説明

生体医用フォーム

【課題】人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるのに適した多孔性の吸収体材料の提供。
【解決手段】親水性の生分解性フォームに関し、それはたとえば、栓またはタンポンの形態で、たとえば出血の抑制、創傷閉鎖、組織癒着の防止および/または組織再生の支持に使用されることができる。吸収体フォームは生分解性の合成重合体を含み、その重合体は、好ましくは該重合体の主鎖に−C(O)−O−基、たとえばポリエーテルと一緒にされたポリウレタンおよび/またはポリエステル単位を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、人体または動物体の洞若しくは腔に詰める(パックする)のに適した生分解性の多孔性吸収体材料に関する。もっと特定すると、それはたとえば、栓、タンポンまたはシートの形態で、たとえば出血の抑制(止血スポンジ)、創傷閉鎖および/または組織再生の支持に使用されることができる生分解性の吸収体フォームに関する。
【背景技術】
【0002】
鼻パッキングは、鼻腔へのパック(詰め物)の適用である。鼻パッキングのもっとも一般的な目的は、鼻中隔または鼻再建の手術の後の出血を抑えること、癒着(付着)または再狭窄を防ぐこと、および鼻出血(鼻の出血)を治療することである。パッキングは、手術後に鼻中隔に支持を施与するためにも使用される。
【0003】
鼻中隔形成術および鼻整形術の場合には、慣用的な非生分解性のパッキングは、手術後の24〜48時間以内にしばしば取り除かれる。鼻出血の場合には、パッキングは、治癒を促進しそして患者が触れたり偶発的に創傷の回復を妨げることを防ぐために、永い期間入れたままにされる。パッキングは、7〜10日という長い間鼻中に残されることができる。創傷が鼻腔内の高い位置にあるならば、ワセリンおよび/または抗生物質で処理されたパッキングが、時には使用される。従来技術では、生体耐久性の創傷被覆材が、鼻パッキングに使用される。これらの生体耐久性のパックは、上述のように数日後には取り除かれなければならない。傷がまだ新しいときにパックを取り除くことは、鼻腔を再び傷付けるかもしれず、そして患者の不快感につながる。ある場合には、これは、血管−迷走神経反射に引き続く患者の失神につながりさえする。
【0004】
数多くの材料が、体液を吸収しまたは除くための歯科用および生体医用フォームとして使用するために従来技術で提案された。ガーゼまたは綿からなる慣用的なパックは、いくつかの不利な点を持つ。すなわち、該材料の流体吸収容量は比較的に低く、その構造は比較的に壊れやすく、そして個々の糸や繊維はばらばらになることがあり、体内手術後に体から材料を取り除くことをうっかり忘れると深刻な合併症に至ることがあり、そして該材料は比較的に高価である。
【0005】
生体医用途を目的としたある種の親水性合成材料は、吸収容量および物理機械的特性の点では、慣用的な材料と比較したときに改善された特性を持っている。当該材料の例は、たとえば米国特許第3,903,232号、米国特許第3,961,629号、米国特許第4,550,126号および欧州特許出願公開第0335669号に開示されたような架橋したポリウレタンに基づいたヒドロゲルである。しかし、これらの材料は、生体耐久性であり、生分解性でない。
【0006】
この生分解性の欠如は、手術中に当該材料を体腔内に使用することを、より低度に適したものにする。というには、フォームが誤って体内に残される可能性が常にあるからである。その上、生来の体開口部へ適用した後に、生分解性でないフォームを取り除くことは、患者にとって非常に不快であることがあり、そして創傷を開口しおよび/または組織にさらなる傷跡を付けることにつながるかもしれない。
【0007】
これらの望ましくない結果を防ぐために、天然由来の材料、たとえばゼラチン、たんぱく質(コラーゲン)、キチン質、セルロースまたは多糖類を含む生分解性スポンジまたは吸収性フォームが、提案された。しかし、これらの材料はすべて、必要とされる機械的強さを欠いている。たとえば、国際特許出願公開第90/13320号の変性ゼラチンの止血スポンジは、激しい鼻出血を止めるのに十分な機械的強さを持たない。何故ならば、湿潤状態での該材料の圧縮強さは低すぎ、そしてスポンジは、鼻腔内に使用された後あまりにも速く液状化するからである。その上、天然重合体の特性は、調節するのが困難である。すなわち、これらは、バッチごとの変動を持つ可能性があり、そしてこれらは一般に合成材料よりも高価である。また、天然由来の生分解性材料、特に動物由来のものは、その使用に関連した生物学的危険の故に好ましくない。
【0008】
生体に吸収可能な合成による外科用被覆材が、いくつかの特許出願に開示された。米国特許第3,902,497号および米国特許第3,875,937号は、ポリグリコール酸(PGA)の生体吸収可能な重合体の外科用被覆材を開示する。当該材料は、他の用途には有用であるけれども、フォームからの十分な対抗圧力が要求される用途、たとえば鼻出血には有用でない。何故ならば、材料は、非常に堅くてもろく、そして弾性がないからである。したがって、PGAに基づいたフォームの物理的特性は、多くの医療用状況への適用には適さない。その上、PGA材料は、激しい出血の間血液を吸収するのに十分なほど親水性ではない。激しい出血を抑えるために、フォームは好ましくは、材料の親水的性質によって高い吸収容量を示す。
【0009】
創傷内に残されることができる合成による吸収性スポンジまたは吸収体フォームの必要性は、今や良く認識されている。当該フォームの必要条件は、a)高い(流体)吸収容量、特に血液に対して、b)急速な流体の吸収、c)外科的処置において容易に取り扱われる強さ、d)どんな部位形状または空間にも適合するほどの心地よさ、e)手術の間若しくは後のまたはフォームを適用した後の特定の期間、機械的特性、たとえば弾力性を維持すること、および、f)過敏な組織への損傷を避けるほどの柔らかさである。ある場合には、フォームの柔らかさは、フォームの湿潤化によって増加されることができる。したがって、吸収性フォームは、湿潤状態でも十分な機械的強さおよび弾力性を持たなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,903,232号公報
【特許文献2】米国特許第3,961,629号公報
【特許文献3】米国特許第4,550,126号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第0335669号公報
【特許文献5】国際特許出願公開第90/13320号公報
【特許文献6】米国特許第3,902,497号公報
【特許文献7】米国特許第3,875,937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
改善された物理的および機械的特性を持つ医療用スポンジとしてまたは創傷保護材として利用されることができる生体適合性のある生分解性の合成フォームの必要性が、存在する。従来技術のスポンジおよび吸収体フォームに付随する欠点および問題を克服し、そして生分解性であり、液体または体液を吸収することができ、そして改善された機械的特性、たとえば湿潤状態のときでさえ高い弾力性を持つフォーム材料を提供することが、本発明の特定の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
非晶質セグメントおよび結晶性セグメントからなる相分離された重合体を含み、そして少なくとも当該非晶質セグメントが親水性セグメントを含む生分解性の吸収体フォームが、人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるための改善された物理的および機械的特性を提供し、そして従来技術のスポンジの不利な点を欠点として持たないことが、驚くべきことにここに見出された。
【0013】
本発明に従えば、非晶質セグメントは親水性セグメントを含まなければならない。この非晶質セグメントは、従来技術において非晶相とも呼ばれ、人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰められたときに、すなわち湿っているときに、それは結晶性ポリエーテルを含むことができるにもかかわらず、湿潤状態で非晶質である。このことは、乾燥状態では当該結晶性ポリエーテルは、重合体の非晶相に部分的に結晶性の特性を与えることができることを意味する。詰められた状態でのフォームの性能が、フォームの特性を決定する。すなわち、詰められた状態では、本発明のフォームは、非晶質の親水性ソフトセグメントまたは相および結晶性ハードセグメントまたは相から構成される。
【発明の効果】
【0014】
それから本発明のフォームが構成されている重合体の相分離された特徴は、この材料に非常に好適な特性を付与する。それから本発明のフォームが構成されている重合体の非晶相中に親水性セグメントまたは基が存在することは、必要とされる特性、たとえば水性液体を吸収する能力および容易に生分解可能であることを、当該フォームにさらに付与する。
【0015】
親水性基は、重合体のハードセグメント中に存在することもできるが、ハードセグメント中に親水性基が存在することが、流体と接触して置かれたときに直ちにフォームの崩壊に至ってはならない。本質的に、結晶性ハードセグメントまたは相は、フォームに剛直性を付与し、流体と接触して置かれたときに、フォームが影響を受けないように保ちそしてフォームの膨潤を防がなければならない。また、本発明のフォームは1より多い非晶質セグメントまたは相を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】鼻ドレッシング材として意図された使用に適した本発明に従うポリエチレングリコール含有ポリウレタンフォームの形および大きさを示す概略図
【図2】種々のプレポリマー組成を持つ、殺菌されたおよび殺菌されていない本発明のポリエチレングリコール含有ポリウレタンのフォームの熱的挙動を示すグラフ
【図3】(3/1)((50/50)グリコリド−ε−カプロラクトン)/PEG1000(重量/重量)に基づいたポリウレタンから調製されたフォームの水分吸収容量を示すグラフ
【図4】37℃における3のPUフォームの固有粘度対それらの分解時間を示すグラフ
【図5】37℃における緩衝溶液中の1.8%の(1/1)((50/50)ラクチド−ε−カプロラクトン)/PEG1000(重量/重量)に基づいたフォームの、50グラムの重量への作用に際しての、断片化までの時間対固有粘度を示すグラフ
【図6】(本発明のフォームに従うドレッシング材を付けた)実験群対(生体耐久性のドレッシング材を付けた)対照群の鼻ドレッシング材(Nasopore)を除去する間の被験患者の不快感を示すグラフ
【図7】(本発明のフォームに従うドレッシング材を付けた)実験群対(生体耐久性のドレッシング材を付けた)対照群の鼻ドレッシング材(Nasopore)を除去する間の鼻出血の発生度を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、第1の面では、本発明は、人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるのに適し、非晶質セグメントおよび結晶性セグメントからなり、そして当該非晶質セグメントが親水性セグメントを含む相分離された重合体を含む生分解性の吸収体フォームを提供する。
【0018】
当該第1の面の1の実施態様では、以下の式の重合体を含む生分解性の吸収体フォームが提供される。

ここで、Rは、1以上の脂肪族ポリエステル、ポリエ−テルエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートから選ばれ、そして少なくとも1のRは親水性セグメントを含み、R’およびR”は独立にC〜Cアルキレンであり、任意的に、C〜C10アルキル基または保護されたS、N、P若しくはO残基で置換されたC〜C10アルキル基で置換されていて、および/またはアルキレン鎖中にS、N、P若しくはO(たとえばエ−テル、エステル、カーボネートおよび/または酸無水物基)を含んでいてもよく、Z〜Zは独立にアミド、尿素またはウレタンであり、QおよびQは独立に尿素、ウレタン、アミド、カーボネート、エステルまたは酸無水物であり、nは5〜500の整数であり、pおよびqは独立に0または1であり、但し、qが0であるときは、Rは少なくとも1の結晶性ポリエステル、ポリエ−テルエステルまたはポリ酸無水物セグメントと少なくとも1の非晶質脂肪族ポリエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートセグメントとの混合物である。アルキレン鎖中のO含有残基は、もし存在するならば、好ましくは親水性基、特にエ−テル基である。というのは、当該親水性基は、重合体に低減した分解時間を付与することができるからであり、それは生体移植物への重合体の使用に望ましいことでありうる。
【0019】
その重合体から本発明のフォームが構成されることができる重合体のもっとも簡単な形は、式:−R−Q−R’−Q−からなることができ、すなわち、q=0のときである。
【0020】
本発明に従えば、非晶質セグメントは、式(I)に従う重合体の−R−部分に含まれる。q=1の場合には、式(I)に従う重合体のQ[−R’−Z−[R”−Z−R’−Z−R”−Z−R’−Q部分は、結晶性セグメントを表す。この特定の場合には、非晶質および結晶性セグメントは交互になっていて、したがって均一のブロック長を持つハードセグメントを与える。
【0021】
上述のように、Rは2以上の異なったタイプの脂肪族ポリエステル、ポリエ−テルエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートの混合物を表すことができ、この混合物は非晶質および結晶性タイプの両方を含み、その結果両方が、本発明のフォームに含まれる。非晶性および結晶性タイプのRセグメントの混合物が、式(I)に従う重合体に備えられる場合には、少なくとも1の親水性セグメントが、少なくとも1の非晶質Rセグメント中に備えられる。
【0022】
式(I)に従う重合体では、QおよびQはアミド、尿素、ウレタン、エステル、カーボネートまたは酸無水物基から選ばれることができ、一方ZからZまでは、少なくとも4の水素結合形成基が結晶性セグメント中に1列に並んで存在するように、アミド、尿素またはウレタン基から選ばれなければならない。−Z−R’−Z−中のR’基は、−Q−R’−Z−または−Z−R’−Q−中のR’と異なっていても同じでもよい。
【0023】
