生体分子検出装置及びそれを用いた生体分子検出方法
【課題】検出用プローブが容易に固定化でき、暗箱等を必要とせず簡便に使用できる生体分子検出素子を提供する。
【解決手段】ソース32、ドレイン33間のゲート絶縁物の表面に導電性電極27を設けた絶縁ゲート電界効果トランジスタの導電性電極27の表面に生体分子検出用プローブ28を固定化する。導電性電極27以外の部分は、遮光部材で覆われており、光の影響はない。測定の際には、表面に生体分子検出用プローブ28を固定化した導電性電極27と参照電極25を測定セル29中のバッファー溶液30中に配置し、参照電極25に電源31により矩形波を印加し、バッファー溶液30中に含まれるDNAやタンパク等の測定対象物と生体分子検出用プローブ28との結合の前後で変化する応答波形、すなわちソース32とドレイン33との間を流れる電流値の変化を検出する。
【解決手段】ソース32、ドレイン33間のゲート絶縁物の表面に導電性電極27を設けた絶縁ゲート電界効果トランジスタの導電性電極27の表面に生体分子検出用プローブ28を固定化する。導電性電極27以外の部分は、遮光部材で覆われており、光の影響はない。測定の際には、表面に生体分子検出用プローブ28を固定化した導電性電極27と参照電極25を測定セル29中のバッファー溶液30中に配置し、参照電極25に電源31により矩形波を印加し、バッファー溶液30中に含まれるDNAやタンパク等の測定対象物と生体分子検出用プローブ28との結合の前後で変化する応答波形、すなわちソース32とドレイン33との間を流れる電流値の変化を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質、特にDNAやタンパク質を非修飾で計測する検出装置及びそれを用いた検出方法に関し、特に電界効果型トランジスタを用いた検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の塩基配列解析技術の著しい進歩により、ヒトゲノムの全塩基配列がほぼ解析され、そのDNA塩基配列情報を医療等に幅広く利用しようとする動きが活発である。今後は生体中における遺伝子の発現状態を明らかにすることにより、個人レベルの疾患や個人の体質が遺伝子レベルで解明され、個人の体質に合わせたテーラーメイド医療が大きく発展すると期待されている。さらに、医療や医薬品以外に農産物の品種改良等の広範囲な分野で飛躍的な発展が進むものと思われる。これらの発展の基礎となるのが、塩基配列情報に加えて遺伝子発現情報や機能情報である。現在、DNAチップを用いて大規模に遺伝子の機能及び発現解析が行われ、データベースが構築されつつある。しかし、現状のDNAチップは、蛍光検出法を基本原理としているので、レーザ光源や複雑な光学系を必要とし、計測システムが大型で高価であった。これらの装置は、大量のサンプル処理には適しているが、少数のサンプルを小規模な測定現場で測定することには適していない。そのため、今後の需要が増大する小規模な測定現場に適した小型で、操作が簡便な測定装置が望まれていた。
【0003】
これらの要求に応える方式として、酸化・還元標識物質を用いた電流検出方式のDNAチップや、トランジスタの電気特性を利用した表面電位検出方式のDNAセンサが報告されている。これらの電気的な計測を用いるDNAチップは、レーザ光源や複雑な光学系を必要とせず、装置の小型化が容易である。
【0004】
酸化・還元標識物質を用いた電流検出方式は、ターゲットDNAがDNAプローブへ結合(ハイブリダイゼーション)して形成された2本鎖DNAの間に酸化・還元物質がインターカレーションする性質を用いている。ターゲットDNAとDNAプローブの結合(ハイブリダイゼーション)の有無を、インターカレーションした酸化・還元物質と金属電極との間の電子の授受を電流変化として検出(すなわち、酸化・還元電流の検出)することにより判定する(Analytical Chemistry 66, (1994) 3830-3833)。
【0005】
一方、トランジスタの電気特性を利用した表面電位検出方式は、ソース電極とドレイン電極の上に形成されたゲート絶縁層にDNAプローブを固定化し、ターゲットDNAのDNAプローブへの結合(ハイブリダイゼーション)による絶縁膜上の表面電位(つまり、表面電荷密度)をソース電極とドレイン電極間の電流値の変化として検出する方式である(特表2001−511245号公報)。ゲート絶縁物は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタル等の材料を単独あるいは組み合わせて用い、通常はトランジスタ動作を良好に保つために、酸化シリコン等の上に窒化シリコン、酸化タンタル等を積層する二重構造としてある。DNAプローブを上記ゲータ絶縁層上に固定化するためには、ゲート絶縁層表面をアミノプロピルシランやポリリジン等で化学修飾してアミノ基を導入し、グルタルアルデヒドやフェニレンジイソシアネートを用いて、末端をアミノ基で化学修飾したDNAプローブを反応させて行う。
【非特許文献1】Analytical Chemistry 66, (1994) 3830-3833
【特許文献1】特表2001−511245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化・還元標識物質を用いた電流検出方式は、金属電極上での酸化・還元電流の検出を基本原理としているため、試料中に酸化物質あるいは還元物質が共存すると、共存物質に由来する電流が流れ、遺伝子検出を妨害する。また、電流計測に伴い、金属電極表面で電気化学反応が進行するため、電極の腐食やガス発生が起こり、計測条件が不安定になり、検出感度や検出精度が低下する問題がある。本方式は、一般に酸化・還元標識物質としてインターカレータを使用するため、DNA以外の生体分子の測定は困難であった。
【0007】
一方、トランジスタの電気特性を利用した表面電位検出方式は、電流検出方式に比べて、チップ上の絶縁層の腐食、ガスの発生、共存する酸化物質・還元物質の妨害等は問題とならない。しかし、本方式で採用している構造では、絶縁層がセンシング部を兼ねているため、DNAプローブのゲート絶縁層への固定化は、シランカプリング等の煩雑な前処理を必要とした。さらに、DNAプローブを固定化するゲート絶縁層を含む層は、光に応答し測定誤差を生じるため、測定は遮光用の暗箱を必要としていた。また、本測定方式はゲート絶縁層上の電位変化をドレイン電流変化として測定しているため、センシング部であるゲート絶縁層の電位が安定化するのに時間を要していた。
【0008】
本発明の目的は、検出用プローブが容易に固定化でき、暗箱等を必要とせず簡便に使用できる生体分子検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による生体分子検出装置は、検出プローブを固定化する導電性電極と絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲートを導電性配線で接続した。本構造を採用することにより、センシング部であるプローブを固定化する導電性電極を遮光材で覆うことなく、絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート部を遮光することが可能になる。また、導電性電極に金を用いることにより、末端にアルカンチオールを有する検出プローブは、金電極表面に検出プローブ溶液を滴下あるいはスポットするだけの簡単な操作で固定化できる。
【0010】
溶液中で導電性電極を使用する際に問題となる外部変動による表面電位の不安定性(すなわち、ドリフト)に関しては、導電性電極と参照電極間に矩形波等の入力波形を印加した際の応答を測定することにより、その影響を低減できる。尚、この矩形波等の電圧印加により、検出プローブと測定対象物との結合が外れることはない。また、導電性電極に金等の貴金属を用いることにより、溶液中の電極表面での反応は起こらない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、生体分子検出素子として、導電性電極表面に検出プローブを固体化した絶縁ゲート電界効果トランジスタを用いて、測定対象物と生体分子検出用プローブとの結合の前後における絶縁ゲート電界効果トランジスタの電気特性変化を矩形波等の入力波形に対する応答によって測定することにより、試料溶液中に含まれるDNAやタンパク等の測定対象物の有無を外部変動の影響を低減して検出することができる。その際に問題となる光の影響は、センシング部である電極以外を遮光することにより、容易に除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による生体分子検出装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造例を示す図である。図1(a)は断面模式図、図1(b)は平面模式図である。絶縁ゲート電界効果トランジスタは、シリコン基板11の表面にソース12、ドレイン13、及びゲート絶縁物14を形成し、導電性電極15を設けてある。検出プローブを固定化する導電性電極15と絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート16を導電性配線17で接続してある。導電性電極15以外の部分は、遮光部材18で覆われている。遮光部材としては、光透過性の低いプラスチック材や接着剤を使用することができる。また、半導体作製プロセスにおいてアルミニウム層を形成しても良い。本構造を採用することにより、暗箱等を必要とせず簡便に使用することができる。好ましくは、絶縁ゲート電界効果トランジスタは、シリコン酸化物を絶縁膜として用いる金属酸化物半導体(Metal-insulator-semiconducor)電界効果トランジスタ(FET)であるが、薄膜トランジスタ(TFT)を用いても問題はない。
