生体分子の相互作用試験装置、生体分子の相互作用試験方法、生体分子の融解温度測定方法、核酸の配列検知方法
【課題】多量の試料および多くの時間と労力を必要とせず生体分子間の相互作用を迅速に形成することができ、しかも生体分子の相互作用をリアルタイムで検出することができる手段の提供。
【解決手段】基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)、および、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(対向電極)を有する生体分子の相互作用試験装置。前記装置は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されており、前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、かつ、前記キャビティ(4)に通じる貫通孔(5)を2つ有し、一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である。
【解決手段】基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)、および、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(対向電極)を有する生体分子の相互作用試験装置。前記装置は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されており、前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、かつ、前記キャビティ(4)に通じる貫通孔(5)を2つ有し、一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便かつ迅速に、ターゲット生体分子とプローブ生体分子との相互作用を試験し得る装置、および相互作用試験方法に関する。更に、本発明は、前記方法を用いる、生体分子の融解温度測定方法および核酸の配列検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子診断や病原菌の特定、あるいは一塩基多型の検出等、ある種の核酸(ターゲット核酸)を検出する目的で、プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリダイゼーションが利用されている。近年、多数のプローブ核酸を基板に固定したDNAチップやDNAマイクロアレイが実用化されるようになり、ターゲット核酸の検出に使用されている。
【0003】
DNAチップやDNAマイクロアレイの作製においては、基板にDNAを多数スポットとして整列させて固定化する必要がある。DNAの固定化には、例えば、末端をチオール修飾した一本鎖DNAを、例えば、金基板に固定化する方法が取られている。そして、固定化されたDNAに被検体であるターゲットDNAを作用させ、ハイブリダイゼーションの有無を検出する。ハイブリダイゼーションの有無は、例えば、蛍光法を用いて、蛍光標識したターゲットDNAとハイブリダイズした固定化DNAのスポットの蛍光を測定することによって検出することができる。
【0004】
基板上に固定化されたプローブDNAと試料ターゲットDNAをハイブリダイゼーションさせるためには、例えば、プローブDNAを固定化したDNAマイクロアレイ上に、ターゲットDNAを含むハイブリダイゼーション溶液を滴下し、溶液が乾かないようにカバーガラスをかけて密閉した湿箱に入れ、ターゲットDNAおよびプローブDNAに合わせた適温でハイブリッド形成反応を行う方法が用いられている(特許文献1参照)。しかし、このような方法では、ハイブリッド形成をリアルタイムで観察することはなかった。
【0005】
それに対し、特許文献2には、DNAが固定化されたアレイをチャンバー内に封入したバイオアレイチップ反応装置が開示されている。この装置は、チャンバー内へ溶液の送液が可能な構造を有している。更に、特許文献2には、この装置の基板またはカバーが透明であり得ることが記載されている。このような特許文献2に記載の装置によれば、チャンバー内へ溶液を送液しつつ、透明な基板側またはカバー側から、ハイブリッド形成をリアルタイムで観察することが可能であると考えられる。
【0006】
しかし、プローブDNAとターゲットDNAをハイブリダイゼーションさせるためには、通常、十数時間を要し、しかも、多量の試料ターゲットDNAが必要とされる。そのため、特許文献2に記載の装置において、ハイブリッド形成をリアルタイムで観察することができるとしても、ハイブリッド形成には長時間を要するため、迅速な観察を行うことは困難である。しかも、プローブDNAとターゲットDNAをハイブリダイゼーションさせるためには、多量の試料を調製しなければならない。
【特許文献1】特開2003−156442号公報
【特許文献2】特表平10−505410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、多量の試料および多くの時間と労力を必要とせず、生体分子間の相互作用を迅速に形成することができ、しかも、生体分子の相互作用をリアルタイムで検出することができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的を達成するための手段は、以下の通りである。
[請求項1]基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)、および、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有する生体分子の相互作用試験装置であって、
前記装置は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されており、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、かつ、前記キャビティ(4)に通じる貫通孔(5)を2つ有し、一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である、前記装置。
[請求項2]前記マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続するための手段を有する、請求項1に記載の装置。
[請求項3]前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と少なくとも一部が接触し、かつ、前記対向電極(2)とは接触しない導電性部材(7)を更に有し、前記基板上の導電性物質表面(6)は、前記導電性部材(7)を介して外部電源と接続される、請求項2に記載の装置。
[請求項4]前記導電性部材(7)を構成する導電性物質は、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、導電性酸化物、または導電性ブラスチックである、請求項3に記載の装置。
[請求項5]前記マイクロアレイは、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および前記対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を有する、請求項3または4に記載の装置。
[請求項6]前記非導電性スペーサー(3)は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間隔が均一になるように配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
[請求項7]前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と前記対向電極(2)の前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と対向する表面との距離が、10〜300μmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
[請求項8]前記マイクロアレイ上の導電性物質表面を構成する導電性物質が、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、クロム、導電性酸化物、または導電性プラスチックである請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
[請求項9]前記基板は、基板全体が導電性物質からなるか、または、基板表面に導電性物質被覆層を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
[請求項10]前記導電性被覆層を有する基板が、ガラス、石英、金属、シリコン、またはプラスチックからなる請求項9に記載の装置。
[請求項11]前記非導電性スペーサー(3)は、その両面に接着剤層を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
[請求項12]前記接着剤は、光硬化性樹脂を含む、請求項11に記載の装置。
[請求項13]温度制御手段を更に有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
[請求項14]前記基板は、基板表面から突出し、かつ頂上にスポット用平面を有する生体分子固定化用スポット(以下、「突出スポット部」という)を有し、
少なくとも前記突出スポット部は導電性物質表面を有し、
前記スポット用平面の導電性物質表面に生体分子が固定化されており、かつ
前記基板は、前記基板上の突出スポット部以外の表面に、前記突出スポット部の導電性物質表面と通電可能な端子を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
[請求項15]前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有し、前記端子は、前記導電性物質被覆層に含まれるか、または、前記導電性物質被覆層と通電可能である、請求項14に記載の装置。
[請求項16]前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有し、前記導電性物質被覆層と突出スポット部の導電性物質表面とは、一体の導電性物質被覆層として設けられている、請求項14または15に記載の装置。
[請求項17]前記基板が、少なくとも、前記突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の装置。
[請求項18]前記突出スポット部周辺の基板表面が、略V字型底面を形成する、請求項17に記載の装置。
[請求項19]前記基板が、隣り合う突出スポット部が、突出スポット部側面によって隣接しており、かつ、少なくとも、前記突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の装置。
[請求項20]前記突出スポット部の高さが、10〜500μmである、請求項14〜19のいずれか1項に記載の装置。
[請求項21]前記突出スポット部頂上のスポット用平面と前記突出スポット部側面とのなす角が、90度以上である、請求項14〜20のいずれか1項に記載の装置。
[請求項22]前記生体分子固定化用スポットが粗面化されている、請求項14〜21のいずれか1項に記載の装置。
[請求項23]前記生体分子は、DNA、RNA、PNA、蛋白、ポリペプチド、糖化合物、脂質、天然低分子、および合成低分子からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
[請求項24]基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出すること、
を含む、前記方法。
[請求項25]基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の保持中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出する、前記方法。
[請求項26]前記溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填することを含む、請求項25に記載の方法。
[請求項27]前記マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加する、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
[請求項28]前記装置が、請求項1〜23のいずれか1項に記載の装置である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
[請求項29]前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項28に記載の方法。
[請求項30]前記装置が、請求項5〜23のいずれか1項に記載の装置であり、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続する、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
[請求項31]前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項30に記載の方法。
[請求項32]前記マイクロアレイに固定された生体分子および/または前記ターゲット生体分子が蛍光標識されており、かつ、前記マイクロアレイ上の生体分子とターゲット生体分子との相互作用を、蛍光によって検出する、請求項24〜31のいずれか1項に記載の方法。
[請求項33]請求項14〜23のいずれか1項に記載の装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出することを含む、前記方法。
[請求項34]請求項14〜23のいずれか1項に記載の装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の充填中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出する、前記方法。
[請求項35]前記溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填することを含む、請求項34に記載の方法。
[請求項36]前記マイクロアレイ上の生体分子および/または前記ターゲット生体分子が蛍光標識されている、請求項33〜35のいずれか1項に記載の方法。
[請求項37]前記共焦点型検出器によって、マイクロアレイ表面の突出スポット部とそれ以外の部分の高さおよび/または形状の差による反射光強度の相違から、マイクロアレイ上の前記突出スポット部を反射像として検出する、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
[請求項38]前記反射像として検出された突出スポット部からの蛍光を検出することによって、生体分子の相互作用を検出する、請求項37に記載の方法。
[請求項39]前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を導入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項33〜38のいずれか1項に記載の方法。
[請求項40]前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続する、請求項33〜39のいずれか1項に記載の方法。
[請求項41]前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に印加される電界が、0.01〜10MV/mである、請求項24〜40のいずれか1項に記載の方法。
[請求項42]前記ターゲット生体分子を含む溶液が、フェニルアラニン、ヒスチジン、カルノシン、およびアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのバッファー物質を含む、請求項24〜41のいずれか1項に記載の方法。
[請求項43]請求項24〜42のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、生体分子の融解温度測定方法。
[請求項44]請求項24〜42のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、核酸の配列検知方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多量の試料および多くの時間と労力を必要とせず、生体分子間の相互作用を迅速に形成することができ、しかも、生体分子の相互作用をリアルタイムで検出することができる。
更に、本発明によれば、生体分子の融解温度の測定および核酸の配列検知、例えば、一塩基多型の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[生体分子の相互作用試験装置]
本発明の生体分子の相互作用試験装置について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の装置の概略図である。
本発明の生体分子の相互作用試験装置は、基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)、および、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(対向電極)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されており、前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、かつ、前記キャビティ(4)に通じる貫通孔(5)を2つ有し、一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である。
【0011】
前記生体分子は、DNA、RNA、PNA、蛋白、ポリペプチド、糖化合物、脂質、天然低分子、および合成低分子からなる群から選ばれる少なくとも一種であることができ、目的に応じて選択することができる。
ここで、糖化合物としては、例えば、単糖、オリゴ糖、多糖、糖鎖複合体、糖蛋白質、糖脂質、およびそれら誘導体などを挙げることができる。
脂質としては、例えば、脂肪酸、リン脂質、糖脂質、グリセリドなどを挙げることができる。
天然低分子としては、例えば、ホルモン分子や抗生物質、毒物、ビタミン類、生理活性物質、二次代謝産物などを挙げることができる。
合成低分子としては、例えば、天然低分子の合成物、およびそれら誘導体などを挙げることができる。
【0012】
本発明の装置によって試験され得る生体分子の相互作用としては、例えば、プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリダイゼーション、抗原−抗体相互作用、レセプター−リガンド相互作用、タンパク−タンパク相互作用、DNA−タンパク相互作用を挙げることができる。
【0013】
前記マイクロアレイ(1)は、基板上に生体分子を固定化することによって作製されるものであり、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有する。前記導電性物質表面(6)を構成する導電性物質は、例えば、金属(例えば、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、クロム)、導電性酸化物(例えば、In2O5/SnO2)および導電性プラスチック(例えば、ポリアセチレン)であることができる。なお、後述するように、前記基板が突出スポット部を有するものであり、反射像によって自動グリッティングを行う場合には、前記導電性物質は、光を反射する性質を有する物質から選択する。
また、金属とチオール基との結合を利用して、プローブ核酸の固定化を行う場合は、前記導電性物質は、チオール基と結合性を有する金属から選択する。
【0014】
