説明

生体吸収性外科用組成物

【課題】生体吸収性外科用組成物の提供。
【解決手段】ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーを含む生体吸収性マクロマー組成物が提供される。いくつかの実施形態において、ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーは、官能性ポリオールと結合し得る。結果として生じた生体吸収性マクロマー組成物は、医療用/外科手術用接着剤またはシーラントとして使用可能である。本発明の一実施形態において、この生体吸収性ポリマーは、生体吸収性基を包含するポリアルキレンオキシドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2005年12月6日に出願された米国仮特許出願第60/742,708号(この全体の開示が本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、マトリクスを形成し得る生体吸収性マクロマーおよび外科手術用接着剤またはシーラントとしてのこれらマクロマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
近年、縫合を接着剤ボンドで代用または増強することに関心が高まっている。関心が高まった理由として(1)修復が成功し得る潜在的な速度;(2)完全閉鎖をもたらす結合物質の能力、つまり流体の漏出を防ぐ能力;および(3)組織が異常変形することなしに接合を形成する可能性が挙げられる。
【0004】
しかしながら、この領域の研究において、外科医に外手術用接着剤を受けいれてもらうには、多くの特性がなくてはならないことが明らかである。外科手術用接着剤は、高い初期接着性および生体組織に迅速に接着する能力を示さなければならない;その接着強度は、接着破壊前に、組織損傷を引き起こすほどに十分強くなければならない;その接着剤は、架橋、一般に、浸透性で可撓性の架橋を形成しなければならない;およびその接着剤架橋および/またはその代謝生成物は、局所的組織毒性作用または発ガン性作用を引き起こしてはならない。
【0005】
組織接着剤または組織シーラントとして有用ないくつかの材料が、現在入手可能である。現在入手可能である接着剤の一種は、シアノアクリレート系接着剤である。しかしながら、シアノアクリレート系接着剤は、分解によってホルムアルデヒドなどの望ましくない副作用を生じる可能性がある。シアノアクリレート系接着剤のもう一つの欠点は、その有用性に制限をかける高い曲げ弾性率を有することである。
【0006】
現在入手可能である組織シーラントのもう一つの種類は、ウシ起源および/またはヒト起源由来の成分を利用する。たとえば、フィブリンシーラントが、入手可能である。しかしながら、このシーラントは天然タンパク質由来なので、いずれもの天然材料のように、材料の変質が頻繁に観察され、ウイルス感染が懸念される。
【0007】
完全合成であり、それゆえウイルス感染を懸念せずにその特性において非常に一貫性のある生物学的接着剤を提供することが望ましい。当該組成物は、弾力性および生体適合性を有するはずであり、接着剤またはシーラントとしての使用に好適であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
本開示は、少なくともひとつの官能基を有するポリオールと任意に結合したジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーを含む、生体吸収性マクロマー組成物に関する。実施形態において、生体吸収性ポリマーは、生体吸収性基(bioabsorbable group)を包含するポリアルキレンオキシドである。
【0009】
実施形態において、本開示の生体吸収性マクロマー組成物は、一般式:
−[A]−R−[A]−R
のジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーを含み得り、式中、Aはラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、p−ジオキサノン、無水物基、リン酸エステルおよびこれらの組み合わせなどの生体吸収性基であり、Rはポリエチレングリコールであり、Rはイソシアネート基であり、mは約1〜約6の数である。
【0010】
他の実施形態において、本開示の生体吸収性マクロマー組成物は、一般式:
−[A]−R−[A]−R
のジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーを含み得り、式中、Rは多糖およびポリオールなどのポリマーであり、Aは生体吸収性基であり、Rはイソシアネート基およびvは少なくともひとつの官能基を有するポリオールと結合した約1〜約20の数である。
【0011】
本開示の生体適合性マクロマー組成物は、医療用および/または外科手術用を含むさまざまな用途で、接着剤またはシーラントとして利用され得る。実施形態において、本開示は、外傷に対して本開示の生体適合性マクロマー組成物を塗布および生体適合性マクロマー組成物を凝固させ、それによって前記傷口が塞がる、傷口を縫合する方法を含む。このような傷口には、実施形態において、切開が含まれ得る。本開示の組成物はまた、組織空隙を充填するためにも利用できる。実施形態において、本開示の組成物は、動物性組織の表面に、インプラントなどの医療機器を接着するために利用でき得る。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
一般式:
−[A]−R−[A]−R (III)
であって、式中、Aはラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p−ジオキサノン、無水物、リン酸エステルおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される生体吸収性基であり、Rはポリエチレングリコール、Rはイソシアネート基およびmは約1〜約6の数である、ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーを含む生体吸収性マクロマー組成物。
(項目2)
一般式:
−[A]−R−[A]−R (II)
であって、式中、Rは多糖およびポリオールからなる群より選択されるポリマーであり、Aは生体吸収性基であり、Rはイソシアネート基でありおよびvは約1〜約20の数であるジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマー;および少なくとも1つの官能性ポリオール;を含む生体吸収性マクロマー組成物。
(項目3)
前記ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーのポリオールが、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリエチレングリコール−アジピン酸塩、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目4)