【0013】
図2は、本発明による生体分子検出素子を用いた生体分子検出装置を示すブロック図である。本発明の計測システムは、測定部21、信号処理回路22、及びデータ処理装置23から構成される。測定部21内には、絶縁ゲート型電界効果型トランジスタ24、参照電極25、サンプル注入器26が配置されている。
【0014】
測定手順は以下の通りである。最初、導電性電極27、及び導電性電極27の表面上に固定化された生体分子検出用プローブ28と参照電極25を測定セル29中のバッファー溶液30中に配置し、参照電極25に電源31により矩形波または正弦波の電圧を印加し、その際の応答をソース32、ドレイン33間の電流変化として計測し、信号処理回路22、及びデータ処理装置23で応答特性を記録する。次に、サンプル注入器26を用いて測定セル29中のバッファー溶液30中にサンプルを導入する。その後、参照電極25に電源31により矩形波または正弦波の電圧を印加し、その際の応答をソース32、ドレイン33間の電流変化として計測し、信号処理回路22、及びデータ処理装置23で応答特性を記録する。バッファー溶液としては、トリス塩酸バッファー(10mM Tris-HCl, 5mM Mg, pH7.2)が用いられる。
【0015】
導入したサンプル中の生体物質が生体分子検出用プローブ28と結合すると、導電性電極27の表面状態が変化し、参照電極25に印加した矩形波または正弦波に対する絶縁ゲート型電界効果型トランジスタ24の応答特性が変化する。従って、サンプルの導入前後で矩形波または正弦波の電圧印加に対する絶縁ゲート型電界効果型トランジスタ24の応答特性が変化したか否かを検出することにより、生体分子検出用プローブ28に生体物質が結合したか否か、すなわちサンプル中に目的とするDNAやタンパク等が含まれていたか否かを検出することができる。
【0016】
生体分子検出用プローブ28には、一本鎖DNA断片等の核酸、抗体、抗原、酵素等のタンパク質・ペプチド、糖類等を用いることができる。生体分子検出用プローブの選択性は、生体成分固有の構造に由来する特異的な結合力(アフィニティ)の違いに基づいている。検出対象がDNAである場合、生体分子検出プローブとしては、検出対象DNAと相補的な配列の一本鎖DNA断片が用いられる。その際の一本鎖DNA断片の長さは、通常20〜50塩基長である。また、抗体・抗原等もそのまま用いることができるが、これらの代わりにアプタマーと呼ばれる一本鎖DNA断片を用いることができる。例えば、血液凝固系のセリンプロテアーゼの一種であるα−トロンビン用のアプタマーは、5'-GGTTGGTGTGGTTGG-3’である。
【0017】
参照電極25は、試料溶液30中の導電性電極27の表面で起こる平衡反応あるいは化学反応に基づく電位変化を安定に測定するために、基準となる電位を与える。通常は参照電極としては、飽和塩化カリウムを内部溶液に使用している銀・塩化銀電極、あるいは甘こう(カロメル)電極が用いられるが、測定する試料溶液の組成が一定の場合には、疑似電極として銀・塩化銀電極のみを使用しても問題はない。
【0018】
図3(a)、(b)は、本発明による生体分子検出装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの遮光効果を示す図である。遮光部材としては、アルミニウムを用い、半導体作製プロセスの最終工程(窒化シリコン層の形成)の前に酸化シリコン層の上にアルミニウム層を形成した。遮光効果の評価は、絶縁ゲート電界効果トランジスタの電流・電圧特性の測定結果を暗箱の有無で比較した。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、ソース、ドレイン間の電圧は0.5Vで、参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用し、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。
【0019】
図3(a)は遮光対策を行わない絶縁ゲート電界効果トランジスタの測定結果、図3(b)はセンシング部である電極部分以外を遮光部材で覆って遮光対策を施した本発明による絶縁ゲート電界効果トランジスタの測定結果である。その結果、図3(a)に示すように、遮光対策を行わない絶縁ゲート電界効果トランジスタは暗箱内に置いた場合のドレイン電流値41と暗箱無しの場合のドレイン電流値42が大きく変化した。遮光対策を施した本発明の絶縁ゲート電界効果トランジスタは、図3(b)に示すように、暗箱内に置いた場合のドレイン電流値43と暗箱無しの場合のドレイン電流値44はほとんど変化なく、光の影響を受けていないことが分かる。
【0020】
今回、導電性電極として金薄膜51を、生体分子検出プローブとして一本鎖DNA52を使用した。図4(a)に示すように、金薄膜表面51へのDNAプローブ52の固定化は、DNAプローブ52の配列制御及び金薄膜51の表面の保護のために、アルカンチオール53を同時に固定化することで行った。DNAを固定化する場合には、DNAが負に帯電しているため、アミノ基を有するアルカンチオールを使用すると、相互作用によりDNA断片が表面に横たわった状態になり測定安定性(安定化時間及び測定値のゆらぎ)が低下するので、水酸基、またはカルボキシル基を有するアルカンチオールを使用した方が良い。このように使用するアルカンチオールは、例えば末端基に水酸基を有するメルカプトエタノール、6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオール、8−ヒドロキシ−1−オクタンチオール、11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオール等を用いることができるが、測定対象物の有する電荷に応じて、末端基をアミノ基、カルボキシル基、水酸基を用いれば問題ない。また、電極表面への物理吸着が問題となる場合にはフロロカーボン基等を用いれば問題ない。試料溶液中にセンサ部を配置した後、試料溶液中にDNAプローブ52と相補的な配列の一本鎖DNAを注入すると、図4(b)に示すように、2本鎖DNA54が形成される。
【0021】
次に、本発明の測定原理について説明する。図5は、本発明による生体分子検出素子を用いた波形解析方式を示す図である。図5(a)は参照電極への印加電圧の波形、図5(b)はドレイン電流の波形である。絶縁ゲート電界効果トランジスタは、図5(a)の入力波形61に対して、図5(b)破線62で示した応答を示す。導電性電極上に生体分子検出用プローブが固定化されていると、この応答に、生体分子検出用プローブの応答が加わり、図5(b)実線63で示すような応答波形になる。そこで、応答波形の立ち上がりにおける緩和成分64あるいは立ち下がりにおける緩和成分65の変化量を測定し、生体分子検出用プローブの状態変化を検出する。印加電圧波形に対する応答の変化を測定することで、外部変動の影響を低減することができる。
【0022】
図6は、本発明による生体分子検出装置を用いて、一本鎖DNAと二本鎖DNAの応答の違いから、液中の相補鎖DNAの有無を検出した例である。DNAプローブとして30塩基のDNA(AAAAA AAA・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・AAA AAAAA)を、検出対象としてDNAプローブと相補的な配列(TTTTT TTT・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・TTT TTTTT)を用いた。参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用し、ファンクションジェネレータを用いて0.2Hz、Vmax=0V、Vmin=−0.3Vの矩形電圧を印加した。ソースドレイン間の電圧は1Vとし、信号処理回路でドレイン電流を電圧に変換し、DAC(デジタルアナログコンバータ)を用いてPCに波形を取り込んだ。
