説明

生体内成分分析装置

【課題】生体内に設置する際の制約を少なくし、且つ、装置全体の小型化を容易にすること。
【解決手段】この生体内成分分析装置1は、生体内に配置されて生体内の成分を分析する生体内成分分析装置であって、成分に含有される分子を透過させる分子透過膜30a,30bが、外壁の一部を構成するように設けられた検出容器25と、検出容器25の内部においてミラー33a,33bを含んで構成され、窓部31から窓部32に向けて光を導く光路Aと、窓部31から光路Aに沿った方向に光を入射する光源26と、窓部32から検出容器25の外部に向けて出射した光を検出する光検出器27と、光源26と窓部31との間に設けられ、第1の偏波面を有する光を透過させる偏光子28と、窓部32と光検出器27との間に設けられ、第2の偏波面を有する光を透過させる検光子29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に配置されて生体内の成分を分析するための生体内成分分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、血糖値等の生体内の成分量を測定することによって生体の健康状態を調べることが行われている。例えば、生体から血液を採取して、その血液中のグルコースの濃度を酵素反応を利用することで定量することができる。また、最近では、指などから針を用いて微量の血液を採取して、その血液を対象に試験紙型のセンサを使って電気化学的に血糖値を測定する装置が知られている。
【0003】
一方では、生体内の成分量を測定するときの煩わしさを低減するために、グルコース濃度を人又は動物の生体内で測定可能なグルコースセンサが開示されている(下記特許文献1参照)。このグルコースセンサは、中空繊維を含む円柱状の作用電極を含む複数の電極と、それらの電極に接続された電気回路とを含み、作用電極から発生した電流を電気回路を用いて測定し、A/D変換器を用いて変換された測定結果データをメモリに保存する。
【特許文献1】特開平6−7324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のグルコースセンサにおいては、電極と電気回路とを含む構成であるためセンサの小型化には限界がある。すなわち、センサの感度を高めるためには中空繊維を含む作用電極にはある程度の容積が必要となるし、電気回路に搭載される素子によってもセンサの小型化が困難になる。また、この作用電極はカプセル容器に突出して設けられるものであり、生体内に設置する際に支障を来す可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、生体内に設置する際の制約を少なくし、且つ、装置全体の小型化を容易にする生体内成分分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の生体内成分分析装置は、生体内に配置されて生体内の成分を分析する生体内成分分析装置であって、成分に含有される分子を透過させる分子透過膜が、外壁の一部を構成するように設けられた容器と、容器の内部において反射鏡を含んで構成され、光入力端から光出力端に向けて光を導く光路と、光入力端から光路に沿った方向に光を入射する光源と、光出力端から容器の外部に向けて出射した光を検出する検出部と、光源と光入力端との間に設けられ、所定の偏波面を有する光を透過させる偏光子と、光出力端と検出部との間に設けられ、所定の偏波面と異なる偏波面を有する光を透過させる検光子と、を備える。
【0007】
このような生体内成分分析装置によれば、測定対象の分子を含む成分が、容器の外壁に設けられた分子透過膜を透過することによって容器内に導入される一方で、その容器内に形成された光路上の光入力端から光路に沿って光が入射され、その光は光路上の反射鏡に反射されながらその光路に沿って導かれた後、光出力端から容器の外部に出射される。このとき、光入力端に入射される光は、偏光子によって所定の偏波面を有する直線偏光にされた後、容器内の測定対象成分を透過することによって成分濃度に応じてその偏波面が回転され、光出力端における光のうち光入力端とは異なる偏波面を有する光が、検光子によって取り出されてその強度が検出される。このように、容器内に設けられた光路、光源、及び検出部を含む構成で成分濃度が検出されるので、装置全体の小型化が容易になり、さらに容器形状の自由度が高くされて生体内に配置する際の制約が少なくされる。
【0008】