前記ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーのポリオールが、ポリエチレングリコールを含む、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目5)
前記ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーの多糖が、ソルビトール、マンニトール、スクロース、デキストランおよびシクロデキストリンからなる群より選択される、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目6)
前記ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーの生体吸収性基が、乳酸、グリコール酸、グリコリド、ラクチド、ε−カプロラクトン、炭酸トリメチレン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、コハク酸(succinnic acid)、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、ジクロロリン酸エチル、セバシン酸無水物、アゼライン酸無水物およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目7)
前記ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーの生体吸収性基が、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目8)
vが、約1〜約6の数である、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目9)
前記官能性ポリオールが、ポリエーテルをベースとしたポリオール、ポリカプロラクトンをベースとしたポリオールおよび多価アルコールからなる群より選択される、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目10)
前記官能性ポリオールが、ポリカプロラクトントリオール、トリメチロールプロパンおよびグリセリンからなる群より選択される、項目9に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目11)
前記官能性ポリオールが、ジイソシアネート官能基を保有する、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目12)
前記官能性ポリオールが、トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、2,4,6−トリメチル−1−、3−フェニレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される、ジイソシアネート官能基を保有する、項目12に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目13)
前記官能性ポリオールが式
(化1)



であって、式中、Rはジイソシアネートであり、Rはポリエチレングリコールあり、a、bおよびcは0を含むいずれもの整数でよく、該官能性ポリオールが、約200〜約6,000の平均分子量を有する、項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目14)
前記官能性ポリオールが、メトキシポリエチレングリコールで官能化したソルビトールを含む、項目9に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目15)
前記官能性ポリオールが、乳酸、グリコール酸、グリコリド、ラクチド、ε−カプロラクトン、炭酸トリメチレン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、コハク酸(succinnic acid)、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、ジクロロリン酸エチル、セバシン酸無水物、アゼライン酸無水物およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、生体吸収性基を保有する、項目9に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目16)
前記官能性ポリオールが、式
−[(R−R (VII)
であって、式中、Rはポリオールであり、Rは生体吸収性基であり、Rはイソシアネート基であり、nは約1〜約10の数でありおよびdは約2〜約4の数である、項目9に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目17)
前記ポリオールがソルビトールを含み、前記生体吸収性基がラクチドを含み、そして前記生体吸収性マクロマー組成物が、生物学的に活性な因子、薬剤および酵素からなる群より選択される成分をさらに含む、項目16に記載の生体吸収性マクロマー組成物。
(項目18)
創傷を閉鎖するための方法であって、該方法は、
項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物を該創傷に適用する工程;および
該生体吸収性マクロマー組成物を硬化させ、それによって該創傷を閉鎖する工程を含む、方法。
(項目19)
前記創傷が、外科的切開である、項目18に記載の方法。
(項目20)
動物組織の空隙を充填するための方法であって、該方法は、
項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物を該空隙に適用する工程;および
該生体吸収性マクロマー組成物を硬化させ、それによって該空隙を充填する工程を含む、方法。
(項目21)
動物組織の表面へ医療機器を接着するための方法であって、該方法は、
項目2に記載の生体吸収性マクロマー組成物を該機器、該表面またはそれらの両方に適用する工程;
該機器、生体吸収性マクロマー組成物および表面を互いに接触させる工程;ならびに
該生体吸収性マクロマー組成物を硬化させ、それによって該機器と表面とを互いに接着する工程を含む、方法。
(項目22)
前記医療機器が、インプラントである、項目21に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(詳細な説明)
本開示は、生体適合性であり、非免疫原生であり、生分解性である組織接着剤またはシーラントとして使用するためのマクロマー組成物に関する。生体吸収性マクロマー組成物は、組織端を接着、組織の空気/流体漏れを密閉、組織へ医療機器すなわちインプラントを接着および組織増殖のため、組織において密閉または隙間もしくは不備を埋めるため使用できる。生体吸収性マクロマー組成物は、生体組織および/またはヒトを含む動物の肉体に適用できる。
【0013】