前記基板は、基板表面から突出し、かつ頂上にスポット用平面を有する生体分子固定化用スポット(突出スポット部)を有し、少なくとも前記突出スポット部は導電性物質表面を有し、前記スポット用平面の導電性物質表面に生体分子が固定化されており、かつ前記基板は、前記基板上の突出スポット部以外の表面に、前記突出スポット部の導電性物質表面と通電可能な端子を有するものであることができる。前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有することができ、前記端子は、前記導電性物質被覆層に含まれるか、または、前記導電性物質被覆層と通電可能であることができる。更に、この導電性物質被覆層と突出スポット部の導電性物質表面とは、一体の導電性物質被覆層として設けられていることが好ましい。そのような基板としては、少なくとも、前記突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板(以下、基板Iという)、または、隣り合う突出スポット部は、突出スポット部側面によって隣接しており、かつ、少なくとも、前記突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板(以下、基板IIという)を挙げることができる。
【0015】
基板IおよびIIでは、生体分子固定化用スポットが、突出スポット部の頂上の平面に設けられている。そのため、基板IおよびIIでは、前記突出スポット部頂上のスポット用平面(生体分子固定化用スポット)は、前記突出スポット部周辺の基板表面より一段高い位置にあり、両者間に高低差が生じる。
【0016】
一方、本発明において、後述するように生体分子の相互作用の試験に用いられ得る共焦点型検出器は、試料上の焦点面からの反射光や蛍光を、光学系の結像面に置かれたピンホールに通して検出する。図2に、共焦点型検出器40の光学系の概略図を示す。図2の実線aは、入射光を表す。実線bは、焦点面からの反射光または蛍光を表し、破線は、非焦点面からの反射光または蛍光を表す。共焦点型検出器40では、マイクロアレイ41上の焦点面から反射した反射光、および、試料上の焦点面から放出された蛍光は、対物レンズ42を通ってビームスプリッター43へ入射し、ビームスプリッター43によって、検出レンズ44へ垂直に入射するように光路が修正され、検出レンズ44を経て、結像面45へ入射する。共焦点型検出器40は、試料上での焦点が、結像面でも焦点となるように設計されている。よって、試料上の焦点面からの光は、結像面45で焦点を結び、ピンホール46を通過して、検出部47で検出される。一方、試料上の非焦点面からの光は、結像面45で焦点を結ばないため、大部分がピンホール46を通過せず、検出部7において検出されない。このように、共焦点型検出器によれば、焦点面からの光を、選択的に検出することができる。
【0017】
前記基板Iでは、前記突出スポット部周辺の基板表面と、前記突出スポット部頂上のスポット用平面(生体分子固定化用スポット)との高低差が、生体分子とターゲット生体分子との相互作用の検出において使用する共焦点型検出器の焦点深度以上であれば、共焦点型検出器の焦点を、突出スポット部頂上のスポット用平面の高さに合わせることにより、検出器において、突出部周辺の基板表面からの蛍光や反射光よりも、突出スポット部頂上のスポット用平面からの蛍光や反射光を、より高い強度で検出することができる。従って、基板Iの突出スポット部頂上のスポット用平面に生体分子を固定化したマイクロアレイを含む本発明の装置によれば、スポット上の情報、例えば、ターゲット生体分子との相互作用の有無を、高感度で検出することができる。
【0018】
前記基板IIは、隣り合う突出スポット部が、突出スポット部側面によって隣接しており、かつ、少なくとも、前記突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなることを特徴とする。基板IIの一例を、図3に示す。
【0019】
前記基板IおよびIIにおいて、前記突出スポット部頂上のスポット用平面と前記突出スポット部側面とのなす角は、90度以上であることが好ましい。好ましくは、90〜135度である。図4(a)は、そのような基板の一部の断面図である。ここで、「突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角」とは、図4(a)における角度θをいう。角度θは、例えば、突出スポット部を、突出スポット部周辺の基板表面に対して垂直に切断し、その断面から求めることができる。
【0020】
このように、基板IおよびIIにおいて、突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角が90度以上であることにより、即ち、突出スポット部底面の大きさが、突出スポット部頂上のスポット用平面の大きさ以上であることにより、グリッティングを自動で行って、生体分子固定化用スポットの位置および大きさを特定することができるという利点がある。以下に、この点について、詳述する。
【0021】
図4(a)に示すように、突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角が90度以上である場合、共焦点型の検出器を使用して反射光を検出する際に、突出スポット部頂上のスポット用平面に対して垂直な方向から照射した光(図4(a)に矢印で表される光)に対する突出スポット部側面からの反射光は、入射光と同一方向には反射しない。一方、突出スポット部頂上のスポット用平面からの反射光は、入射光と同一方向に反射する。このため、共焦点型検出器では、突出スポット部頂上のスポット用平面からの反射光のみが検出され、側面からの反射光は検出されない。こうして得られた反射像には、突出スポット部頂上のスポット用平面に相当する像が、反射像として得られ、突出スポット部側面に相当する部分は、反射光がほとんど検出されないので黒色の縁取りとして表れる。この反射像では、黒い縁取りの内部が生体分子スポットに相当するため、この反射像により、スポットの大きさおよび位置を特定することができる。本発明では、このような原理により、自動グリッティングを行うことが可能である。
【0022】
また、基板Iにおいて、突出スポット部の高さが相互作用の検出に使用する共焦点型検出器の焦点深度以上である場合は、共焦点型検出器の焦点を、突出スポット部頂上のスポット用平面の高さに合わせれば、突出スポット部周辺の基板表面からの反射光は、焦点が合わないため、突出スポット部頂上のスポット用平面からの反射光よりもはるかに弱い強度でしか、検出されない。本発明では、この高低差を利用して自動グリッティングを行うことも可能である。但し、前記突出スポット部の高さが相互作用の検出に使用する共焦点型検出器の焦点深度より小さい場合であっても、前述のように、反射像において、突出スポット部側面に相当する部分が黒色の縁取りとして表れれば、スポットの大きさおよび位置を特定することが可能である。
【0023】
また、基板Iでは、前記突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角が90度未満であっても、突出スポット部の高さが相互作用の検出に使用する共焦点型検出器の焦点深度以上である場合は、スポット用平面と、突出スポット部周辺の基板表面との高低差を利用して、反射像によって、スポット用平面の位置および大きさを特定し、自動でグリッティングを行うことができる。前記突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角が90度である場合、前記突出スポット部の形状は、例えば、円柱状または角柱状であることができる。
【0024】
さらに、基板Iは、前記突出スポット部頂上のスポット用平面と前記突出スポット部側面とのなす角が、90度以上であり、かつ、前記突出スポット周辺の基板表面が、略V字型底面を形成する基板であることもできる。このような基板では、共焦点型検出器で検出されるスポット用平面からの反射光強度が、基板上のスポット用平面以外の部分からの反射光強度より強くなるため、この反射光強度の違いにより、スポット用平面の位置および大きさを特定することができる。図5は、「略V字型底面」を有する基板の一部の拡大図である。本発明において、「略V字型底面」とは、例えば、隣り合う突出スポット部間の突出スポット部周辺の基板表面が平面ではなく、図5に示すように、略V字を形成していることをいう。
【0025】
更に、基板Iは、少なくとも、前記突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、導電性物質からなる。製造の容易さや製造コストを考慮すれば、基板Iは、基板上の、前記突出スポット周辺以外の基板表面も、導電性物質からなるものであることが好ましい。また、基板IIは、少なくとも突出スポット部側面および突出スポット部平面が、導電性物質からなる。
【0026】
本発明では、基板Iにおいては、少なくとも、突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、基板IIにおいては、少なくとも、突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなることにより、後述するように、基板上に生体分子を固定化することによって作製されたマイクロアレイ(1)に対向する電極を設け、電界を印加することによって、スポット用平面に固定化された生体分子とターゲット生体分子との相互作用を促進することができる。例えば、ターゲット生体分子の濃度が低い場合でも、良好な相互作用結果を得ることができ、また、濃度が同一の場合には、より短時間で所定の相互作用結果を得ることができる。
【0027】
また、前記導電性物質が、光を反射する性質を有するものであれば、反射光によって、生体分子固定化スポットの大きさおよび位置を特定し、自動でグリッティングを行うことができる。この点については後述する。
【0028】
本発明において、前記突出スポット部の高さは、相互作用の検出において使用する共焦点型検出器の焦点深度以上の高さになるように、適宜設定することができる。通常の共焦点型検出器の焦点深度を考慮すると、前記突出スポット部の高さは、例えば、10〜500μmとすることができる。但し、前述のように、基板上の突出スポット部頂上のスポット用平面とそれ以外の部分との形状の差による反射光強度の相違を検出することによって自動グリッティングを行う場合は、前記突出スポット部の高さが相互作用の検出に使用する共焦点型検出器の焦点深度より小さくても、自動グリッティングが可能である。この点については、後述する。
【0029】
また、前記突出スポット部の高さを決定する際は、生体分子のスポット形成(スタンピング)に使用するニードルの直径や、プローブ核酸等の生体分子溶液のスポット量も考慮する必要がある。例えば、直径100μmの円形の突出スポット部に対して直径130μm程度のニードルを用いて生体分子をスポットする場合、突出スポット部の高さが15μm以上であれば、表面張力のため、突出スポット部頂上のスポット用平面から生体分子溶液が流れ出すことなく、固定化用スポットのみに、生体分子が固定化されるため、好ましい。
【0030】
突出スポット部を有する基板において、突出スポット部頂上のスポット用平面の形状は、スポットされた生体分子を保持し得る形状であれば、いずれの形状であることもでき、例えば、円形や正方形であることができる。前記スポット用平面の大きさは、スポットに用いるニードルやスポットする生体分子溶液の量に応じて適宜設定することができ、例えば、10〜500μmとすることができる。ここで、「スポット用平面の大きさ」とは、例えば、スポット用平面の形状が円形の場合は、その直径をいい、スポット用平面の形状が正方形の場合は、その一辺の長さをいう。
突出スポット部底面の形状は、特に限定されないが、製造の容易さ等を考慮すれば、スポット用平面と同様の形状であることが好ましい。図4(b)は、突出スポット部を有する基板上の突出スポット部の概略図である。ここで、「突出スポット部底面の形状」とは、図4(b)の斜線部をいう。
【0031】
前記突出スポット部頂上のスポット用平面は、粗面化されていてもよい。例えば、前記突出スポット部頂上のスポット用平面は、深さ方向と略水平方向に、相互作用の検出において使用する共焦点型検出器の焦点深度以内の深さの凹凸を有していてもよい。図6に、粗面化されたスポット用平面の一例(部分拡大図)を示す。粗面化されたスポット用平面の一例としては、図6に示すような、数μm角の格子状の形状を設けたスポット用平面を挙げることができる。このように、スポット用平面が粗面化されていることにより、後述するように、電気泳動または誘電泳動によるターゲット生体分子の濃縮効果を得る場合に、凹凸の角(エッジ)部分に強電界が生じ、相互作用が更に促進されるという利点がある。
【0032】
スポット用平面の粗面化方法は特に限定されず、例えば、本発明で使用される基板がプラスチック成型基板の場合、フォトリソグラフィーによりエッチングした母材を、電鋳法により反転写した微細加工金型を用いることにより、スポット用平面が粗面化された基板を製作することができる。
【0033】
前記基板は、全体が導電性物質からなるものであることができ、または、基板表面に導電性物質被覆層を有するものであることができる。また、金属とチオール基との結合を利用して、プローブ核酸の固定化を行う場合は、前記導電性物質は、チオール基と結合性を有する金属から選択する。
【0034】
導電性物質被覆層を有する基板としては、ガラス、石英、シリコン、プラスチック、具体的には、ポリプロピレン等の基板の表面に、前記導電性物質を被覆したものを挙げることができる。基板上の導電性物質被覆層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1〜10μmとすることができる。
【0035】
前記基板が、前述のように、基板表面から突出し、かつ頂上にスポット用平面を有する生体分子固定化用スポット(突出スポット部)を有するものである場合の基板の製造方法について説明する。
前記基板が金属からなるものである場合は、所望の形状の突出スポット部に対応した凹部を有する鋳型に、熔融した金属を注入して鋳造することにより、本発明の基板を得ることができる。また、プレス成形によって、金属製基板を得ることもできる。本発明の基板は、金属からなる基板の上に、導電性物質を被覆したものであることもできる。
本発明の基板が、シリコンまたはプラスチック製の基板上に導電性物質の被覆を有するものである場合は、例えば、所望の形状の突出スポット部に対応した凹部を有する成形型を用いてシリコンまたはプラスチックを成形し、そのシリコンまたはプラスチック製の基板上に、導電性物質を、蒸着、メッキ等によって被覆することにより、本発明の基板を得ることができる。
また、突出スポット部を有する基板は、平板状の基板上に導電性被覆層を被覆した後に、エッチング等により突出スポット部を形成することによって製造することもできる。
また、突出スポット部を有さない基板は、公知の方法で製造することができ、また、市販品として入手可能なものもある。
【0036】
次に、突出スポット部を有する本発明の基板が、ガラス基板上に金被覆層を有するものである場合の、基板の製造方法の一例を説明する。但し、本発明はこの態様に限定されるものではない。
まず、スライドガラスの表面に、真空蒸着装置により、クロムを蒸着し、次いで、その上に金を蒸着する。この金蒸着スライドガラス上に、ポジ型レジストをスピンコーターで塗布し、例えば60℃でオーブンにより1時間ベーキングする。
次いで、紫外線露光装置により、フォトマスクを通してスライドガラスに紫外線を照射する。このとき、フォトマスクとしては、所望の形状の突出スポット部に対応したパターンを有するものを使用する。紫外線照射後、現像液によって現像を行えば、金蒸着スライドガラス表面に、レジストパターンを形成することができる。
【0037】
次いで、レジストパターン周辺の金表面を、金エッチャントによってエッチングする。金エッチング後の基板を超純水によって洗浄した後、金の下に蒸着されたクロムを除去するために、エッチャントにより更にエッチングを行い、超純水によって洗浄する。
アセトン等によってレジストを溶解した後、超純水によって洗浄し、更に残っているレジストを完全に除去するために、ピラニア溶液(硫酸:過酸化水素=1:1)に10分間漬けて、超純水で洗浄する。これにより、フォトマスクに対応した金パターンを有するガラス基板を得ることができる。
【0038】
次に、上記基板を、フッ化水素酸に浸漬し、露出しているガラス表面をエッチングする。このときに使用するフッ化水素酸の濃度および浸漬時間は、所望の突出スポット部の高さに応じて適宜設定することができる。
【0039】
次に、前述と同様に、金およびクロム等のエッチングを行った後、ピラニア溶液および超純水によって基板を洗浄し、所望の形状の突出スポット部を有するガラス基板を得ることができる。
このガラス基板に、前述と同様に、クロムを蒸着し、次いで、金を蒸着することによって、突出部を有し、かつ、金被覆を有する基板を得ることができる。
【0040】
前述の基板全体の大きさ、基板上の突出スポット部の数および集積度は特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、本発明では、10〜20,000mm2の大きさの基板上に、突出スポット部を、10〜50,000個程度有する基板を用いることができる。
【0041】
本発明では、基板上に固定化された生体高分子が核酸であり、かつ、前記導電性物質表面(6)を構成する導電性物質が金属である場合、プローブ核酸を基板上に固定化するために、基板上の導電性物質表面(6)を構成する金属と反応性を有する基を一端に有する核酸を含む溶液を、スポッティング溶液として用いることができる。そのような基としては、チオール基を挙げることができる。チオール基を有する核酸鎖の金属表面への固定化は、公知の方法によって行うことができ、例えば、J.Am.Chem.Soc.1998,120,9787-9792を参照することができる。
【0042】
金属表面へのDNAの固定化方法としては、金属(表面酸化被膜を活性化させ水酸基を提示させたもの)に対して以下の処理を行う方法を用いることもできる。
(1)アミノシラン処理した基板表面に、UV照射することにより、DNAを固定化する。
(2)アミノシラン、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)-ビオチン、アビジンによって順次処理した基板表面に、ビオチン化DNAを固定化する。
(3)アミノシラン、マレイミド-ビオチン、アビジンによって順次処理した基板表面に、ビオチン化DNAを固定化する。
(4)アミノシラン、次いでグルタルアルデヒドによって処理した基板表面に、アミノ化DNAを固定化する。
(5)アミノシラン、次いでカルボジイミドによって処理した基板表面に、アミノ化DNAを固定化する。
(6)アミノシラン処理した基板表面に、カルボキシ化DNAを固定化する。
(7)アミノシラン処理した基板表面に、リン酸化DNAを固定化する。
(8)アミノシラン、次いでNHS−マレイミド化合物によって処理した基板表面に、チオール化DNAを固定化する。
(9)エポキシシラン処理した基板表面に、アミノ化DNAを固定化する。
(10)チオールシラン処理した基板表面に、チオール化DNAを固定化する。
【0043】
また、DNA以外の生体分子についても、上記のような、UV照射による固定化や、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基などの官能基を介しての固定化が可能である。
【0044】
前記導電性物質表面(6)への生体分子溶液のスポッティングは、常法により行うことができ、例えば、先端に生体分子溶液を保持したニードルを、基板表面の生体分子を固定化させたい位置に接触させることにより行うことができる。ここで、前記基板が突出スポット部を有する場合は、突出スポット部頂上のスポット用平面に接触させることにより、生体分子のスポッティングを行うことができる。ここで使用されるスポッティング用装置としては、例えば、特開2001−46062号公報および特開2003−57236号公報に記載の装置を挙げることができる。スポット量は、適宜調整することができ、前記基板が突出スポット部を有する場合は、スポット用平面から生体分子溶液が流れ出さないように、スポット用平面の大きさや、突出スポット部の高さに応じて、適宜設定することができる。
【0045】