光路は、光入力端から光出力端を経由してループ状に光を導く光路であり、光入力端に設けられ、光源から入射した光を光路に向けて透過させるとともに、該光のうち光入力端に戻された光を光路に沿って反射させる第1のハーフミラーと、光出力端に設けられ、入力端から光路上に入射した光の一部を、光路に沿って反射させるとともに、該光の一部を検出部に向けて透過させる第2のハーフミラーとを更に備えることが好ましい。この場合、容器を小型化した場合であっても、光源からの光を光路上に繰り返し導くことができるので、成分濃度の検出感度を効果的に維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生体内に設置する際の制約を少なくし、且つ、装置全体の小型化を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る生体内成分分析装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の好適な一実施形態である生体内成分分析装置の平面図である。同図に示す生体内成分分析装置1は、人体の腹空内等の生体内に配置されて生体内の成分を分析するとともに、生体に薬剤を投与するための装置である。具体的には、糖尿病等の特定疾患を患っている患者用に用いられ、生体内の体液に含まれる分子であるグルコースの濃度を分析して出力することによって、糖尿病の病状を判断させることを可能にするものである。また、通常は、糖尿病を患っている患者においては、インスリン等のホルモン物質が膵臓から十分に放出されないために、重症度に応じて規則的に毎食後にインスリンの注射が必要とされる。この生体内成分分析装置1は、生体内に配置させてインスリン等の微量の特定薬剤を定期的及び定量的に投与することも可能にするものである。
【0012】
同図に示すように、生体内成分分析装置1は、直径数cm程度の円筒形状の収容容器2と、収容容器2の側面上の中心軸を挟んで向かい合う位置に設けられた2つの可動弁3,4と、収容容器2の内部に設けられたポンプ5、測定部6及び電源部7とを備えている。ここで、生体内成分分析装置1に内蔵される2つの可動弁3,4及びポンプ5により、装置内部及び装置内部と外部との間で薬剤を移送するためのポンプ機構が構成される。以下、生体内成分分析装置1の構成要素について詳細に説明する。
【0013】
可動弁3の断面図である図2に示すように、可動弁3は、収容容器2の側壁と一体的に形成され内部に微小空洞が形成された略直方体形状の空洞部9を有し、空洞部9における外側の壁面には、空洞内に向けて貫通する液体吸引口10が形成され、空洞部9における内側の壁面には、収容容器2内のポンプ5を経由して可動弁4に繋がる液体送出口11が形成されている。また、可動弁3は、空洞部9の内部において液体吸引口10及び液体送出口11を開閉するための開閉部12を有している。開閉部12は、その一端が空洞部9の内部の一端に固定されて収容容器2の側面に沿って空洞部9の他端側に延び、リード線L1(図1参照)を介した電源部7からの電圧信号の印加により収容容器2の側面の厚み方向に屈曲動作する長尺状のバイモルフ型圧電素子13を有する。このバイモルフ型圧電素子13の先端には、収容容器2の側壁の厚み方向に延びるように取り付けられ、バイモルフ型圧電素子13の屈曲動作に応じて液体吸引口10及び液体送出口11を同時に開閉する2つの円錐形状の弁部14,15が取り付けられている。
【0014】
同様に、図3に示すように、可動弁4は、収容容器2の側壁と一体的に形成された空洞部16を有し、空洞部16における外側の壁面には、空洞内に向けて貫通する液体吐出口17が形成され、空洞部16における内側の壁面には、収容容器2内のポンプ5を経由して可動弁3に繋がる液体送入口18が形成されている。また、可動弁4は、空洞部16の内部において液体吐出口17及び液体送入口18を開閉するための開閉部19を有している。開閉部19は、その一端が空洞部16の内部の一端に固定されて空洞部16の他端側に延び、リード線L2(図1参照)を介した電源部7からの電圧信号の印加により屈曲動作するバイモルフ型圧電素子20を有する。このバイモルフ型圧電素子20の先端には、収容容器2の側壁の厚み方向に延びるように取り付けられ、バイモルフ型圧電素子20の屈曲動作に応じて液体吐出口17及び液体送入口18を同時に開閉する2つの円錐形状の弁部21,22が取り付けられている。
【0015】
