説明

生体分子及びその相互作用特性の検出方法

【解決手段】
生体分子を化学的不活性材料のシートの微視的孔の中に濃縮する工程と、当該開口部を制限する工程と、当該孔を通る電流又は当該孔開口部付近の蛍光を測定する工程とを含む、生体分子の検出方法。前記電流又は蛍光は分子が孔から拡散するにつれて変化し、拡散速度の尺度を与え、それによって分子の存在及び特性を検出する。相互作用する分子の場合、相互作用しない分子よりも拡散速度が遅くなると予想され、分子相互作用が測定される。孔の集団にキャップをし、質量分析計に挿入することで分子の同定が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて、その開示が参照によりすべて本明細書に組み込まれる2010年2月23日出願の米国仮出願第61/338676号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、分析物粒子の検出、及び複雑な媒体内でのそれらの相互作用特性の決定のための方法に関する。より具体的には、本発明は拡散免疫測定法及びその機能的に同等な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質及び核酸のような生体分子は、一般的に生体系に関連し、そこで前記生体分子は細胞複製、代謝、自己制御、細胞間情報伝達、及び免疫応答のようなタスクを実行するための複雑な相互作用のネットワークを形成する。疾患はこのネットワークを歪め、この歪みを理解することが、疾患の早期検出及び薬物療法による前記歪みの化学的修復の基本である。相互作用ネットワークを理解するためにこれらの大分子を同定及び特性決定する既存手法が多数存在するが、各々が特定の制限に悩まされている。DNAのような核酸に使用される手法は、その分析的に有利な特性のおかげでかなり成功してきたが、タンパク質は化学的及び物理的に多様である。この多様性により、広範な手法の方が複雑なタンパク質ネットワークの特性決定にはるかに役立つと考えられる場合に、やむを得ず焦点を狭く絞った分析手法が用いられることになる。さらに、タンパク質は、検出不可能な濃度でも機能的に重要な場合があり、さらに核酸のように容易に増幅することができず、高い固有感度を有する手法を必要とする。
【0004】
遺伝学的方法
【0005】
タンパク質相互作用は、古典遺伝学を用いて調査することができる。種々の突然変異が同一の細胞又は有機体内で組み合わせられ、その結果生じる表現型が観察される。これは、タンパク質相互作用がほぼ完全にネイティブな環境で起きることを確実とする。残念ながら、これらの方法はタンパク質の小さなグループにしか適用できず、全プロテオームの調査には使用できない。さらに、表現型の変化は多数の遺伝子突然変異に関係する多数の原因によって生じる可能性があり、そのため実験結果によって示唆されるタンパク質相互作用を生物化学レベルで確認する必要があると考えられる。
【0006】
生物情報学的方法
【0007】
タンパク質相互作用はタンパク質の機能アノーテーションに比較ゲノミクスを用いることによって調査できる。現在、3つの主な手法がある。第1の手法はドメイン融合(又はロゼッタストーン)と呼ばれ、タンパク質ドメインが別個のポリペプチドとして作用できる構造的及び機能的に独立した単位であると仮定する。第2の手法は細菌遺伝子のオペロン構成に基づき、オペロンではかかる遺伝子はその実際の配列がまったく異なっている場合でも機能的に関連することが多い。第3の手法は系統プロファイリングを用い、特定の機能に一緒に関与する遺伝子の進化的保存を調査する。残念ながら、これらの生物情報学的方法は、完全なゲノム配列を必要とし、一般的にオペロンが十分に定義された細菌又はその他の有機体に限られる。さらに、結果は特定のタンパク質相互作用の決定的証拠ではなく、生物化学レベルでの確認が必要である。
【0008】
親和性に基づく方法
【0009】
タンパク質相互作用は、免疫測定法のように、タンパク質と相互作用パートナー候補との間の親和性を直接測定することによって生物化学レベルで調査することができる。タンパク質は固定相又は平坦なガラス面上に固定化され、相補リガンドの混合物が前記固定化タンパク質上に流される。結合は、リガンドに化学的に付加した蛍光又は放射性プローブによって表示され、これがその後画像化される。残念なことに、タンパク質機能は固定化プロセスによって大幅に制限される場合がある。1つの関連手法は、タンパク質自体を化学的に標識し、その後それを固定化リガンドで被覆された表面上に流す。ただし、この方法は、タンパク質が同一の効率で均一に標識されないという問題があり、標識の化学的付加がタンパク質相互作用の範囲を阻害しうる。さらに、標識の付加はタンパク質の溶解性に悪影響を及ぼし、蛍光プローブが付加によって消光される場合がある。検出は、電気化学的電流測定法によって実施されてもよいが(例えば、特許文献1)、欠点が残る。
【0010】
拡散免疫測定法は1つの微小毛細管チャネルを通る1組の隣接する流体の流れ(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、及び特許文献11)、又は機能的同等物を使用する場合があり、その場合流れの界面における2つの流体の構成成分間の相互作用が前記流体界面付近の濃度プロファイルに影響する拡散特性の変化を引き起こす。濃度プロファイルの検出は、相互作用に関する情報を与える。これは固定相に伴う複雑さを避けるが、標識の使用の方がなお好ましく、1試料につき1回のみの測定が現実的である(すなわち、非サイクル性である)。多価反応物の使用(例えば特許文献12)は、拡散係数の相違がより大きな構成成分の使用を可能にするが、標識及び非サイクル性という測定上の欠点が残る。多孔膜を用いる関連デバイス(例えば特許文献13)は同じ欠点が問題になる。電気化学センサのアレイ上に薄いポリマー層を使用する方法(例えば特許文献14)は、ポリマー透過に関わる時間遅延から拡散特性を測定することが可能であるが、狭い孔に分析物を集中させる(それによって感度を高める)ことがなく、流体力学的流れによって分析物を前方に循環してセンサから離すのに適さない。拡散は分析物システムの光学的追跡によって測定されてもよいが(例えば特許文献15)、これは標識技術の使用が優先される欠点を有する。拡散はヒドロゲルへの浸透深さの検出によって測定されてもよいが(例えば特許文献16)、これは標識技術の使用が優先される欠点を有する。
【0011】
マイクロチャネル電気伝導度測定法は、タンパク質分子がマイクロチャネルを通過する際の横方向のコンダクタンスを測定し、これは非標識タンパク質相互作用の検出におそらく有用であると記載されている(例えば特許文献17)。しかし、前記方法は拡散特性を間接的に測定するにすぎず、測定のサイクル化に適さない。電気伝導度測定法は非標識細胞培養モニタリングにも使用されている(例えば特許文献18及び特許文献19)が、これらはタンパク質及びその相互作用の直接的な測定ではない。ナノギャップの使用(例えば特許文献20)は電気化学的測定の特定の二重層による複雑化を避けるが、テザー技術の使用が優先される欠点を有する。
【0012】
物理的方法
【0013】
タンパク質相互作用は物理的レベルで調査することができる。X線結晶学及び核磁気共鳴(NMR)の手法は分子内のタンパク質原子の位置を決定し、得られる3次元マップを使用して他のどの分子がそのトポロジー及び電荷分布に適しそうかを示唆できる。残念なことに、X線結晶学は調査する各タンパク質のタンパク質結晶の成長が必要であり、これは困難で時間のかかるプロセスであるとともに、その結晶環境が、タンパク質が機能する水性環境と劇的に異なる。NMRは大量の精製タンパク質を必要とし、得られる複雑なデータの解析は決定的ではない場合がある。
【0014】
表面プラズモン共鳴の手法は金属薄膜へのタンパク質付着を用いるが、これはタンパク質の機能に悪影響を及ぼしうる。
【0015】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、1つのフルオロフォアの発光スペクトルが他のフルオロフォアの励起と重なるときに付近のフルオロフォアの間で発生しうるエネルギー移動を利用する。1つのフルオロフォアと相互作用するパートナーの候補と、別のフルオロフォアと相互作用する別のパートナーの候補を標識することで、1つのフルオロフォアの他方を犠牲にした蛍光増大によって相互作用が表示される。当該方法は過渡的相互作用でも十分に機能する。残念なことに、当該方法は各タンパク質へのフルオロフォアの化学的付加を必要とし、これがタンパク質の機能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0016】
デンドロンを単離した分析物の原子間力顕微鏡法の手法(例えば、特許文献21、特許文献22、特許文献23及び特許文献24)は個々の分析物分子を検出できるが、結合のテザー及び大量の試料調製を必要とする。
【0017】
標準発現ライブラリ
【0018】
タンパク質相互作用は、標識してプローブとして使用できるbaitタンパク質を産生するcDNAのライブラリの使用を通じて調査することができる。一般的にbaitタンパク質はファージ粒子の使用を通じて産生される。当該手法は、baitタンパク質の対応するcDNAとの会合を考慮に入れるが、低スループットという大きな欠点があり、各baitタンパク質のスクリーニングが必要である。さらに、baitタンパク質の産生はネイティブ条件下ではなく、誤りの可能性のある折り畳み及び偽陰性を招く。
【0019】
ファージ相互作用ディスプレイ
【0020】
タンパク質相互作用は発現クローニング法の使用により調査することができる。1つのcDNA配列をファージタンパク質コート遺伝子に挿入し、細菌細胞中で培養する。その後ファージはそのコート上に新たなタンパク質を発現し、これをタンパク質相互作用分析に使用することができる。かかるファージ混合物が固定化された標識タンパク質とウェル内で相互作用した場合、当該ウェルを濯いで相互作用しているファージのみをそれを生成したcDNAと共に残すことができる。前記cDNA配列はその後細菌感染により大量増殖できる。この手法は自動化並行スクリーニングへの適性が高い。残念なことに、標準発現ライブラリではタンパク質がネイティブ条件下で生成されない。さらに、当該手法はファージ表面で生成できる短鎖ペプチドに限られる。
【0021】
酵母ツーハイブリッドシステム
【0022】