【0023】
図6(a)は入力電圧の立ち上がり、図6(b)は入力電圧の立ち下がりにおける出力波形の応答成分を表している。試料溶液中に相補鎖配列を導入する前の応答波形71、73に比べて、相補鎖配列を導入した後の応答波形72、74は小さくなっている。応答の変化は、相補鎖配列を導入したことにより、DNAプローブが二本鎖を形成したことを反映している。二本鎖DNAは二重螺旋を形成しているため一本鎖DNAと比べて剛性が高く、印加電圧の変化に対する応答が小さい。そのため、出力信号の大きさも、二本鎖DNAは一本鎖DNAよりも小さくなっている。尚、DNAの場合の周波数応答は、約1kHzまで追従するので、入力波形として繰返し周波数が1kHz以下の矩形波を用いれば問題ない。好ましくは10Hz以下であると応答解析が容易にできる。
【0024】
図7は、本発明による生体分子検出素子を用いた波形解析方式のうち、入力波形として正弦波を用いた場合を示す図である。図7(a)は参照電極への印加電圧の波形、図7(c)はドレイン電流の波形である。FETのゲート電圧に対するドレイン電流の応答は線形でないため、正弦波を入力した場合、ドレイン電流は歪んだ正弦波となる。そこで、出力波形を別途測定したFETの電圧電流特性によって入力電圧に変換すると、図7(b)のように、歪みの無い正弦波となる。出力波形の振幅135は入力波形の振幅134よりも小さく、位相差136が生じている。この振幅・位相差の変化は、矩形波による測定と関係があり、次の式で結び付けられる。
【0025】
入力波形の変化分が出力波形に影響を及ぼすとき、出力波形g(t)は、入力波形f(t)と応答関数h(t)を用いて次の式で表される。
【0026】
【数1】
【0027】
入力波形f(t)が矩形波の立ち上がりに相当するステップ状の関数、すなわち次式(2)の場合、式(3)と表すことができるため、式(1)は式(4)となる。h(t)は緩和成分を意味し、実験的に求めることができる。
【0028】
【数2】
【0029】
正弦波に対する応答は、f(t)=sin(ωt)とすることで求められる。このように、正弦波を用いても矩形波と同様な測定を行うことができ、つまり、正弦波を入力したときの振幅・位相の変化を測定することで、生体分子検出プローブの状態変化を測定することができる。
【0030】
図8は、本発明による生体分子検出装置を用い、正弦波を入力とし、一本鎖DNAと二本鎖DNAの応答の違いから、液中の相補鎖DNAの有無を検出した例である。DNAプローブとして30塩基のDNA(AAAAA AAA・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・AAA AAAAA)を、検出対象としてDNAプローブと相補的な配列(TTTTT TTT・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・TTT TTTTT)を用いた。参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用し、ファンクションジェネレータを用いて100Hz、Vmax=0V、Vmin=−0.3Vの正弦波電圧を印加した。ソースドレイン間の電圧は1Vとし、信号処理回路でドレイン電流を電圧に変換し、DAC(デジタルアナログコンバータ)を用いてPCに波形を取り込んだ。
【0031】
入力波形141に対して、出力波形142,143はドレイン電流をFETの電圧電流特性によって電圧に変換したものである。出力波形142は二本鎖DNA導入前の波形、出力波形143は二本鎖DNA導入後の波形である。いずれの波形も、位相はほとんど同じとなった。一方、振幅は、入力波形141を1として、出力波形142は1.010に、出力波形143は1.006となった。応答の変化は、相補鎖配列を導入したことにより、DNAプローブが二本鎖を形成したことを反映している。二本鎖DNAは二重螺旋を形成しているため一本鎖DNAと比べて剛性が高く、印加電圧の変化に対する応答が小さい。そのため、出力信号の大きさも、二本鎖DNAは一本鎖DNAよりも小さくなっている。
【0032】
図9は、同一素子にサンプル測定用電極とコントロール用電極を混載した本発明の他の実施例を示す図である。通常は、測定対象物の検出プローブへの結合の前後の測定値を比較すれば測定対象物の存否を検出可能であるが、測定溶液に混在する不純物によっては検出プローブと結合したり、あるいは金電極表面に物理的に吸着する場合がある。このような場合には測定対象物の検出プローブへの結合の前後の測定値に影響を与え、測定精度の低下を招く。本実施例のように測定用トランジスタと参照用トランジスタの差動測定を行うことにより、測定対象物以外の不純物の非特異的な吸着による出力変動や周囲温度の影響を相殺・補正し、測定対象物のみを精度良く測定することができる。
【0033】
本実施例の素子は、サンプル測定用電極81、コントロール用電極82、及び温度計測用ダイオード83が混載された構造になっている。本素子のサンプル測定用電極81及びコントロール用電極82は、各々絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート84,85と導電性配線86,87で接続されている延長ゲート型で、絶縁層としてSiO2(厚さ;17.5nm)を用いたデプレション型FETである。電極81,82は、延長・拡大したゲート上に金電極を400μm×400μmの大きさで作製した。電極81,82以外の部分には、遮光部材88として窒化シリコンの下にアルミニウム層を形成した。通常の測定は、水溶液を使用するため、本素子は溶液中で動作しなければならない。溶液中で測定する場合には、電気化学反応を起こし難い−0.5〜0.5Vの電極電位範囲で動作することが必要である。そのため、本実施例ではデプレション型nチャネルFETの作製条件、すなわち閾値電圧(Vt)調整用イオン打ち込み条件を調整し、FETの閾値電圧を−0.5V付近に設定してある。本素子に混載する温度計測用ダイオードはn+/p接合型を用いた。尚、今回作製したn+/p接合ダイオードの温度特性は、温度係数;約1.8mV/℃であった。
【0034】
本実施例の延長ゲート型FETは、センシング部分を測定対象に応じて任意の大きさで、かつ任意の場所に設定できる利点がある。また、本素子は、同一プロセスで作製したチップを用いて、最終工程で測定対象のプローブを固定化することができるため、様々な測定対象に対応したセンサを作製する際の工程を共通化できる利点がある。本実施例で用いるプローブ固定化用金電極はチオール化合物と容易に結合して安定であるため、チオール基(通常は、アルカンチオールリンカー)を有するプローブを用いることにより、固定化が容易となる。また、金電極は不活性のため溶液中で安定である、すなわち電位ドリフト等を生じない。
【0035】
本発明の他の実施例である、参照素子を混載した差動方式の生体分子検出素子を図10により説明する。図10は断面摸式図であり、本実施例の素子のトランジスタ、導電性電極、遮光部材等の配置は、図9に示した実施例に類似した配置を有する。
【0036】
本実施例の素子は、シリコン基板91の表面に測定用トランジスタのソース92及びドレイン93、参照用トランジスタのソース94及びドレイン95と、ゲート絶縁物96を形成し、測定用トランジスタのソース92と測定用トランジスタのドレイン93の間のゲート絶縁物表面、及び参照用トランジスタのソース94と参照用トランジスタのドレイン95の間のゲート絶縁物表面に、各々導電性電極97,98を設けてある。導電性電極97,98の表面には、各々生体分子検出用プローブ99、疑似分子検出用プローブ100が固定化されている。例えば、DNA測定の場合には、生体分子検出用プローブ99はターゲット遺伝子と相補的な塩基配列を有するDNAプローブを、疑似分子検出用プローブ100はターゲット遺伝子と相補的な塩基配列とは異なる塩基配列を有するDNAプローブを用いる。また、導電性電極97,98と同一平面に疑似参照電極101を設けてある。疑似参照電極101は導電性配線102を介して、外部と接続されている。疑似参照電極としては、銀/塩化銀、金、白金等を用いることが出来る。電極97,98以外の部分には、遮光部材103,104として窒化シリコンの下にアルミニウム層を形成した。
【0037】