科学界では、「肉体」という用語と「組織」という用語との使用法の間に特定の区別を引いているが、これらの用語は、本願明細書において、交換可能に使用され、患者の処置のための医療分野において、その上に本生体吸収性マクロマー組成物が利用されると当業者が理解する一般的な基質を指す。本願明細書において用いられる「組織」とは、限定されるものではないが、皮膚、骨、ニューロン、軸索、軟骨、血管、角膜、筋肉、筋膜、脳、前立腺、胸部、子宮内膜、肺、膵臓、小腸、血液、肝臓、精巣、卵巣、頸部、直腸、胃、食道、脾臓、リンパ節、骨髄、肝臓、末梢血、胚組織および/または腹水組織を含む。
【0014】
本開示の組成物は、生体吸収性基を保有する、すなわち分解性結合を提供するジイソシアネート官能性ポリマーを含む。ジイソシアネート官能性ポリマーは、実施形態において、それ自身または官能化可能なトリオールまたはポリオールである第2成分と共に適用でき、それによって、生体吸収性マクロマー組成物を形成する。
【0015】
ジイソシアネート官能性ポリマーは、多糖類およびポリオールを含むことができる。好適な多糖類は、限定されるものではないが、ソルビトール、マンニトール、スクロース、デキストラン、シクロデキストリンなどを含む。好適なポリオールは、これに限定されるものではないが、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコールなどを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、ポリエチレングリコールとラクチド結合、ポリエチレングリコール−アジピン酸塩、ポリプロピレングリコール(「PPG」)、co−ポリエチレンオキシドブロックまたはランダム共重合体、ポリエチレンオキシド(PEO)共重合体とPLURONICS(登録商標)としてBASF Corporation(Mt.Olive、NJ)より商用に販売されているトリブロックPEO−PPO共重合体などのポリプロピレンオキシド(PPO)などのポロキサマーを含むポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、またはこれらの組み合わせなどのポリオールであり得る。
【0017】
実施形態において、ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレンオキシドなどのポリマー、ポリエチレングリコール(「PEG」)などのポリマーとして利用可能である。本願明細書において用いられる、ポリエチレングリコールとは、一般に、ポリエチレンオキシドが高分子量で使用される時、分子量50,000未満のポリマーのことである。PEGsは、生体適合性合成マクロマー組成物において、優れた保水性、可撓性および粘度を提供する。
【0018】
ポリマーは、生分解性を改善するため、分岐または星形構造を有することができる。ポリマーの分子量は、実施形態において、約100〜約20,000であり、約500〜約10,000であり、一般に約1000〜約5000である。
【0019】
本開示のジイソシアネート官能性ポリマーを生成する方法は、当業者の範囲内である。たとえば、PAOsは、第22項で開示されたPoly(ethylene Glycol) Chemistry:Biotechnical and Biomedical
Applications、J.Milton Harris、ed.、Plenum
Press、NY(1992)を含む方法によれば、複数の側鎖基を有することで官能化できる。PAOsの種々な形状、特にPEGsは、たとえば、Shearwater Polymers、Inc.、Huntsville、Alabama and Texaco Chemical Company Houston、Texasを含む会社から商用に販売されている。
【0020】
実施形態において、ジイソシアネート官能性ポリマーは、生体吸収性基を含む。生体吸収性基が、加水分解できることは周知である。好適な生体吸収性基は、乳酸およびグリコール酸など加水分解に不安定なα−ヒドロキシ酸、グリコリド、ラクチド、ε−カプロラクトンを含むラクトン、トリメチレンカーボネートなどのカーボネート、1,4−ジオキサン−2−オンおよび1,3−ジオキサン−2−オンを含むジオキサノンなどのエステルエーテル、コハク酸(succinnic acid)を含む二塩基酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、ジクロロリン酸エチルなどのリン酸エステル、セバシン酸無水物およびアゼライン酸無水物などの無水物等およびこれらの組み合わせなどを含む。
【0021】
ジイソシアネート官能性ポリマーへこのような生体吸収性基を取り込む方法は、当業者の範囲内である。たとえば、生体吸収性基は、
−(OH) (I)
式中、Rは多糖およびポリオールから選ばれた基の員であり、nは約1〜約20の数である複数のヒドロキシ基を有するポリマーを形成するため、ポリマーをD−ソルビトール、D−マンニトール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(また周知の2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)、エンテロジオール、シクロデキストリン等などの多価アルコールと1次反応させることにより、ジイソシアネート官能性ポリマーに組み込まれ得る。好適な多糖は、限定されるものではないが、ソルビトール、マンニトール、スクロース、デキストラン、シクロデキストリン等を含む。好適なポリオールは、限定されるものではないが、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール等を含む。
【0022】
複数のヒドロキシ基を有するポリマーは、その後、順に、複数の生体吸収性/ヒドロキシ基を有するポリマーを形成するために、上述の乳酸またはグリコール酸またはその他の生体吸収性基などのヒドロキシ酸と反応する。
【0023】
生体吸収性基と結合したポリマーは、その後、ジイソシアネート官能性ポリマーを生成するため、イソシアネートでエンドキャップ可能である。生体吸収性基と結合したポリマーをエンドキャップ化するための好適なイソシアネートは、限定されるものではないが、芳香族、脂肪族および脂肪族イソシアネートを含む。例としては、限定されるものではないが、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)またはテトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;およびイソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン ジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネートまたはBayer Material Scienceから市販されているDESMODURS(登録商標)などの脂環式ジイソシアネートを含む。ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートは、いくつかの実施形態において特に有用である。
【0024】
他の実施形態において、ポリマーは、第1に、ジイソシアネート基でエンドキャップでき、その後生体吸収性基は、エンドキャップされたジイソシアネートポリマーに組み込まれる。
