説明

生体分子分離装置および生体分子分離システム

【課題】生体試料を収容した容器を同時に複数処理する場合に、容器の設置位置の取り違えを確実に防止して全ての生体試料を正しく処理する。
【解決手段】生体試料を収容する分離容器を支持する複数の分離容器支持部5と、該分離容器支持部5に支持される分離容器の数が入力される容器数入力手段と、複数の分離容器支持部5のうち、容器数入力手段により入力された分離容器数に応じた位置に配置されている分離容器支持部5を操作者に対して指定する分離位置指定手段12と、該分離位置指定手段12により指定された分離容器支持部5に支持された分離容器内の生体試料に対して、目的の生体分子を分離する処理を施す処理手段6とを備える生体分子分離装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子分離装置および生体分子分離システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一度に最大12個のスピンカラムを処理して、複数の検体から核酸やタンパク質などを自動で精製する装置が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】株式会社キアゲン、”QIAcube”、[online]、[平成21年11月25日検索]、インターネット<URL:http://www1.qiagen.com/products/automation/qiacube.aspx?ShowInfo=1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の場合、カラムやコレクションチューブを遠心分離機のロータやラックに設置する作業は人が行う。このときに、カラム数が12個に満たない場合、ロータやラックに空席が生じるが、この空席が対応する位置に生じるようにカラムやコレクションチューブを配置する必要がある。しかしながら、ここで操作者が位置を誤ってカラムやコレクションチューブをセットしてしまう可能性がある。このような誤設置に気付かずに処理を開始すると、例えば、カラムに添加されるべき試薬が添加されずに目的の生体分子が正常に精製されなかったり、遠心分離後のカラムの移動先にコレクションチューブが存在せずにエラーが発生したりするなどの問題が生じる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、生体試料を収容した容器を同時に複数処理する場合に、容器の設置位置の取り違えを確実に防止して全ての生体試料を正しく処理することができる生体分子分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、生体試料を収容する分離容器を支持する複数の分離容器支持部と、該分離容器支持部に支持される分離容器の数が入力される容器数入力手段と、前記複数の分離容器支持部のうち、前記容器数入力手段により入力された分離容器数に応じた位置に配置されている分離容器支持部を操作者に対して指定する分離位置指定手段と、該分離位置指定手段により指定された分離容器支持部に支持された分離容器内の生体試料に対して、目的の生体分子を分離する処理を施す処理手段とを備える生体分子分離装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、分離容器を分離容器支持部に支持させて処理手段により分離容器内の生体試料を処理することにより、生体試料から目的の生体分子を分離することができる。
この場合に、操作者が容器数入力手段により処理すべき分離容器数を入力すると、処理手段によって処理される位置の分離容器支持部が分離位置指定手段によって操作者に対して指定される。したがって、分離容器支持部の数より少ない数の分離容器を処理する場合に、操作者が分離位置指定手段の指定に従って分離容器を分離容器支持部に設置するだけで、分離容器の設置位置の取り違えを確実に防ぐことができるとともに、全ての分離容器内の生体試料に対して正しく処理を施すことができる。
【0008】
上記発明においては、前記分離位置指定手段が、1つずつ前記分離容器支持部を指定することとしてもよい。
このようにすることで、分離容器を分離容器支持部と対応づけて設置する場合に、分離容器を誤った分離容器支持部に設置することによる分離容器の取り違えを防止することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記分離容器支持部が、所定の軸を中心に周方向に沿って配列され、前記処理手段が、前記分離容器支持部を前記所定の軸回りに回転させることにより前記生体試料を遠心分離するロータであることとしてもよい。