既に述べたように、Rは親水性セグメントを含み、そして当該親水性セグメントは、非常に好適にはエ−テルセグメント、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールのようなポリエ−テル化合物から誘導されるポリエ−テルセグメントであることができる。また、Rに含まれる親水性セグメントは、ポリペプチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはポリ(メタクリル酸ヒドロキシメチル)から誘導されることができる。親水性セグメントは、好ましくはポリエ−テルである。
【0024】
他の実施態様では、生分解性の吸収体フォームが本発明によって提供され、該フォームは以下の式の重合体を含む。
-[R-Q1-R'''-Q2-]n (II)
ここで、R、Q、Qおよびnは上に記載された通りであり、QおよびQは独立に尿素、ウレタン、アミド、カーボネート、エステルまたは酸無水物、好ましくは尿素、ウレタンまたはアミドであり、R'''は上に記載されたR、R’またはR”から選ばれ、但し、R'''がR’またはR”であるときは、Rは少なくとも1の結晶性ポリエステル、ポリエ−テルエステルまたはポリ酸無水物と少なくとも1の非晶質脂肪族ポリエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートとの混合物である。R'''がRであるときは、少なくとも1の結晶性ポリエステル、ポリエ−テルエステルまたはポリ酸無水物並びに少なくとも1の非晶質脂肪族ポリエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートが当該重合体に備えられている。するとやはり、親水性セグメントは、相分離された重合体の当該非晶質セグメント中に備えられ、そして非晶質および結晶性セグメントは交互になる。
【0025】
さらなる面では、本発明は、上で定義された式(I)の相分離された生分解性の重合体を提供する。
【0026】
さらに他の面では、本発明は、式(III)の1以上のプレポリマーを、
A−R−A’ (III)
式(IV)の1以上のジイソシアネートと、
O=C=N−R’−N=C=O (IV)
そして任意的に式(V)の1以上の鎖延長剤とを反応させることを含む、
B−R’’−B’ (V)
本発明に従う式(I)の相分離された生分解性の重合体の調製方法を提供し、ここでR、R’およびR”は式(I)で定義された通りであり、そしてA、A’、BおよびB’はヒドロキシル、カルボキシルまたはアミンから独立に選ばれる。好ましくは、上の化合物(III)、(IV)(の反応生成物)と(V)との鎖延長反応は、溶媒中で、より好ましくは1,4−ジオキサンまたはトリオキサン中で、さらにより好ましくは1,4−ジオキサン中で実施される。さらにもっと好ましい実施態様では、化合物(III)と(IV)との間の反応はバルクで実施され、その後でいわゆる鎖延長反応が化合物(V)とで溶媒中で実施される。
【0027】
この実施態様の代わりの方法では、化合物(IV)と(V)との間の反応がバルクで実施され、その後でいわゆる鎖延長反応が化合物(III)とで溶媒中で実施される。式(III)、(IV)および(V)の化合物を互いに反応させる順序、すなわち最初に(III)と(IV)そして次に(V)、または代りに、最初に(IV)と(V)そして次に(III)を選択することによって、得られる重合体の構成および特性が適合化されそして調整されることができる。
【0028】
さらによりよい特性を持つ相分離された重合体を与えるために、式(III)、(IV)および(V)の化合物を互いに反応させる順序は、たとえば最初に式(IV)と(V)の化合物を反応させて中間錯体を形成させることによって、さらに適合化されることができる。使用される化合物(IV)および(V)のモル比に応じて(すなわち化合物の一方が他方より過剰に存在しなければならない。)、式(VI)に従うジイソシアネート(R’、R”、ZおよびZは上で定義された通りである)が生成されるか、
O=C=N−R’−Z1-R’’-Z2−R’−N=C=O (VI)
あるいはヒドロキシル、カルボキシルまたはアミンの末端基を持つ化合物、すなわち式(VII)の化合物が生成される
B−R’’−Z1−R’−Z2−R’’−B’ (VII)
(ここでR’、R”、Z、Z、BおよびB’は上で定義された通りである)。
【0029】
化合物(IV)、すなわち中間体ジイソシアネート錯体は、式(III)の化合物との反応に直接使用されることができるのに対して、化合物(VII)、すなわちヒドロキシル、カルボキシルまたはアミンの末端基を持つ中間化合物は、過剰の式(IV)のジイソシアネートと再び反応させられ、式(VIII)のジイソシアネートを生成し、
O=C=N−R’−Z1-R’’-Z2−R’−Z3−R’’ーZ4ーR’−N=C=O (VIII)
(ここでR’、R”およびZ〜Zは上で定義された通りである)、この化合物(VIII)は、次に化合物(III)との反応に使用されて、本発明の重合体を生成する。
【0030】
この後者の方法の結果は、式(I)の相分離された生分解性の重合体であり、ここで構成要素R’およびR”は、交互形のR’−R”−R’−R”−R’セグメントの中に含まれ、そしてここで構成要素R’およびR”は、いろいろな種類の化学結合Zによってつながれている。
【0031】
この重合体構造は、他の方法によっても調製されることができ、その場合には式(IV)の化合物は、過剰の式(V)の化合物と反応させられて式(VII)の中間化合物を生成し、その後でこの中間化合物を、式(III)の化合物を過剰量の式(IV)の化合物と反応させて得られた式(IX)のもう一つの中間化合物と反応させる。
O=C=N−R’−Z1-R-Z2−R’−N=C=O (IX)
式(VII)の化合物と式(IX)の化合物との間の反応は、セグメント連鎖−R’−R−R’−R”−R’−R”−を持った重合体状の化合物を生成する結果になるだろう。
【0032】
式(I)でq=0の(または式(II)でR'''=R”の)重合体は、Rが少なくとも1の結晶性ポリエステル、ポリエ−テルエステルまたはポリ酸無水物セグメントと親水性基を含有する少なくとも1の非晶質脂肪族ポリエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートセグメントとの混合物であるならば、式(III)の少なくとも2の化合物と式(IV)の1の化合物との鎖延長反応によって得られることができる。
【0033】
本発明の重合体はバルクで、またはより好ましくは溶媒中で製造される。非常に好適なそのような溶媒は、1,4−ジオキサンまたはトリオキサンである。本発明の重合体を溶媒中で製造する利点は、非常に好都合な出発材料が、かくして本発明のフォームの調製に提供されることである。この出発材料は、溶液の形態で既に存在しているので、重合体の溶媒への時間のかかる溶解が実施される必要がない。もっとも好まれるのは、1,4−ジオキサン溶媒の使用である。
【0034】
他の面では、本発明は、相分離された重合体であって、当該重合体が非晶質セグメントおよび結晶性セグメントを含みそして少なくとも該非晶質セグメントが親水性基を含んでいる重合体の1,4−ジオキサンまたはトリオキサン中の溶液を用意し、該溶液を凍結し、そして溶媒を凍結乾燥によって昇華させることを含む本発明のフォームを調製する方法を提供する。凍結乾燥は、従来技術に知られた標準的な方法によって実施されることができる。
【0035】
他の実施態様では、本発明のフォームは、相分離された生分解性の重合体を用意し、そして当該重合体を、たとえば従来技術で知られている押出法において発泡剤を使用することによって本発明のフォームに成形することを含む方法によって調製されることができる。当該押出法は、当該重合体の溶融およびこのようにして生成された溶融物をガス、好ましくは二酸化炭素のようなガスの助けを受けてフォームへと押出すことを、たとえば含むことができる。
【0036】
さらに他の代わりの実施態様では、本発明のフォームは、上述の式(IV)のジイソシアネート分子または中間ジイソシアネート化合物(VI)、(VIII)若しくは(IX)のうちの1を式(III)および/または(V)のジカルボン酸若しくはヒドロキシカルボン酸と、任意的に式(III)のジヒドロキシルプレポリマーと組み合わせてそして任意的に水の存在下に反応させることによって式(I)の相分離された生分解性の重合体を調製し、そして重合反応を完了する間に二酸化炭素のその場(インシチュウ)生成を許すことを含む方法によってたとえば調製されることができる。イソシアナート基のカルボキシル基および(水を含む)ヒドロキシ基に対する比は、好ましくは1に近くなければならない。
【0037】
しかし、好ましい実施態様では、人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるのに適した生分解性の吸収体フォームを調製する方法は、上述のように本発明に従う重合体を1,4−ジオキサンまたはトリオキサン中で調製し、重合の間重合体溶液を溶媒で希釈し、反応混合物を凍結し、そして溶媒を昇華することを含む。
【0038】
さらに他の実施態様では、本発明のフォームは、式(III)に従う少なくとも2の異なった化合物を互いに反応させることによって、式(II)の相分離された生分解性の重合体を調製することを含む方法によって調製されることができる。この場合には、Rは少なくとも1の親水性セグメントを含み、そして式(III)に従う少なくとも1の化合物は結晶性セグメントを提供し、そして式(III)に従う少なくとももう1つの化合物は非晶質セグメントを提供し、当該少なくとも1の親水性セグメントは当該非晶質セグメント中に備えられている(式(II)においてR'''がRである)。あるいは、式(III)の化合物は、式(V)または式(VII)の化合物と、かつ活性化剤、たとえばN−ヒドロキシコハク酸イミド若しくは誘導体、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド、マレイミドまたはジシクロヘキシルカルビジイミド(DCC)の存在下で鎖延長反応と組み合わせて、反応させられることができる。当該反応は、従来技術において周知である。
【0039】
さらなる面では、本発明は、本発明の方法によって得ることができる、人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるのに適した生分解性の合成による吸収体フォームを提供する。
【0040】
最後の面では、本発明は、本発明に従うフォームを止血スポンジとして、創傷被覆材料として、歯科用パックを含む、人体または動物体の洞若しくは他の腔へのパッキングとして、または薬物送達媒体として使用すること、並びに本発明の相分離された生分解性重合体を本発明のフォームの製造に使用することに関する。
【0041】
図1は、鼻ドレッシング材として意図された使用に適した本発明に従うポリエチレングリコール含有ポリウレタンフォームの形および大きさを概略的に示す。
【0042】
図2は、実施例の結果と考察に記載された様に、種々のプレポリマー組成を持つ、殺菌されたおよび殺菌されていない本発明のポリエチレングリコール含有ポリウレタンのフォームの熱的挙動を示す。
【0043】
図3は、実施例の結果と考察に記載された様に、(3/1)((50/50)グリコリド−ε−カプロラクトン)/PEG1000(重量/重量)に基づいたポリウレタンから調製されたフォームの水分吸収容量を示す。
【0044】
図4は、実施例の結果と考察に記載された様に、37℃における3のPUフォームの固有粘度対それらの分解時間を示す。
【0045】
図5は、実施例の結果と考察に記載された様に、37℃における緩衝溶液中の(1/1)((50/50)ラクチド−ε−カプロラクトン)/PEG1000(重量/重量)に基づいた1.8%フォームの、50グラム重りの作用後の、断片化までの時間対固有粘度を示す。
【0046】
図6は、(本発明のフォームに従うドレッシング材を付けた)実験群対(生体耐久性のドレッシング材を付けた)対照群の鼻ドレッシング材(Nasopore)を除去する間の経験ある患者の不快感を示す。
【0047】
図7は、(本発明のフォームに従うドレッシング材を付けた)実験群対(生体耐久性のドレッシング材を付けた)対照群の鼻ドレッシング材(Nasopore)を除去する間の鼻出血の発生度を示す。
【0048】
「スポンジ」の語は、構造が網状でありそしてその外表面よりもかなり大きい内表面を持つこと、それが網状構造内に中空の空間(孔)を有すること、そしてそれが短時間に自重の何倍もの液体を吸収することができることを特徴とする多孔性構造を意味すると理解される。他方、「フォーム」は、これらの特定の吸収特性を必ずしも持たず、そして例として創傷閉鎖に、たとえば感染および/または組織癒着を防止するために、または組織再生の目的(孔内への細胞成長)に使用されることができる。他方において、フォームは、流体を吸収する能力を持つような多孔性構造を含むことができる。当該フォームが本発明の主題であり、そして(スポンジを含めて)吸収体フォームとも呼ばれる。
【0049】
本明細書で使用される「詰める」(あるいはパッキング)の語は、吸収体材料を適当な大きさにした形態(パック、タンポン、栓またはドレッシング材と呼ばれる。)で、洞または他の体腔内に置く行為をいう。
【0050】
本明細書で使用される「洞」の語は、生得に備わっている体腔をいい、それは内腔であってもよい。
【0051】
本明細書で使用される「生分解性」の語は、重合体が、一般に生きている細胞または有機体若しくはこれらの組織の一部によって加水分解も含めて生化学的に作用を受け、そして化学的または生化学的生成物へと減成しそして崩壊する能力をいう。
【0052】
本明細書で使用される「生体吸収性」の語は、人体または動物体によって完全に代謝される能力をいう。
【0053】
本明細書で使用される「相分離された重合体」の語は、ソフト(非晶質)セグメント並びにハード(結晶性)セグメントを含む重合体であって、ハードセグメントが少なくとも哺乳類の体温(ヒトについては一般に37℃である。)の相転移温度を持ち、そして当該重合体から調製されたフォームが、人体または動物体に十分な期間適用されたときに相分離された形態(モルホロジー)が判然としている重合体をいう。また、人体または動物体と同等の温度条件下に置かれた重合体は、当該相分離された形態を示す。相分離された重合体は、通常の環境状態において異なった形態を持つ少なくとも2の非混和性または部分的に混和性の相の存在を特徴とする。1の材料内に、ゴム相および結晶相が(非晶相のガラス転移温度より上で、そして結晶相の融解温度より下の温度において)、またはガラス相および結晶相が(非晶相のガラス転移温度より下の温度において)存在することができる。また、少なくとも2の非晶相が、2の相転移の間の温度において、たとえば1のガラス相および1のゴム相が存在することができる。融解温度かガラス転移温度のどちらかである最も高い相転移より上の温度においては、液相およびゴム相または2のゴム相がそれぞれ、相混合形態を形成することができ、またはそれらは依然として非混和性であることもできる。非混和性の液相および/またはゴム相は、通常の環境条件において初期の所望された機械的特性を持たない相分離された形態を持つ重合体を通常生じる。