【0025】
たとえば、低分子量架橋剤は、ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリアルキレンオキシドにおいて、生体吸収性基を生成するために高分子量PEGと結合できる。本実施形態の架橋剤は、ジグリコール酸、カプロラクトン二酸、二酸末端ラクチドオリゴマー、グリコリド、ラクトンおよびこれらの組み合わせまたはポリ(グルタミン酸)などの低分子量ポリペプチドであり得る。当業者は、このような成分をエンドキャップされたポリアルキレンオキシドへ組み込む、その他の反応スキームを容易に想像するであろう。たとえば、Kobayashi et al.、「Water−curable and biodegradable prepolymers,」J.Biomed、Materials Res、25:1481−1494(1991);Kim et al.、「Biodegradable photo linked−cross−linked poly(ether−ester)networks for lubricious coatings,」Biomater、21:259−265(2000)参照、それぞれ本願明細書において開示全体を参照することにより援用される。
【0026】
生体吸収性基は、ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマー約5%〜約50重量%、実施形態において、ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマー約10%〜約40重量%、一般にジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマー約15%〜約30重量%量のジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーの中に含まれ得る。
【0027】
ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーは、線形であり得または分岐もしくは星形構造を有することができる。生体吸収性基を持つジイソシアネート官能性ポリマーの分子量は、約100〜約20,000、実施形態において、約300〜約10,000、一般に約500〜約5000であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、ジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーの成分は、式
−[A]−R−[A]−R (II)
であって、式中、Rは多糖またはポリオールであり、Rはジイソシアネート基を含むイソシアネート基であり、Aは生体吸収性基およびvは約1〜約20、実施形態において、約1〜約6の数である。一実施形態において、Rはポリエチレングリコールなどのポリアルキレンオキシドであり得、Aはラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p−ジオキサノン、無水物、リン酸エステルまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0029】
他の実施形態において、ジイソシアネート官能性ポリマーは、以下の構造:
−[A]−R−[A]−R (III)
を有し、式中、AおよびRは前記定義の通りであり、RはPEGであり、mは約1〜約6の数である。
【0030】
生体吸収性基を提供する成分に加え、酵素的に分離可能である少なくともひとつの結合は、ジイソシアネート官能性ポリマーに組み込まれ得る。酵素分解した結合は、限定されるものではないが、:−Arg−、−Ala−、−Ala(D)−、−Val−、−Leu−、−Lys−、−Pro−、−Phe−、−Tyr−、−Glu−などのアミノ酸残基;−lle−Glu−Gly−Arg−、−Ala−Gly−Pro−Arg−、−Arg−Val−(Arg)−、−Val−Pro−Arg−、−Gln−Ala−Arg−、−Gln−Gly−Arg−、−Asp−Pro−Arg−、−Gln(Arg)−、Phe−Arg−、−(Ala)−、−(Ala)−、−Ala−Ala(D)−、−(Ala)−Pro−Val−、−(Val)−、−(Ala)−Leu−、−Gly−Leu−、−Phe−Leu−、−Val−Leu−Lys−、−Gly−Pro−Leu−Gly−Pro−、−(Ala)−Phe−、−(Ala)−Tyr−、−(Ala)−His−、−(Ala)−Pro−Phe−、−Ala−Gly−Phe−、−Asp−Glu−、−(GIu)−、−Ala−Glu−、−lle−Glu−、−Gly−Phe−Leu−Gly−、−(Arg)−などの2−mer〜6−merオリゴペプチド;D−グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルマンノサミンまたはそのオリゴ糖;オリゴデオキシアデニン、オリゴデオキシグアニン、オリゴデオキシシトシンおよびオリゴデオキシチミジンなどのオリゴデオキシリボ核酸;オリゴアデニン、オリゴグアニン、オリゴシトシン、オリゴウリジンおよび同類のものなどのオリゴリボ核酸を含む。当業者は、酵素的に分離可能である結合が、ジイソシアネート官能性ポリマーに組み込まれるための反応スキームを容易に想像するであろう。
【0031】
本開示のジイソシアネート官能性ポリマー成分は、実施形態において、それ自身またはマクロマー接着剤もしくはシーラント組成物を形成するため第2成分と結合して利用できる。利用する場合、本開示の第2成分は、官能化されたポリオールである。有用なポリオールは、ポリエーテルをベースとしたポリオール、ポリカプロラクトンをベースとしたポリオールおよびグリセリンなどの多価アルコール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ペンタエリスリトール、グルコース、マンニトール、スクロースなどの二糖類、ソルビトールおよびジエチレングリコールを含む。
【0032】
このようなポリオールを官能化する方法は、当業者の範囲内である。いくつかの実施形態において、ポリオールは、イソシアネートで官能化されたポリカプロラクトントリオールなど、ポリカプロラクトンをベースとしたポリオールを含む。ポリカプロラクトンポリオールは、過剰のカプロラクトンと少なくとも2個の反応性水素原子を持つ有機多官能性開始剤を反応させることによって調製され得る。いくつかの実施形態において、ポリカプロラクトントリオールなどのポリカプロラクトンポリオールは、カプロラクトンとトリメチロールプロパン、グリセリン、ジエチレングリコールまたはこれらの組み合わせなどの開始剤を反応させることによって産生され得る。
【0033】