本発明の装置には、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように、透明電極(2)(対向電極)が備えられている。本発明では、マイクロアレイと対向電極との間に電界を印加することにより、生体分子が固定化された平面と、対向電極の前記平面と対向する面との間で電界密度が高まり、溶液中のターゲット生体分子が、電気泳動(直流電源を使用した場合)または誘電泳動(交流電源を使用した場合)によって、生体分子が固定化されたスポット近傍に濃縮される。これにより、基板上に固定化された生体分子と、ターゲット生体分子との相互作用を促進することができる。この効果は、前述の突出スポット部を有する基板を使用した場合に顕著である。特に、生体分子が固定化されたスポット平面が粗面化されている場合、例えば、スポット平面に、共焦点型検出器の焦点深度以内で深さ方向と略水平方向に凹凸を有する場合は、凹凸の角(エッジ)部分に強電界が生じ、相互作用が更に促進されるという利点がある。
【0046】
前記対向電極は、透明であり、かつ、前記生体分子マイクロアレイと対向電極との間に電界を印加することができるものであれば、特に制限はない。このように透明電極を用いることにより、キャビティ内に溶液を送液または保持しながら、透明電極の上から共焦点型検出器で反射光および/または蛍光の検出を行うことができ、生体分子の相互作用をリアルタイムで検出することができる。
本発明において、対向電極は、透明な導電性物質、例えば、導電性酸化物、導電性プラスチック等からなる基板であることができ、また、マイクロアレイと対向する面に、導電性物質被覆層を有する基板からなるものであることもできる。前記対向電極は、好ましくは、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化スズなどの導電性酸化物からなるものであることができる。
【0047】
また、本発明の装置において、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加するための電源は、直流電源でも、交流電源でもよい。より好ましくは、交流電源が用いられる。直流電源を使用する場合は、高電圧をかけると、ターゲット生体分子溶液が高電圧により電気分解し、気泡等が発生しやすいという懸念があるため、低電圧を使用することが好ましい。ターゲット生体分子としてDNAを使用する場合には、DNAがマイナスに荷電されているため、直流電源を使用する場合は、突出スポット部側が、プラスになるように電界を印加することが好ましい。交流電源を使用する場合は、その周波数は、例えば10Hz〜1MHzとすることができる。
【0048】
本発明の装置は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている。前記マイクロアレイ(1)は、前記キャビティ(4)に通じる2つの貫通孔(5)を有する。一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である。本発明の装置は、以上の構成を有することにより、キャビティ(4)内への送液が可能になる。これにより、生体分子の相互作用を、ターゲット生体分子を含む溶液を送液しながら透明電極(2)を通してリアルタイムで試験することが可能になる。また、溶液中のターゲット生体分子の濃度を変えながら送液しながら、または、ターゲット生体分子を含まない溶液を送液して洗浄しながら、キャビティ内の生体分子の相互作用の状態を観察することもできる。
【0049】
前記非導電性スペーサーは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シリコンフィルムからなるシートを、キャビティ(4)に相当する空孔が形成されるように、所望の形状に型抜きすることによって作製することができる。但し、非伝導性スペーサーの材質は上記のものに限定されず、加工の容易性等を考慮して適宜選択することができる。
【0050】
本発明の装置では、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との距離は、非導電性スペーサー(3)の厚さによって制御することができる。電界印加によって生体分子の相互作用を促進するためには、前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と前記対向電極(2)のマイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と対向する表面との距離は、10〜300μmとすることが好ましい。非導電性スペーサー(3)の厚さは、前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と前記対向電極(2)のマイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と対向する表面との距離を考慮して適宜設定することができ、例えば、10〜300μmとすることができる。
【0051】
前記非導電性スペーサーは、その両面に接着剤層を有することができる。非導電性スペーサーは、この接着剤層によって、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)と張り合わせることができる。このように非導電性スペーサー(3)の一方の面にマイクロアレイ(1)を張り合わせ、他方の面に対向電極(2)を張り合わせることによって、前述のスペーサーシールに設けた空孔部分に、キャビティ(4)が形成される。これにより、マイクロアレイ(1)、非導電性スペーサー(3)、および対向電極(2)とによって形成されたキャビティ(4)を有する、本発明の装置を構成することができる。
【0052】
前記接着剤層の接着剤は、光硬化性樹脂を含むことが好ましい。光硬化性樹脂は、光を照射することによって硬化して接着力を失うため、前記接着剤が光硬化性樹脂を含むことにより、光照射すれば、非導電性スペーサー(3)からマイクロアレイ(1)と対向電極(2)とをはずすことができる。光硬化性樹脂としては、例えば紫外線硬化型樹脂などの公知の光硬化性樹脂を用いることができる。
【0053】
本発明の装置は、マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電極とを接続するための手段を有する。
本発明の装置は、前述のように、マイクロアレイ(1)にキャビティ(4)に通じる2つの貫通孔(5)を有し、それら貫通孔を通して送液することができる。更に、上記のようにマイクロアレイ側からマイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と対向電極(2)との間に電界を印加できる構成を有することにより、送液・電界の印加をいずれもマイクロアレイ(1)側から行うことができるため、対向電極(2)側からの生体分子の相互作用の観察を妨げるものがなく、スムーズに観察を行うことができる。
【0054】
そのような手段を有する装置の具体例としては、図1に示すように、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と少なくとも一部が接触し、かつ、前記対向電極(2)とは接触しない導電性部材(7)を更に有し、前記基板上の導電性物質表面(6)は、前記導電性部材(7)を介して外部電源と接続される構成を有する装置を挙げることができる。前記導電性部材(7)を構成する導電性物質としては、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、クロム、導電性酸化物(例えば、In2O5/SnO2)および導電性プラスチック(例えば、ポリアセチレン)を挙げることができる。
【0055】
上記の構成を有する装置において、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加するためには、図1に示すように、前記マイクロアレイ(1)に、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および前記対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を設けて、これら貫通孔(8)、(9)を通して、マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と対向電極(2)と外部電源とを接続すればよい。
【0056】
前述の貫通孔は、例えばマイクロアレイ用基板を金型成形する場合には、成形時に設けることができる。また、貫通孔は型抜き等により設けることもできる。
【0057】
本発明の装置は、ヒーター等の温度制御手段を更に有することが好ましい。温度制御手段によって、生体分子周辺の環境を、相互作用に適した温度に制御することにより、相互作用を更に促進することができる。特に、温度制御手段は、マイクロアレイ側に設けることが好ましい。これにより、対向電極(2)側からの観察を妨げることなく、温度制御を行うことができる。
【0058】
[生体分子の相互作用試験方法]
本発明の生体分子の相互作用試験方法の第一の態様(以下、「試験方法I」ともいう)は、基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(対向電極)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出すること、
を含む、前記方法(以下、「試験方法I」ともいう)である。
【0059】
本発明の生体分子の相互作用試験方法の第二の態様(以下、「試験方法II」ともいう)は、基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(対向電極)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の保持中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出する、前記方法である。
【0060】
試験方法I、試験方法IIのいずれにおいても、前述の本発明の生体分子の相互作用試験装置を用いることができる。
【0061】
試験方法Iは、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出することを含む。このように、試験方法Iによれば、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加して生体分子の相互作用を促進しつつ、溶液を送液しながら生体分子の相互作用を、対向電極(2)を通してリアルタイムで観察することができる。また、電界を印加しながら、最初にターゲット生体分子を含む溶液を送液してマイクロアレイ上の生体分子とターゲット生体分子とを相互作用させ、次いでターゲット生体分子を含まない溶液を送液することによりキャビティ内を洗浄しながら、その間のキャビティ内の生体分子の相互作用の状態を、対向電極を通して観察することもできる。更には、キャビティ内に送液する溶液のターゲット生体分子の濃度を順次変更しながら、生体分子の相互作用の観察を行うこともできる。
【0062】
一方、試験方法IIは、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、前記溶液の保持中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出する。このように、試験方法IIによれば、キャビティ(4)内にターゲット生体分子を含む溶液を充填して所定時間保持しながら、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加して生体分子の相互作用を促進することができ、その相互作用を、ターゲット生体分子の保持中または排出後に、対向電極(2)を通して観察することができる。また、試験方法IIでは、ターゲット生体分子を含む溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填して、キャビティ内の溶液を交換することもできる。
【0063】
試験方法IおよびIIにおいて、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に印加される電界は、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間の距離を考慮しつつ、電気泳動または誘電泳動によるターゲット生体分子の濃縮の効果が得られる範囲で適宜設定することができ、例えば、0.01〜10MV/mとすることができる。また、後述するように、ターゲット生体分子溶液に用いるバッファーの種類に応じて、高い相互作用促進効果が得られるように、印加電界を適宜設定することが好ましい。
【0064】
試験方法IおよびIIでは、マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加することが好ましい。前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および前記対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を有する、本発明の生体分子相互作用試験装置を使用する場合、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続することにより、マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加することができる。
また、試験方法IおよびIIにおいて、本発明の生体分子相互作用試験装置を使用する場合、マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出することができる。
このように、送液および外部電源との接続を、いずれもマイクロアレイ(1)側から行うと、対向電極(2)側には、対向電極(2)側からの生体分子の相互作用の観察を妨げるものがないため、スムーズに観察を行うことができる。
【0065】
前述のターゲット生体分子を含む溶液(以下、「ターゲット生体分子溶液」ともいう)はバッファーを含むことができる。ターゲット生体分子溶液に用いるバッファーとして、好ましいものとしては、約6〜8付近の解離定数(pKa)を有するものが挙げられる。プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを効率よく起こさせるためには、pHが中性域であることが好ましいため、中性域で緩衝能を有するバッファーを使用することが好ましい。具体的には、以下のバッファー物質を含むバッファーが挙げられる;フェニルアラニン、カルノシン、アルギニン、ヒスチジン、MES(2-(N-モルホリン)エタンスルホン酸)、マレイン酸、3,3-ジメチルグルタル酸、炭酸、4-ヒドロキシメチルイミダゾール、クエン酸、ジメチルアミノエチルアミン、プロリン酸、グリセロール-2-リン酸、PIPES (ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、エチレンジアミン、イミダゾール、MOPS (3-(N-モルホリン)プロパンスルホン酸)、リン酸、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、4-メチルイミダゾール、HEPES (N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、N-エチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)。
【0066】
ターゲット生体分子溶液に用いるバッファーの伝導率が過度に高いと、バッファー中のイオンの移動により、ターゲット生体分子の濃縮効果が低減するおそれがある。そこで、本発明では、伝導率が10〜500μΩ-1/mのバッファーを用いることが好ましく、伝導率が10〜100μΩ-1/mのバッファーを用いることが更に好ましい。バッファーの伝導率が上記範囲内であれば、生体分子の相互作用を良好に促進することができる。また、バッファーの濃度は、上記範囲内の伝導度が得られるように、適宜調整することが好ましい。
【0067】
以上の観点から、好ましいバッファーの具体例としては、バッファー物質として、フェニルアラニン、ヒスチジン、カルノシン、アルギニンを含むバッファーを挙げることができる。プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを、フェニルアラニンを含有するターゲット生体分子溶液を用いて行うと、特に高いハイブリダイゼーションシグナル強度を得ることができ、しかも、電界印加により、電界を印加しない場合と比べて、例えば2倍以上のハイブリダイゼーションシグナル強度を得ることができる。このように、フェニルアラニンは、電界を印加することにより生体分子の相互作用を促進する本発明において、特に効果を発揮するバッファー物質である。
【0068】
なお、マイクロアレイと電極との間に印加する電界は、高い生体分子相互作用促進効果が得られるように、使用するバッファーに応じて適宜設定することが好ましい。例えば、フェニルアラニンをバッファーとして用いる場合には、0.5〜1.0MV/m、ヒスチジンの場合は、0.5〜1.0MV/m、カルノシンの場合は、0.25〜0.75MV/m、アルギニンの場合は、0.1〜0.3MV/m、の範囲の電界を印加することが好ましい。
【0069】
試験方法IおよびIIでは、マイクロアレイ(1)上の生体分子とターゲット生体分子との相互作用を、対向電極(2)を通して光学的に検出する。光学的な検出方法としては、蛍光検出器、共焦点検出器、共焦点レーザ蛍光顕微鏡、蛍光顕微鏡を用いる方法を挙げることができる。中でも、共焦点検出器によって蛍光を検出することにより生体分子間の相互作用を検出するために、ターゲット生体分子は、蛍光標識されていることが好ましい。ターゲット生体分子の蛍光標識は、公知の方法で行うことができる。また、本発明では、マイクロアレイ(1)上に固定化される生体分子が、蛍光標識されていてもよい。マイクロアレイに固定される生体分子の蛍光標識も、公知の方法で行うことができる。
【0070】
更に、本発明の生体分子の相互作用試験方法では、前述の、基板上に突出スポット部を有する本発明の生体分子相互作用試験装置を使用することもできる。この場合、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出することができる。共焦点型検出器による反射光および蛍光の検出原理については、前述の通りである。本発明の相互作用試験において、基板上に突出スポット部を有する本発明の生体分子相互作用試験装置を使用する場合、共焦点型検出器を用いて、前述の原理で反射像によってスポットの大きさおよび位置を特定することで、自動グリッティングを行うことができる。即ち、マイクロアレイ表面の突出スポット部とそれ以外の部分の高さおよび/または形状の差による反射光強度の相違から、マイクロアレイ上の突出スポット部を、反射像として検出することができる。更に、共焦点型検出器によって、マイクロアレイからの蛍光を検出するときに、マイクロアレイ上の突出スポット部頂上のスポット平面の高さに、共焦点型検出器の焦点を合わせれば、突出スポット部からの蛍光、即ち、スポット平面上の蛍光標識された生体分子(スポットに固定化された生体分子および/またはターゲット生体分子)からの蛍光を選択的に検出して、スポットに対応する蛍光像を得ることができる。本発明では、こうして得られた反射像と蛍光像を重ね合わせることによって、マイクロアレイ上の相互作用が起こっているスポットを特定することができ、その蛍光強度により、相互作用の程度を測定することができる。なお、本発明では、二本鎖核酸を特異的に染色する蛍光インターカレーターを用いて、インターカレーターからの蛍光を測定することによって相互作用を検出することもできる。
【0071】
特に、本発明では、反射光と蛍光とを同時に検出することができる共焦点型蛍光スキャナーを用いることが好ましい。そのような装置の一例を、図7に示す。図7に示す装置では、励起光源(レーザー)21から発生した励起光はミラー22、ダイクロックミラーミラー23、ミラー26、対物レンズ24、を介して試料(マイクロアレイ)25に照射される。反射光は対物レンズ24、ミラー26、ダイクロックミラー23(反射光の一部を透過(数パーセント以下))、ダイクロックミラー27、減光フィルター28、検出レンズ29、ピンホール30を介して反射光検出部31に導かれる。蛍光は2つのダイクロックミラー23、27を透過し、ミラー32にて反射しカットフィルター33、検出レンズ34、ピンホール35を介して蛍光検出部36に導かれる。このような装置によれば、マイクロアレイ表面の突出スポット部とそれ以外の部分の高さおよび/または形状の差による反射光強度の相違から、マイクロアレイ上の突出スポット部を反射像として検出し、同時に、そのスポットからの蛍光を検出することによって、生体分子の相互作用を検出することができる。