収容容器2内には、上記可動弁3,4に接続され、インスリンが充填されたポンプ5が設けられている。ポンプ5としては、微細加工技術(MEMS)によって加工された静電駆動型のマイクロポンプや、内部の管路に沿って進行波を生成可能なピエゾ素子(圧電素子)を利用したマイクロポンプが、小型化に有利な観点から好適に用いられる。ポンプ5は、電源部7とリード線L3を介して接続されることにより駆動され、可動弁3,4の開閉に同期して、液体送出口11から液体送入口18に向けてインスリンを含む液体を圧送する。このとき、電源部7からの駆動信号による制御により、可動弁4の液体吐出口17から所定量のインスリンが所定のタイミングで放出される。これにより、後述する測定部6によるグルコースの検出信号に応じて、所定量のインスリンを生体内に投薬するといったことも可能になる。
【0016】
さらに、収容容器2内には、測定部6が設けられている。図4は、測定部6を拡大して示す平面図である。同図に示すように、測定部6は、略直方体形状の検出容器25と、検出容器内に形成された光路Aと、光源26と、光検出器27と、偏光子28と、検光子29とから構成されている。
【0017】
検出容器25は、その互いに対向する2つの面25a,25bを収容容器2の側面から外部に露出させた状態で収容容器2に取り付けられ、その面(外壁)25a,25bの一部を構成するように、面25a,25bの中央部に矩形状の分子透過膜30a,30bが設けられている。分子透過膜30a,30bは、生体内の体液成分に含まれる分子であるグルコースを透過させる性質を有する膜であり、例えばセロファン膜やセルロース膜が用いられるが、酸、塩基に対して抵抗性が高く化学的安定性が高いという点でセルロース膜が好適に用いられる。
【0018】
この検出容器25の2つの面25a,25bで挟まれる側面25cに隣接して、光源26及び光検出器27が固定されている。光源26は、側面25cの一方の縁部に位置する窓部(光入力端)31に対向するように固定され、窓部31から検出容器25内部に向けて側面25cに対して垂直な方向に所定周波数成分の光を入射する。光検出器27は、側面25cの他方の縁部に位置する窓部(光出力端)32に対向するように固定され、窓部32から検出容器25外部に向けて出射した所定周波数成分の光を検出する。これらの光源26及び光検出器27は、それぞれ、リード線L5,L4(図1参照)を介して電源部7に接続され、電源部7によって駆動される。また、光検出器27から出力される検出信号は、図示しない信号線又は電極を経由して外部に送出される。
【0019】
このように内部に直方体形状の空洞を有する検出容器25内には、面25a,25bの縁部に沿って矩形状の光路Aが形成されている。この光路Aは、検出容器25の内部に取り付けられたミラー(反射鏡)33a,33bとハーフミラー34a,34bとによって、窓部31から窓部32を経由して検出容器25の面25aの縁部に沿うように光を導く四角形ループ状に形成された光路である。
【0020】
具体的には、検出容器25の窓部31近傍の隅部には、光源26から入射した光を面25aの縁部に平行な光路Aに沿って透過させ、且つ、その光のうち後述するハーフミラー34bによって反射されて戻ってきた光を、光路Aに沿って反射するためのハーフミラー34aが配置されている。また、検出容器25の側面25cに対面する側面25d側の隅部には、ハーフミラー34aによって透過又は反射された光を光路Aに沿って反射させる2つのミラー33a,33bが配置されている。さらに、検出容器25の窓部32近傍の隅部には、ミラー33bによって反射されてきた光の一部を光路Aに沿って反射させ、その光の一部を光検出器27に向けて透過させるためのハーフミラー34bが配置されている。
【0021】
なお、これらのミラー33a,33b及びハーフミラー34a,34bは、体液成分の付着を防止するために、その表面には酸化チタンによるコーティングが施されている。
【0022】
光源26と窓部31との間には、光源から出射された光のうち第1の偏波面(例えば、面25aに対して平行な偏波面)を有する直線偏光のみを透過させる偏光子28が設けられ、窓部32と光検出器27との間には、偏光子28とは異なる第2の偏波面(例えば、面25aに対して垂直な偏波面)を有する直線偏光のみを透過させる検光子29が設けられている。このような構成により、窓部31には第1の偏波面を有する直線偏光が入射し、窓部32から光検出器27には、光路Aに沿って入射した光のうち第2の偏波面を有する直線偏光のみが入射するので、光路A上において偏波面が所定角度だけ回転された光の強度を検出することができる。
【0023】
以下、生体内成分分析装置1の作用効果について説明する。
【0024】