実際の計測では、図11に示すように、ターゲット遺伝子と相補的な塩基配列を有するDNAプローブ111を固定化した測定用トランジスタ112の出力と、ターゲット遺伝子と相補的な塩基配列と異なる塩基配列を有するDNAプローブ113を固定化した参照用トランジスタ114の出力を各々トランジスタ駆動回路115,116に入力して、各々の表面電位を計測し、差動増幅回路117を介して信号処理回路118に入力する。測定用トランジスタ112及び参照用トランジスタ114を安定に測定するために、電位測定の基準となる共通の参照電極119を設置している。本測定では、ドース・ドレイン間に1.0Vの直流電圧を、ゲート側の参照電極(Ag/AgCl参照電極)に繰り返し周波数;0.2Hz、Vmax=0V、Vmin=−0.3Vの矩形波電圧を印加して測定を行った。
【0038】
尚、参照電極として、銀/塩化銀を用いたが、金、白金等用いても問題ない。このように測定用トランジスタと参照用トランジスタの差動測定を行うことにより、周囲の温度の影響による出力値の変動や、導電性電極表面への測定対象物以外の不純物の非特異的な吸着による出力変動を相殺・補正し、測定対象物のみを精度良く測定することができる。また、差動測定と疑似参照電極を組み合わせることにより、溶液組成の変化も補正でき、小型で全固体型な検出素子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による生体分子検出装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造例を示す図であり、(a)は断面摸式図、(b)は平面摸式図。
【図2】本発明による生体分子検出素子を用いた生体分子検出装置を示すブロック図。
【図3】本発明による生体分子検出装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの遮光効果を示す図であり、(a)は遮光対策を行わない絶縁ゲート電界効果トランジスタの測定結果を示す図、(b)は本発明の素子を使用した場合の測定結果を示す図。
【図4】金電極表面へのDNAの配列制御固定化法を示す図であり、(a)は1本鎖DNAを固定化した状態を示す図、(b)は金電極表面で2本鎖DNAを形成した状態を示す図。
【図5】本発明による生体分子検出素子を用いた波形解析方式を示す図であり、(a)は印加電圧の波形を示す図、(b)はドレイン電流の波形を示す図。
【図6】本発明による生体分子検出方式を用いて1本鎖DNAと2本鎖DNAを検出した一例を示す図。
【図7】本発明の他の実施例である生体分子検出素子を用いた波形解析方式のうち、入力波形として正弦波を用いた場合を示す図。
【図8】本発明の他の実施例である生体分子検出装置を用い、正弦波を入力とし、一本鎖DNAと二本鎖DNAの応答の違いから、液中の相補鎖DNAの有無を検出した結果を示す図。
【図9】本発明の他の実施例である同一素子にサンプル測定用電極とコントロール用電極を混載した絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造例を示す図。
【図10】本発明の他の実施例である参照素子を混載した差動方式の生体分子検出素子の断面模式図を示す図。
【図11】本発明の他の実施例である参照素子を混載した差動方式の生体分子検出素子の測定方式を示す図。
【符号の説明】
【0040】
11,91…シリコン基板、12,32,92,94…ソース、13,33,93,95…ドレイン、14,96…ゲート絶縁物、15,97,98,102…導電性電極、16,84,85…絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート、17,27,86,87…導電性配線、18,88,103,104…遮光部材、21…測定部、22…信号処理回路、23…データ処理装置、24…絶縁ゲート型電界効果型トランジスタ、25,119…参照電極、26…サンプル注入器、28,99…生体分子検出用プローブ、29…測定セル29、30…バッファー溶液、31…電源、41,42,43,44…ドレイン電流値、51…金薄膜、52,111,113…DNAプローブ、53…アルカンチオール、54…2本鎖DNA、44,61…入力波形、62,63,71,72,73,74…応答波形、64…応答波形の立ち上がりにおける緩和成分、65…応答波形の立ち下がりにおける緩和成分、81…サンプル測定用電極、82…コントロール用電極、83…温度計測用ダイオード、81,82…電極、100…疑似分子検出用プローブ、101…疑似参照電極、112…測定用トランジスタ、114…参照用トランジスタ、115,116…トランジスタ駆動回路、117…差動増幅回路、118…信号処理回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質、特にDNAやタンパク質を非修飾で計測する検出装置及びそれを用いた検出方法に関し、特に電界効果型トランジスタを用いた検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の塩基配列解析技術の著しい進歩により、ヒトゲノムの全塩基配列がほぼ解析され、そのDNA塩基配列情報を医療等に幅広く利用しようとする動きが活発である。今後は生体中における遺伝子の発現状態を明らかにすることにより、個人レベルの疾患や個人の体質が遺伝子レベルで解明され、個人の体質に合わせたテーラーメイド医療が大きく発展すると期待されている。さらに、医療や医薬品以外に農産物の品種改良等の広範囲な分野で飛躍的な発展が進むものと思われる。これらの発展の基礎となるのが、塩基配列情報に加えて遺伝子発現情報や機能情報である。現在、DNAチップを用いて大規模に遺伝子の機能及び発現解析が行われ、データベースが構築されつつある。しかし、現状のDNAチップは、蛍光検出法を基本原理としているので、レーザ光源や複雑な光学系を必要とし、計測システムが大型で高価であった。これらの装置は、大量のサンプル処理には適しているが、少数のサンプルを小規模な測定現場で測定することには適していない。そのため、今後の需要が増大する小規模な測定現場に適した小型で、操作が簡便な測定装置が望まれていた。
【0003】
これらの要求に応える方式として、酸化・還元標識物質を用いた電流検出方式のDNAチップや、トランジスタの電気特性を利用した表面電位検出方式のDNAセンサが報告されている。これらの電気的な計測を用いるDNAチップは、レーザ光源や複雑な光学系を必要とせず、装置の小型化が容易である。
【0004】
酸化・還元標識物質を用いた電流検出方式は、ターゲットDNAがDNAプローブへ結合(ハイブリダイゼーション)して形成された2本鎖DNAの間に酸化・還元物質がインターカレーションする性質を用いている。ターゲットDNAとDNAプローブの結合(ハイブリダイゼーション)の有無を、インターカレーションした酸化・還元物質と金属電極との間の電子の授受を電流変化として検出(すなわち、酸化・還元電流の検出)することにより判定する(Analytical Chemistry 66, (1994) 3830-3833)。
【0005】
一方、トランジスタの電気特性を利用した表面電位検出方式は、ソース電極とドレイン電極の上に形成されたゲート絶縁層にDNAプローブを固定化し、ターゲットDNAのDNAプローブへの結合(ハイブリダイゼーション)による絶縁膜上の表面電位(つまり、表面電荷密度)をソース電極とドレイン電極間の電流値の変化として検出する方式である(特表2001−511245号公報)。ゲート絶縁物は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタル等の材料を単独あるいは組み合わせて用い、通常はトランジスタ動作を良好に保つために、酸化シリコン等の上に窒化シリコン、酸化タンタル等を積層する二重構造としてある。DNAプローブを上記ゲータ絶縁層上に固定化するためには、ゲート絶縁層表面をアミノプロピルシランやポリリジン等で化学修飾してアミノ基を導入し、グルタルアルデヒドやフェニレンジイソシアネートを用いて、末端をアミノ基で化学修飾したDNAプローブを反応させて行う。
【非特許文献1】Analytical Chemistry 66, (1994) 3830-3833
【特許文献1】特表2001−511245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化・還元標識物質を用いた電流検出方式は、金属電極上での酸化・還元電流の検出を基本原理としているため、試料中に酸化物質あるいは還元物質が共存すると、共存物質に由来する電流が流れ、遺伝子検出を妨害する。また、電流計測に伴い、金属電極表面で電気化学反応が進行するため、電極の腐食やガス発生が起こり、計測条件が不安定になり、検出感度や検出精度が低下する問題がある。本方式は、一般に酸化・還元標識物質としてインターカレータを使用するため、DNA以外の生体分子の測定は困難であった。