【0072】
[生体分子の融解温度測定方法]
本発明は、更に、前述の本発明の生体分子の相互作用試験方法を用いることを特徴とする、生体分子の融解温度測定方法に関する。
生体分子、例えば核酸は、加熱していくとある温度で立体構造に大きな変化が起こり、あたかも相転移に相当するような変化が観察される。このときの温度を融解温度という。本発明の生体分子の融解温度測定方法では、例えば、生体分子が核酸である場合、キャビティ内にターゲット核酸と二本鎖検出試薬を含む溶液を保持してマイクロアレイ上のプローブ核酸とターゲット核酸とを相互作用させ、キャビティ内の温度を上昇させていき、対向電極を通して二本鎖検出試薬からの蛍光を検出することによって、キャビティ内のターゲット核酸のプローブ核酸からの遊離状態をリアルタイムで観察することができ、これにより、核酸の融解温度を測定することができる。二本鎖検出試薬としては、エチジウムブロマイドを用いることができ、市販品としては、例えばタカラバイオ株式会社製SYBR(商標) Green Iを用いることができる。また、二本鎖核酸検出試薬を用いずに、蛍光標識したターゲットDNA分子を使用することにより、融解温度を測定することもできる。
【0073】
[核酸の配列検知方法]
本発明は、更に、前述の本発明の生体分子の相互作用試験方法を用いることを特徴とする、核酸の配列検知方法にも関する。
ターゲット核酸と完全相補性のプローブ核酸を基板上に固定化して、ターゲット核酸とプローブ核酸とをハイブリダイズさせた後に温度を上昇させた場合に観察される核酸の融解挙動は、ターゲット核酸と完全相補のプローブ核酸を用いた場合と、一部の塩基配列が異なるプローブ核酸とを用いた場合とで異なる。そこで、本発明では、この違いを利用して、本発明の生体分子の相互作用試験方法を用いて、ターゲット核酸とプローブ核酸とをハイブリダイズさせた後に、キャビティ内の温度を上昇させていき、対向電極を通して、例えば蛍光を観察することによって、そのキャビティ内でのターゲット核酸のプローブ核酸からの融解の挙動を観察し、それに基づいてターゲット核酸の配列を検知することができる。このような本発明の核酸の配列検知方法によれば、完全相補配列からの塩基配列の違い、例えば、一塩基多型(SNP)を検出することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
[実施例1]
誘電ハイブリダイゼーション
(1)突出スポット部を有するマイクロアレイの作製
(i)アレイパーツの作製
フォトリソグラフィーとマイクロミーリング技術を利用して、基板上に形成する突出スポット部に対応する凹部を有する金型を製作した。この金型を用いて、射出成形によって、ポリカーボネート製のアレイパーツを作製した。突出スポット部の高さは200μm、スポット用平面は一辺90μmの正方形であり、スポット用平面と突出スポット部側面とのなす角度は95°であった。突出スポット部の断面図を図13に示す。
作成したアレイパーツを真空蒸着装置(型番KS−807RK型、株式会社ケーサイエンス製)のベルジャーにセットし、10x10-4 Pa以下にベルジャー内を真空にした後、クロムを0.08nm/sの速度で、50nm厚まで蒸着し、引き続き、金を0.5nm/sの速度で、500nm厚まで蒸着した。
以上の方法で、図8に示すアレイパーツを作製した。
(ii)DNAスタンピング
45mer オリゴDNAプローブ溶液(120μM in 1x マイクロスポッティング溶液(テレケム社)+0.1% Tween 20)を、DNAアレイヤーにより、アレイパーツの突出スポット部頂上のスポット用平面へスタンプした。スタンプ針の先端は、直径130μmの円形のものを利用した。
プローブDNAとしては、以下の11種類の遺伝子配列である45merオリゴDNAを用いた。
【化1】
【0075】
(2)非導電性スペーサーの作製
90μm厚で両面に紫外線硬化性樹脂を含む接着剤層(接着層は剥離シートでカバーした)を有するPEN製のシートを、びく型により型抜きし、図9に示す非導電性スペーサーを作製した。
【0076】
(3)対向電極の作製
ITOガラスを所定の寸法に切断して、対向電極を作製した。
【0077】
(4)カバーパーツの作製
射出成形により、ポリカーボネート製カバーパーツを作製した。図10に、カバーパーツの概略図を示す。カバーパーツには、対向電極をはめ込むために、くぼませた部分(対向電極はめ込み部)、対向電極を通してキャビティ内を観察するための空孔部(観察窓)を設け、更に、導電性部材(銅製部材に銀メッキを施した)をはめ込んだ。
【0078】
(5)生体分子の相互作用試験装置の組み立て
非導電性スペーサーの片側の剥離シートを剥がし、非導電性スペーサーの空孔内に、生体分子が固定化されたスポットおよびアレイパーツに設けられた2つの送液用の貫通孔が収まり、かつ、アレイパーツ2つの導通用貫通孔と、非導電性スペーサーに設けられた2つの貫通孔がそれぞれ一致するように、アレイパーツと非伝導性スペーサーを貼り付けた。カバーパーツの対向電極はめ込み部に対向電極をはめ込んだ。非導電性スペーサーの他方の剥離シートを剥がして、カバーパーツと非導電性スペーサーとを貼り付け、図1に示す装置を作製した。この装置において、対向電極表面とDNAが固定化された面との間には、30μmのギャップが形成された。
【0079】
(6)誘電ハイブリダイゼーション
マウス脳由来のmRNAをアマシャム社のCyscribe cDNA post labeling kitにより標識したCy3標識cDNAをターゲットDNAとして用いた。このマウス脳由来Cy3標識cDNAターゲットを、それぞれ5 ng/μl、0.5 ng/μl、0.05 ng/μlの濃度になるように、50 mM L-ヒスチジン溶液に調製したものをハイブリダイゼーション溶液として用いた。このハイブリダイゼーション溶液は、95℃で2分間熱変性させ、続いて4℃で2分間急冷した後、ハイブリダイゼーションに用いた。ハイブリダイゼーションは、1MHz 30Vp-pの高周波交流電場を印加した条件と、印加しなかった条件で行った。結果を図11に示す。図11からわかるように、電場を印加した場合、電場を印加しなかった場合と比べて10倍以上の検出感度の向上が見られた。
【0080】
[実施例2]
融解温度の測定、SNPの検出
実施例1で作製したマイクロアレイに、PM(完全相補鎖の20mer;配列GGACATGGAGTTCCGCGACC)、MM(PMに対して中央の1塩基が異なっている20mer; 配列GGACATGGAGATCCGCGACC)のDNAプローブをスタンプおよび固定処理を行った。
ターゲットDNAとして、5'末端にCy3標識されたPMに対して相補鎖の21mer(配列; GGTCGCGGAACTCCATGTCC)を用いた。
ハイブリダイゼーション溶液は、0.5μM ターゲットDNA, 50mM ヒスチジンを用いた。
1MHz, 30Vp-p (1MV/m)の交流電場を印加しながら、室温で10分間ハイブリダイゼーションを行った後、室温にて、洗浄液2xSSC/0.1% SDSを、マイクロアレイに設けた送液口から注入し、3回洗浄を行った。 キャビティ内に洗浄液が入っている状態で、蛍光顕微鏡下で室温から68℃までキャビティ内の溶液を加熱しながら、カバーパーツに設けた観察窓から、対向電極を通してリアルタイムでハイブリッドシグナルを検出し、DNAハイブリッドの融解曲線を求めた。融解曲線を、図12に示す。融解温度とは、二本鎖DNAが50%解離している温度を指す。図12に示す融解曲線求めたPMの融解温度は約61℃であり、MMの融解温度は約59℃であり、PMとMMとの間で、融解温度に約2℃の差があった。この融解温度の違いを利用すれば、例えば一塩基多型などの変異を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、生体分子の相互作用を促進しつつ、生体分子の相互作用をリアルタイムで試験することができる。更に、本発明によれば、生体分子の融解温度の測定、一塩基多型などの変異の検出を容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の装置の概略図を示す。
【図2】共焦点型検出器の光学系の概略図を示す。
【図3】本発明において使用される基板の一例を示す。
【図4】基板上の突出スポット部の概略図を示す。
【図5】略V字型底面を有する基板の一部の拡大図を示す。
【図6】粗面化されたスポット用平面の一例(部分拡大図)を示す。
【図7】反射光と蛍光とを同時に検出することができる共焦点型蛍光スキャナーの光学系の概略図を示す。
【図8】実施例1で作製したアレイパーツの概略図を示す。
【図9】実施例1で作製した非導電性スペーサーの概略図を示す。
【図10】実施例で作製したカバーパーツの概略図を示す。
【図11】実施例1で得られた結果を示す。
【図12】実施例2で得られた融解曲線を示す。
【図13】実施例1で作製したアレイパーツ上の突出スポット部の断面図を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便かつ迅速に、ターゲット生体分子とプローブ生体分子との相互作用を試験し得る装置、および相互作用試験方法に関する。更に、本発明は、前記方法を用いる、生体分子の融解温度測定方法および核酸の配列検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子診断や病原菌の特定、あるいは一塩基多型の検出等、ある種の核酸(ターゲット核酸)を検出する目的で、プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリダイゼーションが利用されている。近年、多数のプローブ核酸を基板に固定したDNAチップやDNAマイクロアレイが実用化されるようになり、ターゲット核酸の検出に使用されている。
【0003】
DNAチップやDNAマイクロアレイの作製においては、基板にDNAを多数スポットとして整列させて固定化する必要がある。DNAの固定化には、例えば、末端をチオール修飾した一本鎖DNAを、例えば、金基板に固定化する方法が取られている。そして、固定化されたDNAに被検体であるターゲットDNAを作用させ、ハイブリダイゼーションの有無を検出する。ハイブリダイゼーションの有無は、例えば、蛍光法を用いて、蛍光標識したターゲットDNAとハイブリダイズした固定化DNAのスポットの蛍光を測定することによって検出することができる。
【0004】
基板上に固定化されたプローブDNAと試料ターゲットDNAをハイブリダイゼーションさせるためには、例えば、プローブDNAを固定化したDNAマイクロアレイ上に、ターゲットDNAを含むハイブリダイゼーション溶液を滴下し、溶液が乾かないようにカバーガラスをかけて密閉した湿箱に入れ、ターゲットDNAおよびプローブDNAに合わせた適温でハイブリッド形成反応を行う方法が用いられている(特許文献1参照)。しかし、このような方法では、ハイブリッド形成をリアルタイムで観察することはなかった。
【0005】
それに対し、特許文献2には、DNAが固定化されたアレイをチャンバー内に封入したバイオアレイチップ反応装置が開示されている。この装置は、チャンバー内へ溶液の送液が可能な構造を有している。更に、特許文献2には、この装置の基板またはカバーが透明であり得ることが記載されている。このような特許文献2に記載の装置によれば、チャンバー内へ溶液を送液しつつ、透明な基板側またはカバー側から、ハイブリッド形成をリアルタイムで観察することが可能であると考えられる。
【0006】
しかし、プローブDNAとターゲットDNAをハイブリダイゼーションさせるためには、通常、十数時間を要し、しかも、多量の試料ターゲットDNAが必要とされる。そのため、特許文献2に記載の装置において、ハイブリッド形成をリアルタイムで観察することができるとしても、ハイブリッド形成には長時間を要するため、迅速な観察を行うことは困難である。しかも、プローブDNAとターゲットDNAをハイブリダイゼーションさせるためには、多量の試料を調製しなければならない。
【特許文献1】特開2003−156442号公報
【特許文献2】特表平10−505410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、多量の試料および多くの時間と労力を必要とせず、生体分子間の相互作用を迅速に形成することができ、しかも、生体分子の相互作用をリアルタイムで検出することができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的を達成するための手段は、以下の通りである。
[請求項1]基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)、および、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有する生体分子の相互作用試験装置であって、
前記装置は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されており、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、かつ、前記キャビティ(4)に通じる貫通孔(5)を2つ有し、一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である、前記装置。
[請求項2]前記マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続するための手段を有する、請求項1に記載の装置。
[請求項3]前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と少なくとも一部が接触し、かつ、前記対向電極(2)とは接触しない導電性部材(7)を更に有し、前記基板上の導電性物質表面(6)は、前記導電性部材(7)を介して外部電源と接続される、請求項2に記載の装置。
[請求項4]前記導電性部材(7)を構成する導電性物質は、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、導電性酸化物、または導電性ブラスチックである、請求項3に記載の装置。
[請求項5]前記マイクロアレイは、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および前記対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を有する、請求項3または4に記載の装置。
[請求項6]前記非導電性スペーサー(3)は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間隔が均一になるように配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
[請求項7]前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と前記対向電極(2)の前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と対向する表面との距離が、10〜300μmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
[請求項8]前記マイクロアレイ上の導電性物質表面を構成する導電性物質が、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、クロム、導電性酸化物、または導電性プラスチックである請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
[請求項9]前記基板は、基板全体が導電性物質からなるか、または、基板表面に導電性物質被覆層を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
[請求項10]前記導電性被覆層を有する基板が、ガラス、石英、金属、シリコン、またはプラスチックからなる請求項9に記載の装置。
[請求項11]前記非導電性スペーサー(3)は、その両面に接着剤層を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
[請求項12]前記接着剤は、光硬化性樹脂を含む、請求項11に記載の装置。
[請求項13]温度制御手段を更に有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
[請求項14]前記基板は、基板表面から突出し、かつ頂上にスポット用平面を有する生体分子固定化用スポット(以下、「突出スポット部」という)を有し、
少なくとも前記突出スポット部は導電性物質表面を有し、
前記スポット用平面の導電性物質表面に生体分子が固定化されており、かつ
前記基板は、前記基板上の突出スポット部以外の表面に、前記突出スポット部の導電性物質表面と通電可能な端子を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
[請求項15]前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有し、前記端子は、前記導電性物質被覆層に含まれるか、または、前記導電性物質被覆層と通電可能である、請求項14に記載の装置。
[請求項16]前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有し、前記導電性物質被覆層と突出スポット部の導電性物質表面とは、一体の導電性物質被覆層として設けられている、請求項14または15に記載の装置。
[請求項17]前記基板が、少なくとも、前記突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の装置。
[請求項18]前記突出スポット部周辺の基板表面が、略V字型底面を形成する、請求項17に記載の装置。
[請求項19]前記基板が、隣り合う突出スポット部が、突出スポット部側面によって隣接しており、かつ、少なくとも、前記突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の装置。
[請求項20]前記突出スポット部の高さが、10〜500μmである、請求項14〜19のいずれか1項に記載の装置。
[請求項21]前記突出スポット部頂上のスポット用平面と前記突出スポット部側面とのなす角が、90度以上である、請求項14〜20のいずれか1項に記載の装置。
[請求項22]前記生体分子固定化用スポットが粗面化されている、請求項14〜21のいずれか1項に記載の装置。
[請求項23]前記生体分子は、DNA、RNA、PNA、蛋白、ポリペプチド、糖化合物、脂質、天然低分子、および合成低分子からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
[請求項24]基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出すること、
を含む、前記方法。
[請求項25]基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の保持中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出する、前記方法。
[請求項26]前記溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填することを含む、請求項25に記載の方法。
[請求項27]前記マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加する、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
[請求項28]前記装置が、請求項1〜23のいずれか1項に記載の装置である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
[請求項29]前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項28に記載の方法。