タンパク質相互作用は、酵母細胞中の転写因子の使用を通じて調査することができ、これはインビトロよりもネイティブなタンパク質発現環境である。調査中のタンパク質は、ハプロイド酵母細胞中で転写因子からのDNA結合ドメインとの融合体として発現される。別のタンパク質は別のハプロイド酵母細胞中で同じ転写因子からのトランス活性化ドメインとの融合体として発現される。前記2つの酵母株をディプロイド株に交配することで、前記2つのタンパク質が相互作用できる。相互作用した場合、転写因子が集合し、試験遺伝子の活性化を引き起こす。本手法は大規模スクリーニングに適するが、数点の欠点がある。実験的再現性がきわめて低いことは、環境条件に過度に敏感であること、又はスクリーニングが包括的でなかったことを示唆する。他のより特異的な手法で確認された相互作用の多数が検出されず、高レベルの偽陰性を示している。最後に、多数の検出された相互作用がその後の分析で妥当でないことが明らかにされており、高レベルの偽陽性を示している。
【0023】
本明細書で参照するすべての出版物は、本明細書と矛盾しない範囲でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第7,297,312号
【特許文献2】米国特許第6,541,213号
【特許文献3】米国特許第7,271,007号
【特許文献4】米国特許第7,306,672号
【特許文献5】米国特許第7,060,446号
【特許文献6】米国特許第7,704,322号
【特許文献7】米国特許出願第2010/0263732号
【特許文献8】米国特許出願第2008/0182273号
【特許文献9】米国特許出願第2003/0096310号
【特許文献10】米国特許出願第2009/0053732号
【特許文献11】米国特許出願第2003/0234356号
【特許文献12】米国特許第7,550,267号
【特許文献13】米国特許第5,212,065号
【特許文献14】米国特許第7,144,553号
【特許文献15】米国特許第2008/0145856号
【特許文献16】米国特許第2006/0115905号
【特許文献17】米国特許第2005/0109621号
【特許文献18】米国特許第7,732,127号
【特許文献19】米国特許第7,192,752号
【特許文献20】米国特許第2005/0136419号
【特許文献21】米国特許第6,645,558号
【特許文献22】米国特許第2008/0113353号
【特許文献23】米国特許第2009/0048120号
【特許文献24】米国特許第2010/0261615号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本明細書に記載された方法は、スフェロイド、磁場、蛍光、光学、フィルタ技術、ゲル技術、化学、電気化学、クロマトグラフィー、及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)を含む既存技術の組合せを用いて分析物粒子(例えば生体分子)の検出及び特性決定、分析物粒子の構造的変化の特性決定、及びそれらの相互作用の識別を行う。
【0026】
本発明による1つの方法では、溶媒流又は電場のような手段によって分析物粒子がイオン性環境(塩水のような)中で微視的リザーバ内に捕捉される。捕捉後、前記捕捉手段は終了され、分析物粒子がリザーバから拡散する際のリザーバの導電率が測定される。前記導電率はイオンの流れやすさの尺度である。イオン流は分析物粒子によって制限されることから、分析物粒子がリザーバから拡散するにつれて導電率が低下すると考えられる。導電率が低下する時間枠が、分析物粒子の拡散係数の尺度を与える。前記拡散係数が今度は、サイズ及び形状のような分析物粒子特性の尺度を与える。拡散の補足又は抑制のための電場使用は、分析物粒子の荷電特性の研究にも使用できる。さらに、結合相互作用を示す2つの分析物粒子は単独の分析物粒子と比べて拡散係数の低下を示すと考えられ、当該低下は結合相互作用の尺度を与える。分析物粒子がリザーバから拡散した後、当該粒子が再度リザーバ内に捕捉される場合もあることから、前記測定を連続サイクルで繰り返すことができる。
【0027】
第1の方法に類似した別の方法では、分析物粒子拡散係数の尺度を与えるために導電率ではなく蛍光が使用される。前記蛍光は、電場中にイオン流の制限を引き起こして蛍光の開始を遅延させることによって、又は蛍光粒子自体の流れの制限を引き起こすことによって使用できる。
【0028】
さらなる方法は、リザーバ内での分析物粒子の物理的捕捉を伴うことから、水性環境を維持しながらリザーバ全部を質量分析計の真空チャンバ内に移動することができる。その後レーザーアブレーションを用いて分析物粒子の水性マトリックスを蒸発させ、分子フラグメンテーションに対する制御が改善された質量分析用試料を与えることができる。
【0029】
本発明の方法は、サイズ差の大きい分析物粒子に関して、及び関与する分析物粒子の1つ又はそれ以上が脂質環境中にある状況に関して、二成分、三成分、又はそれ以上の成分の相互作用を見出すために使用できる。かかる方法はバイオマーカー発見、薬剤発見、及び薬剤評価への広い応用性を見出す可能性がある。この方法の既存方法に対する強力な利点は、無標識及びテザーフリーであって、前記分析物粒子が化学的に結合された標識又はテザーのないネイティブな状態で相互作用することを確実とする点である。標識及びテザーは、依然として使用してもよいが、必要ではない。本方法はpH又はその他の溶液特性にもほぼ依存せず、不透明で複雑な水性混合物と共に使用でき、極小の試料量を用いることができ、測定をサイクル化(すなわち繰返し)して感度を高めることができる。
【0030】
本発明の1つの態様によると、分析物粒子の存在、特性、及び相互作用を検出するため方法は、実質的に類似した直径の多数の貫通孔を有する材料のシートを提供する工程と、前記材料の少なくとも1つの面の孔開口部を制限する工程と、分析物粒子を前記孔の分集団に挿入する工程と、分析物粒子を含有する前記貫通孔を通して電場を印加する工程と、前記分析物粒子の拡散速度の指標である時間に伴う電流の変化を測定する工程とを含み、その際前記分析物粒子の拡散速度は分析物粒子の存在、特性、及び相互作用の尺度を与える。
【0031】
前記材料のシートは、ポリカーボネート、トラックエッチングされたポリカーボネート、多数の孔が穿孔されたポリマー、多数の孔が化学エッチングされたポリマー、多数の孔が化学エッチングされたガラス、有孔ポリマーフィルム、有孔単層フィルム又は有孔多層フィルムを含むことができる。典型的には、前記材料は電気絶縁性であり、実質的に化学的に不活性である。前記材料のシートは厚さが500nm〜1000000nmの範囲である。あるいは、厚さが1nm〜10cmの範囲である。貫通孔は直径10nm〜5000nmであることができる。あるいは、貫通孔は直径1nm〜1cmであることができる。1つの構成では、貫通孔の内面が化学的に誘導体化される。あるいは、貫通孔の外面が化学的に誘導体化されることができる。前記貫通孔にはゲルを充填することができる。
【0032】
1つの実施形態では、前記孔開口部は、ゲルの層を前記材料のシートの表面に接触させて適用することによって制限される。前記ゲルは、ゼラチン、アガロース、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、透水性ポリマー、透水性コポリマー、デンプン、エアロゲル、コロジオン、透析膜、分析物粒子マトリックス不混和性流体、化学修飾された形態の上記材料のいずれか、粒子が包埋された上記材料のいずれか及びこれらの組合せを含むことができる。
【0033】
別の実施形態では、前記孔開口部が、当該孔を通過する流体の流れの実質的制限を引き起こすよう構成された直径を有するスフェロイドを用いて制約される。前記スフェロイドは、重力、向心力、遠心力、動水圧、静水圧、化学結合によって又はゲルマトリックスを使用して、適所に保持できる。スフェロイドの組成によっては、電場を印加することによって又は磁場勾配を印加することによってスフェロイドを適所に保持することができる。
【0034】
スフェロイドがゲルマトリックスを用いて適所に保持される場合、前記方法はスフェロイドをゲルマトリックスから取り除く工程をさらに含むことができる。
【0035】
有利なことに、前記電流は、シートの選択領域を通る電流を、測定されている拡散速度に十分な速度で測定するよう構成された電流計を用いて測定される。
【0036】
前記選択領域は、一端が材料のシートと物理的に接触した絶縁管、前記材料のシートの表面に適用された有孔絶縁シート又は材料シートの表面に適用された絶縁性水不混和性流体を用いて選択される。
【0037】
本発明の別の態様によると、分析物粒子の存在、特性、及び相互作用を検出するため方法は、実質的に類似した直径の多数の貫通孔を有する材料のシートを提供する工程と、前記材料の少なくとも1つの面の孔開口部を制限する工程と、分析物粒子を前記孔の分集団に挿入する工程と、分析物粒子を含有する前記貫通孔に移動力を軸方向に通す工程と、前記分析物粒子の拡散速度の指標である時間に伴う電流の変化を測定する工程とを含み、その際前記分析物粒子の拡散速度は分析物粒子の存在、特性、及び相互作用の尺度を与える。
【0038】
好ましくは、蛍光は、シートの選択領域の蛍光を測定されている拡散速度に十分な速度で測定することができる測光システムによって測定される。
【0039】
本発明のさらなる態様によると、分析物粒子の同定方法は、実質的に類似した直径の多数の貫通孔を有する材料のシートを提供する工程と、前記材料の少なくとも1つの面の孔開口部を制限する工程と、分析物粒子を前記孔の分集団に挿入する工程と、前記孔開口部を実質的に閉鎖する工程と、前記材料のシートを質量分析計に挿入する工程と、前記材料のシートの選択領域をアブレーションする工程と、得られたアブレーション生成物をイオン化する工程と、得られたイオンの質量/電荷比を測定する工程とを含み、その際前記質量/電荷比は分析物粒子の同定手段を与える。
【0040】
前記方法は、前記孔開口部に、前記開口部が実質的に閉鎖されるようにスフェロイドを圧縮することによって、前記孔開口部を制限する工程をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明をより良く理解するため、本発明による方法を、例示のみを目的として、以下の付属図面を説明して記載する。
【0042】
【図1A】図1Aは、本発明の方法で使用される有孔材の概略図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの有孔材の線x−xを通る断側面図である。
【図2】図2は、図1の材料の1つの孔の拡大図である。
【図3】図3は、制御された厚さの二層材料の作製の図である。
【図4】図4は、ポリアクリルアミドゲルを生成する既知の化学反応の図である。
【図5】図5は、図3の二層材料の拡大図である。
【図6】図6は、ペプチド結合合成の既知の化学反応の図である。
