説明

生体再吸収性ポリマーマトリックス、ならびにその作製および使用方法

生物活性物質を送達するための生体内分解性組成物は、酸化デキストラン溶液と、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤を含む固体の混合物とを含む反応混合物の反応生成物である。該組成物は、生物活性物質の組成物からの放出を制御するための放出剤を含むことができる。したがって、酸化デキストラン溶液を含む反応混合物の第1の一定分量と、ジヒドラジド、生物活性物質、および反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量で存在する固体酸からなる固体の混合物を含む反応混合物の第2の一定分量とを提供し、反応混合物を身体部位に導入することにより、固化した薬物送達用生体内分解性組成物をin situで形成させることによって、生物活性物質を、それを必要とする身体部位に投与することができる。本発明は、反応混合物の第1および第2の一定分量を使用直前に混合できるように、それらをそれぞれ含むダブルシリンジからなるキットの形態で提供されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、生体吸収性ポリマーマトリックス、その製造、および生物活性物質の送達系としての使用に関する。医薬品、および細胞を含む他の生物活性物質の持続および/または制御放出が、本発明のマトリックスの主たる用途である。
【背景技術】
【0002】
生体活性化合物を制御放出するように設計されたポリマーマトリックスは、非再吸収性または再吸収性でありうる。概して、再吸収性とは、表面からの腐食、または内部からの分解によって体内で生物分解可能であることを意味する。その機構には、加水分解等の化学反応、または溶解が関与しうる。ポリメタクリル酸メチル等の非再吸収性ポリマーは、抗生物質送達に使用されてきた。これらの材料には、回収しなければならず、第2の介入を必要とし、感染の危険性を伴うという短所がある(HW Bucholzら、(1970) Chiburg, 43, 446)
この出版物、ならびに以降引用されている他の出版物は、そのすべてが本願に特別に組み込まれている。)
【0003】
酸化デキストランの調製が、Royerの米国特許第5,783,214号に記載されている。Spiroの米国特許第6,305,585号に記載されているように、酸化ヒアルロン酸をアミノ多糖類との反応に使用して、複合体が形成された。しかし、開示されている方法は、本明細書に記載されている系と比較して、不便で、高価である。また。架橋条件は、それらがポリマーと反応すると多くの活性成分を消滅させる無電荷アミノ基を必要とする。米国特許第6,305,585号に記載されているゲルは、アルカリ性pHで2つのポリマー溶液を反応させることによって大量に調製される。Leeら、Macromolecules, 33, 97-101 (2001)には、アルギン酸から単離された酸化ポリマーを含む、ポリ(グルロン酸)からなる生体材料が記載されている。出発材料は、市販されておらず、製造するのにコストが高く、医薬品の使用に対してFDAの承認を受けていない。この生体材料の製造は、タンパク質、または他の医薬品成分におけるアミノ基の反応を伴う高pHで行われる。
【0004】
医薬品用途の他の多糖類は、薬物処方、および数種類の操作に続く手術後処理のための抗接着組成物の製造に使用されるカルボキシメチルセルロースである(Schwartz HEおよびBlackmore JMの米国特許第6017301号、米国特許第6133325号および米国特許第6034140号;Miller ME、Cortese, SM、Schwartz, HEおよびOppelt, WGの米国特許第6566345号;Liu, LSおよびBerg, Rの米国特許第6923961号;Schwartz, HW、Blackmore, JM、Cortese, SMおよびOppelt, WGの米国特許第6869938号)。これらの製剤は、カルボキシル化多糖類のポリエチレングリコールとの非共有結合性凝集物を含む。
【0005】
ヒアルロン酸は、いくつかの用途に対する生体材料として使用されてきた。GertzmanおよびSunwooは、脱塩骨マトリックスを送達するために、高分子量のヒアルロン酸のナトリウム塩を採用した(米国特許第7,019,192号;米国特許第6,911,212号;米国特許第6,458,375号;および米国特許第6,326,018号)。使用される材料は、溶液であり、本明細書に記載されている化学的架橋を伴わない。共有結合架橋は、ゲル安定をもたらし、生物活性物質の移動を抑制する。また、架橋の程度は、滞留時間/再吸収率に対する制御要素になる。
【0006】
上記参考文献に引用されているポリマーのいくつかとは対照的に、本発明の実施において採用されるデキストランは、USP製品として利用可能であり、長年にわたって非経口的に使用されてきた。デキストランのアクリレート誘導体は、既に製造されており、架橋ヒドロゲルを形成することができる(De Grootら、(2002) Int. J. Cancer, 98、134-140; Stenekesら、(2000) Biomacromolecules, 1、696-703; Chungら、(2005) Int. J. Pharm., 288、51-61)。ポリアクチド−デキストラングラフトを生成し、エマルジョンをベースとしたミクロスフェア系を使用して送達マトリックスを製造するのに採用することができる(Ouchiら、(2004) 4、458-463)。
【0007】
共有されている国際特許公開番号WO2004/112713には、硫酸デキストランナトリウム等のポリアニオンとカチオン生成物活性剤とを混合することによって形成される新規の薬物ポリマー複合体が開示されている。得られた再吸収性ゲル(Rゲル)または沈殿物は、薬物送達マトリックスを構成する。しかし、開示されているように、イオン結合のみが当該Rゲルの形成に関与する。また、Rゲルの形成には、活性医薬成分が正に帯電することが必要である。しかし、多くの活性成分は、生理pHにおいて中性であるか、または負に帯電している。Rゲルの炭水化物マトリックスは、極性を有し、タンパク質分解しないという点において非常に魅力的である。