[請求項30]前記装置が、請求項5〜23のいずれか1項に記載の装置であり、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続する、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
[請求項31]前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項30に記載の方法。
[請求項32]前記マイクロアレイに固定された生体分子および/または前記ターゲット生体分子が蛍光標識されており、かつ、前記マイクロアレイ上の生体分子とターゲット生体分子との相互作用を、蛍光によって検出する、請求項24〜31のいずれか1項に記載の方法。
[請求項33]請求項14〜23のいずれか1項に記載の装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出することを含む、前記方法。
[請求項34]請求項14〜23のいずれか1項に記載の装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の充填中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出する、前記方法。
[請求項35]前記溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填することを含む、請求項34に記載の方法。
[請求項36]前記マイクロアレイ上の生体分子および/または前記ターゲット生体分子が蛍光標識されている、請求項33〜35のいずれか1項に記載の方法。
[請求項37]前記共焦点型検出器によって、マイクロアレイ表面の突出スポット部とそれ以外の部分の高さおよび/または形状の差による反射光強度の相違から、マイクロアレイ上の前記突出スポット部を反射像として検出する、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
[請求項38]前記反射像として検出された突出スポット部からの蛍光を検出することによって、生体分子の相互作用を検出する、請求項37に記載の方法。
[請求項39]前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を導入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項33〜38のいずれか1項に記載の方法。
[請求項40]前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続する、請求項33〜39のいずれか1項に記載の方法。
[請求項41]前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に印加される電界が、0.01〜10MV/mである、請求項24〜40のいずれか1項に記載の方法。
[請求項42]前記ターゲット生体分子を含む溶液が、フェニルアラニン、ヒスチジン、カルノシン、およびアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのバッファー物質を含む、請求項24〜41のいずれか1項に記載の方法。
[請求項43]請求項24〜42のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、生体分子の融解温度測定方法。
[請求項44]請求項24〜42のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、核酸の配列検知方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多量の試料および多くの時間と労力を必要とせず、生体分子間の相互作用を迅速に形成することができ、しかも、生体分子の相互作用をリアルタイムで検出することができる。
更に、本発明によれば、生体分子の融解温度の測定および核酸の配列検知、例えば、一塩基多型の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[生体分子の相互作用試験装置]
本発明の生体分子の相互作用試験装置について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の装置の概略図である。
本発明の生体分子の相互作用試験装置は、基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)、および、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(対向電極)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されており、前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、かつ、前記キャビティ(4)に通じる貫通孔(5)を2つ有し、一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である。
【0011】
前記生体分子は、DNA、RNA、PNA、蛋白、ポリペプチド、糖化合物、脂質、天然低分子、および合成低分子からなる群から選ばれる少なくとも一種であることができ、目的に応じて選択することができる。
ここで、糖化合物としては、例えば、単糖、オリゴ糖、多糖、糖鎖複合体、糖蛋白質、糖脂質、およびそれら誘導体などを挙げることができる。
脂質としては、例えば、脂肪酸、リン脂質、糖脂質、グリセリドなどを挙げることができる。
天然低分子としては、例えば、ホルモン分子や抗生物質、毒物、ビタミン類、生理活性物質、二次代謝産物などを挙げることができる。
合成低分子としては、例えば、天然低分子の合成物、およびそれら誘導体などを挙げることができる。
【0012】
本発明の装置によって試験され得る生体分子の相互作用としては、例えば、プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリダイゼーション、抗原−抗体相互作用、レセプター−リガンド相互作用、タンパク−タンパク相互作用、DNA−タンパク相互作用を挙げることができる。
【0013】
前記マイクロアレイ(1)は、基板上に生体分子を固定化することによって作製されるものであり、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有する。前記導電性物質表面(6)を構成する導電性物質は、例えば、金属(例えば、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、クロム)、導電性酸化物(例えば、In2O5/SnO2)および導電性プラスチック(例えば、ポリアセチレン)であることができる。なお、後述するように、前記基板が突出スポット部を有するものであり、反射像によって自動グリッティングを行う場合には、前記導電性物質は、光を反射する性質を有する物質から選択する。
また、金属とチオール基との結合を利用して、プローブ核酸の固定化を行う場合は、前記導電性物質は、チオール基と結合性を有する金属から選択する。
【0014】
前記基板は、基板表面から突出し、かつ頂上にスポット用平面を有する生体分子固定化用スポット(突出スポット部)を有し、少なくとも前記突出スポット部は導電性物質表面を有し、前記スポット用平面の導電性物質表面に生体分子が固定化されており、かつ前記基板は、前記基板上の突出スポット部以外の表面に、前記突出スポット部の導電性物質表面と通電可能な端子を有するものであることができる。前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有することができ、前記端子は、前記導電性物質被覆層に含まれるか、または、前記導電性物質被覆層と通電可能であることができる。更に、この導電性物質被覆層と突出スポット部の導電性物質表面とは、一体の導電性物質被覆層として設けられていることが好ましい。そのような基板としては、少なくとも、前記突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板(以下、基板Iという)、または、隣り合う突出スポット部は、突出スポット部側面によって隣接しており、かつ、少なくとも、前記突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板(以下、基板IIという)を挙げることができる。
【0015】
基板IおよびIIでは、生体分子固定化用スポットが、突出スポット部の頂上の平面に設けられている。そのため、基板IおよびIIでは、前記突出スポット部頂上のスポット用平面(生体分子固定化用スポット)は、前記突出スポット部周辺の基板表面より一段高い位置にあり、両者間に高低差が生じる。
【0016】
一方、本発明において、後述するように生体分子の相互作用の試験に用いられ得る共焦点型検出器は、試料上の焦点面からの反射光や蛍光を、光学系の結像面に置かれたピンホールに通して検出する。図2に、共焦点型検出器40の光学系の概略図を示す。図2の実線aは、入射光を表す。実線bは、焦点面からの反射光または蛍光を表し、破線は、非焦点面からの反射光または蛍光を表す。共焦点型検出器40では、マイクロアレイ41上の焦点面から反射した反射光、および、試料上の焦点面から放出された蛍光は、対物レンズ42を通ってビームスプリッター43へ入射し、ビームスプリッター43によって、検出レンズ44へ垂直に入射するように光路が修正され、検出レンズ44を経て、結像面45へ入射する。共焦点型検出器40は、試料上での焦点が、結像面でも焦点となるように設計されている。よって、試料上の焦点面からの光は、結像面45で焦点を結び、ピンホール46を通過して、検出部47で検出される。一方、試料上の非焦点面からの光は、結像面45で焦点を結ばないため、大部分がピンホール46を通過せず、検出部7において検出されない。このように、共焦点型検出器によれば、焦点面からの光を、選択的に検出することができる。
【0017】
前記基板Iでは、前記突出スポット部周辺の基板表面と、前記突出スポット部頂上のスポット用平面(生体分子固定化用スポット)との高低差が、生体分子とターゲット生体分子との相互作用の検出において使用する共焦点型検出器の焦点深度以上であれば、共焦点型検出器の焦点を、突出スポット部頂上のスポット用平面の高さに合わせることにより、検出器において、突出部周辺の基板表面からの蛍光や反射光よりも、突出スポット部頂上のスポット用平面からの蛍光や反射光を、より高い強度で検出することができる。従って、基板Iの突出スポット部頂上のスポット用平面に生体分子を固定化したマイクロアレイを含む本発明の装置によれば、スポット上の情報、例えば、ターゲット生体分子との相互作用の有無を、高感度で検出することができる。
【0018】
前記基板IIは、隣り合う突出スポット部が、突出スポット部側面によって隣接しており、かつ、少なくとも、前記突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなることを特徴とする。基板IIの一例を、図3に示す。
【0019】
前記基板IおよびIIにおいて、前記突出スポット部頂上のスポット用平面と前記突出スポット部側面とのなす角は、90度以上であることが好ましい。好ましくは、90〜135度である。図4(a)は、そのような基板の一部の断面図である。ここで、「突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角」とは、図4(a)における角度θをいう。角度θは、例えば、突出スポット部を、突出スポット部周辺の基板表面に対して垂直に切断し、その断面から求めることができる。
【0020】
このように、基板IおよびIIにおいて、突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角が90度以上であることにより、即ち、突出スポット部底面の大きさが、突出スポット部頂上のスポット用平面の大きさ以上であることにより、グリッティングを自動で行って、生体分子固定化用スポットの位置および大きさを特定することができるという利点がある。以下に、この点について、詳述する。
【0021】
図4(a)に示すように、突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角が90度以上である場合、共焦点型の検出器を使用して反射光を検出する際に、突出スポット部頂上のスポット用平面に対して垂直な方向から照射した光(図4(a)に矢印で表される光)に対する突出スポット部側面からの反射光は、入射光と同一方向には反射しない。一方、突出スポット部頂上のスポット用平面からの反射光は、入射光と同一方向に反射する。このため、共焦点型検出器では、突出スポット部頂上のスポット用平面からの反射光のみが検出され、側面からの反射光は検出されない。こうして得られた反射像には、突出スポット部頂上のスポット用平面に相当する像が、反射像として得られ、突出スポット部側面に相当する部分は、反射光がほとんど検出されないので黒色の縁取りとして表れる。この反射像では、黒い縁取りの内部が生体分子スポットに相当するため、この反射像により、スポットの大きさおよび位置を特定することができる。本発明では、このような原理により、自動グリッティングを行うことが可能である。
【0022】
また、基板Iにおいて、突出スポット部の高さが相互作用の検出に使用する共焦点型検出器の焦点深度以上である場合は、共焦点型検出器の焦点を、突出スポット部頂上のスポット用平面の高さに合わせれば、突出スポット部周辺の基板表面からの反射光は、焦点が合わないため、突出スポット部頂上のスポット用平面からの反射光よりもはるかに弱い強度でしか、検出されない。本発明では、この高低差を利用して自動グリッティングを行うことも可能である。但し、前記突出スポット部の高さが相互作用の検出に使用する共焦点型検出器の焦点深度より小さい場合であっても、前述のように、反射像において、突出スポット部側面に相当する部分が黒色の縁取りとして表れれば、スポットの大きさおよび位置を特定することが可能である。
【0023】
また、基板Iでは、前記突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角が90度未満であっても、突出スポット部の高さが相互作用の検出に使用する共焦点型検出器の焦点深度以上である場合は、スポット用平面と、突出スポット部周辺の基板表面との高低差を利用して、反射像によって、スポット用平面の位置および大きさを特定し、自動でグリッティングを行うことができる。前記突出スポット部頂上のスポット用平面と突出スポット部側面とのなす角が90度である場合、前記突出スポット部の形状は、例えば、円柱状または角柱状であることができる。
【0024】
さらに、基板Iは、前記突出スポット部頂上のスポット用平面と前記突出スポット部側面とのなす角が、90度以上であり、かつ、前記突出スポット周辺の基板表面が、略V字型底面を形成する基板であることもできる。このような基板では、共焦点型検出器で検出されるスポット用平面からの反射光強度が、基板上のスポット用平面以外の部分からの反射光強度より強くなるため、この反射光強度の違いにより、スポット用平面の位置および大きさを特定することができる。図5は、「略V字型底面」を有する基板の一部の拡大図である。本発明において、「略V字型底面」とは、例えば、隣り合う突出スポット部間の突出スポット部周辺の基板表面が平面ではなく、図5に示すように、略V字を形成していることをいう。
【0025】
更に、基板Iは、少なくとも、前記突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、導電性物質からなる。製造の容易さや製造コストを考慮すれば、基板Iは、基板上の、前記突出スポット周辺以外の基板表面も、導電性物質からなるものであることが好ましい。また、基板IIは、少なくとも突出スポット部側面および突出スポット部平面が、導電性物質からなる。
【0026】
本発明では、基板Iにおいては、少なくとも、突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、基板IIにおいては、少なくとも、突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなることにより、後述するように、基板上に生体分子を固定化することによって作製されたマイクロアレイ(1)に対向する電極を設け、電界を印加することによって、スポット用平面に固定化された生体分子とターゲット生体分子との相互作用を促進することができる。例えば、ターゲット生体分子の濃度が低い場合でも、良好な相互作用結果を得ることができ、また、濃度が同一の場合には、より短時間で所定の相互作用結果を得ることができる。
【0027】
また、前記導電性物質が、光を反射する性質を有するものであれば、反射光によって、生体分子固定化スポットの大きさおよび位置を特定し、自動でグリッティングを行うことができる。この点については後述する。
【0028】
本発明において、前記突出スポット部の高さは、相互作用の検出において使用する共焦点型検出器の焦点深度以上の高さになるように、適宜設定することができる。通常の共焦点型検出器の焦点深度を考慮すると、前記突出スポット部の高さは、例えば、10〜500μmとすることができる。但し、前述のように、基板上の突出スポット部頂上のスポット用平面とそれ以外の部分との形状の差による反射光強度の相違を検出することによって自動グリッティングを行う場合は、前記突出スポット部の高さが相互作用の検出に使用する共焦点型検出器の焦点深度より小さくても、自動グリッティングが可能である。この点については、後述する。
【0029】
また、前記突出スポット部の高さを決定する際は、生体分子のスポット形成(スタンピング)に使用するニードルの直径や、プローブ核酸等の生体分子溶液のスポット量も考慮する必要がある。例えば、直径100μmの円形の突出スポット部に対して直径130μm程度のニードルを用いて生体分子をスポットする場合、突出スポット部の高さが15μm以上であれば、表面張力のため、突出スポット部頂上のスポット用平面から生体分子溶液が流れ出すことなく、固定化用スポットのみに、生体分子が固定化されるため、好ましい。
【0030】
突出スポット部を有する基板において、突出スポット部頂上のスポット用平面の形状は、スポットされた生体分子を保持し得る形状であれば、いずれの形状であることもでき、例えば、円形や正方形であることができる。前記スポット用平面の大きさは、スポットに用いるニードルやスポットする生体分子溶液の量に応じて適宜設定することができ、例えば、10〜500μmとすることができる。ここで、「スポット用平面の大きさ」とは、例えば、スポット用平面の形状が円形の場合は、その直径をいい、スポット用平面の形状が正方形の場合は、その一辺の長さをいう。
突出スポット部底面の形状は、特に限定されないが、製造の容易さ等を考慮すれば、スポット用平面と同様の形状であることが好ましい。図4(b)は、突出スポット部を有する基板上の突出スポット部の概略図である。ここで、「突出スポット部底面の形状」とは、図4(b)の斜線部をいう。
【0031】
前記突出スポット部頂上のスポット用平面は、粗面化されていてもよい。例えば、前記突出スポット部頂上のスポット用平面は、深さ方向と略水平方向に、相互作用の検出において使用する共焦点型検出器の焦点深度以内の深さの凹凸を有していてもよい。図6に、粗面化されたスポット用平面の一例(部分拡大図)を示す。粗面化されたスポット用平面の一例としては、図6に示すような、数μm角の格子状の形状を設けたスポット用平面を挙げることができる。このように、スポット用平面が粗面化されていることにより、後述するように、電気泳動または誘電泳動によるターゲット生体分子の濃縮効果を得る場合に、凹凸の角(エッジ)部分に強電界が生じ、相互作用が更に促進されるという利点がある。
【0032】
スポット用平面の粗面化方法は特に限定されず、例えば、本発明で使用される基板がプラスチック成型基板の場合、フォトリソグラフィーによりエッチングした母材を、電鋳法により反転写した微細加工金型を用いることにより、スポット用平面が粗面化された基板を製作することができる。
【0033】