【図7】図7は、近接する図1の有孔材及び図3の二層材料の概略図である。
【図8】図8は、ペプチド結合によって接合された図1の有孔材及び図3の二層材料から得られる構造体の概略図である。
【図9】図9は、二層の外層が取り除かれ、有孔材に付着したゲル層が残った状態の図8の構造体の概略図である。
【図10】図10は、図9の変形例の概略図であり、フルオロフォア又は界面活性剤がゲルの外面に化学結合している。
【図11】図11は、図9の変形例の概略図であり、構造体の組立の前に有孔材の孔の一端をスフェロイドが閉塞しており、わずかな隙間がある。
【図12】図12は、磁場勾配からの力のような力の、図11のスフェロイドの位置を動かすことによる閉塞除去効果の概略図である。
【図13】図13は、図9の変形例の概略図であり、構造体の組立の前に有孔材の孔の一端をスフェロイドが閉塞しており、隙間がない。
【図14】図14は、図9の変形例の概略図であり、有孔材料の孔の両端をスフェロイドが閉塞している。
【図15】図15は、図14のスフェロイドの1つを除去することで生じるゲルの裂け目の概略図である。
【図16】図16は、図9の変形例の概略図であり、スフェロイドが有孔材の一端を閉塞しており、ゲルはなく、磁場勾配からの力のような力によってその場所に保持されている。
【図17】図17は、図9の構造体の孔を通る流体の流れの概略図である。
【図18】図18は、図9の構造体の孔における分析物粒子の蓄積の概略図である。
【図19】図19は、電場Eによって誘発されるフルオロフォア移動の概略図である。
【図20】図20は、磁場勾配Bによって誘発されるフルオロフォア移動の概略図である。
【図21】図21は、重力場Gによって誘発されるフルオロフォア移動の概略図である。
【図22】図22は、電場Eによって誘発される電解質移動の概略図である。
【図23】図23は、電場Eによって誘発される電解質移動の結果生じるコンデンサ形成の概略図である。
【図24】図24は、図23のコンデンサに関連する電場の図である。
【図25】図25は、図23のフルオロフォアへの電荷移動の図である。
【図26】図26は、a)障害物なしb)小さな障害物及びc)大きな障害物の場合の分子障害物周辺のフルオロフォア移動の概略図である。
【図27】図27は、a)障害物なしb)小さな障害物及びc)大きな障害物の場合の分子障害物周辺の電解質移動の概略図である。
【図28】図28は、a)障害物なしb)小さな障害物及びc)大きな障害物の場合の帯電分子障害物周辺の電解質移動の概略図である。
【図29】図29は、移動したフルオロフォアの紫外線による励起、及びその可視光線放出の概略図である。
【図30】図30は、帯電したフルオロフォアの紫外線による励起、及びその可視光線放出の概略図である
【図31】図31は、電極への電流の流れの概略図である。
【図32】図32は、分析物粒子が図9の構造物の孔の中にいかにロードされるかを示す概略図である。
【図33A】図33Aは、電流が分析的に有用な方法でいかに検出されるかを示す概略図である。
【図33B】図33Bは、図33Aの分析物粒子を送達する管の先端の拡大図である。
【図33C】図33Cは、図33Aから得られるコンダクタンスマップの図である。
【図34A】図34Aは、蛍光が分析的に有用な方法でいかに検出されるかを示す図である。
【図34B】図34Bは、図34Aから得られる写真画像の図である。
【図35】図35は、電場を印加した場合に時間と共に進展する導電率マップの図である。
【図36】図36は、移動力を印加した場合に時間と共に進展する写真画像の図である。
【図37】図37は、タンパク質分子不在時対タンパク質分子存在時の孔の小さなグループに対する電流の垂直方向(増大)シフトの図である。
【図38】図38は、タンパク質分子不在時対タンパク質分子存在時の孔の小さなグループに対する蛍光屈曲点の水平方向(時間)シフトの図である。
【図39】図39は、孔の小さなグループにおけるタンパク質分子存在時、及び別の孔の小さなグループにおけるタンパク質分子不在時の繰返しデルタ電流測定の図である。
【図40】図40は、孔の小さなグループにおけるタンパク質分子存在時、及び別の孔の小さなグループにおけるタンパク質分子不在時の繰返しデルタ時間測定の図である。
【図41】図41は、孔の小さなグループにおけるタンパク質二元相互作用、及び別の孔の小さなグループにおけるタンパク質二元非相互作用の繰返しデルタ電流測定の図である。
【図42】図42は、孔の小さなグループにおけるタンパク質二元相互作用、及び別の孔の小さなグループにおけるタンパク質二元非相互作用の繰返しデルタ時間測定の図である。
【図43】図43は、図9の有孔材の孔の大集団の概略図である。
【図44】図44は、有孔材における分子種の永久的な捕捉の第一段階の概略図である。
【図45】図45は、有孔材における分子種の永久的な捕捉の第二段階の概略図である。
【図46】図46は、有孔材における永久的に捕捉された分子種の概略図である。
【図47】図47は、有孔材における捕捉された分子種のレーザーによる照明の概略図である。
【図48】図48は、図43の捕捉された分子種の蒸発を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施形態は、既存技術の組合せを独自の方法で使用する。前記既存技術は、スフェロイド、磁場、蛍光、光学、フィルタ技術、ゲル技術、化学、電気化学、クロマトグラフィー、及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)を含む。これらを個別に概観し、その後本発明の種々の実施形態に従った方法を記載する。本特許明細書を通じて、類似参照番号は類似部分の表示に使用される。
【0044】
スフェロイド
【0045】
スフェロイドは以下からのような、広範な製造業者から市販されている:http://www.microspheres−nanospheres.com/
【0046】
前記スフェロイドは50nm〜5000nmの範囲の高精度の直径を有し、ポリスチレン又はポリスチレン/メラミンコポリマーのような種々の材料から製造される。さらに、磁気活性材料を含浸させること、及び蛍光材料を含浸させることができる。さらに、前記粒子は、そこに多数のリガンドが確立された化学作用により結合できるアミン(NH2)又はカルボキシル(COOH)のような誘導体化面を伴って製造できる。これらはタンパク質精製手順で一般的に使用され、その場合特定のタンパク質表面がリガンドに結合し、その後バルク溶液から磁気的に抽出できる。
【0047】
磁場
【0048】
磁場勾配においては、酸化第一鉄の粒子のような磁気モーメントを有する粒子は、単純に磁気モーメントMと勾配強度ナブラBの積である大きさの磁場の収束に向かう力を経験すると考えられる。
【0049】
磁場勾配は電流を運ぶ単純なソレノイドによって発生できる。典型的なソレノイドはソレノイドの端のちょうど外側に常にソレノイドの中心を向く最大磁場勾配の点を有する。それぞれが電流のオフセット正弦波を搬送する、相反するソレノイドの組を使用して、任意の強度及び極性の磁場勾配を発生することができる。
【0050】
蛍光
【0051】
蛍光材料は短波長の光を吸収し、エネルギーをより長波長の光として放出する。生物工学分野で広い用途を見出す市販の蛍光染料は非常に大量に存在する。1つの例はフルオレセインナトリウムで、これは紫外線を吸収して緑みの黄色の光を放出する。フルオレセインは、中性の形態では非蛍光性である。蛍光分子に加えて、量子ドットと呼ばれる新しい種類の材料も蛍光性である。量子ドットは、硫化カドミウム(CdS)又はテルル化カドミウム(CdTe)のような半導体の粒子で構成される。量子ドットは直径が数ナノメートルのオーダーで非常に小さく、きわめて蛍光性である。粒子の表面は、アミン(NH2)又はカルボキシル(COOH)のような種々の材料で誘導体化でき、確立された化学作用により多数のリガンドがそこに結合できる。量子ドットは一般的に顕微鏡染色に使用される。
【0052】
光学
【0053】
蛍光は、蛍光を短波長光(紫外線のような)で励起し、放出されたより長波長の光(可視光のような)を光センサで集めることによって検出できる。紫外線源の例は、水銀電球及びLEDレーザーである。近紫外線には、ブルーレイディスクに一般的に使用される405nmのLEDレーザーが使用される。放出された蛍光は光学レンズ又は光パイプで収集されて光センサに送られてもよい。光センサの例は、光電子増倍管及びデジタルカメラである。光電子増倍管は高い感度及び速度を有し、デジタルカメラは広い領域を測定できる。
【0054】
フィルタ技術
【0055】
トラックエッチングされたポリカーボネート(TEPC)を含む特異な種類の有孔材10は、ミリポア社(Millipore Corp.)、又はワットマン社(Whatman Corp.)等から濾過用に市販されている。
【0056】
TEPCは、平滑なガラス様表面を有し、非常に均一なサイズの貫通孔14によって無作為に穿孔されたポリカーボネート材料のシートを含む。図1A及び1Bは、かかる有孔材10の概略図である。これらの孔14は直径10nm〜5000nmのサイズ、及び材料厚さ6000〜11000nmで入手可能である。当該材料は特許技術のポリカーボネート材料のシートを照射することによって製造される。孔14はかなり平行である。前記材料はわずかな蛍光を示すが、黒く染色されて入手可能である。当該材料は紫外線を強く吸収する。表面は、親水性を付与するため、アルコールに浸漬することで除去可能なポリビニルピロリドンで特別に処理される。孔の密度によっては、孔が重複することもある。
【0057】
ゲル技術
【0058】
技術的に、ゲルは液体が充填された開放架橋構造で構成される。しかし、用語「ゲル」は、本明細書で使用されるとき、その厳密な技術的定義に限定されず、むしろ分析物の拡散の制限に関連するいかなる材料も一般的に指す。一般的なゲルは、ゼラチン、アガロース、又はアクリルアミドから製造される。その開放架橋構造の密度は、ゲルの生成に使用される材料の濃度を調節することによって容易に制御される。ゼラチン又はアガロースから製造されるもののような一部のゲルは融点を持ち、それよりも低温でゲル構造が生成する。アクリルアミドから製造されるもののようなその他のゲルは、化学的に誘発される重合又は紫外線に誘発される重合によって生成できる。これらのゲルは、生物工学分野でタンパク質の複雑な混合物を分離するために、ゲル電気泳動と呼ばれる一般的な手法で、多用されている。この手法では、濃縮されたタンパク質混合物のアリコートがゲルのシートの中央に注入され、その後シートの両端で前記ゲルに電場が印加される。ゲルの開放架橋構造は、本質的には、タンパク質分子がその中を通過できる孔の集まりである。タンパク質分子は一般的に特徴的な電荷及び直径を有することから、電場においては特定の速度でゲルの孔を通って移動する傾向があると考えられる。タンパク質の種類ごとに特異な電荷及び直径を有することから、タンパク質混合物は物理的にその構成成分に分離されるであろう。