したがって、再吸収性ポリマー系が、生理pHにおいて中性であるか、または負に帯電した活性成分を送達することが可能であれば、それは、極めて望ましい。
【特許文献1】米国特許第5,783,214号
【特許文献2】米国特許第6,305,585号
【特許文献3】米国特許第6017301号
【特許文献4】米国特許第6133325号
【特許文献5】米国特許第6034140号
【特許文献6】米国特許第6566345号
【特許文献7】米国特許第6923961号
【特許文献8】米国特許第6869938号
【特許文献9】米国特許第7,019,192号
【特許文献10】米国特許第6,911,212号
【特許文献11】米国特許第6,458,375号
【特許文献12】米国特許第6,326,018号
【特許文献13】国際特許公開第WO2004/112713号
【非特許文献1】HW Bucholzら、(1970) Chiburg, 43, 446
【非特許文献2】Leeら、Macromolecules, 33, 97-101 (2001)
【非特許文献3】De Grootら、(2002) Int. J. Cancer, 98、134-140
【非特許文献4】Stenekesら、(2000) Biomacromolecules, 1、696-703
【非特許文献5】Chungら、(2005) Int. J. Pharm., 288、51-61
【非特許文献6】Ouchiら、(2004) 4、458-463
【非特許文献7】Urist, MRら、Proc. Natl. Acad. Sci. (1984) 81、372-375
【非特許文献8】Petersonら、JBJS (2004) 86、2243-2250
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的には、本明細書に開示されている本発明は、従来のRゲルに使用できない薬物分子の送達マトリックスの調製に化学修飾多糖類を使用することを伴う。負帯電および中性活性成分が含まれる。特に好ましい実施形態において、マトリックスは、活性成分の存在下におけるアルデヒドポリマーのジヒドラジドとの架橋を伴う。架橋剤であるジヒドラジドは、反応して、ヒドラゾンを形成する。フィルム、微小ビーズまたはゴム状固体は、その反応の生成物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、酸化デキストラン溶液からなる反応混合物と、ジヒドラジドからなる固体、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤からなる固体の混合物との反応混合物である、生物活性物質を送達するための生体内分解性組成物が提供される。好ましくは、反応混合物のpHは、pH調整剤が採用されるか否かにかかわらず、6以下になる。しかし、採用される場合は、好ましいpH調整剤は、リン酸ナトリウム、クエン酸、コハク酸および/またはフマル酸等の固体酸である。
【0010】
本発明の組成物は、組成物からの生物活性物質の放出を制御するための放出剤をさらに含むことができる。放出剤の1つの好ましい形態は、生物活性物質に結合する複合化ポリマーである。代替的または追加的に、放出剤は、構造安定性および拡散抵抗性を生物活性物質に与える非反応性マトリックスポリマーを含むことができる。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、放出剤は、アミノグリコシド抗生物質、バンコマイシン、テトラシクリンまたはクリンダマイシンと塩を形成する脂肪族酸または芳香族酸を含むことになる。
【0011】
実質的に、任意の生物活性物質を本発明に良好に採用することができる。この点において、好ましい生物活性物質は、骨誘導剤、抗生物質、麻酔剤、成長因子、細胞、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗原、アジュバントおよびサイトカインを含む。1つの特に好ましい生物活性物質は、脱塩骨マトリックス(DBM)等の骨誘導剤である。
【0012】
本発明の組成物をゲル、ミクロスフェア、フィルム、発泡体または繊維の形態で提供することができる。
本発明の他の態様によれば、生物活性物質を送達するようになされた生体内分解性組成物を形成するためのキットが提供される。本発明のキットは、酸化デキストラン溶液からなる反応混合物の第1の一定分量と、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤を含む固体の混合物からなる反応混合物の第2の一定分量とを含むことになる。反応混合物の第1および第2の一定分量は、混合すると、そこに含まれる生物活性物質を送達するための固化した生体内分解性組成物を形成する。したがって、放出剤を採用される場合は、反応混合物の第1および第2の一定分量の一方に混入することができる。
【0013】
有利には、それぞれ反応混合物の第1および第2の一定分量を含む第1および第2の注射筒を有するダブルシリンジとともに本発明のキットを提供することができる。
本発明のさらに他の実施形態によれば、生物活性物質を送達するための固化した生体内分解性組成物の作製方法が提供される。好ましい方法は、酸化デキストラン溶液からなる反応混合物と、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤からなる固体の混合物とを形成すること、およびこの反応混合物を反応させて、固化して薬物送達用生体内分解性組成物を形成させることを含む。
【0014】