このようにすることで、分離容器支持部の配置が対称でありその識別が紛らわしいロータにおいても、分離容器の設置位置の取り違えを確実にかつ容易に防止することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記分離位置指定手段が、前記所定の軸に対して回転対称な位置に配置された前記分離容器支持部を指定してもよい。
このようにすることで、分離容器をロータに設置するときに、操作者がロータのバランスを考慮する必要がなくなり、分離容器の設置を容易にすることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記分離位置指定手段が、前記操作者に対して前記複数の分離容器支持部を覆い隠し、前記分離容器を挿入可能な挿入窓が1つ設けられたカバー部材を備え、前記挿入窓に前記分離容器支持部を一致させることにより、当該分離容器支持部を前記操作者に対して指定してもよい。
このようにすることで、操作者は、挿入窓により指定された分離容器支持部をより簡単に認識することができるとともに、指定された分離容器支持部以外の分離容器支持部はカバー部材により隠された状態であるので、分離容器の誤設置をより確実に防止することができる。
【0012】
また、上記発明においては、回収容器を支持する複数の回収容器支持部と、該複数の回収容器支持部のうち、前記容器数入力手段により入力された数に応じた位置に配置されている前記回収容器支持部を、前記操作者に対して指定する回収位置指定手段と、前記処理手段により前記分離容器内で分離された生体分子を、前記回収位置指定手段により指定された回収容器支持部に指示された回収容器に回収する回収手段とを備えていてもよい。
【0013】
このようにすることで、回収容器支持部の数より少ない数の回収容器を設置する場合に、回収位置指定手段の指定に従って回収容器支持部に回収容器を設置するだけで、回収手段により生体分子が回収されてこない回収容器支持部に回収容器を誤設置してしまうことを防止して、分離された生体分子を確実に回収容器に回収することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記分離位置指定手段が、1つずつ前記分離容器支持部を指定し、前記回収位置指定手段が、1つずつ前記回収容器支持部を指定することとしてもよい。
このようにすることで、分離容器と回収容器とを対応づけながら各支持部に設置する際に、分離容器または回収容器を誤った分離容器支持部または回収容器支持部に設置してしまうことによる生体分子の取り違えを防止することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記分離容器は、その中に収容された生体試料の識別情報が付され、該識別情報を読み取る識別情報読取手段と、該識別情報読取手段により読み取られた前記識別情報を、一の分離容器支持部および一の回収容器支持部と対応付けて記憶する記憶部とを備え、前記分離位置指定手段は、前記識別情報読取手段により前記識別情報が読み取られたときに、当該識別情報と対応づけて前記記憶部に記憶された前記分離容器支持部を指定し、前記回収位置指定手段は、前記識別情報読取手段により前記識別情報が読み取られたときに、当該識別情報と対応づけて前記記憶部に記憶された前記回収容器支持部を指定することとしてもよい。
【0016】
このようにすることで、分離容器に付された識別情報を識別情報読取手段により読み取ると、識別情報と対応付けて記憶部に記憶された位置の各支持部が指定される。これにより、記憶部に記憶された情報に正確に基づいて生体試料の処理および生体分子の回収を行い、生体分子の取り違えを確実に防止することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記分離容器は、その中に収容された生体試料の識別情報が付され、該識別情報を読み取る識別情報読取手段と、該識別情報読取手段により読み取られた識別情報と同一の識別情報を付したラベルを作成するラベル作成手段と、前記識別情報読取手段により読み取られた識別情報を、一の前記分離容器支持部および一前記回収容器支持部と対応付けて記憶する記憶部とを備え、前記分離位置指定手段は、前記分離容器に付された識別情報が前記識別情報読取手段により読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶部に記憶されている分離容器支持部を指定し、前記分離位置指定手段は、前記ラベル作成手段により作成された前記ラベルに付された識別情報が前記識別情報読取手段により読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶部に記憶されている回収容器支持部を指定してもよい。