【0059】
ゲルの架橋構造が十分に密であれば、小さな分子のみが孔を通過することができ、大きな分子は注入点からまったく移動できないと予想される。それを超えると移動が起こらない分子サイズは、一般的にゲルの排除限界と呼ばれる。ポリアクリルアミドの場合、排除限界を、ほとんどの一般的なタンパク質よりも小さくすることができる。
【0060】
化学
【0061】
アクリルアミド(acryamide)共重合は、周知の反応であり、ゲル電気泳動に使用されるゲルの作製に一般的に使用される。当該重合は、アクリルアミドモノマーをN,N’−メチレンビスアクリルアミド(bis)のような架橋剤と混合し、過硫酸アニオンから生じるようなフリーラジカル及び第三級脂肪族アミンΝ,Ν,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)のような開始剤で触媒することによって調製される。またリボフラビン及び長波長紫外線でも重合できる。ゲルの多孔性を低減するために尿素のような追加試薬を使用してもよい。さらに、積層化学を補佐するためにポリアクリレートのような他のポリマー類を包含してもよい。
【0062】
カルボキシレート誘導体化及びアミン誘導体化は、分子又は表面のような基質に水性試薬との化学的反応を引き起こし、前記基質へのカルボキシレート又はアミン部分の結合を生じるプロセスである。例えば、ポリカーボネート表面は適切な有機アジド類による処理によって誘導体化されて第一級アミン部分を得てもよく、又は強塩基で開かれたそのポリビニルピロリドン表面によって誘導体化されてカルボキシレート部分を形成してもよい。一般的に上記の部分は実質的にバルク溶液に曝露しており、該溶液中でその後種々の目的に使用できる。結合に用いられる化学作用は基質の化学的性質に大きく依存する。
【0063】
ペプチド結合合成は周知の反応であり、ペプチド合成に一般的に使用されている。カルボキシレート部分は1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)で処理されて不安定な反応性o−アシルイソ尿素エステルを生成する。このエステルは第一級アミン部分を反応して安定なアミド結合を形成できる。しかし、このエステルは非常に反応性が高いため、溶媒(水)とも反応してカルボキシル部分を再生成する。これは反応の効率を低下する。前記エステルをN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)と反応させることで改善が可能であり、これは準安定性のアミン反応性NHSエステルを生成する。後者のエステルは水と反応せず、第一級アミン部分のみと反応して安定なアミド結合を生成する。
【0064】
電気化学
【0065】
2つの電極が水溶液中に置かれ、当該電極間に電位が印加された場合、水溶液中に電場が発生する。水は本来H3O+イオンとOH−イオンとにわずかに解離する。この解離生成物は電荷を有することから、電極表面へと移動し、そこで金属が追加の電子を供与又は引抜きし、電流の回路が完成する。水に添加された塩化ナトリウムのようなイオン性の塩はイオン濃度を大幅に高め、はるかに大きな電流の流れを可能にする。種々のイオン性塩が水溶液中に存在する場合(各々が電子移動プロセスの容易さを規定する化学的性質を有する)、電流を監視しながら電極電位をスキャンすることで、水溶液中のイオン性の塩の特性決定が得られる。しばしば、電気化学分野では、電子移動プロセスが非常に困難なイオン性の塩を追加することが有用であり、かかるイオン性の塩は一般的に「支持電解質」と呼ばれる。種々のイオンが金属表面に近い層を形成することから、金属電極表面における電場の構造は非常に複雑である。
【0066】
クロマトグラフィー
【0067】
クロマトグラフィーは、流体媒体中の構成成分の物理的分離であり、適切な検出方法がその後に続く。一般的に、複雑な混合物の濃縮プラグが、混合物の構成成分に弱く結合する材料で被覆された粒子(「固定相」)が充填された細い管(「カラム」)の中をキャリア流(「移動相」)によって押し流される。構成成分が固定相を通過する際に、一部の構成成分は他の構成成分よりも強く結合し、カラムからの溶出がより遅くなる。したがって、カラムからの溶出液は、最初は非結合構成成分からなり、その後結合強度が強くなっていく構成成分が一連となる。紫外吸収のような構成成分の普遍的特性のいくつかを観測する検出装置が、材料がカラムから溶出した際にその存在を表示する。各構成成分を回収するために溶出液をバルブで分流することができる。
【0068】
生物工学分野では、タンパク質の複雑な混合物の分離及び検出にゲル電気泳動が広く使用されている。しかし、当該手法はやや扱いにくく、かなり大量のタンパク質を必要とする。最近、この手法はMudPITとしても知られる「多次元タンパク質同定技術」に置き換えられ始めている。この手法は異なる特性を有するカラムの組合せを、一組の流体バルブと共に使用し、ゲル電気泳動を上回るタンパク質分離を実現する。キャピラリーゾーン電気泳動の使用でも、使用するタンパク質の量を低減できる。
【0069】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)
【0070】
従来の使用法では、MALDIは微視的量の生体試料をガラス又はシリコンウェハ上に滴下し、それを蒸発性化合物と混合する。前記ウェハを乾燥した後、質量分析計のチャンバ内に置く。焦点を絞ったレーザーパルスが各試料を蒸発させ、生じる蒸気が質量分析計のメインチャンバ内でイオン化及び加速される。蒸発中、生体試料はかなりフラグメント化され、フラグメンテーションパターンが質量分析計データから抽出される。この手順は、シーケノム(Sequenom)及びその他の製造業者製の装置を用いて、産業界で広く使用されている。
【0071】
第1の実施形態の概要
【0072】
特別に構築された層状材料が空間的に分離された種々の分析物粒子がロードされたリザーバの組を形成し、前記層状材料が電気化学プローブを用いてスキャンされる。この結果、種々の分析物粒子の特性のマップが得られ、これが生体試料に関する有用な情報を提供できる。
【0073】
本発明の第1の実施形態による方法
【0074】
本発明の第1の実施形態による方法では、TEPCフィルタのような有孔材が、開口部が制限された孔を有する。制御されたマトリックス内の分析物粒子の均質又は不均質な集団がTEPCフィルタの孔にロードされ、電流を用いて外への拡散が測定される。これは分析物粒子の存在、構造変化、及び結合相互作用の尺度である。
【0075】
本発明の方法を、図1〜図43を参照することによって説明する。
【0076】
図1A、図1B及び図2を参照すると、TEPCフィルタ1には、均一サイズの孔が無作為に分布している。図1Aは上面図であり、図1Bは断面図である。TEPCフィルタ1はカルボキシレート部分3で化学的に誘導体化された外面を有してもよい。類似の特性を有する他の材料が代用されてもよい。
【0077】
図3、図4、及び図5を参照すると、二層材料が次のプロセスによって形成される。第一に、均一サイズのスフェロイド4の希釈懸濁物がゲル前駆体(アクリルアミド又は溶融アガロースのような)のマトリックス中に形成される。続いて前記懸濁物を薄肉プラスチックシート5に塗布し、疎水性表面を有する平滑なシリンダ6の周りに巻く。ゲル7が化学、熱、又は光重合によって形成される。化学重合の例を図4に示す。スペーサ粒子4は、ゲル7を均一で既知の厚さにする。重合後、薄肉プラスチックシート5を平滑なシリンダ6から剥離し、ゲル7層とプラスチック5層とからなる二層材料8を作製する。この二層材料の拡大図を図5に示す;スフェロイド4は十分に希薄であるためにこの拡大図には示されていない。二層材料8界面9の化学的性質は、薄肉プラスチックシート5層が後に、物理的又は化学的手段によって容易に除去されるように選択される。ゲル7の外面は、アミノ部分10で化学的に誘導体化されてもよいが、これらはポリアクリルアミドに元々存在する。
【0078】
前記二層材料の代わりに、ゲル前駆体を2つの疎水性平滑板の間に挟んで、重合及び乾燥させてもよい。これは、容易に取扱いできて、必要時に再水和できる、頑強な乾燥ゲルフィルムを形成する。
【0079】
前記二層材料の代わりに透析膜を使用してもよく、透析膜はミリポア(Millipore)又はワットマン(Whatman)のような多数のベンダーから商業的に購入できる。
【0080】
図6、図7、及び図8を参照すると、二層材料8はTEPCフィルタ1に化学結合していてもよい。化学結合機構の一例を図6に示しており、ここでカルボキシレート部分及びアミノ部分は化学的に結合してペプチド結合11を形成する。その他の化学作用で置換されてもよい。図7は、近接するTEPCフィルタ1及び二層材料8であり、カルボキシレート誘導体化された面3とアミノ誘導体化された面10とが互いに向かい合っている。図8は、ペプチド結合11で化学的に結合したTEPCフィルタ1及び二層材料8を示す。
【0081】
図8及び図9を参照すると、薄肉プラスチックシート5が物理的又は化学的手段によって取り除かれ、TEPCフィルタ1に付着したゲル7層のみが残っている。
【0082】
前記化学結合の代わりに、シリンダ周辺を覆うこと及び外側のTEPCフィルタ1層を引っ張ることによって、外部ゲル7層及びTEPCフィルタ1が化学結合なく物理的力によって単に一緒に圧縮されてもよい。
【0083】
前記化学結合の代わりに、TEPCフィルタ1が分析物粒子マトリックスを含む流体と非混和性の導電性流体の表面上に置かれてもよい。
【0084】
図9に示す概略図には可能な多数の変形例があり、その例を図10、図11、図12、図13、図14、図15、及び図16に示す。本方法の残りの部分は、図9の単純な事例に焦点を合わせるが、これらの変形例も適用可能であることは理解されるであろう。
【0085】
図10を参照すると、ゲル7の外面はフルオロフォア12、界面活性剤13、その他の材料、又は材料の組合せで化学的に誘導体化されてもよい。同様に、ゲル7の内面(孔2に面する)又は孔2の内面も化学的に誘導体化されてもよい。
【0086】