いくつかの系を採用して、投与のための本発明による再吸収性ポリマーマトリックスを調製することができる。例えば、2つの注射器を互いに接触させ、混合物を1つの注射筒から他の注射筒に繰り返し移動させるように反復作用によって反応生成分の混合を実施することが可能である。pHは、活性成分上のアミノ基の反応を防止するために、6以下に保持される。生物活性物質、ジヒドラジドおよび固体酸(すべて乾燥粉末)は、第1の注射器に含まれ、酸化デキストラン溶液は、第2の注射器に含まれる。この形式には、生物活性物質の安定性、無菌性の維持および便利性を含めて、多くの利点がある。
【0015】
さらに他の態様において、本発明は、固化した生体内分解性組成物の被膜物を含む移植可能な医療デバイスにおいて実施される。医療デバイスは、有利には、カテーテル、ステントまたは整形外科用デバイスであってもよい。本発明による特に好ましい被覆された整形外科用デバイスとしては、ピン、ネジ、棒、爪、ワイヤ、増強材(augment)、カップおよび関節インプラントが挙げられる。
【0016】
本発明のさらに他の態様によれば、生物活性物質を、それを必要とする身体部位に送達する方法が提供される。該方法は、酸化デキストラン溶液を含む反応混合物の第1の一定分量と、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤からなる固体の混合物を含む反応混合物の第2の一定分量とを提供することを含む。第1および第2の一定分量を一緒に混合して、反応混合物を形成し、その結果、続いて反応混合物を当該身体部位に導入することにより、固化した薬物送達用生体内分解性組成物をin situで形成させることができる。それぞれ反応混合物の第1および第2の一定分量を含む第1および第2の注射筒を有するダブルシリンジを提供することができる。したがって、反応混合物の第1および第2の一定分量を混合するように、それらを第1の注射器と第2の注射器との間で繰り返し移動させることによって、反応混合物の第1および第2の一定分量を排出する工程を実施することができる。
これらの態様および他の態様および利点は、その好ましい例示的な実施形態の以下の詳細な説明を念入りに検討することによって、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のポリマー複合体の製造に必ず必要な成分としては、生物活性物質、アルデヒドポリマーおよび多官能ヒドラジドが挙げられる。上記成分を混合すると、ジヒドラジドと三次元架橋のポリマー鎖上のアルデヒド基との反応の結果として、固体マトリックスが得られる。ゲル形成を迅速化し、活性成分のアミノ基の反応を防止するために、反応は、酸性pH(例えば、4.0から6.0)で行われる。したがって、活性成分は、得られたポリマーマトリックス内に閉じ込められる。それらの成分を混合してからまもなく、溶液/懸濁液は、動物またはヒト患者に注入/導入される。マトリックスは、数分間以内(例えば、通常約5分間以内)にin situで固化する。水和ポリマーマトリックスは、in vivoで分解するため、体に再吸収される。ポリエステルと異なり、再吸収の結果として酸が生成されることはない。
【0018】
拡散抵抗性を変化させ、または生物活性物質を複合化するように非反応性ポリマーを誘発することができる。
概して、理想的な薬物送達マトリックスは、以下の特性を示す。
1.無毒
2.再吸収性
3.生物活性物質の分子サイズおよび化学的性質について可変的
4.高価、または入手困難な外来成分の必要がない
5.制御可能な放出速度
6.合理的なコストで、GMPに基づいて製造可能
7.滅菌可能
【0019】
多糖類薬物送達マトリックス、およびその製造および使用方法を本明細書に開示する。より具体的には、本発明の多糖類薬物送達マトリックスを過ヨウ素酸酸化デキストランおよびジヒドラジドから誘導することができる。架橋反応は、酸性pHで行われ、遊離アミノ基を有する生体活性物質の閉じ込めを可能にする。4〜6のpH範囲におけるアミノ基のプロトン化により、当該化合物が、ジヒドラジドに比べて比較的無反応性になる。したがって、生物活性物質は、無傷に維持され、アルデヒド架橋部位を消費することはない。
【0020】
反応混合物のpHを約4.0から約6.0に維持することが重要である。場合によっては、pHを所望の範囲内に調節するために、リン酸ナトリウムまたは有機酸(例えば、クエン酸またはフマル酸)等の薬剤を添加することが必要でありうる。活性成分が塩として存在する場合は、pHを調節するためのリン酸ナトリウムまたは有機酸の添加は、必ずしも必要ではない。したがって、概して、活性成分が酸性に寄与する場合は、pHを調節するように、酸性の薬剤を添加する必要性はない。
【0021】
ビシノールジオールはメタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応して、アルデヒドが得られる。ポリグルカン、マナンおよびレバン等は、室温において水溶液中で円滑に反応する。デキストラン等のポリマーが過ヨウ素酸塩と反応すると、ヨウ素酸塩、および断続的なジアルデヒド群を含むポリマー鎖が得られる。これらのジアルデヒドは、アジピン酸ジヒドラジドとの反応のための部位として機能することで、共有結合架橋親水性ゲルを形成する。
【0022】
本発明によるポリマー複合体を形成するための反応を以下のように図示することができる。
【化1】

式中、Xは、ジヒドラゾン架橋を表し、Dは、活性成分を表す。多糖類におけるビシノールジオールの一部のみが反応することを強調しておく必要がある。酸化度は、残基モル数に対して、5〜20%の範囲である。上記の反応スキームは、反応の化学量論を表すことを意図するものではない。
【0023】
放出率、および放出プロファイルの制御は、薬物放出系の重要な検討事項である。
拡散状態のフィックの法則は、
速度=DA(δc/δx)
であり、式中、Dは、拡散係数であり;Aは、表面積であり、(δc/δx)は、マトリックスの境界における濃度勾配である。
ストークス・アインシュタイン方程式をパラフレーズすると、Dは、
D=kS/M
