起こす組成物を指す。
【0023】
[35] 「治療有効量」または「有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が追求する組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的な反応を引き起こす、対象化合物または組み合わせの量を指す。
【0024】
[36] 本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語は、特定の物質(例えば、抗原および免疫原)に非共有結合して抗原抗体複合体を形成する免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのタンパク質を指し、これにはハイブリドーマ細胞株、ポリクローナル抗体反応を引き起こすための免役付与、化学合成、抗体をコードする発現ベクターで形質転換された遺伝子組み換え宿主細胞によって生成された抗体を含むがこれに限定されない。ヒトにおいて、免疫グロブリン抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMとして分類され、各クラスのメンバーは同じアイソタイプを持つといわれている。ヒトIgA およびIgGアイソタイプは、IgA1とIgA2、およびIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のサブタイプにさらに細分される。マウスは一般的にヒトと同じアイソタイプを持つが、IgGアイソタイプはIgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3サブタイプに細分される。したがって当然のことながら、本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語はその範囲内に、(a) 通常使用される任意の動物から派生する免役グロブリン(例えばIgG、IgM、IgE)のさまざまなクラ
スまたはサブクラスの任意のもの、および (b) マウス、キメラ、またはヒト化抗体などのポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含む。抗体分子は、抗原決定基として働くアミノ酸配列の領域を持つ(例えば、Fc領域、カッパ軽鎖、ラムダ軽鎖、ヒンジ領域など)。選択された領域に対して生成される抗体は、特定の抗[領域]である(例えば、抗Fc、抗カッパ軽鎖、抗ラムダ軽鎖など)。一般的に抗体は抗原に対して、マクロ分子で生物に免疫付与し、リンパ球活性化を開始して免役グロブリンタンパク質を発現させることによって生成される。本明細書で使用される場合、抗体分子という用語は、抗体結合ドメインであるか、これと同種である結合ドメインを持つポリペプチドまたはタンパク質も網羅し、これには単鎖Fv分子(scFv)を含むがこれに限定されず、ここでVHドメインおよびVLドメインは、2つのドメインを関連付けて抗原結合部位を形成することを可能にするペプチドリンカーによって連結される(Bird et al., Science 242, 423 (1988) and Huston et
al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879 (1988))。これらは天然のソースから派生することも、または部分的または全体的に合成生産されることもある。
【0025】
[37] 本明細書で使用される場合、「抗体フラグメント」という用語は、抗体分子全体の主な選択的結合特性を保有する抗体分子のフラグメントを指す。特定のフラグメントは当技術分野ではよく知られており(例えば、Fab、Fab'、およびF(ab')2)、さまざまなプロテアーゼによる分解によって得られ、完全な抗体のFcフラグメントまたは完全な抗体の重鎖成分を結合しているジスルフィド結合の還元切断によって得られるいわゆる「半分子」フラグメントを欠いている。このようなフラグメントには、軽鎖可変領域から成る単離フラグメント、重鎖および軽鎖の可変領域から成る「Fv」フラグメント、軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結されている遺伝子組み換え単鎖ポリペプチド分子も含まれる。結合フラグメントの他の例には、(i) VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント、 (ii) VHドメインから成るdAbフラグメント(Ward, et al., Nature 341, 544 (1989))、(iii) 単離CDR領域、および (iv) 上述の単鎖Fv分子(scFv)が含まれる。さらに、抗原認識特性を保有する遺伝子組み換え技術を使用して、任意のフラグメントを作ることができる。
【0026】
[38] 「EMTステータス検出複合体」という用語は、抗体および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むプローブまたは複合体を指し、ここで抗体はEMTステータスバイオマーカーの細胞外ドメインに結合する能力を持ち、レポーター分子は抗体に共有または非共有結合する。しかし、好ましくは抗体およびレポーター分子は共有結合している。
【0027】
[39] 本明細書で使用される場合、「EMTステータスバイオマーカー」という用語は、バイオマーカータンパク質を指し、その発現レベルは上皮または間葉のどちらかの細胞の表現型に特有であり、その構造の少なくとも一部は細胞の害表面で発現され(すなわち細胞外ドメイン)、そのため生体内の抗バイオマーカー抗体がアクセスすることができ、したがって上皮から間葉への変化(EMT)中に腫瘍細胞のEMTステータスをin situでモニターするために使用できる。このようなバイオマーカーの一例は、上皮バイオマーカーE-カドヘリンである。本発明との関連で有用であり得るEMTステータスバイオマーカーの追加的な例が、本明細書の以下で開示されている。「EMTステータスバイオマーカー」タンパク質は、細胞または腫瘍の起源によって、ヒトまたはヒト以外(例えば、マウス、ウサギ、サル、イヌなど)でありうる。「標的EMTステータス抗原」または「標的EMTステータスバイオマーカー」という用語は本明細書で使用される場合、EMTステータス検出複合体を使った本明細書に記述される画像方法の対象分子を示す。
【0028】
[40] 本明細書で使用される場合、「レポーター分子」という用語は、生体内の患者の腫瘍中の複合体(すなわちEMTステータス検出複合体)によって結合された標的EMTステータス抗原またはバイオマーカーの位置を特定し定量化するためにシグナルを使用できるよ
うに、抗体の標識に使用できる検出可能なシグナルを生成し、抗体・レポーター分子複合体を生成する分子または分子複合体を指す。「レポーター分子」の例には、NIRレポーター分子または放射性核種を含み、これは検出可能な電磁信号または放射線を放出するかまたは放出を引き起こす。
【0029】
[41] 本明細書で使用される場合、「検出可能なシグナル」という用語は、観察または計測によって直接的または間接的に検出可能なレポーター分子からのシグナルの変化または発生を指し、その存在または程度は試験対象(例えば、EMTステータス検出複合体で標識された腫瘍EMTステータスバイオマーカー)中のレポーター標識標的の存在の関数である。一般的に、検出可能な反応は、波長分布パターンまたは吸収強度または蛍光の変化、または光分散、蛍光量子収率、蛍光寿命、蛍光偏光の変化、励起または発光波長のシフトまたは上記のパラメーターの組み合わせ、または放射性核種レポーター(例えば、ガンマ線またはx腺光子)からの放射性崩壊生成物の強度の変化を引き起こす光学的応答である。光学的応答では、任意のスペクトル特性の検出可能な変化は、一般的に増加または減少である。しかし、蛍光強度および/または蛍光発光または励起を引き起こすスペクトル変化も有用である。
【0030】
[42] 本明細書で使用される場合、「フルオロフォア」という用語は、本質的に蛍光性の組成物を指す。フルオロフォアは、フルオロフォアの溶解性、スペクトル特性または物理的特性を変えるために置換されることがある。当技術分野では多くのフルオロフォアが知られており、これにはクマリン、アクリジン、フラン、ダンシル、シアニン、ピレン、ナフタレン、ベンゾフラン、キノリン、キナゾリノン、インドール、ベンザゾール、ボラポリアザインダセン、オキサジンおよびキサンチンが含まれるがこれに限定されず、後者にはフルオレセイン、ローダミン、ロサミンおよびロードールに加えて Richard P. HauglandのMolecular Probes Handbook Of Fluorescent Probes And Research Products (第9版、出版社: Molecular Probes, Inc.(オレゴン州ユージーン) ISBN: 0971063605、CD-ROM付き、2002年9月)に記述されている他のフルオロフォアを含む。本明細書で使用される場合、本発明のフルオロフォアは、生体内撮像に対応し、組織内で光学的に励起され、一般的に約580 n〜約800 nm以上の励起波長を持つ。
【0031】
[43] 本明細書で使用される場合、「照射」という用語は、本発明のNIR染料EMT検出複合物を励起する能力を持つ任意のエネルギーまたは光源(特に近赤外(NIR)および可視光)の適用を指す。
【0032】
[44] 本発明で使用される場合、「検出手段」という用語は、腫瘍または患者内に局在するレポーター標識複合体が生成したシグナルを検出する手段を指し、例えば、患者を照射し、結果得られる任意の蛍光シグナルを検出するためのシステムまたは機器、PETスキャナー検出リング、ガンマカメラおよび計測器などの放射線検出器が含まれる。このような「検出手段」は生体内撮像技術分野の当業者には良く知られており、一般的には検出されたシグナルを、検出シグナルを代表する電気信号に変換する。本明細書で使用される場合、この用語は、レポーター分子(例えば、放射性核種)から自然に放出されるシグナルを検出するシステム、機器または検出器に加えて、例えばフルオロフォアなどのレポーターを含む対象物を照射することによって放出を生じさせたシグナルを検出するシステム、機器または検出器も指すことに注意すべきである。
【0033】
[45] 本明細書で使用される場合、「生体内撮像(in vivo imaging)」という用語は、生検または致死的犠牲を必要とせずに、患者の構造的、機能的、または生理学的状態を検査できる方法またはプロセスを指す。
【0034】
[46] 本明細書で使用される場合、「非侵襲性生体内撮像」という用語は、レポーター
分子(例えばEMTステータス検出複合体)を含むプローブの初期送達を除いて、身体の外側(皮膚)または内側(アクセスできる開口部)表面の物理的完全性を損なうことなく、患者の構造的、機能的または生理学的状態を検査できる方法またはプロセスを指す。
【0035】
[47] 本明細書で使用される場合、「画像分析手段」という用語は、「検出手段」で検出される患者の腫瘍中のレポーター標識複合体が生成するシグナルの位置を特定し定量化するために使用できる計器システムまたは技術を指し、一般的にコンピュータ制御されており、ハードウェアとソフトウェアの両方を含む。このような「画像分析手段」は、生体内撮像の技術分野の当業者には良く知られており、一般的に標的部位(すなわち、本出願の腫瘍)からのシグナルの2次元または3次元マップを生成し、一般的に検出シグナルの位置と量を示すために色分けされている。このような画像分析を行うことができる機器の例には、NIR撮像システム、例えば陽電子消滅イベントの位置特定を使用した、または同時統計を使用した、画像再構成を使った陽電子放出断層撮影(PET)を行うための機器、および単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)を行うための機器が含まれる。
【0036】
[48] 本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、関連成分の包装セット、一般的に1つ以上の化合物または組成物、および随意に方法またはアッセイの使用のための指示一式を指す。
【0037】
[49] 本明細書で使用される場合、「微小球または微粒子」という用語は、一般的に約0.01〜約10ミクロンの範囲のサイズで、その化学的または物理的特性によりこのサイズの範囲で機能的に安定な粒子の形成が可能になる任意の有機または無機物質から成り、好ましくは染色またはNIR染料との会合に適している粒子を指す。好ましい微小球は高分子有機粒子で、ブロック共重合体から成りうる。病状の光学的撮像に使用される一部の好ましい微小球が、2006年12月8日出願のPCT/US2006/061792に記述されており、参照によってその内容を完全に説明したとして本明細書に取り込む。特に、PCT/US2006/061792の造影剤セクションに記述されている組成物は、本明細書に記述の複合体としての使用が検討されている。
【0038】
[50] 本明細書で使用される場合、「近IR染料」または「近IRレポーター分子」または「MIR染料」または「NIRレポーター分子」という用語は、約580 nm 〜約800 nmの励起波長を持つ染料またはレポーター分子を示す。好ましくは、NIR染料は約590 nm〜約860 nmの範囲に放射する。最も好ましいNIR染料は、約680〜約790 nmで励起される。本発明での使用に適した染料の例には、Alexa Fluor 660染料、Alexa Fluor 680染料(AF680)、Alexa
Fluor 700染料、Alexa Fluor 750 染料、およびAlexa Fluor 790染料を含む(Berlier JE, et al., J. Histochem. Cytochem. 2003 (51):12 1699-1712; Panchuk-Voloshina N, et al., J Histochem Cytochem 1999 (47):9 1179-1188)。NIR染料は、患者に存在する内因性物質を励起することなく選択的に可視化できるため、生体内撮像において特に有利である。一部のNIR染料は、励起および発光波長が少なくとも20、30、40、50、60、70または80 nm離れているような大きなストークスシフトを持つ。
【0039】
[51] 本明細書で使用される場合、「誘導的に発現する」とは、例えば、タンパク質を「誘導的に発現する」ために操作された細胞を指す場合、タンパク質をコードする遺伝子の転写を制御する誘導剤の存在(または不在)によってのみタンパク質発現が生じることを意味し、これは誘導剤に反応するプロモーターの制御下、コードしているタンパク質に対する遺伝子を含む構造物との安定な形質転換によって、好ましくは細胞に取り込まれる(すなわち、タンパク質をコードする遺伝子が遺伝子発現を調節しているヌクレオチド配列に動作可能なように連結され、ヌクレオチド配列が誘導剤の存在によってその活性が制御されうるプロモーター配列を含む)。このような誘導性プロモーターの一例は、テトラサイクリン(tet)-反応性プロモーターである(例えばTet-onシステム、例えばGossen, M.
et al. (1995) Science 268:1766-1769を参照)。対象の特定遺伝子の発現レベルを制御するためのこのような誘導性遺伝子発現システムは、当技術分野では良く知られている(例えば、Blau, H.M. and Rossi, F.M.V. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:797-799; Yamamoto, A. et al. (2001) Neurobiology of Disease 8:923-932; Clackson, T. (2000) Gene Therapy 7:120-125を参照)。
【0040】
[52] 本発明は、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化(“EMT”; Thiery, J.P. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:442-454; Savagner, P. (2001) Bioessays 23:912-923; Kang Y. and Massague, J. (2004) Cell 118:277-279; Julien-Grille, S., et al. Cancer Research 63:2172-2178; Bates, R.C. et al. (2003) Current Biology 13:1721-1727; Lu Z., et al. (2003) Cancer Cell. 4(6):499-515)を受けたかどうかに基づき、タンパク質・チロシンキナーゼ阻害剤での治療に対してどの腫瘍が最も効果的反応するかを判断する方法を提供した研究から派生している(例えば、Thompson, S. et al. (2005) Cancer Res. 65(20):9455-9462; 米国特許出願第60/997,514号)。この研究では、上皮細胞はEGFRおよびIGF-1Rキナーゼ阻害剤によく反応するが、EMT後結果的に生じる間葉様細胞はこのような阻害剤への感受性がより低いことが示されている。腫瘍細胞がEMTを受けたかどうかを判断するためにバイオマーカーを使用することができる(Thomson, S. et al. (2005) Cancer
Res. 65(20):9455-9462)。このような研究の結果、腫瘍の侵入および転移特性の重要な要素であると考えられている、このような間葉様細胞の発生、増殖および/または機能を阻害する能力を持つ薬剤を見つけるための新しい治療アプローチが必要であることが明らかになった。
【0041】
[53] 研究のかなりの部分が明らかになってきており、腫瘍EMTイベントの調節に関与する生化学的経路の明確化、および結果生じる間葉様腫瘍細胞の特性化が始まろうとしている。例えば、間葉様腫瘍細胞によって生成されるさまざまなタンパク質生成物の発現の特異的siRNA阻害剤を使用した実験では、特定の遺伝子の発現の減少は、間葉様腫瘍細胞の増殖を特異的に阻害できることが示された。したがって、これらの遺伝子によってコードされたタンパク質性生物の発現も特異的に阻害する、または細胞外ドメインを有する発現タンパク質に対する抗体、アンチセンス分子、リボザイム、または小分子酵素阻害剤(例えば、タンパク質キナーゼ阻害剤)などの発現タンパク質の生物学的活性(例えば、ホスホトランスフェラーゼ活性)を特異的に阻害する薬物は、間葉様腫瘍細胞の増殖も特異的に阻害する薬剤であることが同様に期待される。このような薬剤とEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の併用は上皮と間葉様腫瘍細胞の両方を効果的に阻害するため、このような併用の抗腫瘍効果は、これらのキナーゼ阻害剤自体の抗腫瘍効果よりも優れているはずである。したがってこのような薬剤とEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤との併用は、NSCL、すい臓、結腸または乳癌などの進行性癌を持つ患者の治療に効果的であるはずである。
【0042】
[54] 間葉様腫瘍細胞の増殖またはEMTプロセスを阻害する薬剤の発見・開発のための重要な標的の特定を考慮すると、生体内の間葉様腫瘍細胞の形成、増殖および/または移動に対して予測された効果を持つかどうかを決定するための生体外スクリーニング法で特定された薬剤を評価する改良法に対する差し迫ったニーズが存在する。このような治療の良い候補であるEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤による阻害にどれが影響を受けやすいか、およびEMTまたは結果得られる間葉腫瘍細胞を阻害する追加的薬剤からどの腫瘍細胞が利益を得られる可能性があるかを決定するために、患者の腫瘍のEMTステータスを決定する診断法の改良に対するニーズもまた存在する。
【0043】
[55] 生体内で腫瘍のEMTステータスを決定する現在の方法の主な欠点は、ヒト腫瘍は一般的に不均一な性質で、しばしば上皮および間葉細胞の両方、および上皮および/または間葉細胞マーカーを発現できる他の細胞タイプ(例えば、正常組織細胞、間質細胞、血管系細胞)を含む複数の腫瘍細胞表現型から成るという事実に由来しており、これらの細胞
タイプのほとんどは一般的に腫瘍内に均一に分布していない。例えば、間葉細胞は、主に固形腫瘍の前縁または侵襲前面としばしば関連している(Lee, J. M. et al. (2006) J. Cell. Biol. 172(7): 973-981)。したがって、小さな生検サンプルのバイオマーカー決定に頼ってEMTステータスを決定する現在の方法は、特に1つの生検のみに頼る場合は、サンプリング変化によって誤解を与える結果を生むことがある。一連の生検を使って一定期間にわたって薬物療法の進行をモニターしようとする時には、このような方法論上の欠陥が悪化する。このような欠陥は、腫瘍の異なる部位をサンプルする複数の生検を使用することによってある程度緩和されるが、このような高侵襲性のアプローチはほとんどの場合望ましくなく、また多くの場合に可能でないことがある。
【0044】
[56] 以下の本明細書の実施例に示されたデータは、驚いたことに、生検サンプルを必要とすることなく、in situで腫瘍細胞のEMTステータスを決定できることを示している。EMTステータスが判明しており、実験的に操作できるヒト腫瘍細胞を移植した動物異種移植モデルを使って、本発明は腫瘍のヒト腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定できることを示した。これは、レポーター分子で標識された抗EMT細胞表面バイオマーカー抗体(すなわち「EMTステータス検出複合体」)を動物に注射することによって行われ、これからシグナルを検出・測定することができ、腫瘍上のEMTバイオマーカー(例えばE-カドヘリン)の位置を特定・定量化することができ、それによって腫瘍細胞のEMTステータスを決定することができる。抗体は、電磁スペクトルの適切な波長を照射することによって容易に検出されうるNIR染料で標識され、その発光スペクトルでの蛍光をモニターし、画像分析技術を使って定量化した。陽電子放出放射性核種(すなわちPETスキャンで検出可能な放射性トレーサー)、または単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)プローブなど、大型の動物(例えば、ヒト、サル)に対する用途により適している別の標識方法も検討されている。マウス腫瘍細胞を移植したヌードマウスを使った実験も、同様に成功した。本明細書で報告された結果は、使用された抗体がヒトまたはマウスのタンパク質に結合すること、およびマウスの多くの組織が検出されたEMTバイオマーカーを発現することを考慮すると特に驚くべきことである点に注目すべきである。したがって、非腫瘍バックグラウンド・シグナルによって生成される任意のシグナルが不明瞭になったため、腫瘍EMTステータスをモニターするために十分に大きな信号対ノイズを測定できないと予想されたかもしれない。本明細書に記述のデータは、EMTを阻害する医薬品を特定・研究するため、およびこのような薬剤、またはその有効性が腫瘍細胞EMTステータスに依存しているように見える他の薬剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤)による患者の治療に使用されうる新しい方法を実証している。
【0045】
[57] したがって、本発明は、患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法を提供し、これには、(a) EMTステータスのバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(b) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーと接触するように、前述の複合体を腫瘍患者に導入すること、(c) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を用いること、および (d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析の手段を用いることを含み、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す。この方法の1つの実施形態では、非侵襲性生体内撮像が採用され、ここで腫瘍部位にある複合体からのシグナルの検出手段は、患者の外側にある。生体内撮像が採用されたこの方法の別の実施形態では、腫瘍部位にある複合体からのシグナルの検出手段は、アクセスできる患者の開口部を貫
通できる物理的プローブに取り付けられている。
【0046】
[58] 本発明の方法では、患者は、治療を必要とする癌を持つヒトでありうる。患者の腫瘍細胞のEMTステータスの決定は、好ましい治療方法を決定するために使用されうる。例えば、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤などの特定の抗癌剤は、間葉細胞よりも上皮細胞の阻害により効果的であることが示されている。また、EMTを阻害する薬剤が利用可能になるにつれて、本発明の方法は、このような薬剤による治療から最も恩恵を受けるであろう患者を特定する貴重な診断ツールを提供することになる。