【0007】
一方、トランジスタの電気特性を利用した表面電位検出方式は、電流検出方式に比べて、チップ上の絶縁層の腐食、ガスの発生、共存する酸化物質・還元物質の妨害等は問題とならない。しかし、本方式で採用している構造では、絶縁層がセンシング部を兼ねているため、DNAプローブのゲート絶縁層への固定化は、シランカプリング等の煩雑な前処理を必要とした。さらに、DNAプローブを固定化するゲート絶縁層を含む層は、光に応答し測定誤差を生じるため、測定は遮光用の暗箱を必要としていた。また、本測定方式はゲート絶縁層上の電位変化をドレイン電流変化として測定しているため、センシング部であるゲート絶縁層の電位が安定化するのに時間を要していた。
【0008】
本発明の目的は、検出用プローブが容易に固定化でき、暗箱等を必要とせず簡便に使用できる生体分子検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による生体分子検出装置は、検出プローブを固定化する導電性電極と絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲートを導電性配線で接続した。本構造を採用することにより、センシング部であるプローブを固定化する導電性電極を遮光材で覆うことなく、絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート部を遮光することが可能になる。また、導電性電極に金を用いることにより、末端にアルカンチオールを有する検出プローブは、金電極表面に検出プローブ溶液を滴下あるいはスポットするだけの簡単な操作で固定化できる。
【0010】
溶液中で導電性電極を使用する際に問題となる外部変動による表面電位の不安定性(すなわち、ドリフト)に関しては、導電性電極と参照電極間に矩形波等の入力波形を印加した際の応答を測定することにより、その影響を低減できる。尚、この矩形波等の電圧印加により、検出プローブと測定対象物との結合が外れることはない。また、導電性電極に金等の貴金属を用いることにより、溶液中の電極表面での反応は起こらない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、生体分子検出素子として、導電性電極表面に検出プローブを固体化した絶縁ゲート電界効果トランジスタを用いて、測定対象物と生体分子検出用プローブとの結合の前後における絶縁ゲート電界効果トランジスタの電気特性変化を矩形波等の入力波形に対する応答によって測定することにより、試料溶液中に含まれるDNAやタンパク等の測定対象物の有無を外部変動の影響を低減して検出することができる。その際に問題となる光の影響は、センシング部である電極以外を遮光することにより、容易に除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による生体分子検出装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造例を示す図である。図1(a)は断面模式図、図1(b)は平面模式図である。絶縁ゲート電界効果トランジスタは、シリコン基板11の表面にソース12、ドレイン13、及びゲート絶縁物14を形成し、導電性電極15を設けてある。検出プローブを固定化する導電性電極15と絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート16を導電性配線17で接続してある。導電性電極15以外の部分は、遮光部材18で覆われている。遮光部材としては、光透過性の低いプラスチック材や接着剤を使用することができる。また、半導体作製プロセスにおいてアルミニウム層を形成しても良い。本構造を採用することにより、暗箱等を必要とせず簡便に使用することができる。好ましくは、絶縁ゲート電界効果トランジスタは、シリコン酸化物を絶縁膜として用いる金属酸化物半導体(Metal-insulator-semiconducor)電界効果トランジスタ(FET)であるが、薄膜トランジスタ(TFT)を用いても問題はない。
【0013】
図2は、本発明による生体分子検出素子を用いた生体分子検出装置を示すブロック図である。本発明の計測システムは、測定部21、信号処理回路22、及びデータ処理装置23から構成される。測定部21内には、絶縁ゲート型電界効果型トランジスタ24、参照電極25、サンプル注入器26が配置されている。
【0014】
測定手順は以下の通りである。最初、導電性電極27、及び導電性電極27の表面上に固定化された生体分子検出用プローブ28と参照電極25を測定セル29中のバッファー溶液30中に配置し、参照電極25に電源31により矩形波または正弦波の電圧を印加し、その際の応答をソース32、ドレイン33間の電流変化として計測し、信号処理回路22、及びデータ処理装置23で応答特性を記録する。次に、サンプル注入器26を用いて測定セル29中のバッファー溶液30中にサンプルを導入する。その後、参照電極25に電源31により矩形波または正弦波の電圧を印加し、その際の応答をソース32、ドレイン33間の電流変化として計測し、信号処理回路22、及びデータ処理装置23で応答特性を記録する。バッファー溶液としては、トリス塩酸バッファー(10mM Tris-HCl, 5mM Mg, pH7.2)が用いられる。
【0015】
導入したサンプル中の生体物質が生体分子検出用プローブ28と結合すると、導電性電極27の表面状態が変化し、参照電極25に印加した矩形波または正弦波に対する絶縁ゲート型電界効果型トランジスタ24の応答特性が変化する。従って、サンプルの導入前後で矩形波または正弦波の電圧印加に対する絶縁ゲート型電界効果型トランジスタ24の応答特性が変化したか否かを検出することにより、生体分子検出用プローブ28に生体物質が結合したか否か、すなわちサンプル中に目的とするDNAやタンパク等が含まれていたか否かを検出することができる。
【0016】
生体分子検出用プローブ28には、一本鎖DNA断片等の核酸、抗体、抗原、酵素等のタンパク質・ペプチド、糖類等を用いることができる。生体分子検出用プローブの選択性は、生体成分固有の構造に由来する特異的な結合力(アフィニティ)の違いに基づいている。検出対象がDNAである場合、生体分子検出プローブとしては、検出対象DNAと相補的な配列の一本鎖DNA断片が用いられる。その際の一本鎖DNA断片の長さは、通常20〜50塩基長である。また、抗体・抗原等もそのまま用いることができるが、これらの代わりにアプタマーと呼ばれる一本鎖DNA断片を用いることができる。例えば、血液凝固系のセリンプロテアーゼの一種であるα−トロンビン用のアプタマーは、5'-GGTTGGTGTGGTTGG-3’である。
【0017】
参照電極25は、試料溶液30中の導電性電極27の表面で起こる平衡反応あるいは化学反応に基づく電位変化を安定に測定するために、基準となる電位を与える。通常は参照電極としては、飽和塩化カリウムを内部溶液に使用している銀・塩化銀電極、あるいは甘こう(カロメル)電極が用いられるが、測定する試料溶液の組成が一定の場合には、疑似電極として銀・塩化銀電極のみを使用しても問題はない。
【0018】
図3(a)、(b)は、本発明による生体分子検出装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの遮光効果を示す図である。遮光部材としては、アルミニウムを用い、半導体作製プロセスの最終工程(窒化シリコン層の形成)の前に酸化シリコン層の上にアルミニウム層を形成した。遮光効果の評価は、絶縁ゲート電界効果トランジスタの電流・電圧特性の測定結果を暗箱の有無で比較した。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、ソース、ドレイン間の電圧は0.5Vで、参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用し、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。
【0019】
図3(a)は遮光対策を行わない絶縁ゲート電界効果トランジスタの測定結果、図3(b)はセンシング部である電極部分以外を遮光部材で覆って遮光対策を施した本発明による絶縁ゲート電界効果トランジスタの測定結果である。その結果、図3(a)に示すように、遮光対策を行わない絶縁ゲート電界効果トランジスタは暗箱内に置いた場合のドレイン電流値41と暗箱無しの場合のドレイン電流値42が大きく変化した。遮光対策を施した本発明の絶縁ゲート電界効果トランジスタは、図3(b)に示すように、暗箱内に置いた場合のドレイン電流値43と暗箱無しの場合のドレイン電流値44はほとんど変化なく、光の影響を受けていないことが分かる。
【0020】