【0018】
このようにすることで、分離容器に付された識別情報を識別情報読取手段により読み取ると、識別情報と対応づけて記憶部に記憶された位置の分離容器支持部が指定されるとともに、同一の識別情報が付されたラベルがラベル作成手段により作成される。操作者は、作成されたラベルを回収容器に付し、その識別情報を識別情報読取種手段により読み取ると、分離容器と対応付けて記憶された位置の回収容器支持部が指定される。これにより、記憶部に記憶された情報に正確に基づいて生体試料の処理および生体分子の回収を行うとともに、回収容器に付される識別情報を対応する分離容器に付された識別情報と確実に一致させて、生体分子の取り違えをより確実に防止することができる。
【0019】
また、本発明は、前記分離容器は、その中に収容された生体試料の識別情報が付され、該識別情報を読み取る識別情報読取装置と、上記に記載の生体分子分離装置と、前記識別情報読取装置により読み取られた識別情報を、一の前記分離容器支持部および一の回収容器支持部と対応づけて記憶する記憶装置とを備え、前記分離位置指定手段および前記回収位置指定手段は、前記識別情報読取装置により識別情報が読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶装置に記憶されている分離容器支持部および回収容器支持部を指定する生体分子分離システムを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記分離容器は、その中に収容された生体試料の識別情報が付され、該識別情報を読み取る識別情報読取装置と、該識別情報読取装置により読み取られた識別情報と同一の識別情報が付されたラベルを作成するラベル作成装置と、上記に記載の生体分子分離装置と、前記識別情報読取装置により読み取られた識別情報を、一の前記分離容器支持部および一の回収容器支持部と対応づけて記憶する記憶装置とを備え、前記分離位置指定手段は、前記分離容器に付された識別情報が前記識別情報読取装置により読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶装置に記憶されている分離容器支持部を指定し、前記回収位置指定手段は、前記ラベル作成手段により作成されたラベルに付された識別情報が前記識別情報読取装置により読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶装置に記憶されている回収容器支持部を指定する生体分子分離システムを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、生体試料を収容した容器を同時に複数処理する場合に、容器の設置位置の取り違えを確実に防止して全ての生体試料を正しく処理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体分子分離システムの全体構成図である。
【図2】図1の生体分子分離装置の機能を示すブロック図である。
【図3】図2の生体分子分離装置の遠心分離容器および回収チューブの設置パターンを示す図である。
【図4】図1の生体分子分離システムによりコンピュータに記憶されるデータベースの一例を示す図である。
【図5】図2の生体分子分離装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る生体分子分離装置1および生体分子分離システムについて、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体分子分離システム100は、図1に示されるように、生体分子分離装置1と、該生体分子分離装置1で処理される検体(生体試料)に関するデータベースAを記憶するコンピュータ2と、検体を識別するためのバーコードを読み取るバーコードリーダ(識別情報読取装置)3と、バーコードを印刷するプリンタ(ラベル作成装置)4とを備えている。
【0024】
生体分子分離装置1は、図2に示されるように、遠心分離容器(分離容器)を収納するバケット(分離容器支持部)5を複数有するロータ(処理手段)6と、回収チューブ(回収容器)を収納する収納穴(回収容器支持部)7を複数有する回収ラック(回収位置指定手段)8と、遠心分離容器内で遠心分離された上清を回収チューブへ回収する回収手段9と、ロータ6に設置される遠心分離容器の数が入力される容器数入力部(容器数入力手段)10と、ロータ6および回収ラック8の動作を制御する制御部11とを備えている。