【0047】
[59] 本発明の方法または組成物における「抗体」への言及は、「抗体分子」、「抗体フラグメント」、またはこのような抗体分子またはフラグメントの混合物を随意に含む。
【0048】
[60] 本発明は、患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法も提供し、これには以下を含む:(a) 薬剤が腫瘍細胞に接触するように、前述の患者に試験薬を導入すること、(b) EMTを受けている腫瘍細胞を誘導する能力を持つ薬剤に患者を接触させること、(c) EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(d) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を患者に導入すること、(e) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出するための手段を採用すること、(f) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析手段を使用すること、ここで陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞を示す、(g) 同様の治療を受けたが (a) にあるような試験薬では治療されなかった患者によって生成されたシグナルを (f) のシグナルと比較し、それによって前述の試験薬が、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害できる薬剤であるかどうかを特定すること。この方法の好ましい実施形態では、患者は癌の動物モデル(すなわちヒト以外)であり、ここで薬剤は、モデルの腫瘍細胞にEMTを誘導できることが知られている。EMTを誘導することが知られているいくつかの薬剤が本明細書にリストされている。好ましい動物モデルでは、動物は免疫不全動物(例えば、Foxn1nuマウスとしても知られるヌードマウスなどの免疫不全マウス)である。後者は、他の任意の動物(例えば、マウス、イヌ、サルなど)からの腫瘍細胞を使って、腫瘍移植片(すなわち腫瘍異種移植片)に対する宿主として使用できるが、好ましいのはヒト腫瘍細胞である。1つの実施形態において、異種移植細胞は、細胞の上皮から間葉への変化を刺激するタンパク質を誘導的に発現するように組み換えられた腫瘍上皮細胞である。誘導的に発現され、上皮から慣用への変化を刺激するタンパク質は、例えば、Snail、Zeb-1、または構成的に活性なTGF-βであり得る。この目的に適した細胞には、例えば、ヒトNSCLC H358細胞を含む(例えば米国特許出願第61/068,612号(これは誘導性H358 EMTモデルの作り方および使い方を開示している)、Thomson, S. et al. (2008) Clin.Exp. Metastasis. 25(8):843-54を参照)。
【0049】
[61] または、本発明の方法は、患者の腫瘍細胞が内因性要因によって誘導された上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定するために使用され得る。このような要因は、例えば、自己分泌、傍分泌または内分泌的性質でありうる。したがって、本発明は、患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法も提供し、これには以下を含む:(a) 薬剤が腫瘍細胞に接触するように、前述の患者に試験薬を導入すること、(b) EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(c) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を患者に導入すること、(d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出するための手段を採用
すること、(e) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析手段を使用すること、ここで陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞を示す、(f) 同様の治療を受けたが (a) にあるような試験薬では治療されなかった患者によって生成されたシグナルを (e) のシグナルと比較し、それによって前述の試験薬が、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害できる薬剤であるかどうかを特定すること。この方法の1つの実施形態では、患者は、患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害するための薬剤の効果を評価するために治療を受けているヒト患者である場合があり、ここで薬剤は、他のヒト患者、癌の動物モデル(例えばマウスのヒト異種移植片)および/または生体外EMT細胞モデルでこのような活性を持つことが過去に示されている。
【0050】
[62] 患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定するための本明細書に記述された本発明の方法では、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの時、対照群の患者腫瘍と比較して試験薬で治療された腫瘍の陽性シグナルの方が強いということは、薬剤がEMTを阻害していることを示す。EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの時、対照群の患者腫瘍と比較して試験薬で治療された陽性シグナルの方が弱いということは、薬剤がEMTを阻害していることを示す。
【0051】
[63] 本発明はまた、癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法も提供し、これには (a) 本発明の方法で腫瘍細胞のEMTステータスをin situで評価すること、および (b) EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を前述の患者に投与することを含む。好ましい実施形態では、EGFRキナーゼ阻害剤はエルロチニブである。他の適切なEGFR阻害剤が、本明細書の下記にリストされている。
【0052】
[64] 本発明は、癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法を提供し、これには以下によって患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定することを含む:(a) EMTステータスのバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(b) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーと接触するように、前述の複合体を腫瘍患者に導入すること、(c) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を用いること、および (d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析の手段を用い、ここで陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示し、前述の患者にEGFRキナーゼ阻害剤(例えばエルロチニブ)の治療有効量を投与すること。この方法の1つの実施形態では、腫瘍細胞のEMTステータスは上皮であると決定され、腫瘍細胞の増殖は、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に敏感である可能性が高いことを示している。この方法の別の実施形態では、腫瘍細胞のEMTステータスは主に上皮であると決定され、大部分の腫瘍細胞の増殖は、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に敏感である可能性が高いことを示している。この方法の別の実施形態では、腫瘍細胞のEMTステータスは、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、または少なくとも80%から選択された割合で上皮であると決定され、少なくともその割合の腫瘍細胞の増殖は、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に敏感である可能性が高いことを示している。このこの方法の別の実施形態では、腫瘍細胞のEMTステータスは間葉または主に間葉であると決定され、腫瘍細胞の増殖は、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に敏感である可能性が低いことを示している。しかし、後者の実施形態では、例えば患者の状態、他の抗癌剤への過去の反応、または治療の効果を潜在的に増強するためにEGFRキナーゼ阻害剤と併用されうる他の薬剤の可用性によっては、医師がそれでもEGFRキナーゼ阻害剤の投与が潜在的に有用な方策であると判断する場合がある。
【0053】
[65] 本発明はまた、癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法も提供し、これには (a) 本発明の方法で腫瘍細胞のEMTステータスをin situで評価すること、および (b) IGF-1Rキナーゼ阻害剤の治療有効量を前述の患者に投与することを含む。好ましい実施形態では、IGF-1Rキナーゼ阻害剤はOSI-906である。他の適切なIGF-1R阻害剤が、本明細書の下記にリストされている。
【0054】
[66] 本発明は、癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法を提供し、これには以下によって患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定することを含む:(a) EMTステータスのバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(b) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーと接触するように、前述の複合体を腫瘍患者に導入すること、(c) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を用いること、および (d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析の手段を用い、ここで陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示し、前述の患者にIGF-1Rキナーゼ阻害剤(例えばOSI-906)の治療有効量を投与すること。このこの方法の1つの実施形態では、腫瘍細胞のEMTステータスは上皮であると決定され、腫瘍細胞の増殖は、IGF-1Rキナーゼ阻害剤による阻害に敏感である可能性が高いことを示している。この方法の別の実施形態では、腫瘍細胞のEMTステータスは主に上皮であると決定され、大部分の腫瘍細胞の増殖は、IGF-1Rキナーゼ阻害剤による阻害に敏感である可能性が高いことを示している。この方法の別の実施形態では、腫瘍細胞のEMTステータスは、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、または少なくとも80%から選択された割合で上皮であると決定され、少なくともその割合の腫瘍細胞の増殖は、IGF-1Rキナーゼ阻害剤による阻害に敏感である可能性が高いことを示している。この方法の別の実施形態では、腫瘍細胞のEMTステータスは間葉または主に間葉であると決定され、腫瘍細胞の増殖は、IGF-1Rキナーゼ阻害剤による阻害に敏感である可能性が低いことを示している。しかし、後者の実施形態では、例えば患者の状態、他の抗癌剤への過去の反応、または治療の効果を潜在的に増強するためにIGF-1Rキナーゼ阻害剤と併用され得る他の薬剤の可用性によっては、医師がそれでもIGF-1Rキナーゼ阻害剤の投与が潜在的に有用な方策であると判断する場合がある。
【0055】
[67] 本発明は、患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法で使用するために、EMTステータスバイオマーカーの細胞外領域に結合する抗体および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を含む組成物も提供する。好ましい実施形態では、抗体およびレポーター分子は共有結合している。EMTステータスバイオマーカーは、上皮または間葉バイオマーカーであり得る。適切なEMTステータスバイオマーカーの例が本明細書にリストされている。レポーター分子は、例えばNIR染料または放射性核種である場合があり、そのうちいくつかの適切な例が本明細書にリストされている。1つの実施形態では、レポーター分子はAlexa Fluor 680蛍光染料を含む。
【0056】
[68] 本発明は、患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法で使用するために、E-カドヘリンの細胞外領域に結合する抗体および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を含む組成物も提供する。好ましい実施形態では、抗体およびレポーター分子は共有結合している。1つの実施形態では、レポーター分子はAlexa Fluor 680蛍光染料を含む。
【0057】
[69] 本発明は、患者の腫瘍中のEMTステータスバイオマーカーをin situで撮像する方法も提供し、ここでこの方法は以下を含む:a) EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体および検出可能なシグナルを生成するNIRレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、b) EMTステータス検出複合体を患者に導入して接触された患者を形
成すること、c) 接触された患者に適切な波長を照射して照射患者を形成すること、およびd) 照射患者を観察すること、ここでEMTステータスバイオマーカーは撮像され、EMTステータスバイオマーカーは患者の腫瘍細胞の上皮から間葉への変化のステージを示す。
【0058】
[70] 本発明は、患者の腫瘍中のEMTステータスバイオマーカーをin situで撮像する方法も提供し、ここでこの方法は以下を含む:a) EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体および検出可能なシグナルを生成するNIRレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、b) EMTステータス検出複合体を患者に導入して接触された患者を形成すること、およびc) 接触された患者を観察すること、ここでEMTステータスバイオマーカーは撮像され、EMTステータスバイオマーカーは患者の腫瘍細胞の上皮から間葉への変化のステージを示す。
【0059】
[71] 本発明は、患者の生体内の腫瘍細胞のEMTステータスを検出する非侵襲的方法も提供し、本方法は、EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含む組成物を患者に投与すること、および患者の生体内の腫瘍細胞のEMTステータスを検出するために、患者の少なくとも一部分に対する検出可能なシグナルの生体内画像を取得することを含む。
【0060】
[72] この方法の任意の撮像法の1つの実施形態では、非侵襲性生体内撮像が採用され、ここで腫瘍部位にある複合体からのシグナルの検出手段は、患者の外側にある。本発明の任意の生体内撮像法の別の実施形態では、腫瘍部位にある複合体からのシグナルの検出手段は、アクセスできる患者の開口部(例えば、胃腸管)を貫通できる物理的プローブに取り付けられている。
【0061】
[73] 本発明の任意の方法では、追加的な制御ステップとして、EMTステータス検出複合体を使用して方法のステップを繰り返すことができ、複合体は同じレポーター分子で同じまたは同様の程度に標識された非特異的抗体(例えば患者内に存在しないエピトープに結合するもの)を含み、腫瘍部位の各複合体からのシグナルを比較して、EMTバイオマーカーに特異的なEMTステータス検出複合体からのシグナルの量を決定する。この追加的な制御ステップは、EMTステータス検出複合体で観察されるシグナルがEMTバイオマーカーに特異的である程度を確立するために使用されうる。一旦、非特異的バックグラウンドシグナルのレベルが確立されると、すべてのEMTステータス決定でこの制御ステップを繰り返す必要はない場合がある。
【0062】
[74] 本発明の方法または組成物の好ましい実施形態において、検出可能なシグナルを生成するEMTステータス検出複合体のレポーター分子は、NIRレポーター分子または放射性核種を含み、これは電磁シグナルまたは放射線を放射するかまたは放射を生じさせることがある。NIRレポーター分子は、患者が小さい(例えば、マウス、ラット、ウサギ、小さなサル)場合に好ましい。大きな動物(例えば、ヒト、他の大型霊長類、イヌ)では放射性核種レポーターが好ましいが、それはこのようなレポーターからの検出可能なシグナルの組織透過性が優れているためである。本明細書に記述された発明で使用するのに適した、当技術分野で知られているこのようなレポーター分子の例は多くあり、その一部は本明細書に記述されている。選択されたレポーター分子は、標的EMTステータス抗原によってその優先的隔離が腫瘍部位で起こるまで、標的特異的レポーター複合体が患者の循環血液およびリンパ中を比較的自由に移動する能力を妨げてはならない。
【0063】
[75] 生体内撮像に適合する励起波長を持つ、当業者に知られている任意の蛍光染料は、上述のEMTステータス検出複合体に対するNIRレポーターとして使用できる。一般的に、蛍光染料は、少なくとも580 nmの励起波長を持つ。適切なNIRレポーター分子には、例えば、生体内撮像に適合する励起波長(一般的には約580 nm〜約800 nm)を持つ蛍光染料を
含む。タンパク質およびペプチドへの結合に適している可能性のあるさまざまな長波長蛍光染料が、当技術分野で知られている(例えば、Richard P. Haugland, Molecular Probes Handbook Of Fluorescent Probes And Research Products (2002) (上記参照); 公開国際出願第WO 2007/109809号)。電磁スペクトルの近赤外(NIR)領域のプローブ蛍光の検出は、体組織がこの領域で比較的透明な傾向があることから、特に期待される生体内撮像モダリティを意味する(B. C. Wilson, Optical properties of tissues. Encyclopedia of Human Biology, 1991, 5, 587-597)。
【0064】
[76] 本発明の蛍光染料またはフルオロフォアは、580 nmを超える吸収極大を示し、組織内で光学的に励起され観察可能な任意の化学部分である。本発明の染料には以下を含むがこれに限定されない:ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドールまたはベンゾインドール、オキサゾールまたはベンゾオキサゾール、チアゾールまたはベンゾチアゾール、4-アミノ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1, 3-ジアゾール (NBD)、カルボシアニン(米国特許出願第09/968,401号、09/969,853号、11/150,596号および米国特許第6,403,807号、6,348,599号、5,486,616号、5,268,486号、5,569,587号、20 5,569,766号、5,627,027号、6,664,047号、6,048,982号および6,641,798号の任意の対応化合物を含む)、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン(米国特許第 4,774,339号、5,187,288号、5,248,782号、5,274,113号、および5,433,896号に開示されている任意の対応化合物を含む)、キサンテン(米国特許第6,162,931号、6,130,101号、6,229,055号、25 6,339,392号、5,451,343号、および米国特許出願第09/922,333号に開示の任意の化合物を含む)、オキサジンまたはベンゾキサジン、カルバジン(米国特許第4,810,636号に開示の任意の対応化合物を含む)、フェナレノン、クマリン(米国特許第5,696,157号、5,459,276号、5,501,980号および5,830,912号に開示の任意の対応化合物を含む)、ベンゾフラン(米国特許第4,603,209号、および4,849,362号に開示の任意の対応化合物を含む)およびベンゾフェナレノン(米国特許第4,812,409号に開示の任意の化合物を含む)およびその誘導体。本明細書で使用される場合、オキサジンにはレゾルフィン(5,242,805号に開示の任意の対応化合物を含む)、アミノオキサジノン、ジアミノオキサジン、およびこれらのベンゾ置換類似体を含む。
【0065】
[77] 染料がキサンテンの場合、染料は随意にフルオレセイン、ロドール(米国特許第5,227,487号および5,442,045号に開示の任意の対応化合物を含む)、ロザミンまたはローダミン(米国特許第5,798,276号、5,846,737号、5,847,162号、6,017,712号、6,025,505号、6,080,852号、6,716,979号、6,562,632号の任意の対応化合物を含む)である。本明細書では、フルオロセインにはベンゾ-またはジベンソフルオレセイン、セミナフトフルオロセイン、またはナフトフルオロセインを含む。同様に本明細書では、ロドールにはセミナフトローダフルーア(米国特許第4,945,171号に開示の任意の対応化合物を含む)を含む。フッ素化キサンテン染料は、特に有用な蛍光特性を有するとして過去に記述されている(国際公開番号WO 97/39064および米国特許第 6,162,931号)。
【0066】
[78] したがって、1つの実施形態では、NIR染料は、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドールまたはベンゾインドール、オキサゾールまたはベンゾキサゾール、チアゾールまたはベンゾチアゾール、4-アミノ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1, 3-ジアゾール (NBD)、カルボシアニン、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン、キサンテン、オキサジン、ベンソキサジン、レゾルフィン、カルバジン、フェナレノン、クマリン、ベンゾフラン、ベンゾフェナレノン、およびその誘導体から成るグループから選択される。
【0067】
[79] 1つの実施形態では、染料は、その極大が約600 nmより大きな発光スペクトルを持
つ。さらなる実施形態では、染料またはフルオロフォアは、極大が約620 nmより大きい、極大が約650 nmより大きい、極大が約700 nmより大きい、極大が約750 nmより大きい、または極大が約800 nmより大きい発光スペクトルを持つ。別の実施形態では、NIR染料は、約580 nm〜約800 nmの励起波長を持つ。さらに具体的には、NIR染料は約660 nm〜約790 nmの励起波長を持つ。別の実施形態では、NIR染料は、約600 nm〜約850 nmの励起波長を持つ。1つの態様では、染料はシアニン染料である。好ましいものは、Alexa Fluor(登録商標)染料という商標名で販売されているもの、またはCy(登録商標)染料、Atto 染料またはDy(登録商標)染料という商標名で販売されているものとスペクトルが類似した染料である。好ましいAlexa Fluor染料には、Alexa Fluor 660染料、Alexa Fluor 680染料、Alexa Fluor 700染料、Alexa Fluor 750染料、およびAlexa Fluor 790染料を含む。記述されているおよび/または市販されている追加的染料には、Cy5.5 (Amersham、イリノイ州アーリントンハイツ); NIR-1 (同仁化学研究所、日本・熊本); IRD382 (LI-COR,ネブラスカ州リンカーン); La Jolla Blue (Diatron、フロリダ州マイアミ); ICG (Akorn, イリノイ州リンカンシャー)、および ICG誘導体(Serb Labs,フランス・パリ)を含む。
【0068】