今回、導電性電極として金薄膜51を、生体分子検出プローブとして一本鎖DNA52を使用した。図4(a)に示すように、金薄膜表面51へのDNAプローブ52の固定化は、DNAプローブ52の配列制御及び金薄膜51の表面の保護のために、アルカンチオール53を同時に固定化することで行った。DNAを固定化する場合には、DNAが負に帯電しているため、アミノ基を有するアルカンチオールを使用すると、相互作用によりDNA断片が表面に横たわった状態になり測定安定性(安定化時間及び測定値のゆらぎ)が低下するので、水酸基、またはカルボキシル基を有するアルカンチオールを使用した方が良い。このように使用するアルカンチオールは、例えば末端基に水酸基を有するメルカプトエタノール、6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオール、8−ヒドロキシ−1−オクタンチオール、11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオール等を用いることができるが、測定対象物の有する電荷に応じて、末端基をアミノ基、カルボキシル基、水酸基を用いれば問題ない。また、電極表面への物理吸着が問題となる場合にはフロロカーボン基等を用いれば問題ない。試料溶液中にセンサ部を配置した後、試料溶液中にDNAプローブ52と相補的な配列の一本鎖DNAを注入すると、図4(b)に示すように、2本鎖DNA54が形成される。
【0021】
次に、本発明の測定原理について説明する。図5は、本発明による生体分子検出素子を用いた波形解析方式を示す図である。図5(a)は参照電極への印加電圧の波形、図5(b)はドレイン電流の波形である。絶縁ゲート電界効果トランジスタは、図5(a)の入力波形61に対して、図5(b)破線62で示した応答を示す。導電性電極上に生体分子検出用プローブが固定化されていると、この応答に、生体分子検出用プローブの応答が加わり、図5(b)実線63で示すような応答波形になる。そこで、応答波形の立ち上がりにおける緩和成分64あるいは立ち下がりにおける緩和成分65の変化量を測定し、生体分子検出用プローブの状態変化を検出する。印加電圧波形に対する応答の変化を測定することで、外部変動の影響を低減することができる。
【0022】
図6は、本発明による生体分子検出装置を用いて、一本鎖DNAと二本鎖DNAの応答の違いから、液中の相補鎖DNAの有無を検出した例である。DNAプローブとして30塩基のDNA(AAAAA AAA・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・AAA AAAAA)を、検出対象としてDNAプローブと相補的な配列(TTTTT TTT・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・TTT TTTTT)を用いた。参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用し、ファンクションジェネレータを用いて0.2Hz、Vmax=0V、Vmin=−0.3Vの矩形電圧を印加した。ソースドレイン間の電圧は1Vとし、信号処理回路でドレイン電流を電圧に変換し、DAC(デジタルアナログコンバータ)を用いてPCに波形を取り込んだ。
【0023】
図6(a)は入力電圧の立ち上がり、図6(b)は入力電圧の立ち下がりにおける出力波形の応答成分を表している。試料溶液中に相補鎖配列を導入する前の応答波形71、73に比べて、相補鎖配列を導入した後の応答波形72、74は小さくなっている。応答の変化は、相補鎖配列を導入したことにより、DNAプローブが二本鎖を形成したことを反映している。二本鎖DNAは二重螺旋を形成しているため一本鎖DNAと比べて剛性が高く、印加電圧の変化に対する応答が小さい。そのため、出力信号の大きさも、二本鎖DNAは一本鎖DNAよりも小さくなっている。尚、DNAの場合の周波数応答は、約1kHzまで追従するので、入力波形として繰返し周波数が1kHz以下の矩形波を用いれば問題ない。好ましくは10Hz以下であると応答解析が容易にできる。
【0024】
図7は、本発明による生体分子検出素子を用いた波形解析方式のうち、入力波形として正弦波を用いた場合を示す図である。図7(a)は参照電極への印加電圧の波形、図7(c)はドレイン電流の波形である。FETのゲート電圧に対するドレイン電流の応答は線形でないため、正弦波を入力した場合、ドレイン電流は歪んだ正弦波となる。そこで、出力波形を別途測定したFETの電圧電流特性によって入力電圧に変換すると、図7(b)のように、歪みの無い正弦波となる。出力波形の振幅135は入力波形の振幅134よりも小さく、位相差136が生じている。この振幅・位相差の変化は、矩形波による測定と関係があり、次の式で結び付けられる。
【0025】
入力波形の変化分が出力波形に影響を及ぼすとき、出力波形g(t)は、入力波形f(t)と応答関数h(t)を用いて次の式で表される。
【0026】
【数1】
【0027】
入力波形f(t)が矩形波の立ち上がりに相当するステップ状の関数、すなわち次式(2)の場合、式(3)と表すことができるため、式(1)は式(4)となる。h(t)は緩和成分を意味し、実験的に求めることができる。
【0028】
【数2】
【0029】
正弦波に対する応答は、f(t)=sin(ωt)とすることで求められる。このように、正弦波を用いても矩形波と同様な測定を行うことができ、つまり、正弦波を入力したときの振幅・位相の変化を測定することで、生体分子検出プローブの状態変化を測定することができる。
【0030】
図8は、本発明による生体分子検出装置を用い、正弦波を入力とし、一本鎖DNAと二本鎖DNAの応答の違いから、液中の相補鎖DNAの有無を検出した例である。DNAプローブとして30塩基のDNA(AAAAA AAA・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・AAA AAAAA)を、検出対象としてDNAプローブと相補的な配列(TTTTT TTT・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・TTT TTTTT)を用いた。参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用し、ファンクションジェネレータを用いて100Hz、Vmax=0V、Vmin=−0.3Vの正弦波電圧を印加した。ソースドレイン間の電圧は1Vとし、信号処理回路でドレイン電流を電圧に変換し、DAC(デジタルアナログコンバータ)を用いてPCに波形を取り込んだ。
【0031】
入力波形141に対して、出力波形142,143はドレイン電流をFETの電圧電流特性によって電圧に変換したものである。出力波形142は二本鎖DNA導入前の波形、出力波形143は二本鎖DNA導入後の波形である。いずれの波形も、位相はほとんど同じとなった。一方、振幅は、入力波形141を1として、出力波形142は1.010に、出力波形143は1.006となった。応答の変化は、相補鎖配列を導入したことにより、DNAプローブが二本鎖を形成したことを反映している。二本鎖DNAは二重螺旋を形成しているため一本鎖DNAと比べて剛性が高く、印加電圧の変化に対する応答が小さい。そのため、出力信号の大きさも、二本鎖DNAは一本鎖DNAよりも小さくなっている。
【0032】
図9は、同一素子にサンプル測定用電極とコントロール用電極を混載した本発明の他の実施例を示す図である。通常は、測定対象物の検出プローブへの結合の前後の測定値を比較すれば測定対象物の存否を検出可能であるが、測定溶液に混在する不純物によっては検出プローブと結合したり、あるいは金電極表面に物理的に吸着する場合がある。このような場合には測定対象物の検出プローブへの結合の前後の測定値に影響を与え、測定精度の低下を招く。本実施例のように測定用トランジスタと参照用トランジスタの差動測定を行うことにより、測定対象物以外の不純物の非特異的な吸着による出力変動や周囲温度の影響を相殺・補正し、測定対象物のみを精度良く測定することができる。
【0033】
本実施例の素子は、サンプル測定用電極81、コントロール用電極82、及び温度計測用ダイオード83が混載された構造になっている。本素子のサンプル測定用電極81及びコントロール用電極82は、各々絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート84,85と導電性配線86,87で接続されている延長ゲート型で、絶縁層としてSiO2(厚さ;17.5nm)を用いたデプレション型FETである。電極81,82は、延長・拡大したゲート上に金電極を400μm×400μmの大きさで作製した。電極81,82以外の部分には、遮光部材88として窒化シリコンの下にアルミニウム層を形成した。通常の測定は、水溶液を使用するため、本素子は溶液中で動作しなければならない。溶液中で測定する場合には、電気化学反応を起こし難い−0.5〜0.5Vの電極電位範囲で動作することが必要である。そのため、本実施例ではデプレション型nチャネルFETの作製条件、すなわち閾値電圧(Vt)調整用イオン打ち込み条件を調整し、FETの閾値電圧を−0.5V付近に設定してある。本素子に混載する温度計測用ダイオードはn+/p接合型を用いた。尚、今回作製したn+/p接合ダイオードの温度特性は、温度係数;約1.8mV/℃であった。