【0054】
本明細書で使用される「非晶質」の語は、フォームが詰められる人体または動物体の洞若しくは他の腔の温度よりも下の少なくとも1のガラス転移温度を持つ本発明の重合体中に存在するセグメントをいい、また、非晶質セグメントと、人体または動物体に詰められたときには完全に非晶性である結晶性セグメントとの組み合わせをいうこともできる。たとえば、プレポリマー中のPEGは、純粋な形では結晶性であることができるが、式(I)または(II)のポリウレタンのRセグメント中に含まれるときは非晶質であることができる。より長いPEGセグメントは、式(I)または(II)のポリウレタンのRセグメント中に含まれるときでも部分的に結晶性であることができるが、水と接触して置かれると非晶質になるであろう(「溶解する」)。したがって、このようなより長いPEGセグメントは、式(I)または(II)の相分離された重合体のソフトセグメントの一部であるが、他方でハードセグメントは、湿潤されそして詰められた状態のフォームに少なくともある期間十分な支持を付与するためにその性質が結晶性のままでなければならない。
【0055】
本明細書で使用される「結晶性」の語は、人体または動物体に詰められたときに結晶性である、すなわちフォームが詰められる人体または動物体の洞若しくは他の腔の温度よりも上の融解温度を持つ、本発明の重合体中に存在するセグメントをいう。
【0056】
本明細書で使用される「親水性セグメント」の語は、少なくとも1の、好ましくは少なくとも2の、より好ましくは少なくとも3の親水性基、たとえばC−O−C、すなわちエーテル結合によって付与されることができるような親水性基を含むセグメントをいう。親水性セグメントは、したがってポリエーテルセグメントによって付与されることができる。親水性セグメントは、ポリペプチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはポリ(メタクリル酸ヒドロキシメチル)によって付与されることもできる。親水性セグメントは、好ましくはポリアルキレングリコール、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールから誘導される。好まれる親水性セグメントは、ポリエチレングリコール(PEG)セグメントである。
【0057】
本明細書で使用される「セグメント」の語は、任意の長さの重合体状の構造をいう。重合体技術の分野では、長い重合体状の構造は、しばしばブロックと呼ばれ、一方短い重合体状の構造は、しばしばセグメントと呼ばれる。これらの慣用的な意味の両方は、本明細書で使用される「セグメント」の語に含まれていると理解される。
【0058】
本発明に従う生分解性の吸収体フォームは時間が経つと減成するので、洞、たとえば鼻腔に適用された後で、機械的に取り除かれる必要がない利点を有する。本材料がその機械的特性を失い始めそして崩壊するまでの時間は、周囲の組織が治癒することを可能にする。その間、組織は本発明のフォームによってその機械的特性のおかげで支持されそして適所に保持され、さらにフォームは、かなりの量の流体を吸収する能力がある。ある期間の後に、フォームは減成しそして崩壊する。このようにして周囲の組織への損傷は防がれ、または非常に限定された程度にしか生じない。
【0059】
このフォーム材料の特性は大部分、それからフォームが調製される重合体材料の性質によってもたらされる。この重合体材料は、非晶質セグメントおよび結晶性セグメントからなる相分離された重合体を含む。理論に縛られることは望まないが、各種のソフト(非晶質)セグメントおよびハード(結晶性)セグメントのこの相分離が、フォーム材料の特定の機械的特性、たとえばその弾力性の原因であると信じられる。
【0060】
本発明のフォームは、たとえばウレタン、尿素またはアミド結合が付与されている重合体を含む。これらの結合は、上記で定義された式においてZ〜Zおよび任意的にQおよびQで表示され、そしてq≠0であるならば、本発明の重合体の結晶性セグメントの一部を構成する。これらのハードな結晶性セグメントは、セグメントR中に含まれる非晶質脂肪族ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリ酸無水物またはポリカーボネートと化学的に非相溶性なので、重合体中の相分離が生じる。ハードセグメントは、結晶化して他のハードセグメントと強い水素結合を形成し、その結果物理的な架橋が生じる。
【0061】
さらに、材料の生分解性は、本発明の重合体中に酵素によって開裂可能なまたは加水分解可能な結合を付与することによって達成される。材料が生分解性であるために、従来技術に知られているいくつかの種類の重合体が、したがって本発明の重合体に含まれることができる。このような生分解性重合体は、1以上のエステル、酸無水物および/またはカーボネートの加水分解可能な残基を、任意的にエーテル残基と一緒に持つ重合体を含むことができる。当該基は、本発明のフォームに使用される重合体についての式(I)または(II)に従う構成要素R中に非常に好適に備えられる。もっとも、エーテルおよびエステル残基は、結晶性セグメントの構成要素R’および/またはR”中に含まれることもできる。式(I)の重合体でqが零である場合、または共重合体、たとえば式(I)の重合体以外の重合体、すなわち、たとえば式(II)の重合体中に、水素結合形成基が存在しない場合、結晶性ハードセグメントおよび非晶質ソフトセグメントの相分離は、非相溶性のポリエーテル、ポリエステル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネート基によってもたらされ(ここで少なくとも1相が結晶性である)、これはたとえば式(I)中のRを通して或いは他の様式で含まれる。
【0062】
本発明の重合体は、エステル、カーボネート、酸無水物、ウレタン、尿素またはアミド結合の加水分解および/または酵素による作用によって減成すると考えられる。分解の速度および他の特性は、最終重合体中のこれらの残基の含有量および組み合わせを選択することによって調節されることができる。
【0063】
本発明のフォームの製造に使用されることができる合成の生分解性重合体の例は、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリラクトン、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート、ポリジオキサノン、ポリ酸無水物、ポリウレタン、ポリエステル(エーテル)ウレタン、ポリウレタン尿素、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリアミノ酸、ポリホスホン酸エステルおよびポリホスファゼンに基づいたものである。重合体材料は、共重合体若しくは架橋された重合体の異なった構成ブロックとしてまたは2以上の(共)重合体のブレンドとして上記の成分の混合物からなることもできる。
【0064】
フォーム材料に吸収特性を付与するためには、本発明のフォームの調製に使用される重合体は、該重合体を親水性重合体または基と組み合わせることによってかなり改善されうることがさらに見出された。このことは、上述の重合体が、たとえば親水性重合体を最終的に得られる重合体の主鎖または側鎖に取り込むことによって、これらの親水性基と化学的に組み合わせられることを意味する。また、本発明のフォームは、生分解性および親水性重合体の物理的なブレンドを含むこともできる。親水性重合体または基は、ポリエーテル、ポリペプチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはポリ(メタクリル酸ヒドロキシメチル)(ポリ−HEMA)に基づくことができる。好まれる親水性重合体はポリエーテル、すなわち少なくとも1の−C−O−C−基を含む重合体またはセグメントである。何故ならば、これらの化合物は化学合成反応において取扱いが容易だからである。その上、これらの化合物は一般に安全とみなされている(GRAS)。好まれるポリエーテルはポリエチレングリコールである。親水性基はソフトセグメントの一部であり、そこで親水性基は、本発明のフォームが適用されることになる状態の下でエステル、カーボネートまたは酸無水物基の分解速度を増加させるだろう。そしてさらに親水性基はハードセグメントの一部であることもできる。
【0065】
特に、吸収容量(水分吸収の量およびその速度)および分解挙動は、したがって合成の間に適当量のこれらの親水性重合体または基を取り込むことによって調節されることができる。したがって、ハードセグメントの溶解度および/または分解速度を増加して、かくして重合体の完全分解または再吸収に必要な時間を短縮するために、親水性基をハードセグメント中に取り込むことも可能である。しかし、ハードセグメントが、濡れたときでさえも、相分離された重合体に十分な弾力性を付与するように注意しなければならない。
【0066】
上のことから、ソフトおよびハードセグメントの適当な選択によって、酵素およびヒトまたは動物の体液による生分解のための時間並びに材料が減成される程度は調節されることができることは明らかである。完全な生分解は、体によって代謝されるのに十分なほど小さい断片を生じるだろう。材料の特定の適用、たとえば鼻ドレッシング材では、この材料の分解生成物は、より小さいまたはより大きい断片でも、それが減成されて体によって代謝されることができる断片になる前に、消化管を経由してかあるいは体開口部、たとえば鼻、鼻孔を経由して排除される。本発明に従う吸収体フォームは、完全には生体吸収性ではなくて、より小さいまたはより大きい断片でも、それが適用された腔からの排除を可能にする程度にのみ生分解性である重合体材料を好適に含むことができる。
【0067】
フォームの断片化が始まるまでの時間(フォームがまだいくらかの弾性的挙動を示すかもしれないけれども、僅かの圧力を加えるとフォームの機械的強度が失われるまでの時間)は、数時間から数週間までいろいろであることができるが、好ましくは1時間〜21日、より好ましくは6時間〜5日であり、好まれる時間は適用の場所および目的に依存する。完全な断片化(材料および/またはフォーム構造の一体性がなくなること)および消失は、フォームが一時的な使用(たとえば鼻パッキング)の後に創傷から排除されなければならない場合には、好ましくは1〜10日、より好ましくは2〜5日である。フォームが人工的に作られた腔、たとえば口腔上顎洞瘻孔を閉じるための歯科用埋込み物にまたは止血スポンジとして使用される場合には、断片化が始まるまでの時間は、好ましくは1〜14日以内である。この間にまたはその後に、高度に多孔性のフォーム材料の中に組織成長が生じることができ、その後で体による分解生成物の完全な分解および吸収が続く。材料が完全に減成されそして吸収されるまでの時間は、重合体の構成ブロックの種類およびそれの加水分解的および/または酵素的分解速度に依存するだろう。これは、数週間または数ヶ月から数年までいろいろであることができる。
【0068】
口腔内では、たとえば抜歯の後で、本発明に従う吸収体フォームは、新組織の成長が可能であるように、よりゆっくりと生分解することができる。たとえば、歯科手術では完全に生体吸収性の材料が要求される状況が起こりうる。たとえば、上顎の構成要素の摘出の際に、口腔と上顎洞との間に孔が生じることがある。このような口腔上顎洞瘻孔は、粘膜筋弁が創傷上に縫合される外科手術によって通常閉鎖される。本発明の生体吸収性フォームを用いた閉鎖は、患者への不快感がより少ない利点を持つ。本発明の生体吸収性フォームを用いた閉鎖は、上顎洞を感染を受けることから守る。
【0069】
その上、吸収体フォームは、その止血性および多孔性の構造によって血液を吸収し、そして創傷の治癒の間適所に留まるのに十分な強さを示す。新組織は吸収体フォームの中に成長することができる。本発明の生分解性の吸収体フォームの製造に使用される重合体の適切な選択によって調節されることができるある期間の後に、該吸収体フォームは減成して単なる残渣物になり、そして究極的には体によって完全に代謝されるだろう。
【0070】
このような完全に代謝されうる吸収体フォームは、本発明の他の利点に関係する。本発明の生体吸収性の吸収体フォームが、人体または動物体に(たとえば、止血用の開腹術スポンジまたは移植物として)使用され、そしてもうそこから取り除かれる意図がなく、そこに残されるならば、分解生成物は体によって代謝されなければならない。したがって、それから本発明に従う吸収体フォームが調製される重合体材料は、好ましくはそれが完全に生体によって吸収可能であるように選ばれる。このような生体によって吸収可能な吸収体フォームを外科手術処置に使用することは、該材料が必ずしも術後に取り除かれる必要がなくてそこに残されることができる利点を有する。人体または動物体に使用される、合成による生分解性の吸収体フォームを提供することは、本発明の1面である。
【0071】
本発明に従う材料は、数日または最大でも数週間の期間後に崩壊することになる利点を持つ。これは、止血材の除去によって誘起される合併症の発生率を減少し、そして患者の便宜を増加する。本発明に従えば、材料は、卓越した弾力性および周囲組織への支えを含めて優れた機械的特性を持って提供され、そのことは血液の流れを止めおよび/または組織をその位置に保つ上で重要である。それでもなお、材料は急速に崩壊し、その後にそれが適用された体腔から排除される能力がある。この特徴の組み合わせは、動物から誘導されたもの由来の慣用の生分解性材料を使用することによっては達成されることができない。弾性特性(並びに使用した後のその維持)が、出血を止めおよび/または組織癒着を防ぐのに十分なように創傷を支持するために要求される。
【0072】
本発明のフォームは0.01〜0.2g/cm、好ましくは0.02〜0.07g/cmの密度を持つことができる。さらに、本発明のフォームは85〜99%、好ましくは92〜98%、さらにより好ましくは95〜98%の多孔度を持つことができる。本発明のフォームは、体温において十分な流体吸収容量を持つ。