[80] 一般的には、染料は、1つ以上の芳香環または芳香族複素環を含み、ハロゲン、ニトロ、スルホ、シアノ、アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリルアルキル、アシル、アリールまたはヘテロアリール環系、ベンゾ、または当技術分野で知られているクロモフォアまたはフルオロフォアに一般的に存在する他の置換基を含むさまざまな置換基で随意に置換される。
【0069】
[81] EMTステータス検出複合体中の染料は、抗体または化学的反応基または生物学的および非生物学的成分などの他の部分に、C、N、O、Sから成るグループから選択された1-20の非水素原子を組み入れた一連の安定な共有結合などの単共有結合で直接結合、リンカーで架橋または結合され得る。結合またはリンカーは、ビオチン/アビジンなどの受容体結合モチーフを伴うことがある。
【0070】
[82] 別の実施形態では、抗体は、蛍光または光散乱ナノ結晶と結合されうる(Yguerabide, J. and Yguerabide, EE, 2001 J. Cell Biochem Suppl.37: 71 - 81; 米国特許第6,214,560号、6,586,193号、および6,714,299号)。これらの蛍光ナノ結晶は、半導体ナノ結晶またはドープ金属酸化物ナノ結晶であり得る。一般的にナノ結晶は、グループII-Vl半導体材料(このうちZnSおよびCdSeは説明に役立つ実例である)、またはグループIII-V半導体材料(このうちGaAsは説明に役立つ実例である)、グループIV半導体材料、またはその組み合わせの少なくとも1つから成るコアから成る。コアは、その上に均一に堆積された半導体塗布(「シェル (shell)」)で不動態化されうる。例えば、グループII- Vl半導体コアは、グループII-Vl半導体シェル(例えばZnSまたはCdSeは、YZから成るシェルで不動態化でき、ここでYはCdまたはZnであり、ZはSまたはSeである)で不動態化されうる。ナノ結晶は、水性環境に溶解し得る。半導体ナノ結晶の魅力的な特性は、半導体コアのサイズを変化させることによって発光スペクトル範囲を変更できることである。
【0071】
[83] 一般的には励起波長が少なくとも580 nmの望ましいスペクトル特性を持つ適切な染料を選択した後、染料は、当技術分野でよく知られた方法を使用して抗EMTステータスバイオマーカー抗体に結合される(Haugland, Molecular Probes Handbook、上記参照、(2002))。好ましくは、共有結合を形成する結合は、反応性化合粒と結合される物質の両方が溶解する適切な溶媒で、本発明の反応性化合物を単に混合することから成る。好ましくは、反応は追加試薬なしで、室温以下で自然に進行する。光活性化されたこれらの反応性化合物では、反応混合物を照射して反応性化合物を活性化することにより、結合が促進される。望ましい化合物複合体が生成されるように、不水溶性物質の化学的修飾は、好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、アセトン、酢酸エチル、トルエン、またはクロロホルムなどの非プロトン性溶媒中で行われる。水溶性物質の類似の修
飾は、即時反応性化合物を使用して有機溶媒中でより容易に溶解させることにより、容易に達成される。
【0072】
[84] 抗体複合体の調製は、一般的に、水溶性緩衝液に結合されるタンパク質を、約1-10 mg/mL、室温以下で最初に溶解することを含む。重炭酸塩緩衝液(pH 約8.3)はスクシンイミドエステルとの反応に、リン酸緩衝液(pH 約7.2-8)はチオール反応性基との反応に、炭酸またはホウ酸緩衝液(pH 約9)はイソチオシアネートおよびジクロロトリアジンとの反応に特に適している。次に、結合されるタンパク質溶液に添加された時に適切な結合程度となるのに十分な量の、適切な反応性化合物が、非ヒドロキシル溶媒(通常DMSOまたはDMF)に溶解される。任意のタンパク質または他の成分に対する化合物の適正量は、さまざまな量の化合物をタンパク質に添加する実験によって、都合のよいことに事前に定められ、複合体をクロマトグラフで精製して未結合化合物を分離し、化合物タンパク質複合体を望ましい用途で試験する。
【0073】
[85] 成分溶液に反応性化合物を添加した後に、混合物を適正時間(一般的には室温で約1時間から氷上で数時間)培養し、過剰な化合物をゲルろ過、透析、HPLC、イオン交換または疎水性ポリマー上での吸着または他の適切な手段で除去する。化合物複合体は、溶液としてまたは凍結乾燥して使用される。これにより、適切な複合体を抗体から調製できる。
【0074】
[86] バイオポリマーおよび他の高分子量ポリマーを含むポリマーの複合体は、当技術分野でよく知られている手段(例えば、Brinkley et al., Bioconjugate Chem., 3: 2 (1992))を使用して一般的に調製される。これらの実施形態では、多糖類で一般的なように1つのタイプの反応部位が利用できることがあり、またはタンパク質で一般的なように複数のタイプの反応部位(例えば、アミン、チオール、アルコール、フェノール)が利用できることがある。標識の選択性は、適切な反応性染料の選択によって取得される。例えば、ハロアセトアミドまたはマレイミドなどのチオール選択性試薬によるチオールの修飾、または活性化エステル、アシルアジド、イソチオシアネートまたは3,5-ジクロロ-2,4,6-トリアジンなどのアミン反応性試薬によるアミンの修飾である。反応条件の注意深いコントロールにより、部分的選択性も取得されうる。ポリマーを化合物で修飾する時、化合物置換の予測程度に対して過剰の化合物が一般的に使用される。残存する未反応の化合物または化合物の加水分解生成物は、一般的に透析、クロマトグラフィーまたは沈殿によって除去される。残存する未結合の染料は、染料を複合体から溶出する溶媒を使用した薄層クロマトグラフィーによって検出されうる。すべての場合において、適切な結合率を得るために、試薬をできるだけ濃縮した状態に保つことが好ましい。
【0075】
[87] NIR染料標識複合体の検出手段および、腫瘍部位のこのような複合体によって生成されるシグナルの位置を特定し定量化するための画像分析の手段は、当技術分野で良く知られている。このような手段は、個別の機器または1つの統合機器パッケージに組み込まれている場合がある。統合機器パッケージの市販の例には、 CRi MaestroTM画像システム(例えば、MaestroTM2, MaestroTM EX, Maestro DyCETM、Cri、米国マサチューセッツ州ウォバーン)、IVIS(登録商標)スペクトル(Caliper Life Sciences、米国マサチューセッツ州ホプキントン)。さらに、使用されうる機器の例およびその使用方法は、米国特許および公開出願第6,615,063号、2008/0218732号、2008/0177140号、2004/0022731号に記述されており、図13および14にも示されている。
【0076】
[88] 本発明は新規の方法に関連するが、NIR蛍光、光学的画像の取得、および画像処理と分析の一般原則を本発明の実践に適用できる。光学的撮像技術の説明については、例えばAlfano et al., Ann. NY Acad. Sci., 820:248-270, 1997を参照のこと。
【0077】
[89] 本発明の実践に有用なNIR撮像システムには、一般に3つの基本的部品を含む:(1)
近赤外の光源または複合体のフルオロフォアに蛍光を発生させるために適切な波長の他の光源、(2) フルオロフォアの励起に使用された光から発光を分離または識別する装置、および (3) 検出システム。例えば、Weissleder et al., Nature Biotechnol., 17:375-8, 1999を参照。例えば、図13に示されているような撮像システムは、Kodak ImageStation
440撮像ステーションおよび外部の低出力励起源を使用して組み立てることができる。このような表面反射蛍光(SRF)撮像装置を使用して、本明細書に記述の発明の方法のために生体内データを生成できる。装置には、低輝度光(650 nmで1 μW/cm2)を生成する白色ハロゲン光源を含む 表面反射撮像では、蛍光色素を励起するために必要な波長の光を、ガラス圧板の上に配置された動物の表面にあて、画像はストークスシフト(「蛍光」)ライトで作られる。波長選別のために帯域フィルターを使用し得る。図14に示されるように、レーザー(737 nmで1 mW/cm.sup.2)からの高出力レーザー励起および、他の波長の光用の水銀ランプを備えたより高度なシステムでは、さらに多様なフィルターと改良されたCCDカメラも使用できる。
【0078】
[90] 一般的に、NIRフルオロフォアを使用する時、光源は単色の(または実質的に単色の)近赤外光を提供する。光源は、適切にフィルターされた白色光(例えば、広帯域光源からの帯域フィルター光)であり得る。例えば、150ワットのハロゲンランプからの光は、Omega Optical(バーモント州ブラトルバラ)から市販されている適切な帯域フィルターを通過させうる。一部の実施形態では、光源はレーザーである。例えば、Boas et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:4887-4891, 1994; Ntziachristos et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:2767-2772, 2000; Alexander, J. Clin. Laser Med. Surg., 9:416-418, 1991を参照。撮像用近赤外レーザーについての情報は、インターネット(例えば、www.imds.com; Imaging Diagnostic Systems Inc. 米国フロリダ州フォートローダデール)および他の既知のさまざまなソースから入手できる。
【0079】
[91] 高域または帯域フィルター(700 nm)を使用して、励起光からの発光を分離できる。適切な高域または帯域フィルターは、Omega Optical(バーモント州ブラトルバラ)から市販されている。蛍光色素は、1つ以上の量子ドットから成り、単一の励起波長を使用して、単一プローブまたは(異なる活性化部位を持つ)複数プローブ上の複数の異なる蛍光色素を励起することができ、一連の帯域フィルター、回折格子、または他の手段によるスペクトル分離を使用して、異なる活性化を個別に判読することができる。
【0080】
[92] 一般的に、光検出システムは、集光/画像形成および光検出/画像記録部品を含む。光検出システムは、両方の部品を取り込んだ単一の統合装置でありうるが、集光/画像形成と光検出/画像記録部品は別々に説明する。しかし、記録装置は、画像の代わりに単一(時変)スカラー強度を単に記録する場合がある。例えば、カテーテルベースの記録装置は、複数部位からの情報を同時に記録(すなわち画像)できるか、または(蛍光透視法で見ることのできる、カテーテル先端のX線を通さないマーカーなどの)他の手段によって対応する場所のスカラーシグナル強度を報告できる。
【0081】
[93] NIR蛍光および他の撮像への断層撮影アプローチも使用し得る。一般的に、断層撮影法は、均一散乱環境に配置された動物を通過するように方向付けられたレーザー光パルスを利用し、動物を通過した散乱蛍光が多くの位置で記録される。次に、高度なモデリングアルゴリズムを適用して、媒体中の励起光源の位置を特定する。FMT(蛍光媒介断層撮影法)と呼ばれるこのアプローチは、Ntziachristos et al., Molecular Imaging, 1(2):82-88, 2002 および Ntziachristos et al., Nature Medicine, 8:757-760, 2002に記述されている。
【0082】
[94] 特に有用な集光/画像形成部品は、内視鏡である。腹膜(Gahlen et al., J. Pho
tochem. Photobiol., B 52:131-135, 1999)、卵巣癌(Major et al., Gynecol. Oncol.,
66:122-132, 1997)、結腸(Mycek et al., Gastrointest. Endosc., 48:390-394, 1998; Stepp et al., Endoscopy, 30:379-386, 1998)、胆管(Izuishi et al., Hepatogastroenterology, 46:804-807, 1999)、胃(Abe et al., Endoscopy 32:281-286, 2000)、膀胱(Kriegmair et al., Urol. Int., 63:27-31, 1999; Riedl et al., J. Endourol., 13:755-759, 1999)、および脳(Ward, J. Laser Appl., 10:224-228, 1998)を含む、多くの組織および臓器の生体内光学的撮像に使用されている内視鏡装置および技術は、本発明の実践に使用され得る。蛍光内視鏡も、当技術分野で知られている(Bhunchet et al.,
Gastrointest. Endosc., 55, 562-571, 2002; Kobayashi et al., Cancer Lett., 165, 155-159, 2001)。当業者であれば、例えば、特定の臓器または組織領域の撮像に使用するための発光および検出スペクトルを最適化するために、必要な任意の変更を認識・実施することができるであろう。
【0083】
[95] 本発明で有用な集光部品の他のタイプは、光ファイバー装置などのカテーテルベースの装置である。このような装置は、血管内の撮像に特に適している。例えば、Tearney et al., Science, 276:2037-2039, 1997; Boppart et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:4256-4261, 1997を参照。
【0084】
[96] フェーズドアレイ技術(Boas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:4887-4891, 1994; Chance, Ann. NY Acad. Sci., 838:29-45, 1998)、拡散光トモグラフィー(Cheng et al., Optics Express, 3:118-123, 1998; Siegel et al., Optics Express, 4:287-298, 1999)、生体顕微鏡検査(Dellian et al., Br. J. Cancer, 82:1513-1518, 2000; Monsky et al, Cancer Res., 59:4129-4135, 1999; Fukumura et al., Cell, 94:715-725, 1998)、および共焦点像(Korlach et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96:8461-8466, 1999; Rajadhyaksha et al., J. Invest. Dermatol., 104:946-952, 1995; Gonzalez et al., J. Med., 30:337-356, 1999)を含む他の撮像技術も、本方法の実践に採用されうる。
【0085】
[97] 任意の適切な光検出/画像記録部品(例えば、電荷結合素子(CCD)システムまたは写真フィルム)を、本発明に使用しうる。光検出/画像記録部品の選択は、使用される集光/画像形成部品のタイプを含む要因に依存する。適切な部品を選択して近赤外撮像システムに組み立て、システムを操作することは、当業者の能力の範囲内である。
【0086】
[98] 検出可能な放射線を放射するまたは放射を生じさせ、生体内の撮像に対応する、当業者に知られている任意の放射性核種が、上述のEMTステータス検出複合体に対する放射性核種レポーター分子として使用されうる。陽電子放出断層撮影(PET)または単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)撮像を使用して次に検出され得る、高度に特異的で高感度の標識が放射性核種によって提供される。本発明の放射性核種レポーターは、131I、125I、123I、99mTc、18F、68Ga、67Ga、72As、89Zr、64Cu、62Cu、111In、203Pb、198Hg、11C、97Ru、201Tl、90Y、47Sc、51Cr、177mSn、167Tm、188Re、177Lu、199Au、203Pbおよび141Ceから成るグループから選択された放射性核種を含みうる。
【0087】
[99] 放射性同位元素によって放射されるガンマ線光子のエネルギーは、各同位体に固有である。その生成時、これらのガンマ線は「完全エネルギー」または「一次」ガンマ線と呼ばれる。ガンマカメラで画像を形成するのに十分な量の放出された光子が、患者の身体から出るのに十分なエネルギーを持つには、エネルギーが約60 keV以上である必要がある。エネルギーが60 〜 500 keVのガンマ線は、軟組織に吸収される前に通常、比較的長距離を移動する。一般的に使用される放射性トレーサーでは、ガンマ線エネルギーは約511 keVと高いことがある。一例として、核医学でよく使用される同位体のテクネチウム99 mが崩壊する時、89%の間、完全エネルギーの140-keVガンマ線が放出される。天然存在度
(「存在度」)または率は、放射性同位体の核の崩壊または分裂が対象光子(この例では140-keV完全エネルギーのガンマ線光子)の生成を引き起こす時間の割合を指す。一般的に使用される別の放射性同位体であるインジウム111は、存在度89.6%で172-keVの完全エネルギーガンマ線を放出し、存在度93.9%で247-keVの完全エネルギーガンマ線を放出する。
【0088】
[100] ガンマ線を放出する放射性同位体は、特徴的なX線も放出する。放出されたX線は、そのエネルギーが関与する特定の元素に特徴的なことから、「特徴的」だと説明される。核医学で使用される放射性同位体からの特徴的X線放出は、一般的には低エネルギー(すなわち約15〜30 keV)である。例えば、テクネチウム-99mの放射性崩壊は、上記に示された140 keVのガンマ線に加えて、約19 keVのテクネチウムに特徴的なX線を7.5%の存在率でもたらす。インジウム111の放射性崩壊は、83.5%の存在率で約24 keVのカドミウムに特徴的なX線をもたらす。約20〜30keVの特徴的X線は通常、軟組織に吸収される前にわずか約30ミリメートル以下を移動する。結果として、これらのX線は実質的にすべて脂肪、筋肉、および皮膚に吸収されるため、ガンマカメラでは画像を生成できないが、NEOPROBE(登録商標)装置(オハイオ州コロンバスのNeoprobe Corporation製)によって検出でき、これは例えばヨード125からの27-keVのX線と35-keVのガンマ線両方を検出する。
【0089】
[101] 使用される標識は、使用される検出手段および画像分析手段によって選択される。例えば、インジウム-111(111In)、テクネチウム-99m(99m Tc)、またはヨード131(131I)などの放射性標識を、平面スキャンまたは単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)に使用しうる。また、フッ素-18などの陽子放出標識は、陽子放出断層撮影(PET)で使用されうる。この目的に対する適切で追加的な陽子放出放射性核種には、11C、15O、13N、75Br、122I、124I、82Rb、68Ga、および62Cuを含む。このような標識は、標的分子の原子との直接的共有結合によって複合体に取り込まれるか、または標識は、キレート構造を通して、またはマンニトール、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、酒石酸塩、および同類のものなどの補助分子を通して、標的分子と非共有結合的または共有結合的に会合していることがある。標識と標的分子の間を空間的に近接させるためにキレート構造が使用されている場合は、キレート構造は標的分子と直接会合しているか、またはマンニトール、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、酒石酸、および同類のものなどの補助分子を通して標的分子と会合し得る。
【0090】
[102] 適切な任意のキレート構造を使用して、共有結合または非共有結合性会合を通して、放射性核種と標的分子の間を空間的に近接させうる。このようなキレート構造の多くが、当技術分野で知られている。好ましくは、キレート構造は、N2S2構造、NS3構造、N4構造、イソニトリル含有構造、ヒドラジン含有構造、HYNIC(ヒドラジノニコチン酸)基含有構造、2-メチルチオールニコチン酸基含有構造、カルボキシレート基含有構造、および同類のものである。一部の例では、放射性核種は標的部分の原子に(例えば、さまざまな部分の酸素原子に)直接キレートするので、キレート化は、別のキレート構造を含むことなく達成しうる。
【0091】
[103] キレート構造、補助分子、または放射性核種は、心血管組織の標的部位と標的分子の相互作用を妨げない、標的分子の任意の位置に空間的に近接して配置することができる。したがって、キレート構造、補助分子、または放射性核種は、共有結合的にまたは非共有結合的に、受容体結合部分を除いた標的分子の任意の部分と会合しうる。
【0092】
[104] 特定の放射性核種のリガンドへのキレート化、会合、または付着を生じさせるかまたは最適化する、既知の手順を使って、標的分子から空間的に近接して放射性核種を配置しうる。例えば、放射性核種が123Iの時、ハロゲンまたは有機金属基および同類の物に対する、クロラミンTでの直接放射性ヨウ素化、放射性ヨウ素化交換などの既知の放射性
ヨウ素化手順に従って、造影剤を標識しうる。放射性核種が99mTcの場合、99mTcをリガンド分子に付着させるために適した任意の方法を使用して、造影剤を標識しうる。好ましくは、放射性核種が99mTcの場合、マンニトール、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、酒石酸、および同類のものなどの補助分子が、キレート構造の有無にかかわらず標識反応混合物に含まれる。さらに好ましくは、マンニトールおよび標的分子の存在下99mTcOをスズで還元することにより、99mTcは、標的分子に空間的に近接した位置に配置される。酒石酸スズ、または亜ジチオン酸ナトリウムなどの非スズ還元剤を含む他の還元剤も、本発明の心血管造影剤を作るために使用されうる。
【0093】
[105] 一般的に、標識方法論は、放射性核種の選択、標識される部分および研究されている臨床状態によって異なる。99mTcおよび111Inを使用した標識方法は、例えば、Peters, A. M. et al., Lancet 2 946-949 (1986); Srivastava, S. C. et al., Semin. Nrcl. Med 14(2):68-82 (1984), Sinn, H. et al., Nucl. Med. (Stuttgart) 13:180, 1984), McAfee, J. G. et al., J. Nucl. Med. 17:480-487, 1976, McAfee, J. G. et al., J. Nucl. Med. 17:480-487, 1976; Welch, M. J. et al., J. Nucl. Med. 18:558-562, 1977, McAfee, J. G., et al., Semin. Nucl. Med. 14(2):83, 1984; Thakur, M. L., et al., Semin. Nucl. Med. 14(2):107, 1984; Danpure, H. J. et al., Br. J. Radiol., 54:597-601, 1981; Danpure, H. J. et al., Br. J. Radiol. 55:247-249, 1982; Peters, A. M. et al., J. Nucl. Med. 24:39-44, 1982, Gunter, K. P. et al., Radiology 149:563-566, 1983, およびThakur, M. L. et al., J. Nucl. Med. 26:518-523, 1985に記述されている。
【0094】
[106] 標識反応の完了後、Sep Packまたは高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)などのクロマトグラフィーステップの1つ以上を使用して、反応混合物を随意に精製しうる。精製ステップを実施する場合、任意の適切なHPLCシステムを使用することができ、HPLCステップから得られたレポーター複合体の収率は、当技術分野で知られているように、HPLCシステムのパラメーターを変えることによって最適化されうる。本発明のレポーター複合体の収率を最適化するために、任意のHPLCパラメーターを変化させうる。例えば、pHを変化させ得る(例えば、本発明のレポーター複合体に対応するピークの溶出時間を短縮するには、pHを上げる)。
【0095】