で表すことができ、式中、Sは、活性成分の溶解度であり、Mは、分子量であり、Vは、媒体の粘度である。複合化は、溶解度を低下させ、非反応性ポリマーの添加は、「粘度」または拡散抵抗を増加させうる。酸化レベルは、約5%から約20%の範囲であってもよい。ポリマー濃度は、製剤を合成するのに採用される系に応じて、約50から約250mg/mlの範囲内でありうる。例えば、アミンをC6以上のカルボン酸で変換することができる。これらの塩を単独または溶解度の高い無機塩と組み合わせて採用して、放出プロファイルを拡大することができる。
【0024】
酸化されるポリマーは、生体適合性および再吸収性を有していなければならない。これらの基準を満たすポリマーを使用することができる。好ましいのは、(微生物発酵によって製造される)デキストラン、およびその誘導体であり、生体適合性を有し、USPデキストランと同様の特性を有する限り、他の源のデキストランを採用してもよい。ポリマーの好ましい分子量は、40000以上である。概して、ゲル化に必要な反応時間は、低分子量の酸化デキストランを採用する場合の方が長い。
【0025】
有用な架橋ヒドラジドは、以下のヒドラジドを含む。
炭素番号 名称
C4 コハク酸ジヒドラジド
C5 グルタル酸ジヒドラジド
C6 アジピン酸ジヒドラジド
C7 ピメリン酸ジヒドラジド
C8 スベリン酸ジヒドラジド
C9 アゼライン酸ジヒドラジド
C10 セバシン酸ジヒドラジド
C11 ウンデカン二酸ジヒドラジド
C12 ドデカン二酸ジヒドラジド
C13 ブラシル酸ジヒドラジド
C14 テトラデカン二酸ジヒドラジド
C15 ペンタデカン二酸ジヒドラジド
C16 タブス酸ジヒドラジド
C18 オクタデカン二酸ジヒドラジド
より分子量の大きいヒドラジドを採用する場合は、有機溶媒水混合物を使用して、溶解および反応速度を加速させることができる。
【0026】
本明細書に記載されているマトリックスは、例えば、薬物、ホルモン、サイトカイン、成長因子および細胞等を含む生物活性物質を放出するのに通常採用される。局所または全身薬物放出のための直接注入は、1つの使用形態である。他の形態としては、移植のための被膜物、創傷シーラント、局所創傷包帯、感染抑制または痛み抑制(局部麻酔)のための手術中の局部導入が挙げられる。
【0027】
本発明の一実施形態は、ドナーの骨を酸で処理して、無機成分を除去することによって作製される脱塩骨マトリックス(DBM)を含む(Urist, MRら、Proc. Natl. Acad. Sci. (1984) 81、372-375; Petersonら、JBJS (2004) 86、2243-2250)。滅菌に続いて、DBMを担体と混合し、整形外科的欠陥部に仕込むことができる。骨誘導によって、新しい骨が形成される。
【0028】
少なくとも2通りの方法で、本明細書に記載されているマトリックスを使用して、DBMを整形外科的欠陥部に放出することができる。第1に、DBM乾燥固体をジヒドラジドと混合し、続いて酸化デキストラン溶液で処理することができる。得られた液体懸濁物は、注射器に吸い込まれ、外科医によって導入される。たいていの形態のDMBに対して、ダブルシリンジ系を採用することができる。
【0029】
第2に、ポリマーマトリックスおよびDBMを含む混合物を固化しる。この材料は、乾燥すると、極めて硬くなり、重量を増す。次いで、その乾燥複合体を、所望の形状を形成するように作り上げる。海綿質骨片、ヒドロキシアパタイト、または他の無機材料を導入の前に製剤に含めることができる。
【0030】
当業者は、勿論、他の生物活性物質を骨誘導DBMと組み合わせることが可能であることを認識するであろう。したがって、DBM/抗生物質マトリックスは、骨および関節感染を治療するのに有用でありうる。
【0031】
また、DBM/ブビマカインマトリックスは、背関節固定に使用される同種移植骨の共通の源である腸骨稜等の骨インプラント獲得部位における痛みを治療するのに有用でありうる。
【0032】
いくつかの整形外科用途では、骨髄吸引は、骨誘導DBMを本明細書に記載されているマトリックスとともに使用することに対する他の論理的追加である。
間葉幹細胞および他の前駆細胞を調節性生化学物質とともに放出することができる。関節軟骨の修復のために軟骨細胞を放出することができる。
【0033】
本発明によるマトリックスの1つのさらなる有益な用途は、手術後接着の防止である。具体的には、手術(腹部、婦人科または骨盤手術等)の後に、本発明によるマトリックスを導入すると、接着の著しい低減に寄与することができる。血栓溶解剤、抗凝固剤、抗炎症剤および抗生物質を含む様々なアジュバントを採用することができる。本願において、有利には、ポリエチレングリコール(8000)等のさらなるポリマーが、酸化デキストラン溶液に含められる。
【0034】
ダブルシリンジ装置を本発明による再吸収性ポリマーマトリックスの調製に使用することができる。例えば、酸化デキストラン等のアルデヒドポリマーを1つの注射器の外筒内に収容し、固体薬物と固体ジヒドラジドの混合物を他方の注射器の外筒内に収容することができる。有利には約4.0から約6.0の範囲に維持されるpHを調節するために、リン酸一ナトリウムを含めることができる。注射器は、混合物を一方の注射筒から他方の注射筒に30サイクルにわたって交互に移すことによって内容物を混合できるように、互いに接続される。成分の相対濃度に応じて約1から約10分間以内で固化する。酸化デキストラン溶液は、少なくとも1年間安定しており、固体成分は、少なくともその期間、場合によっては無期限に安定する。無菌性の維持、幅広い応用性、生物活性物質の安定性および使用の容易さは、当該ダブルシリンジ系の属性である。
【0035】
本発明の様々な物理的形態を製造することができる。この点において、本発明のポリマーマトリックスは、体内で固化する注射可能液の形態であることが特に好ましい。ダブルシリンジ系とともに作製された注射可能液を外科創傷/切り口、または怪我による創傷に適用することもできる。該製剤は、固化し、創傷シーラントとして機能する。抗生物質および成長因子を使用して、感染を防止し、治癒を促進することができる。
【0036】
他の手法は、投与形態を投与する前に生体外で固める(固化する)ことである。乾燥および粉砕後に、得られた粉末を局部的に使用することができる。代替的または追加的に、粉末を懸濁し、非経口的に使用することができる。