【0073】
流体吸収容量は、重合体の親水的性質の存在および孔の形状の故に、水の孔への毛管吸収によって主に決定される。フォームの孔は、流体を保持するのに十分なほど小さくなければならない。高度に多孔性のフォームに吸収される水の量は、ある多孔度の範囲ではほとんど同じである。というのは、フォームの全孔容積は多孔度にほとんど影響を受けないからである。これは、g−水/g−重合体単位で測定された容量はフォームの密度に依存することを意味する。たとえば密度を0.01グラム/cmから0.02グラム/cmへ2倍にすると吸収容量(g/g)は半分になるだろう。したがって、吸収容量は、容積(cm)当たり吸収される水の量(g)として測定され、それは好ましくは0.5〜0.99g/cm、より好ましくは0.75〜0.97g/cmである。たとえば、0.04g/cmの密度を持ち、そして96.4%の多孔度を持つ実施例に記載された親水性ポリウレタンフォームは、cm当たり0.8gの水の吸収容量を持つ。これは、重合体材料のグラム当たり20グラムの水の容量と同じである。
【0074】
鼻出血への適用では、出血を止める程度の、ある限定された圧力を創傷領域内に生じさせるために、流体の吸収は非常に急速でなければならない。完全に充満したフォームは、創傷組織に依然として十分な支持を提供しなければならない。
【0075】
短い時間内に、吸収された液体の量は最大にならなければならず、好ましくは液体中でフォームを圧搾して20分以内である。フォームの膨潤の程度は低くなければならない。すなわち、フォームは飽和したときに好ましくはその寸法を保たなければならない。10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満の膨潤が観測されなければならない。これは、フォームが洞または腔に挿入される前に予め湿潤化される場合に望まれる。膨潤はこの場合、乾燥したフォームの容積と比較した、フォーム容積の最大の増加を意味する。
【0076】
本発明のフォームは、機械的特性、たとえば十分な復元性または弾力性を持ち、これらは「湿った」状態下に、すなわち、フォームが膿状物質を含めて体液と接触しているときにも維持される。重合体ブロックの水への溶解度および重合体の分子量のどちらも、後でいくつかの実施例を用いて詳細に説明されるであろうように、これらの面に対して重要である。
【0077】
本発明のフォームは親水性であり、換言すると良好な濡れ性を示す。良好な濡れ性は、実質的に80°未満、好ましくは40°未満、より好ましくは実質的に零度の(水滴についての)接触角を持つこととして定義されることができる。
【0078】
好ましくは、本発明のフォームは一片で提供される。というのは、これが容易な製造方法を可能にするからである。しかし、数品片が、血液を吸収しそして出血を止めるのに十分な材料で腔を満たすために同時に使用されることもできる。フォームは、たとえば従来技術で周知の注型法を使用して、任意の可能な形および大きさにつくられることができる。
【0079】
本発明のフォームは、たとえば栓(パック、タンポンまたはドレッシング材)または多孔性シートの形態であることができる。シートは後で巻かれて栓または管にすることができる。
【0080】
鼻腔を満たすためのフォームは、非常に好適には1〜50mm、好ましくは8〜15mm、より好ましくは12〜15mmの厚さを持つことができる。フォームの幅は好ましくは10〜30mm、より好ましくは15〜20mmである。その長さは典型的には数10mm、たとえば20〜90mm、またはそれより大である。
【0081】
図1は、本発明に従うフォームの形の例を示し、これはたとえば手術後に鼻パッキングとしてまたは鼻出血の治療のために使用されることができ、たとえば10〜15mmの厚さ(h)、たとえば15〜20mの幅(w)、および35〜85mmの長さ(l)を持つ。描かれた形および大きさは、鼻腔を満たすために好まれ、そして粘膜組織に良好な圧縮を与える。
【0082】
本発明に従えば、人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるのに適したフォームは、非晶質セグメントおよび結晶性セグメントからなる相分離された重合体を含み、そして少なくとも非晶質セグメントは親水性セグメントを含む。本発明に従えば、吸収性フォームの基となっている重合体は、相分離された線状重合体または化学的に架橋した重合体である。
【0083】
相分離された形態は、2の融解温度、2のガラス転移温度、または1の融点および1のガラス転移温度によって示されるように、1の重合体中に少なくとも2の相転移を持つ重合体を生じる。
【0084】
上述の要件は、重合体の主鎖中に−C(O)−O−基を含む相分離された合成重合体を提供することによって、非常に好適に達成されることができることが見出された。好ましくは、重合体はポリウレタン(−NH−C(O)−O−)、ポリエステル(−C(O)−O−)、ポリ酸無水物(−C(O)−O−C(O)−)またはポリカーボネート(−O−C(O)−O−)に基づいた重合体、すなわち、(ポリウレタンに基づいた)窒素原子、(ポリエステルまたはポリ酸無水物に基づいた)炭素原子または(ポリカーボネートの)酸素原子が、O−原子に隣接した脂肪族炭素原子(ポリウレタン、ポリエステルおよびポリカーボネート)またはカルボニル基(ポリ酸無水物)と一緒に当該−C(O)−O−基のC−原子につながっている重合体である。
【0085】
本発明に従って使用される重合体の主鎖は、好ましくは共重合体から形成され、それは、2以上の異なった単位、すなわち、ウレタン、尿素またはアミド残基から選ばれた少なくとも1、およびエーテル残基と一緒にされたエステル、酸無水物またはカーボネート残基の群から選ばれた少なくとも1を含む。
【0086】
親水性の生分解性フォームとして使用されるのに非常に適した共重合体は、ポリエーテル(エステル)ウレタンである。
【0087】
他の好まれる実施態様では、相分離されたポリエステル、ポリ酸無水物およびこれらとポリカーボネートおよびポリエーテル基の組み合わせを含むフォームは、ランダムまたはブロック共重合体であることができ、その中でブロックは1以上の上述の残基を含有することができる。好ましくは、ブロック共重合体、特にその中に結晶および非晶相の両方が存在する多ブロックセグメント化共重合体が使用される。相分離された重合体と他の相分離されたまたは単相の非晶質(共)重合体との物理的ブレンドは、中間の特性を持つフォームの生成に使用されることができる。重合体の組み合わせを変えることによって、フォームの特性、たとえば分解速度、親水性および機械的特性は微調整されることができる。たとえば、ポリエステルウレタンとポリウレタンのソフトセグメントと同じような組成を持つコポリエステルとのブレンドのフォームは、これら重合体の相溶性の故に2成分の特性の中間の特性を与える。さらに、そのソフトセグメントが相溶性かそうでなくても、異なったソフトセグメント組成を持つポリ(エーテル)エステルウレタンと、それと同じ種類のハードセグメントを持つポリ(エーテル)エステルウレタンとは、混合されそして中間の特性を持つフォームへと製造されることができる。
【0088】
高分子量は、良好な初期の機械的特性を持つ重合体またはフォームを得るためには必要でない。好まれる固有粘度は、使用される重合体の種類に応じて0.5〜4dl/gの間にある。たとえば、あるポリウレタンでは、0.6dl/gの固有粘度でも依然として、良好な機械的特性を持つ高度に多孔性のフォームを与えることができる。2000のプレポリマー分子量を持つ式(I)に従う相分離されたポリウレタンは、30〜120MPaで変動する初期弾性率および10〜45MPaの引張強さを持つことができる。破断伸びは(重合体のフィルムで測定されて)500〜1200%で変動する。
【0089】
あるいは、ポリアミド(すなわち、主鎖に−NH−C(O)−結合を含有する重合体)またはポリ尿素(すなわち、主鎖に−NH−C(O)−NH−結合を含有する重合体)に基づく合成重合体が、使用されることができる。上述の構造においてウレタン、尿素および/またはアミド結合の組み合わせも可能である。親水性の生分解性フォームへの使用に非常に適した共重合体は、ポリエーテル(エステル)ウレタンである。
【0090】
相分離された重合体は、半結晶性の単独重合体、ブロック共重合体または多ブロックセグメント化共重合体であることができる。少なくとも1の相は、好ましくは37℃より高い転移温度を持つ。最も高い転移温度を持つセグメントまたはブロックは、「ハード」ブロックと呼ばれ、一方、最も低い転移温度を持つセグメントまたはブロックは、「ソフト」ブロックと呼ばれる。ハードブロックは、好ましくは結晶状態から液体状態への相転移を持つ、ウレタン、尿素、アミド、ポリエステルまたはポリ酸無水物基、またはこれらの構成要素の組み合わせからなることができる。ソフトブロックは、好ましくは37℃以下のガラス転移温度を持つ非晶質ポリエステル、ポリ酸無水物またはポリカーボネートを含む。当該温度は、フォームを人体への使用に非常に適したものにする。
【0091】
フォームの曲げやすさ、圧縮性および弾力性は、重合体中のハードブロックとソフトブロックとの比並びにそれらの組成を選択することによって調節されることができる。ハードブロックの含有量および組成は、湿潤および乾燥状態でのフォームの初期強さに寄与する。したがって、ハードブロックの含有量および組成は、湿潤および乾燥状態でのフォームの十分な初期強さが得られるように選ばれなければならない。その構造が湿潤後も維持されるフォームを製造するためには、ハードブロックは好ましくはソフトブロックよりも低い親水的特徴を持つ。重合体のより速い溶解および材料特性の急速な消失を達成するためには(ある場合にはそれが有利である)、より親水性のハードブロックが選択されることができる。
【0092】
本発明に従う相分離された重合体は、式(I)で表されることができる。

ここで、R、R’、R”、Z〜Z、Q、Q、n、pおよびqは上で定義された通りである。
【0093】
この式において、−R−は、ソフトセグメントまたはソフトセグメントとハードセグメントとの組み合わせを表す。
【0094】
さらに、−Q[−R’−Z−[R”−Z−R’−Z−R”−Z−R’−Q部分は、結晶性またはハードセグメントを表し、その組成は、重合体のこのセグメントの製造方法(以下を参照)によって主として決定される。当該重合体では、結合は好ましくは個々の重合体鎖間で水素結合する可能性を与えるようなものである。したがって、QおよびQは好ましくは尿素、ウレタンまたはアミドから選ばれる。この部分においてqが0であるとき、すなわち、式−R−Q−R’−Q−の重合体が本発明のフォームに含まれているときは、相分離された形態は、1の非晶質構成要素Rとともに1の結晶性構成要素Rを付与することによって、すなわち、2の異なった構成要素Rの付与によって重合体中に最もよく実現される。というのは、構成要素−Q−R’−Q−それ自体は通常十分な結晶性の特性を提供しないからである。q=0のとき、QおよびQの選択は比較的重要ではない。
【0095】
Rは、1以上の脂肪族ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートから選ばれ、そして少なくとも1のRは親水性セグメントを含み、R’およびR”は独立にC〜Cアルキレンであり、任意的にC〜C10アルキル基または保護されたS、N、P若しくはO残基で置換されたC〜C10アルキル基で置換されていて、および/またはアルキレン鎖中にS、N、P若しくはOを含む。親水性セグメントが、脂肪族ポリエーテル、ポリエステル、ポリ無水物および/またはポリカーボネートと関連した重合体の部分に存在しないときは、少なくとも1の構成要素Rがポリエーテルであるように選択することによって、本発明のフォームの製造に適した生分解性および親水性の重合体が提供されることができる。あるいは、親水性セグメントは、構成要素R’またはR”中に含まれることもできるが、これは好ましくない。親水性セグメントは、常にソフトセグメント中に存在する。
【0096】
構成要素Rは、プレポリマーA−R−A’から誘導され、例として環状ラクトン、たとえばラクチド(L、DまたはL/D)、グリコリド、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸トリメチレン、炭酸テトラメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オンまたはパラジオキサノンの開環重合によって得られた非晶質ポリエステルを好適に含むことができる。
【0097】
R’はC〜Cアルキレンであり、任意的にC〜C10アルキル基または保護されたS、N、P若しくはO残基で置換されたC〜C10アルキル基で置換されていてもよく、および/またはアルキレン鎖中にS、N、P若しくはOを含んでもよい。R’は式O=C=N−R’−N=C=O(式IV)のジイソシアネート、たとえばアルカンジイソシアネート、好ましくは1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)から誘導される。
【0098】
R”はC〜Cアルキレンであり、任意的にC〜C10アルキル基または保護されたS、N、P若しくはO残基で置換されたC〜C10アルキル基で置換されていてもよく、および/またはアルキレン鎖中にS、N、P若しくはOを含んでもよい。R”は式B−R”−B’(式V)の化合物から誘導され、ここでBおよびB’はヒドロキシル、カルボキシルまたはアミンから独立に選ばれ、好ましくは1,4−ブタンジオール(BDO)である。
【0099】
〜Zは尿素、アミドまたはウレタン、好ましくはウレタンであることができる。その場合、式(I)の重合体はポリウレタンである。本発明の重合体の構造は、その製造方法を理解するとより明白となろう。本発明の相分離された重合体では、好ましくは少なくとも4の水素結合形成基、たとえばアミド、尿素およびウレタンが、結晶性セグメント中に1列に並んで存在する。他の結合(Qおよび/またはQ)はカーボネート、エステルまたは酸無水物であることもできる。したがって、R’はジイソシアネート成分、たとえば式(IV)の化合物から必ずしも誘導されない。その上、−Z−R’−Z−中のR’基は、−Q−R’−Z−または−Z−R’−Q−中のR’と異なっても同じでもよい。
【0100】