[107] 研究されている腫瘍の性質、患者のサイズ、および当業者には明らかなその他の要因を考慮して、信頼性ある画像を与える量の放射性核種標識複合体製剤を投与する。レポーター部分が金属を含む場合、一般には、患者の体重1キログラム当たり0.001 〜5.0ミリモルのキレート金属イオンの用量が信頼性のある画像を得るために有効である。PETでは、トレーサー化合物の適量は、0.1 〜100 mCi、好ましくは1〜 20 mCiである。
【0096】
[108] 放射性標識複合体の検出手段および、腫瘍部位のこのような複合体によって生成されるシグナルの位置を特定し定量化するための画像分析の手段は、当技術分野で良く知られている。このような手段は、個別の機器または1つの統合機器パッケージに組み込まれている場合がある。市販品の例には、Neoprobe Corporation(オハイオ州コロンバス)製のガンマ検出装置またはプローブ、例えばMediso (ハンガリー・ブタペスト)、GE HealthCare、Philips、GammaMedica (カリフォルニア州ノースリッジ、BioScan Inc.(ワシントンDC、ワシントン)およびSiemens製のSPECTスキャナー、および例えばPositron Corporation (インディアナ州フィッシャーズ)、Phillips, Cti Molecular Imaging(テネシー州ノックスビル)、Crystal Clear Collaboration(http://crystalclear.web. cern.ch/crystalclear)およびSiemens製のPETスキャナーが含まれる。使用しうる機器の例およびその使用方法は、米国特許第4,782,840号、 4,801,803号、4,893,013号、5,694,933号や、例えば以下の文献にも記述されている:Ter-Pogossian, M.M. et al. (1975). "A
positron-emission transaxial tomograph for nuclear imaging (PET)". Radiology114
(1): 89-98; Phelps, M.E.et al. (1975). "Application of annihilation coincidence detection to transaxial reconstruction tomography". Journal of Nuclear Medicine 16 (3):210-224; and Sweet, W.H. and G.L. Brownell (1953). "Localization of brain
tumors with positron emitters". Nucleonics 11: 40-45. 市販の小動物用PET撮像システムは、例えばLarobina, M. et al. Current Medical Imaging Reviews, 2006, 2, 187-192に記述されている。
【0097】
[109] 本明細書に記述の本発明の任意の方法または組成物の別の実施形態では、「EMTステータス検出複合体」はプローブまたは複合体で、ここでは、EMTステータスバイオマーカーに特異的に結合できる抗体の代わりに、EMTステータスバイオマーカーに特異的に結合できる別の「標的担体分子」が使用される。この「標的担体分子」は、患者の腫瘍内に特異的結合対を持つ任意の生物学的または非生物学的分子でありえ、腫瘍に到達するために循環血液またはリンパ中を比較的自由に移動できる。「標的担体分子」の例には、AFFIBODY(登録商標)分子、ペプチド、アプタマーまたはE-カドヘリンなどのEMTステータスバイオマーカーに特異的に結合するペプチド模倣薬を含む。このような「標的担体分子」は、抗体と同様の方法で、レポーター分子(例えば、NIR染料または放射性核種)で標識できる。
【0098】
[110] 特に好ましい別の「標的担体分子」の1つは、AFFIBODY(登録商標) 分子である(Affibody AB, Sweden) (Nygren P.A., (2008) FEBS J. 275(11):2668-76; Nord, K., et al. (1997) Nature Biotechnol. 15: 772-777; Tolmachev V. et al. (2007) Expert Opin Biol Ther. 2007;7(4):555-68.; Lendel C., et al. (2006) J Mol Biol. 2006;359(5):1293-304)。AFFIBODY(登録商標) 分子は、遺伝子組み換えタンパク質工学原理を使用して開発された、非免役グロブリン結合タンパク質であり、骨格として使用される小さな(6 kDa)非システイン3重らせん束ドメインのライブラリから機能的に選択される。抗体と同様に、これは望ましい任意のエピトープまたは抗原に対して容易に選択できるものであり、そのためEMTバイオマーカーの細胞外ドメインに結合するAFFIBODY(登録商標) 分子の調製は、当業者には良く知られている日常的な手順である(適用方法については、例えば国際特許出願WO 05/003156、WO 2009/019117およびWO 05/000883を参照。これらは例えば、タンパク質HER2、IGF-1Rおよびインスリンに結合する物を含む、AFFIBODY(登録商標) 分子の調製および使用方法を開示している)。高親和性AFFIBODY(登録商標) 分子は、バイオセパレーション、診断、機能的阻害、ウィルス標的化、および生体内の腫瘍撮像/治療などのさまざまな用途で(Orlova A., et al. (2007) Cancer Res. 67(5):2178-86; Lundberg E., et al. (2007) Journal of Immunological Methods 319:53-63; Orlova A., et al. (2006) Cancer Res. 66(8):4339-48; Tolmachev V., et al. (2007) Cancer Res. 2007 Mar 15;67(6):2773-82; Cheng Z., et al. (2008) J Nucl Med. 49(5):804-13; Engfeldt T., et al. (2007) Eur J Nucl Med Molecular Imaging, 34(5):722-33;
Engfeldt T. et al. (2007) Eur J Nucl Med Molecular Imaging , 2007, Nov;34(11):1843-53.; Kramer-Marek G., et al (2007) Eur J Nucl Med Molecular Imaging, Dec 22)、多数の標的に対して選択されている(例えば、EGFR、フィブリノーゲン、HER-2、HAS、IgA、IgE、IgM、IL-8、インスリン、TNF-a、トランスフェリン、トランスサイレチン)。サイズが小さいために、化学合成製造経路で機能的AFFIBODY(登録商標) 分子を製造することも可能であり、これはさまざまな標識および放射性核種キレートの部位特異的導入に有利である。AFFIBODY(登録商標) 分子のサイズの小ささによって、生体内で使用された時に、迅速な腫瘍標的化と血液循環から迅速なクリアランスの両方を含む好ましい薬物動態特性が与えられ、これは寿命の短い放射性核種がレポーター分子として使用された場合、本発明の方法で使用した時に有利である(例えば、PET撮像用68Gaまたは18F)。
【0099】
[111] したがって本発明は、患者の腫瘍細胞のEMTステータスを in situで決定する方法も提供し、これには (a) EMTステータスのバイオマーカーに結合するAFFIBODY(登録商
標) 分子、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(b) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーと接触するように、前述の複合体を腫瘍患者に導入すること、(c) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を用いること、および (d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析の手段を用いることを含み、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す。
【0100】
[112] 本発明は、患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法も提供し、ここで患者は癌の動物モデルであり、この方法には以下を含む:(a) 薬剤が腫瘍細胞に接触するように、前述の患者に試験薬を導入すること、(b) EMTを受けている腫瘍細胞を誘導する能力を持つ薬剤に患者を接触させること、(c) EMTステータスバイオマーカーに結合するAFFIBODY(登録商標) 分子、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(d) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を患者に導入すること、(e) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出するための手段を採用すること、(f) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析手段を使用すること、ここで陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞を示す、(g) 同様の治療を受けたが (a) にあるような試験薬では治療されなかった患者によって生成されたシグナルを (f) のシグナルと比較し、それによって前述の試験薬が、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害できる薬剤であるかどうかを特定すること。
【0101】
[113] 本発明は、患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法も提供し、これには以下を含む:(a) 薬剤が腫瘍細胞に接触するように、前述の患者に試験薬を導入すること、 (b) EMTステータスバイオマーカーに結合するAFFIBODY(登録商標) 分子、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、(c) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を患者に導入すること、(d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出するための手段を採用すること、(e) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化するために画像分析手段を使用すること、ここで陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞を示す、(f)
同様の治療を受けたが (a) にあるような試験薬では治療されなかった患者によって生成されたシグナルを (e) のシグナルと比較し、それによって前述の試験薬が、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害できる薬剤であるかどうかを特定すること。
【0102】
[114] 本発明は、患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法で使用するために、EMTステータスバイオマーカーの細胞外領域に結合するAFFIBODY(登録商標) 分子および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を含む組成物も提供する。好ましい実施形態では、AFFIBODY(登録商標) 分子およびレポーター分子は共有結合している。EMTステータスバイオマーカーは、上皮または間葉バイオマーカーであり得る。適切なEMTステータスバイオマーカーの例が本明細書にリストされている。1つの実施形態では、EMTステータスバイオマーカーはE-カドヘリンである。レポーター分子は、例えばNIR染料または放射性核種である場合があり、そのうちいくつかの適切な例が本明細書にリストされている。1つの実施形態では、レポーター分子はAlexa Fluor 680蛍光染料を含む。
【0103】
[115] EMSステータス検出複合体は、腸内または非経口投与のどちらでも、体内への取
り込みで知られている任意の手段で患者に導入することができ、これには経口または静脈内投与を含むがこれに限定されない。1つの形態では、EMSステータス検出複合体は、針を使った静脈(患者がマウスまたはラットの場合は、尾静脈など)への注射によって、静注で患者に導入される。血液循環内に一旦入ると、複合体は標的EMTステータス抗原に会合するまで比較的自由に移動し、ここで複合体は標的と非共有結合で会合し、正常な身体過程によって排泄されるまで腫瘍部位に隔離される。患者がマウス異種移植モデルの場合、複合体の投与量は約5 μg〜約100 μgの間である。大型動物に対しては、動物の体重に比例して、対応するより多くの量が使用される。
【0104】
[116] 別の実施形態は、複合体が標的EMTステータス抗原と接触するのに十分な期間、患者をインキュベートするステップをさらに含む。さらに具体的には、期間は少なくとも、30分、90分、2時間、6時間、24時間、48時間、3日、4日、7日、9日またはそれ以上である。
【0105】
[117] 追加的な実施形態では、画像分析手段を使用してシグナルの位置を特定して定量化するステップは、データをコンピュータプロセッサーに送信するステップ(ここでデータはEMSステータス検出複合体からの検出可能なシグナルを表す)、および標的EMTステータス抗原の存在、量または位置を示す結果を判断するためにデータの分析を行うステップを含む。
【0106】
[118] 別の実施形態は、さらに、視覚的に結果を表示する表示装置またはプリントアウトを含む。別の実施形態は、患者内の腫瘍のEMTステータスを特定する方法を提供し、本方法は、a) NIR染料および標的EMTステータス抗原に結合する抗体を含む染料複合体を提供すること、b) 染料複合体を患者に導入して接触された患者を形成すること、c) 接触された患者に適切な波長を照射して照射患者を形成すること、およびd) 腫瘍EMTステータスが特定される照射患者を観察することを含み、ここで標的EMTステータス抗原は細胞外ドメインを持つEMTステータスバイオマーカーである。
【0107】
[119] EMSステータス検出複合体がNIRレポーターを含み、検出可能なシグナルを精製するのに照射が必要な場合、患者は複合体が体内に導入された後、任意の時点で照射され得る。1つの形態では、身体に対して注射から30分後、90分後、2時間後、6時間後、24時間後、48時間後、3日後、4日後、7日後、9日後またはそれ以上の時点で照射される。照射および可視化に使用される機器は、当技術分野で知られている非生体内または生体内撮像用の任意の機器であり得る。
【0108】
[120] このEMTステータス検出複合体の有利な特性および簡易さから、これらは非侵襲的生体内撮像用キットの作成に特に有用である。1つの実施形態では、キットはこのEMTステータス検出複合体および生体内撮像のための指示を含む。別の実施形態において、キットは反応性NIRレポーター分子、染料または粒子、抗EMTステータスバイオマーカー抗体、反応性レポーター分子を抗EMTステータスバイオマーカー抗体に結合するための指示、および生体内撮像用の指示を含む。また別の実施形態では、キットは反応性レポーター分子、反応性レポーター分子を抗EMTステータスバイオマーカー抗体に結合するための指示、および生体内撮像用の指示を含む。1つの特定の実施形態は、患者内の標的EMTステータス抗原の撮像用キットを提供し、これはa) NIR染料および標的EMTステータス抗原に結合する抗体を含む染料複合体、およびb) 標的EMTステータス抗原の撮像のための指示を含む。さらに具体的には、キットは針、撮像ソフトウェア、試薬、緩衝液、希釈剤、賦形剤、追加的染料または抗体の少なくとも1つをさらに含む。キットの好ましい実施形態では、標的EMTステータス抗原はE-カドヘリンである。
【0109】
[121] 外来性薬剤によるEMTの誘導が必要な本発明の任意の方法では、腫瘍細胞(例え
ば、異種移植動物モデルの腫瘍細胞)は、特定の腫瘍細胞タイプに対してEMTを誘導することが知られている任意の薬剤を使用して、誘導されてEMTを受けることがある。例えば、タンパク質TGF-βを利用しうる。本明細書で使用される場合、「TGFβ」は、TGFβ-1、TGFβ-2またはTGFβ-3(Schmierer, B. and Hill, C. (2007) Nat Rev Mol Cell Biol. 8(12):970-82)またはそのヘテロ二量体を意味する。TGF-βは好ましくはヒト型であるが、腫瘍細胞でのEMTの促進が活性化されている他の種TGF-βも使用しうる(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、ニワトリ、ウシ)。使用されうる追加的EMT誘導剤には、例えば、タンパク質HGF(Lamorte, L. et al (2002)Mol Biol Cell. 13(5): p. 1449-61)、ヘッジホッグ(Feldmann, G. et al (2007) Cancer Res. 67(5): p. 2187-96)、Wnt((Yook, J. et al (2006) Nat Cell Biol. 8(12): p. 1398-406)、IL-1 (Chaudhuri, V.
et al (2007) J Cutan Pathol. 34(2): p. 146-53)、オンコスタチンM (Pollack, V. et al (2007) Am J Physiol Renal Physiol. 293(5): p. F1714-26)、EGF(Solic, N. and Davies, D. (1997) Exp Cell Res. 234(2): p. 465-76)、アンフィレグリン(Chung,
(2005) E. Exp Cell Res. 309(1): p. 149-60)、HB-EGF(Wang, F. et al (2007) Cancer Res. 67(18): p. 8486-93)、MSP(Camp, E., (2007) Cancer. 109(6): p. 1030-9)、Wnt5a(Dissanayake, S. (2007) J Biol Chem. 282(23): p. 17259-71; Ripka, S. (2007) Carcinogenesis. 28(6): p. 1178-87)、およびTNF-α(Bates, R. and Mercurio, A. (2003) Mol Biol Cell. 14(5): p. 1790-800)を含む。または腫瘍細胞は、細胞がEMTを受けるようにするタンパク質(例えば、Snail、Zeb1またはTGF-β)を誘導的に発現するように操作されうる。誘導的発現は、例えば、Snailのレベル、したがってEMT誘導がドキシサイクリンなどのテトラサイクリン類似体の有無によって調節されうるTet-OnまたはTet-Offシステムでありうる(例えば、Guaita, S. et al (2002) J. Biol Chem. 277(42):39209-39216参照)。動物モデルで使用されることがあり、細胞にEMTを受けさせるタンパク質を誘導的に発現するように操作された腫瘍細胞の例には、NSCLC細胞株H358、乳癌細胞株MCF7(Hiscox, X. (2006) Int J Cancer. 118(2): p. 290-301)、T47D((Jorcyk,
C. et al (2006) Cytokine. 33(6): p. 323-36)、およびMDA-MB-468(Lester, R. (2007) J Cell Biol. 178(3): p. 425-36)、膵臓癌細胞株L3.6pl(Yang, A. et al (2006) Cancer Res. 66(1): p. 46-51)、PANC-1、COLO-357、およびIMIM-PC1(Ellenrieder, V. (2001) Cancer Res. 61(10): p. 4222-8)、および結腸癌細胞株HT29(Yang, L. (2006) Cell. 127(1): p. 139-55)、LIM 1863(Bates, R. et al (2004) Exp Cell Res. 299(2):315-24)、およびKM12L4(Yang, A. (2006) Clin Cancer Res. 12(14 Pt 1):4147-53)を含む。例えば、EMTの誘導性H358腫瘍細胞の作り方および使用方法の説明については、米国特許出願第61/068,612号を参照のこと。
【0110】
[122] その発現レベルまたは活性が腫瘍細胞のEMTステータスを示す(すなわちEMTステータスバイオマーカー)、数多くのタンパク質バイオマーカーが知られている(例えば、米国特許出願公報2007/0212738、米国特許出願第60/923,463号、米国特許出願第60/997,514号を参照)。このようなバイオマーカータンパク質は、EMTの特定の段階との特徴的会合ために、上皮または間葉として分類される傾向がある。本明細書に記述されている任意の方法または組成物では、発現レベルがサンプル腫瘍細胞のEMTステータスを示すEMTステータスバイオマーカーは、細胞外ドメインを持つ任意の上皮細胞バイオマーカーでありうる。上皮細胞バイオマーカーには、例えば、E-カヘドリン(例えばヒトE-カヘドリン、CDH-1、NCBI GeneID999番)、サイトケラチン8、サイトケラチン18、P-カヘドリン、erbB3、Brk、γ-カテニン、α1-カテニン、α2-カテニン、α3-カテニン、コネキシン31、プラコフィリン3、ストラチフィン1、ラミニンα-5、およびST14を含む。本発明の任意の方法に使用され得る追加的上皮マーカーの例には、ホスホ-14-3-3エプシロン、14-3-3ガンマ (KCIP-1)、14-3-3シグマ(ストラチフィン)、14-3-3ゼタ/デルタ、ホスホ-セリン/トレオニンホスファターゼ2A、4F2hc (CD98抗原)、アデニンヌクレオチド輸送体2、アネキシンA3、ATP シンターゼβ鎖、リン酸-インスリン受容体基質p53/p54、バシジン (CD147 抗原)、リン酸-CRK-関連基質 (p130Cas)、Bcl-X、リン酸-P-カドヘリン、リン酸-カドヘリ
ン (CaM)、カルパイン-2 触媒サブユニット、カテプシンD、コフィリン-1、カルパイン小サブユニット1、カテニンβ-1、カテニンδ-1 (p120カテニン)、シスタチンB、リン酸-DAZ-関連タンパク質1、カルボニル還元酵素 [NADPH]、ダイアナファス関連フォルミン1 (DRF1)、デスモグレイン-2、延長因子 1-δ、リン酸-p185erbB2、エズリン (p81)、リン酸焦点接着キナーゼ1、リン酸-p94-FER (c-FER)、フィラミンB、リン酸-GRB2-関連結合タンパク質1、Rho-GDI α、リン酸-GRB2、GRP 78、グルタチオンS-トランスフェラーゼP、3-ヒドロキシアシル-CoA 脱水素酵素、HSP 90-α、HSP70.1、eIF3 p110、eIF-4E、白血球エラスターゼ阻害剤、インポーチン-4、インテグリンα-6、インテグリンβ-4、リン酸-サイトケラチン17、サイトケラチン19、サイトケラチン7、カゼインキナーゼI, α、タンパク質キナーゼC, δ、ピルビン酸キナーゼ、アイソザイムM1/M2、リン酸-エルビン、LIMおよびSH3ドメインタンパク質1 (LASP-1)、4F2lc (CD98 軽鎖)、L-乳酸脱水素酵素A鎖、ガレクチン-3、ガレクチン-3 結合タンパク質、リン酸-LIN-7 相同体C、MAP (APC-結合タンパク質EB1)、マスピン前駆体 (プロテアーゼ阻害剤5)、リン酸-Met チロシンキナーゼ(HGF 受容体)、混合系統白血病タンパク質2、モノカルボン酸輸送体4、リン酸-C-Myc 結合タンパク質(AMY-1)、ミオシン-9、ミオシン軽ポリペプチド6、ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ、ニバン様タンパク質 (Meg-3)、オルニチン・アミノトランスフェラーゼ、リン酸-オクルジン、ユビキチン・チオエステラーゼ、PAFアセチルヒドロラーゼIB βサブユニット、リン酸-分割異常3 (PAR-3)、リン酸-プログラム細胞死6-結合タンパク質、リン酸-プログラム細胞死タンパク質6、タンパク質ジスルフィド-イソメラーゼ、リン酸-プラコフィリン-2、リン酸-プラコフィリン-3、タンパク質ホスファターゼ1、ペロキシレドキシン5、プロテアソーム活性化因子複合体サブユニット1、プロチモシンα、レチノール酸誘導タンパク質3、リン酸DNA修復タンパク質REV1、リボヌクレアーゼ阻害剤、RuvB様1、S-100P、S-100L、カルサイクリン、S100C、リン酸-Sec23A、リン酸-Sec23B、リソソーム膜タンパク質II (LIMP II)、p60-Src、リン酸-アンプラキシン (EMS1)、SLP-2、γ-シヌクレイン、腫瘍カルシウムシグナル変換器1、腫瘍カルシウムシグナル変換器2、トランスゲリン-2、トランスアルドラーゼ、チューブリンβ-2 鎖、翻訳的に制御された (TCTP)、組織トランスグルタミナーゼ、膜貫通タンパク質Tmp21、ユビキチン結合酵素