【0025】
遠心分離容器にはバーコードが表記されたラベルが貼付され、バーコードにはその遠心分離容器内に収容される検体を識別する検体IDが記録されている。
バケット5は、ロータ6の略鉛直方向の回転軸を中心にして周方向に配列され、周方向に沿って1番から順番に番号が対応付けられている。以下、バケット5の数が12個の場合について説明する。図示しないモータを駆動させてロータ6を回転軸回りに高速で回転させることにより、バケット5内に収納された遠心分離容器が底部を半径方向外方に向けた状態で回転し、遠心分離容器内で検体が遠心分離されるようになっている。
【0026】
ロータ6の上方には、遠心分離容器を挿入可能な窓(挿入窓)12aが1つ設けられたカバー(カバー部材、分離位置指定手段)12が配置され、窓12aと一致する位置に配置されたバケット5以外のバケット5はカバー12により操作者に対して覆い隠されている。ロータ6が回転軸回りに回転することによりバケット5が順番に窓12aの位置に現れ、一度に1つのバケット5にのみ操作者が遠心分離容器を設置できるようになっている。
【0027】
回収ラック8は、収納穴7をバケット5と同じく12個有している。収納穴7も、バケット5と同様に1番〜12番の番号が対応づけられている。また、回収ラック8は、回収チューブを挿入可能な窓13aが1つ設けられたカバー(回収位置指定手段)13により、窓13aと一致する位置に配置された1つを除いて収納穴7が操作者に対して覆い隠されている。また、回収ラック8は、図示しないモータなどにより、ロータ6に対して水平方向に移動可能に設けられ、回収ラック8が移動することにより収納穴7が順番に窓13aの位置に現れ、一度に1つの収納穴7にのみ操作者が回収チューブを設置できるようになっている。
【0028】
回収手段9は、各窓12a,13aの間で移動可能に設けられたアーム9aを備え、該アーム9aの先端には図示しないノズルが取り付けられている。回収手段9は、遠心分離後に窓12aの位置に配置された遠心分離容器内の上清をノズルで吸引した後、アーム9aを窓13aの上方に移動させ、ノズルから窓13aの位置に配置された回収チューブ内に上清を吐出するようになっている。
【0029】
容器数入力部10は、操作者による操作により、遠心分離容器の数が入力される。なお、遠心分離容器の数が1または11のときには遠心分離容器を回転軸に対して回転対称にロータ6に配置できないため、これらの数字が容器数入力部10に入力されるとエラーが発せられるなどして処理が中断されるようになっている。
【0030】
制御部11は、遠心分離容器に付されたバーコードがバーコードリーダ3により読み取られると、当該バーコードが示す検体IDと対応付けてデータベース(後述)Aに記憶されている番号のバケット5が窓12aの位置に配置されるように、ロータ6を低速で回転させるようになっている。また、このときに、制御部11は、当該バーコードが示す検体IDと対応付けてデータベースAに記憶されている検体ID(後述)が記録されたバーコードの情報をプリンタ4に送る。
【0031】
また、制御部11は、プリンタ4で印刷されたバーコードがバーコードリーダ3により読み取られると、当該バーコードに記録された検体IDと対応付けてデータベース(後述)Aに記憶されている番号の収納穴7が窓13aの位置に配置されるように、回収ラック8を移動させるようになっている。
【0032】
また、制御部11は、検体が遠心分離された後、データベースAに互いに対応づけて記憶されているバケット5および収納穴7が順番に各窓12a,13aの位置に配置されるように、ロータ6および回収ラック8を移動させる。そして、制御部11は、回収手段9により上清が遠心分離容器から回収チューブに回収される度に、対応するバケット5および収納穴7が順番に窓12a,13aの下の配置されるように、ロータ6および回収ラック8を移動させるようになっている。
【0033】
コンピュータ2は、記憶装置14とモニタ15とを備えている。記憶装置14には、ロータ6に設置される遠心分離容器の数に応じて予め設定された遠心分離容器のロータ6への配置パターンおよび回収チューブの回収ラック8への配置パターンと、データベースAとが記憶されている。
【0034】
遠心分離容器の配置パターンは、図3に示されるように、各遠心分離容器の数について、回転軸を中心にして回転対称に遠心分離容器がロータ6に設置されるようにバケット5が選択されている。回収チューブの配置パターンは、バケット5と同じ数の収納穴7が選択されていれば特に制限はない。なお、図3において、選択されているバケット5または収納穴7は、網掛けで示されている。
【0035】