好ましくは、本発明の重合体では、ハードセグメントは均一なブロック長を持つ。これは、式(I)に従う1の重合体内でpおよびqの値が一定であることを意味する。均一なブロック長はまた、非常に良好な相分離を示し、そして種々の鎖延長方法によって得られることができる。最高の相分離の程度を持つ相分離された重合体は、たとえばソフトセグメントを形成するプレポリマーR(Rが、環状ラクトンの開環重合およびジオールを開始剤として使用することによって誘導される場合にはヒドロキシル末端になっている)を、ジイソシアネート鎖延長剤を用いて鎖延長することによって得られる。
【0101】
均一なハードセグメントを持ちそして好適な機械的特性を持つ重合体を得るのに適したジイソシアネート鎖延長剤は、たとえば、R”を含むジオールの1当量、たとえば1,4−ブタンジオール(BDO)をR’を含むジイソシアネートの2当量、たとえば1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)と反応させることによってたとえば得られる、ジイソシアネートで末端封止されたジオール成分である。これは式(VI)の化合物を生じる。
O=C=N−R’−Z1-R’’-Z2−R’−N=C=O (VI)
ジオールが1,4−ブタンジオール(BDO)であり、そしてジイソシアネートが1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)である場合には、この「3ブロック」の鎖延長剤、すなわち中間体ジイソシアネート錯体はBDI−BDO−BDIと名付けられ、そして式(III)の化合物と反応させられると、式(I)に従う重合体を生じることになり、ここでpは0であり、qは1であり、そしてハードセグメントはセグメント連鎖R’−R”−R’を含む。
【0102】
pが1であり、そしてqが1である式(I)に従うポリウレタンは、R”を含むジオールの2当量、たとえば1,4−ブタンジオール(BDO)をR’を含むジイソシアネートの1当量、たとえば1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)と反応させ、そして1当量のこのようにして生成させた反応生成物BDO−BDI−BDOを2当量の1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)で末端封止することによって得られることができる。これは式(VIII)に従う「5ブロック」の鎖延長剤、すなわち中間体ジイソシアネート錯体を生じる。
O=C=N−R’−Z1-R’’-Z2−R’−Z3−R’’ーZ4ーR’−N=C=O (VIII)
【0103】
1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)および1,4−ブタンジオール(BDO)が使用されるときは、この化合物はBDI−BDO−BDI−BDO−BDIと短く表される。当該ハードブロックセグメントは、相分離されたポリウレタン重合体を与え、それから非常に有利な点を持つフォーム、すなわち非常に有利な特性を持つフォームが調製されることができる。
【0104】
本発明のフォームを調製するのに適した相分離されたポリウレタン重合体は、ジヒドロキシ末端のプレポリマーが最初に過剰量のジイソシアネートと反応させられて、イソシアナートで末端封止されたプレポリマーを生じさせる方法によっても得られることができる。これに引き続く鎖延長は、イソシアナートで末端封止されたプレポリマーを、a)式(V)のジオール化合物と、またはb)他の中間化合物、たとえば1当量の式(IV)に従うジイソシアネートを2当量の式(V)のジオールと反応させることによって起こさせることができ、式(VII)の化合物ができる。
B−R’’−Z1−R’−Z2−R’’−B’ (VII)
当該化合物(VII)の例は、反応生成物BDO−BDI−BDOである。
【0105】
イソシアナートで末端封止されたプレポリマーを式(VII)の化合物と反応させることは、均一なブロック長でp=1およびq=1である相分離されたポリウレタンを生じることになり、一方イソシアナートで末端封止された該プレポリマーを式(V)のジオール化合物を用いて直接鎖延長することは、p=0およびq=1である均一なブロック長の相分離されたポリウレタンを生じることになる。
【0106】
相分離の程度は、いくつかの場合には、プレポリマーが末端封止されていない上記の鎖延長方法によって得られるよりも幾分低いことがありうる。すなわち、プレポリマーとジイソシアネートとの反応を実施し、そしてたとえば式(V)に従うジオールを用いて鎖延長すると、相分離が、ジイソシアネートで末端封止された鎖延長剤を式(III)に従うプレポリマーと反応させて得られた重合体のそれよりも下位の最適度である重合体を生じる。相分離の程度は、式(V)に従うジオール成分を鎖延長剤として反応させることによって得られる重合体では、より低いことがありうる。式(V)に従うジオールは、プレポリマーの不安定なエステル基のエステル交換を引き起こすことができ、その結果ハードブロックの均一性が失われる。エステル基のエステル交換への感度は、この基の化学的環境に非常に依存する。たとえば、ポリ(ラクチド)セグメント中のエステル基は、ポリ(カプロラクトン)セグメントからのエステル基よりもずっと不安定である。したがって、ポリ(ラクチド)セグメントに基づいたポリウレタンは、ポリ(カプロラクトン)セグメントに基づいたものよりも低い相分離された構造を持つだろう。ジイソシアネート鎖延長剤は、この副反応を引き起こさず、ずっと良好な相分離をもたらす。
【0107】
本発明に従う相分離された生分解性重合体を調製する方法は、したがって1以上の式(III)のプレポリマーを、
A−R−A’ (III)
1以上の式(IV)のジイソシアネートと、
O=C=N−R’−N=C=O (IV)
そして任意的に1以上の式(V)の鎖延長剤と、
B−R’’−B’ (V)
反応させる段階を含み、これらの式でR、R’およびR”は、式(I)で定義された通りであり、そしてA、A’、BおよびB’は、ヒドロキシル、カルボキシルまたはアミンから独立に選ばれる。好ましくは、上の化合物(III)、(IV)および(V)は溶媒中で、より好ましくは1,4−ジオキサンまたはトリオキサン中で反応させられる。
【0108】
式(IV)のジイソシアネートで末端封止された式(III)のプレポリマーと式(V)の鎖延長剤との間の反応、または上述の中間体ジイソシアネート錯体のいずれか1と式(III)のプレポリマーとの間の反応は、一般に15℃〜90℃、好ましくは55℃〜75℃、より好ましくは60℃〜70の温度で実施される。
【0109】
本発明の重合体はバルクで製造されることができ、またはより好ましくはそれは溶媒中で製造されることができる。非常に好適な当該溶媒は1,4−ジオキサンまたはトリオキサンである。1,4−ジオキサンは好都合にも安価なので、それは好まれる溶媒である。好ましくは、プレポリマーおよびジイソシアネートはバルクで反応させられ、一方、鎖延長反応は好ましくは1,4−ジオキサン中で実施される。
【0110】
フォームの初期分解速度は、重合体ソフトセグメントの組成に依存する。すなわち、(固有粘度を測定することによって得られる)初期分子量並びに組成は、緩やかな断片化の開始から機械的特性の消失までの時間を決定する。優れた結果が、p=1およびq=1であり、そしてR’およびR”が両方とも(−CH−)である式(I)のポリウレタンを用いて得られた。本発明の重合体に使用される脂肪族ポリエーテル、ポリエステル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートとして、任意の化合物が採用されることができる。好ましくは、Rは、環状ラクトン、たとえばラクチド(L、DまたはL/D)、グリコリド、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸トリメチレン、炭酸テトラメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オンまたはパラジオキサノンおよびこれらの混合物の開環重合によって得られる非晶質ポリエステルを含有するプレポリマーである。最も好ましくは、プレポリマーは、ラクチドとε−カプロラクトンの組み合わせであり、そして2000の分子量を持つものである。単量体比は、ポリ(カプロラクトン)連鎖が結晶化しないようなものである。好ましくは、ε−カプロラクトン含有量は60%未満、より好ましくは30〜60%であり、最も好ましくはそれは約50%である。ポリエステルは1〜80%、好ましくは5〜60%、より好ましくは20〜50%、最も好ましくは約50%の重量含有量で、ポリエチレングリコールと組み合わされる。ポリエチレングリコールが、プレポリマーの開始剤として存在することが好まれる。
【0111】
非常に好適なフォームが、Rがラクチドおよびε−カプロラクトンから誘導されて1000〜4000の分子量を持つ非晶質ポリエステルである重合体から、そしてさらにより好ましくは当該非晶質ポリエステルが約25重量%のラクチド、約25重量%のε−カプロラクトンおよび約50重量%のポリエチレングリコールを含む重合体から製造されることができる。
【0112】
プレポリマーの分子量は、好ましくは約1500〜2000である。これは、開始剤としてのジオール、たとえば1,4−ブタンジオールまたは分子量1000のポリエチレングリコール(PEG)を使用することによって得られることができる。最初に得られたプレポリマーは、次いで第2のプレポリマーとしての所望量のPEGと組み合わせられることができる。PEGで開始されたプレポリマーは、少なくとも50%(重量/重量)のPEGを既に含有し、そしてプレポリマー中のPEGの全量を調整するために他のプレポリマーまたはPEGと混合されることもできる。
【0113】
吸収体フォームを調製するための本発明の方法で採用される2種類のプレポリマーの間の重合反応は、従来技術で知られているような反応を含むことができる。ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリ酸無水物は、開環重合および/または縮合反応のような方法とそれに続く鎖延長(または重合)プロセスによってつくられることができる。ポリウレタンは、たとえばイソシアナートとヒドロキシル基の縮合反応によって、プレポリマーを鎖延長する手段を用いてつくられることができる。ポリ尿素は、イソシアナートとアミン基の同様な縮合によってつくられる。
【0114】
あるいは、種々のプレポリマーおよび鎖延長剤が、活性化された官能基(たとえばカルボン酸、ヒドロキシルまたはアミン)の反応によって連結されることができる。官能基を活性化させるためのいくつかの方法は、従来技術に知られている。その例は、N−ヒドロキシコハク酸イミドおよび誘導体、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド、マレイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の使用である。当該連結剤の使用の利点は、縮合反応に通常適用される高温度が避けられることである。したがって、本発明の他の実施態様では、フォームは、式(II)の相分離された生分解性の重合体を、式(III)に従う少なくとも2の化合物の混合物を反応させることによって調製し、この混合物のうち、少なくとも第1の当該化合物が、親水性セグメントを含む非晶質セグメントを表すR基を含み、そしてそのうち少なくとも第2の当該化合物が、結晶性セグメントを表すR基を含む方法によって調製されることができ、当該方法はさらに、当該混合物に式(V)の化合物を加え、そして当該化合物間の鎖延長反応を活性化剤、たとえばN−ヒドロキシコハク酸イミド若しくは誘導体、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド、マレイミドまたはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の存在下に実施することを含む。
【0115】
あるいは、フォームは、式(II)の相分離された生分解性の重合体を式(III)に従う少なくとも2の化合物の混合物を反応させることによって調製し、この混合物のうち、少なくとも第1の当該化合物が、親水性セグメントを含む非晶質セグメントを表すR基を含み、そしてそのうち少なくとも第2の当該化合物が、結晶性セグメントを表すR基を含み、そして鎖延長反応を活性化剤、たとえばN−ヒドロキシコハク酸イミド若しくは誘導体、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド、マレイミドまたはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の存在下に実施することを含む方法によって調製されることができる。活性化剤の存在のもとでの当該延長反応は、従来技術に周知である。
【0116】
R’またはR”基の存在は、本発明のフォームの製造に適した重合体に必然でないので、(R基を含む)式(III)に従う2の異なったプレポリマーが、したがって直接に継ぎ合わされることもできる。但し、少なくとも1のR基が非晶質であり、そして1のR基が結晶性であることが条件である。当該プレポリマーの結合化は、前述のようなジオールまたはカルボン酸の形の当該化合物を用意することによって達成されることができる。しかし、たとえばイソシアナートの存在が反応混合物中で避けられるべきとき、または本発明の重合体中でウレタンの存在が低減されるべきときは、式(IV)に従うジイソシアネートの使用は、R基を含むプレポリマーを他の方法で連結することによって防止されることができる。
【0117】
非常に好適な他の方法は、いわゆる活性化剤、たとえばN−ヒドロキシコハク酸イミド、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド、マレイミドまたはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)若しくはこの誘導体の使用を含むことができる。当該活性化剤は、式(III)の化合物と同じようなR基を含むプレポリマーを化学的に結合する能力を持ち、その結果、式(II)の重合体を形成し、ここでQまたはQは前述のように異なった基を含むことができる。QまたはQのカーボネート基は、たとえばホスゲンとの縮合反応を実施することによって式(II)の重合体中に生成されることができる。QまたはQの酸無水物基は、当該プレポリマーのカルボン酸末端基間の連結反応を実施することによって導入されることができる。
【0118】