官能性ポリオールに有用なイソシアネートは、ジイソシアネート官能性ポリマーとともに使用するため、上記の記載を含む。例としては、限定されるものではないが、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)またはテトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;およびイソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン ジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネートまたはBayer Material Scienceから市販されているDESMODURS(登録商標)などの脂環式ジイソシアネートを含む。ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートは、いくつかの実施形態において特に有用である。
【0034】
いくつかの実施形態において、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート(DESMODURS(登録商標))、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)および/またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)などのジイソシアネートは、官能性ポリオールに利用され得る。
【0035】
実施形態において、ポリカプロラクトントリオールは、ポリオールとして利用され、ジイソシアネートは、以下の官能性ポリオールを生成するため、トリオールのヒドロキシ基と反応する:
[R−O]−R (IV)
式中、Rはジイソシアネートであり、Rはポリカプロラクトンである。
【0036】
いくつかの実施形態において、トリメチロールプロパンまたはエチレングリコールならびにポリエチレングリコールなどのジオール等のトリオートとジイソシアネートとの付加化合物形成および官能性ポリオールへのこの付加化合物の使用が望まれ得る。これは、以下のスキームで例示されるように、イソシアネート末端付加物を形成するため、過剰のジイソシアネートをアルコールと反応させることで成し得る。
【0037】
【化2】

イソシアネート末端付加物は、その後、付加物と官能化したポリオールを生成するため、上述のポリカプロラクトントリオールなどのポリオールと反応し得る。実施形態において、ポリオールは、ポリカプロラクトントリオールであり得および付加物は、イソシアネート基でエンドキャップされたポリエチレングリコールであり得る。ひとつの有用な官能性ポリカプロラクトントリオールは、従って、以下の構造:
【0038】
【化3】

を有することができ、式中、Rはジイソシアネートを含むイソシアネートであり、Rはポリエチレングリコールおよびa、bとcは、0を含むいずれもの整数でよく、官能性ポリカプロラクトントリオールは、約200〜約6,000、実施形態において、約500〜約4500の平均分子量を有する。
【0039】
他の実施形態において、第2成分には、言い換えると、付加的な加水分解基で官能化され得るポリオールが含まれ得る。このような官能性ポリオールは、言い換えると、イソシアネートなどの生体適合性のある基でエンドキャップされ得る。好適なポリオールは、ソルビトール、マンニトール、二糖類、シクロデキストリン、ポリアルキレンオキシドおよびOH−官能性デンドリマーを含む。
【0040】
一実施形態において、ポリオールは、ジイソシアネート官能性ポリマーとの使用に好適な、上記記載の生体吸収性基で官能化されたソルビトール、すなわち、加水分解に不安定な乳酸およびグリコール酸を含むα−ヒドロキシ酸、グリコリド、ラクチド、ε−カプロラクトンを含むラクトン、炭酸トリメチレンなどの炭酸塩、1,4−ジオキサン−2−oneおよび1,3−ジオキサン−2−oneを含むジオキサノンなどのエステルエーテル、コハク酸(succinnic acid)を含む二塩基酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、エチルジクロロリン酸などのリン酸エステル、セバシン酸無水物などの無水物およびアゼライン酸無水物等およびこれらの組み合わせを含む。
【0041】
このような官能性ポリオールは、イソシアネート基でさらに官能化され得、第2成分は以下の構造:
−[(R−R (VII)
を有し、式中、Rはポリオールであり、Rは生体吸収性基であり、Rはジイソシアネート基を含むイソシアネート基であり、nは約1〜約10の数でありおよびdは約2〜約4の数である。
【0042】
他の実施形態において、第2成分のポリオールは、ポリアルキレンオキシドなどの親水性基でさらに官能化され得る。一実施形態において、ポリオールは、メトキシポリエチレングリコール(「mPEG」)などのポリエチレングリコールでさらに官能化され得、第2成分は以下の構造:
10−R−[(R−R (VIII)
を保有し、式中、R10はmPEGであり、R、R、R、nおよびdは上記定義の通りである。
【0043】
実施形態において、R10はmPEGであり、Rはソルビトールであり、Rはラクチド、Rはジイソシアネートを含むイソシアネートおよびnは約1〜約10の数であり、dは約2〜約4の数である。
【0044】
従って、いくつかの実施形態において、本開示の接着剤/シーラント組成物は、それ自身で生体吸収性基とジイソシアネート官能性ポリマーを含み得る。他の実施形態において、生体吸収性基とジイソシアネート官能性ポリアルキレンオキシドは、上記式IV、VI、VIIもしくはVIII、またはいずれものこれらの組み合わせの官能性ポリオールと結合し得る。
【0045】
利用する場合、第2成分は、マクロマー組成物の約5%〜約90重量%、実施形態において、マクロマー組成物の約10%〜約80重量%、一般にマクロマー組成物の約15%〜約50重量%の量で、本開示のマクロマー組成物の中に含まれ得る。
【0046】
第1ポリマー濃度および第2成分は、使用される特定のポリマーのタイプおよび分子量ならびにその所望の最終使用の用途、すなわち接着剤またはシーラントを含む多くの要因によって異なるだろう。
【0047】
単一利用時には、生体吸収性基とジイソシアネート官能性ポリマーとは、生体適合性接着剤またはシーラントを形成するため、イン サイチュで架橋できる。官能性ポリオールと結合した場合、この2つの成分は、生体適合性マクロマー接着剤またはシーラントを形成するため混合した時、イン サイチュで架橋する。ジイソシアネート官能性ポリマーは、任意に官能性ポリオールと結合し、医療処置中の外科手術/稼働時間を短縮する3次元ゲル状接着剤マトリクスを急速に形成する。
【0048】
結果として生じた生体吸収性マクロマー組成物は、医療用/外科手術用の性能において、縫合糸、ステーブル、クランプなどの代わりまたはそれらと組み合わせて使用され得る。実施形態において、生体吸収性マクロマー組成物は、機械的な応力を生じ得る従来の道具に代わって、肺組織などの繊細な組織を一緒に密閉するかまたは接着するために使用され得る。結果として生じた生体吸収性マクロマー組成物はまた、組織において空気および/または流体の漏れを密閉するため、ならびに外科手術後の癒着を防ぎ、そして組織中の空隙および/または欠陥を充填するために使用され得る。
【0049】
本開示の生体吸収性マクロマー組成物はまた、動物、特にヒトの特定の場所へ、薬物の注入および直達を制御できる薬物担体として作用し得る。組成物は合成であるので、被検体の組織における免疫反応は、軽減または消失する。
【0050】