E2 N、UDP-グルコシルトランスフェラーゼ1、リン酸-p61-Yes、リン酸密着結合タンパク質ZO-1、AHNAK (デスモヨーキン)、リン酸-ATPシンターゼβ鎖、リン酸-ATP シンターゼδ、低温ショックドメインタンパク質E1、デスモプラキンIII、プレクチン1、リン酸-ネクチン2 (CD112抗原)、リン酸-p185-Ron、リン酸-SHC1、E-カドヘリン、Brk、γ-カテニン、α1-カテニン、α2-カテニン、α3-カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、ストラタフィン1、アミニンα-5およびST14、および当技術分野で知られている他の上皮バイオマーカーを含む(例えば米国特許出願公報2007/0212738、米国特許出願第60/923,463号、米国特許出願第60/997,514号を参照)。さらに、細胞外ドメインを持っている場合は、当技術分野で知られている他の任意の上皮細胞バイオマーカー(例えば、米国特許出願公報2007/0212738、米国特許出願第60/923,463号、米国特許出願第60/997,514号を参照)であって本明細書に記述されている/記述されていない内容を本明細書に記述の発明の方法に使用しうる。
【0111】
[123] 本明細書に記述されている任意の方法または組成物では、発現レベルが腫瘍細胞のEMTステータスを示すEMTステータスバイオマーカーも、細胞外ドメインを持つ任意の間葉細胞バイオマーカーでありうる。間葉バイオマーカーには、例えば以下を含む:MHCクラスI抗原A*1、アシル-CoAデサチュラーゼ、LANP様タンパク質 (LANP-L)、アネキシンA6、ATPシンターゼγ鎖、BAGファミリー分子シャペロン調節遺伝子-2、リン酸-水疱性類天疱瘡抗原、リン酸-タンパク質C1orf77、CDK1 (cdc2)、リン酸-クラスリン重鎖1、コンデンシン複合体サブユニット1、3,2-トランス-エノイル-CoAイソメラーゼ、DEAH- ボックスタンパク質9、基本相同体のリン酸エンハンサー、リン酸-フィブリラリン、GAPDH筋肉、GAPDH肝臓、シナプス糖タンパクSC2、リン酸-ヒストンH1.0、リン酸-ヒストンH1.2、リン酸-ヒストンH1.3、リン酸-ヒストンH1.4、リン酸-ヒストンH1.5、リン酸-ヒストンH1x、
リン酸-ヒストンH2AFX、リン酸-ヒストンH2A.o、リン酸-ヒストンH2A.q、リン酸-ヒストンH2A.z、リン酸-ヒストンH2B.j、リン酸-ヒストンH2B.r、リン酸-ヒストンH4、リン酸-ヒストン-17様3、リン酸-HMG-14、リン酸-HMG-17、リン酸-HMGI-C、リン酸-HMG-I/HMG-Y、リン酸-甲状腺受容体結合タンパク質7 (TRIP7)、リン酸-hnRNP H3、hnRNP C1/C2、hnRNP F、リン酸-hnRNP G、eIF-5A、NFAT 45 kDa、インポーチンβ-3、cAMP-依存性PK1a、ラミンB1、ラミンA/C、リン酸ラミンα-3 鎖、L-乳酸脱水素酵素B 鎖、ガレクチン-1、リン酸-Fez1、ヒアルロナン結合タンパク質1、リン酸-微小管アクチン架橋因子1、黒色腫関連抗原4、マトリン-3、リン酸キャリアタンパク質、ミオシン-10、リン酸-N-アシルノイラミン酸シチジルトランスフェラーゼ、リン酸-NHP2様タンパク質1、H/ACAリボ核タゾパク質サブユニット1、核小体リン酸化タンパク質p130、リン酸-RNA結合タンパク質ノバ-2、ヌクレオフォスミン (NPM)、NADH-ユビキノン酸化還元酵素39 kDa サブユニット、リン酸-ポリアデニル酸結合タンパク質2、プロヒビチン、プロヒビチン-2、スプライシング因子Prp8、ポリピリミジン管結合タンパク質1、パラチモシン、Rab-2A、リン酸-RNA結合タンパク質 Raly、推定RNA結合タンパク質3、リン酸-60S リボソームタンパク質L23、hnRNP A0、hnRNP A2/B1、hnRNP A/B、U2小核リボ核タンパク質B、リン酸-リアノジン受容体3、リン酸-スプライシング因子3A サブユニット2、snRNPコアタンパク質D3、ネスプリン-1、チロシン-tRNAリガーゼ、リン酸-タンキラーゼ1-BP、チューブリンβ-3、アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ、リン酸-bZIP増強因子BEF (Aly/REF; Tho4)、ユビキチン、ユビキチンカルボキシル-末端加水分解酵素5、ユビキノール-チトクロームc還元酵素、液胞タンパク質分類16、リン酸-亜鉛フィンガー・タンパク質64、リン酸-AHNAK (デルモヨキン)、ATP シンターゼβ鎖、ATPシンターゼδ鎖、リン酸-低温ショックドメインタンパク質 E1、リン酸-プレクチン1、ネクチン2 (CD112 抗原)、p185-Ron、SHC1、ビメンチン、フィブロネクチン、フィブリリン-1、フィブリリン-2、コラーゲンα-2(IV)、コラーゲンα-2(V)、LOXL1、ニドゲン、C11orf9、テネイシン、N-カドヘリン、胎児性 EDB+ フィブロネクチン、チューブリンα-3およびエピモルフィン。
【0112】
[124] 米国特許出願公報2007/0212738では、本明細書の上記にリストされている多くのバイオマーカーは、EMTに発現レベルが変化したとして特定されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる(米国特許出願公報2006/0211060(2006年3月16日出願)、Thomson, S. et al. (2005) Cancer Res. 65(20) 9455-9462、およびYauch, R.L. et al. (2005) Clin. Can.Res. 11(24) 8686-8698)。
【0113】
[125] 本発明の方法または組成物に使用されうる追加的EMTステータスバイオマーカーには、上皮バイオマーカーERB-B3 (例えば、ヒトERBB3 (v-erb-b2赤芽球性白血病ウィルス癌遺伝子相同体3)、NCBI遺伝子ID 番号2065)、S100-P (例えばヒトS100P (S100カルシウム結合タンパク質P)、NCBI遺伝子ID番号6286)、S100-A6 (例えば、ヒトS100A6 (S100カルシウム結合タンパク質A6)、NCBI遺伝子ID 番号6277)、TACD1 (例えば、ヒトEPCAM (上皮細胞接着分子)、NCBI遺伝子ID 番号 4072)、CD98 (例えば、ヒトSLC3A2 (溶質担体ファミリー3 (二塩基および中性アミノ酸輸送の活性化因子)、メンバー2)、NCBI 遺伝子ID 番号6520)、MUC1 (例えば、ヒトMUC1 (ムチン1、細胞表面関連)、NCBI遺伝子ID 番号4582)、およびZO-1 (例えば、ヒトTJP1 (密着結合タンパク質1 (密着帯1))、NCBI 遺伝子ID 番号 7082)、および間葉バイオマーカーEFNB2 (例えば、ヒトEFNB2 (エフリン-B2)、NCBI 遺伝子ID 番号1948)、FLRT3 (例えば、ヒトFLRT3 (フィブロネクチンロイシン豊富な膜貫通タンパク質3)、NCBI遺伝子ID番号23767)、SPARC (例えば、ヒトSPARC (分泌タンパク質、酸性、システイン豊富 (オステオネクチン))、NCBI遺伝子ID 番号6678)、およびCD44 (例えば、ヒトCD44 (CD44 分子 (インディアン血液グループ))、NCBI 遺伝子ID 番号960)を含む。
【0114】
[126] 本明細書にリストされているNCBI遺伝子ID番号は、NCBI Entrez Geneデータベース記録からの遺伝子の一意識別子である(全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)
、米国国立医学図書館、8600 Rockville Pike, Building 38A, Bethesda, MD 20894、インターネットアドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。本明細書では、これらは、名称および/または略号で出願中に参照されている遺伝子生成物を明確に特定するために使用されている。遺伝子によって発現され、そのため特定されたタンパク質は、本発明の方法で使用されうるタンパク質、および異なるイソフォームを含むこれらのタンパク質の配列を表し、NCBIデータベース(例えばGENBANK(登録商標))に開示されるように、記録は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0115】
[127] 当業者であれば、上皮または間葉バイオマーカータンパク質、またはその一部分が細胞表面に露出している(すなわち、細胞外ドメインを持つ)かどうかを判断するのは容易である。例えば、免役学的方法を使用して完全細胞上のこのようなタンパク質を検出することができ、またはよく知られたコンピュータベースの配列分析方法を使用して、少なくとも1つの細胞外ドメイン(すなわち、分泌タンパク質および少なくとも1つの細胞表面ドメインを持つタンパク質の両方を含む)の存在を予想しうる。それを発現する細胞表面上に表示される少なくとも1つの部分を持つバイオマーカータンパク質の発現は、タンパク質の細胞表面ドメインに特異的に結合する標識抗体を使用して、生検および腫瘍細胞を溶解することなく生体内で検出されうる。
【0116】
[128] 本明細書に記述の任意の方法では、EMTステータスを評価するために複数のバイオマーカーレベルの決定も使用することができ、これはより信頼性のある評価を提供する可能性がある。例えば、上皮および間葉バイオマーカーレベルを評価でき、それぞれの相互変化は、EMTが起こったことの体内での確認を提供する。各バイオマーカー決定では、レポーター分子からの検出可能シグナルが、互いに干渉することなく独立して評価できる場合には、EMTステータス検出複合体を選択できる。例えば、NIR染料レポーターでは、発光極大が十分に離れているために同じ腫瘍中の標識から独立して読み取れる、2つ以上のレポーターを選択できる。
【0117】
[129] 癌を持つヒトまたは非ヒト動物患者、または腫瘍細胞を移植された実験動物であるかにかかわらず、患者が癌または腫瘍を持つ場合を含み、本明細書に記述の本発明の任意の方法の腫瘍細胞は、以下の任意の腫瘍または癌からの腫瘍細胞であり得る:NSCL、乳癌、結腸癌、または膵臓癌、肺癌、小細胞肺癌、細気管支肺胞上皮肺癌、骨癌、皮膚癌、頭部または頸部癌、上皮癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、直腸癌、結腸直腸癌、肛門部癌、胃癌、胃癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、咽頭癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、ユーイング腫瘍、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、絨毛癌、精上皮腫、 胎生期癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、卵巣癌、陰茎癌、膀胱癌、精巣腫瘍、尿管癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞癌、胆嚢癌、肝癌、胆管癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、桿状腫瘍、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、カポジ肉腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、 松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽腫、リンパ球性リンパ腫、基底細胞癌、中枢神経系 (CNS) 新生物、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、脳幹グリオーマ、多形性膠芽腫、神経鞘腫、上衣腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、および上記の任意の癌の難治性のもの、または上記の癌の1つ以上の組み合わせを含む。患者が、腫瘍異種移植片を持つ実験動物(例えば、ヌードマウス)の場合、腫瘍細胞はヒト細胞、または別の非ヒト動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ラットなど)からの腫瘍細胞でありうる。
【0118】
[130] 「難治性」という用語は、本明細書で使用される場合、治療(例えば、化学療法薬剤、生物学的薬剤、および/または放射線治療)が無効であることが示されている癌を
定義する。難治性癌腫瘍は縮小するが、治療が有効であると判断される点までには及ばない。しかし一般的に、腫瘍は治療前と同じサイズのまま(安定疾患)かまたは増殖する(進行疾患)。治療は、例えば、本明細書に記述の治療薬の任意のもので行いうる。
【0119】
[131] EGFRキナーゼ阻害剤が使用される本明細書に記述の任意の方法では、好ましいEGFRキナーゼ阻害剤の一例はエルロチニブであり、その薬学的に許容される塩または多形体を含む。これらの方法では、EGFRキナーゼ阻害剤への患者の推定反応性の予測、または初期治療への反応を個々の患者に関する追加的状況と組み合わせた上で、投薬医師が適切と判断した場合、1つ以上の追加的抗癌剤または治療を同時または順次にEGFRキナーゼ阻害剤と併用することができる。
【0120】
[132] IGF-1Rキナーゼ阻害剤が使用される本明細書に記述の任意の方法では、好ましいEGFRキナーゼ阻害剤の一例はOSI-906であり、その薬学的に許容される塩または多形体を含む。これらの方法では、IGF-1Rキナーゼ阻害剤への患者の推定反応性の予測、または初期治療への反応を個々の患者に関する追加的状況と組み合わせた上で、投薬医師が適切と判断した場合、1つ以上の追加的抗癌剤または治療を同時または順次にIGF-1Rキナーゼ阻害剤と併用することができる。
【0121】
[133] 本発明は、患者の腫瘍または腫瘍転移を治療する方法も提供するが、これは患者の腫瘍がEMTをまだ受けておらず、単剤としてのEGFRまたは IGF-1Rキナーゼ阻害剤に比較的敏感な可能性が高いことを特定するために、本発明の任意のin situ法を使用してEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤に対する患者の推定反応性を診断するステップ、および前述の患者にEGFR および/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の治療有効量を同時または順次に投与するステップを含む。
【0122】
[134] 当業者には当然ながら、EMTステータスを決定するために本明細書に記述の撮像方法を使って、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤に対する患者の推定反応性を診断した後、前述の患者に、EGFRおよび/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の治療有効量を投与する正確な方法は、主治医の裁量による。用量、他の抗癌剤との併用、投与のタイミングおよび頻度などを含む投与方法は、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤に対する患者の推定反応性の診断、および患者の状態と病歴によって影響されうる。したがって、単剤としてのEGFRおよび/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤に対して比較的感受性が低いと予測された腫瘍を持つ患者でも、他の抗癌剤、またはEGFRおよび/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤への腫瘍の感受性を変化させる他の薬剤と随意に併用した、EGFRおよび/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤での治療から利益を得られることがある。
【0123】
[135] 本発明は、他の細胞毒性薬、化学療法剤、または抗癌剤、またはこのような薬剤の効果を増強する化合物の1つ以上に加えて、EGFRおよび/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の治療有効量を患者に同時または順次に投与することを含む、患者の腫瘍または腫瘍転移を治療するための本明細書に記述の方法をさらに提供する。本発明との関連では、他の抗癌剤には、例えば、他の細胞毒性薬、化学療法剤または抗癌剤、またはこのような薬剤の効果を増強する化合物、抗ホルモン剤、血管形成阻害剤、腫瘍細胞アポトーシス促進またはアポトーシス刺激剤、シグナル伝達阻害剤、抗増殖剤、抗HER2抗体または免役治療学的に活性なそのフラグメント、抗増殖剤、COX II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、および抗腫瘍免役反応を増強する能力を持つ薬剤を含む。
【0124】
[136] 本発明との関連では、他の細胞毒性薬、化学療法剤または抗癌剤、またはこのような薬剤の効果を増強する化合物には、例えば、シクロホスファミド(CTX、例えばCYTOXAN(登録商標))、クロラムブシル(CHL、例えばLEUKERAN(登録商標))、シスプラチン(CisP、例えばPLATINOL(登録商標))、ブスルファン(例えばmyleran(登録商標)
)、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンCおよび同類のものなどのアルキル化剤またはアルキル化作用を持つ薬剤;メトトレキサート(MTX)、エトポシド(VP16、例えばvepesid(登録商標))、6-メルカプトプリン(6MP)、6-チオグアニン(6TG)、シタラビン(Ara-C)、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(例えばXeloda(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)および同類のものなどの抗代謝物;アクチノマイシンD、ドキソルビシン(DXR、例えばadriamycin(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシンおよび同類のものなどの抗生物質;ビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチンおよび同類の物などのビンカアルカロイドなどのアルカロイド;およびパクリタキセル(例えばtaxol(登録商標))およびパクリタキセル誘導体などの他の抗腫瘍剤;細胞毒性薬、デキサメタゾン(DEX、例えばdecadron(登録商標))などのグルココルチコイド、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド、ヒドロキシウレアなどのヌクレオシド酵素阻害剤、アスパラギナーゼなどのアミノ酸枯渇酵素、ロイコボリンおよび他の葉酸誘導体、および類似のさまざまな抗腫瘍剤を含む。以下の薬剤も、追加的薬剤として使用されうる:アルニフォスチン(例えばethyol(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシンリポ(例えばdoxil(登録商標))、ゲムシタビン(例えば、gemzar(登録商標))、ダウノルビシンリポ(例えばdaunoxome(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例えばtaxotere(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT 11(イリノテカン)、10-ヒドロキシ7-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンβ、インターフェロンα、マイトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル。
【0125】
[137] 本明細書で使用される場合、「抗ホルモン剤」という用語は、腫瘍に対してホルモン作用を調節または阻害する働きをする天然または合成有機またはペプチド化合物を含む。抗ホルモン剤には、例えばステロイド受容体拮抗薬、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、他のアロマターゼ阻害剤、42-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、およびトレミフェン(例えばFareston(登録商標))などの抗エストロゲン、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン、および上記の薬学的に許容される塩、酸または誘導体、卵胞刺激ホルモン(FSH))、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)とLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)などの糖たんぱく質ホルモンの作動薬および/または拮抗薬、Zoladex(登録商標) (AstraZeneca) として市販されているLHRH作動薬の酢酸ゴセレリン、LHRH拮抗薬D-アラニンアミドN-アセチル-3-(2-ナフタレニル)-D-アラニル-4-クロロ-D-フェニルアラニル-3-(3-ピリジニル)-D-アラニル-L-セリル-N6-( 3-ピリジニルカルボニル)-L-リシル-N6-(3-ピリジニルカルボニル)-D-リシル-L-ロイシル-N6- (1-メチルエチル)-L-リシル -L-プロリン(例えば、Antide(登録商標)、Ares-Serono)、LHRH拮抗薬の酢酸ガニレリクス、Megace(登録商標) (Bristol-Myers Oncology)として市販されているステロイド抗アンドロゲンの酢酸シプロテロン(CPA)と酢酸メゲストロール、Eulexin(登録商標) (Schering
Corp.)として市販されている非ステロイド抗アンドロゲンのフルタミド(2-メチル-N-[4,
20-ニトロ-3-(トリフルオロメチル) フェニルプロパンアミド)、非ステロイド抗アンドロゲンのニルタミド(5,5-ジメチル-3-[4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル-4’-ニトロフェニル)-4,4-ジメチル-イミダゾリジン-ジオン)、およびRAR、RXR、TR、VDRおよび同類のものに対する拮抗薬などの、他の非許容状態受容体に対する拮抗薬を含む。
【0126】
[138] 抗血管形成剤には、例えば、SU-5416およびSU-6668 (Sugen Inc.、米国抗血管形成剤には、例えば、SU-5416およびSU-6668 (Sugen Inc.、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)など、または例えば国際出願番号WO 99/24440、WO 99/62890、WO 95/21613、WO 99/61422、WO 98/50356、WO 99/10349、WO 97/32856、WO 97/22596、WO 98/54093, 、WO 98/02438、WO 99/16755、およびWO 98/02437、および米国特許第5,883,113号、5,886,020号、5,792,783号、 5,834,504号、および6,235,764号に記述されているようなVEGFR阻害剤;IM862(Cytran Inc.、米国ワシントン州カークランド)などのVEGF阻害剤、Ribozyme(コロラド州ボールダー)およびChiron(カリフォルニア州エメリービル)社製の合成リボザイムであるアンジオザイム;およびベバシズマブ(例えばAVASTINTM、Genentech、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)、VEGFに対する組換えヒト化抗体などのVEGFに対する抗体;αvβ3、αvβ5およびαvβ6インテグリン、およびそのサブタイプに対する受容体拮抗薬およびインテグリン拮抗薬で、例えば、シレンジタイド(EMD 121974)、またはαvβ3 特異的ヒト化抗体(例えばVITAXIN(登録商標))などの抗インテグリン抗体;IFN-α(米国特許第41530,901号、 4,503,035号、および5,231,176号)などの因子;アンジオスタチンおよびプラスミノーゲン・フラグメント(例えばクリングル1-4、クリングル5、クリングル1-3(O'Reilly, M. S. et al. (1994) Cell 79:315-328; Cao
et al. (1996) J. Biol. Chem. 271: 29461-29467; Cao et al. (1997) J. Biol. Chem.