データベースAは、例えば、図4に示されるように、処理前の各検体を識別する検体ID(識別情報)aが予め操作者により入力されている。また、データベースAには、生体分子分離装置1による処理の途中で、検体IDaと対応付けて処理番号と回収検体IDが記憶される。処理番号は、生体分子分離装置1による処理の順番bおよびバケット5の番号cを含んでいる。回収検体IDは、検体IDaおよび収納穴7の番号dを含んでいる。容器数入力部10に遠心分離容器の数が入力されると、その数に対応する各配置パターンで選択されているバケット5の番号と収納穴7の番号とがそれぞれ、検体IDと対応づけてデータベースAの処理番号と回収検体IDの欄に記憶されるようになっている。
【0036】
また、データベースAには、生体分子分離装置1により処理が開始された処理開始時間や、回収チューブが保存される保存箱を示す保存箱番号など、検体の管理に必要な情報が記憶されてもよい。さらに、検体として、生体から採取された臨床検体と同時に、生体分子分離装置1による処理が正常に行われたか否かを確認するための標準検体も処理する場合には、検体が臨床検体であるか標準検体であるかを示す検体種類が記憶されてもよい。コンピュータ2は、データベースAをモニタ15に表示するようになっている。
【0037】
プリンタ4は、制御部11から検体IDが記録されたバーコードの情報を受け取ると、当該バーコードをテープなどに印刷してラベルを作成する。
【0038】
このように構成された生体分子分離システム100の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る生体分子分離システム100を用いて検体から目的とする生体分子を分離するには、予めバーコードが付された遠心分離容器に体内から採取した検体を収容し、各バーコードに記録されている検体IDをデータベースAに記憶しておく。検体としては、血液、尿、唾液、粘液などの体液や、粘膜などの組織片が用いられる。また、検体とともに、該検体を分解したり分画したりする試薬が適宜遠心分離容器内に収容されてもよい。
【0039】
次に、用意した遠心分離容器の数を生体分離分子装置1に入力する。これにより、入力した数に対応した遠心分離容器および回収チューブの配置パターンで選択されているバケット5の番号cおよび収納穴7の番号dが検体IDaと対応付けてデータベースAに記憶される。操作者が1つの遠心分離容器のバーコードをバーコードリーダ3により読み取ると、ロータ6が回転し、当該バーコードが示す検体IDaと対応付けてデータベースAに記憶されている番号のバケット5が窓12aの位置に配置される。操作者は、窓12aの位置に配置されたバケット5に遠心分離容器を設置する。
【0040】
これと同時に、当該バーコードが示す検体IDを含む回収検体IDが記録されたバーコードが印刷されたラベルがプリンタ4により作成される。操作者は、作成されたラベルを回収チューブに貼付した後、当該ラベルのバーコードをバーコードリーダ3で読み取る。これにより、回収ラック8が移動し、バーコードが示す検体IDaと対応づけてデータベースAに記憶された収納穴7が、窓13aの位置に配置される。操作者は窓13aの位置に配置された収納穴7に回収チューブを設置する。
【0041】
以上の操作を繰り返して用意した全ての遠心分離容器および回収チューブをロータ6および回収ラック8に設置した後、ロータ6を遠心回転させて検体を遠心分離する。続いて、遠心分離容器内から、該遠心分離容器と同一の検体IDが記録されたバーコードが付された回収チューブに上清が回収される。
【0042】
この場合に、本実施形態によれば、窓12aの位置に配置されたバケット5に遠心分離容器を設置していくだけで、ロータ6のバランスが均衡するように遠心分離容器が設置される。また、窓13aの位置に配置された収納穴7に回収チューブを設置していくだけで、各遠心分離容器から上清が回収されてくる位置の収納穴7に、その遠心分離容器と対応する回収チューブが設置される。これにより、従来、操作者がロータ6の重量バランスや遠心分離容器と回収チューブとの対応を考慮しながら行っていた紛らわしい容器の設置作業を単純化して、操作者の負担を軽減することができる。
【0043】
また、操作者による各容器の設置位置の取り違えが原因でロータ6がアンバランスの状態で回転したり、遠心分離容器からの上清の回収先に回収チューブが存在しなかったりする不都合を防止し、いずれの検体も正常に処理および回収することができるという利点がある。また、遠心分離容器内で分離された生体分子を、確実に同一の検体IDが付された遠心分離容器から回収チューブに回収し、生体分子の取り違えを確実に防止することができるという利点がある。
【0044】