【0037】
生体外で固化した本発明の固体投与形態を創傷治療のための局部的抗感染粉末として使用することができる。クリンダマイシンおよびアミカシンを再吸収性ポリマーマトリックスに閉じ込めることで、広範囲の持続性抗生物質が製造される。フルオロキノロン、グリコペプチド、マクロリドおよびベータラクタム等を要望に応じて単独または組み合わせて採用することもできる。
【0038】
反応混合物をイソプロパノールに射出紡糸することによって、本発明による再吸収性ポリマーマトリックスの繊維を調製することができる。
【0039】
これらの繊維は、架橋試薬の相対量を変更することおよび/または非反応性ポリマーを使用することによって調整されうる。抗生物質を含む繊維を編んで包帯を作製し、あるいは敗血症糖尿病性足部潰瘍等の感染を治療するのに使用することができる。
【0040】
微小ビーズは、酸化デキストランおよびジヒドラジドを使用して容易に調製される。混合後に、ダブルシリンジを使用して、界面活性剤を含む迅速に攪拌された鉱油に製剤を注入する。得られたミクロスフェアは、有機溶媒で洗浄され、乾燥され、梱包される。これらのミクロスフェアは、水中に懸濁され、23ゲージ針を通じて注入されうる。
【0041】
表1に示される非限定的な事項によって本発明をさらに例示する。
表1.本発明の応用例
適応症 投与形態 生物活性物質
整形外科的欠陥部 注射可能ゲルまたは移植可能固体 DBMまたは他の骨誘導剤
局部感染 注射可能ゲル、フィルム、 トブラマイシン
ミクロスフェア、繊維 クリンダマイシン
痛み抑制 注射可能ゲルまたはミクロスフェア ブピバカイン
局部的神経遮断 注射可能ゲルまたはミクロスフェア ブピバカイン
癌 注射可能ゲルまたは カルボプラチン
ミクロスフェア パクリタキセル
ワクチン 注射可能ゲルまたはミクロスフェア 抗原、アジュバント

本発明は、その以下の非限定的な実施例を厳密に検討することにより、さらに深く理解されるであろう。
【0042】
(実施例)
(実施例1)
酸化デキストランの調製
デキストラン(4g;分子量500,000)を20mlの蒸留水に溶解した。この溶液に対して、535mgの微粉NalOを急速攪拌しながら添加した。混合物を暗所で約1時間攪拌し、次いで(それぞれ1リッターの)3つの異なる蒸留水に対して透析した。酸化デキストラン溶液(約70mg/ml)を室温で暗所に保管した。溶液を40℃にてロータリーエバポレーターで濃縮して、約200mg/mlとした。
【0043】
(実施例2)
シプロフロキサシン/クリンダマイシンマトリックス
実施例1に記載の通り調製された酸化デキストラン溶液(1ml、93mg/ml)を3ml注射器に充填した。21mgのアジピン酸ジヒドラジド、20mgのクエン酸および150mgのシプロフロキサシンを含む微粉末を第2の3ml注射器に充填した。粉末混合物とともに約0.5mlの空気を含む注射器をプラグ型キャップで閉じた。
【0044】
使用直前に、両口コネクタを使用して、2つの注射器を結合した。約30回の往復運動を通じて注射器の内容物を混合した。混合物を含む注射器に装着された針またはカニューレを介して、混合物の創傷への導入を遂行することができる。この製剤の設定時間は、8〜10分間である。
【0045】
シプロフロキサシンとクリンダマイシン(それぞれ75mg)の混合物をシプロフロキサシンの代わりに使用すると、嫌気菌ならびに好気菌に対応する広範囲の製剤が与えられる。
【0046】
(実施例3)
ブピバカインFB/CMCマトリックスの調製
ブピバカイン(100mg)をモルタルに仕込み、100mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)(分子量70,000)とともに粉砕した。酸化デキストラン(分子量500,000;66mg/ml;1ml)を室温でブピバカイン/CMC混合物と混合した。均質の懸濁液を得た後に、アジピン酸ジヒドラジド(7.8mg)を添加した。得られたゲルの試料(200mg)をPBS緩衝剤における放出実験のための2ml遠心管に移した。製剤の放出プロファイルを以下の表1に示す。
表1
日 放出率(%)/日
1 10
2 10
3 10
4 9
5 5
6 5
7 5
8 3
【0047】
(実施例4)
ブピバカインFB/デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)マトリックスの調製
ブピバカインFB(100mg)を50mgのDSS(分子量500,000)とともに微粉砕した。酸化デキストラン溶液(分子量500,000;66mg/ml;1ml)をブピバカイン−DSS粉末に添加し、室温で混合した。得られた均質の懸濁液に対して、アジピン酸ジヒドラジド(7.8mg)およびコハク酸(10mg)を添加した。反応混合物の試料(200mg)をPBS緩衝剤における放出実験のための2ml遠心管に移した。製剤の放出プロファイルを以下の表2に示す。
表2
日 放出率(%)/日
1 11
2 10
3 9
4 7
5 7
6 7
7 6
8 4
【0048】
(実施例5)
ピペラシリンマトリックスの調製
ピペラシリン(ナトリウム塩、50mg)を5mlビーカに入れた。酸化デキストラン溶液(分子量500,000;85mg/ml;1ml)をピペラシリンに添加し、室温で十分に混合した。均質の懸濁液が形成された後に、アジピン酸ジヒドラジド(10mg)を添加し、十分に混合した。得られた製剤の試料(200mg)をPBS緩衝剤における放出実験のための2ml遠心管に移した。該マトリックスの放出プロファイルを以下の表3に示す。
表3
日 放出率(%)/日
1 42
2 28
3 21
4 8
【0049】
(実施例6)
セフチオフルマトリックスの調製
セフチオフル−HCl(50mg)およびアジピン酸ジヒドラジド(10mg)を1ml注射器に入れた。この注射器を、1mlの酸化デキストラン(分子量500,000;85mg/ml;1ml)を含む第2の注射器に接続した。2つの注射器の内容物を20回の往復運動によって混合した。反応混合物の試料(200μl)をPBS緩衝剤における放出実験のための2ml遠心管に移した。該マトリックスの放出プロファイルを以下の表4に示す。