したがって、式(I)または式(II)に従う重合体は、前述の本発明の方法で、たとえばジオールおよびジイソシアネートを必要とする反応の代わりに、活性化剤を用いる連結反応を使用することによって好適に実施されることもできる。QおよびQ基は、鎖延長剤およびプレポリマーを、これらの末端反応基が、たとえばカルボン酸、アルコールまたはクロロカーボネート基(たとえば、式(III)の化合物Cl−(CO)−O−R−)の適切な組み合わせを含むように選択することによって、エステル、酸無水物またはカーボネートとして好適に調製されることができる。したがって、本発明のフォームを製造するための本発明の重合体を調製する他の方法では、式(III)の化合物が式(III)の別の化合物と、1の化合物が非晶質でありそして1の化合物が結晶性である限り、活性化剤の存在下に連結されまたは反応させられることができる。同様に、式(III)の化合物は、式(III)の別の化合物と、式(IV)の化合物の存在下に連結されまたは反応させられることができ、この場合には活性化剤は必要ではない。というのは、イソシアナートが必要なエネルギーを提供するだろうからである。同様に、式(III)の化合物は、式(III)の別の化合物と、式(V)の化合物の存在下に連結されまたは反応させられることができ、この場合には活性化剤が再び必要である。当業者は、どのような別法および構成ブロックが、本発明に従うフォームの製造に適した相分離された重合体に到達するために使用されることができるかを理解するだろう。
【0119】
本発明に従うフォーム材料は、好ましくは凍結乾燥法によって調製される。既に述べられたように、本発明の重合体を溶媒中で調製する利点は、非常に好都合な出発材料が、このようにして本発明のフォームの調製に提供されることである。非常に好適な調製経路は、適当な溶媒中で重合体を製造し、その後に冷却し、その冷却段階の間に重合体材料が析出しまたは結晶化してそして溶媒が結晶化し、そして最後に凍結乾燥段階が続くことを含む。これに関して、1,4−ジオキサンが非常に好適な溶媒であることが注目される。重合体を溶媒中で調製することによって、重合体を溶媒中に溶解するプロセス段階が省かれることができ、そして本発明に従う生分解性の吸収体フォームの非常に効率的な製造方法が、それによって得られる。
【0120】
凍結乾燥法を使用することによって、フォームは重合体溶液から直接つくられることができ、それはプロセスを簡略化する(溶液からの析出による重合体の単離が必要でない)。多官能性鎖延長剤またはプレポリマー(2より多い反応性基)が使用される場合には、金型内の溶液中で架橋反応が生じることができ、その後に溶媒が凍結されそして昇華される。その上、フォームの多孔度が容易に変えられることができる。非溶媒の添加によって、フォーム構造および均質性が微調整されることができる。凍結乾燥によって、溶媒は完全に除かれることができ、すなわちその結果、残留含有量は許容限界より低くなる。
【0121】
重合反応をバルク中でかあるいは1,4−ジオキサン溶液中で実施することが好まれる。従来技術では通常、ポリウレタンの鎖延長反応は、非常に極性の溶媒、たとえばジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)中で実施され、その実施例は国際特許出願公開第99/64491号に示されている。極性溶媒が、これらの溶媒中でのポリウレタンおよび他の水素結合を形成する重合体の非常に良好な溶解度特性の故に、主に使用される。このようにして、高分子量が得られることができる。これらの溶媒を使用することは、非溶媒、たとえば水の中で重合体溶液の付加的な析出段階が必要となる。それが時間のかかる段階であるという事実の他に、重合体は後で乾燥されなければならず、それは重合体の早期の分解または架橋反応につながるかも知れないことも不利な点である。さらに、必ずしもすべての重合体が、この種類の溶媒中で加水分解的に安定であるわけではない。(非常に)親水性の重合体がつくられる場合には(この発明の重合体のいくつかについてそうであるように)、水中へ入れての析出段階は望ましくない。重合体は膨潤するだろうから、いくらかの分解が生じることなく単離しそして乾燥することは難しいかも知れない。
【0122】
1,4−ジオキサンを溶媒として使用することは多くの利点をもたらす。すなわち、十分な分子量を持つ重合体が生成されることになる。重合温度および重合時間は一般に、より低くすることができ、それはより少ない副反応(たとえば、エステル交換)およびよりよい相分離に至ることができる。初期プレポリマー濃度は、たとえばDMSO中よりもずっと低くすることができ(35%対60%重量/重量)、それはプロセスをより制御しやすくする(たとえば、溶液の粘度は容易に監視されることができる)。重合体網状組織のフォームがつくられることができ、重合体溶液は所望の濃度まで希釈されることができ、その後溶液は金型内に直接注入され、凍結されそして凍結乾燥されることができる。所望であれば、ジオキサン溶液は、水または有機性非溶媒の中へ入れて析出させることができる。その上、ジオキサン中の重合体溶液は、かなり低い温度で溶媒を蒸発することによって固形材料、たとえば重合体フィルムおよびシートに容易に成形されることができる。
【0123】
人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるのに適したフォームを調製する他の方法では、重合体の合成はバルク中で実施され、フォームは、ジイソシアネート分子とジカルボン酸若しくはヒドロキシカルボン酸分子および/または水との鎖延長反応によって、任意的に放出ガスの量を調節するためのジオール分子(ジオールプレポリマーかあるいはジオール鎖延長剤)の反応と組み合わせて、二酸化炭素の生成と同時にその場で形成される。この無溶媒法は欧州特許出願公開第1138336号に記載されているが、吸収体ドレッシング材として使用される高度に多孔性のフォームは開示されていない。
【0124】
式(I)のポリ(エーテル)エステルウレタンに基づいた無溶媒で製造されたフォームは、ジイソシアネート鎖延長基とジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸で開始されたプレポリマーとの反応によって、任意的にジオールで開始されたプレポリマーまたはポリエチレングリコールと一緒にされて得られることができる。
【0125】
他の方法では、生分解性ソフトセグメントは1,4−ジイソシアネートで末端封止され、そしてジカルボン酸若しくはヒドロキシカルボン酸分子、ジオールおよび/または水は鎖延長剤である。
【0126】
前述のように、本発明に従う発泡された材料は、好ましくは凍結乾燥法によって調製される。他の方法は、発泡剤、たとえば低沸点液体、固体または二酸化炭素を使用する多孔性シートの押出を含む。当該方法は、相分離された生分解性重合体を提供し、そして当該重合体を、たとえば従来技術に知られた押出方法で発泡剤を使用することによって本発明のフォームに形成することを含む。当該押出方法はたとえば、当該重合体を溶融し、このように生成された溶融体をガス、好ましくは二酸化炭素のようなガスの助けを受けてフォームに押出すことを含む。
【0127】
本発明の方法によって製造されたフォームは、たとえば酸化エチレンを用いて、形または容積の減失なくそして分子量の有意の減少なく殺菌されることができる。フォームは、各種の物質を含漬されることができ、それは湿潤化の後で制御された速度で放出されることができ、このことはこれらのフォームを薬物送達目的にも適したものにすることができる。さらに、放射線不透過性充填材および止血成分を充填することも可能である。
【0128】
本発明のフォームは、本発明に従う創傷被覆材用途としての使用または他の生体医用フォームの使用に必要とされるような適当な弾性的特性特性を持つことを特徴とする。本発明のフォームは、止血スポンジ、たとえば開腹術用スポンジとして非常に好適に使用されることができる。また、それは鼻出血治療用の鼻ドレッシング材として、外耳用のドレッシング材として、そして組織癒着を防止するための外科手術後の創傷被覆材として使用されることができる。
【0129】
あるいは、その生分解性および任意的に生体吸収性の故に、本発明のフォームは、薬物送達目的に使用されることができる。
【0130】
本発明のフォームは、歯科手術での使用におよび抜歯後の口腔上顎洞瘻孔を閉鎖するのに非常に適している。したがって他の面では、本発明は、本発明に従うフォームを止血スポンジとして、創傷被覆材料として、人体または動物体の洞若しくは他の腔用のパッキングとして、または薬物送達媒体として使用することに関する。
【0131】
最後の面では、本発明は、本発明に従う相分離された生分解性の重合体を本発明に従うフォームの製造に使用することに関する。
【0132】
本発明は、以下の非制限的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0133】
重合体および構成ブロックの分析方法および特性決定
【0134】
以下の分析方法が、特に示されない限りすべての実施例で使用された。
【0135】
固有粘度は、クロロホルムまたは1,4−ジオキサン中で25℃においてウベローデ粘度計を使用して(ISO基準1628−1に従って)測定された。
【0136】
単量体転化率、プレポリマーおよび鎖延長剤組成は、300MHzで重水素化クロロホルム中の溶液でH−NMRを使用して決定された。
【0137】
熱的特性はTA Instruments社のQ1000型のMDSCを使用して、5〜10mgのサンプルが毎分10℃の速度で加熱され、毎分20℃の速度で冷却され、そして毎分10℃の速度で再加熱されて測定された。
【0138】
機械的特性は、薄いフィルムについてInstron社の4301型引張試験機を用いて測定された。フィルムは室温で10mm/分のクロスヘッド速度で測定された。最終引張強さ、破断伸びおよび初期弾性率はこれらの測定値から決定された。
【0139】
単量体およびガラス器具の精製および/または乾燥は、既に公表された方法に従い、そして所望の特性を持つ重合体を得るのに十分なものである。
【0140】
多孔度は、1.1g/cm3のポリウレタンの密度を想定して、フォームの寸法および乾燥重量を測定することによって、計算された。
【0141】
フォームの吸収容量は、過剰量の水に接触させた後のフォームの湿潤/乾燥比(フォームの圧搾/浸漬をした場合またはしない場合)を、37℃における時間の関数として計算することによって測定された。
【0142】
膨潤度は、水で飽和させる前後のフォームの寸法を時間の関数として測定することによって計算された。
【0143】
[実施例1]
(50/50)グリコリド−ε−カプロラクトンプレポリマー(Mn=2000)
【0144】
プレポリマーが、1,4−ブタンジオールを開始剤としてそしてオクタン酸第1スズを触媒として使用して(M/I=10000)、50/50(モル/モル)比のε−カプロラクトンおよびグリコリドの開環重合によって合成された。130℃で6日間の反応の後、H−NMRは完全な単量体の転化を示す。熱的分析は、−40℃〜−35℃のガラス転移温度を持つ完全に非晶質のプレポリマーを示す。
【0145】
[実施例2]
PEG1000を用いて開始された(50/50グリコリド−ε−カプロラクトン)プレポリマー(Mn=2000)
【0146】
プレポリマーが、分子量1000のポリエチレングリコール(PEG)を開始剤としてそしてオクタン酸第1スズを触媒として使用して(M/I=10000)、50/50(モル/モル)比のε−カプロラクトンおよびグリコリドの開環重合によって合成された。PEGは、真空下に50℃で少なくとも8時間乾燥され、その後単量体および触媒が加えられる。混合物は140℃で6日間反応させられ、H−NMRは完全な単量体の転化を示す。熱的分析は、−50℃〜−40℃のガラス転移温度、−10℃〜0℃の結晶化ピークおよび15〜20℃のPEGセグメントの融解ピークを持つ半結晶性のプレポリマーを示す。
【0147】
[実施例3]
(20/40/40)ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトンプレポリマー(Mn=2000)
【0148】
プレポリマーが実施例1の方法に従って、1,4−ブタンジオールを開始剤としてそしてオクタン酸第1スズを触媒として使用して(M/I=10000)、40/40/20(モル/モル/モル)比のε−カプロラクトン、グリコリドおよびラクチドの開環重合によって合成された。熱的分析は、−22℃〜−23℃のガラス転移温度を持つ完全に非晶質のプレポリマーを示す。
【0149】
[実施例4]
PEG1000を用いて開始された(20/40/40ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン)プレポリマー(Mn=2000)
【0150】
プレポリマーが実施例2の方法に従って、分子量1000のポリエチレングリコール(PEG)を開始剤としてそしてオクタン酸第1スズを触媒として使用して(M/I=10000)、40/40/20(モル/モル/モル)比のε−カプロラクトン、グリコリドおよびラクチドの開環重合によって合成された。熱的分析は、−44℃のガラス転移温度および22℃のPEGセグメントの小さい融解ピークを持つ半結晶性のプレポリマーを示す。2度目のDSC走査においては、Tgは−47℃であり、−15℃の結晶化ピークおよび23℃の融解ピークが観察される。
【0151】
[実施例5]
PEG1000を用いて開始された(50/50ラクチド−ε−カプロラクトン)プレポリマー(Mn=2000)
【0152】
プレポリマーが、実施例2に記載されたのと同じ方法によって、グリコリドの代わりにDL−ラクチドを使用することによって合成された。オクタン酸第1スズが触媒として使用された(M/I=10000〜15000)。混合物は140℃で14日間反応させられ、その後H−NMRは完全な単量体の転化を示す。
【0153】
[実施例6]
(3/1)((50/50)グリコリド−ε−カプロラクトン)/PEG1000(重量/重量)に基づいた、BDI.BDO.BDI.BDO.BDIハードセグメントを持つポリウレタンの1,4−ジオキサン中での合成
【0154】
BDOBDIBDO鎖延長剤が、国際特許出願番号PCT/NL99/00352に示された方法に従って調製され、そしてその後精製され、その結果98%の純度が得られた。鎖延長剤の融点は97℃であった。ポリウレタン合成の最初の段階では、1:1モル比の実施例1および2のヒドロキシル末端のプレポリマーが、5〜6倍過剰量の1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)を用いて機械的撹拌下に末端封止される。62℃で4時間の反応の後、過剰のBDIは、末端封止されたプレポリマーの理論的分子量が達成されるまで、減圧(1×10−3ミリバール)下に65℃で蒸留によって除去された。