【0034】
本実施例の延長ゲート型FETは、センシング部分を測定対象に応じて任意の大きさで、かつ任意の場所に設定できる利点がある。また、本素子は、同一プロセスで作製したチップを用いて、最終工程で測定対象のプローブを固定化することができるため、様々な測定対象に対応したセンサを作製する際の工程を共通化できる利点がある。本実施例で用いるプローブ固定化用金電極はチオール化合物と容易に結合して安定であるため、チオール基(通常は、アルカンチオールリンカー)を有するプローブを用いることにより、固定化が容易となる。また、金電極は不活性のため溶液中で安定である、すなわち電位ドリフト等を生じない。
【0035】
本発明の他の実施例である、参照素子を混載した差動方式の生体分子検出素子を図10により説明する。図10は断面摸式図であり、本実施例の素子のトランジスタ、導電性電極、遮光部材等の配置は、図9に示した実施例に類似した配置を有する。
【0036】
本実施例の素子は、シリコン基板91の表面に測定用トランジスタのソース92及びドレイン93、参照用トランジスタのソース94及びドレイン95と、ゲート絶縁物96を形成し、測定用トランジスタのソース92と測定用トランジスタのドレイン93の間のゲート絶縁物表面、及び参照用トランジスタのソース94と参照用トランジスタのドレイン95の間のゲート絶縁物表面に、各々導電性電極97,98を設けてある。導電性電極97,98の表面には、各々生体分子検出用プローブ99、疑似分子検出用プローブ100が固定化されている。例えば、DNA測定の場合には、生体分子検出用プローブ99はターゲット遺伝子と相補的な塩基配列を有するDNAプローブを、疑似分子検出用プローブ100はターゲット遺伝子と相補的な塩基配列とは異なる塩基配列を有するDNAプローブを用いる。また、導電性電極97,98と同一平面に疑似参照電極101を設けてある。疑似参照電極101は導電性配線102を介して、外部と接続されている。疑似参照電極としては、銀/塩化銀、金、白金等を用いることが出来る。電極97,98以外の部分には、遮光部材103,104として窒化シリコンの下にアルミニウム層を形成した。
【0037】
実際の計測では、図11に示すように、ターゲット遺伝子と相補的な塩基配列を有するDNAプローブ111を固定化した測定用トランジスタ112の出力と、ターゲット遺伝子と相補的な塩基配列と異なる塩基配列を有するDNAプローブ113を固定化した参照用トランジスタ114の出力を各々トランジスタ駆動回路115,116に入力して、各々の表面電位を計測し、差動増幅回路117を介して信号処理回路118に入力する。測定用トランジスタ112及び参照用トランジスタ114を安定に測定するために、電位測定の基準となる共通の参照電極119を設置している。本測定では、ドース・ドレイン間に1.0Vの直流電圧を、ゲート側の参照電極(Ag/AgCl参照電極)に繰り返し周波数;0.2Hz、Vmax=0V、Vmin=−0.3Vの矩形波電圧を印加して測定を行った。
【0038】
尚、参照電極として、銀/塩化銀を用いたが、金、白金等用いても問題ない。このように測定用トランジスタと参照用トランジスタの差動測定を行うことにより、周囲の温度の影響による出力値の変動や、導電性電極表面への測定対象物以外の不純物の非特異的な吸着による出力変動を相殺・補正し、測定対象物のみを精度良く測定することができる。また、差動測定と疑似参照電極を組み合わせることにより、溶液組成の変化も補正でき、小型で全固体型な検出素子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による生体分子検出装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造例を示す図であり、(a)は断面摸式図、(b)は平面摸式図。
【図2】本発明による生体分子検出素子を用いた生体分子検出装置を示すブロック図。
【図3】本発明による生体分子検出装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの遮光効果を示す図であり、(a)は遮光対策を行わない絶縁ゲート電界効果トランジスタの測定結果を示す図、(b)は本発明の素子を使用した場合の測定結果を示す図。
【図4】金電極表面へのDNAの配列制御固定化法を示す図であり、(a)は1本鎖DNAを固定化した状態を示す図、(b)は金電極表面で2本鎖DNAを形成した状態を示す図。
【図5】本発明による生体分子検出素子を用いた波形解析方式を示す図であり、(a)は印加電圧の波形を示す図、(b)はドレイン電流の波形を示す図。
【図6】本発明による生体分子検出方式を用いて1本鎖DNAと2本鎖DNAを検出した一例を示す図。
【図7】本発明の他の実施例である生体分子検出素子を用いた波形解析方式のうち、入力波形として正弦波を用いた場合を示す図。
【図8】本発明の他の実施例である生体分子検出装置を用い、正弦波を入力とし、一本鎖DNAと二本鎖DNAの応答の違いから、液中の相補鎖DNAの有無を検出した結果を示す図。
【図9】本発明の他の実施例である同一素子にサンプル測定用電極とコントロール用電極を混載した絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造例を示す図。
【図10】本発明の他の実施例である参照素子を混載した差動方式の生体分子検出素子の断面模式図を示す図。
【図11】本発明の他の実施例である参照素子を混載した差動方式の生体分子検出素子の測定方式を示す図。
【符号の説明】
【0040】
11,91…シリコン基板、12,32,92,94…ソース、13,33,93,95…ドレイン、14,96…ゲート絶縁物、15,97,98,102…導電性電極、16,84,85…絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート、17,27,86,87…導電性配線、18,88,103,104…遮光部材、21…測定部、22…信号処理回路、23…データ処理装置、24…絶縁ゲート型電界効果型トランジスタ、25,119…参照電極、26…サンプル注入器、28,99…生体分子検出用プローブ、29…測定セル29、30…バッファー溶液、31…電源、41,42,43,44…ドレイン電流値、51…金薄膜、52,111,113…DNAプローブ、53…アルカンチオール、54…2本鎖DNA、44,61…入力波形、62,63,71,72,73,74…応答波形、64…応答波形の立ち上がりにおける緩和成分、65…応答波形の立ち下がりにおける緩和成分、81…サンプル測定用電極、82…コントロール用電極、83…温度計測用ダイオード、81,82…電極、100…疑似分子検出用プローブ、101…疑似参照電極、112…測定用トランジスタ、114…参照用トランジスタ、115,116…トランジスタ駆動回路、117…差動増幅回路、118…信号処理回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲートと配線で接続され、サンプルが導入されるバッファー溶液と接触し、サンプル中のターゲットと結合するプローブが表面に固定化された電極と、
前記バッファー溶液と接触する参照電極と、
前記電極と前記参照電極との間に1kHz未満の周波数の入力電圧波形を印加する電源と、
前記入力電圧波形に対する前記電界効果トランジスタの応答の変化を検出する検出部とを備えることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記入力電圧波形の周波数は10Hz以下であることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記入力電圧波形は矩形波であり、前記検出部は、前記電界効果トランジスタの応答波形の立ち上がりの変化、又は立下りの変化を検出することを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記入力電圧波形は正弦波であり、前記検出部は、前記電界効果トランジスタの応答波形の変化を検出することを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の検出装置において、前記電極は金からなることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項6】