本開示の生体吸収性マクロマー組成物を形成するため、ジイソシアネート官能性ポリマーを単独で使用する場合、ジイソシアネート官能性ポリマーは、本開示の生体吸収性マクロマー組成物を形成するため、任意に触媒存在下で水を付加し得る。実施形態において、さらなる発泡剤はまた、たとえば、任意にクエン酸などの有機酸と結合した、重曹を含む炭酸塩を付加し得る。他の実施形態において、開始剤は含まれ得る。好適な開始剤は、たとえば、ベンゾイルパーオキシドを含有する有機過酸化物およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を含有するアゾ化合物を含む。
【0051】
実施形態において、生体吸収性マクロマー組成物は、3次元架橋マトリクスを形成するため、官能性ポリオール成分と生体吸収性基を有するジイソシアネート官能性ポリマーを結合することにより調製され得る。架橋結合は、通常、必要に応じて、第3級アミン触媒などの触媒の存在またはで不在下で、エンドキャップおよび官能化された成分を水に曝すことによって行われる。架橋結合反応において使用するための好適な触媒は、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジメトリアミノピリジン、オクト酸第一スズ等を含む。使用された触媒の量は、架橋されるポリマー成分1キログラムあたり約0.5グラム〜約50グラム、実施形態において、架橋されるポリマー成分1キログラムあたり約1グラム〜約10グラムであり得る。
【0052】
任意に官能性ポリオールと結合した、ジイソシアネート官能性ポリアルキレンオキシドと生体吸収性基との架橋を達成するための正確な反応条件は、ポリマーの組成物、エンドキャップ度、特定のイソシアネートの利用および望まれる架橋度合いなどいくつかの要因に応じて変わり得る。架橋反応は、約20℃〜約40℃、実施形態において、約25℃〜約35℃の温度で、約5分〜約72時間またはそれ以上、実施形態において、約1時間〜約36時間の範囲でおこなわれ得る。
【0053】
本開示の生体吸収性マクロマー組成物のため、第1および第2成分、すなわち、ジイソシアネート官能性ポリマーおよび官能性ポリオールいずれもの高濃度の使用は、より強固に架橋結合された生体吸収性マクロマー組成物を形成し、より固くより強くなったゲルマトリクスを生成するであろう。そのようなものとして、本開示の組織増殖における使用を目的とした生体吸収性マクロマー組成物は、一般に第1および第2成分いずれもにおいて高濃度で使用されるであろう。本開示の生体接着剤としてまたは手術後癒着の予防のための使用を目的とした生体吸収性マクロマー組成物は、強化する必要がなく、従って、低濃度のふたつの成分を包含し得る。
【0054】
生物学的に活性な因子には、本開示の生体吸収性マクロマー組成物が含まれ得る。たとえば、コラーゲンおよびグリコサミノグリカンのような種々の天然多糖誘導体などのタンパク質を含む天然高分子は、本開示の生体吸収性マクロマー組成物に組み込まれ得る。このような他の生物学的に活性な因子がまた官能基を包含する場合、この基は、本開示の生体吸収性マクロマー組成物の第1および/または第2成分の官能基と反応するであろう。
【0055】
薬剤を含む種々の任意の原料はまた、本開示の生体吸収性マクロマー組成物に添加され得る。安定化特性の抗菌薬を提供し、他の物質が生体吸収性マクロマー組成物中に分散するのを助けるリン脂質界面活性剤が、添加され得る。さらなる薬剤は、抗菌剤、着色剤、保存剤または、たとえば、タンパク質およびペプチド製剤などの薬剤、解熱剤、消炎剤および鎮痛剤、抗炎症剤、血管拡張剤、抗高血圧および抗不整脈剤、降圧剤、鎮咳薬、抗新生物剤、局所麻酔剤、ホルモン剤、抗ぜんそくおよび抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、脳循環と代謝の改善剤、抗うつおよび抗不安剤、ビタミンD剤、血糖降下剤、抗潰瘍剤、睡眠剤、抗生剤、抗真菌剤、鎮静剤、気管支拡張剤、抗ウイルス剤および排尿剤を含む。
【0056】
生体吸収性マクロマー組成物が、薬剤またはタンパク質の送達を意味する場合、第1および第2成分の量は、生体吸収性マクロマー組成物中の薬剤またはポリマーの初期保持および引き続く放出を促進するように調整され得る。このような調整をするための方法および手段は、当業者には容易に明らかである。
【0057】
ヨウ素または硫酸バリウムまたはフッ素などの造影剤はまた、X線、MRIおよびCATスキャンを含む映像設備の使用を通して、外科手術部位の映像化を可能にするため、本開示の生体吸収性マクロマー組成物と併用され得る。
【0058】
さらに、酵素は、分解率増加のため本開示の生体吸収性マクロマー組成物に添加され得る。好適な酵素は、たとえば、エラスターゼなどのペプチド加水分解酵素、カテプシンG、カテプシンE、カテプシB、カテプシH、カテプシL、トリプシン、ペプシン、キモトリプシン、γ−グルタミル転移酵素(γ−GTP)など;ホスホリラーゼなどの糖鎖加水分解酵素、ノイラミニダーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ、リゾチーム、オリゴサッカラーゼなど;アルカリ性ホスファターゼなどのオリゴヌクレオチド加水分解酵素、エンドリボヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどを含む。いくつかの実施形態において、酵素が添加される場合、酵素は、その放出率を制御するためリポソームまたはミクロスフェア中に含まれ得、それによって、本開示の生体吸収性マクロマー組成物の分解率を制御し得る。酵素をリポソームおよび/またはミクロスフェアへ合成する方法は、当業者の範囲内である。
【0059】
本開示の生体吸収性マクロマー組成物は、多くの異なるヒトおよび動物の医療用途のために使用され得、これに限定されるものではないが、その用途としては、創閉鎖(外科手術用切開部および他の創傷を含む)、組織接着医療機器(インプラントを含む)の接着剤、シーラントおよび空隙充填剤ならびに塞栓物質を含む。接着剤は、縫合糸、ステーブル、テープおよび/または包帯の代置物としてか、またはそれらの補充物としてのいずれかで、組織を一緒に結合するために使用され得る。本開示の生体吸収性マクロマー組成物を使用することで、現在の実施の間に通常必要とされる縫合糸を排除するか、またはその数を実質的に減少させ得、そして引き続くステープルおよび特定のタイプの縫合糸の取り外しの必要性を排除し得る。本開示の生体吸収性マクロマー組成物は、従って、縫合糸、クランプまたはその他の従来の組織閉鎖機構がさらなる組織損傷を引き起こし得る繊細な組織を伴う使用に特に適切であり得る。
【0060】
さらなる使用は、縫合またはステープル線で、血液または流体の漏れを防ぐまたは制御するため、組織を閉鎖するシーラントとしての生体吸収性マクロマー組成物の使用を含む。他の実施形態において、生体吸収性マクロマー組成物は、再建手術の間、皮膚移植片を取り付け、そして組織弁の位置を決めるために使用され得る。さらに別の実施形態において、生体吸収性マクロマー組成物は、歯周手術において組織弁を閉鎖するために使用され得る。
【0061】