272:22924-22928);エンドスタチン(O'Reilly, M. S. et al. (1997) Cell 88:277、および国際特許公開番号WO 97/15666);トロンボスポンジン(TSP-1; Frazier, (1991) Curr. Opin. Cell Biol. 3:792);血小板因子4(PF4);プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ阻害剤;ウロキナーゼ受容体拮抗薬;ヘパリナーゼ;TNP-4701などのフマグリン類似体;スマリンおよびスマリン類似体;抗血管新生ステロイド;bFGF拮抗薬;flk-1およびflt-1拮抗薬;およびMMP-2(基質メタロプロテイナーゼ2)阻害剤およびMMP-9(基質メタロプロテイナーゼ9)阻害剤などの抗血管形成剤を含む。有用な基質メタロプロテイナーゼ阻害剤の例は、国際特許公開番号WO 96/33172、WO 96/27583、WO 98/07697、WO 98/03516、WO 98/34918、WO 98/34915、WO 98/33768、WO 98/30566、WO 90/05719、WO 99/52910、WO 99/52889、WO 99/29667、およびWO 99/07675、ヨーロッパ特許公開番号818,442、780,386、1,004,578、606,046、および931,788、英国特許公開番号9912961および米国特許第5,863,949号および5,861,510号に記述されている。好ましいMMP-2およびMMP-9阻害剤は、MMP-1の阻害活性をほとんどまたは全く持たないものである。より好ましいのは、他の基質メタロプロテイナーゼと比較して、MMP-2および/またはMMP-9を選択的に阻害するものである(すなわちMMP-1、MMP-3、MMP-4、MMP-5、MMP-6、MMP-7、MMP-8、MMP-10、MMP-11、MMP-12およびMMP-13)。
【0127】
[139] シグナル伝達阻害剤には、例えば、有機分子またはerbB2受容体に結合する抗体で例えばトラスツズマブ(例えばHERCEPTIN(登録商標))などのerbB2受容体阻害剤、例えばイミチニブ(例えばGLEEVEC(登録商標))などの他のタンパク質チロシンキナーゼの阻害剤、ras阻害剤、raf阻害剤、MEK阻害剤、mTOR阻害剤、サイクリン依存キナーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼC阻害剤、およびPDK-1阻害剤(このような阻害剤のいくつかの例の説明および、癌治療の臨床試験でのこれらの使用については、Dancey, J. and Sausville, E.A. (2003) Nature Rev. Drug Discovery 2:92-313を参照)。
【0128】
[140] ErbB2受容体阻害剤には、例えば、GW-282974(Glaxo Wellcome plc)などのErbB2受容体阻害剤、AR-209(Aronex Pharmaceuticals Inc.、米国テキサス州ウッドランド)および2B-1(Chiron)などのモノクローナル抗体、および国際公開番号WO 98/02434、WO 99/35146、WO 99/35132、WO 98/02437、WO 97/13760、WO 95/19970、および米国特許第5,587,458号、5,877,305号、6,465,449号および6,541,481号に記述されているもののようなerbB2阻害剤を含む。
【0129】
[141] 抗増殖剤には、例えば酵素ファメシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害剤お
よびチロシンキナーゼPDGFR受容体の阻害剤、および米国特許第6,080,769号、6,194,438号、6,258,824号、6,586,447号、6,071,935号、6,495,564号、6,150,377号、6,596,735号、6,479,513号、および国際特許公報番号WO 01/40217に記述の化合物を含む。抗増殖剤には、受容体チロシンキナーゼIGF-1R およびFGFRの阻害剤も含む。
【0130】
[142] 有用なCOX-II阻害剤の例には、アレコキシブ(例えばCELEBREXTM)、バルデコキシブ、およびロフェコキシブを含む。抗腫瘍免役反応を増強する能力を持つ薬剤には、例えばCTLA4(細胞毒性リンパ球抗原4)抗体(例えばMDX-CTLA4)、およびCTLA4をブロックする能力を持つ他の薬剤を含む。本発明に使用されうる特異的CTLA4抗体には、米国特許第6,682,736号に記述のものを含む。
【0131】
[143] 上述の細胞毒性および他の抗癌剤の化学療法レジメンにおける使用は、一般的に癌治療技術において良好なものとして特徴付けられており、本明細書でのそれらの使用も、一部調節しつつも耐性および有効性のモニタリング、および投与経路と用量に対して同じ考慮を受ける。例えば、細胞毒性薬剤の実際の用量は、抗癌剤感受性試験を使用して決定された患者の培養細胞反応によって異なりうる。
【0132】
[144] 一般的に用量は、他の追加的薬剤を使用しない場合の量に比べて減量される。有効な細胞毒性薬剤の一般的用量は製造業者が推奨する範囲内であり、生体外反応または動物モデルでの反応によって示される場合は、濃度または量を最大約一桁低減させうる。したがって、実際の用量は、医師の判断、患者の状態、および一次培養癌細胞または抗癌剤感受性試験を行った組織サンプルの生体外反応性、または適切な動物モデルで観察された反応に基づく治療方法の有効性に依存する。
【0133】
[145] 本発明は、EGFRおよび/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の治療有効量を患者に同時または順次に投与することを含む、患者の腫瘍または腫瘍転移を治療するための本明細書に記述の方法をさらに提供する。
【0134】
[146] 放射線源は、治療される患者の外部または内部のどちらにあってもよい。放射線源が患者の外部にある場合、治療は外照射療法(EBRT)として知られる。放射線源が患者の内部にある場合、治療は小線源治療(BT)と呼ばれる。本発明に関連して使用される放射性原子は、ラジウム、セシウム-137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅-67、テクネチウム-99、ヨウ素-123、ヨウ素-131、およびインジウム-111を含むがこれに限定されないグループから選択できる。本発明によるEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤が抗体の場合、このような放射性同位体で抗体を標識することも可能である。
【0135】
[147] 放射線療法は、切除不能または手術不能な腫瘍および/または腫瘍転移の制御に対する標準的治療である。放射線療法を化学療法と併用した場合に、改善された結果が観察されている。放射線療法は、標的部分に照射される高用量放射線が、腫瘍および正常組織両方の生殖細胞の死をもたらすという理論に基づいている。放射線投与計画は、一般的に放射線吸収量(Gy)、時間および分割の観点から決定され、癌専門医によって慎重に決定されなければならない。患者に照射する放射線量は、さまざまな検討項目に依存するが、最も重要な2つの項目は、体のその他の重要構造または臓器に対する腫瘍の位置、および腫瘍の拡散程度である。放射線療法を受ける患者に対する一般的な治療過程は、合計用量10〜80 Gyを約1.8 〜2.0 Gyの日々分割線量で週5日患者に投与する、1〜6週間に渡る治療スケジュールである。本発明の好ましい実施形態では、ヒト患者の腫瘍が本発明の治療と放射線の併用で治療された場合、相乗効果がある。つまり、本発明の組み合わせを含む薬剤による腫瘍増殖の阻害は、放射線、または随意に追加的化学療法剤または抗癌剤と組み合わされた場合に増強される。アジュバント放射線療法のパラメーターは、例えば、国
際特許公開番号WO 99/60023に含まれている。
【0136】
[148] 本発明の目的では、EGFRキナーゼ阻害剤(またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤)と別の薬剤(両方の成分は本明細書では「2つの活性薬剤」として言及される)の「併用」または「同時投与」とは、別々または一緒に2つの活性薬剤を投与することを指し、ここで2つの活性薬剤は、併用療法の利益を得るために設計された適切な用法の一部として投与される。したがって、2つの活性薬剤は、同じ医薬組成物の一部としてか、または別々の医薬組成物として投与できる。もう一方の薬剤は、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の投与前後または同時、またはそのいくつかの組み合わせで投与できる。EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤が、(例えば、治療の通常過程中に)反復間隔で患者に投与される場合、間葉様細胞キナーゼ阻害剤は、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の各投与の前後または同時、またはそのいくつかの組み合わせで、またはEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤治療に関して異なる間隔で投与するか、またはEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤での治療過程の前前後または最中に単回投与できる。
【0137】
[149] 当技術分野で知られており、また例えば国際特許公開番号WO 01/34574に開示されているように、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤は、一般的に、患者が治療を受けている癌に(有効性および安全性両方の観点から)最も効果的な治療を提供する用法で患者に投与される。本発明の治療方法の実施では、治療している癌のタイプ、使用されているキナーゼ阻害剤のタイプ(例えば、小分子、抗体、RNAi、リボザイムまたはアンチセンス構築物)、および例えば公表されている臨床研究の結果に基づいた処方医の医学的判断によって、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤は、経口、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、皮下、鼻腔内、眼内、膣内、直腸、または皮内経路など、当技術分野で知られている任意の有効な方法で投与されうる。
【0138】
[150] EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の投与量、およびキナーゼ阻害剤投与のタイミングは、治療を受けている患者のタイプ(人種、性別、年齢、体重など)および状態、治療している疾患または状態の重症度、および投与経路によって決まる。例えば、小分子キナーゼ阻害剤は、患者に1日あたりまたは1週間あたり、0.001 〜100 mg/kgの範囲の用量を単回または分割投与、または連続注入できる(例えば国際特許公開番号WO 01/34574を参照)。特に、エルロチニブHClは、患者に、5-200 mg/日、または100-1600 mg/週の範囲の用量を単一または分割投与、または連続注入できる。好ましい用量は150 mg/日である。抗体ベースのキナーゼ阻害剤、またはアンチセンス、RNAiまたはリボザイム構築物は、患者に1日あたりまたは1週間あたり0.1 〜100 mg/kgの範囲の用量を単回または分割投与、または連続注入できる。一部の例では、前述範囲の下限より低いレベルの用量で十分なことがあり、他の例では、有害な副作用を生じることなくより高用量が使用されうるが、これはこのような高用量をまずいくつかの小用量に分割して1日を通して投薬することを条件とする。
【0139】
[151] EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤は、別々にまたは一緒に、同じ経路または異なる経路で、さまざまに異なる剤形で投薬できる。例えば、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤は、好ましくは経口または静脈内投与される。EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブHCl (TARCEVA(登録商標)) の場合、経口投与が好ましい。EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤はどちらとも、単回または複数回投与できる。
【0140】
[152] EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤は、薬学的に許容されるさまざまな不活性担体と共に、錠剤、カプセル、ドロップ、トローチ、キャンディー、粉末、スプレー、クリーム、塗布剤、坐薬、ゼリー、ジェル、ペースト、ローション、軟膏、エリキシル、シロップ、および同類のものなどの形状で投与できる。このような剤形の投与は、単回投与または複数回投与で実施できる。担体には、固体希釈剤または充填剤、滅菌水媒体およびさま
ざまな非毒性有機溶媒等を含む。経口医薬組成物は、適切に甘みおよび/または香味をつけることができる。
【0141】
[153] EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤は、薬学的に許容されるさまざまな不活性担体と共に、スプレー、クリーム、塗布剤、坐薬、ゼリー、ジェル、ペースト、ローション、軟膏および同類のものなどの形状で投与できる。このような剤形の投与は、単回投与または複数回投与で実施できる。担体には、固体希釈剤または充填剤、滅菌水媒体およびさまざまな非毒性有機溶媒等を含む。
【0142】
[154] タンパク性 EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤を含むすべての製剤は、阻害剤の生物学的活性の変性および/または分解および損失を避けるように選択されるべきである。
【0143】
[155] EGFRキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物の調製方法は当技術分野で知られており、例えば国際特許公開番号WO 01/34574に記述されている。IGF-1Rキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物の調製方法は、当技術分野で知られている。本発明の教示という観点では、EGFRおよび/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物の調製方法は、上記に引用された出版物およびRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 18th edition (1990) など他の知られている参考文献から明らかとなる。
【0144】
[156] EGFRおよび/またはIGF-1Rキナーゼ阻害剤の経口投与では、活性薬剤の1つまたは両方を含む錠剤は、例えば微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリセリンなどのさまざまな任意の賦形剤と共に、デンプン(および好ましくはコーン、馬鈴薯またはタピオカデンプン)、アルギン酸および特定の複合シリカなどの崩壊剤、およびポリビニルピロリドン、ショ糖、ゼラチンおよびアカシアなどの顆粒結合剤と混合される。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの潤滑剤は、打錠の目的でしばしば非常に有用である。同様のタイプの固体組成物も、ゼラチンカプセルの充填剤として使用されうる。この関連での好ましい材料には、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールも含まれる。水性懸濁液および/またはエリキシルが経口投与のために望ましい場合、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤はさまざまな甘味または香味剤、着色剤または色素と混合することができ、望ましい場合は、乳化剤および/または懸濁剤も水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンおよびそのさまざまな組み合わせなどの希釈剤とともに混合しうる。
【0145】
[157] 活性薬剤のどちらかまたは両方の非経口投与では、ゴマまたはピーナッツ油または水性プロピレングリコールの溶液、および活性薬剤またはその対応する水溶性塩を含む滅菌水溶液を使用しうる。このような滅菌水溶液は、好ましくは、適切に緩衝化され、好ましくは例えば十分な塩分またはグルコースで等張になる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内注射の目的に特に適している。油性溶液は、関節内、筋肉内および皮下注射の目的に適している。滅菌状態でのこれらすべての溶液の調製は、当業者に良く知られている標準的な薬学技術で容易に達成される。タンパク性キナーゼ阻害剤の投与に対して選択される任意の非経口製剤は、阻害剤の生物学的活性の変性および損失を避けるように選択されるべきである。
【0146】
[158] さらに、標準的な製薬慣行に従って、例えば、クリーム、ローション、ゼリー、ジェル、ペースト、軟膏、塗布剤および同類のもので、活性薬剤のどちらかまたは両方を局所的に投与することが可能である。例えば、EGFR IGF-1Rキナーゼ阻害剤を約0.1% (w/v)〜約5% (w/v) の濃度で含む局所製剤を調製できる。
【0147】
[159] 動物用の目的では、活性薬剤は、上述の任意の形状および任意の経路で、別々または一緒に動物に投与できる。好ましい実施形態では、EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤は、カプセル、ボーラス、錠剤、液体浸漬の形状で、注射でまたはインプラントとして投与される。または、キナーゼ阻害剤は動物飼料と共に投与でき、この目的に対しては、通常の動物飼料用の濃縮飼料添加物または事前混合物を調製しうる。キナーゼ阻害剤は、液体浸漬の形状、注射、またはインプラントとしても投与できる。このような製剤は、標準的な獣医学慣行に従って従来法で調製される。
【0148】
[160] 本明細書で使用される場合、「EGFRキナーゼ阻害剤」という用語は、本技術分野で現在知られているか、または将来特定される任意のEGFRキナーゼ阻害剤を指し、患者に投与した際に、阻害がなければEGFRの天然リガンドへの結合から生じる下流の生物学的効果を含む、患者のEGFR受容体活性化と関連した生物学的活性の阻害を引き起こす任意の化学物質を含む。このようなEGFRキナーゼ阻害剤には、EGFR活性化または患者の癌の治療に関連するEGFR活性化の下流の生物学的効果をブロックできる任意の薬剤を含む。このような阻害剤は、受容体の細胞外ドメインに直接結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用できる。または、このような阻害剤は、EGF受容体のリガンド結合部位またはその一部分を占有し、それにより受容体の正常な生物学的活性が阻止または低減されるように受容体が天然リガンドにアクセスできないようにすることによって作用できる。または、このような阻害剤は、EGFRポリペプチドの二量化、またはEGFRと他のタンパク質との相互作用を調節することによって、またはEGFRのユビキチン化およびエンドサイトーシス分解を増強することによって作用できる。EGFRキナーゼ阻害剤には、低分子量阻害剤、抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたはRNAアプタマー、アンチセンス構築物、小阻害 RNA(すなわち、dsRNAによるRNA妨害、RNAi)、およびリボザイムを含むがこれに限定されない。好ましい実施形態では、EGFRキナーゼ阻害剤は、ヒトEGFRに特異的に結合する小さな有機分子または抗体である。
【0149】
[161] EGFRキナーゼ阻害剤には、例えば、以下の特許広報に記述されているような、キナゾリンEGFRキナーゼ阻害剤、ピリド-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピリミド-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピロロ-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピラゾロ-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、フェニルアミノ-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、オキシインドールEGFRキナーゼ阻害剤、インドロカルバゾールEGFRキナーゼ阻害剤、フタラジンEGFRキナーゼ阻害剤、イソフラボンEGFRキナーゼ阻害剤、キナロンEGFRキナーゼ阻害剤、およびチルホスチンEGFRキナーゼ阻害剤、および前述のEGFRキナーゼ阻害剤の薬学的に許容される塩および溶媒和物のすべてを含む:国際特許公開番号WO 96/33980、WO 96/30347、WO 97/30034、WO 97/30044、WO 97/38994、WO 97/49688、WO 98/02434、WO 97/38983、WO 95/19774、WO 95/19970、WO 97/13771、WO 98/02437、WO 98/02438、WO 97/32881、WO 98/33798、WO 97/32880、WO 97/3288、WO 97/02266、WO 97/27199、WO 98/07726、WO 97/34895、WO 96/31510、WO 98/14449、WO 98/14450、WO 98/14451、WO 95/09847、WO 97/19065、WO
98/17662、WO 99/35146、WO 99/35132、WO 99/07701、および WO 92/20642、ヨーロッパ特許出願番号EP 520722、EP 566226、EP 787772、EP 837063、およびEP 682027; 米国特許番号5,747,498、5,789,427、5,650,415および5,656,643,、およびドイツ特許出願番号DE 19629652。低分子量EGFRキナーゼ阻害剤の追加的な非限定的例には、Traxler, P., 1998, Exp. Opin. Ther. Patents 8(12):1599-1625に記述の任意のEGFRキナーゼ阻害剤を含む。
【0150】
[162] 本発明に従って使用されうる低分子量EGFRキナーゼ阻害剤の具体的な好ましい例には、 [6,7-ビス(2-メトキシエトキシ) -4-キナゾリン-4-イル]-(3-エチルフェニル) アミン(OSI-774、エルロチニブ、またはTARCEVA(登録商標)(エルロチニブHCl) としても知られる; OSI Pharmaceuticals/Genentech/ Roche)(米国特許第5,747,498号、国際特許公開番号WO 01/34574、およびMoyer, J.D. et al. (1997) Cancer Res. 57:4838-4848);
CI-1033 (以前はPD183805として知られる; Pfizer) (Sherwood et al., 1999, Proc. Am.
Assoc. Cancer Res. 40:723); PD-158780 (Pfizer)、AG-1478 (カリフォルニア大学)、CGP-59326 (Novartis)、PKI-166 (Novartis)、EKB-569 (Wyeth)、GW-2016 (GW-572016またはラパチニブジトシラートとしても知られる; GSK)、およびゲフィチニブ (ZD1839またはIRESSATMとしても知られる、Astrazeneca) (Woodburn et al., 1997, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 38:633) を含む。本発明に従って使用されうる特に好ましい低分子量EGFRキナーゼ阻害剤は、[6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)-4-キナゾリン-4-イル]-(3-エチルフェニル) アミン (すなわち、エルロチニブ)、その塩酸塩 (すなわちエルロチニブHCl, TARCEVA(登録商標))、または他の塩形態(例えばエルロチニブメシラート)である。
【0151】
[163] EGFRキナーゼ阻害剤には、例えば、EGFRキナーゼに対して活性を持つ複数キナーゼ阻害剤(すなわち、EGFRキナーゼおよび1つ以上の追加的キナーゼを阻害する阻害剤)も含む。このような化合物の例には、EGFRおよびHER2阻害剤CI-1033 (以前はPD183805として知られる; Pfizer)、EGFRおよびHER2阻害剤 GW-2016 (GW-572016またはラパチニブジトシラートとしても知られる; GSK) 、EGFRおよびJAK 2/3 阻害剤AG490 (チプフォスチン) 、EGFRおよびHER2阻害剤ARRY-334543 (Array BioPharma) 、BIBW-2992, 不可逆性二重EGFR/HER2キナーゼ阻害剤 (Boehringer Ingelheim Corp.) 、EGFRおよびHER2阻害剤EKB-569 (Wyeth) 、VEGF-R2およびEGFR阻害剤ZD6474 (ZACTIMA TMとしても知られる; AstraZeneca Pharmaceuticals) 、およびEGFRおよびHER2阻害剤BMS-599626 (Bristol-Myers Squibb) を含む。
【0152】
[164] 抗体ベースのEGFRキナーゼ阻害剤には、その天然リガンドによってEGFR活性化を部分的または完全にブロックできる、抗体フラグメントを含めた任意の抗EGFR抗体を含む。抗体ベースのEGFRキナーゼ阻害剤の非限定的例には、Modjtahedi, H., et al., 1993, Br. J. Cancer 67:247-253; Teramoto, T., et al., 1996, Cancer 77:639-645; Goldstein et al., 1995, Clin. Cancer Res. 1:1311-1318; Huang, S. M., et al., 1999, Cancer Res. 15:59(8):1935-40; and Yang, X., et al., 1999, Cancer Res. 59:1236-1243に記述のものを含む。したがって、EGFRキナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体Mab E7.6.3
(Yang, X.D. et al. (1999) Cancer Res. 59:1236-43)、またはMab C225 (ATCC Accession No. HB-8508)、またはその結合特異性を持つ、抗体フラグメントを含めた抗体を含む。適切なモノクローナル抗体EGFRキナーゼ阻害剤には、IMC-C225 (別名、セツキシマブまたはERBITUXTM; Imclone Systems)、ABX-EGF (Abgenix)、EMD 72000 (Merck KgaA, ダルムシュタット)、RH3 (York Medical Bioscience Inc.)、およびMDX-447 (Medarex/ Merck
KgaA) を含む。
【0153】
[165] 本発明で使用するEGFRキナーゼ阻害剤は、ペプチドまたはRNAアプタマーでもあり得る。このようなアプタマーは、例えば、EGFRの細胞外または細胞内ドメインと相互作用して、細胞のEGFRキナーゼ活性を阻害する。細胞外ドメインと相互作用するアプタマーは、標的細胞の血漿膜を通過する必要がないので好ましい。アプタマーは、EGFRを活性化する能力を阻害するように、EGFRに対するリガンド(例えばEGF、TGF-α)とも相互作用しうる。適切なアプタマーの選択方法は、当技術分野で良く知られている。このような方法を使用して、EGFRファミリーメンバーと相互作用し阻害するペプチドおよびRNAアプタマーの両方が選択されてきた(例えば、Buerger, C. et al. et al. (2003) J. Biol. Chem. 278:37610-37621; Chen, C-H. B. et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. 100:9226-9231; Buerger, C. and Groner, B. (2003) J. Cancer Res. Clin. Oncol. 129(12):669-675. Epub 2003 Sep 11を参照)。
【0154】
[166] 本発明に使用のEGFRキナーゼ阻害剤は、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド構築物に基づきうる。アンチセンスRNA分子およびアンチセンスDNAを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、EGFR mRNAに結合してその翻訳を直接ブロックするように作用して
、タンパク質の翻訳を妨げるか、またはmRNAの分解を増加させ、それによって細胞のEGFRキナーゼタンパク質のレベル、ひいては活性をを減少させる。例えば、少なくとも約15の塩基を持ち、EGFRをコードするmRNA転写配列の固有領域を補完するアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成できる(例えば、従来のホスホジエステル技術を使用し、静脈注射または注入で投与される)。配列が知られている遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するためにアンチセンス技術を使用する方法は、当技術分野では良く知られている(例えば、米国特許第6,566,135号、6,566,131号、6,365,354号、6,410,323号、6,107,091号、6,046,321号および5,981,732号を参照)。