図11、図12、及び図13を参照すると、ペプチド結合11が形成される前に、スフェロイド14が孔開口部2に入っている。このスフェロイド14は、孔2の直径よりもわずかに大きい直径を有する。ゲル7層は、スフェロイド14の存在によって窪み、スフェロイド14の周囲に空容積15を形成する。磁場勾配、電場、重力場、又は流体力学的流れからの力のような力16を使用して、スフェロイド14を孔2の開口部内から持ちあげ、スフェロイド14と孔開口部2との間に小さな隙間17を作ってもよい。空容積15はスフェロイド14を短時間加熱して周囲のゲル7を溶融することによって、又はゲル前駆体の飽和した後の化学重合によって取り除かれてもよい。得られる構造を図13に示す。
【0087】
図14及び図15を参照すると、孔2の両端がスフェロイド14でキャップされてもよる。ゲル7が十分に柔軟である場合、スフェロイド14の1つが磁場勾配からの力のような力で取り除かれてもよい。これは、ゲル7に小さな裂け目18を残す。この特定の構成は、活性な保持機構なく材料を孔2内に保持するのに特に有用である。
【0088】
図16を参照すると、ゲルは使用されず、スフェロイド14が磁場勾配16からの力のような力によって適所に保持されている。
【0089】
図9の単純な例に注目すると、当該構造は濃縮分析物粒子を孔2内に収集するために使用されてもよい。図17は、孔2の開放端から孔2を通過し、その後ゲル7を通過する流体の流れ19の概略図である。ゲル7が通過を妨げるほど十分に密な架橋構造を有する場合、流体の流れ19内に懸濁する分析物粒子はゲル7によって濾過されるようになる。かかる分析物粒子の例は、タンパク質20、核酸、ウイルス、原形質構造、量子ドット、大フルオロフォア21、大電解質カチオン、大電解質アニオン、及び大酸化還元試薬である。ゲル7の透水性は、生成時のゲル7内への粒子包含によって低下する場合がある。ゲル7を通過できる粒子の例は、水分子、小電解質カチオン22、小電解質アニオン23、及び小酸化還元試薬である。図18は、孔2内に蓄積した分析物粒子の最終結果の概略図である。
【0090】
孔2に蓄積した分析物粒子が存在すると、流体の流れ19が停止しうる。この点で、蓄積した分析物粒子は外へ拡散し始め、最終的に孔2が空になる。続いて流体の流れ19が回復され、蓄積/拡散サイクルが繰り返される。拡散を弱く制限するゲルを孔2の出口に置き、サイクル性を改善してもよい。拡散を弱く制限するゲルを孔内に置き、拡散時間を延長してもよい。
【0091】
拡散中、孔2内の分析物粒子の移動経路はイオン性粒子と交差しうる。粒子は互いを通過できないことから、互いの周りを回り、イオン性粒子の移動経路を低速化する。この低速化は分析物粒子の存在及びその結合プロセスに依存し、それによってこの方法の基礎を形成する。
【0092】
拡散中、孔2内の分析物粒子は、拡散に加えて移動力(例えば電場から生じる力)により軸方向に進められてもよい。
【0093】
このプロセスは、サイクルの蓄積部分にも当てはまるが、流体の流れ19の力が加わることによって分析が複雑化される。
【0094】
サイクルの拡散又は蓄積部分の間に、粒子運動を変更する目的で流体の流れ19に高周波数の軸方向振動が与えられてもよい。例えば、図15のスフェロイド14は磁気モーメントを有してもよく、磁気的に振動されて分析物粒子を裂け目18を通してポンプ輸送してもよい。別の例では、図9のゲル7の外(又は内)面が圧力脈動を受けて、孔2内の分析物粒子に同様に振動を引き起こしてもよい。
【0095】
拡散に追加される力で孔2内の粒子が軸方向に駆動される機構は多数存在する。こうした機構の一例を図22に例証する。
【0096】
図22を参照すると、ゲル7を横断できる電解質又は酸化還元試薬が、作用電極(−W)、対向電極(C+)、及び参照電極(R)によって発生した電場によってゲル7を通って移動する。
【0097】
拡散に追加される力で孔2内の粒子が軸方向に駆動される機構の例の各々で、移動経路自体が数種類の機構によって低速化されることがある。これらの機構のいくつかの例を図27及び図28に例示する。
【0098】
図27を参照すると、経路に障害物がなければ小電解質カチオン22及び小電解質アニオン23が電場によって直線状に移動できる。しかし、分析物粒子20及び分析物粒子27のような障害物がある場合、カチオン22及びアニオン23は分析物粒子の周りを進む必要があり、イオン性の軸方向移動を低速化する。分析物粒子が結合相互作用を有する場合、当該粒子は大錯体28を形成し、イオン性軸方向移動のさらなる低速化を引き起こす。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)のような典型的なタンパク質は、大きさが約4nm×4nm×14nmである。孔2の直径が50nmのTEPCフィルタ1では、1つのBSAタンパク質分子が孔2の断面積の有意な割合(0.8%〜2.9%)を閉塞し、それによってイオン性粒子の流れをかなり低減すると予想される。
【0099】
図28を参照すると、障害物29、30、及び31それ自体が電荷を有する場合がある。電場を印加すると、前記障害物は電解質又は酸化還元試薬の移動と複雑に相互作用する場合がある。
【0100】
電解質分子又は酸化還元試薬のゲル7を通る透過は、孔2内の障害物特性に依存して、障害物特性の測定を実施する敏感な方法を与える。図31は、電場の印加を作用、対向、及び参照電極と共に例証する。イオン性粒子の流れは両方の障害物及びゲル7が抵抗となる電流を電極内に発生するが、ゲル7の抵抗が比較的一定であることから、この抵抗は測定をサイクル化することによって減算される。
【0101】
試料ロード状態の装置全体を図32に示す。クロマトグラフィーカラム32から溶出した複雑な配列のタンパク質のような分析物粒子の流体の流れがTEPCフィルタ1の特定領域へ流れるよう誘導される。反対側の方が低圧であるため、溶媒及びその他の小分子がTEPCフィルタ1及びゲル7を通過し、TEPCフィルタ1の孔2内に分析物粒子を蓄積する。分析物粒子がクロマトグラフィーカラム32から溶出すると、TEPCフィルタ1の表面がスキャン運動に入る。溶出した種々の分析物粒子はTEPCフィルタ1内の空間的に別個の場所に捕捉される。この操作に続き、2回目のスキャンがクロマトグラフィーカラム32から溶出した種々の分析物粒子に実施されて、TEPCフィルタ1の面積全体に(制御可能な割合の)特異な二成分混合物が多数生じてもよい。さらにスキャンを使用して孔2内の集団に一層の複雑さを追加することができる。これはタンパク質交差反応性の問題の低減について、「サンドイッチアレイ」技術と機能的に同等と考えられる。脂質ミセル、コロイド、固定化材料、又はファージ抗体ディスプレイ技術を孔2に包含し、維持された分析物粒子が当該環境と相互作用できるようにすることも可能である。さらに、孔2の1つの組から分析物粒子を抽出し、それを孔2の別の組に添加することが可能である。
【0102】
測定状態の装置全体を図33に示す。電極33、又は複数の電極を、TEPCフィルタ1表面のような表面全域でスキャンし、電流を測定する。電極及び電流の位置に関する情報をコンダクタンスマップ34に編纂する。電極の構造の例としては、絶縁体に囲まれた露出金属面、及び導電流体が充填された管が挙げられる。
【0103】
図35を参照すると、測定の結果は大部分が一様なコンダクタンスマップ34の組である。領域の大部分は、かなりの移動障害物(例えば分析物粒子)を有する低コンダクタンス領域を除いて一様に導電性である。一様に導電性の領域を基準にしたこれらの低コンダクタンス領域の特性が分析信号の基礎となる。
【0104】
図33を参照すると、測定されるべき領域の制限が、導電性流体が充填されて一端が前記材料のシートと物理的に接触した絶縁管、前記材料シートの表面に適用された孔を有する絶縁シート、又は前記材料シートの表面に適用される絶縁性の水不混和性流体によって実現できる。後者の場合、TEPCフィルタ1のゲル側を加圧すると孔内の水の表面張力によりTEPCフィルタ1の別の表面に沿って孤立した水の隆起が形成され、これが導電性流体が充填された絶縁管でスキャンされてもよい。
【0105】
図37を参照すると、タンパク質が存在する領域、及びタンパク質が存在しない別の領域について、コンダクタンスが時間の関数としてグラフ化されている。電場Eがアクチュエートされると、タンパク質の存在により電流iレベルが垂直(増大)シフトし、これをデルタ電流i測定によって定量化できる。
【0106】
図39を参照すると、理論的結果をタンパク質存在対タンパク質不在で比較している。電場Eは1サイクル内で繰返しアクチュエートされ、繰返しのデルタ電流iの測定を与える。より長い時間尺度では、動水圧Pもサイクル内で繰返しアクチュエートされる。増大した圧力がタンパク質の蓄積を引き起こすときに、デルタ電流が上昇する。圧力が解放されると、タンパク質は外へ拡散し、デルタ電流は低下する。それゆえ動水圧をサイクル化すると、平均することでタンパク質の存在を敏感に検出できる連続的なデルタ電流ピークが得られる。
【0107】
図41を参照すると、理論的結果をタンパク質結合存在対タンパク質非結合で比較している。別のタンパク質に結合するタンパク質は、立体効果がより大きく、大きな障害物となり、拡散速度がより低下する;これは、振幅の大きい一連の連続的デルタ電流iピークを生じる。別のタンパク質に結合しないタンパク質は、立体効果がより小さく、大きな障害物とならず、拡散速度が低下しない;これは、振幅の小さい一連の連続的デルタ電流ピークを生じる。複数のタンパク質が存在することから、このより小さな振幅は、複数のピークを有する場合があることに注意する。
【0108】
測定結果の要約を図43に示す。当該測定は、TEPCフィルタ1の領域全体について分析物粒子の特性のマップを与える。特定領域38は、当該方法を実施した科学者が興味を持つ測定特性を有するであろう。これらの領域の内容物の同定は、質量分析法によって、又は当該内容物をもともと送達したクロマトグラフィーシステムの知識によってなどの種々の手法によって実施できる。
【0109】
実質的に同じ機能が、TEPC/ゲル構造の代わりに、有孔単層フィルムのような類似の構造の使用によって達成されてもよく、その場合拡散は軸方向でなく半径方向である。
【0110】
第2の実施形態の概要
【0111】
特別に構築された層状材料が空間的に分離された種々の分析物粒子がロードされたリザーバの組を形成し、前記層状材料が蛍光放出について結像する。この結果、種々の分析物粒子の特性のマップが得られ、これが生体試料に関する有用な情報を提供できる。
【0112】
本発明の第2実施形態による方法
【0113】
本発明の第2実施形態による方法では、TEPCフィルタのような有孔材が、開口部が制限された孔を有する。制御されたマトリックス内の分析物粒子の均質又は不均質な集団がTEPCフィルタの孔にロードされ、蛍光を用いて外への拡散を測定する。これは分析物粒子の存在、構造変化、及び結合相互作用の尺度である。
【0114】
本発明の方法を、図1〜43を参照して説明する。
【0115】