生体吸収性マクロマー組成物は、ディスペンサー前に第1および第2ポリマーの混合物を提供し得る、従来の接着剤ディスペンサーから調剤され得る。このようなディスペンサーは、たとえば、米国特許第4,978,336、4,361,055、4,979,942、4,359,049、4,874,368、5,368,563および6,527,749で開示され、本願明細書において参照することにより組み込まれ得る。
【0062】
他の実施形態において、特に、本開示の生体吸収性マクロマー組成物が、動物の身体の欠陥を充填するため、インプラントまたは空隙充填剤またはシーラントとして利用される場合、架橋結合の状態および範囲をより正確に制御するのは有利であり得;従って、組成物を動物組織の空隙を充填するために使用する前に、部分的に架橋することが望まれ得る。このような場合には、本開示の生体吸収性マクロマー組成物は、空隙または欠陥に適用できおよび固定を可能とし、それによって、空隙または欠陥を充填することができる。
【0063】
2つの組織端の結合を達成するために、その2つの端は隣接し、および第1成分すなわちジイソシアネート官能性生体吸収性ポリマーは、単独または第2成分すなわち官能性ポリオールと結合し、適用される。この成分(ら)は、一般に、1分かからず迅速に架橋する。この成分(ら)のイソシアネート基は、組織表面に存在するアミン基へ直接結合することによって、組織へ接着すると考えられている。この場合、本開示のマクロマー組成物は、外科的切開を含む創傷の閉鎖のため接着剤として使用され得る。本開示のマクロマー組成物は、従って、創傷に適用できおよび固定を可能とし、それによって、創傷を閉鎖し得る。
【0064】
本開示はまた、本開示の生体吸収性マクロマー組成物を使用して、医療機器を組織に接着するための方法に関する。実施形態において、医療機器の組成物にもよるが、医療機器にはコーティングが必要とされ得る。コーティングなど一部の例では、使用される場合、本開示の生体吸収性マクロマーの第1成分または第2成分を含み得る。いくつかの側面では、医療機器にはインプラントが含まれる。その他の医療機器には、限定されるものではないが、ペースメーカー、ステンとシャントなどが含まれる。一般に、動物組織の表面に用具を接着するために、本開示のマクロマー組成物は、その用具、組織表面またはその両方へ適用され得る。この用具、生体吸収性マクロマー組成物および組織表面は、その後、互いに接触しおよび生体吸収性マクロマー組成物は、固定を可能とし、それによって、互いに用具および表面を接着し得る。
【0065】
本生体吸収性マクロマー組成物はまた、外科手術後の癒着を防ぐために使用され得る。このような用途では、治癒プロセスの間の外科手術部位の癒着形成を防ぐために、生体吸収性マクロマー組成物は、付与されて硬化され、内部組織の表面に層を形成する。癒着形成バリアに加えて、本開示の組成物は、充填物などのインプラント、バットレスまたはインプラントのための綿撒糸を形成するために使用され得る。
【0066】
シーラントとして使用される場合、本開示の生体吸収性マクロマー組成物は、外科手術手順の間とその後との両方の沁みだしもしくは流体の漏れを防ぐかまたは阻害するように、外科手術において使用され得る。それはまた、肺の外科手術に関連する空気の漏れを防ぐために付与され得る。マクロマー組成物は、少なくともその組織におけるいずれもの欠陥を密封し、いずれもの流体または空気の移動を密閉するのに必要な量で所望の領域に直接付与され得る。
【0067】
その他の添加剤とまたはその他の添加剤なしの接着剤またはシーラントとしての生体吸収性マクロマー組成物の付与は、いずれもの従来の手段によって行われ得る。これらは、滴下、ブラッシングまたは組織表面への生体吸収性マクロマー組成物の他の直接的な操作もしくは生体吸収性マクロマー組成物の表面上への噴霧を含む。開放型手術では、手、鉗子などによる付与が企図される。内視鏡手術では、生体吸収性マクロマー組成物は、トリカールのカニューレを通して送達され、当業者において周知であるいずれもの機器によってその部位で延展され得る。
【0068】
本生体吸収性マクロマー組成物は、多くの有利な特性を有する。本開示の生体吸収性マクロマー組成物は、安全であり、組織に対して高い接着性を保有し、生分離性であり、高い止血能力を有し、低コストであり、調製および使用が容易である。ポリマー成分の選択を変えることにより、生体吸収性マクロマー組成物の強度および弾力は制御され得り、ゲル化時間も同様に制御され得る。
【0069】
生体吸収性マクロマー組成物は、柔軟なゲルマトリクスを迅速に形成し、組織端または移植された医療機器の固定位置を所望の位置に確定し、全体として必要とされる外科手術/適用時間を短縮する。生体吸収性マクロマー組成物は、ゲルマトリクス形成の際、ほとんど膨潤しないかまったく膨潤せず、それゆえ、整列された組織端および/または医療機器の配置位置の整合性を保持する。生体吸収性マクロマー組成物は、強い凝集性のある結合を形成する。それは、優れた機械的性能および強度を示す一方、生体組織を接着するために必要な可撓性を保持する。この強度および柔軟性により、外科用の組織端が移動することなく、組織はある程度移動することが可能となる。加えて、生体吸収性マクロマー組成物は、生分解性であり、分解成分が安全に被検体の身体を通過できる。
【0070】
当業者が、本願明細書において記載された本開示の特徴をより良く実施し得るために、限定されるものではないが、以下の実施例を提供し、本開示の特徴を例示する。
【実施例】
【0071】
実施例1
ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)との濃縮によるメトキシ−PEGの活性化。HMDIを、mPEGおよびクロロホルム中のトリエチルアミン(触媒)(J.T.Baker)の溶液に加えた。反応混合物(10%w/v)を、60〜65℃(沸点=61℃)で4〜6時間還流させながら加熱した。ポリマーmPEG−NCOを、1:1の割合で石油エーテル/ジエチルエーテル(PE/エーテル)中に沈殿させることによって分離した。PE/エーテルで洗浄し、再沈殿を2回繰り返した。最終生成物を真空乾燥した。収量:>90%。解析:核磁気共鳴法(NMR)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、示差走査熱量測定法(DSC)。
【0072】
原料化合物およびその量は以下で説明する:
【0073】
【表1】

実施例2
mPEG−OCONH(CH−NCOおよびD−ソルビトールの濃縮。D−ソルビトールをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)で溶解し(わずかに加熱しながら)、その後mPEG−OCONH(CHNCO(分子量=2000または5000)およびクロロホルム中に溶解しているトリエチルアミンの溶液に、攪拌しながら室温で滴下にて加えた。反応温度を、室温から約60〜65℃に上昇させ、反応は6〜8時間続いた。沈殿物が発生したなら、さらなるDMFに物質を再融解するために加えた。反応混合物は、ROTAVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレータ(BUCHI Labortechnik AG)で濃縮され、その後PE/エーテル中で沈殿した。最終生成物を窒素存在下で真空乾燥した。収量:>80%。解析:NMR、FTIR、DSC。