表4
日 放出率(%)/日
1 2.5
2 2.5
3 2.9
4 3.0
5 3.2
6 3.5
7 4.0
【0050】
(実施例7)
アゾアルブミンマトリックスの調製
リン酸ナトリウム(40mg)を1mlの酸化デキストラン溶液(分子量500,000;66mg/ml)に溶解した。アゾアルブミン(30mg)を添加し、室温で十分に混合した。均質の懸濁液を作製した後に、アジピン酸ジヒドラジド(8mg)を添加した。約1時間後に、得られた複合体の200mgをPBS緩衝剤における放出実験のための遠心管に移した。該マトリックスの放出プロファイルを以下の表5に示す。
表5
日 放出率(%)/日
1 25
2 14
3 13
4 10
5 8
6 7
7 6
8 5
9 4
10 3
11 3
12 3
【0051】
(実施例8)
アミカシン/脱塩骨マトリックス(DBM)の処方
硫酸アミカシン(100mg)、DBM(200mg)および8mgのアジピン酸ジヒドラジドをビーカに入れ、十分に混合した。酸化デキストラン溶液(分子量500,000;66mg/ml;1ml)を混合物に添加した。硫酸トブラマイシンまたは硫酸トブラマイシン/クリンダマイシン−HCl(1/1)を硫酸アミカシンの代わりに使用することができる。
【0052】
(実施例9)
パクリタキセルマトリックスの調製
パクリタキセル(30mg)を40mgのリン酸一ナトリウムおよび30mgのアジピン酸ジヒドラジドとともに微粉砕した。得られた粉末を、ルアープラグが装着された3mlの注射器に移した。注射器を、3mlの酸化デキストラン(分子量500,000;85mg/ml)を含む第2の注射器に接続した。注射器ピストンを約30回往復運動させた後に、ゲルを排出する準備が整った。したがって、それがin situでゲル化する腫瘤摘出術によって空けられた空洞に液体混合物を導入することができる。パクリタキセルは、空洞の縁の癌細胞を殺すことができるとともに、アジュバント放射時の放射増感剤として機能する。
【0053】
(実施例10)
バンコマイシンマトリックスの調製
バンコマイシン(100mg)を30mgのDSS(分子量500,000)および8mgのアジピン酸ジヒドラジドとともに微粉砕した。混合物を、ルアープラグが装着された3ml注射器に充填した。酸化デキストラン溶液(1ml、分子量500,000;66mg/ml)を第2の注射器に充填した。シリンジを接続した後に注射可能製剤を形成し、注射器ピストンを30回往復運動させた。
【0054】
(実施例11)
ドキシサイクリンマトリックスの調製
ドキシサイクリン−HCl(100mg)を90mgのDSS(分子量500,000)および8mgのアジピン酸ジヒドラジドとともに微粉砕した。混合物を、ルアープラグが装着された3ml注射器に充填した。酸化デキストラン溶液(1ml、分子量500,000;66mg/ml)を第2の注射器に充填した。シリンジを接続した後に注射可能製剤を形成し、注射器ピストンを30回往復運動させた。
【0055】
(実施例12)
抗生物質発泡体の調製
1つの注射器は、ポリマー溶液−酸化デキストラン(分子量70,000、10%酸化、160mg/ml)およびカルボキシメチルセルロース(中程度の粘度、16mg/ml)を含む。第2の注射器は、15mgのアジピン酸ジヒドラジド、50mgのシプロフロキサシン、および1.2gの重炭酸ナトリウムおよび1gのクエン酸からなる30mgの発泡性混合物を含む。それらの注射器を接続し、20回の往復運動によって内容物を混合した。この抗生物質発泡体は、有利には、感染する、または感染する可能性の高い創傷の治療に使用される。
【0056】
(実施例13)
成形可能ゲルおよびフィルムの調製
1つの注射器は、酸化デキストラン(分子量70,000、160mg/mlおよび10%酸化)、およびカルボキシメチルセルロース(中程度の粘度、ナトリウム塩、16mg/ml)を含む。第2の注射器は、アジピン酸ジヒドラジド(15mg)および50mgのシプロフロキサシンを含む。それらの注射器を接続し、20回の往復運動を経て内容物を混合し、絞り出した。グリコール酸デンプン(ナトリウム塩、30mg)をカルボキシメチルセルロースの代わりに使用することができる。これらの製剤を迅速に広げてフィルムをキャスティングすることができる。別法として、欠陥部への導入または創傷への適用に先立って許容可能な可塑性を達成してからそれらを成形する。
【0057】
(実施例14)
アミノグリコシド抗生物質のカルボン酸塩の調製
アミカシン(586mg)を10mlの80%メタノールに懸濁した。攪拌しながらオクタン酸(700μl)を添加した。混合物を室温で3時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をヘキサンで粉砕させた。融点が105〜110℃の固体が得られた。アミカシン1に対して酸4の化学量論比を用いると、この手順を用いて他の塩を作ることができる。例としては、ヘキサン酸塩およびラウリン酸塩が挙げられる。同様に、この実施例13の手順に従ってトブラマイシンおよびゲンタマイシンのヘキサン酸塩、オクタン酸塩およびラウリン酸塩が調製された。
【0058】
(実施例15)
クリンダマイシンのカルボン酸塩の調製
クリンダマイシン(460mg)を5mlの80%メタノールに溶解した。攪拌しながらラウリン酸(200mg)を添加した。混合物を室温で2時間攪拌し、次いでロータリーエバポレーターで濃縮した。10mlのヘキサンで粉砕して、固体を得た。減圧下で一晩乾燥させた後、融点は、103〜105℃であった。他の有用な塩としては、ヘキサン酸塩およびオクタン酸塩が挙げられる。同様にしてリンコマイシン塩を調製することができる。
【0059】
(実施例16)
ブピバカインのカルボン酸塩の調製
ブピバカイン(576mg)を7mlの80%メタノールに溶解した。この攪拌溶液に対して316μlのカプリル酸を添加した。室温で2時間置いた後に、ロータリーエバポレーターを使用して混合物を濃縮した。得られた固体は、融点が90から96℃の範囲であった。同様にして、ヘキサン酸塩およびラウリン酸塩を調製することができる。