図1A、図1B及び図2を参照すると、TEPCフィルタ1には、均一サイズの孔が無作為に分布している。図1Aは上面図であり、図1Bは断面図である。TEPCフィルタ1はカルボキシレート部分3で化学的に誘導体化された外面を有してもよい。類似の特性を有する他の材料が代用されてもよい。
【0116】
図3、図4、及び図5を参照すると、二層材料が次のプロセスによって形成される。第一に、均一サイズのスフェロイド4の希釈懸濁物がゲル前駆体(アクリルアミド又は溶融アガロースのような)のマトリックス中に形成される。続いて前記懸濁物を薄肉プラスチックシート5に塗布し、疎水性表面を有する平滑なシリンダ6の周りに巻く。ゲル7が化学、熱、又は光重合によって形成される。化学重合の例を図4に示す。スペーサ粒子4は、ゲル7を均一で既知の厚さにする。重合後、薄肉プラスチックシート5を平滑なシリンダ6から剥離し、ゲル7層とプラスチック5層とからなる二層材料8を作製する。この二層材料の拡大図を図5に示す;スフェロイド4は十分に希薄であるためにこの拡大図には示されていない。二層材料8界面9の化学的性質は、薄肉プラスチックシート5層が後に、物理的又は化学的手段によって容易に除去されるように選択される。ゲル7の外面は、アミノ部分10で化学的に誘導体化されてもよいが、これらはポリアクリルアミドに元々存在する。
【0117】
前記二層材料の代わりに、ゲル前駆体を2つの疎水性平滑板の間に挟んで、重合及び乾燥させてもよい。これは、容易に取扱いできて、必要時に再水和できる、頑強な乾燥ゲルフィルムを形成する。
【0118】
前記二層材料の代わりに透析膜を使用してもよく、透析膜はミリポア(Millipore)又はワットマン(Whatman)のような多数のベンダーから商業的に購入できる。
【0119】
図6、図7、及び図8を参照すると、二層材料8はTEPCフィルタ1に化学結合していてもよい。化学結合機構の一例を図6に示しており、ここでカルボキシレート部分及びアミノ部分は化学的に結合してペプチド結合11を形成する。その他の化学作用で置換されてもよい。図7は、近接するTEPCフィルタ1及び二層材料8であり、カルボキシレート誘導体化された面3とアミノ誘導体化された面10とが互いに向かい合っている。図8は、ペプチド結合11で化学的に結合したTEPCフィルタ1及び二層材料8を示す。
【0120】
図8及び図9を参照すると、薄肉プラスチックシート5が物理的又は化学的手段によって取り除かれ、TEPCフィルタ1に付着したゲル7層のみが残っている。
【0121】
前記化学結合の代わりに、シリンダ周辺を覆うこと及び外側のTEPCフィルタ1層を引っ張ることによって、ゲル7層及びTEPCフィルタ1が化学結合なく物理的力によって単に一緒に圧縮されてもよい。
【0122】
前記化学結合の代わりに、TEPCフィルタ1が分析物マトリックスを含む流体と非混和性の導電性流体の表面上に置かれてもよい。
【0123】
図9に示す概略図には可能な多数の変形例があり、その例を図10、図11、図12、図13、図14、図15、及び図16に示す。本方法の残りの部分は、図9の単純な事例に焦点を合わせるが、これらの変形例も適用可能であることは理解されるであろう。
【0124】
図10を参照すると、ゲル7の外面はフルオロフォア12、界面活性剤13、その他の材料、又は材料の組合せで化学的に誘導体化されてもよい。同様に、ゲル7の内面(孔2に面する)又は孔2の内面も化学的に誘導体化されてもよい。
【0125】
図11、図12、及び図13を参照すると、ペプチド結合11が形成される前に、スフェロイド14が孔開口部2に入っている。このスフェロイド14は、孔2の直径よりもわずかに大きい直径を有する。ゲル7層は、スフェロイド14の存在によって窪み、スフェロイド14の周囲に空容積15を形成する。磁場勾配、電場、重力場、又は流体力学的流れからの力のような力16を使用して、スフェロイド14を孔2の開口部内から持ちあげ、スフェロイド14表面と孔開口部2との間に小さな隙間17を作ってもよい。空容積15はスフェロイド14を短時間加熱して周囲のゲル7を溶融することによって、又はゲル前駆体の飽和した後の化学重合によって取り除かれてもよい。得られる構造を図13に示す。
【0126】
図14及び図15を参照すると、孔2の両端がスフェロイド14でキャップされてもよる。ゲル7が十分に柔軟である場合、スフェロイド14の1つが磁場勾配からの力のような力で取り除かれてもよい。これは、ゲル7に小さな裂け目18を残す。この特定の構成は、活性な保持機構なく材料を孔2内に保持するのに特に有用である。
【0127】
図16を参照すると、ゲルは使用されず、スフェロイド14は磁場勾配16による力のような力で保持される。
【0128】
図9の単純な例に注目すると、当該構造は濃縮分析物粒子を孔2内に収集するために使用されてもよい。図17は、孔2の開放端から孔2を通過し、その後ゲル7を通過する流体の流れ19の概略図である。ゲル7が通過を妨げるほど十分に密な架橋構造を有する場合、流体の流れ19内に懸濁する分析物粒子はゲル7によって濾過されるようになる。かかる分析物粒子の例は、タンパク質20、核酸、ウイルス、原形質構造、量子ドット、大フルオロフォア21、大電解質カチオン、大電解質アニオン、及び大酸化還元試薬である。ゲル7の透水性は、生成時のゲル7内への粒子包含によって低下する場合がある。ゲル7を通過できる粒子の例は、水分子、小電解質カチオン22、小電解質アニオン23、及び小酸化還元試薬である。図18は、孔2内に蓄積した分析物粒子の最終結果の概略図である。
【0129】
孔2に蓄積した分析物粒子が存在すると、流体の流れ19が停止しうる。この点で、蓄積した分析物粒子は外へ拡散し始め、最終的に孔2が空になる。続いて流体の流れ19が回復され、蓄積/拡散サイクルが繰り返される。拡散を弱く制限するゲルを孔2の出口に置き、サイクル性を改善してもよい。拡散を弱く制限するゲルを孔内に置き、拡散時間を延長してもよい。
【0130】
拡散中、孔2中の分析物粒子の移動経路はイオン性又は蛍光粒子と交差しうる。粒子は互いを通過できないことから、互いの周りを回り、イオン性又は蛍光粒子の移動経路を低速化する。この低速化は分析物粒子の存在及びその結合プロセスに依存し、それによってこの方法の基礎を形成する。
【0131】
拡散中、孔2内の分析物粒子は、拡散に加えて移動力(例えば電場から生じる力)により軸方向に進められてもよい。
【0132】
このプロセスは、サイクルの蓄積部分にも当てはまるが、流体の流れ19の力が加わることによって分析が複雑化される。
【0133】
サイクルの拡散又は蓄積部分の間に、粒子運動を変更する目的で流体の流れ19に高周波数の軸方向振動が与えられてもよい。例えば、図15のスフェロイド14は磁気モーメントを有してもよく、磁気的に振動されて大分析物粒子を裂け目18を通してポンプ輸送してもよい。別の例では、図9のゲル7の外(又は内)面が圧力脈動を受けて、孔2内の分析物粒子に同様に振動を引き起こしてもよい。
【0134】
拡散に追加される力で孔2内の粒子が軸方向に駆動される機構は多数存在する。これらの機構の例を図19、図20、図21、及び図23に例証する。
【0135】
図19を参照すると、ゲル7を横断できないフルオロフォアが、作用電極(−W)、対向電極(C+)、及び参照電極(R)によって発生された電場によって内部ゲル7表面に向かって(又は当該表面から離れて)移動する。
【0136】
図20を参照すると、ゲル7を横断できないフルオロフォアが、磁気勾配によって内部ゲル7表面に向かって(又は当該表面からから離れて)移動する。
【0137】
図21を参照すると、ゲル7を横断できないフルオロフォアが、重力場によって内部ゲル7表面に向かって(又は当該表面からから離れて)移動する。
【0138】
図23を参照すると、ゲル7を横断できない大電解質カチオン24、大電解質アニオン25、又は酸化還元試薬が、電場によって内部ゲル7表面及び外部ゲル7表面に向かって(又は当該表面からから離れて)移動し、コンデンサを作る。
【0139】
前記コンデンサは、図24、図25、及び図26の追加説明を是認する挙動をする。
【0140】
図24を参照すると、孔2に対して軸方向の電場は複雑な構造を有する。この複雑な構造は、通常の電気化学的研究で金属電極付近に存在する電場に類似している。バルク溶液中で、ゲル7の外面から離れた場所では、電場は小さく距離による有意な変化はない。ゲル7の外面に近づくと、電解質は濃度増大を示し、電場の指数関数的な上昇を引き起こす;これはグイ・チャップマン層と呼ばれる。ゲル7の外面に極めて近くなると、電解質は交互電荷の二重層を形成する;これは一般的にヘルムホルツ層と呼ばれる。界面活性剤分子13の存在は、ヘルムホルツ層内での場の形成を補佐する場合がある。ゲル7内へ前進を続けると、電場は鎮静化する。内面でゲル7を出たとき、電場は外面の構造を模倣した構造を有する。
【0141】
図25を参照すると、外部ゲル7面のヘルムホルツ層における強力な電場により、電子のような電荷が電解質(又は好適な酸化還元試薬)アニオン25(又はカチオン)から表面に結合するフルオロフォア12に移動される。分子25はその電荷を移動した後、別の分子26になる。フルオロフォア12は前記電荷移動によって変化する蛍光特性を有する。例えば、非帯電状態のフルオレセインは非蛍光性であるが、負に帯電すると激しい蛍光性になる。
【0142】
拡散に追加される力で孔2内の粒子が軸方向に駆動される機構の例の各々で、移動経路自体が数種類の機構によって低速化されることがある。これらの機構のいくつかの例を図26、図27及び図28に例示する。
【0143】
図26を参照すると、経路に障害物がなければフルオロフォア21が移動力(電場、磁気勾配、又は重力場からの力のような)によって直線状に移動できる。しかし、分析物粒子20及び分析物粒子27のような障害物がある場合、フルオロフォア21は分析物粒子の周りを進む必要があり、フルオロフォアの軸方向移動が低速化する。分析物粒子が結合相互作用を有する場合、当該粒子は大錯体28を形成し、フルオロフォア軸方向移動のさらなる低速化を引き起こす。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)のような典型的なタンパク質は、大きさが約4nm×4nm×14nmである。孔2の直径が50nmのTEPCフィルタ1では、1つのBSAタンパク質分子が孔2の断面積の有意な割合(0.8%〜2.9%)を閉塞し、それによってフルオロフォアの流れをかなり低減すると予想される。
【0144】
図27を参照すると、経路に障害物がなければ大電解質カチオン24及び大電解質アニオン25が電場によって直線状に移動できる。しかし、分析物粒子20及び分析物粒子27のような障害物がある場合、カチオン24及びアニオン25は分析物粒子の周りを進む必要があり、イオン性の軸方向移動を低速化する。分析物粒子が結合相互作用を有する場合、当該粒子は大錯体28を形成し、イオン性軸方向移動のさらなる低速化を引き起こす。