【0155】
[167] 小さな阻害性RNA(siRNA)も、本発明で使用するEGFRキナーゼ阻害剤として機能し得る。EGFR遺伝子発現は、EGFRの発現が特異的に阻害されるように(すなわち、RNA阻止またはRNAi)、腫瘍、対象物または細胞を、小二重らせんRNA (dsRNA)、または小二重らせんRNAの生成を引き起こすベクターまたは構築物と接触させることによって低減できる。適切なdsRNAまたはdsRNAコード化ベクターを選択する方法は、配列が知られている遺伝子については当技術分野でよく知られている(例えば、Tuschi, T., et al. (1999) Genes Dev. 13(24):3191-3197; Elbashir, S.M. et al. (2001) Nature 411:494-498; Hannon, G.J. (2002) Nature 418:244-251; McManus, M.T. and Sharp, P. A. (2002) Nature
Reviews Genetics 3:737-747; Bremmelkamp, T.R. et al. (2002) Science 296:550-553、米国特許第6,573,099号および6,506,559号、および国際特許公開番号WO 01/36646、WO 99/32619、およびWO 01/68836を参照)。
【0156】
[168] リボザイムも、本発明で使用するEGFRキナーゼ阻害剤として機能しうる。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒する能力を持つ酵素性RNA分子である。リボザイム作用のメカニズムには、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、およびその後のエンドヌクレアーゼ的切断が関与する。したがって、EGFR mRNA配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効率的に触媒する工学的ヘアピンまたはハンマーヘッドモチーフのリボザイム分子は、本発明の範囲内で有用である。任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、標的分子のリボザイム切断部位をスキャンすることによってまず特定され、これは一般的にGUA、GUU、およびGUCの配列を含む。一旦特定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応するリボヌクレオチド約15〜20個の短いRNA配列を、二次構造など、オリゴヌクレオチド配列を不適切にし得る予測構造特性に対して評価することができる。候補標的の適切性は、例えばリボヌクレアーゼ保護分析を使った、相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのしやすさのテストによっても評価できる。
【0157】
[169] EGFRキナーゼ阻害剤として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドとリボザイムの両方は、既知の方法で作成できる。これらには、例えば固相ホスホラミダイト化学合成などによる化学合成の技術を含む。または、アンチセンスRNA分子は、RNA分子をコードしているDNA配列の、生体外または生体内転写によって生成できる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを取り込むさまざまなベクターに取り込むことができる。本発明のオリゴヌクレオチドには、細胞内安定性および半減期を増加させる手段として、さまざまな変更を加えることができる。可能性のある変更には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの分子の5'および/または3'末端へのフランキング配列の追加、またはオリゴヌクレオチド骨格内にホスホジエステラーゼ結合よりむしろホスホロチオエートまたは2'-O-メチルを使用することが含まれるが、これに限定されない。
【0158】
[170] 本明細書で使用される場合、「IGF-1Rキナーゼ阻害剤」という用語は、当技術分野で現在知られているか、または将来特定される任意のIGF-1Rキナーゼ阻害剤を指し、患者に投与した際に、患者のIGF-1R受容体活性化と関連した生物学的活性の阻害を引き起こ
す任意の化学物質を含み、これには阻害がなければIGF-1Rの天然リガンドへの結合から生じる下流の生物学的効果を含む。このようなIGF-1Rキナーゼ阻害剤には、IGF-1R活性化、または患者の癌治療に関連するIGF-1R活性化の任意の下流生物学的効果をブロックできる任意の薬剤を含む。このような阻害剤は、受容体の細胞外ドメインに直接結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用できる。または、このような阻害剤は、IGF-1受容体のリガンド結合部位またはその一部分を占有し、それにより受容体の正常な生物学的活性が阻止または低減されるように受容体が天然リガンドにアクセスできないようにすることによって作用できる。または、このような阻害剤は、IGF-1Rポリペプチドの二量化、またはIGF-1Rポリペプチドと他のタンパク質との相互作用を調節することよって、またはIGF-1Rのユビキチン化およびエンドサイトーシス分解を増強することによって作用できる。IGF-1Rキナーゼ阻害剤は、IGF-1R活性化に利用できるIGF-1の量を減少させることにより、または例えばIGF-1の受容体への結合に拮抗することにより、またはIGF-1のレベルを減少させることにより、またはIGF結合タンパク質(例えば、IGFBP3)などIGF-1R以外のタンパク質とのIGF-1の結合を促進することによっても作用できる。IGF-1Rキナーゼ阻害剤には、低分子量阻害剤、抗体、抗体フラグメント、アンチセンス構築物、小阻害RNA(すなわち、dsRNAによるRNA妨害、RNAi)、およびリボザイムを含むがこれに限定されない。好ましい実施形態では、IGF-1Rキナーゼ阻害剤は、ヒトIGF-1Rに特異的に結合する小さな有機分子または抗体である。
【0159】
[171] IGF-1Rキナーゼ阻害剤には、例えば、イミダゾピラジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、アザ二環式アミン阻害剤、キナゾロンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、ピリド-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、ピリミド-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、ピロロ-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、ピラゾロ-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、フェニルアミノ-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、オキシインドールIGF-1Rキナーゼ阻害剤、インドロカルバゾールIGF-1Rキナーゼ阻害剤、フタラジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、イソフラボンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、キナロンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、およびチルホスチンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、およびこのようなIGF-1Rキナーゼ阻害剤の薬学的に許容されるすべての塩および溶媒和物を含む。
【0160】
[172] IGF-1Rキナーゼ阻害剤の例には、アザ二環式アミン誘導体を記述した国際特許公開番号WO 05/097800、イミダゾピラジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤を記述した国際特許公開番号WO 05/037836、IGF-1R関連疾患の治療のためのピリミジンを記述した国際特許公開番号WO 03/018021およびWO 03/018022、シクロリグナンおよびIGF-1R阻害剤としてのシクロリグナンを記述した国際特許公開番号WO 02/102804およびWO 02/102805、IGF-1Rチロシンキナーゼの阻害に反応する疾患の治療のためのピロロピリミジンを記述した国際特許公開番号WO 02/092599、チロシンキナーゼ阻害剤としてのピロロピリミジンを記述した国際特許公開番号WO 01/72751、キナーゼのピロロトリアジン阻害剤を記述した国際特許公開番号WO 00/71129、およびピロロ [2,3-d]ピリミジンおよびチロシンキナーゼ阻害剤としてのその使用を記述した国際特許公開番号WO 97/28161、 生体外および生体内でのIGF-1R阻害性活性を持つチルホスチンを記述したParrizas et al., Endocrinology, 138:1427-1433 (1997)、IGF-1R阻害剤としてのヘテロアリール-アリールウレアを記述した国際特許公開番号WO 00/35455、IGF-1Rの調節因子としてのピリミジン誘導体を記述した国際特許公開番号WO 03/048133、キナーゼタンパク質に対する阻害効果を持つ化合物を記述した国際特許公開番号WO 03/024967、WO 03/035614、WO 03/035615、WO 03/035616、およびWO 03/035619、過剰増殖状態を治療するための方法および組成物を記述した国際特許公開番号WO 03/068265、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのピロロピリミジンを記述した国際特許公開番号WO 00/17203、セフェム化合物、その製造および抗菌性組成物を記述した日本特許公告公報番号JP 07/133280、プテリジン研究および4位が非置換のプテリジンを記述したAlbert, A. et al., Journal of the Chemical Society, 11: 1540-1547 (1970)、およびピラジンからの3-4-ジヒドロプテリジンを介したプテリジンの合成を記述したA. Albert et a
l., Chem. Biol. Pteridines Proc. Int. Symp., 4th, 4: 1-5 (1969) にあるものを含む。
【0161】
[173] 本発明に従って使用され得るIGF-1Rキナーゼ阻害剤のさらなる具体的例には、h7C10 (Centre de Recherche Pierre Fabre)、IGF-1 拮抗薬、EM-164 (ImmunoGen Inc.)、IGF-1R調節因子、CP-751871 (Pfizer Inc.)、IGF-1拮抗薬、ランレオチド (Ipsen)、IGF-1拮抗薬、IGF-1Rオリゴヌクレオチド(Lynx Therapeutics Inc.) 、IGF-1オリゴヌクレオチド(National Cancer Institute) 、Novartisにより開発中のIGF-1Rタンパク質-チロシンキナーゼ阻害剤 (例えば NVP-AEW541、Garcia-Echeverria, C. et al. (2004) Cancer Cell 5:231-239; またはNVP-ADW742、Mitsiades, C.S. et al. (2004) Cancer Cell 5:221-230) 、IGF-1Rタンパク質-チロシンキナーゼ阻害剤 (Ontogen Corp); OSI-906 (OSI Pharmaceuticals)、AG-1024 (Camirand, A. et al. (2005) Breast Cancer Research 7:R570-R579 (DOI 10.1186/bcr1028) 、Camirand, A. and Pollak, M. (2004) Brit. J. Cancer 90:1825-1829; Pfizer Inc.)、IGF-1拮抗薬; チルホスチンAG-538およびI-OMe-AG 538; BMS-536924、IGF-1Rの小分子阻害剤、PNU-145156E (Pharmacia & Upjohn SpA)、IGF-1拮抗薬、BMS 536924、二重IGF-1RおよびIRキナーゼ阻害剤 (Bristol-Myers Squibb) 、AEW541
(Novartis) 、GSK621659A (Glaxo Smith-Kline); INSM-18 (Insmed) 、および XL-228 (Exelixis) を含む。
【0162】
[174] 抗体ベースのIGF-1Rキナーゼ阻害剤には、その天然リガンドによってIGF-1R活性化を部分的または完全にブロックできる、抗体フラグメントを含めた任意の抗IGF-1R抗体を含む。抗体ベースのIGF-1Rキナーゼ阻害剤には、IGF-1R活性化を部分的または完全にブロックできる抗体フラグメントを含めた任意の抗IGF-1抗体も含む。抗体ベースのIGF-1Rキナーゼ阻害剤の非限定的例には、Larsson, O. et al (2005) Brit. J. Cancer 92:2097-2101 and Ibrahim, Y.H. and Yee, D. (2005) Clin. Cancer Res. 11:944s-950sに記述のもの; またはImcloneによって開発中のもの (例えばIMC-A12)、またはAMG-479、抗IGF-1R抗体(Amgen); R1507、抗IGF-1R抗体 (Genmab/Roche)、AVE-1642、抗IGF-1R抗体 (Immunogen/Sanofi-Aventis)、MK 0646 またはh7C10、抗IGF-1R抗体 (Merck)、またはSchering-Plough Research Instituteによって開発中の抗体 (例えばSCH 717454または19D12、または米国特許出願公報US 2005/0136063 A1およびUS 2004/0018191 A1に記述のもの)を含む。IGF-1Rキナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体、または、抗体フラグメントを含めた、結合特異性を持つ抗体であり得る。
【0163】
[175] 「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される非毒性塩基または酸から調製された塩を指す。本発明の化合物が酸の場合、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む、薬学的に許容される非毒性塩基から好都合に調製されうる。このような無機塩基から生じる塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(酸化第2銅および酸化第1銅)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(マンガンおよび亜マンガン)、カリウム、ナトリウム、亜鉛および同類の塩を含む。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から生じる塩には、第一、第二および第三アミン、および環状アミンおよび天然および合成置換アミンなどの置換アミンを含む。塩を形成できる他の薬学的に許容される有機非毒性塩基には、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N’,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンおよび類似のものなどのイオン交換樹脂を含む。
【0164】
[176] 本発明の化合物が塩基の場合、その対応する塩は、無機酸および有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性酸から好都合に調製されうる。このような酸には、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、および同類のものを含む。特に好ましいものは、クエン酸、臭化水素素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。
【0165】
[177] 本発明に有用な医薬組成物は、活性原料としてのEGFR(および/またはIGF-1R)キナーゼ阻害剤(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)、薬学的に許容される担体および随意に他の治療成分またはアジュバントを含む。他の治療薬には、上記にリストされるように、細胞毒性剤、化学療法剤または抗癌剤、またはこのような薬剤の効果を増強する薬剤を含みうる。組成物には、経口、直腸、局所および非経口(皮下、筋肉内および静脈内を含む)投与に適する組成物を含むが、特定の例の最適経路は特定の宿主、および活性原料を投与する目的の状態の性質および重症度によって決まる。医薬組成物は、単位用量形状で便利に提示可能で、薬学分野でよく知られている任意の方法で調製しうる。
【0166】
[178] 実際には、本発明のEGFR(および/またはIGF-1R)キナーゼ阻害剤(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)によって代表される化合物は、活性原料として、従来の薬学的配合技術に従った医薬担体と共に、密接な混合物中に混合することができる。担体は、投与(例えば、経口または非経口(静脈内を含む))に対して望ましい調製形態によって、さまざまな形態をとりうる。したがって、本発明の医薬組成物は、それぞれが所定量の活性原料を含むカプセル、カシェーまたは錠剤などの経口投与に適した個別単位で提示できる。さらに、組成物は、粉末として、顆粒として、溶液として、水性液体中の懸濁液として、非水性液体として、水中油型エマルジョンとして、または油中水型液体エマルジョンとして提示されうる。上記に述べた一般的な剤形に加えて、EGFR(および/またはIGF-1R)キナーゼ阻害剤(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)は、放出制御手段および/または送達装置によっても投与されうる。組み合わせ組成物は、薬学の任意の方法によって調製されうる。一般的に、このような方法には、1つ以上の必要な原料を構成する担体を活性原料と関連させるステップを含む。一般的に、組成物は、活性原料を液体担体または細かく分割された固体担体または両方と均一かつ密接に混合することによって調製される。生成物は次に望ましい形状に便利に成形される。
【0167】
[179] このように、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体およびEGFR(および/またはIGF-1R)キナーゼ阻害剤(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)を含みうる。EGFR(および/またはIGF-1R)キナーゼ阻害剤(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)は、他の治療活性化合物の1つ以上と組み合わせて、医薬組成物に含有されうる。他の治療活性化物には、上記にリストされるように、細胞毒性剤、化学療法剤または抗癌剤、またはこのような薬剤の効果を増強する薬剤を含みうる。
【0168】
[180] したがって、本発明の1つの実施形態では、医薬組成物は、別の抗癌剤と組み合わせたEGFR(および/またはIGF-1R)キナーゼ阻害剤の組み合わせを含むことができ、ここで前述の抗癌剤は、アルキル化剤、抗代謝剤、微小管素材剤、ポドフィロトキシン、抗生物質、ニトロソウレア、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、および血管新生阻害剤から成るグループから選択されたメンバーである。
【0169】
[181] 使用される医薬担体は、例えば、固体、液体または気体でありうる。固体担体の例には、乳糖、白土、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリ
ン酸マグネシウム、およびステアリン酸を含む。液体担体の例は、シュガー・シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、および水である。気体担体の例には、二酸化炭素および窒素を含む。
【0170】
[182] 経口剤形の組成物の調製では、任意の都合のよい医薬媒体を使用しうる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤、および同類のものを懸濁液、エリキシルおよび溶液などの経口液体製剤の形成に使用しうるが、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤および同類のものを、粉末、カプセルおよび錠剤などの経口固体製剤の形成に使用しうる。投与の簡便性のために、錠剤およびカプセルが好ましい経口投与単位であり、ここでは固体医薬担体が使用される。随意に、錠剤は標準水性または非水性技術でコートされうる。
【0171】
[183] 本発明の組成物を含む状態は、随意に付属原料またはアジュバントの1つ以上と共に、圧縮または成形によって調製されうる。圧縮錠剤は、適切な機械で、粉末または顆粒などの自由流動形状の活性原料を、随意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性化剤または分散剤と混合して圧縮することによって調製されうる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を、適切な機械で成形することによって作ることができる。各錠剤は、好ましくは約0.05mg〜約5gの活性原料を含み、各カシェーまたはカプセルは好ましくは約0.05mg〜約5gの活性原料を含む。
【0172】
[184] 例えば、ヒトへの経口投与を目的とした製剤は約0.5mg〜約5gの活性剤を含み、総組成物の5〜95%の間で変化する適切で便利な量の担体材料と混合されうる。単位投与形態は、一般に活性原料を約1mg〜約2g、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mg含む。
【0173】
[185] 非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、水中の活性化合物の溶液または懸濁液として調製されうる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な表面活性剤を含めることができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物を油中で分散液に調製することもできる。さらに、微生物の有害な増殖を防ぐために、保存剤を含めることができる。
【0174】
[186] 注射用に適した本発明の医薬組成物は、滅菌水溶液または分散液を含む。さらに、組成物は、このような滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末形態でもよい。すべての例では、最終的な注射剤型は無菌でなければならず、簡単に注射器に入れられるよう事実上流動的でなければならない。医薬組成物は、製造下および保管条件下で安定していなければならず、したがって好ましくは、細菌およびカビなどの微生物の汚染作用に対して保護されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、植物油、およびその適切な混合物を含む、溶媒または分散溶媒でありうる。
【0175】
[187] 本発明の医薬組成物は、例えば、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散布剤または同類のものなど、局所使用に適した形態でありうる。さらに、組成物は、経皮デバイスでの使用に適した形態でもありうる。これらの製剤は、本発明のEGFR(および/またはIGF-1R)キナーゼ阻害剤(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)を使用して、従来の処理方法を介して調製しうる。一例として、親水性材料と水を 約5wt%〜約10wt%の化合物と共に混合して、望ましい稠度を持つクリームまたは軟膏を作ることによって、クリームまたは軟膏を調製する。
【0176】
[188] 本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸投与に適した形態でありうる。混合物が単位用量坐薬を形成することが好ましい。適切な担体には、ココアバターおよび当
技術分野で一般的に使用される他の材料を含む。坐薬は、まず組成物を軟化または溶かした担体と混合し、冷却および型成形することによって便利に形成しうる。
【0177】
[189] 前述の担体原料に加えて、上述の製剤処方は、必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、表面活性化剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)および同類のものを含みうる。さらに、対象である受け手の血液と等張の製剤を提供するために、アジュバントを含めることができる。EGFR(および/またはIGF-1R)キナーゼ阻害剤(その各成分の薬学的に許容可能な塩を含む)を含む組成物は、粉末または液体濃縮型にも調製されうる。
【0178】
[190] 本発明の化合物の組み合わせの投与レベルは、ほぼ本明細書に記述の通り、またはこれらの化合物の技術分野に記述の通りである。しかし当然ながら、特定の患者に対する特定の用量レベルは、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物併用および治療を受けている特定疾患の重症度を含むさまざまな要因によって決まる。
【0179】
[191] 本発明は、以下の実験の詳細で、より良く理解される。しかし、以下に続く請求項により完全に記述されるように、検討されている特定の方法および結果は本発明の単なる実例であり、これをいかなる形でも制限するとは見なされないことは、当業者であれば容易に理解できるはずである。
【0180】
[192] 実験の詳細:
[193] 序論
[194] 上皮および間葉細胞は、さまざまな機能的および表現型特性で異なる。上皮細胞は、密着結合、接着結合、デスモソーム結合およびギャップ結合を含む特別な膜構造によって密接に接合された細胞層を形成する。これらの細胞は、頂端・基底外側の分極を示し、細胞間結合の形成を引き起こすカドヘレンおよび特定のインテグリンなどの接着分子の分配を示す。上皮細胞は運動性で、上皮層内に留まったまま最も近隣から動くことができる。間葉細胞は組織化された細胞層を形成せず、同じ頂端・基底外側の組織化および細胞表面分子の分極を示さない。これらは近接細胞との最低限の接触のみを示し、通常、基底膜とは関連していない。培養では、間葉細胞は紡錘体様形態を持ち、高度に運動性の傾向があるが、生体内では必ずしもそうとは限らない。
【0181】
[195] 上皮細胞は、上皮から間葉への変化またはEMTとして知られるプロセスによって、間葉細胞に変換されうる。この用語は、上皮細胞が多くの上皮特性を失い、間葉細胞の特性を獲得する、一連の事象を説明している。この変換には、細胞構造および挙動の複雑な変化が必要である。細胞特性の変化には、一連の細胞間および細胞内変化を伴うが、そのすべてが常にEMTの際に観察されるわけではない。したがって、EMTは必ずしも系統転換を指すわけではない。EMT中に起こる一連の変化は、受信される細胞外シグナルの統合によって決定される可能性が最も高い。METとして知られる逆プロセスも報告されている。
悪性腫瘍の特徴である浸潤は、初期腫瘍病巣から隣接する宿主組織への腫瘍細胞の転移であり、腫瘍細胞が血管内皮を貫通し、循環血液に入って遠隔転移を形成することを可能にする。癌の周辺に見られる組織学的パターンは、支質の間質マトリックス内で独立したままの腫瘤から剥離した、個別の癌細胞の存在である。これらの細胞は、浸潤癌細胞として病理学者によって容易に特定されるが、これらと腫瘍の凝縮したように見える部分との関係やこのパターンの発現の基礎となるメカニズムは、組織学的レベルではすぐには明らかでない。この腫瘍組織構造の変化について、上皮から間葉への変化(EMT)として知られる特有の表現型修飾を通して起こることを示す証拠が増えている。EMTの重要な特性は、細胞間接触の障害、および細胞運動性の増強であり、これは親上皮組織の細胞の放出につながる。結果得られる間葉様表現型は、移動、腫瘍浸潤および播種に適しており、転移性
進行が進むことを可能にする。EMTの分子ベースは完全には解明されていないが、いくつかの相互接続変換経路、および関与している可能性のある多くの情報伝達分子が特定されている。これらには、成長因子、受容体チロシンキナーゼ、Rasおよび他の小GTPアーゼ、Src、β-カテニンおよびインテグリンを含む。これらの経路のほとんどは、腫瘍浸潤に必須の事象でEMTの「マスター」プログラマーとも呼ばれる、上皮分子E-カドヘリンのダウンレギュレーションに集中している。E-カドヘリン遺伝子は、胸の小葉癌およびびまん性胃癌などの多くのびまん性癌では体細胞において不活性化されており、腫瘍細胞は腫瘤全体に渡って、その上皮特性の多くを失い、抗浸潤性のEMT-由来組織学的パターンを示す。E-カドヘリンの抑制的調節は、固体の非びまん性癌の腫瘍・間質境界でも見られ、ここでは組織学的切片にわずかに浸潤しているEMT由来腫瘍細胞が観察される。この後者のシナリオでは、E-カドヘリンの損失およびEMTは一過性であり、腫瘍微小環境によって制御されている可能性のある可逆的プロセスであり得る。浸潤中にEMTを受けた腫瘍細胞は、E-カドヘリン発現を取り戻すように見える。EMTに関与する分子は薬物の潜在的標的を代表するため、これらの知見は、分子画像診断法を使用した一次腫瘍および転移拡散の特定のための新しい道を開き、このような悪性腫瘍に対するより適切で有効な治療レジメンをもたらす。