【0060】
(実施例17)
ドキシサイクリンマトリックスの調製
ドキシサイクリン(100mg)を微粉砕し、6mgのアジピン酸ジヒドラジドと混合した。この混合物を、ルアープラグが装着された3ml注射器に充填した。酸化デキストラン溶液(1ml、分子量500,000;110mg/ml)を第2の注射器に充填した。それらの注射器を接続し、注射器ピストンを30回往復運動させた後に、注射可能製剤を形成した。
【0061】
(実施例18)
抗生物質被覆インプラントの調製
カプリル酸トブラマイシン(50mg)およびカプリル酸クリンダマイシン(50mg)を一緒に粉砕した。この固体混合物を10mgのアジピン酸ジヒドラジドとともに注射器A(3ml)に充填した。酸化デキストランの溶液(1ml;分子量70,000;10%酸化;100mg/ml)を注射器B(3ml)に充填した。大腿幹を60℃に予備加熱した。注射器Aと注射器Bを接続し、注射器ピストンを20回往復運動させることによって内容物を混合した。ブラシ、および尖っていないカニューレが装着された注射器の一方を使用して、インプラントを材料の均質層で被覆した。一晩乾燥した後に、被覆インプラントを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む管に37℃で浸漬させた。溶出液は、1週間を上回る期間にわたって抗菌活性を示した。
【0062】
現在最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられる実施形態について本発明を説明したが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、対照的に、添付の特許請求の範囲の主旨および範囲内に含められる様々な変更および同等の構成を包括することを意図するものであることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化デキストラン溶液、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤からなる反応混合物の反応生成物を含む、生物活性物質を送達するための生体内分解性組成物。
【請求項2】
前記組成物からの前記生物活性物質の放出を制御するための放出剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記放出剤は、前記生物活性物質に結合する複合化ポリマーを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記放出剤は、構造安定性および拡散抵抗性を前記生物活性物質に与える非反応性マトリックスポリマーを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記放出剤は、アミノグリコシド抗生物質、バンコマイシン、テトラサイクリンまたはクリンダマイシンと塩を形成する脂肪族酸または芳香族酸を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記生物活性物質は、骨誘導剤、抗生物質、麻酔剤、成長因子、細胞、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗原、アジュバントおよびサイトカインから選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記生物活性物質は、脱塩骨マトリックス(DBM)を含む骨誘導剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ゲル、ミクロスフェア、フィルム、発泡体または繊維の形態である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記pH調整剤は、リン酸ナトリウム、クエン酸、コハク酸および/またはフマル酸を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
生物活性物質を送達するようになされた生体内分解性組成物を形成するためのキットであって、酸化デキストラン溶液からなる反応混合物の第1の一定分量と、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤を含む固体の混合物からなる反応混合物の第2の一定分量とを備え、反応混合物の第1および第2の一定分量は、混合すると、そこに含まれる生物活性物質を送達するための固化した生体内分解性組成物を形成するキット。
【請求項11】
前記第1および第2の一定分量は、前記組成物からの前記生物活性物質の放出を制御するための放出剤をさらに含む請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記放出剤は、前記生物活性物質に結合する複合化ポリマーを含む請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記放出剤は、構造安定性および拡散抵抗性を前記生物活性物質に与える非反応性マトリックスポリマーを含む請求項11に記載のキット。
【請求項14】
前記放出剤は、アミノグリコシド抗生物質、バンコマイシン、テトラサイクリンまたはクリンダマイシンと塩を形成する脂肪族酸または芳香族酸を含む請求項11に記載のキット。
【請求項15】
前記生物活性物質は、骨誘導剤、抗生物質、麻酔剤、成長因子、細胞、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗原、アジュバントおよびサイトカインから選択される少なくとも1種を含む請求項10に記載のキット。
【請求項16】
前記生物活性物質は、脱塩骨マトリックス(DBM)を含む骨誘導剤である請求項10に記載のキット。
【請求項17】
前記反応混合物の前記第1および第2の一定分量をそれぞれ含む第1および第2の注射筒を有するダブルシリンジをさらに備える請求項10に記載のキット。