【0074】
原料化合物およびその量は以下で説明する:
【0075】
【表2】

実施例3
L−ラクチドの開環塊状重合(ROP)。メトキシ−PEG−OCN(CHNH−CO−NH−D−ソルビトール−(OH)、開始剤およびL−ラクチドをN存在下で135〜140℃まで加熱した。Sn(Oct)、触媒を、最小量のトルエンで溶解(約1mL)し、融成物へ加えた。反応温度は約135〜140℃で、反応を15時間続けた。反応混合物はクロロホルムで溶解し、その後石油エーテル/ジエチルエーテル(比率1:1)中で沈殿した。最終生成物を真空乾燥した。収量:>60%。解析:NMR、FTIR、DSC。
【0076】
原料化合物およびその量は以下で説明する:
【0077】
【表3】

実施例4
ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)によるmPEG−OCONH(CHNH−D−ソルビトール−(ポリラクチド−OH)の濃縮。メトキシ−PEG−OCONH(CHNH−D−ソルビトール−(ポリラクチド−OH)およびトリエチルアミン(触媒)を室温にてクロロホルムで溶解した。この溶液を、室温にて攪拌されたクロロホルム中のHMDI溶液へ徐々に加えた。濃縮反応は、窒素存在下にて6時間還流温度で行った。ROTAVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレータを使用して溶媒の減少後、続いて石油エーテル/ジエチルエーテル(比率1:1)中で沈殿した。最終生成物を窒素存在下で真空乾燥した。収量:>90%。解析:NMR、FTIR、DSC。
【0078】
原料化合物およびその量は以下で説明する:
【0079】
【表4】

実施例5
プロピレングリコールを使用するラクチドの開環重合
25.92グラムのラクチド(LA;Puracより)および2.3グラムのプロピレングリコール(PG;JT Bakerより)を、清潔で乾燥した250mlの丸底フラスコ中で混合した。少量のトルエンで溶解した0.021グラムのオクチル酸スズを加えた。反応混合物を、静的な窒素大気下で攪拌しながら15〜18時間、135〜140℃で加熱した。結果として生じた構造物(HO−(LA)−PG−(LA)−OH)を、NMRを使用して確認した。
【0080】
実施例6
HMDIを室温にて、実施例5(HO−(LA)−PG−(LA)−OH)の生成物およびテトラヒドロフラン(THF)中のトリエチルアミン(TEA)の溶液へ加えた。反応混合物を、還流するため4時間加熱(約65℃)し、その後室温にてひと晩放置した。結果として生じた物質を、THF中のPEG400溶液へ加えた。
【0081】
原料化合物およびその量は以下で説明する:
【0082】
【表5】

反応混合物を、還流するため4時間加熱した。反応混合物は、ROTAVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレータ(BUCHI Labortechnik AG)で濃縮した。PE/エーテル(比率1:1)中の沈殿に続いて、THFに再溶解後、再沈殿した。
【0083】
実施例7
官能性ポリオールは、以下のように調製された。HMDIを、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオールおよびTEA(200〜250ml)を含むTHF溶液へ加えた。反応混合物を4時間還流し、その後ひと晩攪拌しながら室温に冷却した。結果として生じた物質を、THF(200〜250ml)中のPEG200溶液へ加え、4時間還流した。結果として生じたポリオールを、PE/エーテル(比率1:1)中の沈殿によって分離した。収量は99%であった。解析はNMRであった。
【0084】
原料化合物およびその量は以下で説明する:
【0085】
【表6】

実施例8
25.5グラムのグリコリド(「G」)、25.0グラムのカプロラクトン(「CL」)および1.67グラムのプロピレングリコールを、清潔で乾燥した500mlの2口丸底フラスコへ加えた。物質を混合し、窒素泡沸でひと晩乾燥させた。乾燥後、物質を静的な窒素下に置き、引き続き混合しながら150℃に加熱した。物質が150℃に到達するとすぐに、0.04グラムのオクチル酸スズを加え、混合物を24時間反応させた。サンプルを得、NMRおよびIRで検査した。その後混合物をその後130℃に冷却した。
【0086】
一旦混合物を冷却し、274.5グラムのUCON75−H−450、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(PEO/PPO共重合体;Dow Chemical Co.、Midland、Mich.より商用に販売)および0.08グラムのオクチル酸スズを加えた。混合物を6時間、混合を続けながら反応させた。結果として生じた物質、15.5%ポリ(グリコリド−カプロラクトン)(50%G+50%CL)+84.5%PEO/PPO共重合体(UCON75−H−450)(分解性ポリ(グリコリド−カプロラクトン)−PEO/PPO共重合体物質として本願明細書において時々参照される)を、その後50℃へ冷却し、ガラス瓶へ移し換えた。
【0087】
実施例9
上述の実施例8で産生した82.50グラムの分離性ポリ(グリコリド−カプロラクトン)−PEO/PPO共重合体物質を85.5グラムのHMDIと混合した。その物質を120℃に加熱し、静的な窒素下で21時間、100RPMで混合した。その後、生成物を次のように石油エーテルで抽出した。約100グラムの生成物および約300mlの石油エーテルを冷却器を備えている1口フラスコに加えた。攪拌された混合物を還流温度に加熱し、30分間その温度で保った。その後、混合物を室温に冷却し、溶媒を別の容器へ静かに移した。この作業を、未反応のHMDIの抽出を確実にするためにもう2回繰り返した。抽出された物質、HMDI−官能性分離性ポリ(グリコリド−カプロラクトン)−PEO/PPO共重合体物質を、その後1トル以下の圧力で、少なくとも24時間真空乾燥した。
【0088】
種々の改善のための変更が、本願明細書において開示された実施形態を構成し得ることは当然のことである。それゆえ上記記載は、限定的であると解釈されるべきではなく、ただ標準的な実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、範囲内におけるその他の改善のための変更および本願明細書に添付の特許請求の範囲の精神を想定するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2013−56242(P2013−56242A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−282700(P2012−282700)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2008−544476(P2008−544476)の分割
【原出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】