【0182】
[197] 材料および方法
[198] E-カドヘリン抗体は Santa Cruz Biotechnology (カリフォルニア州サンタクルーズ; 製品番号 sc-7870 L) から入手し、濃度はリン酸緩衝生理食塩水中2.0 mg/mLで、ゼラチンおよびアジ化ナトリウムを含有しない。この抗体は、ヒトまたはマウスE-カドヘリンのどちらかに結合できるウサギポリクローナルIgGである。これは、ヒト起源のE-カドヘリンの細胞外ドメイン中に位置するアミノ酸600-707に対して作られた(Tanihara, et al. 1994. Cell Adhes. Commun. 2: 15-26)。
【0183】
[199] AF680標識キットは、Invitrogen (製品番号S30045; カリフォルニア州カールスバッド)から入手した。
【0184】
[200] 本明細書で使用される場合、「H358細胞」とは、ヒト肺細気管支または肺胞に由来し、細気管支肺胞上皮癌と非小細胞肺腺癌の両方の形態を示す、細胞株NCI-H358TM [a.k.a. H-358; H358](CRL-5807としてアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関 (ATCC) から入手可能)の細胞を指す。H358細胞株、BxPC3細胞、およびMDA-MB-231細胞はすべてATCCから入手し、ATCCが処方したように10% FCSを含む培地で培養された。
【0185】
[201] H358 Tet-ON Zeb LV 198動物モデル(すなわち、ヌードマウス異種移植片)は、基本的に下述のように調製されたTET誘導性Zeb-1 H358細胞を使用した標準技術によってOSI- Boulder社内で作成された。
【0186】
[202] TET反応性細胞株の作成
[203] H358細胞を、培養24時間後に確実に集密80%となる密度で、90mm TC皿に播種した。Fugene HD形質移入試薬(Fugene)を使用して、プラスミドptTSおよびprTAを10:1の割合で切断して細胞に入れた。4時間後に培地を除去して通常の成長培地と入れ替え、細胞をさらに48時間培養した。その後、細胞を異なる比率(1:25、1:50および1:100)で分割して150 mm TC皿に入れ、24時間増培養した。次に培地に薬物(ブラスチシジン、100μg/ml)を添加し、Bsd濃度を徐々に10ug/mlまで減少させながら3〜4週間に渡って細胞コロニーを選択した。細胞コロニーフィルターを使って単細胞から生じたコロニーをプレートから取り出し、拡大させた。ルシフェラーゼ分析(Steady Glo、Promega)で分析されるように、一過性に導入されたTET反応性ルシフェラーゼ発現プラスミドの厳重に制御された誘導性発現をを示すかどうかについて、クローンをスクリーニングした。ドキシサイクリン発現に対するルシフェラーゼ発現の10倍以上の誘導が、さらなる細胞株の創生に対して適
切であると考えられた。
【0187】
[204] TET誘導性遺伝子細胞株の作成
[205] Tet制御プロモーター(pTRE2、Invitrogen)の制御下、標準方法を使用して、Snail、Zeb1、またはTGFβをコードする完全長cDNAを含むプラスミド(構成的に活性)(Snail mRNA配列, Genbank NM_005985、GeneID: 6615の生成物、Zeb1 mRNA配列、Genbank NM_030751, GeneID: 6935の生成物、構成的に活性なSer223/S225ヒトTGF-β-1をコードするTGFβ配列 (すなわち、Genbank NP_000651 (GeneID: 7040の生成物))を作成した。上述のように、TET-ON細胞株を蒔き、pTRE2-Snail、pTRE2-Zeb1、またはpTRE2-TGFβプラスミドで形質移入した。150mm皿に蒔いた後、プロマイシン (0.5 μg/mL) を使用して単一細胞を選択した。プロマイシン濃度を最終濃度0.1 μg/mlまで減少しながら、3〜4週間に渡ってコロニーを選択した。コロニーフィルターを使ってコロニーを取り出し、標的遺伝子のTET依存性発現をウェスタンブロット分析でスクリーニングした。一部の例では、複数のcDNAが特定の細胞株へと同時遺伝子導入された。これらの方法によって、上記にリストしたcDNAによって推進され、テトラサイクリンまたはその類似体に反応してEMTを受ける細胞株の作成が可能になる。
【0188】
[206] AF680 E-カドヘリンNIRプローブの合成: 製造業者の標識指示(SAIVI迅速抗体標識キット、Invitrogen)に従って、E-カドヘリン抗体 (1.0 mg) をNHS活性化エステル、重炭酸ナトリウム (50μL) および標準溶液 (10μL)と共に室温で60分間培養することによって、E-カドヘリン抗体をAF680染料で標識し遮光した。次に粗製反応混合物をサイズ排除カラムに入れ、PBSを溶離液として使って染料複合体を溶出した。未反応染料はカラムに残った。クロマトグラフィー分離に続いて、染料複合体(A280)および未反応染料(A679)のピーク吸収を測定することにより、染料複合体の標識度(DoL)を分光光度法で決定した。DoLは、Invitrogenから提供された式から計算された。一般に、E-カドヘリン複合体に対して得られるDoL(フルオロフォアのモル:抗体のモル)は1.20〜2.0の範囲である。
【0189】
[207] NS (非特異的) NIRプローブの合成: このプローブはE-カドヘリンNIRプローブと同じ手順を使用して合成された。この抗体NIRプローブの標識度(DoL)は、1.66であった。使用されたNS抗体は、Jackson ImmunoResearch Laboratories(ペンシルバニア州ウェストグローブ)製のウサギ抗ラットIgG (H+L)、カタログ番号312-005-003であった。
【0190】
[208] 動物モデル:H358腫瘍NSCLC細胞を、10% FCSおよび1%ピルビン酸ナトリウムを添加したRPMI培地中に維持した。メスのCD-1無胸腺nu/nuマウス(すなわち、「ヌードマウス」、Charles Rivers Laboratories)の脇腹部分に、PBS:マトリゲルの50:50混合物 (100μL) 中の1.0 x 107個の細胞を皮下接種した。細胞接種から約7日後には、マウスに触知可能な腫瘍が明らかに見られる。この細胞株は、細胞表面E-カドヘリン発現陽性である。
【0191】
[209] MDA-MB-231細胞を、10% FCS添加IMDM培地で培養した。メスのCD-1無胸腺nu/nuマウス(Charles Rivers Laboratories)の脇腹部分に、PBS (100μL) 中の1.0 x 107個の細胞を皮下接種した。細胞接種から約14日後には、マウスに触知可能な腫瘍が明らかに見られる。この細胞株は、細胞表面E-カドヘリンの発現に対して大部分が陰性であった。
【0192】
[210] BxPC-3(ヒトすい臓)細胞を、10% FCS添加RPMI培地で培養した。メスのCD-1無胸腺nu/nuマウス(Charles Rivers)の胸髄上部領域に、PBS (100μL) 中の1.0 x 107個の細胞を皮下接種した。細胞接種から約14日後には、マウスに触知可能な腫瘍が明らかに見られる。この細胞株は、細胞表面E-カドヘリン陽性である。
【0193】
[211] 分子撮像:次に、E-カドヘリンNIRの10〜100 μgを、腫瘍を持つマウスに側部尾静脈から注射する。マウスの撮像は、IVIS(登録商標)スペクトル(Caliper Life Sciences、米国マサチューセッツ州ホプキントン)を使用して行う。画像は、NIRプローブの注射後75分から240時間までに渡って取得される(10日間)。生体内撮像の取得パラメーターは、640 nmでの励起波長および720 nmで収集される発光波長である。一般に、取得時間は動物1頭あたり約2〜15秒である。動物は、腫瘍タイプによって、腹臥位または側臥位で撮像チャンバー内に配置し、上述の励起および発光波長を使って撮像した。結果得られる画像は、Living Image 3.0 Softwareパッケージを使用した後の画像分析用に保存される。
【0194】
[212] 結果および考察
[213] 実験I:生体内でのAF680 E-カドヘリンNIRプローブの局在研究
[214] H358腫瘍を持つnu/nuマウスに、40μgのE-カドヘリンNIRプローブ(図1の上部パネル)および同じ質量のAF680標識した非特異的IgGイレレバント抗体を注射した。(図1の下部パネル)。画像は、それぞれのNIRプローブの注射後48時間に取得した。励起は640nmで、発光は720nmで収集した。H358腫瘍は、AF680 E-カドヘリンNIRプローブを投与した動物の右脇腹部分に明らかに見られるが、非特異的IgGプローブを投与した動物は目に見える腫瘍塊はほとんど示さない。ROI(関心領域)測定別の非特異的IgG局在に対するAF680 E-カドヘリンNIRプローブ局在の定量化では、H358腫瘍中のE-カドヘリンプローブは、非特異的プローブに対して2.5倍の増加を示した。ヒトH358細胞の代わりに上皮マウス腫瘍細胞株(すなわち、4T1マウス乳腺細胞株、ATCC(登録商標)Number CRL-2539 TM)を使用して、類似の結果が得られた。
【0195】
[215] 腫瘍を持つマウス1匹あたり40μg (A)、20μg (B) および10μg (C) でのAF680 E-カドヘリンNIRプローブのタイトレーションが図3に示されている。画像は、注射用量の関数としてのプローブのシグナル強度の段階的減少を示している。撮像パラメーターは、励起波長640nmおよび発光波長720nmであった。図4の添付ヒストグラムは、用量の関数としての、腫瘍あたりのNIRプローブの取り込み量を定量的に示す。
【0196】
[216] 実験II:腫瘍を持つマウスにおけるAF680 E-カドヘリンNIRプローブのPK試験
[217] 20μgのE-カドヘリンNIRを注射したH358腫瘍を持つマウス (n = 3) において、薬物動態学的(PK)試験を行い、NIRプローブの注射から75分後、6時間後、27時間後、48時間後、120時間後および192時間後の時点で逐次撮像した(パネル5A-5F)。画像は、27時間までシグナル強度が増加し、その後シグナル強度が減少していることを示す(図5)。添付のグラフは、これらの動物の経時的なプローブの吸収とクリアランスを示す(図6)。
【0197】
[218] 実験III:生体内でのプローブ特異性実演研究
[219] メスCD-1 nu/nu無胸腺マウスの左脇腹部分にH358を、右脇腹部分にMDA-MB-231細胞を左右対称に接種した(図7A-写真画像)。H358異種移植片は、細胞表面E-カドヘリン発現に対して陽性である一方、MDA-MB-213異種移植片は細胞表面E-カドヘリン発現に対して陰性である。2つの腫瘤が同じ大きさに達した時、側部尾静脈を介して、動物に20gのAF680 E-カドヘリンNIRプローブを注射した。プローブの注射後48時間にマウスを撮像した。図7Bは、MDA-MB-231(右脇腹)E-カドヘリン陰性腫瘍と比較した、E-カドヘリン発現腫瘍のNIRプローブの特異性を示す。
【0198】
[220] 実験 IV:生体内での局在と取り込みの定量化
[221] BxPC-3腫瘍を持つnu/nuマウスに、40μgのE-カドヘリンNIRプローブおよび同じ質量のAF680標識した非特異的IgGイレレバント抗体を注射した。プローブの注射後24時間にマウスを撮像し、次に選択された組織を動物から摘出し、画像を取得した。励起は640nm
で、発光は720nmで収集した。AF680非特異的IgGNIRプローブを投与した腫瘍と比較して、AF680 E-カドヘリンNIRプローブを注射したマウスのBxPC3腫瘍は、生体内(図8)および生体外(図9)で明らかに目に見えた。ROI測定別の非特異的IgG局在に対するAF680 E-カドヘリンNIRプローブ局在の定量化では、腫瘍中のE-カドヘリンのプローブはこの腫瘍タイプの非特異的プローブに対して3倍以上の増加を示した(図10)。
【0199】
[222] 実験V:生体内でのEMTの撮像
[223] H358 Tet-ON Zeb LV-195異種移植片を持つメスCD-1無胸腺nu/nuマウスを2つのグループに分けた (n=4)。陽性対照グループは通常の飲料水を7日間与えられたのに対し、陰性対照グループは0.5mg/mLドキシサイクリンを含む水を与えられた。ドキシサイクリンは、生体内でE-カドヘリン発現を抑制する遺伝子Zebを含む。7日間のドキシサイクリン治療後、すべてのマウスに20μgのAF680 E-カドヘリンNIRプローブを注射し、注射後48時間に撮像した(図11)。これらのマウスから選択された組織を取り出し、生体外で撮像した。陽性対照グループのNIRプローブの取り込みは、ドキシサイクリン治療を受けているグループよりも約45%高く、このE-カドヘリンNIRプローブを生体内のEMT変化のバイオマーカーとして使用して、生体内のE-カドヘリン発現の変化を撮像・定量化できることを示している(図12)。
【0200】
[224] 略語
NIR:近赤外、AF680:Alexa Fluor 680染料、EGF:上皮成長因子、EGFR:上皮成長因子受容体、EMT:上皮から間葉への変化、MET:間葉から上皮への変化 、NSCL:非小細胞肺、NSCLC:非小細胞肺癌、HNSCC:頭頸部扁平上皮癌、CRC:結腸直腸癌、MBC:転移性乳癌、Brk:乳房腫瘍キナーゼ (別名、タンパク質チロシンキナーゼ6 (PTK6))、FCS:ウシ胎仔血清、LC:液体クロマトグラフィー、MS:質量分析、ROI:関心領域、IGF-1:インスリン様成長因子-1、TGF:形質転換成長因子α、HB-EGF:ヘパリン結合上皮成長因子、IC50:50%最大阻害濃度、pY:ホスホチロシン、wt:野生型、PI3K:ホスファチジル・イノシトール-3 キナーゼ、GAPDH:グリセルアルデヒド 3-リン酸デヒドロゲナーゼ、MAPK:マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ、PDK-1:3-ホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ 1、Akt:別名タンパク質キナーゼBはウィルス癌遺伝子v-Akの細胞性相同体である、mTOR:ラパマイシンの哺乳類の標的、4EBP1:真核生物翻訳開始因子-4E (mRNA キャップ結合タンパク質) 結合タンパク質-1:別名 PHAS-I、p70S6K:70 kDa リボソームタンパク質-S6 キナーゼ、eIF4E:真核生物翻訳開始因子-4E (mRNA キャップ結合タンパク質)、Raf:Raf癌遺伝子のタンパク質キナーゼ生成物、MEK:ERKキナーゼ:別名マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ、ERK:細胞外シグナル制御タンパク質キナーゼ:別名マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ、PTEN:「染色体10上で欠失したホスファターゼおよびテンシン相同体」:ホスファチジルイノシトールリン酸ホスファターゼ、pPROTEIN:リン酸タンパク質:「タンパク質」はリン酸化され得る任意のタンパク質であり得る、例えば
EGFR:ERK:S6 など、PBS:リン酸緩衝生理食塩水、TGI:腫瘍増殖阻害、WFI:注射用水、SDS:ドデシル硫酸ナトリウム、ErbB2:「v-erb-b2 赤芽球性白血病ウィルス癌遺伝子相同体 2」:別名 HER-2、ErbB3:「v-erb-b2 赤芽球性白血病ウィルス癌遺伝子相同体 3」:別名HER-3、ErbB4:「v-erb-b2 赤芽球性白血病ウィルス癌遺伝子相同体 4」:別名 HER-4、FGFR:線維芽細胞増殖因子受容体 、DMSO:ジメチル・スルホキシド、HGF:肝細胞成長因子、Wnt:無翼型 MMTV 組込み部位ファミリー:メンバー1、IL-1:インターロイキン1、HB-EGF:ヘパリン結合EGF様成長因子、MSP:マクロファージ刺激タンパク質、Wnt5a:無翼型MMTV 組込み部位ファミリー:メンバー5a、Shh:ソニック・ヘッジホッグ、TNF-α:形質転換成長因子-α。
【0201】
[225] 参照による組み込み
[226] 本明細書に開示されたすべての特許、公開特許出願および他の参考文献は、ここに参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0202】
[227] 同等物
[228] 当業者であれば、日常の実験以上のものを使用することなく、本明細書に具体的に記述された本発明の特定実施形態の多くの同等物を認識、または解明できるはずである。このような同等物は、以下の請求項の範囲に包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法であって以下の:
(a) EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、
(b) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を腫瘍を持つ患者に導入すること、
(c) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの検出手段を採用すること、および
(d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化する画像分析手段を使用すること、
を含み、ここで、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す。
【請求項2】
患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法で、ここで患者は癌の動物モデルであり、この方法には以下を含む:
(a) 薬剤が腫瘍細胞に接触するように、前述の患者に試験薬を導入すること、
(b) 腫瘍細胞がEMTを受けるように誘導する能力を持つ薬剤に、患者を接触させること、
(c) EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、
(d) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を患者に導入すること、
(e) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を採用すること、
(f) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化する画像分析手段を使用すること、ここで、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す、および
(g) (f) のシグナルを、(a) にあるような試験薬ではないもので同様に治療された患者から生成されたシグナルと比較し、それによって前述の試験薬が、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害できる薬剤であるかどうかを特定すること。
【請求項3】
患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法で、これには以下を含む:
(a) 薬剤が腫瘍細胞に接触するように、前述の患者に試験薬を導入すること、
(b) EMTステータスバイオマーカーに結合する抗体、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、
(c) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を患者に導入すること、
(d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を採用すること、
(e) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化する画像分析手段を使用すること、ここで、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す、および
(f) (e) のシグナルを、(a) にあるような試験薬ではないもので同様に治療された患者から生成されたシグナルと比較し、それによって前述の試験薬が、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害できる薬剤であるかどうかを特定すること。
【請求項4】
癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法で、これには以下を含む:
(a) 請求項1の方法によって腫瘍のEMTステータスを評価し、および
(b) 前述の患者に、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を投与すること。
【請求項5】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含む、請求項4の方法。
【請求項6】
癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法で、これには以下を含む:
(a) 請求項1の方法によって腫瘍のEMTステータスを評価し、および
(b) 前述の患者に、IGF-1Rキナーゼ阻害剤の治療有効量を投与すること。
【請求項7】
IGF-1Rキナーゼ阻害剤がOSI-906を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法で使用するために、EMTステータスバイオマーカーの細胞外領域に結合する抗体および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を含む組成物。
【請求項9】
EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーである、請求項1〜8のいずれかの方法または組成物。
【請求項10】
上皮バイオマーカーがE-カドヘリン、Erb-B3、S100-P、S100-A6、TACD1、CD98、MUC1、またはZO-1である、請求項9の方法または組成物。
【請求項11】
EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーである、請求項1〜8のいずれかの方法または組成物。
【請求項12】
間葉バイオマーカーがEFNB2、FLRT3、SPARCまたはCD44である、請求項11の方法または組成物。
【請求項13】
レポーター分子がNIR染料を含む、請求項1〜8のいずれかの方法または組成物。
【請求項14】
レポーター分子が放射性核種を含む、請求項1〜8のいずれかの方法または組成物。
【請求項15】
患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法で、これには以下を含む:
(a) EMTステータスバイオマーカーに結合するAFFIBODY(登録商標) 分子、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、
(b) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を腫瘍を持つ患者に導入すること、
(c) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの検出手段を採用すること、および
(d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化する画像分析手段を使用すること、ここで、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す。
【請求項16】
患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法で、ここで患者は癌の動物モデルであり、この方法には以下を含む:
(a) 薬剤が腫瘍細胞に接触するように、前述の患者に試験薬を導入すること、
(b) 腫瘍細胞がEMTを受けるように誘導する能力を持つ薬剤に、患者を接触させること、
(c) EMTステータスバイオマーカーに結合するAFFIBODY(登録商標) 分子、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、
(d) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を患者に導入すること、
(e) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を採用すること、
(f) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化する画像分析手段を使用すること、ここで、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す、および
(g) (f) のシグナルを、(a) にあるような試験薬ではないもので同様に治療された患者から生成されたシグナルと比較し、それによって前述の試験薬が、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害できる薬剤であるかどうかを特定すること。
【請求項17】
患者の腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害する薬剤を特定する方法で、これには以下を含む:
(a) 薬剤が腫瘍細胞に接触するように、前述の患者に試験薬を導入すること、
(b) EMTステータスバイオマーカーに結合するAFFIBODY(登録商標) 分子、および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を提供すること、
(c) 複合体が腫瘍細胞のEMTステータスバイオマーカーに接触するように、前述の複合体を患者に導入すること、
(d) 腫瘍部位の複合体からのシグナルを検出する手段を採用すること、
(e) 腫瘍部位の複合体からのシグナルの位置を特定し定量化する画像分析手段を使用すること、 ここで、陽性シグナルは、EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーの場合は上皮腫瘍細胞の存在を示し、EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーの場合は間葉腫瘍細胞の存在を示す、および
(f) (e) のシグナルを、(a) にあるような試験薬ではないもので同様に治療された患者から生成されたシグナルと比較し、それによって前述の試験薬が、腫瘍細胞が上皮から間葉への変化を受けるのを阻害できる薬剤であるかどうかを特定すること。
【請求項18】
癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法で、これには以下を含む:
(a) 請求項15の方法によって腫瘍のEMTステータスを評価し、および
(b) 前述の患者に、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を投与すること。
【請求項19】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含む、請求項18の方法。
【請求項20】
癌を持つ患者の腫瘍を治療するための方法で、これには以下を含む:
(a) 請求項15の方法によって腫瘍のEMTステータスを評価し、および
(b) 前述の患者に、IGF-1Rキナーゼ阻害剤の治療有効量を投与すること。
【請求項21】
IGF-1Rキナーゼ阻害剤がOSI-906を含む、請求項20の方法。
【請求項22】
患者の腫瘍細胞のEMTステータスをin situで決定する方法で使用するために、EMTステータスバイオマーカーの細胞外領域に結合するAFFIBODY(登録商標) 分子および検出可能なシグナルを生成するレポーター分子を含むEMTステータス検出複合体を含む組成物。
【請求項23】
EMTステータスバイオマーカーが上皮バイオマーカーである、請求項15〜22のいずれかの方法または組成物。
【請求項24】
上皮バイオマーカーがE-カドヘリン、Erb-B3、S100-P、S100-A6、TACD1、CD98、MUC1、またはZO-1である、請求項23の方法または組成物。
【請求項25】
EMTステータスバイオマーカーが間葉バイオマーカーである、請求項15〜22のいずれかの方法または組成物。
【請求項26】
間葉バイオマーカーが EFNB2、FLRT3、SPARCまたはCD44である、請求項25の方法または組成物。
【請求項27】
レポーター分子がNIR染料を含む、請求項15〜22のいずれかの方法または組成物。
【請求項28】
レポーター分子が放射性核種を含む、請求項15〜22のいずれかの方法または組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−519170(P2012−519170A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552090(P2011−552090)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025136
【国際公開番号】WO2010/099137
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511205552)オーエスアイ・ファーマシューティカルズ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】