【請求項18】
生物活性物質を送達するための固化した生体内分解性組成物を作製する方法であって、酸化デキストラン溶液、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤からなる反応混合物を形成すること、および前記反応混合物を反応させて、固化した薬物送達用生体内分解性組成物を形成させることを含む方法。
【請求項19】
前記組成物からの前記生物活性物質の放出を制御するための放出剤をさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記放出剤は、前記生物活性物質に結合する複合化ポリマーを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記放出剤は、構造安定性および拡散抵抗性を前記生物活性物質に与える非反応性マトリックスポリマーを含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記放出剤は、アミノグリコシド抗生物質、バンコマイシン、テトラサイクリンまたはクリンダマイシンと塩を形成する脂肪族酸または芳香族酸を含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記生物活性物質は、骨誘導剤、抗生物質、麻酔剤、成長因子、細胞、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗原、アジュバントおよびサイトカインから選択される少なくとも1種を含む請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記生物活性物質は、脱塩骨マトリックス(DBM)を含む骨誘導剤である請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記固化した薬物送達用生体内分解性組成物をゲル、ミクロスフェア、フィルム、発泡体または繊維にすることを含む請求項18に記載の方法。
【請求項26】
生物活性物質を送達するための生体内分解性繊維を作製する方法であって、酸化デキストラン溶液、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤からなる反応混合物をアルコールと接触させて、その繊維前駆体を形成すること、および前記繊維前駆体を固化して、生体内分解性繊維を形成させることを含む方法。
【請求項27】
生物活性物質を送達するための生体内分解性フィルムを形成する方法であって、酸化デキストラン溶液、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤からなる反応混合物をキャスティングしてフィルムとすること、および前記反応混合物を固化し、前記生体内分解性薬物放出フィルムを形成させることを含む方法。
【請求項28】
請求項1に記載の組成物の被膜を含む移植可能医療デバイス。
【請求項29】
カテーテル、ステントまたは整形外科用デバイスの形態である請求項28に記載の医療デバイス。
【請求項30】
ピン、ネジ、棒、爪、ワイヤ、増強材、カップおよび関節インプラントから選択される整形外科用デバイスの形態である請求項29に記載の医療デバイス。
【請求項31】
生物活性物質を、それを必要とする身体部位に送達する方法であって、
(i)酸化デキストラン溶液を含む反応混合物の第1の一定分量と、ジヒドラジド、生物活性物質、および場合によって、反応混合物のpHを6以下にするのに十分な量のpH調整剤からなる固体の混合物を含む反応混合物の第2の一定分量とを提供する工程と、
(ii)前記第1の一定分量と前記第2の一定分量を混合して、その反応混合物を形成する工程と、
(iii)前記反応混合物を前記身体部位に導入することにより、固化した薬物送達用生体内分解性組成物をin situで形成させる工程とを含む方法。
【請求項32】
工程(i)は、前記反応混合物の前記第1および第2の一定分量をそれぞれ含む第1および第2の注射筒を有するダブルシリンジを提供することを含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(ii)は、前記第1および第2の一定分量をそれぞれ前記第1および第2の注射筒から排出することを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(ii)は、前記反応混合物の前記第1および第2の一定分量を、それらを混合するように前記第1の注射筒と前記第2の注射筒との間で繰り返し移動させることを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記生物活性物質は、骨誘導剤、抗生物質、麻酔剤、成長因子、細胞、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗原、アジュバントおよびサイトカインから選択される少なくとも1種を含む請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記生物活性物質は、脱塩骨マトリックス(DBM)を含む骨誘導剤である請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物は、ゲル、ミクロスフェア、フィルム、発泡体または繊維の形態である請求項31に記載の方法。

【公表番号】特表2008−542295(P2008−542295A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513748(P2008−513748)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/020380
【国際公開番号】WO2006/130455
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507390619)ロイヤー バイオメディカル, インク. (1)
【Fターム(参考)】