請求項1記載の生体分子検出装置において、第2の電界効果トランジスタと、前記第2の電界効果トランジスタのゲートと配線で接続され、前記バッファー溶液と接触し、前記サンプル中のターゲットと結合しないプローブが表面に固定化された第2の電極とを備え、
前記検出部は、前記電界効果トランジスタの出力と前記第2の電界効果型トランジスタの出力が入力される差動増幅器を有することを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項7】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記電界効果型トランジスタのソース、ドレイン及びチャネル部分が遮光部材で覆われることを特徴とする検出装置。
【請求項8】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記プローブは、核酸、抗体、抗原又は酵素であることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項9】
請求項8記載の生体分子検出装置において、前記プローブはその一端に結合したアルカンチオールを介して前記電極表面に固定化されていることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項10】
サンプル中のターゲットと結合するプローブが表面に固定化された電極を有する電界効果トランジスタの前記電極にバッファー溶液を接触させる工程と、
前記電極と、前記バッファー溶液に接触した参照電極との間に入力電圧波形を印加する工程と、
前記バッファー溶液中にサンプルを注入する工程と、
前記サンプル注入の前後における前記電界効果トランジスタの応答の変化を検出する工程とを有し、
前記入力電圧波形の周波数は1kHz以下であることを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項11】
請求項10記載の生体分子検出方法において、前記電極は前記電界効果型トランジスタのゲートと配線で接続されていることを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項12】
請求項10記載の生体分子検出方法において、前記プローブは、核酸、抗体、抗原又は酵素であることを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項13】
請求項10記載の生体分子検出方法において、前記入力電圧波形は矩形波であり、前記サンプル注入の前後における前記電界効果トランジスタの応答波形の立ち上がりの変化、又は立下りの変化を検出することを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項14】
請求項10記載の生体分子検出方法において、前記入力電圧波形は正弦波であり、前記サンプル注入の前後における前記電界効果トランジスタの応答波形の変化を検出することを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項1】
電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲートと配線で接続され、サンプルが導入されるバッファー溶液と接触し、サンプル中のターゲットと結合するプローブが表面に固定化された電極と、
前記バッファー溶液と接触する参照電極と、
前記電極と前記参照電極との間に1kHz未満の周波数の入力電圧波形を印加する電源と、
前記入力電圧波形に対する前記電界効果トランジスタの応答の変化を検出する検出部とを備えることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記入力電圧波形の周波数は10Hz以下であることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記入力電圧波形は矩形波であり、前記検出部は、前記電界効果トランジスタの応答波形の立ち上がりの変化、又は立下りの変化を検出することを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記入力電圧波形は正弦波であり、前記検出部は、前記電界効果トランジスタの応答波形の変化を検出することを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の検出装置において、前記電極は金からなることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項6】
請求項1記載の生体分子検出装置において、第2の電界効果トランジスタと、前記第2の電界効果トランジスタのゲートと配線で接続され、前記バッファー溶液と接触し、前記サンプル中のターゲットと結合しないプローブが表面に固定化された第2の電極とを備え、
前記検出部は、前記電界効果トランジスタの出力と前記第2の電界効果型トランジスタの出力が入力される差動増幅器を有することを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項7】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記電界効果型トランジスタのソース、ドレイン及びチャネル部分が遮光部材で覆われることを特徴とする検出装置。
【請求項8】
請求項1記載の生体分子検出装置において、前記プローブは、核酸、抗体、抗原又は酵素であることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項9】
請求項8記載の生体分子検出装置において、前記プローブはその一端に結合したアルカンチオールを介して前記電極表面に固定化されていることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項10】
サンプル中のターゲットと結合するプローブが表面に固定化された電極を有する電界効果トランジスタの前記電極にバッファー溶液を接触させる工程と、
前記電極と、前記バッファー溶液に接触した参照電極との間に入力電圧波形を印加する工程と、
前記バッファー溶液中にサンプルを注入する工程と、
前記サンプル注入の前後における前記電界効果トランジスタの応答の変化を検出する工程とを有し、
前記入力電圧波形の周波数は1kHz以下であることを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項11】
請求項10記載の生体分子検出方法において、前記電極は前記電界効果型トランジスタのゲートと配線で接続されていることを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項12】
請求項10記載の生体分子検出方法において、前記プローブは、核酸、抗体、抗原又は酵素であることを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項13】
請求項10記載の生体分子検出方法において、前記入力電圧波形は矩形波であり、前記サンプル注入の前後における前記電界効果トランジスタの応答波形の立ち上がりの変化、又は立下りの変化を検出することを特徴とする生体分子検出方法。
【請求項14】
請求項10記載の生体分子検出方法において、前記入力電圧波形は正弦波であり、前記サンプル注入の前後における前記電界効果トランジスタの応答波形の変化を検出することを特徴とする生体分子検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−134255(P2008−134255A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324312(P2007−324312)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【分割の表示】特願2005−95675(P2005−95675)の分割
【原出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【分割の表示】特願2005−95675(P2005−95675)の分割
【原出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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