上記実施形態においては、バケット5および収納穴7を窓12a,13aの下に配置することによりこれらを操作者に対して指定することとしたが、バケット5および収納穴7を操作者に対して指定する方法はこれに限定されない。例えば、各バケット5および各収納穴7に隣接する位置に図示しないランプを設け、該ランプを点灯させるなど、指定されているバケット5および収納穴7を操作者が視認できる方法であればよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、バケット5および収納穴7を操作者に対して1つずつ指定することとしたが、これに代えて、同時に複数指定してもよい。
例えば、複数の遠心分離容器に同一の生体試料を収容して同一の生体分子を回収チューブに回収する場合など、遠心分離容器と回収チューブを識別する必要がないときは、遠心分離容器の数に対応する配置パターンで選択されているバケット5および収納穴7を同時に全て指定する。このようにしても、ロータ6の重量バランスが偏ったり、上清の回収先の収納穴7に回収チューブが設置されていなかったりする不都合を防止することができる。また、各容器の設置に要する時間を短縮することができる。
【0046】
また、上記実施形態においては、検体から目的とする生体分子を遠心分離することとしたが、これに代えて、他の処理により目的とする生体分子を分離することとしてもよい。例えば、ロータ6に代えて、回収ラック8と同様に収納穴が配列された反応ラックと、各収納穴に設置された反応チューブに試薬を添加するピペット機構とを備え、反応チューブの中で検体を試薬と反応させることにより目的の生体分子を分離させ、各反応チューブから回収チューブに目的の生体分子を回収することとしてもよい。また、反応の種類に応じて、ヒータや撹拌器などを備えていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、生体分子分離装置1が、コンピュータ2、バーコードリーダ3およびプリンタ4とともに生体分子分離システム100を構成していることとした。これに代えて、図5に示されるように、生体分子分離装置1が、データベースを記憶する記憶部16と、バーコードなどの情報担体に記録された検体の識別情報を読み取る識別情報読取手段17と、情報ラベル作成手段18を備えていてもよい。この場合、生体分子分離装置1は、記憶部16に記憶されたデータベースを表示するモニタ19を備えていることが好ましい。
このようにすることで、配線を不要にしたり設置スペースを小さくしたりすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 生体分子分離装置
2 コンピュータ
3 バーコードリーダ(識別情報読取装置)
4 プリンタ(ラベル作成装置)
5 バケット(分離容器支持部)
6 ロータ(処理手段)
7 収納穴(回収容器支持部)
8 回収ラック
9 回収手段
9a アーム
10 容器数入力部(容器数入力手段)
11 制御部
12 カバー(カバ―部材、分離位置指定手段)
12a 窓(挿入窓)
13 カバー(回収位置指定手段)
13a 窓
14 記憶装置
15 モニタ
16 記憶部
17 識別情報読取手段
18 ラベル作成手段
19 モニタ
A データベース
a 検体ID
b 処理順番
c バケットの番号
d 収納穴の番号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を収容する分離容器を支持する複数の分離容器支持部と、
該分離容器支持部に支持される分離容器の数が入力される容器数入力手段と、
前記複数の分離容器支持部のうち、前記容器数入力手段により入力された分離容器数に応じた位置に配置されている分離容器支持部を操作者に対して指定する分離位置指定手段と、
該分離位置指定手段により指定された分離容器支持部に支持された分離容器内の生体試料に対して、目的の生体分子を分離する処理を施す処理手段とを備える生体分子分離装置。
【請求項2】
前記分離位置指定手段が、1つずつ前記分離容器支持部を指定する請求項1に記載の生体分子分離装置。
【請求項3】
前記分離容器支持部が、所定の軸を中心に周方向に沿って配列され、
前記処理手段が、前記分離容器支持部を前記所定の軸回りに回転させることにより前記生体試料を遠心分離するロータである請求項1または請求項2に記載の生体分子分離装置。
【請求項4】
前記分離位置指定手段が、前記所定の軸に対して回転対称な位置に配置された前記分離容器支持部を指定する請求項3に記載の生体分子分離装置。
【請求項5】