【0155】
重合の次の段階では、このようにして得られたマクロジイソシアネートプレポリマーが、65℃でBDO−BDI−BDO鎖延長剤を用いて1,4−ジオキサンを溶媒として使用して(35%重量/重量)、鎖延長される。鎖延長剤は、よく撹拌されたプレポリマー溶液に少量分ずつ加えられる。溶液が粘稠になったら、混合物は少量の1,4−ジオキサンで希釈される。この手順は、粘度の増加が観察されなくなるまで繰り返される。重合体溶液は、所望の濃度まで1,4−ジオキサンで希釈される。少量の水またはc−ヘキサンが加えられる。溶液は、水または有機溶媒中に入れて析出されることができ、それは溶媒の蒸発によって濃縮され、真空で乾燥されることができ、またはそれは凍結されてその後凍結乾燥されることができる。1〜2dl/gの凍結乾燥された重合体の固有粘度は、これらの条件下に容易に得られることができる。もっとも、より低い分子量の重合体がある用途には有用であることもありうる。
【0156】
[実施例7]
(3/1)((20/40/40)ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン)/PEG1000(重量/重量)に基づいた、BDI.BDO.BDI.BDO.BDIハードセグメントを持つポリウレタンの1,4−ジオキサン中での合成
【0157】
実施例3および4のプレポリマーを用いる実施例6の方法に従う重合反応は、同じような分子量を持つ重合体を与える。
【0158】
[実施例8]
(1/1)((50/50)ラクチド−ε−カプロラクトン)/PEG1000(重量/重量)に基づいた、BDI.BDO.BDI.BDO.BDIハードセグメントを持つポリウレタンの1,4−ジオキサン中での合成
【0159】
実施例5のプレポリマーを用いる実施例6の方法に従う重合反応は、同じような分子量を持つ重合体を与える。
【0160】
[実施例9]
グリコリドに基づいたフォームの調製
【0161】
実施例6の重合体溶液が、ジオキサン中2.5重量%(重合体/溶媒混合物中の重合体のグラム数)に希釈され、そして2重量%の水(水のグラム数/溶液のグラム数)が加えられる。溶液は3μmフィルター上でろ過され、そして金型内に注入される。溶液は−20℃で凍結され、その後3ミリバールの圧力で凍結乾燥され、引き続いて一定重量になるまで1×10−3ミリバールで乾燥される。フォームは、酸化エチレンを用いて殺菌されることができる。同じ方法で、実施例7の重合体のフォームが製造されることができる。フォームは4℃未満で貯蔵される。このようにして調製されたフォームの計算された多孔度は、96.4%の平均値を持つ。
【0162】
[実施例10]
ラクチドに基づいたフォームの調製
【0163】
実施例8の重合体溶液が、ジオキサン中1.8重量%(重合体/溶媒混合物中の重合体のグラム数)に希釈され、そして2重量%のc−ヘキサン(水のグラム数/溶液のグラム数)が加えられる。溶液は3μmフィルター上でろ過され、そして金型内に注入される。溶液は−20℃で凍結され、その後3ミリバールの圧力で凍結乾燥され、引き続いて一定重量になるまで1×10−3ミリバールで乾燥される。フォームは、酸化エチレンを用いて殺菌されることができる。フォームは4℃未満で貯蔵される。このようにして調製されたフォームの計算された多孔度は、97.2%の平均値を持つ。同じ方法によって、95%の平均多孔度を持つ3.5重量%のフォームが製造されることができる。この実施例のフォームは、特に鼻ドレッシング材として有用である。
【0164】
結果と考察
【0165】
実施例6および7の重合体並びにこれらのフォームの熱的、機械的、吸収および分解の挙動が、決定される。
【0166】
EtO殺菌を受けると、フォームの固有粘度は、約0.1dl/g減少することがあり、一方フォームの形および寸法は保持される。図2は、殺菌前および後のポリウレタンフォームの熱的挙動を示す。熱的特性は、40〜50℃での殺菌工程(合計3〜4日)の間の重合体のアニーリングの結果としていくらか変えられる(相転移の移動)。ハードセグメントは広い融解ピークを与え、それはウレタンセグメントの水素原子とPEGのエーテル基とによって形成される錯体が原因である。
【0167】
96.4%のフォームの多孔度が計算され、これは2.5重量%溶液に基づいて理論的に計算された多孔度(97.7%)よりも約1%低い。これは、主として凍結乾燥の間にフォームがいくらか収縮するためである。重合体の機械的特性は、薄いフィルムで測定される。この目的のために、実施例6および7の重合体からつくられた実施例9のフォームが、クロロホルム中に溶解され、そして溶液がペトリ皿に注がれる。溶媒の蒸発および真空中で40℃での乾燥の後に、透明なフィルムが得られる。結果は表1に示される。強さの差は、ラクチド含有重合体のより低い分子量によって説明されることができる。フォームの機械的特性は、定量的には測定されないが、その非常に良好な弾性特性は、フィルムについて測定された材料特性に関係付けられることができる。
【0168】
【表1】

【0169】
表2は、実施例6および7の重合体のフォームの吸収容量および膨潤挙動を示す。試験されたフォームは、約100mgの重量および(ジオキサン中2.5重量%の溶液に基づいた)96.4%の多孔度を持つ円筒状の形をしている。フォームは、37℃でソレンソン緩衝溶液(pH=7.4)に浸漬され、そしてそこに2週間放置される。浸漬の直後に(液体中でフォームを繰り返し圧搾することによって)、最大量の水(10分後に測定された)が吸収される。フォームは自重の20〜24倍を吸収し、そしてフォームの大きさおよび形に依存しない。
【0170】
14日後に、フォームは崩壊してしまわなかったが、揺り動かすと、フォームは小片に断片化する。フォームの寸法は、緩衝溶液に接触させられていた時間中にはほとんど変化しない。14日の間の寸法の不規則な変化(フォームの直径の変化として測定された)は、不正確な測定の結果として観察される。総じて、湿ったフォームの寸法は、乾燥フォームと比較して3%未満で増加する。比較のために、ゼラチンに基づいた創傷被覆材、Spongostan(商標)の吸収容量は、その乾燥重量の40倍である。しかし、該材料は、膨潤しそしてその機械的強さをほとんど直ちに失う。
【0171】
図3は、図1の形および寸法を持つフォームの、37℃におけるそしてフォームを浸漬することなしでの水分吸収容量を示す。多孔度は表2のフォームと同じであり、そしてその重量は約700mgである。吸収がフォームの乾燥重量の20倍の値に飽和するまでに約5時間かかり、これはフォームが液体中で圧搾されるときよりもずっと長い時間である。吸収挙動は、フォームの親水性および毛管特性によって完全に決定される。フォームの実際の使用(たとえば、鼻ドレッシング材として)は、それを創傷に挿入するためにフォームの圧縮が必要だろう。したがって、表2に示された初期吸収容量が最も重要だろう。21℃で実施された同様な吸収試験は、同等な吸収速度を示し、これはフォームが使用前に予め湿潤化されるならば重要でありうる。
【0172】
96.4%の多孔度を持つ実施例6および7の重合体のフォームのインビトロ解研究が14日の期間実施された。この期間、吸収挙動、分子量の変化および機械的特性の変化が、時間の関数として測定された。吸収挙動は既に考察された。固有粘度は初期に非常に急速に減少している。3〜5時間で、固有粘度は初期値の約50%落ち、その後それはほとんど一定の値に落ち着く。これは、親水性エーテル残基の存在によって引き起こされる、ポリエステルプレポリマー中の鎖開裂の結果である。図4は、実施例9における2のPUフォームの固有粘度の減少、および97.3%の多孔度を持ち、実施例10のプレポリマー中に50%のPEGを含有するラクチドに基づいたフォームのそれを時間の関数として示す。グリコリドおよびカプロラクトンの一部をラクチドで置換することは、分解挙動に大きな影響を持たない。プレポリマー中に25%のPEGの代わりに50%のPEGが存在すること、および/またはすべてのグリコリドをラクチドで置換することは、初期の分解速度を増加するように見える。1時間以内に、固有粘度は初期値の約1/3に落ちた。したがって、ラクチドのフォームの断片化が始まるまでの時間は、グリコリドに基づいたフォームのそれよりも幾分短い。これらのフォームの非常に急速な分解も、おそらくPEGセグメントとラクチド由来の単量体との間の弱いエステル結合の結果である。分解の初期速度は、一般に同じ組成の殺菌されたフォームの方が幾分低い。すなわち、6〜8時間後に固有粘度は初期値の半分である。
【0173】
減成するフォームの機械的特性は、分子量の減失とともに変化している。図4のPUフォームについては、引裂き強さは約0.4〜0.5dl/gの固有粘度で失われる。フォームが殺菌されている場合には、この点に達するまでにより長い時間がかかる。フォームは小片に引き裂かれることができるけれども、フォームは依然として弾性がある。これは、部分的に減成されたフォームでさえ、創傷の出血を止めるのにまたは創傷の再開口を防ぐのに十分な圧力を創傷にかけることができることを意味する。37℃の緩衝溶液中に1日置いた後、フォームは圧力および揺動下に断片化する。実施例10のフォームは、フォームの急速な分解および排除が要求される用途、たとえば鼻出血の治療に使用するのに非常に適している。
【0174】
一般に、分解速度は、グリコリドおよびラクチドよりも加水分解的に安定な単量体を選ぶことによって遅くされることができる。また、親水性重合体の量および重合体への取り込み方法は、分解特性に大きな影響を持つことができる。しかし、ゆっくりと減成するハードセグメントの存在は、創傷への適用の間機械的特性を維持するために必要であり、これは本発明の重合体を用いて得られることができる。
【0175】
重合体の非晶質(R)セグメントに使用するのに非常に適したポリエステルは、ラクチド、グリコリドおよびε−カプロラクトンに基づき、好ましくは約2000の分子量を持つ。代わりに、プレポリマーはもっぱらラクチドおよびε−カプロラクトンに基づくことができる。当該代案では、ラクチドとε−カプロラクトンとの好まれる比は、約1モル/モルである。約50%の量のPEGがプレポリマー開始剤として付与された当該組み合わせによって非常に好都合な結果が得られた。
【0176】
本発明に使用される非常に好適なポリエチレングリコール分子は、150〜4000g/モルの分子量を持つものである。好ましくは、分子量は600〜2000g/モルである。
【0177】
ポリエチレングリコール分子は、非晶質セグメントプレポリマー中に任意の適当な方法で、たとえばポリエチレングリコールを開始剤としてまたはポリエステルプレポリマーと組み合わされた第2のプレポリマーとして使用する環状単量体の開環重合によって取り込まれることができる。
【0178】
ポリエチレングリコールは、このようにして非晶質セグメント中に取り込まれることができ、1〜80重量%、より好ましくは10〜60重量%、さらにより好ましくは20〜50重量%のポリエチレングリコールを持つ非晶質セグメントを生じる。
【0179】
本発明のフォームは、体内で材料を追跡するために放射線不透過性の充填材を入れられることができる。
【0180】
特性的には、本発明のフォームは0.01〜0.2g/cm、好ましくは0.02〜0.07g/cmの密度を持つ。フォームの多孔度は好適には85〜99%、好ましくは92〜98%、より好ましくは95〜98%の範囲にあることができる。
【0181】
本発明のフォームの環境温度(室温〜37℃)における吸収容量は、0.5〜0.99g/cm、より好ましくは0.75〜0.97g/cmの範囲にある

【0182】
一般に、水性液体を吸収すると、従来技術の生体医用フォームは、強さか弾力性のどちらかを急速に失うだろう。しかし、本発明のフォームは、37℃の水で完全に飽和したときに高い機械的強さ並びに維持された弾力性および形を示す。重合体の種類を選択することによって、機械的強さが維持される期間は、調節されることができる。好ましくは、機械的強さは、水性液体のフォームへの作用によって最終的には失われる。しかし、断片化は1時間〜14日、好ましくは6時間〜5日の期間遅らされることができる。本発明のフォームの急速な崩壊は、グリコリドおよびラクチドに基づいた重合体を比較的大量のPEGと組み合わせて使用することによって実現されることができ、他方で崩壊は、単量体、たとえば炭酸トリメチレンおよびカプロラクトンを使用することによって、またはグリコリド/ラクチドに基づいた重合体中のPEGの量を低減することによって、たとえば遅らされることができる。図5は、37℃の緩衝溶液中で50グラムのおもりの作用に際しての、(1/1)((50/50)ラクチド−ε−カプロラクトン)/PEG1000(重量/重量)に基づいた1.8%(重量)フォームの、断片化までの時間対固有粘度を示す。固有粘度が高ければ高いほど、フォームが裂けそして断片化し始めるまで、より長くかかる。1時間以内に、フォームは断片化し始め、これは25%(重量/重量)PEGを持つグリコリド−ε−カプロラクトンプレポリマーに基づいたフォームよりもずっと速い。すなわち、同等な固有粘度に対して、それぞれ15〜45分対2〜3.5時間である。1.5%(重量)未満の重合体のフォームは、もっと高い重合体濃度のものよりもはるかに速く断片化していて、その時間も初期の固有粘度に依存する。これは、機械的および物理的特性は重合体組成、親水性成分の含有量、初期固有粘度、フォームの多孔度およびまたフォームに加えられる機械的な力によって微調整されることができることを証明する。
【0183】
本発明に従うフォームは、非常に好適には0.5〜4.0dl/gの初期固有粘度を持つことができる。一般に、湿潤状態での機械的強さの消失は、0.4〜0.5dl/gの初期固有粘度において得られるが、フォームの多孔度に依存することができる。本発明のフォームは、親水性の相分離された重合体と他の生体医用生分解性重合体との物理的ブレンドを含むことができる。本発明のフォームの製造に非常に適した重合体は、非晶質の単相(共)ポリエステルまたは他のポリエステルウレタンと一緒にされたポリエステルウレタンを含む。
【0184】
本発明のフォームは、栓(パック、タンポン若しくはドレッシング材)またはシートの形態であることができ、当該シートは好ましくは1〜50mm、より好ましくは8〜15mmの厚さを有する。
【0185】
本発明のフォームは、止血スポンジ、たとえば開腹術用スポンジとして非常に好適に使用されることができる。また、それは鼻出血の治療用の鼻ドレッシング材として、外耳用のパッキングとしてまたは外科手術後の創傷被覆材として使用されることができる。