このような生体内成分分析装置1によれば、生体内に配置された際に、測定対象のグルコースを含む体液成分が、検出容器25の外壁に設けられた分子透過膜30a,30bを透過することによって検出容器25内に導入される。その一方で、その検出容器25内に形成された光路A上の窓部31から光路Aに沿って光が入射され、その光は光路A上のミラー33a,33bに反射されながらその光路Aに沿って導かれた後、窓部32から検出容器25の外部に出射される。このとき、窓部31に入射される光は、偏光子28によって第1の偏波面を有する直線偏光にされた後、検出容器25内に導入された体液成分を通過することによって成分濃度に応じてその偏波面が回転され、窓部32において第2の偏波面を有する光が、検光子29によって取り出されてその強度が検出される。ここで、光路A上での光の旋光度は検出容器25内のグルコース等の特定物質の濃度を反映しているので、検出された光の強度からグルコース等の旋光性を有する物質の濃度を知ることができる。このように、検出容器25内に設けられた光路A、光源26、及び光検出器27を含む構成で成分濃度が検出されるので、装置全体の小型化が容易になり、さらに容器形状の自由度が高くされて生体内に配置する際の制約が少なくされる。
【0025】
また、光路Aは、ハーフミラー34a,34bを含んで構成されているので、装置の容器を小型化した場合であっても、光源26からの光を光路A上に繰り返し導くことができるので、成分濃度の検出感度を効果的に維持することができる。
【0026】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、検出容器25の形状としては特定の形状に限定されるものではなく、球形状に形成されていてもよいし、その断面が多角形状に形成されていてもよい。また、検出容器25の内部の光路Aの形状も特定の形状には限定されず、多角形状に形成されていてもよい。
【0027】
また、光検出器27によって検出される検出信号は、無線通信手段により外部に出力されてもよい。この場合は、装置を生体内に配置する際の制約がさらに少なくされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の好適な一実施形態である生体内成分分析装置の平面図である。
【図2】図1の一方の可動弁の構造を示す断面図である。
【図3】図1の他方の可動弁の構造を示す断面図である。
【図4】図1の測定部を拡大して示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…生体内成分分析装置、25…検出容器、25a,25b…外壁、26…光源、27…光検出器(検出部)、28…偏光子、29…検光子、30a,30b…分子透過膜、31…窓部(光入力端)、32…窓部(光出力端)、33a,33b…ミラー(反射鏡)、34a,34b…ハーフミラー、A…光路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に配置されて生体内の成分を分析する生体内成分分析装置であって、
前記成分に含有される分子を透過させる分子透過膜が、外壁の一部を構成するように設けられた容器と、
前記容器の内部において反射鏡を含んで構成され、光入力端から光出力端に向けて光を導く光路と、
前記光入力端から前記光路に沿った方向に光を入射する光源と、
前記光出力端から前記容器の外部に向けて出射した光を検出する検出部と、
前記光源と前記光入力端との間に設けられ、所定の偏波面を有する光を透過させる偏光子と、
前記光出力端と前記検出部との間に設けられ、前記所定の偏波面と異なる偏波面を有する光を透過させる検光子と、
を備えることを特徴とする生体内成分分析装置。
【請求項2】
前記光路は、光入力端から光出力端を経由してループ状に光を導く光路であり、
前記光入力端に設けられ、前記光源から入射した光を前記光路に向けて透過させるとともに、該光のうち前記光入力端に戻された光を前記光路に沿って反射させる第1のハーフミラーと、
前記光出力端に設けられ、前記入力端から前記光路上に入射した光の一部を、前記光路に沿って反射させるとともに、該光の一部を前記検出部に向けて透過させる第2のハーフミラーと、
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の生体内成分分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−220768(P2008−220768A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65504(P2007−65504)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(504300181)国立大学法人浜松医科大学 (96)
【Fターム(参考)】