前記分離位置指定手段が、前記操作者に対して前記複数の分離容器支持部を覆い隠し、前記分離容器を挿入可能な挿入穴が1つ設けられたカバー部材を備え、前記挿入穴に前記分離容器支持部を一致させることにより、当該分離容器支持部を前記操作者に対して指定する請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体分子分離装置。
【請求項6】
回収容器を支持する複数の回収容器支持部と、
該複数の回収容器支持部のうち、前記容器数入力手段により入力された数に応じた位置に配置されている前記回収容器支持部を、前記操作者に対して指定する回収位置指定手段と、
前記処理手段により前記分離容器内で分離された生体分子を、前記回収位置指定手段により指定された回収容器支持部に支持された回収容器に回収する回収手段とを備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の生体分子分離装置。
【請求項7】
前記分離位置指定手段が、1つずつ前記分離容器支持部を指定し、
前記回収位置指定手段が、1つずつ前記回収容器支持部を指定する請求項6に記載の生体分子分離装置。
【請求項8】
前記分離容器は、その中に収容された生体試料の識別情報が付され、
該識別情報を読み取る識別情報読取手段と、
該識別情報読取手段により読み取られた前記識別情報を、一の分離容器支持部および一の回収容器支持部と対応付けて記憶する記憶部とを備え、
前記分離位置指定手段は、前記識別情報読取手段により前記識別情報が読み取られたときに、当該識別情報と対応づけて前記記憶部に記憶された前記分離容器支持部を指定し、
前記回収位置指定手段は、前記識別情報読取手段により前記識別情報が読み取られたときに、当該識別情報と対応づけて前記記憶部に記憶された前記回収容器支持部を指定する請求項7に記載の生体分子分離装置。
【請求項9】
前記分離容器は、その中に収容された生体試料の識別情報が付され、
該識別情報を読み取る識別情報読取手段と、
該識別情報読取手段により読み取られた識別情報と同一の識別情報を付したラベルを作成するラベル作成手段と、
前記識別情報読取手段により読み取られた識別情報を、一の前記分離容器支持部および一の前記回収容器支持部と対応付けて記憶する記憶部とを備え、
前記分離位置指定手段は、前記分離容器に付された識別情報が前記識別情報読取手段により読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶部に記憶されている分離容器支持部を指定し、
前記分離位置指定手段は、前記ラベル作成手段により作成された前記ラベルに付された識別情報が前記識別情報読取手段により読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶部に記憶されている回収容器支持部を指定する請求項7に記載の生体分子分離装置。
【請求項10】
前記分離容器は、その中に収容された生体試料の識別情報が付され、
該識別情報を読み取る識別情報読取装置と、
請求項7に記載の生体分子分離装置と、
前記識別情報読取装置により読み取られた識別情報を、一の前記分離容器支持部および一の回収容器支持部と対応づけて記憶する記憶装置とを備え、
前記分離位置指定手段および前記回収位置指定手段は、前記識別情報読取装置により識別情報が読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶装置に記憶されている分離容器支持部および回収容器支持部を指定する生体分子分離システム。
【請求項11】
前記分離容器は、その中に収容された生体試料の識別情報が付され、
該識別情報を読み取る識別情報読取装置と、
該識別情報読取装置により読み取られた識別情報と同一の識別情報が付されたラベルを作成するラベル作成装置と、
請求項7に記載の生体分子分離装置と、
前記識別情報読取装置により読み取られた識別情報を、一の前記分離容器支持部および一の回収容器支持部と対応づけて記憶する記憶装置とを備え、
前記分離位置指定手段は、前記分離容器に付された識別情報が前記識別情報読取装置により読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶装置に記憶されている分離容器支持部を指定し、
前記回収位置指定手段は、前記ラベル作成手段により作成されたラベルに付された識別情報が前記識別情報読取装置により読み取られたときに、当該識別情報と対応付けて前記記憶装置に記憶されている回収容器支持部を指定する生体分子分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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