前記基板は、全体が導電性物質からなるものであることができ、または、基板表面に導電性物質被覆層を有するものであることができる。また、金属とチオール基との結合を利用して、プローブ核酸の固定化を行う場合は、前記導電性物質は、チオール基と結合性を有する金属から選択する。
【0034】
導電性物質被覆層を有する基板としては、ガラス、石英、シリコン、プラスチック、具体的には、ポリプロピレン等の基板の表面に、前記導電性物質を被覆したものを挙げることができる。基板上の導電性物質被覆層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1〜10μmとすることができる。
【0035】
前記基板が、前述のように、基板表面から突出し、かつ頂上にスポット用平面を有する生体分子固定化用スポット(突出スポット部)を有するものである場合の基板の製造方法について説明する。
前記基板が金属からなるものである場合は、所望の形状の突出スポット部に対応した凹部を有する鋳型に、熔融した金属を注入して鋳造することにより、本発明の基板を得ることができる。また、プレス成形によって、金属製基板を得ることもできる。本発明の基板は、金属からなる基板の上に、導電性物質を被覆したものであることもできる。
本発明の基板が、シリコンまたはプラスチック製の基板上に導電性物質の被覆を有するものである場合は、例えば、所望の形状の突出スポット部に対応した凹部を有する成形型を用いてシリコンまたはプラスチックを成形し、そのシリコンまたはプラスチック製の基板上に、導電性物質を、蒸着、メッキ等によって被覆することにより、本発明の基板を得ることができる。
また、突出スポット部を有する基板は、平板状の基板上に導電性被覆層を被覆した後に、エッチング等により突出スポット部を形成することによって製造することもできる。
また、突出スポット部を有さない基板は、公知の方法で製造することができ、また、市販品として入手可能なものもある。
【0036】
次に、突出スポット部を有する本発明の基板が、ガラス基板上に金被覆層を有するものである場合の、基板の製造方法の一例を説明する。但し、本発明はこの態様に限定されるものではない。
まず、スライドガラスの表面に、真空蒸着装置により、クロムを蒸着し、次いで、その上に金を蒸着する。この金蒸着スライドガラス上に、ポジ型レジストをスピンコーターで塗布し、例えば60℃でオーブンにより1時間ベーキングする。
次いで、紫外線露光装置により、フォトマスクを通してスライドガラスに紫外線を照射する。このとき、フォトマスクとしては、所望の形状の突出スポット部に対応したパターンを有するものを使用する。紫外線照射後、現像液によって現像を行えば、金蒸着スライドガラス表面に、レジストパターンを形成することができる。
【0037】
次いで、レジストパターン周辺の金表面を、金エッチャントによってエッチングする。金エッチング後の基板を超純水によって洗浄した後、金の下に蒸着されたクロムを除去するために、エッチャントにより更にエッチングを行い、超純水によって洗浄する。
アセトン等によってレジストを溶解した後、超純水によって洗浄し、更に残っているレジストを完全に除去するために、ピラニア溶液(硫酸:過酸化水素=1:1)に10分間漬けて、超純水で洗浄する。これにより、フォトマスクに対応した金パターンを有するガラス基板を得ることができる。
【0038】
次に、上記基板を、フッ化水素酸に浸漬し、露出しているガラス表面をエッチングする。このときに使用するフッ化水素酸の濃度および浸漬時間は、所望の突出スポット部の高さに応じて適宜設定することができる。
【0039】
次に、前述と同様に、金およびクロム等のエッチングを行った後、ピラニア溶液および超純水によって基板を洗浄し、所望の形状の突出スポット部を有するガラス基板を得ることができる。
このガラス基板に、前述と同様に、クロムを蒸着し、次いで、金を蒸着することによって、突出部を有し、かつ、金被覆を有する基板を得ることができる。
【0040】
前述の基板全体の大きさ、基板上の突出スポット部の数および集積度は特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、本発明では、10〜20,000mm2の大きさの基板上に、突出スポット部を、10〜50,000個程度有する基板を用いることができる。
【0041】
本発明では、基板上に固定化された生体高分子が核酸であり、かつ、前記導電性物質表面(6)を構成する導電性物質が金属である場合、プローブ核酸を基板上に固定化するために、基板上の導電性物質表面(6)を構成する金属と反応性を有する基を一端に有する核酸を含む溶液を、スポッティング溶液として用いることができる。そのような基としては、チオール基を挙げることができる。チオール基を有する核酸鎖の金属表面への固定化は、公知の方法によって行うことができ、例えば、J.Am.Chem.Soc.1998,120,9787-9792を参照することができる。
【0042】
金属表面へのDNAの固定化方法としては、金属(表面酸化被膜を活性化させ水酸基を提示させたもの)に対して以下の処理を行う方法を用いることもできる。
(1)アミノシラン処理した基板表面に、UV照射することにより、DNAを固定化する。
(2)アミノシラン、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)-ビオチン、アビジンによって順次処理した基板表面に、ビオチン化DNAを固定化する。
(3)アミノシラン、マレイミド-ビオチン、アビジンによって順次処理した基板表面に、ビオチン化DNAを固定化する。
(4)アミノシラン、次いでグルタルアルデヒドによって処理した基板表面に、アミノ化DNAを固定化する。
(5)アミノシラン、次いでカルボジイミドによって処理した基板表面に、アミノ化DNAを固定化する。
(6)アミノシラン処理した基板表面に、カルボキシ化DNAを固定化する。
(7)アミノシラン処理した基板表面に、リン酸化DNAを固定化する。
(8)アミノシラン、次いでNHS−マレイミド化合物によって処理した基板表面に、チオール化DNAを固定化する。
(9)エポキシシラン処理した基板表面に、アミノ化DNAを固定化する。
(10)チオールシラン処理した基板表面に、チオール化DNAを固定化する。
【0043】
また、DNA以外の生体分子についても、上記のような、UV照射による固定化や、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基などの官能基を介しての固定化が可能である。
【0044】
前記導電性物質表面(6)への生体分子溶液のスポッティングは、常法により行うことができ、例えば、先端に生体分子溶液を保持したニードルを、基板表面の生体分子を固定化させたい位置に接触させることにより行うことができる。ここで、前記基板が突出スポット部を有する場合は、突出スポット部頂上のスポット用平面に接触させることにより、生体分子のスポッティングを行うことができる。ここで使用されるスポッティング用装置としては、例えば、特開2001−46062号公報および特開2003−57236号公報に記載の装置を挙げることができる。スポット量は、適宜調整することができ、前記基板が突出スポット部を有する場合は、スポット用平面から生体分子溶液が流れ出さないように、スポット用平面の大きさや、突出スポット部の高さに応じて、適宜設定することができる。
【0045】
本発明の装置には、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように、透明電極(2)(対向電極)が備えられている。本発明では、マイクロアレイと対向電極との間に電界を印加することにより、生体分子が固定化された平面と、対向電極の前記平面と対向する面との間で電界密度が高まり、溶液中のターゲット生体分子が、電気泳動(直流電源を使用した場合)または誘電泳動(交流電源を使用した場合)によって、生体分子が固定化されたスポット近傍に濃縮される。これにより、基板上に固定化された生体分子と、ターゲット生体分子との相互作用を促進することができる。この効果は、前述の突出スポット部を有する基板を使用した場合に顕著である。特に、生体分子が固定化されたスポット平面が粗面化されている場合、例えば、スポット平面に、共焦点型検出器の焦点深度以内で深さ方向と略水平方向に凹凸を有する場合は、凹凸の角(エッジ)部分に強電界が生じ、相互作用が更に促進されるという利点がある。
【0046】
前記対向電極は、透明であり、かつ、前記生体分子マイクロアレイと対向電極との間に電界を印加することができるものであれば、特に制限はない。このように透明電極を用いることにより、キャビティ内に溶液を送液または保持しながら、透明電極の上から共焦点型検出器で反射光および/または蛍光の検出を行うことができ、生体分子の相互作用をリアルタイムで検出することができる。
本発明において、対向電極は、透明な導電性物質、例えば、導電性酸化物、導電性プラスチック等からなる基板であることができ、また、マイクロアレイと対向する面に、導電性物質被覆層を有する基板からなるものであることもできる。前記対向電極は、好ましくは、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化スズなどの導電性酸化物からなるものであることができる。
【0047】
また、本発明の装置において、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加するための電源は、直流電源でも、交流電源でもよい。より好ましくは、交流電源が用いられる。直流電源を使用する場合は、高電圧をかけると、ターゲット生体分子溶液が高電圧により電気分解し、気泡等が発生しやすいという懸念があるため、低電圧を使用することが好ましい。ターゲット生体分子としてDNAを使用する場合には、DNAがマイナスに荷電されているため、直流電源を使用する場合は、突出スポット部側が、プラスになるように電界を印加することが好ましい。交流電源を使用する場合は、その周波数は、例えば10Hz〜1MHzとすることができる。
【0048】
本発明の装置は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている。前記マイクロアレイ(1)は、前記キャビティ(4)に通じる2つの貫通孔(5)を有する。一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である。本発明の装置は、以上の構成を有することにより、キャビティ(4)内への送液が可能になる。これにより、生体分子の相互作用を、ターゲット生体分子を含む溶液を送液しながら透明電極(2)を通してリアルタイムで試験することが可能になる。また、溶液中のターゲット生体分子の濃度を変えながら送液しながら、または、ターゲット生体分子を含まない溶液を送液して洗浄しながら、キャビティ内の生体分子の相互作用の状態を観察することもできる。
【0049】
前記非導電性スペーサーは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シリコンフィルムからなるシートを、キャビティ(4)に相当する空孔が形成されるように、所望の形状に型抜きすることによって作製することができる。但し、非伝導性スペーサーの材質は上記のものに限定されず、加工の容易性等を考慮して適宜選択することができる。
【0050】
本発明の装置では、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との距離は、非導電性スペーサー(3)の厚さによって制御することができる。電界印加によって生体分子の相互作用を促進するためには、前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と前記対向電極(2)のマイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と対向する表面との距離は、10〜300μmとすることが好ましい。非導電性スペーサー(3)の厚さは、前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と前記対向電極(2)のマイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と対向する表面との距離を考慮して適宜設定することができ、例えば、10〜300μmとすることができる。
【0051】
前記非導電性スペーサーは、その両面に接着剤層を有することができる。非導電性スペーサーは、この接着剤層によって、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)と張り合わせることができる。このように非導電性スペーサー(3)の一方の面にマイクロアレイ(1)を張り合わせ、他方の面に対向電極(2)を張り合わせることによって、前述のスペーサーシールに設けた空孔部分に、キャビティ(4)が形成される。これにより、マイクロアレイ(1)、非導電性スペーサー(3)、および対向電極(2)とによって形成されたキャビティ(4)を有する、本発明の装置を構成することができる。
【0052】
前記接着剤層の接着剤は、光硬化性樹脂を含むことが好ましい。光硬化性樹脂は、光を照射することによって硬化して接着力を失うため、前記接着剤が光硬化性樹脂を含むことにより、光照射すれば、非導電性スペーサー(3)からマイクロアレイ(1)と対向電極(2)とをはずすことができる。光硬化性樹脂としては、例えば紫外線硬化型樹脂などの公知の光硬化性樹脂を用いることができる。
【0053】
本発明の装置は、マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電極とを接続するための手段を有する。
本発明の装置は、前述のように、マイクロアレイ(1)にキャビティ(4)に通じる2つの貫通孔(5)を有し、それら貫通孔を通して送液することができる。更に、上記のようにマイクロアレイ側からマイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と対向電極(2)との間に電界を印加できる構成を有することにより、送液・電界の印加をいずれもマイクロアレイ(1)側から行うことができるため、対向電極(2)側からの生体分子の相互作用の観察を妨げるものがなく、スムーズに観察を行うことができる。
【0054】
そのような手段を有する装置の具体例としては、図1に示すように、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と少なくとも一部が接触し、かつ、前記対向電極(2)とは接触しない導電性部材(7)を更に有し、前記基板上の導電性物質表面(6)は、前記導電性部材(7)を介して外部電源と接続される構成を有する装置を挙げることができる。前記導電性部材(7)を構成する導電性物質としては、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、クロム、導電性酸化物(例えば、In2O5/SnO2)および導電性プラスチック(例えば、ポリアセチレン)を挙げることができる。
【0055】
上記の構成を有する装置において、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加するためには、図1に示すように、前記マイクロアレイ(1)に、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および前記対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を設けて、これら貫通孔(8)、(9)を通して、マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と対向電極(2)と外部電源とを接続すればよい。
【0056】
前述の貫通孔は、例えばマイクロアレイ用基板を金型成形する場合には、成形時に設けることができる。また、貫通孔は型抜き等により設けることもできる。
【0057】
本発明の装置は、ヒーター等の温度制御手段を更に有することが好ましい。温度制御手段によって、生体分子周辺の環境を、相互作用に適した温度に制御することにより、相互作用を更に促進することができる。特に、温度制御手段は、マイクロアレイ側に設けることが好ましい。これにより、対向電極(2)側からの観察を妨げることなく、温度制御を行うことができる。
【0058】
[生体分子の相互作用試験方法]
本発明の生体分子の相互作用試験方法の第一の態様(以下、「試験方法I」ともいう)は、基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(対向電極)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出すること、
を含む、前記方法(以下、「試験方法I」ともいう)である。
【0059】
本発明の生体分子の相互作用試験方法の第二の態様(以下、「試験方法II」ともいう)は、基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(対向電極)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の保持中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出する、前記方法である。
【0060】
試験方法I、試験方法IIのいずれにおいても、前述の本発明の生体分子の相互作用試験装置を用いることができる。
【0061】
試験方法Iは、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出することを含む。このように、試験方法Iによれば、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加して生体分子の相互作用を促進しつつ、溶液を送液しながら生体分子の相互作用を、対向電極(2)を通してリアルタイムで観察することができる。また、電界を印加しながら、最初にターゲット生体分子を含む溶液を送液してマイクロアレイ上の生体分子とターゲット生体分子とを相互作用させ、次いでターゲット生体分子を含まない溶液を送液することによりキャビティ内を洗浄しながら、その間のキャビティ内の生体分子の相互作用の状態を、対向電極を通して観察することもできる。更には、キャビティ内に送液する溶液のターゲット生体分子の濃度を順次変更しながら、生体分子の相互作用の観察を行うこともできる。
【0062】
一方、試験方法IIは、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、前記溶液の保持中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出する。このように、試験方法IIによれば、キャビティ(4)内にターゲット生体分子を含む溶液を充填して所定時間保持しながら、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加して生体分子の相互作用を促進することができ、その相互作用を、ターゲット生体分子の保持中または排出後に、対向電極(2)を通して観察することができる。また、試験方法IIでは、ターゲット生体分子を含む溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填して、キャビティ内の溶液を交換することもできる。
【0063】
試験方法IおよびIIにおいて、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に印加される電界は、マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間の距離を考慮しつつ、電気泳動または誘電泳動によるターゲット生体分子の濃縮の効果が得られる範囲で適宜設定することができ、例えば、0.01〜10MV/mとすることができる。また、後述するように、ターゲット生体分子溶液に用いるバッファーの種類に応じて、高い相互作用促進効果が得られるように、印加電界を適宜設定することが好ましい。
【0064】