【0145】
図28を参照すると、障害物29、30、及び31それ自体が電荷を有する場合がある。電場を印加すると、前記障害物は電解質又は酸化還元試薬の移動と複雑に相互作用する場合がある。
【0146】
ゲル7近傍におけるフルオロフォアの蓄積又は活性化は、孔2内の障害物特性に依存して、障害物特性の測定を実施する敏感な方法を提供する。図29及び図30は、フルオロフォアへの紫外線適用及びその結果放出される可視光線を例証する。放出される可視光線の強度はゲル7の近傍における活性フルオロフォアの濃度に依存する。EPCフィルタ1のポリカーボネート材料が紫外線を強力に吸収することから、孔2の下方に離れて位置するフルオロフォアは蛍光を発さない。この方法の最大の利点は分析物粒子をフルオロフォアで標識する必要性がなくなることであるが、フルオロフォアで標識された分析物粒子を包含することは本方法の範囲内であることに注意する。
【0147】
材料ロード状態の装置全体を図32に示す。クロマトグラフィーカラム32から溶出した複雑な配列のタンパク質のような分析物の流体の流れがTEPCフィルタ1の特定領域へ流れるよう誘導される。反対側が低圧であるため、溶媒及びその他の小分子がTEPCフィルタ1及びゲル7を通過し、TEPCフィルタ1の孔2内に分析物粒子を蓄積する。分析物粒子がクロマトグラフィーカラム32から溶出すると、TEPCフィルタ1の表面がスキャン運動に入る。溶出した種々の分析物粒子はTEPCフィルタ1内の空間的に別個の場所に捕捉される。この操作に続き、2回目のスキャンがクロマトグラフィーカラム32から溶出した種々の分析物粒子に実施されて、TEPCフィルタ1の面積全体に(制御可能な割合の)特異な二成分混合物が多数生じてもよい。さらにスキャンを使用して、孔2内の集団に一層の複雑さを追加できる。これはタンパク質交差反応性の問題の低減について、「サンドイッチアレイ」技術と機能的に同等と考えられる。脂質ミセル、コロイド、固定化材料、又はファージ抗体ディスプレイ技術を孔2に包含し、維持された分析物粒子が当該環境と相互作用できるようにすることも可能である。さらに、孔2の1つの組から分析物粒子を抽出し、それを孔2の別の組に添加することが可能である。
【0148】
測定状態の装置全体を図34に示す。紫外線のような蛍光励起光のビームをゲル7表面のような表面に向ける。可視光線のような蛍光放出光をレンズ35又は光パイプ、及びデジタルカメラのような光センサ36によって収集する。カメラからの情報を写真画像37に編纂する。
【0149】
図36を参照すると、測定の結果は、移動力(電場、磁場勾配、又は重力場のような)が印加されたときの写真画像37の一連の変化である。最初、写真画像は比較的暗い。短い時間の後、かなりの移動障害物(例えば分析物粒子)を有する数個の遅延領域を除く領域の大部分は蛍光性である。しかし、間もなく、前記遅延領域で移動が完了すると、画像の全領域が一様に蛍光性となる。非遅延領域を基準にしたこれらの遅延領域の時間的特性が、分析信号の基礎となる。
【0150】
図38を参照すると、タンパク質が存在する領域、及びタンパク質が存在しない別の領域について、蛍光が時間の関数としてグラフ化されている。電場Eがアクチュエートされると、タンパク質の存在によりS字曲線内を水平方向(時間方向)にシフトし、これをデルタ時間t測定によって定量化できる。
【0151】
図40を参照すると、理論的結果をタンパク質存在対タンパク質不在で比較している。移動力はサイクル内で繰返しアクチュエートされ、繰返しのデルタ時間tの測定値を与える。より長い時間尺度では、動水圧Pもサイクル内で繰返しアクチュエートされる。増大した圧力がタンパク質の蓄積を引き起こすときに、デルタ時間が上昇する。圧力が解放されると、タンパク質は外へ拡散し、デルタ時間は低下する。それゆえ動水圧をサイクル化すると、平均することでタンパク質の存在を敏感に検出できる連続的なデルタ時間ピークが得られる。
【0152】
図42を参照すると、理論的結果をタンパク質結合存在対タンパク質非結合で比較している。別のタンパク質に結合するタンパク質は、立体効果がより大きく、大きな障害物となり、拡散速度がより低下する;これは、振幅の大きい一連の連続的デルタ時間tピークを生じる。別のタンパク質に結合しないタンパク質は、立体効果がより小さく、大きな障害物とならず、拡散速度が低下しない;これは、振幅の小さい一連の連続的デルタ時間ピークを生じる。複数のタンパク質が存在することから、このより小さな振幅は、複数のピークを有する場合があることに注意する。
【0153】
測定結果の要約を図43に示す。当該測定は、TEPCフィルタ1の領域全体について分析物粒子の特性のマップを与える。特定領域38は、当該方法を実施した科学者が興味を持つ測定特性を有するであろう。これらの領域の内容物の同定は、質量分析法によって、又は当該内容物をもともと送達したクロマトグラフィーシステムの知識によってなどの種々の手法によって実施できる。
【0154】
実質的に同じ機能が、TEPC/ゲル構造の代わりに、有孔単層フィルムのような類似の構造の使用によって達成されてもよく、その場合拡散は軸方向でなく半径方向である。
【0155】
第3の実施形態の概要
【0156】
特別に構築された層状材料が空間的に分離された種々の分析物粒子がロードされたリザーバの組を形成し、前記層状材料が質量分析計によってサンプリングされる。この結果、種々の分析物粒子の特性のマップが得られ、これが生体試料に関する有用な情報を提供できる。
【0157】
本発明の第3の実施形態による方法
【0158】
本発明の第3の実施形態による方法では、TEPCフィルタ(又は機能的に同等の構造)の孔が開口部で制限される。制御されたマトリックス内の均質又は不均質な集団がTEPCフィルタの孔にロードされ、当該孔の端は、孔の端部に強制的に詰められたスフェロイドによって緊密にキャップされる。前記集合体が真空チャンバにロードされ、レーザービームに標的とされ、生じる蒸気が質量分析チャンバに誘導される。イオン化及び質量/電荷検出は、分析物粒子の同定手段を与える。
【0159】
本発明の方法を、図44〜図48を参照することによって説明する。
【0160】
図44を参照すると、孔の両端にスフェロイド14を有することによって、ある組成の分析物粒子20、22、及び23がTEPCフィルタ1の孔2内に封入されている。
【0161】
図45及び図46を参照すると、2つの平滑なローラーの間でTEPCフィルタ1を緊密に圧搾して圧縮力39を作用させることで、各スフェロイド14が孔2の両端を密栓する。TEPCフィルタ1はその後予備装置から取り除くことができ、分析物粒子を含有する図46に示す安定な材料が得られる。
【0162】
図47を参照すると、前記安定な材料が真空チャンバに入れられる。孔2内に分析物粒子を含有する水性マトリックスは、孔2を密栓して水性マトリックスを封止するスフェロイド14によって真空から保護される。薄いポリマーフィルムの被覆によってさらなる封止が提供されてもよい。その後、強力で焦点を絞ったレーザービーム40が孔2に向けられる。
【0163】
図48を参照すると、レーザービームはTEPCフィルタ1の孔2の上方のストッパを蒸発させ、その結果水性マトリックスが外の真空内へと爆発し、気体として分散する。これは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)分析に類似している。しかし、生体試料ははるかに小さい熱的応力を受けており、より複雑でないフラグメンテーションパターンを生じる。この複雑さの低下は分析的に有用となる場合がある。
【0164】
要約
【0165】
本方法の範囲は、ナノスケールリザーバの特性を用いた分析物粒子の検出、特性決定、及び同定、並びに分析物粒子が関与する相互作用の特性決定のタスクを含む。
【0166】
上記のタスクを実施するための現在の方法は、標識手法及び交差反応性からの干渉のような種々の欠陥に悩まされている。これらの欠陥が排除される。さらに、本方法はきわめて低濃度の分析物粒子の分析に有用である。
【0167】
これらの方法が有用と考えられる具体的な分野は、生物工学におけるタンパク質相互作用の測定である。各生体系で使用されるタンパク質の数は膨大であり、それが多くの要因に依存して複雑なネットワーク内で相互作用する。疾患はこのネットワークを歪め、構成成分及び相互作用経路を追加又は削除する。これらの系の理解は、疾患の早期診断、及び薬物療法による系の化学的修復の道を可能にする。これらの系で最も数が多く安定なタンパク質は部分的に研究されているが、さらなる研究がかなり必要である。本明細書に記載の方法のような新規の及びより強力なツールを医学研究者のレパートリーに追加することは、タンパク質ネットワークの理解を深め、新たな薬物療法の開発を可能にすると考えられる。
【0168】
本明細書で使用される用語「粒子」は、分子、細胞、多細胞構造物、細胞内構成成分、ウイルス、プリオン、タンパク質、ポリマー、イオン、コロイド、及びフルオロフォアを包含する。粒子は懸濁又は溶解されてもよい。粒子は必ずしも生体関連である必要はない。
【0169】
本明細書で使用される用語「分析物」は、測定されるべき粒子を表す。
【0170】
本明細書で使用される用語「ゲル」は、厳密な技術的定義に限定されるのでなく、分析物粒子の拡散の制限に関係するいかなる材料も一般的に包含する。用語「ゲル」は、ゼラチン、アガロース、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、透水性ポリマー、透水性コポリマー、デンプン、エアロゲル、コロジオン、透析膜、不混和性流体、化学修飾された形態の上記材料のいずれか、粒子が包埋された上記材料のいずれか、及び上記材料のいずれかの組合せを包含することを意図するがこれらに限定されるものではない。
【0171】
本明細書で使用される用語「不混和性流体」は、分析物粒子マトリックスに不混和性の流体を包含する。
【0172】
本明細書で使用される用語「大」は、TEPCフィルタの孔の端部で、ゲルによる制限のような制限を通過することができない粒子を表す。本明細書で使用される用語「小」は、TEPCフィルタの孔の端部で、ゲルによる制限のような制限を通過することができる粒子を表す。
【0173】
本明細書で使用される用語「力」は、電場から生じる力、磁場勾配から生じる力、重力場から生じる力、向心力、遠心力、動水圧から生じる力、静水圧から生じる力、又はかかる力の組合せを包含する。
【0174】