【0186】
その高い吸収容量およびその遅らされた崩壊によって調節可能な分解性の故に、本発明のフォームは、薬物送達目的に使用されることができる。好ましくは、本発明のフォームは、組織癒着を防止するために使用される。また、非常に適した用途が歯科手術において、そして特に抜歯後の口腔上顎洞瘻孔を閉鎖するために見出された。
【0187】
本発明のフォームは、臨床試験において断片化可能な合成による鼻ドレッシング材としてその特性を評価するために研究された。
【0188】
両側の副鼻腔炎またはポリープ症を持つ患者が、無作為に断片化可能なドレッシング材(8×1.5×2cm)の左側または右側の適用を受け、反対側の鼻腔は標準的なドレッシング材を受け入れた。断片化可能なドレッシング材は、6日以内に断片化し、その後それは粘液流を媒介して流し出された。患者は、3のオランダ国の中心施設によって募集された。47歳の平均年齢を持つ25人の患者(男性54%)が含まれていた。患者の71%では、これはその病変に対する最初の臨床的な治療処置であった。患者の50%は、処置の後で投薬を受けた。
【0189】
患者は、耐久性のドレッシング材が取り除かれるときには不快感を感じ、断片化可能なドレッシング材ではそうでなかった(図6)。10日および30日での最終的な創傷治癒は良好で、そして両群間で同等であった。患者の20%では、鼻出血が対照側で観察され、新ドレッシング材を付けた側では零であった(図7)。これらの結果は、新しい断片化可能な鼻ドレッシング材の使用は能率がよく、患者の快感を増加し、そして鼻出血の危険を低下し、それによって断片化可能でない鼻ドレッシング材の除去に付随した鼻腔内の新しい創傷を避けることを示している。
【0190】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるのに適した生分解性の吸収体フォームであって、当該フォームが相分離された重合体を含み、当該重合体が非晶質セグメントおよび結晶性セグメントからなり、かつ当該非晶質セグメントが親水性セグメントを含むフォーム。
【請求項2】
当該親水性セグメントがポリエーテル、ポリペプチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはポリ(メタクリル酸ヒドロキシメチル)、好ましくはポリエーテルから誘導される、請求項1に従うフォーム。
【請求項3】
当該重合体が式(I)を有する、請求項1〜2のいずれか1項に従うフォーム式(I)

(ここで、Rは、1以上の脂肪族ポリエステル、ポリエ−テルエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートから選ばれ、そして少なくとも1のRは親水性セグメントを含み、R’およびR”は独立にC〜Cアルキレンであり、任意的に、C〜C10アルキル基または保護されたS、N、P若しくはO残基で置換されたC〜C10アルキル基で置換されていてもよく、および/またはアルキレン鎖中にS、N、P若しくはOを含んでいてもよく、Z〜Zは独立にアミド、尿素またはウレタンであり、QおよびQは独立に尿素、ウレタン、アミド、カーボネート、エステルまたは酸無水物であり、nは5〜500の整数であり、pおよびqは独立に0または1であり、但し、qが0であるときは、Rは少なくとも1の結晶性ポリエステル、ポリエ−テルエステルまたはポリ酸無水物セグメントと少なくとも1の非晶質脂肪族ポリエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートセグメントとの混合物である)。
【請求項4】
当該重合体が式(II)を有する、請求項1〜2のいずれか1項に従うフォーム
-[R-Q1-R'''-Q2-]n (II)
(ここで、R、Q、Qおよびnは請求項3で定義された通りであり、R'''は請求項3で定義されたR、R’またはR”から選ばれ、但し、R'''がR’またはR”であるときは、Rは少なくとも1の結晶性ポリエステル、ポリエ−テルエステルまたはポリ酸無水物セグメントと少なくとも1の非晶質脂肪族ポリエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートセグメントとの混合物であり、そしてR'''がRであるときは、少なくとも1の結晶性ポリエステル、ポリエ−テルエステルまたはポリ酸無水物セグメント並びに少なくとも1の非晶質脂肪族ポリエステル、ポリエ−テル、ポリ酸無水物および/またはポリカーボネートセグメントが当該重合体中に備えられている)。
【請求項5】
当該重合体が、式(III)に従う1以上のプレポリマーと、
A−R−A’ (III)
式(IV)の1以上のジイソシアネートと、
O=C=N−R’−N=C=O (IV)
そして任意的に式(V)の1以上の鎖延長剤と
B−R’’−B’ (V)
を反応させることによって得られる、請求項3に従うフォーム
(これらの式で、R、R’およびR”は請求項3で定義された通りであり、そしてA、A’、BおよびB’はヒドロキシル、カルボキシルまたはアミンから独立に選ばれる)。
【請求項6】
当該重合体が、式(III)に従う少なくとも2の異なったプレポリマーを反応させることによって得られる、請求項5に従うフォーム。
【請求項7】
当該重合体が、式(III)に従う少なくとも2の異なったプレポリマーと、
A−R−A’ (III)
任意的に式(V)の1以上の化合物と
B−R’’−B’ (V)
をN−ヒドロキシコハク酸イミド、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド、マレイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた活性化剤の存在下に、反応させることによって得られる、請求項4に従うフォーム
(これらの式で、R、R”は請求項3で定義された通りであり、そしてA、A’、BおよびB’は、ヒドロキシル、カルボキシルまたはアミンから独立に選ばれる)。
【請求項8】
R’が(CHであり、R”が(CHであり、またはR’およびR”の両方が(CHである、請求項3〜7のいずれか1項に従うフォーム。
【請求項9】
少なくとも1のRが、ラクチド(L、DまたはLD)、グリコリド、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸トリメチレン、炭酸テトラメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オンおよび/またはパラジオキサノン、またはこれらの組み合わせの環状単量体から誘導される、請求項3〜8のいずれか1項に従うフォーム。
【請求項10】
少なくとも1のRが、ラクチドおよびε−カプロラクトンから誘導され、1000〜4000の分子量を持つ非晶質ポリエステルである、請求項3〜9のいずれか1項に従うフォーム。
【請求項11】
当該非晶質ポリエステルが、約25重量%のラクチド、約25重量%のε−カプロラクトンおよび約50重量%のポリエチレングリコールを含む、請求項10に従うフォーム。
【請求項12】
当該非晶質セグメントが、当該フォームがその中に詰められるところの人体または動物体の当該洞若しくは他の腔の温度より低い軟化点を持ち、そして当該結晶性セグメントが、上記温度より高い軟化点を持つ、請求項1〜11のいずれか1項に従うフォーム。
【請求項13】
当該結晶性セグメントがポリウレタンを含む、請求項1〜12のいずれか1項に従うフォーム。
【請求項14】
当該親水性セグメントが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールから誘導される、請求項1〜13のいずれか1項に従うフォーム。
【請求項15】
非晶質セグメントが、ポリエチレングリコールを1〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%、さらにより好ましくは20〜50重量%、最も好ましくは50重量%の含有量で含む、請求項14に従うフォーム。
【請求項16】
フォームが5%未満、好ましくは3%未満の膨潤度およびその乾燥重量の15〜25倍の吸収容量を持つことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に従うフォーム。
【請求項17】
フォームが0.5〜0.99g/cm、好ましくは0.75〜0.97g/cmの吸収容量および/または0.01〜0.2g/cm、好ましくは0.03〜0.07g/cmの密度を持つことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に従うフォーム。
【請求項18】
請求項3で定義された式(I)の、または請求項4で定義された式(II)の相分離された生分解性重合体。
【請求項19】
請求項3で定義された式(I)の相分離された生分解性重合体の調製方法において、当該方法が重合反応を実施することを含み、当該重合反応が、式(III)
A−R−A’ (III)
の1以上のプレポリマーを、式(IV)
O=C=N−R’−N=C=O (IV)
の1以上のジイソシアネートと、および任意的に式(V)
B−R’’−B’ (V)
の1以上の鎖延長剤と反応させることを含む方法
(ここで、R、R’およびR”は請求項2で定義された通りであり、そしてA、A’、BおよびB’はヒドロキシル、カルボキシルまたはアミンから独立に選ばれる)。
【請求項20】
式(IV)の1以上のジイソシアネートを式(V)の1以上の鎖延長剤と反応させて、式(VI)、
O=C=N−R’−Z1-R’’−Z2−R’−N=C=O (VI)
または式(VIII)、
O=C=N−R’−Z1-R’’−Z2−R’−Z3−R’’−Z4−R’−N=C=O (VIII)
(これらの式で、R’、R”、Z〜Zは請求項3で定義されたとおりである)の中間体ジイソシアネート錯体を生成させ、続けて当該中間体ジイソシアネート錯体と式(III)のプレポリマーとの間の重合反応を実施することを含む、請求項19に従う方法。
【請求項21】
式(IV)の1以上のジイソシアネートを式(V)の1以上の鎖延長剤と反応させて、式(VII)、
B−R’’−Z1−R’−Z2−R’’−B’ (VII)
(ここで、R’、R”、ZおよびZは請求項3で定義されたとおりである)の中間錯体を生成させることを含む方法において、当該方法がさらに、式(IV)の1以上のジイソシアネートを式(III)の1以上のプレポリマーと反応させて、式(IX)、
O=C=N−R’−Z1-R-Z2−R’−N=C=O (IX)
(ここで、R、R’、ZおよびZは請求項3で定義されたとおりである。)の中間体ジイソシアネート錯体を生成させ、続けて式(VII)の当該中間錯体と式(IX)の当該中間体ジイソシアネート錯体との間の重合反応を実施することを含む、請求項19〜20のいずれか1項に従う方法。
【請求項22】
当該重合反応が15℃〜90℃、好ましくは55℃〜75℃、より好ましくは60℃〜70℃の温度で実施される、請求項19〜21のいずれか1項に従う方法。
【請求項23】
請求項4で定義された式(II)の相分離された生分解性重合体の調製方法において、
a)式(III)、
A−R−A’ (III)
(ここで、R、AおよびA’は請求項19で定義された通りである)に従う少なくとも2の化合物の混合物を反応させることを含む重合反応を実施すること、当該混合物において、式(III)に従う少なくとも第1の当該化合物が、親水性セグメントを含む非晶質セグメントを表すR基を含み、かつ式(III)に従う少なくとも第2の当該化合物が、結晶性セグメントを表すR基を含む、
b)任意的に、当該混合物に式(V)、
B−R’’−B’ (V)
(ここで、R”、BおよびB’は請求項19で定義された通りである)の化合物を含めること、そして、
c)N−ヒドロキシコハク酸イミド、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド、マレイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた活性化剤の存在下に鎖延長反応を実施すること
を含む方法。
【請求項24】
当該重合反応が、1,4−ジオキサンまたはトリオキサン中で実施される、請求項23に従う方法。
【請求項25】
請求項19〜24のいずれか1項に従う方法によって得ることができる、相分離された生分解性重合体。
【請求項26】
請求項18または25のいずれか1項に従う相分離された生分解性重合体を用意し、そして当該重合体をフォームへと形成することを含む、請求項1〜17のいずれか1項に従うフォームの調製方法。
【請求項27】
当該重合体が溶融され、そしてガス、好ましくは二酸化炭素の助けを受けてフォームへと押出される、請求項26に従う方法。
【請求項28】
当該重合体が溶媒中の当該重合体の溶液として用意され、そして当該フォームが当該溶液を凍結し、そして溶媒を凍結乾燥によって昇華することによって調製される、請求項26に従う方法。
【請求項29】
請求項19〜23のいずれか1項の方法に従い相分離された生分解性重合体をバルクで調製し、そして当該重合反応の間に二酸化炭素の現場(インシチュー)生成を許すことを含む、請求項1〜17のいずれか1項に従うフォームの調製方法。
【請求項30】
当該溶媒が1,4−ジオキサンである、請求項28に従う方法。
【請求項31】
請求項26〜30のいずれか1項に従う方法によって得ることができる、人体または動物体の洞若しくは他の腔に詰めるのに適した生分解性の吸収体フォーム。
【請求項32】
請求項1〜17または31のいずれか1項に従うフォームを、止血スポンジとして、創傷被覆材料として、人体または動物体の洞若しくは他の腔のパッキングとして、鼻ドレッシング材として、外耳用のパッキングとして、歯科手術においてまたは薬物送達媒体として使用する方法。
【請求項33】
請求項18または25のいずれか1項に従う相分離された生分解性重合体を、請求項1〜17または31のいずれか1項に従うフォームの製造に使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−251150(P2011−251150A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172910(P2011−172910)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2006−500726(P2006−500726)の分割
【原出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(500558078)
【Fターム(参考)】