試験方法IおよびIIでは、マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加することが好ましい。前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および前記対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を有する、本発明の生体分子相互作用試験装置を使用する場合、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続することにより、マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加することができる。
また、試験方法IおよびIIにおいて、本発明の生体分子相互作用試験装置を使用する場合、マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出することができる。
このように、送液および外部電源との接続を、いずれもマイクロアレイ(1)側から行うと、対向電極(2)側には、対向電極(2)側からの生体分子の相互作用の観察を妨げるものがないため、スムーズに観察を行うことができる。
【0065】
前述のターゲット生体分子を含む溶液(以下、「ターゲット生体分子溶液」ともいう)はバッファーを含むことができる。ターゲット生体分子溶液に用いるバッファーとして、好ましいものとしては、約6〜8付近の解離定数(pKa)を有するものが挙げられる。プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを効率よく起こさせるためには、pHが中性域であることが好ましいため、中性域で緩衝能を有するバッファーを使用することが好ましい。具体的には、以下のバッファー物質を含むバッファーが挙げられる;フェニルアラニン、カルノシン、アルギニン、ヒスチジン、MES(2-(N-モルホリン)エタンスルホン酸)、マレイン酸、3,3-ジメチルグルタル酸、炭酸、4-ヒドロキシメチルイミダゾール、クエン酸、ジメチルアミノエチルアミン、プロリン酸、グリセロール-2-リン酸、PIPES (ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、エチレンジアミン、イミダゾール、MOPS (3-(N-モルホリン)プロパンスルホン酸)、リン酸、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、4-メチルイミダゾール、HEPES (N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、N-エチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)。
【0066】
ターゲット生体分子溶液に用いるバッファーの伝導率が過度に高いと、バッファー中のイオンの移動により、ターゲット生体分子の濃縮効果が低減するおそれがある。そこで、本発明では、伝導率が10〜500μΩ-1/mのバッファーを用いることが好ましく、伝導率が10〜100μΩ-1/mのバッファーを用いることが更に好ましい。バッファーの伝導率が上記範囲内であれば、生体分子の相互作用を良好に促進することができる。また、バッファーの濃度は、上記範囲内の伝導度が得られるように、適宜調整することが好ましい。
【0067】
以上の観点から、好ましいバッファーの具体例としては、バッファー物質として、フェニルアラニン、ヒスチジン、カルノシン、アルギニンを含むバッファーを挙げることができる。プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを、フェニルアラニンを含有するターゲット生体分子溶液を用いて行うと、特に高いハイブリダイゼーションシグナル強度を得ることができ、しかも、電界印加により、電界を印加しない場合と比べて、例えば2倍以上のハイブリダイゼーションシグナル強度を得ることができる。このように、フェニルアラニンは、電界を印加することにより生体分子の相互作用を促進する本発明において、特に効果を発揮するバッファー物質である。
【0068】
なお、マイクロアレイと電極との間に印加する電界は、高い生体分子相互作用促進効果が得られるように、使用するバッファーに応じて適宜設定することが好ましい。例えば、フェニルアラニンをバッファーとして用いる場合には、0.5〜1.0MV/m、ヒスチジンの場合は、0.5〜1.0MV/m、カルノシンの場合は、0.25〜0.75MV/m、アルギニンの場合は、0.1〜0.3MV/m、の範囲の電界を印加することが好ましい。
【0069】
試験方法IおよびIIでは、マイクロアレイ(1)上の生体分子とターゲット生体分子との相互作用を、対向電極(2)を通して光学的に検出する。光学的な検出方法としては、蛍光検出器、共焦点検出器、共焦点レーザ蛍光顕微鏡、蛍光顕微鏡を用いる方法を挙げることができる。中でも、共焦点検出器によって蛍光を検出することにより生体分子間の相互作用を検出するために、ターゲット生体分子は、蛍光標識されていることが好ましい。ターゲット生体分子の蛍光標識は、公知の方法で行うことができる。また、本発明では、マイクロアレイ(1)上に固定化される生体分子が、蛍光標識されていてもよい。マイクロアレイに固定される生体分子の蛍光標識も、公知の方法で行うことができる。
【0070】
更に、本発明の生体分子の相互作用試験方法では、前述の、基板上に突出スポット部を有する本発明の生体分子相互作用試験装置を使用することもできる。この場合、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出することができる。共焦点型検出器による反射光および蛍光の検出原理については、前述の通りである。本発明の相互作用試験において、基板上に突出スポット部を有する本発明の生体分子相互作用試験装置を使用する場合、共焦点型検出器を用いて、前述の原理で反射像によってスポットの大きさおよび位置を特定することで、自動グリッティングを行うことができる。即ち、マイクロアレイ表面の突出スポット部とそれ以外の部分の高さおよび/または形状の差による反射光強度の相違から、マイクロアレイ上の突出スポット部を、反射像として検出することができる。更に、共焦点型検出器によって、マイクロアレイからの蛍光を検出するときに、マイクロアレイ上の突出スポット部頂上のスポット平面の高さに、共焦点型検出器の焦点を合わせれば、突出スポット部からの蛍光、即ち、スポット平面上の蛍光標識された生体分子(スポットに固定化された生体分子および/またはターゲット生体分子)からの蛍光を選択的に検出して、スポットに対応する蛍光像を得ることができる。本発明では、こうして得られた反射像と蛍光像を重ね合わせることによって、マイクロアレイ上の相互作用が起こっているスポットを特定することができ、その蛍光強度により、相互作用の程度を測定することができる。なお、本発明では、二本鎖核酸を特異的に染色する蛍光インターカレーターを用いて、インターカレーターからの蛍光を測定することによって相互作用を検出することもできる。
【0071】
特に、本発明では、反射光と蛍光とを同時に検出することができる共焦点型蛍光スキャナーを用いることが好ましい。そのような装置の一例を、図7に示す。図7に示す装置では、励起光源(レーザー)21から発生した励起光はミラー22、ダイクロックミラーミラー23、ミラー26、対物レンズ24、を介して試料(マイクロアレイ)25に照射される。反射光は対物レンズ24、ミラー26、ダイクロックミラー23(反射光の一部を透過(数パーセント以下))、ダイクロックミラー27、減光フィルター28、検出レンズ29、ピンホール30を介して反射光検出部31に導かれる。蛍光は2つのダイクロックミラー23、27を透過し、ミラー32にて反射しカットフィルター33、検出レンズ34、ピンホール35を介して蛍光検出部36に導かれる。このような装置によれば、マイクロアレイ表面の突出スポット部とそれ以外の部分の高さおよび/または形状の差による反射光強度の相違から、マイクロアレイ上の突出スポット部を反射像として検出し、同時に、そのスポットからの蛍光を検出することによって、生体分子の相互作用を検出することができる。
【0072】
[生体分子の融解温度測定方法]
本発明は、更に、前述の本発明の生体分子の相互作用試験方法を用いることを特徴とする、生体分子の融解温度測定方法に関する。
生体分子、例えば核酸は、加熱していくとある温度で立体構造に大きな変化が起こり、あたかも相転移に相当するような変化が観察される。このときの温度を融解温度という。本発明の生体分子の融解温度測定方法では、例えば、生体分子が核酸である場合、キャビティ内にターゲット核酸と二本鎖検出試薬を含む溶液を保持してマイクロアレイ上のプローブ核酸とターゲット核酸とを相互作用させ、キャビティ内の温度を上昇させていき、対向電極を通して二本鎖検出試薬からの蛍光を検出することによって、キャビティ内のターゲット核酸のプローブ核酸からの遊離状態をリアルタイムで観察することができ、これにより、核酸の融解温度を測定することができる。二本鎖検出試薬としては、エチジウムブロマイドを用いることができ、市販品としては、例えばタカラバイオ株式会社製SYBR(商標) Green Iを用いることができる。また、二本鎖核酸検出試薬を用いずに、蛍光標識したターゲットDNA分子を使用することにより、融解温度を測定することもできる。
【0073】
[核酸の配列検知方法]
本発明は、更に、前述の本発明の生体分子の相互作用試験方法を用いることを特徴とする、核酸の配列検知方法にも関する。
ターゲット核酸と完全相補性のプローブ核酸を基板上に固定化して、ターゲット核酸とプローブ核酸とをハイブリダイズさせた後に温度を上昇させた場合に観察される核酸の融解挙動は、ターゲット核酸と完全相補のプローブ核酸を用いた場合と、一部の塩基配列が異なるプローブ核酸とを用いた場合とで異なる。そこで、本発明では、この違いを利用して、本発明の生体分子の相互作用試験方法を用いて、ターゲット核酸とプローブ核酸とをハイブリダイズさせた後に、キャビティ内の温度を上昇させていき、対向電極を通して、例えば蛍光を観察することによって、そのキャビティ内でのターゲット核酸のプローブ核酸からの融解の挙動を観察し、それに基づいてターゲット核酸の配列を検知することができる。このような本発明の核酸の配列検知方法によれば、完全相補配列からの塩基配列の違い、例えば、一塩基多型(SNP)を検出することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
[実施例1]
誘電ハイブリダイゼーション
(1)突出スポット部を有するマイクロアレイの作製
(i)アレイパーツの作製
フォトリソグラフィーとマイクロミーリング技術を利用して、基板上に形成する突出スポット部に対応する凹部を有する金型を製作した。この金型を用いて、射出成形によって、ポリカーボネート製のアレイパーツを作製した。突出スポット部の高さは200μm、スポット用平面は一辺90μmの正方形であり、スポット用平面と突出スポット部側面とのなす角度は95°であった。突出スポット部の断面図を図13に示す。
作成したアレイパーツを真空蒸着装置(型番KS−807RK型、株式会社ケーサイエンス製)のベルジャーにセットし、10x10-4 Pa以下にベルジャー内を真空にした後、クロムを0.08nm/sの速度で、50nm厚まで蒸着し、引き続き、金を0.5nm/sの速度で、500nm厚まで蒸着した。
以上の方法で、図8に示すアレイパーツを作製した。
(ii)DNAスタンピング
45mer オリゴDNAプローブ溶液(120μM in 1x マイクロスポッティング溶液(テレケム社)+0.1% Tween 20)を、DNAアレイヤーにより、アレイパーツの突出スポット部頂上のスポット用平面へスタンプした。スタンプ針の先端は、直径130μmの円形のものを利用した。
プローブDNAとしては、以下の11種類の遺伝子配列である45merオリゴDNAを用いた。
【化1】
【0075】
(2)非導電性スペーサーの作製
90μm厚で両面に紫外線硬化性樹脂を含む接着剤層(接着層は剥離シートでカバーした)を有するPEN製のシートを、びく型により型抜きし、図9に示す非導電性スペーサーを作製した。
【0076】
(3)対向電極の作製
ITOガラスを所定の寸法に切断して、対向電極を作製した。
【0077】
(4)カバーパーツの作製
射出成形により、ポリカーボネート製カバーパーツを作製した。図10に、カバーパーツの概略図を示す。カバーパーツには、対向電極をはめ込むために、くぼませた部分(対向電極はめ込み部)、対向電極を通してキャビティ内を観察するための空孔部(観察窓)を設け、更に、導電性部材(銅製部材に銀メッキを施した)をはめ込んだ。
【0078】
(5)生体分子の相互作用試験装置の組み立て
非導電性スペーサーの片側の剥離シートを剥がし、非導電性スペーサーの空孔内に、生体分子が固定化されたスポットおよびアレイパーツに設けられた2つの送液用の貫通孔が収まり、かつ、アレイパーツ2つの導通用貫通孔と、非導電性スペーサーに設けられた2つの貫通孔がそれぞれ一致するように、アレイパーツと非伝導性スペーサーを貼り付けた。カバーパーツの対向電極はめ込み部に対向電極をはめ込んだ。非導電性スペーサーの他方の剥離シートを剥がして、カバーパーツと非導電性スペーサーとを貼り付け、図1に示す装置を作製した。この装置において、対向電極表面とDNAが固定化された面との間には、30μmのギャップが形成された。
【0079】
(6)誘電ハイブリダイゼーション
マウス脳由来のmRNAをアマシャム社のCyscribe cDNA post labeling kitにより標識したCy3標識cDNAをターゲットDNAとして用いた。このマウス脳由来Cy3標識cDNAターゲットを、それぞれ5 ng/μl、0.5 ng/μl、0.05 ng/μlの濃度になるように、50 mM L-ヒスチジン溶液に調製したものをハイブリダイゼーション溶液として用いた。このハイブリダイゼーション溶液は、95℃で2分間熱変性させ、続いて4℃で2分間急冷した後、ハイブリダイゼーションに用いた。ハイブリダイゼーションは、1MHz 30Vp-pの高周波交流電場を印加した条件と、印加しなかった条件で行った。結果を図11に示す。図11からわかるように、電場を印加した場合、電場を印加しなかった場合と比べて10倍以上の検出感度の向上が見られた。
【0080】
[実施例2]
融解温度の測定、SNPの検出
実施例1で作製したマイクロアレイに、PM(完全相補鎖の20mer;配列GGACATGGAGTTCCGCGACC)、MM(PMに対して中央の1塩基が異なっている20mer; 配列GGACATGGAGATCCGCGACC)のDNAプローブをスタンプおよび固定処理を行った。
ターゲットDNAとして、5'末端にCy3標識されたPMに対して相補鎖の21mer(配列; GGTCGCGGAACTCCATGTCC)を用いた。
ハイブリダイゼーション溶液は、0.5μM ターゲットDNA, 50mM ヒスチジンを用いた。
1MHz, 30Vp-p (1MV/m)の交流電場を印加しながら、室温で10分間ハイブリダイゼーションを行った後、室温にて、洗浄液2xSSC/0.1% SDSを、マイクロアレイに設けた送液口から注入し、3回洗浄を行った。 キャビティ内に洗浄液が入っている状態で、蛍光顕微鏡下で室温から68℃までキャビティ内の溶液を加熱しながら、カバーパーツに設けた観察窓から、対向電極を通してリアルタイムでハイブリッドシグナルを検出し、DNAハイブリッドの融解曲線を求めた。融解曲線を、図12に示す。融解温度とは、二本鎖DNAが50%解離している温度を指す。図12に示す融解曲線求めたPMの融解温度は約61℃であり、MMの融解温度は約59℃であり、PMとMMとの間で、融解温度に約2℃の差があった。この融解温度の違いを利用すれば、例えば一塩基多型などの変異を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、生体分子の相互作用を促進しつつ、生体分子の相互作用をリアルタイムで試験することができる。更に、本発明によれば、生体分子の融解温度の測定、一塩基多型などの変異の検出を容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の装置の概略図を示す。
【図2】共焦点型検出器の光学系の概略図を示す。
【図3】本発明において使用される基板の一例を示す。
【図4】基板上の突出スポット部の概略図を示す。
【図5】略V字型底面を有する基板の一部の拡大図を示す。
【図6】粗面化されたスポット用平面の一例(部分拡大図)を示す。
【図7】反射光と蛍光とを同時に検出することができる共焦点型蛍光スキャナーの光学系の概略図を示す。
【図8】実施例1で作製したアレイパーツの概略図を示す。
【図9】実施例1で作製した非導電性スペーサーの概略図を示す。
【図10】実施例で作製したカバーパーツの概略図を示す。
【図11】実施例1で得られた結果を示す。
【図12】実施例2で得られた融解曲線を示す。
【図13】実施例1で作製したアレイパーツ上の突出スポット部の断面図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)、および、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有する生体分子の相互作用試験装置であって、
前記装置は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されており、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、かつ、前記キャビティ(4)に通じる貫通孔(5)を2つ有し、一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である、前記装置。
【請求項2】
前記マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続するための手段を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と少なくとも一部が接触し、かつ、前記対向電極(2)とは接触しない導電性部材(7)を更に有し、前記基板上の導電性物質表面(6)は、前記導電性部材(7)を介して外部電源と接続される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記導電性部材(7)を構成する導電性物質は、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、導電性酸化物、または導電性ブラスチックである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロアレイは、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および前記対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を有する、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記非導電性スペーサー(3)は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間隔が均一になるように配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と前記対向電極(2)の前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と対向する表面との距離が、10〜300μmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記マイクロアレイ上の導電性物質表面を構成する導電性物質が、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、クロム、導電性酸化物、または導電性プラスチックである請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記基板は、基板全体が導電性物質からなるか、または、基板表面に導電性物質被覆層を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記導電性被覆層を有する基板が、ガラス、石英、金属、シリコン、またはプラスチックからなる請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記非導電性スペーサー(3)は、その両面に接着剤層を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記接着剤は、光硬化性樹脂を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