電場は、イオン種又は酸化還元種との直接的な電極接触なく容量的に発生されてもよい。必要な電場を実現するために必要に応じて複数の電極の組を使用してもよい。例えば、強力な移動力を作用させるために1組の電極を使用し、同時に分析物粒子測定のために別の電極の組を使用してもよい。
【0175】
電流の測定は、抵抗、コンダクタンス、インピーダンス、静電容量、及びインダクタンス及びこれらの組合せの測定を構成するように構築されてもよい。例えば、脂質ミセル、ホールセル、又はインピーダンス境界を有するその他の材料の特性決定が、静電容量測定によって補佐されてもよく、キラル分析物の特性決定がインダクタンス測定によって補佐されてもよい。
【0176】
分析物粒子は、標準的なクロマトグラフィー手法に加えて、無傷細胞の局所破断によって又はその他の手法によって装置に送達されてもよい。
【0177】
前記TEPC材料、またはその機能的同等品の孔又は穿孔は、個々の細胞に密に嵌合するようなサイズとされてもよく、その結果電気的インピーダンス及び静電容量が主に細胞のバルクを通じて決定される。
【0178】
本明細書に記載の方法は、一般的に「ラボオンチップ」技術と呼ばれる従来のマイクロチャネルアレイ技術と組合せられてもよい。
【0179】
本発明は特定の好ましい実施形態を参照して説明されているが、請求項によって定義される本発明の範囲内で他の追加、削除、置換、修正、及び改善を実施できることを当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物粒子の存在、特性、及び相互作用を検出する方法であって、
a.実質的に類似した直径の多数の貫通孔を有する材料のシートを提供する工程と、
b.前記材料の少なくとも1つの面の孔開口部を制限する工程と、
c.分析物粒子を前記孔の分集団に挿入する工程と、
d.前記分析物粒子を含有する貫通孔を通る電場を印加する工程と、
e.前記分析物粒子の拡散速度の指標である時間に伴う電流の流れの変化を測定する工程とを含み、
その際、前記分析物粒子の拡散速度が分析物粒子の存在、特性、及び相互作用の尺度を提供する、方法。
【請求項2】
前記材料のシートが、以下:実質的に電気的に絶縁している;実質的に化学的に不活性である;500nm〜1000000nmの範囲の厚さを有する;1nm〜10cmの範囲の厚さを有する;直径10nm〜5000nmの貫通孔を有する;直径1nm〜1cmの貫通孔を有する;化学的に誘導体化された内面を有する貫通孔を有する;化学的に誘導体化された外面を有する;ゲルが充填された孔を有する特性からなる特性群より選択される特性を有する材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料のシートが、ポリカーボネート、トラックエッチングされたポリカーボネート、多数の孔が穿孔されたポリマー、多数の孔が化学エッチングされたポリマー、多数の孔が穿孔されたガラス、多数の孔が化学エッチングされたガラス、有孔ポリマーフィルム、有孔単層フィルム、及び有孔多層フィルムからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記孔開口部を前記材料のシートの表面と接触するゲルの層によって制限することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲルが、ゼラチン、アガロース、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、透水性ポリマー、透水性コポリマー、デンプン、エアロゲル、コロジオン、透析膜、分析物粒子マトリックス不混和性流体、化学修飾された形態の上記材料のいずれか、粒子が包埋された上記材料のいずれか及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記貫通孔を通る流体の流れの実質的な制限を引き起こすのに十分な直径を有するスフェロイドを実質的に使用して前記孔開口部を制限する工程と、電場の印加;磁場勾配の印加;重力場の印加;向心力の印加;遠心力の印加;動水圧の印加;静水圧の印加;化学結合;及びゲルマトリックスの使用からなる群より選択される手段によって前記スフェロイドを実質的に固定された位置に保持する工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スフェロイドを前記ゲルマトリックスから除去する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
測定されている拡散速度に十分な速度で、前記薄いシートの選択された領域を通る電流を測定する能力のある電流計を用いて前記電流の流れを測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記選択領域が、一端が前記材料のシートと物理的に接触した絶縁管、前記材料のシートの表面に適用された孔を有する絶縁シート、及び前記材料のシートの表面に適用される絶縁性の水不混和性流体からなる群より選択される手段によって選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分析物粒子の存在、特性、及び相互作用を検出する方法であって、
a.実質的に類似した直径の多数の貫通孔を有する材料のシートを提供する工程と、
b.前記材料の少なくとも1つの面の孔開口部を制限する工程と、
c.分析物粒子を前記孔の分集団に挿入する工程と、
d.前記分析物粒子を含有する前記貫通孔に移動力を軸方向に通過させる工程と、
e.前記分析物粒子の拡散速度の指標である時間に伴う蛍光の変化を測定する工程とを含み、
その際、前記分析物粒子の拡散速度が分析物粒子の存在、特性、及び相互作用の尺度を提供する、方法。
【請求項11】
前記材料のシートが、以下:実質的に電気的に絶縁している、実質的に化学的に不活性である、200nm〜10000000nmの範囲の厚さを有する、1nm〜10cmの範囲の厚さを有する、直径10nm〜5000nmの貫通孔を有する、直径1nm〜1cmの貫通孔を有する、化学的に誘導体化された内面を有する貫通孔を有する、化学的に誘導体化された外面を有する、ゲルが充填された孔を有する特性からなる特性群より選択される特性を有する材料を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記材料のシートが、ポリカーボネート、トラックエッチングされたポリカーボネート、多数の孔が穿孔されたポリマー、多数の孔が化学エッチングされたポリマー、多数の孔が穿孔されたガラス、多数の孔が化学エッチングされたガラス、有孔ポリマーフィルム、有孔単層フィルム、及び有孔多層フィルムからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記孔開口部を前記材料のシートの表面と接触するゲルの層によって制限することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲルが、ゼラチン、アガロース、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、透水性ポリマー、透水性コポリマー、デンプン、エアロゲル、コロジオン、透析膜、分析物粒子マトリックス不混和性流体、化学修飾された形態の上記材料のいずれか、粒子が包埋された上記材料のいずれか及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記貫通孔を通る流体の流れの実質的な制限を引き起こすのに十分な直径を有するスフェロイドを使用して前記孔開口部を制限する工程と、電場の印加、磁場勾配の印加、重力場の印加、向心力の印加、遠心力の印加、動水圧の印加、静水圧の印加、化学結合、及びゲルマトリックスの使用からなる群より選択される手段によって前記スフェロイドを適所に保持する工程とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記スフェロイドを前記ゲルマトリックスから除去する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記移動力が、電場から生じる力、磁場勾配から生じる力、重力場から生じる力、向心力、遠心力、動水圧から生じる力、静水圧から生じる力、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光が、測定されている拡散速度に十分な速度で、前記薄いシートの選択された領域の蛍光を測定することが可能な光度測定システムによって測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
分析物粒子の同定方法であって、
a.実質的に類似した直径の多数の貫通孔を有する材料のシートを提供する工程と、
b.前記材料の少なくとも1つの面の孔開口部を制限する工程と、
c.分析物粒子を前記孔の分集団に挿入する工程と、
d.前記孔開口部を実質的に閉鎖する工程と、
e.前記材料のシートを質量分析計に挿入する工程と、
f.前記材料のシートの選択領域をアブレーションする工程と、
g.得られるアブレーション生成物をイオン化する工程と、
h.得られるイオンの質量/電荷比を測定する工程とを含み、
その際、前記質量/電荷比が分析物粒子のカチオンの同定手段を提供する、方法。
【請求項20】
前記孔開口部が実質的に閉鎖するように前記孔開口部の入口にスフェロイドを圧縮することによって前記孔開口部を制限する工程を含む、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33A−33C】
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【図34A−34B】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図4】
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【図6】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公表番号】特表2013−520655(P2013−520655A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553966(P2012−553966)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2011/024882
【国際公開番号】WO2011/106198
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512143246)
【Fターム(参考)】