温度制御手段を更に有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記基板は、基板表面から突出し、かつ頂上にスポット用平面を有する生体分子固定化用スポット(以下、「突出スポット部」という)を有し、
少なくとも前記突出スポット部は導電性物質表面を有し、
前記スポット用平面の導電性物質表面に生体分子が固定化されており、かつ
前記基板は、前記基板上の突出スポット部以外の表面に、前記突出スポット部の導電性物質表面と通電可能な端子を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有し、前記端子は、前記導電性物質被覆層に含まれるか、または、前記導電性物質被覆層と通電可能である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有し、前記導電性物質被覆層と突出スポット部の導電性物質表面とは、一体の導電性物質被覆層として設けられている、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記基板が、少なくとも、前記突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記突出スポット部周辺の基板表面が、略V字型底面を形成する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記基板が、隣り合う突出スポット部が、突出スポット部側面によって隣接しており、かつ、少なくとも、前記突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記突出スポット部の高さが、10〜500μmである、請求項14〜19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記突出スポット部頂上のスポット用平面と前記突出スポット部側面とのなす角が、90度以上である、請求項14〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記生体分子固定化用スポットが粗面化されている、請求項14〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記生体分子は、DNA、RNA、PNA、蛋白、ポリペプチド、糖化合物、脂質、天然低分子、および合成低分子からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出すること、
を含む、前記方法。
【請求項25】
基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の保持中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出する、前記方法。
【請求項26】
前記溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加する、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記装置が、請求項1〜23のいずれか1項に記載の装置である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記装置が、請求項5〜23のいずれか1項に記載の装置であり、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続する、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記マイクロアレイに固定された生体分子および/または前記ターゲット生体分子が蛍光標識されており、かつ、前記マイクロアレイ上の生体分子とターゲット生体分子との相互作用を、蛍光によって検出する、請求項24〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
請求項14〜23のいずれか1項に記載の装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出することを含む、前記方法。
【請求項34】
請求項14〜23のいずれか1項に記載の装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の充填中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出する、前記方法。
【請求項35】
前記溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記マイクロアレイ上の生体分子および/または前記ターゲット生体分子が蛍光標識されている、請求項33〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記共焦点型検出器によって、マイクロアレイ表面の突出スポット部とそれ以外の部分の高さおよび/または形状の差による反射光強度の相違から、マイクロアレイ上の前記突出スポット部を反射像として検出する、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記反射像として検出された突出スポット部からの蛍光を検出することによって、生体分子の相互作用を検出する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を導入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項33〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続する、請求項33〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に印加される電界が、0.01〜10MV/mである、請求項24〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ターゲット生体分子を含む溶液が、フェニルアラニン、ヒスチジン、カルノシン、およびアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのバッファー物質を含む、請求項24〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
請求項24〜42のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、生体分子の融解温度測定方法。
【請求項44】
請求項24〜42のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、核酸の配列検知方法。
【請求項1】
基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)、および、前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有する生体分子の相互作用試験装置であって、
前記装置は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されており、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、かつ、前記キャビティ(4)に通じる貫通孔(5)を2つ有し、一方の貫通孔はキャビティへ溶液を注入するための孔であり、他方の貫通孔はキャビティから溶液を排出するための孔である、前記装置。
【請求項2】
前記マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続するための手段を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)と少なくとも一部が接触し、かつ、前記対向電極(2)とは接触しない導電性部材(7)を更に有し、前記基板上の導電性物質表面(6)は、前記導電性部材(7)を介して外部電源と接続される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記導電性部材(7)を構成する導電性物質は、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、導電性酸化物、または導電性ブラスチックである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロアレイは、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および前記対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を有する、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記非導電性スペーサー(3)は、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間隔が均一になるように配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と前記対向電極(2)の前記マイクロアレイ(1)の生体分子が固定化された面と対向する表面との距離が、10〜300μmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記マイクロアレイ上の導電性物質表面を構成する導電性物質が、金、ニッケル、白金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、銅、クロム、導電性酸化物、または導電性プラスチックである請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記基板は、基板全体が導電性物質からなるか、または、基板表面に導電性物質被覆層を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記導電性被覆層を有する基板が、ガラス、石英、金属、シリコン、またはプラスチックからなる請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記非導電性スペーサー(3)は、その両面に接着剤層を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記接着剤は、光硬化性樹脂を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
温度制御手段を更に有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記基板は、基板表面から突出し、かつ頂上にスポット用平面を有する生体分子固定化用スポット(以下、「突出スポット部」という)を有し、
少なくとも前記突出スポット部は導電性物質表面を有し、
前記スポット用平面の導電性物質表面に生体分子が固定化されており、かつ
前記基板は、前記基板上の突出スポット部以外の表面に、前記突出スポット部の導電性物質表面と通電可能な端子を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有し、前記端子は、前記導電性物質被覆層に含まれるか、または、前記導電性物質被覆層と通電可能である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記基板上の突出スポット部以外の表面は、導電性物質被覆層を有し、前記導電性物質被覆層と突出スポット部の導電性物質表面とは、一体の導電性物質被覆層として設けられている、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記基板が、少なくとも、前記突出スポット部周辺の基板表面、突出スポット部側面、およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記突出スポット部周辺の基板表面が、略V字型底面を形成する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記基板が、隣り合う突出スポット部が、突出スポット部側面によって隣接しており、かつ、少なくとも、前記突出スポット部側面およびスポット用平面が、導電性物質からなる基板である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記突出スポット部の高さが、10〜500μmである、請求項14〜19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記突出スポット部頂上のスポット用平面と前記突出スポット部側面とのなす角が、90度以上である、請求項14〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記生体分子固定化用スポットが粗面化されている、請求項14〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記生体分子は、DNA、RNA、PNA、蛋白、ポリペプチド、糖化合物、脂質、天然低分子、および合成低分子からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出すること、
を含む、前記方法。
【請求項25】
基板上に生体分子が固定化された生体分子マイクロアレイ(1)と前記マイクロアレイの生体分子が固定化された面に対向するように設けられた透明電極(2)(以下、「対向電極」という)を有し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に、非導電性スペーサー(3)を有し、前記マイクロアレイ(1)、前記スペーサー(3)、および前記対向電極(2)によってキャビティ(4)が形成されている装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)は、生体分子が固定化された面の少なくとも一部に導電性物質表面(6)を有し、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の保持中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して光学的に検出する、前記方法。
【請求項26】
前記溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロアレイ(1)の側から、前記マイクロアレイ(1)上の導電性物質表面(6)および対向電極(2)と外部電源とを接続し、前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加する、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記装置が、請求項1〜23のいずれか1項に記載の装置である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記装置が、請求項5〜23のいずれか1項に記載の装置であり、前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続する、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を注入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記マイクロアレイに固定された生体分子および/または前記ターゲット生体分子が蛍光標識されており、かつ、前記マイクロアレイ上の生体分子とターゲット生体分子との相互作用を、蛍光によって検出する、請求項24〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
請求項14〜23のいずれか1項に記載の装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および、
前記キャビティ(4)へ、ターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を送液しながら、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出することを含む、前記方法。
【請求項34】
請求項14〜23のいずれか1項に記載の装置を用いる、生体分子の相互作用試験方法であって、
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に電界を印加すること、および
前記キャビティ(4)に、ターゲット生体分子を含む溶液を充填し、所定時間保持した後、前記溶液を排出することを含み、
前記溶液の充填中または排出後に、前記マイクロアレイ上の生体分子と前記ターゲット生体分子との相互作用を前記対向電極を通して共焦点型検出器によって検出する、前記方法。
【請求項35】
前記溶液を排出した後、または排出しながら、前記キャビティ内にターゲット生体分子を含む溶液および/またはターゲット生体分子を含まない溶液を新たに充填することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記マイクロアレイ上の生体分子および/または前記ターゲット生体分子が蛍光標識されている、請求項33〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記共焦点型検出器によって、マイクロアレイ表面の突出スポット部とそれ以外の部分の高さおよび/または形状の差による反射光強度の相違から、マイクロアレイ上の前記突出スポット部を反射像として検出する、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記反射像として検出された突出スポット部からの蛍光を検出することによって、生体分子の相互作用を検出する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記マイクロアレイ(1)が有する前記キャビティに通じる貫通孔(5)を通して、前記キャビティへ溶液を導入し、および/または、前記キャビティから溶液を排出する、請求項33〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記導電性部材(7)に通じる貫通孔(8)および対向電極(2)に通じる貫通孔(9)を通して、前記導電性部材(7)および対向電極(2)と外部電源の端子とを接続する、請求項33〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記マイクロアレイ(1)と対向電極(2)との間に印加される電界が、0.01〜10MV/mである、請求項24〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ターゲット生体分子を含む溶液が、フェニルアラニン、ヒスチジン、カルノシン、およびアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのバッファー物質を含む、請求項24〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
請求項24〜42のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、生体分子の融解温度測定方法。
【請求項44】
請求項24〜42のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、核酸の配列検知方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図7】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−145325(P2006−145325A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334302(P2004−334302)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]